(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-05
(54)【発明の名称】積層フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/08 20060101AFI20240826BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
B32B27/08
B32B27/32 E
B32B27/32 103
(21)【出願番号】P 2020159305
(22)【出願日】2020-09-24
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000222462
【氏名又は名称】東レフィルム加工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186484
【氏名又は名称】福岡 満
(72)【発明者】
【氏名】徳田 浩忠
(72)【発明者】
【氏名】豊島 裕
(72)【発明者】
【氏名】松浦 洋一
【審査官】川井 美佳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/018282(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/163835(WO,A1)
【文献】特開2010-005935(JP,A)
【文献】国際公開第2009/123286(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0310890(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシール層と1層以上の支持層を有する積層構成とする積層フィルムであって、
200℃熱処理剥離後の破断伸度がフィルム長手方向で350%以上、フィルム幅方向で280%以上、破断強度がフィルム長手方向およびフィルム幅方向ともに20MPa以上であ
り、
前記ヒートシール層が、ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂(c)を含む樹脂組成物であり、
前記ポリプロピレン系樹脂として、エチレン・プロピレンランダム共重合体、前記ポリエチレン系樹脂(c)として、エチレン・プロピレンランダム共重合体を除き直鎖状低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとエチレン・α-オレフィンランダム共重合体エラストマーを含む樹脂組成物である積層フィルム。
【請求項2】
少なくとも1層の前記支持層が、エチレン・プロピレンブロック共重合体(a)と
、エチレン・プロピレンブロック共重合体( a )を除くポリエチレン系樹脂(b)を含む樹脂組成物である請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記ポリエチレン系樹脂(b)が、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体エラストマーおよび直鎖状低密度ポリエチレンからなる群から選ばれる少なくとも一種以上である請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
少なくとも1層の前記支持層が、エチレン・プロピレンブロック共重合体(a)70~97重量%と
前記ポリエチレン系樹脂(b)3~30重量%を混合した樹脂組成物である請求項1から3のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項5】
積層フィルムの厚さが15~100μmある請求項1から
4のいずれかに記載の積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた開封性と開封時の裂けを抑制した積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
包装体の本来の目的は内容物を保護することであって、輸送や陳列時の外力に抗して容易に開封されないという性能が重要である。一方で使用時に蓋裂けなどが発生せず正常に、簡単に開封できる易開封性が求められる。
【0003】
特に近年高齢者人口の増加や個食化が進み、利便性が良い容易に開封できる包装体への要望が高まってきた。易開封性の包装体としては、種々のものが提案されており、イージーピールと呼ばれる包装体は、開封性を付与したシーラントフィルムを用いるものであって、ゼリー・ヨーグルト・プリンなどのデザートや米飯、総菜などのカップ容器の蓋材、ハム・ベーコンなどの畜肉加工品のパックなどに広範に用いられている。
【0004】
シーラントフィルムに係るこの課題を解決する方法として、特定の比率でポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂を混合したヒートシール層からなる共押出多層フィルムが提案されている。(例えば特許文献1、2参照)
しかし、特許文献1、2で提案された共押出多層フィルムをシーラントフィルムとして使用した場合であっても、正常に開封せずに開封途中で蓋が裂けてしまったりする問題が発生していた。またシーラントフィルムを蓋材として用いる際は、内容物を充填後に蓋材として打抜く工程があり、蓋材の打ち抜き性と開封途中の蓋裂けを両立できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-127298号公報
【文献】特開2016-055433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、容器の蓋材などに使用する際、蓋材としての打ち抜き性と開封時に蓋裂け等の発生がなく正常に、簡単に開封できる積層フィルムを提供することにある。
【0007】
すなわち、本発明は、ヒートシール層と1層以上の支持層を有する積層構成とする積層フィルムであって、200℃熱処理剥離後の破断伸度がフィルム長手方向で350%以上、フィルム幅方向で280%以上、破断強度がフィルム長手方向およびフィルム幅方向ともに20MPa以上である積層フィルムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の積層フィルムは、蓋材として打抜き性と開封時に蓋裂けの発生がなく正常に開封でき、また適度な力で容易に開封することができる。さらに二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリエステルフィルム、印刷紙、金属箔などから選ばれる少なくとも1層を、前記積層フィルムの支持層側に積層することで、蓋材として打抜き性と開封時の蓋裂け発生がなく正常に開封できる包装体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の積層フィルムについて説明する。
【0010】
本発明の積層フィルムは、ヒートシール可能なヒートシール層と、少なくとも1層以上の支持層を有する。ヒートシール層は易開封性をフィルムに与えるため重要である。支持層は、1層以上の積層とすることで、開封時の蓋裂けの発生がなく正常に開封するためには重要である。
【0011】
本発明の積層フィルムは、200℃熱処理剥離後の破断伸度がフィルム長手方向で350%以上、フィルム幅方向で280%以上であることが必要であり、フィルム長手方向で400%以上、フィルム幅方向で350%以上がより好ましい。200℃熱処理剥離後の破断伸度がフィルム長手方向で350%以上、フィルム幅方向で280%以上とすることで、フィルムに柔軟性が増し開封時の蓋裂け発生がなくなる。
【0012】
また、破断強度がフィルム長手方向およびフィルム幅方向で20MPa以上であることが必要であり、フィルム長手方向およびフィルム幅方向で23MPa以上がより好ましい。フィルム長手方向およびフィルム幅方向で20MPa以上であることにより、フィルム製膜時の巻取り時にシワが発生し、製膜性が良好となる。
【0013】
支持層
プロピレン・エチレンブロック共重合体(a)
本発明における支持層を構成する樹脂は、プロピレン・エチレンブロック共重合体(a)であることが好ましい。本発明におけるプロピレン・エチレンブロック共重合体とは、プロピレン重合体(a1成分)とエチレン系重合体(a2成分)からなる共重合体であり、密度は0.90~0.96g/cm3であることが好ましい。密度が0.90g/cm3未満ではフィルムの機械強度が低くなり、製膜後のスリット性や、ラミネート時の工程でフィルムが伸びて、工程通過性が悪化する場合がある。また、密度が0.96g/cm3を超えるとフィルムの結晶性が高くなり、耐蓋裂け性が悪化する場合がある。
【0014】
また、該プロピレン・エチレンブロック共重合体の230℃でのメルトフローレート(以下、MFRと略称することがある。JIS K 7210に準拠。以下、特にことわらない限り同じ。)は、1~20g/10分の範囲が好ましく、より好ましくは、1~10g/10分の範囲、さらに好ましくは2~5g/10分の範囲である。MFRが1g/10分未満では、溶融ポリマーを冷却固化してフィルム化するキャスト時の速度追従性が悪くなることがあり、生産性が悪化することがある。また、MFRが20g/10分を超えると粘度が低くなり過ぎることがあり、キャスト時のフィルムエッジ部のネックインが大きくなることがあり、製膜性が悪化する場合がある。
【0015】
プロピレン・エチレンブロック共重合体(a)のa1成分およびa2成分の極限粘度、およびMFRの調整方法としては、重合時の各工程で水素ガスや金属化合物などの分子量調節剤を加える方法、パウダー状で得られた重合体を溶融混練する際に添加剤を添加する方法、パウダー状で得られた重合体を溶融混練する際の混練条件を調整する方法、等が挙げられる。
【0016】
また、支持層には本発明の目的を損なわない範囲で、フィルム加工に適した滑り性やラミネート適性を確保するため、特定の添加剤、具体的にはエルカ酸アミドなどの有機滑剤、酸化防止剤、シリカ、ゼオライトなどの無機充填剤を選択して使用してもよい。また、支持層には本発明の効果を阻害しない範囲であれば、必要に応じて本発明の積層フィルムを生産する際に生じるフィルム端部やスリット屑などを混合使用することもできる。
【0017】
該プロピレン・エチレンブロック共重合体(a)の製造方法としては、触媒を用いて原料であるプロピレンやエチレンなどを重合させる方法が挙げられる。触媒としては、チ-グラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒などを用いることができ、例えば、特開平7-216017号公報にあげられるものを好適に用いることができる。具体的には、Si-O結合を有する有機ケイ素化合物およびエステル化合物の存在下、一般式Ti(OR3)aX4-a(式中、R3は炭素数が1~20の炭化水素基、Xはハロゲン原子、aは0<a≦4の数字を表し、好ましくは2≦a≦4、特に好ましくはa=4である。)で表されるチタン化合物を、有機マグネシウム化合物で還元する。得られる固体生成物を、エステル化合物で処理したのち、エーテル化合物と四塩化チタンの混合物もしくはエーテル化合物と四塩化チタンとエステル化合物の混合物で処理する。こうして得られた三価のチタン化合物含有固体触媒、有機アルミニウム化合物電子供与性化合物(ジアルキルジメトキシシラン等が好ましく用いられる)よりなる触媒系が挙げられる。
【0018】
該触媒を用いたプロピレン・エチレンブロック共重合体(a)の具体的製造方法としては、製膜性および耐蓋裂け性、破断強度の観点から、第1工程で実質的に不活性溶剤の不存在下にプロピレンを主体としたモノマを重合して重合体部分(a1成分)を生成する。次いで、第2工程で、気相中での重合により、エチレン共重合体部分(a2成分)を生成して得られるブロック共重合体の、a2成分の含有量は10~30重量%が好ましく(但し、a1成分とa2成分の合計を100重量%とする)、より好ましくは15~25重量%である。a2成分の含有量が10重量%未満ではヒートシール層との界面接着力に劣ることがあり、またフィルムの伸度が下がって耐蓋裂け性に劣る場合があり、含有量が30重量%を超えると破断強度に劣る場合がある。
【0019】
また、該a2成分の極限粘度([η]a2)とa1成分の極限粘度([η]a1)の比([η]a2/[η]a1)の比は1.0~2.0であることが好ましい。[η]a2/[η]a1が1.0未満では耐蓋裂け性が悪化する場合があり、2.0を超えると破断強度が悪化する場合がある。
【0020】
ポリエチレン系樹脂(b)
本発明における支持層のポリエチレン系樹脂(b)は、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体エラストマーおよび直鎖状低密度ポリエチレンからなる群から選ばれる一種以上の樹脂組成物からなることが好ましい。
【0021】
上記エチレン・α-オレフィンランダム共重合体エラストマーは、密度0.860~0.900g/cm3が好ましく、0.865~0.895g/cm3がより好ましい。そのMFR(190℃)は0.2~20.0g/10分が好ましく、0.5~10.0g/10分がより好ましい。α-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-オクテンから好ましく選ぶことができ、具体的にはエチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体が好ましい。
【0022】
また上記直鎖状低密度ポリエチレンは、シングルサイト、マルチサイト何れの触媒を用いて得られたものであってもよく、コモノマーとしては、1―ブテン、1-ヘキセン、4メチル-1-ペンテン、1-オクテンを好ましく選ぶことができる。直鎖状低密度ポリエチレンは、高圧法低密度ポリエチレンより融点が高く、フィルムの耐熱性を向上させ、耐寒性も優れるため、耐蓋裂け性が強くなるので好ましい。密度は0.905~0.95g/cm3が好ましく、0.910~0.940g/cm3がより好ましい。MFR(190℃)は0.5~100g/10分が好ましく、1~20g/10分がより好ましい。
【0023】
本発明における支持層は、上記エチレン・プロピレンブロック共重合体(a)70~97重量%と、ポリエチレン系樹脂(b)として、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体エラストマーもしくは直鎖状低密度ポリエチレンの一種以上の樹脂組成物3~30重量%、を混合した樹脂組成物からなることが好ましい。ポリエチレン系樹脂(b)の混合量が3重量%未満では耐蓋裂け性に劣ることがあり、30重量%を超えると製膜時のフィルム巻取り時にシワが入りやすくなることがあり、製膜性に劣ることがあり、蓋材として打ち抜き性に劣ることがある。
【0024】
ヒートシール層
本発明におけるヒートシール層を構成する樹脂は、ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂(c)を含む樹脂組成物が好ましい。この樹脂組成物とすることで、易開封性を発現することができる。
【0025】
ポリプロピレン系樹脂
本発明におけるヒートシール層のポリプロピレン系樹脂は、プロピレンとコモノマーとのランダム共重合体が好ましく、コモノマーはエチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン等から好ましく選ぶことができ、コモノマーが5重量%未満が好ましい。
【0026】
また、前記ポリプロピレン系樹脂は、マルチサイト触媒(チグラー・ナッタ触媒)やメタロセン触媒(カミンスキー触媒)などを用いて重合されたポリプロピレン系樹脂を使用してもよい。
【0027】
上記エチレン・プロピレンランダム共重合体の密度は0.90~0.96g/cm3、MFR(230℃)は1~30g/分の範囲であることが、製膜性がよく、ヒートシール力も高くなるので好ましい。
【0028】
ポリエチレン系樹脂(c)
本発明におけるヒートシール層のポリエチレン系樹脂(c)としては、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体エラストマーの少なくとも1種以上を好ましく挙げることができる。中でも、直鎖状低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとエチレン・α-オレフィンランダム共重合体エラストマーとの混合樹脂組成が好ましい。
【0029】
上記直鎖状低密度ポリエチレンは、密度は0.910~0.940g/cm3、MFR(190℃)は2.0~20.0g/10分の範囲が好ましい。高密度ポリエチレンは、密度は0.930~0.970g/cm3、MFR(190℃)は1.0~20.0g/10分の範囲が好ましい。エチレン・α-オレフィンランダム共重合体エラストマーは、密度は0.865~0.895g/cm3、MFR(190℃)は0.5~10.0g/10分の範囲であることが好ましい。その場合、それぞれの混合性が良く、主原料のエチレン・プロピレンランダム共重合体への分散性がよくて好ましい。
【0030】
また、ヒートシール層の樹脂の混合率は、エチレン・プロピレンランダム共重合体が50~70重量%、ポリエチレン系樹脂(c)としての、直鎖状低密度ポリエチレンが10~30重量%、高密度ポリエチレンが5~20重量%、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体エラストマーが5~20重量%(但し、混合樹脂組成の総量は100重量%とする)であることが好ましい。蓋材として用いたときにヒートシール層が凝集破壊して、ヒートシール強度が10~20N/15mmの範囲となって、開封時の糸引きがなく、開封性が良好なフィルムが得られる。
【0031】
本発明のおける支持層、ヒートシール層には本発明の目的を損なわない範囲で、フィルム加工に適した滑り性やラミネート適性を確保するため、特定の添加剤、具体的にはエルカ酸アミドなどの有機滑剤、分子量500以上の酸化防止剤、および、シリカ、ゼオライト、炭酸カルシウムなどの無機粒子や、ポリメチルメタクリレート架橋粒子などの有機粒子を選択して使用してもよい。また、製膜性を良好にする酸化防止剤、耐熱安定剤、帯電防止剤等を含むことができる。支持層には本発明の効果を阻害しない範囲であれば、必要に応じて本発明の積層フィルムを生産する際に生じる耳やスリット屑などを混合使用することができる。
【0032】
本発明の積層フィルムの厚さは15~100μmが好ましい。支持層の厚さは10~70μmが好ましく、更に好ましくは13~60μmの範囲のものが、打ち抜き性がよく好適である。
【0033】
ヒートシール層の厚さは1~30μm、好ましくは1.5~20μmの範囲が好適である。ヒートシール層の厚さが30μmを超えると剥離する際、糸引き、フェザリング、膜残りと呼ばれる剥離外観不良が発生することがあり、ヒートシール層の厚さが1μm未満であると安定したヒートシール強度が得られないことがある。
【0034】
ここで、糸引きとは開封時にフィルムが糸のように伸びて剥離する状態をいい、また、フェザリング、膜残りは開封時にフィルムが被着体の容器に残って剥離してしまう状態のことをいう。
【0035】
本発明の積層フィルムは、支持層側に、ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム、印刷紙、および、金属箔からなる群から選ばれる少なくとも1層を、必要に応じて、単独、あるいは、組合せて積層して使用するのが好ましい。
【0036】
ポリアミドフィルムとしては、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン66などが挙げられ、なかでも二軸延伸ナイロン66フィルムが、耐熱性、耐湿性の面でより好ましい。ポリエステルフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルムなどが挙げられ、中でも二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが、耐熱性とフィルム価格等で総合的により好ましい。金属箔としては、アルミ箔、銅箔などが挙げられ、なかでもアルミ箔がより好ましい。印刷紙としては、合成紙、上質紙、中質紙、アート紙、コート紙、更紙などが挙げられるが、印刷の出来具合からアート紙が好ましい。
【0037】
前記ポリアミドフィルムまたはポリエステルフィルムの厚さは、10~100μmの範囲が好ましく、特に、12~50μmの範囲であると印刷加工適性が良く、蓋材とした場合に、耐蓋裂け性と打ち抜き性から好ましい。
【0038】
前記金属箔の厚さとしては、5~30μmの範囲であることが、蓋材とした場合に、打ち抜き性、取り扱い性および経済性から好ましい。
【0039】
支持層側にこれらの層を積層する方法としては特に限定されないが、接着剤、ホットメルト剤、低融点の押出ラミネート樹脂を介して積層する方法が挙げられる。
【0040】
次に、本発明の積層フィルムの製造法の一例を説明する。
【0041】
2台の押出機を用いて、1台の押出機から支持層として、密度が0.90~0.96g/cm3、MFR(230℃)が1~10g/分の範囲のエチレン・プロピレンブロック共重合体と、密度が0.865~0.895g/cm3、MFR(190℃)が0.5~10.0g/10分の範囲のポリエチレン系樹脂(b)としてエチレン・α-オレフィンランダム共重合体エラストマーと、を混合した樹脂組成物を200~280℃で押出す。もう1台の押出し機からヒートシール層として、密度が0.90~0.96g/cm3、MFR(230℃)が1~30g/分の範囲のエチレン・プロピレンランダム共重合体と、密度が0.910~0.940g/cm3、MFR(190℃)が2.0~20.0g/10分の範囲の直鎖状低密度ポリエチレンと、密度0.930~0.970g/cm3、MFR(190℃)が1.0~20.0g/10分の範囲の高密度ポリエチレンと、密度が0.865~0.895g/cm3、MFR(190℃)が0.5~10.0g/10分の範囲のエチレン・α-オレフィンランダム共重合体エラストマーを混合した樹脂組成物を200~250℃で押出す。それらを共押出多層ダイで積層させ、支持層/ヒートシール層の厚さを、例えば、40μm/10μmとなるようにフィルム状に押出し、25~50℃の冷却ロールでキャスト冷却固化し積層フィルムとする。続いて、必要に応じ支持層の表面にコロナ放電処理を施す。
【実施例】
【0042】
本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明における特性の測定方法並びに効果の評価方法は、次の通りである。
【0043】
(1)樹脂の密度
JIS K 7112(1980)に規定された密度勾配管法に従い密度を測定した。
【0044】
(2)フィルム厚さ
ダイヤルゲージ式厚さ計(JIS B 7509(1992)、測定子5mmφ平型)を用いて、フィルムの長手方向及び幅方向に10cm間隔で10点測定して、その平均値とした。
【0045】
(3)各層の厚さ
フィルムの断面をミクロトームにて切り出し、その断面についてデジタルマイクロスコープVHX-100形(株式会社キーエンス製)を用いて1000倍に拡大観察して撮影した断面写真を用いて、各層の厚さ方向の距離を計測し、拡大倍率から逆算して各層の厚さを求めた。尚、各層の厚さを求めるに当たっては、互いに異なる測定視野から任意に選んだ計5箇所の断面写真計5枚を使用し、それらの平均値として算出した。
【0046】
(4)メルトフローレート(MFR)
JIS K 7210に準拠して、ポリエチレン系樹脂は190℃、ポリプロピレン系樹脂は230℃で測定した。
【0047】
(5)200℃熱処理剥離後の破断伸度、破断強度
積層フィルムの両面に厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製“ルミラー”P60、以下PETと略称する)を重ねて、テスター産業株式会社製の平板ヒートシールテスター(TP-701B)を使用し、シール温度200℃、シール圧力2kg/cm2、シール時間1秒の条件で支持層側から片面加熱して熱処理した後、重ねていた厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを23℃の室温で剥がして、熱処理した箇所について、引張速度を1000mm/minとし、その他は、JIS K 7127に準拠し測定した。
【0048】
(6)シール用複合フィルムの作成方法
積層フィルムの支持層側に厚さ12μmのPETをポリウレタン接着剤で塗布量2g/m2でドライラミネートし、40℃、72時間エージングしたサンプルをシール用複合フィルムとした。
【0049】
(7)評価用ポリプロピレンシート(被着体)
押出機からホモポリプロピレン(後述のPP-2)樹脂を温度220~230℃で溶融し、ダイよりフィルム状に押し出し、25~50℃の冷却ロールでキャスト冷却固化し、厚さ300μmの評価用ポリプロピレンシートを作成した。
【0050】
(8)ヒートシール強度
(6)で作成したシール用複合フィルムを100mm×15mmに切り出し、ヒートシール層と(7)で作成した300μmの評価用ポリプロピレンシートに重ねて、テスター産業株式会社製の平板ヒートシールテスター(TP-701B)を使用し、シール温度160~180℃、シール圧力2kg/cm2、シール時間1秒の条件で、PET側から片面加熱してヒートシールしたサンプルを、23℃の室温下で株式会社オリエンテック製のテンシロン(RTC-1210A)を使用して300mm/分の引張速度で、180°剥離したときのヒートシール強度を測定した。そのとき、1試料についてn数10の測定値の平均値をとり、ヒートシール強度が10~20N/15mmであるものを密封性と剥離性が良好で○とし、該範囲を外れたものを×とした。
【0051】
(9)打ち抜き特性
(6)で作成したシール用複合フィルムを50mm×50mmにサンプリングし、直径20mmの穴が開いたサンプルホルダーにセットし、株式会社オリエンテック製テンシロン(RTC-1210A)を使用し、針(直径1.0mm、先端形状0.5mm)を毎分50±5mmの速度で突き刺し、突き刺す際にフィルムが伸びを測定した。フィルムの伸びが3mm未満のものを○とし、3mm以上のものを×とした。
【0052】
(10)剥離外観
(8)で作成したヒートシール強度測定サンプルを手で剥離したとき、剥離外観を目視で評価し、糸引き、膜残りを下記の通り、判定した。
○:糸引き、膜残りが見られない。×:1.5mm以上の長い糸引き、膜残りが残る。
【0053】
(11)蓋裂け性
(6)で作成したシール用複合フィルムを100mm×100mmにサンプルを切り出し、ヒートシール層とポリプロピレン製容器(95φ×61.9H、東缶工業株式会社製)に重ねて、エーシンパック工業株式会社製のハンドシーラーを使用し、ヒートシール温度200℃、シール圧力0.3MPa、シール時間2秒の条件でヒートシールしたサンプルを作成し、手で剥離したときに、複合フィルムが裂けないものを○とし、複合フィルムが裂けたものを×とした。
【0054】
(12)製膜性
前記積層フィルムを製膜し巻き取る際、フィルム破れがなく、巻き取り張力調整が容易でシワが入らないものを○とし、巻き取り張力調整が難しくシワが酷く発生するものや、フィルムの破断伸度や破断強度が低くて製膜中にフィルム破れが発生するものを×とした。
【0055】
本実施例で使用した原料は次の通りである。
【0056】
(1)エチレン・プロピレンブロック共重合体(BPP-1)
MFR=2.5g/10分、密度=0.900g/cm3、Tm=163℃。
【0057】
(2)エチレン・α-オレフィンランダム共重合体エラストマー(E-1)
MFR=3.6g/10分、密度=0.885g/cm3。
【0058】
(3)直鎖状低密度ポリエチレン(LL-1)
MFR=2.2g/10分、密度=0.921g/cm3、Tm=120℃。
【0059】
(4)エチレン・プロピレンランダム共重合体(PP-1)
MFR=6.0g/10分、密度=0.900g/cm3、Tm=145℃。
【0060】
(5)高密度ポリエチレン(PE-1)
MFR=16.0g/10分、密度=0.955g/cm3、Tm=130℃。
【0061】
(6)ホモポリプロピレン(PP-2)
MFR=8.0g/10分、密度=0.900g/cm3、Tm=163℃。
【0062】
実施例1
支持層として、エチレン・プロピレンブロック共重合体(BPP-1)95重量%、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体エラストマー(E-1)5重量%、を混合した樹脂組成物を用いた。ヒートシール層として、エチレン・プロピレンランダム共重合体(PP-1)60重量%、直鎖状低密度ポリエチレン(LL-1)20重量%、高密度ポリエチレン(PE-1)10重量%、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体エラストマー(E-1)10重量%、を混合した樹脂組成物を用いた。それらを2種2層無延伸フィルム成型機の押出機2台に各々投入し、支持層を260℃、ヒートシール層を200℃の押出温度で溶融混練後、230℃の2種2層Tダイより押出し、40℃のキャスティングロールで急冷し積層フィルムを成形し、支持層にコロナ放電処理を施した。得られた積層フィルムの厚さは50μmで、ヒートシール層の厚さが10μmであった。製膜性は良好で、キャスト時のエッジまくれはなく、巻取り時のシワ発生もなく安定して巻き取ることができた。本発明の積層フィルムとして要求特性を全て満足していた。
【0063】
実施例2
積層フィルムの厚さを25μmとし、ヒートシール層の厚さを3μmにした以外は、実施例1と同様に積層フィルムを得た。本発明の積層フィルムとして要求特性を全て満足していた。
【0064】
実施例3
支持層をエチレン・プロピレンブロック共重合体(BPP-1)75重量%とエチレン・α-オレフィンランダム共重合体エラストマー(E-1)25重量%混合した樹脂組成物とする以外は実施例1と同様に積層フィルムを得た。本発明の積層フィルムとして要求特性を全て満足していた。
【0065】
実施例4
支持層をエチレン・プロピレンブロック共重合体(BPP-1)75重量%と直鎖状低密度ポリエチレン(LL-1)25重量%混合した樹脂組成物とする以外は実施例1と同様に積層フィルムを得た。積層フィルムを得た。本発明の積層フィルムとして要求特性を全て満足していた。
【0066】
実施例5
支持層をエチレン・プロピレンブロック共重合体(BPP-1)80重量%とエチレン・α-オレフィンランダム共重合体エラストマー(E-1)10重量%、直鎖状低密度ポリエチレン(LL-1)10重量%混合した樹脂組成物とする以外は実施例1と同様に積層フィルムを得た。本発明の積層フィルムとして要求特性を全て満足していた。
【0067】
実施例6
ヒートシール層として、エチレン・プロピレンランダム共重合体(PP-1)40重量%と直鎖状低密度ポリエチレン(LL-1)50重量%と高密度ポリエチレン(PE-1)5重量%、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体エラストマー(E-1)5重量%混合した樹脂組成物とする以外は、実施例1と同様に積層フィルムを得た。本発明の積層フィルムとして要求特性絵を全て満足していた。
【0068】
比較例1
支持層をエチレン・プロピレンブロック共重合体(BPP-1)単体とする以外は、実施例1と同様に積層フィルムを得た。得られたフィルムを実施例1と同様に評価した。支持層にポリエチレン系樹脂の添加がないため、200℃熱処理剥離後の破断伸度が低く、耐蓋裂け性に劣り、積層フィルムの要求特性を満足するものではなかった。
【0069】
比較例2
支持層のエチレン・プロピレンブロック共重合体(BPP-1)をホモポリプロピレン(PP-2)とする以外は、実施例1と同様に積層フィルムを得た。得られたフィルムを実施例1と同様に評価した。支持層のホモポリプロピレン(PP-2)の結晶性が高いため、製膜中にフィルム破れが起って製膜性に劣り、200℃熱処理剥離後の破断伸度が極めて低く耐蓋裂け性に劣り、積層フィルムの要求特性を満足するものではなかった。
【0070】
比較例3
支持層をホモポリプロピレン(PP-2)95重量%とエチレン・α-オレフィンランダム共重合体エラストマー(E-1)5重量%混合した樹脂組成物として、積層フィルムの厚さは50μmでヒートシール層の厚さを30μmにした以外は実施例1と同様に積層フィルムを得た。得られたフィルムを実施例1と同様に評価した。ヒートシール層が厚いために製膜時のフィルム巻取り時にシワが入って製膜性に劣り、200℃熱処理剥離後の破断伸度、破断強度が低く、ヒートシール被着体からの剥離時に糸引きが発生し剥離外観が悪く、積層フィルムの要求特性を満足するものではなかった。
【0071】
比較例4
支持層をホモポリプロピレン(PP-2)50重量%とエチレン・α-オレフィンランダム共重合体エラストマー(E-1)50重量%混合した樹脂組成物とする以外は実施例1と同様に積層フィルムを得た、得られたフィルムを実施例1と同様に評価した。エチレン・α-オレフィンランダム共重合体エラストマー(E-1)の割合が多いため巻取り時にシワが入り、200℃熱処理剥離後の破断伸度は満足するが、破断強度が低くて剛性がないため耐蓋裂け性に劣り、打ち抜き性が悪く、積層フィルムの要求特性を満足するものではなかった。
【0072】
比較例5
支持層をエチレン・プロピレンブロック共重合体(BPP-1)98重量%とエチレン・α-オレフィンランダム共重合体エラストマー(E-1)2重量%混合した樹脂組成物を用い、ヒートシール層として、エチレン・プロピレンランダム共重合体(PP-1)90重量%と直鎖状低密度ポリエチレン(LL-1)10重量%混合した樹脂組成物とした以外は、実施例1と同様に積層フィルムを得た。得られたフィルムを実施例1と同様に評価した。200℃熱処理剥離後の破断伸度が低く、ヒートシール強度が強すぎて、積層フィルムの要求特性を満足するものではなかった。
【0073】
比較例6
支持層をエチレン・プロピレンブロック共重合体(BPP-1)98重量%とエチレン・α-オレフィンランダム共重合体エラストマー(E-1)2重量%混合した樹脂組成物を用い、ヒートシール層として、エチレン・プロピレンランダム共重合体(PP-1)10重量%、直鎖状低密度ポリエチレン(LL-1)10重量%、高密度ポリエチレン70重量%、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体エラストマー(E-1)10重量%を混合した樹脂組成物とした以外は、実施例1と同様に積層フィルムを得た。得られたフィルムを実施例1と同様に評価した。200℃熱処理剥離後の破断伸度が低く、ヒートシール強度が低く、積層フィルムの要求特性を満足するものではなかった。
【0074】
【0075】
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の積層フィルムは、優れた易開封性を有し、開封時の蓋裂けを抑制し、さらに、二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリエステルフィルム、印刷紙、金属箔の少なくとも1層以上の他基材の片面に積層体とすることにより食品や医療用用具、雑貨等を充填する包装体として好適に用いることができる。