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特許7542940情報処理装置、情報処理方法、映像処理システム、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、映像処理システム、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 19/00 20110101AFI20240826BHJP
   H04N 21/2665 20110101ALI20240826BHJP
   H04N 21/854 20110101ALI20240826BHJP
【FI】
G06T19/00 A
H04N21/2665
H04N21/854
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019212303
(22)【出願日】2019-11-25
(65)【公開番号】P2021086189
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上村 信一
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-225529(JP,A)
【文献】特開2018-061113(JP,A)
【文献】特開2011-147059(JP,A)
【文献】特開2012-015788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 19/00
H04N 21/2665
H04N 21/854
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の撮像装置により撮像された撮像映像と、前記所定の撮像装置とは異なる複数の撮像装置により撮像された複数の撮像映像に基づいて生成される仮想視点映像と、を関連付けた時刻である切替え時刻を特定するための時刻情報及び前記所定の撮像装置により撮像された撮像映像の時刻と前記仮想視点映像の時刻とを揃えるための同期信号を取得する取得手段と、
取得された前記時刻情報及び前記同期信号に基づいて特定される切替え時刻に対応する映像を撮像する前記所定の撮像装置の位置向きと画角とに基づき、当該切替え時刻に対応する仮想視点映像の生成に用いられる仮想視点の位置と前記仮想視点からの視線の向きと前記仮想視点に対応する画角とを決定する決定手段と、
決定された前記仮想視点の位置決定された前記仮想視点からの視線の向きと決定された前記仮想視点に対応する画角とに対応する仮想視点映像と、前記所定の撮像装置により撮像された前記切替え時刻に対応する撮像映像との間で、出力映像を切替える切替え手段と、
を備えたことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記切替え手段により切替えられる前記仮想視点映像と前記撮像映像とは、生成されるタイミングが異なる、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記決定手段は、前記切替え時刻に対応する仮想視点映像の構図と、前記所定の撮像装置により撮像された前記切替え時刻に対応する撮像映像の構図とが同じになるように、前記仮想視点の位置前記仮想視点からの視線の向きと前記仮想視点に対応する画角とを決定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
決定された前記仮想視点の位置決定された前記仮想視点からの視線の向きと決定された前記仮想視点に対応する画角とに対応する仮想視点映像を生成する生成手段、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記仮想視点映像における時刻と、前記撮像映像における時刻とが同期するように、前記仮想視点映像における時刻と前記撮像映像における時刻とを前記同期信号に基づき制御する制御手段、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記切替え手段は、前記時刻情報により表される時間範囲において、決定された前記仮想視点の位置決定された前記仮想視点からの視線の向きと決定された前記仮想視点に対応する画角とに対応する仮想視点映像と前記所定の撮像装置により撮像された前記切替え時刻に対応する撮像映像とを所定の合成比率で合成することにより、決定された前記仮想視点の位置決定された前記仮想視点からの視線の向きと決定された前記仮想視点に対応する画角とに対応する仮想視点映像と、前記所定の撮像装置により撮像された前記切替え時刻に対応する撮像映像とを切り替える、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記時刻情報は、前記切替え時刻として時間範囲を表し、
前記切替え手段は、前記時刻情報により表される時間範囲において前記合成比率を調整することにより、決定された前記仮想視点の位置決定された前記仮想視点からの視線の向きと決定された前記仮想視点に対応する画角とに対応する仮想視点映像と、前記所定の撮像装置により撮像された前記切替え時刻に対応する撮像映像とを切り替える、
ことを特徴とする請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記時間範囲は、切替え開始時刻と切替え終了時刻とに基づく範囲である、
ことを特徴とする請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記決定手段は、前記切替え時刻に対応する映像を撮像している前記所定の撮像装置の画角に基づき、前記切替え時刻に対応する仮想視点映像に用いられる前記仮想視点の画角を決定する、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
所定の撮像装置により撮像された撮像映像と、前記所定の撮像装置とは異なる複数の撮像装置により撮像された複数の撮像映像に基づいて生成される仮想視点映像と、を関連付けた時刻である切替え時刻を特定するための時刻情報及び前記所定の撮像装置により撮像された撮像映像の時刻と前記仮想視点映像の時刻とを揃えるための同期信号を取得するステップと、
取得された前記時刻情報及び前記同期信号に基づいて特定される切替え時刻に対応する映像を撮像する前記所定の撮像装置の位置向きと画角に基づき、当該切替え時刻に対応する仮想視点映像の生成に用いられる仮想視点の位置と前記仮想視点からの視線の向きと前記仮想視点に対応する画角とを決定するステップと、
決定された前記仮想視点の位置決定された前記仮想視点からの視線の向きと決定された前記仮想視点に対応する画角とに対応する仮想視点映像と、前記所定の撮像装置により撮像された前記切替え時刻に対応する撮像映像との間で、出力映像を切替えるステップと、
を備えることを特徴とする情報処理方法。
【請求項11】
コンピュータを請求項1乃至9のいずれか1項に記載の情報処理装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、仮想視点映像を用いた映像出力に関する。
【背景技術】
【0002】
異なる位置に設置した複数の撮像装置で同じ被写体(オブジェクト)を同期撮影し、得られた多視点画像を用いて、仮想視点映像を生成する技術が注目されている。仮想視点映像とは、3次元空間内に仮想的に配置した、実際には存在しない撮像装置の視点(仮想視点)からの見えを表す映像である。このような多視点画像から仮想視点映像を生成する技術によれば、例えば、サッカーやバスケットボールのハイライトシーンを様々な角度から視聴することができるため、通常の映像と比較して視聴者に高臨場感を与えることができる。特許文献1には、オブジェクトを取り囲むように複数の撮像装置を配置し、複数の撮像装置で同期撮影したオブジェクトの多視点画像を用いて任意の視点での仮想視点映像を生成する技術が開示されている。
【0003】
多視点による同期撮影が行われたサッカー等のイベントが、放送用撮像装置等の撮像装置でも撮影されていた場合、仮想視点映像及び一台の撮像装置で生成された撮像映像(以降、撮像映像という)を組み合わせた映像を作ることができる。例えば、まず仮想視点映像による、センターラインからゴールに向かって選手達がボールを運ぶ場面の選手全体の動きを捉えた俯瞰カットと、シュートの場面のキーパー目線でボールが脇を抜ける主観カットとをつなげる。そして得られた仮想視点映像によるカットに、撮像映像による高画質ズームでキーパーやキッカーの細かな表情を捉えたカットをつなげて、一連のゴールシーンの映像を作ることができる。このように、選手毎の主観視点や複数の選手を捉えた俯瞰視点といった通常の撮像装置では撮れない仮想視点映像を、高精細な撮像映像と組み合わせることで、より臨場感の高い映像体験を視聴者に提供することが期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-015756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、仮想視点映像と撮像映像とを滑らかに切替えて出力することができない場合がある。例えば、リアルタイムで撮影されている撮像映像と多視点画像から逐次生成されている仮想視点映像とを切り替えて出力する場合である。この場合、撮像映像の出力に対する仮想視点映像の出力の遅延などにより、切り替えのタイミングで不連続な映像が出力されて視聴者に違和感を与える虞がある。
【0006】
本開示の技術は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、仮想視点映像と撮像映像の切替えに係る違和感を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の技術は、情報処理装置であって、所定の撮像装置により撮像された撮像映像と、前記所定の撮像装置とは異なる複数の撮像装置により撮像された複数の撮像映像に基づいて生成される仮想視点映像と、を関連付けた時刻である切替え時刻を特定するための時刻情報及び前記所定の撮像装置により撮像された撮像映像の時刻と前記仮想視点映像の時刻とを揃えるための同期信号を取得する取得手段と、取得された前記時刻情報及び前記同期信号に基づいて特定される切替え時刻に対応する映像を撮像する前記所定の撮像装置の位置向きと画角とに基づき、当該切替え時刻に対応する仮想視点映像の生成に用いられる仮想視点の位置と前記仮想視点からの視線の向きと前記仮想視点に対応する画角とを決定する決定手段と、決定された前記仮想視点の位置決定された前記仮想視点からの視線の向きと決定された前記仮想視点に対応する画角とに対応する仮想視点映像と、前記所定の撮像装置により撮像された前記切替え時刻に対応する撮像映像との間で、出力映像を切替える切替え手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示の技術によれば、仮想視点映像と撮像映像との切替えに係る違和感を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係る映像処理システムの全体構成図である。
図2】第1の実施形態に係る映像処理システムのハードウェア構成図である。
図3】第1の実施形態に係る切替え制御の処理概要の説明図である。
図4】第1の実施形態に係る切替え制御の処理手順を示すフローチャートである。
図5】第2の実施形態に係る映像処理システムの全体構成図である。
図6】第2の実施形態に係る切替え制御の処理概要の説明図である。
図7】第2の実施形態に係る切替え制御の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら実施形態を説明する。なお、以下の実施形態において示す構成は一例に過ぎず、本開示の技術は図示された構成に限定されるものではない。
【0011】
(実施形態1)
<映像処理システム及び映像切替え装置の構成>
図1は、第1の実施形態に係る映像処理システムの全体構成図である。
【0012】
映像処理システムは、映像切替え装置10、仮想視点映像用撮像装置群20、画像処理装置30、撮像装置40、記憶装置50で構成される。
【0013】
仮想視点映像用撮像装置群20は、競技フィールド等を取り囲むように設置された複数台の撮像装置から構成される撮像装置群である。後述する撮像装置40とは異なる撮像装置であって、仮想視点映像を生成するための多視点画像を撮影する撮像装置である。仮想視点映像用撮像装置群20は、各撮像装置で撮影した各画像を画像処理装置30に出力する。
【0014】
画像処理装置30は、多視点画像から3次元モデルを作成してテクスチャをマッピングすることで、仮想視点パス上の仮想視点からの仮想視点映像を生成する。画像処理装置30は、生成した仮想視点映像を映像切替え装置10または記憶装置50に出力する。
【0015】
撮像装置40は、競技フィールド脇等に配置された放送局の撮像装置やスタジアム上層からワイヤで吊られた撮像装置(ケーブルカム)等であり、撮像装置オペレータにより撮像装置の位置、向き(姿勢)及び画角が制御される。撮像装置40は、撮影された映像と時刻(タイムコード)を記憶装置50に出力する。さらに、撮像装置40は、GPS受信機やジャイロセンサといった測定器を備えており、撮像装置の位置や向きの特定を行う。この撮像装置の位置・向きと撮像装置の画角を含む撮像装置の各種設定値(撮像装置パラメータ)を撮像装置の設定情報として記憶装置50に出力する。本実施形態では撮像装置1台の例を図示しているが、複数台存在してもよい。また、撮像装置パラメータには、撮像装置のレンズの焦点距離やセンササイズ等の撮像装置の仕様情報を含んでもよい。
【0016】
記憶装置50は、撮像装置40から出力された撮像映像と上記撮像装置パラメータを記憶し、画像処理装置30から仮想視点映像が入力された場合は仮想視点映像も記憶する。記憶装置50は、後述する映像切替え装置10から出力された制御情報に応じて、撮像映像と撮像装置パラメータを映像切替え装置10に出力し、仮想視点映像を記憶している場合は仮想視点映像も映像切替え装置10に出力する。
【0017】
映像切替え装置10は、時刻設定部101、時刻制御部102、仮想視点制御部103、切替え部104で構成される。
【0018】
時刻設定部101は、仮想視点映像及び撮像映像の開始時刻S・終了時刻E・切替え時刻Nのタイムコード等の識別子をユーザから受け付ける。時刻設定部101で受け付ける識別子は時刻だけに限定せず、時刻が割り当てられた映像または画像(フレーム)でもよい。例えば、ユーザが撮像映像を参照しながら、開始時刻S・終了時刻E・切替え時刻Nに対応するフレームをGUIなどの画面上で指定し、時刻設定部101が指定されたフレームを取得して、そのフレームから時刻情報を抜き出してもよい。時刻設定部101は、取得した時刻情報を時刻制御部102、仮想視点制御部103、切替え部104に出力する。
【0019】
時刻制御部102は、時刻設定部101から入力された時刻情報から開始時刻Sを取得し、仮想視点映像と撮像映像の時刻を同期させるための制御情報を画像処理装置30と記憶装置50に出力する。時刻制御部102は、制御情報を用いることで、仮想視点映像と撮像映像のフレームの同一時刻のフレームを同期して切替え部104に出力させることができる。詳細は図3を用いて後述する。
【0020】
仮想視点制御部103は、時刻設定部101から入力された時刻情報から切替え時刻Nを取得し、記憶装置50から切替え時刻Nの撮像装置パラメータを取得する。仮想視点制御部103は、切替え時刻Nの仮想視点パラメータ(位置・向き及び画角等の仮想視点の設定情報)を取得した切替え時刻Nの撮像装置パラメータに基づき設定する。切替え時刻N以外の仮想視点パラメータはユーザが任意に設定可能であり、仮想視点制御部103はユーザから仮想視点パラメータを取得する。そして仮想視点制御部103は、取得した時刻情報に含まれる全時刻に対応する仮想視点パラメータを制御情報として画像処理装置30に出力する。詳細は図3を用いて後述する。
【0021】
切替え部104は、時刻設定部101から入力された時刻情報から切替え時刻Nを取得し、ユーザから設定される開始映像として撮像映像と仮想視点映像のどちらを使用するかを指定する開始映像選択情報を取得し、仮想視点映像と撮像映像の切替えを行う。詳細は図3を用いて後述する。
【0022】
図2は、第1の実施形態に係る映像切替え装置10のハードウェア構成図である。画像処理装置30のハードウェア構成も、以下で説明する映像切替え装置10の構成と同様である。映像切替え装置10は、CPU211、ROM212、RAM213、補助記憶装置214、表示部215、操作部216、通信I/F217、及びバス218を有する。
【0023】
CPU211は、ROM212やRAM213に格納されているコンピュータプログラムやデータを用いて映像切替え装置10の全体を制御することで、図2に示す映像切替え装置10の各機能を実現する。なお、映像切替え装置10がCPU211とは異なる1又は複数の専用のハードウェアを有し、CPU211による処理の少なくとも一部を専用のハードウェアが実行してもよい。専用のハードウェアの例としては、ASIC(特定用途向け集積回路)、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、およびDSP(デジタルシグナルプロセッサ)などがある。
【0024】
ROM212は、変更を必要としないプログラムなどを格納する。RAM213は、補助記憶装置214から供給されるプログラムやデータ、及び通信I/F217を介して外部から供給されるデータなどを一時記憶する。補助記憶装置214は、例えばハードディスクドライブ等で構成され、画像データや音声データなどの種々のデータを記憶する。
【0025】
表示部215は、例えば液晶ディスプレイ(LCD)や有機ELディスプレイ(OELD)等で構成され、ユーザが情報処理装置200を操作するためのGUI(Graphical User Interface)などを表示する。
【0026】
操作部216は、例えばキーボードやマウス、ジョイスティック、タッチパネル等で構成され、ユーザによる操作を受けて各種の指示をCPU211に入力する。CPU211は、表示部215を制御する表示制御部、及び操作部216を制御する操作制御部として動作する。
【0027】
通信I/F217は、映像切替え装置10の外部の装置との通信に用いられる。例えば、映像切替え装置10が外部の装置と有線で接続される場合には、通信用のケーブルが通信I/F217に接続される。映像切替え装置10が外部の装置と無線通信する機能を有する場合には、通信I/F217はアンテナを備える。
【0028】
バス218は、映像切替え装置10の各部を相互通信可能につないで情報を伝達する。
【0029】
なお、本実施形態では表示部215と操作部216が映像切替え装置10の内部に存在するものとするが、表示部215と操作部216との少なくとも一方が映像切替え装置10の外部に別の装置として存在していてもよい。
【0030】
<指定時刻による切替え制御の概要>
図3は、開始映像を仮想視点映像として、切替え後の映像を撮像装置とした場合の処理の概要を示す。
【0031】
切替え時刻Nは、時刻設定部101でユーザが設定した仮想視点映像と撮像映像を切替えるタイミングを示す。
【0032】
仮想視点映像のフレーム301~306は、画像処理装置30または記憶装置50から出力された仮想視点映像を1フレーム毎に示したものである。仮想視点映像は、画像処理装置30により、仮想視点制御部103から出力された制御情報に含まれる仮想視点パスを規定する開始時刻Sから終了時刻Eまでの仮想視点パラメータに基づいて生成される。仮想視点パラメータは、仮想視点映像の構図を規定する位置、向き、画角等の各種設定値であり、撮像映像における撮像装置パラメータに相当するものである。本実施形態では、開始時刻Sから終了時刻Eまでの仮想視点パラメータの内、切替え時刻Nにおける仮想視点パラメータは、仮想視点制御部103により記憶装置50から読み出した切替え時刻Nにおける撮像装置パラメータに設定される。これにより、切替え時刻Nにおける仮想視点映像の構図と撮像映像の構図とを一致させることができる。切替え時刻N以外の仮想視点パラメータは、ユーザにより任意に設定可能である。
【0033】
撮像映像のフレーム311~316は、記憶装置50から出力された撮像映像を1フレーム毎に示したものである。
【0034】
出力映像のフレーム321~326は、映像切替え装置10の切替え部104で選択され、映像切替え装置10から出力された仮想視点映像のフレームおよび撮像映像のフレームからなる出力映像である。図3では、切替え時刻Nを境に、出力映像のフレーム321~323は仮想視点映像のフレーム301~303が、出力映像のフレーム324~326は撮像映像のフレーム314~316が選択されている。
【0035】
上記映像の切替えにより出力される出力映像と、仮想視点映像および撮像映像との関係を式1に示す。フレーム毎にインクリメントする変数をt、切替え時刻をN、仮想視点映像の時刻tのフレームをSV(t)、撮像映像の時刻tのフレームをV(t)、出力映像の時刻tのフレームをO(t)とする。
【0036】
【数1】
【0037】
上記処理を実現する為に、まず、映像切替え装置10から時刻設定部101に設定された開始時刻Sを基に時刻制御部102で共通の時刻情報とビデオ同期信号とを制御情報として、画像処理装置30および記憶装置50に出力する。これにより画像処理装置30と記憶装置50は、時刻tが揃った仮想視点映像と撮像映像を映像切替え装置10に出力することができる。
【0038】
仮想視点映像の生成には3次元モデルの生成やテクスチャのマッピング等の処理がある為、撮像装置40による撮像映像の生成よりも処理時間が長いことが想定される。そのため、映像切替え装置10に入力される仮想視点映像にのみ遅延が生じた場合、そのまま切替え部104で仮想視点映像から撮像映像に切替えると、出力映像においてコマ落ちが発生してしまう。
【0039】
そこで、映像切替え装置10に入力される仮想視点映像のフレームと撮像映像のフレームを同時刻のフレームに揃える。撮像装置40から出力された撮像映像を記憶装置50に一時保存し、画像処理装置30と記憶装置50とから仮想視点映像と撮像映像をビデオ同期信号によって同期して出力させる。
【0040】
このビデオ同期信号は、画像処理装置30が仮想視点映像を遅延なく出力できるタイミングに設定する。または、ビデオ同期信号に合わせて遅延なく仮想視点映像を出力できるように、画像処理装置30内で仮想視点映像をバッファリングしてもよい。
【0041】
例えば、撮影映像の放送においては、放送されるべきでない内容の映像が意図せず放送されてしまうことを避けるために、あえて撮像から数秒遅らせて映像を出力することがある。このような場合には、仮想視点映像の出力も撮像映像に合わせて遅らせてもよい。また例えば、仮想視点映像の生成に係る遅延は、映像の内容によって変化することがある。このような場合には、出力される映像にコマ落ち等が発生しないように、仮想視点映像の生成に係る最大遅延以上の所定時間長だけ、常に仮想視点映像の出力を遅らせてもよい。
【0042】
時刻tが切替え時刻Nに達すると、切替え部104は、出力映像のフレーム324以降、仮想視点映像から撮像映像に出力映像を切替える。
【0043】
<処理>
続いて、図4のフローチャートを参照して、本実施形態に係る映像切替え装置10の処理手順を説明する。本処理は、仮想視点映像と撮像映像の切替えを含むシーンの表示開始をユーザが指示することによりスタートする。
【0044】
S101において、映像切替え装置10の切替え部104は、ユーザから仮想視点映像または撮像映像のどちらかを開始映像とするかを示す開始映像情報を取得する。なお、ユーザから開始映像情報を取得する代わりに、切替え部104が予め設定された開始映像情報を保持していてもよい。
【0045】
S102において、映像切替え装置10の時刻設定部101は、切替え部104から出力する出力映像の開始時刻S・終了時刻E・切替え時刻Nを含む時刻情報をユーザから取得する。
【0046】
時刻設定部101は、設定された時刻情報を時刻制御部102、仮想視点制御部103、および切替え部104に出力する。時刻制御部102は、画像処理装置30と記憶装置50に時刻情報を後述する制御情報に含めて出力する。ここで、変数tを画像処理装置30、記憶装置50、および映像切替え装置10において共通する、出力するフレームを指定する時刻情報と定義し、t=開始時刻Sに設定する。
【0047】
S103において、仮想視点制御部103は、入力された時刻情報に対応する仮想視点パラメータを取得する。まず仮想視点制御部103は、S101で設定された開始映像が仮想視点映像か撮像映像かに応じて、仮想視点パスの開始位置または終了位置を撮像の位置に設定する。また仮想視点制御部103は、記憶装置50から切替え時刻Nにおける撮像装置パラメータを読み出し、仮想視点パスの開始位置または終了位置における仮想視点パラメータを読み出した切替え時刻Nの撮像装置パラメータに基づき設定する。
【0048】
図3に示す例を用いて説明すると、開始映像が仮想視点映像の場合、仮想視点制御部103は、仮想視点パスの終了位置に撮像装置の位置を設定し、仮想視点パスの終了位置の仮想視点パラメータに切替え時刻Nにおける撮像装置パラメータを設定する。一方で開始映像が撮像映像の場合、仮想視点制御部103は、仮想視点パスの開始位置に撮像装置の位置を設定し、仮想視点パスの開始位置の仮想視点パラメータに切替え時刻Nにおける撮像装置パラメータを設定する。
【0049】
撮像装置の位置および撮像装置パラメータが設定されなかった仮想視点パスの開始位置または終了位置は、ユーザが仮想視点制御部103に設定する。
【0050】
S104において、仮想視点制御部103は、S103で設定された仮想視点パスおよび仮想視点パラメータを、時刻tにおける仮想視点パラメータ(位置・向き・画角等)を制御情報として画像処理装置30に出力する。
【0051】
S105において、画像処理装置30は、仮想視点制御部103から入力された制御情報に基づき、仮想視点映像の時刻tのフレームを生成して切替え部104に出力する。
【0052】
S106において、仮想視点制御部103は、撮像映像の時刻tのフレームを記憶装置50から読み出して切替え部104に出力する。
【0053】
S107において、切替え部104は、S101で設定された開始映像が仮想視点映像ならばS108へ、撮像映像ならばS109へ進む。
【0054】
S108において、切替え部104は、時刻tが切替え時刻N未満であるか否かを判定する。切替え部104は、時刻tが切替え時刻N未満であればS110へ、時刻tが切替え時刻N以上であればS111へ処理を進める。
【0055】
S109において、切替え部104は、時刻tが切替え時刻N未満であるか否かを判定する。切替え部104は、時刻tが切替え時刻N未満であればS111へ、時刻tが切替え時刻N以上であればS110へ処理を進める。
【0056】
S110において、切替え部104は、仮想視点映像の時刻tのフレームSV(t)を選択し、出力映像として出力する。
【0057】
S111において、切替え部104は、撮像映像の時刻tのフレームV(t)を選択し、出力映像として出力する。
【0058】
S112において、時刻制御部102は、時刻tを進める。映像切替え装置10の時刻制御部102で生成される垂直同期信号のタイミングで時刻のインクリメントを行う。
【0059】
S113において、時刻制御部102は、時刻tが、切替え時刻Nに満たない場合はS104、S106に戻り、切替え時刻Nに等しくなった場合は処理を終了する。
【0060】
以上、本実施形態により、撮像映像と仮想視点映像の時刻tを揃え、かつ、切替え時刻Nまでに仮想視点映像の構図を撮像映像の構図に合わせてからそれらの映像を切替えることにより、切替え時に視聴者に与える違和感を軽減することができる。
【0061】
(実施形態2)
<映像処理システム及び映像切替え装置の構成>
実施形態1では、仮想視点映像と撮像映像の時刻を同期させて、仮想視点の構図を撮像装置に合わせたのちに映像切替えを行う例を示した。しかしながら、撮像装置パラメータの精度や仮想視点映像のクオリティによっては、映像切替え前後のフレームの違いの大きさが視聴者に違和感を与える場合がある。具体的には、取得した撮像装置パラメータの誤差、撮像装置群で撮影された多視点画像から生成した3次元モデルの誤差による物体の形状や大きさの誤差、3次元モデルにマッピングされたテクスチャの色・質感と撮像映像の色・質感との差などである。これらの差が、映像の切替え時に「ちらつき」「かくつき」として現れることにより視聴者に違和感を与える場合がある。この違和感を与える原因の1つは、異なる作りの映像を一瞬で切替えることによってフレーム間の差異が視聴者に知覚されやすいことにある。
【0062】
そこで本実施形態では、仮想視点映像と撮像映像とを切替える際、それらの複数フレームにわたってαブレンドを行い、ブレンドの比率を徐々に変えて段階的に映像を切替える。これにより出力映像におけるフレーム間の差異が小さくなるため、視聴者が感じる違和感を軽減させることができる。
【0063】
図5は、実施形態2に係る映像処理システムの全体構成図である。実施形態2のシステムの構成は、切替え部104の代わりに、比率調整部105と合成部106を備えること以外は、実施形態1と同じである。
【0064】
比率調整部105は、時刻設定部101から入力された切替え時刻Nと、ユーザから入力された開始映像選択情報および切替え間隔Npとに基づき、仮想視点映像と撮像映像の切替え比率の調整を行う。詳細は図6を用いて後述する。
【0065】
合成部106は、乗算器107、108と加算器109で構成され、比率調整部105から出力された切替え比率を乗算器107、108で仮想視点映像と撮像映像とにそれぞれ乗じ、それらを加算器109で合成して出力する。詳細は図6を用いて後述する。
【0066】
<時刻指定と映像合成による切替え制御の概要>
図6は、開始映像を仮想視点映像として、切替え後の映像を撮像装置として、切替え間隔Np(切替えに要するフレーム数)が「3」の場合の処理の概要を示す。仮想視点映像と撮像映像の説明は実施形態1と同じである。
【0067】
係数α341~346は、比率調整部105でフレーム毎に調整される合成比率である。切替え時刻Nを境に、係数αを「0」から「1」に段階的に増加させている。係数αは、ユーザから設定される切替え間隔Npの逆数を係数の増加値としてフレーム毎に加算する。本実施形態では切替え間隔を「3」としている為、係数の増加値は約0.3となる。
【0068】
出力映像のフレーム351~356は、比率調整部105で設定された合成比率に応じて合成部106で仮想視点映像と撮像映像とを加算した映像である。切替え時刻Nの後の出力映像354から段階的に撮像映像の合成比率が増えて、出力映像356では撮像映像のフレーム316のみが出力される。
【0069】
上記仮想視点映像、撮像映像、出力映像の関係を式2と式3に示す。フレーム毎にインクリメントする変数をt、切替え時刻をN、切替え間隔をNp、仮想視点映像をSV(t)、撮像映像をV(t)、出力映像をO(t)とする。
【0070】
【数2】
【0071】
【数3】
【0072】
<処理>
続いて、図7のフローチャートを参照して、本実施形態に係る映像切替え装置10の処理手順を説明する。本処理は、仮想視点映像と撮像映像の切替えを含むシーンの表示開始をユーザが指示することによりスタートする。
【0073】
S101~S103は実施形態1と同じである。
【0074】
S201において、ユーザが比率調整部105に対し切替え間隔Npを設定する。ユーザが設定する代わりに、予め比率調整部105に所定の切替え間隔Npを設定していてもよい。
【0075】
S202において、比率調整部105は係数αを「0」に初期化する。
【0076】
S104~S109は実施形態1と同じである。
【0077】
S101で設定された開始映像が仮想視点映像であって、S108において、時刻tが切替え時刻Nより前ならばS203へ、時刻tが切替え時刻N以降であればS204へ進む。
【0078】
S203において、比率調整部105は、合成部106の乗算器107に1-α(t)、乗算器108にα(t)を入力し、合成部106は仮想視点映像のフレームSV(t)と、撮像映像のフレームV(t)とを(1-α)、αの割合で加算を行う。
【0079】
S204において、比率調整部105は、時刻tが切替え時刻Nから切替え間隔Np経過していなければS205へ、時刻tが切替え時刻Nから切替え間隔Np以上経過していればS206へ進む。
【0080】
S205において、比率調整部105は、係数αを上記式3に従って(t-N)/Npに更新してS203に進む。
【0081】
S206において、比率調整部105は、係数αを上記式3に従って「1」に更新してS203に進む。
【0082】
一方S101で設定された開始映像が撮像映像であって、S109において、時刻tが切替え時刻Nより前ならばS207へ、時刻tが切替え時刻N以降であればS208へ進む。
【0083】
S207において、比率調整部105は、合成部106の乗算器107にα(t)、乗算器108に1-α(t)を入力し、合成部106は撮像映像のフレームV(t)と、仮想視点映像のフレームSV(t)とを(1-α)、αの割合で加算を行う。
【0084】
S208において、比率調整部105は、時刻tが切替え時刻Nから切替え間隔Np経過していなければS205へ、時刻tが切替え時刻Nから切替え間隔Np以上経過していればS206へ進む。
【0085】
S209において、比率調整部105は、係数αを上記式3に従って(t-N)/Npに更新してS203に進む。
【0086】
S210において、比率調整部105は、係数αを上記式3に従って「1」に更新してS203に進む。
【0087】
S112、S113は実施形態1と同じである。
【0088】
以上、本実施形態により、仮想視点映像の構図を撮像映像の構図に合わせてから、仮想視点映像と撮像映像とにαブレンドを行い、段階的にそれらの映像を切替えることにより、切替え時に視聴者に与える違和感をさらに軽減することができる。
【0089】
なお、実施形態1、2では、S104で仮想視点制御部103が時刻tの仮想視点パラメータのみを制御情報として画像処理装置30に出力しているが、全時刻の仮想視点パラメータを仮想視点映像生成前に画像処理装置30に出力するようにしてもよい。このように一度に仮想視点パラメータ全体を画像処理装置30に出力した場合、以後、仮想視点制御部103は、制御情報として変数tのみを画像処理装置30に出力すればよい。またこの場合、画像処理装置30は、仮想視点制御部103から変数tが入力される前に、入力された仮想視点パラメータに基づきフレームを予め生成してバッファリングしてもよい。そして仮想視点制御部103からの制御情報として変数tが入力されるのに応じて、バッファリングされたフレームの中から時刻tに対応するフレームを読み出して出力するようにしてもよい。
【0090】
また、図3では、仮想視点映像について開始時刻Sから終了時刻Eに対応するフレーム301~306を生成しているが、切替え時刻N以降の仮想視点映像のフレーム304~306は生成しなくてもよい。例えば、時刻制御部102が、画像処理装置30に対して出力する制御情報を用いて、不要なフレーム304~306を生成させないよう制御を行ってもよい。
【0091】
(その他の実施例)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0092】
10 映像切替え装置
101 時刻設定部
102 時刻制御部
103 仮想視点制御部
104 切替え部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7