(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】周波数ホッピングを使用してドローンの存在を検知し、監視し、軽減するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
H04B 1/713 20110101AFI20240826BHJP
【FI】
H04B1/713
(21)【出願番号】P 2021570407
(86)(22)【出願日】2020-05-28
(86)【国際出願番号】 US2020034969
(87)【国際公開番号】W WO2020243340
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-05-09
(32)【優先日】2019-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521495552
【氏名又は名称】スカイセーフ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロー、ブランドン ファン-シュアン
(72)【発明者】
【氏名】トーボーグ、スコット
(72)【発明者】
【氏名】イェン、チュン キン オ
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-204186(JP,A)
【文献】国際公開第2018/170739(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0148332(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0081355(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/713 - 1/7143
H04K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又は複数のドローンの存在を検知するシステムであって、
第1のドローンと第1のドローンコントローラとの間で送信される第1のRF信号を受信するように構成された無線周波数(RF)受信機であって、前記第1のRF信号は、複数の第1の周波数ホッピングパラメータによって定義される第1の周波数ホッピングシーケンスを含む、無線周波数(RF)受信機と、
プロセッサと、
コンピュータ可読メモリと、を備え、
前記コンピュータ可読メモリは、
前記プロセッサと通信し、少なくとも1つのプロセッサに、
ある時間間隔でRF受信機から前記第1のRF信号のサンプルを含むサンプルのセットを受信し、
前記第1の周波数ホッピングパラメータのパラメータモデルを取得し、
前記サンプルのセットから第1の複数のサンプルをランダムに選択すること、前記選択された第1の複数のサンプルに基づいて前記複数の第1の周波数ホッピングパラメータを推定すること、前記推定された複数の第1の周波数ホッピングパラメータに基づいて前記パラメータモデルの第1のインスタンスを構築すること、及び、前記第1の複数のサンプルと前記パラメータモデルの前記構築された第1のインスタンスとの間のフィッティング誤差を評価することによって、前記第1の複数のサンプルを正常値又は外れ値として分類すること、を繰り返すことにより、前記パラメータモデルをサンプルのセットに当てはめ、
前記パラメータモデルの前記構築された第1のインスタンスの各々
に対する前記正常値及び前記外れ値に基づいて前記パラメータモデルの前記第1のインスタンスの1つを選択し、
前記パラメータモデルの前記選択された第1のインスタンスに基づいて前記第1のドローンを特定する、
動作を実行させるコンピュータ実行可能命令を記憶する、
システム。
【請求項2】
前記RF受信機は、第2のドローンと第2のドローンコントローラとの間で送信される第2のRF信号を受信するようにさらに構成され、前記第2のRF信号は、複数の第2の周波数ホッピングパラメータによって定義される第2の周波数ホッピングシーケンスを含み、前記サンプルのセットは前記第2のRF信号のサンプルをさらに含み、
前記コンピュータ可読メモリは、前記少なくとも1つのプロセッサに、
前記パラメータモデルを、前記パラメータモデルの前記選択されたインスタンスにフィットしない外れ値に対応するサンプルのセットのサブセットに当てはめることであって、前記サブセットから第2の複数のサンプルをランダムに選択すること、前記選択された第2の複数のサンプルに基づいて前記複数の第2の周波数ホッピングパラメータを推定すること、前記推定された複数の第2の周波数ホッピングパラメータに基づいて前記パラメータモデルの第2のインスタンスを構築すること、及び、前記第2の複数のサンプルと前記パラメータモデルの第2のインスタンスとの間のフィッティング誤差を評価することにより、前記第2の複数のサンプルを正常値又は外れ値として分類すること、を繰り返すことにより、前記パラメータモデルを外れ値に対応するサンプルのセットのサブセットに当てはめることと、
前記パラメータモデルの前記構築された第2のインスタンスの各々
に対する前記正常値及び外れ値に基づいて前記パラメータモデルの前記第2のインスタンスの1つを選択することと、
前記パラメータモデルの前記選択された第2のインスタンスに基づいて前記第2のドローンを特定することと、
を実行させる、コンピュータ実行可能命令をさらに記憶する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記複数の
第1の周波数ホッピングパラメータを推定することは、予め定めたチャンネル中心周波数のセットにさらに基づいている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記複数の
第1の周波数ホッピングパラメータは、最初のホップの開始時間、2つの隣接ホップ間のホップ周期、初期時間後の最初のホップの開始周波数、2つの隣接ホップ間の周波数差、及びチャンネル数を含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1の複数のサンプルを正常値又は外れ値として分類することは、
前記パラメータモデルの前記構築された第1のインスタンスに基づいて、前記第1の複数のサンプルの各サンプルに対して時間フィッティング誤差及び周波数フィッティング誤差を決定することと、
対応するサンプルの前記時間フィッティング誤差及び前記周波数フィッティング誤差に基づいて、前記第1の複数のサンプルの各サンプルに対して複合フィッティング誤差を決定することと、
対応する前記複合フィッティング誤差の比較に基づいて、前記第1の複数のサンプルの各サンプルを前記正常値又は前記外れ値として分類することと、を含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
最大数の正常値を有する前記パラメータモデルの前記構築された第1のインスタンスが選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記パラメータモデルは、線形周波数ホッピングシーケンス、擬似ランダム周波数ホッピングシーケンス、非線形周波数ホッピングシーケンス、及び任意の線形周波数ホッピングシーケンスのうちの1つのモデルを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記推定された複数の
第1の周波数ホッピングパラメータを受信し、前記推定された複数の
第1の周波数ホッピングパラメータに基づいて、前記第1のドローンと前記第1のドローンコントローラとの間の通信を妨害するための妨害RF信号を生成するように構成された妨害装置をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
ドローンの存在を検知する方法であって、
ある時間間隔でサンプルのセットを受信することであって、前記サンプルのセットは第1のドローンと第1のドローンコントローラとの間で送信される第1のRF信号のサンプルを含み、前記第1のRF信号は、複数の第1の周波数ホッピングパラメータによって定義される第1の周波数ホッピングシーケンスを含み、
前記第1の周波数ホッピングパラメータのパラメータモデルを取得することと、
前記パラメータモデルを前記サンプルのセットに当てはめることであって、前記サンプルのセットから第1の複数の前記サンプルをランダムに選択すること、前記選択された第1の複数の前記サンプルに基づいて前記複数の第1の周波数ホッピングパラメータを推定すること、前記推定された複数の第1の周波数ホッピングパラメータに基づいて前記パラメータモデルの第1のインスタンスを構築すること、及び、前記第1の複数の前記サンプルと前記パラメータモデルの前記構築された第1のインスタンスとの間のフィッティング誤差を評価することによって、前記第1の複数のサンプルを正常値又は外れ値として分類すること、を繰り返すことにより、前記パラメータモデルを前記サンプルのセットに当てはめることと、
前記パラメータモデルの前記構築された第1のインスタンスの各々
に対する前記正常値及び外れ値に基づいて、前記パラメータモデルの前記第1のインスタンスのうちの1つを選択することと、
前記パラメータモデルの前記選択された第1のインスタンスに基づいて前記第1のドローンを特定することと、
を含む方法。
【請求項10】
前記サンプルのセットは、第2のドローンと第2のドローンコントローラとの間で送信される第2のRF信号のサンプルをさらに含み、前記第2のRF信号は、複数の第2の周波数ホッピングパラメータによって定義される第2の周波数ホッピングシーケンスを含み、
前記パラメータモデルを、前記パラメータモデルの前記選択されたインスタンスにフィットしない外れ値に対応するサンプルのセットのサブセットに当てはめることであって、前記サブセットから第2の複数のサンプルをランダムに選択すること、前記選択された第2の複数のサンプルに基づいて前記複数の第2の周波数ホッピングパラメータを推定すること、前記推定された複数の第2の周波数ホッピングパラメータに基づいて前記パラメータモデルの第2のインスタンスを構築すること、及び、前記第2の複数のサンプルと前記パラメータモデルの第2のインスタンスとの間のフィッティング誤差を評価することにより、前記第2の複数のサンプルを正常値又は外れ値として分類すること、を繰り返すことにより、前記パラメータモデルを外れ値に対応するサンプルのセットのサブセットに当てはめることと、
前記パラメータモデルの前記構築された第2のインスタンスの各々
に対する前記正常値及び前記外れ値に基づいて前記パラメータモデルの前記第2のインスタンスの1つを選択することと、
前記パラメータモデルの前記選択された第2のインスタンスに基づいて前記第2のドローンを特定することと、
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記複数の
第1の周波数ホッピングパラメータを推定することは、予め定めたチャンネル中心周波数のセットにさらに基づいている、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記複数の
第1の周波数ホッピングパラメータは、最初のホップの開始時間、2つの隣接ホップ間のホップ周期、初期時間後の最初のホップの開始周波数、2つの隣接ホップ間の周波数差、及びチャンネル数を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の複数のサンプルを正常値又は外れ値として分類することは、
前記パラメータモデルの前記構築された第1のインスタンスに基づいて、前記第1の複数のサンプルの各サンプルに対して時間フィッティング誤差及び周波数フィッティング誤差を決定することと、
対応するサンプルの前記時間フィッティング誤差及び前記周波数フィッティング誤差に基づいて、前記第1の複数のサンプルの各サンプルに対して複合フィッティング誤差を決定することと、
対応する前記複合フィッティング誤差の比較に基づいて、前記第1の複数のサンプルの各サンプルを前記正常値又は前記外れ値として分類することと、を含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項14】
最大数の正常値を有する前記パラメータモデルの前記構築された第1のインスタンスが選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記パラメータモデルは、線形周波数ホッピングシーケンス、擬似ランダム周波数ホッピングシーケンス、非線形周波数ホッピングシーケンス、及び任意の線形周波数ホッピングシーケンスのうちの1つのモデルを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
コンピュータ装置に、
ある時間間隔でRF受信機から第1のRF信号のサンプルを含むサンプルのセットを受信し、
第1の周波数ホッピングパラメータのパラメータモデルを取得し、
前記サンプルのセットから第1の複数のサンプルをランダムに選択すること、前記選択された第1の複数のサンプルに基づいて
複数の第1の周波数ホッピングパラメータを推定すること、前記推定された複数の第1の周波数ホッピングパラメータに基づいて前記パラメータモデルの第1のインスタンスを構築すること、及び、前記第1の複数のサンプルと前記パラメータモデルの前記構築された第1のインスタンスとの間のフィッティング誤差を評価することによって、前記第1の複数のサンプルを正常値又は外れ値として分類すること、を繰り返すことにより、前記パラメータモデルをサンプルのセットに当てはめ、
前記パラメータモデルの前記構築された第1のインスタンスの各々
に対する前記正常値及び外れ値に基づいて前記パラメータモデルの前記第1のインスタンスの1つを選択し、
前記パラメータモデルの前記選択された第1のインスタンスに基づいて第1のドローンを特定する、
各手順を実行させるためのプログラム。
【請求項17】
前記サンプルのセットは、第2のドローンと第2のドローンコントローラとの間で送信される第2のRF信号のサンプルをさらに含み、前記第2のRF信号は、複数の第2の周波数ホッピングパラメータによって定義される第2の周波数ホッピングシーケンスを含み、
前記コンピュータ装置に、
前記パラメータモデルを、前記パラメータモデルの前記選択されたインスタンスにフィットしない外れ値に対応するサンプルのセットのサブセットに当てはめることであって、前記サブセットから第2の複数のサンプルをランダムに選択すること、前記選択された第2の複数のサンプルに基づいて前記複数の第2の周波数ホッピングパラメータを推定すること、前記推定された複数の第2の周波数ホッピングパラメータに基づいて前記パラメータモデルの第2のインスタンスを構築すること、及び、前記第2の複数のサンプルと前記パラメータモデルの第2のインスタンスとの間のフィッティング誤差を評価することにより、前記第2の複数のサンプルを正常値又は外れ値として分類すること、を繰り返すことにより、前記パラメータモデルを外れ値に対応するサンプルのセットのサブセットに当てはめることと、
前記パラメータモデルの前記構築された第2のインスタンスの各々
に対する前記正常値及び外れ値に基づいて前記パラメータモデルの前記第2のインスタンスの1つを選択することと、
前記パラメータモデルの前記選択された第2のインスタンスに基づいて前記第2のドローンを特定することと、
をさらに実行させるための、
請求項16に記載の
プログラム。
【請求項18】
前記複数の
第1の周波数ホッピングパラメータを推定することは、予め定めたチャンネル中心周波数のセットにさらに基づいている、請求項16に記載の
プログラム。
【請求項19】
前記複数の
第1の周波数ホッピングパラメータは、最初のホップの開始時間、2つの隣接ホップ間のホップ周期、初期時間後の最初のホップの開始周波数、2つの隣接ホップ間の周波数差、及びチャンネル数を含む、請求項18に記載の
プログラム。
【請求項20】
前記第1の複数のサンプルを正常値又は外れ値として分類することは、
前記パラメータモデルの前記構築された第1のインスタンスに基づいて、前記第1の複数のサンプルの各サンプルに対して時間フィッティング誤差及び周波数フィッティング誤差を決定することと、
対応するサンプルの前記時間フィッティング誤差及び前記周波数フィッティング誤差に基づいて、前記第1の複数のサンプルの各サンプルに対して複合フィッティング誤差を決定することと、
対応する前記複合フィッティング誤差の比較に基づいて、前記第1の複数のサンプルの各サンプルを前記正常値又は前記外れ値として分類することと、を含む、
請求項16に記載の
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願との相互参照)
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、令和1年5月29日に出願された米国仮出願第62/921,033号の利益を主張する。
【0002】
本明細書で開示されるシステム及び方法はドローンの存在を検知し、監視し、軽減することを対象とする。より詳細には、このシステム及び方法は、無線周波数通信を採用する複数のドローンの存在を検知するために使用することができる。
【背景技術】
【0003】
近年、無人航空機システム(UAS)(ドローンとしてより一般的に知られている)は、空撮、農業、製品配送、インフラ点検、航空ライトショー、及び趣味のドローンレースにわたる多数のエキサイティングでクリエイティブな用途で幅広く使用されている。多くの用途におけるドローンの有用性にもかかわらず、それらはまた、セキュリティ、安全性、及びプライバシーに関する懸念を増大させる。ドローンは、国境を越えて武器や薬物を密輸するために使用されている。空港の近くでドローンを使用することは、安全上の懸念を提示し、周囲の空域が確保されるまで空港を閉鎖しなければならなくなる可能性がある。また、ドローンは、企業や国家のスパイ活動のツールとしても使用されている。したがって、ドローンを検知し、監視し、必要に応じてドローンの脅威を軽減する効果的な対無人機システム(CUAS)ソリューションが求められている。
【発明の概要】
【0004】
本開示のシステム、方法、及び装置はそれぞれ、いくつかの革新的な態様を有し、そのうちの1つだけが、本明細書で開示される望ましい属性に単独で関与するわけではない。
【0005】
一態様では、1つ又は複数のドローンの存在を検知するためのシステムが提供される。このシステムは、第1のドローンと第1のドローンコントローラとの間で送信される第1のRF信号を受信するように構成された無線周波数(RF)受信機であって、第1のRF信号は、複数の第1の周波数ホッピングパラメータによって定義される第1の周波数ホッピングシーケンスを含む、無線周波数(RF)受信機と、プロセッサと、コンピュータ可読メモリと、を備える。コンピュータ可読メモリは、プロセッサと通信し、少なくとも1つのプロセッサに、ある時間間隔でRF受信機から第1のRF信号のサンプルを含むサンプルのセットを受信し、第1の周波数ホッピングパラメータのパラメータモデルを取得し、サンプルのセットから第1の複数のサンプルをランダムに選択すること、選択された第1の複数のサンプルに基づいて複数の第1の周波数ホッピングパラメータを推定すること、推定された複数の第1の周波数ホッピングパラメータに基づいてパラメータモデルの第1のインスタンスを構築すること、及び、第1の複数のサンプルと前記パラメータモデルの構築された第1のインスタンスとの間のフィッティング誤差を評価することによって、第1の複数のサンプルを正常値又は外れ値として分類すること、を繰り返すことによりパラメータモデルをサンプルのセットに当てはめ、パラメータモデルの構築された第1のインスタンスの各々に対して正常値及び外れ値に基づいてパラメータモデルの第1のインスタンスの1つを選択し、パラメータモデルの選択された第1のインスタンスに基づいて第1のドローンを特定する、動作を実行させるコンピュータ実行可能命令が記憶されている。
【0006】
別の態様では、ドローンの存在を検知する方法が提供される。この方法は、ある時間間隔でサンプルのセットを受信することであって、サンプルのセットは第1のドローンと第1のドローンコントローラとの間で送信される第1のRF信号のサンプルを含み、第1のRF信号は、複数の第1の周波数ホッピングパラメータによって定義される第1の周波数ホッピングシーケンスを含む、ある時間間隔でサンプルのセットを受信することと、第1の周波数ホッピングパラメータのパラメータモデルを取得することと、(サンプルのセットから第1の複数のサンプルをランダムに選択すること、選択された第1の複数のサンプルに基づいて複数の第1の周波数ホッピングパラメータを推定すること、推定された複数の第1の周波数ホッピングパラメータに基づいてパラメータモデルの第1のインスタンスを構築すること、及び、第1の複数のサンプルとパラメータモデルの構築された第1のインスタンスとの間のフィッティング誤差を評価することによって、第1の複数のサンプルを正常値又は外れ値として分類すること、を繰り返すことにより)パラメータモデルをサンプルのセットに当てはめることと、パラメータモデルの構築された第1のインスタンスの各々に対して正常値及び外れ値に基づいて、パラメータモデルの第1のインスタンスのうちの1つを選択することと、パラメータモデルの選択された第1のインスタンスに基づいて第1のドローンを特定することと、を含む。
【0007】
さらに別の態様では、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体が提供される。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、実行されると、コンピュータ装置に、ある時間間隔でRF受信機から第1のRF信号のサンプルを含むサンプルのセットを受信し、第1の周波数ホッピングパラメータのパラメータモデルを取得し、(サンプルのセットから第1の複数のサンプルをランダムに選択すること、選択された第1の複数のサンプルに基づいて複数の第1の周波数ホッピングパラメータを推定すること、推定された複数の第1の周波数ホッピングパラメータに基づいてパラメータモデルの第1のインスタンスを構築すること、及び、第1の複数のサンプルとパラメータモデルの構築された第1のインスタンスとの間のフィッティング誤差を評価することによって、第1の複数のサンプルを正常値又は外れ値として分類すること、を繰り返すことにより)パラメータモデルをサンプルのセットに当てはめ、パラメータモデルの構築された第1のインスタンスの各々に対して正常値及び外れ値に基づいてパラメータモデルの第1のインスタンスの1つを選択し、パラメータモデルの選択された第1のインスタンスに基づいて第1のドローンを特定する、動作を行わせる命令を記憶している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の態様による、ドローン検知システムを含む例示的な環境を示す図である。
【
図2A】
図2Aは本開示の態様による、ドローンを検知し、監視し、及び/又は軽減するために使用され得る、
図1からの例示的なドローン検知システムを示す図である。
【
図2B】
図2Bは、本開示の態様による、
図2Aのドローン検知システムを用いて検知され得る、
図1からのドローンの例を示す図である。
【
図2C】
図2Cは、本開示の態様による、ドローンを制御するために使用することができる、
図1からの例示的なコントローラを示す図である。
【
図2D】
図2Dは、本開示の態様による、1つ又は複数のドローンの存在を検知するために使用され得る別の例示的なドローン検知システムを示す図である。
【
図2E】
図2Eは、本開示の態様による、2つの異なるドローンによって使用される周波数ホッピングシーケンスの例を示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の態様による、ドローンの存在を検知する方法を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の態様による、パラメータモデルのパラメータを推定する方法を示す図である。
【
図5】
図5は、1つ又は複数のドローンを監視するためにドローン検知システムによって実行され得る例示的な方法を示す図である。
【
図6】
図6は、1つ又は複数のドローンを軽減するためにドローン検知システムによって実行され得る例示的な方法を示す図である。
【
図7】
図7は、HopSAC推定器とLS推定器において、グロス誤差やタイミング誤差がない場合の様々な入力サンプル数に対する検知確率を示すグラフである。
【
図8】
図8は、グロス誤差の影響下での検知確率を示すグラフである。
【
図9】
図9は、タイミング誤差の分散の増加におけるタイミング誤差の影響下での、本明細書に開示される技術の実施形態の検知確率と最小二乗(LS)推定量とを示す図である。
【
図10】
図10は、入力サンプルに現れる様々なターゲット数に対するターゲット検知確率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
近年、産業、商業、及び消費者領域におけるドローン用途の急速な成長は、セキュリティ、安全性、及びプライバシーに関する大きな懸念を引き起こしている。このため、ドローンの検知、監視、及び軽減のためのシステム及び技術に対する需要が増大している。
【0010】
CUASシステム(又は、単に「ドローン検知システム」)は、複数の段階を使用して動作することができる。第1段階では、ドローン検知システムは、ドローンの存在を検知し、ドローンが敵か味方かを判断する。ドローン検知システムは、ドローンとコントローラとの間で交換される信号を傍受又は監視することにより、これを達成することができる。特定のドローンは、周波数ホッピングプロトコルを使用してコントローラと無線通信するように構成され得る。本開示の特定の態様は、ドローンとコントローラとの間の周波数ホッピングベースの通信をモデル化するために使用され得る周波数ホッピングパラメータを検知することに関連していてもよい。
【0011】
娯楽用途や商業用途で広く使用されている小型ドローンは、近年、頻繁に報告されている無許可ドローン事件のために、公共の安全及び国土安全保障に関する警戒すべき懸念を引き起こしてきた。周波数ホッピングを行うドローンやコントローラからの潜在的な脅威を効果的に無効化する目的で、ドローン検知システムは、リアルタイムに対応するために、周波数ホッピング信号のパラメータを高精度かつ低複雑度で推定するように構成されてもよい。
【0012】
したがって、ドローン検知システムにおいて、これらのすべての要件を満たすためのモデルパラメータ推定法を提供することが望ましい。本開示の態様は、上述の課題に対処するための、ランダムサンプルコンセンサス(それは「HopSAC」と称される)に基づくホッピングパラメータ推定方法に関するものである。有利なことに、本開示の態様は、比較的少ないサンプルのセット(いくつかの例ではわずか2つのサンプル)を使用して、リアルタイムで周波数ホッピングパラメータを正確に推定することができる。一例では、本明細書に開示される方法は、線形周波数ホッピングシーケンスのパラメータを推定し、リアルタイムで実現可能な低い実装複雑度で高いマルチターゲット検知性能を達成することができる。シミュレーション結果は、本明細書で説明する推定技術が、グロス誤差、タイミング誤差、及び/又は複数のドローンターゲットの影響下において、モデルパラメータ推定の並外れた精度を達成する点で、線形最小二乗法よりも著しく優れていることを示した。
【0013】
図1は、本開示の態様によるドローン検知システム101を含む例示的な環境100を示す。特定の実施形態では、環境100は、ドローン検知システム101と、1つ又は複数のドローン103A~103Nと、1つ又は複数のドローンコントローラ105A~105N(又は、単に「コントローラ」)とを含む。1つ又は複数のドローン103A~103Nの一例を
図2Bに示す。1つ又は複数のコントローラ105A~105Nの一例を
図2Cに示す。
【0014】
特定の実施形態では、ドローン103A~103Nの各々は、RF信号107A~107Nを介してコントローラ105A~105Nの対応する1つと通信するように構成される。図示されていないが、いくつかの実施形態では、コントローラ105A~105Nのうちの単一のコントローラが、ドローン103A~103Nのうちの2つ以上を制御するように構成されてもよい。
【0015】
ドローン検知システム101は、ドローン103A~103Nの存在を検知するために、ドローン103A~103Nとコントローラ105A~105Nとの間の通信の監視109A~109Nを受信するように構成される。例えば、ドローン検知システム101は、ドローン103A~103Nとコントローラ105A~105Nとの間の通信を監視109A~109Nするために、ドローン103A~103Nとコントローラ105A~105Nとの間で送信されるRF信号107A~107Nを受信するように構成され得る。特定の実施形態では、ドローン検知システム101がRF信号107A~107Nを復号することができると、ドローン検知システム101は、ドローン103A~103Nを監視し、ドローン103A~103Nの潜在的な脅威を軽減するために特定の動作を行うことができる。例えば、
図6に関して説明されるように、ドローン検知システム101は、検知されたドローン103A~103Nとコントローラ105A~105Nとの間の通信を妨害するために、妨害RF信号を送信することができるし、及び/又は、ドローン103A~103Nに着陸又はその他の方法で環境100から離れるようにコマンドを送信することによって、コントローラ105A~105Nになりすますことができる。
【0016】
図2Aは、本開示の態様による、1つ又は複数のドローン103A~103Nの存在を検知するために使用され得る例示的なドローン検知システム101を示す。特定の実施形態では、ドローン検知システム101は、プロセッサ111と、メモリ113と、フロントエンド115と、複数の送信アンテナ117A~117Nと、複数の受信アンテナ119A~119Nとを含む。他の実施形態では、アンテナ117A~119Nのうちの1つ又は複数を、信号の送信及び受信の両方に使用することができる。
【0017】
特定の実施形態では、ドローン検知システム101は、受信アンテナ119A~119Nのうちの1つを介してRF信号(例えば、
図1のRF信号107A~107N)を受信するように構成される。受信アンテナ119A~119Nのうちの1つは、受信したRF信号をフロントエンド115に供給する。特定の実施形態では、フロントエンド115は、受信したRF信号をプロセッサ111が読み取り可能なフォーマットに処理することができる。例えば、特定の実施形態では、フロントエンド115は、受信されたRF信号に対して、フィルタリング、増幅、アナログ-デジタル変換などの動作のうちの1つ又は複数を実行することができる。
【0018】
特定の実施形態では、メモリ113は、受信アンテナ119A~119Nを介して受信されたRF信号に基づいて、プロセッサ111にドローン(例えば、
図1のドローン103A~103N)の存在を検知させるためのコンピュータ可読命令を記憶することができる。さらに、特定の実施形態では、ドローン検知システム101は、検知されたドローン(複数可)に送信される信号(例えば、妨害信号又はRF通信信号)をフロントエンド115に供給するように構成することもできる。次に、フロントエンド115は、処理された信号を送信アンテナ117A~117Nのうちの1つ又は複数に供給する前に、プロセッサ111から受信した信号を処理することができる。
【0019】
ドローン検知システム101がドローン103A~103Nの存在を検知するために使用することができる多くの異なる技術がある。例えば、ドローン検知システム101は、ドローン103A~103Nの特定のモデル(複数可)によって使用されることが知られている周波数の電波を走査することができる。既知のプロトコルが識別された場合、ドローン検知システム101は、次に、意図された受信機/コントローラ105A~105Nであるかのように信号を復号することができる。実施形態によっては、これらの復号ステップは、同期、チャンネル推定、デインタリーブ、デスクランブル、復調、及びエラー制御復号を含むことができる。特定の実施形態では、ドローン検知システム101は、コントローラ105A~105Nによって知られている情報に関する知識(装置IDなど)の欠如のために、前述のステップのいくつかをブラインドで実行するように構成することができる。以下に説明するように、特定の通信プロトコル(例えば、同期信号)を使用するドローン103A~103Nのブラインド検知が、本明細書で提供される。ドローンが検知されると、ドローン検知システム101は、1つ又は複数のドローン103A~103Nの存在に関する警告(複数可)を提供することができる。
【0020】
ドローン検知システム101は、1つ又は複数のドローン103A~103Nの存在を監視することができる。監視の一部として、環境100に対する1つ又は複数のドローン103A~103Nの位置をリアルタイムで監視して、1つ又は複数のドローン103A~103Nの位置が許容空域の内側又は外側にはみ出すかどうかを判断することができる。
【0021】
また、ドローン検知システム101によって取ることができる多数の軽減措置がある。例えば、1つ又は複数のドローン103A~103Nを検知した後、ドローン検知システム101は、
図6を参照して説明した動作のうちの1つ又は複数を行うことができる。例えば、特定の実施形態では、これらのアクションは、何もしない/監視し続けること、ドローン特有の妨害(drone-specific jamming)、広帯域妨害、及び制御の乗っ取りを含むことができる。
【0022】
図2Bは、本開示の態様による、ドローン検知システム101を用いて検知することができる例示的なドローン103を示す。特定の実施形態では、ドローン103は、1つ又は複数のプロペラ121、1つ又は複数のモータコントローラ123、バッテリ又は他の電源125、メモリ127、プロセッサ129、フロントエンド131、アンテナ133、及びカメラ135を含む。上述したように、アンテナ133は、コントローラ105(
図2C参照)からRF信号107を受信し、RF信号107をコントローラ105に戻すように構成されてもよい(例えば、カメラ135から得られた画像)。特定の実施形態では、アンテナ133から送信/受信されたRF信号107はプロセッサ129に/プロセッサ129から供給され、フロントエンド131によって処理される。特定の実施形態では、プロペラ(複数可)121は、ドローン103が空域を操縦するときに、ドローン103に揚力と提供し、ドローン103の動きを制御する。プロペラ(複数可)121はまた、各プロペラ121に個別に動力を供給するように構成された1つ又は複数のモータ(図示せず)を含むことができる。
【0023】
特定の実施形態では、モータコントローラ(複数可)123は、(例えば、メモリ127に格納された命令と、コントローラ105から受信されたRF信号107とに基づいて)プロセッサ129からドローン103を空域内の特定の地点に移動させる命令を受信し、受信した命令をプロペラ121に提供されるモータ位置コマンドに変換するように構成されている。特定の実施形態では、バッテリ125は、ドローン103の構成要素のそれぞれに電力を供給し、プロペラ121がドローン103を所定時間操縦することを可能にするのに十分な蓄電量を有している。カメラ135は、リアルタイムで画像を捕捉し、捕捉された画像を、ンテナ133を介してコントローラ105に提供することができ、これはユーザがドローン103の動きを制御するのを補助することができる。
【0024】
図2Cは、本開示の態様に従ってドローン103を制御するために使用され得る例示的なコントローラ105を示す。特定の実施形態では、コントローラ105は、メモリ141、プロセッサ143、フロントエンド145、アンテナ147、入力装置149、及びディスプレイ151を備える。上述したように、アンテナ147は、ドローン103(
図2B参照)からRF信号107(例えば、カメラ135から得られた画像)を受信し、ドローン103の動きを制御するために、RF信号107をドローン103に戻すように構成されてもよい。特定の実施形態では、アンテナ147から送信/受信されたRF信号107は、プロセッサ143へ/プロセッサ143から供給され、フロントエンド145によって処理される。特定の実施形態では、入力装置149は、ユーザからの入力を受け付けるように構成される。ユーザからの入力は、ドローン103の動きを制御するコマンドを生成するためにプロセッサ143によって使用され得る。特定の実施形態では、ディスプレイ151は、ドローン103から受信した画像をユーザに表示して、ドローン103の現在位置及びその環境100に関するフィードバックを提供するように構成される。いくつかの実施形態では、ディスプレイは、カメラ135によって取得された画像の一人称視点(first person view)を提供するために、ユーザによって着用される一対のゴーグルとして実装され得る。
【0025】
図2Dは、本開示の態様による、1つ又は複数のドローン103の存在を検知するために使用することができる別の例示的なドローン検知システム101を示す。特に、
図2Dに示すドローン検知システム101は、簡素化されたシステムモデルである。実装態様に応じて、ドローン検知システム101は、
図2Dに示されるよりも多いか又は少ない数の構成要素を含むことができる。ドローン検知システム101は、受信アンテナ119、受信機161、センサ/検出器163、HopSAC推定器165、妨害装置167、送信機169、及び送信アンテナ117を含む。
図2Dでは別個のブロックとして示されているが、ブロック161~169のうちの1つ又は複数は同じ構成要素(複数可)によって一緒に実装され得る。例えば、1つの実装形態では、受信機161、センサ/検出器163、妨害装置167、及び送信機169は、
図2Aに示すフロントエンド115によって実装され得る。一方、HopSAC推定器165は、
図2Aに示すプロセッサ111によって実装され得る。
【0026】
特定の実施形態では、ドローン検知システム101は、ドローン検知システム101の検知範囲内のすべてのドローン103及び/又はコントローラ105から広帯域周波数ホッピング信号を受信することができる。特定の実施形態では、ドローン検知システム101は、次に、前処理後に、受信された周波数ホッピング信号の各々の信号パラメータを、パルス記述子ワード(PDW:pulse descriptor words)の形態で記憶することができる。いくつかの実装形態では、前処理は、エミッタの種類や到来角度、パワースケルチ(power squelch)によるレベル制御、及び/又は整合フィルタリングによる相関のうちの1つ又は複数に基づいて、周波数ホッピング信号のクラスタを生成することを含むことができる。
【0027】
特定の実施形態では、センサ/検出器163は、時間
及び周波数
における周波数ホッピング信号のうちの所与の1つの存在を決定することができる。ここで、nは、時間-周波数サンプルのインデックスである。特定の実施形態では、センサ/検出器163は、パラメータ推定のために、T
s秒毎に時間-周波数サンプル
のセットをHopSAC推定器165に送信することができる。特定の実施形態では、HopSAC推定器165は、周波数ホッピングパラメータを推定し、妨害装置167を構成するために推定されたパラメータを提供することができる。特定の実施形態では、送信機169は、送信アンテナ117を介して反撃用の干渉信号を送信することができる。
【0028】
周波数ホッピングを用いたドローン(複数可)の検知
近年、ドローン103の使用は、それらの手頃さ及び汎用性のために人気を得ている。ドローン103はドローンレースのような娯楽飛行から、荷物の配送や不動産撮影のような商業利用まで、多くの用途で広く使用されている。FAA Forecastによれば、非モデル(商業用)ドローン103の使用は2018年から2023年にかけて3倍に増加するのに対し、モデル(娯楽用)ドローン103の使用は5年で125万台から139万台に増加するとされている。しかしながら、空港やスタジアム、国境付近でのドローン無許可の活動や事件が頻繁に報告されるようになり、公共の安全や国土安全保障に対する懸念が高まっている。したがって、効果的なドローン検知システム101は、ドローン103の不適切でかつ無許可の使用によって引き起こされる潜在的で差し迫った脅威を検知し、特定し、無効化するために、法執行機関及び軍隊にとって不可欠な機構となる。
【0029】
特定の実施形態において、ドローン検知システム101は、ドローン103及びコントローラ105が検知範囲内にあるときに、ドローン103及びコントローラ105から送信される任意の無線信号を検出し、時間的にいつ、周波数的にどこで受信信号が検出されたかを決定することができる。それにもかかわらず、時間及び周波数の情報は、誤差の影響を受ける。これらの誤差は、検知や測定の誤差、フェージングや干渉などのチャンネル障害、及び/又はキャリア周波数オフセットやタイミングジッタなどのハードウェア制限によって引き起こされ得るものである。ドローン103を検知する際の主な課題の1つは、これらのノイズの多い時間-周波数サンプルから周波数ホッピングパラメータを特定することである。これらのパラメータの推定は、複数のドローン103が検知範囲内に存在するマルチターゲットシナリオによってさらに複雑になる。
【0030】
周波数ホッピングパラメータ推定法には、動的計画法と低ランクトリリニア分解(low-rank trilinear decomposition)、スパース線形回帰、スパースベイズ法、直交マッチング追求など、様々な手法に基づくものがある。これらの手法は一般に、実装の複雑度が高く、リアルタイムで実行するのは困難である。したがって、応答時間が重要な制約となるリアルタイム用途には適していない。
【0031】
本開示の態様は、ランダムサンプルコンセンサスアルゴリズムに基づく周波数ホッピングパラメータ推定法(「HopSAC」と称さることがある)を使用して1つ又は複数のドローン103を検知するシステム及び方法に関するものである。ランダムサンプルコンセンサス(RANSAC)は、モデルを観測データに当てはめることによってモデルのパラメータを推定する手法である。RANSACと同様に、本明細書で説明される特定の方法は、サンプルの小さなサブセットのみでグロス誤差を除去するその優れた能力のために、線形最小二乗法(LS)法よりも性能が優れている。外れ値(outliers)としても知られるグロス誤差は、大多数の観測値から著しく逸脱したデータサンプルである。本明細書で説明される方法がグロス誤差を切り捨てる能力によって、ドローン検知システム101は、より低い信号対雑音比(SNR)での検知のために、より高い誤警報率を許容することが可能である。加えて、本明細書で説明される特定の方法は、タイミング誤差及び周波数誤差に対して非常にロバストであり、妨害装置167が時間的にはるかに正確なパルスを送信することを可能にし、したがって電力効率を改善し、巻き添え被害を低減する。
【0032】
本明細書で説明されるHopSAC技術の態様は、ドローン検知システム101が、周波数ホッピングするドローン及びコントローラのリアルタイムのパラメータ推定において、低い複雑度で推定精度の高い性能を実現するための効果的な方法を提供する。
【0033】
周波数ホッピング通信のモデル
周波数ホッピングパラメータの検出に使用されるシステム及び技術を説明するために、ドローン検知システム101は、ドローン103が通信に用いる線形ホッピングシーケンスの1つ又は複数のモデルを使用する。すなわち、ドローン103は、通信時に異なる周波数(又はチャンネル)間でホップするRF通信を使用してコントローラ105と通信する。前述したように、ドローン検知システム101の検知範囲内に複数のドローン103が存在していてもよい。
【0034】
図2Eは、本開示の態様による、2つの異なるドローン103によって使用される周波数ホッピングシーケンスの例を示す。
図2Eにおいて、赤色の点は第1の周波数ホッピングシーケンス181を示し、青色の点は第2の周波数ホッピングシーケンス183を示す。
図2Eに示すように、第1の周波数ホッピングシーケンス181及び第2の周波数ホッピングシーケンス183は、それぞれ、一定の時間周期で複数の周波数間をホップする。
【0035】
特定の実施形態では、周波数ホッピングシーケンスは、
図2Eに示す第1の周波数ホッピングシーケンス181及び第2の周波数ホッピングシーケンス183のような線形周波数ホッピングシーケンスであってもよい。線形周波数ホッピングシーケンスを使用してドローン103を検知するための技術は、本明細書において詳細に提供されるが、本開示の態様は、他のタイプの周波数ホッピングシーケンス、例えば、擬似ランダム周波数ホッピングシーケンス(例えば、線形フィードバックシフトレジスタ(LFSR)ベースの擬似ランダムホッピングシーケンス)、非線形周波数ホッピングシーケンス、任意の線形周波数ホッピングシーケンスなどにも適用することができる。
【0036】
図2Eに示す線形周波数ホッピングシーケンスのモデルは、2タプル(2-tuples)のシーケンスを表すx={x
n}と、周波数ホッピング信号の時間-周波数観測値を表す
と、を用いて記述することが可能である。ドローン103の送信時刻をt
n、周波数をf
nと定義すると、タイミング誤差は、
と定義することができ、周波数誤差は、
と定義することができる。タイミング誤差t
δ,nと周波数誤差f
δ,nとは、それぞれ分散σ
t
2と分散σ
f
2とを有する独立同一分布(i.i.d.)のゼロ平均ガウス変数であると仮定することができる。すなわち、t
δ,n~N(0,σ
t
2)とf
δ,n~N(0,σ
f
2)である。測定誤差に加えて、グロス誤差の発生はパラメータλを有するポアソン分布に従うと仮定することができ、ここでλは、時間間隔T
s当たりのグロス誤差の平均数であり、外れ値到着率(outlier arrival rate)と呼ぶことができる。従って、各サンプルx
nは、実際のターゲットドローンの送信である可能性もあれば、スプリアスソース又はハードウェア障害によって引き起こされた誤警報である可能性もある。周波数ホッピングを使用してドローン103の存在を効果的に検知するために、実際のターゲットドローン103の送信と誤警報とを区別することが重要であり得る。
【0037】
上述のように、本明細書で説明される技術は、任意の周波数ホッピングモデルに適用することができる。しかしながら、線形帰還シフトレジスタ(LFSR)ベースの擬似ランダムホッピングシーケンスなどの特定の線形ホッピングシーケンスは、ホッピング状態の数が多いために、正確にフィットさせるために多数のサンプルを必要とする。例えば、線形ホッピングシーケンスfmは、下記式のようにモデル化することができる。
【0038】
【0039】
ここで、f0はタイムスタンプ0の後の最初のホップの開始周波数であり、fbは最下位チャンネルの中心周波数であり、fdは2つの隣接ホップ間の周波数差又は周波数間隔であり、B=Nc・bはすべてのチャンネルの総帯域幅であり、Ncはホッピングシーケンスで使用されるチャンネル数であり、bは特定の実施形態においてドローン検知システム101に知られ得るチャンネル帯域幅である。状況によっては、すべてのホップがドローン検知システム101によって観察され検知されるとは限らない。チャンネル中心周波数がチャンネル0(1)から始まるチャンネル番号にマッピングされる場合、線形周波数ホッピングシーケンスfmは、下記式のように簡略化され得る。
【0040】
【0041】
ここで、cm=(fm-fb)/b、c0=(f0-fb)/b、及びcd=fd/bである。cdは、ホップ番号又はホップ数とも称され得る。各ホップの対応するタイムスタンプtmは、下記式で与えることができる。
【0042】
【0043】
ここで、t0は最初のホップの開始時間であり、tdはホップ周期と呼ばれる2つの隣接ホップ間の時間間隔である。したがって、いくつかの実施形態では、周波数ホッピングパラメータモデルは、i)開始時間t0、ii)開始周波数f0又は開始チャンネルc0、iii)ホップ周期td、iv)周波数間隔fd又はホップ数cd、及びv)チャンネル数Ncの5つのパラメータを含む。LFSRベースの擬似ランダムシーケンスの例では、パラメータは、バイナリシーケンスからチャンネルの中心周波数へのマッピングが与えられた場合、シーケンス長N(例えば、LFSR段数L)及び多項式(g0、gL-1)を含むことができる。
【0044】
小型モデルドローンの動作周波数は公知であり、FCC試験報告書で公開されている場合がある。例えば、DJI GL300Aリモートコントローラの2.4GHz帯域の2404MHzから2480MHzまでの39チャンネルが定義されてもよい。動作周波数の差は、可能なすべてのチャンネルの中心周波数から導き出すことができる。
図2Eは、DJIリモートコントローラGL300A及びGL300Fからの周波数ホッピングシーケンスの例を示している。第1の周波数ホッピングシーケンス181は、パラメータf
b=2404MHz、t
0=0.012秒、f
0=2456.7MHz、t
d=0.014秒、f
d=32.3MHz、N
c=45、及びb=1.7MHzによって定義され得る。第2の周波数ホッピングシーケンス183は、パラメータf
b=2404MHz、t
0=0.007秒、f
0=2414MHz、t
d=0.014秒、f
d=10MHz、N
c=39、及びb=2MHzによって定義され得る。
【0045】
周波数ホッピングパラメータを検出する技術の概要
図3は、本開示の態様による、ドローン103A~103Nの存在を検知するための方法300を示す。具体的には、方法300は、検知範囲内の1つ又は複数のドローン103について周波数ホッピングパラメータを検出することを含む。特に、ドローン検知システム101は、1つ又は複数のドローン103A~103Nの存在を検知するために、1つ又は複数のドローン103A~103Nとコントローラ105A~105Nとの間の通信に使用される周波数ホッピングシーケンスを定義するパラメータを検出することができる。
【0046】
方法300はブロック301から開始する。ブロック302において、方法300は、ある時間間隔についてRF受信機からサンプルのセットを受信することを含む。いくつかの実装形態では、方法300は、各時間間隔T
sについてセンサ/検出器163から長さ
の時間-周波数サンプルxのベクトルを受信することを含むことができる。
【0047】
ブロック304では、方法300は、周波数ホッピングパラメータのパラメータモデルを取得することを含む。例えば、線形周波数ホッピングシーケンスを使用して1つ又は複数のドローン103を検知する場合、パラメータモデルは、式(1)及び式(2)によって定義されるモデルのうちの1つに対応し得る。しかしながら、本開示の態様は、式(1)及び式(2)に記載されるパラメータモデルに限定されず、他の実施形態においては他のパラメータモデルを使用することができる。
【0048】
ブロック306において、方法300は、パラメータモデルをサンプルに当てはめることを含む。本開示の態様は、パラメータモデルをサンプルに当てはめる際にRANSACパラダイムを使用することに関する。いくつかの実装形態では、パラメータモデルをサンプルに当てはめることは、サンプルxのセットからns個のサンプルをランダムに選択し、選択されたサンプルnsを用いてパラメータを推定し、推定されたパラメータを用いてパラメータモデルのインスタンスを構築し、サンプルnsの各々に対してフィッティング誤差を評価することによって、サンプルnsを正常値(inliers)又は外れ値(outliers)に分類することを含む。ここで、正常値とは、パラメータモデルに密接に一致し、フィッティング誤差が無視できるか又は全くないサンプルを指す(例えば、フィッティング誤差が閾値誤差未満である)。一方、外れ値とは、フィッティングによる大きな誤差(グロス誤差)を生じるサンプルである(例えば、フィッティング誤差が閾値誤差以上である)。
【0049】
パラメータモデルをサンプルに当てはめる工程306は、パラメータモデルの複数のインスタンスを構築するために、Nr回のトライアルのために繰り返されてもよい。ブロック308において、方法300は、パラメータモデルの構築された第1のインスタンスの各々について、正常値及び外れ値に基づいてパラメータモデルの第1のインスタンスのうちの1つを選択することを含む。特定の実施形態では、例えば、「最適」モデルMは、サンプルの最大のグループであるIがコンセンサスに達するように、最大数の正常値|I|を有するパラメータモデルのインスタンスとして選択され得る。
【0050】
ブロック310において、方法300は、パラメータモデルの選択されたインスタンスに基づいて第1のターゲットドローン103を特定することを含むことができる。第1のターゲットドローン103に対するパラメータモデルのインスタンスを選択した後で、パラメータモデルのインスタンスは、ターゲットセットTに格納され得る。方法300は、これらの正常値が第1のターゲットドローン103に関連するコンセンサスグループを既に形成しているので、サンプルのセットから正常値のセットを除去することをさらに含むことができる。その結果、外れ値のセットOを入力サンプルxとして用いて、第2のターゲットドローン103の最適モデルを求めることができる。したがって、方法300は、受信したサンプルのセットが、第1のターゲットドローン103からの正常値が除去されたサンプルのサブセットである状態で、ブロック302から開始されて繰り返され得る。方法300は、新しいターゲットドローン103が見つからなくなるまで、又はサンプルのセットに残っている外れ値の数が方法300を実行するのに不十分になるまで、繰り返され得る。方法300が完了すると、ターゲットセットTは、検知されたターゲットドローン103のすべてについてのパラメータモデルのインスタンスを含む。
【0051】
モデルパラメータの推定
図4は、本開示の態様による、パラメータモデルのパラメータを推定する方法400を示す。例えば、方法400は、パラメータモデルを選択されたサンプルに当てはめるために、方法300のブロック306の一部として実行することができる。
【0052】
特定の実施形態では、モデルパラメータ推定手順は、ランダムに選択されたサンプルと、定義されたチャンネル中心周波数Fiの情報とを用いて、モデルパラメータを推定する。ドローン検知デバイスは、周波数ホッピングデバイスタイプiに対して公知の定義されたチャンネル中心周波数FiのセットであるF=∪iFiを記憶することができる。任意の2つの定義されたチャンネル周波数の周波数差と、所与のデバイスタイプiに対するチャンネルの総数とは、Fiの事前情報に基づいて知ることができる。
【0053】
図3及び
図4を参照して説明する。方法300の各トライアルrにおいて、方法400は、チャンネル中心周波数F
iの事前情報を用いて各デバイスタイプiのモデルパラメータを推定し、このデバイスタイプのパラメータモデルM´を得るために使用され得る。特定の実施形態では、デバイスタイプのパラメータモデルM´内のモデルパラメータを使用することによって、ドローン検知システム101は、サンプルのセットからすべてのサンプルのフィッティング誤差を計算し、特定のサンプルとデバイスタイプのパラメータモデルM´との間のフィッティング誤差に応じて、各サンプルを正常値又は外れ値として分類することができる。
【0054】
デバイスタイプのパラメータモデルM´は、パラメータモデルMの選択されたインスタンスが以前のトライアルrで見つかった場合、ブロック308で選択されたパラメータモデルMのインスタンスと比較され得る。特定の実施形態では、パラメータモデルMの選択されたインスタンスは、デバイスタイプのパラメータモデルM´の正常値の数|I'|が、パラメータモデルMの選択されたインスタンスの正常値の数よりも大きい場合には、デバイスタイプのパラメータモデルM´と置き換えられ得る。すなわち、コンセンサスに到達する多数の正常値が、パラメータモデルMの選択されたインスタンスよりもデバイスタイプのパラメータモデルM´に関連付けられている場合には、デバイスタイプのパラメータモデルM´は、ターゲットドローン103の最適推定値である可能性がより高くなり得る。すべてのトライアルrの終了時に、パラメータモデルMの選択されたインスタンスに残っている最適モデルは、推定されたホッピングパラメータの特定のセットを有する検知されたターゲットドローン103のモデルである。
【0055】
特定の実施形態では、モデルパラメータ推定手順は、ランダムに選択されたサンプルと、定義されたチャンネル中心周波数F
iの情報とを使用してモデルパラメータを推定する。
図4を参照すると、ブロック402において、方法400は、時間間隔T
sにおける観測値からn
s個のサンプルをランダムに選択することを含む。式(1)及び式(2)で定義されるモデルのような線形ホッピングモデルでは、毎回ランダムに選択されるわずか2つのサンプル(n
s=2)でパラメータ推定に充分であり得る。特定の実施形態では、まず、n
s個のサンプルがランダムに選択される。
2つのサンプルのいずれかの間の時間差及び周波数差のセットは、各々、
と
として計算することができる。D
tとD
fには、
個の要素がある。
【0056】
ブロック404では、方法400は、周波数ホッピングパラメータを推定することを含む。例えば、一例では、ブロック404は、まず、ホップ周期t
dの新しい推定値と、最初のホップt
0の開始時間を求めることを含むことができる。センサ/検出器163は、ホップ周期t
dの粗い推定値
を提供することができる。
のそれぞれについて、サンプル
の間のホップ周期の数は、下記式によって求めることができる。
【0057】
【0058】
ここで、[・]は丸め関数を表す。dt,j,kそれぞれのホップ周期tdの推定値は、下記式で得ることができる。
【0059】
【0060】
最初のホップt0の開始時間は、下記式のように推定され得る。
【0061】
【0062】
ここで、sfは数値安定性のための安定係数である。
【0063】
次に、ドローン検知システム101は、開始周波数f
0及び周波数間隔f
dの新たな推定値を求めることができる。チャンネル中心周波数F
iから、チャンネル中心周波数F
iにおける動作周波数の差分のセットは、
である。
のそれぞれについて、d
f,j,kがD
iのいずれかの要素と小さな誤差δ
f以内で一致する場合、ホップ間の周波数差の推定値
は、下記式を満たすf
d,j,kとする。
【0064】
【0065】
開始周波数f
0,j,kを求めるために、方法400は、まず、
から下記式で与えられる第1のサンプルn
0,j,kまでのホップ数を求めることを含むことができる。
【0066】
【0067】
開始周波数f0,j,kは、下記式のように推定することができる。
【0068】
【0069】
同じグループ内の推定値が同じであるか、又は無視できる程度の差しか無い場合、それらは有効な推定値であると判断され得るし、有効な推定値を使用してパラメータモデルのインスタンスを作成することができる。すなわち、下記式を満たす。
【0070】
【0071】
また、n
c=1(n
s=2)の場合は、
となる。チャンネル数N
cは、単純に|F
i|であってもよい。ブロック406において、方法400は、パラメータモデルのインスタンスを次のように構築することができる。
上述したように、ブロック408において、方法400は、サンプルの各々についてフィッティング誤差を評価することによって、サンプルn
sを正常値又は外れ値として分類することを含むことができる。例えば、ドローン検知システム101は、サンプルn
s各々のフィッティング誤差を閾値誤差と比較し、閾値誤差より小さいフィッティング誤差を有するサンプルn
sを正常値として分類し、残りのサンプルn
sを外れ値として分類することができる。方法400は、ブロック410で終了する。
【0072】
正常値と外れ値の分類
ブロック408の分類プロセスの一実施形態は、フィッティング誤差の評価から開始することができる。フィッティング誤差の評価は、M´内のパラメータモデルの現在のインスタンスに基づいてすべてのサンプルのフィッティング誤差を計算することを含む。いくつかの実装形態では、各サンプルkについて、ドローン検知システム101は、時間フィッティング誤差εt,kと、周波数フィッティング誤差εf,kとを別々に求めることができる。時間フィッティング誤差εt,kは、数値的安定性のためのsfの助けを借りて下記式で計算することができる。
【0073】
【0074】
周波数フィッティング誤差ε
f,kを求めるために、ドローン検知システム101は、まず、次式で与えられるサンプルのセットの最初から現在のサンプル
までのホップ間隔の数であるホップ位相h
pを決定することができる。
【0075】
【0076】
次いで、ドローン検知システム101は、モデルパラメータに基づいて、現在のサンプルの周波数を次のように推定することができる。
【0077】
【0078】
次に、周波数フィッティング誤差は、
と決定することができる。次に、ドローン検知システム101は、時間フィッティング誤差ε
t,kの2乗と、周波数フィッティング誤差ε
f,kの2乗との和の平方根によって、複合フィッティング誤差εを決定することができる。すなわち、
である。各サンプルのフィッティング誤差ε
kは、フィッティング誤差の閾値
と比較することができる。ε
kが閾値
より小さい場合、サンプルx
kは正常値であり、正常値のセットI’に含まれる。それ以外の場合は、外れ値であり、外れ値のセットO´に含まれる。
【0079】
ドローン(複数可)の監視方法の例
ドローン103が、例えば、上記メトリクスの1つを使用して検知されると、ドローン検知システム101は、ドローン103に対して潜在的に軽減措置を講じる前に、一定期間ドローン103を監視することができる。
図5は、ドローン103のうちの1つ又は複数を監視するためにドローン検知システム101によって実行され得る例示的な方法500である。
【0080】
方法500はブロック501から開始する。いくつかの実装形態では、方法500は、
図3の方法300に基づいてドローン103を検知することに応答して実行され得る。ブロック502において、方法500は、ドローン103とコントローラ105との間で送信されるRF信号107を復号することを含む。RF信号107の周波数ホッピングパラメータが本開示の態様に従って推定される場合、RF信号107の復号は、これらのパラメータを使用して再構成された周波数ホッピングシーケンスに従うように受信機161を構成し、RF信号107と同期させることによって実行されてもよい。
【0081】
ブロック504において、方法500は、復号されたRF信号107からドローン103に関連するデータを記憶することを含む。例えば、データはドローン103によって実行される任意の活動(例えば、飛行データ)、ドローン103が敵か味方かを示すことができるドローンの挙動、一意のドローン識別子などを含むことができる。ブロック506において、方法500は、ドローン103に対して軽減措置を実行すべきかどうかを判断することを含む。軽減措置が正当化される(warranted)と判断したことに応答して、方法500はブロック506で終了することができ、そこで軽減措置600を実行することができる。軽減措置が正当化されないと判断したことに応答して、方法500はブロック502に戻る。
【0082】
ドローン(複数可)を軽減するための例示的な方法
ドローン103の軽減が適切であると判定した後、特定の実施形態では、ドローン検知システム101は、本開示の態様に従って、いくつかの異なる軽減措置のうちの1つ又は複数を実行する。
図6は、ドローン103の1つ又は複数を軽減するためにドローン検知システム101によって実行することができる例示的な方法600である。
【0083】
方法600はブロック601から開始する。特定の実装形態では、方法600は、
図5のブロック506において軽減措置が正当化されると判断したことに応答して実行され得る。ブロック602において、方法600は、実行する軽減手法を選択することを含む。次に、方法600は、ブロック602で選択された軽減手法に基づいて、ブロック604~610のうちの1つに続くことを含む。
【0084】
ブロック604において、方法600は、ドローン103を監視し続けることを含み、これは、方法500のブロック502に戻ることを含むことができる。例えば、ドローン103が友好的であると判断された場合、及び/又はドローン検知システム101がより積極的な措置を取る法的権限を有していない場合、ドローン検知システム101は、ドローン103の存在をユーザに警告しながらドローン103の監視を継続することのみを許可されてもよい。
【0085】
ブロック606において、方法600は、ドローン特有の妨害を実行することを含む。例えば、ドローン検知システム101がドローン103によって使用される周波数ホッピングパラメータを推定した場合、ドローン検知システム101は、推定されたパラメータを用いて妨害装置167を構成することができる。次に、妨害装置167は、妨害信号を生成し、送信アンテナ117を介して検知範囲内のすべてのドローン103に妨害信号を送信して、ドローン103とコントローラ105との間のRF通信を妨害することができる。
【0086】
ブロック608において、方法600は、ドローン検知システム101が、広帯域妨害を実行することを含む。特定の実施形態では、ドローン検知システム101がドローン特有の妨害を実行するためにRF信号107によって使用される通信プロトコルに関する十分な情報を有しておらず、かつ広帯域妨害が環境100内の他の友好的なドローン103に影響を及ぼさない場合には、広帯域妨害が適切であり得る。
【0087】
ブロック610において、方法は、ドローン検知システム101が、ドローン103の制御を乗っ取ることを含む。例えば、特定の実施形態では、周波数ホッピングRF信号107を再構成するために、本開示の態様に従って推定された推定周波数ホッピングパラメータを使用して、ドローン検知システム101は、ドローン103に特定の操縦、例えばドローン103を安全な領域に着陸させることを実行させるために、ドローン103にコマンドを送信することができる。方法600はブロック612で終了する。
【0088】
シミュレーション
以下の説明は、1つ又は複数のドローン103A~103Nを検知するための上記の技術についての検証を提供する。検証は、Niter=10,000回の反復を伴うモンテカルロシミュレーションを使用して、ホッピングパラメータ推定のために本明細書で説明される技術の一実施形態について実行される。また、この性能を、グロス誤差、タイミング誤差、及びマルチターゲットの影響下で、線形LS推定の性能と比較した。シミュレーションにおけるパラメータ設定値を表1に示す。
【0089】
【0090】
以下のシミュレーションは3つの線形周波数ホッピングデバイス(例えば、ターゲットドローン103)に基づいている。2.4GHz帯のスペクトログラムは、ホップ間の粗い周期t
dがおよそ14ミリ秒であることを示している。反復毎に、シミュレーションは、検討中のこれら3つのデバイスからランダムにN
t個のデバイスを選択することにより、N
t個のターゲットドローンを生成する。各ターゲットドローンの周波数ホッピングシーケンスは、パラメータ
によって構成され、ここで、F
iは選択されたデバイスiによって決定される。なお、同じデバイスが、異なるホッピングパラメータ及びホッピング挙動を有する複数のターゲットとして複数回選択され得ることに留意されたい。シミュレーションでは、すべてのターゲットからのホッピングサンプルが結合され、N
0個の外れ値が追加される。ここで、N
0は外れ値到着率λを有するポアソン処理によって決定され、時間間隔T
s及びFで定義された周波数範囲にランダムに配置され、t
kはガウス分布N(0,σ
t
2)に従うタイミング誤差で調整される。最後に、すべての時間-周波数サンプルが時間領域でソートされて、入力サンプルが形成される。
【0091】
シミュレートされた実施形態及びLS推定器の性能は、メトリック(下記式で定義されるターゲット検知確率Pd)を使用することによって評価される。
【0092】
【0093】
ここで、I
j,k,l{x}は、ターゲットkとテストlとに対する反復jの指標関数であり、xが真値である場合には1を返し、それ以外の場合には0を返す。
は、5つのテスト基準であり、
は、ターゲットkの真のホッピングパラメータであり、
は、反復jの最適ホッピングパラメータ推定値である。まず、ターゲット検知性能を満たすために必要な入力サンプル数を求める。次に、グロス誤差とタイミング誤差の影響のもとでの単一ターゲット検知(N
t=1)の性能を評価した。最後に、マルチターゲットシナリオにおけるパラメータ推定性能が評価される。
【0094】
入力時間-周波数サンプル数
最初に、特定の実施形態では、この処理は、モデルパラメータ推定精度及びターゲット検知確率P
dの特定の水準を達成するために、各検知/取得周期T
sにおいて検出器で必要とされるサンプルの個数を決定する。
図7は、グロス誤差(λ=0)やタイミング誤差(σ
t
2=0)の無いHopSAC及びLS推定器について様々な入力サンプル数(N
s)に対する検知確率P
dを示すグラフである。
図7に示すように、本明細書に記載の技術の実施形態は、最小二乗法(LS)よりもP
d=0.9を達成するために、必要とされるサンプルがわずかに少ない。100%に近い精度を達成するためには、両方の方法は、約35個のサンプルを必要とする。公平な比較のために、特に断らない限り、残りのシミュレーションでは、取得期間はT
s=0.5秒に設定された。これは、粗いホップ周期=0.014秒について約35個の時間-周波数サンプルを生成する。
【0095】
グロス誤差の影響
次に、モデルパラメータの推定精度に対するグロス誤差の影響を評価した。
図8は、グロス誤差の影響下での検知確率を示すグラフである。
図8は、入力サンプルにおける外れ値到着率λの様々な度合いに対する、本明細書で説明する技術の実施形態及びLS推定器の検知確率を示す。同じ取得周期(T
s=0.5秒)において、本発明の態様による性能は、外れ値到着率の増加によって実質的に影響を受けないのに対し、LSの性能は著しく低下し、単一の外れ値であっても50%未満に低下している。この結果は、RANSACのような開示された技術はグロス誤差を排除することができるので、予想されていたものである。一方、LSは、外れ値を含むすべてのサンプルを推定に使用する。その結果、大きなグロス誤差の外れ値はいずれもフィッティング精度にかなり影響を与える可能性がある。特定の実施形態では、本開示の態様による推定器のターゲット検知確率は、異なるレベルのグロス誤差に対してすべて0.996を超えているので、このグロス誤差を破棄する優れた能力は誤検知の影響がより低く、より低い検知閾値(例えば、より低い一定誤警報率(CFAR)閾値)を使用できることを意味する。したがって、検出器は、より低いSNRでより高い検知確率を達成することができる。
【0096】
タイミング誤差の影響
次に、タイミング誤差がホッピングパラメータの推定性能に及ぼす影響について考察する。
図9は、タイミング誤差の分散の増加におけるタイミング誤差の影響下での、本明細書に開示される技術の実施形態及びLS推定器の検知確率を示す。
図9に示すように、本明細書で説明する技術は、同じサンプル数でLSを劇的に上回る性能を有する。LSとは異なり、本開示の態様は、分散σ
t
2<0.01の小さなタイミング誤差に対して非常にロバストである。機能的なハードウェアで巨大なタイミング誤差を観測することはまず無いので(例えば、通常、タイミングジッタはピコ秒のオーダである)、本開示の態様は、タイミングジッタによって引き起こされるタイミング誤差に対して非常にロバストである。また、タイミング誤差に対するロバスト性が大幅に改善されたことは、CUAS妨害装置によって送信されるパルスを時間的により正確なものにできることを意味する。これにより、CUAS送信機の電力効率を向上させ、他の正当なUASシステムに対する巻き添え被害や望ましくない干渉が低減される。
【0097】
マルチターゲットのシナリオ
最後に、マルチターゲット検知に対するHopSACとLS推定器の性能を評価した。
図10は、入力サンプルに現れる様々な数のターゲットに対するターゲット検知確率を示す。入力サンプル数N
sは、同じ取得間隔T
s=0.5秒において、ターゲット数N
tに比例して増加する。
図10では、本開示の態様による特定の実施形態は、最大10個のターゲットの検知について0.994を超えるターゲット検知確率を達成することが分かる。この結果は、HopSACが一貫しており、マルチターゲット検知でも良好に機能することを確認するものである。対照的に、LSは、2つのターゲットのみであっても、マルチターゲットのシナリオにおいて何も検知することができない。特定の実施形態では、複数のターゲットを検知するための本開示の技術の能力は、外れ値と正常値を分類し、正常値のサンプルの各セットを1つずつ特定のターゲットに関連付け、他のターゲットの推定のためにすべてのサンプルから外れ値を抽出する能力にある。このため、本開示の態様の複雑度は、検知のためのターゲットの数と共に線形に増大する。これに対し、LS推定器は、ターゲットの数にかかわらず、すべてのサンプルを推定に使用する。1つのターゲットの送信からのサンプルは、他のターゲットの外れ値である。したがって、LS推定器は、マルチターゲットの送信によって大きく影響され、任意のマルチターゲットのシナリオにおいて、パラメータを正確に推定することができない。
【0098】
本開示では、ドローン検知システム101のためのRANSACパラダイムに基づくHopSAC周波数ホッピングパラメータ推定方法及びシステムが開示される。本開示の態様は、LS法を上回り、グロス誤差、小さなタイミング誤差、及び複数のターゲットの存在の影響下で、事実上100%の推定精度を達成することが示されている。本開示の非常に優れたグロス誤差除去能力により、ドローン検知システム101は、低いSNR領域において良好な検知性能を有し、より高い誤検知(false positives)を許容することができる。さらに、タイミング誤差に対する本開示の態様のロバスト性は、送信の精度及び電力効率を高めながら、応答時間及び巻き添え被害を大幅に低減する。最後に、本開示の態様は、線形に増加する複雑度を犠牲にして、非常に高い検知確率で複数のターゲットを検知することに優れている。
【0099】
実装システムと用語
本明細書で開示される実装形態は、ドローンの存在を検知するためのシステム、方法、及び装置を提供する。本明細書で使用される用語「結合する(couple)」、「結合(coupling)」、「結合された(coupled)」、又は単語「結合する(couple)」の他の変形は、間接接続又は直接接続のいずれかを示し得ることに留意されたい。例えば、第1の構成要素が第2の構成要素に「結合」される場合、第1の構成要素は、別の構成要素を介して第2の構成要素に間接的に接続されるか、又は第2の構成要素に直接接続され得る。
【0100】
本明細書で説明するドローン検知機能は、プロセッサ読み取り可能な媒体又はコンピュータ読み取り可能な媒体に1つ又は複数の命令として記憶することができる。「コンピュータ可読媒体」という用語は、コンピュータ又はプロセッサによってアクセス可能な任意の利用可能な媒体を意味する。限定ではなく例として、このような媒体はRAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ、CD-ROM又は他の光ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置又は他の磁気記憶装置、或いは、所望のプログラムコードを命令又はデータ構造の形成で記憶するために使用することができ、コンピュータによってアクセスすることができる他の任意の媒体を含むことができる。コンピュータ可読媒体は、有形かつ非一時的であってもよいことに留意されたい。本明細書で使用される場合、「コード」という用語は、コンピューティング装置又はプロセッサによって実行可能であるソフトウェア、命令、コード又はデータを指す場合がある。
【0101】
本明細書で開示される方法は、説明される方法を実現するための1つ又は複数のステップ又は動作を備えている。方法のステップ及び/又は動作は、特許請求の範囲から逸脱することなく、互いに入れ替え可能である。換言すれば、説明されている方法の適切な動作のためにステップ又は動作の特定の順序が必要とされない限り、特定のステップ及び/又は動作の順序及び/又は使用は、特許請求の範囲から逸脱することなく変更され得る。
【0102】
本明細書で使用される場合、用語「複数(plurality)」は2つ以上を示す。例えば、複数の構成要素は、2つ以上の構成要素を示す。用語「判断(determining)」は多種多様な動作を包含し、したがって、「判断」は、計算(calculating)、計算(computing)、処理(processing)、導出(deriving)、調査(investigating)、ルックアップすること(例えば、表、データベース、又は別のデータ構造をルックアップすること)、確認(ascertaining)などを含むことができる。また、「判断」は受信(例えば、情報の受信)、アクセス(例えば、メモリ内のデータへのアクセス)等を含むことができる。また、「判断」は、解決(resolving)、選択(selecting)、選択(choosing)、確立(establishing)などを含むことができる。
【0103】
「に基づく(based on)」という用語は、別段の明示の規定がない限り、「にのみに基づく」という意味ではない。換言すれば、「に基づく」という語句は、「にのみ基づく」及び「少なくとも~に基づく」の両方を記述している。
【0104】
開示された実装形態の以上の説明は、当業者が本発明を製造又は使用することを可能にするために提供されたものである。これらの実装形態に対する様々な修正は当業者には容易に明らかであり、本明細書で定義される一般的な原理は、本発明の範囲から逸脱することなく、他の実装形態に適用され得る。例えば、当業者であれば、工具部品の締結、装着、結合、又は係合の同等の方法、特定の作動動作を生成するための同等の機構、及び電気エネルギーを供給するための同等の機構など、多数の対応する代替的で同等の構造詳細を採用することができることが理解されよう。したがって、本発明は、本明細書に示された実装形態に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示された原理及び新規な特徴と一致する最も広い範囲を与えられるべきである。