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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/00 20060101AFI20240826BHJP
   B60Q 3/80 20170101ALI20240826BHJP
   B60Q 3/217 20170101ALI20240826BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
B60Q1/00 G
B60Q3/80
B60Q3/217
G08G1/16 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020144309
(22)【出願日】2020-08-28
(65)【公開番号】P2022039334
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】フォルシアクラリオン・エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上村 尚弘
(72)【発明者】
【氏名】土屋 真奈
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-068600(JP,A)
【文献】特開2018-016289(JP,A)
【文献】特開2011-086205(JP,A)
【文献】特開2008-158963(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0287325(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/00
B60Q 3/00
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周辺で検出された物体に関する情報に基づいて、前記車両に設けられた発光部の発光箇所を制御する制御部を備え、
前記制御部は、所定の時刻よりも前の時刻における前記物体との距離と比較して、前記所定の時刻における前記物体の距離が小さいかどうかに基づいて、前記発光部が発光する範囲を狭め、前記範囲内で前記車両に接近する物体との相対速度に対応する速度で所定の視覚要素を移動させるよう制御する
ことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記発光箇所を前記視覚要素とし、前記範囲を繰り返し移動させることを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、消灯箇所を前記視覚要素とし、当該消灯箇所以外の前記範囲を前記発光箇所とすることを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記車両の右後方に位置する他車両と、前記車両の左後方に位置する他車両とを前記物体として検出することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記発光部は、前記車両の車室内の右側と左側にそれぞれ設けられ、前記発光部の長手方向が前記車両の車長方向であり、
前記制御部は、前記右後方の他車両の検出結果に基づいて前記右側の発光部を制御し、前記左後方の他車両の検出結果に基づいて前記左側の発光部を制御する
ことを特徴とする請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記所定の時刻よりも前の時刻における前記物体との距離と比較して、前記所定の時刻における前記物体の距離が大きいとき、前記発光部が発光する範囲を広げ、前記所定の時刻よりも前の時刻における前記物体との距離と比較して、前記所定の時刻における前記物体の距離が小さいとき、前記発光部が発光する範囲を狭めることを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記発光部の中央を基準として、前記発光部が発光する範囲を広げ、または前記発光部が発光する範囲を狭めることを特徴とする請求項1または6に記載の制御装置。
【請求項8】
車両に搭載された制御装置が、
前記車両の周辺の物体を検出する検出ステップと、
所定の時刻よりも前の時刻における前記物体との距離と比較して、前記所定の時刻における前記物体の距離が小さいかどうかに基づいて、前記車両に設けられた発光部が発光する範囲を狭めるステップと、
前記範囲内で前記車両に接近する物体との相対速度に対応する速度で所定の視覚要素を移動させるよう制御するステップと
を含むことを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術として、特開2018-16289(以下、特許文献1と呼ぶ。)がある。特許文献1では、「[課題]乗物に接近している物体の移動方向を乗員に知らせるために発光部を適切に発光させる。[解決手段]車両用照明装置において、車両に接近する接近物を検出するセンサ3a、3b、3c、3dと、車両に取り付けられた発光部5と、センサ3a、3b、3c、3dが接近物を検出した際に発光部5を制御する制御装置2と、を備え、制御装置2は、発光部5の発光箇所が接近物の移動方向と対応する方向に沿って移動するように発光部5を制御する。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-16289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、車間距離や相対速度を発光箇所の移動の速度により示すことができる。例えば、車間距離を示す場合には、車間距離が短くなるほど発光箇所が早く移動し、車間距離が長くなるほど発光箇所が遅く移動するように発光部を制御する。また、相対速度を示す場合には、相対速度(接近速度)が大きくなるほど発光箇所が早く移動し、相対速度が小さくなるほど発光箇所が遅く移動するように発光部を制御する。しかし、特許文献1で車間距離と相対速度の両方を提示することは困難であった。2つの発光箇所がそれぞれ車間距離と相対速度を示す速度で移動することになり、車間距離と相対速度を識別して認識することが難しくなるからである。そこで、本発明ではより適切に発光部を制御することで、車両周辺の状況を的確かつ効率的に伝達可能な制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による制御装置は、車両の周辺で検出された物体に関する情報に基づいて、前記車両に設けられた発光部の発光箇所を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記物体との距離に対応して前記発光部が発光する範囲を設定し、前記範囲内で前記車両に接近する物体との相対速度に対応する速度で所定の視覚要素を移動させるよう制御する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、車両周辺の状況を的確かつ効率的に伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係る車載情報処理システムの説明図である。
図2】本実施形態に係る車載情報処理システムの構成図である。
図3】車両における室内灯の配置についての説明図である。
図4】車載情報処理システムの処理手順を示すフローチャートである。
図5】発光制御の具体例についての説明図である(その1)。
図6】発光制御の具体例についての説明図である(その2)。
図7】警報出力まで行う場合の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。
【0009】
図1は、本発明の実施形態に係る車載情報処理システムの説明図である。実施形態に係る車載情報処理システムは、図1の車両C1に搭載され、車両C1の右後方と左後方をカメラにより撮像する。車載情報処理システムは、撮像結果に対する画像認識によって、車両C1の後方に所在する他車両を検出する。
【0010】
図1では、車両C1の右後方を他車両C2Rが走行し、車両C1の左後方を他車両C2Lが走行している状態を示している。また、自車両C1から他車両C2Rまでの車間距離は、自車両C1から他車両C2Lまでの車間距離よりも大きい。さらに、自車両C1と他車両C2Rとの相対速度は、自車両C1から他車両C2Lまでの相対速度よりも大きい。
【0011】
車両C1は、左右のドアの内側に発光部としての室内灯12を備える。室内灯12は、例えば間接照明で、車内環境の演出用などに用いられるアンビエントライトである。図1では、運転席が右側に配置され、右ドアに室内灯12Rが設けられている。そして、助手席が左側に配置され、左ドアに室内灯12Lが設けられている。
【0012】
車載情報処理システムは、車両C1の後方に所在する他車両の検出結果を、室内灯12の発光により乗員に伝達する。まず、車載情報処理システムは、右ドアの室内灯12Rを、右後方の他車両C2Rに関する情報に基づいて制御する。同様に、車載情報処理システムは、左ドアの室内灯12Lを、右後方の他車両C2Lに関する情報に基づいて制御する。このため、乗員は、左右の室内灯12の点灯の状態から、対応する側の後続車両の情報を得ることができる。
【0013】
具体的には、車載情報処理システムは、他車両との車間距離を静的な要素によって示し、他車両との相対速度を動的な要素によって示す。このように、車載情報処理システムは、車間距離と相対速度を同時に、かつ識別容易に出力することができ、車両周辺の状況を的確かつ効率的に伝達可能である。
【0014】
図1に示すように、他車両との車間距離を示す静的な要素は、視覚要素の移動範囲である。そして、他車両との相対速度を示す動的な要素は、視覚要素の移動速度である。視覚要素とは、発光の制御により識別可能となった部分領域をいう。例えば、移動範囲を消灯し、視覚要素とする部分を発光させることで、移動範囲の中に所在する視覚要素を識別可能とすることができる。また、移動範囲を発光させ、視覚要素とする部分を消灯させることでも移動範囲の中に所在する視覚要素を識別可能とすることができる。また、発光の色や明るさの違いで視覚要素を形成することも可能である。なお、本実施の形態では、発光は、室内灯12が有する複数のLED(light emitting diode)の点灯状態を制御することで行う。すなわち、発光箇所は、LEDを点灯した箇所であるため、以降、発光箇所を点灯箇所という。
【0015】
図1の例では、右ドアの室内灯12Rにおける点灯箇所の移動範囲dRが、右後方の他車両C2Rとの車間距離を示している。そして、右ドアの室内灯12Rにおける点灯箇所の速度vRが、右後方の他車両C2Rとの相対速度を示している。同様に、左ドアの室内灯12Lにおける点灯箇所の移動範囲dLが、左後方の他車両C2Lとの車間距離を示している。そして、左ドアの室内灯12Lにおける点灯箇所の速度vLが、左後方の他車両C2Lとの相対速度を示している。
【0016】
ここで、車両C1と他車両C2との距離が減少したときは、点灯箇所の移動範囲を小さくし、車両C1と他車両C2との距離が増大したときには、点灯箇所の移動範囲を大きくする制御を行う。すなわち、点灯箇所の移動範囲は、その時点での車間距離を静的に表示するのであり、車間距離の変化に応じて点灯箇所の移動範囲を変更することを妨げるものではない。このように車両C1と他車両C2との車間距離が減少すると点灯箇所の移動範囲が小さくなり、点灯箇所の移動範囲が広いときよりも点灯箇所が範囲内を移動する回数が増える。これによって、車両C1と他車両C2との車間距離が狭いとき、より乗員へ注意を喚起することができる。
【0017】
また、車載情報処理システムは、他車両C2の進行方向と点灯箇所の移動方向とを一致させる。室内灯12の長手方向が車両の車長方向と一致し、後続車両との相対速度は車長方向の速度となるため、後続車両の相対速度が正の値、すなわち、後続車両が自車両よりも速ければ、点灯箇所は自車両の後方から前方に移動するよう制御されることになる。
【0018】
図2は、本実施形態に係る車載情報処理システムの構成図である。図2に示す車載情報処理システム10は、検出ユニット、表示ユニット、操作ユニット、スピーカ及び制御装置20を有する。
【0019】
検出ユニットは、車両周辺の状況を検出するユニットである。本実施形態ではカメラ(右後方用のカメラ11R及び左後方用のカメラ11L)を検出ユニットとして例示するが、この他に任意のセンサなどを用いることができる。カメラ11は、例えばドアミラーに設けられ、自車両の後方を撮像範囲に含む。
【0020】
表示ユニットは、車両の乗員に視認可能な表示を行うユニットであり、特許請求の範囲における発光部として用いることができるものである。本実施形態では、室内灯12(右ドアの室内灯12Rと左ドアの室内灯12L)を表示ユニットとして例示するが、この他に液晶ディスプレイやヘッドアップディスプレイ、透過ディスプレイなどを用いることができる。また、表示ユニットは左右を認識できるように表示されるものであれば良く、ドア以外に運転席や助手席に設けられても良く、運転席から助手席にかけて設置されるディスプレイであってもよい。
【0021】
操作ユニットは、乗員による車両の操作、特に、周辺の物体の所在を考慮すべき操作を受け付けるユニットである。本実施例では、ウィンカーレバー13とドア操作部14を操作ユニットとして例示する。
【0022】
スピーカ15は、車両の乗員に対する音声出力を行う。詳細について後述するが、この音声出力は、乗員への警報の出力に用いることができる。
【0023】
制御装置20は、制御部30及び記憶部40を有する。記憶部40は、例えばフラッシュメモリなどであり、制御プログラム41などを記憶する。制御部30は、例えばCPU(Central Processing Unit)などであり、制御プログラム41を読み出して実行することで、車両の周辺の物体に基づく表示ユニットの制御を行う。なお、検出ユニット、表示ユニット、操作ユニット、スピーカなどは、制御装置20のみが使用するとは限らず、他の装置やシステムと共用することができる。
【0024】
制御部30は、制御プログラム41を実行することで、車両検出部31、車両状態判定部32、発光制御部33及び警報処理部34の機能を実現する。
【0025】
車両検出部31は、検出ユニットの出力から、自車両の左右後方に所在する車両を検出する。具体的には、車両検出部31は、カメラ11Rによる撮像結果に対して画像認識を行い、自車両の右後方に所在する他車両を検出する。同様に、車両検出部31は、カメラ11Lによる撮像結果に対して画像認識を行い、自車両の左後方に所在する他車両を検出する。
【0026】
車両状態判定部32は、車両検出部31によって検出された車両について、自車両との車間距離及び相対速度を判定する処理を行う。車間距離及び相対速度の判定は、例えば、カメラ11が撮像した画像を用いて行う。また、検出ユニットに他のセンサなどが含まれているならば、センサの出力を用いて車間距離及び相対速度を判定してもよい。
【0027】
発光制御部33は、車両状態判定部32によって判定された車間距離及び相対速度に基づいて、表示ユニットの発光を制御する。具体的には、発光制御部33は、右後方の車両との車間距離に対応して室内灯12Rが発光する範囲を設定し、設定した範囲内で相対速度に対応する速度で視覚要素を移動させるよう制御する。同様に、発光制御部33は、左後方の車両との車間距離に対応して室内灯12Lが発光する範囲を設定し、設定した範囲内で相対速度に対応する速度で視覚要素を移動させるよう制御する。
【0028】
警報処理部34は、車両の乗員による所定の操作を受け付け、当該操作に対応する側の後方に他車両が検出されている場合に、乗員に対して警報を出力する。例えば、ウィンカーレバー13が右ウィンカーを点滅させる操作を受け付けたならば、右折又は右側車線への車線変更が示唆される。このとき、右後方に他車両が検出されているならば、警報処理部34は、スピーカ15からの音声出力を用いて乗員に警報を出力する。同様に、右側のドアのロック解除などの操作を受け付け、右後方に他車両が検出されているならば、警報処理部34は、警報を行う。なお、操作に対応する側の後方に車両が存在する場合であっても、車間距離が所定値以上かつ相対速度が所定値未満であれば警報出力を行わないなど、警報出力の条件は適宜設定可能である。
【0029】
図3は、車両における室内灯12の配置についての説明図である。図3に示すように、室内灯12は、車両の車室内の右側と左側にそれぞれ設けられ、室内灯12の長手方向が車両の車長方向である。具体的には、運転席のドアの内側及び助手席のドアの内側に、室内灯12R及び室内灯12Lが設けられている。
【0030】
かかる配置により、後続車両との車間距離を室内灯12における視覚要素の移動範囲に対応させ、また、後続車両の進行方向と室内灯12における視覚要素の移動方向とを一致させることができる。このため、車両の乗員は、後続車両との車間距離及び相対速度を同時に、かつ直感的に把握することができる。
【0031】
また、車両の乗員が例えば右側の後方確認を行う場合には、右側のドアミラーと右後方の直接目視を用いるが、このときに右側の室内灯12Rが視界に入る。同様に、乗員が左側の後方確認を行う場合には、左側の室内灯12Lが視界に入る。そこで、左右の室内灯12を対応する側に所在する車両の報知に利用することで、特別な操作等を求めることなく、乗員による安全確認の効果を向上することが可能である。
【0032】
図4は、車載情報処理システム10の処理手順を示すフローチャートである。車載情報処理システム10は、例えば電源が入っている間、車両が走行しているか否かを問わず、以下のステップS101~S107を繰り返し実行する。
ステップS101
カメラ11が後方の画像を取得し、制御装置20に出力する。その後、ステップS102に移行する。
ステップS102
制御装置20の車両検出部31は、カメラ11が取得した画像を対象に画像認識を行うことで車両を検出する。その後、ステップS103に移行する。
ステップS103
車両状態判定部32は、車両検出部31により車両が検出されたか否を判定する。車両が検出されていなければ(ステップS103;No)、ステップS101に戻る。車両が検出されているならば(ステップS103;Yes)、ステップS104に移行する。
【0033】
ステップS104
車両状態判定部32は、自車両と後続車両の車間距離及び相対速度を算出する。その後、ステップS105に移行する。
ステップS105
発光制御部33は、車間距離に応じて室内灯12の点灯箇所の移動(点灯範囲)を設定する。その後、ステップS106に移行する。
ステップS106
車両状態判定部32は、後続車両が接近しているか否かを判定する。例えば、ある時刻T1における後続車両との車間距離と、ある時刻よりも後の時刻T2における後続車両との車間距離が所定の値よりも小さくなったかどうかに基づいて後続車両が接近しているか否かを判定する。発光制御部33は、車両状態判定部33による判定の結果、後続車両が接近していなければ(ステップS106;No)、ステップS101に戻る。後続車両が接近しているならば(ステップS106;Yes)、ステップS107に移行する。
ステップS107
発光制御部33は、相対速度に応じて視覚要素を動かす。その後、ステップS101に移行する。
【0034】
図5及び図6は、発光制御の具体例についての説明図である。同図では、1つの室内灯12が9個のLEDを有するものとし、各LEDを円形で示している。白い円形は、消灯状態のLEDを示している。黒い円形は、視覚要素として点灯する、すなわち点灯箇所のLEDを示している。黒い円形の下側に配した矢印は、点灯箇所の移動方向を示す。また、紙面に対して右側を車両の前方側、左側を車両の後方側とする。
【0035】
図5及び図6は、車間距離の変化に対応して点灯箇所の移動範囲を変化させる。具体的には、時刻T1における車間距離と比較して、時刻T1よりも後の時刻である時刻T2における車間距離が大きいとき、点灯箇所の移動範囲を広げる。時刻T1における車間距離と比較して、時刻T2における車間距離が小さいとき、点灯箇所の移動範囲を狭める。
【0036】
例えば、図5では、車間距離が5mである場合には、点灯箇所の移動範囲をLED3つ分に設定する。また、車間距離が25mである場合には、点灯箇所の移動範囲をLED5つ分に設定する。そして、車間距離が45mである場合には、点灯箇所の移動範囲をLED9つ分に設定する。なお、図5では、移動範囲が室内灯12の中央を基準とするように配置を行っている。
【0037】
さらに、後続車両が遅く、相対速度が負の値である場合には、発光制御部33は、前側から後ろ側に点灯箇所を移動させる。その移動速度は、相対速度に対応させる。また、移動は設定された範囲内で同一方向に繰り返し行われる。一方、後続車両が速く、自車両に近づく場合には、発光制御部33は、後ろ側から前側に点灯箇所を移動させる。その移動速度は、相対速度に対応させる。また、移動は設定された範囲内で同一方向に繰り返し行われる。
【0038】
相対速度が0付近である場合には、例えば、移動範囲として設定した範囲内でLEDを点灯させるが、点灯箇所を移動させない。このとき、点灯範囲とそれ以外を異なる明るさにしたり、異なる色に設定すると、点灯範囲がより明確になる。
【0039】
図6では、移動範囲が室内灯12の端部を基準とするように配置を行っている。移動範囲の基準を車両の前方に相当する端部に設定すると、車間距離が狭いことを乗員に認識させやすくなる。
図6に示した例を図5と比較すると、移動範囲が室内灯12の前方側から設定する点が異なる。すなわち、車間距離に応じて移動範囲に含まれるLEDの数やその変化は図5に示した具体例と同様である。
【0040】
また、相対速度が正又は負の値である場合における、点灯箇所の移動制御についても図5と同様である。しかし、相対速度が0付近である場合には、移動範囲のうち、最も後ろ側のLEDを点灯制御する。範囲の一端が最も前方のLEDであるため、他端であるLEDを固定して点灯すれば、車間距離を示す範囲と、想定距離が0付近であることを乗員に認識させることができる。
【0041】
図7は、警報出力まで行う場合の処理手順を示すフローチャートである。車載情報処理システム10は、例えば電源が入っている間、車両が走行しているか否かを問わず、以下のステップS201~S210を繰り返し実行する。なお、ステップS201~206は、図4に示したステップS101~S106と同一であるので説明を省略し、ステップS207から説明を行う。
【0042】
ステップS207
発光制御部33は、相対速度に応じて視覚要素を動かす。その後、ステップS208に移行する。
ステップS208
警報処理部34は、操作ユニットが受け付けた操作を取得する。その後、ステップS209に移行する。
ステップS209
警報処理部34は、車両が接近している側、すなわち該当方向に関する操作を受け付けた否かを判定する。例えば、右後方から車両が接近している場合の右ウィンカー、右側のドアのロック解除などが該当する方向に関する操作である。該当方向に関する操作を受け付けていなければ(ステップS209;No)、ステップS201に戻る。該当方向に関する操作を受け付けたならば(ステップS209;Yes)、ステップS210に移行する。
ステップS210
警報処理部34は、スピーカ15からの音声出力を用いて乗員に警報を出力する。その後、ステップS201に移行する。
【0043】
上述してきたように、本実施形態によれば、制御装置20は、車両の周辺で検出された物体に関する情報に基づいて、車両に設けられた発光部である室内灯12の発光箇所を制御する制御部30を備え、制御部30は、物体との距離に対応して発光部が発光する範囲を設定し、範囲内で車両に接近する物体との相対速度に対応する速度で所定の視覚要素を移動させるよう制御する。かかる適切な発光部の制御を行うことで、制御装置20は、車両周辺の状況を的確かつ効率的に伝達可能である。
【0044】
例えば、制御部30は、発光箇所を視覚要素とし、範囲を繰り返し移動させることで、相対速度を直感的に示すことができる。もしくは、消灯箇所を視覚要素とし、当該消灯箇所以外の範囲を発光箇所としてもよい。
【0045】
また、制御部30は、車両の右後方に位置する他車両と、車両の左後方に位置する他車両とを物体として検出する。そして、発光部は、車両の車室内の右側と左側にそれぞれ設けられ、発光部の長手方向が前記車両の車長方向とする。制御部30は、右後方の他車両の検出結果に基づいて右側の発光部を制御し、左後方の他車両の検出結果に基づいて左側の発光部を制御する。さらに、制御部30は、他車両の進行方向と発光箇所の移動方向とを一致させる。これらの構成及び動作により、車両の乗員は、他車両との車間距離及び相対速度を同時に、かつ直感的に把握することができる。
【0046】
さらに、制御部30は、車両の乗員による所定の操作を受け付け、当該操作に対応する側の後方に他車両が検出されている場合に、乗員に対して警報を出力することができる。
また、制御装置20は、車両の後方を撮像範囲に含むカメラを自装置の構成として備え、カメラの撮像結果から物体を検出することとしてもよい。
【0047】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、構成及び動作を適宜変形して実施することができる。例えば、本実施例では物体として他車両を検出する構成を例示したが、二輪車、自転車、歩行者などを検出対象とすることも可能である。
【0048】
また、発光する範囲や視覚要素は適宜変形して実施可能である。例えば、視覚要素を点灯箇所とし、視覚要素を移動させる範囲を基本的に消灯状態として、移動させる範囲以外を発光させてもよい。また、視覚要素の移動とともに、発光するLEDの数が変化する(視覚要素の大きさが変化する)よう構成してもよい。また、発光する範囲、それ以外の範囲、視覚要素を色の違いや明るさの違いで示してもよい。
【0049】
また、上述した実施の形態では他車両との車間距離が減少するほどLEDを移動させる範囲も小さく設定される例を挙げたが、移動させる範囲以外を発光させるときは他車両との車間距離が減少するほどLEDを移動させる範囲を大きく設定してもよい。このようにすることで、他車両との車間距離が減少するほど発光するLEDの数が増え、乗員に注意を促すことができる。
【0050】
また、表示ユニットについても、車両との位置関係が明確であれば、任意の箇所に設けた任意の種別のディスプレイ装置を用いることができる。
【符号の説明】
【0051】
10……車載情報処理システム、11……カメラ、12……室内灯、13……ウィンカーレバー、14……ドア操作部、15……スピーカ、20……制御装置、30……制御部、31……車両検出部、32……車両状態判定部、33……発光制御部、34……警報処理部、40……記憶部、41……制御プログラム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7