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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】レンズ保持機構
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20240826BHJP
【FI】
G02B7/02 F
G02B7/02 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020019282
(22)【出願日】2020-02-07
(65)【公開番号】P2021092742
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2023-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2019220836
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 圭
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-215503(JP,A)
【文献】国際公開第2017/159859(WO,A1)
【文献】特開2017-215389(JP,A)
【文献】特開2016-212253(JP,A)
【文献】特開2011-090250(JP,A)
【文献】特表平05-506110(JP,A)
【文献】国際公開第2010/061604(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0195690(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02
G03B 30/00
H04N 23/50
H04N 23/55
H04N 23/57
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズと、
前記レンズの外周部に配置され、前記レンズの光軸と直交する方向の位置を規制する複数のレンズ規制部と、弾性変形可能な複数の弾性部と、1つの前記レンズ規制部と該1つの前記レンズ規制部を挟むように配置された2つの前記弾性部とからなる複数のユニットを繋ぐように配置されている複数の接続部と、を有する円環状のレンズ保持部材と、
前記レンズ保持部材を保持するベース部と、
前記ベース部に捩じ込まれる押え環と、を有し、
前記複数の接続部は、前記押え環と接触することで前記押え環の前記レンズの光軸に沿った方向の位置を規制し、
前記複数のレンズ規制部は、前記押え環と接触しないように配置され、
前記複数のレンズ規制部の線膨張係数は、前記ベース部の線膨張係数よりも大きいことを特徴とするレンズ保持機構。
【請求項2】
前記複数のレンズ規制部は、前記レンズの外周部に等間隔に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のレンズ保持機構。
【請求項3】
前記複数のレンズ規制部は、前記レンズの光軸に沿った方向の位置を規制することを特徴とする請求項1または2に記載のレンズ保持機構。
【請求項4】
円環状の弾性部材と、を更に有し、
前記押え環は、前記弾性部材を介して前記レンズを前記ベース部に固定することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のレンズ保持機構。
【請求項5】
前記レンズの線膨張係数は、前記ベース部の線膨張係数より小さいことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のレンズ保持機構。
【請求項6】
前記ベース部は、アルミニウムからなることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のレンズ保持機構。
【請求項7】
前記複数のレンズ規制部は、ポリカーボネート、強化繊維を含むポリカーボネート、またはポリアセタールからなることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のレンズ保持機構。
【請求項8】
前記レンズは、シリコンからなることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のレンズ保持機構。
【請求項9】
温度の低温化に伴い、前記レンズおよび前記ベース部は前記レンズの光軸と直交する方向に収縮し、前記レンズ規制部は前記直交する方向において光軸から遠ざかる方向に収縮し、
前記温度の高温化に伴い、前記レンズおよび前記ベース部は前記レンズの光軸と直交する方向に膨張し、前記レンズ規制部は前記直交する方向において前記光軸に近づく方向に膨張することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のレンズ保持機構。
【請求項10】
前記複数の接続部は、線膨張係数が前記ベース部の線膨張係数よりも大きいことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のレンズ保持機構。
【請求項11】
前記弾性部の線膨張係数は、前記ベース部の線膨張係数よりも大きいことを特徴とする請求項10に記載のレンズ保持機構。
【請求項12】
前記レンズ保持部材は、前記複数の接続部の外周で前記ベース部と接していることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載のレンズ保持機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ保持機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
赤外域(波長8μm~13μm程度)の光を対象とした光学系を用いると、可視波長域(波長0.4μm~0.7μm)の光では得ることのできない熱情報を検知して可視化することができる。赤外用の光学系を構成するレンズの材料としては、赤外域の光を透過する材料、例えばゲルマニウム(Ge)、カルコゲナイド、シリコン(Si)等がある。
【0003】
カルコゲナイドは人体に与える影響が大きい。また、ゲルマニウムは希少金属であるため、ゲルマニウムから成るレンズのみで光学系を構成することは困難である。シリコンは安易に入手でき、人体や環境への影響が少ない。
【0004】
そこで、特許文献1では、シリコンだけ、あるいはシリコンとゲルマニウムから成るレンズで構成された光学系を開示している。シリコンは化学的な要因で厚さに対する透過率の減衰が大きいため、レンズ厚さを薄くし、シリコンによる透過率の低下を軽減した構成となっている。
【0005】
シリコンの線膨張係数は、レンズ鏡筒として一般に使用されるアルミニウムのような金属の0.1~0.2倍程度である。そのため、シリコンから成るレンズをレンズ鏡筒で保持して使用する場合には、環境温度が低温化すると、線膨張係数の違いによってレンズがレンズ鏡筒に圧縮されレンズ形状の変化が生じ、光学性能が低下するおそれがある。
【0006】
また、環境温度が高温化すると、レンズ鏡筒の内径よりもレンズの外径が小さくなり、レンズ鏡筒とレンズ間に隙間が生じる。そのため、レンズの中心が光軸からずれることになり、光学性能が低下するおそれがある。
【0007】
そこで、特許文献2では、温度及び湿度の変化によるプラスチックレンズの膨張や収縮を吸収して、プラスチックレンズに対して何ら外力を与えることなく保持する構成が開示されている。具体的には、プラスチックレンズに対して、温度と湿度に対する膨張係数が等しい間隔調節環が、複数個所でプラスチックレンズの半径方向に保持されている。温度または湿度が変化すると、プラスチックレンズと間隔調整環は、同一の比率で半径方向に膨張・収縮する。レンズ支持部材は、プラスチックレンズに何ら外力を与えることなく、半径方向に移動してプラスチックレンズを保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2019-8271号公報
【文献】特開平8-201674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2で開示された構成では、レンズより線膨張係数が小さい部品でレンズを保持する必要があり、シリコンから成るレンズの場合はレンズ鏡筒の材料として一般に使用されるアルミニウムのような金属を使用することができない。
【0010】
そこで、本発明は、環境温度の変化によるレンズ形状への影響を低減することで、環境温度の変化が生じても光学性能を維持することを可能とした、レンズ保持機構を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るレンズ保持機構は、レンズと、前記レンズの外周部に配置され、前記レンズの光軸と直交する方向の位置を規制する複数のレンズ規制部と、弾性変形可能な複数の弾性部と、1つの前記レンズ規制部と該1つの前記レンズ規制部を挟むように配置された2つの前記弾性部とからなる複数のユニットを繋ぐように配置されている複数の接続部と、を有する円環状のレンズ保持部材と、前記レンズ保持部材を保持するベース部と、前記ベース部に捩じ込まれる押え環と、を有し、前記複数の接続部は、前記押え環と接触することで前記押え環の前記レンズの光軸に沿った方向の位置を規制し、前記複数のレンズ規制部は、前記押え環と接触しないように配置され、前記複数のレンズ規制部の線膨張係数は、前記ベース部の線膨張係数よりも大きいことを特徴とする。
【0012】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施形態において説明される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、環境温度の変化によるレンズ形状への影響を低減することで、環境温度の変化が生じても光学性能を維持することを可能とした、レンズ保持機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施形態に係るレンズ鏡筒の縦断面図。
図2】本発明の第1の実施形態に係るレンズ鏡筒の縦断面図の第1レンズの近傍の拡大図。
図3】本発明の第1の実施形態に係るレンズ鏡筒の縦断面図の第2レンズの近傍の拡大図。
図4】本発明の第1の実施形態に係るレンズ鏡筒の分解斜視図。
図5】本発明の第1の実施形態に係るレンズ保持機構の第1レンズの正面図。
図6】本発明の第1の実施形態に係るレンズ保持機構の第2レンズの正面図。
図7】本発明の第2の実施形態に係るレンズ鏡筒の縦断面図。
図8】本発明の第2の実施形態に係るレンズ鏡筒の縦断面図の第1レンズの近傍の拡大図。
図9】本発明の第2の実施形態に係るレンズ鏡筒の縦断面図の第2レンズの近傍の拡大図。
図10】本発明の第2の実施形態に係るレンズ保持機構の第1レンズの正面図。
図11】本発明の第2の実施形態に係るレンズ保持機構の第2レンズの正面図。
図12】本発明の第3の実施形態に係る第1レンズ保持部材の詳細図。
図13】本発明の第3の実施形態に係る第2レンズ保持部材の詳細図。
図14】本発明の第3の実施形態に係るレンズ鏡筒の縦断面図。
図15】本発明の第3の実施形態に係るレンズ鏡筒の縦断面図の第1レンズの近傍の拡大図。
図16】本発明の第3の実施形態に係るレンズ鏡筒の縦断面図の第2レンズの近傍の拡大
図17】本発明の第3の実施形態に係るレンズ鏡筒の分解斜視図。
図18】本発明の第3の実施形態に係るレンズ保持機構の第1レンズの正面図。
図19】本発明の第3の実施形態に係るレンズ保持機構の第2レンズの正面図。
図20】本発明の第3の実施形態に係る第1レンズ保持部材の変形を示す模式図。
図21】本発明の第3の実施形態に係る第2レンズ保持部材の変形を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0016】
以下に説明する実施の形態は、本発明の実現手段としての一例であり、本発明が適用される装置の構成や各種条件によって適宜修正又は変更されるべきものであり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
<第1の実施形態>
図1は、本発明のレンズ保持機構の第1の実施形態に係るレンズ鏡筒の縦断面図である。図2は、図1の第1レンズL1近傍の拡大図である。図3は、図1の第2レンズL2近傍の拡大図である。図4は、レンズ鏡筒の構成を示す分解斜視図である。図5は、第1レンズL1と第1レンズ規制部3の構成を示す正面図である。図6は、第2レンズL2と第2レンズ規制部8の構成を示す正面図である。
【0017】
図1に示すように、レンズ鏡筒は、前側(被写体側)から後側(像面側)に順に第1レンズL1、第2レンズL2を有する。第1レンズL1と第2レンズL2は撮像光学系を構成する。第1レンズL1は、光軸ОAに沿った方向(光軸方向)において固定されている。第2レンズL2は、光軸ОAに沿った方向(光軸方向)において固定されている。
【0018】
本実施形態では、撮像光学系は2枚のレンズから構成されているが、撮像光学系を構成するレンズの枚数は本実施形態には限定されない。
【0019】
図1図2図4図5に示すように、第1レンズL1は、第1レンズL1の外周部の円周上に等間隔に複数配置(本実施形態では6個)されるとともにベース部11に保持された第1レンズ規制部3と径嵌合する。これによって、第1レンズL1の半径方向(レンズの光軸と直交する方向)の位置が規制される。第1レンズ規制部3は、半径方向において、第1片端4で第1レンズL1と径嵌合しており、反対側の第1他端5でベース部11と接している。第1レンズ規制部3は、図4に示すように、略L字形状であり、ベース部11に設けられた切欠き部11aに配置される。第1レンズL1の像面側の面L1R2がレンズ規制部3と接することで、第1レンズL1の光軸OAに沿った方向の位置が規制されている。第1レンズL1の被写体側の面L1R1には円環状の弾性部材である第1Oリング2が配置されている。押え環1が捩じ込まれることにより、第1Oリング2が第1レンズL1の面L1R1に当接し、第1レンズL1は挟持固定される。
【0020】
第1押え環1を締め付けることにより第1レンズL1に力が加わる。第1押え環1と第1レンズL1とで挟まれた第1Oリング2が、締め付けられた力で押しつぶされ変形する。これにより、第1押え環1の押える力が第1レンズL1に均等に伝達される。第1レンズL1に伝達される力によって、第1レンズL1の形状が変形しないよう、第1押え環1の締め付け量が、第1レンズ規制部3によって規制されている。
【0021】
図1図3図4図6に示すように、第2レンズL2は、第2レンズL2の円周上に等間隔に配置され、ベース部11に保持された6個の第2レンズ規制部8と径嵌合する。これにより、第2レンズL2の半径方向の位置が規制される。第2レンズ規制部8は、半径方向において、第2片端9で第2レンズL2と径嵌合しており、反対側の第2他端10でベース部11と接している。第2レンズ規制部8は、図4に示すように、略L字形状であり、ベース部11に設けられた切欠き部11bに配置される。第2レンズL2の像面側の面L2R2がベース部11と接することで、第2レンズL2の光軸OAに沿った方向の位置が規制されている。第2レンズL2の被写体側の面L2R1には円環状の弾性部材である第2Oリング7が配置されており、第2押え環6が捩じ込まれることにより、第2Oリング7が第2レンズL2の面L2R1に当接し、第2レンズL2は挟持固定される。
【0022】
第2押え環6を締め付けることにより第2レンズL2に力が加わる。第2押え環6と第2レンズL2とで挟まれた第2Oリング7が、締め付けられた力で押しつぶされ変形する。これにより、第2押え環6の押える力が第2レンズL2に均等に伝達される。第2レンズL2に伝達される力によって、第2レンズL2の形状が変形しないよう、第2押え環2の締め付け量が、第2レンズ規制部8によって規制されている。
【0023】
ここで、第1レンズL1及び第2レンズL2の材質はシリコンであり、ベース部11の材質はアルミニウムであり、第1レンズ規制部3及び第2レンズ規制部8の材質はポリカーボネートである。シリコンの線膨張係数はアルミニウムよりも小さく、ポリカーボネートの線膨張係数はアルミニウムよりも大きい。
【0024】
環境温度が低温化すると、シリコンから成る第1レンズL1および第2レンズL2は半径方向に収縮し、アルミニウムから成るベース部11は半径方向に収縮する。すなわち、光軸OAに近づく方向に収縮する。一方、ポリカーボネートから成る第1レンズ規制部3及び第2レンズ規制部8は半径方向において、第1片端4及び第2片端9が光軸OAから離れる方向に収縮する。ベース部11は第1レンズL1及び第2レンズL2よりも線膨張係数が大きいので、環境温度が低温化した際の変形量が大きく、第1レンズL1および第2レンズL2を圧縮する力が加わる。しかし、第1レンズ規制部3及び第2レンズ規制部8は第1レンズL1及び第2レンズL2から遠ざかる方向(光軸OAから離れる方向)に収縮するため、第1レンズL1及び第2レンズL2に加わる圧縮する力を低減することができる。第1レンズ規制部3及び第2レンズ規制部8の線膨張係数がベース部11よりも大きいので、ベース部11と第1レンズ規制部3及び第2レンズ規制部8を一体化した構成と比較して、第1レンズL1及び第2レンズL2に加わる圧縮する力を低減することができる。よって、圧縮する力による第1レンズL1及び第2レンズL2の変形を低減し、光学性能の低下を抑制することができる。
【0025】
環境温度が高温化すると、シリコンから成る第1レンズL1および第2レンズL2は半径方向に膨張し、アルミニウムから成るベース部11は半径方向に膨張する。すなわち、光軸OAから離れる方向に収縮する。一方、ポリカーボネートから成る第1レンズ規制部3及び第2レンズ規制部8は、半径方向において、第1片端4及び第2片端9が光軸OAに近づく方向に膨張する。ベース部11は第1レンズL1及び第2レンズL2よりも線膨張係数が大きいので、環境温度が高温化した際の変形量が大きく、第1レンズL1と第1レンズ規制部3の間及び第2レンズL2と第2レンズ規制部8の間に隙間が生じる。第1レンズ規制部3及び第2レンズ規制部8は第1レンズL1及び第2レンズL2に近づく方向(光軸OAに近づく方向)に膨張するため、第1レンズL1と第1レンズ規制部3の間及び第2レンズL2と第2レンズ規制部8の間に生じる隙間を小さくすることができる。第1レンズ規制部3及び第2レンズ規制部8の線膨張係数がベース部11よりも大きいことで、ベース部11と第1レンズ規制部3及び第2レンズ規制部8を一体化した構成と比較して、第1レンズL1と第1レンズ規制部3の間及び第2レンズL2と第2レンズ規制部8の間に生じる隙間を小さくすることができる。よって、隙間が生じたことによって発生する第1レンズL1及び第2レンズL2の偏芯を低減し、光学性能の低下を抑制することができる。
【0026】
本発明の実施形態では、アルミニウムから成るベース部11とポリカーボネートから成る第1レンズ規制部3及び第2レンズ規制部8の組み合わせとしたが、第1レンズ規制部3及び第2レンズ規制部8の材質をガラスフィラーやカーボンフィラー等の強化繊維を含むポリカーボネートとしてもよい。または、第1レンズ規制部3及び第2レンズ規制部8の材質をポリカーボネートよりも線膨張係数が大きいポリアセタールとしてもよい。第1レンズ規制部3及び第2レンズ規制部8の材質の線膨張係数がベース部の材質の線膨張係数よりも大きければよく、材質の組み合わせは本実施形態には限定されない。
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態によるレンズ保持機構について、第1の実施形態とは異なる形態について説明する。本実施形態について、基本的な構成は第1の実施形態と同様であるが、第2の実施形態では、レンズとレンズ規制部が径嵌合しておらず、隙間を持っている点が第1の実施形態とは異なる。
【0027】
図7は、本発明のレンズ保持機構の第2の実施形態に係るレンズ鏡筒の縦断面図である。図8は、図7の第1レンズL1近傍の拡大図である。図9は、図7の第2レンズL2近傍の拡大図である。図10は、第1レンズL1と第1レンズ規制部12の構成を示す正面図である。図11は、第2レンズL2と第2レンズ規制部15の構成を示す正面図である。
【0028】
図7図8図10に示すように、第1レンズL1の円周上にベース部11に保持された6個の第1レンズ規制部12が等間隔に配置されており、第1レンズL1と第1レンズ規制部12の第1片端13との間には隙間が設けられた構成となっている。
【0029】
図7図9図11に示すように、第2レンズL2の円周上にベース部11に保持された6個の第2レンズ規制部15が等間隔に配置されており、第2レンズL2と第2レンズ規制部15の第2片端16との間には隙間が設けられた構成となっている。
【0030】
環境温度が低温化すると、第1レンズL1、第2レンズL2、ベース部11、第1レンズ規制部12、第2レンズ規制部15がそれぞれ収縮する。第1レンズL1と第1レンズ規制部12の第1片端13との間及び第2レンズL2と第2レンズ規制部15の第2片端16との間には隙間が設けられていたため、第1レンズ規制部12による第1レンズL1の圧縮量及び第2レンズ規制部15による第2レンズL2の圧縮量は低減される。よって、第1レンズL1及び第2レンズL2に加わる圧縮する力が低減され、第1レンズL1及び第2レンズL2の変形も低減し、光学性能の低下を抑制することができる。
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態によるレンズ保持機構について、第1および第2の実施形態とは異なる形態について説明する。本実施形態について、基本的な構成は第1および第2の実施形態と同様であるが、第3の実施形態では、第1レンズL1及び第2レンズL2の半径方向の位置を規制する構成及び押え環の締め付け量を規制する構成が第1および第2の実施形態とは異なる。
【0031】
図12は、第1レンズL1の位置を規制している第1レンズ保持部材18の詳細図である。図12に示すように、第1レンズ保持部材18は円環状の形状となっている。第1レンズ保持部材18には円周上に等間隔に配置された複数の第1レンズ規制部19、弾性変形可能な複数の第1弾性部20、及び複数の第1接続部21が設けられている。2つの第1弾性部20が1つの第1レンズ規制部19を挟むように配置されている。第1接続部21は、それぞれが1つの第1レンズ規制部19とそれを挟む2つの第1弾性部20からなる円周上に配置された複数のユニットの間を繋ぐように配置されている。
【0032】
図13は、第2レンズL2の位置を規制している第2レンズ保持部材24の詳細図である。図13に示すように、第2レンズ保持部材24は円環状の形状となっている。第2レンズ保持部材24には円周上に等間隔に配置された複数の第2レンズ規制部25、弾性変形可能な複数の第2弾性部26、及び複数の第2接続部27が設けられている。2つの第2弾性部26が1つの第2レンズ規制部25を挟むように配置されている。第2接続部27は、それぞれが1つの第2レンズ規制部25とそれを挟む2つの第2弾性部26からなる円周上に配置された複数のユニットの間を繋ぐよう配置されている。
【0033】
図14は、本発明のレンズ保持機構の第3の実施形態に係るレンズ鏡筒の縦断面図である。図15は、図14の第1レンズL1近傍の拡大図である。図16は、図14の第2レンズL2近傍の拡大図である。図17は、レンズ鏡筒の構成を示す分解斜視図である。図18は、第1レンズL1と第1レンズ保持部材18の構成を示す正面図である。図19は、第2レンズL2と第2レンズ保持部材24の構成を示す正面図である。
【0034】
図14、15、17、18に示すように、第1レンズL1はベース部30に保持された第1レンズ保持部材18に設けられた第1レンズ規制部19と径嵌合することで、半径方向の位置を規制している。第1レンズL1は、第1レンズL1の像面側の面L1R2が第1レンズ規制部19と接することで、光軸OAに沿った方向の位置が規制されている。
【0035】
第1レンズ保持部材18は、複数の第1接続部21の外周でベース部30と接しており、第1レンズ規制部19の第1片端22で第1レンズL1と径嵌合しており、第1片端22の反対側の第1他端23とベース部30との間には隙間が設けられている。第1レンズL1の被写体側の面L1R1には円環状の弾性部材である第1Oリング2が配置されており、第1押え環1が捩じ込まれることにより第1Oリング2が第1レンズL1の面L1R1に当接し、第1レンズL1は挟持固定される。このとき、第1押え環1の捩じ込み量は、第1接続部21によって規制されている。
【0036】
図14、16、17、19に示すように、第2レンズL2はベース部30に保持された第2レンズ保持部材24に設けられた第2レンズ規制部25と径嵌合することで、半径方向の位置を規制している。第2レンズL2は、第2レンズL2の像面側の面L2R2が第2レンズ規制部25と接することで、光軸OAに沿った方向の位置が規制されている。
【0037】
第2レンズ保持部材24は、複数の第2接続部27の外周でベース部30と接しており、第2片端28で第2レンズL2と径嵌合しており、反対側の第2他端29とベース部30との間には隙間が設けられている。第2レンズL2の被写体側の面L2R1には円環状の弾性部材である第2Oリング7が配置されており、第2押え環6が捩じ込まれることにより第2Oリング7が第2レンズL2の面L2R1に当接し、第2レンズL2は挟持固定される。このとき、第2押え環6の捩じ込み量は、第2接続部27によって規制されている。
【0038】
ここで、第1レンズL1及び第2レンズL2の材質はシリコンであり、ベース部30の材質はアルミニウムであり、第1レンズ保持部材18及び第2レンズ保持部材24の材質はポリカーボネートである。シリコンの線膨張係数はアルミニウムよりも小さく、ポリカーボネートの線膨張係数はアルミニウムよりも大きい。また、第1弾性部20、第2弾性部26の線膨張係数は、ベース部30の線膨張係数よりも大きい。第1接続部21、第1接続部27の線膨張係数は、ベース部30の線膨張係数よりも大きい。
【0039】
環境温度が低温化すると、シリコンからなる第1レンズL1及び第2レンズL2は半径方向に収縮し、アルミニウムから成るベース部30は半径方向に収縮し、ポリカーボネートから成る第1レンズ保持部材18及び第2レンズ保持部材24は半径方向に収縮する。
【0040】
第1レンズ保持部材18の線膨張係数が第1レンズL1より大きいので、環境温度が低温化した際の変形量が大きく、第1レンズL1を圧縮する力が加わる。ここで、第1レンズL1と接している第1規制部19は、第1弾性部20が弾性変形することで、半径方向に移動することができ、変形量の差を吸収することができる。
【0041】
第2レンズ保持部材24の線膨張係数が第2レンズL2より大きいので、環境温度が低温化した際の変形量が大きく、第2レンズL2を圧縮する力が加わる。ここで、第2レンズL2と接している第2規制部25は、第2弾性部26が弾性変形することで、半径方向に移動することができ、変形量の差を吸収することができる。
【0042】
よって、圧縮する力による第1レンズL1及び第2レンズL2の変形を低減し、光学性能の低下を抑制することができる。
【0043】
環境温度が高温化すると、シリコンから成る第1レンズL1及び第2レンズL2は半径方向に膨張し、アルミニウムから成るベース部30は半径方向に膨張し、ポリカーボネートから成る第1レンズ保持部材18及び第2レンズ保持部材24は半径方向に膨張する。
【0044】
図20は、環境温度が高温化した際の第1レンズ保持部材18の変形を示した図である。第1レンズ保持部材18は、ベース部30より線膨張係数が大きいので、環境温度が高温化した際の変形量が大きい。第1レンズ保持部材18は、ベース部30と第1接続部21の外周で接しているため、第1接続部21の半径方向の膨張が規制され、第1接続部21は円周方向に膨張する。第1接続部21が円周方向に膨張することで、第1弾性部20が変形し、第1レンズ規制部19が半径方向で第1レンズL1側に移動する。第1レンズL1は第1レンズ保持部材18及びベース部30より線膨張係数が小さいため、環境温度が高温化した際の変形量が小さい。変形量の差より、第1レンズ保持部材18と第1レンズL1間に隙間が生じるが、第1レンズ規制部19が第1レンズL1方向へ移動することで、変形量の差を吸収し、隙間を小さくすることができる。
【0045】
図21は、環境温度が高温化した際の第2レンズ保持部材24の変形を示した図である。第2レンズ保持部材24は、ベース部30より線膨張係数が大きいので、環境温度が高温化した際の変形量が大きい。第2レンズ保持部材24は、ベース部30と第2接続部27の外周で接しているため、第2接続部27の半径方向の膨張が規制され、第2接続部27は円周方向に膨張する。第2接続部27が円周方向に膨張することで、第2弾性部27が変形し、第2レンズ規制部25が半径方向で第2レンズL2側に移動する。第2レンズL2は、第2レンズ保持部材24及びベース部30より線膨張係数が小さいため、環境温度が高温化した際の変形量が小さい。変形量の差より、第2レンズ保持部材24と第2レンズL2間に隙間が生じるが、第2レンズ規制部25が第2レンズL2方向へ移動することで、変形量の差を吸収し、隙間を小さくすることができる。
【0046】
よって、隙間が生じたことによって発生する第1レンズL1及び第2レンズL2の偏芯を低減し、光学性能の低下を抑制することができる。
【0047】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0048】
L1、L2:レンズ
3、12:第1レンズ規制部
8、15:第2レンズ規制部
11:ベース部
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