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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】回転翼航空機
(51)【国際特許分類】
   B64D 9/00 20060101AFI20240826BHJP
   B64C 27/04 20060101ALI20240826BHJP
   F16F 9/46 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
B64D9/00
B64C27/04
F16F9/46
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020149648
(22)【出願日】2020-09-07
(65)【公開番号】P2021178623
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-08-29
(31)【優先権主張番号】P 2020083506
(32)【優先日】2020-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長沼 克典
(72)【発明者】
【氏名】永井 宏
(72)【発明者】
【氏名】相良 拓
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 浩
(72)【発明者】
【氏名】市來 智之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 良亮
(72)【発明者】
【氏名】山根 北斗
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-176796(JP,A)
【文献】特開2002-29499(JP,A)
【文献】米国特許第4343447(US,A)
【文献】特開平2-231214(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第3538274(DE,A1)
【文献】英国特許出願公開第2177668(GB,A)
【文献】特開平9-99722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 27/00,
F16F 9/46, 9/50,15/02,
B64D 1/02, 1/16, 7/08,
B64D 37/02,37/32, 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転翼が設けられる機体と、
前記機体の外部に取り付けられる外部装置と、
制御部と、
を備え、
前記外部装置は、
前記機体に固定され、前記機体の側方に突出して配置される取付装置と、
前記取付装置に装着され、使用に伴い質量が変動する質量変動装置と、
前記機体と前記取付装置とを連結し、前記取付装置を支持するダンパーと、
を有し、
前記ダンパーは、前記質量変動装置の質量の変動に応じて、前記ダンパーの剛性を変化させる剛性可変機構を有し、
前記制御部は、
前記外部装置の固有振動数が、前記機体の振動に対して前記外部装置が共振する振動数の範囲から外れるように、前記質量変動装置の質量の変動に応じて、前記剛性可変機構を用いて前記ダンパーの剛性を制御する、回転翼航空機。
【請求項2】
前記質量変動装置の質量の減少に応じて前記ダンパーの剛性が低下するように、前記制御部は、前記ダンパーの剛性を制御する、請求項に記載の回転翼航空機。
【請求項3】
前記制御部は、前記外部装置の振動に関する情報に基づいて、前記ダンパーの剛性を制御する、請求項1または2に記載の回転翼航空機。
【請求項4】
前記制御部は、前記質量変動装置の質量に関する情報に基づいて、前記ダンパーの剛性を制御する、請求項1~3のいずれか一項に記載の回転翼航空機。
【請求項5】
前記ダンパーの一端は、前記取付装置よりも上方の位置で前記機体に固定され、前記ダンパーの他端は、前記取付装置の上側に固定されており、
前記質量変動装置は、前記取付装置の下側に装着され、
前記ダンパーは、前記質量変動装置が装着された前記取付装置を吊持する、請求項1~のいずれか一項に記載の回転翼航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転翼航空機に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘリコプタ等の回転翼航空機に付加機能を追加するために、機体(胴体)の外側に各種の外部装置(例えば、燃料タンク、収納ポッド等)を装着する場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、機体の左右両側にアダプタを介して収納ポッドが取り付けられ、機体の下側に別のアダプタを介して中継用収納ポッドが取り付けられたヘリコプタが記載されている。当該特許文献1に記載のヘリコプタでは、機体に対する収納ポッドの取付状態を安定に維持するために、機体の上部からダンパチューブにより収納ポッドを懸吊支持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-029499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ヘリコプタの通常運転時に、ローターのブレードは一定の回転数で回転しており、この回転数のブレード枚数倍の振動数を有する振動が主にローターハブに発生する。この結果、回転するローターが加振源となり、機体全体が所定の振動数で振動する。
【0006】
ここで、機体の外部に装着された外部装置が、その使用により質量が変動する装置を含む場合、外部装置の質量の変動に応じて外部装置の固有振動数が変化してしまう。例えば、外部装置が燃料タンクを含む場合、ヘリコプタの運転中に燃料タンク内の燃料を使用すると、燃料タンクの質量が減少するので、燃料タンクの固有振動数は高くなる。このように外部装置の固有振動数が変化すると、ヘリコプタの運転中に外部装置の固有振動数が、上記ローターの回転に伴う機体振動と共振する振動数範囲に入ってしまう。この結果、外部装置が大きく共振し、振幅が増大してしまうという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、回転翼航空機の機体の外部に装着された外部装置の質量が変動する場合であっても、機体振動に対する外部装置の共振を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の回転翼航空機は、
回転翼が設けられる機体と、
前記機体の外部に取り付けられる外部装置と、
制御部と、
を備え、
前記外部装置は、
前記機体に固定され、前記機体の側方に突出して配置される取付装置と、
前記取付装置に装着され、使用に伴い質量が変動する質量変動装置と、
前記機体と前記取付装置とを連結し、前記取付装置を支持するダンパーと、
を有し、
前記ダンパーは、前記質量変動装置の質量の変動に応じて、前記ダンパーの剛性を変化させる剛性可変機構を有し、
前記制御部は、
前記外部装置の固有振動数が、前記機体の振動に対して前記外部装置が共振する振動数の範囲から外れるように、前記質量変動装置の質量の変動に応じて、前記剛性可変機構を用いて前記ダンパーの剛性を制御する
【0011】
前記質量変動装置の質量の減少に応じて前記ダンパーの剛性が低下するように、前記制御部は、前記ダンパーの剛性を制御するようにしてもよい。
【0012】
前記制御部は、前記外部装置の振動に関する情報に基づいて、前記ダンパーの剛性を制御するようにしてもよい。
【0013】
前記制御部は、前記質量変動装置の質量に関する情報に基づいて、前記ダンパーの剛性を制御するようにしてもよい。
【0014】
前記ダンパーの一端は、前記取付装置よりも上方の位置で前記機体に固定され、前記ダンパーの他端は、前記取付装置の上側に固定されており、
前記質量変動装置は、前記取付装置の下側に装着され、
前記ダンパーは、前記質量変動装置が装着された前記取付装置を吊持するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、回転翼航空機の機体の外部に装着された外部装置の質量が変動する場合であっても、機体振動に対する外部装置の共振を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態に係るヘリコプタを示す側面図である。
図2】同実施形態に係るヘリコプタを示す平面図である。
図3】同実施形態に係るヘリコプタを示す正面図である。
図4】同実施形態に係るヘリコプタの機体の外部に取り付けられる外部装置を模式的に示す正面図である。
図5】同実施形態に係る剛性可変機構を備えた油圧ダンパーの例を示す模式図である。
図6】同実施形態に係る剛性可変機構を備えた磁性流体ダンパーの例を示す模式図である。
図7】参考例に係るダンパーの剛性を制御しない場合の外部装置の固有振動数の変化を示すタイミングチャートである。
図8】同実施形態に係る制御部によりダンパーの剛性を制御する場合の外部装置の固有振動数の変化を示すタイミングチャートである。
図9】同実施形態に係る制御部によりダンパーの剛性を制御する場合の外部装置の固有振動数の変化を示すタイミングチャートである。
図10】同実施形態に係る制御部によるダンパーの剛性制御方法を示すフローチャートである。
図11】同実施形態に係る時間ごとの振幅データの具体例を示すグラフである。
図12】同実施形態に係る周波数ごとの振幅データの具体例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
[1.ヘリコプタの全体構成]
まず、図1図3を参照して、本発明の第1の実施形態に係る回転翼航空機の一例であるヘリコプタ1の概略構成について説明する。図1図3はそれぞれ、本実施形態に係るヘリコプタ1を示す側面図、平面図、正面図である。
【0019】
図1図3に示すように、本実施形態に係るヘリコプタ1は、機体2と、機体2の上部側に設けられ、複数枚のブレード3を有するメインローター4(回転翼)と、機体2の後部側に設けられるテールローター5と、機体2の下部側に設けられる降着装置6(例えば、スキッドまたは車輪等)とを備える。
【0020】
本実施形態に係るヘリコプタ1は、例えば、機体2に1つのメインローター4が設けられたシングルローター式である。しかし、かかる例に限定されず、ヘリコプタの形式は、複数のメインローターが設けられたツインローター式(例えば、同軸反転ローター式、タンデムローター式、サイド・バイ・サイドローター式、交差双ローター式、3つ以上のローターを有するマルチローター式)などであってもよい。
【0021】
機体2は、ヘリコプタ1の胴体(機体本体)である。機体2は、ボディカバーで覆われている。機体2の内部には、メインローター4を回転させる駆動力を発生させるエンジン、トランスミッション等の各種の駆動装置が設置される。さらに、機体2の内部には、ヘリコプタ1に搭載される各種装置を制御する制御装置、検出器、燃料タンク、操縦装置および搭乗員室などが設置されているが、図示は省略する。
【0022】
メインローター4は、ヘリコプタ1の揚力および進行方向への推進力等の動力を得るための回転翼であり、機体2の上部側に設けられる。メインローター4は、エンジン等の回転駆動力発生装置に連結されるローター軸と、当該ローター軸に装着されるローターハブと、当該ローターハブに対して放射状に取り付けられる複数枚のブレード3とを備える。本実施形態では、4枚のブレード3が設けられているが、ブレード枚数は、2枚または4枚以上であってもよい。
【0023】
エンジン等によりメインローター4を回転させ、複数枚のブレード3の描く面(回転円盤面)を変化させることにより、ヘリコプタ1の揚力や進行方向への推進力が変化する。これにより、ヘリコプタ1は、多様な飛行状態(例えば、浮上、下降、ホバリング、前進、後進、旋回等)で飛行することができる。
【0024】
[2.外部装置とその取付機構の構成]
次に、図1図4を参照して、本実施形態に係るヘリコプタ1の外部装置10と、その取付機構の構成について説明する。図4は、本実施形態に係るヘリコプタ1の機体2の外部に取り付けられる外部装置10を模式的に示す正面図である。
【0025】
図1図4に示すように、ヘリコプタ1の機体2の外部には、外部装置10が取り付けられる。外部装置10は、ヘリコプタ1に対して付加機能を追加するために、必要に応じオプション的に取り付けられる追加装置である。外部装置10は、機体2の外部に着脱可能に装着される。
【0026】
外部装置10は機体2の側方に、機体2の左右方向の外側に向けて突出して配置される。本実施形態では、2つの外部装置10、10が機体2の左右両側に設けられているが、1つの外部装置10が機体2のいずれか一側(左側または右側のいずれか)のみに設けられてもよい。
【0027】
外部装置10は、取付装置12と、質量変動装置14と、ダンパー16とを備える。
【0028】
取付装置12は、質量変動装置14を機体2に取り付けるための取付部材である。取付装置12は、機体2の側方(左側または右側)の側面に固定され、機体2の側方に向けて突出して配置される。取付装置12は、質量変動装置14を装着可能な形状であれば、任意の形状を有することができる。また、取付装置12は、装着された質量変動装置14を安定的に支持できるような強度を有する材質(例えば、金属材、繊維強化プラスチック等)で形成される。
【0029】
図4に示すように、本実施形態に係る取付装置12は、例えば、略L字型の断面形状を有する板状またはフレーム状の部材で構成される。取付装置12の一端(基部側)は、機体2の側面のハードポイントに固定され、取付装置12の他端(取付部側)は、機体2の側方に向けて略水平に突出するように配置される。このように取付装置12を機体2から左右両側に向けて張り出すように配置することで、当該取付装置12の下面または上面に質量変動装置14を容易に取り付けることができる。
【0030】
また、取付装置12としては、例えば、ヘリコプタ1に予め設置されている既存装置(スタブウィングなど)を利用してもよい。あるいは、取付装置12として、質量変動装置14を取り付けるためのアダプタ等の固定装置を、新たに機体2に追加設置してもよい。
【0031】
本実施形態では、機体2の左右両側面にそれぞれ1つの取付装置12が設けられているが、かかる例に限定されない。例えば、機体2のいずれか一方の側面にのみ1つまたは複数の取付装置12が設けられてもよいし、機体2の両側面に複数の取付装置12が設けられてもよい。
【0032】
質量変動装置14は、ヘリコプタ1に対して付加機能を追加するために、機体2に取り付けられる追加装置である。質量変動装置14は、その使用に伴い質量が変動する装置である。質量変動装置14は、例えば、燃料タンク、散水装置、消火剤散布装置、農薬散布装置、各種の貨物を収納する収納装置、各種兵器(例えば、ミサイル発射装置、ロケット発射装置、ガンポッド、地雷散布装置)などであってもよい。
【0033】
ヘリコプタ1の飛行中に、これらの質量変動装置14の機能を使用すると、当該質量変動装置14自身の質量が減少し、この結果、外部装置10全体の質量も減少する。例えば、質量変動装置14が燃料タンクである場合、ヘリコプタ1の飛行中に燃料タンク内に貯留されている燃料を使用すると、その燃料の消費量分だけ燃料タンクの質量が減少する。また、質量変動装置14が散水装置、消火剤散布装置または農薬散布装置等の散布装置である場合、ヘリコプタ1の飛行中に散布対象物(水、消火剤、農薬等)を空中に散布すると、その散布量の分だけ散布装置の質量が減少する。また、質量変動装置14が兵器である場合、ヘリコプタ1の飛行中に兵器からミサイル、ロケット、弾丸等を発射すると、発射した弾数分だけ兵器の質量が減少する。
【0034】
以下の説明では、本実施形態に係る質量変動装置14が燃料タンクである例について主に説明する。しかし、本発明の質量変動装置は、燃料タンクの例に限定されず、使用に伴いその質量が変動し得る装置であれば、上述した各種の装置(散布装置、収納装置、兵器等)であってもよい。
【0035】
質量変動装置14は、上記取付装置12に対して着脱可能に装着される。これにより、質量変動装置14の付加機能が必要な場合にだけ、当該質量変動装置14を装着すればよいので、ヘリコプタ1の汎用性が高まり、軽量化できる。また、取付装置12に装着される質量変動装置14を交換して、相異なる複数種類の質量変動装置14を機体2に装着できるので、ヘリコプタ1に多様な付加機能をオプション的に追加することができる。
【0036】
ダンパー16は、質量変動装置14が装着される取付装置12を支持するとともに、当該取付装置12の振動を減衰させるための振動吸収装置である。ダンパー16は、取付装置12の振動に伴い変位する際に抵抗を発生させ、当該振動の運動エネルギーを熱に変換して減衰させる。ダンパー16に発生する抵抗は減衰力と称される。ダンパー16としては、例えば、オイル等の流体の粘性抵抗を利用する油圧式ダンパー、または磁性流体等の流体の抵抗を利用する磁性流体式ダンパーなどを用いることができる。
【0037】
ダンパー16は、機体2の左右いずれか一方の側面と取付装置12とを連結し、取付装置12を支持する。ダンパー16の一端は機体2の側面に固定され、ダンパー16の他端は取付装置12に固定される。かかるダンパー16を設けることにより、取付装置12の剛性を高めて、取付装置12の振動を抑制することができる。
【0038】
ダンパー16により取付装置12と機体2とを好適に連結しつつ、外部装置10の振動を好適に減衰させる観点から、ダンパー16は、例えば、シリンダの軸方向(長手方向)に伸縮可能なシリンダーダンパーで構成されることが好ましい。シリンダーダンパーは、シリンダーロッドおよびピストンを収容する筒体の内部にオイルなどの流体を満たし、シリンダーロッドの伸縮に合わせてピストンが動くことで、筒体内で流体を移動させる構造を有する。流体の移動経路には、オリフィスまたはバルブ等を有するポート(流路面積の小さな孔)が設けられており、流体がポートを通過する際に粘性抵抗が発生することで、減衰力が得られる。
【0039】
かかるダンパー16を設置することにより、質量変動装置14が装着された取付装置12が機体2に対して振動した場合に、ダンパー16は、流体の粘性抵抗を利用して当該振動を吸収し、減衰させることができる。さらに、上記のオリフィスまたはバルブ等を有するポートの流路面積を変化させることにより、流体の粘性抵抗を増減できる。これにより、ダンパー16による振動の減衰力、即ち、ダンパー16の剛性(ばね定数k)を制御することが可能になる。
【0040】
本実施形態では、図1図4に示すように、機体2の一側に設けられる1つの取付装置12に対して2つのダンパー16が設置され、当該2つのダンパー16により1つの取付装置12を支持している。しかし、かかる例に限定されず、1つの取付装置12に対してダンパー16を1つだけ設置してもよいし、あるいは、1つの取付装置12に対して3つ以上のダンパー16を設置してもよい。
【0041】
また、本実施形態では、質量変動装置14は、取付装置12の下側に着脱可能に装着され、取付装置12に懸架されている。さらに、ダンパー16は、取付装置12の上側に配置されている。ダンパー16の一端(機体2側の端部)は、取付装置12よりも上方の位置で機体2の側面に固定されており、ダンパー16の他端(機体2の左右方向外側の端部)は、取付装置12の上側(例えば上面)に固定されている。これにより、ダンパー16は、質量変動装置14が装着された取付装置12を上方から吊持するようにして、取付装置12を支持する。
【0042】
このように、本実施形態では、取付装置12の上側にダンパー16が配置され、取付装置12の下側に質量変動装置14が懸架される取付構造である。かかる取付構造により、取付装置12に質量変動装置14を着脱する際や、質量変動装置14を使用する際に、ダンパー16が邪魔になることがない。さらに、質量変動装置14を取付装置12の下側に配置できる。これにより、例えば、質量変動装置14が例えば散布装置または兵器などである場合に、ヘリコプタ1の飛行中に、質量変動装置14から機体2の下方に向けて散布対象物(水、農薬、消火剤等)を散布したり、兵器を発射したりし易くなるので、好ましい。
【0043】
しかし、上記の取付構造の例に限定されない。例えば、取付装置12の上側に質量変動装置14を配置し、取付装置12の下側にダンパー16を配置して、ダンパー16により下方側から取付装置12を支持する取付構造にしてもよい。あるいは、機体2から側方に張り出した取付装置12の前側または後側に質量変動装置14を装着し、取付装置12の上側または下側にダンパー16を配置する取付構造であってもよい。
【0044】
[3.ダンパーの剛性制御の概要]
次に、図4等を参照して、本実施形態に係るダンパー16に設けられる剛性可変機構20と、剛性可変機構20を用いてダンパー16の剛性を制御する制御部30について説明する。
【0045】
上述したように、ヘリコプタ1の飛行中に、メインローター4(回転翼)のブレード3は一定の回転数で回転しており、この回転数のブレード枚数倍の振動数の振動が主にローターハブに発生する。この結果、回転するメインローター4が加振源となり、ヘリコプタ1の機体2全体が一定の振動数で振動する。以下の説明では、このメインローター4の回転に伴う機体2の振動を「機体振動」と称し、当該機体振動の振動数を「機体振動数」と称する。
【0046】
一方、機体2の外部に取り付けられた外部装置10の固有振動数は、当該外部装置10の質量および剛性等により変動する。ここで、ヘリコプタ1の飛行中に、外部装置10に含まれる質量変動装置14の質量が変動すると、この質量の変動に応じて外部装置10の固有振動数も変動する。この結果、外部装置10の固有振動数が、上記機体振動に対する共振範囲(上記機体振動に対して外部装置10が共振する振動数の範囲)に入ってしまう場合がある。この場合、外部装置10が機体振動と共振して、大きな振幅で振動するため、安定飛行が妨げられるおそれがある。
【0047】
そこで、本実施形態では、図4に示すように、ダンパー16に剛性可変機構20を設け、質量変動装置14の質量変動に応じて、ダンパー16の剛性を制御可能な構造にしている。さらに、本実施形態では、剛性可変機構20を制御する制御部30と、その制御に用いられる情報を計測する各種のセンサ(図示せず。)を備えている。当該センサは、例えば、質量変動装置14の質量に関する情報を検出するセンサ、取付装置12および質量変動装置14を含む外部装置10の振動に関する情報を計測するセンサなどを含む。
【0048】
制御部30は、これらのセンサによる検出結果や、質量変動装置14を制御するための制御情報などに基づいて、剛性可変機構20を制御して、ダンパー16の剛性を適正値に調整する。かかる制御部30により、質量変動装置14の質量の変動に応じて、外部装置10全体の剛性と固有振動数を制御することによって、機体振動に対する外部装置10の共振を抑制することができる。
【0049】
剛性可変機構20は、ダンパー16の剛性を変化させるための機構であり、当該ダンパー16自体に設けられる。ヘリコプタ1の飛行中に、剛性可変機構20は、質量変動装置14の質量の変動に応じて、ダンパー16の剛性を変化させる。このために、本実施形態に係るヘリコプタ1は、ダンパー16の剛性可変機構20を制御する制御部30を備えている。当該制御部30は、質量変動装置14の質量の変動に応じて、剛性可変機構20を用いてダンパー16の剛性を自動的に制御する。
【0050】
ここで、ダンパー16の剛性とは、ダンパー16が伸縮する方向(例えば、シリンダーダンパーの軸方向(長手方向))の軸剛性である。ダンパー16の剛性が大きいほど、ダンパー16による振動の減衰力が増加する。一方、ダンパー16の剛性が小さいほど、ダンパー16による振動の減衰力が減少する。このため、ダンパー16の剛性を変化させることにより、ダンパー16による振動の減衰力を変化させることができる。
【0051】
さらに、ダンパー16は、質量変動装置14が装着された取付装置12と機体2を連結し、当該取付装置12および質量変動装置14を支持している。このため、ダンパー16の剛性を変化させることで、機体2の外部に取り付けられた外部装置10の剛性(取付装置12、質量変動装置14およびダンパー16を含む系全体の剛性)を制御して、当該外部装置10の固有振動数を制御することが可能となる。
【0052】
一般に、1自由度系における物体の固有振動数Fn[Hz]は、物体の質量m[kg]と当該物体の剛性(ばね定数k[N/m])により、以下の式(1)で表される。物体の剛性(ばね定数k)が大きいほど、固有振動数が高くなる。また、質量mが小さいほど、固有振動数が高くなる。
Fn=(1/2π)×(k/m)0.5 ・・・(1)
【0053】
ここで、ヘリコプタ1の飛行中に、外部装置10の質量変動装置14を使用することによって、質量変動装置14の質量が変動した場合、外部装置10の固有振動数が変化し、機体振動との共振範囲に入ってしまう可能性がある。このため、当該外部装置10の固有振動数が共振範囲から外れるように、質量変動装置14の質量の変動に応じて外部装置10の固有振動数を制御することが好ましい。これにより、外部装置10の振動が機体振動と共振することを防止できる。
【0054】
例えば、外部装置10の質量変動装置14が燃料タンクである場合を考える。ダンパー16の剛性が一定のままである場合、燃料タンク内の燃料の使用により燃料タンクの質量が減少すると、その質量の減少に応じて、外部装置10の固有振動数が徐々に増加することになる。この結果、外部装置10の固有振動数が機体振動との共振範囲に入ってしまい、外部装置10が共振してしまう恐れがある。
【0055】
これに対し、本実施形態では、制御部30は、剛性可変機構20を制御することにより、燃料タンクの質量の減少に応じてダンパー16の剛性(ばね定数k)を低下させる。これにより、外部装置10の固有振動数の増加を抑制して、ほぼ一定値に維持することができる。よって、燃料タンクの質量が変動したとしても、外部装置10の固有振動数が共振範囲に入らないように制御できるので、外部装置10と機体振動との共振を防止することができる。
【0056】
このように、本実施形態に係る制御部30は、質量変動装置14の質量の変動に応じて、ダンパー16の剛性を制御することによって、外部装置10の固有振動数が共振範囲から外れるように制御する。このために、制御部30は、外部装置10の振動に関する情報、または質量変動装置14の質量に関する情報を取得して、外部装置10の固有振動数の変動要因を検知する。そして、制御部30は、取得した外部装置10の振動に関する情報、または質量変動装置14の質量に関する情報に基づいて、ダンパー16の剛性を自動的に制御する。
【0057】
ここで、まず、外部装置10の振動に関する情報と、当該情報に基づくダンパー16の剛性の制御について説明する。
【0058】
外部装置10の振動に関する情報は、ヘリコプタ1の飛行中に実際に振動している外部装置10の振動状態を表す情報であり、例えば、外部装置10の振動数、振幅を表す情報を含む。例えば、外部装置10の所定位置(例えば、取付装置12または質量変動装置14の所定位置)に振動センサを設置することにより、当該振動センサにより外部装置10の振動数等を計測できる。振動センサとしては、例えば、変位センサ(例えば、静電容量型、渦電流型若しくは光学型の変位センサ)、加速度センサ(例えば、圧電型、導電型若しくはストレインゲージ型の加速度センサ)、または速度センサ(例えば、導電型の速度センサ)など、公知のセンサを用いることができる。
【0059】
ヘリコプタ1の飛行中に、当該振動センサにより外部装置10の振動数等を連続的または断続的に計測して、制御部30に出力する。制御部30は、振動センサによりされる外部装置10の振動数の変動に基づいて、ダンパー16の剛性を制御する。例えば、外部装置10の振動数が共振範囲に近づきそうな場合には、制御部30は、外部装置10の振動数が当該共振範囲から遠ざかるように、ダンパー16の剛性を増加または減少させればよい。
【0060】
このようにして、外部装置10に設けられた振動センサにより外部装置10の振動数を直接的に計測して、ダンパー16の剛性を自動的に制御できる。上述したメインローター4による機体振動の振動数は、完全な固定値ではなく、飛行状態等に応じてある程度変動する場合がある。このような場合、振動センサにより外部装置10の振動数を直接的に計測して、ダンパー16の剛性制御に反映させることが好ましい。これにより、飛行状態に応じて機体振動の振動数が変動し、かつ、質量変動装置14の質量変動に応じて外部装置10の固有振動数が変化したとしても、当該固有振動数が機体振動との共振範囲に入ることを、より確実に防止できる。
【0061】
次に、質量変動装置14の質量に関する情報と、当該情報に基づくダンパー16の剛性の制御について説明する。
【0062】
質量変動装置14の質量に関する情報は、例えば、質量変動装置14の質量自体を直接的に表す情報であってもよいし、質量変動装置14の質量を間接的に表す情報であってもよい。質量変動装置14の質量自体を直接的に表す情報を取得する場合には、例えば、質量変動装置14の質量を計測する質量計を設けることにより、質量変動装置14の質量を直接的に計測することができる。
【0063】
一方、質量変動装置14の質量を間接的に表す情報は、例えば、質量変動装置14において質量が変動する要因となる対象物(例えば、燃料タンクの燃料、散布装置の散布物、収納装置の貨物、兵器のミサイル若しくはロケット等の発射物など)の残量若しくは使用済み量を表す情報であってもよい。制御部30は、このような質量変動装置14の質量を間接的に表す情報を取得できれば、当該情報を処理して、質量変動装置14の質量を推定し、算出できるとともに、当該質量に対応する外部装置10の固有振動数も推定可能になる。このために、質量変動装置14の質量を間接的に表す情報(例えば、燃料タンクの燃料残量)と、外部装置10の固有振動数との相関関係を予め測定しておき、制御部30は、その相関関係を示す情報のテーブルを保持しておいてもよい。
【0064】
これにより、制御部30は、ヘリコプタ1の飛行中に、質量変動装置14から当該質量変動装置14の質量を間接的に表す情報を取得することで、当該情報に基づいて外部装置10の固有振動数の変動を推定することができる。したがって、質量変動装置14の質量変動に応じて外部装置10の固有振動数が変化した場合に、制御部30は、当該固有振動数が共振範囲に入らないように、ダンパー16の剛性を増加または減少させることができる。
【0065】
以上のように、ヘリコプタ1の飛行中に、制御部30は、外部装置10の振動に関する情報、または質量変動装置14の質量を表す情報を取得する。そして、制御部30は、当該情報に基づいて、質量変動装置14の質量の変動に応じて、ダンパー16の剛性を自動的に制御する。このとき、制御部30は、ダンパー16の剛性可変機構20を制御するための制御信号を生成して、剛性可変機構20に出力する。剛性可変機構20は、当該制御信号に基づいて、ダンパー16の剛性(減衰力)を変化させる。
【0066】
かかる制御において、制御部30は、外部装置10の固有振動数が機体振動との共振範囲に入らないように、質量変動装置14の質量の変動に応じて、ダンパー16の剛性を増加または減少させる。これにより、ヘリコプタ1の飛行中に質量変動装置14の質量が変動したとしても、外部装置10の固有振動数が共振範囲から外れるように調整できるので、外部装置10が機体振動と共振することを防止できる。
【0067】
[4.剛性可変型ダンパーの具体例]
次に、図5図6を参照して、本実施形態に係る剛性可変機構20を備えたダンパー16(ショックアブソーバー)の具体例について説明する。図5は、本実施形態に係る剛性可変機構20を備えた油圧ダンパー16Aの例を示す模式図である。図6は、本実施形態に係る剛性可変機構20を備えた磁性流体ダンパー16Bの例を示す模式図である。
【0068】
(1)油圧ダンパー方式
まず、図5を参照して、剛性可変型の油圧ダンパー16Aの例について説明する。図5に示すように、油圧ダンパー16Aは、シリンダ51と、ピストン52と、ロッド53と、流路54と、オリフィス55と、開閉バルブ56とを備える。
【0069】
シリンダ51内には、所定の粘性を有する粘性流体50(オイルなど)が封入されている。ピストン52およびロッド53は、シリンダ51内を軸方向に往復可能に設けられる。シリンダ51内でピストン52およびロッド53が往復するスペースに隣接して、粘性流体50を移動させるための流路54が設けられている。この流路54には、オリフィス55が設けられる。
【0070】
オリフィス55は、流路54の途中に設けられた隙間であり、粘性流体50の流路となる。オリフィス55の径(以下、オリフィス径)により、流路54における粘性流体50の流路面積が決定される。開閉バルブ56は、流路54におけるオリフィス55の設置位置に隣接して設置される。開閉バルブ56は、オリフィス55を開閉して、オリフィス径を調整するための弁(例えば電磁弁)である。開閉バルブ56は、制御部30(図4参照)に電気的に接続され、制御部30により開閉制御される。
【0071】
開閉バルブ56によりオリフィス径を変化させることで、オリフィス55を通過するときの粘性流体50の粘性抵抗を変化させ、油圧ダンパー16Aの剛性を変化させることができる。具体的には、オリフィス径を減少させることによって、粘性流体50の粘性抵抗が増加して、油圧ダンパー16Aの剛性が増加する。一方、オリフィス径を増加させることによって、粘性流体50の粘性抵抗が減少して、油圧ダンパー16Aの剛性が減少する。以上のように、図5に示す油圧ダンパー16Aでは、開閉バルブ56によりオリフィス径を変化させる機構が、油圧ダンパー16Aの剛性(減衰力)を可変とする剛性可変機構20として機能する。
【0072】
(2)磁性流体ダンパー方式
次に、図6を参照して、剛性可変型の磁性流体ダンパー16Bの例について説明する。図6に示すように、磁性流体ダンパー16Bは、シリンダ61と、ピストン62と、ロッド63と、電磁石64と、オリフィス65とを備える。
【0073】
シリンダ61内には、磁性流体60が封入されている。磁性流体60(MR流体)は、例えばオイルに磁性粒子を分散させた流体である。磁性流体60に磁界が作用したとき、磁界強度に応じて磁性粒子がクラスタを形成し、MR効果によって磁性流体60の粘性抵抗が増加する。このように、磁性流体60は、磁界に反応し、磁界強度に応じて粘度が変化するという特性を有する。
【0074】
ピストン62およびロッド63は、シリンダ61内を軸方向に往復可能に設けられる。ピストン62には、磁性流体60が流動するオリフィス65が貫通形成されている。シリンダ61内でピストン62およびロッド63が移動するときに、ピストン62の一側と他側の間で磁性流体60はオリフィス65を通じて流動する。
【0075】
電磁石64は、シリンダ61の外側に配置され、磁界を発生させるコイルなどを備える。電磁石64は、発生させた磁界をシリンダ61内の磁性流体60に対して作用させる。電磁石64は、制御部30(図4参照)に電気的に接続され、制御部30によりコイルに印加される電圧が制御される。電磁石64のコイルに印加する電圧を変化させることにより、電磁石64から発生される磁界強度を変化させることができる。電磁石64の磁界強度を変化させることにより、シリンダ61内の磁性流体60の状態を、液体状態と半固体状態との間で変化させ、磁性流体60の粘性抵抗を変化させることができる。
【0076】
したがって、電磁石64の磁界強度を変化させることにより、磁性流体60の粘性抵抗を変化させ、磁性流体ダンパー16Bの剛性を変化させることができる。具体的には、電磁石64のコイルに印加する電圧を増加させ、磁界強度を増加させることによって、磁性流体60の粘性抵抗が増加して、磁性流体ダンパー16Bの剛性が増加する。一方、電磁石64のコイルに印加する電圧を減少させ、磁界強度を減少させることによって、磁性流体60の粘性抵抗が減少して、磁性流体ダンパー16Bの剛性が減少する。以上のように、図6に示す磁性流体ダンパー16Bでは、電磁石64により磁性流体60に作用させる磁界強度を変化させる機構が、磁性流体ダンパー16Bの剛性(減衰力)を可変とする剛性可変機構20として機能する。
【0077】
[5.外部装置の固有振動数の制御の具体例]
次に、図7図9を参照して、本実施形態に係る制御部30によりダンパー16の剛性を制御することによって、外部装置10の固有振動数を制御する方法の具体例について説明する。
【0078】
図7は、参考例として、ダンパー16の剛性を制御しない場合の外部装置10の固有振動数の変化を示すタイミングチャートである。図8図9は、本実施形態に係る制御部30によりダンパー16の剛性を制御する場合の外部装置10の固有振動数の変化を示すタイミングチャートである。
【0079】
図7に示すように、ヘリコプタ1の飛行中に質量変動装置14を使用した結果、質量変動装置14の質量が変動した場合、この質量変動に伴い、外部装置10の固有振動数が変化して、機体振動との共振範囲に入ってしまう可能性がある。
【0080】
ここで、図7の参考例のように、質量変動に応じてダンパー16の剛性を制御することなく、ダンパー16の剛性を一定値のままに維持する場合を考える。この場合、図7に示すように、ヘリコプタ1の飛行中に、質量変動装置14の質量が徐々に減少すると、当該質量の減少に応じて、外部装置10の固有振動数が徐々に増加することになる。この結果、外部装置10の固有振動数が機体振動との共振範囲に入ってしまい、外部装置10が機体振動と共振してしまう。
【0081】
これに対し、本実施形態では、図8に示すように、質量変動装置14の質量変動に応じてダンパー16の剛性を制御する。具体的には、まず、質量変動装置14の使用前等で質量変動装置14の質量が大きいときには、制御部30は、当該大きな質量に合わせて、ダンパー16の剛性を高い値に制御する。これにより、ヘリコプタ1の飛行開始当初は、外部装置10の固有振動数が共振範囲よりも低い所定値に設定され、外部装置10と機体振動との共振が回避される。そして、ヘリコプタ1の飛行中に質量変動装置14を使用して、質量変動装置14の質量が減少した場合、制御部30は、質量変動装置14の質量の減少に応じて、ダンパー16の剛性を徐々に低下させる。これにより、外部装置10の固有振動数の増加を抑制して、外部装置10の固有振動数を、共振範囲よりも低い帯域で、ほぼ一定値に維持することができる。よって、質量変動装置14の質量が変動したとしても、外部装置10の固有振動数が共振範囲に入らないように制御できるので、外部装置10と機体振動との共振を防止することができる。
【0082】
さらに、図9は、外部装置10と機体振動の共振範囲が複数存在する場合の制御を示している。図9に示すように、メインローター4の回転に伴う機体振動数の1倍、2倍、4倍、・・・の帯域付近に、複数の共振範囲が存在する場合がある。図9の例では、第1の共振範囲、第2の共振範囲、第3の共振範囲という3つの共振範囲がある例を示している。このように複数の共振範囲が段階的に存在する場合、外部装置10の固有振動数が当該複数の共振範囲のいずれにも入らないように、ダンパー16の剛性を制御することが好ましい。
【0083】
そこで、本実施形態に係る制御部30は、質量変動装置14の質量の変動に応じて、ダンパー16の剛性を制御することによって、外部装置10の固有振動数が複数の共振範囲のいずれからも外れるように制御する。図9の例では、質量変動装置14の質量の減少に応じて、ダンパー16の剛性が低下するように制御することによって、外部装置10の固有振動数が第1共振範囲と第2共振範囲との間の帯域でほぼ一定値となるように制御されている。
【0084】
詳細には、図9に示すように、質量変動装置14の質量が大きいときは、ダンパー16の剛性を高く設定することで、外部装置10の固有振動数を、第1共振範囲と第2共振範囲との間のほぼ中間値に調整する。そして、ヘリコプタ1の飛行中に質量変動装置14の使用に伴い、質量変動装置14の質量が減少するにつれ、ダンパー16の剛性を徐々に低下させる。これにより、外部装置10の固有振動数の上昇を抑制し、当該固有振動数を第1共振範囲よりも高く、かつ、第2共振範囲よりも低いほぼ一定値に維持することで、第1共振範囲および第2共振範囲のどちらにも入らないように制御する。これにより、質量変動装置14の重量が変化しても、外部装置10の固有振動数が複数の共振範囲のいずれからも外れるように好適に制御できる。
【0085】
以上、図8および図9に示したように、本実施形態に係る制御部30は、質量変動装置14の質量の変動に応じて、ダンパー16の剛性を制御することによって、外部装置10の固有振動数が共振範囲から外れるように制御する。例えば、制御部30は、質量変動装置14の質量の変動に伴い、外部装置10の固有振動数が共振範囲まで所定の閾値の範囲内に近づいたときには、固有振動数が当該共振範囲から遠ざかるように、ダンパー16の剛性を制御する。これにより、メインローター4の回転に起因する機体振動に対して、外部装置10が共振することを好適に防止できる。
【0086】
ここで、単に外部装置10の共振を抑制するだけの観点からは、ダンパー16の剛性を非常に高い値に常時設定する方法も考えられる。しかし、ダンパー16の剛性を非常に高く設定すると、機体剛性がオーバースペックになり、ヘリコプタ1の質量も増大してしまうという問題がある。したがって、本実施形態に係る制御方法のように、質量変動装置14の質量変動に応じて、必要なときにのみダンパー16の剛性を増減して、外部装置10の共振を防止する方法が好ましい。これにより、機体剛性のオーバースペックを防止でき、ヘリコプタ1の質量も低位に抑制できる。
【0087】
また、外部装置10の共振を抑制する別の方法としては、外部装置10にアクティブ制振装置を設置する方法も考えられる。しかし、アクティブ制振装置は、エネルギー消費量が多く、エネルギー効率が悪いという短所がある。これに対し、本実施形態に係る制御方法は、アクティブ制振装置を用いておらず、ダンパー16に剛性可変機構20を設けるだけでよいので、エネルギー消費が少なく、装置構成が簡素で済むという利点がある。
【0088】
[6.制御フロー]
次に、図10を参照して、本実施形態に係る制御部30によりダンパー16の剛性を制御するフローの具体例について説明する。図10は、本実施形態に係る制御部30によるダンパー16の剛性制御方法を示すフローチャートである。
【0089】
図10に示すように、ヘリコプタ1の飛行中に、制御部30は、外部装置10の振動を計測しながら(S10)、その計測結果に基づいて外部装置10の共振の有無を判定し(S12、S14)、必要に応じてダンパー16の剛性を制御する(S16)。かかる処理S10~S16は、ヘリコプタ1の機体2が停止するまで(S18)、継続して繰り返し行われる。
【0090】
具体的には、まず、ヘリコプタ1の飛行中に、制御部30は、センサにより外部装置10の取付装置12の振動を計測し、当該振動を表す情報を取得する(S10)。例えば、制御部30は、取付装置12に設置された加速度計から、時間ごとの振幅データを取得する。この時間ごとの振幅データの具体例を図11に示す。図11に示すように、この振幅データは、ヘリコプタ1の飛行中における取付装置12の実際の振動(振幅の時間変動)を表す情報である。
【0091】
次いで、制御部30は、上記S10で取得した時間ごとの振幅データを、高速フーリエ変換(FFT)処理することにより、周波数ごとの振幅データを導出する(S12)。この周波数ごとの振幅データの具体例を図12に示す。図12に示すように、いくつかの周波数において振幅のピークが観察され、特に、低周波数帯域の特定周波数に大きな振幅のピークが見られる。
【0092】
その後、制御部30は、上記S12で得られた周波数ごとの振幅データに基づいて、機体振動に対して外部装置10が共振しているか否かを判定する(S14)。例えば、図12に示すように、制御部30は、例えば上記特定周波数(メインローター4の回転周波数;機体振動数)における振幅値が、所定の規定値を超えているか否かに基づいて、外部装置10の共振の有無を判定する。ここで、規定値は、外部装置10が共振状態または非共振状態のいずれであるかを判定するための閾値である。
【0093】
図12に示すように、例えば上記特定周波数における振幅値が規定値より大きければ、制御部30は、共振状態であると判定し、S16にてダンパー16の剛性を制御する。一方、当該特定周波数における振幅値が規定値以下であれば、制御部30は、非共振状態であると判定する。この場合、S16のダンパー16の剛性制御処理は行われず、機体が停止するまで(S18)、上記S10~S14の処理が繰り返される。
【0094】
上記S14で共振状態であると判定された場合、制御部30は、ダンパー16の剛性を制御することにより、共振状態を解消する(S16)。例えば、特定周波数の振幅値に所定の閾値(例えば図12に示した規定値)を設けておき、制御部30は、S12で得られる特定周波数の振幅値が当該閾値を超えた場合、ダンパー16の剛性が低下するように、剛性可変機構20を制御する。この結果、ダンパー16の剛性を徐々に低下させていくことによって、その後に計測される特定周波数の振幅値が上記閾値を下回った場合に、制御部30は、ダンパー16の剛性の制御を停止する。これにより、外部装置10の振動の振幅値を所定の閾値以下に抑制でき、機体振動に対する外部装置10の共振状態を解消できる。
【0095】
より詳細には、例えば、質量変動装置14が燃料タンクである場合、ヘリコプタ1の飛行中に燃料タンク内の燃料が刻々と減っていくと、燃料タンクの質量が減少していくため、外部装置10の固有振動数が増加する。この結果、外部装置10の固有振動数が増加して共振範囲に入ってしまうことで、メインローター4による特定周波数の機体振動に対して外部装置10が共振してしまう。そこで、本実施形態に係る制御部30は、燃料タンクの質量が減少したときに、剛性可変機構20を制御してダンパー16の剛性を低下させて、外部装置10の固有振動数を減少させる。これにより、外部装置10の固有振動数を、燃料タンクの質量が減る前の低い振動数に維持して、共振範囲外にできるので、外部装置10の共振を防止できる。
【0096】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0097】
例えば、上記実施形態では、回転翼航空機としてヘリコプタ1の例を挙げて説明したが、かかる例に限定されない。本発明の回転翼航空機は、1つ以上の回転翼により主要な揚力を得る航空機であれば、例えば、VTOL(Vertical TakeOff and Landing)機、ジャイロブレン、ジャイロダイン、ドローンなどであってもよい。また、回転翼航空機は、有人式または無人式のいずれであってもよい。
【0098】
また、上記実施形態では、質量変動装置14が燃料タンクである例について主に説明したが、かかる例に限定されない。本発明の質量変動装置は、その使用に応じて質量が変動する装置であれば、例えば、上記の散水装置、消火剤散布装置、農薬散布装置、搬送装置、各種兵器など、回転翼航空機に装着可能な各種の他の装置であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、ヘリコプタ等の回転翼航空機に利用することができる。
【符号の説明】
【0100】
1 ヘリコプタ
2 機体
3 ブレード
4 メインローター
5 テールローター
6 降着装置
10 外部装置
12 取付装置
14 質量変動装置
16 ダンパー
16A 油圧ダンパー
16B 磁性流体ダンパー
20 剛性可変機構
30 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12