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特許7542947ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤及びエポチロンを含む医薬品組み合わせならびにその使用方法
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  • 特許-ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤及びエポチロンを含む医薬品組み合わせならびにその使用方法 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤及びエポチロンを含む医薬品組み合わせならびにその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/505 20060101AFI20240826BHJP
   A61K 31/427 20060101ALI20240826BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240826BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
A61K31/505
A61K31/427
A61P35/00
A61P43/00 105
A61P43/00 111
A61P43/00 121
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019522754
(86)(22)【出願日】2017-10-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-26
(86)【国際出願番号】 US2017058752
(87)【国際公開番号】W WO2018081556
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-10-07
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-16
(31)【優先権主張番号】62/414,422
(32)【優先日】2016-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512190767
【氏名又は名称】アセチロン ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ACETYLON PHARMACEUTICALS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ペンユ・ファン
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン・クェール
【合議体】
【審判長】前田 佳与子
【審判官】石井 徹
【審判官】原田 隆興
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-535608(JP,A)
【文献】特表2008-528671(JP,A)
【文献】特表2014-533734(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0105409(US,A1)
【文献】特表2013-518050(JP,A)
【文献】特開2015-193667(JP,A)
【文献】特表2006-504743(JP,A)
【文献】Abstract A187: Selective HDAC inhibition by ACY-241 enhances the activity of paclitaxel in solid tumor models,MOLECULAR CANCER THERAPEUTICS,2015年12月,DOI:10.1158/1535-7163.TARG-15-A187
【文献】Abstract 4822: Combination efficacy of the selective HDAC inhibitor ACY-241 and paclitaxel in solid tumor models,MOLECULAR CANCER THRAPEUTICS,2016年07月,DOI:10.1158/1538-7445.AM2016-4822
【文献】CANCER RESEARCH,1995年,Vol.55,p.2325-2333
【文献】CANCER RESEARCH,2000年,Vol.60,p.5761-5766
【文献】鍋倉智裕,薬物トランスポータと転写因子を標的とする抗がん剤耐性克服薬の開発に関する研究,科学研究費助成事業(科学研究費補助金)研究成果報告書,2013年,課題番号:22590151
【文献】THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,1997,Vol.272,No.4,p.2534-2541
【文献】Toxicology in Vitro,2013,Vol.27,Issue1,2013, p.239-249
【文献】Mini-Reviews in Medicinal Chemistry,2016年9月1日 Vol.16, No.14,p.1175-1184
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00-31/80
A61P35/00-35/04
A61P43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】
若しくはその薬学的に許容される塩、または
【化2】
若しくはその薬学的に許容される塩である、ヒストン脱アセチル化酵素6(HDAC6)阻害剤と、
(b)エポチロンA、エポチロンB、エポチロンC、エポチロンD、エポチロンE及びエポチロンFまたはその薬学的に許容される塩からなる群から選択されるエポチロンと、
を含む、必要とする対象において卵巣がんを治療するための医薬組成物であって、前記がんはパクリタキセルによる治療に抵抗性または難治性を示す、医薬組成物
【請求項2】
前記エポチロンは、
【化3】
またはその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記HDAC6阻害剤及び前記エポチロンは同一の製剤中にある、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記HDAC6阻害剤及び前記エポチロンは別々の製剤である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記HDAC6阻害剤及び前記エポチロンの組み合わせは同時投与または連続投与用である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記HDAC6阻害剤及び前記エポチロンはほぼ同じ時に投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記HDAC6阻害剤及び前記エポチロンは異なる時に投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年10月28日出願の米国仮特許出願第62/414,422号の利益を主張するものであり、その内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害によりがん細胞増殖の停止をもたらすことができる。しかしながら、pan-HDAC阻害は重大な有害事象につながるため、代替のHDAC阻害プロファイルが望ましい。
【0003】
HDAC6はクラスIIb HDACであり、α-チューブリン及びHSP90を含む多くの細胞タンパク質からアセチル基を除去することが知られている。HSP90の高アセチル化が、ER及びEGFRを含むその標的タンパク質を不安定化させることが報告されている。HDAC6の阻害剤は様々ながん種における抗がん増殖活性を示している。HDAC6活性の阻害が、様々な機構を介してがん細胞増殖阻害を引き起こしていることが示されている。
【0004】
がん患者には数多くの治療選択肢があるにもかかわらず、有効かつ安全な治療選択肢に対する要望は依然として存在している。詳細には、がん、特に現行療法に抵抗性及び/または難治性を示すがんを治療または予防するための有効な方法に対する要望が存在している。本明細書に記載するような組み合わせ治療を使用することにより、この要望を叶えることができる。
【発明の概要】
【0005】
本明細書では、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤及びエポチロンを含む医薬品組み合わせを提供する。
【0006】
一態様において、本明細書では、
(a)式I、
【化1】
(I)
のヒストン脱アセチル化酵素6(HDAC6)阻害剤
またはその薬学的に許容される塩であって、
式中、
環Bはアリールまたはヘテロアリールであり、
はアリールまたはヘテロアリールであり、そのそれぞれは、OH、ハロまたはC1-6アルキルで任意選択的に置換されてもよく、
RはHまたはC1-6アルキルである、
式Iのヒストン脱アセチル化酵素6(HDAC6)阻害剤またはその薬学的に許容される塩、及び、
(b)エポチロンまたはその薬学的に許容される塩、
を含む、医薬品組み合わせを提供する。
【0007】
医薬品組み合わせの様々な実施形態では、環Bはアリールである。
【0008】
医薬品組み合わせの様々な実施形態では、Rはアリールまたはヘテロアリールであり、そのそれぞれはハロで任意選択的に置換されてもよい。
【0009】
式Iの一実施形態では、Rは、OH、ハロまたはC1-6アルキルで置換されたアリールである。
【0010】
式Iの別の実施形態では、Rは、OH、ハロまたはC1-6アルキルで置換されたC-Cアリールである。
【0011】
式Iの別の実施形態では、Rは、OH、ハロまたはC1-6アルキルで置換されたC-Cヘテロアリールである。
【0012】
式Iの更に別の実施形態では、Rは、OH、ハロまたはC1-6アルキルで置換されたフェニルである。
【0013】
式Iの更に別の実施形態では、Rはクロロで置換されたフェニルである。
【0014】
式Iの更に別の実施形態では、Rはハロで置換されたフェニルである。
【0015】
式Iの別の実施形態では、環BはC-Cアリールである。
【0016】
式Iの別の実施形態では、環BはC-Cヘテロアリールである。
【0017】
式Iの更に別の実施形態では、環Bはフェニルである。
【0018】
医薬品組み合わせの様々な実施形態では、式Iの化合物は、
【化2】
またはその薬学的に許容される塩である。
【0019】
医薬品組み合わせの様々な実施形態では、式Iの化合物は、
【化3】
またはその薬学的に許容される塩である。
【0020】
医薬品組み合わせの様々な実施形態では、エポチロンは、エポチロンA、エポチロンB、エポチロンC、エポチロンD、エポチロンE及びエポチロンFまたはその薬学的に許容される塩からなる群から選択される。
【0021】
医薬品組み合わせの様々な実施形態では、エポチロンはエポチロンB、
【化4】
またはその薬学的に許容される塩である。
【0022】
医薬品組み合わせの様々な実施形態では、HDAC6阻害剤及びエポチロンは同一の製剤中にある。代替的に、HDAC6阻害剤及びエポチロンは別々の製剤である。
【0023】
医薬品組み合わせの様々な実施形態では、組み合わせは同時投与または連続投与用である。様々な実施形態では、医薬品組み合わせは、がんの治療を必要とする対象においてそれを行うためである。
【0024】
様々な実施形態では、医薬品組み合わせは、がんの治療用の薬剤の調製に使用するためである。
【0025】
様々な実施形態では、がんは固形腫瘍である。
【0026】
様々な実施形態では、がんは、卵巣癌、乳癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、結腸直腸癌、腹膜癌、腎臓癌、神経内分泌腫瘍、黒色腫、肝細胞癌、膠芽腫、結腸癌、子宮頸部癌、胃癌及び非ホジキンリンパ腫からなる群から選択される。
【0027】
様々な実施形態では、がんはパクリタキセルによる治療に抵抗性または難治性を示す。
【0028】
本発明の一態様は、本明細書に記載する治療有効量の医薬品組み合わせを対象に投与することを含む、がんの治療または予防を必要とする対象においてそれを行うための方法を提供する。
【0029】
本方法の様々な実施形態では、がんは固形腫瘍である。
【0030】
本方法の様々な実施形態では、がんは、卵巣癌、乳癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、結腸直腸癌、腹膜癌、腎臓癌、神経内分泌腫瘍、黒色腫、肝細胞癌、膠芽腫、結腸癌、子宮頸部癌、胃癌及び非ホジキンリンパ腫からなる群から選択される。
【0031】
本方法の様々な実施形態では、がんはパクリタキセルによる治療に抵抗性または難治性を示す。
【0032】
本方法のその他の実施形態では、HDAC6阻害剤及びエポチロンはほぼ同じ時に投与される。
【0033】
様々な実施形態では、HDAC6阻害剤及びエポチロンは異なる時に投与される。
【0034】
別の態様において、本明細書では、本明細書に記載の医薬品組み合わせと細胞を接触させることを含む、細胞内における多極紡錘体形成を促進するための方法を提供する。
【0035】
別の態様において、本明細書では、
(a)式I、
【化5】
(I)
のヒストン脱アセチル化酵素6(HDAC6)阻害剤
またはその薬学的に許容される塩であって、
式中、
環Bはアリールまたはヘテロアリールであり、
はアリールまたはヘテロアリールであり、そのそれぞれは、OH、ハロまたはC1-6アルキルで任意選択的に置換されてもよく、
RはHまたはC1-6アルキルである、
式Iのヒストン脱アセチル化酵素6(HDAC6)阻害剤またはその薬学的に許容される塩、及び、
(b)エポチロンまたはその薬学的に許容される塩、
を含む、医薬組成物を提供する。
【0036】
本組成物の一実施形態では、医薬組成物は1種または複数種の添加剤を更に含む。
【0037】
本組成物の一実施形態では、環Bはアリールである。様々な実施形態では、Rはアリールまたはヘテロアリールであり、そのそれぞれはハロで任意選択的に置換されてもよい。
【0038】
本組成物の別の実施形態では、式Iの化合物は、
【化6】
またはその薬学的に許容される塩である。
【0039】
本組成物の別の実施形態では、式Iの化合物は、
【化7】
またはその薬学的に許容される塩である。
【0040】
本組成物の一実施形態では、エポチロンは、
【化8】
またはその薬学的に許容される塩である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1A】固定前に、溶媒、化合物Bのみ、エポチロンBのみ、または、化合物BとエポチロンBの組み合わせで24時間処理したTOV-21G細胞の一組の顕微鏡写真である。その後、DAPI(DNAを標識するため)及びα-チューブリン用の抗体ならびに紡錘体極マーカーNuMAで細胞を染色した。染色は、多極性有糸分裂紡錘体形成の発生及び頻度を示す。
図1B】化合物Bの不存在下及び存在下におけるエポチロンBの量(nM)に対する多極紡錘体細胞のパーセンテージを示す棒グラフである。それぞれの処理条件の少なくとも100個の細胞について、多極性有糸分裂紡錘体を有する細胞の頻度を記録した。
図2A】化合物B(2μM)及び/またはエポチロンB(4nM)で7日間未処理または処理してからクリスタルバイオレット色素で染色したTOV-21G細胞を示す一組の写真である。
図2B】DMSO、化合物B、エポチロンB、または、化合物BとエポチロンBの組み合わせで処理したTOV-21G細胞におけるクリスタルバイオレット吸光度を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本明細書では、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤及びエポチロンを含む医薬品組み合わせを提供する。具体的には、本明細書では、
(a)式I、
【化9】
(I)
のヒストン脱アセチル化酵素6(HDAC6)阻害剤
またはその薬学的に許容される塩であって、
式中、
環Bはアリールまたはヘテロアリールであり、
はアリールまたはヘテロアリールであり、そのそれぞれは、OH、ハロまたはC1-6アルキルで任意選択的に置換されてもよく、
RはHまたはC1-6アルキルである、
式Iのヒストン脱アセチル化酵素6(HDAC6)阻害剤またはその薬学的に許容される塩、及び、
(b)エポチロンまたはその薬学的に許容される塩、
を含む、医薬品組み合わせを提供する。
【0043】
定義
本明細書で使用する特定の用語について以下で説明する。本発明の化合物は標準的な命名法を使用して記載される。特に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解する意味と同一の意味を有する。
【0044】
用語「アルキル」とは、特定の実施形態では、それぞれ1~6個または1~8個の炭素原子を含有する、飽和した直鎖または分枝鎖の炭化水素部分のことを意味する。C1-6アルキル部分の例としては、メチル部分、エチル部分、プロピル部分、イソプロピル部分、n-ブチル部分、tert-ブチル部分、ネオペンチル部分、n-ヘキシル部分が挙げられるがこれらに限定されず、C1-8アルキル部分の例としては、メチル部分、エチル部分、プロピル部分、イソプロピル部分、n-ブチル部分、tert-ブチル部分、ネオペンチル部分、n-ヘキシル部分、ヘプチル部分及びオクチル部分が挙げられるがこれらに限定されない。アルキル置換基中の炭素原子の数を接頭辞「C」で示してもよく、式中、xは置換基中の炭素原子の最小数であり、yは置換基中の炭素原子の最大数である。
【0045】
本明細書で使用する場合、用語「ハロ」または「ハロゲン」単独または別の置換基の一部としての「ハロ」または「ハロゲン」とは、特に明記しない限り、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子、好ましくは、フッ素、塩素または臭素、より好ましくは、塩素のことを意味する。
【0046】
用語「アリール」とは、1つまたは複数の芳香環(縮合または非縮合)を有する単環式または多環式の炭素環式環系のことを意味し、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、インデニルなどを含むがこれらに限定されない。一部の実施形態では、アリール基は6個の炭素原子を有している。一部の実施形態では、アリール基は6~10個の炭素原子を有している。一部の実施形態では、アリール基は6~16個の炭素原子を有している。一実施形態において、本明細書ではC-Cアリール基を提供する。
【0047】
用語「ヘテロアリール」とは、少なくとも1つの芳香環(環構成原子のうちの1個または複数個は、酸素、硫黄または窒素などのヘテロ原子である)を有する、単環式または多環式(例えば、2環式もしくは3環式またはそれ以上)の縮合もしくは非縮合部分または環系のことを意味する。一部の実施形態では、ヘテロアリール基は約1~6個の炭素原子を有しており、更なる実施形態では、1~15個の炭素原子を有している。一部の実施形態では、ヘテロアリール基は、その1個の環原子が酸素、硫黄及び窒素から選択され、0、1、2または3個の環原子が酸素、硫黄及び窒素から独立して選択される別のヘテロ原子であり、残りの環原子が炭素である、5~16個の環原子を含有している。ヘテロアリールとしては、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、チオフェニル、フラニル、インドリル、キノリニル、イソキノリニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、キノキサリニル、アクリジニルなどが挙げられるがこれらに限定されない。一実施形態において、本明細書ではC-Cヘテロアリール基を提供する。
【0048】
本明細書で使用する場合、用語「組み合わせ」、「治療薬組み合わせ」または「医薬品組み合わせ」とは、1つの投与単位剤形の固定組み合わせ、または、組み合わせ投与用の非固定組み合わせすなわちキットオブパーツ(2種またはそれ以上の治療薬を独立して、同じ時にまたは時間間隔内に別々に投与してもよく、特に、これらの時間間隔により、組み合わせパートナーが、協同性、例えば、相乗効果を示すことが可能となるように)のいずれかのことを意味する。
【0049】
用語「組み合わせ治療」とは、本開示に記載の治療症状または疾患を治療するための、2種またはそれ以上の治療薬の投与のことを意味する。このような投与は、固定比率の活性成分を有する単一の製剤、または、それぞれの活性成分用の別々の製剤(例えば、カプセル剤及び/または静脈内製剤)などによる、これらの治療薬のほぼ同時の共投与を包含する。加えて、このような投与はまた、ほぼ同じ時または異なる時のいずれかで、それぞれの種類の治療薬の連続または別々の使用を包含する。活性成分を単一の製剤または別々の製剤で投与するかにかかわらず、同一治療過程の一部として薬物を同一患者に投与する。任意のケースにおいて、治療レジメンは、本明細書に記載の症状または疾患の治療における有益な効果を提供する。
【0050】
本明細書で使用する場合、用語「薬学的に許容される塩」とは開示化合物の誘導体のことを意味し、親化合物は、既存の酸部分または塩基部分をその塩形態に変換することにより改変される。薬学的に許容される塩の例としては、アミンなどの塩基性残基の無機酸塩または有機酸塩、カルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩または有機塩などが挙げられるがこれらに限定されない。本発明の薬学的に許容される塩としては、例えば、非毒性の無機酸または有機酸から形成された親化合物の通常の非毒性塩が挙げられる。本発明の薬学的に許容される塩は、通常の化学的方法により塩基性部分または酸性部分を含有する親化合物から合成することができる。一般的に、このような塩は、これら化合物の遊離酸または塩基形態を、水中もしくは有機溶媒中で、またはこれら2種の混合液中で、化学量論量の好適な塩基または酸と反応させることにより調製することができるが、通常は、エーテル、エチルアセテート、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルなどの非水性媒体が好ましい。好適な塩のリストは、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1985,p.1418、及びJournal of Pharmaceutical Science,66,2(1977)に記載されており、それぞれの内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0051】
特に明記しない限り、または本文で明確に示さない限り、本明細書で提供する医薬品組み合わせにおいて有用な治療薬への言及は、化合物の遊離塩基と化合物の全ての薬学的に許容される塩の両方を含む。
【0052】
本明細書で使用する場合、用語「薬学的に許容される」とは、適切な医学的良識の範囲内において、過度の毒性、炎症アレルギー反応及びその他の問題の合併症を伴わずに、妥当な利益/リスク比に見合った、温血動物、例えば、哺乳動物またはヒトの組織との接触に適切な化合物、物質、組成物及び/または剤形のことを意味する。
【0053】
本明細書で使用する場合、用語「固定組み合わせ」、「固定用量」、「同一の製剤」及び「単一の製剤」とは、両方の治療薬の量(がんの治療に共同で治療的に有効な量)を患者に送達するように製剤化された単一の担体もしくは媒体または剤形のことを意味する。単一の媒体は、任意の薬学的に許容される担体または添加剤と共に薬剤のそれぞれの量を送達するように設計されている。一部の実施形態では、媒体は、錠剤、カプセル剤、丸剤または貼付剤である。その他の実施形態では、媒体は液剤または懸濁剤である。
【0054】
用語「非固定組み合わせ」、「キットオブパーツ」及び「別々の製剤」とは、特定の時間制限を設けず同時に、一度にまたは連続的にのいずれかで、活性成分、すなわち、HDAC6阻害剤及びエポチロンを別々の要素で患者に投与することを意味し、このような投与は、それを必要とする対象の体内において2種類の化合物の治療有効濃度をもたらす。後者はまた、カクテル療法、例えば、3種またはそれ以上の活性成分の投与に適用される。
【0055】
「経口剤形」は、経口投与を指示されたまたは意図した単位投与剤形を含む。本明細書で提供する医薬品組み合わせの一実施形態では、HDAC6阻害剤(例えば、化合物AまたはB)を経口剤形で投与する。
【0056】
本明細書で使用する場合、用語「治療すること」または「治療」は、対象における少なくとも1つの症状を軽減、抑制または緩和する治療、または、疾患の増悪の遅延をもたらす治療を含む。例えば、治療は、がんなどの疾患の1つまたはいくつかの症状の減少、または、疾患の完全な根絶であってもよい。
【0057】
本明細書で使用する場合、用語「予防する」、「予防すること」または「予防」は、予防する状態、疾患または障害が関与するまたは引き起こす、少なくとも1つの症状の予防を含む。
【0058】
用語、治療薬の組み合わせの「薬学的有効量」、「治療有効量」または「臨床的有効量」とは、組み合わせで治療した疾患の臨床的に観察可能な徴候及び症状のベースラインを超えて観察可能または臨床的に有意な改善をもたらすのに十分な量のことである。
【0059】
本明細書で使用する場合、用語「共同で治療的に有効」または「共同治療効果」とは、好ましくは治療する温血動物、特に、ヒトにおいて、治療薬がなおも(好ましくは相乗的な)相互作用(共同治療効果)を示すような時間間隔で、治療薬を別々(時間的にずらした方法、特に、順序を特定した方法)に投与可能であることを意味する。このことが、とりわけ、化合物の血中濃度に続いて測定可能なケースであるかにかかわらず、両方の化合物が少なくとも一定期間の間、治療するヒトの血液中に存在していることを示している。
【0060】
本明細書で使用する場合、用語「対象」または「患者」は、がんまたはがんと直接または間接的に関係する任意の疾患に罹患するまたは苦しむことが可能な動物を含むことを意味している。対象の例としては、哺乳動物、例えば、ヒト、類人猿、サル、イヌ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、マウス、ウサギ、ラット及びトランスジェニック非ヒト動物が挙げられる。一実施形態では、対象は、ヒト、例えば、がんに罹患したヒト、がんに罹患するリスクのあるヒト、または、潜在的にがんに罹患可能なヒトである。
【0061】
本明細書で使用する場合、がん患者に言及する場合の用語、治療薬に「抵抗性を示す」または「難治性を示す」とは、がんが、治療薬との接触の結果、治療薬の効果に対し自然耐性または獲得耐性を有することを意味する。代替的に述べると、がんは、特定の治療薬に関連する通常の標準治療に抵抗性を示す。
【0062】
用語「含む(comprising)」及び「含む(including)」は、本明細書において、特に明記しない限り、そのオープンエンドかつ非限定的な意味で使用される。
【0063】
本発明を記述する文脈において(特に、以下の特許請求の範囲の文脈において)、用語「a」、「an」、「the」及び同様の言及は、本明細書で特に明記しない限りまたは文脈上特に明確に矛盾しない限り、単数形と複数形の両方を対象として含むと解釈されるべきである。化合物、塩などに複数形を使用する際、この場合は、単数の化合物、塩なども意味するように捉えられる。
【0064】
用語「約(about)」または「約(approximately)」は通常、関連対象領域の当業者に理解されるが、特定の状況においては、任意の値または範囲の20%以内、10%以内または5%以内を意味し得る。あるいは、特に生物学的機構における用語「約(about)」は、任意の値の約(about)1対数(すなわち、1桁)以内または2倍以内を意味する。
【0065】
用語「ヒストン脱アセチル化酵素」または「HDAC」とは、コアヒストン内のリジン残基からアセチル基を除去することにより、圧縮され転写的にサイレンシングされたクロマチンの形成をもたらす酵素のことを意味する。現時点で18種類の既知のヒストン脱アセチル化酵素が存在し、4つのグループに分類される。クラスI HDAC(HDAC1、HDAC2、HDAC3及びHDAC8を含む)は酵母RPD3遺伝子に関連している。クラスII HDAC(HDAC4、HDAC5、HDAC6、HDAC7、HDAC9及びHDAC10を含む)は酵母Hda1遺伝子に関連している。クラスIII HDAC(サーチュインとしても知られている)はSir2遺伝子に関連し、SIRT1~7を含む。クラスIV HDAC(HDAC11のみを含む)はクラスI HDACとクラスII HDACの両方の特徴を有している。用語「HDAC」とは、特に明記しない限り、18種類の既知のヒストン脱アセチル化酵素のうちの任意の1つまたは複数のことを意味する。
【0066】
本明細書で使用する場合、用語「ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤」(HDAC阻害剤、HDACi、HDI)とは、ヒストン脱アセチル化酵素の少なくとも1つの活性を選択的に標的化、抑制または阻害する化合物のことを意味する。
【0067】
ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤
本明細書では、式I
【化10】
(I)
のヒストン脱アセチル化酵素6(HDAC6)阻害剤(本明細書ではまた「式Iの化合物」と呼ぶ)
またはその薬学的に許容される塩、
を含む、医薬品組み合わせを提供し、
式中、
環Bはアリールまたはヘテロアリールであり、
はアリールまたはヘテロアリールであり、そのそれぞれは、OH、ハロまたはC1-6アルキルで任意選択的に置換されてもよく、
RはHまたはC1-6アルキルである。
【0068】
式Iの化合物の一実施形態では、環Bはアリールである。様々な実施形態では、Rはアリールまたはヘテロアリールであり、そのそれぞれはハロで任意選択的に置換されてもよい。
【0069】
式Iの一実施形態では、Rは、OH、ハロまたはC1-6アルキルで置換されたアリールである。
【0070】
式Iの別の実施形態では、Rは、OH、ハロまたはC1-6アルキルで置換されたC-Cアリールである。
【0071】
式Iの別の実施形態では、Rは、OH、ハロまたはC1-6アルキルで置換されたC-Cヘテロアリールである。
【0072】
式Iの更に別の実施形態では、Rは、OH、ハロまたはC1-6アルキルで置換されたフェニルである。
【0073】
式Iの更に別の実施形態では、Rはクロロで置換されたフェニルである。
【0074】
式Iの更に別の実施形態では、Rはハロで置換されたフェニルである。
【0075】
式Iの別の実施形態では、環BはC-Cアリールである。
【0076】
式Iの別の実施形態では、環BはC-Cヘテロアリールである。
【0077】
式Iの更に別の実施形態では、環Bはフェニルである。
【0078】
ある特定の実施形態では、式Iの化合物は、表1に示すとおり、化合物Aもしくはその薬学的に許容される塩、または、化合物Bもしくはその薬学的に許容される塩である。
【表1】
【0079】
便宜上、式Iのヒストン脱アセチル化酵素6阻害剤及びその塩の群を一括して式Iの化合物と呼び、式Iの化合物への言及が代替的に、化合物またはその薬学的に許容される塩のいずれかを指すことを意味する。
【0080】
式Iの化合物(例えば、化合物A及びB)は周知のHDAC6阻害剤であり、PCT公開番号WO2011/091213に記載されている(その内容全体は参照により本明細書に組み込まれる)。化合物A及びBは、多発性骨髄腫の治療のための第1b相臨床開発において現在調査中である。
【0081】
化合物A及びBの調製についても本明細書の実施例1に記載されている。化合物A及びBは遊離塩基形態であることが好ましい。
【0082】
式Iの化合物の塩は薬学的に許容される塩であることが好ましく、好適な、対イオンを形成する薬学的に許容される塩は当分野で周知である。
【0083】
エポチロン
本明細書で使用する場合、用語「エポチロン」とは、例えば、エポチロンA~F、その類似体及び誘導体のいずれかを含むエポチロンコアを含有する化合物のことを意味する(Johann H.Mulzer,editor,2009“The Epothilones:An Outstanding Family of Anti-Tumor Agents”edition 1;Springer-Verlag Wien Publishers(Vienna,Austria);pages 1-260)。エポチロンコアは、ラクトン環内のエポキシ基及び/またはケト基、ならびにチアゾール環を有する側鎖、を特徴とするマクロラクトンを含む。Gordon M.Cragg et al.,editors,2011“Anticancer Agents from Natural Products”Second Edition,CRC Press(Baton Rouge,LA);pages 1-767を参照されたい。例えば、エポチロンは、以下の表2に示すようなエポチロンA~Fのいずれかであってもよい。
【表2】
【0084】
表2に示すエポチロンの様々な類似体及び誘導体はまた、用語「エポチロン」に包含される(例えば、米国特許第6,489,314号、第6,686,380号、第6,727,276号及び第6,800,653号を参照のこと)。臨床試験で現在調査中のエポチロンの例としては、パツピロン(EPO906)、サゴピロン(SH-Y03757A、ZK-EPO)、BMS-310705及びイクサベピロン(BMS-247550)が挙げられる。これらのエポチロンのいずれかを本明細書で提供する組み合わせ治療に使用してもよい。
【0085】
それゆえ、医薬品組み合わせの様々な実施形態では、エポチロンは、
【化11】
またはその類似体もしくは誘導体、または、上記のいずれかの薬学的に許容される塩である。
【0086】
医薬品組み合わせの様々な実施形態では、エポチロンは、エポチロンA、エポチロンB、エポチロンC、エポチロンD、エポチロンE及びエポチロンFまたはその薬学的に許容される塩からなる群から選択される。本医薬品組み合わせの一実施形態では、エポチロンはエポチロンAである。本医薬品組み合わせの一実施形態では、エポチロンはエポチロンBである。本医薬品組み合わせの一実施形態では、エポチロンはエポチロンCである。本医薬品組み合わせの一実施形態では、エポチロンはエポチロンDである。本医薬品組み合わせの一実施形態では、エポチロンはエポチロンEである。本医薬品組み合わせの一実施形態では、エポチロンはエポチロンFである。
【0087】
データは、HDAC6阻害剤及びエポチロンによる組み合わせ治療が、いずれかの単剤の場合と比較して腫瘍細胞増殖をより大きな程度抑制したことを示している(例えば、実施例4及び図2A図2Bを参照のこと)。それゆえ、本明細書で提供する組み合わせ治療は、いずれかの単剤のみの場合と比較して、増殖の阻害を向上させて細胞死を増加させることができる。DAPI染色、抗NuMA抗体及び抗チューブリン抗体を使用した細胞解析は、組み合わせ治療が有糸分裂紡錘体の正常な形成を変化させることにより異常な多極性有糸分裂紡錘体形成の頻度を上昇させることにつながることを示している(例えば、実施例3及び図1A図1Bを参照のこと)。任意の特定の理論または作用機序に制限されるものではないが、本明細書では、組み合わせ治療が、進行がん、例えば、固形腫瘍を有する患者において有効となり得ることを想定する。
【0088】
式Iの化合物もしくはエポチロンまたはその両方を、遊離形態または薬学的に許容される塩の形態で投与してもよい。
【0089】
本明細書ではまた、がんの増悪の遅延または治療に使用するための、その同時投与、別々の投与または連続投与を行うための取扱説明書と共に、治療薬として本発明の組み合わせを含む商業用パッケージを提供する。
【0090】
がんの治療方法
本明細書では、本明細書で提供する治療有効量の医薬品組み合わせ、すなわち、
(a)式I、
【化12】
(I)
のヒストン脱アセチル化酵素6(HDAC6)阻害剤
またはその薬学的に許容される塩であって、
式中、
環Bはアリールまたはヘテロアリールであり、
はアリールまたはヘテロアリールであり、そのそれぞれは、OH、ハロまたはC1-6アルキルで任意選択的に置換されてもよく、
RはHまたはC1-6アルキルである、
式Iのヒストン脱アセチル化酵素6(HDAC6)阻害剤またはその薬学的に許容される塩、及び、
(b)エポチロンまたはその薬学的に許容される塩、
を含む、医薬品組み合わせを対象に投与することを含む、がんの治療または予防を必要とする対象においてそれを行うための方法を提供する。
【0091】
一実施形態において、本明細書では、本明細書で提供する治療有効量の医薬品組み合わせを対象に投与することを含む、がんの治療を必要とする対象においてそれを行うための方法を提供する。
【0092】
本方法のある特定の実施形態では、HDAC6阻害剤は化合物Bまたはその薬学的に許容される塩であり、エポチロンはエポチロンBまたはその薬学的に許容される塩である。
【0093】
本明細書で提供する方法は固形腫瘍と液体腫瘍の両方に使用することができる。更に、腫瘍タイプ及び使用する個々の組み合わせに応じ、腫瘍容積の減少を達成することができる。本明細書で開示する組み合わせはまた、腫瘍の転移性伝播及び微小転移巣の増殖または進行を予防するのに適している。本明細書で開示する組み合わせは、予後不良患者の治療に適している。
【0094】
本明細書で提供する方法のいずれかの一実施形態では、がんは、肺(小細胞肺癌及び非小細胞肺癌を含む)、気管支、前立腺、胸(散発性乳癌、及びカウデン病患者を含む)、膵臓、胃腸管、結腸、直腸、結腸癌、結腸直腸癌、甲状腺、肝臓、胆道、肝内胆管(胆管癌を含む)、肝細胞、副腎、胃(stomach)、胃(gastric)、神経膠腫、CNS(膠芽腫、星状細胞腫及び上衣腫を含む)、子宮内膜、腎臓、腎盂、膀胱、子宮、子宮頸部、膣、卵巣、多発性骨髄腫、食道、頸部または頭部、脳、口腔及び咽頭、喉頭、小腸、の良性腫瘍または悪性腫瘍、黒色腫、絨毛状結腸腺腫、肉腫、腫瘍形成、上皮性腫瘍形成、乳癌、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、光線性角化症、真性多血症、本態性血小板血症、白血病(急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病、骨髄異形成症候群、巨核芽球性白血病、赤白血病及び骨髄性白血病を含む)、リンパ腫(非ホジキンリンパ腫及びホジキンリンパ腫を含む)、骨髄様化生を伴う骨髄線維症、ワルデンシュトレーム病及びバレット腺癌、から選択される。
【0095】
組み合わせの様々な実施形態では、がんは固形腫瘍である。
【0096】
更なる実施形態では、がんは、乳癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、結腸直腸癌、腹膜癌、腎臓癌、神経内分泌腫瘍、黒色腫、肝細胞癌、膠芽腫、結腸癌、子宮頸部癌、胃癌、卵巣癌及び非ホジキンリンパ腫からなる群から選択される。
【0097】
一実施形態において、本明細書では、治療有効量の式IのHDAC阻害剤またはその薬学的に許容される塩、及び治療有効量のエポチロンを対象に投与することを含む、がんの治療を必要とする対象においてそれを行うための方法を提供する。一部の実施形態において、本明細書では、治療有効量の化合物Aまたはその薬学的に許容される塩、及び治療有効量のエポチロンを対象に投与することを含む、がんの治療を必要とする対象においてそれを行うための方法を提供する。
【0098】
別の実施形態において、本明細書では、治療有効量の式IのHDAC阻害剤またはその薬学的に許容される塩、及び治療有効量のエポチロンまたはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む、固形腫瘍の治療を必要とする対象においてそれを行うための方法を提供する。一部の実施形態において、本明細書では、治療有効量の化合物Aまたはその薬学的に許容される塩、及び治療有効量のエポチロンまたはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む、固形腫瘍の治療を必要とする対象においてそれを行うための方法を提供する。
【0099】
別の実施形態において、本明細書では、治療有効量の式IのHDAC阻害剤またはその薬学的に許容される塩、及び治療有効量のエポチロンまたはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む、卵巣癌の治療を必要とする対象においてそれを行うための方法を提供する。一部の実施形態において、本明細書では、治療有効量の化合物Aまたはその薬学的に許容される塩、及び治療有効量のエポチロンまたはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む、卵巣癌の治療を必要とする対象においてそれを行うための方法を提供する。
【0100】
別の実施形態は、治療有効量の化合物Aまたはその薬学的に許容される塩、及び治療有効量のエポチロンBまたはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む、がんの治療を必要とする対象においてそれを行うための方法である。この実施形態は、治療量以下の化合物AまたはエポチロンBが本方法に使用可能であるように、相乗効果を示す。
【0101】
別の実施形態は、治療有効量の化合物Aまたはその薬学的に許容される塩、及び治療有効量のエポチロンBまたはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む、固形腫瘍の治療を必要とする対象においてそれを行うための方法である。
【0102】
別の実施形態は、治療有効量の化合物Aまたはその薬学的に許容される塩、及び治療有効量のエポチロンBまたはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む、卵巣癌の治療を必要とする対象においてそれを行うための方法である。
【0103】
更に別の実施形態は、治療有効量の化合物Aまたはその薬学的に許容される塩、ならびに、エポチロンA、エポチロンB、エポチロンC、エポチロンD、エポチロンE及びエポチロンFまたはその薬学的に許容される塩からなる群から選択される治療有効量のエポチロンを対象に投与することを含む、がんの治療を必要とする対象においてそれを行うための方法である。
【0104】
その他の実施形態において、本明細書では、治療有効量の化合物Bまたはその薬学的に許容される塩、及び治療有効量のエポチロンまたはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む、がんの治療を必要とする対象においてそれを行うための方法を提供する。一部の実施形態では、本方法は、治療有効量の化合物Bまたはその薬学的に許容される塩、ならびに、エポチロンA、エポチロンB、エポチロンC、エポチロンD、エポチロンE及びエポチロンFまたはその薬学的に許容される塩からなる群から選択される治療有効量のエポチロンを対象に投与することを含む。
【0105】
別の実施形態において、本明細書では、治療有効量の式IのHDAC阻害剤またはその薬学的に許容される塩、及び治療有効量のエポチロンまたはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む、固形腫瘍の治療を必要とする対象においてそれを行うための方法を提供する。一部の実施形態において、本明細書では、治療有効量の化合物Bまたはその薬学的に許容される塩、及び治療有効量のエポチロンまたはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む、固形腫瘍の治療を必要とする対象においてそれを行うための方法を提供する。
【0106】
別の実施形態において、本明細書では、治療有効量の式IのHDAC阻害剤またはその薬学的に許容される塩、及び治療有効量のエポチロンまたはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む、卵巣癌の治療を必要とする対象においてそれを行うための方法を提供する。一部の実施形態において、本明細書では、治療有効量の化合物Bまたはその薬学的に許容される塩、及び治療有効量のエポチロンまたはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む、固形腫瘍の治療を必要とする対象においてそれを行うための方法を提供する。
【0107】
別の実施形態は、治療有効量の化合物Bまたはその薬学的に許容される塩、及び治療有効量のエポチロンBまたはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む、がんの治療を必要とする対象においてそれを行うための方法である。この実施形態は、治療量以下の化合物BまたはエポチロンBが本方法に使用可能であるように、相乗効果を示す。
【0108】
別の実施形態は、治療有効量の化合物Bまたはその薬学的に許容される塩、及び治療有効量のエポチロンBまたはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む、固形腫瘍の治療を必要とする対象においてそれを行うための方法である。
【0109】
別の実施形態は、治療有効量の化合物Bまたはその薬学的に許容される塩、及び治療有効量のエポチロンBまたはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む、卵巣癌の治療を必要とする対象においてそれを行うための方法である。
【0110】
上記方法の一部の実施形態では、がんまたはがん細胞はパクリタキセルによる治療に抵抗性または難治性を示す。別の実施形態では、固形腫瘍はパクリタキセルによる治療に抵抗性または難治性を示す。更に別の実施形態では、卵巣癌はパクリタキセルによる治療に抵抗性または難治性を示す。
【0111】
本明細書で検討する対象は一般にヒトである。しかしながら、対象は、治療が望まれる任意の哺乳動物であってもよい。それゆえ、本明細書に記載の方法は、ヒト用途と獣医学的用途の両方に適用可能である。
【0112】
様々な実施形態では、がんは、少なくとも1つの前治療による治療に抵抗性または難治性を示す。特定の実施形態では、がんはパクリタキセルによる治療に抵抗性または難治性を示す。
【0113】
医薬品組み合わせ及び組成物
本明細書では、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤及びエポチロンを含む医薬品組み合わせを提供する。
【0114】
一態様において、本明細書では、
(a)式I、
【化13】
(I)
のヒストン脱アセチル化酵素6(HDAC6)阻害剤
またはその薬学的に許容される塩であって、
式中、
環Bはアリールまたはヘテロアリールであり、
はアリールまたはヘテロアリールであり、そのそれぞれは、OH、ハロまたはC1-6アルキルで任意選択的に置換されてもよく、
RはHまたはC1-6アルキルである、
式Iのヒストン脱アセチル化酵素6(HDAC6)阻害剤またはその薬学的に許容される塩、及び、
(b)エポチロンまたはその薬学的に許容される塩、
を含む、医薬品組み合わせを提供する。
【0115】
医薬品組み合わせの様々な実施形態では、環Bはアリールである。
【0116】
医薬品組み合わせの様々な実施形態では、Rはアリールまたはヘテロアリールであり、そのそれぞれはハロで任意選択的に置換されてもよい。
【0117】
医薬品組み合わせの様々な実施形態では、式Iの化合物は化合物Aまたはその薬学的に許容される塩である。別の実施形態では、式Iの化合物は化合物Bまたはその薬学的に許容される塩である。
【0118】
医薬品組み合わせの様々な実施形態では、エポチロンはエポチロンBまたはその薬学的に許容される塩である。
【0119】
医薬品組み合わせの様々な実施形態では、エポチロンは、エポチロンA、エポチロンB、エポチロンC、エポチロンD、エポチロンE及びエポチロンFまたはその薬学的に許容される塩からなる群から選択される。
【0120】
医薬品組み合わせのある特定の実施形態では、HDAC6阻害剤は化合物Bまたはその薬学的に許容される塩であり、エポチロンはエポチロンBまたはその薬学的に許容される塩である。
【0121】
様々な実施形態では、医薬品組み合わせは、がんの治療または予防を必要とする対象においてそれを行うためである。特定の実施形態では、医薬品組み合わせは、がんの治療を必要とする対象におけるその実施に使用するためである。
【0122】
一実施形態では、本明細書の組み合わせは、有効量のHDAC6阻害剤(すなわち、式Iの化合物)及び有効量のエポチロンを含む組み合わせ治療薬を対象に投与することを含む、がんの治療または予防に使用するためである。組み合わせる際に有益な効果をもたらす治療有効投与量でこれらの化合物を投与することが好ましい。投与は、同時または連続的にのいずれかによる、それぞれの成分の別々の投与を含んでいてもよい。
【0123】
様々な実施形態では、医薬品組み合わせは、がんの治療または予防用の薬剤の調製に使用するためである。更なる実施形態では、医薬品組み合わせは、がんの治療用の薬剤の調製に使用するためである。
【0124】
本明細書で提供する医薬品組み合わせはまた、固形腫瘍と液体腫瘍の両方における増殖を阻害することができる。更に、腫瘍タイプ及び使用する個々の組み合わせに応じ、腫瘍容積の減少を達成することができる。本明細書で開示する組み合わせはまた、腫瘍の転移性伝播及び微小転移巣の増殖または進行を予防するのに適している。本明細書で開示する組み合わせは、予後不良患者の治療に適している。
【0125】
本明細書で提供する医薬品組み合わせのいずれかの一実施形態では、がんは、肺(小細胞肺癌及び非小細胞肺癌を含む)、気管支、前立腺、胸(散発性乳癌、及びカウデン病患者を含む)、膵臓、胃腸管、結腸、直腸、結腸癌、結腸直腸癌、甲状腺、肝臓、胆道、肝内胆管(胆管癌を含む)、肝細胞、副腎、胃、胃、神経膠腫、CNS(膠芽腫、星状細胞腫及び上衣腫を含む)、子宮内膜、腎臓、腎盂、膀胱、子宮、子宮頸部、膣、卵巣、多発性骨髄腫、食道、頸部または頭部、脳、口腔及び咽頭、喉頭、小腸、の良性腫瘍または悪性腫瘍、黒色腫、絨毛状結腸腺腫、肉腫、腫瘍形成、上皮性腫瘍形成、乳癌、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、光線性角化症、真性多血症、本態性血小板血症、白血病(急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病、骨髄異形成症候群、巨核芽球性白血病、赤白血病及び骨髄性白血病を含む)、リンパ腫(非ホジキンリンパ腫及びホジキンリンパ腫を含む)、骨髄様化生を伴う骨髄線維症、ワルデンシュトレーム病及びバレット腺癌、から選択される。
【0126】
組み合わせの様々な実施形態では、がんは固形腫瘍である。
【0127】
更なる実施形態では、がんは、卵巣癌、乳癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、結腸直腸癌、腹膜癌、腎臓癌、神経内分泌腫瘍、黒色腫、肝細胞癌、膠芽腫、結腸癌、子宮頸部癌、胃癌及び非ホジキンリンパ腫からなる群から選択される。
【0128】
様々な実施形態では、がんは、少なくとも1つの前治療による治療に抵抗性または難治性を示す。特定の実施形態では、がんはパクリタキセルによる治療に抵抗性または難治性を示す。
【0129】
がんの性質は多要素からなるため、特定の状況下では、異なる作用機序を有する薬物を組み合わせてもよい。しかしながら、異なる作用機序を有する治療薬の任意の組み合わせは、必ずしも有利な効果を有する組み合わせにはつながらない。本明細書で提供する医薬品組み合わせの投与は、本明細書で提供する組み合わせに使用する医薬治療薬のうちの1種のみを投与する単剤治療と比較して、有益な効果、例えば、症状の増悪を緩和、遅延すること、またはその症状を阻害することに関する相乗的な治療効果だけではなく、更に驚くべき有益な効果、例えば、副作用がほとんどない、長続きする効果、生活の質の向上、または罹患率の低下もまた、もたらすことができる。
【0130】
更なる利点は、本発明のより低用量の治療薬の組み合わせを、例えば、用量を度々より少なくするだけではなくより少ない頻度で投与可能となるように使用できる点、または、組み合わせパートナーのうちの1種のみの場合に認められる副作用の発現率を低下させるために使用できる点である。このことは、治療する患者の要望及び要求に沿っている。
【0131】
本明細書で提供する医薬品組み合わせが本明細書において上で記載した有益な効果をもたらすことを、所定の試験モデルで示すことができる。当業者は、このような有益な効果を証明するための適切な試験モデルを選択することが十分に可能である。例えば、臨床試験または動物モデルにより、本明細書で提供する医薬品組み合わせの薬理活性を証明することができる。
【0132】
本明細書ではまた、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤及びエポチロンを含む医薬組成物を提供する。
【0133】
本明細書で使用する場合、用語「医薬組成物」は、本明細書において、哺乳動物に影響を及ぼす個々の疾患または症状を予防または治療するために、対象、例えば、哺乳動物またはヒトに投与される治療薬(複数可)を含有する混合液または溶液を意味するように定義される。
【0134】
具体的には、本明細書では、
(a)式I、
【化14】
(I)
のヒストン脱アセチル化酵素6(HDAC6)阻害剤
またはその薬学的に許容される塩であって、
式中、
環Bはアリールまたはヘテロアリールであり、
はアリールまたはヘテロアリールであり、そのそれぞれは、OH、ハロまたはC1-6アルキルで任意選択的に置換されてもよく、
RはHまたはC1-6アルキルである、
式Iのヒストン脱アセチル化酵素6(HDAC6)阻害剤またはその薬学的に許容される塩、及び、
(b)エポチロンまたはその薬学的に許容される塩、
を含む、医薬組成物を提供する。
【0135】
本組成物の一実施形態では、環Bはアリールである。様々な実施形態では、Rはアリールまたはヘテロアリールであり、そのそれぞれはハロで任意選択的に置換されてもよい。
【0136】
本組成物の別の実施形態では、式Iの化合物は、化合物Aまたはその薬学的に許容される塩である。本組成物の別の実施形態では、式Iの化合物は化合物Bまたはその薬学的に許容される塩である。
【0137】
本医薬組成物の一実施形態では、エポチロンは、エポチロンA、エポチロンB、エポチロンC、エポチロンD、エポチロンE及びエポチロンFまたはその薬学的に許容される塩の群から選択される。
【0138】
本組成物の一実施形態では、エポチロンはエポチロンBまたはその薬学的に許容される塩である。
【0139】
本組成物のある特定の実施形態では、HDAC6阻害剤は化合物Bまたはその薬学的に許容される塩であり、エポチロンはエポチロンBまたはその薬学的に許容される塩である。
【0140】
本組成物の一実施形態では、医薬組成物は1種または複数種の添加剤を更に含む。本明細書で使用する場合、用語「薬学的に許容される添加剤」または「薬学的に許容される担体」としては、当業者に周知(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.Mack Printing Company,1990,pp.1289-1329を参照のこと)の全ての溶媒、分散媒、コーティング剤、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤(例えば、抗菌薬、抗カビ剤)、等張化剤、吸収遅延剤、塩、防腐剤、薬物、薬物安定化剤、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、風味剤、染料など及びこれらの組み合わせが挙げられる。任意の通常の担体が活性成分と非相溶であることを除く限りにおいて、治療組成物または医薬組成物中における担体の使用を企図する。
【0141】
医薬組成物は、約0.1%~約99.9%、好ましくは約1%~約60%の治療薬(複数可)を含有していてもよい。
【0142】
経腸または非経口投与用の組み合わせ治療に好適な医薬組成物は、例えば、単位投与剤形の医薬組成物、例えば、糖衣錠、錠剤、カプセル剤もしくは坐剤またはアンプル剤などである。特に明記しない場合であっても、それ自体周知の方法、例えば、当業者にとって容易に明らかな様々な通常の混合法、粉砕法、直接圧縮法、造粒法、糖衣法、溶解法、凍結乾燥プロセス、溶融造粒法または製造技術を用いて、これらの医薬組成物を調製する。複数の投与単位を投与することにより必要有効量を達成することができるため、それぞれの剤形の個々の用量に含有される組み合わせパートナーの単位含有量がそれ自体で有効量を構成する必要がないことを理解されたい。
【0143】
一実施形態では、本明細書で提供する医薬品組み合わせもしくは組成物またはその両方は相乗効果を示す。本明細書で使用する場合、用語「相乗効果」とは、例えば、がんまたはその症状の増悪を遅延させる効果をもたらすような、2種類の薬剤、例えば、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩及びエポチロン(例えば、エポチロンB)の作用のことを意味し、その効果は、単独で投与したそれぞれの薬剤の効果を単純に足したものを超える。相乗効果は、例えば、好適な方法、例えば、シグモイドEmax式(Holford,N.H.G.and Scheiner,L.B.,Clin.Pharmacokinet.6:429-453(1981))、Loewe加算方程式(Loewe,S.and Muischnek,H.,Arch.Exp.Pathol Pharmacol.114:313-326(1926))及びメジアン効果式(Chou,T.C.and Talalay,P.,Adv.Enzyme Regul.22:27-55(1984))などを使用して、算出することができる。上で言及したそれぞれの式を実験データに適用して、薬物組み合わせの効果を評価するのに役立つ、対応するグラフを生成することができる。上で言及した式に関連した対応するグラフはそれぞれ、濃度効果曲線、アイソボログラム曲線及び組み合わせ係数曲線である。
【0144】
1種または複数種の成分間の相乗的な相互作用を確認するため、異なる重量/重量比範囲及び容量にわたる成分の、治療を必要とする患者への投与により、効果のための至適範囲及び効果のためのそれぞれの成分の絶対用量範囲を明確に測定してもよい。ヒトにおいて、この方式の試験を相乗効果用の一次モデルとして使用することは、患者の臨床試験を実施する複雑さ及び費用という点で非現実的となり得る。しかしながら、特定の実験における相乗効果の所見はその他の種における効果を予測可能であるため、既存の動物モデルを使用して相乗効果を更に定量化してもよい。このような試験の結果も使用して、有効量比範囲及び絶対用量ならびに血漿中濃度を予測してもよい。
【0145】
投与/用量
本明細書で提供する本開示によるがんを治療するための方法は、同時または連続的な、任意の順序の、共同で治療有効量、好ましくは相乗的有効量の、例えば、毎日または断続的な投与量による、(i)遊離形態または薬学的に許容される塩形態のHDAC6阻害剤(a)の投与、及び、(ii)遊離形態または薬学的に許容される塩形態のエポチロン(b)の投与、を含んでいてもよい。本明細書で提供する医薬品組み合わせにおける個々の組み合わせパートナーを、別々または単一の組み合わせ形態で、治療過程の異なる時に別々に、または同時に、投与してもよい。それゆえ、本明細書で提供する方法は、同時または交互の治療の全てのこのようなレジメンを包含し、用語「投与すること」はそのように解釈されることを理解されたい。
【0146】
例えば、本方法の一実施形態では、HDAC6阻害剤を最初に投与し、続いてエポチロンを投与する。本方法の別の実施形態では、エポチロンを最初に投与し、続いてHDAC6阻害剤を投与する。
【0147】
単回または複数回用量の1日あたり約10mg~約1000mg(例えば、約10mg~約500mgを含む)の量で、式Iの化合物を経口投与してもよい。それゆえ、本明細書で提供する治療方法の一実施形態では、1日あたり約10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、110mg、120mg、130mg、140mg、150mg、160mg、170mg、180mg、190mg、200mg、210mg、220mg、230mg、240mg、250mg、260mg、270mg、280mg、290mg、300mg、310mg、320mg、330mg、340mg、350mg、360mg、370mg、380mg、390mg、400mg、410mg、420mg、430mg、440mg、450mg、460mg、470mg、480mg、490mgまたは500mgの用量で、式Iの化合物を投与する。更なる実施形態では、1日あたり約20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、110mg、120mg、130mg、140mg、150mg、160mg、170mg、180mg、190mgまたは200mgの用量で、式Iの化合物を投与する。
【0148】
本医薬品組み合わせの一実施形態では、化合物Aは、600mg~3000mg(例えば、約600、約800、約1000、約1200、約1400、約1600、約1800、約2000mg)の量である。本医薬品組み合わせの更なる実施形態では、化合物Aは600mg~2000mgの量である。本医薬品組み合わせの好ましい実施形態では、化合物Aは180mg~480mgの量である。
【0149】
本医薬品組み合わせの別の実施形態では、化合物Aは、5mg~600mg(例えば、約5、約25、約50、約100、約200、約300、約400、約500、約600mg)の量である。本医薬品組み合わせの更に別の実施形態では、化合物Aは10mg~200mgである。
【0150】
本医薬品組み合わせの一実施形態では、化合物Bは、600mg~3000mg(例えば、約600、約800、約1000、約1200、約1400、約1600、約1800、約2000mg)の量である。本医薬品組み合わせの更なる実施形態では、化合物Bは600mg~2000mgの量である。本医薬品組み合わせの好ましい実施形態では、化合物Bは180mg~480mgの量である。
【0151】
本医薬品組み合わせの別の実施形態では、化合物Bは、5mg~600mg(例えば、約5、約25、約50、約100、約200、約300、約400、約500、約600mg)の量である。本医薬品組み合わせの更に別の実施形態では、化合物Bは10mg~200mgである。
【0152】
単回または複数回用量の1日あたり約10mg~約1000mg(例えば、約10mg~約500mgを含む)の量で、エポチロンを投与してもよい。それゆえ、本明細書で提供する治療方法の一実施形態では、1日あたり約10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、110mg、120mg、130mg、140mg、150mg、160mg、170mg、180mg、190mg、200mg、210mg、220mg、230mg、240mg、250mg、260mg、270mg、280mg、290mg、300mg、310mg、320mg、330mg、340mg、350mg、360mg、370mg、380mg、390mg、400mg、410mg、420mg、430mg、440mg、450mg、460mg、470mg、480mg、490mgまたは500mgの用量で、エポチロンを投与する。更なる実施形態では、1日あたり約20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、110mg、120mg、130mg、140mg、150mg、160mg、170mg、180mg、190mgまたは200mgの用量で、エポチロンを投与する。
【0153】
本医薬品組み合わせの一実施形態では、エポチロンBは、600mg~3000mg(例えば、約600、約800、約1000、約1200、約1400、約1600、約1800、約2000mg)の量である。本医薬品組み合わせの更なる実施形態では、エポチロンBは600mg~2000mgの量である。本医薬品組み合わせの好ましい実施形態では、エポチロンBは180mg~480mgの量である。
【0154】
本医薬品組み合わせの別の実施形態では、エポチロンBは、5mg~600mg(例えば、約5、約25、約50、約100、約200、約300、約400、約500、約600mg)の量である。本医薬品組み合わせの更に別の実施形態では、エポチロンBは10mg~200mgである。
【0155】
本医薬品組み合わせの一実施形態では、式Iの化合物とエポチロンの比率は700:1~1:40の範囲である。別の実施形態では、式Iの化合物とエポチロンの比率は2:1~1:2、例えば、2:1、1:1もしくは1:2、170:1~150:1、例えば、170:1、160:1もしくは150:1、3:1~1:1、例えば、3:1、2:1もしくは1:1、4:1~1:1、例えば、4:1、3:1、2:1もしくは1:1、または、30:1~10:1、例えば、30:1、20:1もしくは10:1の範囲である。
【0156】
本医薬品組み合わせの別の実施形態では、化合物Aとエポチロンの比率は700:1~1:40の範囲である。別の実施形態では、化合物Aとエポチロンの比率は2:1~1:2、例えば、2:1、1:1もしくは1:2、170:1~150:1、例えば、170:1、160:1もしくは150:1、3:1~1:1、例えば、3:1、2:1もしくは1:1、4:1~1:1、例えば、4:1、3:1、2:1もしくは1:1、または、30:1~10:1、例えば、30:1、20:1もしくは10:1の範囲である。
【0157】
本医薬品組み合わせの別の実施形態では、化合物Bとエポチロンの比率は700:1~1:40の範囲である。別の実施形態では、化合物Bとエポチロンの比率は2:1~1:2、例えば、2:1、1:1もしくは1:2、170:1~150:1、例えば、170:1、160:1もしくは150:1、3:1~1:1、例えば、3:1、2:1もしくは1:1、または、30:1~10:1、例えば、30:1、20:1もしくは10:1の範囲である。
【0158】
本医薬品組み合わせの別の実施形態では、化合物AとエポチロンBの比率は700:1~1:40の範囲である。別の実施形態では、化合物AとエポチロンBの比率は2:1~1:2、例えば、2:1、1:1もしくは1:2、170:1~150:1、例えば、170:1、160:1もしくは150:1、3:1~1:1、例えば、3:1、2:1もしくは1:1、または、30:1~10:1、例えば、30:1、20:1もしくは10:1の範囲である。
【0159】
更なる実施形態において、本明細書では、本発明の組み合わせを含む、対象に投与するための相乗的な組み合わせを提供し、それぞれの成分の用量範囲は、好適な腫瘍モデルまたは臨床試験で示唆された相乗範囲に相当する。
【0160】
本発明の組み合わせに採用した組み合わせパートナーのそれぞれにおける有効投与量は、採用する個々の化合物または医薬組成物、投与方法、治療する症状、及び治療する症状の重症度に応じて変化し得る。それゆえ、本発明の組み合わせの投与レジメンは、投与経路ならびに患者の腎機能及び肝機能を含む様々な因子に従い選択される。
【0161】
毒性を伴わずに効果をもたらす最適比率、個々の用量及び組み合わせ用量、ならびに、本明細書で提供する組み合わせにおける組み合わせパートナー(例えば、式Iの化合物及びエポチロン)の濃度は、治療薬の標的部位への利用能の動態に基づいており、当業者に周知の方法を使用して決定される。
【0162】
組み合わせパートナーのそれぞれの有効投与量は、組み合わせの一方の化合物(複数可)と比較して、もう一方の化合物(複数可)のより頻繁な投与を必要とし得る。それゆえ、適切な投与を可能とするために、包装された医薬品は、化合物の組み合わせを含有する1つまたは複数の剤形を含有していてもよく、また、組み合わせの一方の化合物を含有するが組み合わせのもう一方の化合物(複数可)を含有しない1つまたは複数の剤形を含有していてもよい。
【0163】
本発明の組み合わせに採用する組み合わせパートナーを単一の薬物として市販されている形態で投与する場合、それらの用量及び投与方法については、本明細書で特に言及しない限り、それぞれの市販薬物の添付文書が提供する情報に従ってもよい。
【0164】
がん治療用のそれぞれの組み合わせパートナーのそれぞれの個人における至適用量を周知の方法を使用して実験的に決定することができ、また、限定するわけではないが、疾患の進行度合い、個人の年齢、体重、一般的な健康、性別及び食事、投与期間及び投与経路、ならびに個人が服用しているその他の薬剤を含む様々な因子によって決まる。当該技術分野において周知の常用試験及び手法を使用して至適用量を設定してもよい。
【0165】
単一剤形を調製するために担体物質と配合され得るそれぞれの組み合わせパートナーの量は、治療する個人及び個々の投与方法に応じて変化する。一部の実施形態では、本明細書に記載の薬物の組み合わせを含有する単位投与剤形は、組み合わせのそれぞれの薬物の、単独で薬物を投与する際に一般に投与される量を含有する。
【0166】
投与頻度は、使用する化合物及び治療または予防する個々の症状に応じて変化し得る。一般に、治療または予防する症状に好適なアッセイを使用して患者における治療効果をモニターしてもよく、それらのアッセイは当業者によく知られている。
【0167】
式Iの化合物及びエポチロンを独立して、同じ時にまたは時間間隔内に別々に投与してもよく、これらの時間間隔により、組み合わせパートナーが協同性、例えば、相乗効果を示すことが可能となる。
【0168】
医薬品組み合わせの様々な実施形態では、HDAC6阻害剤及びエポチロンは同一の製剤中にある。代替的に、HDAC6阻害剤及びエポチロンは別々の製剤である。
【0169】
医薬品組み合わせの様々な実施形態では、組み合わせは同時投与または連続投与用である。
【0170】
一実施形態では、式Iの化合物とエポチロンを同時に投与しない場合、2つの薬剤は相乗効果を示す。一部の実施形態では、式Iの化合物を投与してからエポチロンを投与する。その他の実施形態では、エポチロンを投与してから式Iの化合物を投与する。その他の実施形態では、第1投与化合物の患者における効果が出るまでの時間を提供してから、第2投与化合物を投与する。一般に、時間差は、第1投与化合物が患者におけるその効果を完了させる時間を超えて、または、第1投与化合物が患者において完全にまたは実質的に排出または不活性化される時間を超えて、延長されない。別の実施形態では、式Iの化合物及びエポチロンは異なる時に投与される。
【0171】
本出願中に列挙する全ての参照文献(参考文献、発行済み特許、公開特許出願及び同時係属特許出願を含む)の内容は、その全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。特に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語は、一般的に当業者に周知の意味と一致する。
【実施例
【0172】
以下の実施例は上記の本発明を説明するものではあるが、本発明の範囲を限定することを何ら意図するものではない。本発明の医薬品組み合わせの有益な効果はまた、それ自体が関連技術分野の当業者に周知のその他の試験モデルにより確認することができる。
【0173】
実施例1:2-(ジフェニルアミノ)-N-(7-(ヒドロキシアミノ)-7-オキソヘプチル)ピリミジン-5-カルボキサミド(化合物A)及び2-((2-クロロフェニル)(フェニル)アミノ)-N-(7-(ヒドロキシアミノ)-7-オキソヘプチル)ピリミジン-5-カルボキサミド(化合物B)の合成
I. 2-(ジフェニルアミノ)-N-(7-(ヒドロキシアミノ)-7-オキソヘプチル)ピリミジン-5-カルボキサミド(化合物A)の合成
【化15】
中間体2の合成:DMF(100ml)中の、アニリン(3.7g、40mmol)と、化合物1(7.5g、40mmol)とKCO(11g、80mmol)の混合物を、N下、120℃で一晩脱気及び攪拌した。反応混合液を室温まで冷ましてからEtOAc(200ml)で希釈し、その後、飽和食塩水(200ml×3)で洗浄した。有機層を分離してからNaSO上で乾燥させ、蒸発乾固させてから、シリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc=10/1)で精製して、白色固体として所望の生成物(6.2g、64%)を得た。
【0174】
中間体3の合成:TEOS(200ml)中の、化合物2(6.2g、25mmol)と、ヨードベンゼン(6.12g、30mmol)と、CuI(955mg、5.0mmol)とCsCO(16.3g、50mmol)の混合物を、窒素で脱気及びパージした。得られた混合液を140℃で14時間攪拌した。室温まで冷ました後、残渣をEtOAc(200ml)で希釈した。95%EtOH(200ml)及びシリカゲル上のNHF-HO[50g、シリカゲル(500g、100~200メッシュ)に水(1500ml)中のNHF(100g)を添加することにより予め調製した]を添加し、得られた混合液を室温で2時間保管した。固化物質を濾過しEtOAcで洗浄した。濾液を蒸発乾固させてから、シリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc=10/1)で残渣を精製して、黄色固体(3g、38%)を得た。
【0175】
中間体4の合成:2NのNaOH(200ml)をEtOH(200ml)中の化合物3(3.0g、9.4mmol)の溶液に加えた。混合液を60℃で30分間攪拌した。溶媒を蒸発させた後、溶液を2NのHClで中和し、白色沈殿物を得た。懸濁液をEtOAc(2×200ml)で抽出してから有機層を分離し、水(2×100ml)、食塩水(2×100ml)で洗浄してから、NaSO上で乾燥させた。溶媒を除去して茶色固体(2.5g、92%)を得た。
【0176】
中間体6の合成:化合物4(2.5g、8.58mmol)と、化合物5(2.52g、12.87mmol)と、HATU(3.91g、10.30mmol)とDIPEA(4.43g、34.32mmol)の混合液を室温で一晩攪拌した。反応混合液を濾過した後、濾液を蒸発乾固させてから、シリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc=2/1)で残渣を精製して、茶色固体(2g、54%)を得た。
【0177】
2-(ジフェニルアミノ)-N-(7-(ヒドロキシアミノ)-7-オキソヘプチル)ピリミジン-5-カルボキサミドの合成:化合物6(2.0g、4.6mmol)と、MeOH(50ml)とDCM(25ml)中の水酸化ナトリウム(2N、20mL)との混合液を0℃で10分間攪拌した。ヒドロキシルアミン(50%)(10ml)を0℃に冷却してから混合液に加えた。得られた混合液を室温で20分間攪拌した。溶媒を除去した後、混合液を1MのHClで中和し、白色沈殿物を得た。粗生成物を濾過してから分取HPLCで精製し、白色固体(950mg、48%)を得た。
【0178】
II. 合成経路1:2-((2-クロロフェニル)(フェニル)アミノ)-N-(7-(ヒドロキシアミノ)-7-オキソヘプチル)ピリミジン-5-カルボキサミド(化合物B)
【化16】
中間体2の合成:DMF(100ml)中の、アニリン(3.7g、40mmol)と、エチル 2-クロロピリミジン-5-カルボキシレート 1(7.5g、40mmol)とKCO(11g、80mmol)の混合物を、N下、120℃で一晩脱気及び攪拌した。反応混合液を室温まで冷ましてからEtOAc(200ml)で希釈し、その後、飽和食塩水(200ml×3)で洗浄した。有機層を分離してからNaSO上で乾燥させ、蒸発乾固させてから、シリカゲルクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc=10/1)で精製して、白色固体として所望の生成物(6.2g、64%)を得た。
【0179】
中間体3の合成:DMSO(690ml)中の、化合物2(69.2g、1当量)と、1-クロロ-2-ヨードベンゼン(135.7g、2当量)と、LiCO(42.04g、2当量)と、KCO(39.32g、1当量)とCu(1当量、45μm)の混合液を窒素で脱気及びパージした。得られた混合液を140℃で36時間攪拌した。反応の後処理で収率93%の化合物3を得た。
【0180】
中間体4の合成:2NのNaOH(200ml)をEtOH(200ml)中の化合物3(3.0g、9.4mmol)の溶液に加えた。混合液を60℃で30分間攪拌した。溶媒を蒸発させた後、溶液を2NのHClで中和し、白色沈殿物を得た。懸濁液をEtOAc(2×200ml)で抽出してから有機層を分離し、水(2×100ml)、食塩水(2×100ml)で洗浄してから、NaSO上で乾燥させた。溶媒を除去して茶色固体(2.5g、92%)を得た。
【0181】
中間体5の合成:本実施例のパートIにおける中間体6の合成に類似した手順を使用した。
【0182】
2-((2-クロロフェニル)(フェニル)アミノ)-N-(7-(ヒドロキシアミノ)-7-オキソヘプチル)ピリミジン-5-カルボキサミドの合成:本実施例のパートIにおける2-(ジフェニルアミノ)-N-(7-(ヒドロキシアミノ)-7-オキソヘプチル)ピリミジン-5-カルボキサミドの合成に類似した手順を使用した。
【0183】
III. 合成経路2:2-((2-クロロフェニル)(フェニル)アミノ)-N-(7-(ヒドロキシアミノ)-7-オキソヘプチル)ピリミジン-5-カルボキサミド(化合物B)
【化17】
ステップ(1):化合物11の合成:エチル 2-クロロピリミジン-5-カルボキシレート(7.0Kg)、エタノール(60Kg)、2-クロロアニリン(9.5Kg、2当量)及び酢酸(3.7Kg、1.6当量)を不活性雰囲気下の反応容器に充填した。混合液を加熱還流した。少なくとも5時間後に、HPLC分析(方法 TM-113.1016)用に反応液をサンプリングした。分析結果が反応の完了を示したときに、混合液を70±5℃まで冷まし、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を加えた。その後、反応液を20±5℃まで冷まし、混合液を更に2~6時間の間攪拌した。得られた沈殿物を濾過してから、エタノール(2×6Kg)及びヘプタン(24Kg)で洗浄した。ケーキを減圧下、50±5℃で一定重量になるまで乾燥させて、8.4Kgの化合物11(収率81%、純度99.9%)を生成した。
【0184】
ステップ(2):化合物3の合成:銅粉末(0.68Kg、1当量、<75マイクロメートル)、炭酸カリウム(4.3Kg、1.7当量)及びジメチルスルホキシド(DMSO、12.3Kg)を反応容器(容器A)に加えた。得られた溶液を120±5℃まで加熱した。別の反応容器(容器B)内において、DMSO(5.6Kg)中の化合物11(2.9Kg)とヨードベンゼン(4.3Kg、2当量)の溶液を40±5℃で加熱した。その後、2~3時間かけて混合液を容器Aに移した。HPLC分析(方法 TM-113.942)で≦1%の化合物11が残存することが確認されるまで、反応混合液を120±5℃で8~24時間加熱した。
【0185】
ステップ(3):化合物4の合成:ステップ(2)の混合液を90~100℃まで冷ましてから、精製水(59Kg)を加えた。HPLCで≦1%の化合物3が残存することが示されるまで、反応混合液を90~100℃で2~8時間攪拌した。反応容器を25℃まで冷ました。反応混合液をセライト、次に0.2マイクロメートルフィルターに通して濾過してから、濾液を回収した。濾液をメチル-t-ブチルエーテルで2回(2×12.8Kg)抽出した。水層を0~5℃まで冷却してから、温度を<25℃に保ちつつ6Nの塩酸(HCl)でpH2~3となるまで酸性化した。その後、反応液を5~15℃まで冷却した。沈殿物を濾過してから冷水で洗浄した。ケーキを減圧下、45~55℃で一定重量になるまで乾燥させて、AUC純度90.3%、2.2kg(収率65%)の化合物4を得た。
【0186】
ステップ(4):化合物5の合成:ジクロロメタン(40.3Kg)、DMF(33g、0.04当量)及び化合物4(2.3Kg)を反応フラスコに充填した。溶液を0.2μmのフィルターに通して濾過してからフラスコに戻した。添加漏斗を介して塩化オキサリル(0.9Kg、1当量)を<30℃で30~120分間かけて加えた。その後、HPLC(方法 TM-113.946)で反応の完了(化合物4≦3%)が確認されるまでバッチを<30℃で攪拌した。次に、ジクロロメタン溶液を濃縮してから、残存する塩化オキサリルを減圧下<40℃で除去した。HPLC分析で<0.10%の塩化オキサリルが残存することが示されると、濃縮液を新しいジクロロメタン(24Kg)中に溶解させてから、反応容器(容器A)に移し戻した。
【0187】
第2の容器(容器B)に、メチル 7-アミノヘプタノエートヒドロクロリド(化合物A1、1.5Kg、1.09当量)、DIPEA(2.5Kg、2.7当量)、4(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP、42g、0.05当量)及びDCM(47.6Kg)を充填した。混合液を0~10℃まで冷却してから、温度を5℃~10℃に保ちつつ容器A内の酸塩化物溶液を容器Bに移した。反応液を5~10℃で3~24時間攪拌し、その時点においてHPLC分析による反応の完了が示された(方法 TM-113.946、化合物4≦5%)。それから、1MのHCl溶液(20Kg)、精製水(20Kg)、7%重炭酸ナトリウム(20Kg)、精製水(20Kg)及び25%塩化ナトリウム溶液(20Kg)で混合液を抽出した。その後、ジクロロメタンを<40℃で減圧蒸留し、イソプロピルアルコールを繰り返し追加した。分析結果で<1mol%のDCMが残存することが示されると、混合液を0~5℃まで徐々に冷却し、0~5℃で少なくとも2時間攪拌した。得られた沈殿物を濾過で回収してから、冷イソプロピルアルコール(6.4Kg)で洗浄した。ケーキをフィルター上で4~24時間吸引乾燥させてから、減圧下45~55℃で一定重量になるまで更に乾燥させた。AUC純度法95.9%で、99.9重量%、2.2Kg(収率77%)を単離した。
【0188】
ステップ(5):化合物(I)の合成:ヒドロキシルアミン塩酸塩(3.3Kg、10当量)及びメタノール(9.6Kg)を反応容器に充填した。得られた溶液を0~5℃まで冷却してから、温度を0~10℃に保ちつつ25%ナトリウムメトキシド(11.2Kg、11当量)をゆっくりと充填した。充填の完了次第、反応液を20℃で1~3時間混合してから濾過し、濾過ケーキをメタノール(2×2.1Kg)で洗浄した。濾液(ヒドロキシルアミン遊離塩基)を反応容器に戻して0±5℃まで冷却した。化合物5(2.2Kg)を加えた。反応が完了するまで反応液を攪拌した(方法 TM-113.964、化合物5≦2%)。混合液を濾過してから、水(28Kg)及びエチルアセテート(8.9Kg)を濾液に加えた。6NのHClを使用してpHを8~9に調節し、その後、最長3時間攪拌してから濾過した。濾過ケーキを冷水(25.7Kg)で洗浄してから、一定重量になるまで減圧下で乾燥させた。粗固体化合物(I)は形態IV/パターンDであると決定された。
【0189】
粗固体(1.87Kg)をイソプロピルアルコール(IPA、27.1Kg)中に懸濁させた。スラリーを75±5℃まで加熱して固形分を溶解させた。溶液に化合物(I)の結晶(形態I/パターンA)を加えてから、周囲温度まで冷ました。得られた沈殿物を1~2時間攪拌してから濾過した。濾過ケーキをIPA(2×9.5Kg)ですすいでから、一定重量になるまで減圧下45~55℃で乾燥させて、収率85%、純度99.5%(AUC%、表3のHPLC法)の1.86kgの結晶性白色固体化合物(I)を得た。
【表3】
【0190】
実施例2:HDAC酵素アッセイ
化合物をDMSO中に終濃度の50倍に希釈することにより化合物Bについて最初に試験を行い、10点の3倍希釈系列を作製した。化合物をアッセイバッファー(50mM HEPES、pH7.4、100mM KCl、0.001% Tween-20、0.05% BSA、20μM TCEP)中に終濃度の6倍に希釈した。HDAC酵素(BPS Biosciences;San Diego,CAから購入)をアッセイバッファー中に終濃度の1.5倍に希釈した。トリペプチド基質及び0.05μM終濃度のトリプシンをアッセイバッファー中に終濃度の6倍に希釈した。これらのアッセイに使用した最終酵素濃度は、3.3ng/ml(HDAC1)、0.2ng/ml(HDAC2)、0.08ng/ml(HDAC3)及び2ng/ml(HDAC6)であった。使用した最終基質濃度は、16μM(HDAC1)、10μM(HDAC2)、17μM(HDAC3)及び14μM(HDAC6)であった。5μlの化合物及び20μlの酵素を、黒色不透明384ウェルプレートに二連で加えた。酵素及び化合物を室温で10分間共にインキュベートした。それぞれのウェルに5μlの基質を加え、プレートを60秒間振盪し、Victor 2マイクロタイタープレートリーダー内に置いた。蛍光の発現を60分間モニターして反応の直線速度を計算した。Graph Pad Prismを使用し、4パラメータカーブフィッティングによりIC50を求めた。化合物A及びBに関するIC50については表1を参照されたい。
【0191】
実施例3:化合物Bはエポチロンにより誘導された多極紡錘体形成の頻度を上昇させる
溶媒、化合物B(2μM)、エポチロンB(0.5nM)、または、2μMの化合物Bと0.5nMのエポチロンBの組み合わせの投与後、卵巣明細胞腺癌TOV-21G細胞を24時間インキュベートした。その後、細胞を固定してから、4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)、抗核有糸分裂装置(NuMA)抗体または抗α-チューブリン抗体で染色した(染色はDNA及び有糸分裂紡錘体の可視化を補助した)。図1Aを参照されたい。それから、有糸分裂中の細胞を手動でカウントし、正常な二極紡錘体または異常な多極紡錘体の存在を記録した。それぞれの処理条件の少なくとも100個の細胞について、多極紡錘体を有する細胞の頻度を算出して記録した。図1Bを参照されたい。これらのデータは、化合物Bがエポチロンにより誘導された多極紡錘体形成を促進したことを示している。
【0192】
実施例4:エポチロンB及び化合物BはTOV-216細胞の細胞増殖を阻害する
腫瘍細胞増殖を抑制するための化合物BとエポチロンBによる組み合わせ治療について解析を行った。TOV-21G細胞は未処理か、または化合物B(2μM)及び/またはエポチロンB(4nM)で7日間処理するかのいずれかを行った。その後、細胞をクリスタルバイオレット(ヘキサメチルパラローズアニリンクロリド)色素で染色した。図2Aを参照されたい。10%体積/体積酢酸でクリスタルバイオレット色素を抽出し、分光光度計を用いて540nmの波長で吸光度を3連で測定した(図2B)。これらのデータは、エポチロンBによる腫瘍細胞増殖の阻害が化合物Bによって促進されたことを示している。
【0193】
本明細書に記載の本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物について、当業者は理解し、または、通常の実験を使用するだけで確認することが可能であろう。このような等価物は、以下の特許請求の範囲に包含されることを意味している。
図1A
図1B
図2A
図2B