(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】飲料充填設備における容器の殺菌
(51)【国際特許分類】
B65B 55/10 20060101AFI20240826BHJP
B65B 55/04 20060101ALI20240826BHJP
A61L 2/18 20060101ALI20240826BHJP
A61L 2/16 20060101ALI20240826BHJP
A61L 101/22 20060101ALN20240826BHJP
A61L 101/20 20060101ALN20240826BHJP
【FI】
B65B55/10 Z
B65B55/04 C
B65B55/10 A
A61L2/18 102
A61L2/16
A61L101:22
A61L101:20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020172121
(22)【出願日】2020-10-12
【審査請求日】2023-07-05
(31)【優先権主張番号】10 2019 127 711.6
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508120916
【氏名又は名称】クロネス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン ゼルナー
(72)【発明者】
【氏名】ヨーゼフ ハウスラーデン
(72)【発明者】
【氏名】ゲルトルート ゼルナー―ヴァイン
【審査官】西塚 祐斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-001649(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102006036462(DE,A1)
【文献】特表2003-514624(JP,A)
【文献】特開2019-085129(JP,A)
【文献】特開2015-024841(JP,A)
【文献】特開2012-176804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 55/10
B65B 55/04
A61L 2/18
A61L 2/16
A61L 101/22
A61L 101/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理剤で包装材(2)を処理するため
の装置(1)であって、前記装置(1)は、
前記包装材(2)に少なくとも断続的に前記処理剤を装入するために設置された処理部(30)、
前記処理部(30)に前記処理剤を供給するために設置された処理剤供給管(10)、および
前記処理剤供給管(10)内に配置され、前記処理剤を貫流させて前記処理剤を化学的に変化させるために設置された触媒装置(40)
を有
し、
前記処理剤は、過酢酸、酢酸および過酸化水素からなる混合物であり、前記触媒装置(40)は前記混合物中の過酸化水素含分を減少させるように構成されている、包装材を処理する装置(1)。
【請求項2】
前記触媒装置(40)は
、前記処理剤に対して不活性な触媒物質(42)が充満している触媒室(41)を有して
いることを特徴とする、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記触媒装置(40)は、前記処理剤が貫流できるように前記触媒室(41)内に装着された
、フィルター(43)を有することを特徴とする、請求項2に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記触媒物質(42)は、球体の形状であり、酸化白金および/または二酸化マンガンを含む、請求項2または3に記載の装置(1)。
【請求項5】
さらに、蒸
気を前記処理部(30)に供給するために設置された蒸気供給管(20)が設けられていることを特徴とする、請求項1から
4までのいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項6】
前記処理部(30)は、前記処理剤を蒸気により希
釈するために、かつノズルを介して混合物を前記包装材(2)に放出するために設置された、前記処理剤供給管(10)と前記蒸気供給管(20)に流体結合している混合室(31)を有することを特徴とする、請求項
5に記載の装置(1)。
【請求項7】
前記装置(1)は、飲料充填設備において容器としての前記包装材(2)を殺菌するための装置である、請求項1から6までのいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項8】
処理剤で包装材(2)を処理するための方法であって、前記方法は
処理
剤を用意する工程、
触媒装置(40)に前記処理剤を通過させて、それにより前記処理剤を化学的に変化させる工程、
前記触媒装置(40)により化学的に変化した前記処理剤を前記包装材(2)に装入する工程
を含
み、
前記処理剤は、過酢酸、酢酸および過酸化水素からなる混合物であり、前記触媒装置(40)は前記混合物中の過酸化水素含分を減少させるように構成されている、包装材(2)を処理する方法。
【請求項9】
前記処理剤は複数の成分からなっており、前記触媒装置(40)は1つまたは複数の成分の含分を変化させることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記成分の含分は化学的平衡状態にあり、前記触媒装置(40)は前記処理剤をその化学的平衡状態から外すことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記触媒装置(40)は
、前記処理剤に対して不活性な触媒物質(42)が充満している触媒室(41)を有して
いることを特徴とする、請求項8から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記触媒物質(42)は、球体の形状であり、酸化白金および/または二酸化マンガンを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
さらに蒸
気を用意し、これを前記触媒装置(40)により化学的に変化した前記処理剤に混合し、それにより前記処理剤を希
釈して、前記混合物を前記包装材(2)に放出することを特徴とする、請求項8から
12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記包装材(2)は容器であり、前記触媒装置(40)により化学的に変化した前記処理剤を前記容器内部に投
入することを特徴とする、請求項8から
13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記処理剤は、殺菌剤である、請求項8から14までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理剤で包装材を処理するための、特に飲料充填設備において容器を殺菌するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、例えば果汁、ソフトドリンク等々を容器に充填する際、衛生上および健康上の理由から、高い清潔性と高い殺菌度が求められる。この目的で、容器、例えばガラス瓶あるいはペットボトルは充填前に殺菌される。
【0003】
殺菌は、水蒸気と消毒剤からなる混合物を用いて行なうことができる。無菌充填装置上での容器殺菌に液体過酢酸を使用することは公知である。過酢酸はそのために約2500ppmの使用濃度に希釈され、低温で処理装置のノズルに圧送され、そこで二液ノズル内で蒸気と混合され、蒸気霧として直接容器内に導入される。蒸気との混合により、過酢酸は例えば約70℃まで加熱され希釈される。
【0004】
特にプラスチック容器の使用に対して最適化されたこの方法の変形および改良形は、特許文献1に記載されている。
【0005】
「Bacillus Atrophaeus」のような多くの公知菌には、この方法では死滅速度論で間に合う。しかし、過酢酸(以下「PAA」とも称する)の使用形態に対して著しい耐性を有する菌が次第に現れている。特に、これに関して「Phaenibacillus chibensis/favisporus」の名前を持つ種が、特にアジア地域で、次第に問題となっている。この菌(以下、「PC」とも称する)はPAAに対して非常に耐性がある。
【0006】
包装技術における殺菌には、PAAは大抵、過酢酸、酢酸およびH2O2(過酸化水素)からなる化学的に平衡した混合物の形で使用される。このとき、混合は常に複数の安定的平衡状態のうちの1つに向かって進行するので、これら3つの成分の混合比は任意に調整可能というわけではない。
【0007】
PCにおいては、H2O2含分が少ないPAAの殺菌作用の方が、標準平衡にあるPAAよりも明らかに効果的である。H2O2含分の低減は、特許文献2から公知であるように、PAA混合物にカタラーゼを添加することにより達成できる。
【0008】
このような方法は、しかし、比較的高価なカタラーゼ酵素を使用する必要があり、その上、必要な反応時間を確保するために、カタラーゼ酵素をある一定の準備期間で計量しなくてはならない。これにより生じたPAA混合物は、本来の平衡が再び現れてしまうので、貯蔵可能ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】欧州特許出願公開第2653396号明細書
【文献】特開2014-80207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記公知の先行技術から、本発明の課題は、処理剤で包装材を処理するための、特に飲料充填設備において容器を殺菌するための改良された装置および改良された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、請求項1の特徴を有する装置、および並行して請求された方法の請求項の特徴を有する方法により解決される。好適な別の形態は、従属請求項、以下の発明の説明および有利な実施例の記載から判断される。
【0012】
この装置は、有利には食品産業で使用される包装材の処理に用いられる。この処理には、特に、菌を死滅させるための消毒および/または殺菌が含まれる。特に有利にはこの処理はステーションとして、あるいは、例えば炭酸水または非炭酸水、ソフトドリンク、ビール、果汁、スムージーまたは混合飲料のような飲料、ソースやそうしたものを容器に充填する充填装置と共同で、液体食品を充填する前に行なわれる。
【0013】
「容器」、「処理部」および他の表記がこの中において単数形で用いられていても、これは第一に言語表現を簡便にするために行なわれたものである。複数形も、それが明確にあるいは技術的に除外されていない限りは含まれる。
【0014】
この装置は、包装材に少なくとも断続的に処理剤を装入するために設置された少なくとも1つの処理部を有する。さらに、前記処理部に前記処理剤を供給するために設置された処理剤供給管が設けられている。本発明によれば、この装置は、前記処理剤供給管内に配置され、前記処理剤を貫流させて前記処理剤を化学的に変化させるために設置された触媒装置を有する。この化学的変化は、ここでは前記処理剤の効力の向上または最適化に寄与する。これは、好ましくは、処理剤が複数の成分からなっている場合にその成分の含分を触媒装置により相対的に変化させることにより達成される。これには、化学的平衡状態の解除も含まれてよい。なぜならば、ここで説明されている装置は、処理剤が不安定な化学的状態にあっても使用することができるからである。
【0015】
本発明による処理装置の重要な技術的貢献の1つは、処理剤の効力の最適化または向上のために、例えばカタラーゼのような高価な酵素または他の化学物質の添加を省くことができるという点にある。したがって、効力向上は資源および費用を節約して達成される。加えて、効力の最適化は、従来のシステムを構造的に少し変化させるだけで、すなわち触媒装置を取り付けるだけで、達成することができる。これによって、既存の設備を改造することがあっても安価にかつ時間を節約して実施可能である。
【0016】
触媒装置が処理剤供給管の中に、したがって包装材に塗布する直前に取り付けられていることにより、改良された処理剤の製造は準備期間を必要としないか、あるいはほんの少ししか必要としない。それによって、処理剤の化学的に不安定な状態に基づく前記形式の効力向上が実現可能である。
【0017】
好ましくは、前記触媒装置は、例えば小球体の形状の、触媒物質が充満している触媒室を有する。前記触媒物質は、前記処理剤に対して基本的に不活性であり、すなわち化学的に安定している。好ましくはこの触媒物質は酸化白金および/または二酸化マンガンを含む。このように、前記触媒装置は、構造上単純で安価な信頼できる方法で実現することができる。
【0018】
好ましくは、前記触媒装置は、前記処理剤が貫流できるように前記触媒室内に装着または張設された、例えばフィルターフリースを含むフィルターを有し、それにより、前記処理剤は構造上組み込まれて、不純物があっても取り除くことができる。
【0019】
好ましくは、前記装置はさらに、前記処理部に蒸気、好ましくは熱蒸気を供給するために設置された蒸気供給管を有する。この目的で、前記処理部は、前記処理剤を前記蒸気により希釈、好ましくはさらに温度調節するために、かつノズルを介して混合物を前記包装材に放出するために設置された、前記処理剤供給管と前記蒸気供給管に流体結合している、例えば混合室を有する。このように、処理剤は用途に応じて適切に希釈され、そうして配量される。その上、処理剤は低温で供給され、蒸気により相乗的に温度調節、特に加熱される。熱蒸気を用いかつ二液ノズルを使用する自体公知の使用構想を出来る限り維持することができ、(低温の)処理剤を触媒装置の周りに供給する枝管だけが追加される。処理剤の製造ならびに熱蒸気の生成、媒体の統合、場合による噴霧および装入は、本質的に変えることなく引き続き利用することができ、それにより、既存の設備を改造することがあっても特に安価に省資源でかつ時間を節約して実施することが可能である。
【0020】
好ましくは、前記処理剤は、過酢酸、酢酸および過酸化水素からなる混合物である。この混合物は、通常、安定した平衡にある。このような過酢酸混合物が、「Bacillus Atrophaeus」を含む多くの公知の菌を殺すのに特に効果的であると判明した。例えば「Phaenibacillus chibensis/favisporus」のような他の菌にまでこの効力を及ぼすためには、ここに記載されている触媒は前記混合物中の過酸化水素含分を低減させて処理剤の効力を向上させるので非常に適している。H2O2含分を0にまで低減することは、ここで必ずしも必要ではない。なぜならば、過酢酸の相対的含分が増加することによってすでに、特にアジア地域で発生が増加している「Phaenibacillus chibensis/favisporus」に関して良好な殺菌成果がもたらされるからである。
【0021】
上記の課題は、さらに、処理剤で包装材を処理するための、特に飲料充填設備において容器を殺菌するための方法により解決され、前記方法は、処理剤、好ましくは殺菌剤を用意する工程、触媒装置に前記処理剤を通過させて、それにより前記処理剤を化学的に変化させる工程、前記触媒装置により化学的に変化した前記処理剤を前記包装材に装入する工程を含む。
【0022】
前記装置に関して記載された特徴、技術的作用、利点および実施例は、前記方法にも同様に当てはまり、またその反対も同様である。
【0023】
前記処理剤は、好ましくは複数の成分からなっており、前記触媒装置は、上記の理由から、好ましくは1つまたは複数の成分の含分を相対的に変化させる。
【0024】
好ましくは、前記成分の含分は化学的平衡にあり、前記触媒装置は、上記の理由から、この場合、前記処理剤を好ましくはその化学的平衡から外す、すなわち不安定な状態にする。
【0025】
好ましくは、前記触媒装置は、上記の理由から、好ましくは小球体の形状の、前記処理剤に対して不活性な触媒物質が充満している触媒室を有している。好ましくは、前記触媒物質は酸化白金および/または二酸化マンガンを含む。
【0026】
好ましくは、前記処理剤は、上記の理由から、好ましくは安定した平衡の比率の、過酢酸、酢酸および過酸化水素からなる混合物であるか、またはその混合物を含む。
【0027】
好ましくは、前記触媒装置は、上記の理由から、前記混合物中の過酸化水素含分を減少させる。
【0028】
好ましくは、上記の理由から、さらに蒸気、好ましくは熱蒸気を用意し、これを前記触媒装置により化学的に変化した前記処理剤と混合し、それにより、前記混合物を前記包装材に放出する前に前記処理剤を希釈し、好ましくは温度調節する。
【0029】
好ましくは、前記包装材は容器であり、前記触媒装置により化学的に変化した前記処理剤を前記容器内部に投入、好ましくは注入する。容器としては、例えばガラス瓶またはペットボトルが考えられる。
【0030】
本発明のその他の利点および特徴は、以下の有利な実施例の説明から明らかである。そこに記載された特徴は単独で、あるいは、特徴が互いに矛盾しない限り上述の特徴の1つまたは複数と組み合わせて実行してよい。以下の有利な実施例の説明は、添付の図面に関して行なわれる。
【0031】
本発明の有利な他の実施態様を、以下の図面の説明により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】包装材を処理するための、特に食品を充填する容器を殺菌するための装置の概略図である。
【
図2】包装材を処理するための、特に食品を充填する容器を殺菌するための方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、有利な実施例を図に基づいて説明する。ここでは、異なる図面における同様の、類似の、または同じ作用の部材については、場合により同一の符号を付し、冗長を避けるためにこれらの部材の説明の繰り返しは部分的に省略する。
【0034】
図1は、包装材2を処理するための、特に殺菌するための装置1の概略図である。好ましくは、この包装材2は食品を充填する容器である。装置1は、ここで「処理装置」とも称する。
【0035】
装置1は、容器2、特にその内部を処理する液体処理剤のための処理剤供給管10を有する。この処理剤は、好ましくは消毒剤、特に有利には安定した化学的平衡状態の比率の過酢酸、酢酸および過酸化水素からなる混合物である。
【0036】
処理剤供給管10は、包装材2に少なくとも断続的に処理剤を装入するために設置された処理部30に処理剤を供給するために設置されている。好ましくは、処理部30はこの目的で、特に容器の内部に処理剤を導入して場合により噴霧する1つまたは複数のノズルを有する。
【0037】
処理剤供給管10は、貯蔵槽あるいは環状管から分岐してよい。さらに、処理剤供給管10は、流量を監視し制御する装置、例えばバルブ、配量装置、センサーユニット等々を有していてもよいが、理解しやすくするために
図1にはこれらを図示していない。
【0038】
処理装置1は、さらに好ましくは、熱蒸気を処理部30に供給するために設置された蒸気供給管20を有する。処理部30は、この場合、処理剤と蒸気が導入される混合室31を有しており、それにより、処理部30は、処理剤と蒸気を混合して例えば蒸気霧として処理すべき包装材2に供給する二液ノズルとして構成されている。
【0039】
好ましくは、過酢酸、酢酸および過酸化水素からなる前記の混合物は低温で混合室31に供給され、そこで熱蒸気と混合され、それにより、処理剤は好ましくは約2500ppmの使用濃度に希釈され、同時に、好ましくは約70℃まで加熱される。
【0040】
処理剤供給管10内には、処理剤を化学的に変性してその効力を改善するために設置された触媒装置40が組み込まれている。特に有利には、触媒装置40は、過酢酸、酢酸および過酸化水素からなる前記混合物からH2O2含分を減少させるために用いられ、それにより、この有利な処理剤の殺菌効果は大きくなる。
【0041】
触媒装置40は、処理部30の前、したがって混合室31の前に直接接続されており、それにより、従来の処理装置を改造するための機械構造上の変更は少ししか必要ない。さらに、それにより、触媒反応または変性後、特にH2O2含分減少後、包装材2に処理剤が装入される以前に本来の平衡が再び現れ得ないことが保証されている。
【0042】
過酢酸の場合、H2O2含分を0にまで低減させることは必ずしも必要ではない。なぜならば、過酢酸の相対的含分が増加することによってすでに、特にPCに関して良好な殺菌成果がもたらされるからである。
【0043】
触媒装置40は、処理剤が貫流できる触媒室41を有しており、そこには触媒物質42が充満している。触媒物質42としては、液体に溶解可能でなくかつ処理剤の反応物質によって消費されない物質が使用される。過酢酸の場合、触媒物質42はしたがって過酢酸に対して不活性である。好ましくは、触媒物質42は酸化白金および/または二酸化マンガンを含む。触媒物質42は、例えば1つのパックになった小球体の形状で触媒室41に収納されてもよい。さらに、触媒装置40は、貫流できるように前記触媒室41内に装着または張設されたフィルター43、好ましくは例えば厚さ約0.1mmのフィルターフリースを有していてよい。
【0044】
図2のフローチャートによって具体的に示された有利な処理方法によれば、工程S1で、処理される包装材2が処理部30の有効範囲に供給される。工程S2で、熱蒸気が用意され、処理部30の混合室31に供給される。工程S3で、処理剤が用意される。処理剤は引き続き触媒装置40を通過させられ、それにより、好ましくは処理剤が化学的平衡から化学的に不安定な状態になることにより効力向上が図られる。過酢酸混合物の場合、触媒装置40は、好ましくはH
2O
2含分を減少させるために設置されており、それにより、殺菌効果が大きくなる。そうして最適化された処理剤は、工程S4で混合室31に供給され、そこで熱蒸気により希釈および温度調節される。引き続き、処理部30が蒸気と処理剤とからなる混合物を送り出し、場合により噴霧することにより、その混合物は包装材2に装入される。
【0045】
前記工程は逐次的に記載されているが、これらの工程の実施は上述の順序に縛られない。工程の順序は、技術的に意味のある範囲で自由に選択することができ、これには、部分的な、あるいはほぼ完全な並列実行も含まれる。
【0046】
ここに説明された処理装置1および対応する処理方法の重要な技術的貢献の1つは、処理剤の効力向上のために、例えばカタラーゼのような高価な酵素または他の化学物質の添加を省くことができるという点にある。効力向上は、したがって、資源と費用を節約して達成される。
【0047】
加えて、効力の最適化は、従来のシステムを構造的に少し変化させるだけで達成できる。特に、熱蒸気を用い二液ノズルを使用する自体公知の使用構想は出来る限り維持することができ、その際、低温の処理剤を触媒装置の周りに供給する枝管だけが延ばされる。処理剤の製造ならびに熱蒸気の生成、媒体の統合、場合による噴霧および装入は、本質的に変えることなく引き続き利用することができる。それにより、既存の設備を改造することがあっても、安価に、時間を節約して実施することが可能である。
【0048】
応用できる範囲で、実施例に記載されているそれぞれの特徴は全て、本発明の範囲から外れない限り互いに組み合わせても、および/または、取り替えてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 包装材を処理する装置
2 包装材
10 処理剤供給管
20 蒸気供給管
30 処理部
31 混合室
40 触媒装置
41 触媒室
42 触媒物質
43 フィルター