(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20240101AFI20240826BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20240826BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20240826BHJP
A61B 8/14 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
A61B6/00 550A
A61B6/03 560D
A61B5/055 380
A61B8/14
(21)【出願番号】P 2020020150
(22)【出願日】2020-02-07
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 義夫
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0350381(US,A1)
【文献】特開2016-168293(JP,A)
【文献】特開2017-189245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58
A61B 5/055
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像に対して複数の関心領域を設定する画像処理装置であって、
画像を取得する画像取得部と、
前記複数の関心領域を設定するための複数の図形のそれぞれの表示形態と、該図形間の関係情報とを設定する図形の情報設定部と、
前記関係情報に基づいて前記表示形態の変更が可能な前記複数の図形を関心領域として前記画像上に重畳表示する表示制御部と、
前記関係情報に基づいて、前記複数の図形のうち、第1図形に対するユーザ指示に伴って、該第1の図形の表示形態と、第n図形(nは2以上の自然数)の表示形態と、を変更する変更部と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記関係情報は、前記複数の図形のうち、第1図形に対する第n図形(nは2以上の自然数)の関係を示す情報であることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記関係情報は、ユーザによって変更可能であることを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記関係情報に基づいた前記表示形態の変更は、前記第1の図形の表示形態の変更に伴って、前記複数の図形のうち少なくとも一つの図形の表示形態が変更されることであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記表示形態は、各図形の形状、境界線の色、線種、線幅の内の少なくとも1つを含む情報であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記関係情報として、前記第1図形に対する前記第n図形の幾何学的な配置関係を設定することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記幾何学的な配置関係は、前記第1図形に対する前記第n図形のサイズの比率、前記第1図形に対する前記第n図形の描画方向、の内の少なくともいずれか1つを含む情報であることを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記複数の図形のそれぞれが異なる関心領域を設定するための図形であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記画像は、医用画像であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記関心領域は、所定の計測処理および画像解析処理のうち、少なくとも一方の処理を行うための領域情報であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記変更
部は、前記関係情報に基づいて、前記第1の図形の表示形態の変更および前記第n図形(nは2以上の自然数)の表示形態の変更を行った後、
さらに夫々の表示形態を変更可能であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項12】
画像に対して複数の関心領域を設定する画像処理方法であって、
画像を取得する画像取得ステップと、
前記複数の関心領域を設定するための複数の図形のそれぞれの表示形態と、該図形間の関係情報とを設定する複数の図形の情報設定ステップと、
前記関係情報に基づいて前記表示形態の変更が可能な前記複数の図形を関心領域として前記画像上に重畳表示する表示制御ステップと、
前記関係情報に基づいて、前記複数の図形のうち、第1図形に対するユーザ指示に伴って、該第1の図形の表示形態と、第n図形(nは2以上の自然数)の表示形態と、を変更する変更ステップと、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項13】
請求項12に記載の画像処理方法をコンピュータで実行するためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の関心領域(ROI)を効率よく設定するための画像処理装置、画像処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、医師は、CT装置やMRI装置などの種々の医用画像撮像装置(モダリティ)によって撮像された医用画像を観察して画像診断を行う。医師が画像診断を行う際には、医用画像に複数の関心領域(以下、ROI)を設定し、画像処理装置を用いてROIに関する計測や画像解析を行うことがある。例えば、MRI装置または超音波装置によって患者の頸動脈などの血管を撮影した画像に対して、医師は血管の外壁を囲むROI、血管の内腔を囲むROI、及び血管に付着したプラーク部分を囲むROIを設定する。設定されたROIの長径や短径を画像処理装置等により計測し計測結果を医師が比較することでプラークの状態を判断することができる。一方で複数のROIを一つずつユーザである医師が設定することは非常に手間のかかる作業であるため、ユーザによるROIの設定作業を補助する技術として、例えば特許文献1に開示の発明がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の技術では、ROIを設定した画像の撮像条件を記憶しておき、撮像条件が同じ画像を解析する場合にROIの設定を省くことができる。一方で、撮像条件や、対象とするROIが異なる場合にはユーザが一つずつROIの設定を行う必要がある。
【0005】
本発明は、ユーザによるROIの設定の負担を軽減しながら、複数のROIを設定可能な画像処理装置、画像処理方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る画像処理装置は、画像に対して複数の関心領域を設定する画像処理装置であって、画像を取得する画像取得部と、複数の関心領域を設定するための複数の図形のそれぞれの表示形態と、該図形間の関係情報とを設定する図形の情報設定部と、関係情報に基づいて表示形態の変更が可能な複数の図形を関心領域として画像上に重畳表示する表示制御部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ユーザによるROIの設定の負担を軽減しながら、複数のROIを設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】第1の実施形態における全体の処理手順を示すフローチャート
【
図3】第1の実施形態におけるステップS103の処理手順を示すフローチャート
【
図4】第1の実施形態におけるステップS104の処理手順を示すフローチャート
【
図5】第1の実施形態におけるステップS105の処理手順を示すフローチャート
【
図6】第1の実施形態に係る複数の図形の情報設定ダイアログボックスの第1の表示例
【
図7】第1の実施形態に係る複数の図形の情報設定ダイアログボックスの第2の表示例
【
図8】第1の実施形態に係る複数の図形の情報設定ダイアログボックスの第3の表示例
【
図9】第1の実施形態に係るROIに対応する図形(長方形)とその制御点を示す第1の例
【
図10】第1の実施形態に係るROIに対応する図形(楕円形)とその制御点を示す第2の例
【
図11】第1の実施形態に係るROIに対応する図形(六角形)とその制御点を示す第3の例
【
図12】第1の実施形態に係る複数の図形の描画開始位置と制御点移動位置に関する説明図
【
図13】第1の実施形態に係る第1の図形(楕円形)の変形方法を示す第1の例
【
図14】第1の実施形態に係る第1の図形(楕円形)の変形方法を示す第2の例
【
図15】第1の実施形態に係る画像処理装置10の表示制御部によって表示部に表示される画面の第1の表示例
【
図16】第1の実施形態に係る画像処理装置10の表示制御部によって表示部に表示される画面の第2の表示例
【
図17】第1の実施形態に係る画像処理装置10の表示制御部によって表示部に表示される画面の第3の表示例
【
図18】第1の実施形態に係る画像処理装置10の表示制御部によって表示部に表示される画面の第4の表示例
【
図19】第1の実施形態に係る画像処理装置10の表示制御部によって表示部に表示される画面の第5の表示例
【
図20】第1の実施形態に係る画像処理装置10の表示制御部によって表示部に表示される画面の第6の表示例
【
図21】変形例1に係る情報設定ダイアログボックスの表示例
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を参照しながら、本発明に係る画像処理装置の実施形態について説明する。ただし、以下で示す実施例や図面は一例であって発明の範囲は以下に限定されるものではない。
【0010】
[第1の実施形態]
第1の実施形態に係る画像処理装置10は、医用画像上の複数のROIを設定するための画像処理装置である。本発明に係る画像処理装置10は、複数のROIのそれぞれに対応する複数の図形の表示形態と、該図形間の関係情報を設定する。そして設定された関係情報に基づいて図形の表示形態を変更可能に関心領域として画像上に重畳表示(以下、描画)することでユーザの手間を軽減しながらも複数のROIの設定を可能とする装置である。
【0011】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る画像処理装置10の構成図である。
【0012】
画像処理装置10は、その機能的な構成として、通信IF(Interface)21、ROM(Read Only Memory)22、RAM(Random Access Memory)23、記憶部24、及び制御部27を備える。また画像処理装置10は、ユーザからの操作を受け付ける操作部25、画像処理装置10の処理結果を表示させる表示部26と接続されている。尚、操作部25や表示部26は画像処理装置10と一体になって構成されていてもよい。
【0013】
通信IF21は、LANカード等で実現され、外部装置40(例えば、データベース)と画像処理装置10との間の通信を司る。ただし、外部装置40と画像処理装置10との間で通信を行う必要がない場合は、画像処理装置10の構成として通信IF21は必須ではない。ROM22は、不揮発性のメモリ等で実現され、各種プログラム等を記憶する。RAM23は、揮発性のメモリ等で実現され、各種情報を一時的に記憶する。記憶部24は、HDD(Hard Disk Drive)等で実現され、各種情報を記憶する。操作部25は、キーボードやマウス等で実現され、ユーザからの指示を画像処理装置10に入力する。表示部26は、ディスプレイ等で実現され、各種情報をユーザに表示する。制御部27は、CPU(Central Processing Unit)等で実現され、画像処理装置10における処理を統括制御する。
【0014】
制御部27は機能的な構成として、画像を取得する画像取得部31、画像を表示する条件を設定する画像表示条件設定部32、表示部26に対して表示の制御を行う表示制御部33、複数の図形のそれぞれに対して図形の情報を設定する図形の情報設定部34、及び表示形態変更部35を備える。詳細については後述するが、本発明の課題を解決するための構成として画像処理装置10は、画像を取得する画像取得部31と、複数の関心領域を設定するための複数の図形のそれぞれの表示形態と、該図形間の関係情報とを設定する図形の情報設定部34とを有する。さらに画像処理装置10は、設定された関係情報に基づいて表示形態の変更が可能な複数の図形を関心領域として画像上に重畳表示する表示制御部33を有する。制御部27を構成する各部の機能については、
図2乃至5のフローチャートと併せて説明する。
【0015】
図2は、画像処理装置10の制御部27によって制御される、本発明の第1の実施形態における全体の処理手順を示すフローチャートである。
【0016】
ステップS101において、制御部27は、操作部25を介して入力されたユーザ指示を取得する。
【0017】
ステップS102において、制御部27は、操作部25から取得したユーザ指示に応じて次に実行する処理を決定する。操作部25を介して入力されたユーザ指示が、画像表示に関する指示の場合はステップS103へ進み、複数の図形の情報設定指示の場合はステップS104へ進み、複数の図形の描画に関する指示の場合はステップS105へ進む。ユーザ指示が終了指示の場合は、制御部27によって本実施形態に係るフローチャートの処理を終了する。
【0018】
なお、制御部27が行う制御に係わるユーザ指示には、既存技術による1つの図形の描画指示や図形の保存指示など他にも多くの種類が存在するが、本発明を簡潔に説明するために、他のユーザ指示については適宜説明を省略するものとする。
【0019】
ステップS103において、制御部27は、
図3を用いて後述する画像表示に関する処理の後に、ステップS101に戻る。
【0020】
ステップS104において、制御部27は、
図4を用いて後述する複数の図形の情報設定の後に、ステップS101に戻る。
【0021】
ステップS105において、制御部27は、
図5を用いて後述する複数の図形の描画に関する処理の後に、ステップS101に戻る。
【0022】
まず
図3を用いて、画像処理装置10の制御部27によって制御される、本発明の第1の実施形態におけるステップS103(画像表示に関する処理)の詳細な処理手順をフローチャートに沿って説明する。
【0023】
ステップS201において、制御部27は、ステップS101で入力したユーザ指示が、画像の読み出し指示か、画像の表示条件変更指示かの判定を行う。画像の読み出し指示の場合はステップS202へ進み、画像の表示条件変更指示の場合はステップS204へ進む。ここでは、制御部27が判定するユーザ指示はステップS101と同様の指示として説明をするが、画像表示に関する処理の指示を受け付けた後に、さらに上述の指示を受け付ける構成であってもよい。
【0024】
ステップS202において、画像取得部31は、読み出すべき画像を識別する情報(以下、画像の識別情報)を取得する。ここで、画像の読み出し指示に画像の識別情報が含まれている場合は、画像取得部31は、画像の読み出し指示から画像の識別情報を取り出す。一方、画像の読み出し指示に画像の識別情報が含まれていない場合は、画像取得部31は、操作部25から画像の識別情報を取得する。次に、画像取得部31は、画像の識別情報に基づいて、記憶部24から画像データを読み出し、RAM23に記憶する。
【0025】
ここでもし、画像の識別情報が外部装置20に記憶された画像を指し示している場合は、画像取得部31は、通信IF21と通信網とを介して外部装置20から画像を読み出し、RAM23に記憶する。この際、読み出した画像を画像の識別情報と共に記憶部24に記憶しておき、次回同じ画像の読み出し指示が入力された場合に、記憶部24に記憶しておいた画像を読み出してもよい。
【0026】
ステップS203において、画像表示条件設定部32は、RAM23に記憶した画像の表示条件(断面位置、拡大率、平行移動量、回転量など)を初期化し、RAM23に記憶する。この際、画像表示条件設定部32は、画像の表示条件の一部(例えば、表示サイズ、画像が複数の断層画像から成る場合は表示すべき断層位置、等)については、予め決めた初期値を設定する。また、画像表示条件設定部32は、画像の表示条件の他の部分(例えば、画像の濃度変換条件、等)については、画像の属性等に基づいて設定する。画像取得部31によって取得される画像がDICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)規格に準拠した画像(以下、DICOM画像)の場合は、画像の属性情報は画像データの一部として記憶されている。つまり、DICOM画像の属性情報として記憶されているWL(Window Level)値とWW(Window Width)値が画像の濃度変換条件となる。DICOM規格文書には、前記WL値とWW値及び画像の各画素値を用いた濃度変換式が記載されている。
【0027】
ステップS204において、表示制御部33は、ステップS203で設定した画像の表示条件に基づいて、RAM23に記憶した画像から表示部26に表示する画像(以下、表示画像)を作成する。画像が複数の断層画像から成る場合は、表示制御部33は、表示すべき断層位置にある断層画像を取り出し、取り出した断層画像の各画素値の濃度を変換することにより表示画像を作成する。画像がDICOM画像の場合は、表示制御部33は、前記WL値とWW値及び画像の各画素値をDICOM規格文書に記載された濃度変換式に代入して解を計算することにより、表示画像の各画素値を得る。そして、表示制御部33は、表示画像を表示部26に表示すると、ステップS103の処理を終了する。
【0028】
ステップS205において、画像表示条件設定部32は、変更すべき画像の表示条件を取得する。ここで、前記画像の表示条件変更指示に変更すべき画像の表示条件が含まれている場合は、画像表示条件設定部32は、前記画像の表示条件変更指示から変更すべき画像の表示条件を取り出す。一方、画像の表示条件変更指示に変更すべき画像の表示条件が含まれていない場合は、画像表示条件設定部32は、操作部25から変更すべき画像の表示条件を取得する。次に、画像表示条件設定部32は、変更すべき画像の表示条件を、ステップS203でRAM23に記憶した画像の表示条件に上書きすることで、RAM23に記憶した画像の表示条件を変更する。
【0029】
ステップS204において、表示制御部33は、ステップS205で設定した画像の表示条件に基づいて、RAM23に記憶した画像から表示画像を作成または更新し、表示部26に表示させる。その後に、ステップS103の処理を終了する。
【0030】
図4は、画像処理装置10の制御部27によって制御される、本発明の第1の実施形態におけるステップS104(複数の図形の情報設定処理)の詳細な処理手順を示すフローチャートである。ここで設定する複数の図形のそれぞれは異なる関心領域のそれぞれを設定するための図形である。関心領域を設定するために例えば初期の関心領域とする輪郭や図形が表示されてもよい。
【0031】
ステップS301において、図形の情報設定部34は、予め定義され記憶部24に記憶されている複数の図形の情報設定ダイアログボックスの表示項目及び表示レイアウトに関する情報を読み出し、RAM23に記憶する。また、図形の情報設定部34は、読み出した情報に基づいて複数の図形の情報設定ダイアログボックスを作成し、表示制御部33を介して表示部26に表示させる。
【0032】
表示制御部33によって表示部26に表示させる複数の図形の情報設定ダイアログボックスの具体的な表示例を、後述の
図6乃至8に示す。図形の情報設定部34は、複数の図形の情報設定ダイアログボックスの表示項目及び表示レイアウトに関する情報をRAM23に記憶した後は、RAM23に記憶した情報を読み書きする。
【0033】
ステップS302において、図形の情報設定部34は、操作部25から入力されたユーザ指示に応じて、複数の図形の情報設定ダイアログボックスの各表示項目の値を変更する。また、情報設定部34は、操作部25から入力されたユーザ指示に応じて、変更後の表示項目の値をRAM23に記憶する(RAM23に記憶している表示項目の値を更新する)。なお、
図6乃至8の説明で後述するように、ユーザ指示によっては、変更後の表示項目の値をRAM23に記憶しない(以前からRAM23に記憶している値を更新しない)こともある。
【0034】
ステップS303において、図形の情報設定部34は、操作部25から入力したユーザ指示に応じて、複数の図形の情報設定ダイアログボックスを閉じる。その後、ステップS104の処理を終了する。
【0035】
図5は、画像処理装置10の制御部27によって制御される、本発明の第1の実施形態におけるステップS105(複数の図形の描画に関する処理)の詳細な処理手順を示すフローチャートである。
【0036】
ステップS401において、制御部27は、ステップS101で入力したユーザ指示が、描画モードの設定指示、描画開始指示、表示形態の変更指示のいずれであるかの判定を行う。描画モードの設定指示の場合はステップS402へ進み、描画開始指示の場合はステップS403へ進み、図形の表示形態の変更指示の場合はステップS405へ進む。
【0037】
ステップS402において、表示形態変更部35は、描画モードを取得し、取得した描画モードをRAM23に記憶する。ここで、描画モードの設定指示に描画モードが含まれている場合は、表示形態変更部35は、描画モードの設定指示から描画モードを取り出す。一方、描画モードの設定指示に描画モードが含まれていない場合は、表示形態変更部35は、操作部25から描画モードを入力する。ステップS402の処理を終えた後、表示形態変更部35は、ステップS105の処理を終了する。なお、描画モードは、描画不可または描画すべき図形の個数及び種類を指定する情報である。描画モードの具体例を表1に示す。
【0038】
【0039】
表1において、描画モード0は描画不可の状態を示す。ユーザから描画モードの設定指示が1度も入力されていない場合(初期状態)は、描画不可の状態である。また、後述の手順で図形を描画中(表示形態の変更中)に、ユーザから描画モード0の設定指示が入力された場合は、図形の描画を終了する。表1において、描画モード1、2、3、・・・は、既存の技術に係る1つの図形を描画可能な状態を示しており、描画モード11、12、13は、本発明に係る複数の図形を描画するモードを示している。本発明に係る描画モードは、
図4で説明した手順により、後述の
図6乃至8で例示する図形の情報設定部34によって設定された複数の図形の情報設定ダイアログボックス等を用いて定義され、RAM23に記憶される。表1には、本発明に係る3つの描画モード11、12、13が定義された例が示されているが、描画モードに割り当てる数字及び個数は表1の例に限定されない。また、
図6乃至8に例示したダイアログボックスとは異なる表示レイアウトのダイアログボックスやその他のウィンドウを用いて描画モードの定義をユーザから入力してもよいし、予め決めておいた定義を用いてもよい。既存の技術に係る描画モード1、2、3、・・・が設定された場合は、既存の技術によって図形の描画を行う。
【0040】
以下では、既存の技術による図形の描画方法の説明は適宜省略し、本発明に係る複数の図形の描画方法のみ説明する。また以下では、ユーザが操作部25のマウスを用いて、複数の図形の描画に関する指示を入力する場合の実施例を説明する。ただし、本発明はマウスを用いたユーザ指示に限定されるものではなく、キーボードなどの他の操作部25を用いたユーザ指示に基づいて実施してもよい。
【0041】
ステップS403において、表示形態変更部35は、ステップS402で設定された描画モードが本発明に係る複数の図形の描画モードに該当するか否かを判定する。判定結果がYesの場合はステップS404へ進み、Noの場合はステップS105の処理を終了する。
【0042】
ステップS404において、表示形態変更部35は、描画開始位置を取得し、RAM23に記憶する。この際、ユーザは操作部25のマウスを操作し、表示制御部33によって表示部26に表示された画像上でマウスカーソルを移動して、画像上の任意の位置でマウスカーソルを停止させてからマウスのボタンを押下することで、描画開始位置を指示する。マウスのボタンが2つある場合は、ユーザはマウスの左ボタンを押下することで、描画開始位置を指示する。前述の通り、表示形態変更部35は、設定された描画モードが本発明に係る描画モードの場合に、マウスボタンが押下された画像上の位置を取得し、描画開始位置としてRAM23に記憶する。更に、後述のステップに関する操作として、ユーザはマウスボタンを押下したままマウスカーソルを画像上で移動する(ドラッグする)ことにより、図形の表示形態の変更指示を行い、マウスボタンを離すことで図形の情報設定部34によって設定された描画モード0の設定指示(図形描画の終了指示)を行う。
【0043】
ステップS405において、表示形態変更部35は、設定された描画モードに対応する複数の図形の夫々の表示形態を予め定義された値で初期化し、RAM23に記憶する。ここで、各図形の表示形態には、図形の形状、画像上の描画位置、サイズ、縦横比、回転角や、図形の境界線の線種、色、太さなどの情報が含まれる。ステップS405の処理を終えた後、表示形態変更部35は、ステップS105の処理を終了する。
【0044】
ステップS406において、表示形態変更部35は、設定された描画モードが本発明に係る描画モードであり、かつ複数の図形の夫々の設定情報がRAM23に記憶されているかを判定する。判定結果がYesの場合はステップS407へ進み、Noの場合はステップS105の処理を終了する。
【0045】
ステップS407において、表示形態変更部35は、制御点移動位置を取得し、RAM23に記憶する。ユーザがマウスをドラッグすることにより図形の表示形態の変更指示を入力する場合、表示部26に表示された画像上での(ドラッグ後の)マウスカーソル位置が制御点移動位置となる。
【0046】
ステップS408において、表示形態変更部35は、図形の情報設定部34によって設定された描画モードに対応する第1の図形において、描画開始位置に配置する制御点と、制御点移動位置に配置する制御点を決定する。この決定方法については、後述の
図6乃至14を用いて具体的に説明する。
【0047】
ステップS409において、表示形態変更部35は、ステップS302で図形の情報設定部34によって設定されRAM23に記憶された複数の図形の情報を読み出す。そして、ステップS408で決定された第1の図形の各制御点の配置(図形のサイズや縦横比の情報も含まれる)と、RAM23から読み出した複数の図形の情報とに基づいて、第1図形以外の各図形の各制御点の配置を変更する。これらの配置の変更法についても、後述の
図6乃至14を用いて具体的に説明する。
【0048】
ステップS410において、表示制御部33は、表示形態変更部35がステップS408及びS409で表示形態を変更した複数の図形を描画し、表示部26に表示されている画像上に重畳表示する。この際、表示制御部33は、前回描画した複数の図形があればそれらを削除してから、新たな(表示形態変更後の)複数の図形を表示部26に再描画する。その後、ステップS105の処理を終了する。即ち、画像処理装置10は、ユーザ指示に基づいて複数の図形の表示形態の変更をする表示形態変更部35を有する。
【0049】
図6は、本発明の第1の実施形態に係る複数の図形の情報設定ダイアログボックスの第1の表示例である。
【0050】
複数の図形の情報設定ダイアログボックスには、以下の表示項目があり、いずれもユーザが操作部25を介して、各表示項目の値を直接入力または予め決められた選択肢を選択することができる。以下に説明する通り、「描画モード」、「図形の個数」、「描画開始位置に配置する制御点」、及び「第1図形の情報設定」に関する表示項目は常に表示されるが、他の表示項目は常に表示される表示項目の入力値に応じて表示または非表示が切り替えられる。
【0051】
「描画モード」は、前述のステップS402と表1を用いて説明した通り、描画可能な図形を指定する情報である。既存技術に係る1つの図形の描画モード(1:1つの直線、2:1つの長方形、3:1つの楕円形、・・・)は、予め定義しておく。本発明に係る複数の図形の描画モード(11:複数の図形1、など)は、
図6乃至8に例示した方法によって定義される。すなわち、図形の情報設定部34が、複数の図形の情報設定ダイアログボックスに入力された描画モードの値とその他の表示項目の値とをまとめて(関連付けて)RAM23に記憶することによって定義される。この際、複数の図形の描画モードの値には、予め定義されていない値だけを割り当て可能である。
【0052】
「図形の個数」は、本発明に係る技術を用いて描画する図形の個数であり、値n(nは2以上の自然数)を入力できる。原理上は図形の個数の上限を設ける必要はないが、実用上は図形の個数の上限を設けても構わない。「図形の個数」に値nが入力されると、図形の情報設定部34は、後述の第2から第nまでの図形の情報設定のための表示項目を表示する。
図6の例ではn=3なので、表示制御部33により第2図形の情報設定と第3図形の情報設定に関する表示項目が表示される。
【0053】
「描画開始位置に配置する制御点」に入力可能な選択肢は予め決められており、例えば「中心点」または「端点」のいずれか一方を選択できる。中心点と端点の意味については、後ほど
図9乃至11を用いて詳しく説明する。
【0054】
第1図形の情報設定の項目に関しては、画像上に重畳表示する際の図形の属性を示す表示形態が設定可能であり、ここでは表示形態のひとつである「形状」が表示される。表示形態である「形状」に入力可能な選択肢は予め決められており、例えば「長方形」、「楕円形」、「六角形」などのROIに対応付け可能な予め決められた図形だけを選択できる。
【0055】
第n図形の情報設定に関しては、表示形態の他に、第1図形との関係を示す関係情報に関する項目が表示される。例えば「描画開始位置に配置する制御点」に「中心点」が選択された場合は、表示形態の項目として「形状」及び関係情報の項目として「第1図形に対するサイズの比率」が表示される。ここで、関係情報は、複数の図形のうち、第1図形と第n図形(nは2以上の自然数)の関係を示す情報であることを特徴とする。第n図形については、関係情報の項目に入力された関係情報に基づいて、表示形態変更部35によって表示形態が変更される。
【0056】
後述の
図7または8で例示する通り、「描画開始位置に配置する制御点」に「端点」が選択された場合は、第n図形の関係情報の項目として「第1図形に対する描画方向」が表示される。関係情報の項目として示した「第1図形に対するサイズの比率」と「第1図形に対する描画方向」はいずれも、第1図形に対する第n図形の幾何学的な配置関係を設定する項目である。
【0057】
第n図形の表示形態の項目である「形状」は、第1図形の表示形態の項目である「形状」と同様であり、入力可能な選択肢が予め決められている。
【0058】
第n図形の関係情報の項目である「第1図形に対するサイズの比率」には、小数を入力できる。入力可能な小数は、原理上は0を超える値であればよく、下限値と上限値を設ける必要はないが、実用上は下限値(例えば、0.1)と上限値(例えば、4.0)を設けても構わない。関係情報の項目である「第1図形に対するサイズの比率」に入力された値は、第1図形のサイズに対する第n図形のサイズを定義する値である。ここで、第1図形のサイズとは、ステップS408で決定された第1図形の描画開始位置に配置する制御点(A)と制御点移動位置に配置する制御点(B)との間の距離を意味する。そして、第n図形のサイズとは、第1図形の制御点Aに対応する第n図形の制御点(A’)と第1図形の制御点Bに対応する第n図形の制御点(B’)との間の距離を意味する。第1図形に対する第n図形のサイズ及び配置の変更方法については、後述の
図15乃至20を用いて具体的に説明する。
【0059】
図7は、本発明の第1の実施形態に係る複数の図形の情報設定ダイアログボックスの第2の表示例である。以下に、
図6には表示されなかった表示項目について説明する。
図6に表示された表示項目の説明は省略する。
【0060】
第n図形の情報設定に関して、「描画開始位置に配置する制御点」に「端点」が選択された場合は、表示形態の項目として「形状」、関係情報の項目として「第1図形に対するサイズの比率」及び「第1図形に対する描画方向」が表示される。
【0061】
第n図形の関係情報の項目である「第1図形に対する描画方向」に入力可能な選択肢は予め決められており、例えば「同方向」または「逆方向」のいずれか一方を選択できる。同方向と逆方向の意味については、後ほど
図15乃至20を用いて詳しく説明する。なお、この他にも「90°方向」「―45°方向」などの他の方向を選択肢に含めることも可能だが、説明を簡略にするため、同方向と逆方向以外の選択肢については説明を省略する。
【0062】
図8は、本発明の第1の実施形態に係る複数の図形の情報設定ダイアログボックスの第3の表示例である。すべての表示項目は、
図7に表示された表示項目と同様なので、各表示項目の説明は省略する。ただし、
図8では、図形の個数に値として2が入力されているので、第n図形の表示形態として、第2図形の情報設定の項目だけが表示されている(第3図形の情報設定の項目は表示されていない)点が異なる。
【0063】
図9は、本発明の第1の実施形態に係るROIに対応する図形(長方形)とその制御点を示す第1の例である。
【0064】
ユーザによりROIに対応する図形として、複数の図形の情報設定ダイアログボックスの第1または第n図形の表示形態の項目である「形状」に「長方形」が選択された場合、表示形態変更部35によって図形(長方形)の制御点は9点設定される。即ち、表示形態変更部35により長方形の中心に中心点が設定され、長方形の境界線上の8点に端点1~8が設定される。
【0065】
図10は、本発明の第1の実施形態に係るROIに対応する図形(楕円形)とその制御点を示す第2の例である。
【0066】
ユーザによりROIに対応する図形として、複数の図形の情報設定ダイアログボックスの第1または第n図形の表示形態の項目である「形状」に「楕円形」が選択された場合、表示形態変更部35によって図形(楕円形)の制御点は9点設定される。即ち、表示形態変更部35により楕円形の中心に中心点が設定され、楕円形の境界線上の8点に端点1~8が設定される。
【0067】
図11は、本発明の第1の実施形態に係るROIに対応する図形(六角形)とその制御点を示す第3の例である。
【0068】
ユーザによりROIに対応する図形として、複数の図形の関係設定ダイアログボックスの第1または第n図形の「形状」に「六角形」が選択された場合、表示形態変更部35によって図形(六角形)の制御点は9点設定される。即ち、表示形態変更部35により六角形の中心に中心点が設定され、六角形の境界線上の8点に端点1~8が設定される。なお、六角形の場合は、端点1と5を省略して6点の端点としてもよい。第1または第n図形の表示形態の項目である「形状」として、その他の多角形や、予め複数の頂点の配置を定義した任意の閉曲線から成る形状を設定することも可能だが、こうした他の図形については説明を省略する。
【0069】
以下、
図12乃至14を用いて、表示形態変更部35が、ステップS408で実施する処理の具体例を説明する。
【0070】
図12は、本発明の第1の実施形態に係る複数の図形の描画開始位置と制御点移動位置に関する説明図である。
【0071】
表示形態変更部35は、以下の手順で座標変換を行う。まず、ステップS407でRAM23に記憶した画像(X,Y座標)上の制御点移動位置(x1,x1)から、ステップS404でRAM23に記憶した画像上の描画開始位置(x0,y0)を減算する。これにより、表示形態変更部35は描画開始位置を原点とする2次元直交座標(X’,Y’座標)上の制御点移動位置(x’1,x’1)を得る。次に、2次元直交座標(X’,Y’座標)を2次元極座標(半径R,角度A座標)に変換することにより、表示形態変更部35は描画開始位置を原点とする2次元極座標上の制御点移動位置(r1,α1)を得る。
【0072】
次に、表示形態変更部35は、ステップS302でRAM23に記憶した「描画開始位置に配置する制御点」の値と第1の図形の表示形態の「形状」の値とに基づいて、ステップS408の処理を実施する。「描画開始位置に配置する制御点」の値が「中心点」か「端点」かによって具体的な処理方法が異なるため、
図13と
図14を用いて、夫々の処理方法を説明する。
【0073】
図13は、本発明の第1の実施形態に係る第1図形(楕円形)の表示形態の変更方法を示す第1の例であり、上述の「描画開始位置に配置する制御点」の値が「中心点」である場合のステップS408の処理方法を説明する図である。
【0074】
表示形態変更部35は、第1図形(楕円形)の中心点を描画開始位置に配置する。表示形態変更部35は、制御点移動位置の角度α
1の値を表2に示した値との比較に応じて、端点1~8のいずれかを制御点移動位置に配置する。
図13の例では、第一図形(楕円形)の端点2を制御点移動位置に配置している。
【0075】
表示形態変更部35は、第1図形の中心点の配置と、端点1~8のいずれか1つの端点の配置とを決定することにより、第1図形全体の配置(位置、サイズ、縦横比率)を決定できる。
【0076】
【0077】
図14は、本発明の第1の実施形態に係る第1図形(楕円形)の表示形態の変更方法を示す第2の例であり、上述の「描画開始位置に配置する制御点」の値が「端点」である場合のステップS408の処理方法を説明する図である。
【0078】
表示形態変更部35は、制御点移動位置の角度α
1の値と表3に示した値との比較に応じて、端点1~8のいずれかを描画開始位置に配置する。また、表示形態変更部35は、制御点移動位置の角度α
1の値と表2に示した値との比較に応じて、端点1~8のいずれかを制御点移動位置に配置する。
図14の例では、第一図形(楕円形)の端点6を描画開始位置に配置し、端点2を制御点移動位置に配置している。
【0079】
表示形態変更部35は、第1図形の1つ目の端点の配置と、1つ目の端点の反対側に位置する2つ目の端点の配置とを決定することにより、第1図形全体の配置(位置、サイズ、縦横比率)を決定できる。
【0080】
【0081】
以下、
図15乃至20を用いて、表示形態変更部35が、ステップS409で実施する処理の具体例を説明する。
【0082】
図15は、本発明の第1の実施形態に係る画像処理装置10の表示制御部33を介して表示部26に表示される画面の第1の表示例である。
【0083】
この表示例は、CT装置によって胸部(肺野)を撮影した3次元画像を画像取得部31が取得し、表示制御部33が断層画像の一部を拡大表示したものである。表示部26に表示されている画面には、画像とマウスカーソルが表示されており、画像には、肺野領域(背景の暗い部分)と、すりガラス状陰影(GGO)部と充実部を有する肺結節領域が写っている。
図15に表示されたマウスカーソルの位置で、ユーザがマウスボタンを押下することにより、図形の描画開始位置を指示したものとする。
【0084】
図16は、本発明の第1の実施形態に係る画像処理装置10の表示制御部33によって表示部26に表示される画面の第2の表示例である。
【0085】
図16には
図15と同じ医用画像が表示されており、
図6に示した「描画モード11」が図形の情報設定部34によって設定されている場合に、ユーザがマウスドラッグを行うことにより、図形の表示形態の変更指示を行った際の画面の表示例を示したものである。
【0086】
ユーザが図形の表示形態の変更指示を行うと、表示形態変更部35が、上述のステップS407及びS408の処理を行うことにより、図形の情報設定部34によって「描画モード11」として設定された第1図形の表示形態に基づいて表示制御部33によって「長方形」が描画され画像上に重畳表示される。更に、表示形態変更部35が、
図6に示した第n図形の表示形態及び関係情報に基づき上述のステップS409の処理を行うことにより、表示制御部33によって第n図形が描画され第1図形と共に画像上に重畳表示される。具体的には、
図6に示した図形の情報設定部34によって設定された「描画モード11」では「図形の個数」は「3」個なので、画面には3つの図形が描画される。また、「描画開始位置に配置する制御点」は「中心点」なので、画面に描画される3つの図形の中心点がすべて描画開始位置に配置される。即ち、表示制御部33によって関係情報とユーザ指示に基づいて表示形態の変更が可能な複数の図形が画像上に重畳表示されている状態である。更に、表示形態変更部35が操作部25から受けつけるユーザの指示によってマウスカーソルは角度約315°方向にドラッグされたので、第1図形の端点8がマウスカーソル位置(制御点移動位置)に配置される(表2参照)。また更に、第2図形の表示形態である「形状」は「楕円形」、関係情報である「第1図形に対するサイズの比率」は「0.6」倍なので、第2図形の端点8を後述の方法で配置することにより、第2図形の位置、サイズ及び縦横比率が決定される。また同様に、第3図形の表示形態である「形状」は「楕円形」、関係情報に項目である「第1図形に対するサイズの比率」は「0.2」倍なので、第2図形と同様の方法で第3図形の端点8を配置することにより、第3図形の位置、サイズ及び縦横比率が決定される。
図12で説明した描画開始位置を原点とする2次元極座標において、第1図形の端点T(T=1~8)の座標を(r
1,α
1)、第n図形(n≧2)の端点Tの座標を(r
2,α
2)とする。また、第1図形に対する第n図形のサイズの比率をm倍(mは0より大きい小数)とする。この時、式(1)、(2)が成り立つ位置に第n図形の端点Tを配置する。
r
2=r
1*m ・・・(式1)
α
2=α
1 ・・・(式2)
【0087】
図16(及び
図6)の例では、第2図形では(式1)、(式2)にm=0.6を代入して求まる位置に第2図形(楕円形)の端点8を配置する。また、第3図形では(式1)、(式2)にm=0.2を代入して求まる位置に第3図形(楕円形)の端点8を配置する。表示形態変更部35が、ステップS407乃至S409で以上の処理を行うことにより、
図16に示した3つの図形が描画される。即ち画像処理装置10における関係情報に基づいた表示形態の変更は、第1図形の表示形態の変更に伴って、複数の図形のうちすくなくとも一つの表示形態が変更される。
【0088】
以上説明した通り、ユーザは1回のマウスドラッグを行うだけで、第1から第3までの3つの図形を描画できる。
図16の例では、第1図形は肺結節の外側を囲むROI、第2図形は肺結節のGGO部を囲むROI、第3図形は肺結節の充実部を囲むROIとして使用できる。ただし、第3図形は肺結節の充実部とずれた位置に描画されたため、この後、既存の技術(1つの図形を移動及び変形する技術)を利用して第3図形を移動及び変形することで、第3図形を肺結節の充実部の境界線に近づける必要がある。本発明に係る技術だけでは、必ずしも複数の図形のすべてが所望のROIを囲む位置に配置されるとは限らないが、上述の通り、既存の技術を利用して、各図形の配置を修正すればよい。本発明に係る技術を利用して3つの図形を描画することで、3つのROIに近い位置に3つの図形を配置できるため、3つの図形を夫々独立に描画するよりも、ユーザの操作回数を減らすことができユーザの負担を軽減しながら複数のROIを設定することができる。
【0089】
図17は、本発明の第1の実施形態に係る画像処理装置10の表示制御部33によって表示部26に表示される画面の第3の表示例である。
【0090】
この表示例は、超音波装置によって頸部(頸動脈付近)を撮影した2次元画像を画像取得部31が取得し、表示制御部33が2次元画像の一部を拡大表示したものである。画面には、画像取得部31によって取得された画像とマウスカーソルが表示されており、画像には、血管壁、血管内腔、及び血管に付着したプラーク部が写っている。
図17に表示されたマウスカーソルの位置で、ユーザがマウスボタンを押下することにより、図形の描画開始位置を指示したものとする。
【0091】
図18は、本発明の第1の実施形態に係る画像処理装置10の表示制御部33によって表示部26に表示される画面の第4の表示例である。
【0092】
図18には
図17と同じ医用画像が表示されており、
図7に示した「描画モード12」が図形の情報設定部34によって設定されている場合に、ユーザがマウスドラッグを行うことにより、図形の表示形態の変更指示を行った際の画面の表示例を示したものである。
【0093】
ユーザが図形の表示形態の変更指示を行うと、表示形態変更部35が、上述のステップS407及びS408の処理を行うことにより、図形の情報設定部34において「描画モード12」として設定された第1図形である「楕円形」が描画される。更に、表示形態変更部35が、
図7に示した第n図形の表示形態および関係情報に基づき上述のステップS409の処理を行うことにより、第n図形が描画される。具体的には、
図7に示した「描画モード12」では「図形の個数」は「3」個なので、画面には3つの図形が描画される。また、「描画開始位置に配置する制御点」は「端点」であり、操作部25を介したユーザ操作によりマウスカーソルは角度約45°方向にドラッグされたので、画面に描画される3つの図形の端点6がすべて描画開始位置に配置される(表3参照)。更に、第1図形の端点2がマウスカーソル位置(制御点移動位置)に配置される(表2参照)。また更に、第2図形の表示形態である「形状」は「楕円形」、関係情報である「第1図形に対するサイズの比率」は「1.2」倍なので、m=1.2を(式1)に代入する。そして、第2図形の「第1図形に対する描画方向」は「同方向」なので、(式1)、(式2)に基づいて第2図形の端点2を配置する。これにより、第2図形(楕円形)の位置、サイズ及び縦横比率が決定される。また同様に、第3図形の「形状」は「楕円形」、「第1図形に対するサイズの比率」は「0.3」倍なので、m=0.3を(式1)に代入し、(式1)、(式2)に基づいて第3図形の端点2を配置する。これにより、第3図形の位置、サイズ及び縦横比率が決定される。表示形態変更部35が、ステップS407乃至S409で以上の処理を行うことにより、
図18に示した3つの図形が描画される。
【0094】
以上説明した通り、ユーザは1回のマウスドラッグを行うだけで、第1から第3までの3つの図形を描画できる。
図18の例では、第1図形は血管壁の内側(血管内腔)を囲むROI、第2図形は血管壁の外側を囲むROI、第3図形はプラーク部を囲むROIとして使用できる。ただし、いずれの図形も所望のROIの位置と少しずれた位置に描画されたため、この後、既存の技術(1つの図形を変形する技術)を利用して各図形を移動及び変形することで、各図形を所望のROIに近づける必要がある。本発明に係る技術を利用して3つの図形を描画することで、3つのROIに近い位置に3つの図形を配置できるため、3つの図形を夫々独立に描画するよりも、ユーザの操作回数を減らすことができる。
【0095】
なお、
図18の例では、
図7とは異なる描画モードを設定してから描画する方法も考えられる。例えば、「図形の個数」を「2」個、「描画開始位置に配置する制御点」を「中心点」とし、血管壁の内側と外側を囲む第1図形と第2図形を描画する方法を取ってもよい。その後、既存の技術を利用して、プラーク部を囲む第3図形を独立に描画する方法でも、第1図形と第2図形を描画した分だけ、ユーザの操作回数を減らすことができる。
【0096】
図19は、本発明の第1の実施形態に係る画像処理装置10の表示制御部33によって表示部26に表示される画面の第5の表示例である。
【0097】
この表示例は、MRI装置によって胸部(気管支の分岐部付近)を撮影した3次元画像を画像取得部31が取得し、取得された3次元画像中のある断層画像の一部を表示制御部33が拡大表示したものである。表示部26によって表示されている画面には、画像取得部31によって取得された画像とマウスカーソルが表示されており、画像には、気管支壁と気管支内腔が写っている。
図19に表示されたマウスカーソルの位置で、ユーザがマウスボタンを押下することにより、図形の描画開始位置を指示したものとする。
【0098】
図20は、本発明の第1の実施形態に係る画像処理装置10の表示制御部33によって表示部26に表示される画面の第6の表示例である。
【0099】
図20には
図19と同じ医用画像が表示されており、
図8に示した描画モード13」が図形の情報設定部33によって設定されている場合に、ユーザがマウスドラッグを行うことにより、図形の表示形態の変更指示を行った際の画面の表示例を示したものである。
【0100】
ユーザが図形の表示形態の変更指示を行うと、表示形態変更部35が、上述のステップS407及びS408の処理を行うことにより、図形の情報設定部34によって「描画モード13」として設定された第1図形である「楕円形」が描画される。更に、表示形態変更部35が、
図8に示した第n図形の表示形態及び関係情報に基づき上述のステップS409の処理を行うことにより、第n図形が描画される。具体的には、
図8に示した「描画モード13」では「図形の個数」は「2」個なので、画面には2つの図形が描画される。また、「描画開始位置に配置する制御点」は「端点」であり、操作部25を介したユーザ操作によりマウスカーソルは角度約0°方向にドラッグされたので、画面に描画される2つの図形の端点5がすべて描画開始位置に配置される(表3参照)。更に、第1図形の端点1がマウスカーソル位置(制御点移動位置)に配置される(表2参照)。また更に、第2図形の表示形態である「形状」は「楕円形」、関係情報である「第1図形に対するサイズの比率」は「1.0」倍なので、m=1.0を(式1)に代入する。そして、第2図形の関係情報である「第1図形に対する描画方向」は「逆方向」なので、(式1)、(式3)に基づいて第2図形の端点1を配置する。これにより、第2図形(楕円形)の位置、サイズ及び縦横比率が決定される。
α
2=(α
1+180.0) mod 360.0 ・・・(式3)
【0101】
(式3)において、「mod」はその左側にある数値を右側にある数値で割った時の余りを計算する演算子である。(式3)は、ある位置(r
n,α
n)の角度α
nを180°回転させることにより、その位置を逆方向に向ける意味がある。以上の処理では、第1図形、第2図形ともに、X,Y座標におけるX軸方向だけに端点1を移動させるため、図形のサイズはX方向だけで変更され、Y方向ではサイズの変更は起こらない。そのため、第1図形、第2図形ともに、図形のY軸方向のサイズは、初期値で設定された値が維持される。表示形態変更部35が、ステップS407乃至S409で以上の処理を行うことにより、
図20に示した2つの図形が描画され、表示制御部33によって画像上に重畳表示される。
【0102】
以上説明した通り、ユーザは1回のマウスドラッグを行うだけで、第1図形と第2図形を描画できる。
図20の例では、第1図形は分岐した直後の右側の気管支の内腔を囲むROI、第2図形は分岐した直後の左側の気管支の内腔を囲むROIとして使用できる。この後、既存の技術(1つの図形を変形する技術)を利用して各図形を少し変形することで、各図形を所望のROIに一致させることができる。そして、各ROIの長径を計測することにより、右側の気管支の内腔径と左側の気管支の内腔径及びそれらの比率が計測できる。本発明に係る技術を利用して2つの図形を同時に描画することで、2つのROIに近い位置に2つの図形を同時に配置できるため、最初から2つの図形を夫々独立に描画するよりも、ユーザの操作回数を減らすことができる。
【0103】
なお、
図20の例では、図形のサイズはX方向だけで変更され、Y方向ではサイズの変更は起こらない制御方法を説明したが、他の制御方法を実行することもできる。例えば、図形のサイズがX方向(またはY方向)でm倍に変更された時に、Y方向(またはX方向も)でもm倍(つまりX,Y方向とも同じ倍率)にサイズを変更する関係情報を図形の情報設定部34において設定し、当該関係情報に基づく制御方法を実行してもよい。いずれの制御方法を採用するかに関しては、予め決めておいてもよいし、あるいは複数の図形の情報設定ダイアログボックスに前記の制御方法を指定するための表示項目を追加してもよい。
【0104】
<変形例1>
上記第1の実施形態では、ユーザから入力された図形の表示形態の変更指示に基づいて、第1図形と第n図形(n≧2)の配置に関する表示形態(位置、サイズ、縦横比率)を変更する例を説明した。以下では、
図21を用いて、各図形のその他の表示形態(境界線の色、線種、線幅など)をさらに指定する例を説明する。即ち、表示形態は各図形の形状、境界線の色、画像上の位置、線種、線幅の内の少なくとも一つを含む情報であることを特徴とする。
【0105】
図21は、本発明の変形例1に係る複数の図形の情報設定ダイアログボックスの表示例である。
図21は、
図7の表示例と同様の表示項目を多数持つので、
図7と異なる表示項目についてのみ、以下で説明する。
【0106】
図21では(
図7と比べて)、第1図形の表示形態及び第n図形の表示形態(n≧2)に、それぞれ「境界線の色」、「線種」、「線幅」の3つの表示項目が追加されている。図形の情報設定部34が、
図21に例示した様な複数の図形の情報設定ダイアログボックスを表示し、各図形の配置以外の表示形態をユーザに入力(選択)してもらい、RAM23に記憶する。そして、第1の実施形態のステップS105の処理によって複数の図形を描画する際に、RAM23に記憶した各図形の配置以外の表示形態を用いることにより、図形毎に異なる表示形態で描画可能となる。これにより、ユーザは各図形を描画する度に各図形の表示形態を指定する必要がなくなる。従って、ユーザの操作回数を増やすことなく、複数のROIの区別がしやすい図形を描画可能となる。
【0107】
以上、第1の実施形態及び変形例1を用いて説明したように、本発明によれば、1つのユーザ指示によって複数のROIに対応する複数の異なる図形を描画できる。これにより、従来よりも少ないユーザ指示によって、複数のROIを効率よく設定できる。
【0108】
(その他の実施例)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0109】
10 画像処理装置
21 通信IF
22 ROM
23 RAM
24 記憶部
25 操作部
26 表示部
27 制御部
31 画像取得部
32 画像表示条件設定部
33 表示制御部
34 図形の情報設定部
35 表示形態変更部
40 外部装置