IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 華為技術有限公司の特許一覧

特許7542951バッテリ健康状態を推定するための方法および装置
<>
  • 特許-バッテリ健康状態を推定するための方法および装置 図1
  • 特許-バッテリ健康状態を推定するための方法および装置 図2
  • 特許-バッテリ健康状態を推定するための方法および装置 図3
  • 特許-バッテリ健康状態を推定するための方法および装置 図4
  • 特許-バッテリ健康状態を推定するための方法および装置 図5
  • 特許-バッテリ健康状態を推定するための方法および装置 図6
  • 特許-バッテリ健康状態を推定するための方法および装置 図7
  • 特許-バッテリ健康状態を推定するための方法および装置 図8
  • 特許-バッテリ健康状態を推定するための方法および装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】バッテリ健康状態を推定するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/392 20190101AFI20240826BHJP
   G01R 31/3828 20190101ALI20240826BHJP
   G01R 31/387 20190101ALI20240826BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20240826BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240826BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
G01R31/392
G01R31/3828
G01R31/387
H01M10/42 P
H01M10/48 P
H02J7/00 Q
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019556632
(86)(22)【出願日】2017-06-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 CN2017087564
(87)【国際公開番号】W WO2018192069
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2019-11-27
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-06
(31)【優先権主張番号】201710254759.6
(32)【優先日】2017-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503433420
【氏名又は名称】華為技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Huawei Administration Building, Bantian, Longgang District, Shenzhen, Guangdong 518129, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133569
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 進
(72)【発明者】
【氏名】高 科杰
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 中孝
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲剣▼波
(72)【発明者】
【氏名】李 哲
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 志▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 祖▲斉▼
【合議体】
【審判長】濱野 隆
【審判官】濱本 禎広
【審判官】田辺 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-196995(JP,A)
【文献】特開2016-14588(JP,A)
【文献】中国特許第102540096(CN,B)
【文献】国際公開第2013/57784(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/132813(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/3828
G01R 31/387
G01R 31/392
H01M 10/42
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリの健康状態(SOH)を推定するための方法であって、前記方法が、
SOHを推定する対象のバッテリと同じ型であり、事前にM段階のSOHが既知であるバッテリに対して、複数の充電状態(SOC)の各々のSOC間隔におけるバッテリの充電または放電容量を取得するステップであって、第nのSOCの前記SOC間隔は、その開始SOCが前記第nのSOCであり、長さdSOCを有する間隔であり、前記SOCは前記バッテリの完全充電容量に対する前記バッテリの残存容量の比であり、nはN以下の正の整数であり、Nは2以上の正の整数であり、前記複数のSOCの数を表す、ステップと、
第mの事前設定バッテリ容量と、各SOCの前記SOC間隔における充電または放電容量とに基づいて第mの事前設定バッテリ容量における各SOCの第1のdV/dSOCデータを取得するステップであって、前記第1のdV/dSOCデータを取得する対象のバッテリは、SOHを推定する対象のバッテリと同じ型であり、事前にM段階のSOHが既知であるバッテリである、ステップと、
事前に格納されたdV/dSOC特性関数に基づいて第2のdV/dSOCデータを取得するステップであって、前記dV/dSOC特性関数は、新しいバッテリ状態における事前設定電流に基づいてターゲットバッテリを充電または放電することによって取得され、前記事前設定電流が1/20QBOL以下であり、QBOLが前記新しいバッテリ状態の前記ターゲットバッテリの保持容量を表し、前記新しいバッテリ状態は、SOHが100%であるバッテリの状態を示し、前記ターゲットバッテリは、SOHを推定する対象のバッテリである、ステップと、
前記第mの事前設定バッテリ容量における各SOCの前記第1のdV/dSOCデータと、各SOCに対応する前記第2のdV/dSOCデータとに基づいて前記複数のSOCの前記第mの総合dV/dSOCデータ偏差を取得するステップと
によって、M個の事前設定バッテリ容量の各々に対応する総合dV/dSOCデータ偏差を取得するステップであって、前記M個の事前設定バッテリ容量は、M段階のSOHが異なるそれぞれのバッテリの保持容量を示し、mが1からMまでの正の整数であり、Mが正の整数であり、事前設定バッテリ容量の数を表す、ステップと、
M個の総合dV/dSOCデータ偏差から最小の総合dV/dSOCデータ偏差を決定するステップと、
前記最小の総合dV/dSOCデータ偏差に対応する事前設定バッテリ容量を老化した状態における前記バッテリの保持容量として決定するステップと、
前記老化した状態における前記バッテリの前記保持容量に基づく計算によって前記バッテリの前記SOHを取得するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
複数のSOCの各々のSOC間隔における前記バッテリの充電または放電容量を取得する前記ステップは、
前記バッテリのクーロン効率と、前記SOC間隔の開始時および前記SOC間隔の終了時の間の電流とに基づいて、前記SOC間隔における前記バッテリの前記充電または放電容量を取得するステップ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記老化した状態における前記バッテリの前記保持容量に基づく計算によって前記バッテリの前記SOHを取得する前記ステップが、前記バッテリの前記SOHを取得するために、前記老化した状態における前記バッテリの前記保持容量を前記新しいバッテリ状態の前記バッテリの保持容量で割るステップ、を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
複数のSOCの各々のSOC間隔における前記バッテリの充電または放電容量を取得する前記ステップが、
第1の事前設定式を参照して前記複数のSOCの各々の前記SOC間隔における前記バッテリの前記充電または放電容量を取得するステップであって、前記第1の事前設定式が、
【数1】
を含み、
式中、SOC n が前記第nのSOCを表し、
【数2】
がSOC n の前記SOC間隔における前記充電または放電容量を表し、ηが前記バッテリのクーロン効率であり、0<η≦1であり、SOC n -t start がSOC n の前記SOC間隔における開始時を表し、SOC n -t end がSOC n の前記SOC間隔における終了時を表し、
【数3】
がSOC n の前記SOC間隔における電流を表す、ステップ
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記第mの事前設定バッテリ容量と、各SOCの前記SOC間隔における前記充電または放電容量とに基づいて第mの事前設定バッテリ容量における各SOCの第1のdV/dSOCデータを取得する前記ステップは、
前記複数のSOCの各々の前記第1のdV/dSOCデータを、第2の事前設定式を参照して別々に計算するステップであって、前記第2の事前設定式が、
【数4】
を含み、
式中、Q m が前記第mの事前設定バッテリ容量を表し、SOC n が前記第nのSOCを表し、g 1 (SOC n )がSOC n の前記第1のdV/dSOCデータを表し、Vが電圧を表し、qが充電または放電容量を表し、
【数5】
がSOC n に対応する
【数6】
を表す、ステップ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記バッテリが放電状態で動作する場合、前記第2の事前設定式が、
【数7】
を含み、
式中、SOCn-tstartがSOCnの前記SOC間隔の開始時を表し、SOCn-tendがSOCnの前記SOC間隔の終了時を表し、
【数8】
がSOCn-tstartにおける開路電圧(OCV)を表し、
【数9】
がSOCn-tendにおけるOCVを表し、
【数10】
がSOCnの前記SOC間隔における前記放電容量を表す、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記dV/dSOC特性関数が、
【数11】
を含み、
式中、SOCnが前記第nのSOCを表し、SOCnが前記dV/dSOC特性関数の独立変数であり、g0(SOCn)がSOCnに対応する前記第2のdV/dSOCデータを表し、jが次数を表し、a0、aj、およびbjが項の係数であり、sin()が正弦関数を表し、cos()が余弦関数を表し、ωが周波数を表す、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第mの事前設定バッテリ容量における各SOCの前記第1のdV/dSOCデータと各SOCに対応する前記第2のdV/dSOCデータとに基づいて、前記複数のSOCの第mの総合dV/dSOCデータ偏差を取得する前記ステップが、
前記第mの事前設定バッテリ容量における各SOCの前記第1のdV/dSOCデータと各SOCに対応する前記第2のdV/dSOCデータとに基づき、第3の事前設定式を参照して、前記複数のSOCの前記第mの総合dV/dSOCデータ偏差を計算するステップであって、前記第3の事前設定式が、
【数12】
を含み、
式中、SOCnが第nのSOCを表し、g0(SOCn)がSOCnに対応する前記第2のdV/dSOCデータを表し、g1(SOCn)がSOCnの前記第1のdV/dSOCデータを表し、Gmが前記複数のSOCの前記第mの総合dV/dSOCデータ偏差を表す、
ステップ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記複数のSOCのSOC間隔は、同じ長さを有し、または、異なる長さを有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
バッテリの健康状態(SOH)を推定するための装置であって、前記装置が、
SOHを推定する対象のバッテリと同じ型であり、事前にM段階のSOHが既知であるバッテリに対して、複数の充電状態(SOC)の各々のSOC間隔におけるバッテリの充電または放電容量を取得するための手段であって、第nのSOCの前記SOC間隔は、その開始SOCが前記第nのSOCであり、長さdSOCを有する間隔であり、前記複数のSOCのSOC間隔は、同じ長さを有し、または、異なる長さを有し、前記SOCは前記バッテリの完全充電容量に対する前記バッテリの残存容量の比であり、nはN以下の正の整数であり、Nは2以上の正の整数であり、前記複数のSOCの数を表す、手段と、
第mの事前設定バッテリ容量と、各SOCの前記SOC間隔における充電または放電容量とに基づいて第mの事前設定バッテリ容量における各SOCの第1のdV/dSOCデータを取得することであって、前記第1のdV/dSOCデータを取得する対象のバッテリは、SOHを推定する対象のバッテリと同じ型であり、事前にM段階のSOHが既知であるバッテリである、ことと、
事前に格納されたdV/dSOC特性関数に基づいて第2のdV/dSOCデータを取得することであって、前記dV/dSOC特性関数は、新しいバッテリ状態における事前設定電流に基づいてターゲットバッテリを充電または放電することによって取得され、前記事前設定電流が1/20QBOL以下であり、QBOLが前記新しいバッテリ状態の前記ターゲットバッテリの保持容量を表し、前記新しいバッテリ状態は、SOHが100%であるバッテリの状態を示し、前記ターゲットバッテリは、SOHを推定する対象のバッテリである、ことと、
前記第mの事前設定バッテリ容量における各SOCの前記第1のdV/dSOCデータと、各SOCに対応する前記第2のdV/dSOCデータとに基づいて前記複数のSOCの前記第mの総合dV/dSOCデータ偏差を取得することと
によって、M個の事前設定バッテリ容量の各々に対応する総合dV/dSOCデータ偏差を取得するための手段であって、前記M個の事前設定バッテリ容量は、M段階のSOHが異なるそれぞれのバッテリの保持容量を示し、mが1からMまでの正の整数であり、Mが正の整数であり、事前設定バッテリ容量の数を表す、手段と、
M個の総合dV/dSOCデータ偏差から最小の総合dV/dSOCデータ偏差を決定するための手段と、
前記最小の総合dV/dSOCデータ偏差に対応する事前設定バッテリ容量を老化した状態における前記バッテリの保持容量として決定するための手段と、
前記老化した状態における前記バッテリの前記保持容量に基づく計算によって前記バッテリの前記SOHを取得するための手段と
を含む、装置。
【請求項11】
複数のSOCの各々のSOC間隔における前記バッテリの充電または放電容量を取得するための手段は、
前記バッテリのクーロン効率と、前記SOC間隔の開始時および前記SOC間隔の終了時の間の電流とに基づいて、前記SOC間隔における前記バッテリの前記充電または放電容量を取得するための手段
を含む、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記老化した状態における前記バッテリの前記保持容量に基づく前記計算が、前記老化した状態における前記バッテリの前記保持容量を前記新しいバッテリ状態の前記バッテリの保持容量で割ることを含む、請求項10または11に記載の装置。
【請求項13】
前記複数のSOCの各々の前記SOC間隔における前記バッテリの前記充電または放電容量が、第1の事前設定式を参照して取得され、前記第1の事前設定式が、
【数13】
を含み、
式中、SOC n が前記第nのSOCを表し、
【数14】
がSOC n の前記SOC間隔における前記充電または放電容量を表し、ηが前記バッテリのクーロン効率であり、0<η≦1であり、SOC n -t start がSOC n の前記SOC間隔における開始時を表し、SOC n -t end がSOC n の前記SOC間隔における終了時を表し、
【数15】
がSOC n の前記SOC間隔における電流を表す、
ように特に構成される、請求項11に記載の装置。
【請求項14】
第mの事前設定バッテリ容量における各SOCの前記第1のdV/dSOCデータが、第2の事前設定式を参照して取得され、前記第2の事前設定式が、
【数16】
を含み、
式中、Q m が前記第mの事前設定バッテリ容量を表し、SOC n が前記第nのSOCを表し、g 1 (SOC n )がSOC n の前記第1のdV/dSOCデータを表し、Vが電圧を表し、qが充電または放電容量を表し、
【数17】
がSOC n に対応する
【数18】
を表す、
ように特に構成される、請求項10に記載の装置。
【請求項15】
前記バッテリが放電状態で動作する場合、前記第2の事前設定式が、
【数19】
を含み、
式中、SOCn-tstartがSOCnの前記SOC間隔の開始時を表し、SOCn-tendがSOCnの前記SOC間隔の終了時を表し、
【数20】
がSOCn-tstartにおける開路電圧(OCV)を表し、
【数21】
がSOCn-tendにおけるOCVを表し、
【数22】
がSOCnの前記SOC間隔における前記放電容量を表す、
請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記dV/dSOC特性関数が、
【数23】
を含み、
式中、SOCnが前記第nのSOCを表し、SOCnが前記dV/dSOC特性関数の独立変数であり、g0(SOCn)がSOCnに対応する前記第2のdV/dSOCデータを表し、jが次数を表し、a0、aj、およびbjが項の係数であり、sin()が正弦関数を表し、cos()が余弦関数を表し、ωが周波数を表す、
請求項10に記載の装置。
【請求項17】
前記複数のSOCの前記第mの総合dV/dSOCデータ偏差が、前記第mの事前設定バッテリ容量における各SOCの前記第1のdV/dSOCデータと各SOCに対応する前記第2のdV/dSOCデータとに基づき、第3の事前設定式を参照して、取得され、前記第3の事前設定式が、
【数24】
を含み、
式中、SOCnが前記第nのSOCを表し、g0(SOCn)がSOCnに対応する前記第2のdV/dSOCデータを表し、g1(SOCn)がSOCnの前記第1のdV/dSOCデータを表し、Gmが前記複数のSOCの前記第mの総合dV/dSOCデータ偏差を表す、
ように特に構成される、請求項10に記載の装置。
【請求項18】
前記複数のSOCのSOC間隔は、同じ長さを有し、または、異なる長さを有する、請求項10から17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
プロセッサと、メモリと、バスとを含む、バッテリの健康状態(SOH)を推定するための装置であって、
前記メモリがコンピュータ実行命令を格納するように構成され、前記プロセッサが前記バスを介して前記メモリに接続され、前記プロセッサが前記メモリに格納された前記コンピュータ実行命令が前記プロセッサによって実行されると、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法が前記装置によって実行される、
装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、バッテリ管理技術の分野に関し、特に、バッテリ健康状態(state of health、SOH)を推定するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
社会の発展に伴い、バッテリが、電気自動車などの様々なモバイル機器や固定機器でより広範に使用されている。バッテリSOHは、バッテリ管理システムを評価するための重要なパラメータである。したがって、バッテリSOHをどのように推定するかが、産業界で研究されるホットな話題になる。
【0003】
バッテリSOHを推定するための現在のいくつかの方法では、新しいバッテリ状態のバッテリの容量における老化したバッテリの保持容量の割合がバッテリSOHとして定義される。老化したバッテリの保持容量が決定される場合、そのパラメータは通常、1回の完全充電または完全放電試験を行うことによってのみ取得され得る。しかしながら、安全使用を考慮して、通常、バッテリを完全充電/完全放電することはできない。加えて、バッテリパック内の個々のバッテリ間の違いにより、すべてのバッテリが確実に完全充電/完全放電されることはさらに不可能である。したがって、老化したバッテリの保持容量を決定するための前述の実施条件が比較的厳しいので、バッテリSOHを評価することは難しい。
【発明の概要】
【0004】
本出願の実施形態は、バッテリSOHの評価時に、老化したバッテリの保持容量がバッテリの完全充電/完全放電に基づいて決定される必要があるのでバッテリSOHを評価することが難しいという現在の問題を解決する、バッテリSOHを推定するための装置および方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述の目的を達成するために、本出願の実施形態は以下の技術的解決策を提供する。
【0006】
第1の態様によれば、本出願の一実施形態は、バッテリ健康状態SOHを推定するための方法を提供する。本方法は、複数の充電状態SOCの各々のSOC間隔におけるターゲットバッテリの部分的な充電または放電容量を取得するステップであって、各SOCのSOC間隔が、その開始SOCが各SOCであり、その長さがdSOCである間隔である、ステップと、M個の事前設定バッテリ容量があると判断すると、ステップS1からステップS3に従って、各事前設定バッテリ容量に対応する総合dV/dSOCデータ偏差を別々に計算するステップであって、Mが正の整数であり、S1.第mの事前設定バッテリ容量における各SOCの第1のdV/dSOCデータを、第mの事前設定バッテリ容量と各SOCのSOC間隔における部分的な充電または放電容量とに基づいて別々に計算するステップであって、mがM以下の正の整数である、ステップ、S2.事前に格納されたdV/dSOC特性関数に基づいて、各SOCに対応する第2のdV/dSOCデータを別々に計算するステップであって、dV/dSOC特性関数が、新しいバッテリ状態における事前設定電流に基づいてターゲットバッテリを充電または放電することによって取得され、事前設定電流が1/20QBOL以下であり、QBOLが新しいバッテリ状態のターゲットバッテリの保持容量を表す、ステップ、およびS3.第mの事前設定バッテリ容量における各SOCの第1のdV/dSOCデータと各SOCに対応する第2のdV/dSOCデータとに基づいて、複数のSOCの第mの総合dV/dSOCデータ偏差を計算するステップ、である、ステップと、すべての総合dV/dSOCデータ偏差から最小の総合dV/dSOCデータ偏差を決定するステップと、最小の総合dV/dSOCデータ偏差に対応する事前設定バッテリ容量を老化したターゲットバッテリの保持容量として決定するステップと、ターゲットバッテリのSOHを取得するために、老化したターゲットバッテリの保持容量を新しいバッテリ状態のターゲットバッテリの保持容量で割るステップと、を含む。言い換えると、この解決策では、老化したターゲットバッテリの保持容量は、各SOCのSOC間隔における部分的な充電または放電容量に基づいて推定される。このようにして、この解決策は、1回の完全充電または完全放電試験を行うことによってのみパラメータを取得することができる先行技術とは異なり、したがってこの解決策の実施条件はより単純でより柔軟である。加えて、この解決策は履歴データに依拠する必要がなく、したがってよりロバストである。
【0007】
1つの可能な設計では、複数のSOCの各々のSOC間隔におけるターゲットバッテリの部分的な充電または放電容量を取得するステップは、次の第1の事前設定式を参照して複数のSOCの各々のSOC間隔におけるターゲットバッテリの部分的な充電または放電容量を取得するステップであって、第1の事前設定式が、
【数1】
、を含み、式中、SOCnが第nのSOCを表し、
【数2】
がSOCnのSOC間隔における部分的な充電または放電容量を表し、ηがターゲットバッテリのクーロン効率であり、0<η≦1であり、SOCn-tstartがSOCnのSOC間隔における開始時を表し、SOCn-tendがSOCnのSOC間隔における終了時を表し、
【数3】
がSOCnのSOC間隔におけるランダム電流を表す、ステップ、を含む。この解決策に基づき、複数のSOCの各々のSOC間隔におけるターゲットバッテリの部分的な充電または放電容量を取得することができる。
【0008】
1つの可能な設計では、第mの事前設定バッテリ容量における各SOCの第1のdV/dSOCデータを、第mの事前設定バッテリ容量と各SOCのSOC間隔における部分的な充電または放電容量とに基づいて別々に計算するステップは、第mの事前設定バッテリ容量における各SOCの第1のdV/dSOCデータを、第mの事前設定バッテリ容量と各SOCのSOC間隔における部分的な充電または放電容量とに基づき、第2の事前設定式を参照して別々に計算するステップであって、第2の事前設定式が、
【数4】
、を含み、式中、Qmが第mの事前設定バッテリ容量を表し、SOCnが第nのSOCを表し、g1(SOCn)が第mの事前設定バッテリ容量におけるSOCnの第1のdV/dSOCデータを表し、Vが電圧を表し、qが部分的な充電または放電容量を表し、
【数5】
がSOCnに対応する
【数6】
を表す、ステップ、を含む。この解決策に基づき、第mの事前設定バッテリ容量における各SOCの第1のdV/dSOCデータを計算することができる。
【0009】
1つの可能な設計では、ターゲットバッテリが放電状態で動作する場合、ターゲットバッテリがある期間にわたって安定し静止した状態にあるか、またはターゲットバッテリの動作状態がある期間にわたって微小電流に保たれた後、バッテリ分極が消失すると見なすことができる。この場合、初期のターゲットバッテリの端子電圧Vを、初期のターゲットバッテリの開路電圧OCVと見なすことができる。加えて、OCV-SOC曲線は短期間には直線であるので、dqは短期間にはdOCVに比例することが分かる。したがって、ターゲットバッテリが放電状態で動作する場合、第2の事前設定式は、
【数7】
、を特に含み、式中、SOCn-tstartがSOCnのSOC間隔の開始時を表し、SOCn-tendがSOCnのSOC間隔の終了時を表し、
【数8】
がSOCn-tstartにおける開路電圧OCVを表し、
【数9】
がSOCn-tendにおけるOCVを表し、
【数10】
がSOCnのSOC間隔における部分的な放電容量を表す。
【0010】
1つの可能な設計では、dV/dSOC特性関数は、
【数11】
、を含み、式中、SOCnが第nのSOCを表し、SOCnがdV/dSOC特性関数の独立変数であり、g0(SOCn)がSOCnに対応する第2のdV/dSOCデータを表し、jが次数を表し、a0、aj、およびbjが項の係数であり、sin()が正弦関数を表し、cos()が余弦関数を表し、ωが周波数を表す。この解決策で提供されるdV/dSOC特性関数は6次のフーリエ関数である。具体的には、本出願の本実施形態では、dV/dSOC特性関数がフィッティングツールを使用して近似される場合、フィッティングは特性関数が6次のフーリエ関数であることに基づいて行われる。当然ながら、実際には、特性関数は、これだけに限定されないが、多項式関数、フーリエ関数、指数関数などをさらに含み得る。これについては本出願の本実施形態では特に限定されない。
【0011】
1つの可能な設計では、第mの事前設定バッテリ容量における各SOCの第1のdV/dSOCデータと各SOCに対応する第2のdV/dSOCデータとに基づいて、複数のSOCの第mの総合dV/dSOCデータ偏差を計算するステップは、第mの事前設定バッテリ容量における各SOCの第1のdV/dSOCデータと各SOCに対応する第2のdV/dSOCデータとに基づき、第3の事前設定式を参照して、複数のSOCの第mの総合dV/dSOCデータ偏差を計算するステップであって、第3の事前設定式が、
【数12】
、を含み、式中、NがSOCの数を表し、Nが2以上の正の整数であり、SOCnが第nのSOCを表し、g0(SOCn)がSOCnに対応する第2のdV/dSOCデータを表し、g1(SOCn)が第mの事前設定バッテリ容量におけるSOCnの第1のdV/dSOCデータを表し、Gmが複数のSOCの第mの総合dV/dSOCデータ偏差を表す、ステップ、を含む。この解決策に基づき、複数のSOCの第mの総合dV/dSOCデータ偏差を計算することができる。
【0012】
第2の態様によれば、本出願の一実施形態は、バッテリSOHを推定するための装置を提供する。バッテリSOHを推定するための装置は、前述の方法実施形態における挙動を実施する機能を有する。この機能は、ハードウェアによって実施され得るか、またはハードウェアが対応するソフトウェアを実行することによって実施され得る。ハードウェアまたはソフトウェアは、前述の機能に対応する1つまたは複数のモジュールを含む。
【0013】
第3の態様によれば、本出願の一実施形態は、プロセッサと、メモリと、バスと、通信インターフェースとを含む、バッテリSOHを推定するための装置を提供する。メモリはコンピュータ実行命令を格納するように構成される。プロセッサはバスを使用してメモリに接続される。バッテリSOHを推定するための装置が動作すると、プロセッサがメモリに格納されたコンピュータ実行命令を実行するので、バッテリSOHを推定するための装置は、第1の態様の任意の可能な設計におけるバッテリSOHを推定するための方法を行う。
【0014】
第4の態様によれば、本出願の一実施形態は、前述のバッテリSOHを推定するための装置によって使用されるコンピュータソフトウェア命令を格納するように構成された、コンピュータ可読記憶媒体を提供する。コンピュータソフトウェア命令がコンピュータ上で動作すると、コンピュータは第1の態様の任意の可能な設計におけるバッテリSOHを推定するための方法を行うことができる。
【0015】
第5の態様によれば、本出願の一実施形態は、命令を含むコンピュータプログラム製品を提供する。コンピュータプログラム製品がコンピュータ上で動作すると、コンピュータは第1の態様の任意の可能な設計におけるバッテリSOHを推定するための方法を行うことができる。
【0016】
第2の態様から第4の態様の任意の設計方法によってもたらされる技術的効果については、第1の態様の様々な設計方法によってもたらされる技術的効果を参照されたく、ここでは詳細を繰り返さない。
【0017】
第6の態様によれば、本出願の一実施形態は、バッテリ健康状態SOHを推定するための方法を開示する。本方法は、
N個の状態におけるターゲットバッテリのN個の充電状態SOCを取得するステップであって、SOCがターゲットバッテリの完全充電容量に対するターゲットバッテリの残存容量の比である、ステップと、第nの充電状態の各SOCの第1のdV/dSOCデータを、第nの充電状態SOCのターゲットバッテリの充電/放電容量とバッテリの第mの事前設定容量とに基づいて別々に計算するステップであって、NがSOCの数を表し、Nが2以上の正の整数であり、nがN以下の正の整数であり、mが1からMまでの正の整数であり、Mが事前設定容量の数である、ステップと、dV/dSOC-SOC特性関数に基づいて、各SOCに対応する第2のdV/dSOCデータを別々に計算するステップであって、dV/dSOC-SOC特性関数が、新しいバッテリ状態における事前設定電流に基づいてターゲットバッテリを充電または放電することによって取得され、事前設定電流が1/20QBOL以下であり、QBOLが新しいバッテリ状態のターゲットバッテリの保持容量を表す、ステップと、第mの事前設定バッテリ容量における各SOCの第1のdV/dSOCデータと各SOCに対応する第2のdV/dSOCデータとに基づいて、計算によって複数のSOCの第mの総合dV/dSOCデータ偏差を取得するステップと、M個の総合dV/dSOCデータ偏差から最小の総合dV/dSOCデータ偏差を決定するステップと、最小の総合dV/dSOCデータ偏差に対応する事前設定バッテリ容量を老化したターゲットバッテリの保持容量として決定するステップと、老化したターゲットバッテリの保持容量に基づいて計算によってターゲットバッテリのSOHを取得するステップと
を含む。このようにして、この解決策は、1回の完全充電または完全放電試験を行うことによってのみパラメータを取得することができる先行技術とは異なり、したがってこの解決策の実施条件はより単純でより柔軟である。加えて、この解決策は履歴データに依拠する必要がなく、したがってよりロバストである。
【0018】
第6の態様に関連して、老化したターゲットバッテリの保持容量に基づいて計算によってターゲットバッテリのSOHを取得するステップは、ターゲットバッテリのSOHを取得するために、老化したターゲットバッテリの保持容量を新しいバッテリ状態のターゲットバッテリの保持容量で割るステップ、を含むことに留意されたい。
【0019】
第6の態様に関連して、1つの可能な設計では、本方法は、第nの充電状態SOCの各SOCのSOC間隔におけるターゲットバッテリの部分的な充電または放電容量を取得するステップであって、各SOCのSOC間隔が、その開始SOCが各SOCであり、その長さがdSOCである間隔であり、第nの充電状態SOCの充電/放電容量が該間隔における部分的な充電または放電容量である、ステップ、をさらに含む。
【0020】
具体的には、第nの充電状態SOCの各SOCのSOC間隔におけるターゲットバッテリの部分的な充電または放電容量を取得するステップは、
次の第1の事前設定式を参照して複数のSOCの各々のSOC間隔におけるターゲットバッテリの部分的な充電または放電容量を取得するステップであって、第1の事前設定式が、
【数13】
、を含み、式中、SOCnが第nのSOCを表し、
【数14】
がSOCnのSOC間隔における部分的な充電または放電容量を表し、ηがターゲットバッテリのクーロン効率であり、0<η≦1であり、SOCn-tstartがSOCnのSOC間隔における開始時を表し、SOCn-tendがSOCnのSOC間隔における終了時を表し、
【数15】
がSOCnのSOC間隔におけるランダム電流を表す、ステップ、を含む。
【0021】
第6の態様に関連して、第nの充電状態における各SOCの第1のdV/dSOCデータを、第nの充電状態SOCにおけるターゲットバッテリの充電/放電容量とバッテリの第mの事前設定容量とに基づいて別々に計算するステップは、
第mの事前設定バッテリ容量における各SOCの第1のdV/dSOCデータを、第mの事前設定バッテリ容量と各SOCのSOC間隔における部分的な充電または放電容量とに基づき、第2の事前設定式を参照して別々に計算するステップであって、
第2の事前設定式が、
【数16】
、を含み、式中、Qmが第mの事前設定バッテリ容量を表し、SOCnが第nのSOCを表し、g1(SOCn)が第mの事前設定バッテリ容量におけるSOCnの第1のdV/dSOCデータを表し、Vが電圧を表し、qが部分的な充電または放電容量を表し、
【数17】
がSOCnに対応する
【数18】
を表す、ステップ
を含む。
【0022】
ターゲットバッテリが放電状態で動作する場合、第2の事前設定式は具体的には、
【数19】
を含み、
式中、SOCn-tstartがSOCnのSOC間隔の開始時を表し、SOCn-tendがSOCnのSOC間隔の終了時を表し、
【数20】
がSOCn-tstartにおける開路電圧OCVを表し、
【数21】
がSOCn-tendにおけるOCVを表し、
【数22】
がSOCnのSOC間隔における部分的な放電容量を表す。
【0023】
加えて、dV/dSOC-SOC特性関数は、
【数23】
を含み、
式中、SOCnが第nのSOCを表し、SOCnがdV/dSOC-SOC特性関数の独立変数であり、g0(SOCn)がSOCnに対応する第2のdV/dSOCデータを表し、jが次数を表し、a0、aj、およびbjが項の係数であり、sin()が正弦関数を表し、cos()が余弦関数を表し、ωが周波数を表すことに留意されたい。
【0024】
第6の態様に関連して、第mの事前設定バッテリ容量における各SOCの第1のdV/dSOCデータと各SOCに対応する第2のdV/dSOCデータとに基づいて、複数のSOCの第mの総合dV/dSOCデータ偏差を計算するステップは、
第mの事前設定バッテリ容量における各SOCの第1のdV/dSOCデータと各SOCに対応する第2のdV/dSOCデータとに基づき、第3の事前設定式を参照して、複数のSOCの第mの総合dV/dSOCデータ偏差を計算するステップであって、第3の事前設定式が、
【数24】
、を含み、式中、NがSOCの数を表し、Nが2以上の正の整数であり、SOCnが第nのSOCを表し、g0(SOCn)がSOCnに対応する第2のdV/dSOCデータを表し、g1(SOCn)が第mの事前設定バッテリ容量におけるSOCnの第1のdV/dSOCデータを表し、Gmが複数のSOCの第mの総合dV/dSOCデータ偏差を表す、ステップ
を含む。
【0025】
第7の態様によれば、本出願の一実施形態は、バッテリ健康状態SOHを推定するための装置を開示する。本装置は、取得モジュールと計算モジュールとを含み、
取得モジュールは、N個の状態におけるターゲットバッテリのN個の充電状態SOCを取得し、SOCがターゲットバッテリの完全充電容量に対するターゲットバッテリの残存容量の比であり、
計算モジュールは、第nの充電状態の各SOCの第1のdV/dSOCデータを、第nの充電状態SOCのターゲットバッテリの充電/放電容量とバッテリの第mの事前設定容量とに基づいて別々に計算し、NがSOCの数を表し、Nが2以上の正の整数であり、nがN以下の正の整数であり、mが1からMまでの正の整数であり、Mが事前設定容量の数であり、
dV/dSOC-SOC特性関数に基づいて、各SOCに対応する第2のdV/dSOCデータを別々に計算し、dV/dSOC-SOC特性関数が、新しいバッテリ状態における事前設定電流に基づいてターゲットバッテリを充電または放電することによって取得され、事前設定電流が1/20QBOL以下であり、QBOLが新しいバッテリ状態のターゲットバッテリの保持容量を表し、
第mの事前設定バッテリ容量における各SOCの第1のdV/dSOCデータと各SOCに対応する第2のdV/dSOCデータとに基づいて、計算によって複数のSOCの第mの総合dV/dSOCデータ偏差を取得し、
M個の総合dV/dSOCデータ偏差から最小の総合dV/dSOCデータ偏差を決定し、
最小の総合dV/dSOCデータ偏差に対応する事前設定バッテリ容量を老化したターゲットバッテリの保持容量として決定し、
老化したターゲットバッテリの保持容量に基づいて計算によってターゲットバッテリのSOHを取得する、
ように構成される。
【0026】
任意選択で、計算モジュールは、ターゲットバッテリのSOHを取得するために、老化したターゲットバッテリの保持容量を新しいバッテリ状態のターゲットバッテリの保持容量で割るように特に構成される。
【0027】
第7の態様に関連して、取得モジュールは、第nの充電状態SOCの各SOCのSOC間隔におけるターゲットバッテリの部分的な充電または放電容量を取得し、各SOCのSOC間隔が、その開始SOCが各SOCであり、その長さがdSOCである間隔であり、第nの充電状態SOCの充電/放電容量が該間隔における部分的な充電または放電容量である、ようにさらに構成される。
【0028】
第7の態様に関連して、任意選択で、取得モジュールは、
次の第1の事前設定式を参照して複数のSOCの各々のSOC間隔におけるターゲットバッテリの部分的な充電または放電容量を取得し、第1の事前設定式が、
【数25】
、を含み、式中、SOCnが第nのSOCを表し、
【数26】
がSOCnのSOC間隔における部分的な充電または放電容量を表し、ηがターゲットバッテリのクーロン効率であり、0<η≦1であり、SOCn-tstartがSOCnのSOC間隔における開始時を表し、SOCn-tendがSOCnのSOC間隔における終了時を表し、
【数27】
がSOCnのSOC間隔におけるランダム電流を表す
ように特に構成される。
【0029】
第7の態様に関連して、任意選択で、計算モジュールは、
第mの事前設定バッテリ容量における各SOCの第1のdV/dSOCデータを、第mの事前設定バッテリ容量と各SOCのSOC間隔における部分的な充電または放電容量とに基づき、第2の事前設定式を参照して別々に計算し、第2の事前設定式が、
【数28】
、を含み、式中、Qmが第mの事前設定バッテリ容量を表し、SOCnが第nのSOCを表し、g1(SOCn)が第mの事前設定バッテリ容量におけるSOCnの第1のdV/dSOCデータを表し、Vが電圧を表し、qが部分的な充電または放電容量を表し、
【数29】
がSOCnに対応する
【数30】
を表す
ように特に構成される。
【0030】
ターゲットバッテリが放電状態で動作する場合、第2の事前設定式は、
【数31】
を特に含み、
式中、SOCn-tstartがSOCnのSOC間隔の開始時を表し、SOCn-tendがSOCnのSOC間隔の終了時を表し、
【数32】
がSOCn-tstartにおける開路電圧OCVを表し、
【数33】
がSOCn-tendにおけるOCVを表し、
【数34】
がSOCnのSOC間隔における部分的な放電容量を表す
ことに留意されたい。
【0031】
第7の態様に関連して、dV/dSOC-SOC特性関数は、
【数35】
を含み、
式中、SOCnが第nのSOCを表し、SOCnがdV/dSOC-SOC特性関数の独立変数であり、g0(SOCn)がSOCnに対応する第2のdV/dSOCデータを表し、jが次数を表し、a0、aj、およびbjが項の係数であり、sin()が正弦関数を表し、cos()が余弦関数を表し、ωが周波数を表す
ことに留意されたい。
【0032】
第7の態様に関連して、任意選択で、計算モジュールは、
第mの事前設定バッテリ容量における各SOCの第1のdV/dSOCデータと各SOCに対応する第2のdV/dSOCデータとに基づき、第3の事前設定式を参照して、複数のSOCの第mの総合dV/dSOCデータ偏差を計算し、第3の事前設定式が、
【数36】
を含み、
式中、NがSOCの数を表し、Nが2以上の正の整数であり、SOCnが第nのSOCを表し、g0(SOCn)がSOCnに対応する第2のdV/dSOCデータを表し、g1(SOCn)が第mの事前設定バッテリ容量におけるSOCnの第1のdV/dSOCデータを表し、Gmが複数のSOCの第mの総合dV/dSOCデータ偏差を表す、
ように特に構成される。
【0033】
第8の態様によれば、本出願の一実施形態は、プロセッサと、メモリと、バスと、通信インターフェースとを含む、バッテリ健康状態SOHを推定するための装置を開示する。メモリはコンピュータ実行命令を格納するように構成される。プロセッサはバスを使用してメモリに接続される。本装置が動作すると、プロセッサがメモリに格納されたコンピュータ実行命令を実行するので、本装置は第6の態様におけるバッテリSOHを推定するための方法を行う。
【0034】
第9の態様によれば、本出願の一実施形態は、前述のバッテリSOHを推定するための装置によって使用されるコンピュータソフトウェア命令を格納するように構成された、コンピュータ可読記憶媒体を提供する。コンピュータソフトウェア命令がコンピュータ上で動作すると、コンピュータは第6の態様の任意の可能な設計におけるバッテリSOHを推定するための方法を行うことができる。
【0035】
第10の態様によれば、本出願の一実施形態は、命令を含むコンピュータプログラム製品を提供する。コンピュータプログラム製品がコンピュータ上で動作すると、コンピュータは第6の態様の任意の可能な設計におけるバッテリSOHを推定するための方法を行うことができる。
【0036】
本出願の上記の態様またはその他の態様は以下の実施形態の説明においてより明確により分かりやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本出願の一実施形態によるバッテリSOHを推定するためのシステムの概略的アーキテクチャ図である。
図2】本出願の一実施形態によるバッテリSOHを推定するための装置のハードウェア構造の概略図である。
図3】本出願の一実施形態によるバッテリSOHを推定するための方法の概略的流れ図である。
図4】本出願の一実施形態による、新しいバッテリ状態と様々な老化度における事前設定電流に基づくターゲットバッテリの充電または放電の電圧-容量線グラフである。
図5】本出願の一実施形態による、新しいバッテリ状態と様々な老化度における事前設定電流に基づくターゲットバッテリの充電または放電の、図4に対応するV-SOC線グラフである。
図6】本出願の一実施形態による、新しいバッテリ状態と様々な老化度における事前設定電流に基づくターゲットバッテリの充電または放電のdV/dSOC特性曲線を示す図である。
図7】本出願の一実施形態による近似曲線と実際の曲線との比較の概略図である。
図8】本出願の一実施形態によるバッテリSOHを推定するための装置の概略的構造図である。
図9】本出願の一実施形態によるバッテリSOHを推定するための別の装置の概略的構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本出願の実施形態における技術的解決法の理解を容易にするために、いくつかのキータームの説明を以下のように示す。
【0039】
保持容量(Retention Capacity):バッテリのものである、バッテリがある期間にわたって使用されるかまたは長期間にわたって未使用のままであった後に取得される完全充電または放電容量。
【0040】
老化(Aging):バッテリがある期間にわたって使用されるかまたは長期間にわたって未使用のままであったときにバッテリ容量が自然に減衰する現象。具体的には、バッテリの老化には一般に、サイクル過程(すなわちサイクル寿命、cycle life)における老化とバッテリが未使用のままであった過程における老化(すなわちカレンダー寿命、calendar life)、の2つの部分が含まれる。サイクル過程における老化とは、バッテリを充電/放電する回数が増加するにつれて、バッテリを充電/放電できる利用可能回数がそれに応じて減少することを意味し、バッテリ充電/放電の総回数は測定可能であり、推定することができ、充電/放電を行う都度保持容量が減衰する。バッテリが未使用のままである過程における老化とは、バッテリが充電/放電されない場合にバッテリの保持容量が時間と共に減衰することを意味する。本出願の実施形態における老化の形態は限定されない。本明細書では一様に記述し、以下では詳細を繰り返さない。
【0041】
新しいバッテリ状態(Beginning of life、BOL)とは具体的には、保持容量が100%であるバッテリ状態である。
【0042】
SOH:新しいバッテリ状態のバッテリの容量における老化したバッテリの保持容量の割合がバッテリSOHとして定義される。
【0043】
充電状態(State of Charge、SOC):SOCは、バッテリの完全充電容量に対するバッテリの残存容量の比であり、通常パーセンテージで表される。
【0044】
開路電圧(Open Circuit Voltage、OCV):開路状態のバッテリの端子電圧が開路電圧と呼ばれる。
【0045】
バッテリ分極:電流により静止状態が中断された後に実際の電極電位が平衡電極電位からそれる現象。
【0046】
以下で、本出願の実施形態における添付の図面に関連して本出願の実施形態における技術的解決法を説明する。本出願の説明においては、特に指示しない限り、「/」は「または」を表し、例えば、A/BはAまたはBを表すことができ、本明細書における「および/または」は、関連付けられる対象を記述する場合の結合関係を記述するにすぎず、3つの関係が存在し得ることを表す。例えば、Aおよび/またはBは、Aのみが存在する、AとBの両方が存在する、Bのみが存在する、という3つの場合を表し得る。加えて、本出願の説明において、「複数の」とは「2つ以上の」を意味する。
【0047】
図1に、本出願の一実施形態によるバッテリSOHを推定するためのシステム10を示す。バッテリSOHを推定するためのシステム10は、バッテリ20と、バッテリ検出装置21と、充電/放電実行装置22と、絶対時間ユニット23と、コントローラ24と、記憶チップ25と、バッテリSOHを推定するための装置26とを含む。
【0048】
バッテリ検出装置21は、リアルタイムで検出されるデータをコントローラにアップロードするように構成される。バッテリ検出装置23は、バッテリ電圧サンプリングコンポーネントと、電流サンプリングユニットと、温度サンプリングコンポーネントという3つの部分を含む。バッテリ電圧サンプリングコンポーネントは、サンプリングチップと接続バンドルとを含む。電流サンプリングユニットは、電流サンプリングチップと電流センサとを含む。温度サンプリングコンポーネントは、温度サンプリングチップと温度センサとを含む。
【0049】
充電/放電実行装置22は、バッテリを充電/放電するように構成される。
【0050】
絶対時間ユニット23は、リアルタイムでコントローラ24に、高周波数水晶発振器によって提供された絶対時間を送るように構成される。
【0051】
コントローラ24は、バッテリのサンプリングを制御し、絶対時間を受け取り、サンプリングデータと絶対時間を圧縮して圧縮されたサンプリングデータと絶対時間を記憶チップ25に格納し、充電/放電実行装置22を使用して充電/放電電流およびバッテリの状態を制御する、ように構成される。
【0052】
記憶チップ25は、新しいバッテリのdV/dSOC-SOC情報を事前に格納し、収集された有効なバッテリデータをリアルタイムで特定のフォーマットで格納する、ように構成される。
【0053】
バッテリSOHを推定するための装置26は、記憶チップ25内のデータに対して順序付き格納および読み取り操作を行い、読み取りデータに基づいてバッテリSOHを推定する、ように構成される。具体的な実施態様については、以下の方法実施形態を参照されたく、ここでは詳細を述べない。
【0054】
バッテリSOHを推定するためのシステム10は、図示されていないが、電源、セキュリティ保護装置、絶縁装置などをさらに含み得る。これについては本出願の本実施形態では特に限定されない。
【0055】
図2は、本出願の一実施形態によるバッテリSOHを推定するための装置26のハードウェア構造の概略図である。バッテリSOHを推定するための装置26は、少なくとも1つのプロセッサ2601と、通信バス2602と、メモリ2603と、少なくとも1つの通信インターフェース2604とを含む。
【0056】
プロセッサ2601は、汎用中央処理装置(Central Processing Unit、CPU)、マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(Application-Specific Integrated Circuit、ASIC)、または本出願における解決策のプログラム実行を制御するように構成された1つもしくは複数の集積回路であり得る。
【0057】
通信バス2602は、前述の構成要素間で情報を伝送するための通信路を含み得る。
【0058】
通信インターフェース2604は、送受信機のような任意の装置を使用して別のデバイスまたは、イーサネット(登録商標)、無線アクセスネットワーク(Radio Access Network、RAN)、無線ローカルエリアネットワーク(Wireless Local Area Network、WLAN)などの通信ネットワークと通信するように構成される。
【0059】
メモリ2603は、静的情報および命令を格納することができる読取り専用メモリ(Read-Only Memory、ROM)もしくは任意のタイプの静的記憶デバイス、または情報および命令を格納することができるランダムアクセスメモリ(Random Access Memory、RAM)もしくは任意のタイプの動的記憶デバイスであってもよく、または電気的消去書込み可能読取り専用メモリ(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory、EEPROM)、コンパクトディスク読取り専用メモリ(Compact Disc Read-Only Memory、CD-ROM)もしくは別のコンパクトディスク記憶、光ディスク記憶(圧縮光ディスク、レーザディスク、光ディスク、デジタル多用途ディスク、ブルーレイ光ディスクなどを含む)、磁気ディスク記憶もしくは別の磁気記憶デバイス、または予期されるプログラムコードを命令もしくはデータ構造の形態で搬送もしくは格納することができ、コンピュータがアクセスすることができる任意の他の媒体であってもよい。しかしながら、メモリ2603はこれだけに限定されない。メモリは独立して存在していてもよく、バスを使用してプロセッサに接続される。あるいは、メモリはプロセッサと一体化されていてもよい。
【0060】
メモリ2603は、本出願における解決策を実行するためのアプリケーションプログラムコードを格納するように構成され、プロセッサ2601は実行を制御する。プロセッサ2601は、本出願の実施形態で提供されるバッテリSOHを推定するための方法を実施するために、メモリ2603に格納されたアプリケーションプログラムコードを実行するように構成される。
【0061】
具体的な実施に際して、一実施形態において、プロセッサ2601は、1つまたは複数のCPU、例えば、図2に示されるCPU0およびCPU1を含み得る。
【0062】
具体的な実施に際して、一実施形態において、バッテリSOHを推定するための装置26は、複数のプロセッサ、例えば、図2に示されるプロセッサ2601およびプロセッサ2608を含み得る。各プロセッサは、シングルコア(single-CPU)プロセッサであってもよく、マルチコア(multi-CPU)プロセッサであってもよい。プロセッサはこの場合、データ(例えば、コンピュータプログラム命令)を処理するための1つまたは複数のデバイス、回路、および/または処理コアであり得る。
【0063】
具体的な実施に際して、一実施形態において、バッテリSOHを推定するための装置26は、出力装置2605と入力装置2606とをさらに含み得る。出力装置2605は、プロセッサ2601と通信し、複数の方法で情報を表示することができる。例えば、出力装置2605は、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display、LCD)、発光ダイオード(Light Emitting Diode、LED)表示装置、ブラウン管(Cathode Ray Tube、CRT)表示装置、またはプロジェクタ(projector)であり得る。入力装置2606は、プロセッサ2601と通信し、複数の方法でユーザ入力を受け取ることができる。例えば、入力装置2606は、マウス、キーボード、タッチスクリーンデバイス、または感知装置であり得る。
【0064】
図3に、本出願の一実施形態によるバッテリSOHを推定するための方法を示す。本方法は以下のステップを含む。
【0065】
S301.バッテリSOHを推定するための装置が、複数のSOCの各々のSOC間隔におけるターゲットバッテリの部分的な充電または放電容量を取得する。
【0066】
各SOCのSOC間隔は、その開始SOCが各SOCであり、その長さがdSOCである間隔である。
【0067】
S302.M個の事前設定バッテリ容量があると判断すると、バッテリSOHを推定するための装置が、ステップS1からステップS3に従って、各事前設定バッテリ容量に対応する総合dV/dSOCデータ偏差を別々に計算し、Mは正の整数である。
【0068】
S1.バッテリSOHを推定するための装置が、第mの事前設定バッテリ容量における各SOCの第1のdV/dSOCデータを、第mの事前設定バッテリ容量と各SOCのSOC間隔における部分的な充電または放電容量とに基づいて別々に計算する。
【0069】
mはM以下の整数である。
【0070】
S2.バッテリSOHを推定するための装置が、事前に格納されたdV/dSOC特性関数に基づいて、各SOCに対応する第2のdV/dSOCデータを別々に計算する。
【0071】
dV/dSOC特性関数が、新しいバッテリ状態における事前設定電流に基づいてターゲットバッテリを充電または放電することによって取得され、事前設定電流は1/20QBOL以下であり、QBOLは新しいバッテリ状態のターゲットバッテリの保持容量を表す。
【0072】
S3.バッテリSOHを推定するための装置が、第mの事前設定バッテリ容量における各SOCの第1のdV/dSOCデータと各SOCに対応する第2のdV/dSOCデータとに基づいて、複数のSOCの第mの総合dV/dSOCデータ偏差を計算する。
【0073】
S303.バッテリSOHを推定するための装置が、すべての総合dV/dSOCデータ偏差から最小の総合dV/dSOCデータ偏差を決定する。
【0074】
S304.バッテリSOHを推定するための装置が、最小の総合dV/dSOCデータ偏差に対応する事前設定バッテリ容量を老化したターゲットバッテリの保持容量として決定する。
【0075】
S305.バッテリSOHを推定するための装置が、ターゲットバッテリのSOHを取得するために、老化したターゲットバッテリの保持容量を新しいバッテリ状態のターゲットバッテリの保持容量で割る。
【0076】
ステップS301では以下のとおりである。
【0077】
各SOCのSOC間隔は、その開始SOCが各SOCであり、その長さがdSOCである間隔である。例えば、第1のSOCのSOC間隔は、その開始SOCが第1のSOCであり、その長さがdSOCである間隔である。すべてのSOC間隔が同じdSOCを有していてもよく、または異なるdSOCを有していてもよい。これについては本出願の本実施形態では特に限定されない。
【0078】
表現を容易にするために、本出願の本実施形態では、第1のSOCはSOC1として表され、第2のSOCはSOC2として表され、第nのSOCはSOCnとして表されることに留意されたい。これについては本明細書では一様に記述され、以下では詳細を繰り返さない。
【0079】
任意選択で、バッテリSOHを推定するための装置が、複数のSOCの各々のSOC間隔におけるターゲットバッテリの部分的な充電または放電容量を取得するステップは、 次の第1の事前設定式を参照して複数のSOCの各々のSOC間隔におけるターゲットバッテリの部分的な充電または放電容量を取得するステップであって、バッテリSOHを推定するための装置が、式(1)を参照して複数のSOCの各々のSOC間隔におけるターゲットバッテリの部分的な充電または放電容量を取得するステップ、を特に含み得る。式(1)は次のとおりである。
【数37】
【0080】
SOCnは第nのSOCを表す。
【数38】
はSOCnのSOC間隔における部分的な充電または放電容量を表す。ηはターゲットバッテリのクーロン効率であり、0<η≦1であり、ηはバッテリタイプに基づいて与えられ得る。リチウムイオンバッテリでは、ηは1であり得る。鉛酸バッテリ、NiMHバッテリ、またはNi-Cdバッテリなどの別のタイプのバッテリでは、ηは異なるタイプに基づいて0.9から1までの値であり得る。SOCn-tstartはSOCnのSOC間隔における開始時を表す。SOCn-tendはSOCnのSOC間隔における終了時を表す。
【数39】
はSOCnのSOC間隔におけるランダム電流を表す。
【0081】
例えば、ターゲットバッテリが充電状態で動作するときに、各SOCのSOC間隔の間、ターゲットバッテリの充電電流が事前設定値未満である場合、例えば、大電流充電プロセスにおいて、初期充電フェーズにおける電流と終了充電フェーズにおける電流とが1/20QBOL未満になるように制御されるか、または全充電プロセスにおける電流が1/20QBOL未満になるように制御される場合、図1のバッテリ検出装置21はすべての収集データを構造体配列の形態で記憶チップ25にフラッシュし得る。この構造体は、電圧、電流、温度、絶対時間、および初期SOCなどのいくつかの配列要素を含み、具体的には、Data(k){V[],I[],Temp[],Time[],SOC[]}として表されもよく、kは0からKまでの自然数であり、K個の構造体データを表す。記録頻度がサンプリング周波数に基づいて記録され、記録期間はΔt=tend-tstartである。次いで、バッテリSOHを推定するための装置は、記憶チップ25から前述の構造体データを読み取って、式(1)を参照して複数のSOCの各々のSOC間隔におけるターゲットバッテリの部分的な充電容量を取得し得る。
【0082】
例えば、ターゲットバッテリが放電状態で動作するときに、各SOCのSOC間隔の間、ターゲットバッテリがおおむね開路安定状態にある場合、図1のバッテリ検出装置21はすべての収集データを構造体配列の形態で記憶チップ25にフラッシュし得る。この構造体は、電圧、電流、温度、絶対時間、および初期SOCなどのいくつかの配列要素を含み、具体的には、Data(k){V[],I[],Temp[],Time[],SOC[]}として表されもよく、kは0からKまでの自然数であり、K個の構造体データを表す。記録頻度がサンプリング周波数に基づいて記録され、記録期間はΔt=tend-tstartである。次いで、バッテリSOHを推定するための装置は、記憶チップ25から前述の構造体データを読み取って、式(1)を参照して複数のSOCの各々のSOC間隔におけるターゲットバッテリの部分的な放電容量を取得し得る。本出願の本実施形態では、ターゲットバッテリの電流値Iが-βより大かつβ未満であり、これがγ分間続くか、またはターゲットバッテリが15分を超える間にわたって開路において未使用のままである場合、ターゲットバッテリはおおむね開路安定状態に到達すると見なされる。βおよびγの値は、ターゲットバッテリの特性に基づいて決定される。一般に、βは2Aであり、γは5から10分である。
【0083】
例えば、SOC1では、バッテリSOHを推定するための装置は、記憶チップ25からSOC1のSOC間隔においてK個の構造体データを読み取り、式(1)に従ってSOC1のSOC間隔における部分的な充電または放電容量を取得し得る。SOC1のSOC間隔における部分的な充電または放電容量は次のとおりである。
【数40】
【0084】
本出願の本実施形態では、Kの値は絶対時間tに依存し、絶対時間tstartはアルゴリズムの始めにデータがレコードされる絶対時であり、絶対時間tendはアルゴリズムの終わりにSOHが推定され始める絶対時であり、tstartとtendとの間に時間差は通常1ヵ月以下であることに留意されたい。加えて、Kの値は事前設定上限値を超えることができない。例えば、事前設定上限値は100であり、これは、データ記録が最大100回にわたって行われことを表す。事前設定上限値は、記憶チップ25のサイズに基づいて決定され得る。記憶許可が満たされる場合、より大きい事前設定上限値はより大容量のデータが推定に関与することおよびより高い推定精度を表す。
【0085】
ステップS302のS1では以下のとおりである。
【0086】
任意選択で、バッテリSOHを推定するための装置が、第mの事前設定バッテリ容量における各SOCの第1のdV/dSOCデータを、第mの事前設定バッテリ容量と各SOCのSOC間隔における部分的な充電または放電容量とに基づいて別々に計算するステップは、バッテリSOHを推定するための装置が、第mの事前設定バッテリ容量における各SOCの第1のdV/dSOCデータを、第mの事前設定バッテリ容量と各SOCのSOC間隔における部分的な充電または放電容量とに基づき、式(2)を参照して別々に計算するステップ、を特に含み得る。式(2)は次のとおりである。
【数41】
【0087】
Qmは第mの事前設定バッテリ容量を表し、SOCnは第nのSOCを表し、g1(SOCn)は第mの事前設定バッテリ容量におけるSOCnの第1のdV/dSOCデータを表し、Vは電圧を表し、qは部分的な充電または放電容量を表し、
【数42】
がSOCnに対応する
【数43】
を表す。
【0088】
例えば、バッテリSOHを推定するための装置が記憶チップ25からSOCnのSOC間隔においてK個の構造体データを読み取ることができると仮定すると、V-SOC曲線は短期間には直線であるので、バッテリSOHを推定するための装置は、式(2)に従って第mの事前設定バッテリ容量におけるSOCnの第1のdV/dSOCデータを計算し得る。第mの事前設定バッテリ容量におけるSOCnの第1のdV/dSOCデータは次のとおりである。
【数44】
【0089】
SOCn-tstartはSOCnのSOC間隔の開始時を表し、SOCn-tendはSOCnのSOC間隔の終了時を表し、
【数45】
はSOCn-tendにおける電圧を表し、
【数46】
はSOCn-tstartにおける電圧を表し、
【数47】
はSOCnのSOC間隔における第Kの電圧を表し、
【数48】
はSOCnのSOC間隔における初期電圧を表す。
【0090】
任意選択で、ターゲットバッテリが放電状態で動作する場合、ターゲットバッテリがある期間にわたって安定し静止した状態にあるか、またはターゲットバッテリの動作状態がある期間にわたって微小電流に保たれた後、バッテリ分極が消失すると見なすことができる。この場合、初期のターゲットバッテリの端子電圧Vを、初期のターゲットバッテリの開路電圧OCVと見なすことができる。加えて、OCV-SOC曲線は短期間には直線であるので、dqは短期間にはdOCVに比例することが分かる。したがって、ターゲットバッテリが放電状態で動作する場合、式(2)を次の式(3)に展開することができる。
【数49】
【0091】
【数50】
はSOCn-tstartにおけるOCVを表し、
【数51】
はSOCn-tendにおけるOCVを表し、
【数52】
はSOCnのSOC間隔における部分的な放電容量を表す。
【0092】
任意選択で、バッテリSOHを推定するための装置は、SOCnのSOC間隔の開始SOCと終了SOCとに基づき、SOCとOCVとの間に事前に格納された対応関係を参照して
【数53】
および
【数54】
を求めることができる。これについては本出願の本実施形態では特に限定されない。
【0093】
例えば、バッテリSOHを推定するための装置が記憶チップ25からSOCnのSOC間隔においてK個の構造体データを読み取ることができると仮定すると、バッテリSOHを推定するための装置は、式(3)に従って第mの事前設定バッテリ容量における第1のdV/dSOCデータを計算し得る。第mの事前設定バッテリ容量における第1のdV/dSOCデータは次のとおりである。
【数55】
【0094】
【数56】
はSOCnのSOC間隔における第KのOCVを表し、
【数57】
はSOCnのSOC間隔における初期OCVを表し、
【数58】
は、SOCn[k]と事前に格納されたSOCとOCVとの間の対応関係とに基づいて決定することができ、
【数59】
は、SOCn[0]と事前に格納されたSOCとOCVとの間の対応関係とに基づいて決定することができる。SOCn[k]はSOCnのSOC間隔における第KのSOCを表し、SOCn[0]はSOCnのSOC間隔における初期OCVを表す。
【0095】
ステップS302のS2では以下のとおりである。
【0096】
バッテリSOHを推定するための装置が、事前に格納されたdV/dSOC特性関数に基づいて、各SOCに対応する第2のdV/dSOCデータを別々に計算することは具体的には、バッテリSOHを推定するための装置が、各SOCに対応する第2のdV/dSOCデータを取得するために事前に格納されたdV/dSOC特性関数に各々SOCを別々に代入することである。
【0097】
任意選択で、事前に格納されたdV/dSOC特性関数は以下のように取得され得る。
【0098】
ステップ1:電圧-容量曲線を取得するために、新しいバッテリ状態における事前設定電流に基づいてターゲットバッテリを充電または放電する。
【0099】
事前設定電流は1/20QBOL以下である。例えば、事前設定電流は1/25QBOLである。
【0100】
例えば、図4は、本出願の本実施形態による、新しいバッテリ状態と様々な老化度における事前設定電流に基づく、ターゲットバッテリの充電または放電の電圧-容量(Voltage-capacity、V-Q)線グラフである。曲線1は、新しいバッテリ状態における事前設定電流に基づくターゲットバッテリの充電または放電のV-Q線グラフである。曲線2は、老化度400における事前設定電流に基づくターゲットバッテリの充電または放電のV-Q線グラフである。曲線3は、老化度1000における事前設定電流に基づくターゲットバッテリの充電または放電のV-Q線グラフである。曲線4は、老化度2000における事前設定電流に基づくターゲットバッテリの充電または放電のV-Q線グラフである。ターゲットバッテリによって放出される容量は、老化度が増加するにつれて、言い換えると、サイクル回数が増加するにつれて減少し、V-Q曲線は放電の終わりに明らかな偏りを有することが図4から分かる。
【0101】
小電流状態の電圧がOCVに非常に近いので、本出願の本実施形態の電圧-容量曲線は既存のOCV-容量に非常に近いことに留意されたい。これについては本明細書では一様に記述され、以下では詳細を繰り返さない。
【0102】
ステップ2:電圧-容量曲線を電圧-充電状態(V-SOC)曲線に変換する。
【0103】
ターゲットバッテリの充電/放電容量が、V-SOC曲線を取得するために、ステップ1で取得された電圧-容量曲線に基づき、SOCの定義に従って、ターゲットバッテリの完全充電容量に対するターゲットバッテリの残存容量の比に変換される。
【0104】
例えば、図5は、新しいバッテリ状態と様々な老化度における事前設定電流に基づく、ターゲットバッテリの充電または放電の、図4に対応するV-SOC線グラフである。充電または放電が事前設定電流に基づいて行われると、様々な老化度におけるV-SOC曲線が正規化特性を示すことが図5から分かる。本出願の本実施形態では、バッテリSOHはこの正規化特性に基づいて推定される。
【0105】
ステップ3:V-SOC曲線に基づいてターゲットバッテリのdV/dSOC特性曲線を取得する。
【0106】
例えば、新しいバッテリ状態と様々な老化度における事前設定電流に基づくターゲットバッテリの充電または放電のdV/dSOC特性曲線が図6に示され得る。
【0107】
ステップ4:フィッティングのためにdV/dSOC特性曲線上の点を抽出して、新しい状態のターゲットバッテリのdV/dSOC特性関数を取得する。
【0108】
例えば、図6で最高曲線正規化度を有する間隔における点がフィッティングのために選択され得る。例えば、0から0.7までのSOC間隔における点がフィッティングのために選択される。
【0109】
充電または放電が事前設定電流に基づいて行われると、様々な老化度におけるV-SOC曲線は正規化特性を示す。したがって、充電または放電が事前設定電流に基づいて行われる場合、新しいバッテリ状態のターゲットバッテリのものである、新しいバッテリ状態における事前設定電流に基づくターゲットバッテリの充電または放電によって取得されるdV/dSOC特性関数はまた、様々な老化度におけるターゲットバッテリのdV/dSOC特性関数とも見なされ得る。
【0110】
例えば、dV/dSOC特性関数は次の式(4)として示され得る。
【数60】
【0111】
特性関数は6次のフーリエ関数である。SOCnはdV/dSOC特性関数の独立変数である。g0(SOCn)はSOCnに対応する第2のdV/dSOCデータを表す。jは次数を表し、a0、aj、およびbjは項の係数であり、次数および係数はすべてフィッティングツールを使用して取得される。sin()は正弦関数を表し、cos()は余弦関数を表し、ωは周波数を表す。
【0112】
図7は、式(4)に示されるdV/dSOC特性関数に対応する近似曲線と元のdV/dSOC特性曲線との比較の概略図であり、2つの曲線は基本的に一致する。
【0113】
任意選択で、本出願の本実施形態では、dV/dSOC特性関数がフィッティングツールを使用して近似される場合、フィッティングは特性関数が6次のフーリエ関数である例を使用して行われる。当然ながら、実際には、特性関数は、これだけに限定されないが、多項式関数、フーリエ関数、指数関数などをさらに含み得る。これについては本出願の本実施形態では特に限定されない。
【0114】
ステップS302のS3では以下のとおりである。
【0115】
任意選択で、バッテリSOHを推定するための装置が、第mの事前設定バッテリ容量における各SOCの第1のdV/dSOCデータと各SOCに対応する第2のdV/dSOCデータとに基づいて、複数のSOCの第mの総合dV/dSOCデータ偏差を計算するステップは、バッテリSOHを推定するための装置が、第mの事前設定バッテリ容量における各SOCの第1のdV/dSOCデータと各SOCに対応する第2のdV/dSOCデータとに基づき、式(5)を参照して複数のSOCの第mの総合dV/dSOCデータ偏差を計算するステップ、を特に含む。式(5)は以下を含む。
【数61】
【0116】
NはSOCの数を表し、Nは2以上の正の整数であり、Gmは複数のSOCの第mの総合dV/dSOCデータ偏差を表す、ように特に構成される。
【0117】
例えば、g1(SOC)が式(2)として示されてもよく、g0(SOC)が式(4)として示されてもよく、次の式(6)は、式(5)に式(4)および式(2)を代入することによって取得することができる。
【数62】
【0118】
GmはQmに関連することが分かる。表1に、以下のようにGmとQmとの間の一群のマッピング関係を示す。
【0119】
【表1】
【0120】
QEOLは、寿命の終了(End of life、EOL)時のターゲットバッテリの完全充電/完全放電容量を表し、QBOLは、新しいバッテリ状態のターゲットバッテリの完全充電/完全放電容量を表す。
【0121】
ステップS303では以下のとおりである。
【0122】
バッテリSOHを推定するための装置は、すべての総合dV/dSOCデータ偏差から最小の総合dV/dSOCデータ偏差をソート法で決定してもよく、またはすべての総合dV/dSOCデータ偏差から最小の総合dV/dSOCデータ偏差を別の方法で決定してもよい。これについては本出願の本実施形態では特に限定されない。
【0123】
ステップS304では以下のとおりである。
【0124】
バッテリSOHを推定するための装置は、最小の総合dV/dSOCデータ偏差に対応する事前設定バッテリ容量を老化したターゲットバッテリの保持容量として決定する。新しいバッテリ状態のターゲットバッテリのものである、新しいバッテリ状態における事前設定電流に基づくターゲットバッテリの充電または放電によって取得されるdV/dSOC特性関数はまた、様々な老化度におけるターゲットバッテリのdV/dSOC特性関数とも見なされ得ることが前述の説明から分かる。したがって、理論上、最小の総合dV/dSOCデータ偏差に対応する事前設定バッテリ容量は、実際の保持容量の推定容量値に最も近い。
【0125】
ステップS305では以下のとおりである。
【0126】
SOHの定義によれば、ターゲットバッテリのSOHは、老化したターゲットバッテリの保持容量を新しいバッテリ状態のターゲットバッテリの保持容量で割ることによってのみ取得することができる。
【0127】
本出願の本実施形態で提供されるバッテリSOHを推定するための方法では、バッテリSOHを推定するための装置は、複数のSOCの各々のSOC間隔におけるターゲットバッテリの部分的な充電または放電容量を取得し、第mの事前設定バッテリ容量と各SOCのSOC間隔における部分的な充電または放電容量とに基づいて第mの事前設定バッテリ容量における各SOCの第1のdV/dSOCデータを別々に計算し、事前に格納されたdV/dSOC特性関数に基づいて、各SOCに対応する第2のdV/dSOCデータを別々に計算し、dV/dSOC特性関数が、新しいバッテリ状態における事前設定電流に基づいてターゲットバッテリを充電または放電することによって取得され、事前設定電流が1/20QBOL以下であり、QBOLが新しいバッテリ状態のターゲットバッテリの保持容量を表し、第mの事前設定バッテリ容量における各SOCの第1のdV/dSOCデータと各SOCに対応する第2のdV/dSOCデータとに基づいて、複数のSOCの第mの総合dV/dSOCデータ偏差を計算し、すべての総合dV/dSOCデータ偏差から最小の総合dV/dSOCデータ偏差を決定し、最小の総合dV/dSOCデータ偏差に対応する事前設定バッテリ容量を老化したターゲットバッテリの保持容量として決定し、老化したターゲットバッテリの保持容量に基づいてターゲットバッテリのSOHを決定する。言い換えると、この解決策では、老化したターゲットバッテリの保持容量は、各SOCのSOC間隔における部分的な充電または放電容量に基づいて推定される。このようにして、この解決策は、1回の完全充電または完全放電試験を行うことによってのみパラメータを取得することができる先行技術とは異なり、したがってこの解決策の実施条件はより単純でより柔軟である。加えて、この解決策は履歴データに依拠する必要がなく、したがってよりロバストである。
【0128】
前述のステップS301からステップS305におけるバッテリSOHを推定するための装置の動作は、図2に示されるバッテリSOHを推定するための装置26内のプロセッサ2601が、メモリ2603に格納されたアプリケーションプログラムコードを呼び出すことによって行われ得る。これについては本願の本実施形態では限定されない。
【0129】
以上では主にバッテリSOHを推定するための装置がバッテリSOHを推定するための方法を行う視点から本出願の実施形態で提供される解決策について説明している。前述の機能を実施するために、バッテリSOHを推定するための装置は、これらの機能を行うための対応するハードウェア構造および/またはソフトウェアモジュールを含むことが理解されよう。当業者であれば、本明細書で開示される実施形態に記載される例を参照して、ハードウェアまたはハードウェアとコンピュータソフトウェアの組み合わせによって本出願において各ユニットおよびアルゴリズムステップを実現できることを容易に理解するはずである。機能が実施されるのがハードウェアによってかそれともコンピュータソフトウェアがハードウェアを駆動することによってかは、技術的解決策の個々の用途および設計上の制約条件に依存する。当業者であれば、記載される機能を個々の用途ごとに様々な方法を使用して実施し得るが、その実施態様は本出願の範囲を超えるものと見なされるべきではない。
【0130】
本出願の実施形態では、バッテリSOHを推定するための装置の機能モジュールは、前述の方法例に基づく分割によって得ることができる。例えば、各機能モジュールが対応する機能ごとの分割によって得られてもよく、2つ以上の機能が1つの処理モジュールに統合されてもよい。統合モジュールはハードウェアの形態で実現されてもよく、ソフトウェア機能モジュールの形態で実現されてもよい。本出願の実施形態では、モジュール分割は一例にすぎず、論理的機能分割にすぎないことに留意されたい。実際の実施に際しては、別の分割方法もあり得る。
【0131】
例えば、各機能モジュールが対応する機能ごとの分割によって得られる場合、図8が、前述の実施形態におけるバッテリSOHを推定するための装置80の可能な概略的構造図である。バッテリSOHを推定するための装置80は、取得モジュール801と、計算モジュール802と、決定モジュール803とを含む。取得モジュール801は、バッテリSOHを推定するための装置80が図3のステップS301を行うのをサポートするように構成される。計算モジュール802は、バッテリSOHを推定するための装置80が図3のステップS302およびステップS305を行うのをサポートするように構成される。決定モジュール803は、バッテリSOHを推定するための装置80が図3のステップS303およびステップS304を行うのをサポートするように構成される。
【0132】
前述の方法実施形態におけるステップのすべての関連する内容を、対応する機能モジュールの機能説明に引用することができ、ここで詳細を述べない。
【0133】
各機能モジュールが統合方式の分割によって得られる場合、図9が、前述の実施形態におけるバッテリSOHを推定するための装置90の可能な概略的構造図である。図9に示されるように、バッテリSOHを推定するための装置90は処理モジュール901を含む。処理モジュール901は、バッテリSOHを推定するための装置90が図3のステップS301からステップS305を行うのをサポートするように構成される。
【0134】
前述の方法実施形態におけるステップのすべての関連する内容を、対応する機能モジュールの機能説明に引用することができ、ここで詳細を述べない。
【0135】
本出願の実施形態では、バッテリSOHを推定するための装置は、各機能モジュールが対応する機能ごとの分割によって得られる形態で提示されるか、またはバッテリSOHを推定するための装置は、各機能モジュールが統合方式の分割によって得られる形態で提示される。本明細書における「モジュール」は、特定用途向け集積回路(Application-Specific Integrated Circuit、ASIC)、回路、1つもしくは複数のソフトウェアもしくはハードウェアプログラムおよびメモリを実行するプロセッサ、論理集積回路、および/または前述の機能を提供できる別の構成要素であり得る。単純な実施形態では、バッテリSOHを推定するための装置80またはバッテリSOHを推定するための装置90は図2に示される形態を使用し得ると当業者であれば考えるであろう。例えば、図8の取得モジュール801、計算モジュール802、および決定モジュール803が図2のプロセッサ2601およびメモリ2603によって実施され得る。具体的には、取得モジュール801、計算モジュール802、および決定モジュール803は、プロセッサ2601がメモリ2603に格納されたアプリケーションプログラムコードを呼び出すことによって実施され得る。これについては本出願の実施形態では限定されない。あるいは、例えば、図9の処理モジュール901が図2のプロセッサ2601およびメモリ2603によって実施され得る。具体的には、処理モジュール901は、プロセッサ2601がメモリ2603に格納されたアプリケーションプログラムコードを呼び出すことによって実施され得る。これについては本出願の実施形態では限定されない。
【0136】
本出願の実施形態で提供されるバッテリSOHを推定するための装置は、前述のバッテリSOHを推定するための方法を行うように構成され得るので、バッテリSOHを推定するための装置によって得ることができる技術的効果については、前述の方法実施形態を参照されたい。ここでは本出願の実施形態の詳細を繰り返さない。
【0137】
前述の実施形態の全部または一部が、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、またはそれらの任意の組み合わせによって実現され得る。実施形態を実現するためにソフトウェアが使用される場合、実施形態の全部または一部がコンピュータプログラム製品の形態で実現され得る。コンピュータプログラム製品は、1つまたは複数のコンピュータ命令を含む。コンピュータプログラム命令がロードされ、コンピュータ上で実行されると、本出願の実施形態による手順または機能の全部または一部が生成される。コンピュータは、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、コンピュータネットワーク、または別のプログラマブル装置であり得る。コンピュータ命令は、コンピュータ可読記憶媒体に格納されてもよく、またはコンピュータ可読記憶媒体から別のコンピュータ可読記憶媒体に伝送されてもよい。例えば、コンピュータ命令は、ウェブサイト、コンピュータ、サーバ、またはデータセンタから別のウェブサイト、コンピュータ、サーバ、またはデータセンタに、有線(例えば、同軸ケーブル、光ファイバ、デジタル加入者線(Digital Subscriber Line、DSL))または無線(例えば、赤外線、電波、マイクロ波)方式で送信され得る。コンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータがアクセスできる任意の使用可能な媒体、または、1つもしくは複数の使用可能な媒体を統合した、サーバやデータセンタなどのデータ記憶装置であり得る。使用可能な媒体は、磁気媒体(例えば、フロッピーディスク、ハードディスク、もしくは磁気テープ)、光媒体(例えば、DVD)、半導体媒体(例えば、ソリッドステートディスク(Solid State Disk、SSD))などであり得る。
【0138】
本出願は、本明細書において実施形態を参照して説明されているが、保護を請求する本出願を実施するプロセスにおいて、当業者であれば、添付の図面、開示内容、および添付の特許請求の範囲を考慮することにより、開示の実施形態の別の変形を理解し、実現し得る。特許請求の範囲において、「含む(comprising)」は、別の構成要素またはステップを除外するものではなく、「a」または「one」は「複数(a plurality of)」の場合を除外するものではない。単一のプロセッサまたは別のユニットが特許請求の範囲に記載される複数機能を実施してもよい。添付の特許請求の範囲には互いに異なるいくつかの手段が記録されているが、これは、より良い効果を生むためにこれらの手段を組み合わせることができないことを意味するものではない。
【0139】
本出願は具体的な特徴およびそれらの実施形態を参照して説明されているが、明らかに、本出願の範囲から逸脱することなく本出願に様々な改変および組み合わせが加えられ得る。これに対応して、本明細書および添付の図面は、添付の特許請求の範囲によって定義される本出願の例示の説明にすぎず、本出願の範囲内のあらゆる改変、変形、組み合わせ、または均等物のいずれかまたはすべてを範囲として含むと見なされる。当業者であれば、本出願の趣旨および範囲を逸脱することなく本出願に様々な改変および変形を加えることができることは明白である。このようにして、本出願は、本出願のそれらの改変および変形を、それらが本出願の特許請求の範囲およびその均等な技術の範囲内にある限りにおいて範囲として含むことを意図されている。
【符号の説明】
【0140】
10 システム
20 バッテリ
21 バッテリ検出装置
22 充電/放電実行装置
23 絶対時間ユニット
24 コントローラ
25 記憶チップ
26 装置
80 装置
90 装置
801 取得モジュール
802 計算モジュール
803 決定モジュール
901 処理モジュール
2601 プロセッサ
2602 通信バス
2603 メモリ
2604 通信インターフェース
2605 出力装置
2606 入力装置
2608 プロセッサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9