(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】クリップホルダ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A44B 99/00 20100101AFI20240826BHJP
A45C 13/10 20060101ALI20240826BHJP
A45C 13/02 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
A44B99/00 611B
A44B99/00 611Z
A45C13/10 L
A45C13/02 Z
(21)【出願番号】P 2022008375
(22)【出願日】2022-01-24
【審査請求日】2023-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】592118583
【氏名又は名称】株式会社華陽テクノ・プラザ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】松波 廣三
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3047576(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0104958(KR,A)
【文献】特開平11-317795(JP,A)
【文献】登録実用新案第3235687(JP,U)
【文献】特開2015-126880(JP,A)
【文献】登録実用新案第3166464(JP,U)
【文献】登録実用新案第3112206(JP,U)
【文献】実開平07-005424(JP,U)
【文献】米国特許第02267331(US,A)
【文献】特開2010-269017(JP,A)
【文献】特開平11-000208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B 99/00
A45C 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携行物をホールドするホールド部の上端部を下方へ折り曲げることによってフック部を形成して、前記ホールド部と前記フック部との間に間隙を形成したクリップホルダであって、
前記フック部と対向する位置において前記ホールド部には上下方向に向かって延びるバネ片を切り抜き形成し、そのバネ片の上下方向の中間部を前記フック部に近づくように湾曲させて前記バネ片に対して前記フック部との間においてクリップバネ力を持たせるとともに、前記バネ片の先端部を前記ホールド部の前面の内側に位置させ、
前記バネ片の先端部を下向きにしたクリップホルダ。
【請求項2】
前記ホールド部の裏面には粘着層を設けた請求項
1に記載のクリップホルダ。
【請求項3】
前記フック部と対向する位置における前記ホールド部の前面及び前記フック部の裏面のうちの少なくとも一方には滑止めを設けた請求項1
又は請求項2に記載のクリップホルダ。
【請求項4】
前記滑止めは盛り上がるように点着された合成樹脂である請求項
3に記載のクリップホルダ。
【請求項5】
前記フック部の前面に装飾を付すとともに、透明な合成樹脂によって前記装飾を被覆した請求項1~
4のうちのいずれか一項に記載のクリップホルダ。
【請求項6】
前記ホールド部及び前記フック部の外周縁に金属メッキを設けた請求項1~
5のうちのいずれか一項に記載のクリップホルダ。
【請求項7】
携行物をホールドするホールド部の上端部を下方へ折り曲げることによってフック部を形成して、前記ホールド部と前記フック部との間に間隙を形成したクリップホルダの製造方法であって、
前記フック部と対向する位置において前記ホールド部には上下方向に向かって延びるバネ片を切り抜き形成し、そのバネ片の上下方向の中間部を前記フック部に近づくように湾曲させて前記バネ片に対して前記フック部との間においてクリップバネ力を持たせるとともに、前記バネ片の先端部を前記ホールド部の前面の内側に位置させたクリップホルダにおいて、前記ホールド部及び前記フック部を有するホルダ基板をエッチングによって切り抜いた後に、前記ホルダ基板の表裏両面に対してその外周端縁を残して膜を印刷し、次いで、前記外周端縁の非印刷部及び前記ホルダ基板の端面にメッキを施すクリップホルダの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話やカードケース等の携行物をホールドした状態で、衣服の一部やバッグの内ポケット等の被クリップ部に対してクリップ可能にしたクリップホルダ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のクリップホルダが特許文献1及び特許文献2に開示されている。
特許文献1に開示されたクリップホルダは、ホールド部と、そのホールド部に対して間隙を介して対向するフック部とを有する。ホールド部内には、スライドされる操作ボタン、その操作ボタンの移動によって出没するバネ片、操作ボタンに対してバネ力を付与するバネが組み込まれている。バネ片には前記間隙内に突出する突起が設けられている。そして、ホールド部に対して携帯電話やシガレットケース等が貼着によってホールドされる。このホールド状態で、ズボンのベルト部等の被クリップ部が突起とフック部との間にクリップされて間隙内に位置する。このため、携帯電話等が被クリップ部に保持される。クリップホルダを被クリップ部から外す場合は、バネのバネ力に抗して操作ボタンを押して突起を後退させる。
【0003】
特許文献2に開示されたクリップホルダは、携帯電話を貼着してホールドするホールド部を有するとともに、そのホールド部と一体のフック部を有する。このクリップホルダは、フック部が自身のバネ力によって衣服のポケット服地等の被クリップ部に係止されることにより、その被クリップ部にクリップされる。携帯電話は、被クリップ部の内部に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平7-5424号公報
【文献】実用新案登録第3057312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたクリップホルダは、前記操作ボタン、バネ片、バネ等の複数部品が組み付けられて構成されているため、部品点数が多くなる。従って、クリップホルダの組付けに手間がかかる。また、クリップホルダの着脱に際して、操作ボタンの操作が必要になって煩雑になるばかりでなく、操作ボタン等の動作不良のおそれもある。さらに、操作ボタンを適切に操作しないと、突起が被クリップ部に引っ掛かることがあって、使いにくいものであった。しかも、ホールド部内に、操作ボタン等の各種の部品が組み込まれるため、ホールド部は、内部空間を有する厚い箱状になる。このため、クリップホルダのクリップ時に、ホールド部が邪魔になるものであった。
【0006】
特許文献2に開示されたクリップホルダは、同一幅の一枚の板材を折曲げたような形状になっており、全体が合成樹脂によって構成されている。そして、フック部がクリップ機能とバネ力付与機能とを兼備している。従って、クリップのためのバネ力の微妙な調整が困難である。つまり、携帯電話等に対するホールド力を強くするために、ホールド部を幅広形状にすると、フック部も幅広形状になって、バネ力が強くなりすぎる。また、バネ力を弱めるために、フック部を薄くしたり、幅狭にしたりすると、強度不足のおそれが生じる。さらに、フック部にはクリップ機能とバネ力付与機能とを持たせる必要があるため、フック部の形状や大きさに制約がある。このため、ポケット等の被クリップ部において外部に露出するフック部に対して充分な装飾機能を付与することができない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の従来技術に存する問題点を解消するために、本発明のクリップホルダは、携行物をホールドするホールド部の上端部を下方へ折り曲げることによってフック部を形成して、前記ホールド部と前記フック部との間に間隙を形成したクリップホルダであって、前記フック部と対向する位置において前記ホールド部には上下方向に向かって延びるバネ片を切り抜き形成し、そのバネ片の上下方向の中間部を前記フック部に近づくように湾曲させて前記バネ片に対して前記フック部との間においてクリップバネ力を持たせるとともに、前記バネ片の先端を前記ホールド部の前面の内側に位置させたことを特徴とする。
【0008】
以上の構成においては、ホールド部とフック部とを一体にできるばかりでなく、バネ片をホールド部と一体にできる。その結果、クリップホルダ全体を1枚の板材で一体構成できる。従って、部品点数が多くなることはなく、組付けの複雑化や部品の動作不良を回避できるとともに、ホールド部を薄くできて、ホールド部が邪魔になることを回避できる。また、バネ片の幅や長さを任意に調節できるため、バネ片のバネ力によるクリップ力を適切に設定できて、使いやすいものとすることができる。そして、バネ片の先端部がホールド部の内側に位置しているため、バネ片の長さ方向の中間部をフック部に近付けて、クリップ力を強くしても、被クリップ部への装着時にバネ片が衣服等の被クリップ部に引っ掛かることを回避できる。このため、被クリップ部に対する強いクリップ力を実現できて、携帯電話等の携行物を脱落することなく、クリップ状態で被クリップ部に安定保持できる。加えて、フック部には、バネ力付与機能を与える必要がないため、形状や大きさを自在に設定できる。このため、フック部における装飾を含むデザインの制約を大幅に減少させることができて、外観に優れたクリップホルダを実現できる。
【0009】
また、本発明のクリップホルダの製造方法は、前記ホールド部及び前記フック部を有するホルダ基板をエッチングによって切り抜いた後に、前記ホルダ基板の表裏両面に対してその外周端縁を残して膜を印刷し、次いで、前記外周端縁の非印刷部及び前記ホルダ基板の端面にメッキを施すことを特徴とする。
【0010】
この製造方法によれば、ホルダ基板の外周縁の尖ったエッジをメッキによって被覆保護できる。このため、クリップホルダを使用感に優れたものとすることができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明のクリップホルダは、部品点数を少なくでき、しかも、使いやすく、かつ携帯電話等の携行物を衣服等の被クリップ部に安定保持できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】クリップホルダを前方斜め上から見た斜視図。
【
図2】クリップホルダを前方斜め下から見た斜視図。
【
図3】クリップホルダを後方斜め上から見た斜視図。
【
図10】クリップホルダのフック部を切除した状態を示す斜視図。
【
図11】クリップホルダのホールド部を切除した状態を示す斜視図。
【
図12】剥離紙の一部を剥離した状態を示すクリップホルダの斜視図。
【
図13】携帯電話をクリップホルダにホールドした状態を示す側面図。
【
図14】携帯電話をクリップホルダにホールドした状態を示す斜視図。
【
図15】クリップホルダをズボンのベルト部に保持した状態を示す斜視図。
【
図16】クリップホルダをバッグの内ポケットに保持した状態を示す斜視図。
【
図17】フック部のスポット装飾の部分を示す拡大断面図。
【
図18】フック部の装飾模様を示すクリップホルダの正面図。
【
図19】切抜かれた状態のホルダ基板を示す拡大斜視図。
【
図20】エッチング前のマスキング状態を示す拡大断面図。
【
図21】エッチングによって切抜かれた状態のホルダ基板の拡大断面図。
【
図24】第2実施形態を示すクリップホルダの斜視図。
【
図25】第3実施形態を示すクリップホルダの斜視図。
【
図26】第3実施形態を示すクリップホルダの斜視図。
【
図27】第4実施形態を示すクリップホルダの斜視図。
【
図28】第4実施形態を示すクリップホルダの展開図。
【
図29】第4実施形態を示すクリップホルダの
図28の反対側の面を示す展開図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化したクリップホルダの第1実施形態を図面に基づいて説明する。
〈第1実施形態のクリップホルダの構成〉
図1~
図23に基づいて第1実施形態のクリップホルダ11の構成について説明する。
図4~
図8は、それぞれクリップホルダ11の正面図,背面図,右側面図,平面図,底面図であるが、左側面図は右側面図と対称に表れるため、省略している。
【0014】
図1及び
図2に示すように、クリップホルダ11は、ホールド部12とフック部13とを有する1枚の板材によって構成されている。
図22に示すように、クリップホルダ11のホルダ基板111の表裏両面には装飾色彩の装飾膜55が印刷されている。この装飾膜55の色は、例えば、ホールド部12の裏面,フック部13の前面及び後述のバネ片32の裏面が黒、その他の部分がグレーである。
図3~
図5に示すように、ホールド部12は、上縁が直線状をなすほぼハート形に形成されている。
図6~
図9に示すように、フック部13は、ホールド部12に対して間隙22を介してほぼ平行に対向する。
図1及び
図4に示すように、フック部13はホールド部12と相似形の特徴的な形状であるほぼハート形をなすとともに、ホールド部12よりやや小さい外形を有する。フック部13の上縁とホールド部12の上縁とは架設部23によって連結されている。
【0015】
図3,
図5及び
図9に示すように、ホールド部12の幅方向中央部には、上下に長いほぼU字形の切抜き部31が形成されている。この切抜き部31の形成によって、ホールド部12には、ホールド部12と一体で、かつ下方へ向かって延びる特徴的な形状である舌片形状のバネ片32が切り抜き形成されている。このバネ片32は、その上下方向の中間部がフック部13側に向かって膨らむように湾曲されている。従って、バネ片32は、その長さ方向の中間部が前記間隙22内に位置する。バネ片32の下端部は、後述の携帯電話71のホールド前の状態においてホールド部12の裏面側に位置している。この場合、バネ片32の先端部である下端部がホールド部12の前面の内側に位置するものとする。
【0016】
図5及び
図12に示すように、ホールド部12の裏面であって、バネ片32を除いた部分には、バネ片32の両側に位置する2枚の両面粘着シート(以下、粘着シートという)33が貼着されている。この粘着シート33は粘着層を構成する。粘着シート33の外側面には、剥離紙34が貼付されている。
【0017】
図11に示すように、フック部13の裏面先端部において、バネ片32の先端部と対向する部分には、スポット形状の滑止め36が点着されている。
図6に示すように、この滑止め36は柔軟性のあるウレタン樹脂よりなるとともに、球形,すなわち頂点を丸くした低い山形に形成されている。
【0018】
図3及び
図11に示すように、バネ片32の前面の長さ方向中間部及び先端部とフック部13の裏面の先端部とには、それぞれ左右方向に延びる複数本又は1本の横方向に延びる溝37,38が形成されている。これらの溝37,38によってバネ片32の上下方向の中間部及び先端部等を湾曲しやすいようになっているとともに、フック部13の先端部を前方に湾曲しやすいようになっている。ただし、バネ片32及びフック部13の先端部は、クリップホルダ11の使用者によって必要に応じて湾曲されるものである。
【0019】
図1~
図3に示すように、ホールド部12,フック部13,架設部23及びバネ片32の外周端縁と、切抜き部31の内周端縁には装飾のための輪郭メッキ39が施されている。
図18に示すように、フック部13の前面全体にはデザイン模様を構成する装飾メッキ40が施されている。この装飾メッキ40のデザイン模様は、任意であって、多数種類が用意されている。
図1,
図2,及び
図9に示すように、フック部13の前面の上端中央部には、環状の装飾メッキ401が施されている。
図17に示すように、その装飾メッキ401の内部には、柔軟性のある着色ウレタン樹脂よりなるスポット模様41が盛り上がるように施されている。
【0020】
図1,
図6及び
図9に示すように、フック部13の前面は、輪郭メッキ39,装飾メッキ401及びスポット模様41の部分を除いて柔軟性のある透明ウレタン樹脂よりなる保護層42によって被覆されている。保護層42は、0.3~1.5mm(ミリメートル)程度の厚さを有している。
【0021】
〈クリップホルダの製造方法〉
図19に示すように、本実施形態のクリップホルダ11のホルダ基板111は、厚さ0.2~0.7mm程度のステンレスチールの板金51から切抜かれたものである。このステンレススチールは日本工業規格において「SUS301-CSP3/4」として規定された材質のものが用いられる。
【0022】
そして、
図20に示すように、板金51の表裏両面に対して展開状態のホルダ基板111の外形と対応した輪郭線52が残るように、マスク53が塗布される。次いで、マスク53を有する板金51に対して塩化第2鉄溶液によるエッチングが行われる。このようにすれば、板金51が輪郭線52において切り抜かれる。このため、
図19及び
図21に示すように、所要の外形を有するホルダ基板111が切抜き形成される。このホルダ基板111は、クリップホルダ11を展開した形状である。
図21に示すように、エッチング後において、切り抜かれたホルダ基板111の端面は、マスク53に近い部分ほど腐食される量が少なく、マスク53から離れる部分,つまり端面の厚さ方向中央側ほど腐食される量が多い。このため、ホルダ基板111の端面は、中央部が凹むとともに、外側面側に鋭角状のエッジ54が形成される。
【0023】
次いで、マスク53が溶解に続く洗浄によって除去される。そして、
図21及び
図22に2点鎖線で示すように、ホルダ基板111の表裏両面に対してインクジェットプリンタ(図示しない)等によって、耐薬品性の塗料による装飾膜55が印刷される。この装飾膜55は、ホルダ基板111の外側面の外周端縁を残して形成される。このため、その外周端縁に幅狭の非印刷部56が形成される。また、
図17に示すように、装飾膜55中にも装飾メッキ40,401及びスポット模様41に対応した形状の非印刷部57が形成される。次いで、
図22に示すように、非印刷部56,57に対して、それぞれ金属メッキである輪郭メッキ39及び装飾メッキ40,401が同時に施される。この輪郭メッキ39及び装飾メッキ40,401は装飾模様を構成する。
図23に示すように、輪郭メッキ39及び装飾メッキ40,401は三層構造をなしており、ホルダ基板111に対して銅メッキ58,ニッケルメッキ59,金メッキ60の順で重ねられる。銅メッキ58が最も厚いため、この銅メッキ58によって輪郭メッキ39及び装飾メッキ40,401の盛り上がりが確保されている。このようにすれば、輪郭メッキ39及び装飾メッキ40,401による盛り上がり模様が形成される。ホルダ基板111の端面が盛り上がり状の輪郭メッキ39によって被覆されるため、その端面のエッジ54が被覆されて、丸みを帯びる。
【0024】
次いで、
図6及び
図9に示すように、水平姿勢のフック部13の前面に対して透明なウレタン樹脂よるなる保護層42が形成される。この保護層42は、フック部13の前面に対して適量の液状ウレタン樹脂を滴下したものである。このようにすれば、液状ウレタン樹脂は、フック部13の前面上を流れて広がり、輪郭メッキ39及び装飾メッキ401の位置において表面張力によって広がりが止まる。つまり、液状のウレタン樹脂は、輪郭メッキ39及び装飾メッキ401の部分において流動が止まる程度の粘性と量とに調整される。その後、液状ウレタン樹脂が硬化すれば、装飾膜55より厚く、かつ柔軟性を有する保護層42が形成される。保護層42の形成と相前後して、
図4及
図17に示すように、環状の装飾メッキ401の内部に着色された液状ウレタン樹脂が滴下されて、硬化される。この硬化によって柔軟性を有するスポット模様41が形成される。
【0025】
その後、
図6,
図9及び
図10に示すように、バネ片32を湾曲させて、そのバネ片32の中間部を前方に突出させるとともに、先端部をホールド部12の裏面側に位置させる。そして、フック部13が間隙22を挟んでホールド部12の前面に位置するように、つまり、架設部23が形成されるようにホルダ基板111の上端部を折り曲げる。
【0026】
図3及び
図12に示すように、ホールド部12の裏面には、剥離紙34が付いた両面粘着シート33が貼着されるが、この両面粘着シート33の貼着は、メッキ工程終了後であれば、どのタイミングでもよい。
【0027】
〈クリップホルダの使用方法〉
図12~
図14に示すように、本実施形態のクリップホルダ11は使用に際して、ホールド部12の粘着シート33の剥離紙34が剥がされる。そして、携行物としての携帯電話71がその裏面において粘着シート33の粘着面に貼着される。このようにして、携帯電話71はホールド部12にホールドされる。この状態においては、バネ片32の下端が携帯電話71によって前方に押されるため、バネ片32がそのバネ力に抗してフック部13側に移動される。
【0028】
この状態で、
図15に示すように、携帯電話71を、例えばズボン72のベルト部73の内部に入れて、フック部13をベルト部73にクリップする。このようにすれば、携帯電話71をズボン72内においてほとんど見えないようにできるとともに、フック部13をベルト部73の外側に位置させることができる。この状態では、バネ片32のクリップバネ力によってクリップホルダ11を携帯電話71とともに、ベルト部73に保持できる。携帯電話71を使用する際にはフック部13あるいは携帯電話71を持って携帯電話71をズボン72から容易に取り出して使用できる。また、
図16に示すように、バッグ74の内ポケット75に携帯電話71を収容して、フック部13を内ポケット75の開口縁にクリップする。このようにすれば、携帯電話71は内ポケット75内において保護されるとともに、フック部13が内ポケット75外に位置して、携帯電話71の収容状態をひと目で認識できる。あるいは、オープン型バックの上端部に対してフック部13が外側に出るようにクリップホルダ11をクリップすれば、フック部13がバッグの外側のワンポイントアクセサリになる。この場合においても、携帯電話71はバッグの内側に納まるとともに、容易に出し入れできるようになる。
【0029】
クリップホルダ11によってホールドされる携行物は、携帯電話71以外のもの、例えば、カードケース等の各種のものがある。
〈第1実施形態の効果〉
第1実施形態においては、以下の効果がある。
【0030】
(1)クリップホルダ11に対して携帯電話71等をホールドすることにより、携帯電話71等をズボン72やバッグ74の一部等の被クリップ部にクリップして保持できる。従って、携帯電話71等の携行や保管に便利である。そして、携帯電話71等をズボン72等の被クリップ部の内部に入り込ませることができるため、携帯電話71等を外部からの衝撃に対して保護できる。また、携帯電話71等を被クリップ部から、フック部13を持って容易に取出して使用できる。
【0031】
(2)ホールド部12に携帯電話71をホールドすることにより、携帯電話71によってバネ片32がフック部13側に移動される。従って、バネ片32によるクリップバネ力が強くなるため、被クリップ部を充分なクリップ圧力でクリップできる。よって、携帯電話71を安定して保持できる。
【0032】
(3)フック部13は、クリップ機能を有すればよく、クリップのためのバネ力はバネ片32が担えばよい。従って、フック部13の形状や大きさを自在に選択できるとともに、任意の模様や色彩を付したり、メッキ39,40,401を施したりできる。このため、クリップホルダ11として、高いデザイン性や装飾性を得ることができて、外観品質に優れたものとなる。
【0033】
(4)別体のバネや操作ボタン等の部材をホールド部12に設ける必要がないため、ホールド部12は1枚板のままでよく、厚くなることはない。
(5)フック部13の前面はズボン72等をクリップした時に外部に露出されるが、フック部13の前面は柔軟性を有するウレタン樹脂製の保護層42によって保護されている。しかも、ウレタン樹脂は、傷が目立たず、白化しにくい。従って、フック部13の前面の装飾効果を長期間にわたって維持できる。
【0034】
(6)バネ片32を間隙22内に湾曲させて、バネ片32とフック部13との間の間隔を狭くしている。このため、クリップホルダ11をズボン72のベルト部73等の被クリップ部に適切にクリップできる。また、バネ片32の湾曲度合いを調整すれば、バネ片32のクリップバネ力を適正値に設定できて、ホールドされる携行物の種類や大きさや被クリップ部の部位に対応したクリップ力を得ることができる。
【0035】
(7)バネ片32の先端部をホールド部12の裏面側(内側)に位置させている。従って、ズボン72のベルト部73等の被クリップ部へのクリップの際にバネ片32の先端部が被クリップ部に引っ掛かりにくい。このため、クリップホルダ11のクリップを行いやすいばかりでなく、引っ掛かりによるバネ片32の変形を回避できる。
【0036】
(8)間隙22に面するフック部13の裏面にスポット的に盛り上がった滑止め36が設けられている。このため、クリップホルダ11が滑りにくくなって、クリップ状態を適切に保持できる。
【0037】
(9)板金51からのホルダ基板111の切抜きがエッチングによって行われる。このため、プレスによる打抜きとは異なり、ホルダ基板111の外周部がプレスによって湾曲したり、縁部にバリが出たりすることがない。このため、湾曲を矯正するための作業や、バリ取りの作業が不要になる。
【0038】
(10)バネ片32がホルダ基板111にエッチングによって一体形成されるため、ホルダ基板111と別体の部材は不要となって、クリップホルダ11の部品点数は単一である。従って、複数の部品を組付ける手間が不要であって、部品故障のおそれもない。
【0039】
(11)輪郭メッキ39によってホルダ基板111の外周縁の尖ったエッジ54を被覆保護できる。このため、クリップホルダ11の使用者が刃物に触れるような不快な感触を感じることを防いで、クリップホルダ11を使用感に優れたものとすることができる。
【0040】
(12)フック部13の前面の装飾を白化しにくく、傷が目立たないウレタン樹脂で被覆したので、高級感を長期間維持できる。しかも、フック部13は、バッグの外面側において、ワンポイントアクセサリとして発揮させることができる。従って、クリップホルダ11は、バッグ等の装飾部材として利用することができる。
【0041】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
第2実施形態においては、
図24に示すように、フック部13の前面に集積回路チップ81を貼着している。この集積回路チップ81の部分には、メッキ模様は形成されていない。この集積回路チップ81は、保護層42によって被覆されて保護されている。そして、集積回路チップ81は、金属メッキの工程終了後に貼着される。その他の構成及び製造方法は、第1実施形態と同様である。従って、第2実施形態では、集積回路チップ81内の制御部や記憶部(ともに図示しない)に書き込まれたデータに基づいて、使用者の認識機能等の各種の機能を実行可能である。例えば、集積回路チップ81の記憶部に使用者を示す情報を記憶しておいて、例えば、使用者がレジカウンターを通過する際に、集積回路チップ81から外部に対して使用者認識のための電波を発信するようにする。
【0042】
本実施形態のその他の構成,すなわち、ホルダ基板111の厚さや材質等は、前記第1実施形態と同様である。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態を説明する。
【0043】
第3実施形態においては、
図25及び
図26に示すように、ホールド部12は、4コーナが丸いほぼ四角形に形成されている。ホールド部12の下端から上方に向かって一対のスリット82が形成されている。この両スリット82間の部分がフック部13になっている。従って、第3実施形態においては、フック部13の長さを長くできて、被クリップ部に対するクリップ面積を広くできる。
【0044】
本実施形態のその他の構成,すなわち、ホルダ基板111の厚さや材質等は、前記第1実施形態と同様である。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態を説明する。
【0045】
図27~
図29に示すように、第4実施形態においては、ホールド部12がほぼ四角形状に形成されている。ホールド部12における架設部23の両側部分を除いて、ホールド部12の外周は、半円を連続させた特徴的な凹凸形状に形成されている。それらの凹凸外周縁には、輪郭メッキ39が付されている。
図27及び
図31に示すように、ホールド部12の前面側の輪郭メッキ39は、円環状に形成されている。
図27及び
図28に示すように、フック部13の前面側の輪郭メッキ39は、フック部13の両側部において装飾メッキ40と合流している。本実施形態においては、バネ片32には輪郭メッキ39が設けられていない。
【0046】
図29及び
図30を示すように、粘着層を構成する粘着シート33は、ホールド部12の輪郭メッキ39,切抜き部31及びバネ片32の部分を除いた部分と対応した形状に形成されている。
【0047】
本実施形態においては、ホールド部12がほぼ四角形状に形成されているため、粘着シート33として、表面積の大きなものを用いることができる。従って、携帯電話71等の携行物のホールドを強固なものとすることができる。
【0048】
本実施形態のその他の構成,すなわち、ホルダ基板111の厚さや材質等は、前記第1実施形態と同様である。
(変更例)
前記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。そして、前記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0049】
・前記各実施形態においては、ホールド部12に対する携帯電話71のホールド前の状態において、バネ片32の先端部がホールド部12の裏面側に位置するようにした。これに対し、バネ片32の先端部における前面側の端縁がホールド部12の前面と同一の面に位置するようにすること。この場合も、バネ片32の先端部がホールド部12の前面の内側に位置するものとする。
【0050】
・ホールド部12の形状を円形,長円形や楕円形等の形状に変更すること。
・フック部13の形状を円形,長円形や楕円形等、あるいは四角形やひとつのコーナを下向きにした三角形等の形状に変更すること。四角形や三角形にした場合には、コーナ部を丸くする。
【0051】
・前記第1及び第2実施形態では、バネ片32の先端が下向きになるようにバネ片32を切り抜いたが、これとは逆に、バネ片32の先端が上向きになるようにバネ片32を切り抜くこと。そして、バネ片32の先端をホールド部12の裏面側に位置させること。このように構成した場合も、第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0052】
・保護層42として着色透明ウレタン樹脂を用いること。
・保護層42として、ウレタン樹脂以外のもの、例えば、透明あるいは着色透明のアクリル樹脂やポリエステル樹脂等を用いること。
【0053】
・スポット状の滑止め36をホールド部12の前面に設けること。
・フック部13の裏面におけるスポット状の滑止め36に代えて、フック部13の裏面全体に摩擦係数の高い合成樹脂,例えば、シリコーン樹脂等による滑止め層を設けること。
【0054】
・輪郭メッキ39及び装飾メッキ40,401のうちの少なくとも一箇所の金メッキ60を金以外のメッキ、例えば、銀、銅、ニッケル、クローム、プラチナ等の他の金属メッキに変更すること。
【0055】
・フック部13をホールド部12の左右2箇所あるいは3箇所に設けること。このようにすれば、被クリップ部に対するクリップ力を強くできる。
・ホルダ基板111を合成樹脂によって構成するとともに、輪郭メッキ39及び装飾メッキ40,401を非電解メッキによって構成すること。
【0056】
・架設部23とホールド部12及びフック部13との間を円弧状にしたり、架設部23そのものを円弧状のアーチ形状にしたりして、架設部23や、架設部23とホールド部12及びフック部13との間に集中応力が形成されないようにすること。
【0057】
・スポット模様41を発光ダイオードランプやエレクトロルミネッセンス等の発光体に代えて、ホールドされた携帯電話71の着信時等に点灯あるいは点滅されるように構成すること。
【0058】
・フック部13に紐又は鎖を設け、その紐又は鎖の先端にはズボン72のベルトループ等にかけるリングやフックを設けること。
【符号の説明】
【0059】
11…クリップホルダ
12…ホールド部
13…フック部
22…間隙
32…バネ片
36…滑止め
39…輪郭メッキ
40…装飾メッキ
56…非印刷部
81…集積回路チップ
111…ホルダ基板
401…装飾メッキ