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  • 特許-ワイヤボンディング装置 図1
  • 特許-ワイヤボンディング装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】ワイヤボンディング装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20240826BHJP
【FI】
H01L21/60 301J
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023138659
(22)【出願日】2023-08-29
【審査請求日】2024-03-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋山 真一
(72)【発明者】
【氏名】リー ビョン ドク
【審査官】金田 孝之
(56)【参考文献】
【文献】特許第5117462(JP,B2)
【文献】特開2012-256861(JP,A)
【文献】特開2010-123854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/447-H01L 21/449
H01L 21/60 -H01L 21/607
B23K 20/00 -B23K 20/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤが挿通され、先端から延出させた前記ワイヤをボンディング対象にボンディングするキャピラリと、
前記キャピラリを超音波振動させる超音波振動子と、
前記キャピラリと連動して上下方向に移動して前記ワイヤの把持、開放を行うクランパと、
前記キャピラリの移動と、前記クランパの開閉と、前記超音波振動子の動作とを調整する制御部と、を備えるワイヤボンディング装置であって、
前記制御部は、
前記クランパを閉とした状態で前記キャピラリを下降させて前記キャピラリの先端を前記ボンディング対象に接地させた後に、前記超音波振動子で前記キャピラリを超音波加振して前記ワイヤの前記ボンディング対象への超音波接合を開始し、
前記超音波接合の開始後、所定期間が経過した後に前記クランパを開とし、
前記クランパが全開した後、前記超音波接合を停止し、
前記所定期間を前記超音波接合の期間に応じて変化させること、
を特徴とするワイヤボンディング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤボンディング装置であって、
前記所定期間は、前記超音波接合の期間の10%から90%であること、
を特徴とするワイヤボンディング装置。
【請求項3】
請求項2に記載のワイヤボンディング装置であって、
前記制御部は、
前記超音波接合の開始後前記クランパが全開するまでの期間が、前記超音波接合の期間よりも長くなる場合には、前記超音波接合の期間を前記クランパが全開するまで延長すること、
を特徴とするワイヤボンディング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤボンディング装置のクランパの動作制御に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップのパッドとリードフレームのリードとの間を金属のワイヤで接続するワイヤボンディング装置が用いられている。ワイヤボンディング装置では、キャピラリの先端にワイヤを延出させ、このワイヤを放電トーチ等によってイニシャルボールとした後、キャピラリを第1ボンド点にボンディングし、その後ワイヤを繰り出しながらキャピラリを上昇させ、第2ボンド点に向かってルーピングした後、キャピラリを第2ボンド点にボンディングする。そして、第2ボンド点へのボンディングが終了したら、キャピラリを上昇させてキャピラリの先端にワイヤを繰り出し、その後クランパを閉にして更にキャピラリとクランパとを上昇させることにより、キャピラリの先端に所定の長さのテールワイヤを延出させた状態でワイヤを切断する。そして、キャピラリを次の第1ボンド点の上に移動させながら、放電トーチからのスパークによってテールワイヤをイニシャルボールに形成する。その後、次の第1ボンド点にボンディングを行う。このようなボンディングサイクルを繰り返してパッドとリードとの間を順次接続していく(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5117462号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された従来技術によってワイヤボンディングを行う場合、第2ボンド点へのワイヤの接合が不十分となり、テールワイヤの延出ができず、ボンディング装置が停止してしまう場合がある。
【0005】
そこで、本開示は、ワイヤボンディング装置において、テールワイヤの延出不良を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のワイヤボンディング装置は、ワイヤが挿通され、先端から延出させたワイヤをボンディング対象にボンディングするキャピラリと、キャピラリを超音波振動させる超音波振動子と、キャピラリと連動して上下方向に移動してワイヤの把持、開放を行うクランパと、キャピラリの移動と、クランパの開閉と、超音波振動子の動作とを調整する制御部と、を備えるワイヤボンディング装置であって、制御部は、クランパを閉とした状態でキャピラリを下降させてキャピラリの先端をボンディング対象に接地させた後に、超音波振動子でキャピラリを超音波加振してワイヤのボンディング対象への超音波接合を開始し、超音波接合の開始後、所定期間が経過した後にクランパを開とし、クランパが全開した後、超音波接合を停止し、所定期間を超音波接合の期間に応じて変化させること、を特徴とする。
【0007】
このように、超音波接合の開始からクランパを開とするまでの所定期間を調整可能とすることにより、ワイヤを第2ボンド点に確実にボンディングしてからクランパを開にできるので、テールワイヤの延出不良を抑制することができる。
【0008】
本開示のワイヤボンディング装置において、所定期間は、超音波接合の期間の10%から90%としてもよい。
【0009】
これにより、ワイヤを第2ボンド点に確実にボンディングしてからクランパを開にできるので、テールワイヤの延出不良を抑制することができる。
【0010】
本開示のワイヤボンディング装置において、制御部は、超音波接合の開始後クランパが全開するまでの期間が、超音波接合の期間よりも長くなる場合には、超音波接合の期間をクランパが全開するまで延長してもよい。
【0011】
これにより、クランパが全開してから超音波接合を停止できるので、ワイヤを第2ボンド点に確実にボンディングしてからクランパを開にできるので、テールワイヤの延出不良を抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示は、ワイヤボンディング装置において、テールワイヤの延出不良を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態のワイヤボンディング装置の構成を示す立面図である。
図2】実施形態のワイヤボンディング装置を用いて半導体チップとリードとの間にワイヤをボンディングする工程を示す説明図である。
図3】超音波接合とクランパの開タイミングを示すタイミングチャートである。
図4】実施形態のワイヤボンディング装置を用いてテールワイヤを延出する工程を示す説明図である。
図5】超音波接合期間を延長した場合のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら実施形態のワイヤボンディング装置100について説明する。図1に示す様に、実施形態のワイヤボンディング装置100は、ベース10と、XYテーブル11と、ボンディングヘッド12と、Z方向モータ13と、ホーンホルダ14と、超音波ホーン15と、超音波振動子16と、キャピラリ20と、クランパ17と、クランパ駆動部17aと、放電電極18と、ボンディングステージ19と、制御部60とを備えている。なお、以下の説明では、ホーンホルダ14又は超音波ホーン15の延びる方向をX方向、水平面でX方向と直角方向をY方向、上下方向をZ方向として説明する。
【0015】
XYテーブル11は、ベース10の上に取付けられて上側に搭載されるものをXY方向に移動させる。
【0016】
ボンディングヘッド12は、XYテーブル11の上に取付けられてXYテーブル11によってXY方向に移動する。ボンディングヘッド12の中には、Z方向モータ13とZ方向モータ13によって駆動されるホーンホルダ14とが格納されている。Z方向モータ13は、固定子13bを備えている。ホーンホルダ14は、根元部14aがZ方向モータ13の固定子13bに対向し、Z方向モータ13のシャフト13aの周りに回転自在に取付けられる回転子となっている。ホーンホルダ14の先端の内部には超音波振動子16が取付けられている。
【0017】
ホーンホルダ14のX方向の先端には超音波ホーン15が取付けられており、超音波ホーン15の先端にはキャピラリ20が取付けられている。超音波ホーン15は、超音波振動子16の振動により先端に取付けられたキャピラリ20を超音波加振する。キャピラリ20は内部に上下方向に貫通する貫通孔が設けられており、貫通孔にはワイヤ41が挿通されている。
【0018】
また、超音波ホーン15の上側には、クランパ17とクランパ駆動部17aが設けられている。クランパ17はキャピラリ20と連動して上下方向に移動し、クランパ駆動部17aの動作により開閉してワイヤ41の把持、開放を行う。
【0019】
ボンディングステージ19の上側には放電電極18が設けられている。放電電極18は、ベース10に設けられた図示しないフレームに取付けられても良い。放電電極18は、キャピラリ20に挿通してキャピラリ20の先端25から延出したテールワイヤ46(図4参照)との間で放電を行い、テールワイヤ46を溶融させてイニシャルボール42を形成する。
【0020】
ボンディングステージ19は、上面に半導体チップ35が実装された基板30を吸着固定するとともに、図示しないヒータによって基板30と半導体チップ35とを加熱する。
【0021】
ボンディングヘッド12のZ方向モータ13の固定子13bの電磁力によって回転子を構成するホーンホルダ14の根元部14aが図1中の矢印91に示す様に回転すると、超音波ホーン15の先端に取付けられたキャピラリ20は矢印92に示す様にZ方向に移動する。また、ボンディングステージ19はXYテーブル11によってXY方向に移動する。従って、キャピラリ20は、XYテーブル11とZ方向モータ13によってXYZ方向に移動する
【0022】
制御部60は、内部に情報処理を行うプロセッサであるCPU61と、動作プログラムや動作データ等を格納するメモリ62とを含むコンピュータである。制御部60の動作は、メモリ62に格納された動作プログラムをCPU61が実行することにより実現される。
【0023】
XYテーブル11と、Z方向モータ13と、超音波振動子16と、クランパ駆動部17aと、放電電極18と、ボンディングステージ19とは制御部60に接続されており、制御部60の指令に基づいて動作する。
【0024】
次に、図2から図4を参照しながら実施形態のワイヤボンディング装置100の動作について説明する。以下の説明では、半導体チップ35のパッド36から基板30のリード31に向かってワイヤ41をボンディングする動作について説明する。この場合、パッド36は第1ボンド点となり、リード31は第2ボンド点となる。また、基板30と半導体チップ35はワイヤ41をボンディングするボンディング対象となる。
【0025】
図2に示すように、制御部60は、放電電極18とキャピラリ20の先端25から延出したテールワイヤ46(図4参照)との間で放電を行い、テールワイヤ46を溶融させてイニシャルボール42を形成する。そして、制御部60は、XYテーブル11によってキャピラリ20の中心軸をパッド36の中心に合わせる。
【0026】
制御部60は、クランパ駆動部17aによりクランパ17を閉とし、Z方向モータ13を駆動して図2中の矢印93に示すように、キャピラリ20を下降させ、イニシャルボール42をパッド36の上に押圧して円板状の圧着ボール43を形成する。この際、制御部60は、超音波振動子16によりキャピラリ20を超音波振動させる。これにより、圧着ボール43をパッド36に超音波接合する。
【0027】
次に、制御部60は、クランパ駆動部17aを駆動してクランパ17を開とし、XYテーブル11とZ方向モータ13を駆動して図2中の矢印94で示すように、キャピラリ20を上昇させた後、図2中の矢印95aで示すようにリード31の中心に向かってルーピングさせる。この際、クランパ17は開となっているので、キャピラリ20の先端25からワイヤ41が繰り出される。
【0028】
キャピラリ20の中心がリード31の中心位置の直上となったら、制御部60は、クランパ駆動部17aを駆動してクランパ17を閉とし、図2中の矢印95bで示すようにZ方向モータ13を駆動してキャピラリ20を下降させ、先端25をリード31に接地させ、キャピラリ20でワイヤ41をリード31に押圧する。これにより、ループ部45が形成される。
【0029】
図3に示す時刻t1にキャピラリ20の先端25がリード31に接地すると、制御部60は、時刻t1に超音波振動子16の駆動を開始する。そして、制御部60は、キャピラリ20の先端25でワイヤ41をリード31に押圧しながら超音波振動子16を駆動してキャピラリ20を超音波振動させ、ワイヤ41をリード31に超音波接合する。そして、制御部60は、図3の時刻t4に超音波振動子16の駆動を停止し、超音波接合を終了する。図3に示すように、この超音波接合の期間ΔUSは、ΔUS=[t4-t1]である。超音波接合が終了すると、図2に示すように、リード31の上にステッチボンド部44が形成される。
【0030】
制御部60は、超音波接合の開始される時刻t1から所定期間DLだけ遅れた時刻t2にクランパ駆動部17aを駆動してクランパ17を閉状態から開状態とする。クランパ17は、時刻t2に全閉状態から開き始め、時刻t3に全開となる。この所定期間DLは、超音波接合の期間ΔUSの10%~90%に設定する。従って、超音波接合の期間ΔUSが長くなると所定期間DLも長くなり、超音波接合の期間ΔUSが短くなると、所定期間DLも短くなる。このように、ワイヤボンディング装置100は、超音波接合の期間ΔUSに応じて所定期間DLを変化させることができる。
【0031】
制御部60は、超音波接合が終了したら、図4中の矢印96に示すように、クランパ17を開として、キャピラリ20を上昇させてキャピラリ20の先端25にテールワイヤ46を繰り出す。その後、制御部60は、クランパ駆動部17aを駆動してクランパ17を閉として、図4中の矢印97に示すように、キャピラリ20とクランパ17とを上昇させる。これにより、キャピラリ20の先端25に延出させたテールワイヤ46をステッチボンド部44から切断する。
【0032】
その後、制御部60は、キャピラリ20を次のパッド36の上に移動させながら、放電電極18からのスパークによってテールワイヤ46をイニシャルボール42に形成する。そして、制御部60は、図2を参照して説明したと同様、次のパッド36にボンディングを行う。
【0033】
以上説明したワイヤボンディング装置100は、超音波接合の開始からクランパ17を開とするまでの所定期間DLを超音波接合の期間ΔUSに応じて変化させることができる。これにより、ワイヤ41をリード31に確実にボンディングしてからクランパ17を開にできるので、テールワイヤ46の延出不良を抑制することができる。また、所定期間DLを超音波接合の期間ΔUSの10%~90%に設定するので、超音波接合の期間ΔUSの終了直前にクランパ17を開とすることがなくなり、ワイヤ41をリード31に確実にボンディングしてからクランパ17を開にでき、テールワイヤ46の延出不良を抑制することができる。
【0034】
次に図5を参照しながらワイヤボンディング装置100の他の動作について説明する。図5に示すように、制御部60は、超音波接合の開始される時刻t1から所定期間DLだけ遅れた時刻t5にクランパ駆動部17aを駆動してクランパ17を閉状態から開状態とする。クランパ17は、時刻t5に全閉状態から開き始める。クランパ17は、超音波接合の終了する時刻t4では、まだ全開となっていない。そして、クランパ17は、時刻t4の後の時刻t6に全開となる。このように、超音波接合の開始後、クランパ17が全開するまでの期間DAが、超音波接合の期間ΔUSよりも長くなる場合には、制御部60は、超音波接合の期間ΔUSをクランパ17が全開する時刻t6まで延長期間ΔTAだけ延長する。これにより、超音波接合はクランパ17が全開となる時刻t6に終了する。
【0035】
これにより、クランパ17が開き切らないうちに超音波加振が停止してリード31へのワイヤ41のボンディングが不十分となり、テールワイヤ46の延出不良が発生することを抑制できる。
【0036】
以上、半導体チップ35のパッド36から基板30のリード31に向かってワイヤ41をボンディングする動作について説明したが、この逆に、リード31からパッド36に向かってワイヤ41をボンディングするようにしてもよい。この場合、リード31が第1ボンド点となり、パッド36は第2ボンド点となる。そして、イニシャルボール42をリード31にボンディングし、図3に示すように超音波振動子16を駆動してクランパ17を開とてパッド36にワイヤ41をボンディングした後、キャピラリ20を上昇させてテールワイヤ46を延出させる。
【符号の説明】
【0037】
10 ベース、11 XYテーブル、12 ボンディングヘッド、13 Z方向モータ、13a シャフト、13b 固定子、14 ホーンホルダ、14a 根元部、15 超音波ホーン、16 超音波振動子、17 クランパ、17a クランパ駆動部、18 放電電極、19 ボンディングステージ、20 キャピラリ、25 先端、30 基板、31 リード、35 半導体チップ、36 パッド、41 ワイヤ、42 イニシャルボール、43 圧着ボール、44 ステッチボンド部、45 ループ部、46 テールワイヤ、60 制御部、61 CPU、62 メモリ、100 ワイヤボンディング装置、DA 超音波接合の開始後クランパが全開するまでの期間、DL 所定期間、ΔUS 超音波接合の期間、ΔTA 延長期間。
【要約】
【課題】ワイヤボンディング装置において、テールワイヤの延出不良を抑制する。
【解決手段】キャピラリと、超音波振動子と、キャピラリと連動して上下方向に移動してワイヤの把持、開放を行うクランパと、制御部と、を備えるワイヤボンディング装置であって、制御部は、クランパを閉とした状態でキャピラリを下降させてキャピラリの先端をリードに接地させた時刻t1の後に、超音波振動子でキャピラリを超音波加振してワイヤのリードへの超音波接合を開始し、所定期間DLが経過した後の時刻t2にクランパ17を開とし、所定期間DLを超音波接合の期間ΔUSに応じて変化させる。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5