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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】光学機器、カメラシステム
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20210101AFI20240826BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20240826BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20240826BHJP
   G03B 17/14 20210101ALI20240826BHJP
   G03B 9/06 20210101ALI20240826BHJP
   G03B 5/00 20210101ALN20240826BHJP
【FI】
G02B7/04 D
G02B7/02 E
G02B7/04 E
G03B17/02
G03B17/14
G03B9/06
G03B5/00 J
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020024749
(22)【出願日】2020-02-17
(65)【公開番号】P2021128316
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】小川 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】泉 光洋
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-045791(JP,A)
【文献】国際公開第2007/010813(WO,A1)
【文献】特開2013-238760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02 - 7/16
G03B 17/02
G03B 17/04 -17/17
G03B 5/00 - 5/08
H04N 5/222- 5/257
H04N 23/00
H04N 23/40 -23/76
H04N 23/90 -23/959
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のレンズおよび第2のレンズからなるレンズ群と、
光軸を中心に回転するカム筒と、
前記第2のレンズを保持するレンズ保持枠と、
前記レンズ保持枠を保持する移動筒と、
前記カム筒の内周側に配置され、前記カム筒を回転駆動するフォーカスモータと、
前記カム筒の内周側に配置され、前記カム筒に形成されたカム溝と嵌合し、前記カム筒の回転にともなって前記カム溝の軌跡に沿って前記レンズ群を光軸方向に移動させる移動コロと、
前記カム筒の内周側に配置され、前記移動筒の側面に形成された調整孔と嵌合し、前記移動筒に対する前記レンズ保持枠の位置を移動させることにより前記光軸に対する前記第2のレンズの偏芯調整を行うための調整コロと、を備え、
前記カム筒の周方向において、前記移動コロと前記調整コロと前記フォーカスモータとを、それぞれ異なる位相に配置し、
前記レンズ群を最も繰り込んだ状態において、前記移動コロと前記調整コロと前記フォーカスモータとの、前記光軸方向における幅が互いに重なることを特徴とする光学機器。
【請求項2】
記移動筒は、前記調整コロを介して前記レンズ保持枠を保持することを特徴とする請求項1に記載の光学機器。
【請求項3】
前記レンズ保持枠と前記移動筒とは、それぞれ前記フォーカスモータを収容する凹部を有することを特徴とする請求項2に記載の光学機器。
【請求項4】
前記レンズ保持枠の前記凹部は、前記移動筒の前記凹部よりも収容できるスペースが大きいことを特徴とする請求項3に記載の光学機器。
【請求項5】
さらに可動屈曲部を有し、
周方向において、前記移動コロと前記調整コロと前記フォーカスモータと前記可動屈曲部とを、それぞれ異なる位相に配置し、
前記レンズ群を最も繰り込んだ状態において、前記移動コロと前記調整コロと前記フォーカスモータと前記可動屈曲部との、前記光軸方向における幅が互いに重なることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の光学機器。
【請求項6】
前記移動コロは同軸コロであり、前記調整コロは偏芯コロであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の光学機器。
【請求項7】
前記カム筒と前記移動コロとは金属材料から作られたものであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の光学機器。
【請求項8】
前記カム筒と前記移動コロとの間に隙間があることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の光学機器。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の光学機器と撮像装置と有するカメラシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動するレンズを調整する機構を有する光学機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ、ビデオカメラおよびそれらに付属する交換レンズ等の光学機器には、減速ギアの作用によってアクチュエータの駆動力をカム筒へ伝達し、カム溝と嵌合した移動コロを光軸方向へ誘導することで、フォーカス部品を進退させるものがある。特許文献1には、フォーカス部品に切り欠きを設け、フォーカス部品を繰り込んだ際、アクチュエータを切り欠きに収容させることで、製品全長の短縮を実現する構成が開示されている。さらに特許文献1の構成では、フォーカス部品の内部に調整コロを配置することで、フォーカス部品の一部のレンズの位置を調整することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-238760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述したような切り欠きを設けると、フォーカス部品の剛性が低下してしまう。そのため、外力によってモーメントが発生すると、フォーカス部品が倒れたり歪んだりする可能性がある。
【0005】
本発明は、前述した課題を鑑みてなされたものであり、製品の小型化を実現しつつ、安定して移動するレンズを調整できる光学機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本願発明の光学機器は、第1のレンズおよび第2のレンズからなるレンズ群と、光軸を中心に回転するカム筒と、前記第2のレンズを保持するレンズ保持枠と、前記レンズ保持枠を保持する移動筒と、前記カム筒の内周側に配置され、前記カム筒を回転駆動するフォーカスモータと、前記カム筒の内周側に配置され、前記カム筒に形成されたカム溝と嵌合し、前記カム筒の回転にともなって前記カム溝の軌跡に沿って前記レンズ群を光軸方向に移動させる移動コロと、前記カム筒の内周側に配置され、前記移動筒の側面に形成された調整孔と嵌合し、前記移動筒に対する前記レンズ保持枠の位置を移動させることにより前記光軸に対する前記第2のレンズの偏芯調整を行うための調整コロと、を備え、前記カム筒の周方向において、前記移動コロと前記調整コロと前記フォーカスモータとを、それぞれ異なる位相に配置し、前記レンズ群を最も繰り込んだ状態において、前記移動コロと前記調整コロと前記フォーカスモータとの、前記光軸方向における幅が互いに重なることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の構成によれば、カム筒の内周側にアクチュエータを配置することにより、光学機器の小型化を実現することができる。また、移動手段と調整手段とを光軸方向に重ねることにより、安定して移動するレンズを調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態における交換レンズおよびデジタルカメラの正面斜視図および背面斜視図。
図2】本発明の実施形態における交換レンズおよびカメラ本体の電気的および光学的な構成を説明するためのブロック図である。
図3】本発明の実施形態における交換レンズ(繰り込み状態)の断面図である。
図4】本発明の実施形態における交換レンズ(繰り出し状態)の断面図である。
図5】本発明の実施形態におけるフォーカス駆動機構を分解した正面斜視図および本発明の実施形態におけるフォーカス駆動機構を分解した背面斜視図である。
図6】本発明の実施形態におけるフォーカス駆動機構を分解した正面斜視図である。
図7】本発明の実施形態における移動筒ユニットとフォーカスモータの背面図である。
図8】本発明の実施形態における移動筒ユニットとフォーカスモータ(繰り込み状態)の側面図である。
図9】本発明の実施形態における移動筒ユニットとフォーカスモータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、添付の図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本実施形態では光学機器の一例である交換レンズについて説明するが、他にもレンズ一体型カメラなど、本発明はその要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【0010】
図1は、本実施形態における交換レンズおよびデジタルカメラの正面斜視図および背面斜視図である。交換レンズ101が着脱可能に撮像装置としてのデジタルカメラ1(以下、カメラ本体1という)に装着されている。図1(a)は交換レンズ101およびカメラ本体1の正面側を示す斜視図であり、図1(b)は、交換レンズ101およびカメラ本体1の背面側を示す斜視図である。図1(a)に示すように、交換レンズ101が収容する撮像光学系の光軸が延びる光軸方向をX軸方向とし、これに直交する方向をZ軸方向(水平方向)およびY軸方向(垂直方向)とする。以下、Z軸方向とY軸方向をまとめてZ/Y軸方向とも記す。また、Z軸回りの回転方向をピッチ(Pitch)方向とし、Y軸回りの回転方向をヨー(Yaw)方向とする。ピッチ方向とヨー方向(以下、まとめてピッチ/ヨー方向とも記す)は、互いに直交するZ軸とY軸である2軸回りでの回転方向である。
【0011】
カメラ本体1の正面(被写体側)から見て左側(背面から見て右側)の部分には、ユーザがカメラ本体1を手で把持するための把持部2が設けられている。また、カメラ本体1の上面部には、電源操作部3が配置されている。カメラ本体1が電源オフ状態にあるときにユーザが電源操作部3をオン操作すると、カメラ本体1が電源オン状態となり撮像が可能となる。また、カメラ本体1が電源オン状態にあるときにユーザが電源操作部3をオフ操作すると、カメラ本体1が電源オフ状態になる。
【0012】
さらに、カメラ本体1の上面には、モードダイアル4、レリーズボタン5およびアクセサリシュー6が設けられている。モードダイアル4をユーザが回転操作することで、撮像モードを切り替えることができる。撮像モードには、シャッタ速度や絞り値等の撮像条件をユーザが任意に設定可能なマニュアル静止画撮像モード、自動で適正な露光量が得られるオート静止画撮像モードおよび動画の撮像を行うための動画撮像モード等が含まれる。また、ユーザがレリーズボタン5を半押し操作することで、オートフォーカスや自動露出制御等の撮像準備動作を指示することができ、全押し操作することで撮像を指示することができる。アクセサリシュー6には、外部フラッシュ等のアクセサリが脱着可能に装着される。また、カメラ本体1内には、交換レンズ101内の撮像光学系により形成される被写体像を光電変換する撮像素子が設けられている。
【0013】
図1(b)に示すように、カメラ本体1の背面には、背面操作部8と表示部9とが設けられている。背面操作部8は、様々な機能が割り当てられた複数のボタンやダイアルを含む。カメラ1の電源がオン状態であり、静止画撮像モードまたは動画撮像モードが設定されているとき、表示部9には、撮像素子により撮像されている被写体像がスルー画像として表示される。また、表示部9には、シャッタ速度や絞り値等の撮像条件を示す撮像パラメータが表示され、ユーザはその表示を見ながら背面操作部8を操作することによって、撮像パラメータの設定値を変更することが可能である。背面操作部8は、記録された撮像画像の再生を指示するための再生ボタンを含み、再生ボタンをユーザが操作することで、撮像画像が表示部9に再生表示される。
【0014】
図2は、本実施形態における交換レンズおよびカメラ本体の電気的および光学的な構成を説明するためのブロック図である。カメラ本体1は、カメラ本体1と交換レンズ101に電力を供給する電源部10と、前述した電源操作部3、モードダイアル4、レリーズボタン5、背面操作部8および表示部9のタッチパネル機能を含む操作部11とを有する。カメラ本体1および交換レンズ101の全体のシステムとしての制御は、カメラ本体1に設けられたカメラ制御部12と交換レンズ101に設けられたレンズ制御部104とがお互いに連係することによって行われる。カメラ制御部12は、記憶部13に格納されているコンピュータプログラムを読み出して実行する。その際、カメラ制御部12は、レンズマウント102に設けられた電気接点105の通信端子を介して、レンズ制御部104と各種制御信号やデータ等の通信を行う。電気接点105は、前述した電源部10からの電力を交換レンズ101に供給する電源端子を含む。
【0015】
交換レンズ101が有する撮像光学系は、光軸方向に移動して焦点調節を行うフォーカスレンズを含むフォーカス群201と、光量調節動作を行う絞り群401と、像振れを低減する防振素子としてのシフトレンズを含む防振群501を有する。防振群501は、シフトレンズを光軸に対して直交するZ/Y軸方向に移動(シフト)させて、像振れを低減する防振動作を行う。さらに、交換レンズ101は、フォーカス群201を駆動するフォーカス駆動部301、絞り群401を駆動する絞り駆動部402、および防振群501を駆動する防振駆動部502を有する。
【0016】
カメラ本体1は、シャッタユニット14、シャッタ駆動部15、撮像素子16、画像処理部17および前述したカメラ制御部12を有する。シャッタユニット14は、撮像素子16で露光される光の量を制御する。撮像素子16は、撮像光学系により形成された被写体像を光電変換して撮像信号を出力する。画像処理部17は、撮像信号に対して各種画像処理を行った後、画像信号を生成する。表示部9は、画像処理部17から出力された画像信号を表示したり、前述したように撮像パラメータを表示したり、記憶部13や不図示の記録媒体に記録された撮像画像を再生表示したりする。
【0017】
カメラ制御部12は、操作部11における撮像準備操作(レリーズボタン5の半押し操作)に応じて、フォーカス群201の駆動を制御する。例えば、オートフォーカスの動作が指示された場合、焦点検出部18は、画像処理部17で生成された画像信号をもとに、撮像素子16で結像される被写体像の焦点状態を判定し、焦点信号を生成してカメラ制御部12に送信する。それと同時に、フォーカス駆動部301は、フォーカス群201の現在位置を検出し、レンズ制御部104を介してその信号をカメラ制御部12に送信する。カメラ制御部12は、被写体像の焦点状態とフォーカス群201の現在位置とを比較し、そのずれ量からフォーカス駆動量を算出してレンズ制御部104に送信する。そして、レンズ制御部104は、フォーカス駆動部301を介してフォーカス群201を目標位置まで駆動制御し、被写体像の焦点ずれを補正する。
【0018】
詳しくは後述するが、フォーカス駆動部301は、カム筒と、フォーカスモータと、カム筒とフォーカスモータとを連結する減速ギアと、フォーカス群201の原点位置を検出するフォトインタラプタとを備える。一般的に、フォーカスモータとして、アクチュエータの一種であるステッピングモータが採用されることが多い。しかしながら、ステッピングモータは、相対的な駆動量しか制御することができなく、電源オフ状態においては、フォーカス群201の位置が不定となる。そこで、撮像動作が始まる前に、フォーカス群201を原点位置まで移動させて原点検出処理を実行する制御が必要となる。原点検出処理の制御については、公知な技術を用いて行ってよい。なお、アクチュエータとして、エンコーダを備えるDCモータや超音波モータを採用してもよい。また、フォトインタラプタは発光部から発せられた光を受光部にて直接受光するものであるが、これに代わって、反射面からの反射光を受光するフォトリフレクタや、導電パターンに接触するブラシを用いてもよい。
【0019】
また、カメラ制御部12は、操作部11から受けた絞り値やシャッタ速度の設定値に応じて、絞り駆動部402およびシャッタ駆動部15を介して、絞り群401およびシャッタユニット14の駆動を制御する。例えば、自動露出制御の動作が指示された場合、カメラ制御部12は、画像処理部17で生成された輝度信号を受信して測光演算を行う。測光演算結果をもとに、カメラ制御部12は、操作部11における撮像指示操作(レリーズボタン5の全押し操作)に応じて、絞り群401の駆動を制御する。それとともに、カメラ制御部12は、シャッタ駆動部15を介してシャッタユニット14の駆動を制御し、撮像素子16による露光処理を行う。
【0020】
カメラ本体1は、ユーザによる手振れ等の像振れを検出可能な振れ検出手段として、ピッチ振れ検出部19とヨー振れ検出部20を有する。ピッチ振れ検出部19とヨー振れ検出部20はそれぞれ、角速度センサ(振動ジャイロ)や角加速度センサを用いて、ピッチ方向(Z軸回りの回転方向)およびヨー方向(Y軸回りの回転方向)の像振れを検出して振れ信号を出力する。カメラ制御部12は、ピッチ振れ検出部19からの振れ信号を用いて防振群501(シフトレンズ)のY軸方向でのシフト位置を算出する。同様にカメラ制御部12は、ヨー振れ検出部20からの振れ信号を用いて防振群501のZ軸方向でのシフト位置を算出する。そして、カメラ制御部12は、算出したピッチ/ヨー方向のシフト位置に応じて、防振群501を目標位置まで駆動制御し、露光中やスルー画像表示中の像振れを低減する防振動作を行う。
【0021】
次に、交換レンズ101がカメラ本体1に装着されてできたカメラシステムにおける構成部品の位置関係について説明する。図3は、本実施形態における繰り込み状態にある交換レンズの断面図であり、図4は、本実施形態における繰り出し状態の交換レンズの断面図である。図3図4とに示した断面図は、XY平面上のものである。図3図4とに示された中心線は、光学系の光軸と同じ位置にある。
【0022】
本実施形態は、撮像光学系の一例として、第一のフォーカスレンズ211と第二のフォーカスレンズ(調整レンズ)212を含むフォーカス群201と、第一の固定レンズ611と第二の固定レンズ612を含む固定群601とから成る二群構成を採用している。被写体像の焦点ずれに応じて所定の光学位置へと移動したフォーカス群201は、固定群601を介して、被写体からの光を撮像素子16の撮像面上に結像させる。結像のとき、絞り群401は、第一のフォーカスレンズ211や第二のフォーカスレンズ(調整レンズ)212とともにフォーカス群201に収容されており、フォーカス群201と一体的に移動する。一方、防振群501は、第一の固定レンズ611と第二の固定レンズ612との間に配置されており、固定群601の一部として機能する。
【0023】
さらに、本実施形態の撮像光学系は、第二のフォーカスレンズ(調整レンズ)212の位置をずらして配置させる調整機構を有している。これにより、組立工程において作業者は、全体の光学性能の状態を確認しながら、各構成部品に生じる製造誤差や組立ばらつきなどが低減するように組立てることが可能となる。
【0024】
以下では、本実施形態におけるフォーカス駆動機構について詳細に説明する。
【0025】
図5(a)と図5(b)は、本実施形態におけるそれぞれフォーカス群とフォーカス駆動部との斜め正面と斜め背面を説明するための図である。図6は、本実施形態におけるフォーカス群とフォーカス駆動部との分解図である。
【0026】
固定筒106は、内周側に第一の固定レンズ611を保持し、正面側の面に直進案内筒107を保持する固定部材である。直進案内筒107は、内周側にフォーカス群201を収容し、外周側にカム筒108を回転可能に保持する固定部材である。カム筒108は、弾性部材109によって光軸方向に付勢され、背面側(カメラ本体1に近い側)の面が固定筒106と摺動可能なように密着している。
【0027】
フォーカスモータ311は、フォーカスモータ311の回転軸が光軸と平行となるように、固定筒106の正面側の面に対して固定されている。一方で、減速ギア312は複数のギアで構成されており、固定筒106の背面側の面に対して、それぞれが回転可能に保持されている。さらに、カム筒ギア313は、減速ギア312と連結するように、カム筒108の外周面に対して固定されている。フォーカスモータ311が回転駆動されると、フォーカスモータ311の駆動力は減速ギア312とカム筒ギア313とを介して減速され、カム筒108へと伝達される。上記のように、カム筒108は、光軸方向での移動を規制された状態のまま、光軸を中心として回転する。
【0028】
フォーカス群201は、直進案内筒107の内周側に対して、正面側から挿入されて組み込まれる。直進案内筒107には、フォーカス群201の回転方向への移動を規制して、光軸方向への直進を案内する直進溝が形成されている。直進溝は、移動コロ231の位相に対応する3個の貫通溝で構成されており、これらの貫通溝はいずれも同じ溝幅となっている。また、カム筒108には、フォーカス群201のストロークに対応して、回転方向に線形の軌跡を持つカム溝が形成されている。カム溝は、移動コロ231の位相に対応する3個の非貫通の有底溝で構成されており、これらの有底溝はいずれも同じカム軌跡であり、同じ溝幅で同じ溝深さを有する。フォーカス群201には、固定部の中心と嵌合部との中心とが同軸である3個の移動コロ231が120度等分に固定されており、直進溝とカム溝とにそれぞれわずかな隙間を形成して嵌合している。カム筒108が回転すると、移動コロ231は直進溝とカム溝との嵌合により、カム溝のカム軌跡に沿って、フォーカス群201を光軸方向で進退させることが可能となる。上記の記載から、移動コロ231は同軸コロであることがわかる。
【0029】
フォーカス群201は、第一のフォーカスレンズ211と、絞り群401と、移動筒221と、第二のフォーカスレンズ(調整レンズ)212とを備える。第二のフォーカスレンズ(調整レンズ)212は、調整機構である調整コロ241を介して、移動筒221の内周側に収容されている。また、移動コロ231は、移動筒221の外周面に対して、光軸と垂直な方向にビスで固定されている。絞り群401には、フレキシブルプリント配線板403を介して、絞り駆動部(絞りモータ)402が電気的に接続されている。フレキシブルプリント配線板403には、直進案内筒107の内周面と移動筒221の外周面との間で可動屈曲部が構成されており、絞り群401はフォーカス群201と一体的に移動可能な構成となっている。
【0030】
次に、移動筒ユニット220の構成について詳細に説明する。図7は、本実施形態における移動筒ユニットとフォーカスモータの背面図である。図7では、構成部品の一部が省略されている。図8は、本実施形態における移動筒ユニットと繰り込み状態でのフォーカスモータの側面図である。図9は、本実施形態における移動筒ユニットとフォーカスモータの断面図である。図9でのフォーカス群201は、最も繰り込んでいる状態にある。
【0031】
移動筒ユニット220は、第二のフォーカスレンズ(調整レンズ)212を保持する調整レンズ保持枠251と移動筒221とを備える。移動筒221は、直進案内筒107の内周側に配置され、直進案内筒107の内径に沿った略円筒形状を有する。同様に、調整レンズ保持枠251は、移動筒221の内周側に収納され、移動筒221の内径に沿った略円筒形状を有する。移動筒221と調整レンズ保持枠251との間には、調整レンズ保持枠251を任意の移動量で調整可能なように、第二のフォーカスレンズ(調整レンズ)212に要求される移動量の最大値よりも大きな隙間が確保されている。移動筒221の側面には、外周から内周に貫通した3箇所の調整孔が形成されている。調整孔は、光軸方向を長手方向とする直進溝221cと、光軸方向と直交する周方向を長手方向とする周溝221dとが、同軸上に並んだ一対の組み合わせとなって、周方向に120度の間隔で均等に3箇所配置されている。
【0032】
調整コロ241は、調整レンズ保持枠251に対して固定される固定部と、中心が固定部と同軸である同軸部と、中心が固定部とずれた位置に偏芯している偏芯部とで構成される。つまり、調整コロ241は偏芯コロである。調整コロ241は、移動筒221の側面に形成された調整孔に嵌合し、調整レンズ保持枠251に対して螺子で固定される。調整コロ241には摺り割り部が設けられており、工具を係合して回転させることができる。そこで、たとえば移動筒ユニット220が組みあがった段階において、投影などの光学性能の状態を確認しながら、調整コロ241を回転させると、所望の調整状態になるように調整レンズ保持枠251全体を移動させることが可能となる。
【0033】
調整レンズ保持枠251は、偏芯部と直進溝221cとの嵌合により、移動筒221に対して径方向の位置が決まるように構成されている。一方で、調整レンズ保持枠251は、同軸部と周溝221dとの嵌合により、移動筒221に対して光軸方向の位置が決まる。前述のように、調整コロ241を回転させると、光軸方向での移動が同軸部と周溝221dとの嵌合によって規制されているため、調整レンズ保持枠251は、光軸に対して平行に偏芯する方向に調整される。かくして、調整コロ241は、第二のフォーカスレンズ(調整レンズ)212の偏芯調整を可能にしている。なお、本実施形態ではレンズの位置調整の一例である偏芯調整について説明したが、他にも本発明はレンズの傾きを調整する倒し調整や、レンズの間隔を調整するスラスト調整への適用が可能である。
【0034】
図5図6に示すように、フォーカスモータ311は、径方向において、第一の固定レンズ611の外径よりも外側の領域に固定されている。さらに、フォーカスモータ311は、カム筒108が回転動作するスペースに侵入しないように、カム筒108の内径よりも内側に配置されている。同様に、移動コロ231と調整コロ241とは、径方向において、第二のフォーカスレンズ(調整レンズ)212の外径よりも外側で、かつカム筒108の内径よりも内側の領域に配置されている。そして、図7に示すように、フォーカスモータ311と移動コロ231と調整コロ241とは、周方向において、それぞれが重ならないように異なる位相に配置されている。これで、フォーカス群201の構成部品とフォーカスモータ311との配置においては、カム筒108の内径よりも内側の限られたスペースを効率的に利用することができる。
【0035】
フォーカス群201を繰り出す方向にカム筒108を回転駆動すると、フォーカス群201がフォーカスモータ311から離間する。逆に、フォーカス群201を繰り込む方向にカム筒108を回転駆動すると、フォーカス群201がフォーカスモータ311に近接する。そして、図8図9に示すように、最もフォーカス群201を繰り込んだ状態においては、移動筒ユニット220とフォーカスモータ311とが光軸方向で重なる。最もフォーカス群201を繰り込んだ状態では、フォーカスモータ311は、移動筒221に形成された凹部221aと調整レンズ保持枠251に形成された凹部251aとに収容される。フォーカスモータ311が凹部221aと凹部251aとに収容されるとき、製品全長が短縮になる。また、移動筒221の凹部221aと調整レンズ保持枠251の凹部251aとによって、フォーカスモータ311の振動発生源となるエンジン部分の一部を覆い隠すことができる。繰り込み状態に限っては、凹部221aと凹部251aとがフォーカスモータ311を囲うことで、フォーカスモータ311からの騒音を抑制する効果が期待できる。
【0036】
なお、図7に示すように、調整レンズ保持枠251に形成された凹部251aは、移動筒221に形成された凹部221aよりもスペースが大きい。これは、第二のフォーカスレンズ(調整レンズ)212が最大値まで移動したとしても、調整レンズ保持枠251とフォーカスモータ311とが干渉することがないように構成するためである。また、移動筒221の正面側には、背面側に形成された凹部221aと対応し、凸部221bが形成されている。凸部221bは、凹部221aを形成することによって低下する移動筒221の剛性を補うためのものである。
【0037】
図7に示すθ1の領域は、鉛直方向における下側で、かつ、水平方向におけるカメラ本体1の把持部2側の領域となる約90度の範囲を示している。一般的に、カメラ本体1に内蔵されるマイクは、鉛直方向において上側に配置される。アクセサリシュー6を介して装着される外部マイクについても、鉛直方向において上側に配置されることが多い。フォーカスモータ311を鉛直方向における下側に配置すると、フォーカスモータ311とマイクとが離れ、フォーカスモータ311の振動やフォーカスモータ311と減速ギア312との噛み合いなどによる雑音がマイクに伝わりにくくなる。
【0038】
また、通常の手持ち撮像では、ユーザはカメラ本体1の把持部2を手で把持しており、交換レンズ101とユーザの手とが近接した状態となっている。逆に、カメラ本体1の両端のうち、把持部2と光軸を挟んだ反対側では、障害がない。空気を介して伝播する騒音について水平方向で比較すると、カメラ本体1の把持部2側のほうが、把持部2の反対側よりも相対的に伝わりにくい。つまり、フォーカスモータ311を水平方向におけるカメラ本体1の把持部2側に配置することで、雑音の低減において有利な構成にすることができる。以上のような理由により、本実施形態では、鉛直方向での下側の領域θ1にフォーカスモータ311を配置する構成としている。
【0039】
絞り駆動部(絞りモータ)402は、径方向において、第二のフォーカスレンズ(調整レンズ)212の外径よりも外側で、かつカム筒108の内径よりも内側の領域に配置されている。一方、フレキシブルプリント配線板403は、絞り駆動部(絞りモータ)402と接続し、直進案内筒107との間で可動屈曲部403aを構成している。図7に示すように、移動コロ231と調整コロ241とフォーカスモータ311と絞り駆動部(絞りモータ)402と可動屈曲部403aとは、周方向において、互いに重ならないように異なる位相に配置されている。
【0040】
さらに、図8に示すように、移動コロ231と調整コロ241とが配置される平面が、光軸方向において、フォーカスモータ311と絞り駆動部(絞りモータ)402との一部と重なっている。同様に、図9に示すように、移動コロ231と調整コロ241とが配置される平面が、光軸方向において、フォーカスモータ311と可動屈曲部403aと第二のフォーカスレンズ(調整レンズ)212との一部とも重なっている。かくして、カム筒108の内径よりも内側の限られたスペースに、構成部品が効率的に配置され、製品全長のさらなる短縮が実現可能になる。
【0041】
カム筒108と移動コロ231とは、一般的に、アルミニウムや真鍮などの歪みにくい金属材料を切削加工して製造される。こうした金属材料を採用する利点は、切削加工によって高精度に仕上げることが可能であり、さまざまな環境温度や撮像姿勢においても変形が少ないことである。一方で、じん性の低い金属同士の嵌合では圧入が難しいため、わずかな隙間を設けたすきまばめも用いられる。
【0042】
本実施形態においても、カム筒108に形成されているカム溝と移動コロ231との間には、わずかな隙間が設けられている。フォーカス群201の重心201aは移動コロ231よりも正面側にあるため、フォーカス群201の自重により、撮像時はその先端が移動コロ231を支点として、鉛直方向の下側にわずかに倒れた姿勢になる。したがって、作業者が光学調整を行うときにわずかに倒れた姿勢を現実的な基準とし、所望の光学性能を達成できるように、工具を係合して調整コロ241を回転させて、第二のフォーカスレンズ(調整レンズ)212の偏芯調整を行う。光学調整を行う際に、作業者が工具を調整コロに押し付けると、力の作用点となる調整コロが支点となる移動コロから離れていることで、力のモーメントが発生してしまう。そのため、カム溝と移動コロとの間に隙間が存在すると、フォーカス群201の先端が、一時的に鉛直方向の下側とは異なる方向へ不用意に倒れてしまうという現象が発生してしまう。このように、光学調整中の一時的に外力が加わっている状態と、光学調整後の外力がない状態とで、フォーカス群201の倒れの向きや量が変化するので、工具を調整コロ241に強く押し付けることができない。また、作業者が時折工具を調整コロ241から離すなどして、外力がない状態の結果を確認しながら、前述の調整を続けなければならないなど、作業が煩雑なものになってしまう。
【0043】
それに対して、本実施形態では、調整コロ241の中心が移動コロ231の中心と略同一平面上となるような配置としている。このような配置で、力の作用点となる調整コロ241の中心を、支点となる移動コロ231の中心に近づけるためであり、光学調整を行う際、調整コロ241に対して強い外力が加わったとしても、力のモーメントが発生しにくい。そのため、カム溝と移動コロ231との間に隙間が存在していたとしても、前述のような作業性の悪化を避けることができる。
【0044】
また、移動筒221のような鏡筒部品は、一般的にポリカーボネート等の樹脂材料で構成されることが多く、射出成形により安価に製造できる反面、金属材料と比べると熱膨張率が大きく剛性が低い。これに対して、本実施形態は、移動コロ231の中心と調整コロ241の中心とを略同一平面上に配置することで、環境温度の変化に伴う移動コロ231と調整コロ241との光軸方向への位置ずれを抑制している。同様に、移動コロ231の中心と調整コロ241の中心とを略同一平面上に配置することで、第二のフォーカスレンズ(調整レンズ)212の自重の影響による移動筒221の歪みを低減し、例えば撮像姿勢の変化に伴う光学性能の劣化を避ける構成となっている。
【0045】
(そのほかの実施形態)
以上説明した実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、本実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 カメラ本体
2 把持部
3 電源操作部
4 モードダイアル
5 レリーズボタン
6 アクセサリシュー
7 カメラマウント
8 背面操作部
9 表示部
10 電源部
11 操作部
12 カメラ制御部
13 記憶部
14 シャッタユニット
15 シャッタ駆動部
16 撮像素子
17 画像処理部
18 焦点検出部
19 ピッチ振れ検出部
20 ヨー振れ検出部
101 交換レンズ
102 レンズマウント
104 レンズ制御部
105 電気接点
106 固定筒
107 直進案内筒
108 カム筒
109 弾性部材
201 フォーカス群
211 第一のフォーカスレンズ
212 第二のフォーカスレンズ(調整レンズ)
220 移動筒ユニット
221 移動筒
221a 凹部
221b 凸部
221c 直進溝
221d 周溝
231 移動コロ
241 調整コロ
251 調整レンズ保持枠
251a 凹部
301 フォーカス駆動部
311 フォーカスモータ
312 減速ギア
313 カム筒ギア
401 絞り群
402 絞り駆動部(絞りモータ)
403 フレキシブルプリント配線板
501 防振群
502 防振駆動部
601 固定群
611 第一の固定レンズ
612 第二の固定レンズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9