(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】食品の付着低減剤
(51)【国際特許分類】
A23D 7/00 20060101AFI20240826BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20240826BHJP
【FI】
A23D7/00 504
A23L5/00 D
(21)【出願番号】P 2020086559
(22)【出願日】2020-05-18
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000114318
【氏名又は名称】ミヨシ油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】魚住 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】三橋 修代
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-153179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D 7/00-9/06
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形成分が10質量%以上70質量%以下であり、該固形成分中に油脂を35質量%以上、乳化剤を20質量%以下含む水中油型乳化油脂組成物であって、メディアン径が0.2~1.5μmである、食品の付着低減剤。
【請求項2】
油脂を35質量%以上、乳化剤を20質量%以下含む粉末油脂であって、再溶解時のメディアン径が0.2~1.5μmである、食品の付着低減剤。
【請求項3】
乳化剤の含有量が12.5質量%以下であり、油脂の含有量が50~75質量%である、請求項2に記載の食品の付着低減剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の食品の付着低減剤が使用された食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の付着低減剤、該付着低減剤を使用した食品に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者や入院患者は、嚥下機能の低下により通常の食事を十分に摂ることが困難な場合があり、低栄養状態に陥ることがある。そのような嚥下困難者は窒息や誤嚥性肺炎のリスクも高まる。こうしたリスクに対処するべく、介護食品メーカーは、ゲル化剤などにより、とろみを付ける、または、ペースト状にするなどして、窒息や誤嚥を防ぐ努力を重ねてきた。
【0003】
しかし、ゲルの状態によっては、食品の付着感が強く、食べやすさを損ねるなどの問題があった。現在では、付着感が抑制され、嚥下しやすい食感であり、かつ少量で十分な栄養が摂取できる食品が求められている。
【0004】
特許文献1は、粉末油脂を配合したゲル食品において保形性および飲み込みやすさについて検討されているが、乳化径が付着性、嚥下(食べやすさ)に影響することは述べられていない。
【0005】
特許文献2は、分散質のメディアン径がプディングの口溶けに影響すると述べられているが、メディアン径の範囲が広く、嚥下可能な範囲としては検討すべき余地がある。また、付着性については検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-153179
【文献】再公表2013-099838
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明によれば、ベースとなる食品の原料配合を大きく変更することなく、該食品の付着性を低減させることができる。
本発明の目的は、食品の付着低減剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行なった。その結果、特定の油脂量、乳化剤量、メディアン径である水中油型乳化物を食品の付着低減剤として使用することにより、本課題が解決できることが見いだされた。
【0009】
すなわち、本発明は以下のものを提供する。
(1)固形成分が10質量%以上70質量%以下であり、該固形成分中に油脂を35質量%以上、乳化剤を20質量%以下含む水中油型乳化油脂組成物であって、メディアン径が0.2~1.5μmである、食品の付着低減剤。
(2)油脂を35質量%以上、乳化剤を20質量%以下含む粉末油脂組成物であって、再溶解時のメディアン径が0.2~1.5μmである、食品の付着低減剤。
(3)請求項1または2に記載の付着低減剤が使用された食品
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、食品に配合することで、食品の付着性を抑制できる付着低減剤が提供される。また、本発明によれば当該付着低減剤を含有する食品が提供される。
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明において、付着低減剤の水中油型乳化物、粉末油脂に使用される油脂としては、液体、固体の動植物油脂、硬化した動植物油脂、動植物油脂のエステル交換油、分別した液体油又は固体脂等、食用に適するものであれば特に限定されない。具体的には、ナタネ油、コーン油、大豆油、綿実油、サフラワー油、パーム油、ヤシ油、米糠油、米油、ゴマ油、カカオ脂、シア脂、サル脂、マンゴー油、イリッペ脂、オリーブ油、パーム核油等の植物性油脂、魚油、豚脂、牛脂、鶏脂、乳脂等の動物性油脂、およびこれらの油脂の水素添加油またはエステル交換油、あるいはこれらの油脂を分別して得られる液体油、固体脂等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0012】
また、健康の維持、増進や疾患の予防、改善等の効果が期待される高度不飽和脂肪酸を含有する油脂を用いることもできる。具体的には、高度不飽和脂肪酸としてα-リノレン酸を含有するシソ油、エゴマ油、アマニ油や、高度不飽和脂肪酸としてEPAやDHAを含有する魚油、海藻油、高度不飽和脂肪酸としてγ-リノレン酸を含有する月見草油、ボラージ油などの油脂を例示することができる。
【0013】
さらに、油相は、呈味油を含んでもよい。呈味油は、呈味性を有する油脂や油溶性の呈味成分を用いるか、油脂に油溶性の呈味成分を添加することにより呈味性を有する油脂とすることができる。呈味性を有する油脂としては、ピーナツ油、アーモンド油、レモン油、ライム油、オレンジ油、動植物油等に香味野菜の香気成分を付与した葱油、山椒油、ガーリック油、ジンジャー油、バターを加熱して焙煎臭を付与した焦がしバター油等が挙げられる。
【0014】
本発明の付着低減剤が水中油型乳化物である場合、油脂の配合量は、固形成分に対して35質量%以上であり、好ましくは50~75質量%である。油脂量がこの範囲であると、食品の付着抑制を向上させることができる。
また付着低減剤が粉末油脂組成物である場合、油脂の配合量は、35質量%以上であり、好ましくは50~75質量%である。油脂量がこの範囲であると、食品の付着抑制を向上させることができる。
【0015】
本発明の付着低減剤は乳化剤を含有する。乳化剤としては、加工デンプン、レシチン、サポニン、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸ナトリウム、ステアロイル乳酸カルシウム等を例示することができる
【0016】
乳化剤の含有量は、付着低減剤が、水中油型乳化油脂組成物である場合、固形成分全体に対して20質量%以下、好ましくは、3~7質量%の範囲を例示することができる。乳化剤の含有量がこの範囲であると、付着低減剤の乳化性が安定化すると共に、食品に用いた際の付着性を抑制させることができる。
また付着低減剤が、粉末油脂組成物である場合、乳化剤量は、粉末油脂組成物全体に対して、20質量%以下、好ましくは、3~7質量%の範囲を例示することができる。乳化剤の含有量がこの範囲であると、付着低減剤の乳化性が安定化すると共に、食品に用いた際の付着性を抑制させることができる。
【0017】
本発明の付着低減剤は、水を含む水相に、油脂を含む油相を添加し、調製することができる。乳化剤は、水相、油相いずれにも添加することができる。また蛋白質、糖質(デンプン加水分解物)増粘多糖類などを添加する場合は、水相に添加することができる。本発明の付着低減剤は、油相と水相とを攪拌、均一化することにより得られる水中油型乳化物(O/W)乳化物である。また、本発明の付着低減剤は該乳化物を乾燥粉末化する事などによって得ることができる。
【0018】
本発明の付着低減剤の固形成分は、水中油型乳化油脂組成物中の水を除いた成分である。
具体的には、油、乳化剤や後述する蛋白質、デンプン分解物などを挙げることができる。
固形成分は、水中油型乳化油脂組成物に対して10質量%以上70質量%であり、好ましくは、40質量%以上60質量%以下である。
【0019】
本発明の付着低減剤は、上記、油脂、乳化剤以外に蛋白質、デンプン分解物を含有することができる。
【0020】
蛋白質は、組成物の形態であってよい。具体的には、例えば酸カゼイン、レンネットカゼイン、カゼインナトリウム、カゼインカリウム、ミセラーカゼイン、ホエー蛋白、それらの酵素分解物である乳ペプチド、ミルクプロテインコンセントレート、トータルミルクプロテイン等の乳蛋白質、全脂粉乳、脱脂粉乳、ホエーパウダー、バターミルクパウダー、などの動物性蛋白質、大豆蛋白質、小麦蛋白質、そら豆蛋白質、ヒヨコ豆蛋白質などの植物性蛋白質などが例示され、これらを併用し使用することもできる。中でも動物性蛋白質が好ましく、カゼインナトリウムがより好ましい。
【0021】
蛋白質の配合量は、水中油型乳化油脂組成物である場合は、固形成分全体に対して0.5~20質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがより好ましい。蛋白質の配合量がこの範囲であると、効果的に食品の付着性を低減させることができる。
また粉末油脂組成物である場合は、粉末油脂全体に対して0.5~20質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがより好ましい。蛋白質の配合量がこの範囲であると、効果的に食品の付着性を低減させることができる。
【0022】
デンプン加水分解物は、豆、穀物または塊茎デンプンの酸または酵素加水分解によって得られる任意の生成物であり、粉末油脂組成物である場合は、賦形剤として作用する。
本発明の付着低減剤に配合されるデンプン加水分解物は、DEが5~40である。DE(Dextrose Equivalent)とは、デキストリンの構成単位であるグルコース残基の鎖長の指標となるものであり、デキストリン中の還元糖の含有量(%)を示す値である。値が大きいほどデキストリンの鎖長は短くなる。DE値はウィルシュテッターシューデル法により測定することができる。デンプン加水分解物のDEが5~40であると、酸化安定性、乳化安定性および作業性を向上させることができる。また、デンプン加水分解物のDEは、5~30であることがより好ましい。
【0023】
デンプン加水分解物は、DEが5~40であれば、その種類は限定されないが、例えば、マルトデキストリン、分岐デキストリン、グルコースシロップ、デキストロースなどのうちの1種または2種以上を例示することができる。2種以上のデンプン加水分解物を使用する場合は、全体のDEが5~40であればよい。
【0024】
デンプン加水分解物の配合量は、水中油型乳化物である場合は、付着低減剤の固形成分全体に対して5~40質量%であることが好ましく、10~30質量%であることがより好ましい。デンプン加水分解物の配合量がこの範囲であると、付着低減剤の乳化安定性および食品に用いた際の付着性を抑制させることができる。
また粉末油脂組成物である場合は、付着低減剤の固形成分全体に対して5~40質量%であることが好ましく、10~30質量%であることがより好ましい。デンプン加水分解物の配合量がこの範囲であると、付着低減剤の乳化安定性および食品に用いた際の付着性を抑制させることができる。
【0025】
本発明の付着低減剤は、その効果を損なわない範囲内において、その他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、例えば、抗酸化剤、着色料、増粘多糖類、フレーバー、ビタミンまたは関連栄養素、ミネラルなどを例示することができる。
【0026】
抗酸化剤としては、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸誘導体、マルトビオン酸、トコフェロール、トコトリエノール、リグナン、ユビキノン類、キサンチン類、オリザノール、植物ステロール、カテキン類、ポリフェノール類、茶抽出物等を例示することができる。
【0027】
増粘多糖類としては、アラビアガム、キサンタンガム、トラガントガム、ジェランガム、グァーガム、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、プルラン、カラギーナン、寒天、LMペクチン、HMペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またそれらを含んだ製剤を例示することができる。
【0028】
フレーバーとしては、バターフレーバー、ミルクフレーバー、クリームフレーバー、ナッツフレーバー、フルーツフレーバー、乳製品の控訴分解物が挙げられる。
【0029】
ビタミンまたは関連栄養素としては、例えば、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、チアミン、リボフラビン、ピリドキシン、ビタミンB12、カロテノイド(例えばβ−カロテン、ゼアキサンチン、ルテイン、リコペン)、ナイアシン、葉酸、パントテン酸、ビオチン、ビタミンC、コリン、イノシトール、その塩及び誘導体などのうちの1種または2種以上を例示することができる。
【0030】
ミネラルとしては、例えば、カルシウム、リン、マグネシウム、鉄、亜鉛、マンガン、銅、ナトリウム、カリウム、モリブデン、クロム、塩化物などのうちの1種または2種以上を例示することができる。
【0031】
本発明の付着低減剤は、各種の用途に好適に使用することができる。例えば、製菓製パン、スープ類、ソース類、飲料、惣菜類、スナック惣菜類、水産練り製品、畜肉製品、経腸栄養剤、ゼリー、ヨーグルト、離乳食、ミキサー食、流動食などの飲食品に配合して用いることができる。
【0032】
例えば、本発明品をゲル状食品に用いる場合、固形分換算(内掛け)で3~40質量%配合することで好適に付着性を抑制できる。また、おから煮やパン粥などの食品に使用する場合、固形分換算(外掛け)で、3~30質量%配合することで好適に付着性を抑制できる。
【0033】
3.付着低減剤の調製
以下に、本発明である付着低減剤の製造方法の一例について説明する。
本発明の付着低減剤は、油脂、乳化剤、蛋白質、デンプン加水分解物を含む水中油型乳化物を作製、または該乳化物を乾燥粉末化した態様として得ることができる。
【0034】
上記水中油型乳化物は、水を含む水相に、油脂を含む油相を添加し、調製することができる。乳化剤は、水相、油相いずれにも添加することができる。また蛋白質、デンプン加水分解物を添加する場合は、水相に添加することができる。例えば、次の乳化工程および均質化工程によって調製することができる。
【0035】
(乳化工程)
乳化工程では、各原材料を乳化機の撹拌槽に投入して撹拌混合する。水とその他の原材料の配合比は、特に限定されないが、例えば、油脂、カゼインナトリウム、デンプン加水分解物およびその他の原材料を含む水以外の原材料の合計量100質量%に対して水50~200質量%の範囲内にすることができる。各原材料の配合手順は、特に限定されないが、例えば、カゼインナトリウム、デンプン加水分解物などの水溶性成分を水に室温で分散後、加熱下に攪拌し、あるいは当該水溶性成分を加熱した水に分散、攪拌して完全に溶解させた後、撹拌槽に設置されたホモミキサーなどの攪拌装置で攪拌しながら、加熱溶解させた油相成分を滴下して乳化することができる。
【0036】
乳化工程において得られる乳化物(スラリー)の粘度は45度において、10mPa・s~300mPa・sであることが好ましく、40mPa・s~150mPa・sであることがより好ましい。粘度がこの範囲であると食品への添加が容易であり、また噴霧乾燥時にノズルより均一な液滴をスプレーすることができる。水中油型乳化物の粘度はB型粘度計(東京計器(株)製)等を用いて測定することができる。
【0037】
(メディアン径) 均質化工程では、乳化工程において得られた乳化液を圧力式ホモジナイザーに供給することによって油滴サイズが微細化される。例えば、市販の圧力式ホモジナイザーを用いて、10~250kgf/cm2程度の圧力をかけて均質化し、油滴サイズを微細化することができる。スラリーのメディアン径は0.2~1.5μmが好ましく、0.3~1.3μmがより好ましく、0.3~1.0μmが最も好ましい。メディアン径が0.2μm以下であると食品が硬くなり油脂特有の滑らかさが感じにくくなり、1.5μm以上であると食品の付着性が高くなり、口内に付着するなど食べにくい物性となる。なお、乾燥粉末化前において加熱殺菌工程を設けてもよい。
【0038】
本発明の付着低減剤は水中油型乳化物を乾燥したものであってもよい、その場合、水に添加すると元の水中油型乳化物となり、油滴が再分散した状態となる。水に10質量%濃度で希釈した際の再溶解時の油滴のメディアン径は、例えば0.2~1.5μmが好ましく、0.3~1.3μmがより好ましく、0.3~1.0μmが最も好ましい。メディアン径が大きくなり過ぎると食品の付着性が高くなり、食べにくい物性となり、小さいと食品が硬くなり油脂特有の滑らかさが感じにくくなることからこの範囲であることが好ましい。
【0039】
(粉末油脂の製造)水中油型乳化物を乾燥粉末化する方法としては、一般的に知られている噴霧乾燥法、真空凍結乾燥法、真空乾燥法などを用いることができる。これらの中でも、噴霧乾燥法によって得られる噴霧乾燥型粉末油脂が好ましい。次に、噴霧乾燥法によって乾燥粉末化する場合には、均質化した乳化液を高圧ポンプで噴霧乾燥機の入口に供給し、高温熱風を吹き込み、噴霧乾燥機の槽内に上方から噴霧する。噴霧乾燥された粉末は槽内底部に堆積される。噴霧乾燥機としては、例えば、ロータリーアトマイザー方式やノズル方式で噴霧するスプレードライヤーを用いることができる。噴霧乾燥された粉末を噴霧乾燥機の槽内から取り出した後、振動流動槽などにより搬送しながら冷風で冷却することによって粉末油脂を製造することができる。
【実施例】
【0040】
次に、実施例および比較例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらになんら制限されるものではない。
【0041】
<分析>
・メディアン径
メディアン径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置(商品名「SALD-2300」、株式会社島津製作所製)を用いて測定した。
また、粉末化した際のメディアン径は、粉末油脂を10質量%濃度で溶解した際のメディアン径とした。
・付着性
ゲル組成物の付着性の測定は20度に調温したゲル組成物を直径40mm、高さ15mmの容器に充填し、直径20mmのプランジャーを用いて速度10mm/sec、クリアランス5mmで2回圧縮試験を行なった。
測定は株式会社島津製作所社製 テクスチャーアナライザー「EZ-SX200N」を用いて測定した。
【0042】
<水中油型乳化物の作製>
表1に示す配合で、水に乳蛋白質、デンプン加水分解物を添加し水相とした。油脂に乳化剤を添加し油相とした。なお乳化剤の加工デンプンに関しては水相に添加した。
水相と油相を65℃に加温し、水相に油相を添加し攪拌して乳化した後、高圧ホモジナイザーで均質化した。その後、1~5℃まで急冷し、さらに、攪拌しながら冷蔵下で10時間エージングし、水中油型乳化物を得た。
【0043】
<官能評価>
以下の各評価においてパネルは五味(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)の識別テスト、味の濃度差識別テスト、食品の味の識別テスト、基準嗅覚テストを実施し、その各々のテストで適合と判断された20~40代の男性9名、女性11名を選抜した。
評価を実施するにあたりパネル全体で討議し、各評価項目の特性に対してすり合わせを行って、各パネルが共通認識を持つようにした。また、官能評価におけるパネルの偏りを排除し、評価の精度を高めるために、サンプルの試験区番号や内容はパネルに知らせず、ランダムに提示した。
【0044】
<ゲル組成物の作製>
上記のようにして得られた水中油型乳化物60質量%、水38質量%、ゼラチン2質量%を混合した。90度まで加熱した水にゼラチンを入れ完全に溶解した後、60度に調温した水中油型乳化物を混合し、10度まで冷却しゲル組成物を作製した。得られたゲル組成物を用い付着性及び官能評価を行なった。
【0045】
<ゲル組成物の評価>
(1)付着性
◎+:付着性が500J/m3未満
◎ :付着性が500J/m3以上800J/m3未満
○ :付着性が800J/m3以上1500J/m3未満
△ :付着性が1500J/m3以上2000J/m3未満
× :付着性が2000J/m3以上
【0046】
得られたゲル組成物をパネル20名で試食し、「食べやすさ」を10点満点で評価し、その平均値を求めた。
(2)食べやすさ
◎+:平均値が8点以上
◎ :平均値が7点以上8点未満
○ :平均値が5点以上7点未満
△ :平均値が4点以上5点未満
× :平均値が4点未満
【0047】
<粉末油脂の作製>
実施例1、5、17、比較例2で得られた水中油型乳化物を、ノズル式スプレードライヤーを用いて25ml/minの流量で噴霧乾燥し、水分が約1質量%の粉末油脂を得た(噴霧乾燥条件:入口温度180℃)。尚、実施例5の水中油型乳化物を噴霧乾燥した粉末油脂を水にて50%希釈したものを実施例18とした。また、同様に実施例1、17、比較例2の粉末油脂を水にて10%希釈した際の再溶解メディアン軽はそれぞれ1.42μm、0.55μm、2.3μmであった。
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
<食品への添加試験>
実施例1、5、17、比較例2の粉末油脂を、マッシュポテト、ミキサー食、おから煮、パン粥へ添加し、評価を行なった。
【0052】
[1]マッシュポテト
得られた粉末油脂を表3の比率で混合しマッシュポテトを得た。得られたマッシュポテトにて、評価を行なった。
【0053】
得られたマッシュポテトをパネル20名で試食し、「口の中での付着性」を10点満点で評価し、その平均値を求めた。
(1)口の中での付着性
◎:平均値が8点以上
○:平均値が6点以上8点未満
△:平均値が5点以上6点未満
×:平均値が5点未満
【0054】
得られたマッシュポテトをパネル20名で試食し、「食べやすさ」を10点満点で評価し、その平均値を求めた。
(2)食べやすさ
◎:平均値が8点以上
○:平均値が6点以上8点未満
△:平均値が5点以上6点未満
×:平均値が5点未満
【0055】
[2]ミキサー食
得られた粉末油脂を表4の配合比率で混合し、ミキサー食を得た後、評価を行なった。
詳しくは、鶏むね肉(蒸し)、出汁、ゲル化剤、粉末油脂を混合し、ペースト状になるまでミキサーにかけた。その後90℃、3分加熱し、型に入れて室温(20℃)で冷却し、得られたミキサー食にて評価を行なった。
【0056】
得られたミキサー食をパネル20名で試食し、「口の中での付着性」を10点満点で評価し、その平均値を求めた。
(1)口の中での付着性
◎:平均値が8点以上
○:平均値が6点以上8点未満
△:平均値が5点以上6点未満
×:平均値が5点未満
【0057】
得られたミキサー食をパネル20名で試食し、「食べやすさ」を10点満点で評価し、その平均値を求めた。
(2)食べやすさ
◎:平均値が8点以上
○:平均値が6点以上8点未満
△:平均値が5点以上6点未満
×:平均値が5点未満
【0058】
[3]おから煮
得られた粉末油脂を表5の配合比率で、市販のおから煮と混合した。得られたおから煮にて評価を行なった。尚、粉末油脂の代わりに、なたね油を使用したものを参考例1とした。
【0059】
おから煮をパネル20名で試食し、「口の中での付着性」を、参考例1を基準(5点)として10点満点で評価し、その平均値を求めた。
(1)口の中での付着性
◎:平均値が8点以上
○:平均値が6点以上8点未満
△:平均値が5点以上6点未満
×:平均値が5点未満
【0060】
おから煮をパネル20名で試食し、「食べやすさ」を、参考例1を基準(5点)として10点満点で評価し、その平均値を求めた。
(2)食べやすさ
◎:平均値が8点以上
○:平均値が6点以上8点未満
△:平均値が5点以上6点未満
×:平均値が5点未満
【0061】
[4]パン粥
得られた粉末油脂を表6の配合比率で混合し、パン粥を得た後、評価を行なった。詳しくは、食パン(耳なし)を細かくカットし、牛乳、上白糖、ゲル化剤、粉末油脂を混ぜ合わせ、煮立つまで加熱した。室温(20℃)まで冷却し、得られたパン粥にて評価した。尚、粉末油脂の代わりに、なたね油を使用したものを参考例2とした。
【0062】
パン粥をパネル20名で試食し、「口の中での付着性」を、参考例2を基準(5点)として10点満点で評価し、その平均値を求めた。
(1)口の中での付着性
◎:平均値が8点以上
○:平均値が6点以上8点未満
△:平均値が5点以上6点未満
×:平均値が5点未満
【0063】
パン粥をパネル20名で試食し、「食べやすさ」を、参考例2を基準(5点)として10点満点で評価し、その平均値を求めた。
(2)食べやすさ
◎:平均値が8点以上
○:平均値が6点以上8点未満
△:平均値が5点以上6点未満
×:平均値が5点未満
【0064】
固形成分が10質量%以上70質量%以下であり、該固形成分中に油脂を35質量%以上、乳化剤を20質量%以下含む水中油型乳化油脂組成物であって、メディアン径が0.2~1.5μmである実施例1~18の付着低減剤を使用したゼリー試験では、付着性と食べやすさの課題を克服することができた。一方、粒子径が請求の範囲外である比較例1、2、5、7、油脂量が少ない比較例3、乳化剤量が多い比較例4、固形成分量が少ない比較例6においては、付着性と食べやすさの課題を克服することはできなかった。
【0065】
また、実施例1、5、17の水中油型乳化物を乾燥させた粉末油脂を使用した食品において、実施例19~30の食品では、 比較例2の水中油型乳化物を乾燥させた粉末油脂を用いた比較例8~11の食品と比べ、付着性と食べやすさの評価が良好であった。
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】