(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】半導体ダイのピックアップ装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/67 20060101AFI20240826BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
H01L21/68 E
H01L21/52 F
(21)【出願番号】P 2022567917
(86)(22)【出願日】2020-12-08
(86)【国際出願番号】 JP2020045600
(87)【国際公開番号】W WO2022123645
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-05-01
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 徹
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-182278(JP,A)
【文献】特開2019-054209(JP,A)
【文献】特開2010-056466(JP,A)
【文献】特開2005-117019(JP,A)
【文献】特開2019-121775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/67
H01L 21/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハシートの表面に貼り付けられた半導体ダイをピックアップする半導体ダイのピックアップ装置であって、
前記ウェーハシートの裏面を吸着する吸着面と前記吸着面に設けられた矩形の開口とを含むステージと、
前記ステージの前記開口の中に配置され、先端面が前記吸着面より突出するように移動する柱状移動要素と、
前記柱状移動要素の周囲に入れ子状に配置され、環状先端面が前記吸着面より突出するように移動する複数の環状移動要素と、を含み、
前記柱状移動要素は、矩形の柱状部材であり、前記先端面と各側面との各角部に複数の凹部が設けられており、
各前記環状移動要素は、矩形の環状部材であり、前記環状先端面と各外側面との各角部に複数の外側凹部が設けられており、
前記複数の凹部と、前記複数の外側凹部とは、移動方向に対して傾斜した方向に延びる矩形の溝形断面形状で
あり、
前記複数の凹部は前記先端面の一部を切欠き、前記複数の外側凹部は前記環状先端面の幅方向の一部を切り欠くこと、
を特徴とする半導体ダイのピックアップ装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の半導体ダイのピックアップ装置であって、
前記柱状移動要素の側面に設けられた各凹部の前記側面の幅方向の各位置と、
前記環状移動要素の外側面に設けられた各外側凹部の前記外側面の幅方向の各位置とは互いにずれていること、
を特徴とする半導体ダイのピックアップ装置。
【請求項3】
請求項1又は
2に記載の半導体ダイのピックアップ装置であって、
前記半導体ダイをピックアップする際に、
全ての前記環状移動要素の前記環状先端面と前記柱状移動要素の前記先端面とを前記吸着面より同一の高さまで突出させた後、
内周側に配置される前記環状移動要素の前記環状先端面を外周側に配置される前記環状移動要素の前記環状先端面よりも順次突出させ、その後、前記柱状移動要素の前記先端面を内周側に配置される前記環状移動要素の前記環状先端面よりも突出させること、
を特徴とする半導体ダイのピックアップ装置。
【請求項4】
請求項1又は
2に記載の半導体ダイのピックアップ装置であって、
前記半導体ダイをピックアップする際に、
全ての前記環状移動要素の前記環状先端面と前記柱状移動要素の前記先端面とを前記吸着面より同一の高さまで突出させた後、
複数の前記環状移動要素の内、外周側に配置される前記環状移動要素から内周側に配置される前記環状移動要素の順に前記環状先端面を前記吸着面より下降させ、その後、前記柱状移動要素の前記先端面を前記吸着面より下降させること、
を特徴とする半導体ダイのピックアップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハシートから半導体ダイをピックアップする半導体ダイのピックアップ装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ダイは、6インチや8インチの大きさのウェーハを所定の大きさに切断して製造される。切断の際には切断した半導体ダイがバラバラにならないように、裏面にウェーハシートを貼り付け、表面側からダイシングソーなどによってウェーハを切断する。この際、裏面に貼り付けられたウェーハシートは若干切り込まれるが切断されないで各半導体ダイを保持した状態となっている。そして切断された各半導体ダイは一つずつウェーハシートからピックアップされてダイボンディング等の次の工程に送られる。
【0003】
ウェーハシートから半導体ダイをピックアップする方法としては、円板状の吸着駒の表面にウェーハシートを吸着させ、半導体ダイをコレットに吸着させた状態で、吸着駒の中央部に配置された突き上げブロックで半導体ダイを突き上げると共に、コレットを上昇させて、半導体ダイをウェーハシートからピックアップする方法が提案されている(例えば、特許文献1の
図9ないし23参照)。
【0004】
また、円板状のエジェクターキャップの表面にウェーハシートを吸着させ、半導体ダイをコレットに吸着させた状態で、コレット及び、周辺、中間、中央の各突き上げブロックをエジェクターキャップの表面より高い所定の高さまで上昇させた後、コレットの高さをそのままの高さとし、周囲の突き上げブロック、中間の突き上げブロック、の順に突き上げブロックをエジェクターキャップ表面よりも下の位置まで降下させて半導体ダイからウェーハシートを剥離する方法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4945339号公報
【文献】米国特許第8092645号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1、2に記載された方法で半導体ダイからウェーハシートを剥離させる場合、特許文献1の
図40、42、44、特許文献2の
図4Aないし4D、
図5Aないし5Dに記載されているように、半導体ダイの突き上げブロックの外側端が当たる部分で半導体ダイに曲げ応力が発生し、半導体ダイが損傷する場合があった。
【0007】
一方、特許文献1、2に記載された方法によって半導体ダイをウェーハシートからピックアップするためには、ウェーハシートの引き剥がし力を大きくするために突き上げユニット外側端から外側に張り出す半導体ダイのオーバーハング量を大きくする必要がある。この場合、突き上げブロックの外周縁に位置する部分での曲げ半径が大きくなり、更に過大な応力がダイにかかる。そのため、半導体ダイの突き上げブロックの外周縁に位置する部分での曲げ応力が大きくならないようにウェーハシートの剥がれ速度に合わせて突き上げブロックをゆっくりと上昇させることが必要であった。
【0008】
このため、従来技術の方法では、ウェーハシートから半導体ダイをピックアップする速度が遅くなってしまうという問題があった。
【0009】
一方、ウェーハシートから半導体ダイをピックアップする時間を短くする要求がある。
【0010】
そこで、本発明は、ウェーハシートから半導体ダイをピックアップする時間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の半導体ダイのピックアップ装置は、ウェーハシートの表面に貼り付けられた半導体ダイをピックアップする半導体ダイのピックアップ装置であって、ウェーハシートの裏面を吸着する吸着面と吸着面に設けられた矩形の開口とを含むステージと、ステージの開口の中に配置され、先端面が吸着面より突出するように移動する柱状移動要素と、柱状移動要素の周囲に入れ子状に配置され、環状先端面が吸着面より突出するように移動する複数の環状移動要素と、を含み、柱状移動要素は、矩形の柱状部材であり、先端面と各側面との各角部に複数の凹部が設けられており、各環状移動要素は、矩形の環状部材であり、環状先端面と各外側面との各角部に複数の外側凹部が設けられており、複数の凹部と、複数の外側凹部とは、移動方向に対して傾斜した方向に延びる矩形の溝形断面形状であり、複数の凹部は先端面の一部を切欠き、複数の外側凹部は環状先端面の幅方向の一部を切り欠くこと、を特徴とする。
【0012】
このように柱状移動要素の先端面の角部に複数の凹部を設けることにより、矩形の先端面の外周縁に溝状の切欠きが形成される。また、先端面の切欠きの無い部分の外周端と側面との接続線は先端面の側辺を形成する。そして、側辺と切欠きを構成する一つの辺との接続点は切欠きの外角部を構成する。柱状移動要素を上方向に移動させるとウェーハシートは切欠きを構成する一つの辺と先端面の側辺とを起点に下方向に引っ張られる。このため、一つの辺と側辺との接続点にある外角部がウェーハシートの剥がれの起点になる。外角部は、先端面に多数配置されているので、ウェーハシートは、多数の剥がれの起点から剥がれ始める。このため、ウェーハシートを短時間で剥がすことができる。また、ウェーハシートの剥がれる速度が速くなるので、柱状状移動要素を上昇させる速度を凹部が無い場合に比べて早くすることができ、ウェーハシートからの半導体ダイのピックアップ速度を早くし、ピックアップ時間を短縮することができる。
【0013】
また、真空に引かれる切欠きの上に位置する半導体ダイは溝状の切欠きを構成する辺で支持されるので、柱状移動要素の先端面の切欠きのある部分に位置する半導体ダイの曲げ応力を低減することができる。これにより、半導体ダイに係る曲げ応力を低減し、半導体ダイをピックアップする際の半導体ダイの損傷の発生を抑制することができる。また、柱状移動要素の先端面に矩形の溝状の切欠きを容易に形成することができる。更に、各環状移動要素の外側面にそれぞれ外側凹部を設けることにより、柱状移動要素と同様、環状移動要素の環状先端面には、複数の切欠きと複数の外角部が形成される。そして、環状先端面に多数配置されている外角部を剥がれの起点として半導体ダイから剥がれ始め、ウェーハシートを短時間で剥がすことができる。また、ウェーハシートの剥がれる速度が速くなるので、環状移動要素を上昇させる速度を外側凹部が無い場合に比べて早くすることができ、ウェーハシートからの半導体ダイのピックアップ速度を早くすることができる。これにより、半導体ダイのピックアップの時間を短縮することができる。
【0020】
本発明の半導体ダイのピックアップ装置において、柱状移動要素の側面に設けられた各凹部の側面の幅方向の各位置と、環状移動要素の外側面に設けられた各外側凹部の外側面の幅方向の各位置とは互いにずれてもよい。
【0021】
これにより、柱状移動要素、各環状移動要素を上昇させる際の剥がれの開始点の位置がずれるので、ウェーハシートの全体的な剥がれを促進でき、半導体ダイのピックアップ速度を早くすることができる。また、半導体ダイのピックアップの時間を短縮することができる。
【0022】
本発明の半導体ダイのピックアップ装置において、半導体ダイをピックアップする際に、全ての環状移動要素の環状先端面と柱状移動要素の先端面とを吸着面より同一の高さまで突出させた後、内周側に配置される環状移動要素の環状先端面を外周側に配置される環状移動要素の環状先端面よりも順次突出させ、その後、柱状移動要素の先端面を内周側に配置される環状移動要素の環状先端面よりも突出させてもよい。
【0023】
本発明の半導体ダイのピックアップ装置において、半導体ダイをピックアップする際に、全ての環状移動要素の環状先端面と柱状移動要素の先端面とを吸着面より同一の高さまで突出させた後、複数の環状移動要素の内、外周側に配置される環状移動要素から内周側に配置される環状移動要素の順に環状先端面を吸着面より下降させ、その後、柱状移動要素の先端面を吸着面より下降させてもよい。
【0024】
これにより、半導体ダイの外周側から中央に向かってウェーハシートを段階的に剥がすことができ、半導体ダイの損傷を抑制しつつ、半導体ダイのピックアップを行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、ウェーハシートから半導体ダイをピックアップする時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施形態の半導体ダイのピックアップ装置の構成を示す系統図である。
【
図2】
図1に示す半導体ダイのピックアップ装置のステージを示す斜視図である。
【
図3】
図2に示すステージに配置された柱状移動要素と第1環状移動要素を示す斜視図であって、柱状移動要素の先端面が第1環状移動要素の環状先端面よりも上方向に突出した状態を示す図である。
【
図4】
図2に示すステージと、ステージに配置された柱状移動要素と第1、第2環状移動要素とを示す平面図である。
【
図5】半導体ダイのピックアップ動作の説明図であって、柱状移動要素の先端面と第1、第2環状移動要素の第1、第2環状先端面とがウェーハシート12の裏面に接するよう位置まで柱状移動要素と第1、第2環状移動要素とを上昇させると共に、コレットの下面が半導体ダイ15の表面に接するようにコレットを下降させた状態を示す立面図である。
【
図6】半導体ダイのピックアップ動作を示す図であって、
図5に示す状態から柱状移動要素と第1、第2環状移動要素とコレットとを上昇させた状態を示す立面図である。
【
図7】
図6に示す状態における第2環状移動要素の切欠きとウェーハシートの剥がれの起点を説明するための平面図であって、
図4に示すB部と
図6に示すC部の詳細平面図である。
【
図8】半導体ダイのピックアップ動作を示す図であって、
図6に示す状態から柱状移動要素と第1環状移動要素とコレットとを上昇させた状態を示す立面図である。
【
図9】半導体ダイのピックアップ動作を示す図であって、
図8に示す状態から柱状移動要素とコレットとを上昇させた状態を示す立面図である。
【
図10】半導体ダイのピックアップ動作を示す図であって、
図9に示す状態からコレットを上昇させた状態を示す立面図である。
【
図11】半導体ダイの他のピックアップ動作を示す図であって、
図6に示す状態から第2環状移動要素を下降させた状態を示す図である。
【
図12】半導体ダイの他のピックアップ動作を示す図であって、
図11に示す状態から第1環状移動要素を下降させた状態を示す立面図である。
【
図13】ステージに配置された他の形状の柱状移動要素と他の形状の第1、第2環状移動要素を示す斜視図であって、柱状移動要素の先端面が第1、第2環状移動要素の第1、第2環状先端面よりも上方向に突出した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら実施形態の半導体ダイのピックアップ装置100について説明する。
図1に示すように、実施形態の半導体ダイのピックアップ装置100は、ウェーハホルダ10と、ステージ20と、コレット18と、ウェーハホルダ水平方向駆動部61と、ステージ上下方向駆動部62と、コレット駆動部63と、真空弁64、65と、制御部70と、を備えている。
【0028】
ウェーハホルダ10は、フランジ部を持つ円環状のエキスパンドリング16とリング押さえ17とを備えており、ウェーハ11を切断した半導体ダイ15が表面12aに貼り付けられたウェーハシート12を保持する。ウェーハホルダ10は、ウェーハホルダ水平方向駆動部61により水平方向に移動する。
【0029】
ここで、半導体ダイ15が表面12aに貼り付けられたウェーハシート12は、次のように、ウェーハホルダ10に保持される。ウェーハ11は裏面にウェーハシート12が貼り付けられており、ウェーハシート12の外周部には金属製のリング13に取付けられている。ウェーハ11は切断工程で表面側からダイシングソーなどによって切断されて各半導体ダイ15となり、各半導体ダイ15の間にはダイシングの際に隙間14が出来る。ウェーハ11を切断してもウェーハシート12は切断されておらず、各半導体ダイ15はウェーハシート12によって保持されている。
【0030】
半導体ダイ15が表面12aに貼り付けられたウェーハシート12のリング13をエキスパンドリング16のフランジの上に載置し、
図1中の矢印80に示すように上からリング抑え17でリング13をエキスパンドリング16のフランジの上に押し付けてフランジの上に固定する。これにより、半導体ダイ15が表面12aに貼り付けられたウェーハシート12がウェーハホルダ10に保持される。
【0031】
ステージ20は、ウェーハホルダ10の下面に配置されている。ステージ20は、本体21と、柱状移動要素30と、内周側に配置される環状移動要素である第1環状移動要素40と、外周側に配置される環状移動要素である第2環状移動要素50と、リンク機構28と、モータ29とを備えている。ステージ20は、ステージ上下方向駆動部62によって上下方向に移動する。ステージ20と、柱状移動要素30と第1、第2環状移動要素40、50と、の詳細構造については、後で、
図2~4を参照しながら説明する。
【0032】
コレット18は、ウェーハシート12の上側に配置されて下面に半導体ダイ15を吸着保持すると共に半導体ダイ15をウェーハシート12の表面12aからピックアップする。コレット18は、内部に半導体ダイ15を下面に真空吸着するための吸引孔19が設けられている。吸引孔19は、真空弁65を介して図示しない真空装置に接続されている。コレット18は、コレット駆動部63により、上下左右方向に移動する。
【0033】
ウェーハホルダ水平方向駆動部61と、ステージ上下方向駆動部62と、コレット駆動部63と、真空弁64、65と、モータ29とは、制御部70に接続されており、制御部70の指令によって動作する。制御部70は、内部に情報処理を行うプロセッサであるCPU71と、プログラム等を格納するメモリ72とを含むコンピュータである。
【0034】
次に、
図2~
図4を参照しながらステージ20と、柱状移動要素30と、第1、第2環状移動要素40、50と、の詳細構造について説明する。尚、以下の説明では、柱状移動要素30の側面33、第1、第2環状移動要素40、50の外側面43、53の面に沿った水平方向を第1の幅方向、柱状移動要素30の側面34、第1、第2環状移動要素40、50の外側面44、54の面に沿った水平方向を第2の幅方向として説明する。
【0035】
図2に示すように、ステージ20の本体21は、円筒形で円形の上端板22を備えている。上端板22の上面はウェーハシート12の裏面12bを吸着する吸着面22aを構成する。上端板22の中央には、上端板22を貫通する矩形の開口23が設けられている。開口23の中には、柱状移動要素30と、柱状移動要素30の周囲に入れ子状に配置された第1環状移動要素40と、第2環状移動要素50とが配置されている。
図1に示すように、柱状移動要素30と第1、第2環状移動要素40、50とは本体21の内部に格納されたリンク機構28に接続されている。リンク機構28はモータ29で駆動されて柱状移動要素30と第1、第2環状移動要素40、50とを上下方向に移動する。
【0036】
上端板22の吸着面22aの開口23の外側には吸着溝26が設けられている。吸着溝26には、本体21の内部に接続する連通孔27が設けられている。
図1に示すように本体21の内部は、真空弁64を介して図示しない真空装置に接続されている。
【0037】
図3に示すように、柱状移動要素30は、矩形の柱状部材であり、先端面31と各側面33、34との角部38a,38bには矩形の溝形断面形状の複数の凹部32が設けられている。凹部32は、各側面33、34で先端面31まで移動方向である上下方向に延びる矩形の溝型形状である。凹部32は、第1の幅方向、第2の幅方向に所定の間隔で複数設けられている。凹部32は、2つの横面32a、32bと1つの底面32cとで構成されており、横面32a、32bと底面32cとは先端面31に3つの辺35a、35b、35cで構成される矩形の溝状の切欠き35を形成する。また、凹部32が無い部分では、先端面31と側面33との接続線は先端面31の側辺36a、36bを構成する。そして、側辺36aと切欠き35の一つの辺35aとの接続点は切欠き35の外角部37aを構成する。また、側辺36bと他の一つの辺35bとの接続点は切欠き35の外角部37bを構成する。
【0038】
第1環状移動要素40は、矩形の環状部材であり、環状先端面41と各外側面43,44との各角部48a,48bに矩形の溝形断面形状の複数の外側凹部42が設けられている。外側凹部42は、各外側面43、44で環状先端面41まで移動方向である上下方向に延びる矩形の溝型形状である。外側凹部42は、第1の幅方向、第2の幅方向に所定の間隔で複数設けられている。第1環状移動要素40は、矩形の内面49に柱状移動要素30の各側面33、34が嵌まり込むように柱状移動要素30の周囲に入れ子状に配置されている。
【0039】
柱状移動要素30の凹部32と同様、第1環状移動要素40の外側凹部42は、2つの横面42a、42bと1つの底面42cとで構成されており、横面42a、42bと底面42cとは環状先端面41に3つの辺45a、45b、45cで構成される矩形の溝状の切欠き45を形成する。また、外側凹部42が無い部分では、環状先端面41と外側面43との接続線は環状先端面41の側辺46a、46bを構成する。そして、側辺46aと切欠き45の一つの辺45aとの接続点は、切欠き45の外角部47aを構成する。また、側辺46bと他の一つの辺45bとの接続点は切欠き45の外角部47bを構成する。
【0040】
図4に示すように、第2環状移動要素50は、第1環状移動要素40と同様、矩形の環状部材であり、環状先端面51と各外側面53,54との各角部58a,58bに矩形の溝形断面形状の複数の外側凹部52が設けられている。外側凹部52は、各外側面53、54に環状先端面51まで移動方向である上下方向に延びる矩形の溝形断面形状である。外側凹部52は、第1の幅方向、第2の幅方向に所定の間隔で複数設けられている。第2環状移動要素50は、矩形の内面59に第1環状移動要素40の各外側面43、44が嵌まり込むように第1環状移動要素40の周囲に入れ子状に配置されている。
【0041】
第1環状移動要素40の外側凹部42と同様、第2環状移動要素50の外側凹部52は、2つの横面52a、52bと1つの底面52cとで構成されており、横面52a、52bと底面52cとは環状先端面51に3つの辺55a、55b、55cで構成される矩形の溝状の切欠き55を形成する。また、外側凹部52が無い部分では、環状先端面51と外側面53との接続線は環状先端面51の側辺56a、56bを構成する。そして、側辺56aと切欠き55の一つの辺55aとの接続点は、切欠き55の外角部57aを構成する。また、側辺56bと他の一つの辺55bとの接続点は切欠き55の外角部57bを構成する。
【0042】
図4に示すように、第2環状移動要素50の第1の幅方向の幅W1は、
図4中に破線で示す半導体ダイ15の第1の幅は方向の幅W2よりも小さく、開口23の第1の幅方向の幅W0は、半導体ダイ15の第1の幅方向の幅W2よりも大きい。このため、ステージ20の中心位置を半導体ダイ15の中心位置に合わせると、半導体ダイ15の外周端は、ステージ20の開口23の端面23aと第2環状移動要素50の外側面53との間の幅dの隙間Sの直上となっている。また、半導体ダイ15の外周端は第2環状移動要素50の外側面53から長さEだけオーバーハングしている。第2の幅方向についても同様である。
【0043】
また、
図4に示すように、第2環状移動要素50の外側面53の角部58aに設けられている外側凹部52の第1の幅方向の位置と、第1環状移動要素40の外側面43の角部48a、に設けられている外側凹部42の第1の幅方向の位置と、柱状移動要素30の側面33の角部38aに設けられている凹部32の第1の幅方向の位置とは互いにずれている。同様に、外側面54の角部58bに設けられた外側凹部52の第2の幅方向の位置と、外側面44の角部48bに設けられた外側凹部42の第2の幅方向の位置と、側面34の角部38bに設けられた凹部32の第2の幅方向の位置とは互いにずれている。
【0044】
従って、
図4に示すように、第2環状移動要素50の環状先端面51に形成される切欠き55と、第1環状移動要素40の環状先端面41に形成される切欠き45と、柱状移動要素30の先端面31に形成される切欠き35の第1の幅方向の位置は互いにずれている。同様に、これらの第2の幅方向の位置も互いにずれている。
【0045】
以上の様に構成された半導体ダイのピックアップ装置100を用いて半導体ダイ15をウェーハシート12からピックアップする動作について説明する。
【0046】
図5に示すように、制御部70のプロセッサであるCP71は、ウェーハホルダ水平方向駆動部61によってウェーハホルダ10を水平方向に移動させて、ステージ20の中心をピックアップしようとする半導体ダイ15の中心がステージ20の中心となるようにウェーハホルダ10の水平方向の位置を調整する。
【0047】
そして、制御部70のCPU71は、
図5中の矢印81に示す様に、
図1に示すステージ上下方向駆動部62で吸着面22aがウェーハシート12の裏面12bに接するまでステージ20を上昇させる。また、制御部70のCPU71は、
図1に示すコレット駆動部63でコレット18の中心がピックアップしようとする半導体ダイ15の中心位置となるように調整した後、
図5中に矢印82で示すように、下面が半導体ダイ15に接するまでコレット18を降下させる。
【0048】
図5に示すようにウェーハホルダ10とコレット18の位置調整が終わると、先に説明したように、半導体ダイ15の外周端は、開口23の端面23aと第2環状移動要素50の外側面53との間の幅dの隙間Sの直上となり、第2環状移動要素50の外側面53から長さEだけオーバーハングした状態となっている。
【0049】
次に、制御部70のCPU71は、
図1に示す真空弁64を開としてステージ20の本体21の内部を真空にする。吸着面22aの上の吸着溝26の空気は連通孔27を通って真空装置に引かれるので、吸着溝26が真空となり、ウェーハシート12の裏面12bは、吸着面22aの上に真空吸着される。また、CPU71は、
図1に示す真空弁65を開としてコレット18の吸引孔19を真空としてコレット18の下面に半導体ダイ15を真空吸着させる。
【0050】
次に、制御部70のCPU71は、モータ29でリンク機構28を駆動して、
図6中の矢印83に示すように、柱状移動要素30と、第1、第2環状移動要素40、50とを同一の高さまで上昇させる。また、同時にコレット駆動部63によってコレット18を上昇させる。柱状移動要素30と、第1、第2環状移動要素40、50とが上昇すると、半導体ダイ15の外周端部の下側に貼り付いているウェーハシート12は斜め下方向に引っ張られ、半導体ダイ15から剥がれようとする。
【0051】
図7に示すように、第2環状移動要素50の環状先端面51の側辺56a、56bと開口23の端面23aとの間のウェーハシート12は、側辺56a、56bを起点に下方向に引っ張られる。また、第2環状移動要素50の環状先端面51には、切欠き55が形成されているので、外側面53と開口23の端面23aとの間の隙間Sが真空となると、外側凹部52の中も真空となる。すると、ウェーハシート12は、切欠き55の2つの辺55a、55bを起点に下方向に引っ張られる。このように、ウェーハシート12は、側辺56a、56bと辺55a、55aとを起点に下方向に引っ張られる。このため、側辺56a、56bと辺55a、55bの接続点にある各外角部57a、57bがウェーハシート12の剥がれの起点となり、
図7に示す各外角部57a、57bを含む領域Fa、Fbの剥がれが発生する。発生した剥がれは、
図7中に示す矢印85a、85bの様に各外角部57a、57bから環状先端面51の内周に向かって広がっていく。このように、複数の切欠き55のそれぞれの外角部57a、57bからウェーハシート12が剥がれ始める。外角部57a、57bは環状先端面51に多数配置されているので、ウェーハシート12は多数の剥がれの起点から剥がれ始める。このため、半導体ダイ15の外周部に貼り付いているウェーハシート12を短時間で剥がすことができる。また、ウェーハシート12の剥がれる速度が速くなるので、第2環状移動要素50を上昇させる速度を外側凹部52が無い場合に比べて早くすることができ、ウェーハシート12からの半導体ダイ15のピックアップ速度を早くすることができる。これにより、半導体ダイ15をピックアップする時間を短縮することができる。
【0052】
また、真空に引かれる切欠き55の上に位置する半導体ダイ15は溝状の切欠き55を構成する3辺55a、55b、55cで支持されるので、第2環状移動要素50の環状先端面51の切欠き55のある部分に位置する半導体ダイ15の曲げ応力を低減することができる。これにより、半導体ダイ15に係る曲げ応力を低減し、半導体ダイ15をピックアップする際の半導体ダイ15の損傷の発生を抑制することができる。
【0053】
次に、制御部70のCPU71は、モータ29でリンク機構28を駆動して、
図8の矢印87に示すように、柱状移動要素30と第1環状移動要素40とを更に上昇させる。また、柱状移動要素30と第1環状移動要素40に合わせて
図8中の矢印88に示すようにコレット18を更に上昇させる。
【0054】
これにより、先に
図7を参照して説明したと同様、
図3、4に示す第1環状移動要素40の環状先端面41の複数の外角部47a、47bがウェーハシート12の剥がれの起点となり、外角部47a、47bからウェーハシート12が剥がれる。
【0055】
次に、制御部70のCPU71は、モータ29でリンク機構28を駆動して、
図9の矢印89に示すように、柱状移動要素30を更に上昇させる。また柱状移動要素30に合わせてコレット18を
図9中の矢印90の様に更に上昇させる。これにより、
図7を参照して説明したと同様、
図3、4に示す柱状移動要素30の複数の外角部37a、37bがウェーハシート12の剥がれの起点となり、外角部37a、37bからウェーハシート12が剥がれる。
【0056】
次に制御部70のCPU71は、
図10中の矢印91に示すように
図1に示すコレット駆動部63によってコレット18を上昇させて、半導体ダイ15をウェーハシート12の表面12aからピックアップする。
【0057】
以上、説明したように、実施形態の半導体ダイのピックアップ装置100は、柱状移動要素30と先端面31の多数の切欠き35の外角部37a、37bと、第1、第2環状移動要素40、50の環状先端面41、51の多数の切欠き45、55の外角部47a、47b、57a、57bを起点としてウェーハシート12を剥がすので、ウェーハシート12の剥がれの起点が多く、短時間でウェーハシート12を剥がすことができる。
【0058】
また、ウェーハシート12の剥がれの起点が第2環状移動要素50の外周縁に多く出現するので、半導体ダイ15の外周端の第2環状移動要素50の外側面53,54からのオーバーハング量を特許文献1,2に記載された従来技術よりも小さくしても十分な剥がれ力を確保することができる。これにより、半導体ダイ15の外周端のオーバーハング量を低減して第2環状要素50の角部58a,58bの近傍での半導体ダイに掛かる曲げ応力を低減して半導体ダイ15の損傷を抑制することができる。
【0059】
また、柱状移動要素30と先端面31の多数の切欠き35の幅方向の位置と第1、第2環状移動要素40、50の環状先端面41、51の切欠き45、55の幅方向の位置が互いにずれているので、剥がれの起点となる柱状移動要素30と先端面31の外角部37a、37bと、第1、第2環状移動要素40、50の環状先端面41、51の外角部47a、47b、57a、57bの幅方向の位置が互いにずれる。このため、剥がれの起点が幅方向に分散し、ウェーハシート12の全体的な剥がれを促進することができる。これにより、短時間で半導体ダイ15をピックアップすることができる。
【0060】
また、実施形態の半導体ダイのピックアップ装置100は、半導体ダイ15は溝状の切欠き55を構成する3辺55a、55b、55cで支持されるので、第2環状移動要素50の環状先端面51の切欠き55のある部分に位置する半導体ダイ15の曲げ応力を低減することができる。これにより、半導体ダイ15に係る曲げ応力を低減し、半導体ダイ15をピックアップする際の半導体ダイ15の損傷の発生を抑制することができる。
【0061】
以上の説明では、半導体ダイ15をピックアップする際に、第1、第2環状移動要素40、50の環状先端面41、51と柱状移動要素30の先端面31とを吸着面22aより同一の高さまで突出させた後、内周側に配置される第1環状移動要素40の環状先端面41を外周側に配置される第2環状移動要素50の環状先端面51よりも突出させ、その後、柱状移動要素30の先端面31を第1環状移動要素40の環状先端面41よりも突出させることとして説明したが、これに限らない。
【0062】
例えば、以下のように、第1、第2環状移動要素40、50の環状先端面41、51と柱状移動要素30の先端面31とを吸着面22aより同一の高さまで突出させた後、外周側に配置される第2環状移動要素50から内周側に配置される第1環状移動要素40の順に各環状先端面51、41を吸着面22aより下降させ、その後、柱状移動要素30の先端面31を吸着面22aより下降させるようにしてもよい。以下、
図6、
図11、12を参照しながら説明する。
【0063】
制御部70のCPU71は、
図6に示すように、モータ29によりリンク機構28を駆動して柱状移動要素30と、第1、第2環状移動要素40、50とを同一の高さまで上昇させる。これにより、先に
図7を参照して説明したように、半導体ダイ15の外周部からウェーハシート12が剥がれる。
【0064】
次に、制御部70のCPU71は、コレット18の高さを保持したまま、
図11に示す矢印92に示すように、モータ29によりリンク機構28を駆動して外周側の第2環状移動要素50の環状先端面51を吸着面22aよりも下に下降させる。これにより、
図8を参照して説明したと同様、
図3、4に示す第1環状移動要素40の環状先端面41の複数の外角部47a、47bがウェーハシート12の剥がれの起点となり、外角部47a、47bからウェーハシート12が剥がれる。
【0065】
次に制御部70のCPU71は、コレット18の高さを保持したまま、
図12に示す矢印93に示すように、モータ29によりリンク機構28を駆動して内周側の第1環状移動要素40の環状先端面41を吸着面22aよりも下に下降させる。これにより、
図9を参照して説明したと同様、
図3、4に示す柱状移動要素30の先端面31の複数の外角部37a、37bがウェーハシート12の剥がれの起点となり、外角部37a、37bからウェーハシート12が剥がれる。
【0066】
そして、制御部70のCPU71は、
図10を参照して説明したように、コレット駆動部63でコレット18を上昇させて半導体ダイ15をピックアップする。
【0067】
この動作でも、先に説明した動作と同様、短時間でウェーハシート12を剥がすことができ、半導体ダイ15に加わる曲げ応力を低減することができる。
【0068】
次に、
図13を参照しながら、ステージ20に配置された他の形状の柱状移動要素130と他の形状の第1環状移動要素140について説明する。
【0069】
図13に示す柱状移動要素130は、先に
図3、4を参照して説明した柱状移動要素30の先端面31と各側面33、34との角部38a,38bに設けられた凹部32が移動方向である上下方向から傾斜する方向に延びる矩形の溝型形状である点以外は、先に説明した柱状移動要素30と同一であり、先端面31には、柱状移動要素30と同一の切欠き35が形成される。
【0070】
また、
図13に示す第1環状移動要素140は、先に
図3、4を参照して説明した第1環状移動要素40の環状先端面41と各外側面43,44との各角部48a,48bに設けられた外側凹部42が移動方向である上下方向から傾斜する方向に延びる矩形の溝型形状である点以外は、先に説明した第1環状移動要素40と同一であり、環状先端面41には、第1環状移動要素40と同一の切欠き45が形成される。
【0071】
図13には、図示していないが、第2環状移動要素50の環状先端面51と各外側面53,54との各角部58a,58bに設けられた外側凹部52を移動方向である上下方向から傾斜する方向に延びる矩形の溝型形状として第2環状移動要素150としてもよい。
【0072】
このように構成された、柱状移動要素130、第1、第2環状移動要素140、150をステージ20の開口23の中に配置して半導体ダイのピックアップ装置200(図示せず)を構成した場合、その作用効果は先に説明した半導体ダイのピックアップ装置100と同一である。
【0073】
尚、柱状移動要素30、130の凹部32と、第1環状移動要素40、140の外側凹部42と、第2環状移動要素50、150の外側凹部52とは矩形の溝形断面形状として説明したが、これに限らず、例えば、U字型、半円形の溝形断面形状としてもよい。
【0074】
また、以上の説明では、ステージ20の開口23の中に柱状移動要素30、第1、第2環状移動要素40、50の複数の環状移動要素を入れ子状に配置することとして説明したがこれに限らず、例えば、柱状移動要素30と第1環状移動要素40を開口23の中に入れ子状に配置してもよいし、柱状移動要素30のみを開口23の中に配置してもよい。また、複数の環状移動要素の数は、ピックアップする半導体ダイ15の大きさや、ウェーハシート12の厚さ、材質等により適宜選択してもよく、開口23の中に柱状移動要素30と3つ以上の環状移動要素を配置してもよい。
【符号の説明】
【0075】
10 ウェーハホルダ、11 ウェーハ、12 ウェーハシート、12a 表面、12b 裏面、13 リング、14 隙間、15 半導体ダイ、16 エキスパンドリング、18 コレット、19 吸引孔、20 ステージ、21 本体、22 上端板、22a 吸着面、23 開口、23a 端面、26 吸着溝、27 連通孔、28 リンク機構、29 モータ、30、130 柱状移動要素、31 先端面、32 凹部、32a、32b、42a、42b、52a、52b 横面、32c、42c、52c 底面、33、34 側面、35、45、55 切欠き、35a、35b、45a、45b、55a、55b 辺、36a、36b 側辺、37a、37b、47a、47b、57a、57b 外角部、38a,38b,48a,48b,58a,58b 角部、40、140 第1環状移動要素、41、51 環状先端面、42、52 外側凹部、43、44、53、54 外側面、49、59 内面、50、150 第2環状移動要素、61 ウェーハホルダ水平方向駆動部、62 ステージ上下方向駆動部、63 コレット駆動部、64、65 真空弁、70 制御部、71 CPU、72 メモリ、100、200 半導体ダイのピックアップ装置。