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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】Kセグメントの落込み防止方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/08 20060101AFI20240826BHJP
   E21D 11/04 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
E21D11/08
E21D11/04 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020168382
(22)【出願日】2020-10-05
(65)【公開番号】P2022060732
(43)【公開日】2022-04-15
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】請川 誠
(72)【発明者】
【氏名】小林 修
(72)【発明者】
【氏名】中山 卓人
(72)【発明者】
【氏名】市川 政美
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】永吉 真也
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104632247(CN,A)
【文献】実開平02-093397(JP,U)
【文献】特開2019-100066(JP,A)
【文献】特開2002-220995(JP,A)
【文献】特開平02-125099(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110953000(CN,A)
【文献】特開平11-141288(JP,A)
【文献】特開2020-159180(JP,A)
【文献】特開2017-106305(JP,A)
【文献】実開平05-071299(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/08
E21D 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド工法において、掘削後にシールド機内で周方向に組み立てられる複数のセグメントの内、最後に連結されるKセグメントの落込み防止方法であって、
周方向に組み立てられるセグメントは、標準部に用いられる平面視で矩形状のAセグメントと、片側の側面(Kセグメント側)だけが傾斜状に形成された2つのBセグメントと、これらBセグメントの間にトンネル内空側から半径方向に移動させて前記Bセグメントに連結されるKセグメントとから構成されるとともに、前記周方向に組み立てられる各セグメントの継手位置は、坑口側に隣接する周方向のセグメントの継手位置に対してトンネル周方向に異なるように配置されるとともに、更に坑口側に隣接するセグメントを1つ飛ばした周方向のセグメントの継手位置とトンネル周方向に同じ位置になるように配置され、
トンネル周方向に組み立てられる複数のセグメントの内、最後に連結されるKセグメントをトンネル内空側から半径方向に移動させて両側のセグメントに連結し設置したならば、
前記Kセグメントのトンネル内空側への移動を防止するための支持材を配設するとともに、前記支持材を前記Kセグメントに周方向に隣接するBセグメント又は前記Kセグメントにトンネル軸方向に隣接するAセグメントのみにおいて、あと施工アンカーによって固定したことを特徴とするKセグメントの落込み防止方法。
【請求項2】
前記Kセグメントのトンネル周方向両側部のそれぞれにおいて、前記Kセグメントと、トンネル周方向に隣接するセグメントとに跨がるように複数本の支持材を配設し、前記支持材を前記トンネル周方向に隣接するセグメントのみにおいて、あと施工アンカーによって固定した請求項1記載のKセグメントの落込み防止方法。
【請求項3】
前記Kセグメントを跨いでトンネル周方向に隣接する両側のセグメント間に横架するように複数本の支持材を配設し、前記支持材を前記両側のセグメントのみにおいて、あと施工アンカーによって固定した請求項1記載のKセグメントの落込み防止方法。
【請求項4】
前記Kセグメントのトンネル周方向両側部のそれぞれにおいて、前記Kセグメントと、トンネル周方向に隣接するセグメントとに跨がるとともに、トンネル軸方向に隣接する両側のセグメント間に横架するように支持材を配設し、前記支持材を前記トンネル軸方向に隣接する両側のセグメントのみにおいて、あと施工アンカーによって固定した請求項1記載のKセグメントの落込み防止方法。
【請求項5】
前記支持材と各セグメントとの間に小片状の緩衝材を介在させることにより、荷重作用点を明確化する請求項1~いずれかに記載のKセグメントの落込み防止方法。
【請求項6】
前記緩衝材に圧力検知手段を設け、作用荷重を管理する請求項記載のKセグメントの落込み防止方法。
【請求項7】
前記支持材に歪み検出手段を設け、支持材の応力を管理する請求項5、6いずれかに記載のKセグメントの落込み防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド工法において、掘削後にシールド機内の後方で周方向に組み立てられるセグメントに係り、特に周方向に最後に横断面内閉合方式で連結されるKセグメントのトンネル内空側への落込み防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、都市トンネルのシールド工法では、シールド機で掘削を行いながら、該シールド機のスキンプレート内の後方で、断面円弧状のセグメントを周方向に組立てるとともに、組み立て済みのセグメントに対してトンネル軸方向に接続し、連続するトンネルを構築するようにしている。この場合、トンネル周方向の継手は一般的に「ピース間継手」と呼ばれ、組立て済みのセグメントに対する継手は一般的に「リング間継手」と呼ばれている。
【0003】
周方向に組み立てられる複数のセグメントの内、最後に連結されるセグメントを「Kセグメント」と呼んでいるが、このKセグメントの設置方法としては、横断面内閉合方式と軸方向挿入閉合方式とがある。前者の横断面内閉合方式は図11に示されるように、Kセグメント50をトンネルの内空側から半径方向に移動させて両側に隣接するセグメント51、51に連結させる方式であり、後者の軸方向挿入閉合方式は図12に示されるように、Kセグメント50をトンネルの切羽側からトンネル軸方向に移動させて両側に隣接するセグメント51、51に連結させる方式である。
【0004】
Kセグメントが横断面内閉合方式の場合、閉合後に、シールド機のテールシール部がセグメントを通過する時や通過した後に、テールシール圧、裏込注入圧がセグメントに作用するようになるとともに、テールシールから外部に露出した部分に土圧、水圧等が作用するようになり、セグメントに軸力が作用するようになる。その際、Kセグメントを保持する継手の強度が不足した場合、Kセグメントがトンネル内空側方向に変位し、その変位に伴い隙間が生じ、外部から水や土砂が坑内に流入するおそれがあった。
【0005】
Kセグメントの落込みを防止する方法としては、セグメントリングの内側に早期に二次覆工を行う方法やH鋼などの補強鋼材をセグメントリングの内側に沿って配設する方法などが考えられる。更に下記特許文献1には、 掘削されたトンネル坑壁の周方向に沿って環状に形成され、トンネル支保を構成するトンネルライナーの閉合方法であって、分割した複数のピースを順次接続し、最後にキーライナーを介装することによって環状に閉合するトンネルライナーの閉合方法において、前記キーライナーの接合面にピン或いは溝を立設し、前記キーライナーと周方向で隣接するピースの接合面の前記ピン或いは溝と対応する位置にはそれぞれ溝或いはピンを形成し、前記キーライナーの周方向両側面は、該キーライナーの半径方向の挿入方向に平行に形成されており、前記溝は、その一端がトンネルライナーの半径方向に開放され、全体が鉤状で且つ前記ピンの軸部が嵌合する様に構成されており、前記隣接するピース間の空間に前記キーライナーを半径方向内方から挿入し、キーライナー或いは隣接するピースのいずれかの前記接合面に立設された前記ピンを前記溝に挿入することにより、前記キーライナーを前記隣接するピース間に配置し、以てトンネルライナーを環状に閉合するトンネルライナーの閉合方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-131985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、セグメントリングの内側に二次覆工を行う方法やH鋼などの補強鋼材をセグメントリングの内側に沿って配設する方法の場合は、非常に大掛かりな工事になるとともに、セグメントリングの内側に配設した配管や設備を一時的に撤去する必要があり、工期の長期化と共に、工費が増大する等の問題点があった。また、前記特許文献1に係る方法の場合は、セグメントの継手構造を改めて見直す必要がある等の問題点があった。
【0008】
そこで本発明の主たる課題は、シールド工法において、周方向に組み立てられるセグメントの内、最後に横断面内閉合方式で連結されるKセグメントの落込みをしっかりと防止する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、シールド工法において、掘削後にシールド機内で周方向に組み立てられる複数のセグメントの内、最後に連結されるKセグメントの落込み防止方法であって、
周方向に組み立てられるセグメントは、標準部に用いられる平面視で矩形状のAセグメントと、片側の側面(Kセグメント側)だけが傾斜状に形成された2つのBセグメントと、これらBセグメントの間にトンネル内空側から半径方向に移動させて前記Bセグメントに連結されるKセグメントとから構成されるとともに、前記周方向に組み立てられる各セグメントの継手位置は、坑口側に隣接する周方向のセグメントの継手位置に対してトンネル周方向に異なるように配置されるとともに、更に坑口側に隣接するセグメントを1つ飛ばした周方向のセグメントの継手位置とトンネル周方向に同じ位置になるように配置され、
トンネル周方向に組み立てられる複数のセグメントの内、最後に連結されるKセグメントをトンネル内空側から半径方向に移動させて両側のセグメントに連結し設置したならば、
前記Kセグメントのトンネル内空側への移動を防止するための支持材を配設するとともに、前記支持材を前記Kセグメントに周方向に隣接するBセグメント又は前記Kセグメントにトンネル軸方向に隣接するAセグメントのみにおいて、あと施工アンカーによって固定したことを特徴とするKセグメントの落込み防止方法が提供される。
【0010】
上記請求項1記載の発明では、Kセグメントを設置したならば、該Kセグメントのトンネル内空側への移動を防止するための支持材を配設するとともに、前記支持材を前記Kセグメントに周方向に隣接するBセグメント又は前記Kセグメントにトンネル軸方向に隣接するAセグメントのみにおいて、あと施工アンカーによって固定するようにする。前記支持材はトンネル全周に及ぶような大規模なものではなく、Kセグメントの周辺部位でKセグメントがトンネル内空側へ変位しないように保持するだけの比較的小規模な装置であるため、セグメントリングの内側に配設した配管や設備を一時的に撤去する必要はなく、工期の長期化を招くことがないとともに、工費の増大も僅かで済むようになる。
【0011】
請求項に係る本発明として、前記Kセグメントのトンネル周方向両側部のそれぞれにおいて、前記Kセグメントと、トンネル周方向に隣接するセグメントとに跨がるように複数本の支持材を配設し、前記支持材を前記トンネル周方向に隣接するセグメントのみにおいて、あと施工アンカーによって固定した請求項1記載のKセグメントの落込み防止方法が提供される。
【0012】
上記請求項記載の発明は、前記支持材による第1形態例を示したものである。具体的には、Kセグメントのトンネル周方向両側部のそれぞれにおいて、前記Kセグメントと、トンネル周方向に隣接するセグメントとに跨がるように複数本の支持材を配設したならば、これらの支持材を前記トンネル周方向に隣接するセグメントのみにおいて、あと施工アンカーによって固定するようにしたものである。
【0013】
請求項に係る本発明として、前記Kセグメントを跨いでトンネル周方向に隣接する両側のセグメント間に横架するように複数本の支持材を配設し、前記支持材を前記両側のセグメントのみにおいて、あと施工アンカーによって固定した請求項1記載のKセグメントの落込み防止方法が提供される。
【0014】
上記請求項記載の発明は、前記支持材による第2形態例を示したものである。具体的には、Kセグメントを跨いでトンネル周方向に隣接する両側のセグメント間に横架するように複数本の支持材を配設したならば、これら支持材を前記両側のセグメント側でのみ、あと施工アンカーによって固定するようにしたものである。
【0015】
請求項に係る本発明として、前記Kセグメントのトンネル周方向両側部のそれぞれにおいて、前記Kセグメントと、トンネル周方向に隣接するセグメントとに跨がるとともに、トンネル軸方向に隣接する両側のセグメント間に横架するように支持材を配設し、前記支持材を前記トンネル軸方向に隣接する両側のセグメントのみにおいて、あと施工アンカーによって固定した請求項1記載のKセグメントの落込み防止方法が提供される。
【0016】
上記請求項記載の発明は、前記支持材による第形態例を示したものである。具体的には、Kセグメントのトンネル周方向両側部のそれぞれにおいて、前記Kセグメントと、トンネル周方向に隣接するセグメントとに跨がるとともに、トンネル軸方向に隣接する両側のセグメント間に横架するように支持材を配設したならば、これら支持材を前記トンネル軸方向に隣接する両側のセグメントのみにおいて、あと施工アンカーによって固定するようにしたものである。
【0017】
請求項に係る本発明として、前記支持材と各セグメントとの間に小片状の緩衝材を介在させることにより、荷重作用点を明確化する請求項1~いずれかに記載のKセグメントの落込み防止方法が提供される。
【0018】
上記請求項記載の発明は、荷重作用点を明確化するために、前記支持材と各セグメントとの間に小片状の緩衝材を介在させるようにしたものである。
【0019】
請求項に係る本発明として、前記緩衝材に圧力検知手段を設け、作用荷重を管理する請求項記載のKセグメントの落込み防止方法が提供される。
【0020】
上記請求項記載の発明は、前記緩衝材に圧力検知手段を設け、作用荷重を管理するようにしたものである。
【0021】
請求項に係る本発明として、前記支持材に歪み検出手段を設け、支持材の応力を管理する請求項5、6いずれかに記載のKセグメントの落込み防止方法が提供される。
【0022】
上記請求項記載の発明は、前記支持材に歪み検出手段を設け、支持材の応力を管理するようにしたものである。
【発明の効果】
【0023】
以上詳説のとおり本発明によれば、シールド工法において、周方向に組み立てられるセグメントの内、最後に横断面内閉合方式で連結されるKセグメントの落込みをしっかりと防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】シールド機1の縦断面図である。
図2】セグメントの配置パターンを示す展開図である。
図3】第1形態例に係るKセグメントの支持態様を示す要部展開図である。
図4】(A)は図3のIV(A)-IV(A)線矢視図、(B)は図3のIV(B)-IV(B)線矢視図である。
図5】第2形態例に係るKセグメントの支持態様を示す要部展開図である。
図6】(A)は図5のVI(A)-VI(A)線矢視図、(B)は図5のVI(B)-VI(B)線矢視図である。
図7】第3形態例に係るKセグメントの支持態様を示す要部展開図である。
図8】(A)は図7のVIII(A)-VIII(A)線矢視図、(B)は図7のVIII(B)-VIII(B)線矢視図である。
図9】第1形態例において、緩衝材19を配設した場合の力学状態説明図である。
図10】第2形態例において、緩衝材19を配設した場合の力学状態説明図である。
図11】Kセグメントの横断面内閉合方式の説明図である。
図12】Kセグメントの軸方向挿入閉合方式の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0026】
〔シールド工法〕
図1に示されるシールド機1は泥水加圧式の例であり、シールド本体2の前端部に設けられた隔壁3とカッタヘッド4との間にはカッタチャンバ5が区画され、このカッタチャンバ5に臨ませて送泥管6と排泥管7とが夫々開口して設けられている。一方、シールド機1の外殻となるスキンプレート8内の後方側には、セグメント組立装置10(エレクター装置)が配置され、掘進に伴ってスキンプレート8内面に周方向に複数のピースからなるセグメント11、11…をリング状に組み立てるようになっている。このシールド機1の周部には、サポートフレームに支持されて円周方向に沿って適宜の間隔で多数のシールドジャッキ9、9…が配置され、これらシールドジャッキ9、9…が組み立てたセグメント11の端面に対して当接した状態で伸長させることによってシールド機1が前進するようになっている。前記シールド機1の後方では順次、シールテール20から露出した部分から順に、セグメント11の背面側に裏込材21が所定の圧力状態で充填される。なお、本例ではシールド機1として泥水加圧式を示したが、これに限らず泥水式、土圧式、泥土圧式等、種々の方式が存在する。
【0027】
〔セグメント〕
前記シールド機1の機内で、周方向に配置され、全体として円形に閉合される各セグメント11は、図2に示されるように、標準部に用いられる平面視で矩形状のAセグメント12、12…と、片側の側面(Kセグメント側)だけが傾斜状に形成された2つのBセグメント13、13と、これらBセグメント13、13の間にトンネル内空側から半径方向に移動させて前記Bセグメント13、13に連結されるKセグメント14とから構成されている。これらの各セグメント12、13、14はピース間継手によって相互に連結されている。
【0028】
前記リング状に組み立てられた各セグメント11、11…の継手位置は、坑口側に隣接する周方向のセグメントの継手位置に対してトンネル周方向に異なるように配置されるとともに、更に坑口側に隣接するセグメントを1つ飛ばした周方向のセグメントの継手位置とトンネル周方向に同じ位置になるように配置されている。すなわち、いわゆる千鳥配置状として継ぎ目位置がトンネル方向に直線状に連続しないようにしている。トンネル軸方向に隣接するセグメント同士は、リング間継手によって相互に連結されている。
【0029】
前記セグメントリング11では、自重の他に、セグメント11をシールド機1のテールシール20が通過する時や通過した後に、テールシール圧、裏込注入圧、テールシール20から外部に露出した部分に作用する土圧、水圧等によってセグメントリング11には軸力が発生する。そして、この軸力に対してセグメント11の継手に強度不足があった場合、前記Kセグメント14がトンネル内空側に移動する落込みが発生するおそれがあった。
【0030】
本発明では、前記Kセグメント14の落込みを防止するために、前記Kセグメント14のトンネル内空側への移動を防止するために支持材を配設するとともに、定着手段によって前記支持材を固定するようにしたものである。
【0031】
以下、前記支持材による支持形態例を順に説明する。
【0032】
<第1形態例>
図3及び図4は、本発明の第1形態例を示したものである。
【0033】
第1形態例に係るKセグメント14の支持形態は、図3に示されるように、Kセグメント14のトンネル周方向両側部のそれぞれにおいて、前記Kセグメント14と、トンネル周方向に隣接するセグメント13とに跨がるように複数本の支持材15、15…を配設したならば、これらの支持材15、15…を前記トンネル周方向に隣接するセグメント13に定着手段16によって固定するようにしたものである。
【0034】
具体的には、トンネル周方向に組み立てられる複数のセグメントの内、最後に連結されるKセグメント14をトンネル内空側から半径方向に移動させて両側のセグメント(Bセグメント)13、13に連結し設置したならば、所定長さの支持材15を複数本、図示例では10本ほど持ち込む。これらの支持材15は断面溝形形状の形材が好適に用いられる。溝形型鋼の場合は、所定以上の剛性を有するとともに、セグメントに対して密着して当接させることができる。
【0035】
そして、前記Kセグメント14とトンネル周方向に隣接するBセグメント13との境界部において、該境界部を跨ぐように、5本の支持材15をトンネル周方向に沿って配設する。この際、Kセグメント14側の長さが短く、隣接するBセグメント13側の長さが長くなるように配設するのが望ましい。そして、これらの支持材15を前記Bセグメント13側において、定着手段16によって固定するようにする。前記定着手段としては、あと施工アンカーを好適に採用することができる。あと施工アンカーとしては、金属系アンカー、接着系アンカーのいずれでもよい。なお、予め前記Bセグメント13のあと施工アンカー位置に、事前に金属系アンカー又は接着系アンカーのための孔を形成しておくと作業を効率化することができる。前記支持材15の固定に接着剤を用いることもできる。この場合は、好ましくはセグメント当接面の全面、少なくとも隣接するBセグメント13に対する当接面に接着剤を塗布するようにすればよい。
【0036】
図4に示されるように、前記支持材15は所要部位にだけ限定的に設置されるものであり、セグメントリングの内側に配設した配管や設備を一時的に撤去する必要もなく、Kセグメント14の落込みを工期の長期化や工費増大を招くことなく防止することが可能になる。
【0037】
<第2形態例>
次に、図5及び図6に基づいて、本発明の第2形態例について詳述する。
【0038】
第2形態例に係るKセグメント14の支持形態は、図5に示されるように、前記Kセグメント14を跨いでトンネル周方向に隣接する両側のセグメント(Bセグメント)13、13間に横架するように複数本の支持材17、17…を配設したならば、これら支持材17、17…を前記両側のBセグメント13、13に定着手段16によって固定するようにしたものである。
【0039】
具体的には、最後に連結されるKセグメント14をトンネル内空側から半径方向に移動させて両側のセグメント(Bセグメント)13、13に連結し設置したならば、所定長さの支持材17を複数本、図示例では5本ほど持ち込む。これらの支持材17は断面溝形形状の形材が好適に用いられる。
【0040】
そして、前記Kセグメント14を跨いで、トンネル周方向に隣接する両側のBセグメント13、13間に横架するように、トンネル周方向に沿って前記支持材17を配設したならば、これらの支持材17を前記Bセグメント13、13において、定着手段16によって固定するようにする。前記定着手段としては、あと施工アンカーを好適に採用することができる。また、前記支持材15の固定に接着剤を用いる場合は、好ましくはセグメント当接面の全面、少なくとも隣接するBセグメント13に対する当接面に接着剤を塗布するようにすればよい。
【0041】
図6に示されるように、前記支持材17は所要部位にだけ限定的に設置されるものであり、セグメントリングの内側に配設した配管や設備を一時的に撤去する必要もなく、Kセグメント14の落込みを工期の長期化や工費増大を招くことなく防止することが可能になる。
【0042】
<第3形態例>
更に、図7及び図8に基づいて、本発明の第3形態例について詳述する。
【0043】
第3形態例に係るKセグメント14の支持形態は、図7に示されるように、前記Kセグメント14のトンネル周方向両側部のそれぞれにおいて、前記Kセグメント14と、トンネル周方向に隣接するセグメント(Bセグメント)13とに跨がるとともに、トンネル軸方向に隣接する両側のセグメント(Aセグメント)12、12間に横架するように支持材18を配設し、前記トンネル軸方向に隣接する両側のセグメント12、12に定着手段によって前記支持材18を固定するようにしたものである。
【0044】
具体的には、最後に連結されるKセグメント14をトンネル内空側から半径方向に移動させて両側のセグメント(Bセグメント)13、13に連結し設置したならば、所定長さの支持材18を2本持ち込む。これらの支持材18は基本的には断面溝形形状を成すが、幅寸法が大きく一般的な形材をそのまま用いることはできないため個別製作品となる。両側と中央とにそれぞれ起立片を有する溝形断面形状が好適に用いられる。
【0045】
前記Kセグメント14と、トンネル周方向に隣接するBセグメント13とに跨がるとともに、トンネル軸方向に隣接する両側のAセグメント12、12間に横架するように前記支持材18を配設する。そして、この支持材18を前記Aセグメント12、12部分において、定着手段16によって固定するようにする。前記定着手段としては、あと施工アンカーを好適に採用することができる。前記支持材18の固定に接着剤を用いる場合は、好ましくはセグメント当接面の全面、少なくとも隣接するBセグメント13とAセグメント12との当接面に対して接着剤を塗布するようにすればよい。
【0046】
<他の形態例>
上記第1形態例から第3形態例においては、前記支持材15、17、18と各セグメント12~14との間に小片状の緩衝材19を介在させることにより、荷重作用点を明確化することができる。
【0047】
例えば、図9に示されるように、第1形態例の場合は、セグメント14、13と支持材15との間に緩衝材19を介在させる。具体的には、Kセグメント14と支持材15との間に緩衝材19を介在させるとともに、Bセグメント13と支持材15との間に緩衝材19を介在させ、更にあと施工アンカー16部位にもBセグメントと支持材15との間に緩衝材19を介在させる。あと施工アンカーの引張力をTとした場合は、引張力Tは下式(1)によって表される。
T=P(1+L2/L1) ……(1)
【0048】
引張力Tは、Pや反力Rの作用位置の影響を大きく受けることが分かる。例えば、L1=L2の場合はT=2Pとなり、L1=1/2*L2の場合はT=3Pとなる。Tを極力小さくしたい場合は、L2/L1を小さくすればよい。すなわち、L2に対してL1を大きくすればよい。このような試算で、あと施工アンカーの引張力を設定することができるが、PとRの作用位置が想定と大きく変わると不具合が生じる可能性があるため、PとRの作用位置を確実に明確化するために、前記支持材15とセグメント13、14との間に緩衝材19を配設するようにする。
【0049】
図10は第2形態例の場合の例を示したものである。具体的には、Kセグメント14と支持材17との間に緩衝材19を介在させるとともに、あと施工アンカー16部位にもBセグメントと支持材17との間に緩衝材19を介在させるようにする。
【0050】
上記緩衝材を介在させるケースでは、作用する加重を把握するために、前記緩衝材19に圧力検知手段を設けるようにしてもよい。さらに、支持材15、17…の応力を管理するために、前記支持材15、17…に歪み検出手段を設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…シールド機、2…シールド本体、3…隔壁、4…カッタヘッド、5…カッタチャンバ、6…送泥管、7…排泥管、8…スキンプレート、9…シールドジャッキ、10…セグメント組立装置、11…セグメント、12…Aセグメント、13…Bセグメント、14…Kセグメント、15・17・18…支持材、16…定着手段(あと施工アンカー等)、20…テールシール、21…裏込材
図1
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