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  • 特許-コンクリートの施工方法の決定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】コンクリートの施工方法の決定方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/06 20060101AFI20240826BHJP
【FI】
E04G21/06 ESW
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020177542
(22)【出願日】2020-10-22
(65)【公開番号】P2022068713
(43)【公開日】2022-05-10
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 秋
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 直希
(72)【発明者】
【氏名】井手 一雄
(72)【発明者】
【氏名】平野 勝識
(72)【発明者】
【氏名】石田 純平
(72)【発明者】
【氏名】新井 智之
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-094351(JP,A)
【文献】特開2019-007153(JP,A)
【文献】特開2017-025609(JP,A)
【文献】梁 俊 他6名,ダムコンクリートの締固め評価を目的とした加速度測定方法に関する検討,大成建設技術センター報,第46号,2013年,14-1から14-4,https://www.taisei.co.jp/giken/report/2013_46/paper/A046_014.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/00-21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型枠にコンクリートを打設し、所定の1箇所に挿入されたバイブレータによって締固めを行った後、所定時間に亘って養生し、硬化させることで模型コンクリートを形成する模型形成ステップと、
前記型枠を外した後、前記模型コンクリートについて、3Dスキャナによって前記バイブレータの挿入位置からの距離が異なる複数部分の表面粗さを測定する表面粗さ測定ステップと、
前記模型コンクリートの一部を用いた試験によって、前記バイブレータの挿入位置からの距離が異なる複数部分の圧縮強度を測定する圧縮強度測定ステップと、
前記バイブレータの挿入位置から、前記模型コンクリートのうち前記表面粗さが第1閾値以下及び前記圧縮強度が現場強度以上の両方の要求水準を満たす部分まで、の距離に基づいて、前記コンクリートを建設現場で施工する時の前記バイブレータの挿入間隔を決定する施工方法決定ステップと、
を含むコンクリートの施工方法の決定方法。
【請求項2】
前記模型形成ステップにおいて、前記バイブレータによって締固めを行う時に、前記コンクリートの表面のうち前記バイブレータの挿入位置からの距離が異なる複数部分に振動を検出するセンサが配置される
請求項1に記載のコンクリートの施工方法の決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの施工方法の決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートの打設作業において、バイブレータによる締固めが行われる。例えば非特許文献1には、透気係数を用いてコンクリートの締固め度合いを評価する方法が記載されている。特許文献1には、カラー画像データに基づき、コンクリートの表層品質を判定する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】梁俊、新井博之、坂本淳、松元淳一、黒羽陽一郎、原山之克、松尾健、「ダムコンクリートの締固め評価を目的とした加速度測定方法に関する検討」、大成建設技術センター報第46号(2013)、P.14-1~14-4
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-42069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、コンクリートを建設現場で施工する前に、コンクリートの適切な施工方法を決定する必要がある。非特許文献1の方法を用いてコンクリートの施工方法を決定する場合、計測時の表面水分の上限値がある(乾いていないと計測できない)ため、脱型後2か月程度の時間を要する。また、特許文献1の方法を用いる場合、照明又は光線の影響、及びコンクリート自体の色むらに起因してコンクリートの表層品質の評価値にバラツキが生じる可能性がある。すなわち、特許文献1の方法を用いる場合、建設現場に施工したコンクリートの品質が予測よりも低くなる可能性がある。
【0006】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、高い品質のコンクリートを形成するための施工方法を速やかに決定することができる、コンクリートの施工方法の決定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様のコンクリートの施工方法の決定方法は、型枠にコンクリートを打設し、所定の1箇所に挿入されたバイブレータによって締固めを行うことで模型コンクリートを形成する模型形成ステップと、前記型枠を外した後、前記模型コンクリートについて、3Dスキャナによって前記バイブレータの挿入位置からの距離が異なる複数部分の表面粗さを測定する表面粗さ測定ステップと、前記模型コンクリートの一部を用いた試験によって、前記バイブレータの挿入位置からの距離が異なる複数部分の圧縮強度を測定する圧縮強度測定ステップと、前記バイブレータの挿入位置から、前記模型コンクリートのうち前記表面粗さ及び前記圧縮強度の両方について所定の要求水準を満たす部分まで、の距離に基づいて、前記コンクリートを建設現場で施工する時の前記バイブレータの挿入間隔を決定する施工方法決定ステップと、を含む。
【0008】
コンクリートの施工方法の決定方法の望ましい態様として、前記模型形成ステップにおいて、前記バイブレータによって締固めを行う時に、前記コンクリートの表面のうち前記バイブレータの挿入位置からの距離が異なる複数部分に振動を検出するセンサが配置される。
【発明の効果】
【0009】
本開示のコンクリートの施工方法の決定方法によれば、高い品質のコンクリートを形成するための施工方法を速やかに決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態のコンクリートの施工方法の決定方法を示すフローチャートである。
図2図2は、本実施形態の模型の模式的に示す斜視図である。
図3図3は、本実施形態の模型の模式的に示す平面図である。
図4図4は、表面粗さを説明するためのコンクリート表面の模式図である。
図5図5は、バイブレータからの距離と圧縮強度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0012】
(実施形態)
図1は、本実施形態のコンクリートの施工方法の決定方法を示すフローチャートである。本実施形態のコンクリートの施工方法の決定方法、バイブレータによる締固めを行うことによって要求される強度を有するようになるコンクリートを対象とする。図1に示すように、本実施形態のコンクリートの施工方法の決定方法は、模型形成ステップS1と、表面粗さ測定ステップS2と、圧縮強度測定ステップS3と、施工方法決定ステップS4と、を備える。
【0013】
図2は、本実施形態の模型の模式的に示す斜視図である。図3は、本実施形態の模型の模式的に示す平面図である。図1及び図2に示される寸法の単位は、mmである。
【0014】
模型形成ステップS1においては、図1及び図2に示すように型枠2にコンクリート1を打設し、所定の1箇所に挿入されたバイブレータ4によって締固めを行うことで模型コンクリート9を形成する。型枠2は、内側に直方体状の空間を形成するように配置される。型枠2の内側には、緩衝材3が設けられる。緩衝材3は、例えば押出法ポリスチレンフォームである。なお、緩衝材3は、なくてもよい。
【0015】
型枠2の中に流し込まれたコンクリート1は、緩衝材3の内壁に沿って、直方体状となる。所定の量のコンクリート1が型枠2に流し込まれた後、バイブレータ4がコンクリート1の表面から挿入される。バイブレータ4は、コンクリート1内の所定の1箇所にのみ挿入され、水平方向に移動させない。バイブレータ4は、コンクリート1の内部に振動を付与する。例えば、バイブレータ4は、直径が50mmの棒状の装置である。例えば、バイブレータ4は、15秒間に亘ってコンクリート1に振動を付与する。バイブレータ4によって、コンクリート1が締固められる。コンクリート1は、締固められた後、所定時間に亘って養生されることによって硬化する。硬化したコンクリート1が、模型コンクリート9である。
【0016】
図3に示すように、模型形成ステップS1において、バイブレータ4によって締固めを行う時に、コンクリート1の表面に複数のセンサ5が配置される。センサ5は、振動を検出する。センサ5は、コンクリート1の内部のうちバイブレータ4の挿入位置からの距離が異なる複数箇所に配置される。センサ5は、コンクリート1の内部のうちバイブレータ4の振動子と同じ水平高さ(模型コンクリート9の高さの半分の高さ)に配置されることがより望ましい。本実施形態においては、8つのセンサ5が、図3に示すように同一直線上に配置される。8つのセンサ5が、等間隔(125mm間隔)で配置される。バイブレータ4に最も近いセンサ5からバイブレータ4までの距離は、125mmである。複数のセンサ5がコンクリート1の表面に配置された状態で、バイブレータ4によって締固めが行われる。各センサ5が検出した振動のデータは、例えば記憶装置等に記憶される。なお、配置されるセンサ5の数、センサ5同士の間隔、及びバイブレータ4から直近のセンサ5までの距離は、上述したものに限られず、特に限定されない。
【0017】
模型形成ステップS1において模型コンクリート9が形成されたあと、型枠2及び緩衝材3が取り外される。このため、模型コンクリート9の側面が露出する。
【0018】
図4は、表面粗さを説明するためのコンクリート表面の模式図である。表面粗さ測定ステップS2においては、型枠2を外した後、模型コンクリート9について、3Dスキャナによってバイブレータ4の挿入位置からの距離が異なる複数部分の表面粗さを測定する。3Dスキャナは、模型コンクリート9に対して例えばレーザを照射することによって表面の凹凸を検出し、照射範囲の形状をデータ化する装置である。表面粗さ測定ステップS2は、バイブレータ4による締固めをした日の翌日に行うことができる。例えば、模型コンクリート9の側面(緩衝材3に接していた面、図3でいう右側の面又は左側の面)の表面粗さが測定される。以下、模型コンクリート9の側面を型枠面という。
【0019】
具体的には、型枠面のうちバイブレータ4からの距離が異なる複数領域について表面粗さが算出される。図4は、型枠面の1つの領域を示す。3Dスキャナは、型枠面の1つの領域の複数箇所において計測基準面Rからの距離(y、y、y、y、y、・・・、y)を測定する。1つの領域における表面粗さは、例えば、下記式(1)で算出される算術平均粗さとして数値化されてもよいし、下記式(2)で算出される二乗平均平方根粗さとして数値化されてもよい。コンクリートの品質は表面が滑らかである方が高くなる傾向にあるので、表面粗さは、小さい方が望ましい。
【0020】
【数1】
【0021】
【数2】
【0022】
なお、表面粗さの数値化の方法は、上述した方法でなくてもよく、特に限定されない。表面粗さは、線粗さパラメータであってもよいし、面粗さパラメータであってもよい。
【0023】
圧縮強度測定ステップS3においては、模型コンクリート9の一部を用いた試験によって、バイブレータ4の挿入位置からの距離が異なる複数部分の圧縮強度を測定する。圧縮強度測定ステップS3は、バイブレータ4による締固めをした日の翌日に行うことができるが、バイブレータ4による締固めをした日から1週間後に行うことがより望ましい。なお、圧縮強度測定ステップS3は、表面粗さ測定ステップS2よりも前に行われてもよい。圧縮強度測定ステップS3及び表面粗さ測定ステップS2の前後関係は、特に限定されない。
【0024】
例えば、バイブレータ4の挿入位置から、125mm離れた位置、250mm離れた位置、375mm離れた位置、500mm離れた位置、625mm離れた位置、750mm離れた位置、875mm離れた位置、1000mm離れた位置で、模型コンクリート9の一部がコア(円柱状の試験体)として切除される。8つのコアに対して圧縮強度試験が行われることによって、バイブレータ4の挿入位置からの距離と模型コンクリート9の圧縮強度との関係が記録される。なお、模型コンクリート9の圧縮強度は、テストハンマーによる計測値から推定されてもよい。
【0025】
図5は、バイブレータからの距離と圧縮強度の関係を示すグラフである。図5に示すように、模型コンクリート9の圧縮強度は、バイブレータ4から離れるにしたがって小さくなっている。バイブレータ4から1000mmの範囲において、模型コンクリート9の圧縮強度は、設計強度及び現場強度を超えている。設計強度は、構造計算に用いる強度である。現場強度は、構造物の現場環境で、模型コンクリート9による試験よりも長い時間で締固めを行った際に実際に発現する強度である。
【0026】
施工方法決定ステップS4においては、コンクリート1を建設現場で施工する時のバイブレータ4の挿入間隔を決定する。バイブレータ4の挿入間隔は、模型形成ステップS1でのバイブレータ4の挿入位置から、模型コンクリート9のうち表面粗さ及び圧縮強度の両方について所定の要求水準を満たす部分まで、の距離に基づいて決定される。例えば、模型コンクリート9のうち表面粗さが第1閾値以下であり且つ圧縮強度が第2閾値以上である部分と、バイブレータ4の挿入位置と、の間の距離の最小値がXmmであった場合、建設現場で施工する時のバイブレータ4の挿入間隔は、Xmm以下に決定される。
【0027】
上述した第2閾値の一例は、コンクリート1の現場強度である。図5に示すように、本実施形態における模型コンクリート9の圧縮強度は、バイブレータ4からの距離が625mmの時に現場強度を超えていた。このため、仮にバイブレータ4からの距離が625mmである位置における表面粗さが第1閾値以下であった場合、建設現場で施工する時のバイブレータ4の挿入間隔は、625mm以下に決定される。仮に表面粗さが第1閾値以下になる位置がバイブレータ4からYmm以下の位置であった場合、建設現場で施工する時のバイブレータ4の挿入間隔は、Ymm以下に決定される。
【0028】
なお、模型形成ステップS1において、バイブレータ4の振動時間を変えた複数の模型コンクリート9が形成されてもよい。バイブレータ4の振動時間が異なる複数の模型コンクリート9に対して表面粗さ及び圧縮強度が測定されることによって、施工方法決定ステップS4でバイブレータ4の振動時間が決定されてもよい。
【0029】
以上で説明したように、本実施形態のコンクリートの施工方法の決定方法は、模型形成ステップS1と、表面粗さ測定ステップS2と、圧縮強度測定ステップS3と、施工方法決定ステップS4と、を含む。模型形成ステップS1では、型枠2にコンクリート1を打設し、所定の1箇所に挿入されたバイブレータ4によって締固めを行うことで模型コンクリート9を形成する。表面粗さ測定ステップS2では、型枠2を外した後、模型コンクリート9について、3Dスキャナによって前記バイブレータの挿入位置からの距離が異なる複数部分の表面粗さを測定する圧縮強度測定ステップS3では、模型コンクリート9の一部を用いた試験によって、バイブレータ4の挿入位置からの距離が異なる複数部分の圧縮強度を測定する。施工方法決定ステップS4では、バイブレータ4の挿入位置から、模型コンクリート9のうち表面粗さ及び圧縮強度の両方について所定の要求水準を満たす部分まで、の距離に基づいて、コンクリート1を建設現場で施工する時のバイブレータ4の挿入間隔を決定する。
【0030】
模型形成ステップS1から施工方法決定ステップS4までを行うことによって、表面粗さ及び圧縮強度の両方の要求水準を満たすバイブレータ4の挿入間隔を決定することができる。バイブレータ4の挿入間隔が適切に決定されることによって、建設現場でのコンクリート1の品質が向上する。さらに、模型形成ステップS1においてバイブレータ4を用いた締固めを行った翌日には、表面粗さ測定ステップS2及び圧縮強度測定ステップS3を行うことが可能である。したがって、本実施形態のコンクリートの施工方法の決定方法は、高い品質のコンクリートを形成するための施工方法を速やかに決定することができる。その結果、建設現場におけるコンクリート1の締固めを効率的に行うことが可能となる。
【0031】
以上で説明したように、本実施形態のコンクリートの施工方法の決定方法では、模型形成ステップS1において、バイブレータ4によって締固めを行う時に、コンクリート1の表面のうちバイブレータ4の挿入位置からの距離が異なる複数部分に振動を検出するセンサ5が配置される。
【0032】
バイブレータ4によって締固めを行う時のコンクリート1の表面で検出される振動と、模型コンクリート9の圧縮強度との間には、相関関係がある。このため、センサ5が検出した振動に基づいて、模型コンクリート9の圧縮強度を算出することが可能である。抜き出したコアを用いて圧縮強度を測定する場合には、抜き出すコアの数に応じて労力及び時間を要する。これに対して、センサ5の数を増加させるのは容易である。このため、センサ5を用いて圧縮強度を算出することによって、コアを抜き出せなかった位置での圧縮強度を補完することができる。したがって、本実施形態のコンクリートの施工方法の決定方法は、施工方法決定ステップS4で決定されるバイブレータ4の挿入間隔の精度をより向上させることができる。なお、センサ5の検出したデータによって、コンクリート1の表面だけでなく、内部の品質を確認することも可能である。センサ5の検出したデータは、締固め時間の設定、又はバイブレータ4の強度の設定に用いることも可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 コンクリート
2 型枠
3 緩衝材
4 バイブレータ
5 センサ
9 模型コンクリート
R 計測基準面
S1 模型形成ステップ
S2 表面粗さ測定ステップ
S3 圧縮強度測定ステップ
S4 施工方法決定ステップ
図1
図2
図3
図4
図5