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特許7542952内燃機関を運転するための方法及び制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】内燃機関を運転するための方法及び制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 51/00 20060101AFI20240826BHJP
   F02M 65/00 20060101ALI20240826BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
F02M51/00 A
F02M65/00 302
F02D45/00 369
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020002916
(22)【出願日】2020-01-10
(65)【公開番号】P2020112159
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2022-06-27
(31)【優先権主張番号】10 2019 101 020.9
(32)【優先日】2019-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510153962
【氏名又は名称】マン・エナジー・ソリューションズ・エスイー
【氏名又は名称原語表記】MAN ENERGY SOLUTIONS SE
【住所又は居所原語表記】Stadtbachstr.1 86153 Augsburg,GERMANY
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アルミン・ヴェーバー
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・カルク
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-214441(JP,A)
【文献】特開平09-209788(JP,A)
【文献】特開2015-124713(JP,A)
【文献】実開昭62-098770(JP,U)
【文献】特開2001-221121(JP,A)
【文献】特開平11-351092(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0156153(US,A1)
【文献】特開2019-019823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 39/00 ~ 71/04
F02D 41/00 ~ 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシリンダを有し、液体燃料運転モード及びガス燃料運転モードを含む運転モードを有する内燃機関を運転するための方法であって、
前記内燃機関は、各シリンダのために、それぞれ少なくとも1つの燃料インジェクタを有しており、
各燃料インジェクタは、各燃料インジェクタの電磁弁を通じて、開閉を行うように作動される方法において、
開口のための各燃料インジェクタの作動に始まり、ある時間にわたって、前記燃料インジェクタによって放出された固体伝搬音の音波が測定技術的に検出され、
ある時間にわたって測定技術的に検出された固体伝搬音音波信号は、前記固体伝搬音音波信号の少なくとも1つのピークの値に依存して、並びに/又は、前記固体伝搬音音波信号のピークの数に依存して、並びに/又は、ピークが複数存在する場合には、時間的な順序及び/若しくはピークの値に依存して、各燃料インジェクタの燃料噴射量に応じた各燃料インジェクタの動作モードが推測されるように評価され
開口のための各燃料インジェクタの作動開始後の、所定の第1の期間(Δt1)内において、測定技術的に検出された固体伝搬音音波信号に、第1のピークが出現し、前記第1のピークの値が第1の限界値(G1)よりも大きい場合、各燃料インジェクタの第1の動作状態が推測され、
開口のための各燃料インジェクタの作動開始後の、所定の前記第1の期間(Δt1)内において、測定技術的に検出された固体伝搬音音波信号に、第1のピークが出現し、前記第1のピークの値が、前記第1の限界値(G1)よりも小さいが、第2の限界値(G2)よりは大きい場合、各燃料インジェクタの第2の動作状態であって前記燃料インジェクタによる燃料の噴射量が前記第1の動作状態よりも大きい第2の動作状態又は第3の動作状態であって前記燃料インジェクタによる燃料の噴射量が前記第2の動作状態よりも大きい第3の動作状態が推測され、
所定の前記第1の期間(Δt1)内において、前記固体伝搬音音波信号に、第1のピークが出現し、前記第1のピークの値が、前記第1の限界値(G1)よりも小さいが、前記第2の限界値(G2)よりは大きい場合、及び、その後には、値が前記第2の限界値(G2)よりも大きいさらなるピークが出現しない場合、第2の動作状態が推測され、
所定の前記第1の期間(Δt1)内において、前記固体伝搬音音波信号に、第1のピークが出現し、前記第1のピークの値が、前記第1の限界値(G1)よりも小さいが、前記第2の限界値(G2)よりは大きい場合、及び、その後で、前記第1の期間(Δt1)内、又は、前記第1のピークが出現した後の所定の第2の期間(Δt2)内において、第2のピークが出現し、前記第2のピークの値が、前記第2の限界値(G2)より大きい場合、第2の動作状態が推測され、
所定の前記第1の期間(Δt1)内において、前記固体伝搬音音波信号に、第1のピークが出現し、前記第1のピークの値が、前記第1の限界値(G1)よりも小さいが、前記第2の限界値(G2)よりは大きい場合、及び、その後で第2のピークが生じるのが、所定の前記第1の期間(Δt1)内ではなく、又は、所定の前記第2の期間(Δt2)内でもなく、前記第1のピークが出現した後の比較的長い期間(Δt3)内である場合には、第3の動作状態が推測されることを特徴とする方法。
【請求項2】
各燃料インジェクタの前記第1の動作状態は、各シリンダ内への燃料の少量噴射の動作状態であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各燃料インジェクタの前記第3の動作状態が、各燃料インジェクタのノズルニードルのフルストロークの動作状態であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
各燃料インジェクタの前記第3の動作状態が、各シリンダへの燃料の大量噴射の動作状態であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
各燃料インジェクタの前記第2の動作状態が、各燃料インジェクタのノズルニードルの衝撃による開口状態の動作状態であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
各燃料インジェクタの第2の動作状態が、各シリンダへの燃料の中程度の量の噴射の動作状態であり、前記中程度の量の噴射は、少量噴射より多く、大量噴射より少ないことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法を、制御側で実施することを特徴とする、内燃機関を運転するための制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関を運転するための方法と、当該方法を実施するための制御装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関は、複数のシリンダを有している。各シリンダの領域には、少なくとも1つの燃料インジェクタが取り付けられている。燃料インジェクタは、開閉のために作動可能であり、すなわち燃料インジェクタの電磁弁を通じて作動可能であり、当該燃料インジェクタには、対応する作動流が供給される。燃料インジェクタは、重油又は残油等のディーゼル燃料のための燃料インジェクタであるか、又は、ガス燃料のための燃料インジェクタであってもよい。燃料インジェクタは、燃料噴射弁とも称される。
【0003】
先行技術から知られた二元燃料エンジンは、シリンダごとに、3つの燃料インジェクタ、すなわちディーゼル燃料のための主要燃料インジェクタであって、ディーゼル運転モードとも呼ばれる第1の運転モードにおいて、引火性のディーゼル燃料がシリンダに導入される際に用いられる主要燃料インジェクタと、ガス燃料インジェクタと、点火流体燃料インジェクタと、を有しており、ガス運転モードとも呼ばれる第2の運転モードでは、ガス燃料インジェクタによって、典型的には給気及びガス燃料から成る、それ自体は引火しにくい混合気が供給され、当該混合気は、第2の運転モードにおいて点火流体燃料インジェクタを通じて各シリンダに導入される点火流体を通じて点火され得る。その際、点火流体として、ディーゼル燃料が用いられる。第2の運転モードでは、比較的少量のディーゼル燃料が、各シリンダに導入され、主要燃料インジェクタは、典型的には、このような少量の燃料の供給に合わせては設計されていないので、先行技術によると、別個の点火流体燃料インジェクタを二元燃料エンジンに取り付けることが、典型的には必要である。
【0004】
別個の点火流体インジェクタを設けるためには、付加的な部材及び付加的な設置空間が必要となるので、実践からは、第2の運転モードにおいて、少量の点火流体を導入するために、主要燃料インジェクタを利用するという試みが知られている。その際、第2の運転モードにおけるシリンダ内への正確な少量の噴射量を監視することが決定的に重要である。第2の運転モードにおいて、点火流体が、各シリンダに高精度に導入され得る場合にのみ、排ガス規定を順守することが可能である。
【0005】
つまり、一方において第1の運転モードで比較的多くのディーゼル燃料をシリンダに導入し、他方において第2の運転モードで点火流体として比較的少量のディーゼル燃料をシリンダに導入するために主要燃料インジェクタを用いる場合、対応する運転モード又は各燃焼インジェクタの対応する動作状態の監視及び確認が重要である。
【0006】
類似の課題設定は、専らディーゼル燃料が燃焼される純粋なディーゼル内燃機関においても存在する。例えば、実践からはすでに、比較的多くのディーゼル燃料をディーゼル内燃機関のシリンダに導入する主噴射に加えて、前噴射及び/又は後噴射によって、比較的少量の燃料を各シリンダに導入することが知られている。この場合も、主要燃料インジェクタは、主噴射の間に、比較的大量の燃料を導入するため、並びに、前噴射及び/又は後噴射の間に、比較的少量の燃料を導入するために用いられる。この関連においても、当該燃焼インジェクタが、必要とされる精度で、燃料を各シリンダ内に噴射することを確実にするために、各燃料インジェクタがいずれの動作状態で動作しているのかを確認することが重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この必要性から始めて、本発明の課題は、内燃機関を運転するための新式の方法と、当該方法を実施するための制御装置とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本課題は、請求項1に記載の方法によって解決される。
【0009】
本発明によると、開口のための各燃料インジェクタの作動に始まり、各燃料インジェクタによって放出される固体伝搬音の音波が、ある時間にわたって、測定技術的に検出される。ある時間にわたって測定技術的に検出された固体伝搬音音波信号は、固体伝搬音音波信号の少なくとも1つの最大値の値に依存して、並びに/又は、固体伝搬音音波信号の最大値の数に依存して、並びに/又は、最大値が複数存在する場合には、時間的な順序及び/若しくは最大値の値に依存して、各燃料インジェクタの動作モードが推測されるように評価される。
【0010】
本発明では、各燃料インジェクタの作動開始と共に、すなわち各燃料インジェクタの電磁弁への作動電流の供給開始と共に、各燃料インジェクタによって放出される固体伝搬音の音波を検出することが提案される。各燃料インジェクタの動作モードを推測するために、このように測定技術的に検出された固体伝搬音音波信号が、決められた方法で評価される。このために、固体伝搬音音波信号における1つ又は複数の極大値が検出される。少なくとも1つの検出された固体伝搬音音波信号の極大値の値に依存して、並びに/又は、固体伝搬音音波信号の極大値の数に依存して、並びに/又は、複数の極大値が存在する場合には、時間的な順序及び/若しくは極大値の値に依存して、各燃料インジェクタの動作モードが推測される。これによって、燃料インジェクタが、比較的少量の燃料を内燃機関のシリンダ内に噴射するのか、又は、比較的大量の燃料を内燃機関のシリンダ内に噴射するのか、又は、中程度の量の燃料を内燃機関のシリンダ内に噴射するのかが、容易かつ確実に検出され得る。
【0011】
好ましくは、開口のための各燃料インジェクタの作動開始後の所定の第1の期間内に、測定技術的に検出された固体伝搬音音波信号に第1の最大値が出現し、当該第1の最大値の値が第1の限界値よりも大きい場合、各燃料インジェクタの第1の動作状態が推測される。各燃料インジェクタの第1の動作状態は、各シリンダへの燃料の少量噴射の動作状態である。この動作条件が存在する場合、各燃料インジェクタの第1の動作状態が推測可能であり、つまり、当該燃料インジェクタが少量の燃料を各シリンダ内に噴射することが推測可能である。
【0012】
好ましくは、固体伝搬音音波信号に、所定の第1の期間内において第1の最大値が出現し、当該第1の最大値の値が第1の限界値よりも小さいが、第2の限界値よりは大きい場合、及び、その後で、値が第2の限界値より大きい最大値が他に出現しない場合には、第2の動作状態が推測される。次に、固体伝搬音音波信号に、所定の第1の期間内において、第1の最大値が出現し、当該第1の最大値の値が第1の限界値より小さいが、第2の限界値よりは大きい場合、及び、次に、所定の第1の期間内又は第1の最大値が出現した後の所定の第2の期間内に、第2の最大値が出現し、当該第2の最大値の値が特に第2の限界値より大きい場合には、第2の動作状態が推測される。次に、固体伝搬音音波信号に、第1の期間内において、第1の最大値が出現し、当該第1の最大値の値が第1の限界値より小さいが、第2の限界値よりは大きい場合、及び、その後で第2の最大値が出現し、当該第2の最大値の値が特に第1の限界値より大きく、当該第2の最大値が、所定の第1の期間内又は所定の第2の期間内ではなく、第1の最大値が出現した後の比較的長い所定の期間内に出現する場合には、第3の動作状態が推測される。このような方法で、容易かつ確実に、第2又は第3の動作状態が推測され得る。
【0013】
好ましくは、各燃料インジェクタの第3の動作状態は、各シリンダへの燃料の大量噴射の動作状態であり、各燃料インジェクタの第2の動作状態は、各シリンダへの燃料の中程度の量の噴射の動作状態である。
【0014】
当該方法を実施するための制御装置が、請求項10に規定されている。
【0015】
本発明の好ましいさらなる発展形態が、従属請求項及び以下の説明から明らかになる。本発明の実施例が、図面を用いて詳細に説明されるが、これに限定されるものではない。その際、示されているのは以下の図である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】二元燃料エンジンの概略的なブロック図である。
図2】本発明を明確にするためのタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、内燃機関を運転するための方法と、当該方法を実施するための制御装置とに関する。
【0018】
内燃機関は、複数のシリンダを有している。内燃機関のシリンダ内では、燃料が燃焼する。燃料は、燃料インジェクタを通じて、各シリンダに導入される。各燃料インジェクタは、電磁弁を有しており、電磁弁は、燃料インジェクタの開閉のために、作動電流で作動させられる。どれだけ長く、電磁弁が作動電流で作動されるのかに応じて、比較的少量の燃料か、又は、比較的多量の燃料が、シリンダ内に噴射される。
【0019】
しかしながら、作動電流の長さは、各燃料インジェクタを通じて、実際に各シリンダに燃料が噴射されるのか、及び、どれくらいの量の燃料が噴射されるのかを推測するには適していない。その理由としては、例えば、各燃料インジェクタのノズルニードルが詰まっていることが考えられる。すなわち、特に燃料インジェクタが、各シリンダへの燃料の少量噴射にも燃料の大量噴射にも用いられ得る、又は、用いられるべき場合に、いずれの動作状態において燃料インジェクタが実際に動作するのかを検出する必要性が存在する。
【0020】
本発明は、1つの燃料インジェクタが、異なる量の燃料をシリンダ内に噴射するために用いられる、二元燃料エンジンにおいてもディーゼル内燃機関においても使用可能である。つまり、二元燃料エンジンの場合、1つの燃料インジェクタが、第1の運転モード、いわゆる液体燃料運転モードにおいて、比較的多くのディーゼル燃料を各シリンダ内に噴射し、第2の運転モード、いわゆるガス燃料運転モードにおいて、それに対して比較的少ない量の、ガス空気混合気を点火するための点火流体として用いられる燃料をシリンダ内に噴射するために使用可能である。ディーゼル内燃機関においても、異なる量の燃料を各シリンダ内に噴射するために、1つの燃料インジェクタを用いることができる。つまり、ディーゼル内燃機関からは、主噴射の間に比較的多くのディーゼル燃料を各シリンダに導入し、前噴射及び/又は後噴射の間に比較的少ないディーゼル燃料を各シリンダに導入することが知られている。燃料の正確な噴射は、排ガス規定を順守するためには重要である。
【0021】
図1には、二元燃料エンジン1のアセンブリが例示的に示されている。このような二元燃料エンジン1のシリンダ2は、シリンダヘッド3を有している。シリンダ2内では、連接棒5によって導かれたピストン4が上下に動いている。
【0022】
シリンダヘッド3には、燃料インジェクタ6が固定されており、燃料インジェクタ6によって、引火性燃料、特にディーゼル燃料が、燃料導管7を通って、燃料ポンプ8からシリンダ2の燃焼室9内に噴射され得る。燃料インジェクタ6、燃料導管7及び燃料ポンプ8は、燃料供給システムの要素である。ディーゼル燃料は、例えば重油であり得る。
【0023】
ディーゼル燃料の燃焼のために、二元燃料エンジン1の各シリンダ2内には、さらに給気10が、吸気弁11を通じて導入可能であり、燃料の燃焼の際に生じる排ガス12は、排気弁13を通じて、二元燃料エンジン1の各シリンダ2から排出され得る。
【0024】
二元燃料エンジン1のシリンダ2の燃焼室9内では、第2の運転モード、いわゆるガス運転モードにおいて、代替的にガス燃料が燃焼し得る。このために、二元燃料エンジン1は、ガス燃料インジェクタ14を含んでおり、ガス燃料インジェクタ14によって、ガス供給導管15を通じて供給されるガス燃料が、燃焼空気10に導入され、ガス空気混合気が、シリンダ2の燃焼室9内に、吸気弁11を通じて導入される。
【0025】
二元燃料エンジン1の第2の運転モードにおいて、それ自体点火しにくいガス空気混合気に点火するために、引火性の点火流体が用いられ、当該点火流体は、シリンダ2の燃焼室9内に、燃料インジェクタ6を用いて導入され得る。その際、ディーゼル燃料が点火流体として用いられる。
【0026】
従って、燃料インジェクタ6は、二元燃料エンジン1の第1の運転モード及び第2の運転モードにおいて使用可能であり、少量の燃料を噴射するのに適している。
【0027】
上述したように、燃料インジェクタ6を通じて、比較的大量の燃料が各シリンダ2内に噴射されるのか、又は、比較的少量の燃料が各シリンダ2内に噴射されるのかを確認することが重要である。本発明は、特に図1に示された二元燃料エンジン1において、燃料インジェクタ6がいずれの動作状態で動作しているのかを確認するために用いることができる方法及び制御装置を提案しており、それによって、当該燃料インジェクタによって、少量の燃料が各シリンダ2内に噴射されるのか、大量の燃料が各シリンダ2内に噴射されるのか、又は、中程度の量の燃料が各シリンダ2内に噴射されるのかが確認される。
【0028】
本発明が提案するところによると、開口のための各燃料インジェクタ6の作動に始まり、すなわち各燃料インジェクタ6の電磁弁への電流供給に始まり、ある時間にわたって、各燃料インジェクタによって放出される固体伝搬音の音波が、測定技術的に検出される。このために、各燃料インジェクタ6又はシリンダヘッド3に、固体伝搬音音波センサが配設され得る。
【0029】
ある時間にわたって測定技術的に検出された固体伝搬音音波信号は、固体伝搬音音波信号の少なくとも1つの最大値の値に依存して、並びに/又は、固体伝搬音音波信号の最大値の数に依存して、並びに/又は、最大値が複数存在する場合には、時間的な順序及び/若しくは最大値の値に依存して、各燃料インジェクタの動作モードが推測されるように評価される。これらの最大値は、各固体伝搬音音波信号のいわゆる極大値であり、信号のピークとも呼ばれる。
【0030】
好ましくは、各燃料インジェクタ6の動作モードを推測するために、各極大値の値と極大値の数とを、極大値の時間的順序とも組み合わせて評価する。
【0031】
以下において、本発明のさらなる詳細を、図2のタイミング図を用いて記載する。図2には、時間tにわたって、様々な測定技術的に検出された固体伝搬音音波信号の、信号推移20、21及び22が示されている。
【0032】
時点t0では、開口のために、電磁弁又は各燃料インジェクタ6の作動が行われる。時点t0から始めて、測定信号、つまり各燃料インジェクタ6によって放出される固体伝搬音音波に関する測定信号が検出される。曲線形状20、21及び22は、測定技術的に検出された固体伝搬音音波信号を例示的に示している。
【0033】
その際、固体伝搬音音波信号20は、各燃料インジェクタ6が少量の燃料をシリンダ内に噴射するために用いられる各燃料インジェクタ6の状態、すなわち燃料インジェクタ6に、少量噴射の動作状態が存在する状態に対応している。
【0034】
これに対して、固体伝搬音音波信号22は、各シリンダへの燃料の大量噴射の動作状態に対応し、当該動作状態では、各燃料インジェクタ6が大量の燃料を各シリンダ内に噴射する。
【0035】
固体伝搬音音波信号21は、各燃料インジェクタ6の、燃料の中程度の量、すなわち少量と大量との間の量の噴射が存在する状態に対応する。
【0036】
曲線形状20、21及び22は全て、時点t1において、各燃料インジェクタ6の電磁弁の開口の衝撃に起因する最大値が検出される点で共通している。時点t1における当該最大値は非常に小さく、第1の限界値G1よりも、第2の限界値G2よりも小さいので、当該最大値については以下においてさらに考察しない。
【0037】
少量噴射の信号推移20は、開口のための各燃料インジェクタの作動開始後の、所定の期間Δt1内において、すなわち時点t0の後の所定の第1の期間Δt1内において、この場合は時点t2において、測定技術的に検出された固体伝搬音音波信号に極大値が出現し、当該極大値の値が、第1の限界値G1よりも大きいことを特徴としている。信号推移20の当該最大値は、信号推移20の第1の最大値と称される。
【0038】
つまり、開口のための燃料インジェクタ6の作動開始後の、所定の第1の期間Δt1内において、測定技術的に検出された固体伝搬音音波信号、ここでは固体伝搬音音波信号20に、第1の最大値が出現し、当該第1の最大値の値が第1の限界値G1よりも大きいことが認められる場合、各燃料インジェクタの第1の動作状態、つまり各シリンダへの燃料の少量噴射の動作状態が推測される。
【0039】
開口のための各燃料インジェクタの作動開始後の、所定の第1の期間Δt1内において、測定技術的に検出された固体伝搬音音波信号に、極大値が出現し、当該極大値の値が第1の限界値G1よりも小さいが、第2の限界値G2よりは大きい(信号推移21及び22を参照)場合、各燃料インジェクタの第2の動作状態、又は、各燃料インジェクタの第3の動作状態が推測され、つまり各シリンダへの大量の燃料噴射又は中程度の量の燃料噴射が推測される。信号推移21及び22の当該最大値は、やはり第1の最大値と称される。
【0040】
各固体伝搬音音波信号のさらなる評価に依存して、第2の動作状態又は第3の動作状態が推測される。
【0041】
測定技術的に検出された固体伝搬音音波信号に、所定の第1の期間Δt1内において、第1の最大値が出現し、当該第1の最大値の値は、第1の限界値G1よりも小さく、第2の限界値G2より大きいが、その後にはさらなる最大値が出現しない場合、各燃料インジェクタの第2の動作状態が推測される。
【0042】
同様に、各燃料インジェクタの第2の動作状態が推測されるのは、図2の信号推移21に関して示されているように、所定の第1の期間Δt1内において(ここでは時点t3)、第1の最大値が出現し、当該第1の最大値の値が第1の限界値G1より小さいが、第2の限界値G2よりは大きい場合、及び、その後で、所定の第1の期間Δt1内、又は、図2によると第1の最大値が出現した(ここでは時点t4)後の所定の第2の期間Δt2内において、さらなる又は第2の最大値が出現し、当該第2の最大値の値が、第2の限界値G2より大きく、第1の限界値G1より小さい場合である。
【0043】
従って、どちらも第2の限界値G2より大きく、第1の限界値G1より小さい2つの極大値が、固体伝搬音音波信号に存在する場合、及び、これら2つの極大値の間の時間的間隔(ここでは時点t3とt4との間の時間的間隔)が比較的小さい場合、又は、値が限界値G2より大きく限界値G1より小さいただ1つの極大値が、固体伝搬音音波信号に存在する場合、各燃料インジェクタの第2の動作状態が推測される。
【0044】
各燃料インジェクタ6の第2の動作状態は、当該燃料インジェクタが、中程度の量の噴射に用いられる動作状態であり、各燃料インジェクタ6のノズルニードルの衝撃による開口状態が存在する動作状態である。
【0045】
固体伝搬音音波信号(例示的な信号推移22を参照)に、所定の第1の期間Δt1内において(ここでは時点t3)、第1の最大値が出現し、当該第1の最大値の値が第1の限界値G1より小さく、第2の限界値G2より大きい場合、及び、さらなる又は第2の最大値がその後で出現するのが、所定の第1の期間Δt1内ではなく、所定の第2の期間Δt2内でもなく、第1の最大値が出現した後の比較的長い所定の第3の期間Δt3内(ここでは時点t5)である場合には、各燃料インジェクタ6の第3の動作状態が推測され、すなわち、ノズルニードルに関してフルストロークが存在し、従って、燃料インジェクタ6が、各シリンダ2への燃料の大量噴射に用いられることが推測される。その際、期間Δt3内に出現する、信号推移22の第2の最大値は、第1の限界値G1及び第2の限界値G2よりも大きい。
【0046】
燃料インジェクタ6が燃料の少量噴射に用いられる場合に検出され得る信号推移20には、2つの最大値、すなわち時点t1における最大値と時点t2における最大値とが検出され得る。時点t1において出現する最大値は、フィルタリングされる。なぜなら、当該最大値は、限界値G1よりも限界値G2よりも小さいからである。時点t2において出現し、限界値G1より大きい最大値は、第1の期間Δt1内に出現し、第1の最大値と称され、その後にはさらなる最大値は出現しない。
【0047】
各燃料インジェクタ6における中程度の量の噴射の際に検出され得る信号推移21には、同様に、時点t1において最大値が出現し、当該最大値はやはりフィルタリングされる。時点t3において、つまり再び期間Δt1内において、限界値G2より大きいが、限界値G1よりは小さい第1の最大値が出現する。その後、時点t4において、やはり限界値G2より大きいが限界値G1よりは小さいさらなる最大値が信号推移21内に出現し、時点t4は、図2では、時間的間隔Δt2内に位置している。この場合、燃料の中程度の量の噴射が推測される。
【0048】
燃料の大量噴射が行われる場合に検出され得る信号推移22には、時点t1において、やはり限界値G1及びG2の両方よりも小さい最大値が出現し、当該最大値はフィルタリングされる。時点t3において、再び第1の最大値が出現し、当該第1の最大値は、曲線形状21に一致して、限界値G2より大きいが、限界値G1よりは小さい。信号推移22におけるさらなる最大値は、時点t5において、すなわち期間Δt1及びΔt2の外側においてようやく出現するが、期間Δt3内ではあるので、大量噴射が推測される。当該最大値は、限界値G2及び限界値G1よりも大きい。
【0049】
固体伝搬音音波信号の上述の評価によって、各燃料インジェクタ6においていずれの動作状態が実際に存在しているのかを、容易かつ確実に検出することが可能である。すなわち、燃料インジェクタ6が、各シリンダ2への燃料の少量噴射に用いられるのか、大量噴射に用いられるのか、又は、中程度の量の噴射に用いられるのかを検出することができる。これによって、排ガス規則又は排ガス規定が順守され得る。
【0050】
本発明は、さらに、当該方法を実施するための制御装置に関する。当該制御装置は、本発明に係る方法を制御側で実施するように装備されている。当該制御装置は、各固体伝搬音音波信号から、データインターフェースを通じて測定信号を受信する。上述したように、制御装置は、固体伝搬音音波センサの測定信号を評価し、それによって、各燃料インジェクタ6の動作状態が推測され、当該燃料インジェクタがいずれの動作状態で動作しているのか、すなわち、当該燃料インジェクタが、シリンダ内に少量の燃料を噴射するのか、大量の燃料を噴射するのか、又は、中程度の量の燃料を噴射するのかが検出される。
【符号の説明】
【0051】
1 二元燃料エンジン
2 シリンダ
3 シリンダヘッド
4 ピストン
5 連接棒
6 燃料インジェクタ
7 燃料導管
8 燃料ポンプ
9 燃焼室
10 給気、燃焼空気
11 吸気弁
12 排ガス
13 排気弁
14 ガス燃料インジェクタ
15 ガス供給導管
20、21、22 信号推移
G1 第1の限界値
G2 第2の限界値
t 時間
t1、t2、t3、t4、t5 時点
Δt1 第1の期間
Δt2 第2の期間
Δt3 第3の期間
図1
図2