(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】有機発光素子、それを有する表示装置、撮像装置、照明装置、移動体
(51)【国際特許分類】
H10K 50/13 20230101AFI20240826BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20240826BHJP
F21S 43/145 20180101ALI20240826BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240826BHJP
H10K 50/12 20230101ALI20240826BHJP
H10K 50/854 20230101ALI20240826BHJP
H10K 59/12 20230101ALI20240826BHJP
H10K 85/20 20230101ALI20240826BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20240826BHJP
F21Y 115/15 20160101ALN20240826BHJP
H10K 101/30 20230101ALN20240826BHJP
H10K 101/40 20230101ALN20240826BHJP
【FI】
H10K50/13
F21S2/00 482
F21S43/145
G09F9/30 365
H10K50/12
H10K50/854
H10K59/12
H10K85/20
H10K85/60
F21Y115:15
H10K101:30
H10K101:40
(21)【出願番号】P 2020104703
(22)【出願日】2020-06-17
【審査請求日】2023-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2019114967
(32)【優先日】2019-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】宮下 広和
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼谷 格
(72)【発明者】
【氏名】山田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】河田 功
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 祐斗
(72)【発明者】
【氏名】鎌谷 淳
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-181937(JP,A)
【文献】国際公開第2012/153603(WO,A1)
【文献】特開2008-091860(JP,A)
【文献】特開2013-067586(JP,A)
【文献】特開2014-022205(JP,A)
【文献】特表2013-514665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00-102/20
H05B 33/00-33/28
G09F 9/30
F21S 43/145
F21S 2/00
F21Y 115/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と、第一発光層と、第二発光層と、陰極とをこの順に備え、
前記第二発光層は、第二化合物と、青色蛍光を発する第二発光材料とを含み、
前記第一発光層は、第一化合物と、前記第二発光材料のエネルギーギャップよりも小さい第一発光材料と、前記第二発光材料のエネルギーギャップよりも小さい第三発光材料とを含み、
下記(a)乃至(e)の関係が成り立つことを特徴とする有機発光素子。
(a) LUMO(H1) > LUMO(D1)
(b) LUMO(H2) > LUMO(D2)
(c) LUMO(H2)-LUMO(D2) > LUMO(H1)-LUMO(D1)
(d) LUMO(H1) > LUMO(D3)
(e) LUMO(D1) > LUMO(D2)
(LUMO(H1)、LUMO(D1)、LUMO(H2)、LUMO(D2)、LUMO(D3)はそれぞれ、第一化合物のLUMO準位、第一発光材料のLUMO準位、第二化合物のLUMO準位、第二発光材料のLUMO準位、第三発光材料のLUMO準位を表す。)
【請求項2】
前記第三発光材料のエネルギーギャップが、前記第一発光材料のエネルギーギャップより小さいことを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項3】
前記第一発光層と前記第二発光層とが互いに接していることを特徴とする請求項1または2に記載の有機発光素子。
【請求項4】
前記第一化合物と前記第一発光材料との間で、下記(g)の関係が成り立つことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の有機発光素子。
(g)LUMO(H1)―LUMO(D1)>HOMO(D1)―HOMO(H1)
【請求項5】
前記第二化合物と前記第二発光材料との間で、下記(h)の関係が成り立つことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の有機発光素子。
(h) HOMO(H2) > HOMO(D2)
【請求項6】
前記第一発光層において、前記第一化合物の重量比は、前記第一発光材料の重量比よりも大きく、前記第二発光層において、前記第二化合物の重量比は、前記第二発光材料の重量比よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の有機発光素子。
【請求項7】
前記第一発光材料および第三発光材料がそれぞれ、緑色を発光する化合物および赤色を発光する化合物のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の有機発光素子。
【請求項8】
白色発光することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の有機発光素子。
【請求項9】
前記第一化合物および前記第二化合物は、いずれも炭化水素のみからなる化合物であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の有機発光素子。
【請求項10】
前記第一発光材料および前記第二発光材料は、いずれもフルオランテン骨格を有する化合物であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の有機発光素子。
【請求項11】
前記第一
化合物および前記第二
化合物は、同じ化合物であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の有機発光素子。
【請求項12】
前記第二発光材料は、電子求引性置換基を2つ以上有する化合物であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の有機発光素子。
【請求項13】
複数の画素を有し、前記複数の画素の少なくとも一つが、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の有機発光素子と、前記有機発光素子に接続されたトランジスタと、を有することを特徴とする表示装置。
【請求項14】
複数のレンズを有する光学部と、前記光学部を通過した光を受光する撮像素子と、前記撮像素子が撮像した画像を表示する表示部と、を有し、
前記表示部は請求項1乃至12のいずれか一項に記載の有機発光素子を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項15】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の有機発光素子を有する表示部と、前記表示部が設けられた筐体と、前記筐体に設けられ、外部と通信する通信部と、を有することを特徴とする電子機器。
【請求項16】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の有機発光素子を有する光源と、前記光源が発する光を透過する光拡散部または光学フィルムと、を有することを特徴とする照明装置。
【請求項17】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の有機発光素子を有する灯具と、前記灯具が設けられた機体と、を有することを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光素子、それを有する表示装置、電子機器、撮像装置、照明装置、移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子は、陽極と陰極とこれらの電極間に配置されている発光層とを含む有機EL(エレクトロルミネセンス)層に通電することにより光を放出する素子である。
【0003】
近年、有機発光素子を用いたフルカラーディスプレイの研究開発が精力的に進められている。有機発光素子は、発光層に含まれる化合物の種類によりホールトラップ型と電子トラップ型に大別されることが知られ、それぞれに適したエネルギーダイアグラムの設計が求められる。
【0004】
一方、フルカラーディスプレイを作製する場合、発光層を画素(素子)ごとに塗り分ける方式と、発光層は白色発光で、カラーフィルタを画素ごとに塗り分ける有機発光素子を用いた方式が知られている。そして、白色発光の発光層を用いる場合は、有機発光素子が二種類以上の発光材料を用いることが知られている。
【0005】
特許文献1には、陽極側から、電子トラップ型の黄色発光層と、電子トラップ型の青色発光層とを積層して白色を発光する有機発光素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2004/0241491号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1にて開示されている有機発光素子は、供給される電流密度に依存して発光色の色度が変化してしまう。特許文献1の有機発光素子は、青色発光層における、発光層ホストと発光層ドーパントとのLUMOエネルギーの差異が、隣り合う黄色発光層における、発光層ホストと発光層ドーパントとのLUMOエネルギーの差異よりも小さい素子構成になっている。
【0008】
このため、青色発光層の電子トラップ性は、黄色発光層よりも小さく、再結合が黄色発光層側にて起こりやすい。このため、青色発光層が発光しにくい素子であった。特に、低電流密度においてその状況は顕著である。結果として、特許文献1に記載の有機発光素子は、電流密度により、黄色発光層と青色発光層の発光バランスの変化が大きい有機発光素子であった。
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電流密度の変化による発光バランスの変化が低減された有機発光素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態に係る有機発光素子は、陽極と、第一発光層と、第二発光層と、陰極とをこの順に備え、前記第二発光層は、第二化合物と、青色蛍光を発する第二発光材料とを含み、前記第一発光層は、第一化合物と、前記第二発光材料のエネルギーギャップよりも小さい第一発光材料と、前記第二発光材料のエネルギーギャップよりも小さい第三発光材料とを含み、下記(a)乃至(e)の関係が成り立つことを特徴とする有機発光素子を提供する。
(a) LUMO(H1) > LUMO(D1)
(b) LUMO(H2) > LUMO(D2)
(c) LUMO(H2)-LUMO(D2) > LUMO(H1)-LUMO(D1)
(d) LUMO(H1) > LUMO(D3)
(e) LUMO(D1) > LUMO(D2)
LUMO(H1)、LUMO(D1)、LUMO(H2)、LUMO(D2)、LUMO(D3)はそれぞれ、第一化合物のLUMO準位、第一発光材料のLUMO準位、第二化合物のLUMO準位、第二発光材料のLUMO準位、第三発光材料のLUMO準位を表す。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電流密度の変化による発光バランスの変化が低減された有機発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る有機発光素子の一例を示す断面模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る有機発光素子を構成する発光層周辺のエネルギー準位を模式的に表したエネルギーダイアグラムである。
【
図3】本発明の一実施形態に係る有機発光素子を用いた表示装置の一例の断面模式図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る表示装置の一例を表す模式図である。
【
図5】(a)本発明の一実施形態に係る撮像装置の一例を表す模式図である。(b)本発明の一実施形態に係る電子機器の一例を表す模式図である。
【
図6】(a)本発明の一実施形態に係る表示装置の一例を表す模式図である。(b)折り曲げ可能な表示装置の一例を表す模式図である。
【
図7】(a)本発明の一実施形態に係る照明装置の一例を示す模式図である。(b)本発明の一実施形態に係る車両用灯具を有する自動車の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係る有機発光素子は、陽極と、第一発光層と、第二発光層と、陰極とをこの順に備える。陽極、陰極は少なくともいずれかが光透過電極であってよく、いずれか一方が反射電極であってよい。前記第一発光層は、第一化合物と第一発光材料とを含み、前記第二発光層は、第二化合物と、前記第一発光材料のエネルギーギャップと異なるエネルギーギャップの第二発光材料とを含む。さらに陽極と陰極との間に第二発光材料よりもエネルギーギャップが小さい第三発光材料を有する。
【0014】
第一化合物は、第一発光材料のホストと呼ばれることもある。第一発光層において、第一化合物の重量比が第一発光材料よりも大きくてよい。第二発光層においても第二化合物の重量比が第二発光材料よりも大きくてよい。
【0015】
第二発光材料のエネルギーギャップは、第一発光材料のエネルギーギャップと異なるので、第二発光材料と第一発光材料は互いに異なる光を発光する。第二発光材料のエネルギーギャップは第一発光材料のエネルギーギャップよりも大きくてよい。すなわち、第二発光材料の発光波長が第一発光材料よりも短波長であってよい。さらに具体的には、第二発光材料は青色を発光する発光材料であってよい。
【0016】
本発明の一実施形態に係る有機発光素子は、下記(a)乃至(d)の関係が成り立つことを特徴とする有機発光素子である。
(a) LUMO(H1) > LUMO(D1)
(b) LUMO(H2) > LUMO(D2)
(a)および(b)は、発光層内に電子をトラップする電子トラップ型の発光層であることを示している。
(c) LUMO(H2)-LUMO(D2) > LUMO(H1)-LUMO(D1)
LUMO(H1)、LUMO(D1)、LUMO(H2)、LUMO(D2)、はそれぞれ、第一化合物のLUMO準位、第一発光材料のLUMO準位、第二化合物のLUMO準位、第二発光材料のLUMO準位を表す。
(c)は、LUMO準位の差が、第一発光層よりも第二発光層が大きいことを示しており、これにより、電流密度の変化による発光バランスの変化を低減することができる。本明細書において、第一化合物のLUMO準位と、第一発光材料のLUMO準位との差をΔLUMOと表すことがある。第二発光層、第三発光層においても同様である。
(d) LUMO(H3) > LUMO(D3)
(d)において、LUMO(H1)、LUMO(D3)はそれぞれ、第一化合物、第三発光材料のLUMOエネルギーを表す。(d)の関係を有することで、第一発光層の電子トラップ性を高めることができ、正孔輸送層に到達する電子を低減することでき、耐久特性を向上させることができる。
【0017】
ここで、本明細書において、LUMOとは、最低非占有分子軌道であり、真空準位に近いほど高いと表現する。HOMOとは、最高被占有分子軌道であり、真空準位に近いほど高いと表現する。
【0018】
これらの測定値、計算値は、真空準位を基準として負の値で表される。本明細書において、LUMO準位、HOMO準位で加減算を行う場合は、測定、計算で得られる負の値を用いて、加減算を行う。
【0019】
本明細書において、エネルギーギャップは、LUMO準位からHOMO準位までのエネルギーのギャップのことを指し、バンドギャップとも呼ばれる。
【0020】
以下、
図1を用いて、本発明の実施形態をより詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る有機発光素子の断面模式図である。
図1(a)の有機発光素子は、絶縁層1上に、陽極2、正孔輸送層3、第一発光層4a、第二発光層4b、電子輸送層5、陰極6がこの順に配置されている。
【0021】
一方、
図1(b)には、絶縁層1、陽極2、正孔輸送層3、第三発光層4c、第一発光層4a、第二発光層4b、電子輸送層5、陰極6がこの順に配置されている。第一発光層4aと第二発光層4bと第三発光層4cは、異なる発光色のドーパントをそれぞれ有する。これら層構成は一例であり、他の有機化合物層を有してもよい。
【0022】
なお、本実施形態において、発光層とは、電極間に設けられた有機化合物層のうち光を発する層をいう。発光層に含まれる化合物のうち、重量比が最も大きい化合物をホストと呼ぶことがあり、主たる発光に寄与する化合物をドーパントまたはゲストと呼ぶことがある。より具体的には、ホストとは発光層に含まれる材料のうち発光層内の含有率が50重量%を超える材料であってよい。より具体的には、ドーパントは、発光層に含まれる材料のうち、発光層内の含有率が50重量%未満である材料をいう。発光層中のドーパントの濃度は、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下であり、さらには、濃度消光を抑制するために10質量%以下であることが望ましい。
【0023】
図2は、本発明の一実施形態に係る有機発光素子を構成する発光層周辺のエネルギー準位を模式的に表したエネルギーダイアグラムを示す図である。
図2の縦軸はエネルギーレベルを表し、電子のエネルギーが高くなる方向を矢印が示している。すなわち、電子のエネルギーは図の上方向が高い。図中第一発光層4aの実線は、第一化合物のエネルギー準位を表しており、破線は第一発光材料のエネルギー準位を示している。電子としてエネルギーレベルが高い方がLUMO準位、電子としてエネルギーレベルが低い方がHOMO準位である。第二発光層4bにおいては、実線は第二化合物であり、破線は第二発光材料を表す。
【0024】
図2に示されるように、本発明において、第一発光層4aに含まれる第一ホストと第一ドーパントの間で下記(a)の関係が成り立つ。
(a) LUMO(H1) > LUMO(D1)
(a)において、LUMO(H1)、LUMO(D1)はそれぞれ、第一ホスト、第一ドーパントのLUMOエネルギーを表す。
【0025】
一方、第二発光層4bに含まれる第二ホストと第二ドーパントの間で下記(b)の関係が成り立つ。
(b) LUMO(H2) > LUMO(D2)
(b)において、LUMO(H2)、LUMO(D2)はそれぞれ、第二ホスト、第二ドーパントのLUMOエネルギーを表す。
【0026】
また、第一発光層4aと第二発光層4bとの間で下記(c)の関係が成り立つ。
(c) LUMO(H2)-LUMO(D2) > LUMO(H1)-LUMO(D1)
【0027】
本発明においては、HOMO準位およびLUMO準位は、実測値を用いても、分子軌道計算より求めた数値を用いてもよい。なお、本明細書において、分子軌道計算の計算手法は、現在広く用いられている密度汎関数法(Density Functional Theory,DFT)を用いた。分子軌道計算における汎関数はB3LYP、基底関数は6-31G*を用いた。より具体的には、Gaussian09(Gaussian09, RevisionC.01, M.J.Frisch, G.W.Trucks, H.B.Schlegel, G.E.Scuseria, M.A.Robb, J.R.Cheeseman, G.Scalmani, V.Barone, B.Mennucci, G.A.Petersson, H.Nakatsuji, M.Caricato, X.Li, H.P.Hratchian, A.F.Izmaylov, J.Bloino, G.Zheng, J.L.Sonnenberg, M.Hada, M.Ehara, K.Toyota, R.Fukuda, J.Hasegawa, M.Ishida, T.Nakajima, Y.Honda, O.Kitao, H.Nakai, T.Vreven, J.A. Montgomery,Jr., J.E. Peralta, F.Ogliaro, M.Bearpark, J.J.Heyd, E.Brothers, K.N.Kudin, V.N.Staroverov, T.Keith, R.Kobayashi, J.Normand, K.Raghavachari, A.Rendell, J.C.Burant, S.S.Iyengar, J.Tomasi, M.Cossi, N.Rega, J.M.Millam, M.Klene, J.E. Knox, J.B.Cross, V.Bakken, C.Adamo, J.Jaramillo, R.Gomperts, R.E. Stratmann, O.Yazyev, A.J.Austin, R.Cammi, C.Pomelli, J.W.Ochterski, R.L.Martin, K.Morokuma, V.G.Zakrzewski, G.A.Voth, P.Salvador, J.J.Dannenberg, S.Dapprich, A.D.Daniels, O.Farkas, J.B.Foresman, J.V.Ortiz, J.Cioslowski, and D.J.Fox, Gaussian, Inc., Wallingford CT, 2010.)により実施した。
【0028】
後述する実施例において、計算値の確からしさを検証するため、分子軌道計算より求めた計算値と、実測値との比較を行う。
【0029】
本発明の一実施形態に係る有機発光素子は、発光層を2つ以上有する素子構成であり、以下の構成を有する。
【0030】
(0)2つの発光層が電子トラップ性である
本発明の一実施形態に係る有機発光素子は、発光層が電子トラップ性であるため、発光層に電子をとどめる性能が、ホールトラップ型の発光層に比して高い。そのため、陰極から注入された電子が発光層を超えて、陽極側へ移動することを低減することができる。陰極から注入された電子が発光層を超えて陽極側へ移動することは、供給されたエネルギーが発光に寄与しないことであり、陽極へ移動する電子は低減されることが好ましい。
【0031】
有機発光素子において、発光層中の電荷(正孔、電子)は、ホストとドーパントの準位間を行き来しながら、発光層内を移動する。言い換えれば、発光層中の電荷は、ホストあるいはドーパントにトラップされ、またはホストあるいはドーパントにデトラップすることを繰り返しながら、発光層内を移動する。このときに、ホストとドーパント間のHOMOあるいはLUMO間のエネルギー差が大きいほど電荷の移動度が低下し、トラップ性が高くなる。
【0032】
より具体的には、ホストのLUMO準位よりもドーパントのLUMO準位が低い場合、発光層に電子トラップ性が生じ、ドーパントのLUMO準位が低いほど、電子トラップ性が高くなる。また、ホストのHOMO準位よりも、ドーパントのHOMO準位が高い場合、発光層に正孔トラップ性が生じる。
【0033】
ここで、本発明においては、上記(a)および(b)の関係が成り立つ。すなわち、2つの発光層(4a、4b)は電子トラップ性の発光層となり、各発光層(4a、4b)の電子移動度が低下する。電子トラップ型にすることで、電子が発光層を超えて陽極側へ移動することを低減できる。
【0034】
また、有機発光素子が発光層と陽極との間に正孔輸送層を有する場合でも、注入された電子が発光層を超えて正孔輸送層に達することは低減されることが好ましい。
【0035】
正孔輸送層に含まれる化合物であるアミン化合物は、非共有電子対(ローンペア)を有する。そのため、電子を放出したラジカルカチオン状態になることに対しては安定であるが、電子を受容したラジカルアニオン状態においては不安定な化合物である。すなわち、電子が正孔輸送層に到達すると、電子と正孔輸送層を形成するアミン化合物とが相互作用し材料劣化を起こすため、発光効率や耐久特性の低下が起こる。本実施形態に係る2つの発光層は電子トラップ性であるため、電子による正孔輸送層の劣化を低減することができ、耐久特性に優れる有機発光素子とすることができる。
【0036】
本発明の一実施形態に係る有機発光素子は、電子トラップ型の第一発光層と電子トラップ型の第二発光層とを有するとともに、以下の構成を有するため、電流密度の変化による発光バランスの変化が低減された有機発光素子である。
【0037】
(1)2つの発光層のうち、陰極側の発光層の方が陽極側の発光層よりも電子トラップ性が高い
複数の発光層を有する有機発光素子、特に発光層が接している場合、電流密度によって再結合領域が変化しうるので、電流密度によって有機発光素子の発光バランスが変化する場合がある。
【0038】
本発明者らは、鋭意検討の結果、陰極側の第二発光層4bが、正孔輸送側の第一発光層4aよりも電子トラップ性が高い素子構成とすることで、電流密度依存性の小さい発光を示す有機発光素子を得ることができることを見出した。
【0039】
上記の構成とすることで、電流密度によらず、第二発光層4bに再結合中心を局在させることができる。第二発光層の電子トラップ性を第一発光層よりも高くすることで、第一発光層で起こる再結合よりも第二発光層で起こる再結合が多くなる。そして、第二発光層4bで生じた励起エネルギーは、エネルギー移動により、第一発光層4aへと再配分することができる。エネルギー移動は、供給される電流に依存しないため、第一発光層4a、および第二発光層4bからは電流密度への依存が低減された発光を得ることができる。結果として、電流密度依存性の小さく、発光バランスに優れる有機発光素子を得ることができる。上記の構成により発光バランスを得る効果は、第二発光材料のエネルギーギャップが、第一発光材料のエネルギーギャップよりも大きい場合に効果が高い。
【0040】
本発明の一実施形態においては、第二発光層4bに再結合中心を局在させる方法として、隣接する第一発光層4aとの電子トラップ性の差異に着目した。すなわち、隣接する発光層のうち、陰極側の発光層の方が、相対的に電子トラップ性が高いことで、陰極側の発光層の電子密度を高め、再結合中心を局在させることができる。
【0041】
上述したように、発光層を複数有する有機発光素子の場合、発光層が一層のみの有機発光素子と異なり、他の発光層との関係についても考慮することが好ましい。上記の構成(1)を満たすとき、電流密度の変化による発光バランスの変化が低減された有機発光素子を得ることができる。
【0042】
本発明の一実施形態に係る有機発光素子は、上記の(1)の他にも以下の構成を有することが好ましい。
(2)第二発光材料は、第一発光材料よりもLUMO準位が低い
(3)第三発光層を有し、第三発光層が電子トラップ性である
(4)第一発光層が、第一化合物のLUMOよりも低いLUMOを有する第三発光材料を含む
(5)第一乃至第三発光層の電子トラップ性が正孔トラップ性よりも高い
(6)第二発光材料のHOMO準位が、第二化合物のHOMO準位よりも低い
(7)第二発光層が青色を発光する発光層である
(8)第一乃至第三化合物が炭化水素のみからなる化合物である
(9)第一乃至第三発光材料がフルオランテン骨格を有する
(10)青色を発光する発光材料が、電子求引性置換基を2つ以上有する
【0043】
以下、これらについて説明する。
【0044】
(2)第二発光材料は、第一発光材料よりもLUMO準位が低い
第二発光層4bの電子トラップ性を向上させ、第二発光層4bを再結合中心にさせるために、第二ドーパントのLUMOエネルギーが、第一ドーパントよりも小さい(真空準位から遠い)ことが好ましい。
【0045】
具体的には、
図2のように、第一ドーパントと、第二ドーパントとの間で下記(e)の関係が成り立つことが好ましい。
(e) LUMO(D1) > LUMO(D2)
【0046】
このような関係にあることで、第二発光材料から第一発光材料へと移動する電子を低減することができ、結果として、第二発光層の電子トラップ性が高め、再結合中心を第二発光層に局在させることができる。
【0047】
(3)第三発光層を有し、第三発光層が電子トラップ性である
図1(b)における各発光層(4a、4b、4c)には、それぞれホストとドーパントが含まれている。すなわち、第一発光層4aには、第一化合物(ホスト)と第一発光材料(ドーパント)が含まれており、第二発光層4bには、第二化合物(ホスト)と第二発光材料(ドーパント)が含まれている。第三発光層4cを有する場合は、第三発光層に第三化合物(ホスト)と第三発光材料(ドーパント)が含まれている。
【0048】
図1(b)のように、第一発光層と陽極の間に、第一発光層に隣接する第三発光層を備える場合に、第三化合物と第三発光材料との間で下記(f)の関係が成り立つこと、すなわち、第三発光層が電子トラップ型であることが好ましい。
(f) LUMO(H3) > LUMO(D3)
(f)において、LUMO(H3)、LUMO(D3)はそれぞれ、第三化合物、第三発光材料のLUMOエネルギーを表す。(e)の関係を有することで、第三発光層は電子トラップ性となる。
【0049】
図1(b)のように、電子トラップ性発光層を陽極側にさらに設けることで、陽極側へ移動する電子を低減することができ、耐久特性を向上させることができる。
【0050】
(4)第一化合物のLUMOよりも低いLUMOを有する第三発光材料を含む第三発光層を有する。
【0051】
図1(a)のように、第三発光層を有さない場合には、第一発光層が第三発光材料(ドーパント)を有してもよい。
【0052】
(5)第一乃至第三発光層の電子トラップ性が正孔トラップ性よりも高い
発光層が電子トラップ性であることは、陽極側の有機化合物層、例えば正孔輸送層等、の劣化を低減するほかにも、耐久特性が改善する理由がある。
【0053】
Science,283,1900(1999)には、発光層のホストであるトリス(8-キノリラト)アルミニウム(AlQ3)の劣化の一因が、正孔通電によって生成したラジカルカチオンの不安定性であることが示唆されている。このような発光層におけるラジカルカチオン起因の劣化を低減するためには、発光層における正孔密度を下げることが好ましい。そして、そのためには、正孔トラップ性を低下させ、電子トラップ性を高め、発光層における電子密度を高くすることが好ましい。
【0054】
具体的には
図2の第一発光層4aを用いて説明すると、下記(g)の関係を満たすことが好ましい。
(g)LUMO(H1)―LUMO(D1)>HOMO(D1)―HOMO(H1)
(g)の関係にあることで、第一発光層の正孔トラップ性を低下させ、電子トラップ性を向上させることができる。
【0055】
(6)第二発光材料のHOMO準位が、第二化合物のHOMO準位よりも低い
第二発光層において、第二化合物と第二発光材料との間で下記(h)の関係が成り立つことが好ましい。
(h) HOMO(H2) > HOMO(D2)
(h)において、HOMO(H2)、HOMO(D2)はそれぞれ、第二化合物(ホスト)のHOMO準位、第二発光材料(ドーパント)のHOMO準位を表す。(h)の関係により、第二発光層における正孔トラップ性を低減することができる。
【0056】
上記の構成により、再結合領域を第二発光層に偏在させる効果を高めることができる。また、(h)の関係にあるとき、第二発光層における電子トラップ性を相対的に向上させることができる。
【0057】
(7)第二発光層が青色を発光する発光層である
(1)でも述べた通り、発光バランスに優れるという効果は、第二発光材料のエネルギーギャップが第一発光材料のエネルギーギャップよりも大きい場合に効果が高い。そして、第二発光材料が青色発光材料であることがより好ましい。また、第一発光材料、第三発光材料はそれぞれ、赤色発光材料、緑色発光材料であることが好ましい。ただし、第一発光材料が緑色発光材料であっても、第一発光材料が赤色発光材料であってもよく、他方が第三発光材料である。本発明の一実施形態に係る有機発光素子では、再結合領域を第二発光層に偏在させるため、エネルギーギャップが大きい第二発光層に青色発光材料を有することが好ましい。青色発光材料により生じる励起エネルギーが、エネルギーギャップが小さい赤発光材料や緑発光材料へとエネルギー移動可能な積層構成である方が、バランスの良い発光を実現しやすいからである。また、標準比視感度の低い青色が発光しやすい構成とすることが好ましいことからも、第二発光材料が青色発光材料であることが好ましい。
【0058】
図1(a)のような構成の場合、第一発光層においてエネルギーギャップの異なる赤発光材料と緑発光材料とが混在するため、緑発光材料へのエネルギー移動よりも、エネルギーギャップの小さい赤発光材料へのエネルギー移動が起こりやすい。そのため、赤発光材料の重量比は、緑発光材料の重量比に比べて小さくすることが好ましい。好ましくは赤発光材料の重量比は、緑発光材料の1/5以下、より好ましくは1/10以下にすることが望ましい。これにより、赤・緑のドーパントの発光強度バランスを整えることができる。なお、重量比は、ドープする濃度で調整することができることからドープ濃度とも呼ばれる。また、発光材料は、その重量比が小さいことからドーパントと呼ぶこともできる。
【0059】
なお、本明細書においては、青発光材料とは、発光スペクトルの最大ピーク波長が430nm乃至480nmの発光材料を指す。また、緑発光材料とは、発光スペクトルの最大ピーク波長が500nm乃至570nmの発光材料を指す。赤発光材料とは、発光スペクトルの最大ピーク波長が580nm乃至680nmの発光材料を指す。発光スペクトルは、希薄トルエン溶液等で、他の化合物や結晶状態の影響を低減して行われることが好ましい。
【0060】
(8)第一乃至第三化合物が炭化水素のみからなる化合物である
本発明の一実施形態において、第一乃至第三化合物は特に限定されないが、分子構造内に結合エネルギーが小さい結合を有さない化合物が好ましい。分子構造内に結合エネルギーが小さい結合を有する化合物は、化合物の劣化が起こりやすいので、有機発光素子の耐久寿命を低減させる。そのため、結合エネルギーが比較的大きい芳香族炭化水素等の炭化水素のみから成る化合物を第一乃至第三化合物とすることが好ましい。第一乃至第三化合物は例えばホストとして用いられる。
【0061】
下記に示す化合物CBP([4,4’-ビス(カルバゾール-9-イル)ビフェニル])を例にとると、結合エネルギーが小さい結合とは、カルバゾール環とフェニレン基をつなぐ結合(窒素―炭素結合)のことである。下記に、CBPの結合エネルギーの計算値とホストの例示化合物EM1の結合エネルギーの計算値との比較を示す。なお、計算手法は、b3-lyp/def2-SV(P)を用いて行った。
【0062】
【0063】
上記結果より、本発明の一実施形態に係る有機発光素子のホストとしては、炭素―炭素結合から構成される結合エネルギーが高い炭化水素のみから構成される化合物であることが好ましい。
【0064】
一方で、ホストが炭化水素のみからなる化合物である場合、ホストのLUMO準位は低くなるため、電子トラップ性の高い発光層を形成するためには発光材料のLUMO準位はさらに低いことが求められる。発光材料のLUMO準位をさらに低くするためには、下記の(9)を満たすことが好ましい。
【0065】
(9)第一乃至第三発光材料がフルオランテン骨格を有する
発光材料として用いられる化合物は特に限定されないが、上記の電子トラップ性の観点から、電子求引性の構造であるフルオランテン骨格を有することが好ましい。電子欠乏性の五員環を含むフルオランテン骨格を有することで、LUMO準位が低くなるからである。これにより、ホストとのLUMO準位の差が大きくなりやすく、電子トラップ性を向上させやすい。
【0066】
また、発光材料の置換基として電子供与性の置換基、例えば置換アミノ基、を有さない方が好ましい。置換アミノ基等の電子供与性の置換基を有する場合、LUMO準位が高くなり、結果として電子トラップ性が低下するからである。
【0067】
また、結合安定性の観点からも、窒素―炭素結合となる置換アミノ基を有しない化合物であることが好ましい。
【0068】
次に、上記フルオランテン骨格について説明する。フルオランテン骨格とは、フルオランテンおよび、フルオランテンにさらに芳香族炭化水素が縮合した縮合多環化合物を指す。具体的には、下記FF1乃至FF33に示すような縮合多環化合物のことである。
【0069】
【0070】
これらのうち、電子求引性をさらに向上させ、電子トラップ性を向上させる観点から、フルオランテンが2つ以上縮合した構造を有するドーパントが好ましい。具体的には、FF7乃至FF16、FF19乃至FF23、FF26乃至FF33の骨格を有する発光材料を本発明の一実施形態に係る有機発光素子に好適に用いることができる。
【0071】
(10)青色を発光する発光材料が、電子求引性置換基を2つ以上有する
本発明の一実施形態が有する青発光材料は、LUMO準位が低い化合物である。LUMO準位が低くなる方法として、電子求引性置換基を設けることがあげられる。電子求引性置換基としては、フッ素原子、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、などが挙げられる。このうち、置換基の安定性の観点から、フッ素原子、シアノ基が特に好ましい。具体的には、以下の発光材料を挙げることができる。
【0072】
【0073】
以下に本発明の一実施形態に用いられる第一乃至第三化合物の具体例を示す。ただし、これらの化合物はあくまで具体例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0074】
【0075】
例示した化合物のうち、上述した結合安定性の観点から、炭化水素のみからなるEM1乃至EM26が好ましい。これらの化合物をホストに用いることで、耐久特性に優れる有機発光素子を得ることができる。さらに、アルキル基を有するEM1乃至EM4、EM12乃至EM15が好ましい。電子供与性のアルキル基を有することで、第一化合物のLUMO準位が高くなるため、発光材料とのLUMO準位の差異が大きくなる、すなわち、電子トラップ性を高めることができるからである。
【0076】
本発明の一実施形態に係る青発光材料は、上述したBD1乃至BD32以外では、例えば以下の化合物を用いることができる。これらの青発光材料を用いる場合には、ホスト材料としては十分にLUMO準位が高いものを選択することが好ましい。
【0077】
【0078】
例示した青発光材料のうち、電子トラップ性の観点から、電子供与性の高い置換アミノ基を有しないことが好ましい。さらに、電子求引性の高いシアノ基を有する化合物が好ましい。シアノ基を有することで、発光材料のLUMO準位を低くすることができ、発光層の電子トラップ性を高めることができる。青発光材料の発光層における重量比としては、0.1乃至10.0重量%、より好ましくは0.3乃至5.0重量%が望ましい。この濃度においては濃度消光、再結合確率の低下が発生しにくいので好ましい。
【0079】
本発明の一実施形態に係る緑発光材料は、例えば以下の化合物を用いることができる。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0080】
【0081】
例示した緑発光材料のうち、電子トラップ性の観点から、電子供与性の高い置換アミノ基を有さない化合物が好ましい。緑発光材料の発光層における重量比としては、0.1乃至10.0重量%、より好ましくは0.3乃至5.0重量%が望ましい。この濃度においては濃度消光、再結合確率の低下が発生しにくいので好ましい。
【0082】
本発明の一実施形態に係る赤発光材料は、例えば以下の化合物を用いることができる。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0083】
【0084】
例示した赤発光材料のうち、結合安定性の観点から、炭化水素のみからなる化合物であることが好ましい。赤発光材料の発光層における重量比としては、0.1乃至5.0重量%、より好ましくは0.1乃至0.5重量%が望ましい。この濃度においては濃度消光、再結合確率の低下が発生しにくいので好ましい。
【0085】
本発明の一実施形態においては、上述した青発光材料、緑発光材料、赤発光材料の他に、縮環化合物(例えばフルオレン誘導体、ナフタレン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、テトラセン誘導体、アントラセン誘導体、ルブレン等)、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、スチルベン誘導体、トリス(8-キノリノラート)アルミニウム等の有機アルミニウム錯体、イリジウム錯体、白金錯体、レニウム錯体、銅錯体、ユーロピウム錯体、ルテニウム錯体、及びポリ(フェニレンビニレン)誘導体、ポリ(フルオレン)誘導体、ポリ(フェニレン)誘導体等の高分子誘導体を用いることもできる。
【0086】
本発明の一実施形態に係る有機発光素子は、第一電極である陽極と、第二電極である陰極と、陽極と陰極との間に配置されている有機化合物層(有機EL層)とを有する素子である。有機化合物層は陽極側から第一発光層と、第二発光層とを有する。本発明においては、陽極と第一発光層の間に正孔輸送層を備えてもよく、さらに、陽極と正孔輸送層との間に正孔注入層を備えてもよい。さらに正孔輸送層と第一発光層との間に電子ブロッキング層を備えていてもよい。また、陰極と第二発光層との間に電子輸送層を備えていてもよく、さらに、陰極と電子輸送層との間に電子注入層を備えてもよい。また、電子輸送層と第二発光層との間に正孔ブロッキング層を備えていてもよい。
【0087】
特に、正孔輸送層と電子ブロッキング層、および電子輸送層と正孔ブロッキング層を共に有している構成は、正孔と電子の両キャリアを発光層内に閉じ込めることができるので、キャリア漏れがなく発光効率が高い発光素子を得ることができる。
【0088】
また、電極と有機化合物層界面に絶縁性層を設ける、接着層或いは干渉層を設ける、電子輸送層もしくは正孔輸送層がイオン化ポテンシャルの異なる二層から構成される、発光層が発光材料の異なる二層から構成されるなど多様な層構成をとることができる。
【0089】
本発明の一実施形態に係る有機発光素子は、素子を支える基板側の電極から光を取り出すいわゆるボトムエミッション方式でも、基板と逆側から光を取り出すいわゆるトップエミッション方式でもよく、両面取り出しの構成でも使用することができる。
【0090】
上記正孔輸送層や正孔注入層に用いられる正孔注入輸送性材料としては、陽極からの正孔の注入を容易にすることができる材料や、注入された正孔を発光層へ輸送できるように正孔移動度が高い材料が好ましい。また有機発光素子中において結晶化等の膜質の劣化を低減するために、ガラス転移点温度が高い材料が好ましい。正孔注入輸送性能を有する低分子及び高分子系材料としては、トリアリールアミン誘導体、アリールカルバゾール誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、ポリ(ビニルカルバゾール)、ポリ(チオフェン)、その他導電性高分子が挙げられる。さらに上記の正孔注入輸送性材料は、電子ブロッキング層にも好適に使用される。
【0091】
以下に、正孔注入輸送性材料として用いられる化合物の具体例を示すが、本発明においては、これらに限定されるものではない。
【0092】
【0093】
電子輸送性材料としては、陰極から注入された電子を発光層へ輸送することができるものから任意に選ぶことができ、正孔輸送性材料の正孔移動度とのバランス等を考慮して選択される。電子輸送性能を有する材料としては、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラジン誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、有機アルミニウム錯体、縮環化合物(例えばフルオレン誘導体、ナフタレン誘導体、クリセン誘導体、アントラセン誘導体等)が挙げられる。さらに上記の電子輸送性材料は、正孔ブロッキング層にも好適に使用される。
【0094】
以下に、電子輸送性材料として用いられる化合物の具体例を示すが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0095】
【0096】
[有機発光素子の構成]
有機発光素子は、基板の上に、陽極、有機化合物層、陰極を形成して設けられる。陰極の上には、保護層、カラーフィルタ等を設けてよい。カラーフィルタを設ける場合は、保護層との間に平坦化層を設けてよい。平坦化層はアクリル樹脂等で構成することができる。
【0097】
[基板]
基板は、石英、ガラス、シリコンウエハ、樹脂、金属等が挙げられる。また、基板上には、トランジスタなどのスイッチング素子や配線を備え、その上に絶縁層を備えてもよい。絶縁層としては、陽極2と配線の導通を確保するために、コンタクトホールを形成可能で、かつ接続しない配線との絶縁を確保できれば、材料は問わない。また、基板の凹凸を平坦化する平坦化層の役割を担っていてもよい。例えば、ポリイミド等の樹脂、酸化シリコン、窒化シリコンなどを用いることができる。
【0098】
[電極]
電極は、一対の電極を用いることができる。一対の電極は、陽極と陰極であってよい。有機発光素子が発光する方向に電界を印加する場合に、電位が高い電極が陽極であり、他方が陰極である。また、発光層にホールを供給する電極が陽極であり、電子を供給する電極が陰極であるということもできる。
【0099】
陽極の構成材料としては仕事関数がなるべく大きいものが良い。例えば、金、白金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、コバルト、セレン、バナジウム、タングステン、等の金属単体やこれらを含む混合物、あるいはこれらを組み合わせた合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)、酸化亜鉛インジウム等の金属酸化物が使用できる。またポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性ポリマーも使用できる。
【0100】
これらの電極物質は一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用して使用してもよい。また、陽極は一層で構成されていてもよく、複数の層で構成されていてもよい。
【0101】
反射電極として用いる場合には、例えばクロム、アルミニウム、銀、チタン、タングステン、モリブデン、又はこれらの合金、積層したものなどを用いることができる。また、透明電極として用いる場合には、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛などの酸化物透明導電層などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。電極の形成には、フォトリソグラフィ技術を用いることができる。
【0102】
一方、陰極の構成材料としては仕事関数の小さなものがよい。例えばリチウム等のアルカリ金属、カルシウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム、チタニウム、マンガン、銀、鉛、クロム等の金属単体またはこれらを含む混合物が挙げられる。あるいはこれら金属単体を組み合わせた合金も使用することができる。例えばマグネシウム-銀、アルミニウム-リチウム、アルミニウム-マグネシウム、銀-銅、亜鉛-銀等が使用できる。酸化錫インジウム(ITO)等の金属酸化物の利用も可能である。これらの電極物質は一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用して使用してもよい。また陰極は一層構成でもよく、多層構成でもよい。中でも銀を用いることが好ましく、銀の凝集を抑制するため、銀合金とすることがさらに好ましい。銀の凝集が抑制できれば、合金の比率は問わない。例えば、1:1であってよい。
【0103】
陰極は、ITOなどの酸化物導電層を使用してトップエミッション素子としてもよいし、アルミニウム(Al)などの反射電極を使用してボトムエミッション素子としてもよいし、特に限定されない。陰極の形成方法としては、特に限定されないが、直流および交流スパッタリング法などを用いると、膜のカバレッジがよく、抵抗を下げやすいためより好ましい。
【0104】
[保護層]
陰極の上に、保護層を設けてもよい。例えば、陰極上に吸湿剤を設けたガラスを接着することで、有機化合物層に対する水等の浸入を低減し、表示不良の発生を低減することができる。また、別の実施形態としては、陰極上に窒化ケイ素等のパッシベーション膜を設け、有機EL層に対する水等の浸入を低減してもよい。例えば、陰極形成後に真空を破らずに別のチャンバーに搬送し、CVD法で厚さ2μmの窒化ケイ素膜を形成することで、保護層としてもよい。CVD法の成膜の後で原子堆積法(ALD法)を用いた保護層を設けてもよい。保護層は封止層とも呼ばれる。
【0105】
[カラーフィルタ]
保護層の上にカラーフィルタを設けてもよい。例えば、有機発光素子のサイズを考慮したカラーフィルタを別の基板上に設け、それと有機発光素子を設けた基板と貼り合わせてもよいし、上記で示した保護層上にフォトリソグラフィ技術を用いて、カラーフィルタをパターニングしてもよい。カラーフィルタは、高分子で構成されてよい。
【0106】
[平坦化層]
カラーフィルタと保護層との間に平坦化層を有してもよい。平坦化層は有機化合物で構成されてよく、低分子であっても、高分子であってもよいが、高分子であることが好ましい。
【0107】
平坦化層は、カラーフィルタの上下に設けられてもよく、その構成材料は同じであっても異なってもよい。具体的には、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、尿素樹脂等があげられる。
【0108】
[対抗基板]
平坦化層の上には、対抗基板を有してよい。対抗基板は、前述の基板と対応する位置に設けられるため、対抗基板と呼ばれる。対抗基板の構成材料は、前述の基板と同じであってよい。
【0109】
[有機層]
本発明の一実施形態に係る有機発光素子を構成する有機化合物層(正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロッキング層、発光層、正孔ブロッキング層、電子輸送層、電子注入層等)は、以下に示す方法により形成される。
【0110】
本発明の一実施形態に係る有機発光素子を構成する有機化合物層は、真空蒸着法、イオン化蒸着法、スパッタリング、プラズマ等のドライプロセスを用いることができる。またドライプロセスに代えて、適当な溶媒に溶解させて公知の塗布法(例えば、スピンコーティング、ディッピング、キャスト法、LB法、インクジェット法等)により層を形成するウェットプロセスを用いることもできる。
【0111】
ここで真空蒸着法や溶液塗布法等によって層を形成すると、結晶化等が起こりにくく経時安定性に優れる。また塗布法で成膜する場合は、適当なバインダー樹脂と組み合わせて膜を形成することもできる。
【0112】
上記バインダー樹脂としては、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、尿素樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0113】
また、これらバインダー樹脂は、ホモポリマー又は共重合体として一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を混合して使用してもよい。さらに必要に応じて、公知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を併用してもよい。
【0114】
[本発明の一実施形態に係る有機発光素子の用途]
本発明の一実施形態に係る有機発光素子は、表示装置や照明装置の構成部材として用いることができる。他にも、電子写真方式の画像形成装置の露光光源や液晶表示装置のバックライト、白色光源にカラーフィルタを有する発光装置等の用途がある。
【0115】
表示装置は、エリアCCD、リニアCCD、メモリーカード等からの画像情報を入力する画像入力部を有し、入力された情報を処理する情報処理部を有し、入力された画像を表示部に表示する画像情報処理装置でもよい。
【0116】
また、撮像装置やインクジェットプリンタが有する表示部は、タッチパネル機能を有していてもよい。このタッチパネル機能の駆動方式は、赤外線方式でも、静電容量方式でも、抵抗膜方式であっても、電磁誘導方式であってもよく、特に限定されない。また表示装置はマルチファンクションプリンタの表示部に用いられてもよい。
【0117】
次に、図面を参照しながら本実施形態に係る表示装置について説明する。
図3は、有機発光素子とこの有機発光素子に接続されるTFT素子とを有する表示装置の例を示す断面模式図である。TFT素子は、能動素子の一例である。
【0118】
図3の表示装置10は、ガラス、シリコン等の基板11とその上部に絶縁層12が設けられている。絶縁層の上には、TFT等の能動素子18が配されており、能動素子のゲート電極13、ゲート絶縁膜14、半導体層15が配置されている。TFT18は、他にも半導体層15とドレイン電極16とソース電極17とで構成されている。TFT18の上部には絶縁膜19が設けられている。絶縁膜に設けられたコンタクトホール20を介して有機発光素子を構成する陽極21とソース電極17とが接続されている。
【0119】
なお、有機発光素子に含まれる電極(陽極、陰極)とTFTに含まれる電極(ソース電極、ドレイン電極)との電気接続の方式は、
図3に示される態様に限られるものではない。つまり陽極又は陰極のうちいずれか一方とTFTソース電極またはドレイン電極のいずれか一方とが電気接続されていればよい。TFTは、薄膜トランジスタを指す。
【0120】
図3の表示装置10では有機化合物層を1つの層の如く図示をしているが、有機化合物層22は、複数層であってもよい。陰極23の上には有機発光素子の劣化を低減するための第一の保護層24や第二の保護層25が設けられている。
【0121】
図3の表示装置10ではスイッチング素子としてトランジスタを使用しているが、これに代えて他のスイッチング素子として用いてもよい。
【0122】
また
図3の表示装置10に使用されるトランジスタは、単結晶シリコンウエハを用いたトランジスタに限らず、基板の絶縁性表面上に活性層を有する薄膜トランジスタでもよい。活性層として、単結晶シリコン、アモルファスシリコン、微結晶シリコンなどの非単結晶シリコン、インジウム亜鉛酸化物、インジウムガリウム亜鉛酸化物等の非単結晶酸化物半導体が挙げられる。なお、薄膜トランジスタはTFT素子とも呼ばれる。
【0123】
図3の表示装置10に含まれるトランジスタは、Si基板等の基板内に形成されていてもよい。ここで基板内に形成されるとは、Si基板等の基板自体を加工してトランジスタを作製することを意味する。つまり、基板内にトランジスタを有することは、基板とトランジスタとが一体に形成されていると見ることもできる。
【0124】
本実施形態に係る有機発光素子はスイッチング素子の一例であるTFTにより発光輝度が制御され、有機発光素子を複数面内に設けることでそれぞれの発光輝度により画像を表示することができる。なお、本実施形態に係るスイッチング素子は、TFTに限られず、低温ポリシリコンで形成されているトランジスタ、Si基板等の基板上に形成されたアクティブマトリクスドライバーであってもよい。基板上とは、その基板内ということもできる。基板内にトランジスタを設けるか、TFTを用いるかは、表示部の大きさによって選択され、例えば0.5インチ程度の大きさであれば、Si基板上に有機発光素子を設けることが好ましい。
【0125】
図4は、本実施形態に係る表示装置の一例を表す模式図である。表示装置1000は、上部カバー1001と、下部カバー1009と、の間に、タッチパネル1003、表示パネル1005、フレーム1006、回路基板1007、バッテリー1008、を有してよい。タッチパネル1003および表示パネル1005は、フレキシブルプリント回路FPC1002、1004が接続されている。回路基板1007には、トランジスタがプリントされている。バッテリー1008は、表示装置が携帯機器でなければ、設けなくてもよいし、携帯機器であっても、別の位置に設けてもよい。
【0126】
本実施形態に係る表示装置は、赤色、緑色、青色を有するカラーフィルタを有してよい。カラーフィルタは、当該赤色、緑色、青色がデルタ配列で配置されてよい。
【0127】
本実施形態に係る表示装置は、携帯端末の表示部に用いられてもよい。その際には、表示機能と操作機能との双方を有してもよい。携帯端末としては、スマートフォン等の携帯電話、タブレット、ヘッドマウントディスプレイ等が挙げられる。
【0128】
本実施形態に係る表示装置は、複数のレンズを有する光学部と、当該光学部を通過した光を受光する撮像素子とを有する撮像装置の表示部に用いられてよい。撮像装置は、撮像素子が取得した情報を表示する表示部を有してよい。また、表示部は、撮像装置の外部に露出した表示部であっても、ファインダ内に配置された表示部であってもよい。撮像装置は、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラであってよい。
【0129】
図5(a)は、本実施形態に係る撮像装置の一例を表す模式図である。撮像装置1100は、ビューファインダ1101、背面ディスプレイ1102、操作部1103、筐体1104を有してよい。ビューファインダ1101は、本実施形態に係る表示装置を有してよい。その場合、表示装置は、撮像する画像のみならず、環境情報、撮像指示等を表示してよい。環境情報には、外光の強度、外光の向き、被写体の動く速度、被写体が遮蔽物に遮蔽される可能性等であってよい。
【0130】
撮像に好適なタイミングはわずかな時間なので、少しでも早く情報を表示した方がよい。したがって、本発明の一実施形態に係る有機発光素子を用いた表示装置を用いるのが好ましい。有機発光素子は応答速度が速いからである。有機発光素子を用いた表示装置は、表示速度が求められる、これらの装置、液晶表示装置よりも好適に用いることができる。
【0131】
撮像装置1100は、不図示の光学部を有する。光学部は複数のレンズを有し、筐体1104内に収容されている撮像素子に結像する。複数のレンズは、その相対位置を調整することで、焦点を調整することができる。この操作を自動で行うこともできる。
【0132】
図5(b)は、本実施形態に係る電子機器の一例を表す模式図である。電子機器1200は、表示部1201と、操作部1202と、筐体1203を有する。表示部には、本発明の一実施形態に係る有機発光素子を有してよい。筐体1203には、回路、当該回路を有するプリント基板、バッテリー、通信部、を有してよい。操作部1202は、ボタンであってもよいし、タッチパネル方式の反応部であってもよい。操作部は、指紋を認識してロックの解除等を行う、生体認識部であってもよい。通信部を有する電子機器は通信機器ということもできる。電子機器は、レンズと、撮像素子とを備えることでカメラ機能をさらに有してよい。カメラ機能により撮像された画像が表示部に映される。電子機器としては、スマートフォン、ノートパソコン等があげられる。
【0133】
図6は、本実施形態に係る表示装置の一例を表す模式図である。
図6(a)は、テレビモニタやPCモニタ等の表示装置である。表示装置1300は、額縁1301を有し表示部1302を有する。表示部1302には、本実施形態に係る発光装置が用いられてよい。
【0134】
額縁1301と、表示部1302を支える土台1303を有している。土台1303は、
図6(a)の形態に限られない。額縁1301の下辺が土台を兼ねてもよい。
【0135】
また、額縁1301および表示部1302は、曲がっていてもよい。その曲率半径は、5000mm以上6000mm以下であってよい。
【0136】
図6(b)は本実施形態に係る表示装置の他の例を表す模式図である。
図6(b)の表示装置1310は、折り曲げ可能に構成されており、いわゆるフォルダブルな表示装置である。表示装置1310は、第一表示部1311、第二表示部1312、筐体1313、屈曲点1314を有する。第一表示部1311と第二表示部1312とは、本実施形態に係る発光装置を有してよい。第一表示部1311と第二表示部1312とは、つなぎ目のない1枚の表示装置であってよい。第一表示部1311と第二表示部1312とは、屈曲点で分けることができる。第一表示部1311、第二表示部1312は、それぞれ異なる画像を表示してもよいし、第一および第二表示部とで一つの画像を表示してもよい。
【0137】
図7(a)は、本実施形態に係る照明装置の一例を表す模式図である。照明装置1400は、筐体1401と、光源1402と、回路基板1403と、光学フィルム1404と、光拡散部1405と、を有してよい。光源は、本実施形態に係る有機発光素子を有してよい。光学フィルタは光源の演色性を向上させるフィルタであってよい。光拡散部は、ライトアップ等、光源の光を効果的に拡散し、広い範囲に光を届けることができる。光学フィルタ、光拡散部は、照明の光出射側に設けられてよい。必要に応じて、最外部にカバーを設けてもよい。
【0138】
照明装置は例えば室内を照明する装置である。照明装置は白色、昼白色、その他青から赤のいずれの色を発光するものであってよい。それらを調光する調光回路を有してよい。照明装置は本発明の有機発光素子とそれに接続される電源回路を有してよい。電源回路は、交流電圧を直流電圧に変換する回路である。また、白とは色温度が4200Kで昼白色とは色温度が5000Kである。照明装置はカラーフィルタを有してもよい。
【0139】
また、本実施形態に係る照明装置は、放熱部を有していてもよい。放熱部は装置内の熱を装置外へ放出するものであり、比熱の高い金属、液体シリコン等が挙げられる。
【0140】
図7(b)は、本実施形態に係る移動体の一例である自動車の模式図である。当該自動車は灯具の一例であるテールランプを有する。自動車1500は、テールランプ1501を有し、ブレーキ操作等を行った際に、テールランプを点灯する形態であってよい。
【0141】
テールランプ1501は、本実施形態に係る有機発光素子を有してよい。テールランプは、有機発光素子を保護する保護部材を有してよい。保護部材はある程度高い強度を有し、透明であれば材料は問わないが、ポリカーボネート等で構成されることが好ましい。ポリカーボネートにフランジカルボン酸誘導体、アクリロニトリル誘導体等を混ぜてよい。
【0142】
自動車1500は、車体1503、それに取り付けられている窓1502を有してよい。窓は、自動車の前後を確認するための窓でなければ、透明なディスプレイであってもよい。当該透明なディスプレイは、本実施形態に係る有機発光素子を有してよい。この場合、有機発光素子が有する電極等の構成材料は透明な部材で構成される。
【0143】
本実施形態に係る移動体は、船舶、航空機、ドローン等であってよい。移動体は、機体と当該機体に設けられた灯具を有してよい。灯具は、機体の位置を知らせるための発光をしてよい。灯具は本実施形態に係る有機発光素子を有する。
【0144】
以上説明した通り、本実施形態に係る有機発光素子を用いた装置を用いることにより、良好な画質で、長時間表示にも安定な表示が可能になる。
【実施例】
【0145】
(実施例1)
<HOMO・LUMOの評価>
下記に示す方法で、ホストおよびドーパント、の評価を行った。結果を表1に示す。
【0146】
A)HOMOの評価方法
アルミ基板上に膜厚30nmの薄膜を形成し、この薄膜について、AC-3(理研計器社製)を用いて測定した。
【0147】
B)LUMOの評価方法
石英基板上に膜厚30nmの薄膜を形成し、この薄膜について、分光光度計(V-560 日本分光社製)を用い、被測定材料の光学バンドギャップ(吸収端)を求めた。その光学バンドギャップ値に前述のHOMO値の和をLUMOとした。結果を表1に示す。
【0148】
さらに、表1において、分子軌道計算より求めた計算値を示す。実測値との比較から、HOMOおよびLUMOのエネルギーには相関性があることが分かる。よって本実施例においては、計算値から求めたHOMOおよびLUMOエネルギーの数値を用いて素子結果を考察する。なお、本実施例においては、第一乃至第三化合物をホスト、赤発光材料、緑発光材料、青発光材料をそれぞれ、赤ドーパント、緑ドーパント、青ドーパントと呼ぶ。
【0149】
【0150】
(実施例2)
本実施例では、基板上に陽極、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロッキング層、第一発光層、第二発光層、正孔ブロッキング層、電子輸送層、電子注入層、陰極が順次形成されたトップエミッション型構造の有機発光素子を作製した。
【0151】
ガラス基板上に、スパッタリング法でTiを40nm成膜し、フォトリソグラフィ技術を用いてパターニングし、陽極を形成した。陽極の電極面積が3mm2となるようにした。その後洗浄した。
【0152】
続いて、真空蒸着装置(アルバック社製)に上記で作製した電極付き基板を取り付け、蒸着材料の蒸着準備をした後に、1.33×10-4Pa(1×10-6Torr)まで排気した。その後、チャンバー内をUV/オゾン洗浄を施した。そして、下記表2に示される層構成で各層の製膜を行った。
【0153】
【0154】
電子注入層を形成した後、スパッタリング法でITOを500nm成膜した。その後、基板をグローブボックスに移し、窒素雰囲気中で乾燥剤を入れたガラスキャップにより封止し、有機発光素子を得た。
【0155】
得られた有機発光素子に電圧印加装置を接続し、その特性を評価した。電流電圧特性をヒューレッドパッカード社製・微小電流計4140Bで測定し、色度の評価はトプコン製「SR-3」を用いて行った。発光輝度は、トプコン社製BM7で測定した。1000cd/m2表示時の効率、電圧、及びCIE色度座標はそれぞれ6.4cd/A、3.4V、(0.36、0.36)であり、高効率で良好な有機発光素子であった。
【0156】
次に、低電流密度(0.01mA/cm2)における発光スペクトルの評価を行った。赤ドーパント由来の発光スペクトルのピーク高さ1.0としたときに、青ドーパントおよび緑ドーパントのそれぞれのピーク高さを評価する。ピーク高さが0.1未満の場合「×」、ピーク高さが0.1以上0.5未満の場合「△」、ピーク高さが0.5以上の場合「○」とした。すなわち、青発光と緑発光のピーク高さが十分に高い場合には、低電流密度、つまり低輝度においても、良好な白色発光を得ることができると言える。その結果を表3に示す。
【0157】
さらに、初期輝度2000cd/m2での連続駆動試験を行い、100時間経過後の輝度の劣化率を測定した。その結果を表3に示す。
【0158】
(実施例3乃至8、比較例1)
有機発光素子の第一発光層、第二発光層を、表3に示される化合物に変更する以外は、実施例2と同様にして、有機発光素子を作製した。得られた有機発光素子について、実施例2と同様にその特性を測定・評価した。結果を表3に示す。
【0159】
【0160】
実施例2乃至8の有機発光素子は、陰極側の発光層である第二発光層のΔLUMO(=LUMO(H2)-LUMO(D2))を第一発光層のΔLUMO(=LUMO(H1)-LUMO(D1))よりも大きくすることで、低輝度域における赤・緑・青のバランスのよい白色発光を確認することができた。一方で、実施例8においてはバランスの良い白色発光を確認することができたが、耐久特性が他の実施例に比してやや劣る結果となった。これは青発光層のホスト材料がEM31(アミン化合物)であり、炭化水素のみから成る化合物ではないことに起因する。
【0161】
比較例1では、バランスの良い発光を確認することができなかった。これは、第二発光層の電子トラップ性が低いため、再結合域が第一発光層に偏在していることが一因と考えられる。すなわち第二発光層のΔLUMOが、第一発光層よりも小さいので、バランスの良い発光が得られなかった。
【0162】
(実施例9)
本実施例では、基板上に、陽極、正孔注入層、電子ブロッキング層、正孔輸送層、第一発光層、第二発光層、第三発光層、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層、陰極が順次形成されたボトムエミッション型構造の有機発光素子を作製した。
【0163】
まずガラス基板上にITOを成膜し、所望のパターニング加工を施すことによりITO電極(陽極)を形成した。この時、ITO電極の膜厚を100nm、電極面積を3mm2とした。このようにITO電極が形成された基板をITO基板として、以下の工程で使用した。次に、1.33×10-4Paの真空チャンバー内における抵抗加熱による真空蒸着を行って、上記ITO基板上に、下記表4に示す有機EL層及び電極層を連続成膜した。
【0164】
【0165】
そして、基板をグローブボックスに移し、窒素雰囲気中で乾燥剤を入れたガラスキャップにより封止し、有機発光素子を得た。
【0166】
得られた有機発光素子について、実施例2と同様に素子の特性を測定・評価した。その結果を表5に示す。
【0167】
(実施例10乃至13、比較例2および3)
第一発光層/第二発光層/第三発光層を、表5に示される化合物に変更する以外は、実施例9と同様にして有機発光素子を作製した。得られた有機発光素子について実施例9と同様に素子の特性を測定・評価した。測定の結果を実施例9と合わせて、表5に示す。
【0168】
【0169】
【0170】
実施例9乃至12にあるように、本発明の一実施形態に係る有機発光素子において、バランスのよい白色発光を確認することができた。一方で、実施例12においてはバランスの良い白色発光を確認することができたが、耐久特性が他の実施例に比してやや劣る結果となった。これは第一発光層の緑ドーパントがGD3(アミン化合物)であることに起因する。
【0171】
比較例2では、第二発光層のΔLUMO(=LUMO(H2)-LUMO(D2))が第一発光層のΔLUMO(=LUMO(H1)-LUMO(D1))よりも小さいため、バランスの良い発光が確認されなかった。さらには、大幅な耐久低下が確認された。これは第一発光層の緑ドーパントがGD3(アミン化合物)であること、第二発光層の青ドーパントがBD46(アミン化合物)であることに起因する。さらに比較例3では、バランスの良い発光を確認することができなかった。これは、第二発光層の電子トラップ性が低いため、再結合域が第一発光層に偏在していることが一因と考えられる。
【0172】
以上の通り、本発明の一実施形態に係る有機発光素子は、電流密度の変化による発光バランスの変化が低減された有機発光素子を提供できる。
【符号の説明】
【0173】
1 絶縁層
2 陽極
3 正孔輸送層
4a 第一発光層
4b 第二発光層
4c 第三発光層
5 電子輸送層
6 陰極
10 表示装置
1000 表示装置
1001 上部カバー
1002 フレキシブルプリント回路
1003 タッチパネル
1004 フレキシブルプリント回路
1005 表示パネル
1006 フレーム
1007 回路基板
1008 バッテリー
1009 下部カバー
1100 撮像装置
1101 ビューファインダ
1102 背面ディスプレイ
1103 操作部
1104 筐体
1200 電子機器
1201 表示部
1202 操作部
1203 筐体
1300 表示装置
1301 額縁
1302 表示部
1303 土台
1310 表示装置
1311 第一表示部
1312 第二表示部
1313 筐体
1314 屈曲点
1400 照明装置
1401 筐体
1402 光源
1403 回路基板
1404 光学フィルム
1405 光拡散部
1500 自動車
1501 テールランプ
1502 窓
1503 車体