IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 有光工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-静電噴霧装置 図1
  • 特許-静電噴霧装置 図2
  • 特許-静電噴霧装置 図3
  • 特許-静電噴霧装置 図4
  • 特許-静電噴霧装置 図5
  • 特許-静電噴霧装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】静電噴霧装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 5/08 20060101AFI20240826BHJP
   B05B 5/025 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
B05B5/08 B
B05B5/025 A
B05B5/025 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021151239
(22)【出願日】2021-09-16
(65)【公開番号】P2023043547
(43)【公開日】2023-03-29
【審査請求日】2024-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000250007
【氏名又は名称】有光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】大町 浩司
(72)【発明者】
【氏名】山下 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】左海 雅史
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-174035(JP,A)
【文献】特開2010-148441(JP,A)
【文献】特開2018-167219(JP,A)
【文献】特開2014-100647(JP,A)
【文献】特開2005-224731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 5/00-5/16
A01M 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴霧する噴霧ノズルと、
該噴霧ノズルを支持する支持杆と、
前記噴霧ノズルから噴霧される液体を帯電させるための帯電部と
を備える静電噴霧装置において、
前記支持杆に取り付けられる有底筒状の外側カバーと、
軸長方向の一端部が前記外側カバーの底壁の内面に取り付けられる筒体と、
該筒体を周方向に囲むようにして前記筒体の軸長方向の中途に設けられ、前記筒体の軸長方向の他端部に向けて拡径する錐台筒状の浸水防止部と、
前記他端部に設けられ、前記筒体を周方向に囲むようにして前記浸水防止部を覆い、前記内面に向けて開口する内側カバーと
を備え、
前記帯電部への給電経路の一部を構成する部材が前記他端部に保持されることを特徴とする静電噴霧装置。
【請求項2】
前記噴霧ノズルは下向きに噴霧し、
前記外側カバーは下向きに開口することを特徴とする請求項1に記載の静電噴霧装置。
【請求項3】
前記内側カバーに排液口が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の静電噴霧装置。
【請求項4】
前記外側カバーの周壁は、周方向に複数に分割可能であり、前記底壁に対して着脱可能に装着され、
前記内側カバーは前記筒体の周方向に分割可能であり、前記筒体に対して着脱可能に装着されることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の静電噴霧装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、静電噴霧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場に薬液(液体)を散布するために、薬液を噴霧する噴霧ノズルと、噴霧ノズルから噴霧される薬液を帯電させるための帯電部とを備える静電噴霧装置が用いられる。
噴霧ノズルから噴霧される薬液は、電極に印加された電圧の極性とは逆の極性に帯電する。帯電した薬液は圃場に向けて拡散し、静電効果により、圃場に植えられた作物にムラなく付着する。
【0003】
特許文献1に記載の静電噴霧装置はブームスプレーヤであり、複数の噴霧ノズルが支持杆(ブーム)の長さ方向に並設されている。支持杆の長さ方向には複数の被装架部が並設されている。帯電部はケーブルであり、複数の被装架部間に架け渡されている。2本の帯電部、又は1本の帯電部の往路及び復路が、噴霧ノズルからの噴霧領域を介在して離隔配置されている。帯電部は電極として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-174035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
帯電部及び帯電部への給電経路は地面から絶縁されている。しかしながら、例えば風に流された薬液の滴が静電噴霧装置の各部の表面に付着することにより、液膜が広範囲にわたって形成されることがある。帯電部又は帯電部への給電経路が液膜を通して地面に電気的に接続された場合、帯電部に流れるべき電流が液膜を通って地絡する。帯電部に流れるべき電流が地絡した場合、薬液を十分に帯電させることができない。
【0006】
本開示の目的は、液体を十分に帯電させることができる静電噴霧装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る静電噴霧装置は、液体を噴霧する噴霧ノズルと、該噴霧ノズルを支持する支持杆と、前記噴霧ノズルから噴霧される液体を帯電させるための帯電部とを備える静電噴霧装置において、前記支持杆に取り付けられる有底筒状の外側カバーと、軸長方向の一端部が前記外側カバーの底壁の内面に取り付けられる筒体と、該筒体を周方向に囲むようにして前記筒体の軸長方向の中途に設けられ、前記筒体の軸長方向の他端部に向けて拡径する錐台筒状の浸水防止部と、前記他端部に設けられ、前記筒体を周方向に囲むようにして前記浸水防止部を覆い、前記内面に向けて開口する内側カバーとを備え、前記帯電部への給電経路の一部を構成する部材が前記他端部に保持されることを特徴とする。
【0008】
本開示にあっては、筒体の軸長方向の中途が浸水防止部に覆われる。浸水防止部は開口側が内側カバーの内側に向くようにして内側カバーに覆われる。内側カバーは開口側が外側カバーの内側に向くようにして外側カバーに覆われる。つまり、筒体の軸長方向の中途は3重に覆われている。故に、例えば風に流された液滴が筒体の軸長方向の中途に付着することを防止することができる。
【0009】
外側カバーの内面又は内側カバーの外面には液体が比較的付着しやすい。しかしながら、外側カバーの内面から浸水防止部の外面を伝って筒体の軸長方向の中途に至るまでの経路は長く複雑である。同様に、内側カバーの外面から内側カバーの内面を伝って筒体の軸長方向の中途に至るまでの経路は長く複雑である。故に、外側カバー又は内側カバーから筒体の軸長方向の中途に液滴が流れ着くことを防止することができる。
【0010】
筒体の軸長方向の一端部は外側カバーに取り付けられる。外側カバーは支持杆に取り付けられるので、筒体の一端部側に形成される液膜は地面に電気的に接続され得る。帯電部への給電経路の一部が、筒体の軸長方向の他端部に保持されるので、筒体の他端部側に形成される液膜は、帯電部又は帯電部への給電経路に電気的に接続され得る。ところが、筒体の軸長方向の中途には液膜が形成されないので、帯電部又は帯電部への給電経路が液膜を通して地面に電気的に接続されることを防止することができる。帯電部に流れるべき電流が液膜を通って地絡することがないので、薬液を十分に帯電させることができる。
【0011】
本開示に係る静電噴霧装置は、前記噴霧ノズルは下向きに噴霧し、前記外側カバーは下向きに開口することを特徴とする。
【0012】
本開示にあっては、外側カバーが下向きに開口するので、内側カバーは上向きに開口し、浸水防止部は下向きに開口する。噴霧ノズルが下向きに噴霧するので、空気中を漂う液滴は上向きに流されにくく、外側カバーの内側に浸入しにくい。外側カバーの内側に浸入した液滴が内側カバーの内側にまで浸入したとしても、更に上向きに流されて浸水防止部の内側に浸入することはない。故に、液滴が浸水防止部の内面又は筒体の軸長方向の中途に付着する虞はない。
【0013】
本開示に係る静電噴霧装置は、前記内側カバーに排液口が設けられていることを特徴とする。
【0014】
本開示にあっては、内側カバーに排液口が設けられているので、内側カバーの内側に浸入した液体を、排液口を通して内側カバーの外側に排出することができる。故に、内側カバーの内側に液体が貯留されて筒体の軸長方向の中途が水没する虞がない。
【0015】
本開示に係る静電噴霧装置は、前記外側カバーの周壁は、周方向に複数に分割可能であり、前記底壁に対して着脱可能に装着され、前記内側カバーは前記筒体の周方向に分割可能であり、前記筒体に対して着脱可能に装着されることを特徴とする。
【0016】
本開示にあっては、外側カバーを分解することにより、外側カバーの内外を容易に清拭したり乾燥させたりすることができる。同様に、内側カバーを分解することにより、内側カバーの内外及び筒体の外周面を、容易に清拭したり乾燥させたりすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示の静電噴霧装置によれば、液体を十分に帯電させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施の形態に係る静電噴霧装置の斜視図である。
図2】静電噴霧装置の模式図である。
図3】静電噴霧装置の拡大斜視図である。
図4】ハウジングの断面図である。
図5】ハウジングの分解斜視図である。
図6】ハウジングの組み立てを説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施の形態について説明する。
【0020】
図1は、実施の形態に係る静電噴霧装置の斜視図である。
図中1は静電噴霧装置であり、静電噴霧装置1は、支持杆11、複数の噴霧ノズル12、及び複数の支持金具13を備える。
図2は、静電噴霧装置1の模式図である。
本実施の形態の静電噴霧装置1は支持杆11を2本備える。2本の支持杆11は、例えば車両10の左右両側部に1本ずつ設けられており、車両10と共に移動する。
【0021】
図1に示すように、噴霧ノズル12は支持杆11に設けられている。複数の噴霧ノズル12は支持杆11の長さ方向に互いに適長離隔して並んでいる。噴霧ノズル12には、支持杆11の内部に設けられた図示しない給液路を通して薬液(除草剤又は植物生長調整剤等)が供給される。噴霧ノズル12は供給された薬液を噴霧する。
【0022】
支持金具13は、噴霧ノズル12から適長離隔して支持杆11に設けられている(後述する図3参照)。複数の支持金具13は支持杆11の長さ方向に互いに適長離隔して並んでいる。支持金具13の構成は限定されないが、支持金具13は少なくとも支持杆11に取り付けられる部分と後述するハウジング2に取り付けられる部分とを一体的に有する。
【0023】
静電噴霧装置1の使用中、支持杆11は例えば水平に延びるようにして保持される。このとき、噴霧ノズル12の噴霧方向は下向きになる。支持金具13の、ハウジング2に取り付けられる部分は、支持杆11よりも下に位置する。作業者の運転又は遠隔操作により、或いは自動運転により、車両10は、支持杆11が作物の上側を通過するようにして圃場を走行する。
以下では、噴霧ノズル12の噴霧方向を下方向といい、噴霧ノズル12の噴霧方向の逆方向を上方向という。
【0024】
静電噴霧装置1は複数のハウジング2を備える。ハウジング2は絶縁性を有し、例えば合成樹脂製である。
図3は、静電噴霧装置1の拡大斜視図である。
図4は、ハウジング2の断面図である。
図3及び図4に示すように、ハウジング2は外側カバー3を備え、外側カバー3は有底円筒状をなす。外側カバー3は、円盤状の底壁部材31と円筒状の周壁部材32とを備える。底壁部材31は外側カバー3の底壁を構成し、周壁部材32は外側カバー3の周壁を構成する。
【0025】
図5は、ハウジング2の分解斜視図である。
図6は、ハウジング2の組み立てを説明するための斜視図である。
図5及び図6に示すように、周壁部材32は周方向に2つに分割可能であり、底壁部材31に対して着脱可能に装着される。
本実施の形態における周壁部材32は2つの半円筒部材321を備える。半円筒部材321は軸長方向の一端側の開口周縁部に2つの係合片322を有する。係合片322は半円筒部材321の内周面から内向きに突出している。
図6に示すように、係合片322の縁部には係合爪323が設けられている。
【0026】
周壁部材32の係合片322に対応するようにして、底壁部材31の周縁部には被係合凹部310が設けられている。被係合凹部310の内面には周壁部材32の係合爪323に対応する図示しない被係合爪が設けられている。
係合片322が被係合凹部310に挿入され、係合爪323が被係合凹部310の内面の被係合爪に係脱可能に係合することにより、半円筒部材321は底壁部材31に着脱可能に装着される。
【0027】
各半円筒部材321は、周方向の一端部に2つの挟持片324を備え、周方向の他端部に被挟持片325を備える。2つの挟持片324は半円筒部材321の軸長方向に並設されている。2つの挟持片324の離隔距離は、被挟持片325の、半円筒部材321の軸長方向の長さに等しい。
底壁部材31に装着された2つの半円筒部材321は、一方の半円筒部材321の2つの挟持片324の間に他方の半円筒部材321の被挟持片325が挿入されて挟持されることにより、周壁部材32を形成する。
【0028】
図3に示すように、ハウジング2は支持金具13を介して支持杆11に取り付けられる。ハウジング2の支持杆11への取り付けのために、外側カバー3が、外側カバー3の開口が下方向に向くようにして、支持金具13に取り付けられる。
【0029】
図5に示すように、外側カバー3の底壁部材31の外面には、2つのボス311が底壁部材31に一体に設けられている(図3参照)。ボス311の軸長方向は底壁部材31の外面に垂直である。2つのボス311は底壁部材31の中心位置を中心に点対称に配されている。ボス311の内側にはインサートナット312が同軸に嵌め込まれている。インサートナット312は、図示しないボルトによりハウジング2を支持金具13に取り付ける際に用いられる。
【0030】
図3図5に示すように、底壁部材31の外面には横筒部313が一体に設けられている。横筒部313は底壁部材31の直径と同程度の長さを有し、底壁部材31の外面に沿って底壁部材31の中心位置を通るように延びる。
【0031】
図4及び図5に示すように、底壁部材31の内面には縦筒部314が一体に設けられている。縦筒部314は円筒状をなし、底壁部材31に同軸になるようにして、底壁部材31の中心部から底壁部材31に垂直に突出している。縦筒部314の底壁部材31からの突出量は、周壁部材32の底壁部材31からの突出量の半分程度である。
縦筒部314の先端には錐台筒状の拡径部315(浸水防止部)が縦筒部314と同軸に設けられている。拡径部315は縦筒部314の開口周縁から拡径するように下向きに延出している。
【0032】
図4に示すように、底壁部材31の縦筒部314に囲まれた部分には連通孔316が設けられている。連通孔316は横筒部313の内側と縦筒部314の内側とを連通している。
横筒部313の内周面には、連通孔316と向かい合うようにして、収容凹部317が設けられている。
【0033】
横筒部313の軸長方向の一端側の開口から収容凹部317までの経路は、横筒部313の軸長方向の他端側の開口から収容凹部317までの経路よりも底壁部材31の内面側に配されている。
図4及び図5に示すように、横筒部313には2つの円筒部材33が同軸に設けられている。一方の円筒部材33は横筒部313の軸長方向の一端部に固定されており、他方の円筒部材33は横筒部313の軸長方向の他端部に固定されている。横筒部313と円筒部材33との境界部分は封止されており、この境界部分から薬液が浸入することはない。
【0034】
ハウジング2は円筒状の筒体21と筒状の内側カバー22とを更に備える。
筒体21は、軸長方向の一端部が縦筒部314に同軸に内嵌めされることによって、底壁部材31の内面に取り付けられている。筒体21の外周面と縦筒部314の内周面との間隙は、筒体21に外嵌めされたOリング23によって水密に封止されている。
【0035】
縦筒部314の先端に位置している拡径部315の内周面は、筒体21の縦筒部314への内嵌めの際の案内面として機能する。筒体21の上半分は縦筒部314の内側に配され、筒体21の下半分は縦筒部314の真下に位置している。拡径部315は筒体21を周方向に囲むようにして筒体21の軸長方向の中途に位置しており、筒体21の下端部に向けて拡径している。
本実施の形態の拡径部315は縦筒部314に一体に設けられており、縦筒部314への筒体21の嵌め込みによって筒体21の軸長方向に中途に設けられるが、これに限定されず、筒体21の外周面に一体に設けられてもよい。
【0036】
内側カバー22は、軸長方向を上下に向け、筒体21を周方向に囲むようにして、筒体21の軸長方向の他端部(即ち筒体21の下端部)に取り付けられている。内側カバー22の上側の開口は、底壁部材31の内面に向けられている。
【0037】
内側カバー22は周方向に分割可能であり、筒体21に対して着脱可能に装着される。
図5及び図6に示すように、本実施の形態における内側カバー22は2つの半筒部材221を備える。半筒部材221は、周方向の一端部に凸状の係合部220を有し、周方向の他端部に図示しない凹状の被係合部を備える。2つの半筒部材221は、一方の半筒部材221の係合部220が他方の半筒部材221の被係合部に挿入されて係合することにより、内側カバー22を形成する。
【0038】
図4図6に示すように、内側カバー22を筒体21に取り付けるために、筒体21の下端部に被係合部211が設けられている。被係合部211は筒体21の外周面から外向きに突出している。被係合部211には全周にわたって凹部が設けられている。
一方、内側カバー22の軸長方向の一端部には係合部222が設けられている。係合部222は内側カバー22の開口周縁から内向きに突出している。各半筒部材221は係合部222の周方向の半分を有する。
【0039】
係合部222が被係合部211の凹部に係合するようにしながら2つの半筒部材221を互いに取り付けて内側カバー22を形成することにより、内側カバー22は筒体21を周方向に囲むようにして筒体21の下端部に取り付けられる。内側カバー22の下側の開口は、筒体21によって閉鎖されている。内側カバー22は拡径部315から縦筒部314の基端部の近傍にわたって拡径部315を覆う。
内側カバー22の周壁には複数の排液口223が周方向に並設されている。排液口223は拡径部315から下向きに適長離隔して配されている。なお、排液口223は1つだけでもよい。
【0040】
図4に示すように、ハウジング2には2本の給電線41夫々が水密に引き込まれており、且つ、弾性部材42及び電気抵抗部材43夫々が水密に収容されている。更に、ハウジング2にはシールプラグ44及びインサートナット45が収容されている。
【0041】
シールプラグ44及びインサートナット45夫々は導電性を有し、例えば金属製である。
シールプラグ44は円柱状をなし、筒体21の内側に同軸に嵌め込まれている。シールプラグ44は筒体21の軸長方向の中央部に配されている。シールプラグ44の外周面と筒体21の内周面との間隙は、シールプラグ44に外嵌めされたOリング23によって水密に封止されている。
インサートナット45は本実施の形態における固定用部材であり、筒体21の下端部の内側に同軸に嵌め込まれている。インサートナット45の上端部はシールプラグ44の下端部に接触している。
【0042】
電気抵抗部材43は、収容筒431、2つの端子部材432、及び抵抗本体433を備える。
収容筒431は絶縁性を有する円筒であり、例えば合成樹脂製である。
端子部材432は導電性を有する円板であり、収容筒431の両端開口を覆うようにして収容筒431に取り付けられている。
【0043】
抵抗本体433は所定の電気抵抗値(例えば1GΩ)を有する。抵抗本体433は抵抗器であり、自身の2つの接続端子が2つの端子部材432に接続されるようにして、収容筒431に収容されている。なお、抵抗本体433は導電性ゴム製又は導電性樹脂製のブロックでもよい。この場合、抵抗本体433は2つの端子部材432夫々に接触するようにして収容筒431に収容される。
電気抵抗部材43は、収容筒431が筒体21と同軸に配されるようにして筒体21の上端部の内側に嵌め込まれている。下側の端子部材432はシールプラグ44の上端部に接触している。
【0044】
弾性部材42は導電性を有し、例えば金属製である。本実施の形態の弾性部材42はコイルスプリングであり、電気抵抗部材43の収容筒431と同軸に配されて連通孔316を貫通している。弾性部材42は押し縮められた状態で収容凹部317の底面と電気抵抗部材43の上側の端子部材432との間に配されている。弾性部材42の軸長方向の上端部は収容凹部317に収容されて収容凹部317の底面に弾接している。弾性部材42の軸長方向の下端部は電気抵抗部材43の上側の端子部材432に弾接している。
【0045】
給電線41は、条状の導体411と、導体411を全長にわたって被覆している絶縁体とを備える。ただし、給電線41の端部においては導体411が露出している。給電線41は、円筒部材33を通して底壁部材31の横筒部313に引き込まれている。給電線41の一端部にて露出している導体411は、弾性部材42に挿入されている。この結果、弾性部材42は導体411に弾接している。
【0046】
給電線41の外周面と円筒部材33の内周面との間隙は水密に封止されている。例えば、給電線41にOリング23が外嵌めされており、円筒部材33に円筒状のシール部材24が同軸に内嵌めされており、Oリング23がシール部材24の内周面に弾接している。
Oリング23及びシール部材24を保護するために、円筒部材33は円筒状の保護キャップ25によって覆われている。保護キャップ25の底壁には貫通孔が設けられている。保護キャップ25は、給電線41が保護キャップ25の貫通孔を貫通した状態で、円筒部材33に同軸に外嵌めされている。
このように、給電線41はハウジング2の内部空間に水密に引き込まれて、電気抵抗部材43の抵抗本体433に電気的に接続されている。
【0047】
静電噴霧装置1はハウジング2の個数と同数の支持部材14を備える。支持部材14は導電性を有し、例えば金属製である。
図4及び図5に示すように、支持部材14は一方向に長い板材である。支持部材14には複数の裸線支持部141と複数の金具支持部142とが設けてある。本実施の形態における裸線支持部141は支持部材14の周縁部に設けられた切り欠きである。本実施の形態における金具支持部142は支持部材14を貫通する貫通孔である。裸線支持部141及び金具支持部142は支持部材14の長手方向の両端部に配されている。
【0048】
支持部材14は、電気抵抗部材43の抵抗本体433に電気的に接続されるようにして、ハウジング2に取り付けられている。
支持部材14のハウジング2への取り付けのために、支持部材14には例えば取付板143が設けてある。取付板143は支持部材14の周縁部から支持部材14に垂直に突出している。取付板143には貫通孔が設けられている。
【0049】
図4に示すように、取付板143は、取付板143の貫通孔を下側から貫通したボルト46がインサートナット45に螺合することによって、筒体21の下端部に取り付けられている。このとき、支持部材14は取付板143よりも下に位置するように、且つ長手方向が支持杆11の長さ方向及び上下方向夫々に垂直になるように配される。ボルト46の頭部と支持部材14の取付板143との間には2つのワッシャ47が介在している。一方のワッシャ47は平ワッシャであり、他方のワッシャ47はバネワッシャである。
ボルト46及びワッシャ47夫々は導電性を有し、例えば金属製である。
【0050】
図3に示すように、支持金具13、支持部材14、及びハウジング2は、噴霧ノズル12から十分に離隔している。故に、これらが噴霧ノズル12からの薬液の噴霧を阻害する虞も、これらに付着した薬液が噴霧ノズル12へ流入する虞もない。
【0051】
図1図3に示すように、静電噴霧装置1は複数本の帯電部15を備える。帯電部15は条状をなし、例えばステンレスワイヤのような金属製の裸線である。
帯電部15は、支持杆11に平行に延びるようにして、複数の支持部材14に架け渡されている。
【0052】
本実施の形態では、各帯電部15が互いに隣り合う2つの支持部材14に架け渡されている。帯電部15の一端部は一方の支持部材14の裸線支持部141に通されて支持部材14に係止してある。同様に、帯電部15の他端部が他方の支持部材14に係止してある。或いは、帯電部15の両端部夫々に接続金具151が設けられており、接続金具151が支持部材14の金具支持部142に通されて支持部材14に取り付けられている。
【0053】
本実施の形態では、2本(又は4本)の帯電部15が、噴霧ノズル12からの噴霧領域(不図示)を介在して1本ずつ(又は2本ずつ)互いに離隔して配されている。噴霧領域は、例えば噴霧ノズル12の噴霧口を頂点とする円錐状又は扇状である。
なお、帯電部15が3つ以上の支持部材14に架け渡されてもよい。また、1本の帯電部15がU字状に配され、帯電部15の往路及び復路が、噴霧ノズル12からの噴霧領域を介在して離隔配置されていてもよい。
【0054】
帯電部15は、噴霧ノズル12からの薬液の噴霧を阻害したり帯電部15に付着した薬液が噴霧ノズル12へ流入したりすることがない距離だけ、噴霧ノズル12から離されている。また、帯電部15は、噴霧ノズル12から噴霧される薬液を十分に誘導帯電させることが可能であるように、噴霧ノズル12の噴射領域の近傍に配されている。
【0055】
図2に示すように、静電噴霧装置1は高圧電源16を備える。
高圧電源16は、例えば直流電圧を出力するバッテリ、及び、バッテリの出力を昇圧する昇圧回路等を備え、車両10に搭載されている。高圧電源16の負側の出力端子は、図示しないアース線を介して接地される。高圧電源16の正側の出力端子は、第1の給電線41の一端部に接続されている。
【0056】
第1の給電線41の他端部は、高圧電源16に最も近い位置にある第1のハウジング2に引き込まれている。第1の給電線41とは異なる第2の給電線41の一端部は第1のハウジング2に引き込まれており、第1のハウジング2の内部にて、第1の給電線41の他端部に電気的に接続されている(図4参照)。
第2の給電線41の他端部は、第1のハウジング2に隣り合う第2のハウジング2に引き込まれている。第1及び第2の給電線41とは異なる第3の給電線41の一端部は第2のハウジング2に引き込まれており、第2のハウジング2の内部にて、第2の給電線41の他端部に電気的に接続されている。
同様に、第3の給電線41の他端部は第3のハウジング2に引き込まれている。
【0057】
給電線41から帯電部15に給電され、帯電部15は薬液を帯電させるための正電極として機能する。給電線41から帯電部15への給電経路は、図4に示すように、弾性部材42、電気抵抗部材43、シールプラグ44、インサートナット45、ボルト46、ワッシャ47、取付板143、及び支持部材14によって構成されている。
帯電部15は絶縁体によって被覆されておらず、帯電部15の表面に電流が流れるので、噴霧ノズル12から噴霧される薬液は十分に帯電される。
【0058】
各噴霧ノズル12は下向きなので、噴霧ノズル12から噴霧された薬液は作物に向けて拡散する。帯電部15は正電極なので、噴霧ノズル12から噴霧される薬液には負の電荷が与えられる。作物の近傍に負電荷が存在すると、作物は、例えば葉の表面及び裏面夫々が正に、葉の内部が負になるように分極する。このため、負に帯電している薬液が作物にひきつけられて、葉の表面にも裏面にも満遍なく付着する。
【0059】
電気抵抗部材43の電気抵抗より、帯電部15を流れる電流は、給電線41を流れる電流よりも弱い。故に、人間が帯電部15に触れることによる感電時の衝撃が抑制される。即ち、安全性が高い。
給電線41の導体411及び弾性部材42は何れもハウジング2に水密に収容されているので、ハウジング2に浸入した薬液を通して導体411又は弾性部材42から漏電することが防止される。
【0060】
帯電部15及び帯電部15への給電経路は地面から絶縁されている。例えば風に流された薬液の滴が静電噴霧装置1の各部の表面に付着することにより、液膜が広範囲にわたって形成されたとしても、帯電部15に流れるべき電流が液膜を通って地絡する虞はない。この理由を以下に述べる。
【0061】
筒体21の軸長方向の中途が拡径部315に覆われる。拡径部315は開口側が内側カバー22の内側に向くようにして内側カバー22に覆われる。内側カバー22は開口側が外側カバー3の内側に向くようにして外側カバー3に覆われる。つまり、筒体21の軸長方向の中途は3重に覆われている。故に、例えば風に流された液滴が筒体21の軸長方向の中途に付着することを防止することができる。
【0062】
外側カバー3の内面又は内側カバー22の外面には薬液が比較的付着しやすい。しかしながら、外側カバー3の内面から拡径部315の外面を伝って筒体21の軸長方向の中途に至るまでの経路は長く複雑である。同様に、内側カバー22の外面から内側カバー22の内面を伝って筒体21の軸長方向の中途に至るまでの経路は長く複雑である。故に、外側カバー3又は内側カバー22から筒体21の軸長方向の中途に液滴が流れ着くことを防止することができる。
【0063】
本実施の形態では外側カバー3が下向きに開口するので、内側カバー22は上向きに開口し、拡径部315は下向きに開口する。噴霧ノズル12が下向きに噴霧するので、空気中を漂う液滴は上向きに流されにくく、外側カバー3の内側に浸入しにくい。外側カバー3の内側に浸入した液滴が内側カバー22の内側にまで浸入したとしても、更に上向きに流されて拡径部315の内側に浸入することはない。故に、液滴が拡径部315の内面又は筒体21の軸長方向の中途に付着する虞はない。
【0064】
更に、内側カバー22に排液口223が設けられているので、内側カバー22の内側に浸入した薬液を、排液口223を通して内側カバー22の外側に排出することができる。故に、内側カバー22の内側に薬液が貯留されて筒体21の軸長方向の中途が水没する虞がない。なお、薬液が排液口223を通して内側カバー22の内側に浸入することを抑制するために、例えば微細なメッシュ状の排液口223を設けることが考えられる。
【0065】
更にまた、周壁部材32を底壁部材31から取り外すことにより、外側カバー3の内外を容易に清拭したり乾燥させたりすることができる。同様に、内側カバー22を筒体21から取り外すことにより、分解することにより、内側カバー22の内外及び筒体21の外周面を、容易に清拭したり乾燥させたりすることができる。
【0066】
筒体21の上端部は外側カバー3に取り付けられ、外側カバー3は支持金具13を介して支持杆11に取り付けられるので、筒体21の上端部側に形成される液膜は地面に電気的に接続され得る。帯電部15への給電経路の一部(インサートナット45、ボルト46、ワッシャ47、及び支持部材14)が、筒体21の下端部に保持されるので、筒体21の下端部側に形成される液膜は、帯電部15又は帯電部15への給電経路に電気的に接続され得る。ところが、筒体21の軸長方向の中途には液膜が形成されないので、帯電部15又は帯電部15への給電経路が液膜を通して地面に電気的に接続されることを防止することができる。帯電部15に流れるべき電流が液膜を通って地絡することがないので、薬液を十分に帯電させることができる。
【0067】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0068】
1 静電噴霧装置
3 外側カバー
11 支持杆
12 噴霧ノズル
15 帯電部
21 筒体
22 内側カバー
223 排液口
315 拡径部(浸水防止部)
45 インサートナット(帯電部への給電経路の一部を構成する部材)
46 ボルト(帯電部への給電経路の一部を構成する部材)
47 ワッシャ(帯電部への給電経路の一部を構成する部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6