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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】インク収容容器
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20240826BHJP
【FI】
B41J2/175 141
B41J2/175 133
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020044447
(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公開番号】P2021142734
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】熱田 朋尚
(72)【発明者】
【氏名】井利 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】橋本 雄介
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-018486(JP,A)
【文献】特開2016-203404(JP,A)
【文献】特開2019-142189(JP,A)
【文献】特開2009-166296(JP,A)
【文献】特開2006-027101(JP,A)
【文献】特開2005-028686(JP,A)
【文献】国際公開第2005/123398(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0013295(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にインクを収容するインク収容容器において、
前記内部にインクを補充するための補充口を有し、
前記内部であって、前記補充口よりも鉛直方向における下方の位置に、前記内部に収容されたインクの鉛直方向に上下する液面の位置に連動して鉛直方向における上下に移動する移動部材が配置されており、
前記補充口から前記内部にインクが補充されるとき、インクは前記移動部材の鉛直方向における上面に当たり、
前記移動部材の前記上面を含む部分には、空隙が形成されており、
前記上面を含む部分は、ポリプロピレンの繊維の集合体であることを特徴とするインク収容容器。
【請求項2】
内部にインクを収容するインク収容容器において、
前記内部にインクを補充するための補充口を有し、
前記内部であって、前記補充口よりも鉛直方向における下方の位置に、前記内部に収容されたインクの鉛直方向に上下する液面の位置に連動して鉛直方向における上下に移動する移動部材が配置されており、
前記補充口から前記内部にインクが補充されるとき、インクは前記移動部材の鉛直方向における上面に当たり、
前記移動部材のインクと接触する部分は、発泡ウレタンであることを特徴とするインク収容容器。
【請求項3】
前記移動部材は、前記補充口の開口を含む面の垂線と重なる位置に配置されている請求項1または2に記載のインク収容容器。
【請求項4】
前記インク収容容器の内部には、前記インク収容容器の底面から前記補充口に向かって延伸する支柱が設けられており、
前記移動部材には、前記移動部材を貫通する貫通孔が形成されており、
前記支柱は前記貫通孔に挿入されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載のインク収容容器。
【請求項5】
前記移動部材は、上層および下層を有する2層構造である請求項1ないし4のいずれか1項に記載のインク収容容器。
【請求項6】
前記上層の密度は、前記下層の密度よりも低い請求項5に記載のインク収容容器。
【請求項7】
前記下層の浮力は、前記上層の浮力よりも大きい請求項5または6に記載のインク収容容器。
【請求項8】
前記移動部材は、上層、中層および下層を有し、
前記下層から上層に向かって前記移動部材の密度が低くなる請求項1ないし4のいずれか1項に記載のインク収容容器。
【請求項9】
前記移動部材は、前記インク収容容器の底面の8割を覆う請求項1ないし8のいずれか1項に記載のインク収容容器。
【請求項10】
前記移動部材には、補充されたインクが流動するインク流動部が形成されている請求項9に記載のインク収容容器。
【請求項11】
前記支柱は、鉛直方向に対して傾いている請求項4に記載のインク収容容器。
【請求項12】
前記移動部材の底面には、突起が設けられている請求項1ないし11のいずれか1項に記載のインク収容容器。
【請求項13】
前記インク収容容器の底面には、前記移動部材と接触する突起が設けられている請求項1ないし12のいずれか1項に記載のインク収容容器。
【請求項14】
前記移動部材の上面の鉛直方向に対する傾斜角と前記インク収容容器の前記補充口の開口を含む仮想的な面の傾斜角との差が10度以内である請求項1ないし13のいずれか1項に記載のインク収容容器。
【請求項15】
前記インク収容容器は、インクを吐出して記録を行うインクジェットプリンタに使用されるインク収容容器である請求項1ないし14のいずれか1項に記載のインク収容容器。
【請求項16】
インクを吐出するインクジェットヘッドと、
内部に前記インクを収容するインク収容容器と、
を有するインクジェットプリンタにおいて、
前記インク収容容器は、前記内部にインクを補充するための補充口を有し、
前記インク収容容器の内部であって、前記補充口よりも鉛直方向における下方の位置に
、前記内部に収容されたインクの鉛直方向に上下する液面の位置に連動して鉛直方向にお
ける上下に移動する移動部材が配置されており、
前記補充口から前記内部にインクが補充されるとき、インクは前記移動部材の鉛直方向における上面に当たり、
前記移動部材の前記上面を含む部分には、空隙が形成されており、
前記上面を含む部分は、ポリプロピレンの繊維の集合体であることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項17】
インクを吐出するインクジェットヘッドと、
内部に前記インクを収容するインク収容容器と、
を有するインクジェットプリンタにおいて、
前記インク収容容器は、前記内部にインクを補充するための補充口を有し、
前記インク収容容器の内部であって、前記補充口よりも鉛直方向における下方の位置に
、前記内部に収容されたインクの鉛直方向に上下する液面の位置に連動して鉛直方向にお
ける上下に移動する移動部材が配置されており、
前記補充口から前記内部にインクが補充されるとき、インクは前記移動部材の鉛直方向における上面に当たり、
前記移動部材のインクと接触する部分は、発泡ウレタンであることを特徴とするインクジェットプリンタ
【請求項18】
前記インク収容容器は、前記インクジェットヘッドとチューブを介して接続されている請求項16または17に記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク収容容器に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを吐出して記録を行うインクジェットプリンタは、インクを収容するためのインク収容容器を備える。記録とともにインクが消費され、インク収容容器内のインクの残量が少なくなると、ユーザー自身がインクの補充をすることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-79585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
補充用のインクが充填されているインクボトルからインク収容容器にインクを補充しようとすると、インク収容容器内に既に充填されているインクの液面に補充しているインクが衝突し、インクが泡立つことや、インクが飛び散る(跳ね返る)こと等がある。例えば、インクが飛び散ると、インクボトルの注ぎ口等にインクが付着し、インクボトルが汚れることがある。
【0005】
特許文献1に記載されているインク収容容器を図9(a)および(b)に示す。特許文献1においては、図9(a)に示すように、インク収容容器901の内部に遮蔽板903を配置し、補充したインクがインク収容容器内のインクの液面に直接衝突しないようにしている。
【0006】
しかしながら、特許文献1の構成においては、図9(b)に示すように、インク収容容器内のインクの量が多いと遮蔽板903がインク中に没することがある。遮蔽板903がインク中に没すると、その後補充するインクは直接インクに衝突することとなるため、インクの泡立ちや、インクの飛び散りが生じることがある。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑み、インク収容容器内のインクの量に関わらず、補充するインクがインク収容容器内のインクに直接衝突することを抑制することができるインク収容容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、内部にインクを収容するインク収容容器において、
前記内部にインクを補充するための補充口を有し、前記内部であって、前記補充口よりも鉛直方向における下方の位置に、前記内部に収容されたインクの鉛直方向に上下する液面の位置に連動して鉛直方向における上下に移動する移動部材が配置されており、前記補充口から前記内部にインクが補充されるとき、インクは前記移動部材の鉛直方向における上面に当たり、前記移動部材の前記上面を含む部分には、空隙が形成されており、前記上面を含む部分は、ポリプロピレンの繊維の集合体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、インク収容容器内のインクの量に関わらず、インク収容容器にインクを補充する際に、補充のインクがインク収容容器内のインクに直接衝突することを抑制することができるインク収容容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】インクジェットプリンタを示す図。
図2】第1の実施形態のインク収容容器を示す斜視図。
図3】第1の実施形態のインク収容容器にインクが補充される様子を示す図。
図4】移動部材を示す概略図。
図5】第2の実施形態のインク収容容器を示す斜視図。
図6】第3の実施形態のインク収容容器を示す斜視図。
図7】第4の実施形態のインク収容容器を示す斜視図。
図8】第5の実施形態のインク収容容器を示す斜視図。
図9】従来例のインク収容容器を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下、インクを吐出して印字等の記録を行うインクジェットプリンタを例に説明を行うが、本発明はこれに限られない。即ち、例えば塗装用のインクを容器に補充するような、インクを適宜補充することができる容器に対してであれば、本発明を適用することができるため、そのような容器に対しても本発明の権利範囲は及ぶものとする。但し、インクジェットプリンタにおいては、補充用のインクがインク収容容器内のインクに直接衝突することによりインクが泡立つと、インク中に微小な気泡が溶け、吐出不良の原因にもなる。即ち、塗装用のインクのようなものよりも、インクジェットプリンタのインクは、インク同士が直接衝突する影響を受けやすい。そのため、本発明は、インクジェットプリンタに使用されるインクにより好適に適用することができる。
【0012】
(インクジェットプリンタ)
インクジェットプリンタについて、図1を参照しながら説明する。図1は、インクジェットプリンタ1を示す概略図である。インクジェットプリンタ1は、インクジェットヘッド2の往復移動(主走査)と、紙等の記録媒体である記録用シート3の所定ピッチごとの搬送(副走査)とを繰り返しながら、これらの動きと同期してインクジェットヘッド2からインクを吐出し記録を行う。インクジェットヘッド2は、2本のガイドレール上を摺動できるように設置されたキャリッジ4上に着脱可能な状態で搭載されている。
【0013】
インクジェットプリンタ1は、インクジェットヘッド2から吐出されるインクを内部に収容することができるインク収容容器101を有する。本実施形態におけるインク収容容器101は、従来から広く普及している交換型のインク収容容器と比較して大容量となるように設計されている。インク収容容器101に収容されたインクがなくなった(少なくなった)場合には、ユーザーが、まず、インク収容容器101の補充口105(図2)に取り付けられているキャップ5を外す。その後、補充用インクが充填されているインクボトルから補充口105を介してインク収容容器101の内部にインクを充填(補充)する。インクの補充が完了した後、補充口105にキャップ5を取り付け直し、インクの補充の一連の動作が完了する。インク収容容器101とインクジェットヘッド2は、インク供給チューブ6を介して接続されており、インク供給チューブ6を介してインク収容容器101内のインクがインクジェットヘッド2に供給される。
【0014】
(インク収容容器)
インク収容容器101について、図2を参照しながら説明する。図2は、インク収容容器101を示す概略図である。なお、説明のため、キャップ5を外し、インク収容容器の内部の様子が分かるように図示している。インク収容容器101は、支柱102、移動部材103および補充口105から主に構成されている。移動部材103の中心部には、支柱102の径よりも大きな径の貫通孔304(図3)が形成されている。そして、支柱102がこの貫通孔304に挿入されている。支柱102は、インク収容容器101の底面から補充口105に向かって延伸している。貫通孔304に支柱102を通すことにより、移動部材103がインク収容容器101内で自由に動くことを防ぎながら移動部材103を鉛直方向(Z方向)の上下に移動させることができる。また、貫通孔304に支柱102を通すことで、補充口105の直下に移動部材103が常に位置するように配置することができる。図2においては、支柱102として1本の円柱を図示しているが、移動部材103が上下移動することができる形状であれば、形状に制限は無い。
【0015】
(移動部材)
移動部材103について、図3を参照しながら説明する。図3(a)は、移動部材103を示す斜視図である。図3(b)は、図3(a)に示すA-A断面における断面図である。移動部材103は、図3に示すように、円錐と円柱を合わせた形状をしており、それぞれの中心部には支柱102の径よりも大きな径の貫通孔304が形成されている。
【0016】
移動部材103は、上層301、中層302および下層303の複数(3つ)の層で構成されている。上層301は、補充されるインクが最初に衝突する部材であり、そのため、インクの飛び散り等を抑制することができる構造とすることがよい。したがって、上層301は密度が低いものがよく、上層301の上面を含む部分には空隙が形成されていることが必要である。空隙が形成されていることにより、補充されるインクの一部は空隙を通過し、インクが飛び散る(跳ね返る)こと等を抑制することができる。例えば、上層301は、例えば、ポリプロピレンの繊維の集合体であることが好ましい。
【0017】
中層302は、上層301よりも密度が高いものがよく、例えば、ポリプロピレンの繊維の集合体であって、上層301よりも密度が高いもの(密にしたもの)が好ましい。中層302が上層301よりも密度が低いと、移動部材103の重心の位置が高い位置になり、補充時のインクの衝撃等により、移動部材103が上下に大きく揺れる恐れがあるためである。移動部材103が上下に大きく揺れると、インクの液面も上下に揺れ、インクが補充口105から外部に飛び出してしまう可能性もある。しかしながら、移動部材103の重心を低い位置にすることにより、移動部材103の上下方向における振動を抑制することができる。
【0018】
下層303は、インクの液面と接触する部分である。下層303は、移動部材103をインクの液面の高さの位置に連動して上下に移動させ、移動部材103をインク中に没しないために、高い浮力を有することが好ましい。また、同様に、移動部材103の重心を低い位置にして移動部材103の振動を抑制するために、上層301および中層302よりも密度が高いことが好ましい。例えば、発泡ウレタンを含むものを下層303として好適に使用することができる。このような構成となっている移動部材103は、補充されたインクとより確実に接触させるために、補充口105に対向する位置に配置されていることが好ましい。即ち、補充口105の開口を含む仮想的な面を考えたときに、その仮想的な面の垂線と重なる位置に移動部材103が配置されていることが好ましい。
【0019】
なお、移動部材103は、インク中に沈まない浮力を有し、インクの飛び散り等を抑制することができれば図3に示すような3層構造である必要はない。例えば上層と下層のみの2層構造であってもよい。移動部材が2層構造である場合には、例えば、図3に示した下層303を鉛直下方の層に採用し、上層301または中層302を鉛直上方の層に採用することができる。なお、図3に示した中層302と上層301との組み合わせであってもインクの飛び散り等を抑制する効果は得られる。しかしながら、その場合には、下層303と上層301を採用した移動部材よりも浮力が小さくなる。そのため、時間当たりに補充するインクの量が多い場合には、移動部材の鉛直上方向への移動がインクの補充量に間に合わず、移動部材103がインク中に没してしまう可能性がある。したがって、移動部材を2層構造とする場合においては、図3に示す下層303と上層301、または、下層303と中層302を採用することが好ましい。即ち、2層構造における上層にあたる層の密度は、下層にあたる層の密度よりも低い。また、移動部材の上下振動を抑制するために、少なくとも下層の浮力は上層の浮力よりも大きいことが望ましい。
【0020】
さらには、移動部材103を複数の層構成とせず、単一の層で形成してもよい。しかしながら、例えば、移動部材103が上層301の一層のみから構成されている場合には、移動部材103の浮力が小さく、時間当たりに補充するインクの量が多い場合には、補充したインク内に移動部材103が没する可能性がある。その結果、補充口105から補充されるインクが直接インクの液面に接し、インクの飛び散り等が生じる恐れがある。また、移動部材103が下層303の一層から構成されている場合には、補充されたインクが密度の高い部分に衝突することになるため、インクの飛び散り等を抑制する効果が低下する。したがって、移動部材103は、上方が粗く(密度が低く)、下方に行くに従い細かく(密度が高く)なる構成とすることが望ましい。即ち、下層から上層に向かって密度が低くなるようにすることが好ましい。なお、移動部材103を単一の層で形成する場合には、図3に示す下層303に用いられた発泡ウレタンを使用することが浮力の観点から好ましい。しかしながら、上述したように、密度の高い発泡ウレタンはインクの飛び散り等の抑制の効果が小さいため、インクの飛び散り等の効果を大きくするために、発泡ウレタンに微細な凹部(空隙)を形成することが好ましい。これにより、補充されたインクの一部は空隙を通過し、インクが飛び散る(跳ね返る)こと等の効果を低下させることなく得ることができる。
【0021】
図4は、インク収容容器101にインクが補充される様子を示す図である。図4(a)は、インク収容容器101にインクを補充し始めた初期段階の状態を示す図である。図4(b)は、インク収容容器101にインクを補充し終えたときの状態を示す図である。図4(a)の状態からインクを補充すると、インク収容容器101内のインク104の液面が鉛直方向の上方に上昇すると共に、移動部材103が支柱102に沿って上へ移動する。移動部材103は、必ずインクの液面から露出した領域を有している。これにより、インク収容容器101内のインクの液面がどのような位置であっても、補充されるインクは移動部材103の上面に当たる。したがって、インクの液面に位置に関わらず、インクの飛び散り(飛散)を抑制することができる。
【0022】
上記の説明においては、移動部材103の形状を円錐と円柱を組み合わせたような形状としているが、本発明はこれに限られない。即ち、三角錐や四角錐、角柱などの組み合わせであってもよい。また、補充したインクが衝突する移動部材103の上面を構成する部分は、傾斜を有する形状に限定されず、角柱の形状や円柱の形状であってもよい。また、最下層の高い浮力を有する下層303は、樹脂製の板や空気室を持つ部材であってもよい。
【0023】
さらには、上層301、中層302としてポリプロピレンの繊維を圧縮した集合体を用いることにより、インク内に異物が存在していた場合であっても、ポリプロピレンの繊維で異物を捕縛するという効果も期待することができる。
【0024】
(第2の実施形態)
図5を参照しながら説明する。なお、第1の実施形態と同様の箇所については同一の符号を付し、説明は省略する。本実施形態においては、インクの飛び散り抑制に加え、インクの蒸発を抑制することができる。インク収容容器401の底面を広く覆うことができる大きさの面積を持つ移動部材403を設けることで、インクが空気に接触する範囲を小さくすることができる。これにより、インクが蒸発することを抑制している。具体的に、インク収容容器401の底面の8割を移動部材403で覆うことが好ましい。仮に、移動部材403がインク収容容器401の底面の10割近くを覆っているとすると、移動部材403とインク収容容器401の側壁との間には隙間がほとんど形成されない。そのため、移動部材403とインク収容容器401の側壁とが互いに擦り合い、鉛直方向の上下に移動部材403が移動することが阻害されてしまう。したがって、本実施形態における移動部材403の大きさは、インク収容容器401の底面積の8割を覆うことができる大きさであることが好ましい。
【0025】
ただし、移動部材403がインク収容容器101の全面に延在していることにより、補充したインクが移動部材403上に留まり、下方にまで流れるのに時間を要することがある。この状態のまま、インクの補充を続けると、移動部材103の下方に落ちるインクの量よりも補充されるインクの量の方が多い場合には、移動部材103がインク中に没し、その後補充されるインクが液面に直接接触して、インクの飛び散り等が生じる恐れがある。
【0026】
そこで、下方にインクを流すために、図5(b)に示すように、補充されたインクを移動部材の下方に速やかに流動させるためのインク流動部404を移動部材403の一部に設けることが好ましい。これにより、補充されたインクがインク流動部を介して移動部材403の下方に移動し、移動部材403がインク中に没することを抑制することができる。図5(b)においては、インク流動部404として、移動部材403を貫通する貫通孔が形成されている。しかしながら、インク流動部を介してインクが蒸発しやすくなるため、移動部材403に形成する貫通孔は、移動部材403が複数の層から構成されている場合には、下層にのみ設けることが好ましい。下層にのみインク流動部を設けることで、その貫通孔の上部には上層が存在することとなり、インクの液面が直接空気に露出してしまうことを抑制することができる。即ち、下層にのみインク流動部を設けることで、インクの蒸発を抑制しつつも、移動部材403がインク中に没してしまうことを抑制することができる。なお、インク流動部404は、必ずしも孔の形状である必要はなく、例えば、図5(c)に示すように、移動部材403の端に形成された切欠き形状であってもよい。切欠きであっても、同様の効果を得ることができる。
【0027】
(第3の実施形態)
図6を参照しながら説明する。なお、第1の実施形態と同様の箇所については同一の符号を付し、説明は省略する。本実施形態においては、インクの飛び散り等をより抑制するため、移動部材103の移動方向をインクが補充される際にインクが辿る軌跡上とする。具体的には、補充口105の開口を含む仮想的な面を考えたときに、インクの液面の上昇に伴い移動部材103が移動したとしても、その仮想的な面の垂線と重なる位置に移動部材103が配置されるようにすることが好ましい。これにより、補充されるインクをより確実に移動部材103に衝突させることができ、インクの飛び散りをより抑制することができる。
【0028】
図6に示すように、インク収容容器101の補充口105が、鉛直方向に対して傾いて設けられていると、補充口105に接続するインクボトル201のインクの注ぎ口も鉛直方向に対して斜めになる。その結果、インク収容容器101にインクを補充すると、インクボトルの注ぎ口から飛び出るインクも、鉛直方向に対して傾いて飛び出てインク収容容器101に充填される。したがって、仮に移動部材103が鉛直方向と同じ方向に移動する場合には、補充の初期段階ではインクが移動部材103に衝突したとしても、インクの液面の上昇に伴って移動部材が鉛直上方向に移動すると、インクが移動部材103に衝突しなくなることもある。そこで、本実施形態によれば、移動部材103がインクの辿る軌跡の方向に移動するため、インクの補充の初期段階から終了段階までインクを移動部材103に衝突させることができ、インクの飛び散りをより抑制することができる。
【0029】
移動部材103の移動方向をインクの辿る軌跡とするために、支柱602を、インクの軌跡方向に延在するように、鉛直方向に対して傾かせている。即ち、補充口105の開口を含む仮想的な面を考えたときに、その仮想的な面の垂線方向に沿うように支柱602を傾かせる。なお、インクの辿る軌跡は、補充口105の開口が面する方向(補充口105の開口を含む仮想的な面の垂線方向)である。
【0030】
(第4の実施形態)
図7を参照しながら説明する。なお、第1の実施形態と同様の箇所については同一の符号を付し、説明は省略する。インク収容容器701内のインクが空になると、移動部材103の底面は、インク収容容器701の底面と接触する。そのため、場合によっては、インクの固着により、移動部材103の底面とインク収容容器701の底面が接着してしまうことがある。その結果、その後にインクを補充してインクの液面が上昇したとしても、移動部材103がインク収容容器101の底面から離れず、移動部材103がインクの液面の高さに連動して鉛直方向の上下方向に移動しないことがある。
【0031】
そこで、本実施形態においては、インク収容容器701の底面に突起702を設け、インク収容容器701内のインクが空になった場合には、移動部材103が突起702に接触するようにしている。これにより、移動部材103の底面が直接的にインク収容容器701の底面に接触することを抑制することができる。
【0032】
突起702は、その面積が移動部材103の底面積よりも非常に小さく、具体的に突起702の底面積は、移動部材103の底面積の10分の1以下である。そのため、仮にインクの固着により突起702と移動部材103が接着したとしても、その接着力は非常に小さい。したがって、インクを補充してインクの液面が上昇するときに得られる移動部材103の浮力により、突起702と移動部材103との接着が外れ、インクの液面の高さに連動して、移動部材103が移動することができる。なお、突起702は、移動部材103の底面に設けてもよく、同様の効果を得られる。
【0033】
(第5の実施形態)
図8を参照しながら説明する。なお、第1の実施形態と同様の箇所については同一の符号を付し、説明は省略する。本実施形態においては、移動部材803の形状を、インク収容容器の補充口105の鉛直方向に対する傾きに沿うような形状としている。具体的には、移動部材803の上面の鉛直方向に対する傾斜角を、補充口の開口を含む仮想的な面の鉛直方向に対する傾斜角が略同一となるようにしている。ここで、略同一とは、移動部材の上面の傾斜角と補充口を含む仮想的な面の傾斜角との差が10度以内であることをいう。これにより、インクの液面の上昇に伴い移動部材が補充口105付近にまで移動したとしても、移動部材803の一部が補充口105から突出することを抑制することができる。
【0034】
移動部材が補充口105の鉛直方向に対する傾きに沿うような形状となっていない場合には、インクの液面の上昇に伴い移動部材が補充口105付近にまで移動すると、移動部材の一部が補充口105から突出してしまう恐れがある。この状態のまま、インクの補充を続けると、インクは外部に飛び散ることがある。そこで、本実施形態においては、移動部材803の形状を、インク収容容器900の補充口105の傾きに沿うような形状とする。これにより、インクの液面の上昇に伴い移動部材803が上方向に上昇したとしても、移動部材803の一部が補充口105から突出することを抑制でき、インクが外部に飛び散ることを抑制することができる。
【符号の説明】
【0035】
101 インク収容容器
103 移動部材
104 インク
105 補充口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9