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  • 特許-ワイヤハーネス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20240826BHJP
   F16B 2/08 20060101ALI20240826BHJP
   F16L 57/00 20060101ALI20240826BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
H02G3/04 068
F16B2/08 Z
F16L57/00 A
H01B7/00 301
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020198551
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086503
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】村越 洋行
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3225607(JP,U)
【文献】特開平08-153418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
F16B 2/08
F16L 57/00
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と、
前記電線を内側に収容して保護する保護チューブと、
前記保護チューブの端部開口に隣接する位置で前記電線を締め込むように当該電線に取り付けられた結束バンドと、
前記結束バンドに設けられて前記保護チューブの前記端部開口に当接し、前記保護チューブの軸方向への移動を規制する規制部と、
を備え
前記結束バンドが、可撓性の帯状部分と、当該帯状部分の一端に設けられて当該帯状部分の他端が差込み方向とは逆向きの戻りが不能となるように差し込まれる差込み部分と、を有し、前記帯状部分が前記差込み部分に差し込まれて当該差込み部分を通過して所定長以上に延出した状態で前記電線を締め込むものであり、
前記規制部が、前記結束バンドの前記帯状部分において、前記差込み部分に差し込まれて当該差込み部分を通過し、前記保護チューブの前記端部開口に当接するまで延出した延出部分であることを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
電線と、
前記電線を内側に収容して保護する保護チューブと、
前記保護チューブの端部開口に隣接する位置で前記電線を締め込むように当該電線に取り付けられた結束バンドと、
前記結束バンドに設けられて前記保護チューブの前記端部開口に当接し、前記保護チューブの軸方向への移動を規制する規制部と、
を備え
前記結束バンドが、可撓性の帯状部分と、当該帯状部分の一端に設けられて当該帯状部分の他端が差込み方向とは逆向きの戻りが不能となるように差し込まれる差込み部分と、を有し、前記帯状部分が前記差込み部分に差し込まれて当該差込み部分を通過して所定長以上に延出した状態で前記電線を締め込むものであり、
前記規制部が、前記差込み部分から前記保護チューブの前記端部開口に当接するように突出したリブ状部分であり、
前記リブ状部分が、前記差込み部分への前記差込み方向と直交し、かつ、前記差込み部分への差込み前の前記帯状部分の延出方向とは逆向きとなる突出方向へと、前記差込み部分から突出しているとともに、前記帯状部分の幅方向と直交した方向を幅方向とした帯板形状で前記突出方向へと突出し、当該帯板形状における表裏面のうちの一方を前記保護チューブの前記端部開口を含む平面に沿って延在する当接面として前記端部開口に当接することを特徴とするワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線が保護チューブに収容されたワイヤハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等に搭載されて各種機器間を電気的に接続するワイヤハーネスとして、電線が保護チューブで保護されたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。そして、このような保護チューブを備えたワイヤハーネスでは、保護チューブの位置ズレを抑制するために、保護チューブの端部開口が例えばテープ巻き等によって電線に固定されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-227050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、保護チューブの端部開口におけるテープ巻き等といった固定作業は、煩雑で工数がかかり、製造上の負担となる場合がある。
【0005】
従って、本発明は、上記のような問題に着目し、工数を抑えて保護チューブの位置ズレを抑制することができるワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、ワイヤハーネスは、電線と、前記電線を内側に収容して保護する保護チューブと、前記保護チューブの端部開口に隣接する位置で前記電線を締め込むように当該電線に取り付けられた結束バンドと、前記結束バンドに設けられて前記保護チューブの前記端部開口に当接し、前記保護チューブの軸方向への移動を規制する規制部と、を備え、前記結束バンドが、可撓性の帯状部分と、当該帯状部分の一端に設けられて当該帯状部分の他端が差込み方向とは逆向きの戻りが不能となるように差し込まれる差込み部分と、を有し、前記帯状部分が前記差込み部分に差し込まれて当該差込み部分を通過して所定長以上に延出した状態で前記電線を締め込むものであり、前記規制部が、前記結束バンドの前記帯状部分において、前記差込み部分に差し込まれて当該差込み部分を通過し、前記保護チューブの前記端部開口に当接するまで延出した延出部分であることを特徴とする。
また、他のワイヤハーネスは、電線と、前記電線を内側に収容して保護する保護チューブと、前記保護チューブの端部開口に隣接する位置で前記電線を締め込むように当該電線に取り付けられた結束バンドと、前記結束バンドに設けられて前記保護チューブの前記端部開口に当接し、前記保護チューブの軸方向への移動を規制する規制部と、を備え、前記結束バンドが、可撓性の帯状部分と、当該帯状部分の一端に設けられて当該帯状部分の他端が差込み方向とは逆向きの戻りが不能となるように差し込まれる差込み部分と、を有し、前記帯状部分が前記差込み部分に差し込まれて当該差込み部分を通過して所定長以上に延出した状態で前記電線を締め込むものであり、前記規制部が、前記差込み部分から前記保護チューブの前記端部開口に当接するように突出したリブ状部分であり、前記リブ状部分が、前記差込み部分への前記差込み方向と直交し、かつ、前記差込み部分への差込み前の前記帯状部分の延出方向とは逆向きとなる突出方向へと、前記差込み部分から突出しているとともに、前記帯状部分の幅方向と直交した方向を幅方向とした帯板形状で前記突出方向へと突出し、当該帯板形状における表裏面のうちの一方を前記保護チューブの前記端部開口を含む平面に沿って延在する当接面として前記端部開口に当接することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記のワイヤハーネスによれば、工数を抑えて保護チューブの位置ズレを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係るワイヤハーネスを示す模式的な斜視図である。
図2図1に示されている結束バンドを、電線を締め込む前の状態で示す斜視図である。
図3】第2実施形態に係るワイヤハーネスを示す模式的な斜視図である。
図4図3に示されている結束バンドを、電線を締め込む前の状態で示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、ワイヤハーネスの一実施形態について説明する。まず、第1実施形態について説明する。
【0010】
図1は、第1実施形態に係るワイヤハーネスを示す模式的な斜視図である。
【0011】
この図1に示されているワイヤハーネス1は、自動車等に搭載されて各種機器間を電気的に接続するものであり、電線11と、コネクタ12と、コルゲートチューブ13と、結束バンド14と、を備えている。電線11は、複数本が束ねられ、少なとも一端部にコネクタ12が接続されて、このコネクタ12の側に寄せられるようにして外装されたコルゲートチューブ13に収容される。コルゲートチューブ13は、蛇腹状に形成された樹脂製で可撓性の保護チューブであり、電線11を内側に収容して保護する部位となっている。結束バンド14は、複数本の電線11を束ねるように締め込む帯紐状の部材であるが、本実施形態では、この結束バンド14が、以下に説明するようにコルゲートチューブ13の位置ズレを抑制する役割を担っている。
【0012】
図2は、図1に示されている結束バンドを、電線を締め込む前の状態で示す斜視図である。
【0013】
まず、結束バンド14は、図1に示されているように、コルゲートチューブ13におけるコネクタ12とは反対側の端部開口131に隣接する位置で複数本の電線11を束ねて締め込むように当該電線11に取り付けられる。この結束バンド14は、図1及び図2に示されているように、可撓性の帯状部分141と差込み部分142とを有して樹脂で一体成形されたものとなっている。差込み部分142は、帯状部分141の一端に設けられて当該帯状部分141の他端が差込み方向D11とは逆向きの戻りが不能となるように差し込まれるロック部位となっている。
【0014】
ここで、本実施形態では、電線11に上記のように取り付けられる結束バンド14の帯状部分141において、差込み部分142に差し込まれて当該差込み部分142を通過して延出した延出部分が次のような規制部15となっている。この規制部15は、ワイヤハーネス1に、結束バンド14に設けられる部位として備えられ、コルゲートチューブ13の端部開口131に当接し、コルゲートチューブ13の軸方向D12への移動を規制する部位となっている。即ち、規制部15は、結束バンド14の帯状部分141において、コルゲートチューブ13の端部開口131に当接するのに十分な長さで差込み部分142から引き出された長めの延出部分となっている。帯状部分141は、この規制部15が得られるのに十分な長さが差込み部分142から引き出された後、余長部分が切除される。そして、コルゲートチューブ13は、この規制部15と、反対側のコネクタ12とで挟まれることで、その両端それぞれにおいて移動が規制される。
【0015】
以上に説明した第1実施形態のワイヤハーネス1によれば、電線11を締め込む結束バンド14にコルゲートチューブ13の軸方向D12への移動を規制する規制部15が設けられる。この規制部15付きの結束バンド14を用いることで、当該結束バンド14で電線11を締め込むという略1工程での作業によって、同時にコルゲートチューブ13の位置ズレを抑制することができる。つまり、上記のワイヤハーネス1によれば、工数を抑えてコルゲートチューブ13の位置ズレを抑制することができる。
【0016】
ここで、本実施形態では、コルゲートチューブ13の位置ズレを規制する規制部15が、結束バンド14において差込み部分142から長めに延出した延出部分となっている。この構成によれば、結束バンド14で電線11を締め込む際の、差込み部分142からの帯状部分141の引出し量を上記のように長めに調節するだけでコルゲートチューブ13の位置ズレを規制する規制部15を得ることができる。つまり、他に特別な構成を必要とせずに規制部15を得ることができるので、当該規制部15に関する製造コストを抑えることができる。
【0017】
以上で第1実施形態についての説明を終了し、次に第2実施形態について説明する。
【0018】
図3は、第2実施形態に係るワイヤハーネスを示す模式的な斜視図である。また、図4は、図3に示されている結束バンドを、電線を締め込む前の状態で示す斜視図である。尚、これらの図3及び図4では、図1及び図2に示されている第1実施形態の構成要素と同等な構成要素については図1及び図2と同じ符号が付されており、以下では、それら同等な構成要素についての重複説明を割愛する。
【0019】
本実施形態のワイヤハーネス2は、コルゲートチューブ13におけるコネクタ12とは反対側の端部開口131に隣接する位置で、当該端部開口131から延出した複数本の電線11が結束バンド24で締め込まれている点は、上述の第1実施形態と同様である。ただし、本実施形態では、この結束バンド24に設けられてコルゲートチューブ13の軸方向D12の移動を規制する規制部25が、第1実施形態と異なっている。
【0020】
即ち、本実施形態における規制部25は、結束バンド24において可撓性の帯状部分141が差し込まれる差込み部分142に、第1実施形態とは異なり、差込み部分142から引き出される帯状部分141の延出部分とは別体に設けられている。規制部25は、差込み部分142からコルゲートチューブ13の端部開口131に当接するように突出したリブ状部分となっている。このリブ状部分の規制部25は、図4に示されているように、差込み部分142への差込み方向D11と直交し、かつ、差込み部分142への差込み前の帯状部分141の延出方向とは逆向きとなる突出方向へと、差込み部分142から突出している。そして、この結束バンド24が電線11に取り付けられると、コルゲートチューブ13は、差込み部分142から突出した規制部25と、反対側のコネクタ12とで挟まれることで、その両端それぞれにおいて移動が規制される。このとき、本実施形態では、結束バンド24の帯状部分141は、電線11の締込みに十分で、かつ出来るだけ短くなるような長さを残して余長部分が切除される。
【0021】
以上に説明した第2実施形態のワイヤハーネス1によっても、上述の第1実施形態と同様に、工数を抑えてコルゲートチューブ13の位置ズレを抑制することができることは言うまでもない。
【0022】
また、本実施形態では、コルゲートチューブ13の位置ズレを規制する規制部25が、結束バンド24における差込み部分142から突出したリブ状部分となっている。この構成によれば、差込み部分142からの帯状部分141の引出し量等は気にせずに結束バンド24で電線11を締め込むだけで、差込み部分142からリブ状部分として突出した規制部25によってコルゲートチューブ13の位置ズレを規制することができる。つまり、電線11の結束時に帯状部分141の引出し量等は気にしなくともよいことから、その分、ワイヤハーネス2の製造上の煩雑さが軽減されるので、当該ワイヤハーネス2に関する製造コストを抑えることができる。
【0023】
尚、以上に説明した第1及び第2実施形態はワイヤハーネスの代表的な形態を示したに過ぎず、ワイヤハーネスは、これに限定されるものではなく種々変形して実施することができる。
【0024】
例えば、上述の第1及び第2実施形態では、ワイヤハーネスの一例として、自動車等に搭載されて各種機器間を電気的に接続するワイヤハーネス1,2が例示されている。しかしながら、ワイヤハーネスは、これに限るものではなく、その具体的な設置場所等を問うものではない。
【0025】
また、上述の第1及び第2実施形態では、ワイヤハーネスの一例として、電線11の一端にコネクタ12が接続され、保護チューブとしてのコルゲートチューブ13がこのコネクタ12に寄せられて外装されたワイヤハーネス1,2が例示されている。これらのワイヤハーネス1,2では、コルゲートチューブ13におけるコネクタ12とは反対側の端部開口131に隣接する位置で電線11を締め込む1つの結束バンド14,24に規制部15,25が設けられている。しかしながら、ワイヤハーネスは、これらに限るものではなく、端部にコネクタが接続されていない電線に保護チューブが外装されたものや、コネクタが接続されていても、そのコネクタから離れた位置に保護チューブが外装されたもの等であってもよい。これらの場合には、保護チューブの両端の端部開口それぞれに隣接するように結束バンドが一対、電線に取り付けられることとなり、各結束バンドに1つずつ設けられた一対の規制部で挟まれるようにして保護チューブの移動が規制されることなる。
【0026】
また、上述の第1及び第2実施形態では、保護チューブの一例として、蛇腹状に形成された可撓性のコルゲートチューブ13が例示されているが、保護チューブはこれに限るものではない。保護チューブは、例えば蛇腹のない円管状の保護チューブ等であってもよく、その具体的な形状等は用途や設置場所に応じて適宜に設定し得るものである。
【0027】
また、上述の第1及び第2実施形態では、規制部の一例として、結束バンド14の差込み部分142から引き出された帯状部分141の延出部分としての規制部15や、上記の差込み部分142からリブ状部分として突出した規制部25が例示されている。しかしながら、規制部は、これらに限るものではなく、結束バンドに設けられて保護チューブの端部開口に当接し、保護チューブの軸方向への移動を規制するものであれば、その具体的な態様を問うものではない。例えば、規制部は、差込み部分に設ける場合であっても、第2実施形態で示したリブ状部分に限るものでもなく、差込み部分の大きさや形状を工夫して端部開口への当接部分としての規制部を設けることとしてもよい。例えば、矩形ブロック状の差込み部分の長さ、横幅、厚み等の寸法を端部開口に当接するような寸法に設定してもよく、また、差込み部分の形状を端部開口に当接するような楕円形ブロックや円形ブロック状等といった矩形ブロック以外の形状に設定してもよい。ただし、帯状部分141の延出部分としての規制部15や、差込み部分142からリブ状部分として突出した規制部25といった簡素な形態を採用することで、規制部15自体やワイヤハーネス2全体の製造コストを抑えることできる点は各実施形態において説明した通りである。
【符号の説明】
【0028】
1,2 ワイヤハーネス
11 電線
12 コネクタ
13 コルゲートチューブ(保護チューブ)
14 結束バンド
15,25 規制部
131 端部開口
141 帯状部分
142 差込み部分
D11 差込み方向
D12 軸方向
図1
図2
図3
図4