(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】細胞分析方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
G01N 33/48 20060101AFI20240826BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20240826BHJP
G01N 15/14 20240101ALI20240826BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20240826BHJP
C12Q 1/00 20060101ALN20240826BHJP
【FI】
G01N33/48 M
G01N33/48 Z
G01N33/483 C
G01N15/14 C
C12M1/34 A
C12Q1/00 Z
(21)【出願番号】P 2020157931
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】朝田 祥一郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 考伸
(72)【発明者】
【氏名】田中 政道
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】南郷 興平
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0105376(US,A1)
【文献】国際公開第2020/054080(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/203568(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03620983(EP,A1)
【文献】特表2018-505392(JP,A)
【文献】特表2011-515655(JP,A)
【文献】金山直樹,フローサイトメトリー 「前にならえ」並べて順に数えます,生物工学第90巻,日本,2012年,第12号,785-789
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
G01N 15/00-15/14
G06N 3/02
G05B 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を測定して前記検体に含まれる複数の細胞の各々に関するデータを取得する細胞測定装置と、前記細胞測定装置とネットワークを介して接続された細胞分析装置
とを含むシステムにおいて、
前記細胞測定装置
が取得した前記データを
前記ネットワークを介して前記細胞分析装置に送信し、
前記細胞分析装置において、複数の細胞の各々に関するデータの入力に対して前記細胞の細胞種別に関する情報を出力する人工知能アルゴリズムを用いて前記データを解析することにより、前記検体に含まれる複数の前記細胞の各々について細胞種別に関する情報を生成し、
前記情報を
解析結果として提供する、
ことを含む細胞分析方法。
【請求項2】
前記細胞測定装置は、フローサイトメータによって細胞を測定する、
請求項1に記載の細胞分析方法。
【請求項3】
前記データは、細胞に光を照射することにより検出される光学的信号に関するデータである、
請求項1または2に記載の細胞分析方法。
【請求項4】
前記データは、細胞をフローサイトメータによって測定して得られる信号の波形をデジタル変換した波形データである、
請求項1から3のいずれか1項に記載の細胞分析方法。
【請求項5】
前記データは、細胞の画像データである、
請求項1から3のいずれか1項に記載の細胞分析方法。
【請求項6】
前記細胞分析装置は、複数の前記細胞測定装置とネットワークを介して接続され、
前記ネットワーク経由で、複数の前記細胞測定装置から前記データを受信し、
前記ネットワーク経由で、複数の前記細胞測定装置のうちの一の細胞測定装置に前記情報を送信する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の細胞分析方法。
【請求項7】
前記細胞分析装置と同一の施設に配置された前記細胞測定装置から、前記データを取得する、
請求項1から
6のいずれか1項に記載の細胞分析方法。
【請求項8】
前記細胞分析装置と同一のネットワークドメインに配置された前記細胞測定装置から、前記データを取得する、
請求項1から
7のいずれか1項に記載の細胞分析方法。
【請求項9】
前記細胞分析装置と異なるネットワークドメインに配置された前記細胞測定装置から、前記データを取得する、
請求項1から
8のいずれか1項に記載の細胞分析方法。
【請求項10】
前記細胞分析装置と異なるネットワークドメインに配置された前記細胞測定装置から、前記細胞測定装置の装置IDと対応付けて前記データを取得する、
請求項1から
8のいずれか1項に記載の細胞分析方法。
【請求項11】
前記細胞分析装置は、ホストプロセッサと並列処理プロセッサとを備え、前記データを分析するための複数の演算処理を、前記並列処理プロセッサに並列に実行させる、
請求項1から
10のいずれか1項に記載の細胞分析方法。
【請求項12】
前記並列処理プロセッサは、
前記データの分析に関する演算処理を実行可能な演算ユニットを複数有し、
並列処理として、前記演算ユニットの各々による前記演算処理を並列に実行する、
請求項
11に記載の細胞分析方法。
【請求項13】
前記人工知能アルゴリズムは、深層学習アルゴリズムである、
請求項1から
12のいずれか1項に記載の細胞分析方法。
【請求項14】
前記情報は、前記細胞種別を識別するための識別子を含む、
請求項1から
13のいずれか1項に記載の細胞分析方法。
【請求項15】
前記情報は、前記細胞が複数の前記細胞種別の各々に属する確率を含む、
請求項1から
14のいずれか1項に記載の細胞分析方法。
【請求項16】
前記細胞測定装置から取得されたデータには識別情報が付されており、
前記識別情報は、前記データに対応する検体の識別情報、前記データに対応する患者の識別情報、及び、前記データに対応する細胞測定装置の識別情報の少なくともいずれかを含む、
請求項1から
15のいずれか1項に記載の細胞分析方法。
【請求項17】
前記人工知能アルゴリズムは、深層学習アルゴリズムであり、
前記細胞分析装置は、ホストプロセッサと並列処理プロセッサとを備え、前記ホストプロセッサは、前記深層学習アルゴリズムにおける畳み込み層における複数の演算処理を前記並列処理プロセッサに並列に実行させる、
請求項1から
16のいずれか1項に記載の細胞分析方法。
【請求項18】
前記並列処理プロセッサは、
前記データの分析に関する演算処理を実行可能な演算ユニットを少なくとも10個有し、
並列処理として、前記演算ユニットの各々による前記演算処理を並列に実行する、
請求項
17に記載の細胞分析方法。
【請求項19】
前記並列処理プロセッサは、
前記データの分析に関する演算処理を実行可能な演算ユニットを少なくとも100個有し、
並列処理として、前記演算ユニットの各々による前記演算処理を並列に実行する、
請求項
18に記載の細胞分析方法。
【請求項20】
前記並列処理プロセッサは、
前記データの分析に関する演算処理を実行可能な演算ユニットを少なくとも1000個有し、
並列処理として、前記演算ユニットの各々による前記演算処理を並列に実行する、
請求項
19に記載の細胞分析方法。
【請求項21】
前記並列処理プロセッサは、少なくとも1ギガバイトの容量を有するメモリから読み出された前記データを入力とし、並列処理を実行する、
請求項
20に記載の細胞分析方法。
【請求項22】
検体を測定して前記検体に含まれる複数の細胞の各々に関するデータを取得する細胞測定装置と、
前記細胞測定装置とネットワークを介して接続された細胞分析装置と、を備え、
前記細胞分析装置は、複数の細胞の各々に関するデータの入力に対して前記細胞の各々の細胞種別に関する情報を出力する人工知能アルゴリズムを用いて、前記細胞測定装置から前記ネットワークを介して送信された前記データを解析することにより、複数の前記細胞の各々について細胞種別に関する情報を生成し、前記情報を解析結果として提供する、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞分析方法及び細胞分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、血球細胞をフローサイトメータによって測定して得られたデータを、プロセッサを搭載したデータ処理システムにおいて解析し、細胞を種別に応じて分類する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置では、データ処理システムに設定されたアルゴリズムで細胞を分類している。既存のアルゴリズムでは細胞から得られる限られたパラメータに基づいて細胞を分類するため、システムに高い情報処理能力は求められないものの、分類精度には限界がある。
【0005】
本発明の一態様は、高い情報処理能力を要求することなく、細胞分類の精度を高めることが可能な細胞分析方法及び細胞分析装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る細胞分析方法は、人工知能アルゴリズム(50、60)によって細胞を分析する細胞分析装置(1)において、細胞測定装置(4000、4000’、4000''、4000''')によって測定された細胞に関するデータを取得し、前記データを分析して、細胞の各々について細胞種別に関する情報を生成し、前記情報を細胞測定装置(4000、4000’、4000''、4000''')に送信する、ことを含む。
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る細胞分析装置(1)は、人工知能アルゴリズム(50、60)によって細胞を分析する細胞分析装置(1)であって、細胞分析装置(1)は、処理部(10)を備え、処理部(10)は、細胞測定装置(4000、4000’、4000''、4000''')によって測定された細胞に関するデータを取得し、前記データを分析して、細胞の各々について細胞種別に関する情報を生成し、前記情報を細胞測定装置(4000、4000’、4000''、4000''')に送信する。
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の別の態様に係る細胞分析方法は、細胞測定装置(4000、4000’、4000''、4000''')によって細胞を測定して細胞のデータを取得し、前記データを、人工知能アルゴリズム(50、60)によって細胞を分析する細胞分析装置(1)に送信し、細胞分析装置(1)が人工知能アルゴリズム(50、60)にしたがって前記データを分析して得られた、細胞の細胞種別に関する情報を取得する、ことを含む。
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の別の態様に係る細胞分析方法は、検体に含まれる細胞を細胞分析装置(1)により分析する分析方法であって、複数の細胞測定装置(4000、4000’、4000''、4000''')から、細胞に関するデータを識別情報と対応付けて取得し、前記データを並列処理プロセッサ(12)による並列処理によって分析し、並列処理の結果に基づき、複数の細胞の各々について細胞種別に関する情報を、前記識別情報と対応付けて生成する、ことを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、細胞測定装置の処理能力を低下させることなく、細胞分類の精度を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(a)は、従来法の白血球分類の例を示す。(b)は、本法の白血球分類の例を示す。
【
図2】(a)は、フローセルを流れる細胞に光を照射する例を示す。(b)は、前方散乱光信号、側方散乱光信号、蛍光信号のサンプリングを行う例を示す。(c)は、サンプリングによって得られる波形データの例を示す。
【
図6】細胞分析装置を含むシステムの構成例を示す。
【
図7】細胞分析装置を含むシステムの他の構成例を示す。
【
図8】細胞分析装置を含むシステムの他の構成例を示す。
【
図9】細胞分析装置を含むシステムの他の構成例を示す。
【
図16】細胞分析装置への並列処理プロセッサの実装例を示す。
【
図17】細胞分析装置への並列処理プロセッサの他の実装例を示す。
【
図18】細胞分析装置への並列処理プロセッサの他の実装例を示す。
【
図19】細胞分析装置への並列処理プロセッサの他の実装例を示すブロック図を示す。
【
図20】プロセッサが並列処理プロセッサを用いて行列データの演算処理を実行する動作の概要を示す。
【
図21】(a)は、行列の積の計算式を示す。(b)は、並列処理プロセッサで並列に実行される演算処理の例を示す。
【
図22】演算処理を、並列処理プロセッサにて実行する様子を示す。
【
図23】(a)は、深層学習アルゴリズムに入力される波形データとして、前方散乱光の波形データの例を示す。(b)は、波形データとフィルタとの行列演算の概要を示す。
【
図24】細胞分析装置による検体の分析動作の例を示す。
【
図28】フローサイトメータの光学系の概略の例を示す。
【
図29】測定ユニットの試料調製部の概略の例を示す。
【
図30】深層学習を行う細胞分析装置の機能ブロックの例を示す。
【
図31】訓練データを生成するため処理部の動作のフローチャート例を示す。
【
図32】ニューラルネットワークを説明するための模式図を示す。(a)は、ニューラルネットワークの概要を示す模式図を示す。(b)は、各ノードにおける演算を示す模式図を示す。(c)は、ノード間の演算を示す模式図を示す。
【
図33】参照法による判定結果と深層学習アルゴリズムを用いた判定結果との混合マトリックスを示す。
【
図34】(a)は、好中球のROC曲線を示す。(b)は、リンパ球のROC曲線を示す。(c)は、単球のROC曲線を示す。
【
図35】(a)は、好酸球のROC曲線を示す。(b)は、好塩基球のROC曲線を示す。(c)は、コントロール血液(CONT)のROC曲線のROC曲線を示す。
【
図36】画像分析装置としての細胞測定装置の構成例を示す。
【
図37】撮像装置としての細胞測定装置の構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の概要及び実施の形態を、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明及び図面において、同じ符号は同じ又は類似の構成要素を示すこととし、よって、同じ又は類似の構成要素に関する説明を省略する。
【0013】
[1.細胞の分析方法]
本実施形態は、人工知能アルゴリズムによって細胞を分析する細胞分析装置において、細胞測定装置によって測定された細胞に関するデータを取得し、前記データを分析して、前記細胞の各々について細胞種別に関する情報を生成し、前記情報を前記細胞測定装置に送信する、ことを含む分析方法に関する。
【0014】
本分析方法によれば、細胞測定装置にて測定されたデータの分析は、細胞測定装置ではなく、細胞分析装置にて行われる。細胞分析装置は細胞に関するデータを人工知能アルゴリズムによって分析して細胞種別に関する情報を生成し、生成された情報は細胞測定装置に返される。したがって、本分析方法によれば、細胞測定装置は人工知能アルゴリズムによる高精度な細胞分類を行うために高い情報処理能力をもつプロセッサを備える必要がない。よって、例えば、高価格・高処理能力の分析装置から、低価格・低処理能力の分析装置まで幅広いレンジの分析装置に適用することができる。また、細胞分析装置が複数の細胞測定装置に接続される場合、それぞれの細胞測定装置において人工知能アルゴリズムを更新・運用する場合に比べて、更新・運用に係る手間及びコストを低減することができる。例えば、人工知能アルゴリズムの更新は細胞分析装置で行えば済むため、更新に係る手間及びコストを低減することができる。
【0015】
図1を用いて、本実施形態の概要の例を説明する。
図1(a)は従来法の白血球分類を模式的に表す図であり、
図1(b)は本法の白血球分類を模式的に示す図である。
図1(a)、
図1(b)において、FSCは前方散乱光の信号強度を示すアナログ信号を示し、SSCは側方散乱光のアナログ信号を示し、SFLは側方蛍光の信号強度を示すアナログ信号を示す。
図1(a)に図示されるように、従来法では、検体に含まれる個々の細胞をフローサイトメータで測定し、前方散乱光、側方散乱光、側方蛍光のそれぞれのアナログ信号のパルスのピーク高さを前方散乱光強度、側方散乱光強度、側方蛍光強度として取得する。次に、細胞を前方散乱光強度、側方散乱光強度、側方蛍光強度に基づき、特定の種別に分類する。細胞を分類した結果は
図1(a)に示すようなスキャッタグラムとして表示される。
図1(a)のスキャッタグラムにおいて、横軸は側方散乱光、縦軸は側方蛍光の強度を示す。
【0016】
従来の白血球分類は、
図1(a)に示されるように、アナログ波形のピーク高さの情報のみに基づいて血球の種別を判定していた。これに対して、本実施形態の方法では、検体中の細胞に関するデータとして、
図1(b)に示されるように、1つの細胞からフローサイトメータによって取得されるアナログ信号の波形全体を解析対象のデータとして分析することで細胞を分類する。
図1(b)にはフローサイトメータによって得られるアナログ信号を描画した波形を示しているが、後述するように、本実施形態において検体中の細胞に関するデータは、このアナログ信号をA/D変換することによって得られる複数時点の信号強度を示す値を要素とするデジタルデータ(後述する波形データ)を意図している。このデジタルデータ群は行列データであり、本実施形態では、例えば、一行複数列の行列データ(すなわち、一次元の配列データ)である。
【0017】
本実施形態では、
図1(b)に示される訓練前の深層学習アルゴリズム50に、細胞種別毎の波形データを学習させる。そして、検体に含まれる細胞種別が未知の細胞の波形データを訓練済みの深層学習アルゴリズム60に入力することで、深層学習アルゴリズム60から、細胞の各々について細胞種別の判定結果を導く。深層学習アルゴリズム50、60は、人工知能アルゴリズムの一つであり、多層の中間層を含むニューラルネットワークで構成される。本実施形態では、訓練済みの深層学習アルゴリズム60に従って波形データの分析に関する処理を実行するにあたり、深層学習アルゴリズム60に多量に含まれる行列演算を、細胞分析装置に搭載された並列処理プロセッサを用いて、並列処理で実行する。細胞分析装置は、並列処理を実行可能な並列処理プロセッサと、並列処理プロセッサに並列処理を実行させる実行命令プロセッサ(以下、単にプロセッサという)とを備える。
【0018】
以下、細胞種別を判定する目的で分析に供される生体試料中の個々の細胞を「分析対象の細胞」ともいう。言い換えると、生体試料は、複数個の分析対象の細胞を含みうる。複数個の細胞は、分析対象となる複数種別の細胞を含みうる。
【0019】
生体試料として、被検者から採取された生体試料を挙げることができる。例えば、生体試料は、例えば、静脈血、動脈血等の末梢血、尿、血液及び尿以外の体液を含み得る。血液及び尿以外の体液として、骨髄液、腹水、胸水、脳脊髄液等を含みうる。以下、血液及び尿以外の体液を単に「体液」という場合がある。血液試料は、細胞数の計数及び細胞種別の判定ができる状態である限り、制限されない。血液は、好ましくは末梢血である。例えば、血液は、エチレンジアミン四酢酸塩ナトリウム塩又はカリウム塩)、ヘパリンナトリウム等の抗凝固剤を使用して採血された末梢血を挙げることができる。末梢血は、動脈から採取されても静脈から採取されてもよい。
【0020】
本実施形態において判定しようとする細胞種別は、形態学的な分類に基づく細胞種別を基準とするものであり、生体試料の種類に応じて異なる。生体試料が血液である場合であって、血液が健常者から採血されたものである場合、本実施形態において判定しようとする細胞種別には、例えば、赤血球、白血球等の有核細胞、血小板等が含まれる。有核細胞には、例えば、好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球が含まれる。好中球には、例えば、分葉核好中球及び桿状核好中球が含まれる。一方、血液が非健常者から採血されたものである場合、有核細胞には、例えば、幼若顆粒球及び異常細胞からなる群から選択される少なくとも一種が含まれる場合がある。このような細胞も本実施形態において判定しようとする細胞種別に含まれる。幼若顆粒球には、例えば、後骨髄球、骨髄球、前骨髄球、骨髄芽球等の細胞が含まれ得る。
【0021】
また、有核細胞には、正常細胞の他、健常人の末梢血には含まれない異常細胞が含まれていてもよい。異常細胞の例は、所定の疾患に罹患した際に出現する細胞であり、例えば腫瘍細胞である。造血系の場合、所定の疾患は、例えば、骨髄異型性症候群、急性骨髄芽球性白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、赤白血病、急性巨核芽球性白血病、急性骨髄性白血病、急性リンパ球性白血病、リンパ芽球性白血病、慢性骨髄性白血病、又は慢性リンパ球性白血病等の白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫等の悪性リンパ腫、及び多発性骨髄腫よりなる群から選択される疾患であり得る。
【0022】
さらに、異常細胞には、例えば、リンパ芽球、形質細胞、異型リンパ球、反応性リンパ球、前赤芽球、好塩基性赤芽球、多染性赤芽球、正染性赤芽球、前巨赤芽球、好塩基性巨赤芽球、多染性巨赤芽球、及び正染性巨赤芽球等の有核赤血球である赤芽球、及びミクロメガカリオサイトを含む巨核球等の健常人の末梢血では通常認められない細胞が含まれ得る。
【0023】
また、生体試料が尿である場合、本実施形態において判定しようとする細胞種別には、例えば、赤血球、白血球、移行上皮、扁平上皮等の上皮細胞等が含まれ得る。異常細胞としては、例えば、細菌、糸状菌、酵母等の真菌、腫瘍細胞等が含まれ得る。
【0024】
生体試料が腹水、胸水、髄液等の通常血液成分を含まない体液である場合、細胞種別には、例えば、赤血球、白血球、大型細胞を含みうる。ここでいう「大型細胞」とは、体腔内膜又は内臓の腹膜から剥がれた細胞で白血球より大きいものを指し、例えば、中皮細胞、組織球、腫瘍細胞等が該当する。
【0025】
生体試料が骨髄液である場合、本実施形態において判定しようとする細胞種別には、正常な細胞として、成熟した血球細胞と幼若な血球系細胞を含みうる。成熟した血球細胞には、例えば、赤血球、白血球等の有核細胞、血小板等が含まれる。白血球等の有核細胞には、例えば、好中球、リンパ球、形質細胞、単球、好酸球、好塩基球が含まれる。好中球には、例えば、分葉核好中球及び桿状核好中球が含まれる。幼若な血球系細胞には、例えば、造血系幹細胞、幼若顆粒球系細胞、幼若リンパ球系細胞、幼若単球系細胞、幼若赤血球系細胞、巨核球系細胞、間葉系細胞等が含まれる。幼若顆粒球には、例えば、後骨髄球、骨髄球、前骨髄球、骨髄芽球等の細胞が含まれ得る。幼若リンパ球系細胞には、例えば、リンパ芽球等が含まれる。幼若単球系細胞には、単芽球等が含まれる。幼若赤血球系細胞には、例えば、前赤芽球、好塩基性赤芽球、多染性赤芽球、正染性赤芽球、前巨赤芽球、好塩基性巨赤芽球、多染性巨赤芽球、及び正染性巨赤芽球等の有核赤血球が含まれる。巨核球系細胞には、例えば、巨核芽球等が含まれる。
【0026】
骨髄に含まれ得る異常細胞としては、例えば、上述した骨髄異型性症候群、急性骨髄芽球性白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、赤白血病、急性巨核芽球性白血病、急性骨髄性白血病、急性リンパ球性白血病、リンパ芽球性白血病、慢性骨髄性白血病、又は慢性リンパ球性白血病等の白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫等の悪性リンパ腫、及び多発性骨髄腫よりなる群から選択される造血系腫瘍細胞、骨髄以外の器官に発生した悪性腫瘍の転移腫瘍細胞を挙げることができる。
【0027】
図1には、細胞から得られる信号として、フローセルを流れる細胞に光を照射して得られる光学的信号である前方散乱光信号、側方散乱光信号、側方蛍光信号を例示しているが、細胞の特徴を表し、細胞を種別ごとに分類できる信号であれば特に制限されない。
【0028】
細胞から得られる信号としては、細胞の形態学的特徴を表す信号、化学的特徴を表す信号、物理的特徴を表す信号、遺伝学的特徴を表す信号のいずれでもよいが、好ましくは細胞の形態学的特徴を表す信号である。細胞の形態学的特徴を表す信号は、好ましくは、細胞から得られる光学的信号である。
【0029】
光学的信号は、好ましくは、細胞に光を照射することで光学的な応答として得られる光信号である。光信号は、光散乱に基づく信号、光吸収に基づく信号、透過光に基づく信号、及び蛍光に基づく信号から選択される少なくとも一種を含み得る。
【0030】
光散乱に基づく信号は、光照射によって生じる散乱光信号および光照射によって生じる光損失信号を含み得る。散乱光信号は、照射光の進行方向に対する散乱光の受光角度に応じて、細胞の特徴を示す異なるパラメータとなる。前方散乱光信号は、細胞の大きさを表すパラメータとして用いられる。側方散乱光信号は、細胞の核の複雑さを表すパラメータとして用いられる。
【0031】
前方散乱光の「前方」は、光源から発せられた光の進行方向を意図する。「前方」には、照射光の角度を0度とした場合に受光角度が0から5度付近である前方低角、及び/又は受光角度5から20度付近である前方高角を含み得る。「側方」は、「前方」と重ならない限り制限されない。「側方」には、照射光の角度を0度とした場合、受光角度が25度から155度付近、好ましくは45度から135度付近、より好ましくは90度付近を含み得る。
【0032】
光散乱に基づく信号は、偏光または偏光解消を信号の成分として含んでもよい。例えば、細胞に光を照射して生じる散乱光を偏光板を通して受光することで、特定角度に偏光した散乱光のみを受光することができる。また、偏光板を通して光を細胞に照射し、生じた散乱光を照射用の偏光板と異なる角度の偏光のみを透過する偏光板を通して受光することで、偏光解消散乱光のみを受光することができる。
【0033】
光損失信号は、光が細胞に照射されて散乱することで受光部における受光量が減少することに基づく、受光量の損失量を表す。光損失信号は、好ましくは、照射光の光軸方向における光損失(軸方向光損失)として得られる。光損失信号は、細胞がフローセルを流れていない状態で受光部における受光量を100%としたときの、細胞がフローセルを流れた時の受光量の割合として表すことができる。軸方向光損失は、前方散乱光信号と同様に細胞の大きさを表すパラメータとして用いられるが、細胞が透光性を有する場合とそうでない場合とで得られる信号は異なる。
【0034】
蛍光に基づく信号は、蛍光物質によって標識した細胞に対して光を照射することで励起される蛍光であってもよいし、非染色の細胞から生じる自家蛍光であってもよい。蛍光物質は、核酸や膜タンパクに結合する蛍光色素であってもよいし、細胞の特定のタンパク質に結合する抗体を蛍光色素で修飾した標識抗体であってもよい。
【0035】
光学的信号は、細胞に対して光を照射し、照射された細胞を撮像することによって得られる画像データの形式で取得してもよい。画像データは、いわゆるイメージングフローサイトメータによって、流路を流れる個々の細胞をTDIカメラやCCDカメラ等の撮像素子によって撮像することで得ることができる。または、スライドガラス上に細胞を含む検体または測定試料を塗布し、散布し、または点着し、スライドガラスを撮像素子によって撮像することで細胞の画像データを得てもよい。
【0036】
細胞から得られる信号は、光学的信号に限られず、細胞から得られる電気的信号であってもよい。電気的信号は、例えば、フローセルに直流電流を印加し、細胞がフローセルを流れることによって生じるインピーダンスの変化を電気的信号として用いてもよい。このようにして得られる電気的信号は細胞の容積を反映するパラメータとなる。または、電気的信号は、フローセルを流れる細胞に無線周波を印加したときのインピーダンスの変化を電気的信号としてもよい。このようにして得られる電気的信号は細胞の伝導度を反映するパラメータとなる。
【0037】
細胞から得られる信号は、上述の細胞から得られる信号のうち少なくとも2種類以上の複数種類の信号を組み合わせてもよい。複数の信号を組み合わせることで、細胞の特徴を多面的に分析することができ、より高精度な細胞の分類が可能になる。組み合わせは、例えば、複数の光学的信号、例えば前方散乱光信号、側方散乱光信号、蛍光信号のうち少なくとも2つを組み合わせてもよいし、角度の異なる散乱光信号、例えば低角度散乱光信号と高角度散乱光信号を組み合わせてもよい。または光学的信号と電気的信号を組み合わせてもよく、組み合わせる信号の種類および数は特に制限されない。
【0038】
<細胞の分析方法の概要>
次に、
図2、
図3~
図5に示す例を用いて訓練データ75の生成方法及び波形データの分析方法を説明する。
【0039】
<波形データ>
図2は、本分析方法において用いられる波形データを説明するための模式図である。
図2(a)に示すように、細胞Cを含む検体をフローセルFCに流し、フローセルFCを流れる細胞Cに光を照射すると、光の進行方向に対して前方に前方散乱光FSCが生じる。同様に、光の進行方向に対して側方に側方散乱光SSCと側方蛍光SFLが生じる。前方散乱光は、第1受光部D1によって受光され、受光量に応じた信号が出力される。側方散乱光は、第2受光部D2によって受光され、受光量に応じた信号が出力される。側方蛍光は、第3受光部D3によって受光され、受光量に応じた信号が出力される。これにより、受光部D1~D3から、時間経過に伴う信号の変化を表すアナログ信号が出力される。前方散乱光に対応するアナログ信号を「前方散乱光信号」、側方散乱光に対応するアナログ信号を「側方散乱光信号」、側方蛍光に対応するアナログ信号を「蛍光信号」という。各アナログ信号の1つのパルスが一つの細胞に対応する。
【0040】
アナログ信号は、A/D変換部に入力され、デジタル信号に変換される。
図2(b)はA/D変換部によるデジタル信号への変換を模式的に示す図である。ここでは説明を簡略化するためアナログ信号をA/D変換部に直接入力するような図としている。アナログ信号のレベルをそのままデジタル信号に変換してもよいが、必要に応じて、ノイズ除去、ベースライン補正、正規化等の処理を行ってもよい。
図2(b)に示すように、A/D変換部は、受光部D1~D3から入力されるアナログ信号のうち、前方散乱光信号のレベルが所定の閾値として設定されたレベルに至った時点を始点として、前方散乱光信号、側方散乱光信号、蛍光信号のサンプリングを行う。A/D変換部は、所定のサンプリングレート(例えば、10ナノ秒間隔で1024ポイントのサンプリング、80ナノ秒間隔で128ポイントのサンプリング、又は160ナノ秒間隔で64ポイントのサンプリング等)で、それぞれのアナログ信号をサンプリングする。
【0041】
図2(c)は、サンプリングによって得られる波形データを模式的に示す図である。サンプリングによって、一つの細胞に対応する波形データとして、複数の時点におけるアナログ信号レベルをデジタルに示す値を要素とする行列データが得られる。このようにしてA/D変換部は、一つの細胞に対応する前方散乱光のデジタル信号、側方散乱光のデジタル信号、側方蛍光のデジタル信号を生成する。A/D変換は、デジタル信号化された細胞数が所定数に達するまで、または検体をフローセルに流し始めてから所定時間が経過するまで繰り返される。これにより、
図2(c)に示すように、一つの検体に含まれるN個の細胞の波形データを合体したデジタル信号が得られる。各細胞に対するサンプリングデータの集合(
図1Aの例ではt=0nsからt=10240nsまで10ナノ秒毎に1024個のデジタル値の集合)を波形データと呼び、一つの検体から得られた波形データの集合をデジタル信号と呼ぶ。
【0042】
A/D変換部によって生成された各々の波形データには、各々の細胞を識別するためのインデックスが付与されてもよい。インデックスは、例えば、生成された波形データの順に1~Nの整数が付与され、同じ細胞から得られた前方散乱光の波形データ、側方散乱光の波形データ、側方蛍光の波形データには、それぞれ、同一のインデックスが付与される。
【0043】
一つの波形データは一つの細胞に対応するので、インデックスは測定された細胞に対応する。同じ細胞に対応する波形データに同一のインデックスが付与されることで、後述する深層学習アルゴリズムは、個々の細胞に対応する前方散乱光の波形データと、側方散乱光の波形データと、蛍光の波形データを1セットとして解析し、細胞の種別を分類できる。
【0044】
<訓練データの生成>
図3は、細胞の種別を判定するための深層学習アルゴリズムを訓練するために使用される訓練データの生成方法の一例を示す模式図である。訓練データ75は、検体をフローサイトメータによって測定し、検体に含まれる細胞について得られた前方散乱光(FSC)のアナログ信号70a、側方散乱光(SSC)のアナログ信号70b、及び側方蛍光(SFL)のアナログ信号70cに基づいて生成される波形データである。波形データの取得方法は、上述のとおりである。
【0045】
訓練データ75は、例えば、フローサイトメータによって検体を測定し、その検体に含まれる細胞を従来法のスキャッタグラムに基づいて解析した結果、特定の細胞種別である可能性が高いと判断された細胞の波形データを用いることができる。血球計数装置を用いる例で説明すると、まず、血液検体をフローサイトメータで測定し、検体に含まれる個々の細胞の前方散乱光、側方散乱光、蛍光の波形データを蓄積しておく。側方散乱光強度(側方散乱光信号のパルスの高さ)と蛍光強度(蛍光信号のパルス高さ)に基づいて、細胞を好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球、幼若顆粒球、異常細胞の集団に分類する。分類された細胞種別に対応するラベル値をその細胞の波形データに付与することで、訓練データが得られる。例えば、好中球の集団に含まれる細胞の側方散乱光強度および側方蛍光強度の最頻値、平均値または中央値を求め、それらの値に基づいて代表的な細胞を特定し、それらの細胞の波形データに好中球に対応するラベル値「1」を付与することで訓練データを得ることができる。訓練データの生成方法はこれに限らず、例えばセルソータによって特定の細胞だけを回収しておき、その細胞をフローサイトメータによって測定し、得られた波形データに細胞のラベル値を付与することによって訓練データを得てもよい。
【0046】
アナログ信号70a、70b、70cは、フローサイトメータによって好中球が測定されたときの前方散乱光信号、側方散乱光信号、側方蛍光信号をそれぞれ示す。これらのアナログ信号が、上述したようにA/D変換されると、前方散乱光信号の波形データ72a、側方散乱光信号の波形データ72b、側方蛍光信号の波形データ72cが得られる。波形データ72a、72b、72cそれぞれの内部で隣り合うセルは、サンプリングレートに対応する間隔、例えば10ナノ秒間隔での信号レベルを格納している。波形データ72a、72b、72cは、データの元となった細胞の種別を表すラベル値77と組み合わされて、各細胞に対応する3つの波形データ、言い換えれば3つの信号強度(前方散乱光の信号強度、側方散乱光の信号強度、及び側方蛍光の信号強度)のデータがセットとなるように訓練データ75として深層学習アルゴリズム50に入力される。
図3の例では訓練データの元となった細胞が好中球であるため、波形データ72a、72b、72cに好中球であることを示すラベル値77として「1」が付与され、訓練データ75が生成される。
図4にラベル値77の例を示す。訓練データ75は、細胞種別毎に生成されるため、ラベル値は、細胞種別に応じて異なるラベル値77が付与される。
【0047】
<深層学習の概要>
図3を例として、ニューラルネットワークの訓練の概要を説明する。ニューラルネットワーク50は、畳み込み層を有する畳み込みニューラルネットワークであることが好ましい。ニューラルネットワーク50における入力層50aのノード数は、入力される訓練データ75の波形データに含まれる配列の要素数に対応している。配列の要素数は、1つの細胞に対応する前方散乱光、側方散乱光、側方蛍光の波形データ72a、72b、72cの要素数の総和に等しい。
図3の例では、波形データ72a、72b、72cのそれぞれが1024個の要素を含んでいるため、入力層50aのノード数は、1024×3=3072個となる。波形データ72a、72b、72cは、ニューラルネットワーク50の入力層50aに入力される。訓練データ75の各波形データのラベル値77は、ニューラルネットワークの出力層50bに入力され、ニューラルネットワーク50を訓練する。
図3の符号50cは、中間層を示す。
【0048】
<波形データの分析方法>
図5に分析対象である細胞の波形データを分析する方法の例を示す。波形データの分析方法では、分析対象の細胞からフローサイトメータによって取得した前方散乱光のアナログ信号80a、側方散乱光のアナログ信号80b、及び側方蛍光のアナログ信号80cから、上述の方法によって得られる波形データからなる分析データ85が生成される。
【0049】
分析データ85と訓練データ75は、少なくとも取得条件を同じにすることが好ましい。取得条件とは、検体に含まれる細胞をフローサイトメータによって測定するための条件、例えば測定試料の調製条件、測定試料をフローセルに流すときの流速、フローセルに照射される光の強度、散乱光及び蛍光を受光する受光部の増幅率などを含む。取得条件は、さらに、アナログ信号をA/D変換するときのサンプリングレートも含む。
【0050】
分析対象の細胞がフローセルを流れると、前方散乱光のアナログ信号80a、側方散乱光のアナログ信号80b、及び側方蛍光のアナログ信号80cが得られる。これらのアナログ信号80a、80b、80cが上述したようにA/D変換されると、細胞毎に、信号強度を取得した時点が同期され、前方散乱光信号の波形データ82a、側方散乱光信号の波形データ82b、側方蛍光信号の波形データ82cとなる。波形データ82a、82b、82cは、各細胞の3つの信号強度(前方散乱光の信号強度、側方散乱光の信号強度、及び側方蛍光の信号強度)のデータがセットとなるように組み合わされて、分析データ85として深層学習アルゴリズム60に入力される。
【0051】
分析データ85を訓練済みの深層学習アルゴリズム60を構成するニューラルネットワーク60の入力層60aに入力すると、出力層60bから、分析データ85に対応する細胞の種別に関する分類情報として分析結果83が出力される。
図5の符号60cは、中間層を示す。細胞種別に関する分類情報とは、例えば、細胞が複数の細胞種別の各々に属する確率である。さらに、この確率の中で、値が最も高い分類に、分析データ85を取得した分析対象の細胞が属すると判断し、その細胞種別を表す識別子であるラベル値82等が分析結果83に含まれてもよい。分析結果83は、ラベル値そのものの他、ラベル値を細胞種別を示す情報(例えば文字列)に置き換えたデータであってもよい。
図5では分析データ85に基づいて、深層学習アルゴリズム60が分析データ85を取得した分析対象の細胞が属する確率が最も高かったラベル値「1」を出力し、さらに、このラベル値に対応する「好中球」という文字データが分析結果83として出力される例を示している。ラベル値の出力は、深層学習アルゴリズム60が行ってもよいが、他のコンピュータプログラムが、深層学習アルゴリズム60が算出した確率に基づいて、最も好ましいラベル値を出力してもよい。
【0052】
[2.細胞分析装置および細胞測定装置の構成]
(構成例1)
図6および
図7を参照して、細胞分析装置および細胞測定装置の構成を説明する。
図6は、血液中の血球を測定する細胞測定装置4000を細胞分析装置1に接続した例を示す。
図7は、尿中有形成分を測定する細胞測定装置4000’を細胞分析装置1に接続した例を示す。本実施形態の波形データは、第1の細胞測定装置4000又は第2の細胞測定装置4000’において取得され得る。
図6に示す細胞測定装置4000は、測定ユニット400と、測定ユニット400における試料の測定条件の設定や測定を制御したり、測定結果を分析するための処理ユニット300を備える。
図7に示す細胞測定装置4000’は、測定ユニット500と、測定ユニット500における試料の測定条件の設定や測定を制御したり、測定結果を分析するための処理ユニット300を備える。測定ユニット400、500と処理ユニット300は相互に通信可能に有線、又は無線で接続されうる。測定ユニット400、500の構成例は以下の例示に限定されて解釈されるものではない。
【0053】
細胞分析装置1は、細胞測定装置4000及び4000’の少なくともいずれかで取得された波形データを人工知能アルゴリズム(例えば、深層学習アルゴリズム60)により分析する装置である。細胞分析装置1は、例えば、オンプレミス型のサーバである。
【0054】
細胞分析装置1、細胞測定装置4000、細胞測定装置4000’は、
図6、
図7に示すように、例えば、同一の、病院や検査施設などの施設(以下、「検査関連施設2」という。)内に配置される。細胞分析装置1は、例えば、細胞測定装置4000、細胞測定装置4000’が設置される検査関連施設2内の通信ネットワークであるイントラネットワーク3を介して、細胞測定装置4000及び細胞測定装置4000’と接続される。イントラネットワーク3は、例えば、TCP/IPプロトコルに準拠した通信ネットワークである。イントラネットワーク3は、例えば、10Gbps以上の転送速度を有する通信ネットワークである。細胞分析装置1、細胞測定装置4000、及び細胞測定装置4000’は、有線及び無線の少なくともいずれかの手段でイントラネットワーク3に接続可能である。細胞分析装置1は、イントラネットワーク3を介して、細胞測定装置4000の測定ユニット400及び処理ユニット300のいずれか一方と接続されてもよいし、細胞測定装置4000の測定ユニット400及び処理ユニット300の双方と接続されてもよい。同様に、細胞分析装置1は、イントラネットワーク3を介して、細胞測定装置4000’の測定ユニット500及び処理ユニット300のいずれか一方と接続されてもよいし、細胞測定装置4000’の測定ユニット500及び処理ユニット300の双方と接続されてもよい。細胞分析装置1は、検査関連施設2内に配置された複数の細胞測定装置4000、複数の細胞測定装置4000‘と、イントラネットワーク3を介して接続されてもよい。
【0055】
細胞分析装置1と、細胞測定装置4000及び細胞測定装置4000’とは、同一のネットワークドメインに配置されてもよいし、異なるネットワークドメインに配置されてもよい。
【0056】
細胞分析装置1は、測定ユニット400、測定ユニット500、又は処理ユニット300からイントラネットワーク3を介して受信したデジタル信号に含まれる波形データを深層学習アルゴリズム60にしたがって分析し、波形データに対応する細胞の種別を判定する。測定ユニット400、測定ユニット500、又は処理ユニット300から送信されるデジタル信号は、測定ユニット400、測定ユニット500、又は処理ユニット300の装置IDが対応付けられていてもよい。
【0057】
細胞分析装置1は、訓練データに基づく学習により、波形データを分析する深層学習アルゴリズムを更新してもよい。細胞分析装置1は、測定ユニット400、測定ユニット500、又は処理ユニット300から取得した波形データに基づき、訓練データを生成する。細胞分析装置1は、波形データをイントラネットワーク3経由で取得してもよいし、記録媒体を介して取得してもよい。記録媒体は、例えば、DVD-ROMやUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の、コンピュータ読み取り可能であって非一時的な有形の記録媒体である。
【0058】
細胞分析装置1は、検査関連施設2に複数配置されてもよい。それら複数の細胞分析装置1は、波形データの分析を行う細胞分析装置1と、訓練データに基づく学習を行う細胞分析装置1とに役割分担されていてもよい。
【0059】
(構成例2)
図8は、細胞分析装置1および細胞測定装置4000、4000’の他の構成例を示す。細胞分析装置1は、例えば、細胞測定装置4000、4000’が設置される検査関連施設2とは異なる場所に設置される。細胞分析装置1は、例えば、細胞分析装置1の管理及び運営を行うデータセンタ5に設置される。細胞分析装置1は、例えば、クラウド型のサーバで構成される。例えば、データセンタ5内に設置された1又は複数のサーバが、細胞分析装置1として構成される。細胞分析装置1と、検査関連施設2に設置された細胞測定装置4000、4000’は、例えば、インターネット6を介して通信可能である。細胞分析装置1は、測定ユニット400、測定ユニット500、又は処理ユニット300からインターネット6を介して送信された波形データを分析し、波形データに対応する細胞の種別を判定する。細胞分析装置1は、訓練データに基づく学習により、波形データを分析するアルゴリズムを更新してもよい。細胞分析装置1は、測定ユニット400、測定ユニット500、又は処理ユニット300から取得した波形データに基づき、訓練データを生成する。細胞分析装置1は、波形データをインターネット6を介して取得してもよいし、記録媒体を介して取得してもよい。記録媒体は、例えば、DVD-ROMやUSBメモリ等の、コンピュータ読み取り可能であって非一時的な有形の記録媒体である。
【0060】
細胞分析装置1は、データセンタ5に複数配置されてもよい。それら複数の細胞分析装置1は、波形データの分析を行う細胞分析装置1と、訓練データに基づく学習を行う細胞分析装置1とに役割分担されていてもよい。
【0061】
(構成例3)
図9は、細胞分析装置1および細胞測定装置4000、4000’の他の構成例を示す。
図9に示す検査関連施設2は、
図6又は
図7に示す検査関連施設2と同様の構成である。
図9に示す検査関連施設2では、細胞分析装置1と細胞測定装置4000、4000’とは、例えば、イントラネットワーク3又はUSB等のインタフェースを介して接続されている。
図9に示す例において、検査関連施設2に設置された細胞分析装置1は、例えば、細胞測定装置4000、4000’から取得した波形データを分析し、波形データに対応する細胞が属する細胞種別を判定する。一方、データセンタ5に設置された細胞分析装置1は、例えば、訓練データに基づく学習により、波形データを分析するアルゴリズムを更新する。つまり、
図9に示す例では、検査関連施設2の細胞分析装置1と、データセンタ5の細胞分析装置1とは、役割を分担している。
【0062】
図6~
図9に示した構成例のとおり、細胞分析装置1は、同一の検査関連施設2内の複数の細胞測定装置4000、4000’から波形データを取得し得る。また、細胞分析装置1は、異なる検査関連施設2の各々に配置された複数の細胞測定装置4000、4000’から波形データを取得し得る。波形データは、検査関連施設2の各々で検査された生体試料中の個々の細胞毎に取得される。従って、波形データを適切に管理しないと、例えば患者間・生体試料間・検査関連施設2間でのデータの取り違えが生じ得る。そのため、測定ユニット400又は処理ユニット300は、波形データと識別情報とを対応付けて、細胞分析装置1に送信する。細胞分析装置1は、分析結果に識別情報を対応付ける。
【0063】
識別情報は、例えば、(1)波形データに対応する生体試料の識別情報、(2)波形データに対応する細胞の識別情報、(3)波形データに対応する患者の識別情報、(4)波形データに対応する検査の識別情報、(5)波形データが測定された細胞測定装置の識別情報、(6)波形データが測定された検査関連施設2の識別情報、が挙げられる。なお、(1)波形データに対応する生体試料の識別情報は、生体試料に対する測定オーダーが登録された時刻に関する情報、細胞測定装置が生体試料を識別した時刻に関する情報、細胞測定装置が生体試料の測定を開始した時刻に関する情報、生体試料が緊急検体か通常検体かを識別するための情報、生体試料が再計測か新規計測かを識別するための情報などの、並列処理の優先順位を決定するための情報を含み得る。細胞分析装置1は、例えば、LIS(Laboratory Information System)又は処理ユニット300又は測定ユニット400から測定オーダーを受領する際に、LIS又は処理ユニット300又は測定ユニット400から、上記識別情報(1)~(6)の少なくとも一つ又はそれらの組み合わせを取得できる。例えば、例示された(1)~(6)の少なくとも一つが、波形データと対応付けられて細胞分析装置1に送信される。例示された(1)~(6)の複数の組み合わせが、波形データと対応付けられて細胞分析装置1に送信されてもよい。
【0064】
以上のように、本実施形態によれば、複数の細胞測定装置4000、4000’にて測定されたデータの深層学習アルゴリズム60による分析は、細胞測定装置4000、4000’の各々で行われるのではなく、細胞分析装置1にてまとめて行われる。細胞分析装置1は、後述するように、例えばCPUからなるプロセッサ11(ホストプロセッサともいう)と、例えばGPUからなる並列処理プロセッサ12を備えたハイスペックの情報処理能力を備えた装置(コンピュータ)であるが、そのような高い情報処理能力を細胞測定装置4000、4000’に要求することなく、深層学習アルゴリズム60による高精度の細胞分類を行うことができる。さらに、細胞分析装置1において生成される分析結果には識別情報が対応付けられるため、分析結果の取り違えが生じることが回避される。したがって、本実施形態によれば、細胞測定装置4000、4000’側の各々において分析用コンピュータ及び分析用プログラムを構築して分析する場合と比べ、データの管理性を担保しつつ、システム構築及び運用に係る手間及びコストを低減することができる。例えば、分析用プログラムの更新は細胞分析装置1で行えば済むため、更新に係る手間及びコストを低減することができる。
【0065】
<第1の細胞測定装置と測定試料の調製>
(測定ユニットの構成)
測定ユニット400が血液試料の細胞を検出するためのフローサイトメータであるFCM検出部を備える血液分析装置、より具体的には血球計数装置である場合の構成例を説明する。
【0066】
図10は、測定ユニット400のブロック図の例を示す。
図10に示されるように、測定ユニット400は、血球を検出するFCM検出部410、FCM検出部410の出力に対するアナログ処理部420、測定ユニット制御部480、試料調製部440、及び装置機構部430を備えている。
【0067】
図11は、検体吸引部450と試料調製部440を説明するための模式図である。検体吸引部450は、採血管Tから血液検体(全血)を吸引するためのノズル451と、ノズルに陰圧/陽圧を付与するためのポンプ452を備える。ノズル451は、装置機構部430によって上下移動されることで採血管Tに挿入される。ノズル451が採血管Tに挿入された状態でポンプ452が陰圧を付与すると、ノズル451を介して血液検体が吸引される。なお、装置機構部430は、採血管Tからの血液の吸引前に採血管Tを転倒攪拌するハンド部材を備えてもよい。
【0068】
試料調製部440は、5つの反応チャンバ440a~440eを備える。反応チャンバ440a~440eは、それぞれ、DIFF、RET、WPC、PLT-F、WNRの測定チャネルにおいて用いられる。各反応チャンバには、各測定チャネルに対応する試薬である溶血剤を収容した溶血剤容器と染色液を収容した染色液容器が流路を介して接続されている。一つの反応チャンバとそれに接続された試薬(溶血剤及び染色液)によって、測定チャネルが構成されている。例えば、DIFF測定チャネルは、DIFF測定用試薬であるDIFF溶血剤およびDIFF染色液と、DIFF反応チャンバ440aによって構成されている。他の測定チャネルも同様に構成されている。なお、ここでは一つの測定チャネルが溶血剤と染色液を一つずつ備えた構成を例示しているが、一つの測定チャネルが必ずしも溶血剤と染色液の両方を備えなくてもよく、複数の測定チャネルによって一つの試薬が共用されてもよい。
【0069】
血液検体を吸引したノズル451は、装置機構部430による水平・上下移動によって、反応チャンバ440a~440eのうち、オーダーに対応する測定チャネルに対応する反応チャンバに上方からアクセスし、吸引した血液検体を吐出する。試料調製部440は、血液検体が吐出された反応チャンバに、対応する溶血剤と染色液を供給し、反応チャンバ内で血液検体と溶血剤と染色液を混合することで測定試料を調製する。調製された測定試料は、流路を介して反応チャンバからFCM検出部410に供給され、フローサイトメトリー法による細胞の測定が行われる。
【0070】
図12は、FCM検出部410の光学系の構成例を示している。
図12に示すように、フローサイトメータによる測定では、測定試料に含まれる細胞がフローサイトメータ内に備えられたフローセル(シースフローセル)4113を通過する際に、光源4111がフローセル4113に光を照射し、この光によってフローセル4113内の細胞から発せられる散乱光及び蛍光を検出する。
【0071】
図12において、光源4111であるレーザダイオードから出射された光は、照射レンズ系4112を介してフローセル4113内を通過する細胞に照射される。
【0072】
本実施形態において、フローサイトメータの光源4111は特に限定されず、蛍光色素の励起に好適な波長の光源4111が選択される。そのような光源4111としては、例えば赤色半導体レーザ光源及び/又は青色半導体レーザ光源を含む半導体レーザ光源、アルゴンレーザ光源、ヘリウム-ネオンレーザ等の気体レーザ光源、水銀アークランプなどが使用される。特に半導体レーザ光源は、気体レーザ光源に比べて非常に安価であるので好適である。
【0073】
図12に示されるように、フローセル4113を通過する粒子から発せられる前方散乱光は、集光レンズ4114とピンホール部4115を介して前方散乱光受光素子4116によって受光される。前方散乱光受光素子4116はフォトダイオードである。側方散乱光は、集光レンズ4117、ダイクロイックミラー4118、バンドパスフィルタ4119、及びピンホール部4120を介して側方散乱光受光素子4121によって受光される。側方散乱光受光素子4121は、フォトダイオードである。側方蛍光は、集光レンズ4117及びダイクロイックミラー4118を介して側方蛍光受光素子4122によって受光される。側方蛍光受光素子4122は、アバランシェフォトダイオードである。なお、前方散乱光受光素子4116、側方散乱光受光素子4121、側方蛍光受光素子4122として光電子増倍管を用いてもよい。
【0074】
各受光素子4116、4121及び4122から出力された受光信号は、それぞれ、アンプ4151、4152及び4153を介してアナログ処理部420に入力される。
【0075】
図10に戻って、アナログ処理部420は、FCM検出部410から入力されるアナログ信号としての電気信号に対してノイズ除去を含む処理を行い、処理した結果を電気信号として測定ユニット制御部480に対して出力する。
【0076】
図10に示されるように、測定ユニット制御部480は、A/D変換部482と、デジタル値演算部483と、処理ユニット300と接続するインタフェース部489とを備えている。さらに、装置機構部430との間に介在するインタフェース部488とを備えている。
【0077】
デジタル値演算部483は、インタフェース部484及びバス485を介してインタフェース部489と接続されている。また、インタフェース部489は、バス485及びインタフェース部488を介してFCM検出部410、装置機構部430、試料調製部440及び検体吸引部450と接続されている。測定ユニット400は、インタフェース部489を介して、処理ユニット300、細胞分析装置1と接続される。インタフェース部489は、例えば、USBインタフェースである。測定ユニット400は、インタフェース部490を備えてもよい。インタフェース部490は、例えば、10Gbps以上の転送速度を有するインタフェースである。測定ユニット400は、インタフェース部490を介して、イントラネットワーク3及びインターネット6と接続できる。測定ユニット400は、イントラネットワーク3又はインターネット6を介して、細胞分析装置1と接続できる。
【0078】
A/D変換部482は、アナログ処理部420から出力されたアナログ信号である電気信号をデジタル信号に変換し、変換後のデジタル信号をデジタル値演算部483に出力する。A/D変換部482は、所定のサンプリングレート(例えば、10ナノ秒間隔で1024ポイントのサンプリング、80ナノ秒間隔で128ポイントのサンプリング、又は160ナノ秒間隔で64ポイントのサンプリング等)で、電気信号をサンプリングし、デジタル信号を生成する。
デジタル値演算部483は、A/D変換部482から出力されたデジタル信号に対して所定の演算処理を行う。所定の演算処理として、例えば、前方散乱光が所定の閾値に達してから、前方散乱光の信号強度、側方散乱光の信号強度、側方蛍光の信号強度の取得を開始し、所定時間後に取得を終了するまでの間、1つの訓練対象の細胞について一定の間隔で複数の時点で各波形データを取得する処理、波形データのピーク値を抽出する処理などが含まれるが、これらに限られない。A/D変換部482にて得られるデジタル信号から波形データを取得する演算処理は、A/D変換部482が実行してもよい。
【0079】
図13は、処理ユニット300の構成を示す図である。処理ユニット300は、プロセッサ3001と、バス3003と、記憶部3004と、インタフェース部3006a~3006dと、表示部3015と、操作部3016とを備える。処理ユニット300は、ハードウェアとしては一般的なパーソナルコンピュータによって構成されており、記憶部3004に格納された専用のプログラムを実行することで、細胞分析装置4000の処理ユニットとして機能する。
【0080】
プロセッサ3001はCPUであり、記憶部3004に記憶されたプログラムを実行することが可能である。
【0081】
記憶部3004は、ハードディスク装置を備える。記憶部3004には、少なくとも、細胞分析装置1から送信される細胞の分類情報を処理して、検体の検査結果を生成するためのプログラム60が格納されている。なお、検体の検査結果とは、後述するように、測定ユニット400によって得られた個々の細胞の分類情報82に基づいて、検体に含まれる血球を計数した結果を意味する。
【0082】
表示部3015は、コンピュータスクリーンを備える。表示部3015はインタフェース部3006aとバス3003を介してプロセッサ3001に接続されている。表示部3015は、プロセッサ3001から入力される画像信号を受けて、細胞分析装置1から受領した測定結果(細胞の分類情報)と、プロセッサ3001が測定結果を分析して得られる検査結果を表示することができる。
【0083】
操作部3016は、キーボード、マウスまたはタッチパネルを含むポインティングデバイスを備える。操作部3016は、インタフェース部3006bとバス3003を介してプロセッサ3001に接続されている。医師や検査技師等のユーザは、操作部3016を操作することで、細胞分析装置4000に測定オーダーを入力し、測定オーダーにしたがって測定指示を入力することができる。操作部3016は、ユーザから検査結果を表示する指示を受け付けることもできる。ユーザは、操作部3016を操作し、検査結果に関する様々な情報、例えば、グラフ、チャート、検体に付与されたフラグ情報を閲覧することができる。
【0084】
プロセッサ3001は、バス3003及びインタフェース部3006cを介して測定ユニット400と接続されている。また、プロセッサ3001は、バス3003及びインタフェース部3006dを介してイントラネットワーク3またはインターネット6に接続され、イントラネットワーク3またはインターネット6を介して細胞分析装置1に接続されている。
【0085】
(細胞分析装置の構成)
図14は、細胞分析装置1のブロック図を示す。細胞分析装置1は処理部10を備える。処理部10は、例えば、プロセッサ11、並列処理プロセッサ12、記憶部13、RAM14、インタフェース部16、インタフェース部17を備える。プロセッサ11、並列処理プロセッサ12、記憶部13、RAM14、インタフェース部16、インタフェース部17は、バス15を介して互いに電気的に接続される。バス15は、例えば、数百MB/s以上のデータ転送速度を有する伝送路である。バス15は、1GB/s以上のデータ転送速度を有する伝送路であってもよい。バス15は、例えば、PCI-ExpressやPCI-X規格に基づいてデータ転送を行う。
【0086】
細胞分析装置1は、インタフェース部16を介して、測定ユニット400及び処理ユニット300と接続できる。インタフェース部16は、
図7に例示されたインタフェース部4であってもよい。細胞分析装置1は、インタフェース部17を介して、イントラネットワーク3又はインターネット6と接続できる。細胞分析装置1は、イントラネットワーク3又はインターネット6を介して、測定ユニット400又は処理ユニット300に接続され、測定ユニット400又は処理ユニット300から生体試料中の個々の細胞に関する波形データを取得する。細胞分析装置1は、例えば、生体試料中の個々の細胞について、複数の波形データ(例えば、FSC、SSC、SFL)を取得する。
【0087】
細胞分析装置1は、本実施形態に係るプログラム及び訓練前のニューラルネットワークで構成される深層学習アルゴリズム50を、例えば実行形式で記憶部13に予め記録している。実行形式は、例えばプログラミング言語からコンパイラにより変換されて生成される形式である。細胞分析装置1は、記憶部13に記録したプログラムを使用して、訓練前のニューラルネットワーク50の訓練処理を行う。
【0088】
また、細胞分析装置1は、波形データを分析するために、本実施形態に係るプログラム及び訓練済みのニューラルネットワークで構成される深層学習アルゴリズム60を、例えば実行形式で記憶部13に予め記録している。実行形式は、例えばプログラミング言語からコンパイラにより変換されて生成される形式である。プロセッサ11及び並列処理プロセッサ12は、記憶部13に記録したプログラム及び深層学習アルゴリズム60を使用して処理を行う。つまり、言い換えれば、細胞分析装置1のプロセッサ11は、深層学習アルゴリズム60に基づいて細胞のデータを分析するようにプログラムされている。
【0089】
プロセッサ11は、並列処理プロセッサ12を用いて、深層学習アルゴリズム60に従って波形データの分析を実行する。プロセッサ11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。並列処理プロセッサ12は、波形データの分析に関する処理の少なくとも一部である複数の演算処理を並列に実行する。並列処理プロセッサ12は、例えば、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit )である。並列処理プロセッサ12がFPGAである場合、並列処理プロセッサ12は、例えば、訓練済みの深層学習アルゴリズム60に関する演算処理に対応するプログラムされていてもよい。並列処理プロセッサ12がASICである場合、並列処理プロセッサ12は、例えば、訓練済みの深層学習アルゴリズム60に関する演算処理を実行するための回路が予め組み込まれていてもよいし、そのような組み込み回路に加えてプログラマブルなモジュールが内蔵されていてもよい。並列処理プロセッサ12は、例えば、NVIDIA社製Jetsonなどを用いて実装されてもよい。
【0090】
また、プロセッサ11は、例えば、細胞分析装置1の制御に関する計算処理を実行する。例えば、プロセッサ11は、例えば、記憶部13からのプログラムデータの読み出し、RAM14へのプログラムの展開、RAM14との間のデータの送受信に関する処理を実行する。プロセッサ11により実行される上述の各処理は、例えば、所定の順番で処理を実行することが求められる。例えば、所定の制御に要する処理がA、B及びCとすると、B、A、Cの順で処理を実行することが求められることがある。プロセッサ11はこのような順序に依存する連続的な処理を実行することが多いため、演算ユニット(「プロセッサコア」、「コア」等と呼ばれることがある)の数を増したとしても、必ずしも処理速度が高まるものではない。
【0091】
一方、並列処理プロセッサ12は、例えば、多量の要素を含む行列データの演算のように、定型的で多量な計算処理を実行する。本実施形態では、並列処理プロセッサ12は、深層学習アルゴリズム60に従って波形データを分析する処理の少なくとも一部を並列化した並列処理を実行する。深層学習アルゴリズム60には、例えば、多量の行列演算が含まれる。深層学習アルゴリズム60には、例えば、少なくとも100の行列演算が含まれることがあり、また、少なくとも1000の行列演算が含まれることもある。並列処理プロセッサ12は、複数の演算ユニットを有し、これらの演算ユニットの各々が同時に行列演算を実行可能である。つまり、並列処理プロセッサ12は、並列処理として、複数の演算ユニットの各々による行列演算を並列に実行することができる。例えば、深層学習アルゴリズム60に含まれる行列演算は、互いに順序依存が無い複数の演算処理に分割することができる。このように分割された演算処理は、複数の演算ユニットの各々で並列に実行可能となる。これらの演算ユニットは、「プロセッサコア」、「コア」等と呼ばれることがある。
【0092】
このような並列処理を実行することにより、細胞分析装置1全体としての演算処理を高速化することが可能となる。深層学習アルゴリズム60に含まれる行列演算のような処理は、例えば、「単一命令複数データ処理」(SIMD:Single Instruction Multiple Data)と呼ばれることがある。並列処理プロセッサ12は、例えばこのようなSIMD演算に適している。このような並列処理プロセッサ12は、ベクトルプロセッサと呼ばれることがある。
【0093】
上述のように、プロセッサ11は、多様かつ複雑な処理を実行することに適している。一方、並列処理プロセッサ12は、定型化された多量の処理を並列に実行することに適しており、定型化された多量の処理を並列に実行することにより、計算処理に要するTAT(Turnaround Time)が短縮される。
【0094】
なお、並列処理プロセッサ12が実行する並列処理の対象は、行列演算に限られない。例えば、並列処理プロセッサ12が深層学習アルゴリズム50に従って学習処理を実行するときは、学習処理に関する微分演算等が並列処理の対象となり得る。
【0095】
プロセッサ11の演算ユニットの数は、例えば、デュアルコア(コア数:2)、クアッドコア(コア数:4)、オクタコア(コア数:8)である。一方、並列処理プロセッサ12の演算ユニットの数(コア数)は、例えば、少なくとも10個有し(コア数:10)、10の行列演算を並列に実行し得る。並列処理プロセッサ12は、例えば、演算ユニットを数十個有するものもある。また、並列処理プロセッサ12は、演算ユニットを、例えば、少なくとも100個有し(コア数:100)、100の行列演算を並列に実行し得るものもある。並列処理プロセッサ12は、例えば、演算ユニットを数百個有するものもある。また、並列処理プロセッサ12は、演算ユニットを、例えば、少なくとも1000個有し(コア数:1000)、1000の行列演算を並列に実行し得るものもある。並列処理プロセッサ12は、例えば、演算ユニットを数千個有するものもある。
【0096】
図15は、並列処理プロセッサ12の構成例を示す。並列処理プロセッサ12は、複数の演算ユニット121、及びRAM122を含む。演算ユニット121の各々は、行列データの演算処理を並列に実行する。RAM122は、演算ユニット121が実行する演算処理に関するデータを記憶する。RAM122は、少なくとも1ギガバイトの容量を有するメモリである。RAM122は、2ギガバイト、4ギガバイト、6ギガバイト、8ギガバイト、又は10ギガバイト以上の容量を有するメモリであってもよい。演算ユニット121は、RAM122からデータを取得し、演算処理を実行する。演算ユニット121は、「プロセッサコア」、「コア」等と呼ばれることがある。
【0097】
図16~
図18は、細胞分析装置1への並列処理プロセッサ12の実装例を示す。
図16及び
図17は、プロセッサ11と並列処理プロセッサ12とを別体として設ける実装例を示す。
図16に示すように、並列処理プロセッサ12は、例えば、基板190に実装される。並列処理プロセッサ12は、例えば、グラフィックボード19に実装され、グラフィックボード19がコネクタ191を介して基板190に接続される。プロセッサ11は、バス15を介して並列処理プロセッサ12と接続される。
図17に示すように、並列処理プロセッサ12は、例えば、基板190に直に実装され、バス15を介してプロセッサ11に接続されてもよい。
図18は、プロセッサ11と並列処理プロセッサ12とを一体として設ける実装例を示す。
図18に示すように、並列処理プロセッサ12は、例えば、基板190に実装されたプロセッサ11に内蔵されてもよい。
【0098】
図19は、細胞分析装置1への並列処理プロセッサ12の他の実装例を示すブロック図である。
図19は、細胞分析装置1に接続される外付け装置に並列処理プロセッサ12を実装する例を示す。並列処理プロセッサ12は、例えば、USB(Universal Serial Bus)デバイスに実装され、このUSBデバイスがインタフェース部18を介してバス15に接続される。USBデバイスは、例えば、USBドングルのような小型デバイスでもよい。インタフェース部18は、例えば、数百Mbpsの転送速度を有するUSBインタフェースであり、より好ましくは、数Gbps~数10Gbps以上の転送速度を有するUSBインタフェースである。
【0099】
並列処理プロセッサ12が実装された複数のUSBデバイスをインタフェース部18に接続してもよい。一つのUSBデバイス上の並列処理プロセッサ12は、演算ユニット121の数がGPU等に比べて少ないことがあるため、細胞分析装置1に接続するUSBデバイスを複数に増設することにより、コア数のスケールアップが可能となる。
【0100】
図19に示すように、例えば、深層学習アルゴリズム60が組み込まれた並列処理プロセッサ12が実装されたUSBドングル等の小型デバイスがインタフェース部18に接続される場合、この小型デバイスを置き換えることにより、深層学習アルゴリズム60を置き換えてもよい。また、この小型デバイスを置き換えることにより、測定ユニット制御部480は、記憶部13に記録したプログラム及び深層学習アルゴリズム60を更新してもよい。
【0101】
図20は、プロセッサ11が、並列処理プロセッサ12を用いて行列データの演算処理を実行する動作の概要を示す。プロセッサ11は並列処理プロセッサ12に命令し、波形データを深層学習アルゴリズム60で分析する場合に要する少なくとも一部の演算処理を並列処理プロセッサ12を用いて実行させることができる。プロセッサ11の解析ソフトウェア111は、並列処理プロセッサ12に対して、深層学習アルゴリズム60に基づく波形データ分析に関する演算処理の実行を命令する。FCM検出部410で検出された信号に対応する波形データの全部又は少なくとも一部は、RAM14に記憶される。RAM14に記憶されたデータは、並列処理プロセッサ12のRAM122に転送される。RAM14に記憶されたデータは、例えば、DMA(Direct Memory Access)方式によりRAM122に転送される。並列処理プロセッサ12の複数の演算ユニット121の各々は、RAM122に記憶されたデータに対する演算処理を並列に実行する。複数の演算ユニット121の各々は、必要なデータをRAM122から取得して演算処理を実行する。演算結果に対応するデータは、並列処理プロセッサ12のRAM122に記憶される。演算結果に対応するデータは、RAM122からRAM14に、例えばDMA方式で、転送される。
【0102】
図21は、並列処理プロセッサ12が実行する行列演算の概要を示す。波形データを深層学習アルゴリズム60に従って分析するにあたり、行列の積(行列演算)が実行される。並列処理プロセッサ12は、例えば、行列演算の各々を並列に実行する。
図21(a)は、行列の積の計算式を示す。
図21(a)に示す計算式では、n行n列の行列aとn行n列の行列bとの積により、行列cを求める。
図21に例示されるように、計算式は、多階層のループ構文で記述される。
図21の(b)は、並列処理プロセッサ4833で並列に実行される演算処理の例を示す。
図21(a)に例示された計算式は、例えば、1階層目のループ用変数iと、2階層目のループ用変数jとの組合せ数であるn×n個の演算処理に分割することができる。このように分割された演算処理の各々は、互いに依存しない演算処理であるため、並列に実行し得る。
【0103】
図22は、
図21(b)に例示された複数の演算処理が、並列処理プロセッサ12で実行されることを示す概念図である。
図22に示すように、複数の演算処理の各々は、並列処理プロセッサ12が備える複数の演算ユニット121のいずれかに割り当てられる。演算ユニット121の各々は、割り当てられた演算処理を、互いに並列に実行する。つまり、演算ユニット121の各々は、分割された演算処理を同時に実行する。
【0104】
図21及び
図22に例示された演算の結果、並列処理プロセッサ12による演算によって、例えば、波形データに対応する細胞が複数の細胞種別の各々に属する確率に関する情報が求められる。演算の結果に基づいて、解析ソフトウェア111を実行するプロセッサ11は、波形データに対応する細胞の細胞種に関する解析を行う。演算結果は、並列処理プロセッサ12のRAM122に記憶され、RAM122からRAM14に転送される。そして、プロセッサ11は、RAM14に記憶された演算結果に基づいて算出した測定結果を、バス15及びインタフェース部16を介して処理ユニット300又は測定ユニット400に送信する。
【0105】
細胞が複数の細胞種別の各々に属する確率の計算は、並列処理プロセッサ12とは別のプロセッサが行ってもよい。例えば、演算結果をRAM122からRAM14に転送し、プロセッサ11が、RAM14から読み出した演算結果に基づいて、各々の波形データに対応する細胞が複数の細胞種別の各々に属する確率に関する情報を計算してもよい。また、演算結果をRAM122から処理ユニット300に転送し、処理ユニット300に搭載されたプロセッサが、各々の波形データに対応する細胞が複数の細胞種別の各々に属する確率に関する情報を計算してもよい。
【0106】
本実施形態では、
図21及び
図22に示された処理は、例えば、深層学習アルゴリズム60における畳み込み層に関する演算処理(フィルタ処理とも呼ばれる)に適用される。
【0107】
図23に、畳み込み層に関する演算処理の概要を示す。
図23の(a)は、深層学習アルゴリズム60に入力される波形データとして、前方散乱光(FSC)の波形データの例を示す。波形データは、例えば、一次元の行列データ(すなわち、一次元の配列データ)である。本実施形態では、波形データの要素数はn(nは1以上の整数)とする。
図23の(a)には、複数のフィルタが示されている。フィルタは、深層学習アルゴリズム50の学習処理により生成される。複数のフィルタの各々は、波形データの特徴を表す一次元の行列データである。
図23の(a)に示すフィルタは、1行3列の行列データであるが、列数は3に限られない。深層学習アルゴリズム60に入力される波形データと、各々のフィルタとを行列演算することで、波形データに関する細胞種別に対応する特徴が計算される。
図23の(b)は、波形データとフィルタとの行列演算の概要を示す。
図23の(b)に示されるように、各フィルタを波形データの各要素に対して1つずらしながら行列演算が実行される。行列演算の計算は、下記の式1により実行される。
【数1】
式1において、xの添え字は、波形データの行番号及び列番号を示す変数である。hの添え字は、フィルタの行番号及び列番号を示す変数である。
図23に示す例の場合、波形データは一次元の行列データであり、フィルタは、1行3列の行列データであるから、L=1、M=3、p=0、q=0,1,2、i=0、j=0,1,…n-1である。
【0108】
並列処理プロセッサ12は、式1で表される行列演算を、複数の演算ユニット121の各々によって並列に実行する。並列処理プロセッサ12が実行した演算処理に基づき、各細胞の細胞種別に関する分類情報が生成される。生成された情報は、処理ユニット300又は測定ユニット400に送信される。
【0109】
細胞分析装置1は、波形データと識別情報とを対応付けて処理することができる。具体的には、細胞分析装置1は、波形データの分析結果(即ち、各細胞の細胞種別に関する分類情報)と識別情報とを対応付けて生成することができる。細胞分析装置1は、例えば、各細胞の細胞種別に関する分類情報と識別情報とを対応付けて、処理ユニット300又は測定ユニット400に送信する。上述された識別情報(1)~(6)の複数の組み合わせが、分類情報と対応付けられて処理ユニット300又は測定ユニット400に送信されてもよい。
【0110】
図10に戻り、処理ユニット300は、インタフェース部489、バス485、及びインタフェース部484を介してデジタル値演算部483と接続されており、デジタル値演算部483から出力された演算結果を受信することができる。インタフェース部489は、例えば、USBインタフェースである。また、処理ユニット300は、プロセッサ11及び並列処理プロセッサ12による演算結果を細胞分析装置1から取得し、当該演算結果に基づく測定結果を表示することができる。医師や検査技師等のユーザは、処理ユニット300を操作し、測定結果を分析することができる。ユーザは、処理ユニット300を操作し、測定結果に関する様々な情報(例えば、グラフ、チャート、測定結果に対する付加情報)を生成することで、測定結果を分析することもできる。ユーザは、例えば、生体試料毎のグラフ、チャート、又は、検査関連施設2毎のグラフ、チャートなどを閲覧することにより、上述の識別情報毎に測定結果を分析することが可能である。また、処理ユニット300は、試料容器を自動供給するサンプラ(図示省略)、試料の調製・測定のための流体系などからなる装置機構部430の制御、及びその他の制御を行ってもよい。
【0111】
<細胞分析装置の動作>
図24~
図26を参照し、細胞分析装置4000による検体の分析動作を説明する。
【0112】
処理ユニット300のプロセッサ3001は、操作部3016を介してユーザから測定オーダーを含む測定指示を受け付けると、測定ユニット400に対して測定コマンドを送信する(ステップS1)。プロセッサ3001がユーザから受け付ける測定オーダーには、測定対象の検体の検体ID、当該検体に対応する患者ID、測定が要求されている測定項目(測定チャネル)の情報が含まれる。プロセッサ3001は、検体ID、患者ID、測定チャネルの情報を測定コマンドに含めて、測定ユニット400に送信する。
【0113】
測定ユニット400のプロセッサ4831は、測定コマンドを受信すると、検体の測定を開始する。プロセッサ4831は、検体吸引部450に、採血管Tから検体を吸引させる(ステップS10)。次に、プロセッサ4831は、検体吸引部450に、吸引した検体を試料調製部440のいずれかの反応チャンバ440a~440eに分注させる。上述のとおり、ステップS1において処理ユニット300から送信される測定コマンドには、測定オーダーによって測定が要求されている測定チャネルの情報が含まれている。プロセッサ4831は、測定コマンドに含まれる測定チャネルの情報に基づいて、対応する測定チャネルの反応チャンバに検体を吐出するよう検体吸引部450を制御する。
【0114】
プロセッサ4831は、試料調製部440に測定試料を調製させる(ステップS11)。具体的には、試料調製部440は、プロセッサ4831からの命令を受けて、検体が吐出された反応チャンバに試薬(溶血剤および染色液)を供給し、検体と試薬を混合する。これにより反応チャンバ内で、赤血球が溶血剤により溶血され、かつ白血球や網状赤血球などの、測定チャネルがターゲットとする細胞が染色的によって染色された測定試料が調製される。
【0115】
プロセッサ4831は、FCM検出部410に、調製した測定試料を測定させる(ステップS12)。具体的に、プロセッサ4831は、装置機構部430を制御して、試料調製部440の反応チャンバ内にある測定試料をFCM検出部410へ送液する。反応チャンバとFCM検出部410は流路で接続されており、反応チャンバから送液された測定試料はフローセル4113内を流れて光源4111によってレーザ光が照射される(
図12参照)。測定試料に含まれる細胞がフローセル4113を通過すると、光が細胞に照射され、細胞から生じた前方散乱光、側方散乱光、側方蛍光が、それぞれ受光素子4116、4121、4122によって検出され、受光強度に応じたアナログ信号が出力される。アナログ信号は、アナログ処理部420を介してA/D変換部482に出力される。
【0116】
A/D変換部482は、アナログ信号を所定レートでサンプリングすることで、個々の細胞の波形データを含むデジタル信号を生成する(ステップS13)。波形データおよびデジタル信号の生成方法はすでに述べたとおりである。プロセッサ4831は、A/D変換部482によって生成されたデジタル信号を記憶部460に格納する。
【0117】
プロセッサ4831は、記憶部460に格納したデジタル信号と識別情報を細胞分析装置1に送信する(ステップS14)。プロセッサ4831は、記憶部460に格納されたデジタル信号に、そのデジタル信号に対応する識別情報を付加して、インタフェース部490、イントラネットワーク3またはインターネット9を介して細胞分析装置1に送信する。識別情報は、患者ID、検体ID、測定チャネルの情報に加えて、細胞測定装置4000にユニークな情報である装置IDを含む。
【0118】
細胞分析装置1のプロセッサ11は、測定ユニット400のプロセッサ4831からデジタル信号と識別情報を受信すると、受信したデジタル信号に対して、深層学習アルゴリズム60に基づき細胞分類を行う(ステップS21)。細胞分類の詳細については後述する。プロセッサ11は、S21の結果として得られた個々の細胞の分類情報82を含む分析結果83を、識別情報とともに処理ユニット300に送信する(ステップS22)。より詳しく言えば、プロセッサ11は、識別情報に含まれる装置IDによって特定される細胞測定装置4000の処理ユニット300に分析結果83を送信する。分析結果83とともに処理ユニット300に送信される識別情報は、患者ID、検体ID、測定チャネルの情報を含んでもよいが、装置IDは含まなくてもよい。分析結果83は、一つの検体に含まれる複数の細胞の分析結果83が、前述の識別情報に紐づけられて、処理ユニット300へ送られる。
【0119】
処理ユニット300のプロセッサ3001は、細胞分析装置1から分析結果83を受信すると、記憶部3004に格納されたプログラムを用いて分析結果83を分析し、検体の検査結果を生成する(ステップS3)。S3の処理では、例えば、個々の細胞の分析結果83に含まれるラベル値に基づいて、細胞種別ごとに細胞の数が計数される。例えば、1つの検体から好中球を示すラベル値「1」が付与された分類情報がN個あれば、検体の検査結果として好中球の数=Nとする計数結果が取得される。
【0120】
プロセッサ3001は、分析結果83に基づいて測定チャネルに応じた測定項目に関する計数結果を取得し、識別情報とともに記憶部3004に格納する。測定チャネルに応じた測定項目とは、測定オーダーによって計数結果が要求されている項目である。例えばDIFFチャネルに応じた測定項目とは白血球5分類、すなわち単球、好中球、リンパ球、好酸球、好塩基球の数である。RETチャネルに応じた測定項目とは網赤血球の数である。PLT-Fに応じた測定項目とは血小板の数である。WPCに応じた測定項目とは造血前駆細胞の数である。WNRに応じた測定項目とは白血球と有核赤血球の数である。計数結果は、上に列挙したような測定が要求されている項目(リポータブル項目ともいう)に限らず、同じ測定チャネルで測定可能な他の細胞の計数結果も含みうる。例えば測定チャネルがDIFFであれば、
図4に示すように、白血球5分類に加えて、幼若顆粒球(IG)および異常細胞も計数結果に含まれる。さらにプロセッサ3001は、得られた計数結果を分析することで検体の検査結果を生成し、記憶部3004に格納する。計数結果の分析とは、例えば計数結果が正常値範囲内であるか、異常細胞が検出されていないか、前回の検査結果と比べて乖離が許容範囲内か、などを判断することを含む。
【0121】
プロセッサ3001は、生成した検査結果を表示部3015に表示する(ステップS4)。検査結果は、検査結果の元となる分析結果83に紐づけられた識別情報とともに表示される。具体的には、検査結果は、患者ID、検体ID、測定チャネル、装置IDとともに表示される。検査結果とともに表示される識別情報は、上記のうち少なくとも一つであってもよい。
【0122】
次に
図25を参照して、ステップS21の細胞分類の処理について説明する。ステップS21の細胞分類の処理は、解析ソフトウェア111の動作に応じて、プロセッサ11が行う処理である。プロセッサ11は、ステップS13においてRAM14に取り込まれたデジタル信号を並列処理プロセッサ12に転送する(S101)。プロセッサ11は、
図20に示されるように、DMA転送によって、RAM14からRAM122にデジタル信号を転送する。プロセッサ11は、例えば、バスコントローラ181を制御し、RAM14からRAM122にデジタル信号をDMA転送させる。
【0123】
プロセッサ11は、並列処理プロセッサ12に、デジタル信号に含まれる波形データに対する並列処理の実行を指示する(S102)。プロセッサ11は、例えば、並列処理プロセッサ12のカーネル関数を呼び出すことで、並列処理の実行を指示する。並列処理プロセッサ12で実行される処理は、
図26に例示されたフローチャートで後述される。プロセッサ11は、例えば、深層学習アルゴリズム60に関する行列演算の実行を並列処理プロセッサ12に指示する。デジタル信号は複数の波形データに分解され、順次、深層学習アルゴリズム60に入力される。デジタル信号に含まれる、各細胞に対応するインデックスは深層学習アルゴリズム60には入力されない。深層学習アルゴリズム60に入力された波形データは、並列処理プロセッサ12によって演算される。
【0124】
プロセッサ11は、並列処理プロセッサ12によって実行された演算結果を受領する(S103)。演算結果は、例えば、
図20に示されるように、RAM122からRAM14にDMA転送される。
【0125】
プロセッサ11は、並列処理プロセッサ12による演算結果に基づいて、測定された各々の細胞の細胞種別の解析結果を生成する(S104)。
【0126】
図26は、解析ソフトウェア111の指示に基づいて実行される並列処理プロセッサ12の演算処理の動作例を示す。
【0127】
解析ソフトウェア111を実行するプロセッサ11は、並列処理プロセッサ12に、演算ユニット121に対する演算処理の割り当てを実行させる(S110)。プロセッサ11は、例えば、並列処理プロセッサ12のカーネル関数を呼び出すことで、並列処理プロセッサ12に、演算ユニット121への演算処理の割り当てを実行させる。
図20に示されるように、例えば、深層学習アルゴリズム60に関する行列演算が複数の演算処理に分割され、分割された各演算処理が演算ユニット121に割り当てられる。複数の波形データが、順次、深層学習アルゴリズム60に入力される。波形データに対応する行列演算が複数の演算処理に分割され、演算ユニット121に割り当てられる。
【0128】
各演算処理は、複数の演算ユニット121によって並列に処理される(S111)。演算処理は、複数の波形データに対して実行される。
【0129】
複数の演算ユニット121によって並列に処理されることで生成された演算結果は、RAM122からRAM14に転送される(S112)。例えば、演算結果は、RAM122からRAM14へ、DMAによって転送される。
【0130】
<第2の細胞測定装置と第2の細胞測定装置における生体試料の測定>
第2の細胞測定装置4000’の構成例として、測定ユニット500が尿試料又は体液試料を測定するためのフローサイトメータである尿中有形成分分析装置または体液分析装置である場合のブロック図の例を示す。
【0131】
図27は、測定ユニット500のブロック図の例である。
図27において、測定ユニット500は、検体分配部501、試料調製部502、光学検出部505、光学検出部505の出力信号(プリアンプにより増幅された出力信号)を増幅する増幅回路550、増幅回路550からの出力信号に対してフィルタ処理を行うフィルタ回路506、フィルタ回路506の出力信号(アナログ信号)をデジタル値に変換するA/D変換部507、デジタル値に対して所定の処理を行うデジタル値処理回路508と、デジタル値処理回路508に接続されたメモリ509と、検体分配部501、試料調製部502、増幅回路550、デジタル値処理回路508、及び記憶装置511aと接続されたマイクロコンピュータ511と、マイクロコンピュータ511に接続されたLAN(Local Area Network)アダプタ512とを備えている。
【0132】
処理ユニット300は、例えば、LANアダプタ512を介して測定ユニット500とLANケーブルにて接続されており、この処理ユニット300により、測定ユニット500で取得された測定データの分析が行われる。光学検出部505、増幅回路550、フィルタ回路506、A/D変換部507、デジタル値処理回路508、及びメモリ509は、測定試料を測定し、測定データを生成する光学測定部510を構成している。
【0133】
測定ユニット500は、LANアダプタ512を介してイントラネットワーク3又はインターネット6にアクセスし、細胞分析装置1と通信することができる。測定ユニット500は、取得した波形データを細胞分析装置1に送信する。測定ユニット500又は処理ユニット300は、波形データと識別情報とを対応付けて、細胞分析装置1に送信する。識別情報は、例えば、(1)波形データに対応する生体試料の識別情報、(2)波形データに対応する細胞の識別情報、(3)波形データに対応する患者の識別情報、(4)波形データに対応する検査の識別情報、(5)波形データが測定された細胞測定装置の識別情報、(6)波形データが測定された検査関連施設2の識別情報、が挙げられる。測定ユニット500は、例えば、LIS又は処理ユニット300から検査オーダーを受領する際に、LIS又は処理ユニット300から、上記識別情報(1)~(6)の少なくとも一つ又はそれらの組み合わせを取得できる。例えば、例示された(1)~(6)の少なくとも一つが、波形データと対応付けられて細胞分析装置1に送信される。例示された(1)~(6)の複数の組み合わせが、波形データと対応付けられて細胞分析装置1に送信されてもよい。
【0134】
図28は、測定ユニット500の光学検出部505の構成を示す図である。
図28において、コンデンサレンズ552は、光源である半導体レーザ光源553から放射されたレーザ光をフローセル551に集光し、集光レンズ554は測定試料中の有形成分から発せられる前方散乱光を前方散乱光受光部555に集光する。また、他の集光レンズ556は有形成分から発せられる側方散乱光と蛍光とをダイクロイックミラー557に集光する。ダイクロイックミラー557は、側方散乱光を側方散乱光受光部558へ反射し、蛍光を蛍光受光部559の方へ透過させる。これらの光信号は、測定試料中の有形成分の特徴を反映する。そして、前方散乱光受光部555、側方散乱光受光部558及び蛍光受光部559は光信号を電気信号に変換し、それぞれ、前方散乱光信号、側方散乱光信号及び蛍光信号を出力する。これらの出力は、プリアンプにより増幅された後、次段の処理に供される。また、前方散乱光受光部555、側方散乱光受光部558及び蛍光受光部559のそれぞれは、駆動電圧を切り替えることにより、低感度出力と高感度出力との切り替えが可能である。この感度の切り替えは、マイクロコンピュータ511により行われる。本実施形態では、前方散乱光受光部555としてフォトダイオードが用いられ、側方散乱光受光部558及び蛍光受部55としてフォトマルチプライヤチューブを用いてもよいし、側方散乱光受光部558及び蛍光受光部559としてフォトダイオードを用いてもよい。なお、蛍光受光部559から出力された蛍光信号は、プリアンプにより増幅された後、分岐する二つの信号チャンネルに与えられる。二つの信号チャンネルは、それぞれ
図27にて前述した増幅回路550に接続されている。一方の信号チャンネルに入力された蛍光は、増幅回路550により高感度に増幅される。
【0135】
(測定試料の調製)
図29は、
図27にて示した試料調製部502及び光学検出部505の概略機能構成を示す図である。
図27及び
図29に示した検体分配部501は、吸引管517とシリンジポンプとを備える。検体分配部501は、検体(尿又は体液)00bを、吸引管517を介して吸引し、試料調製部502へ分注する。試料調製部502は、反応槽512uと反応槽512bとを備えている。検体分配部501は、反応槽512u及び反応槽512bのそれぞれに定量された測定試料を分配する。
【0136】
反応槽512uにおいて、分配された生体試料は、希釈液としての第1試薬519u及び染料を含む第3試薬518uと混合される。第3試薬518uに含まれる色素により、生体試料中の有形成分が染色される。生体試料が尿の場合、この反応槽512uにおいて調製された試料は、赤血球、白血球、上皮細胞、腫瘍細胞等の比較的大きい尿中有形成分を分析するための第1測定試料として使用される。生体試料が体液の場合、反応槽512uにおいて調製された試料は、体液中の赤血球を分析するための第3測定試料として使用される。
【0137】
一方、反応槽512bにおいて、分配された生体試料は、希釈液としての第2試薬519b及び染料を含む第4試薬518bと混合される。後述するように、第2試薬519bは、溶血作用を有する。第4試薬518bに含まれる色素により、生体試料中の有形成分が染色される。生体試料が尿の場合、この反応槽512bにおいて調製された試料は、尿中の細菌を分析するための第2測定試料となる。生体試料が体液である場合において、反応槽512bにおいて調製された試料は、体液中の有核細胞(白血球及び大型細胞)及び細菌を分析するための第4測定試料となる。
【0138】
反応槽512uからは、光学検出部505のフローセル551へとチューブが延設されており、反応槽512uにおいて調製された測定試料がフローセル551へと供給可能となっている。また、反応槽512uの出口には、電磁弁521uが設けられている。反応槽512bからもチューブが延設されており、このチューブが反応槽2uから延びたチューブの途中に連結されている。これにより、反応槽512bにおいて調製された測定試料がフローセル551へと供給可能となっている。また、反応槽512uの出口には、電磁弁521bが設けられている。
【0139】
反応槽512u、512bからフローセル551まで延設されたチューブは、フローセル551の手前で分岐しており、その分岐先がシリンジポンプ520aに接続されている。また、シリンジポンプ520aと分岐点との間には、電磁弁521cが設けられている。
【0140】
反応槽512u、512bのそれぞれから延設されたチューブの接続点から、分岐点までの途中で、チューブはさらに分岐しており、その分岐先がシリンジポンプ520bに接続されている。また、シリンジポンプ520bへ延びるチューブの分岐点と、接続点との間には、電磁弁521dが設けられている。
【0141】
また、試料調製部502には、シース液を収容するシース液収容部522が接続されており、このシース液収容部522がチューブによってフローセル551に接続されている。シース液収容部522にはコンプレッサ522aが接続されており、コンプレッサ522aが駆動されると、シース液収容部522に圧縮空気が供給され、シース液収容部522からフローセル551へとシース液が供給される。
【0142】
反応槽512u、512bのそれぞれにおいて調製された2種類の懸濁液(測定試料)は、先に反応槽512uの懸濁液(生体試料が尿のときは第1測定試料。生体試料が体液のときは第3測定試料。)が光学検出部505に導かれ、フローセル551においてシース液に包まれた細い流れを形成し、そこに、レーザ光が照射される。その後同様に、反応槽512bの懸濁液(生体試料が尿のときは第2測定試料。生体試料が体液のときは第4測定試料。)が光学検出部505に導かれ、フローセル551において細い流れを形成し、レーザ光が照射される。このような動作は、マイクロコンピュータ511(制御部)の制御により、電磁弁521a、521b、521c、521d及び駆動部503等を動作させることで、自動的に行われる。
【0143】
第1試薬から第4試薬について詳細に説明する。第1試薬519uは、緩衝剤を主成分とする試薬であって、赤血球を溶血させずに安定した蛍光信号を得ることができるように浸透圧補償剤を含有しており、分類測定に適するような浸透圧となるよう100~600mOsm/kgに調整されている。第1試薬519uは、尿中の赤血球に対する溶血作用を有していないことが好ましい。
【0144】
第2試薬519bは、第1試薬519uと異なり、溶血作用を有している。これは、後述する第4試薬518bの細菌の細胞膜への通過性を高めて染色を早く進行させるためである。さらに、粘液糸、赤血球破片などの夾雑物を収縮させるためでもある。第2試薬519bは溶血作用を獲得するために界面活性剤を含む。界面活性剤は、アニオン、ノニオン、カチオンなど種々用いられるが、カチオン系界面活性剤が特に好適である。界面活性剤により細菌の細胞膜にダメージを与えることができるため、第4試薬518bが含有する色素により効率よく細菌の核酸を染色することができる。その結果、細菌の測定を短時間の染色処理で行うことができる。
【0145】
さらに他の実施形態として、第2試薬519bは、界面活性剤ではなく、酸性又は低pHに調整されることで溶血作用を獲得してもよい。低pHとは、第1試薬19uよりもpHが低いことをいう。第1試薬519uが中性若しくは弱酸性~弱アルカリ性の範囲内であるとき、第2試薬19bは酸性又は強酸性である。第1試薬519uのpHが6.0~8.0であるとき、第2試薬519bのpHは、それよりも低いpHであり、好ましくは2.0~6.0である。
【0146】
第2試薬519bは、界面活性剤を含み、かつ、低pHに調整されていてもよい。
【0147】
さらに他の実施形態として、第2試薬519bは、第1試薬19uよりも低い浸透圧にすることで、溶血作用を獲得してもよい。
【0148】
一方、第1試薬519uは界面活性剤を含んでいない。なお、他の実施形態としては、第1試薬519uは界面活性剤を含んでもよいが、赤血球を溶血させないように種類と濃度を調整する必要がある。よって、第1試薬519uは、第2試薬519bと同じ界面活性剤を含まないか、若しくは同じ界面活性剤を含んでいたとしても、第2試薬519bよりも低濃度であることが好ましい。
【0149】
第3試薬518uは、尿中有形成分(赤血球、白血球、上皮細胞、円柱等)の測定に用いられる染色試薬である。第3試薬518uが含む染料としては、核酸を有していない有形成分をも染色するために、膜染色をする染料が選ばれる。第3試薬518uは、好ましくは赤血球溶血を防ぐ目的及び安定した蛍光強度を得る目的のために浸透圧補償剤を含み、分類測定に適するような浸透圧となるよう100~600mOsm/kgに調整されている。第3試薬18uによって尿中有形成分の細胞膜、核(膜)が染色される。膜染色する色素を含有する染色試薬としては縮合ベンゼン誘導体が用いられ、例えば、シアニン系色素を用いることができる。なお、第3試薬18uは、細胞膜だけでなく核膜も染色するようになっている。第3試薬518uを用いると、白血球、上皮等の有核細胞では、細胞質(細胞膜)における染色強度と核(核膜)における染色強度とが合わさり、核酸を有しない尿中有形成分よりも染色強度が高くなる。これによって白血球及び上皮等の有核細胞を赤血球等の核酸のない尿中有形成分と弁別することができる。第3試薬として、米国5891733号公報に記載の試薬を用いることができる。米国5891733号公報は、参照により本明細書に組み込まれる。第3試薬518uは、第1試薬519uとともに尿又は体液と混合される。
【0150】
第4試薬518bは、細菌及び真菌と同等の大きさの夾雑物が含まれている検体であっても、細菌を精度良く測定しうる染色試薬である。第4試薬518bとしては、欧州出願公開1136563号公報に詳細な説明がある。第4試薬518bに含まれる染料としては核酸を染色する染料が好適に用いられる。核染色する色素を含有する染色試薬としては、例えば、米国特許7309581号のシアニン系色素を用いることができる。第4試薬518bは、第2試薬519bとともに尿又は検体と混合される。欧州出願公開1136563号公報及び米国特許7309581号は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0151】
したがって、第3試薬518uは細胞膜を染色する色素を含有し、一方、第4試薬518bは核酸を染色する色素を含有していることが好ましい。尿中有形成分には、赤血球のような核を有しないものが含まれているため、第3試薬518uが細胞膜を染色する色素を含有することにより、このような核を有しないものも含めて尿中有形成分を検出することができる。また、第2試薬は細菌の細胞膜にダメージを与えることができるため、第4試薬18bが含有する色素により効率よく細菌及び真菌の核酸を染色することができる。その結果、細菌の測定を短時間の染色処理で行うことができる。
【0152】
図12及び
図28に示すように、測定ユニット400又は測定ユニット500は、それぞれフローセル4113、551を備える。測定ユニット400又は測定ユニット500は、生体試料をフローセル4113、551に送液する。フローセル4113、551に供給された生体試料に、光源4112、553から光が照射され、生体試料中の細胞から発せられた前方散乱光、側方散乱光、及び側方蛍光を光検出部(4116、4121、4122、555、558、559)が検出する。光検出部(4116、4121、4122、555、558、559)から、細胞分析装置1に信号が送信されてもよい。細胞分析装置1は、光検出部(4116、4121、4122、555、558、559)が検出した前方散乱光、側方散乱光、及び側方蛍光から、それぞれの波形データを取得する。
【0153】
<機能ブロック及び処理手順>
(深層学習処理)
図30は、深層学習を行う細胞分析装置1の機能ブロックの例を示す。
図30を参照すると、本実施形態に係る細胞分析装置1の処理部10は、訓練データ生成部101と、訓練データ入力部102と、アルゴリズム更新部103とを備える。これらの機能ブロックは、コンピュータに深層学習処理を実行させるプログラムを、処理部10の記憶部13にインストールし、このプログラムをプロセッサ11及び並列処理プロセッサ12が実行することにより実現される。訓練データデータベース(DB)104と、アルゴリズムデータベース(DB)105とは、処理部10の記憶部13又はRAM14に記録される。
【0154】
訓練用波形データ70a、70b、70cは、例えば、測定ユニット400、500によって予め取得され、処理部10の記憶部13又はRAM14に予め記憶されている。
【0155】
処理部10は、
図31に示す処理を行う。
図30に示す各機能ブロックを用いて説明すると、
図31に示すステップS211、S214及びS216の処理は、訓練データ生成部101が行う。ステップS212の処理は、訓練データ入力部102が行う。ステップS213、及びS215の処理は、アルゴリズム更新部103が行う。
【0156】
図31を用いて、処理部10が行う深層学習処理の例について説明する。はじめに、処理部10は、訓練用波形データ70a、70b、70cを取得する。訓練用波形データ70aは前方散乱光の波形データであり、訓練用波形データ70bは側方散乱光の波形データであり、訓練用波形データ70cは側方蛍光の波形データである。訓練用波形データ70a、70b、70cの取得は、例えば、オペレータの操作によって、測定ユニット400、500から取り込まれるか、記録媒体から取り込まれるか、通信ネットワーク経由でインタフェース部490を介して行われる。訓練用波形データ70a、70b、70cを取得する際に、その訓練用波形データ70a、70b、70cが、いずれの細胞種別を示すものであるかの情報も取得される。いずれの細胞種別を示すものであるかの情報は、訓練用波形データ70a、70b、70cに紐付けられ、またオペレータが入力してもよい。
【0157】
ステップS211において、処理部10は、波形データ72a、72b、72cとラベル値77とから、訓練データ75を生成する。
【0158】
ステップS212において、処理部10は、訓練データ75を用いて、ニューラルネットワーク50を訓練する。ニューラルネットワーク50の訓練結果は複数の訓練データ75を用いて訓練する度に蓄積される。
【0159】
本実施形態に係る細胞種別の分析方法では、畳み込みニューラルネットワークを使用しており、確率的勾配降下法を用いるため、ステップS213において、処理部10は、予め定められた所定の試行回数分の訓練結果が蓄積されているか否かを判断する。訓練結果が所定の試行回数分蓄積されている場合(YES)、処理部10はステップS214の処理に進み、訓練結果が所定の試行回数分蓄積されていない場合(NO)、処理部10はステップS215の処理に進む。
【0160】
次に、訓練結果が所定の試行回数分蓄積されている場合、ステップS214において、処理部10は、ステップS212において蓄積しておいた訓練結果を用いて、ニューラルネットワーク50の結合重みwを更新する。本実施形態に係る細胞種別の分析方法では、確率的勾配降下法を用いるため、所定の試行回数分の学習結果が蓄積した段階で、ニューラルネットワーク50の結合重みwを更新する。結合重みwを更新する処理は、具体的には、後述の(式12)及び(式13)に示される、勾配降下法による計算を実施する処理である。
【0161】
ステップS215において、処理部10は、ニューラルネットワーク50を規定数の訓練データ75で訓練したか否かを判断する。規定数の訓練データ75で訓練した場合(YES)には、深層学習処理を終了する。
【0162】
ニューラルネットワーク50を規定数の訓練データ75で訓練していない場合(NO)には、処理部10は、ステップS215からステップS216に進み、次の訓練用波形データについてステップS211からステップS215までの処理を行う。
【0163】
以上で説明した処理にしたがって、ニューラルネットワーク50を訓練し深層学習アルゴリズム60を得る。
【0164】
(ニューラルネットワークの構造)
上述したように、本実施形態において、畳み込みニューラルネットワークを用いる。
図32(a)にニューラルネットワーク50の構造を例示する。ニューラルネットワーク50は、入力層50aと、出力層50bと、入力層50a及び出力層50bの間の中間層50cとを備え、中間層50cが複数の層で構成されている。中間層50cを構成する層の数は、例えば5層以上、好ましくは50層以上、より好ましくは100層以上とすることができる。
【0165】
ニューラルネットワーク50では、層状に配置された複数のノード89が、層間において結合されている。これにより、情報が入力側の層50aから出力側の層50bに、図中矢印Dに示す一方向のみに伝播する。
【0166】
(各ノードにおける演算)
図32(b)は、各ノードにおける演算を示す模式図である。各ノード89では、複数の入力を受け取り、1つの出力(z)を計算する。
図32(b)に示す例の場合、ノード89は4つの入力を受け取る。ノード89が受け取る総入力(u)は、例として以下の(式2)で表される。ここで、本実施形態においては、訓練データ75及び分析データ85として一次元の行数列データを用いるため、演算式の変数が二次元の行列データに対応する場合には、変数を一次元の行列データに対応するように変換する処理を行う。
【数2】
各入力には、それぞれ異なる重みが掛けられる。(式2)中、bはバイアスと呼ばれる値である。ノードの出力(z)は、(式2)で表される総入力(u)に対する所定の関数fの出力となり、以下の(式3)で表される。関数fは活性化関数と呼ばれる。
【数3】
図32(c)は、ノード間の演算を示す模式図である。ニューラルネットワーク50では、(式2)で表される、各ノード89の総入力(u)に対して、(式3)で表される結果(z)を出力するノードが層状に並べられている。前の層のノードの出力が、次の層のノードの入力となる。
図32(c)に示す例では、図中左側の層のノード89aの出力が、図中右側の層のノード89bの入力となる。各ノード89bは、それぞれ、ノード89aからの出力を受け取る。各ノード89aと各ノード89bとの間の各結合には、異なる重みが掛けられる。複数のノード89aのそれぞれの出力をx1~x4とすると、3つのノード89bのそれぞれに対する入力は、以下の(式4-1)~(式4-3)で表される。
【数4】
これら(式4-1)~(式4-3)を一般化すると、(式4-4)となる。ここで、i=1、・・・I、j=1、・・・Jである(Iは入力総数、Jは総出力数)。
【数5】
(式4-4)を活性化関数に適用すると出力が得られる。出力は以下の(式5)で表される。
【数6】
(活性化関数)
実施形態に係る細胞種別の分析方法では、活性化関数として、正規化線形関数(rectified linear unit function)を用いる。正規化線形関数は以下の(式6)で表される。
【数7】
(式6)は、z=uの線形関数のうち、u<0の部分をu=0とする関数である。
図32(c)に示す例では、j=1のノードの出力は、(式6)により、以下の式で表される。
【数8】
(ニューラルネットワークの学習)
ニューラルネットワークを用いて表現される関数をy(x:w)とおくと、関数y(x:w)は、ニューラルネットワークのパラメータwを変化させると変化する。入力xに対してニューラルネットワークがより好適なパラメータwを選択するように、関数y(x:w)を調整することを、ニューラルネットワークの学習と呼ぶ。ニューラルネットワークを用いて表現される関数の入力と出力との組が複数与えられているとする。ある入力xに対する望ましい出力をdとすると、入出力の組は、{(x1、d1)、(x2、d2)、・・・、(xn、dn)}と与えられる。(x、d)で表される各組の集合を、訓練データと呼ぶ。具体的には、
図3に示す、波形データ(前方散乱光波形データ、側方散乱光波形データ、蛍光波形データ)の集合が、
図3に示す訓練データである。
【0167】
ニューラルネットワークの学習とは、どのような入出力の組(xn、dn)に対しても、入力xnを与えたときのニューラルネットワークの出力y(xn:w)が、出力dnになるべく近づくように重みwを調整することを意味する。誤差関数(error function)とは、ニューラルネットワークを用いて表現される関数と訓練データとの近さ
【数9】
を測る尺度である。誤差関数は損失関数(loss function)とも呼ばれる。実施形態に係る細胞種別の分析方法において用いる誤差関数E(w)は、以下の(式7)で表される。(式7)は交差エントロピー(cross entropy)と呼ばれる。
【数10】
(式7)の交差エントロピーの算出方法を説明する。実施形態に係る細胞種別の分析方法において用いるニューラルネットワーク50の出力層50bでは、すなわちニューラルネットワークの最終層では、入力xを内容に応じて有限個のクラスに分類するための活性化関数を用いる。活性化関数はソフトマックス関数(softmax function)と呼ばれ、以下の(式8)で表される。なお、出力層50bには、クラス数kと同数のノードが並べられているとする。出力層Lの各ノードk(k=1、・・・、K)の総入力uは、前層L-1の出力から、uk
(L)で与えられるとする。これにより、出力層のk番目のノードの出力は以下の(式8)で表される。
【数11】
(式8)がソフトマックス関数である。(式8)で決まる出力y1、・・・、yKの総和は常に1となる。
【0168】
各クラスをC1、・・・、CKと表すと、出力層Lのノードkの出力yK(すなわちuk
(L))は、与えられた入力xがクラスCKに属する確率を表す。以下の(式9)を参照されたい。入力xは、(式9)で表される確率が最大になるクラスに分類される。
【数12】
ニューラルネットワークの学習では、ニューラルネットワークで表される関数を、各クラスの事後確率(posterior probability)のモデルとみなし、そのような確率モデルの下で、訓練データに対する重みwの尤度(likelihood)を評価し、尤度を最大化するような重みwを選択する。
【0169】
(式8)のソフトマックス関数による目標出力dnを、出力が正解のクラスである場合のみ1とし、出力がそれ以外の場合は0になるとする。目標出力をdn=[dn1、・・・、dnK]というベクトル形式で表すと、例えば入力xnの正解クラスがC3である場合、目標出力dn3のみが1となり、それ以外の目標出力は0となる。このように符号化すると、事後分布(posterior)は以下の(式10)で表される。
【数13】
訓練データ{(xn、dn)}(n=1、・・・、N)に対する重みwの尤度L(w)は、以下の(式11)で表される。尤度L(w)の対数をとり符号を反転すると、(式7)の誤差関数が導出される。
【数14】
学習は、訓練データを基に計算される誤差関数E(w)を、ニューラルネットワークのパラメータwについて最小化することを意味する。実施形態に係る細胞種別の分析方法では、誤差関数E(w)は(式7)で表される。
【0170】
誤差関数E(w)をパラメータwについて最小化することは、関数E(w)の局所的な極小点を求めることと同じ意味である。パラメータwはノード間の結合の重みである。重みwの極小点は、任意の初期値を出発点として、パラメータwを繰り返し更新する反復計算によって求められる。このような計算の一例には、勾配降下法(gradient descent method)がある。
【0171】
勾配降下法では、次の(式12)で表されるベクトルを用いる。
【数15】
勾配降下法では、現在のパラメータwの値を負の勾配方向(すなわち-∇E)に移動させる処理を何度も繰り返す。現在の重みをw
(t)とし、移動後の重みをw
(t+1)とすると、勾配降下法による演算は、以下の(式13)で表される。値tは、パラメータwを移動させた回数を意味する。
【数16】
記号
【数17】
は、パラメータwの更新量の大きさを決める定数であり、学習係数と呼ばれる。(式13)で表される演算を繰り返すことにより、値tの増加に伴って誤差関数E(w
(t))が減少し、パラメータwは極小点に到達する。
【0172】
なお、(式13)による演算は、全ての訓練データ(n=1、・・・、N)に対して実施してもよく、一部の訓練データのみに対して実施してもよい。一部の訓練データのみに対して行う勾配降下法は、確率的勾配降下法(stochastic gradient descent)と呼ばれる。実施形態に係る細胞種別の分析方法では、確率的勾配降下法を用いる。
【0173】
[3.ディープラーニングモデルの構築]
健常血液試料として健常人から採血した血液を測定し、非健常血液試料としてXN CHECK Lv2(ストレック社のコントロール血液(固定などの処理が行われている))をSysmex XN-1000でそれぞれ測定した。蛍光染色試薬にはシスメックス株式会社製のフルオロセルWDFを用いた。また溶血剤にはシスメックス株式会社製のライザセルWDFを用いた。それぞれの生体試料に含まれる細胞毎に、前方散乱光の測定開始から10ナノ秒間隔で前方散乱光、側方散乱光、及び側方蛍光の波形データを1024ポイントについて取得した。健常血液試料に関しては、8名の健常者から採血した血液中の細胞の波形データをデジタルデータとしてプールした。それぞれの細胞の波形データに対して好中球(NEUT)、リンパ球(LYMPH)、単球(MONO)、好酸球(EO)、好塩基球(BASO)、幼若顆粒球(IG)の分類を手動にて実施し、それぞれの波形データに細胞種別のアノテーション(ラベル付け)を付した。前方散乱光の信号強度が閾値を超えた時点を測定開始時点とし、前方散乱光、側方散乱光、側方蛍光の波形データの取得時点を同期させ、訓練データを生成した。またコントロール血液についてもコントロール血液由来細胞(CONT)とアノテーションを行った。深層学習アルゴリズムに訓練データを入力し、学習させた。
【0174】
学習した細胞データとは別の健常人の血液細胞についてSysmex XN-1000により訓練データと同様に分析用波形データを取得した。コントロール血液由来の波形データを混合し分析用データを作成した。この分析用データは、スキャッタグラム上では健常人由来の血球とコントロール血液由来の血球がオーバーラップして従来法では全く鑑別できなかった。この分析用データを構築した深層学習アルゴリズムに入力し、個々の細胞種別のデータを取得した。
【0175】
その結果を混合マトリックスとして
図33に示す。横軸に構築した深層学習アルゴリズムによる判定結果を示し、縦軸にヒトによる手動(参照法)の判定結果を示す。構築した深層学習アルゴリズムによる判定結果は、好塩基球とリンパ球間、好塩基球とゴースト間で若干の混同を生じたものの、参照法による判手結果と98.8%の一致率を示した。
【0176】
次に各細胞種別について、ROC解析を行い、感度特異度を評価した。
図34の(a)は好中球、
図34の(b)はリンパ球、
図34の(c)は単球、
図35の(a)は好中球、
図35の(b)は好塩基球、
図35の(c)はコントロール血液(CONT)のROC曲線を示す。感度と特異度は、好中球はそれぞれ99.5%、99.6%、リンパ球はそれぞれ99.4%、99.5%、単球はそれぞれ98.5%、99.9%、好酸球はそれぞれ97.9%、99.8%、好塩基球はそれぞれ71.0%、81.4%、コントロール血液(CONT)は、99.8%、99.6%となり、いずれも良好な成績を示した。
【0177】
以上の結果から、波形データに基づいて生体試料に含まれる細胞から取得される信号に基づいて、深層学習アルゴリズムを用いることにより、高い分類精度で細胞種別を判定することが可能であることが明らかとなった。
【0178】
さらに、コントロール血液のような非健常血液細胞が健常血液細胞と混じっている場合、従来のスキャッタグラム法では、判定困難な場合があった。しかし、本実施形態の深層学習アルゴリズムを使用することにより、非健常血液細胞が健常血液細胞と混じっている場合であってもこれらの細胞の判定が可能であることが示された。
【0179】
[4.画像分析装置を用いた分析システム]
細胞測定装置として画像分析装置を用いた実施形態を説明する。画像分析装置である細胞測定装置4000''は、撮像された画像データを分析することにより、撮像された細胞の細胞種別を推定する。
【0180】
細胞測定装置4000''は、
図6~
図9に例示されたシステム構成例と同様に細胞分析装置1に接続される。細胞測定装置4000''は、例えば、イントラネットワーク3を介して、細胞分析装置1に接続される。細胞測定装置4000''は、例えば、インタフェース部4を介して、細胞分析装置1に接続される。検査関連施設2の各々に設置された細胞測定装置4000''は、それぞれ、インターネット6を介して細胞分析装置1に接続されてもよい。
【0181】
図36に細胞測定装置4000''の構成例を示す。
図36に示す細胞測定装置4000''は、測定ユニット700及び処理ユニット800を備えており、前処理装置900による前処理により調製された試料901を測定し、分析を行う。
【0182】
測定ユニット700は、フローセル710と、光源720~723と、集光レンズ730~733と、ダイクロイックミラー740~741と、集光レンズ750と、光学ユニット751と、集光レンズ752と、撮像部760と、を備えている。フローセル710の流路711には、試料701が流される。
【0183】
光源720~723は、フローセル710を流れる試料701に光を照射する。光源720~723は、例えば半導体レーザ光源により構成される。光源720~723からは、それぞれ波長λ11~λ14の光が出射される。
集光レンズ730~733は、光源720~723から出射された波長λ11~λ14の光をそれぞれ集光する。ダイクロイックミラー740は、波長λ11の光を透過させ、波長λ12の光を屈折させる。ダイクロイックミラー741は、波長λ11及びλ12の光を透過させ、波長λ13の光を屈折させる。こうして、波長λ11~λ14の光が、フローセル710の流路711を流れる試料701に照射される。なお、測定ユニット700が備える半導体レーザ光源の数は1以上であれば制限されない。半導体レーザ光源の数は、例えば、1、2、3、4、5又は6の中から選択することができる。
【0184】
フローセル710を流れる試料701が蛍光色素で染色されている場合、試料701に波長λ11~λ13の光が照射されると、細胞を染色している蛍光色素から蛍光が生じる。例えば、波長λ11、λ12、λ13に各々対応する波長λ21、λ22、λ23の蛍光が生じる。フローセル710を流れる試料701に波長λ14の光が照射されると、この光は細胞を透過する。細胞を透過した波長λ14の透過光は、明視野画像の生成に用いられる。
【0185】
集光レンズ750は、フローセル710の流路711を流れる試料701から生じた蛍光と、フローセル710の流路711を流れる試料701を透過した透過光とを集光する。光学ユニット751は、例えば、4枚のダイクロイックミラーが組み合わせられた構成を有する。光学ユニット751の4枚のダイクロイックミラーは、蛍光と透過光とを、互いに僅かに異なる角度で反射し、撮像部760の受光面上において分離させる。集光レンズ752は、蛍光と透過光とを集光する。
【0186】
撮像部760は、TDI(Time Delay Integration)カメラにより構成される。撮像部760は、蛍光と透過光とを撮像して、蛍光に対応した蛍光画像と、透過光に対応した明視野画像とを、撮像信号として処理ユニット800に出力できる。
【0187】
処理ユニット800は、ハードウェア構成として、処理部811、記憶部812、インタフェース部816、インタフェース部817、バス815を備える。処理部811、記憶部812、インタフェース部816、インタフェース部817は、バス815に接続されている。測定ユニット700の撮像部760が撮像した撮像信号で構成される画像データ(例えば、蛍光画像、明視野画像)は、インタフェース部816を介して、記憶部812に記憶される。処理部811は、記憶部812から画像データを読み出し、画像データをインタフェース部817を介して細胞分析装置1に送信する処理を行う。インタフェース部817は、例えば、USBインタフェースや、イントラネットワーク3やインターネット6に接続するためのインタフェースである。処理部811は、細胞分析装置1から送付された分析結果の処理を実行する。
【0188】
細胞分析装置1は、同一の検査関連施設2内の複数の細胞測定装置4000''から画像データを取得しうる。また、細胞分析装置1は、異なる検査関連施設2の各々に配置された複数の細胞測定装置4000''から画像データを取得しうる。画像データは、検査関連施設2の各々で検査された生体試料中の個々の細胞毎に取得される。従って、画像データを適切に管理しないと、例えば患者間・生体試料間・検査関連施設2間でのデータの取り違えが生じうる。そのため、処理ユニット200は、画像データと識別情報とを対応付けて、細胞分析装置1に送信する。識別情報は、例えば、(1)撮像信号に対応する生体試料の識別情報、(2)撮像信号に対応する細胞の識別情報、(3)撮像信号に対応する患者の識別情報、(4)撮像信号に対応する検査の識別情報、(5)撮像信号を取得した装置の識別情報、(6)撮像信号が取得された検査関連施設2の識別情報、が挙げられる。細胞測定装置4000''は、例えば、LIS又は処理ユニット200から検査オーダーを受領する際に、LIS又は処理ユニット200から、上記識別情報(1)~(6)の少なくとも一つ又はそれらの組み合わせを取得できる。例えば、例示された(1)~(6)の少なくとも一つが、画像データと対応付けられて細胞分析装置1に送信される。例示された(1)~(6)の複数の組み合わせが、画像データと対応付けられて細胞分析装置1に送信されてもよい。
[5.撮像装置を用いた分析システム]
細胞測定装置として撮像装置を用いた実施形態を説明する。撮像装置である細胞測定装置4000'''は、撮像された画像データを分析することにより、撮像された細胞の細胞種別を推定する。
【0189】
細胞測定装置4000'''は、
図6~
図9に例示されたシステム構成例によって細胞分析装置1に接続される。細胞測定装置4000'''は、例えば、イントラネットワーク3を介して、細胞分析装置1に接続される。細胞測定装置4000'''は、例えば、インタフェース部4を介して、細胞分析装置1に接続される。検査関連施設2の各々に設置された細胞測定装置4000'''は、それぞれ、インターネット6を介して細胞分析装置1に接続されてもよい。
【0190】
図37に細胞測定装置4000'''の構成例を示す。
図37に示す細胞測定装置4000'''は、撮像素子301と、蛍光顕微鏡302とを備え、ステージ309上にセットされた訓練用の標本308の、明視野画像を撮像する。訓練用の標本308は、染色が施されている。細胞分析装置1は、細胞測定装置4000'''によって撮像された訓練用画像70を取得する。細胞分析装置1は、取得した訓練用画像70に基づいて、深層学習アルゴリズムの学習を行う。細胞分析装置1は、細胞測定装置4000'''によって撮像された分析対象画像78を取得する。細胞分析装置1は、取得した分析対象画像78を、深層学習アルゴリズムに基づいて分析する。
【0191】
細胞測定装置4000'''には、標本を撮像する機能を有する、公知の光学顕微鏡又はバーチャルスライドスキャナ等を用いることができる。
【0192】
細胞分析装置1は、同一の検査関連施設2内の複数の細胞測定装置4000'''から分析対象画像78を取得しうる。また、細胞分析装置1は、異なる検査関連施設2の各々に配置された複数の細胞測定装置4000'''から分析対象画像78を取得しうる。分析対象画像78は、検査関連施設2の各々で検査された生体試料中の個々の細胞毎に取得される。従って、分析対象画像78を適切に管理しないと、例えば患者間・生体試料間・検査関連施設2間でのデータの取り違えが生じうる。そのため、細胞測定装置4000'''は、分析対象画像78と識別情報とを対応付けて、細胞分析装置1に送信する。識別情報は、例えば、(1)撮像信号に対応する生体試料の識別情報、(2)撮像信号に対応する細胞の識別情報、(3)撮像信号に対応する患者の識別情報、(4)撮像信号に対応する検査の識別情報、(5)撮像信号を取得した装置の識別情報、(6)撮像信号が取得された施設の識別情報、が挙げられる。細胞測定装置4000'''は、例えば、LIS又はユーザから入力された検査オーダーを受領する際に、LIS又はユーザ入力から、上記識別情報(1)~(6)の少なくとも一つ又はそれらの組み合わせを取得できる。例えば、例示された(1)~(6)の少なくとも一つが、撮像信号と対応付けられて細胞分析装置1に送信される。例示された(1)~(6)の複数の組み合わせが、撮像信号と対応付けられて細胞分析装置1に送信されてもよい。
【0193】
<訓練データの生成>
以下、本実施形態における訓練データの生成例を説明する。
【0194】
深層学習アルゴリズムを訓練するために使用される訓練用画像は、RGBカラー及びCMYカラー等で撮像されることが好ましい。カラー画像は、赤、緑及び青又はシアン、マゼンタ、イエロー等の各原色の濃淡又は輝度を、24ビットの値(8ビット×3色)で表すことが好ましい。訓練用画像は、少なくとも1つの色相と、その色相の濃淡又は輝度とを含んでいればよいが、少なくとも2つの色相と、それぞれ色相の濃淡又は輝度とを含むことがより好ましい。色相とその色相の濃淡又は輝度とを含む情報を色調ともいう。
【0195】
訓練用画像における各画素の色調情報が、例えば、RGBカラーから、輝度の情報と色相の情報を含むフォーマットに変換される。輝度の情報と色相の情報を含むフォーマットとして、YUV(YCbCr、YPbPr、YIQ等)等を挙げることができる。ここでは、YCbCrフォーマットへの変換を例として説明する。RGBカラーで撮像された訓練用画像は、輝度に基づく画像データ、第1の色相(例えば青色系)に基づく画像データ及び第2の色相(例えば、赤色系)に基づく画像データにそれぞれ変換される。RGBからYCbCrへの変換は公知の方法により行うことができる。例えば、RGBからYCbCrへは、国際規格ITU-R BT.601にしたがって変換できる。輝度に基づく画像データ、第1の色相に基づく画像データ及び第2の色相に基づく画像データはそれぞれ
図38に示すように階調値の行列データとして表すことができる(以下、色調行列データ72y,72cb,72crともいう)。輝度に基づく画像データ、第1の色相に基づく画像データ、第2の色相に基づく画像データは、例えば、それぞれ0から255階調までの256階調で表される。ここで、輝度、第1の色相及び第2の色相に換えて、赤R、緑G、青Bの3原色や、シアンC、マゼンタM、イエローYの色の3原色で訓練用画像を変換してもよい。
【0196】
次に、色調行列データ72y,72cb,72crに基づいて、画素ごとに、輝度72y、第1の色相72cb、及び第2の色相72crの3つの階調値を組み合わせた色調ベクトルデータ74を生成する。
【0197】
次に、例えば、訓練用画像で分葉核好中球が撮像されていたとして、訓練用画像から生成される各色調ベクトルデータ74には、分葉核好中球であることを示すラベル値77として「1」が付与され、訓練データ75となる。
図38では、便宜上、訓練データ75を3画素×3画素で表しているが、実際は訓練用画像を撮像した際の画素の分だけ色調ベクトルデータが存在する。
【0198】
図39にラベル値77の例を示す。ラベル値は、細胞種別及び各細胞の特徴の有無に応じて異なるラベル値77が付与される。
【0199】
<深層学習の概要>
図38を例として、ニューラルネットワークの訓練の概要を説明する。ニューラルネットワーク50は、畳み込みニューラルネットワークであることが好ましい。ニューラルネットワーク50における入力層50aのノード数は、入力される訓練データ75の画素数と画像に含まれる輝度と色相の数(例えば上記例では、輝度72y、第1の色相72cb、及び第2の色相72crの3つ)との積に対応している。色調ベクトルデータ74はその集合72としてニューラルネットワーク50の入力層50aに入力される。訓練データ75の各画素のラベル値77を、ニューラルネットワークの出力層50bとして、ニューラルネットワーク50を訓練する。
【0200】
ニューラルネットワーク50は、訓練データ75に基づいて、形態学的な細胞種別や細胞の特徴について、特徴量を抽出する。ニューラルネットワークの出力層50bは、これらの特徴量を反映する結果を出力する。
【0201】
【0202】
斯くして訓練されたニューラルネットワーク60を有する深層学習アルゴリズム60は、分析対象の細胞が、所定の細胞群に属し形態学的に分類される複数の細胞種別のいずれに該当するかを識別するための識別器として使用される。
【0203】
<画像の分析方法>
図40に画像の分析方法の例を示す。画像の分析方法では、分析対象の細胞を撮像した分析用画像から分析データ81を生成する。分析用画像は、分析対象の細胞を撮像した画像である。
【0204】
例示的には、本実施形態において撮像装置における撮像は、RGBカラー及びCMYカラー等で行われることが好ましい。カラー画像は、赤、緑及び青又はシアン、マゼンタ、イエロー等の各原色の濃淡又は輝度を、24ビットの値(8ビット×3色)で表すことが好ましい。分析用画像は、少なくとも1つの色相と、その色相の濃淡又は輝度とを含んでいればよいが、少なくとも2つの色相と、それぞれ色相の濃淡又は輝度とを含むことがより好ましい。色相とその色相の濃淡又は輝度とを含む情報を色調ともいう。
【0205】
例えば、RGBカラーから、輝度の情報と色相の情報を含むフォーマットに変換する。輝度の情報と色相の情報を含むフォーマットとして、YUV(YCbCr、YPbPr、YIQ等)等を挙げることができる。ここでは、YCbCrフォーマットへの変換を例として説明する。ここでは、RGBカラーの訓練用画像は、輝度に基づく画像データ、第1の色相(例えば青色系)に基づく画像データ及び第2の色相(例えば、赤色系)に基づく画像データに変換される。RGBから、YCbCrへの変換は公知の方法により行うことができる。例えば、RGBから、YCbCrへは、国際規格ITU-R BT.601にしたがって変換できる。輝度、第1の色相及び第2の色相の各々に対応する画像データは、それぞれ
図40に示すように階調値の行列データとして表すことができる(以下、色調行列データ79y,79cb,79crともいう)。輝度、第1の色相及び第2の色相72Crは、それぞれ0から255階調までの256階調で表される。ここで、輝度、第1の色相、第2の色相に換えて、赤R、緑G、青Bの3原色や、シアンC、マゼンタM、イエローYの色の3原色で訓練用画像を変換してもよい。
【0206】
次に、色調行列79y,79cb,79crに基づいて、画素ごとに、輝度79y、第1の色相79cb、及び第2の色相79crの3つの階調値を組み合わせた色調ベクトルデータ80を生成する。1枚の分析用画像から生成された色調ベクトルデータ80の集合を分析データ81として生成する。
【0207】
分析データ81の生成と訓練データ75の生成は、少なくとも撮像条件や、各画像からニューラルネットワークに入力するベクトルデータの生成条件を同じにすることが好ましい。
【0208】
分析データ81を訓練済みの深層学習アルゴリズム60を構成するニューラルネットワーク60の入力層60aに入力する。深層学習アルゴリズムは、分析データ81から特徴量を抽出し、その結果をニューラルネットワーク60の出力層60bから出力する。出力層60bから出力される値は、訓練データとして入力された形態学的な細胞の分類や特徴のそれぞれに、分析用画像に含まれる分析対象の細胞が属する確率である。
【0209】
この確率の中で、値が最も高い形態学的分類に、分析用画像に含まれる分析対象の細胞が属すると判断し、その形態学的な細胞種別又は細胞の特徴をと紐付けられたラベル値が出力される。ラベル値そのもの、あるいはラベル値を形態学的な細胞種別又は細胞の特徴の有無を示す情報(例えば用語等)に置き換えたデータが細胞の形態に関する分析結果83として出力される。
図40では分析データ81から、識別器によってラベル値「1」が最も可能性が高いラベル値82として出力され、このラベル値に対応する「分葉核好中球」という文字データが、細胞の形態に関する分析結果83として出力される。
【0210】
【0211】
[5.その他の形態]
以上、本発明を概要及び特定の実施形態によって説明したが、本発明は上記した概要及び各実施形態に限定されるものではない。
【0212】
上記の実施形態では、訓練データ生成部101、訓練データ入力部102、アルゴリズム更新部103、分析データ生成部201、分析データ入力部202、及び分析部203の各機能ブロックは、単一のプロセッサ11及び単一の並列処理プロセッサ12において実行されているが、これら各機能ブロックは単一のプロセッサ及び並列処理プロセッサにおいて実行される必要は必ずしもなく、複数のプロセッサ及び複数の並列処理プロセッサで分散して実行されてもよい。
【0213】
上記の実施形態では、
図31で説明する各ステップの処理を行うためのプログラムを記憶部13に予め記録している。これに代えて、プログラムは、例えばDVD-ROMやUSBメモリ等の、コンピュータ読み取り可能であって非一時的な有形の記録媒体98から記憶部13にインストールしてもよい。又は、細胞分析装置1を通信ネットワーク99と接続し、通信ネットワーク99を介して例えば外部のサーバ(図示せず)からプログラムをダウンロードしてインストールしてもよい。
【0214】
図41に、分析結果の一実施形態を示す。
図41では、フローサイトメトリーで測定された生体試料中に含まれる、
図4で示したラベル値を付与した細胞種別とそれぞれの細胞数の種別の細胞数が示されている。細胞数の表示に代えて、あるいは細胞数の表示とともに、カウントした細胞数全体における各細胞種別の割合(例えば%)を出力してもよい。細胞数のカウントは、出力された各細胞種別に対応するラベル値の数(同じラベル値の数)を係数することにより求めることができる。また、出力結果には、生体試料中に異常細胞が含まれることを示す警告が出力されてもよい。
図41では異常細胞の項に警告として感嘆符が付されている例を示しているがこれに限られない。さらに、各細胞腫の分布をスキャッタグラムそして出力してもよい。スキャッタグラムとして出力する際には、例えば信号強度を取得した際の最も高い値を、例えば、側方蛍光強度を縦軸とし、側方散乱光強度を横軸としてプロットすることができる。
【符号の説明】
【0215】
1 細胞分析装置
10 処理部
11、3001、4831 プロセッサ(ホストプロセッサ)
12 並列処理プロセッサ
50 訓練前の深層学習アルゴリズム(人工知能アルゴリズム)
60 訓練済み深層学習アルゴリズム(人工知能アルゴリズム)
400、500、700 測定ユニット
121 演算ユニット
4000、4000’、4000''、4000''' 細胞測定装置