(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】測量装置
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20240826BHJP
【FI】
G01C15/00 103Z
(21)【出願番号】P 2020118605
(22)【出願日】2020-07-09
【審査請求日】2023-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【氏名又は名称】川野 由希
(72)【発明者】
【氏名】菊池 武志
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-058141(JP,A)
【文献】特開2018-159217(JP,A)
【文献】特表2013-539541(JP,A)
【文献】特開2019-145953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00-15/00
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測距光を送光し、測定対象物で反射した反射測距光を受光して測定点を測距する測距部;
前記測距光の角度を検出して前記測定点を測角する測角部;
前記測距部および前記測角部を制御して測距および測角を行い、測定データとして、前記測定点の3次元座標を取得する測量部と、
前記測定データに基づいて前記測定対象物の3次元形状を取得し、前記測定対象物の表面に、前記測定データを表示するための投影画像を生成する投影画像生成部と、
前記投影画像の前記測定対象物への投影を制御する投影制御部とを備える制御演算部;および、
前記投影画像の像を形成する表示素子と、前記表示素子に投影光を入射する光照射装置と、前記表示素子から出射される前記投影画像を、前記測定対象物に投影する投影レンズとを備える画像投影部;
を備え
、
前記測定点の3次元座標の原点である器械中心と前記投影画像の座標の原点とが合致しており、前記測距部の光軸と前記画像投影部の光軸とが、共通の直線上に反対向きになるように構成されていることを特徴とする測量装置。
【請求項2】
前記投影画像生成部は、前記投影画像として、前記測定点を点として表示する画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の測量装置。
【請求項3】
前記投影画像生成部は、前記投影画像として、前記測定対象物の表面の凹凸を認識可能に表示する画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の測量装置。
【請求項4】
前記測定対象物の設計データを記憶する記憶部をさらに備え、
前記投影画像生成部が、前記設計データと前記測定データとの差異を識別可能に表示する画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の測量装置。
【請求項5】
前記測距光がパルス光であり、前記測距光を鉛直方向および水平方向に走査して、前記測定対象物の3次元点群データを取得するレーザスキャナであり、
前記投影画像生成部は、前記投影画像として、前記3次元点群データの点群密度を識別可能に表示する画像を生成することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の測量装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測量装置に関し、より詳細には、プロジェクタ機能を備える測量装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測距光を送光し、測定対象物で反射した反射測距光を受光して照射点を測距し、測距光の角度を検出して前記照射点を測角して、測定データである照射点の座標を取得する測量装置として、トータルステーションや3次元スキャナが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来の測量装置では、取得した測定データを視覚的に確認するために、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置を用いて、表示用画像を作成し、該表示用画像をディスプレイに表示をさせている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-048868号公報
【文献】特開2018-045587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、測定データを視覚的に確認するために、実際の空間にプロジェクタ装置を用いて投影することができる測量装置はなかった。
【0006】
本発明は、かかる事情を鑑みてなされたものであり、測定データを測定対象物に投影して、現場で視覚的に確認可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の1つの態様にかかる測量装置は、測距光を送光し、測定対象物で反射した反射測距光を受光して測定点を測距する測距部;前記測距光の角度を検出して前記測定点を測角する測角部;前記測距部および前記測角部を制御して測距および測角を行い、測定データとして、前記測定点の3次元座標を取得する測量部と、前記測定データに基づいて前記測定対象物の3次元形状を取得し、前記測定対象物の表面に、前記測定データを表示するための投影画像を生成する投影画像生成部と、前記投影画像の前記測定対象物への投影を制御する投影制御部とを備える制御演算部;および、前記投影画像の像を形成する表示素子と、前記表示素子に投影光を入射する光照射装置と、前記表示素子から出射される前記投影画像を、前記測定対象物に投影する投影レンズとを備える画像投影部;を備える。
【0008】
上記態様において、前記投影画像生成部は、前記投影画像として、前記測定点を点として表示する画像を生成することも好ましい。
【0009】
また、上記態様において、前記投影画像生成部は、前記投影画像として、前記測定対象物の表面の凹凸を認識可能に表示する画像を生成することも好ましい。
【0010】
また、上記態様において、測定対象物の設計データを記憶する記憶部をさらに備え、
前記投影画像生成部が、前記設計データと前記測定データとの差異を識別可能に表示する画像を生成することも好ましい。
【0011】
また、上記態様において、前記測距光がパルス光であり、前記測距光を鉛直方向および水平方向に走査して、前記測定対象物の3次元点群データを取得するレーザスキャナであり、前記投影画像生成部は、前記投影画像として、前記3次元点群データの点群密度のレベルを識別可能に表示する画像を生成することも好ましい。
【0012】
また、上記態様において、器械中心と、前記投影画像の座標の原点が合致しており、前記測距部の光軸と前記画像投影部の光軸とが、共通の直線上に反対向きになるように構成されていることも好ましい。
【発明の効果】
【0013】
上記態様によれば、測量装置に測定データを確認するための投影用画像を生成させ、該投影用画像を、実際の空間の測定対象物表面に投影できるように構成したので、測定データを現場で視覚的かつ直感的に確認することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施の形態に係る測量装置の外観概略図である。
【
図3】同測量装置の測距部および画像投影部の構成を説明する図である。
【
図5】同測量装置が投影する投影画像の一例を示す図である。
【
図6】第2の実施の形態に係る測量装置の外観概略図である。
【
図8】同測量装置の測距部および画像
投影部の構成を説明する図である。
【
図9】同測量装置が投影する投影画像の一例を示す図である。
【
図10】同測量装置が投影する投影画像の別の一例を示す図である。
【
図11】第3の実施の形態に係る測量装置の構成ブロック図である。
【
図12】同測量装置
が投影する投影画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下の実施の形態の説明において、同一の構成には同一の符号を付し、対応する構成には同一の名称を付して、重複する説明を適宜省略する。なお、各図において、説明の便宜上構成部品は適宜拡縮して模式的に示しており、実際の比率を反映したものではない。また、下記の実施の形態は、一例であって、本発明はこれに限定されるものではない。
【0016】
1.第1の実施の形態
1.1 測量装置の構成
図1は、第1の実施の形態に係る測量装置100の、投影画像6を投影中の状態を示す外観図である。
図2は、測量装置100の構成ブロック図、
図3は、測距部10および画像投影部70の構成を説明する模式図である。なお、投影画像6は、後述するように種々の変形例(例えば投影画像6a~6c)を含むことができるが、共通する説明をする場合には代表して投影画像6として説明する。
【0017】
本実施の形態において、測量装置100は、いわゆるモータドライブトータルステーションである。測量装置100は、三脚2、および三脚2に取り付けられた整準台3を介して既知点に据え付けられている。測量装置100は、外観上、整準台3に着脱可能に取り付けられる基盤部4aと、基盤部4aに軸H-H回りに360°水平回転可能に設けられた托架部4bと、托架部4bの凹部5に、軸V-V回りに鉛直回転可能に設けられた望遠鏡4cとを備える。
【0018】
図2に示す通り、測量装置100は、測距部10.測角部20、回転駆動部30、制御演算部40、表示部50、記憶部60、画像投影部70、および操作部80を備える。
【0019】
測距部10は、望遠鏡4c内に配置され、概略として、
図3に示すように、発光素子11、測距光学系12および受光素子13を備える。測距部10は、発光素子11から、測距光学系12を介して測距光Lを出射して両面ミラー14を介して、測定対象物を照射し、測定対象物からの反射光Laを、両面ミラー14,測距光学系12を介して、受光素子13で受光する。測距部10で取得される発光信号と受光信号の位相差により、照射点までの距離を測定することができる。測距部10は、これに限らず、光波距離計が備える公知の構成を備えることができ、例えば、ユーザが視準方向を視準するための接眼レンズ等をさらに備えることができる。
【0020】
両面ミラー14は、測距部10と画像投影部70との間にあり、望遠鏡4cに固定されて望遠鏡4cと一体に軸V-V周りに回転する。また、両面ミラー14は、一方の面で測距光Lを、他方の面で投影光Mを反射して、測距光Lと投影光Mの光軸が同軸上の反対方向に向かうようにしている。
【0021】
測角部20は、水平角検出器21および鉛直角検出器22を含む。水平角検出器21および鉛直角検出器22は、例えば、ロータリエンコーダである。
【0022】
また、回転駆動部30は、水平回転駆動部31および鉛直回転駆動部32を含む。水平回転駆動部31はモータであり、基盤部4aに備えられ、托架部4bを軸H-H周りに水平回転させる。水平角検出器21は、水平回転駆動部31の回転軸部に設けられ、托架部4bの水平角、すなわち望遠鏡4cの視準方向の水平角を検出可能となっている。
【0023】
鉛直回転駆動部32は、モータであり、托架部4bに設けられ、望遠鏡4cを軸V-V周りに鉛直回転させる。鉛直角検出器22は、鉛直回転駆動部32の回転軸部に設けられ、望遠鏡4cの視準方向の鉛直角を検出可能となっている。測距部10および測角部20で取得される検出信号は、制御演算部40に入力される。
【0024】
表示部50は、例えば液晶ディスプレイ、有機EL(Electro・Luminessence)ディスプレイ等である。表示部50は、制御演算部40の制御に従って、測量結果や、操作のための画面等を表示する。
【0025】
記憶部60は、情報をコンピュータが処理可能な形式で記憶、表記、保存及び伝達する記録媒体であって、後述する各機能部の機能を含む制御演算部40の機能を発揮するための各種プログラムを記憶する。また、測量部41により取得された測定データおよび、投影画像生成部42により生成された投影画像6を記憶する。記憶部60としては、ハードディスクドライブ等の磁気ディスク、CD(Compact・Disc),DVD(Degital・Carsatile・Disc)等の光磁気ディスク、フラッシュメモリやRAM(Random・Access・Memory)等の半導体メモリを採用することができる。
【0026】
画像投影部70は、概略として、
図3に示すように光照射装置71、表示素子72および投影レンズ73を備えるプロジェクタ装置である。
【0027】
光照射装置71は、図示しない光源を備え、投影光学系74、および両面ミラー14を介して、表示素子72に向けて投影光Mとして可視光を照射する装置である。光照射装置71としては、一例として色分離方式のものが採用されている。また、光源としては、LED(Light・Emitting・Diode)またはレーザダイオード等の半導体発光素子や、ランプ(ハロゲンランプ、キセノンランプ等)を採用することができる。
【0028】
表示素子72は、二次元アレイ状に配列された複数の画素を有するDMD(Degital・Micromirror・Device)、透過型液晶ディスプレイパネルまたは反射型液晶ディスプレイパネルである。表示素子72が、DMDである場合には、表示素子72の画素は可動マイクロミラーであり、表示素子72が液晶ディスプレイパネルである場合には、表示素子72の画素は液晶シャッター素子である。
【0029】
光照射装置71が色分離方式である場合、光照射装置71は、白色光源および色分離器等を有し、白色光源か発した白色光が色分離器によって、光の3原色である赤色(R)、緑色(G),青色(B)に分離される。この場合、表示素子72が色ごとにあり、複数色の光が表示素子72に照射され、各表示素子72を透過又は反射した光が合成される。
【0030】
光照射装置71としては、色分離方式に限らず、一般的なプロジェクタ装置に採用される、時分割方式、独立光源方式のものを採用することができる。それぞれの場合、光照射装置71に対応した表示素子72を採用することができる。
【0031】
投影レンズ73は、表示素子72によって形成された表示画像を、測定対象物に投影する。投影レンズ73は、フォーカシングの調整が可能であると共に、焦点距離の調整が可能に構成されている。投影レンズ73は、図示しないレンズ駆動部によって駆動される。
【0032】
レンズ駆動部は、投影レンズ73の構成レンズを駆動することによってズームやフォーカシングを行う。ズームやフォーカシングは、ユーザの操作によって実行可能であってもよく、後述する投影制御部43の制御により行われるようになっていてもよい。
【0033】
画像投影部70は、測距部10と同様に、望遠鏡4c内に設けられている。また、測距部10および画像投影部70は、例えば、測距部10の測距光Lの光軸と前記投影部からの投影光Mの光軸とは、共通の軸上に反対向きになるように構成されている。なお、この共通の軸は、器械中心Oを通る望遠鏡4cの視準軸上の軸である。ここで、器械中心Oは、軸H-Hと、軸V-Vの交点であり、測量装置100で取得される3次元座標の原点となる点である。
【0034】
画像投影部70は、投影制御部43によって駆動されると、光照射装置51が駆動され、投影光Mが出射されて表示素子72に入射する。表示素子72は、投影画像6の像を形成する。次いで、投影レンズ73を介して、被投影体である測定対象物の表面に投影画像6の像を投影する。
【0035】
なお、測距部10と画像投影部70との位置関係は、共通の軸上に反対向きになるように構成されることが必須ではない。測距部10と画像投影部70との位置関係が既知であり、投影画像6と測定データが同じ座標空間のデータとなるように変換可能であればよい。
【0036】
操作部80は、ユーザからの入力を受け付けて、その入力に係る情報を制御演算部40に伝達できる全ての種類の装置の何れか、またはその組み合わせにより実現される。例えば、ボタン等のハードウェア入力手段や、タッチパネルディスプレイ等の表示部50上に表示されたソフトウェア入力手段、リモートコントローラ等の入力手段を含む。
【0037】
、
制御演算部40は、記憶部60に記憶される各種プログラムに含まれるコードまたは命令によって実現する機能、および/または、方法を実行する。制御演算部40は、例えばCPU(Central・Processing・Unit)、GPU(Grafics・Processing・Unit)マイクロプロセッサ、ASIC(Application・Specific・Integrated・Circuit)等を含み、集積回路等に形成される論理回路や専用回路によって、本明細書に開示される各種処理を実現してもよい。
【0038】
また、制御演算部40は、機能部として、測量部41、投影画像生成部42、および投影制御部43を備える。
【0039】
測量部41は、測量装置100による測量を実行して、測距光Lの照射点、すなわち測定点の座標を算出する。具体的には、回転駆動部30を制御して、望遠鏡4cで測定対象物を視準し、測距部10および測角部20により、測量装置100と測定対象物(における照射点)との水平角、鉛直角および距離を検出する。また、測量部41は、取得した水平角、鉛直角および距離に基づいて、測定点の、器械中心Oを中心とする座標を算出する。測量部41が算出した測定点の座標は、測定データとして記憶部60に記憶される。
【0040】
投影画像生成部42は、測量部41により取得され、記憶部60に記憶された測定データにもとづいて、測定対象物の3次元形状を算出する。次に、この3次元形状データを3次元コンピュータグラフィクスで読み込み、測定データを視覚的に確認可能な画像として、測定対象物の表面形状に対応するスクリーンに投影するための歪み補正を行い、投影画像6を生成する。
【0041】
図1の例では、視覚的に確認可能な画像として、測定点P
1~P
9,測定点P
11~P
16を円形の点として表示する画像を示す。歪み補正の手法としては、例えば、スプラインワープ補正、ピンワープ補正等を適用することができる。また、生成する画像における測定点の形状や、色彩は、変更可能となっていてもよい。
【0042】
投影制御部43は、光照射装置71を駆動して、投影光Mを出射させ、表示素子72に入射させる。また、投影制御部43は、表示素子72を反射または透過する投影光Mにより、投影画像6の像を形成するように制御する。これにより、投影レンズ73を介して投影画像6の像を被投影体である測定対象物の表面に投影する。
【0043】
また、投影制御部43は、回転駆動部30を制御して、画像投影部70を投影方向(測定対象物)に向かわせる。
【0044】
また、投影制御部43は、レンズ駆動部を駆動して投影画像6のズームおよび焦点調節を制御する。焦点調節は、例えば、測定データに基づいて、測定点が、直線状かつ多いところが焦点位置となるように、レンズ駆動部を制御するとよい。あるいは、ユーザが、基準となる平面を指定できるようになっており、その平面に焦点位置が来るようにレンズ駆動部を制御してもよい。
【0045】
1.2 測量装置の動作
次に、測量装置100の動作について説明する。
図4は、測量装置100の使用時の動作のフローチャートである。
図1に示す現場での作業について説明する。
【0046】
測量装置100は、既知点に設置されている。動作を開始すると、ステップS101で、測量部41が、測距部10および測角部20を駆動して、測定対象物S1を視準し、測定対象物S1上の測定点を測距および測角する。
【0047】
次に、ステップS102で、測量部41は、測距および測角の結果から、測定点の3次元座標を算出する。取得した測定点の3次元座標は、測定データとして、記憶部60に記憶される。
【0048】
次に、ステップS103で、測量部41は、表示部50に測定を継続するかどうかを確認する画面を表示し、ユーザの選択により、測定の継続(Yes)または終了(No)を選択する。
【0049】
測定を継続する場合(Yes)、ステップS101に戻り、測量部41は、ステップS101~103を繰り返して別の測定点の測定を行う。
【0050】
一方、測定を終了する場合(No)、ステップS104に移行する。ステップS104では、投影画像生成部42が、表示部50に画像の投影を行うかどうかを確認する画面を表示し、ユーザの選択により、画像を投影する(Yes)または画像を投影しない(No)を選択する。
【0051】
ここで、画像を投影しない(No)が選択された場合、制御演算部40は処理を終了する。一方、画像を投影する(Yes)が選択された場合、ステップS105で、投影画像生成部42は、記憶部60に記憶された測定データに基づいて、投影画像6を生成する。
【0052】
次に、ステップS106で、投影制御部43は、回転駆動部30を駆動して、画像投影部70(投影レンズ73)を、投影方向、すなわち現実空間における測定対象物S1の方向へと向かわせる。
【0053】
ステップS105と、ステップS106とは必ずしもこの順序で行う必要はない、すなわち、ユーザが、現実空間における特定の部分(例えば
図1において、測定対象物S1)の測定データを投影したい場合には、ステップS104で画像の投影を選択した後、ステップS106で、回転駆動部30を駆動して、投影レンズ73を測定対象物S1に向かわせてもよい。この場合、次いで、ステップS105を実行して、画像投影部70の測定対象物S1の部分の測定データに基づいて投影画像6を生成する。
【0054】
次に、ステップS107では、投影制御部43が、画像投影部70を制御して、投影画像6を測定対象物S1(
図1)に投影する。
図1では、投影画像6は、測定点P
1~P
9,P
11~P
16を、立体構造物S1の表面に縦横に等間隔で並んだ円形の点として表示している。ここで、表示されていない測定点P
10(破線で示されている)は、何らかの理由により測定されなかった点である。なお、測定対象物S1は単に模式的に示したものであり、形状は問わない。
【0055】
次に、ステップS108おいて、投影制御部43は、投影終了の指示の有無を確認しながら、待機して、投影終了の指示があったとき(No)、処理を終了する。
【0056】
なお、ステップS101~S103の測定と、ステップS104~S108の画像の投影とは必ずしも一連の動作として実行する必要はなく、別々の動作として実行してもよい。
【0057】
図5は、測量装置100の別の使用状態を説明する図である。
図5は、杭打ち点P
1~P
4の設置を行っている状況を示す。
【0058】
図5の場合、ユーザUは、ファンビームを送光するファンビーム送光器7aとプリズム7bを備えるリモートキャッチャー7を用いている。また、測量装置100は、図示しないが、さらにファンビーム検出器と、プリズムを自動追尾する自動追尾部を備え、杭打ち点上に鉛直に保持されたプリズムを測距・測角して、杭打ち点の3次元座標を取得する。
【0059】
杭打ち点設置作業においては、従来と同様に、リモートキャッチャー7を保持するユーザUが、各杭打ち点を移動して、杭打ちを行う。その後ステップS104~S108の動作を行い、測定対象物である杭打ち点設置領域に、投影画像6の投影を行う。測量装置100は、このように、杭打ち後の杭打ち点の確認にも利用することができる。
【0060】
1.3 効果
本実施の形態では、測量装置100に画像投影部70を設け、測定データを実際の空間における測定対象物に投影するようにしたので、事務所に持ち帰って表示用データに変換しなくても、現場で測定結果を確認することができる。特に、実際の空間における測定対象物に、投影することで、実際の空間におけるデータの測定状況を直観的に把握することができる。
【0061】
たとえば、
図1のような状況では、投影画像6を確認すれば、測定点P
10の測定が漏れていることを、直ちに認識することができる。また、
図5のような状況では、実際に杭打ちした点が、杭打ち点として測定した点とが一致しているかどうかを視覚的に認識することができる。
【0062】
また、本実施の形態において、望遠鏡4c内に測距部10と、画像投影部70の光軸を、共通の軸上に反対向きになるよう構成すれば、望遠鏡4cを鉛直方向に180°回転させるだけで、画像投影部70の光軸を、測距部10の光軸と合致させることができるので、投影画像生成部42で投影画像生成の際に複雑な演算処理を行う必要がなく、処理時間を短縮することができる。
【0063】
2.第2の実施の形態
2.1 測量装置の構成
図6は、第2の実施の形態に係る測量装置200の投影画像6aを投影中の状態を示す外観概略図である。
図7は、測量装置200の構成ブロック図、
図8は、投光部204cに配置される測距部10および画像投影部70の構成を説明する模式図である。
【0064】
本実施の形態において、測量装置200は、いわゆる3次元レーザスキャナである。測量装置200と、測量装置100とは、以下の点を除き共通の構成を有する。まず、外観上において、測量装置100では托架部4bの凹部5に、軸V-V周りに回転する望遠鏡4cを備えるのに対して、測量装置200では、托架部204bの凹部205に、投光部204cを備える。
【0065】
また、
図8の測距部210と画像投影部70との間には、望遠鏡4cに固定された両面ミラー14に代えて、回動ミラー90を備える。回動ミラー90は、両面ミラーであり、両面ミラー14と同様に、測距部210と画像投影部70とがそれぞれの出射光軸と同軸上かつ反対に向かうようにしている。
【0066】
また、回動ミラー90は、鉛直回転駆動部32に接続されて、器械中心Oを中心として、軸V-V周りに走査することで、測距光Lを鉛直方向に走査できるようになっている。また、発光素子211は、パルスレーザ光(パルス光)を出射する。このようにして、測量装置200は、測距光Lを水平方向および鉛直方向に全周にわたって測距光Lを走査して、全周の点群データを取得可能に構成されている。
【0067】
なお、画像投影部70の駆動時には、回動ミラー90は回転せず、回動ミラー90と、画像投影部70とは固定されている。測距光Lの走査時に測距光Lの光路を妨害しないように、画像投影部70は、回動ミラー90と一体に回転するようになっていてもよい。
【0068】
また、機能的には、
図7に示すように、測量装置100が制御演算部40に測量部41および投影画像生成部42を備えるのに代えて、測量装置200では、制御演算部240に点群データ取得部241および投影画像生成部242を備える。
【0069】
点群データ取得部241は、測距部210、測角部20および回転駆動部30を駆動して、測距光Lで測定範囲(最大360°)を走査し、測定範囲の3次元点群データを取得して、記憶部60に記憶する。
【0070】
投影画像生成部242は、記憶部60に記憶された点群データに基づいて、投影画像生成部42と同様にして、投影画像6aを生成する。
【0071】
測量装置200と、測量装置100の使用時の動作は、概略
図4のフローチャートと同様であるが、ステップS101~S103で測定対象物S2に設けられた測定点を1点ずつ測距・測角して、各点ごとに3次元座標を取得しているのに代えて、測量装置200は測定データとして、点群データを取得する。
【0072】
図6に例示する投影画像6aは、点群データの各点を円形の点として表示したものである。このように、測量装置200が3Dレーザスキャナである場合にも、事務所に持ち帰って表示用データに変換しなくても、現場で測定結果を確認することができるという第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
図6の投影画像6aでは、測定対象物S2の正面視右下部分に点群の欠落があることがわかる。これは、例えば、測定時に測定対象物S2と測量装置200との間に、車両等の障害物が一時的あったりなどして起こりえるものでる。このように、ユーザは直観的に点群データの取得漏れ部分(取得状況)を確認することができる。
【0073】
2.2 投影画像の変形例
(1)
図9は、投影画像生成部242が生成する、1つの例に係る投影画像6bである。投影画像6bにおいては、測定対象物S3の表面の凹凸が識別可能に表示されている。具体的には、点群データの各点の表面からの距離の差をヒートマップのようにして表示している。
【0074】
この例では、投影画像生成部242は、記憶部60に記憶された測定データ(点群データ)に基づいて、測定対象物S3の3次元形状を算出する。そして、この3次元形状データを3次元コンピュータグラフィクスで読み込み、測定対象物の表面(サーフェイス)を求める。
【0075】
そして、表面と各点との、表面と直交する方向の距離を、所定の範囲(たとえは、0~2cm,2~4cm,・・・等)毎に色分けすることにより、いわゆるヒートマップ様の態様で表示する画像を生成する。例えば、
図9では、測定対象物S3の表面の中央付近には、10cm程度突出した部分があることを示している。
【0076】
このような投影画像6bを、測定対象物S3に投影させることにより、ユーザは測定対象物S3の表面の凹凸を容易かつ直感的に認識することができる。この場合、肉眼では確認できない程度の表面の凹凸であっても際立って見えるので有利である。
【0077】
あるいは、投影画像生成部242を、器械中心から各点までの距離に応じて、所定の範囲毎に色分けしていわゆる深度マップ状に、測定対象物S3の表面の凹凸が識別可能に表示する画像を生成するように構成しても同様の効果を奏することができる。
【0078】
(2)
図10は、投影画像生成部242が生成する、別の例に係る投影画像6cである。投影画像6cにおいては、測定対象物S4の表面が所定の間隔で格子状(メッシュ状)に分割され、各四角が、その四角の領域における点群密度
のレベルに応じて色分けされて表示されている。
【0079】
この例では、投影画像生成部242は、記憶部60に記憶された測定データ(点群データ)に基づいて、測定対象物S4の3次元形状を算出する。そして、この3次元形状データを3次元コンピュータグラフィクスで読み込み、測定対象物S4の表面を求める。
【0080】
そして、測定対象物の表面を所定の間隔の格子状に分割し、測定データから、各四角内の点群密度を算出して、例えば、200点以上/m3をレベル1(Lv1),100~200点/m3をレベル2(Lv2),100点未満/m3をレベル3(Lv3)というように3段階に分類し、四角内の点群密度のレベルに応じて、色分けした投影画像6cを生成する。
【0081】
このような投影画像6cを投影させることにより、ユーザは、測定対象物S4の点群データについて、どの部分が要求密度を満たしているか等の状況を視覚的にかつ直感的に認識することが可能となる。
【0082】
上記の投影画像の変形は、これらに限定されず、例えば、点群密度を、投影画像6bのようにヒートマップ状に表示してもよい。あるいは、表面からの凹凸をメッシュ状に表示してもよい。
また、上記投影画像6b,6cの変形は、測量装置200のみならず、測量装置100にも適用可能である。
【0083】
3.第3の実施の形態
図11は、第3の実施の形態に係る測量装置300の構成ブロック図であり、
図12は、測量装置300の投影画像6dを投影中の状態を示す外観概略図であり、
図1と同じ現場を測定している状況を示す。
【0084】
測量装置300は、測量装置100と実質的に同じ構成を備えるトータルステーションであるが、記憶部360が、測定対象物S1の設計データ61を備え、制御演算部340が投影画像生成部42に代えて、投影画像生成部342を備える点で異なる。
【0085】
投影画像生成部342は、投影画像6dを生成するのにあたり、設計データ61と、測定データとのずれを算出し、測定データとのずれを識別可能に表示する画像を生成するように構成されている。
【0086】
例えば、設計データ61が測定点P
1~P
16の情報を備え、点P
8の測定データが、破線で示す設計データ61上の点P
8から右へずれており、点P
10の測定データが測定されていないというように、測定データと設計データ61にずれがある場合に、
図12のように、ずれの部分を、色や形状を変更して目立たせるようにしてもよい。
【0087】
このように構成することで、ユーザは、設計データ61との差異を直観的に把握することできる。同様の変形を、第2の実施の形態に係る測量装置に適用することも可能であり、上記投影画像の変形例と組み合わせて適用することも可能である。
【0088】
4.他の変形例
上記実施の形態に係る測量装置については、以下のようなさらなる変形を加えてもよい。
(1)1の測量装置において、複数種類の投影画像を生成可能に構成し、ユーザの指示により生成する画像の種類を選択可能に構成する。また、投影した画像を、別の種類の投影画像に切り替え可能に構成する。
(2)投影画像を投影した状態から、投影画像6における各要素の色や形状を変更可能に構成する。
【符号の説明】
【0089】
6,6a,6b,6c :投影画像
10 :測距部
20 :測角部
40 :制御演算部
41 :測量部
42 :投影画像生成部
43 :投影制御部
51 :光照射装置
70 :画像投影部
71 :光照射装置
72 :表示素子
73 :投影レンズ
100 :測量装置
200 :測量装置
240 :制御演算部
210 :測距部
242 :投影画像生成部
300 :測量装置
340 :制御演算部
342 :投影画像生成部