(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】変速機
(51)【国際特許分類】
F16H 57/028 20120101AFI20240826BHJP
F16H 3/40 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
F16H57/028
F16H3/40
(21)【出願番号】P 2020178857
(22)【出願日】2020-10-26
【審査請求日】2022-02-16
【審判番号】
【審判請求日】2023-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】石田 直樹
【合議体】
【審判長】平城 俊雅
【審判官】小川 恭司
【審判官】尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-64561(JP,U)
【文献】特開2008-248971(JP,A)
【文献】特開平5-263930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/028
F16H 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケース内に設けられ、前記ケースに形成された保持部に一方の端部が保持される軸と、
前記軸に回転可能かつ軸線方向に第1位置と前記第1位置に対して前記保持部側と反対側の第2位置とに移動可能に支持され、前記第1位置で駆動力が入力されて回転し、前記第2位置で駆動力が入力されない回転体と、
樹脂からなり、前記保持部と前記回転体との間で前記軸に外嵌されて、前記回転体が前記第1位置に位置するときに前記保持部と前記回転体とに挟まれるワッシャと、を含み、
前記回転体は
、回転径方向に延びる円環状
をなし、前記ワッシャに当接する平面部と、前記平面部の外周端から回転径方向の外側ほど前記ワッシャから離れるように傾斜した円環状の傾斜面部とを有し、
前記平面部は、前記ワッシャの外径よりも大きい外径を有していて、
前記回転体が前記第1位置に位置するときに、前記ワッシャの前記回転体側の面の全体に前記平面部が当接する、変速機。
【請求項2】
前記ワッシャには、前記回転体側の端面に凹部が形成されている、請求項1に記載の変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両に搭載される変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される変速機として、たとえば、手動変速機(MT:Manual Transmission)が広く知られている。
【0003】
手動変速機が搭載された車両では、車室内にシフトレバーが設けられている。このシフトレバーのセレクト方向の操作(セレクト操作)およびシフト方向の操作(シフト操作)の組合せにより、手動変速機では、ギヤの噛み合い状態が変更されて、シフトレバーの位置に応じた変速段が構成される。
【0004】
手動変速機には、たとえば、後進段を構成するために、リバースアイドラギヤが設けられている。リバースアイドラギヤは、リバースアイドラ軸に回転可能かつ軸線方向に移動可能に支持されている。シフトレバーがリバース位置以外の位置であるときには、リバースアイドラギヤは、リバースアイドラギヤがリバースドライブギヤおよびリバースドリブンギヤの両方と噛み合わない非噛合位置に配置される。そして、シフトレバーがリバース位置に入れられると、リバースアイドラギヤが非噛合位置からリバースドライブギヤおよびリバースドリブンギヤの両方と噛み合う噛合位置に移動される。リバースアイドラギヤがリバースドライブギヤおよびリバースドリブンギヤの両方と噛み合うことにより、インプット軸からリバースドライブギヤ、リバースアイドラギヤおよびリバースドライブギヤを介してアウトプット軸に動力が伝達される後進段が構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リバースアイドラギヤは、非噛合位置から噛合位置に移動されて、手動変速機の外殻をなすケースの一部に直接または樹脂製のワッシャを介して当接して停止する。ワッシャが設定されることにより、リバースアイドラギヤがケースに直接当接するよりも、リバースアイドラギヤが停止するときに発生するストッパ音(衝突音)を低減できる。また、リバースアイドラギヤの回転によりワッシャが摩耗するが、リバースアイドラギヤおよびケースの摩耗を低減できる。
【0007】
しかるに、ストッパ音および摩耗に対して、さらなる低減が求められている。
【0008】
本発明の目的は、ストッパ音をさらに低減でき、かつ、ワッシャの摩耗を低減できる、変速機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、本発明に係る変速機は、ケースと、ケース内に設けられ、ケースに形成された保持部に一方の端部が保持される軸と、軸に回転可能かつ軸線方向に第1位置と第1位置に対して保持部側と反対側の第2位置とに移動可能に支持され、第1位置で駆動力が入力されて回転し、第2位置で駆動力が入力されない回転体と、樹脂からなり、第1保持部と回転体との間で軸に外嵌されて、回転体が第1位置に位置するときに第1保持部と回転体とに挟まれるワッシャとを含み、回転体は、ワッシャに当接する当接部を有し、当接部は、ワッシャの外径よりも大きい外径を有している。
【0010】
この構成によれば、ケースに保持部が形成され、その保持部に軸の一端部が保持されている。軸には、回転体が回転可能かつ軸線方向に第1位置と第1位置に対して保持部側と反対側の第2位置とに移動可能に支持されている。回転体が第1位置に位置するときには、回転体に駆動力が入力されて、その駆動力により回転体が回転する。一方、回転体が第2位置に位置するときには、回転体に駆動力が入力されない。
【0011】
保持部と回転体との間には、樹脂からなるワッシャが設定されており、回転体が第1位置に位置するときには、保持部と回転体との間にワッシャが挟まれる。そのため、回転体が第2位置から第1位置に移動して停止するときに、回転体と保持部とが直接に当接することを防止でき、その停止のときに発生するストッパ音(衝突音)を低減することができる。また、回転体の回転により回転体と保持部とが擦れ合うことを防止でき、回転体および保持部の摩耗を抑制することができる。
【0012】
また、回転体におけるワッシャに当接する当接部は、ワッシャの外径よりも大きい外径を有している。これにより、回転体が第1位置に位置するときに、当接部が堰となって、ワッシャの外周面上に潤滑のためのオイルが溜まる。そして、その溜まったオイルが回転体とワッシャとの間に流れ込む。そのため、回転体とワッシャとの間をオイルで潤滑することができ、回転体の回転(摺動)によるワッシャの摩耗を低減することができる。
【0013】
ワッシャには、回転体側の端面に凹部が形成されていることがより好ましい。
【0014】
この構成により、回転体とワッシャとの間に流れ込むオイルが凹部に入り、凹部にオイルが保持されるので、回転体とワッシャとの間をオイルで良好に潤滑することができ、回転体の回転によるワッシャの摩耗を一層低減することができる。
【0015】
また、回転体が第1位置から第2位置に移動した後もある程度の時間、凹部にオイルが保持されるので、その状態で回転体が第2位置から第1位置に移動するときには、回転体がワッシャに当接する力を緩和でき、ストッパ音を一層低減することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ストッパ音を低減することができる。また、ワッシャの摩耗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係るトランスアクスルの構成を示す断面図である。
【
図2】リバースアイドラ軸の近傍の構成を示す断面図である。
【
図4】ワッシャの左側の端面の他の構成(変形例1)を示す図である。
【
図5】ワッシャの左側の端面の他の構成(変形例2)を示す図である。
【
図6】ワッシャの左側の端面の他の構成(変形例3)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0019】
<トランスアクスルの構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るトランスアクスル1の構成を示す断面図である。なお、
図1では、断面を表すハッチングの付与が省略されている。
【0020】
トランスアクスル1は、その外殻をなすケース2内に、変速機(トランスミッション)3およびデファレンシャルギヤ4を備えている。トランスアクスル1は、エンジン(図示せず)を駆動源とする車両に搭載されて、エンジンの動力を変速機3で変速し、その変速された動力をデファレンシャルギヤ4を介して左右の駆動輪に伝達する。ケース2内には、オイルが封入されている。
【0021】
変速機3は、前進5段/後進1段の変速段を有する手動変速機(MT:Manual Transmission)であり、車両のエンジンコンパートメント内において、エンジンに対する車幅方向の一方側に配置される。変速機3は、車幅方向に延びるインプット軸11と、インプット軸11と平行に配置されたアウトプット軸12とを備えている。
【0022】
インプット軸11のエンジン側(
図1における右側。以下、エンジン側を「右側」という。)の端部は、ケース2を貫通して、ケース2の外部において、クラッチ機構(図示せず)に接続されている。インプット軸11には、クラッチ機構を介して、エンジンの動力が入力される。ケース2内におけるインプット軸11の右側の端部は、ボールベアリング13を介して、ケース2に回転可能に支持されている。一方、インプット軸11のエンジン側と反対側(
図1における左側。以下、エンジン側と反対側を「左側」という。)の端部は、ボールベアリング14を介して、ケース2に回転可能に支持されている。
【0023】
インプット軸11には、右側から順に、1速ドライブギヤ21、リバースドライブギヤ22および2速ドライブギヤ23が一体に形成されている。また、インプット軸11には、2速ドライブギヤ23に対して右側と反対側において、2速ドライブギヤ23側から順に、3速ドライブギヤ24、4速ドライブギヤ25および5速ドライブギヤ26がそれぞれ相対回転可能に支持されている。
【0024】
アウトプット軸12の右側の端部は、ケース2内において、ニードルベアリング27を介して、ケース2に回転可能に支持されている。一方、アウトプット軸12の左側の端部は、ケース2内において、ボールベアリング28を介して、ケース2に回転可能に支持されている。
【0025】
アウトプット軸12の右側の端部には、出力ギヤ31が一体に形成されている。また、アウトプット軸12には、出力ギヤ31に対して左側において、出力ギヤ31側から順に、1速ドリブンギヤ32、リバースドリブンギヤ33および2速ドリブンギヤ34がそれぞれ相対回転可能に支持されている。さらに、アウトプット軸12には、2速ドリブンギヤ34に対して左側において、2速ドリブンギヤ34側から順に、3速ドリブンギヤ35、4速ドリブンギヤ36および5速ドリブンギヤ37がそれぞれスプライン嵌合により相対回転不能に支持されている。
【0026】
1速ドリブンギヤ32は、1速ドライブギヤ21と常に噛合し、2速ドリブンギヤ34は、2速ドライブギヤ23と常に噛合している。また、3速ドリブンギヤ35は、3速ドライブギヤ24と常に噛合し、4速ドリブンギヤ36は、4速ドライブギヤ25と常に噛合し、5速ドリブンギヤ37は、5速ドライブギヤ26と常に噛合している。
【0027】
ケース2内には、リバースアイドラ軸41がインプット軸11およびアウトプット軸12と平行に配置されている。ケース2には、リバースアイドラ軸41の軸線上に、右側に凹む保持部42が形成されており、リバースアイドラ軸41の右側の端部は、その保持部42に挿入されて保持されている。また、ケース2には、リバースアイドラ軸41の左側の端部に上方から対向する位置に、ボルト挿通孔43が貫通して形成されている。ボルト挿通孔43には、ケース2の外側からボルト44が挿入される。リバースアイドラ軸41には、ボルト挿通孔43と重なる位置に、固定穴45が貫通して形成されている。ボルト挿通孔43に挿通されたボルト44の先端部が固定穴45にねじ込まれることにより、リバースアイドラ軸41の左側の端部がボルト44に保持され、リバースアイドラ軸41がケース2に対して回転不能に固定される。
【0028】
リバースアイドラ軸41には、リバースアイドラギヤ46が相対回転可能かつ軸線方向に移動可能に支持されている。リバースアイドラギヤ46は、軸線方向の移動により、相対的に右側の噛合位置P1(
図2参照)と相対的に左側の非噛合位置P2(
図2参照)とに変位する。リバースアイドラギヤ46は、噛合位置P1において、リバースドライブギヤ22とリバースドリブンギヤ33との両方に噛合する。非噛合位置P2では、リバースアイドラギヤ46とリバースドライブギヤ22およびリバースドリブンギヤ33との噛合が解除される。
【0029】
1速ドリブンギヤ32と2速ドリブンギヤ34との間には、1-2速シンクロメッシュ(ハブアッシ)51が設けられている。1-2速シンクロメッシュ51は、公知の構成であり、アウトプット軸12にスプライン嵌合されたシンクロハブ52、シンクロハブ52の両側に配置されたシンクロナイザリング53およびシンクロハブ52の外周を取り囲むスリーブ54などを含む。スリーブ54の内周面は、シンクロハブ52の外周面とスプライン嵌合しており、スリーブ54は、シンクロハブ52およびアウトプット軸12と一体に回転する。リバースドリブンギヤ33は、スリーブ54と一体に形成されている。
【0030】
3速ドライブギヤ24と4速ドライブギヤ25との間には、3-4速シンクロメッシュ55が設けられている。また、5速ドライブギヤ26に対してエンジン側と反対側には、5速シンクロメッシュ56が設けられている。3-4速シンクロメッシュ55および5速シンクロメッシュ56の構成は、公知であるから、その説明を省略する。
【0031】
車室内に配設されたシフトレバーのセレクト操作およびシフト操作により、シフトレバーが1速段の位置に入れられると、1-2速シンクロメッシュ51の機能により、1速ドリブンギヤ32がアウトプット軸12に相対回転不能に結合される。これにより、インプット軸11に入力される動力が1速ドライブギヤ21および1速ドリブンギヤ32を介してアウトプット軸12に伝達される。このとき、エンジンの動力は、1速段の変速比で変速されて、アウトプット軸12に伝達される。
【0032】
シフトレバーが2速段の位置に入れられると、1-2速シンクロメッシュ51の機能により、2速ドリブンギヤ34がアウトプット軸12に相対回転不能に結合される。これにより、インプット軸11に入力される動力が2速ドライブギヤ23および2速ドリブンギヤ34を介してアウトプット軸12に伝達される。このとき、エンジンの動力は、2速段の変速比で変速されて、アウトプット軸12に伝達される。
【0033】
シフトレバーが3速段の位置に入れられると、3-4速シンクロメッシュ55の機能により、3速ドライブギヤ24がインプット軸11に相対回転不能に結合される。これにより、インプット軸11に入力される動力が3速ドライブギヤ24および3速ドリブンギヤ35を介してアウトプット軸12に伝達される。このとき、エンジンの動力は、3速段の変速比で変速されて、アウトプット軸12に伝達される。
【0034】
シフトレバーが4速段の位置に入れられると、3-4速シンクロメッシュ55の機能により、4速ドライブギヤ25がインプット軸11に相対回転不能に結合される。これにより、インプット軸11に入力される動力が4速ドライブギヤ25および4速ドリブンギヤ36を介してアウトプット軸12に伝達される。このとき、エンジンの動力は、4速段の変速比で変速されて、アウトプット軸12に伝達される。
【0035】
シフトレバーが5速段の位置に入れられると、5速シンクロメッシュ56の機能により、5速ドライブギヤ26がインプット軸11に相対回転不能に結合される。これにより、インプット軸11に入力される動力が5速ドライブギヤ26および5速ドリブンギヤ37を介してアウトプット軸12に伝達される。このとき、エンジンの動力は、5速段の変速比で変速されて、アウトプット軸12に伝達される。
【0036】
シフトレバーがリバース位置に入れられると、シフトレバーのセレクト操作およびシフト操作に伴って、シフトアンドセレクトシャフトが軸線方向および周方向に動作し、リバースシフトフォーク57が移動することにより、リバースアイドラギヤ46が非噛合位置P2から噛合位置P1に変位し、リバースアイドラギヤ46がリバースドライブギヤ22およびリバースドリブンギヤ33と噛合する。このとき、インプット軸11に入力される動力がリバースドライブギヤ22、リバースアイドラギヤ46およびリバースドリブンギヤ33を介してアウトプット軸12に伝達される。これにより、アウトプット軸12が1-5速段の場合と逆方向に回転する。
【0037】
一方、シフトレバーがリバース位置から抜かれると、シフトアンドセレクトシャフトが周方向に動作し、リバースシフトフォーク57が移動することにより、リバースアイドラギヤ46が噛合位置P1から非噛合位置P2に変位し、リバースアイドラギヤ46とリバースドライブギヤ22およびリバースドリブンギヤ33との噛合が解除される。
【0038】
デファレンシャルギヤ4は、デフケース61を備えている。デフケース61は、ギヤ収容空間62を内部に提供するギヤ収容部63と、ギヤ収容部63の外周から回転径方向に張り出すフランジ部64とを有している。
【0039】
ギヤ収容部63には、回転径方向に延びるピニオンシャフト65がギヤ収容空間62を貫通して保持されている。ピニオンシャフト65には、2個のピニオンギヤ66,67が互いに間隔を開けて回転可能に保持されている。また、ギヤ収容空間62内には、2個のサイドギヤ68,69がピニオンシャフト65の両側に分かれて配置されている。サイドギヤ68,69およびピニオンギヤ66,67は、いずれもかさ歯車からなり、各サイドギヤ68,69は、ピニオンギヤ66,67の両方と噛合している。
【0040】
また、ギヤ収容部63には、サイドギヤ68,69が対向する方向、言い換えればピニオンシャフト65と直交する方向に貫通する円筒状のシャフト挿入部71,72が形成されている。シャフト挿入部71,72には、それぞれドライブシャフト(図示せず)がデフケース61の外部から挿入される。ドライブシャフトの先端部は、ギヤ収容空間62内において、それぞれサイドギヤ68,69に相対回転不能に結合される。
【0041】
シャフト挿入部71,72には、それぞれベアリング73,74が外嵌されている。ベアリング73,74のアウタレース(外輪)は、ケース2に回転不能に保持されている。これにより、デフケース61は、ベアリング73,74を介してユニットケースに、ドライブシャフトと同一の回転軸線まわりに回転可能に支持されている。
【0042】
フランジ部64には、リングギヤ75が固定されている。リングギヤ75は、デフケース61を取り囲む略円環板状のウェブ76と、ウェブ76の外周を取り囲む略円筒状のリム77とを一体的に有している。リム77は、ウェブ76からデフケース61の回転軸線に沿う方向の両側に突出している。リム77の外周面には、ギヤ歯が形成されており、このギヤ歯は、変速機3の出力ギヤ31と噛合している。
【0043】
変速機3のアウトプット軸12に伝達される動力は、出力ギヤ31からリングギヤ75に伝達される。これにより、リングギヤ75およびデフケース61が一体に回転する。デフケース61の回転は、ピニオンギヤ66,67を介して、各サイドギヤ68,69の回転に変換される。これにより、各サイドギヤ68,69と一体にドライブシャフトが回転し、ドライブシャフトの回転が車両の駆動輪に伝達される。
【0044】
また、ケース2内には、オイルが封入されているので、リングギヤ75およびデフケース61が一体に回転すると、ケース2の底部に溜まっているオイルがリングギヤ75およびデフケース61に掻き上げられて飛沫となり、オイルの飛沫がケース2内の各部に供給される。
【0045】
<要部構成>
図2は、リバースアイドラ軸41の近傍の構成を示す断面図である。
図2においても、断面を表すハッチングの付与が省略されている。
【0046】
ケース2には、リバースアイドラ軸41の上側かつボルト挿通孔43の右側に、ストッパ壁部81が形成されている。ストッパ壁部81は、ボルト挿通孔43に沿って上下方向に延び、下端部が右側に延出している。その下端部の右側の側面82は、軸線方向と直交する方向に延びる平面に形成されている。
【0047】
一方、ケース2の保持部42の左側には、樹脂からなるワッシャ83が設けられている。ワッシャ83は、円環板状に形成されて、リバースアイドラ軸41に外嵌され、保持部42に当接している。
【0048】
リバースアイドラギヤ46は、周面にギヤ歯が形成されたギヤ部84と、ギヤ部84の内周端部から右側に延出するスリーブ部85とを一体に有している。スリーブ部85の先端部86は、回転径方向の外側に屈曲して、フランジ状に張り出している。先端部86の右側の端面は、回転径方向に延びる円環状の平面部87と、平面部87の外周端から回転径方向の外側ほど左側に位置するように傾斜した円環状の傾斜面部88とを有している。平面部87は、外径(外周端の直径)D1がワッシャ83の外径D2よりも大きいように形成されている。
【0049】
リバースアイドラギヤ46が噛合位置P1から非噛合位置P2に向けて移動するときには、
図2に実線で示されるように、リバースアイドラギヤ46のギヤ部84がストッパ壁部81の側面82に当接して、リバースアイドラギヤ46が停止する。したがって、ストッパ壁部81の側面82は、リバースアイドラギヤ46を非噛合位置P2で停止させるストッパとして機能する。
【0050】
リバースアイドラギヤ46が非噛合位置P2から噛合位置P1に向けて移動するときには、
図2に破線で示されるように、リバースアイドラギヤ46のスリーブ部85の先端部86がワッシャ83に当接して、リバースアイドラギヤ46とケース2の保持部42との間にワッシャ83が挟まれた状態で、リバースアイドラギヤ46が停止する。したがって、ワッシャ83は、リバースアイドラギヤ46を噛合位置P1で停止させるストッパとして機能する。
【0051】
【0052】
ワッシャ83の左側の端面には、4個の円形の円形凹部91がワッシャ83の中心線を中心とする等角度(すなわち、90°)で形成されている。円形凹部91は、成形型で形成されてもよいし、ワッシャ83の製造時に成形型からワッシャ83を取り出すためのプッシャピンによる押圧痕であってもよい。
【0053】
また、ワッシャ83の左側の端面には、周方向に隣り合う円形凹部91の各間に、略矩形状の矩形凹部92が形成されている。4個の矩形凹部92は、ワッシャ83の中心線を中心とする等角度(すなわち、90°)で配置されている。矩形凹部92は、ワッシャ83の外周面で開放されており、ワッシャ83の外周面に近づくにつれてリバースアイドラギヤ46の回転方向の上流側に位置するように、回転径方向に対して傾斜している。
【0054】
<作用効果>
以上のように、ケース2に保持部42が形成され、その保持部42にリバースアイドラ軸41の右側の端部が保持されている。リバースアイドラ軸41には、リバースアイドラギヤ46が回転可能かつ軸線方向に噛合位置P1と噛合位置P1に対して左側の非噛合位置P2とに移動可能に支持されている。リバースアイドラギヤ46が噛合位置P1に位置するときには、リバースアイドラギヤ46がリバースドライブギヤ22およびリバースドリブンギヤ33と噛合し、リバースアイドラギヤ46に駆動力が入力されて、その駆動力によりリバースアイドラギヤ46が回転する。一方、リバースアイドラギヤ46が非噛合位置P2に位置するときには、リバースアイドラギヤ46がリバースドライブギヤ22およびリバースドリブンギヤ33と噛合せず、リバースアイドラギヤ46に駆動力が入力されない。
【0055】
保持部42とリバースアイドラギヤ46との間には、樹脂からなるワッシャ83が設定されており、リバースアイドラギヤ46が噛合位置P1に位置するときには、保持部42とリバースアイドラギヤ46のスリーブ部85の先端部86との間にワッシャ83が挟まれる。そのため、リバースアイドラギヤ46が非噛合位置P2から噛合位置P1に移動して停止するときに、リバースアイドラギヤ46と保持部42とが直接に当接することを防止でき、その停止のときに発生するストッパ音(衝突音)を低減することができる。また、リバースアイドラギヤ46の回転によりリバースアイドラギヤ46と保持部42とが擦れ合うことを防止でき、リバースアイドラギヤ46および保持部42の摩耗を抑制することができる。
【0056】
また、ワッシャ83に当接する先端部86は、回転径方向に延びる平面部87と、平面部87の外周端から回転径方向の外側ほど左側に位置するように傾斜した傾斜面部88とを有している。平面部87は、ワッシャ83の外径D2よりも大きい外径D1を有している。これにより、リバースアイドラギヤ46が噛合位置P1に位置するときに、平面部87(先端部86)が堰となって、ワッシャ83の外周面上に潤滑のためのオイルが溜まる。そして、その溜まったオイルがリバースアイドラギヤ46とワッシャ83との間に流れ込む。そのため、リバースアイドラギヤ46とワッシャ83との間をオイルで潤滑することができ、リバースアイドラギヤ46の回転(摺動)によるワッシャ83の摩耗を低減することができる。
【0057】
また、平面部87の外周に傾斜面部88が設けられていることにより、デファレンシャルギヤ4のデフケース61およびリングギヤ75により掻き上げられたオイルの飛沫や1速ドリブンギヤ32から飛散するオイルの飛沫などが傾斜面部88に付着すると、その付着したオイルが液滴となってワッシャ83の外周面上に導かれる。そのため、ワッシャ83の外周面上にオイルを良好に溜めることができ、リバースアイドラギヤ46とワッシャ83との間をオイルで良好に潤滑することができる。その結果、リバースアイドラギヤ46の回転(摺動)によるワッシャ83の摩耗を一層低減することができる。
【0058】
さらに、ワッシャ83には、リバースアイドラギヤ46側の端面に円形凹部91および矩形凹部92が形成されている。これにより、リバースアイドラギヤ46とワッシャ83との間に流れ込むオイルが円形凹部91および矩形凹部92に入り、円形凹部91および矩形凹部92にオイルが保持される。矩形凹部92は、ワッシャ83の外周面で開放されているので、とくにオイルが入りやすく、その入ったオイルが矩形凹部92から溢れて、リバースアイドラギヤ46とワッシャ83との間に広がる。よって、リバースアイドラギヤ46とワッシャ83との間をオイルで一層良好に潤滑することができ、リバースアイドラギヤ46の回転によるワッシャ83の摩耗をさらに低減することができる。
【0059】
また、リバースアイドラギヤ46が噛合位置P1から非噛合位置P2に移動した後もある程度の時間、円形凹部91にオイルが保持されるので、その状態でリバースアイドラギヤ46が非噛合位置P2から噛合位置P1に移動するときには、リバースアイドラギヤ46がワッシャ83に当接する力を緩和でき、ストッパ音を一層低減することができる。
【0060】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0061】
たとえば、ワッシャ83の左側の端面に円形凹部91および矩形凹部92が形成されているとしたが、
図4に示されるように、円形凹部91のみが形成されていてもよい。また、
図5に示されるように、矩形凹部92が円形凹部91に接続されるように形成されていてもよい。さらには、
図6に示されるように、円形凹部91が省略されて、4個の矩形凹部92と交差する円環状の円環状凹部93が形成されて、各矩形凹部92と円環状凹部93とが連通していてもよい。
【0062】
また、軸および回転体の一例として、それぞれリバースアイドラ軸41およびリバースアイドラギヤ46を取り上げたが、本発明は、それら以外の軸およびギヤなどの回転体を備える構成に適用されてもよい。
【0063】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0064】
2:ケース
3:変速機
41:リバースアイドラ軸(軸)
42:保持部
46:リバースアイドラギヤ(回転体)
83:ワッシャ
87:平面部(当接部)
91:円形凹部(凹部)
92:矩形凹部(凹部)
93:円環状凹部(凹部)
D1,D2:外径
P1:噛合位置(第1位置)
P2:非噛合位置(第2位置)