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特許7543020画像処理装置、画像処理方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240826BHJP
   B41J 2/205 20060101ALI20240826BHJP
   B41J 2/525 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
B41J2/01 201
B41J2/01 203
B41J2/01 451
B41J2/205
B41J2/525
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020131644
(22)【出願日】2020-08-03
(65)【公開番号】P2022028320
(43)【公開日】2022-02-16
【審査請求日】2023-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 和歌子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 美乃子
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-082694(JP,A)
【文献】特開2020-082373(JP,A)
【文献】特開2020-069661(JP,A)
【文献】特開2012-076414(JP,A)
【文献】特開2003-127439(JP,A)
【文献】特開2000-168059(JP,A)
【文献】特許第5479399(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41J 2/525
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するノズルを備えた記録ヘッドにおける前記ノズルからのインクの吐出特性を取得する取得手段と、
前記吐出特性に応じて、記録画像から得られた記録するインク色に対応する第1画像の画素における画素値の補正に関する処理を行う補正手段と、
前記第1画像を量子化してドットによる記録、非記録を表す記録データを生成する生成手段と、
を備えた画像処理装置であって、
前記補正手段は、各画素に、前記第1画像の各画素値に対する補正量が割り当てられた第2画像を取得し、
前記生成手段は、前記第1画像および前記第2画像に基づいて、前記第2画像によるドットが前記第1画像によるドットに少なくとも一部が重なるように記録データを生成する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記生成手段は、前記第1画像を量子化して第1多値データを取得するとともに、前記第2画像を量子化して第2多値データを取得して、第1多値データおよび第2多値データに基づいて記録データを生成することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記生成手段では、ディザ法によって前記第1画像および前記第2画像を量子化し、
前記ディザ法では、前記第1画像および前記第2画像の各画素に対する量子化の閾値が一致する
ことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記生成手段は、前記第2多値データにおけるドットを形成する画素データを移動することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記画素データは、隣接する画素に移動することを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記生成手段は、前記第1画像を量子化して第1多値データを取得するとともに、前記第1多値データを、前記第2画像の画素値の平均値に基づいて補正することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記生成手段は、前記平均値に基づく数だけ、前記第1多値データにおけるドットを形成する画素の量子化レベルを、複数のドットを形成する量子化レベルまで上げることを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記生成手段は、前記第1多値データにおいてドットを形成する画素のうち、前記平均値に応じた数だけ該画素を複製した多値データを、前記第2画像を量子化した第2多値データとして取得することを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記記録画像のデューティは、所定値以下であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記記録するインク色のデューティは、所定値以下であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記所定値は、50%であることを特徴とする請求項9または10に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記記録ヘッドを備え、前記記録データに基づいて前記記録ヘッドにより記録を行う記録手段をさらに有することを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項13】
インクを吐出するノズルを備えた記録ヘッドにおける前記ノズルからのインクの吐出特性を取得する取得工程と、
前記吐出特性に応じて、記録画像から得られた記録するインク色に対応する第1画像の画素における画素値の補正に関する処理を行う補正工程と、
前記第1画像を量子化してドットによる記録、非記録を表す記録データを生成する生成工程と、
を備えた画像処理方法であって、
前記補正工程では、各画素に、前記第1画像の各画素値に対する補正量が割り当てられた第2画像を取得し、
前記生成工程では、前記第1画像および前記第2画像に基づいて、前記第2画像によるドットが前記第1画像によるドットに少なくとも一部が重なるように記録データを生成する
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項14】
請求項1から11のいずれか1項に記載の画像処理装置として、コンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のノズルを用いて、相対移動する記録媒体に対して画像を記録するための記録データを生成する画像処理装置、画像処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式により記録媒体に対してインクを吐出して記録する記録装置では、インクを吐出する複数のノズルを備えた記録ヘッドにおいて、製造上の誤差などによって、ノズル間で吐出特性にばらつきが生じる場合がある。なお、吐出特性としては、例えば、吐出量、吐出方向などが挙げられる。このような吐出特性にばらつきが生じると、記録される画像に色むらが生じ易くなる。
【0003】
従来、記録される画像に生じる色むらを低減するために、例えば、特許文献1に開示されるようなヘッドシェーディング技術を用いることが知られている。ヘッドシェーディング技術は、各ノズルの吐出特性に関する情報に応じて補正を行う技術であり、ノズルごとに、駆動パルスの制御や画像データの補正を行う技術である。具体的には、画像データの補正を行う場合には、最終的に記録されるインクドットの数をノズルごとに増加または減少させることで、記録される画像における色をノズル間でほぼ均一にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-13674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、こうしたヘッドシェーディング技術を用いても、異なる色のインクを2種類以上重ねて混合した多次色(混合色)を再現する場合には、色ずれが生じる虞があった。具体的には、標準と異なる吐出量のノズルで記録した領域の発色と、標準となる吐出量のノズルで記録した領域の発色とが異なる虞があった。なお、領域ごとの色ずれの違いは、色むらとして視認される。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ノズル間の吐出特性のばらつきに起因する色ずれを抑制することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態は、インクを吐出するノズルを備えた記録ヘッドにおける前記ノズルからのインクの吐出特性を取得する取得手段と、前記吐出特性に応じて、記録画像から得られた記録するインク色に対応する第1画像の画素における画素値の補正に関する処理を行う補正手段と、前記第1画像を量子化してドットによる記録、非記録を表す記録データを生成する生成手段と、を備えた画像処理装置であって、前記補正手段は、各画素に、前記第1画像の各画素値に対する補正量が割り当てられた第2画像を取得し、前記生成手段は、前記第1画像および前記第2画像に基づいて、前記第2画像によるドットが前記第1画像によるドットに少なくとも一部が重なるように記録データを生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ノズル間の吐出特性のばらつきに起因する色ずれを抑制することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の画像処理装置を備えた記録システムの概略構成図。
図2】記録ヘッドにおけるノズル列を説明する図。
図3】記録装置およびPCのブロック構成図。
図4】公知技術により生じる色差を説明する図。
図5】実施形態の画像処理装置のブロック構成図。
図6】第1実施形態の画像処理装置で実行される画像処理のフローチャート。
図7】画像処理のサブルーチンであるHS処理のフローチャート。
図8】入力画像に対するHS処理を説明する図。
図9】HS処理で用いるデータおよび作成されるデータを示す図。
図10】画像処理のサブルーチンである量子化処理のフローチャート。
図11】HS入力画像およびHS補正量画像を説明する図。
図12】生成した記録データに基づく記録の記録状態を説明する図。
図13】第2実施形態の画像処理装置で実行される画像処理のフローチャート。
図14】画像処理における量子化処理を説明する図。
図15】第3実施形態の画像処理装置で実行される量子化処理のフローチャート。
図16】画素データの移動を説明する図。
図17】第4実施形態の画像処理装置で実行される画像処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照しながら、画像処理装置、画像処理方法、およびプログラムの実施形態の一例を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を限定するものではなく、また、本実施形態で説明されている特徴の組み合わせのすべてが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。また、実施形態に記載されている構成要素の相対位置、形状などは、あくまで例示であり、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
(第1実施形態)
図1は、実施形態による画像処理装置を備えた記録システムの概略構成図である。図2は、記録ヘッドのノズル列を示す図である。図3は、記録システムを構成する記録装置およびホスト装置としてのパーソナルコンピュータのブロック構成図である。
【0011】
図1の記録システム10は、記録媒体に対してインクを吐出して記録する記録装置100と、記録装置100のホスト装置としてのパーソナルコンピュータ(PC)200とを備えている。
【0012】
記録装置100は、フルラインタイプのインクジェット記録装置である。この記録装置100は、記録媒体Mに対してインクを吐出して記録する記録ヘッド102と、記録媒体Mを搬送する搬送ローラ104と、記録媒体Mに記録された画像を読み取るスキャナ106とを備えている。
【0013】
記録ヘッド102は、記録ヘッド102K、102C、102M、102Yの4つが、この順でY方向に沿って並設されている。記録ヘッド102Kはブラックインクを吐出し、記録ヘッド102Cはシアンインクを吐出し、記録ヘッド102Mはマゼンタインクを吐出し、記録ヘッド102Yはイエローインクを吐出する。記録ヘッド102は、Y方向と交差(本実施形態では直交)するX方向に延在しており、Y方向に搬送される記録媒体Mの幅方向(X方向)における記録領域をカバーする長さを備えている。
【0014】
搬送ローラ104は、モータ(不図示)の駆動力によって回転して、記録媒体MをY方向に搬送する。以下、この記録媒体MがY方向に搬送される方向のことを、記録媒体の搬送方向または単に搬送方向という。なお、記録装置100では、搬送ローラ104以外にもモータにより駆動されるローラが設けられており、これらローラと搬送ローラ104とによって記録媒体Mが搬送されることとなる。搬送ローラ104などによって記録媒体Mが搬送される間に、記録ヘッド102K、102C、102M、102Yのノズル(後述する)から、記録媒体Mの搬送速度に応じた周波数で、記録データに基づいた吐出動作が行われる。これにより、各色のインクドットが記録データに対応して、所定の解像度で記録され、記録媒体Mに画像が形成される。
【0015】
スキャナ106は、記録ヘッド102の搬送方向下流側に設けられ、記録媒体Mの幅方向(X方向)における記録領域をカバーする長さを備えている。スキャナ106には、記録媒体Mと対向する面に、X方向に沿って所定のピッチで読取素子(不図示)が配列されている。スキャナ106は、記録ヘッド102により記録された画像を読み取り、RGBの多値データとして出力することができる。
【0016】
記録ヘッド102K、102C、102M、102Yにはそれぞれ、図2のように、記録媒体Mと対向する面において、インクを吐出する複数のノズルが配列されたノズル列が形成されている。このノズル列は、記録媒体Mにおける記録領域の幅に対応した領域に形成されている。より詳細には、各記録ヘッド102には、ノズル列が形成された複数の吐出基板108が、隣り合う吐出基板同士がY方向に隣接し、かつ、その一部がX方向で重なり合うようにずれて配列されている。
【0017】
具体的には、互いに隣接する吐出基板108-1および吐出基板108-2については、吐出基板108-1の搬送方向下流側に、X方向においてその一部が重なるように、吐出基板108-2が配置される。また、互いに隣接する吐出基板108-2および吐出基板108-3については、吐出基板108-2の搬送方向上流側に、X方向においてその一部が重なるように、吐出基板108-3が配置される。そして、吐出基板108-4以降については、上記した配置が繰り返されている。即ち、吐出基板108は、千鳥配列され、全体としてX方向に延在するように配置されていることとなる。
【0018】
各吐出基板108にはそれぞれ、X方向沿って複数のノズルが配列されて形成された8つのノズル列a~hが形成されている。各ノズル列a~hのX方向のノズル同士の間隔は、1200dpiとなっている。なお、本実施形態では、ノズル列a~dでは、各ノズルがX方向に1200dpiの1/4ずつずれながら配置されている。また、ノズル列e~hでも、各ノズルがX方向に1200dpiの1/4ずつずれながら配置されている。そして、ノズル列aおよびノズル列eがX方向に延在するX軸において一致する位置にノズルが配置されている。同様に、ノズル列bおよびノズル列f、ノズル列cおよびノズル列g、ノズル列dおよびノズル列hがX方向に延在するX軸において一致する位置にノズルが配置されている。
【0019】
X方向において一致する位置に配置されたノズル列では、吐出されたインクトッドを、記録媒体M上の同じ座標に重ねて記録することが可能である。各吐出基板108は、X方向に沿って配置され、こうした吐出基板108が配置された各記録ヘッド102は、Y方向に沿って配置されている。そして、Y方向に搬送される記録媒体M上の対応する領域に対して、各記録ヘッド102からインクを吐出することで、記録媒体M上に画像を記録することとなる。
【0020】
なお、記録装置100は、フルラインタイプのインクジェット記録装置に限定されるものではなく、記録ヘッドやスキャナをX方向に走査して記録を行う、所謂、シリアルタイプのインクジェット記録装置であってもよい。また、記録装置100は、記録媒体Mに対して記録ヘッド102から直接インクを付与する形態に限定されるものではない。即ち、中間転写体に一旦インク層を形成してから、記録媒体Mに当該インク層を転写する形態であってもよい。記録装置100で吐出するインクを、種類を異なる4色のインクとしたが、これに限定されるものではない。即ち、少なくとも、異なる2色のインクを吐出可能であればよく、同じ色のインクを吐出する記録ヘッドを複数備えるようにしてもよい。
【0021】
PC200は、図3のように、CPU302、RAM304、HDD306、データ転送インターフェース(I/F)308、キーボード・マウスI/F310、およびディスプレイI/F312を備えている。CPU302は、記憶手段であるRAM304およびHDD306などに保持されているプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM304は、揮発性のストレージであり、種々のプログラムやデータを一時的に保持する。HDD306は、不揮発性のストレージであり、種々のプログラムやデータを保持する。
【0022】
データ転送I/F308は、記録装置100との間におけるデータの送受信を制御する。このデータ送受信の接続方式としては、USB、IEEE1394、LANなどを用いることができる。キーボード・マウスI/F310は、キーボードやマウスなどのHID(Human Interface Device)を制御するI/Fであり、ユーザは、キーボード・マウスI/F310を介して入力を行うことができる。ディスプレイI/F312は、PC200のディスプレイ(不図示)における表示を制御する。
【0023】
また、記録装置100は、図3のように、CPU320、RAM322、ROM324、データ転送I/F326、ヘッドコントローラ328、画像処理アクセラレータ330、およびスキャナコントローラ332を備えている。CPU320は、RAM322およびROM324に保持されているプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM322は、揮発性のストレージであり、種々のプログラムやデータを一時的に保持する。ROM324は、不揮発性のストレージであり、種々のプログラムやデータを保持する。
【0024】
データ転送I/F326は、PC200との間におけるデータの送受信を制御する。ヘッドコントローラ328は、各記録ヘッド102に対して記録データを供給するとともに、各記録ヘッド102の吐出動作を制御する。ヘッドコントローラ328は、例えば、RAM322の所定のアドレスから制御パラメータと記録データとを読み込む構成とする。そして、CPU320が、制御パラメータと記録データとをRAM322の上記所定のアドレスへ書き込むと、ヘッドコントローラ328は、当該制御パラメータおよび記録データに基づいて、各記録ヘッド102からインクを吐出することとなる。このように、本実施形態では、記録ヘッド102およびヘッドコントローラ328が、記録データに基づいて記録を行う記録部として機能している。
【0025】
スキャナコントローラ332は、スキャナ106における各読取素子を制御しつつ、得られたRGBデータをCPU320に出力する。
【0026】
画像処理アクセラレータ330は、CPU320よりも高速に画像処理を実行可能なハードウェアである。画像処理アクセラレータ330は、例えば、RAM322の所定のアドレスから画像処理に必要なパラメータとデータとを読み込む構成とする。そして、CPU320が当該パラメータとデータとを、RAM322の上記所定のアドレスに書き込むと、画像処理アクセラレータ330が起動され、当該データに対して所定の画像処理が実行される。なお、画像処理アクセラレータ330は、必須な構成ではなく、記録装置100の使用などに応じて、上記したような画像処理アクセラレータ330における処理を、CPU320によって実行するようにしてもよい。
【0027】
以上において説明した記録システム10において、複数種類のインクを用いて記録媒体Mに記録画像を記録することとなる。この記録システム10では、複数種類のインクによる多次色画像において、複数のノズル間の吐出特性のばらつきに起因する色ずれを低減するための記録データを生成する画像処理が実行される。
【0028】
ここで、まず、図4を参照しながら、公知技術によるヘッドシェーディング(以下、「HS」と称する。)処理を行った際に生じる色ずれ(以下、「色差」とも称する。)について説明する。図4は、公知技術により生じる色差を説明する図である。図4(a)は、2つの記録ヘッドにおけるノズルを模式的に示す図である。図4(b)は、図4(a)のノズルを用いて、公知技術によるHS処理による補正を行ったうえで、記録媒体Mに記録された50%デューティの画像の記録状態を示す図である。ここで、「50%デューティの記録状態」とは、図に示すように、全画素に対し、半分の画素にドットが付与されることである。図4(c)は、図4(b)と同じ条件で、2種類のインクを重複させた記録状態を示す図である。
【0029】
以下の説明では、シアンインクおよびマゼンタインクによって二次色であるブルーの画像を記録する場合に生じる色差について説明する。図4(a)では、記録ヘッド102として、シアンインクを吐出する記録ヘッド102Cとマゼンタインクを吐出する記録ヘッド102Mとが示されている。また、理解を容易にするために、各記録ヘッドでは8個のノズルを備えるものとする。
【0030】
また、以下の説明では、記録媒体Mにおける記録領域を、ノズルの配列方向であるX方向において2つの領域に分割し、これら領域に記録された画像間に生じる色差について説明する。そして、ノズル列の図中左側の4つのノズルを用いて記録される領域を第1エリアと称し、ノズル列の図中右側の4つのノズルを用いて記録される領域を第2エリアと称する。
【0031】
なお、図4を用いた説明では、個々のノズルの大きさと、当該ノズルによって記録されるドットの大きさとが等しい大きさで示されているが、これは説明上両者の対応をとるためであって、実際にこれらの大きさは等しいものではない。また、各ノズルからの吐出量は、ノズルの大きさ、つまり、ノズル径以外の原因によっても異なるため、必ずしもノズル径が異なるとは限らないが、この説明では、吐出量が大きいノズルを大きな円で示している。
【0032】
記録ヘッド102Cの8つのノズルのうち、図中左側に位置するノズル102C-1、図中右側に位置するノズル102C-2はそれぞれ、標準量のインクを標準方向に吐出可能である。これにより、記録媒体Mでは、ノズル102C-1、102C-2から吐出されたインクによって、同じ大きさのドットが一定の間隔で記録される。一方、記録ヘッド102Mの8つのノズルのうち、図中左側に位置するノズル102M-1は、標準量のインクを標準方向に吐出可能であり、図中右側に位置するノズル102M-2は、標準量よりも少ない吐出量のインクを標準方向に吐出可能である。
【0033】
記録ヘッド102Mのような吐出量にばらつきのある記録ヘッドを用いる場合、記録媒体M上に同じ色の画像を記録したとしても、領域によって異なる色になることがある。具体的には、図中左側に示された4つのノズルを用いて記録される領域である第1エリアでは、シアンインクによるドットと等しい大きさのマゼンタインクによるドットが形成される。一方、図中右側に示された4つのノズルを用いて記録される領域である第2エリアでは、シアンインクによるドットよりも小さいマゼンタインクによるドットが、シアンインクによるドットと等しい間隔で形成される。このため、第1エリアと第2エリアとで色が異なってしまう。
【0034】
具体的には、例えば、公知のHS処理による補正を行ったうえで記録媒体Mに50%デューティで記録する際のドットは、図4(b)のようになる。図4(b)では、103-1Cは、ノズル102C-1から吐出されたシアンインクにより形成されたシアンドットであり、103C-2は、ノズル102C-2から吐出されたシアンインクにより形成されたシアンドットである。また、103M-1は、ノズル102M-1から吐出されたマゼンタインクにより形成されたマゼンタドットであり、103M-2は、ノズル102M-2から吐出されたマゼンタインクにより形成されたマゼンタドットである。なお、1つのマゼンタドット103M-2の記録媒体M上での面積は、1つのマゼンタドット103M-1の記録媒体M上での面積の1/2倍となっている。
【0035】
この場合、HS処理によって、ノズル102M-2に対応する画像データに対して色が濃くなる補正、つまり、ノズル102M-2からのインクの吐出量が多くなるような補正が行われている。具体的には、ノズル102M-2からの吐出数を、ノズル102M-1からの吐出数の約2倍(2ドット→4ドット)とすることで、第1エリアと第2エリアとの間でマゼンタインクの被覆面積をほぼ同等にすることができる。より詳細には、ノズル102M-2により形成されるドットの数が、標準量のインクにより形成される本来のドットの数の2倍となるように、記録「1」、非記録「0」を定める2値のドットデータ(2値データ)が生成される。
【0036】
上述のように、公知技術によるHS処理では、記録媒体M上の領域ごとに検出される色がほぼ一様になるように、各領域に形成されるドット数を調整している。なお、実際には、被覆面積と、検出される色の濃さとは、必ずしも比例関係になっていないが、本実施形態では、1/2の面積のドットの数を2倍とする例を用いて説明する。
【0037】
こうした公知技術によるHS処理により、シアンドット103Cとマゼンタドット103Mとが重複されて形成される場合には、図4(c)のようになる。具体的には、第1エリアには、標準量のインクで形成された標準サイズのシアンドット103C-1とマゼンタドット103M-1とが重なって形成され、標準サイズのブルードット103B-1が形成されている。一方、第2エリアには、標準サイズのシアンドット103C-2と、標準サイズの1/2のマゼンタドット103M-2とが重なって形成されるブルードット103B-2が形成される。また、第2エリアにはさらに、標準サイズの1/2のマゼンタドット103M-2が形成されている。なお、第2エリアでは、ブルードット103B-2によるブルーエリアBAの周囲に、シアンドット103C-2によるシアンエリアCAが形成されている。
【0038】
このため、第2エリアでは、マゼンタドット103M-2によるマゼンタエリアMAの面積の和と、ブルーエリアBAの面積の和と、シアンエリアCAの面積の和とがほぼ一致するようになっている。よって、マゼンタエリアMAの光吸収特性と、シアンエリアCAの光吸収特性との和によって観察される色が、ブルーエリアBAの光吸収特性によって観察される色と一致すれば、この第2エリアはブルーエリアBAとほぼ同色に視認される。即ち、第1エリアのブルー画像と、第2エリアのブルー画像とが同じ色に視認される。
【0039】
しかしながら、複数のインクを重ねることにより多次色を形成する場合、複数のインクが重なった領域の光吸収特性によって観察される色は、当該複数のインクがそれぞれ単体でドットを形成した領域の光吸収特性の和によって観察される色とは一致しない。このため、第1エリアでは目標とする標準の色に一致するが、第2エリアでは当該標準の色と一致せずに色差が生じる。即ち、記録ヘッド102のノズルの吐出特性のばらつきにより、記録媒体M上をX方向に沿って複数の単位領域に分割した場合に、単位領域間の色、例えば、第1エリアのブルー画像と第2エリアのブルー画像とが異なる色として感知されてしまう。
【0040】
このように、インク色ごとに補正を行う、公知技術によるHS処理を施した場合でも、2色以上のインクを用いて記録される画像においては、単位領域間に色差が生じ、記録された画像に劣化が生じる。そこで、本実施形態では、以下に説明するようにして、こうした色味の差を抑制するようにした。なお、記録ヘッド102の吐出特性のばらつきは、例えば、大、中、小の3段階のドットによって記録を行う4値の記録装置など、ドットの大きさを変更可能な多値の記録装置においても生じることがある。従って、本実施形態は、本願明細書で説明する2値の記録装置に限定されず、3値以上の多値記録装置にも適用可能である。
【0041】
次に、記録システム10における、上記した色差を抑制するようにした技術について説明する。図5は、記録システム10において、画像データに対する画像処理を行って記録データを生成するための画像処理装置のブロック構成図である。記録システム10は、例えば、記録装置100における各種の制御および処理を実行する構成によって画像処理装置500を形成する。なお、画像処理装置500としては、PC200における各種の制御および処理を実行する構成によって形成されるようにしてもよし、その一部がPC200の構成により形成され、その他の部分が記録装置100の構成により形成されるようにしてもよい。
【0042】
図5の画像処理装置500は、入力色変換処理部502、インク色変換処理部504、HS処理部506、量子化処理部508、およびノズル分配処理部510を備えている。なお、こうした各処理部については、例えば、CPU320および画像処理アクセラレータ330などにより実現される。
【0043】
入力色変換処理部502は、入力部512を介してPC200から入力された画像データを、記録装置100の色再現域に対応した画像データに変換する。入力部512は、例えば、データ転送I/F314により実現される。入力部512から入力される画像データは、モニタの表現色であるsRGBなどの色空間座標中の座標(R,G,B)を示すデータである。入力色変換処理部502は、各8ビットのR,G,Bの入力画像データを、マトリクス演算処理や三次元ルックアップテーブル(3DLUT)を用いた処理などの既知の手法によって、記録装置100の色再現域の画像データ(R´,G´,B´)に変換する。本実施形態では、3DLUTを用い、これに補完演算を併用して変換処理を行う。なお、画像処理装置500において扱われる8ビットの画像データの解像度は600dpiであり、量子化処理部508の量子化によって得られる2値データ(後述する)の解像度は1200dpiである。
【0044】
インク色変換処理部504は、入力色変換処理部502で変換されたR、G、B各8ビットの画像データを、記録装置100で用いるインクの色信号データによる画像データに変換する。記録装置100は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクを用いることから、RGB信号の画像データは、K、C、M、Yの各8ビットの色信号からなる画像データに変換される。この色変換も、入力色変換処理部502と同様、3DLUTを用い、これに補完演算を併用して行う。なお、他の変換手法としては、マトリックス演算処理などの手法を用いることができる。
【0045】
HS処理部506は、各インクの色信号の画像データを入力して、インク色ごとにそれぞれ8ビットデータに対して、記録ヘッド102を構成する各ノズルの吐出量に応じてHS処理を行う。なお、このHS処理の具体的な処理内容については後述する。
【0046】
量子化処理部508は、HS処理部506から出力された各8ビット256値のインク色の画像データに対して量子化処理を行う。量子化処理部508では、量子化の形態は特に限定されるものではない。例えば、8ビットの画像データを直接、記録「1」または非記録「0」を表す1ビットの2値データに変換する形態であってもよいし、一度、数ビットの多値データに量子化してから、最終的に2値データに変換する形態であってもよい。なお、量子化処理方法は、誤差拡散法を用いてもよいし、ディザ法など他の疑似中間調処理を用いてもよい。
【0047】
ノズル分配処理部510は、量子化処理部508で変換された2値データを、対応付けられた記録ヘッド102のノズル群へ分配する。なお、ノズル分配処理部510については、量子化の形態に応じて省略するようにしてもよい。こうしてノズル分配処理部510により分配されて生成した各記録ヘッド102に対する2値データ(記録データ)に基づいて、出力部514が、記録ヘッド102を駆動して記録媒体Mに各色のインクを吐出して記録を行う。出力部514は、例えば、ヘッドコントローラ328によって実現される。
【0048】
以上の構成において、画像処理装置500では、例えば、ジョブが入力されたタイミングなどに、入力された画像データから、各記録ヘッド102に対して、ノズルによる記録、非記録を表す記録データを生成する画像処理が開始される。その後、記録の開始が指示されると、生成された記録データに基づいて、記録処理が行われる。
【0049】
図6は、画像処理の詳細な処理内容を示すフローチャートである。図6のフローチャートで示される一連の処理は、CPU320(または画像処理アクセラレータ330)がROM324に記録されているプログラムコードをRAM322に展開して実行されることにより行われる。あるいはまた、図6におけるステップの一部または全部の機能をASICまたは電気回路などのハードウェアで実行してもよい。また、本願明細書での各処理の説明における符号Sは、各処理内容を示すフローチャートにおけるステップであることを意味する。
【0050】
画像処理が開始されると、まず、入力色変換処理部502が、入力された画像データを、記録装置100の色再現域に対応した画像データに変換する(S602)。次に、インク色変換処理部504が、入力色変換処理部502で変換された画像データを、記録装置100で用いるインクの色信号データによる画像データに変換する(S604)。そして、変換した画像データに対して、HS処理部506がHS処理(後述する)を実行する(S606)。その後、量子化処理部508が、HS処理後の画像データに対して量子化処理(後述する)を行って2値データを生成し(S608)、ノズル分配処理部510が、生成した2値データを記録ヘッドのノズル群へ分配して記録データを生成する。そして、この画像処理を終了する。なお、以下の説明では、S604で変換された画像データを、「HS入力画像」と適宜に称する。
【0051】
ここで、図7および図8などを参照しながら、画像処理のサブルーチンであるHS処理について説明する。図7は、HS処理の詳細な処理内容を示すフローチャートである。図8は、入力された画像に対して実行されるHS処理を説明する図である。図8(a)は、HS処理部506に入力される、600dpiの3画素×3画素のマゼンタデータを示す図である。図8(b)は、図8(a)のHS入力画像をHSターゲットテーブルを用いて変換した中間データを示す図である。図8(c)は、HS補正量画像の一例を示す図である。
【0052】
なお、HS処理については、各インク色の記録ヘッドに対して、それぞれ同様にして実行される。このHS処理の具体的な処理内容の説明では、図8(a)に示すマゼンタデータがHS処理部506に入力されたものとする。即ち、図8(a)に示す画像がHS入力画像(第1画像)であり、このHS入力画像の各画素は、信号値がすべて「140」となっている。また、以下に説明するように、本実施形態におけるHS処理では、入力画像それ自体を補正するのではなく、入力画像と、補正用の画像とを出力する処理となっている。
【0053】
HS処理が開始されると、まず、HS処理部506が、HS入力画像の画素位置に対応するノズル群を取得する(S702)。記録ヘッド102では、図2のように、ノズル列a~hはそれぞれ、複数のノズルがX方向に1200dpi間隔で並んでいる。このため、HS入力画像の、図8(a)での左側の画素は吐出基板108におけるノズル群1、図8(a)での真ん中の画素は吐出基板108におけるノズル群2、図8(a)での右側の画素は吐出基板108におけるノズル群3に対応することとなる。
【0054】
次に、HS処理部506が、ノズル群に対応するHSデータをCMYKのノズル列ごとに4組取得する(S704)。ここで、HSデータとは、ノズルの吐出特性に関する情報が格納されたものである。格納された情報としては、例えば、各ノズルの吐出量でもよいし、各ノズルの吐出量を所定のレベル数に量子化した情報でもよい。または、各ノズルの平均吐出量に対する割合でもよいし、各ノズルで所定の記録用紙に記録される色を示す値でもよい。HSデータについては、予め測定などによって得られたものが、RAM322、ROM324などに格納されている。このように、本実施形態では、HS処理部506が吐出性能を取得する取得部として機能している。
【0055】
図9(a)は、HSデータの一例を示す図である。600dpi単位のn組のノズル群に対してそれぞれに吐出特性が格納されている。ここで格納されている吐出特性A、B、Cはそれぞれ、インクの吐出量を示すものであって、吐出特性A、B、Cによって、ノズル群における吐出量のばらつきが示されることとなる。吐出特性Aは最も吐出量が大きいことを示し、吐出量Bは吐出量が標準であることを示し、吐出量Cは最も吐出量が小さいことを示している。なお、ここでの説明では、吐出量が3段階に分割された吐出特性となっているが、これに限定されるものではなく、4段階以上に分割された吐出特性であってもよい。
【0056】
その後、HS処理部506が、各ノズルのHSデータに対応するHSターゲットテーブルを取得する(S706)。このHSターゲットテーブルは、入力値に対する出力値を示す一次元の変換テーブルである。図9(b)は、HSターゲットテーブルの一例を示す図である。このターゲットテーブルでは、横軸に入力値が示され、縦軸に出力値が示されている。図9(a)のHSデータでは、ノズル群1、2、3に、標準の吐出量であることを示す吐出特性Bが格納されている。従って、S706では、ノズル群1、2、3に、図9(b)のHSターゲットテーブルBを対応させて取得することとなる。同様に、図2では図示していないノズル群4にはHSターゲットテーブルAを、ノズル群5にはHSターゲットテーブルCを対応させて取得する。
【0057】
このように、S706では、n組のノズル群すべてにHSターゲットテーブルを対応させて参照する。本実施形態のHSターゲットテーブルは、記録ヘッド102の吐出量のばらつきのうち最大の吐出量であるノズル群に合わせるように、他のノズル番号の信号値が大きい値へ変換されるように作成されている。このため、図9(b)のHSターゲットテーブルAは、入力信号値から変換されないよう、入力信号値と出力信号値とが一致した変換テーブルとなっている。吐出特性Aよりも吐出量の小さい吐出特性Bに対しては、吐出量を補うよう、同一の入力信号値に対し、吐出特性Aよりも大きい出力値が設定される。
【0058】
そして、HS処理部506は、S706で取得したHSターゲットテーブルからHS補正量テーブルを作成する(S708)。S708では、まず、取得したHSターゲットテーブルおよびHS入力画像の各画素における信号値に基づいて、出力値を取得する。具体的には、HSターゲットテーブルBでは、入力信号値(入力値)「140」は、出力信号値(出力値)が「143」となる。従って、HSターゲットテーブルBを用いて変換した画素値を表すデータは、図8(b)のようになる。なお、図8(b)のデータは、理解を容易にするために図示した中間データであるため、実際の処理ではこうした中間データの生成は必須ではない。
【0059】
その後、S708では、図9(b)のHSターゲットテーブルにおいて出力値から入力値を差し引いた差分を算出して、図9(c)のようなHS補正量テーブルを作成する。図9(c)は、HS補正量テーブルの一例を示す図である。即ち、HS補正量テーブルは、吐出量が小さいノズルの画素信号値(画素値)をいくつ増加させるか表す補正量を示している。例えば、本実施形態では、記録ヘッド102の吐出量のばらつきの中で最も大きい吐出量を持つ吐出特性Aのノズル群に選択されるHSターゲットテーブルAから作成されたHS補正量テーブルAは、図9(c)の実線で示すように、補正量が信号値によらず「0」のテーブルとなる。吐出量が吐出特性Aよりも小さい吐出特性Bのノズル群に選択されるHSターゲットテーブルBから作成されたHS補正量テーブルBは、図9(c)の点線で示すように、HS補正量テーブルAよりも大きい値を持つ。本例では、入力値が「140」のときに、出力値は「3」となっている。なお、吐出量が吐出特性Bよりも小さい吐出特性Cのノズル群に選択されるHSターゲットテーブルCから作成されたHS補正テーブルCは、図9(c)の一点鎖線で示すように、HS補正テーブルBよりも大きい値を持つこととなる。
【0060】
次に、HS処理部506は、HS入力画像の画素値を、HS補正量テーブルによって変換して、各画素における補正量を示すHS補正量画像を取得する(S710)。即ち、HS補正量テーブルBに基づいて、ノズル群1、2、3に対応するHS入力画像の画素値を変換して、図8(c)に示すHS補正量画像を取得する。このHS補正量画像(第2画像)の各画素には、対応するHS入力画像の画素における画素値の補正量が割り当てられている。図9(c)のHS補正量テーブルBでは、入力値が「140」のときに、出力値が「3」となっている。このため、図8(c)のHS補正量画像では、各画素値が「3」となっている。
【0061】
その後、HS処理部506は、HS補正量画像(図8(c)参照)と、HS入力画像(図8(a)参照)とを、量子化処理部508に出力し(S712)、S608に進む。このように、本実施形態では、HS処理部506は、入力された画像データを補正した補正後の画像データを出力するのではなく、HS入力画像および画素ごとの補正量を表すHS補正量画像の2つの画像データを出力するものとなっている。
【0062】
なお、HS処理におけるHSターゲットテーブルおよびHS補正量テーブルは、吐出量の相対的な大小に依存して、A、B、Cのいずれかのテーブルを選択するようにしたが、これに限定されるものではない。即ち、実際に吐出される量に応じて対応付けられるテーブルを選択するようにしてもよい。また、HS入力画像は、HS処理部506から出力されずに、HS処理部506を介することなく量子化処理部508へ出力されるようにしてもよい。さらに、S708で作成したHS補正量テーブルは、予め作成して記録しておいてもよい。このように、本実施形態では、HS処理部506が、HS入力画像における画素値を補正する補正部として機能している。
【0063】
次に、図10および図11などを参照しながら、画像処理のサブルーチンである量子化処理について説明する。図10は、量子化処理の詳細な処理内容を示すフローチャートである。図11は、HS入力画像およびHS補正画像の量子化を説明する図であり、(a)~(c)はHS入力画像について、(d)~(f)はHS補正画像について説明する図である。図11(a)は、HS入力画像の各画素における画素値と比較するディザ閾値が設定されたディザパターンを示す図である。図11(b)は、HS入力画像に基づいて判定された各画素の量子化レベルを示す多値データの図である。図11(c)は、図11(b)の量子化レベルに対応したドット発数で描いたドットイメージを示す図である。図11(d)は、HS補正量画像の各画素における画素値と比較するディザ閾値が設定されたディザパターンを示す図である。図11(e)は、HS補正量画像に基づいて判定された各画素の量子化レベルを示す多値データの図である。図11(f)は、図11(e)の量子化レベルに対応したドット発数で描いたドットイメージを示す図である。なお、本願明細書における「多値」には、「2値」が含まれるものとする。
【0064】
量子化処理では、まず、量子化処理部508は、入力されたHS入力画像を600dpiで多値化する(S1002)。S1002では、例えば、ドット数が0発、1発に対応する2値(量子化レベル:Lv0、Lv1)に量子化する。具体的には、図8(a)のHS入力画像の画素値と、図11(a)の各画素におけるディザ閾値とを比較し、当該画素値が対応する画素におけるディザ閾値以上となる画素では、量子化レベルをLv1とする。また、当該画素値が当該ディザ閾値未満となる画素では、量子化レベルをLv0とする。例えば、HS入力画像の左上の画素の画素値は「140」であり、当該画素に対応するディザ閾値は「1」であるため、当該画素は量子化レベルがLv1となる。こうして取得した各画素の量子化レベルは、図11(b)のようになり、当該量子化レベルに対応したドット発数で描いたドットイメージは、図11(c)のようになって、Lv1の各画素に1つのドットが置かれている。
【0065】
次に、量子化処理部508は、入力されたHS補正量画像を600dpiで多値化する(S1004)。S1004では、S1002と同様にして、図8(c)のHS補正画像の各画素値と、図11(d)の各画素におけるディザ閾値とを比較する。そして、当該画素値がディザ閾値以上の画素では、量子化レベルをLv1とし、当該画素値がディザ閾値未満の画素では量子化レベルをLv0とする。例えば、HS補正量画像の左上の画素の画素値は「3」であり、当該画素値に対応するディザ閾値は「1」であるため、当該画素は量子化レベルがLv1となる。こうして取得した各画素の量子化レベルは、図11(e)のようになり、当該量子化レベルに対応したドット発数で描いたドットイメージは、図11(f)のようになって、Lv1の左上の画素にのみ1つのドットが置かれている。
【0066】
なお、S1004の処理をS1002の処理よりも先に実行してもよいし、S1002の処理とS1004の処理とを並行して実行するようにしてもよい。ここで、HS入力画像の各画素の量子化レベルを決定するS1002の処理、HS補正量画像の各画素の量子化レベルを決定するS1004の処理では、共に同じディザ閾値を用いた。これにより、図11(f)のドットは、図11(c)のドットが置かれた画素に量子化されている。即ち、HS補正量画像の量子化結果と、HS入力画像の量子化結果とでは、ドットが打たれる画素が重なることとなる。
【0067】
その後、量子化処理部508は、HS入力画像の2値データ(第1多値データ)と、HS補正量画像の2値データ(第2多値データ)とをノズル分配処理部510に出力し(S1006)、S610に進む。
【0068】
S610では、2つの2値データが入力されると、ノズル分配処理部510が、HS処理におけるS602の処理で対応付けられたノズル群へデータを分配して、記録データを生成する。これにより、左上の画素には、HS入力画像の2値データと、HS補正量画像の2値データとによる2つのドットが置かれることとなる。また、左下、右上、右下の画素には、HS入力画像の2値データによる1つのドットが置かれ、他の画素にはドットは置かれない。このように、本実施形態では、量子化処理部508(およびノズル分配処理部510)が、HS入力画像を量子化して、記録データを生成する生成部として機能している。
【0069】
データの分配では、HS入力画像の量子化レベルLv1およびHS補正量画像の量子化レベルLv1の画素が同じ位置に存在する場合には、例えば、ノズル列aとノズル列eのような、X方向で互いに一致するノズル列へ分配を行うこととなる。あるいは、ドットの一部が重なるようであれば、ノズル列aとノズル列bのようにX方向にずれたノズル列のノズルへ分配してもよい。あるいは、ノズル列aに隣接したノズルへ分配し、1200dpiだけX方向にずれた位置に記録されるようにしてもよい。なお、ノズル分配処理部510でのデータの分配では、同じノズル群であれば、どのノズル列のどのノズルに分配してもよいが、ドットの径を考慮し、記録される複数のドットが少なくともその一部が互いに重なる状態とする。
【0070】
本実施形態では、HS処理において、各画素における補正量を表すHS補正量画像を取得し、量子化処理において、HS入力画像とHS補正量画像との2値データを取得するようにした。そして、取得した2つの2値データに基づいて、同じ画素に形成されるトッドが、少なくともその一部が重なるように、記録ヘッド102のノズル群にデータを分配するようにした。
【0071】
ここで、図12および図4(c)を参照しながら、本実施形態による記録システム10による画像生成装置における処理の作用効果について説明する。図12(a)は、2つの記録ヘッドにおけるノズルを模式的に示す図である。また、図12(b)は、上記画像処理により生成した記録データに基づいて、図12(a)の記録ヘッドを用いて記録媒体Mに記録された50%デューティの画像の記録状態を示す図である。なお、図12(a)に示すノズルは、図4(a)に示すノズルと同じである。
【0072】
図12(b)に示す記録状態と、公知技術を用いたときの図4(c)に示す記録状態とを比較すると、図12(b)では、図4(c)において独立して位置していた吐出量の小さいマゼンタドット103M-2も、シアンドット103C-2に重なっている。即ち、図12(b)では、HS処理により増加したマゼンタドット103M-2が、HS補正に関わらず形成されるマゼンタドット103M-2(シアンドット103C-2に既に重なっている)に重なっている。そして、図12(b)では、3ドット(シアンドット103C-2および2つのマゼンタドット103M-2)が重なったブルードット103B-2´、つまり、ブルーエリアBA´という新たな領域が形成される。
【0073】
これにより、図12(b)では、第1エリアと第2エリアとにおけるドット配置の差、つまり、互いに異なる色のドットが重なる程度の差が、公知技術による図4(c)に示す当該ドット配置の差よりも小さくなる。従って、第1エリアと第2エリアとでの光吸収特性の差が、図4(c)の記録状態よりも、図12(b)の記録状態では小さくなる。このため、図12(b)では、マクロ的な視覚においても第1エリアと第2エリアとにおいて色差が小さくなる。即ち、本実施形態による画像処理装置により画像処理によって、ノズルの吐出特性により生じる、第1エリアと第2エリアとにおける色差を抑制することができるようになる。
【0074】
(第2実施形態)
次に、図13および図14を参照しながら、第2実施形態による画像処理装置について説明する。なお、以下の説明では、上記した第1実施形態と同一または相当する構成については、第1実施形態で用いた符号と同一の符号を用いることにより、その詳細な説明を省略する。
【0075】
第2実施形態では、HS入力画像に対してのみ量子化処理を行い、量子化により得られたHS入力画像の多値データの量子化レベルを、HS補正量画像に基づいて補正するようにした点において、上記した第1実施形態と異なっている。
【0076】
図13は、第2実施形態の画像処理装置で実行される画像処理の詳細な処理内容を示すフローチャートである。図13に示す画像処理が開始されると、入力色変換処理部502が、入力された画像データを、記録装置100の色再現域に対応した画像データに変換する(S1302)。次に、インク色変換処理部504が、入力色変換処理部502で変換された画像データを、記録装置100で用いるインクの色信号データによる画像データに変換する(S1304)。そして、HS処理部506において、HS処理を実行する(S1306)。なお、S1306のHS処理の具体的な処理内容については、上記S606のHS処理と同じであるため、その詳細な説明は省略する。
【0077】
その後、量子化処理部508が、HS入力画像に対する量子化処理(後述する)を実行する(S1308)。ここで、図14を参照しながら、S1308の量子化処理について説明する。図14(a)は、HS入力画像を示す図である。図14(b)は、HS入力画像の各画素における画素値と比較するディザ閾値が設定されたディザパターンを示す図である。図14(c)は、HS入力画像に基づいて判定された各画素の量子化レベルを示す多値データの図である。図14(d)は、図14(c)のレベル値を補正した多値データの図である。図14(e)は、図14(d)の量子化レベルに対応したドット発数で描いたドットイメージを示す図である。図14(f)は、HS補正量画像を示す図である。
【0078】
なお、S1308の量子化処理の説明では、HS入力画像として、各画素値が「47」の3画素×3画素の画像(図14(a)参照。)を用いる。また、HS補正量画像として、各画素値が「1」の3画素×3画素の画像(図14(f)参照。)を用いる。
【0079】
S1308では、HS入力画像を600dpiで多値化する。ここでは、ドット数が0発、1発、2発に対応する3値(量子化レベル:Lv0、Lv1、Lv2)に量子化するものとする。なお、量子化方法としては、ディザ、誤差拡散などの公知の種々の量子化方法を用いることができる。本実施形態では、ディザ法を用いて量子化する場合について説明する。
【0080】
S1308では、図14(b)に示すディザ閾値を用いる。このディザ閾値は、8ビットからなる0~255の画素値のうち、1/3にあたる0~85の画素値をLv0かLv1のどちらかに判定するための閾値である。図14(a)に示すHS入力画像の各画素値が、対応する画素に設定されたディザ閾値以上の画素は量子化レベルLv1、当該ディザ閾値未満の画素は量子化レベルLv0と判定する。例えば、HS入力画像の左上の画素の画素値は「47」であり、当該画素に対応するディザ閾値は「1」であるため、当該画素の量子化レベルはLv1となる。このようにして取得された各画素における量子化レベルは、図14(c)のようになる。
【0081】
HS入力画像に対する量子化処理が終了すると、次に、量子化処理部508は、入力されたHS補正量画像の各画素値に応じて、S1306で取得した多値データの量子化レベルを補正する(S1310)。S1310では、例えば、HS補正量画像の3画素×3画素の領域ごとに画素値の平均値を求め、平均値に対するドット発数を予め作成したテーブル(不図示)から取得する。図14(f)に示すHS補正量画像の3画素×3画素の画素値の平均値は「1」であり、この平均値「1」に対応するドット発数は上記テーブルによって1ドットと決まる。そして、図14(c)に示す多値データにおけるLv1の画素の任意の1画素(決定した上記1ドットに対応している。)を選択し、選択した画素の量子化レベルをLv1からLv2へ補正する。即ち、S1310では、平均値に応じた数の、Lv1の任意の画素について、量子化レベルを、複数のドットを形成する量子化レベルまで上げることとなる。なお、上記テーブルにおける、HS補正量画像の画素値の平均値に応じたドット発数は、例えば、予め実験的に求められる。
【0082】
こうしてレベル値補正後の各画素における量子化レベルは、図14(d)のようになる。そして、この補正後の量子化レベルに対応したドット発数で描いたドットイメージは、図14(e)のようになり、Lv1の画素に1つのドットが置かれ、Lv2の画素に2つのドットが置かれている。図14(e)では、黒塗りで示したドットがHS入力画像によるドット、斜線で示したドットがHS補正量画像による補正により増加したドットを示している。このように、HS入力画像によるドットと、HS補正量画像によるドットとが同じ画素に形成されるように量子化されていることとなる。
【0083】
その後、量子化処理部508が、量子化レベルを補正した多値データ(図14(d)参照)を、ノズル分配処理部510に出力し、ノズル分配処理部510において、HS処理で対応付けられたノズル群へデータを分配する(S1312)。S1312の具体的な処理内容は、上記S610と同じであるためその説明は省略する。
【0084】
本実施形態では、HS入力画像の多値データにおける量子化レベルを、HS処理で取得したHS補正量画像に基づいて補正するようにした。具体的には、HS補正量画像における画素値の平均値に応じて、HS入力画像の多値データにおける量子化レベルがLv1となる画素のうちの、上記平均値に基づく数の任意の画素について、ドットが増加するように、レベル値を補正するようにした。そして、補正後の多値データに基づいて、記録ヘッド102のノズル群にデータを分配するようにした。これにより、生成された記録データで記録された画像では、各インク色においてHS処理による補正で増加するドットが、入力画像のドットに少なくとも一部が重なることとなる。このため、上記第1実施形態と同様の作用効果を得ることができるようになる。
【0085】
(第3実施形態)
次に、図15および図16を参照しながら、第3実施形態による画像処理装置について説明する。なお、以下の説明では、上記した第1実施形態と同一または相当する構成については、第1実施形態で用いた符号と同一の符号を用いることにより、その詳細な説明を省略する。
【0086】
第3実施形態では、量子化により得られたHS補正量画像の多値データについて、量子化レベルがLv1の画素データを隣接する画素へ移動するようにした点において、上記した第1実施形態と異なっている。なお、本実施形態では、図6に示す画像処理のうち、量子化処理についてのみが上記第1実施形態と異なっている。このため、以下の説明では、上記第1実施形態と異なる量子化処理について詳細に説明し、上記第1実施形態と同じ他の処理については、適宜に省略する。
【0087】
図15は、第3実施形態の画像処理装置で実行される画像処理のサブルーチンである量子化処理の詳細な処理内容を示すフローチャートである。なお、以下の説明では、上記第1実施形態と同様に、HS処理において、図8(a)に示すHS入力画像と、図8(c)に示すHS補正量画像を取得したものとする。量子化処理が開始されると、まず、量子化処理部508が、入力されたHS入力画像を600dpiで多値化するとともに(S1502)、入力されたHS補正量画像を600dpiで多値化する(S1504)。S1502、S1504の具体的な処理内容については、上記S1002、S1004と同じであるためその説明は省略する。S1502で取得したHS入力画像の2値データは、図11(b)のようになる。また、S1504で取得したHS補正量画像の2値データは、図11(e)のようになる。
【0088】
次に、HS補正量画像の2値データについて、量子化レベルがLv1の画素データを、隣接する画素へ移動する(S1506)。ここで、図16は、画素データの移動を説明する図である。図16(a)は、HS補正量画像の多値データにおいて、量子化レベルがLv1の画素データを移動した後の各画素の量子化レベルを示す多値データの図である。図16(b)は、図16(a)の量子化レベルに対応したドット数で描いたドットイメージである。図16(c)は、図16(b)のドットイメージと、図11(c)のドットイメージとを合わせたドットイメージである。
【0089】
S1506では、図11(e)に示すHS補正量画像の2値データに対して、ドットによる記録を表す量子化レベルがLv1の画素データを隣接する、図中右隣の画素へ移動する(図16(a)参照)。なお、隣接する画素としては、図中左隣の画素であってもよいし、図中上隣、図中下隣の画素であってもよい。なお、S1506では、量子化レベルがLv1の画素データのみを移動するようにしたが、これに限定されるものではない。即ち、HS補正量画像の2値データを全体的に上下左右のいずれか1方向に1画素分移動するようにしてもよい。即ち、HS補正量画像の2値データによるドットが、HS入力画像の2値データによるドットと同じ画素に形成される場合に、これらのドットが互いにその一部が重なるように、相対的に移動されていれば、どのように移動するようにしてもよい。
【0090】
S1506での処理後の量子化レベルに対応したドット発数で描かれたドットイメージは、図16(b)のようになる。そして、このドットイメージと、図11(c)に示す、HS入力画像のドットイメージとを合わせると、図16(c)のようになる。このように、S1506での処理後のHS補正量画像の多値データと、HS入力画像の多値データとは、ドットが打たれる画素が600dpiずれたデータとなっている。ここで、本実施形態でのドットの直径を50マイクロメートルとすると、600dpiずれたデータでもドットの間隔は42マイクロメートルであるため、2つの多値データによるドットは互いにその一部が重なる。従って、HS補正量画像の量子化結果と、HS入力画像の量子化結果とでは、打たれるドットの一部が重なることとなる。
【0091】
その後、量子化処理部508は、HS入力画像の2値データと、S1506で処理されたHS補正量画像の2値データとをノズル分配処理部510に出力し(S1508)、S610に進む。
【0092】
本実施形態では、量子化レベルLv1の画素データを隣接する画素に移動、つまり、1画素分移動するようにしたが、これに限定されるものではない。即ち、画素データを移動させる量については、ドットの直径や量子化時の解像度などに応じて、HS入力画像の多値データによるドットと、HS補正量画像の多値データによるドットとが互いにその一部が重なる範囲内であれば、どのような値であってもよい。なお、HS補正量画像により形成されるドットの隣接画素への移動については、ノズル分配処理の後に、各ノズルに対して行ってもよい。
【0093】
本実施形態では、HS補正量画像において、ドットを形成する量子化レベルLv1の画素データを、ドット径および量子化時の解像度に応じて、HS入力画像によるドットとその一部が重なる範囲内で、所定量だけずらすようにした。具体的には、HS補正量画像の量子化レベルLv1の画素データを、隣接する画素に移動するようにした。これにより、生成される記録データで記録された画像では、各インク色において、HS処理による補正で増加するドットが、入力画像のドットに少なくとも一部が重なることとなる。このため、上記第1実施形態と同様の作用効果を得ることができるようになる。
【0094】
(第4実施形態)
次に、図17を参照しながら、第4実施形態による画像処理装置について説明する。なお、以下の説明では、上記した第1実施形態と同一または相当する構成については、第1実施形態で用いた符号と同一の符号を用いることにより、その詳細な説明を省略する。
【0095】
第4実施形態では、量子化により得られたHS入力画像の多値データに対して、HS補正量画像の画素値に応じてマスクをかけて、HS補正量画像の多値データを取得するようにした点において、上記した第1実施形態と異なっている。
【0096】
図17は、第4実施形態の画像処理装置で実行される画像処理の詳細な処理内容を示すフローチャートである。図17に示す画像処理が開始されると、入力色変換処理部502が、入力された画像データを、記録装置100の色再現域に対応した画像データに変換する(S1702)。次に、インク色変換処理部504が、入力色変換処理部502で変換された画像データを、記録装置100で用いるインクの色信号データによる画像データに変換する(S1704)。
【0097】
そして、HS処理部506において、HS処理を実行する(S1706)。なお、S1307のHS処理の具体的な処理内容については、上記S606のHS処理と同じであるため、その詳細な説明は省略する。なお、以下の説明では、上記第1実施形態と同様に、HS処理において、図8(a)に示すHS入力画像と、図8(c)に示すHS補正量画像を取得したものとする。
【0098】
次に、量子化処理部508が、HS入力画像に対する量子化処理を実行する(S1708)。即ち、S1708では、HS入力画像を600dpiで多値化する。なお、S1708の具体的な処理内容は、上記S1002と同じであるためその説明を省略する。S1708で取得したHS入力画像の2値データは、図11(b)のようになる。
【0099】
その後、量子化処理部508は、HS入力画像の2値データについて、HS補正量画像の画素値に応じたマスクを用いて、HS補正量画像の多値データを取得する(S1710)。S1710では、HS補正量画像の3画素×3画素の領域ごとに画素値の平均値を求め、平均値に対するドット発数を、予め作成したテーブルから取得する。なお、こうしたテーブルは、第2実施形態で用いられるテーブルと同様のものとする。具体的には、図8(c)に示すHS補正量画像の3画素×3画素の画素値の平均値は3であり、平均値3に対応するドット発数は上記テーブルによって1ドットと決まる。そして、HS入力画像の2値データ(図11(b)参照)の量子化レベルがLv1となる画素のうちの任意の1画素(決定した上記1ドットに対応している。)を選択し、他の画素にマスクをかける。その後、例えば、当該マスクのされたHS入力画像の2値データを複製して、選択した画素においてのみ、ドットを記録する量子化レベルLv1が配されたHS補正量画像の2値データを取得する。即ち、このHS補正量画像の2値データでは、選択した画素の量子化レベルが複製されてLv1となり、他の画素における量子化レベルはLv0となる。従って、取得したHS補正量画像の2値データとしては、図11(e)のようになる。
【0100】
このように、HS補正量画像の2値データは、HS入力画像の2値データの一部をコピーして取得したものである。このため、HS補正量画像の2値データでは、HS入力画像の2値データにおいてドットの記録を示すLv1となった画像と対応する画素に、Lv1が位置することになる。従って、HS補正量画像の量子化結果(図11(f)参照)と、HS入力画像の量子化結果(図11(c)参照)とでは、ドットが打たれる画素が重なる。
【0101】
そして、量子化処理部508は、HS入力画像の2値データと、HS補正量画像の2値データとを、ノズル分配処理部510に出力し、ノズル分配処理部510において、HS処理で対応付けられたノズル群へデータを分配する(S1712)。S1712の具体的な処理内容は、上記S610と同じであるためその説明は省略する。
【0102】
なお、S1708の量子化処理では、1200dpiでHS入力画像を多値化するようにしてもよい。また、HS入力画像の多値データをノズル分配処理部510に出力して、ノズル群へデータを分配した後に、HS補正量画像の多値データを取得するようにしてもよい。さらに、HS補正量画像の多値データについては、上記第3実施形態の手法を用いて、量子化レベルがLv1の画素データを隣接画素へ移動させて取得するようにしてもよい。
【0103】
本実施形態では、HS入力画像の多値データにおける量子化レベルがLV1となる画素以外に、マスクをかけ、当該画素における量子化レベルを複製して、HS補正量画像の2値データを取得するようにした。なお、HS入力画像の多値データにおける量子化レベルがLv1となる画素については、HS補正量画像における画素値の平均値に基づく数だけ、任意に選択されるようにした。これにより、生成される記録データが記録された画像では、各インク色において、HS処理による補正で増加するドットが、入力画像のドットに重なる。このため、上記第1実施形態と同様の作用効果を得ることができるようになる。
【0104】
(他の実施形態)
上記実施形態では特に記載しなかったが、上記実施形態による手法は、ドットが記録媒体Mを埋め尽くしていない、例えば、50%以下の比較的低いデューティで記録するデータに対して高い効果を得ることができる。このため、画像処理装置500では、所定値以下のデューティで記録する画像に対してのみ、上記実施形態による画像処理を適用するようにしてもよい。なお、所定値としては、用いる記録装置の性能などに応じて、例えば、実験的に求めるようにしてもよい。また、複数のインク色を用いる画像領域の、所定値以下のデューティのインク色のみ上記実施形態による画像処理を適用するようにしてもよい。ここで「デューティ」とは、プリント可能な全画素に対しドットが付与される画素数の割合である。例えば、図11(c)では、9画素中、4画素にドットが付与されているので、約44%デューティと言える。
【0105】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0106】
500 画像処理装置
506 HS処理部
508 量子化処理部
図1
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