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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】オシレータ回路
(51)【国際特許分類】
   H03L 7/083 20060101AFI20240826BHJP
   H03L 7/099 20060101ALI20240826BHJP
   H03K 5/131 20140101ALI20240826BHJP
   H03K 5/26 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
H03L7/083
H03L7/099 180
H03K5/131
H03K5/26 G
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020169769
(22)【出願日】2020-10-07
(65)【公開番号】P2022061684
(43)【公開日】2022-04-19
【審査請求日】2023-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】辻 将信
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-017931(JP,A)
【文献】特開2019-022136(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0052280(US,A1)
【文献】特開平07-245603(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0113660(US,A1)
【文献】特開2009-302692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03L 7/00- 7/26
H03K 5/00ー 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入同期型のオシレータ回路であって、
可変遅延回路を含むリングオシレータであり、前記可変遅延回路の遅延量に応じた周波数を有するオシレータクロックを生成する可変周波数発振器と、
前記オシレータクロックの周波数が基準クロックに応じた目標周波数に近づくように、前記可変遅延回路を制御するフィードバック回路と、
前記リングオシレータに挿入された位相補間器を含み、前記位相補間器は、前記オシレータクロックと前記基準クロックを位相補間して補間クロックを生成し、当該補間クロックを前記可変遅延回路の入力に供給する、エッジ注入回路と、
を備え、
前記位相補間器は、イネーブル状態、ディセーブル状態が切り替え可能であり、前記イネーブル状態において、前記オシレータクロックと前記基準クロックの位相を、位相比率の設定値に応じて内分した位相を有する前記補間クロックを出力し、前記ディセーブル状態において、前記オシレータクロックに応じた位相を有する前記補間クロックを出力するように構成されることを特徴とするオシレータ回路。
【請求項2】
前記位相補間器は、
キャパシタと、
M個の駆動ユニットであって、それぞれが、前記基準クロックおよび前記オシレータクロックを受け、それぞれの出力が前記キャパシタと接続され、第1状態において前記基準クロックに応じて前記キャパシタを駆動し、第2状態において前記オシレータクロックに応じて前記キャパシタを駆動するM個の駆動ユニットと、
を含むことを特徴とする請求項に記載のオシレータ回路。
【請求項3】
前記位相補間器は、
ウィンドウ信号がネゲートされる期間、前記ディセーブル状態となり、前記M個の駆動ユニットがすべて、前記第2状態となり、
ウィンドウ信号がアサートされる期間、前記イネーブル状態となり、前記M個の駆動ユニットのうちのk個(k≦M)が、前記第1状態となることを特徴とする請求項に記載のオシレータ回路。
【請求項4】
前記オシレータクロックのNサイクル(N≧2)に1回、アサートされる前記ウィンドウ信号を生成するウィンドウ発生器をさらに備えることを特徴とする請求項に記載のオシレータ回路。
【請求項5】
前記オシレータクロックのNサイクル(N≧2)に1回、アサートされるウィンドウ信号を生成するウィンドウ発生器をさらに備え、
前記位相補間器は、前記ウィンドウ信号がアサートされる期間、前記イネーブル状態となり、前記ウィンドウ信号がネゲートされる期間、前記ディセーブル状態となることを特徴とする請求項1に記載のオシレータ回路。
【請求項6】
注入同期型のオシレータ回路であって、
ウィンドウ信号を生成するウィンドウ発生器と、
可変遅延回路と、
基準クロックと前記可変遅延回路の出力に応じた内部クロックを受け、出力が前記可変遅延回路の入力と接続されており、(i)前記ウィンドウ信号がアサートされる期間、前記内部クロックと前記基準クロックの位相を、位相比率の設定値に応じて内分した位相を有する補間クロックを出力し、(ii)前記ウィンドウ信号がネゲートされる期間、前記内部クロックを出力する位相補間器と、
前記内部クロックの位相と前記基準クロックそれぞれの位相および/または周波数に応じて前記可変遅延回路の遅延量を制御するフィードバック回路と、
を備えることを特徴とするオシレータ回路。
【請求項7】
前記位相補間器は、
キャパシタと、
M個の駆動ユニットであって、それぞれが、前記基準クロックおよび前記内部クロックを受け、それぞれの出力が前記キャパシタと接続され、第1状態において前記基準クロックに応じて前記キャパシタを駆動し、第2状態において前記内部クロックに応じて前記キャパシタを駆動するM個の駆動ユニットと、
を含むことを特徴とする請求項に記載のオシレータ回路。
【請求項8】
注入同期型のオシレータ回路であって、
可変遅延回路を含むリングオシレータであり、前記可変遅延回路の遅延量に応じた周波数を有するオシレータクロックを生成する可変周波数発振器と、
前記オシレータクロックの周波数が基準クロックに応じた目標周波数に近づくように、前記可変遅延回路を制御するフィードバック回路と、
前記オシレータクロックと前記基準クロックの位相を、位相比率の設定値に応じて内分した位相を有する補間クロックを出力する位相補間器と、
前記補間クロックと前記オシレータクロックを受け、一方を選択して前記可変遅延回路の入力に供給するマルチプレクサと、
を備えることを特徴とするオシレータ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オシレータ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
さまざまなIC(Integrated Circuit)に、基準クロックから任意周波数のクロックを生成する周波数シンセサイザが利用される。こうした周波数シンセサイザとして、PLL回路が広く用いられる。図1(a)~(c)は、PLL回路の基本アーキテクチャを説明するブロック図である。
【0003】
図1(a)には、アナログPLL回路1が示される。アナログPLL回路1は、位相比較器(PFD:Phase Frequency Detector)10、チャージポンプ回路12、ローパスフィルタ14、電圧制御発振器(VCO:Voltage Controlled Oscillator)16、分周器18を備える。VCO16は、アナログの制御電圧VCTRLに応じた周波数で発振する。VCO16の出力クロックCLK_VCOは、分周器18により1/N分周される。位相検出器10は、分周後のクロックCLK_DIVと基準クロックCLK_REFの位相差を検出し、チャージポンプ回路12を制御する。ローパスフィルタ14はチャージポンプ回路12の出力電圧を平滑化するループフィルタであり、制御電圧VCTRLを生成する。
【0004】
図1(a)のアナログPLL回路1は古くからさまざまなアプリケーションで用いられており信頼性が高いが、ループフィルタに起因してチップサイズが大きくなるという問題がある。また、十分な性能を発揮するためには、回路設計者が回路のレイアウトを最適化する必要がある。
【0005】
図1(b)には、完全デジタルPLL回路(ADPLL:All Digital PLL)2が示される。ADPLL回路2は、FCW(Frequency Control Word)および基準クロックCLK_REFを受け、基準クロックCLK_REFをFCWに応じて逓倍した出力クロックCLK_DCOを生成する。ADPLL回路2は、周波数位相検出器20、デジタルフィルタ22、デジタル制御発振器(DCO:Digital Controlled Oscillator)24を備える。DCO24は、入力された制御コードDCTRLに応じた周波数で発振する。周波数位相比較器20は、図1の位相比較器10、チャージポンプ回路12、分周器18に相当する機能を有し、TDC(時間-デジタル変換器)、加算器、カウンタで構成される。周波数位相比較器20が生成するデジタル信号は、デジタルフィルタ22によってフィルタリングされ、DCO24に入力される。
【0006】
図1(b)のADPLL回路2は、微細の半導体プロセスで設計しやすいデジタル回路で構成できるため、チップ面積を小さくできるという利点がある。一方、オールデジタルとはいいつつも、周波数位相比較器20やDCO24については、所望の仕様を満たすために回路設計者が回路のレイアウトをマニュアルで最適化する必要がある。
【0007】
図1(c)に、注入同期型PLL回路3(IL-PLL(Injection Locked PLL)とも称する)を示す。IL-PLL回路3は、アナログ回路あるいはデジタル回路のアーキテクチャで設計することができるが、ここではデジタル回路で構成する場合を説明する。IL-PLL回路3は、DCO30、フィードバック回路40、エッジ注入回路50を備える。IL-PLL回路3は、フィードバック制御とフィードフォワード制御のハイブリッドと把握され、図1(b)の周波数位相比較器20、デジタルフィルタ22に相当するフィードバック回路40によるフィードバック制御によって、DCO30の発振周波数を安定化する。エッジ注入回路50は、基準クロックCLK_REFのエッジを切り出し、切り出したエッジをDCO30に注入して出力クロックCLK_DCOの位相を再アライメントする。IL-PLL回路は、エッジの注入の方法に応じて、MDLL(Multiplying Delay Locked Loop)回路とも称される場合もある。
【0008】
IL-PLL回路は、(i)注入同期によりループ帯域が広帯域化されるため、低位相雑音(低ジッタ)化が可能であり、またデジタル回路で構成した場合、(ii)図1(a)の位相比較器10やチャージポンプ回路12が存在しないことから低雑音化が可能であるという利点を有する。加えて、(iii)フィードバック経路による雑音の影響を受けにくくなることから、レイアウトの自由度が高いといえ、したがってP&R(Place and Route)ツールなどの設計支援ツールを用いた自動配置配線でも所望の特性を得られるという特徴を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2017-143398号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】R. Farjad-rad et al., "A 0.2-2GHz 12mW multiplying DLL for low-jitter clock synthesis in highly-integrated data-communication chips", 2002 IEEE International Solid-State Circuits Conference. Digest of Technical Papers (Cat. No.02CH37315), San Francisco, CA, USA, 2002, pp. 56-400
【文献】S. Kundu, B. Kim and C. H. Kim, "A 0.2-to-1.45GHz subsampling fractional-N all-digital MDLL with zero-offset aperture PD-based spur cancellation and in-situ timing mismatch detection", 2016 IEEE International Solid-State Circuits Conference (ISSCC), San Francisco, CA, 2016, pp. 326-327
【文献】R. Wang and F. F. Dai, "A 0.8-1.3 GHz multi-phase injection-locked PLL using capacitive coupled multi-ring oscillator with reference spur suppression", 2017 IEEE Custom Integrated Circuits Conference (CICC), Austin, TX, 2017, pp. 1-4
【文献】H. C. Ngo, K. Nakata, T. Yoshioka, Y. Terashima, K. Okada and A. Matsuzawa, "A 0.42ps-jitter -241.7dB-FOM synthesizable injection-locked PLL with noise-isolation LDO", 2017 IEEE International Solid-State Circuits Conference (ISSCC), San Francisco, CA, 2017, pp. 150-151
【文献】S. Yoo, S. Choi, Y. Lee, T. Seong, Y. Lim and J. Choi, "A 140fsrms-Jitter and -72dBc-Reference-Spur Ring-VCO-Based Injection-Locked Clock Multiplier Using a Background Triple-Point Frequency/Phase/Slope Calibrator", 2019 IEEE International Solid- State Circuits Conference - (ISSCC), San Francisco, CA, USA, 2019, pp. 490-492
【文献】S. Yoo, S. Choi, Y. Lee, T. Seong, Y. Lim and J. Choi, "A Low-Jitter and Low-Reference-Spur Ring-VCO- Based Injection-Locked Clock Multiplier Using a Triple-Point Background Calibrator", IEEE Journal of Solid-State Circuits ( Early Access )
【文献】B. M. Helal, M. Z. Straayer, G. Wei and M. H. Perrott, "A Highly Digital MDLL-Based Clock Multiplier That Leverages a Self-Scrambling Time-to-Digital Converter to Achieve Subpicosecond Jitter Performance", IEEE Journal of Solid-State Circuits, vol. 43, no. 4, pp. 855-863, April 2008
【文献】Y. Lee, T. Seong, S. Yoo and J. Choi, "A Low-Jitter and Low-Reference-Spur Ring-VCO-Based Switched-Loop Filter PLL Using a Fast Phase-Error Correction Technique", IEEE Journal of Solid-State Circuits, vol. 53, no. 4, pp. 1192-1202, April 2018
【文献】G. Tak and K. Lee, "A Low-Reference Spur MDLL-Based Clock Multiplier and Derivation of Discrete-Time Noise Transfer Function for Phase Noise Analysis", IEEE Transactions on Circuits and Systems I: Regular Papers, vol. 65, no. 2, pp. 485-497, Feb. 2018
【文献】T. Liao, J. Su and C. Hung, "Spur-Reduction Frequency Synthesizer Exploiting Randomly Selected PFD", IEEE Transactions on Very Large Scale Integration (VLSI) Systems, vol. 21, no. 3, pp. 589-592, March 2013
【文献】N. Da Dalt, "An Analysis of Phase Noise in Realigned VCOs", IEEE Transactions on Circuits and Systems II: Express Briefs, vol. 61, no. 3, pp. 143-147, March 2014
【文献】W. Deng et al., "A 0.048mm2 3mW synthesizable fractional-N PLL with a soft injection-locking technique", 2015 IEEE International Solid-State Circuits Conference - (ISSCC) Digest of Technical Papers, San Francisco, CA, 2015, pp. 1-3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
IL-PLL回路は、広帯域であるため、非常に低位相雑音(低ジッタ)のクロックを生成できる。しかしながら、IL-PLL回路は、以下で説明するように、周波数ジャンプおよびリファレンススプリアスの問題がある。
【0012】
図2(a)は、通常のPLL回路の周波数変化を示す図であり、図2(b)は、IL-PLL回路における周波数ジャンプを説明する図である。図2(a)に示すように、通常のPLL回路では、基準クロックCLK_REFの周波数fREFが、fc1からfc2に急峻に変動すると、出力クロックの周波数は、時間とともに緩やかに変動後の周波数fc2に近づいていく。
【0013】
これに対してIL-PLL回路では、図2(b)に示すように、基準クロックCLK_REFの周波数変動が発生すると、そのフィードフォワード制御による強制的なエッジリプレイスにより、周波数ジャンプを引き起こす。
【0014】
IL-PLL回路の出力クロックCLK_DCOを、システムクロックとして利用する場合、システムクロックの周波数ジャンプは、システム全体の誤動作を引き起こす可能性がある。
【0015】
周波数シンセサイザの重要な特性のひとつとして、リファレンススプリアス特性がある。図3は、リファレンススプリアスを説明する図である。リファレンススプリアス(Ref-Spur.)は、出力クロックの周波数(キャリア周波数)fcを中心として、基準周波数fREFの整数倍(n=1,2…)、オフセットした周波数f±n×fREFに発生する。
【0016】
高いスプリアスは、RFシステムの性能低下の原因となり、A/DコンバータやD/Aコンバータにおいて、不要な雑音成分となる。従来のIL-PLL回路の出力クロックのスペクトラムには、原理上、不要な周波数成分であるリファレンススプリアスが多く含まれるため、改善が望まれている。
【0017】
本開示は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、周波数ジャンプを抑制し、および/または、リファレンススプリアスを抑制できる注入同期型のオシレータ回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本開示のある態様は、注入同期型のオシレータ回路に関する。オシレータ回路は、オシレータクロックを生成する可変周波数発振器と、オシレータクロックの周波数が基準クロックに応じた目標周波数に近づくように、可変周波数発振器を制御するフィードバック回路と、オシレータクロックと基準クロックを受け、オシレータクロックと基準クロックを位相補間して得られる補間クロックを生成する位相補間器と、を備える。オシレータ回路は、可変周波数発振器のオシレータクロックを補間クロックで置換可能に構成される。
【0019】
本開示の別の態様もまた、注入同期型のオシレータ回路である。オシレータ回路は、ウィンドウ信号を生成するウィンドウ発生器と、可変遅延回路と、基準クロックと可変遅延回路の出力に応じたオシレータクロックを受け、出力が可変遅延回路の入力と接続されており、(i)ウィンドウ信号がアサートされる期間、基準クロックとオシレータクロックを位相補間して得られる補間クロックを出力し、(ii)ウィンドウ信号がネゲートされる期間、オシレータクロックを出力する位相補間器と、オシレータクロックの位相と基準クロックの位相に応じたアップダウン信号を生成する位相比較器と、アップダウン信号に応じて、可変遅延回路の遅延量を制御するループフィルタと、を備える。
【0020】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、あるいは本発明の表現を、方法、装置などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0021】
本開示のある態様によれば、周波数ジャンプを抑制し、および/または、リファレンススプリアスを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1(a)~(c)は、PLL回路の基本アーキテクチャを説明するブロック図である。
図2図2(a)は、通常のPLL回路の周波数変化を示す図であり、図2(b)は、IL-PLL回路における周波数ジャンプを説明する図である。
図3】リファレンススプリアスを説明する図である。
図4】実施形態に係るPLL回路のブロック図である。
図5】位相補間器の動作を説明する図である。
図6図4のPLL回路の動作波形図である。
図7図4のPLL回路のエッジ注入回路の動作波形図である。
図8図8(a)は、図4のPLL回路の周波数変化を示す図であり、図8(b)は、従来のPLL回路の周波数変化を示す図である。
図9図9(a)~(c)は、オシレータクロックのジッタを説明する図である。
図10】位相補間器の構成例を示す回路図である。
図11】PLL回路の構成例を示す回路図である。
図12】変形例1に係るPLL回路の回路図である。
図13】変形例2に係るPLL回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施の形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。またこの概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、実施形態の欠くべからざる構成要素を限定するものではない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0024】
一実施の形態に係る注入同期型のオシレータ回路は、可変周波数発振器、フィードバック回路、エッジ注入回路を備える。可変周波数発振器は、オシレータクロックを生成する。フィードバック回路は、オシレータクロックの周波数が基準クロックに応じた目標周波数に近づくように、可変周波数発振器を制御する。エッジ注入回路は、オシレータクロックと基準クロックを受け、オシレータクロックと基準クロックを位相補間することにより注入エッジを生成し、注入エッジを可変周波数発振器に注入する。
【0025】
基準クロックのエッジを注入エッジとして利用し、可変周波数発振器のクロックとリプレースする従来構成に比べて、周波数ジャンプを抑制することができる。また、リファレンススプリアスも抑制できる。
【0026】
一実施形態において、エッジ注入回路は、オシレータクロックと基準クロックを位相補間して補間クロックを生成する位相補間器を含んでもよい。エッジ注入回路は、補間クロックを注入エッジとして可変周波数発振器に注入してもよい。
【0027】
一実施形態において、可変周波数発振器は、可変遅延回路を含んでもよい。補間クロックは、可変遅延回路の入力に供給されてもよい。位相補間器は、イネーブル状態、ディセーブル状態が切り替え可能であり、イネーブル状態において、補間クロックは、オシレータクロックと基準クロックの位相を、位相比率の設定値に応じて内分した位相を有してもよい。ディセーブル状態において、補間クロックは、オシレータクロックに応じた位相を有してもよい。この構成によれば、位相補間器によって、マルチプレクサと等価の動作を実現できる。
【0028】
一実施の形態において、位相補間器は、キャパシタと、出力がキャパシタと接続されるM個の駆動ユニットと、を含んでもよい。M個の駆動ユニットはそれぞれ、基準クロックおよびオシレータクロックを受け、第1状態において基準クロックに応じてキャパシタを駆動し、第2状態においてオシレータクロックに応じてキャパシタを駆動する。キャパシタを論理ゲートの入力容量で代用することにより、この位相補間器は、論理合成・自動配置配線により設計することができる。
【0029】
一実施の形態において、ウィンドウ信号がネゲートされる期間、M個の駆動ユニットがすべて、第2状態となり、ウィンドウ信号がアサートされる期間、M個の駆動ユニットのうちのk個(k≦M)が、第1状態となってもよい。
【0030】
一実施の形態において、オシレータ回路は、オシレータクロックのNサイクル(N≧2)に1回、アサートされるウィンドウ信号を生成するウィンドウ発生器をさらに備えてもよい。ウィンドウ信号が規定する窓の開く(アサート)タイミング、窓の閉じる(ネゲート)タイミングは、基準クロックに依存しない。したがって、可変周波数発振器が発振している間は基準クロックの有無にかかわらず窓を確実に開閉させることができる。また、窓の開いている期間に基準クロックの注入エッジが確実に含まれるようにタイミング調整することで、ウィンドウ信号に由来するグリッジや高調波発振は発生しない。もし、窓の開いている期間に基準クロックの遷移(エッジ)が発生しない場合には、所定サイクル(逓倍数)に1回の割合で、オシレータクロックの周期が長くなるが、発振が停止することはない。加えて、位相補完器の注入強度が1/2より小さい場合は、その周期の変動を最小限に抑えることができる。このように、一実施形態によれば、従来の問題点のいくつかを解決できる。
【0031】
一実施形態に係る注入同期型のオシレータ回路は、ウィンドウ信号を生成するウィンドウ発生器と、可変遅延回路と、基準クロックと可変遅延回路の出力に応じたオシレータクロックを受け、出力が可変遅延回路の入力と接続されており、(i)ウィンドウ信号がアサートされる期間、基準クロックとオシレータクロックを位相補間して得られる補間クロックを出力し、(ii)ウィンドウ信号がネゲートされる期間、オシレータクロックを出力する位相補間器と、オシレータクロックの位相と基準クロックの位相に応じたアップダウン信号を生成する位相比較器と、アップダウン信号に応じて、可変遅延回路の遅延量を制御するループフィルタと、を備える。
【0032】
位相補間器は、キャパシタと、M個の駆動ユニットと、を含んでもよい。M個の駆動ユニットはそれぞれ、基準クロックおよび内部クロックを受け、それぞれの出力がキャパシタと接続され、第1状態において基準クロックに応じてキャパシタを駆動し、第2状態においてオシレータクロックに応じてキャパシタを駆動するM個の駆動ユニットと、を含んでもよい。
【0033】
(実施の形態)
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0034】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0035】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0036】
図4は、実施形態に係るPLL回路100のブロック図である。PLL回路100は、注入同期方式のオシレータ回路(周波数シンセサイザ)であり、可変周波数発振器200、エッジ注入回路220、フィードバック回路300、ウィンドウ発生器400を備える。
【0037】
可変周波数発振器200は、可変遅延回路210およびインバータ230を含み、可変遅延回路210に設定された遅延量に応じた周波数を有するオシレータクロックCLK_OSCを生成する。このオシレータクロックCLK_OSCは、PLL回路100の出力クロックCLK_DCOとして取り出される。またインバータ230の出力におけるオシレータクロックCLK_OSCを、内部クロックCLK_INTと称する。
【0038】
フィードバック回路300は、オシレータクロックCLK_OSCの周波数が基準クロックCLK_REFに応じた目標周波数fREFに近づくように、可変遅延回路210の遅延量を制御する。フィードバック回路300の構成や制御方式は特に限定されず、公知技術を用いればよい。
【0039】
エッジ注入回路220は、オシレータクロックCLK_OSCと基準クロックCLK_REFを受け、オシレータクロックCLK_OSCと基準クロックCLK_REFを位相補間することにより注入エッジINJ_EDGEを生成し、注入エッジINJ_EDGEを可変周波数発振器200に注入する。
【0040】
本実施の形態において、エッジ注入回路220は、可変周波数発振器200に組み込まれており、ウィンドウ信号INJ_WINDがアサートされる期間、注入エッジINJ_EDGEを出力し、ウィンドウ信号INJ_WINDがネゲートされる期間、内部クロックCLK_INTを出力する。
【0041】
ウィンドウ発生器400は、ウィンドウ信号INJ_WINDを生成する。このウィンドウ信号INJ_WINDは、PLL回路100における注入同期のタイミング(期間)を規定するタイミング信号である。すなわちエッジ注入回路220は、ウィンドウ信号INJ_WINDに応答して、注入エッジINJ_EDGEを可変周波数発振器200に注入する。
【0042】
エッジ注入回路220は、位相補間器250を含む。位相補間器250は、オシレータクロックCLK_OSCと基準クロックCLK_REFを位相補間して補間クロックCLK_PIを生成する。
【0043】
具体的には、位相補間器250は、第1入力IN1に、基準クロックCLK_REFを受け、第2入力IN2に、オシレータクロックCLK_OSCである内部クロックCLK_INTを受ける。位相補間器250は、第1入力IN1の信号(基準クロックCLK_REF)と第2入力IN2の信号(オシレータクロックCLK_INT)を位相補間して得られる補間クロックCLK_PIを生成し、出力OUTに発生する。エッジ注入回路220は、補間クロックCLK_PIを注入エッジINJ_EDEGとして可変周波数発振器200に注入する。
【0044】
図5は、位相補間器250の動作を説明する図である。ここでは第1入力IN1の信号の位相(エッジの発生時刻)φが進んでおり、第2入力IN2の信号の位相φが遅れている場合を例とする。位相補間器250の出力の位相φOUTは、式(1)で表すことができる。
φOUT=φ+k/M×(φ-φ)+τDELAY
={(M-k)×φ+k×φ}/M+τDELAY …(1)
τDELAYは位相補間器250の固有の遅延である。Mは位相補間器250の分解能(階調数)であり、2以上の定数である。kは位相比率の設定値であり、kは0~Mの中から選択可能である。図5には、M=3の場合が示される。つまり、位相補間器250の出力OUTの位相φOUTは、2つの入力IN1とIN2の位相φとφを、k:(M-k)に内分した位相に、遅延τDELAYを追加したものである。k=0のとき、φOUT=φ+τDELAYであり、k=Mのとき、φOUT=φ+τDELAYとなる。
【0045】
図4に戻る。本実施形態において、位相補間器250の出力OUTは、可変遅延回路210の入力と接続され、補間クロックCLK_PIが、可変遅延回路210に供給されている。
【0046】
位相補間器250は、ウィンドウ信号INJ_WINDに応じて、イネーブル状態、ディセーブル状態が切り替え可能に構成される。補間クロックCLK_PIは、イネーブル状態において、オシレータクロックである内部クロックCLK_INTと基準クロックCLK_REFの位相を、位相比率の設定値に応じて内分した位相を有する。つまり、イネーブル状態では、位相補間器250は、位相比率k≠Mの状態で動作する。
【0047】
反対にディセーブル状態において、補間クロックCLK_PIの位相は、オシレータクロックCLK_INTのみの位相情報を含み、基準クロックCLK_REFの位相情報を含まない。つまり、ディセーブル状態では、位相補間器250は、k=Mの状態で動作する。
【0048】
以上がPLL回路100の構成である。続いてその動作を説明する。図6は、図4のPLL回路100の動作波形図である。ここでは説明の簡素化および理解の容易化のため、エッジ注入回路220(位相補間器250)の遅延τDELAYは無視する。
【0049】
なお本明細書において参照する波形図やタイムチャートの縦軸および横軸は、理解を容易とするために適宜拡大、縮小したものであり、また示される各波形も、理解の容易のために簡略化され、あるいは誇張もしくは強調されている。
【0050】
基準クロックCLK_REFの所定サイクルに1回の割合で、ウィンドウ信号INJ_WINDがアサートされる。基準クロックCLK_REFと内部クロックCLK_INTを位相補間して得られる補間クロックCLK_PIのうち、ウィンドウ信号INJ_WINDがアサート(ハイ)の区間に含まれる部分が、注入エッジINJ_EDGEとして利用される。この注入エッジINJ_EDGEが注入されると、オシレータクロックCLK_DCOのエッジが、注入エッジINJ_EDGEのエッジとリプレースされ、強制的な位相同期がかかる。UP_DNは、フィードバック回路300における位相比較の結果を示す。
【0051】
図7は、図4のPLL回路100のエッジ注入回路220の動作波形図である。図7は、エッジ注入期間を拡大して示したものである。この例では、位相補間器250の分解能はM=3である。ウィンドウ信号INJ_WINDがネゲート(ロー)の期間、位相補間器250は、k=3の状態で動作しており、位相補間器250の出力、すなわちオシレータクロックCLK_DCOは、内部クロックCLK_INTに対して、τDELAY遅延している。つまりエッジ注入回路220の位相補間器250は、内部クロックCLK_INTを通過させ、リングオシレータが形成される。
【0052】
ウィンドウ信号INJ_WINDがアサート(ハイ)の期間、位相補間器250は、k=0,1,2,3のいずれかの状態で動作する。位相補間器250の出力、すなわちオシレータクロックCLK_DCOは、内部クロックCLK_INTに対して、τDELAY+k×Δt遅延している。
Δt=|Tref-Tint|/3
つまり、オシレータクロックCLK_DCOのエッジが、補間クロックCLK_PIの注入エッジでリプレースされる。
【0053】
図6図7では、内部クロックCLK_INTが先行する場合を示すが、位相関係が逆転した場合も、同様に動作する。
【0054】
図8(a)は、図4のPLL回路100の周波数変化を示す図であり、図8(b)は、従来のPLL回路の周波数変化を示す図である。図4のPLL回路100によれば、図8(a)に示すように、周波数ジャンプを抑制することができる。
【0055】
図9(a)~(c)は、オシレータクロックのジッタを説明する図である。図9(a)は、オシレータクロックCLK_DCOの波形を示す。図9(b)は、従来のPLL回路のジッタの積算値を、図9(c)は、図4のPLL回路のジッタの積算値を示す。本実施形態によれば、リファレンススプリアスの影響を小さくすることができる。なお、本実施形態ではリファレンススプリアスの低減と引き換えに、RMSジッタがわずかに増加する。
【0056】
図4の構成では、ウィンドウ信号INJ_WINDがアサートされる注入期間における位相比率kに応じて、注入強度を調節することができる。そしてPLL回路100の用途に応じて、注入強度を調整することで、周波数ジャンプの抑制の程度、リファレンススプリアスの抑制の程度を調整できる。
【0057】
またk=Mに設定すれば、従来のPLL回路として動作させることができ、k=0に設定すれば、基準クロックCLK_REFをそのまま注入する従来の注入同期型PLL回路として動作させることもできる。
【0058】
図10は、位相補間器250の構成例を示す回路図である。ENPIは、注入期間における位相比率kを指定する2ビットの設定値である。位相補間器250は、エンコーダ252、論理ゲート254,256、M個(この例ではM=3)の駆動ユニット260_1~260_3、キャパシタCOUTを含む。論理合成・自動配置配線で設計する場合はキャパシタCOUTは論理ゲートの入力容量などで代用すればよい。
【0059】
エンコーダ252は、バイナリの制御コードENPI[1:0]を、負論理のサーモメータコードPIB[2:0]に変換する。論理ゲート254は、ウィンドウ信号INJ_WINDを論理反転し、負論理のウィンドウ信号INJ_WINDBを生成する。
【0060】
論理ゲート256は、サーモメータコードPIB[2:0]の各ビットと、ウィンドウ信号INJ_WINDBの否定論理和をとり、サーモメータコードPI[2:0]を生成する。サーモメータコードPI[2:0]は、ウィンドウ期間(INJ_WIND=H、INJ_WINDB=L)において、PIB[2:0]の反転論理を有し、それ以外の期間(INJ_WIND=B、INJ_WINDB=H)において、オールゼロ[000]となる。
【0061】
各駆動ユニット260は、入力信号IN1,IN2(CLK_REF,CLK_INT)およびサーモメータコードPIB[2:0],PI[2:0]を受ける。
【0062】
各駆動ユニット260は、入力信号IN1(CLK_REF)に応じてその出力が変化する第1状態と、入力信号IN2(CLK_INT)に応じてその出力が変化する第2状態が切りかえ可能である。
【0063】
各駆動ユニット260_i(i=1~3)の状態は、ウィンドウ信号INJ_WINDBおよびサーモメータコードPIBの対応するビットPIB[i-1]に応じて変化する。
【0064】
INJ_WIND=1,ENPI[11]のとき、すべて駆動ユニット260_1~260_3は、第1状態となり、駆動ユニット260_1~260_Mは、基準クロックCLK_REFに応じて出力キャパシタCOUTを充放電する。その結果、出力クロックCLK_DCOは、基準クロックCLK_REFに応じた位相を有することとなる。
【0065】
INJ_WIND=1,ENPI[00]のとき、すべて駆動ユニット260_1~260_3は、第2状態となり、駆動ユニット260_1~260_Mは、内部クロックCLK_INTに応じて出力キャパシタCOUTを充放電する。その結果、出力クロックCLK_DCOは、内部クロックCLK_INTに応じた位相を有することとなる。
【0066】
INJ_WIND=1,ENPI[01]あるいは[10]のとき、1個または2個の駆動ユニット260が第1状態で動作し、残りが第2状態で動作する。その結果、出力クロックCLK_DCOは、内部クロックCLK_INTと基準クロックCLK_REFの位相を補間した位相を有することとなる。
【0067】
INJ_WIND=0のとき、すべて駆動ユニット260_1~260_3は、第2状態となり、出力クロックCLK_DCOは、内部クロックCLK_INTに応じた位相を有することとなる。
【0068】
この位相補間器250は、論理合成・自動配置配線により設計することができる。
【0069】
上述したように、可変周波数発振器200、フィードバック回路300、ウィンドウ発生器400それぞれの構成は公知技術を用いればよく、特に限定されないが、以下に、いくつかの構成例を示す。
【0070】
図11は、PLL回路100の構成例(100A)を示す回路図である。フィードバック回路300は、位相検出器310およびループフィルタ320を含む。位相検出器310は、ウィンドウ信号INJ_WINDがアサートされる期間、イネーブル状態となり、基準クロックCLK_REFとオシレータクロック(内部クロックCLK_INT)の位相を比較し、アップダウン信号UP_DNを生成する。ループフィルタ320は、アップダウン信号UP_DNに応じて可変遅延回路210の遅延量を増減させる。
【0071】
位相検出器は、対称型位相検出器とすることが好ましい。ウィンドウ信号がアサートされる期間だけ、対称型位相検出器をイネーブルとすることで、位相引き込み範囲を、基準クロックの1周期の範囲に広げることができる。
【0072】
フィードバック回路300は、位相検出器310に代えて、ウィンドウ信号INJ_WINDがアサートされる期間、イネーブル状態となり、オシレータクロックCKL_OSCと基準クロックCLK_ERFの位相および周波数を比較し、比較結果を示すアップパルスおよびダウンパルスを生成する位相周波数検出器を備えてもよい。もともと広い位相引き込み範囲を有し、周波数引き込み機能を有する位相周波数検出器を採用し、さらにウィンドウ信号がアサートされる期間だけ、位相周波数検出器をイネーブルとすることで、位相引き込み範囲を実質的に無限に広げることができる。
【0073】
ウィンドウが開いたにも関わらず、注入エッジが発生しないと、基準クロックの周期ごとに、可変周波数発振器の周波数が短期的に変動する。そこでウィンドウ発生器は、基準クロックのエッジを検出できないとき、ウィンドウ信号のネゲートを維持してもよい。これにより基準クロックが停止したときにも、PLL回路によるクロック生成を継続できる。もしくは、位相補完器の注入強度を1/2より小さくすることで、その周期の変動を最小限に抑えることができる。また可変周波数発振器の周波数は、基準クロックが欠落した直後だけ変動するが、その後は一定に保つことができる。
【0074】
ウィンドウ発生器400は、カウンタ410および選択ロジック420を含む。カウンタ410は、オシレータクロックCLK_INTのNサイクルに1回の割合で、出力をアサートする。選択ロジック420は、カウンタ410の出力がアサートされる間、内部クロックCLK_INTを切り出して、ウィンドウ信号INJ_WINDを生成する。
【0075】
実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例を説明する。
【0076】
(変形例1)
図12は、変形例1に係るPLL回路100Bの回路図である。適応制御部500は、PLL回路100Bの動作状態に応じて、位相補間器250の位相比率k(制御コードENPI)を動的に変化させる。
【0077】
たとえば、適応制御部500は、ウィンドウモニタ回路510を含む。ウィンドウモニタ回路510は、ウィンドウ信号INJ_WINDが規定する注入期間内に、基準クロックCLK_REFが含まれるか否かを判定する。そして、基準クロックCLKが注入期間から逸脱すると、OUTSIDE信号をアサート(H)する。設定回路520は、OUTSIDE信号がアサートされると、予め設定しておいた位相比率の値を出力し、位相補間器250に供給する。適応制御部500は、ΔΣ変調器530を含んでもよい。これにより、位相補間器250に対して、非整数である小数の位相比率を設定することが可能となる。
【0078】
(変形例2)
図13は、変形例2に係るPLL回路100Cの回路図である。エッジ注入回路220は、位相補間器250およびマルチプレクサ222を含む。マルチプレクサ222は、ウィンドウ信号INJ_WINDがアサートである注入期間において、位相補間器250の出力CLK_PIを選択し、ウィンドウ信号INJ_WINDがネゲートである期間において、内部クロックCLK_INTを選択する。この変形例においても、周波数ジャンプを抑制し、あるいはリファレンススプリアスを抑制できる。
【0079】
(変形例3)
本開示に係る技術は、セレクタによりエッジを注入する形式のオシレータ回路、すなわちIL-PLL回路やMDLL(Multiplying Delay Locked Loop)回路に適用することができる。本技術は、デジタルPLL/DLL、アナログPLL/DLLを問わずに適用可能あり、可変周波数発振器200は、DCOであってもよいし、VCOであってもよい。
【0080】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0081】
100 PLL回路
200 可変周波数発振器
210 可変遅延回路
220 エッジ注入回路
230 インバータ
250 位相補間器
260 駆動ユニット
300 フィードバック回路
310 位相検出器
320 ループフィルタ
400 ウィンドウ発生器
410 カウンタ
420 選択ロジック
500 適応制御部
510 ウィンドウモニタ回路
520 設定回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13