(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】弾性繊維及びこれを含む繊維構造体
(51)【国際特許分類】
D06M 15/233 20060101AFI20240826BHJP
D01F 6/70 20060101ALI20240826BHJP
D06M 13/02 20060101ALI20240826BHJP
D06M 101/38 20060101ALN20240826BHJP
【FI】
D06M15/233
D01F6/70 Z
D06M13/02
D06M101:38
(21)【出願番号】P 2020175764
(22)【出願日】2020-10-20
【審査請求日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2019192070
(32)【優先日】2019-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502179282
【氏名又は名称】東レ・オペロンテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克哉
(72)【発明者】
【氏名】田中 利宏
(72)【発明者】
【氏名】苗代 和樹
(72)【発明者】
【氏名】大島 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】荒川 泰伸
【審査官】岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】特許第4540286(JP,B2)
【文献】国際公開第2016/125899(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/,15/
D01F 6/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性繊維用処理剤がポリウレタン弾性繊維表面に付着した弾性繊維であって、
前記弾性繊維用処理剤は、芳香族オレフィ
ンをモノマーとする構造単位を主たる構造単位として含むポリマーが部分水添または完全水添された構造を有する炭化水素樹脂(A)と、炭化水素油(B)とを含有し、
前記芳香族オレフィンがインデン
およびメチルスチレンで
あり、
前記炭化水素樹脂(A)はさらに脂肪族ジオレフィンを含んでもよく、
前記脂肪族ジオレフィンはイソプレン(光学異性体も含む)であることを特徴とする弾性繊維。
【請求項2】
前記部分水添は、ポリマー中に含まれる2重結合のうち50%以上100%未満の2重結合が水素添加されているポリマーである請求項1に記載の弾性繊維。
【請求項3】
前記炭化水素樹脂(A)の軟化点が70℃以上140℃以下である請求項1又は2に記載の弾性繊維。
【請求項4】
前記炭化水素樹脂(A)は処理剤を母数としたとき、0.1質量%以上40質量%以下含有する請求項1~3のいずれか1項に記載の弾性繊維。
【請求項5】
前記炭化水素樹脂(A)が炭化水素油(B)に対して20℃で10質量%以上溶解する請求項1~4のいずれか1項に記載の弾性繊維。
【請求項6】
前記炭化水素樹脂(A)は、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)および/またはN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に不溶である請求項1~5のいずれか1項に記載の弾性繊維。
【請求項7】
前記炭化水素油(B)は、鉱物油である請求項1~6のいずれか1項に記載の弾性繊維。
【請求項8】
前記弾性繊維用処理剤はポリウレタン弾性繊維に対して0.1~10質量%付着している請求項1~7のいずれか1項に記載の弾性繊維。
【請求項9】
前記処理剤をポリウレタン弾性繊維に付着させたときの前記ポリウレタン弾性繊維の膨潤率が2.2%以下である請求項1~8のいずれかに記載の弾性繊維。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の弾性繊維を含む繊維構造体。
【請求項11】
前記繊維構造体がサニタリー製品である請求項10に記載の繊維構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性繊維の解舒特性を改善し、かつホットメルト接着剤との接着性に優れた弾性繊維及びこれを含む繊維構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
弾性繊維は、その優れた伸縮特性からレッグウエア、インナーウエア、スポーツウエアなどの伸縮性衣料用途に使用されてきた。特に近年では紙おむつや生理用ナプキンなどのサニタリー用途(衛材用途)に多くの量が使用されている。
紙おむつや生理用ナプキンなどの使い捨てサニタリー用途には、着用者への密着性を向上させるため伸縮可能に形成されることが要求される。特に、使い捨て紙おむつでは、ウェスト周囲、脚周り、胴部周囲等を伸縮可能にする様々な工夫がなされている。素材そのものに伸縮力を有する織布(ストレッチ布)を利用することも考えられるが、使い捨て着用物品に用いるにはコストが高い。このため、通常は、不織布やプラスチックフィルム等の非伸縮性部材に糸状や帯状の伸縮部材を伸長状態で貼り付けて、これらの非伸縮性部材を伸縮可能にして、伸縮性シートやギャザーと云われる部材を形成する(例えば、特許文献1)。これらの非伸縮性部材に接着して伸縮性を付与する部材としては、具体的には、帯状のゴムひもや糸状のポリウレタン弾性繊維が用いられ、貼り付けにはホットメルト接着剤が用いられる。
一方、特許文献2には、ポリウレタン弾性繊維中にホットメルト接着性を向上させる目的で各種添加剤を使用することが開示されている。
また、特許文献3には、ポリウレタン弾性糸の解舒性とホットメルト接着性を両立するために油剤を付与することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-35029号公報
【文献】特開2010-168717号公報
【文献】WO16/143499号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような従来から使われている伸縮性を付与するための弾性繊維では、ドラフトアップして取り付けた場合、伸長させた時の弾性繊維の抵抗力が高くなるため、糸抜けが発生することがあった。これを回避するため、ホットメルト接着剤を多くした場合は、糸抜けが減少する替わりに、部材が硬く仕上がり、製品としての伸縮性が不満足になることもあった。
特許文献2に記載の技術を適用し、添加剤にてホットメルト接着性を改善しようとすると、弾性繊維の解舒性が悪化し、伸縮部材の製造工程において糸切れが発生しやすくなる。
特許文献3でも、ホットメルト接着性においては更なる改善が必要である。
【0005】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決し、弾性繊維の解舒特性およびホットメルト接着剤との接着性に優れ、さらには、高ドラフトで加工しても、良好な接着性を発現する伸縮性シートが得られると共に、感触の柔らかなサニタリー用品を得るのに好適な弾性繊維及びこれを含む繊維構造体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の弾性繊維は、弾性繊維用処理剤がポリウレタン弾性繊維表面に付着した弾性繊維であって、
前記弾性繊維用処理剤は、芳香族オレフィンをモノマーとする構造単位を主たる構造単位として含むポリマーが部分水添または完全水添された構造を有する炭化水素樹脂(A)と、炭化水素油(B)とを含有し、
前記芳香族オレフィンがインデンおよびメチルスチレンであり、
前記炭化水素樹脂(A)はさらに脂肪族ジオレフィンを含んでもよく、
前記脂肪族ジオレフィンはイソプレン(光学異性体も含む)であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、弾性繊維は安定した解舒特性を有し、かつ、ホットメルト接着剤を使用した際の接着性が良好な弾性繊維及びこれを含む繊維構造体を提供できる。また、弾性繊維の伸縮特性を損なうことがないため、弾性繊維を高ドラフトで加工しても、良好な接着性を発現し、低応力で伸長できる伸縮性シートが得られる。また、紙おむつ、衛生ナプキン等のサニタリー製品の製造の際に、製造速度を上げても糸切れなく製造可能となり、また、ホットメルト接着剤を減らすことによるコスト削減も可能となる。接着性の指標としては、ホットメルト接着性保持率で評価できる。さらに、ホットメルト接着剤を減らしたサニタリー製品においては、ホットメルト接着剤による部材の硬化が減り、よりソフトな風合いに仕上がるため、着用感やフィット性に優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は本発明の実施例で使用する弾性繊維の解舒安定性試験装置の模式的説明図である。
【
図2】
図2A-Bは同、ホットメルト接着性試験方法の模式的説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明について、さらに詳細に述べる。
本発明における炭化水素樹脂(A)は、芳香族オレフィンおよび/または脂肪族ジオレフィンをモノマーとする構造単位を主たる構造単位として含むポリマーを部分的に水素添加(以下、部分水添と記す場合もある)および/または完全に水素添加(以下、完全水添と記す場合もある)された構造を有するものであれば特に限定されるものではない。なお、本発明における部分水添とは、通常ポリマー中に含まれる2重結合のうち50%以上100%未満の2重結合が水素添加されたものをいう。また、単に「水素添加」と記す場合は、部分水添および完全水添を併せた範囲を示すものとする。本明細書において、「芳香族オレフィンおよび/または脂肪族ジオレフィンをモノマーとする構造単位を主たる構造単位として含むポリマー」を「炭化水素樹脂前駆ポリマー」と記す。一般的には、「炭化水素樹脂前駆ポリマー」も、「炭化水素樹脂(A)」も、単に「石油樹脂」と呼ばれ、区別されない場合が多いが、本発明においては、その構造により上記の通り区別するものとする。なお、「炭化水素樹脂(A)」のうち完全水添されたものについては、飽和炭化水素樹脂と呼ばれる場合もある。炭化水素樹脂(A)は複数の種類の構造単位および部分水添された構造を有することがあり、そのような場合の構造を、化学名で的確に表現することは、困難であるという事情があるため、以下の説明では、便宜的に、水素添加される前の構造を与えるモノマーで特定する。すなわち、モノマーでの説明はそれに由来する構造を特定するために用いられ、原料を限定しているわけではない。本発明において、「主たる構造単位」とは、芳香族オレフィンおよび/または脂肪族ジオレフィンをモノマーとする構造単位を90質量%以上含むことをいう。
【0010】
本発明においては、前記炭化水素樹脂(A)が芳香族オレフィンをモノマーとする構造単位を含むポリマーを部分水添または完全水添された構造を有し、前記芳香族オレフィンが、インデンおよび/またはメチルスチレンであることが好ましい。これによりさらに弾性繊維の解舒特性と、ホットメルト接着剤を使用した際の接着性が良好な弾性繊維用処理剤を提供できる。
【0011】
また、前記炭化水素樹脂(A)が脂肪族ジオレフィンをモノマーとする構造単位を含むポリマーを部分水添または完全水添された構造を有し、前記の脂肪族ジオレフィンが、イソプレン(光学異性体も含む)であることが好ましい。
【0012】
また、前記炭化水素樹脂(A)の軟化点が70℃以上140℃以下であることが好ましい。これにより、ホットメルト接着剤の接着温度以下で熱軟化し、ホットメルト接着剤を使用した際の接着性が良好な弾性繊維用処理剤を提供できる。
【0013】
また、前記炭化水素樹脂(A)は処理剤を母数(100質量%)としたとき、0.1質量%以上40質量%以下含有することが好ましく、より好ましくは1~20質量%であり、さらに好ましくは3~10質量%である。これによりホットメルト接着剤との親和性がより良好となる。
【0014】
また、前記炭化水素樹脂(A)が炭化水素油(B)に対して20℃で10質量%以上溶解し、かつN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)および/またはN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に不溶であることが好ましい。
【0015】
さらに、前記処理剤をポリウレタンに付着させたときの前記ポリウレタンの膨潤率は2.5%以下であることが好ましく、より好ましくは2.2%以下であり、さらに好ましくは2.0%以下である。これにより、炭化水素油(B)がポリウレタン弾性繊維に含浸することが防止され、安定した繊維形態を保持できる。
【0016】
炭化水素樹脂前駆ポリマーおよび炭化水素樹脂(A)である、石油樹脂には、主として芳香族オレフィンをモノマーとする「C9系石油樹脂」、主として脂肪族ジオレフィンをモノマーとする「C5系石油樹脂」、およびこれらが混在した「C5/C9系石油樹脂」がある。なお、ここでいう「主として芳香族オレフィンをモノマーとする」とは、芳香族オレフィン由来の構造単位が他のモノマーに由来する構造単位を含めた全体に対し50モル%を超えて含まれていることをいう。また、主として脂肪族ジオレフィンをモノマーとするも同様に脂肪族ジオレフィンをモノマー由来の構造単位が他のモノマーに由来する構造単位を含めた全体に対し50モル%を超えて含まれていることをいう。
【0017】
C9系石油樹脂の構造単位を与えるモノマー(以下、C9系石油樹脂モノマーと記す場合もある)としては、アルキルベンゼンと芳香族オレフィンを主成分とし、アルキルベンゼンとしてはイソプロピルベンゼン、n-プロピルベンゼン、1-メチル-2-エチルベンゼン、1-メチル-3-エチルベンゼン、1-メチル-4-エチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,3-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、1-メチル-2-n-プロピルベンゼン、1-メチル-3-n-プロピルベンゼン、1-メチル-4-イソプロピルベンゼン、1,3-ジエチルベンゼン、1,4-ジエチルベンゼン等が挙げられる。
【0018】
また、芳香族オレフィンとしてはα―メチルスチレン、β-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、インデン、m-メチルプロペニルベンゼン、m-メチルイソプロペニルベンゼン、p-メチルイソプロペニルベンゼン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン、m,m-ジメチルスチレン、ジメチルスチレン、メチルインデン等が挙げられる。本発明において炭化水素樹脂前駆ポリマーまたは炭化水素樹脂(A)にC9系石油樹脂を含有する場合には、モノマーとしてインデンおよびメチルスチレンが含まれているのが好ましい。
【0019】
C5系石油樹脂の構造単位を与えるモノマー(以下、C5系石油樹脂モノマーと記す場合もある)としては、1-ペンテン、2-ペンテン、2-メチル-1ブテン、2-メチル-2-ブテン、シクロペンテン、1,3-ペンタジエン、イソプレン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン等が挙げられる。本発明において炭化水素樹脂前駆ポリマーまたは炭化水素樹脂(A)にC5系石油樹脂を含有する場合には、モノマーとしてイソプレンが含まれているものであることが好ましい。
【0020】
この様な炭化水素樹脂(A)を含有することにより、特に弾性繊維のホットメルト接着性を向上させることができる。水素添加された石油樹脂(C5系石油樹脂および/またはC9系石油樹脂)は、本発明の炭化水素油(B)との相溶性に優れ、安定して弾性繊維に付与させる事ができる。
【0021】
本発明の炭化水素樹脂(A)の軟化点は、ホットメルト接着剤との接着性が良好となることから70~140℃の範囲が好ましい。軟化点が70℃以上の炭化水素樹脂(A)を使用することにより、ホットメルト接着剤が硬化後に、高温環境下でホットメルト接着剤との接着力の維持性がより良好になるとともに、耐クリープ性もまた良好なものとなる。一方、軟化点が140℃以下の炭化水素樹脂(A)を使用することにより、後述する製造の際に炭化水素油(B)との相溶性に優れることから、炭化水素樹脂(A)を炭化水素油(B)に高濃度で溶解でき、処理剤の調製が容易となる。
なお、炭化水素樹脂(A)の軟化点とは、JIS K2207:2006に従って測定された値とする。
【0022】
炭化水素樹脂(A)としては石油樹脂として市販されている製品のうち、水素添加されているものや飽和炭化水素樹脂として市販されている製品を用いる事ができる。例えば、以下の構造成分からなり、軟化点が70℃~140℃の範囲の製品などが挙げられる。
・脂肪族系成分と芳香族成分との共重合石油樹脂の部分水添石油炭化水素樹脂
・脂肪族系成分と芳香族成分との共重合石油樹脂の完全水添石油炭化水素樹脂
・脂肪族系石油炭化水素樹脂の完全水添石油炭化水素樹脂
・芳香族石油炭化水素樹脂の部分水添石油炭化水素樹脂
・芳香族石油炭化水素樹脂の完全水添石油炭化水素樹脂
【0023】
本発明においては、前記炭化水素樹脂(A)が炭化水素油(B)に対して20℃において10質量%以上溶解することが好ましい。前記炭化水素樹脂(A)が、かかる溶解性を有することにより、容易に処理剤の調製が可能となり、かつ、ホットメルト接着性と解舒性に優れた弾性繊維を得ることができる。
前記炭化水素樹脂(A)が炭化水素油(B)に対して20℃において10質量%以上の溶解度であると、ホットメルト接着剤との親和性がより良好となるため好ましい。
【0024】
本発明における炭化水素油(B)は、炭素数が6~60の炭化水素の成分比率が90%以上であり30℃において流動性を有していれば、特に限定されるものではなく、化学構造として直鎖であっても分岐していてもよい。また、その疎水性が損なわれない範囲で一部に水酸基を持つものでも良い。中でも入手の容易さやコストの観点から、炭化水素油(B)としては鉱物油が好ましい。
【0025】
鉱物油としては、芳香族系炭化水素、パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素を挙げることができ、1種または2種以上を使用してもよい。鉱物油の40℃におけるレッドウッド粘度計での粘度は、30秒~350秒が好ましく、35秒~200秒がより好ましく、40秒~150秒がさらに好ましい。鉱物油としては、臭気の発生が低いという理由から、パラフィン系炭化水素が好ましい。
【0026】
本発明の弾性繊維用処理剤には、必要により、シリコーンオイル(c)や高級アルコール(d)、金属石けん(e)を併用しても良い。
上記シリコーンオイル(c)としては、特に制限されないが、ジメチルシロキサン単位から成るポリジメチルシロキサン、ジメチルシロキサン単位と炭素数2~4のアルキル基を含むジアルキルシロキサン単位とから成るポリジアルキルシロキサン類、ジメチルシロキサン単位とメチルフェニルシロキサン単位とから成るポリシロキサン類等が好ましく使用される。
また、取り扱い性やガイド類との走行摩擦を低減する観点から、25℃における粘度が5×10-6~50×10-6m2 /sであるのが好ましい。かかる粘度は、JIS-K2283(原油及び石油製品-動粘度試験方法及び粘度指数算出方法)に記載された方法で測定され得る。
上記高級アルコール(d)としては、特に限定されないが、直鎖および/または分岐鎖の炭素数6以上のモノアルコールが挙げられ、具体例として、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナオール、デカノール、ウンデカノール、1-ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘネイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、ノナコサノール、およびトリアコサノール等の直鎖アルコール;イソデカノール、イソドデカノール、イソテトラデカノール、イソヘキサデカノール、イソオクタデカノール、イソエイコサノール、イソヘネイコサノール、イソドコサノール、イソテトラコサノール、イソヘキサコサノール、イソオクラコサノール、イソトリアコサノール等の分岐アルカノール;ヘキセノール、ヘプテノール、オクテノール、ノネノール、デセノール、ウンデセノール、ドデセノール、トリデセノール、テトラデセノール、ペンタデセノール、ヘキサデセノール、ペンタデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール、オクタデセノール、ノナデセノール、エイセノール、ドコセノール、テトラコセノール、ペンタコセノール、ヘキサコセノール、ヘプタコセノール、オクタコセノール、ノナコセノールおよびトリアコンセノール等の直鎖アルケノール;イソヘキセノール、2-エチルヘキセノール、イソトリデセノール、1-メチルヘプタデセノール、1-ヘキシルヘプテノール、イソトリデセノール、およびイソオクタデセノール等の分岐アルケノール等が挙げられる。
上記金属石けん(e)としては、具体的には、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、アイコサン酸、ドコサン酸、ラウリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、オクタン酸、トール油脂肪酸等の脂肪酸、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、d-ピマル酸、イソ-d-ピマル酸、ポドカルプ酸、アガテンジカルボン酸、安息香酸、ケイ皮酸、p-オキシケイ皮酸、ジテルペン酸等の樹脂酸の金属塩(鹸化物)である。
その金属塩を構成する金属の種類としては、アルカリ金属以外の金属が好ましく、例えば、アルミニウム、カルシウム、亜鉛、マグネシウム、銀、バリウム、ベリリウム、カドミウム、コバルト、クロム、銅、鉄、水銀、マンガン、ニッケル、鉛、スズ、チタン等が挙げられる。
金属石けん(e)としては、特にステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムが好ましい。
金属石けん(e)の平均粒子径は、取り扱い性や処理剤中の沈降を防ぐ観点から、0.1~1.0μmに微粉化して使用することが好ましい。
これらのシリコーンオイル(c)、金属石けん(e)の含有量は、目的に応じて適宜決定されるのが好ましい。
【0027】
次に、本発明に係る弾性繊維(以下、本発明の弾性繊維という)について説明する。本発明の弾性繊維は、以上説明した本発明の処理剤が付着している弾性繊維である。弾性繊維に対する本発明の処理剤の付着量については特に制限はないが、0.1~10質量%の割合で付着しているものが好ましく、更に好ましくは0.1~3質量%の割合である。
【0028】
弾性繊維としては、ポリエステル系弾性繊維、ポリアミド系弾性繊維、ポリオレフィン系弾性繊維、ポリウレタン系弾性繊維等が挙げられるが、なかでもポリウレタン系弾性繊維が好ましい。
【0029】
次に、本発明の弾性繊維として好ましいポリウレタン弾性繊維の製造方法について詳細に説明する。
本発明においては、ポリウレタンを含む紡糸溶液(以下、「ポリウレタン紡糸溶液」と記す場合もある)の製法、または溶液の溶質であるポリウレタンの製法は、溶融重合法でも溶液重合法のいずれであってもよく、他の方法であってもよい。しかし、より好ましいのは溶液重合法である。溶液重合法の場合には、ポリウレタンにゲルなどの異物の発生が少なく、紡糸しやすく、細繊度のポリウレタン弾性繊維を得やすい。また、当然のことであるが、溶液重合の場合、溶液にする操作が省けるという利点がある。
【0030】
そして本発明に特に好適なポリウレタンとしては、ポリマージオールとして分子量が1500以上6000以下のポリテトラメチレングリコール(PTMG)、ジイソシアネートとしてジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、鎖伸長剤としては、ジアミンおよび/またはジオールが好ましい。例えば、ジアミンとしてはエチレンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン等がポリウレタンウレアを形成させるためのジアミン鎖伸長剤として好ましく使用される。ジオールとしてはエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-ビス(β-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビス(β-ヒドロキシエチル)テレフタレートおよびパラキシリレンジオール等が好ましく使用される。鎖伸長剤は、1種のみのジアミンおよび/またはジオールに限定されるわけでなく、複数種のジアミンおよび/またはジオールからなるものであってもよい。そして、ポリウレタンから形成される糸の高温側の融点が200℃以上280℃以下の範囲のものが好ましい。
【0031】
ポリウレタンは、例えば、DMAc、DMF、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などやこれらを主成分とする溶剤の中で、上記の原料を用い合成することにより得られる。例えば、こうした溶剤中に、各原料を投入、溶解させ、適度な温度に加熱し反応させてポリウレタンとする、いわゆるワンショット法、また、ポリマージオールとジイソシアネートを、まず溶融反応させ、しかる後に、反応物を溶剤に溶解し、前述のジアミンおよび/またはジオールと反応させてポリウレタンとする方法などが、特に好適な方法として採用され得る。
【0032】
ポリウレタンの高温側の融点を200℃以上280℃以下の範囲に調節する代表的な方法は、ポリマージオール、MDI、ジアミンおよび/またはジオールの種類と比率をコントロールすることにより達成され得る。ポリマージオールの分子量が低い場合には、MDIの割合を相対的に多くすることにより、高温の融点が高いポリウレタンを得ることができ、同様にジアミンおよび/またはジオールの分子量が低いときはポリマージオールの割合を相対的に少なくすることにより、高温の融点が高いポリウレタンを得ることができる。
【0033】
ポリマージオールの分子量が1800以上の場合、高温側の融点を200℃以上にするには、(MDIのモル数)/(ポリマージオールのモル数)=1.5以上の割合で、重合を進めることが好ましい。
【0034】
さらに、本発明の弾性繊維には、末端封鎖剤が1種または2種以上混合使用されることも好ましい。末端封鎖剤としては、ジメチルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン、メチルプロピルアミン、イソプロピルメチルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルメチルアミン、イソブチルメチルアミン、イソペンチルメチルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミンなどのモノアミン、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、アリルアルコール、シクロペンタノールなどのモノオール、フェニルイソシアネートなどのモノイソシアネートなどが好ましい。
【0035】
また、本発明のポリウレタン弾性繊維には、各種安定剤や顔料などが含有されていてもよい。例えば、耐光剤、酸化防止剤などにBHTや住友化学工業株式会社製の“スミライザーGA-80”などのヒンダードフェノール系薬剤、各種のチバガイギー社製“チヌビン”などのベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系薬剤、住友化学工業株式会社製の“スミライザーP-16”などのリン系薬剤、各種のヒンダードアミン系薬剤、酸化鉄、酸化チタンなどの各種顔料、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カーボンブラックなどの無機物、フッ素系またはシリコーン系樹脂粉体、ステアリン酸マグネシウムなどの金属石けん、また、銀や亜鉛やこれらの化合物などを含む殺菌剤、消臭剤、硫酸バリウム、酸化セリウム、ベタインやリン酸系などの各種の帯電防止剤などが含まれることも好ましく、またこれらがポリマーと反応させられることも好ましい。そして、特に光や各種の酸化窒素などへの耐久性をさらに高めるには、例えば、日本ヒドラジン株式会社製のHN-150などの酸化窒素補足剤、例えば、住友化学工業株式会社製の“スミライザーGA-80”などの熱酸化安定剤、例えば、住友化学工業株式会社製の“スミソーブ300♯622”などの光安定剤が使用されることも好ましい。
【0036】
こうして得られるポリウレタン紡糸溶液の濃度は、通常、30質量%以上80質量%以下の範囲が好ましい。
【0037】
以上のように構成した紡糸溶液を、たとえば乾式紡糸、湿式紡糸、もしくは溶融紡糸し、巻き取ることで、本発明のポリウレタン弾性繊維を得ることができる。中でも、細物から太物まであらゆる繊度において安定に紡糸できるという観点から、乾式紡糸が好ましい。
【0038】
本発明のポリウレタン弾性繊維の繊度、断面形状などは特に限定されるものではない。例えば、糸の断面形状は円形であってもよく、また扁平であってもよい。
そして、乾式紡糸方式についても特に限定されるものではなく、所望する特性や紡糸設備に見合った紡糸条件等を適宜選択して紡糸すればよい。
【0039】
たとえば、本発明のポリウレタン弾性繊維の永久歪率と応力緩和は、特にゴデローラーと巻取機の速度比の影響を受けやすいので、糸の使用目的に応じて適宜決定されるのが好ましい。
すなわち、所望の永久歪率と応力緩和を有するポリウレタン弾性繊維を得る観点から、ゴデローラーと巻取機の速度比は1.10以上1.65以下の範囲として巻き取ることが好ましい。そして、特に低い永久歪率と、低い応力緩和を有するポリウレタン弾性繊維を得る際には、ゴデローラーと巻取機の速度比は1.15以上1.4以下の範囲がより好ましく、1.15以上1.35以下の範囲がさらに好ましい。一方、高い永久歪率と、高い応力緩和を有するポリウレタン弾性繊維を得る際には、ゴデローラーと巻取機の速度比は1.25以上1.65以下の範囲として巻き取ることが好ましく、1.35以上1.65以下の範囲がより好ましい。
【0040】
また、紡糸速度は、得られるポリウレタン弾性繊維の強度を向上させる観点から、300m/分以上であることが好ましい。
【0041】
本発明の処理剤を弾性繊維に付着させるには、処理剤を溶剤等で希釈することなくそのまま給油する所謂ニート給油をするものである。その付着工程としては、紡糸後でパッケージに巻き取るまでの間の工程、巻き取ったパッケージを巻き返す工程、整経機で整経する工程等が挙げられるが、いずれの工程でもよく、また付着方法は、ローラー給油法、ガイド給油法、スプレー給油法等の公知の方法が適用できる。処理剤の付着量は、弾性繊維に対し0.1~5質量%とするが、ホットメルト接着性と解舒性のバランスを保つ観点からより好ましくは0.1~3質量%が好ましい。本発明の処理剤は、弾性繊維の紡糸直後に紡糸油剤として付与するのが好ましい。
【0042】
ホットメルト接着剤は120℃~180℃の温度範囲で接着するものが好ましい。ホットメルト接着剤の材料ポリマーの例としては、水添SBS(スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリオレフィン共重合体、合成ゴム系ホットメルト材、ポリアミド系ホットメルト材、ポリエステル系ホットメルト材、ポリウレタン系ホットメルト材等がある。
【0043】
図1は本発明の実施例で使用する弾性繊維の解舒安定性試験装置の模式的説明図である。
図2A-Bは同、ホットメルト接着性試験方法を示す模式的説明図である。詳細な説明は実施例で説明する。
【実施例】
【0044】
本発明について実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。まず、以下に本発明における各種特性の評価方法を説明する。
【0045】
[処理剤の動粘度]
JIS K 2283-2000に準拠し、キャノンフェンスケ粘度計を用いて30℃の動粘度(単位:mm
2/s)を測定した。
[
ポリウレタン弾性繊維の膨潤率]
ポリウレタン弾性繊維を精秤した後、各油剤の中に7分間浸漬し、表面に付着している油剤を拭き取った後、重量を計測し、
前記ポリウレタン弾性繊維の重量増加率を膨潤率とした。
[処理剤の安定性]
調製した弾性繊維用処理剤を25℃で3ヶ月静置して、以下の基準で安定性を評価した。
A(優):沈殿、分離が無く、調製時と同様に均一な状態を保っていた。
B(良):ごくわずかに潤み又は沈殿が生じるが、攪拌によって調製時と同様に均一な状態に復元した。
C(不良):沈殿、分離が生じ、攪拌によって均一な状態に復元しなかった。
[ポリウレタン弾性繊維の解舒安定性試験]
ポリウレタン弾性繊維の4.5kg巻き糸体を35℃、65%RHの雰囲気にて14日間放置後
、図1に示す解舒安定性試験装置で試験した。この解舒安定性試験装置1は、巻き糸体2と梨地ローラー4,5とアスピレーター6で構成される。巻き糸体2の表面を梨地ローラー4に接地するように置き、梨地ローラー4を回転させながら、梨地ローラー4の表面速度30m/分(S1)一定とし、ポリウレタン弾性繊維3aを送り出す。送り出されたポリウレタン弾性繊維3aをL1=100cm離れた所に設置された同じ径の梨地ローラー5に1周させて走行させ(ポリウレタン弾性繊維3b)、徐々に梨地ローラー5の表面速度を変化させ、梨地ローラー4からポリウレタン弾性繊維3aが引き離される際に、ポリウレタン弾性繊維3aの巻き糸体2に持ち上げられることなく、スムーズに送り出される梨地ローラー5の最低速度(S2)を求め、両梨地ローラー4,5の速度比(S2)/(S1)をポリウレタン弾性繊維3aの解舒性とし、4.5kg巻き糸体の外側から1cmの部分を外層の解舒性(A)、内側から1cmの部分を内層の解舒性(B)として測定し、巻き層による解舒安定性(B)-(A)を求めた。なお、梨地ローラー5を通過したポリウレタン弾性繊維3cはアスピレーター6で吸引した。
解舒安定性(B)-(A)は値が小さいほど層間におけるポリウレタン弾性繊維の糸離れが安定していることを示す。
なお、解舒性テストは2本の巻き糸体を用いて行い、平均値で評価した。
[ホットメルト接着性試験]
ポリウレタン弾性繊維を130m/分の速度で走行している幅15cmのポリプロピレン製不織布の上を規定のドラフト(ドラフト
比3.0)で伸張させながら同一方向に等間隔に8本走行させながら、150℃のポット中で溶解させたSBS(スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体)を主成分とするホットメルト接着剤をコームガンにてポリウレタン弾性繊維1本あたり規定量(0.05g/m)の割合で塗布した後、上方から薄く透明性のある別のポリプロピレン製不織布をかぶせて圧着、巻き取り、伸縮性シートを得た。
図2A-Bに示すように、得られた伸縮性シート8を不織布(図示せず)が完全に伸張する状態で、木製平板9に固定し、伸縮性シート8の上から、剃刀刃を用いて、不織布中のポリウレタン弾性繊維8本7a-7hについてL2=30cm長さの両端、計16箇所を切断した。この伸張板10を、40℃、80%RHで保管し、ホットメルト接着剤で固定されたポリウレタン弾性繊維7a-7hがポリプロピレン製不織布中に収縮、すなわちスリップインした後の糸長7a’-7h’の長さ(L3
)を2時間後および8時間後の各保管時間にて測定
し、これを原長(L2)と比較した。なお、測定は合計24本の弾性繊維について行い、それら24本のホットメルト接着性保持率の平均値で評価した。
ホットメルト接着性保持率(%)=100×(L3)/(L2)。
ホットメルト接着性保持率は高い値ほど優れている。
【0046】
[処理剤の調製]
表1に示すA1~A10およびB1~B6の組成比率で各成分を配合した。このとき、炭化水素樹脂を含有する処理剤については40℃にて完全に溶解するまで攪拌して調製した。また、金属石けん成分を含有する処理剤についてはボールミルにて分散処理を施し調製した。
[炭化水素樹脂(A)の内容]
炭化水素樹脂(A)は次のとおりである。
a-1:インデンおよびメチルスチレンを含む構造成分を出発物質とした芳香族石油炭化水素樹脂の完全水添石油炭化水素樹脂:軟化点90℃
a-2:ジシクロペンタジエンとインデンおよびメチルスチレンを含む構造成分を出発物質とした脂肪族系成分と芳香族成分との共重合石油樹脂の完全水添石油炭化水素樹脂:軟化点99℃
a-3:インデンおよびメチルスチレンを含む構造成分を出発物質とした芳香族石油炭化水素樹脂の部分水添石油炭化水素樹脂:軟化点135℃
[炭化水素油(B)の内容]
炭化水素油(B)は、流動パラフィンを使用し、(株)吉田製作所製レッドウッド粘度計No.827を使用して、40℃にて試料50mlの流下秒数を測定した。
[シリコーンオイル(c)の内容]
JIS Z 8803-2011に準拠し、キャノンフェンスケ粘度計にて測定した25℃における動粘度が20×10-6m2/sのポリジメチルシロキサンを用いた。
[高級アルコール(d)]の内容]
イソヘキサデカノールを用いた。
[金属石けん(e)の内容]
ステアリン酸マグネシウムを用い、処理剤を湿式粉砕処理によりステアリン酸マグネシウムの平均粒子径が0.4~0.6μmとなるように調製して使用した。なお、平均粒子径はレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置を用い、個数基準のメジアン径を平均粒子径として求めた。
【0047】
【0048】
[実施例1]
数平均分子量1800のPTMGとMDIとをモル比にてMDI/PTMG=1.58/1となるように容器に仕込み、90℃で反応せしめ、得られた反応生成物をN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解させた。次に、エチレンジアミンおよびジエチルアミンを含むDMAc溶液を前記反応物が溶解した溶液に添加して、ポリマー中の固体分が35質量%であるポリウレタンウレア溶液を調製した。
さらに、酸化防止剤として、p-クレゾ-ルおよびジビニルベンゼンの縮合重合体(デュポン社製“メタクロール(登録商標)”2390)と紫外線吸収剤として、2-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-(オクチルオキシ)フェノ-ル(サイテック社製“サイアソーブ(登録商標)”1164)を3対2(質量比)で混合し、DMAc溶液(濃度35質量%)を調製し、これを添加剤溶液(35質量%)とした。
ポリウレタンウレア溶液と添加剤溶液とを98質量%、2質量%の割合で混合してポリウレタン紡糸溶液(X1)とした。
この紡糸溶液(X1)を500m/分の巻き取り速度で、乾式紡糸し、巻き取り時に処理剤A1をポリウレタン弾性繊維100質量部に対し、1.5質量部付与して、ポリウレタン弾性繊維(580デシテックス、56フィラメント)を製造し、4.5kgの巻き糸体を得た。
【0049】
[実施例2~10、比較例1~6]
表1に示すように、処理剤の種類を変更した以外は、実施例1と同様にポリウレタン弾性繊維4.5kg巻き糸体を得た。
得られた糸の各種評価結果を表2に示す。実施例1~10のポリウレタン弾性繊維はいずれの評価においても十分な性能を有するものであった。一方、比較例1~6では解舒安定性とホットメルト接着性の両立においては満足のいく結果ではなかった。
【0050】
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の弾性繊維用処理剤は、弾性繊維に対して優れた解舒特性を付与し、かつ、ホットメルト接着剤に対して優れた接着性付与するものであるので、着用感やフィット性に優れた紙おむつや衛生ナプキン等のサニタリー製品に好適である。
【符号の説明】
【0052】
1 解舒安定性試験装置
2 巻き糸体
3a,3b,3c ポリウレタン弾性繊維
4,5 梨地ローラー
6 アスピレーター
7a-7h 収縮前のポリウレタン弾性繊維
7a’-7h’ 収縮後のポリウレタン弾性繊維
8 伸縮性シート
9 木製平板