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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】ホームドア制御装置
(51)【国際特許分類】
   B61B 1/02 20060101AFI20240826BHJP
   B61L 23/00 20060101ALI20240826BHJP
   B61L 3/12 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
B61B1/02
B61L23/00 Z
B61L3/12 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020186967
(22)【出願日】2020-11-10
(65)【公開番号】P2022076559
(43)【公開日】2022-05-20
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181146
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 啓
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 充広
(72)【発明者】
【氏名】内田 敏博
(72)【発明者】
【氏名】近松 秀明
(72)【発明者】
【氏名】笠井 貴之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 良太
【審査官】大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-008557(JP,A)
【文献】特開2001-253342(JP,A)
【文献】特開2010-254294(JP,A)
【文献】特開2020-050309(JP,A)
【文献】特開平10-203361(JP,A)
【文献】米国特許第04551944(US,A)
【文献】中国特許出願公開第106218647(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 1/02
B61L 23/00
B61L 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワンマン運転とツーマン運転との切替え可能な車両に対応するホームドア制御装置であって、
運転士用ドア開閉操作部での操作態様と、車掌用ドア開閉操作部での操作態様とを記憶する記憶部と、
ワンマン運転時において、乗務員の開閉操作指令と前記記憶部の記憶内容とに基づき車両ドアの開閉制御を行う開閉制御部と、
前記開閉制御部による開閉制御に応じた開扉要求を地上側へ送信する車上側通信部と
を備えるホームドア制御装置。
【請求項2】
前記記憶部は、前記運転士用ドア開閉操作部と前記車掌用ドア開閉操作部とのうちいずれで操作がなされたかを記憶する、請求項1に記載のホームドア制御装置。
【請求項3】
前記運転士用ドア開閉操作部と前記車掌用ドア開閉操作部とにおいて、車両ドアのドア開閉が自動であるか半自動であるかの設定がそれぞれなされており、
前記開閉制御部は、前記記憶部に記憶された側での設定で、車両ドアの開閉制御を行う、請求項2に記載のホームドア制御装置。
【請求項4】
前記記憶部は、運転士側でのドア開閉の設定が自動であるか半自動であるかと、車掌側でのドア開閉の設定が自動であるか半自動であるかとを記憶する、請求項1及び2のいずれか一項に記載のホームドア制御装置。
【請求項5】
前記運転士用ドア開閉操作部は、ドア開閉指令を出力する運転士用ドアスイッチと、ドア開閉の自動半自動を切り替える運転士用自動半自動切替スイッチとを含み、
前記車掌用ドア開閉操作部は、ドア開閉指令を出力する車掌用ドアスイッチと、ドア開閉の自動半自動を切り替える車掌用自動半自動切替スイッチとを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のホームドア制御装置。
【請求項6】
前記開閉制御部は、前記車上側通信部を介して前記開扉要求を地上側へ送信した後、地上側からの開扉許可の応答を待ち、前記開扉許可を受けた後、前記記憶部の記憶内容に応じて車両ドアの開扉をする、請求項1~5のいずれか一項に記載のホームドア制御装置。
【請求項7】
前記開閉制御部は、前記運転士用ドア開閉操作部による操作と前記車掌用ドア開閉操作部による操作とのうち一方による操作がなされた後、他方による操作が別途なされた場合、予め定めた設定に基づき優先する操作を決定する、請求項1~6のいずれか一項に記載のホームドア制御装置。
【請求項8】
前記開閉制御部は、複数回のドア開閉の操作がなされた場合、一の操作から他の操作へ切り替えるための時間取りを行う、請求項1~7のいずれか一項に記載のホームドア制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホームドアの開閉動作について制御を行うホームドア制御装置のうち、特にワンマン運転対応可能な車両に対応するホームドア制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、駅等に設置されるホームドア制御システムとして、車上側すなわち列車側と地上側すなわち駅のホーム側とで無線通信をすることで、車上側の車両ドアと地上側のホームドアとで連動した開閉制御を行うもの(特許文献1,2参照)が知られている。また、ワンマン運転における列車ドアの自動開閉システムに関して、例えばホームドアが設けられた駅においても対応可能なもの(特許文献3参照)も知られている。
【0003】
しかしながら、特許文献1,2に示すホームドアの制御態様では、無線式のホームドアについて記載されているが、運転士のみで運行をするワンマン運転への対応に関しては言及がなされていない。また、先行技術3には、ワンマン運転におけるホームドアの開閉での運転手の負担軽減を図る技術について記載されているが、列車ドアとホームドアとの連携制御について詳細には言及されていない。また、状況に応じて、運転手のみで車掌がいないワンマン運転と運転手に加え車掌がいるツーマン運転とを切り替えて対応することが可能な車両(ワンマン運転対応可能な車両)についてのホームドアへの対応に関しては、言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5517706号公報
【文献】特許第6188661号公報
【文献】特開平10-203361号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、ワンマン運転対応可能な車両に対応可能であって、車上側と地上側とでのドア開閉の連動を可能としつつ、さらに、車上側における通信設備を簡易化できるホームドア制御装置を提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するためのホームドア制御装置は、ワンマン運転対応可能な車両に対応するホームドア制御装置であって、運転士用ドア開閉操作部での操作態様と、車掌用ドア開閉操作部での操作態様とを記憶する記憶部と、乗務員の開閉操作指令と記憶部の記憶内容とに基づき車両ドアの開閉制御を行う開閉制御部と、開閉制御部による開閉制御に応じた開扉要求を地上側へ送信する車上側通信部とを備える。
【0007】
上記ホームドア制御装置では、ワンマン運転対応可能とすべく、運転士用ドア開閉操作部と車掌用ドア開閉操作部とを設けた構成において、運転士側での操作と車掌側での操作との双方について記憶し、記憶した内容に基づいてドア開閉のための地上側との通信を行って車上側と地上側とでのドア開閉の連動を可能とし、かつ、ドア開閉の連動を可能とするに際して、車上側における通信設備を一元集約できる。
【0008】
本発明の具体的な側面では、記憶部は、運転士用ドア開閉操作部と車掌用ドア開閉操作部とのうちいずれで操作がなされたかを記憶する。この場合、記憶されている操作がなされた側に基づく開閉動作の処理が可能となる。
【0009】
本発明の別の側面では、運転士用ドア開閉操作部と車掌用ドア開閉操作部とにおいて、車両ドアのドア開閉が自動であるか半自動であるかの設定がそれぞれなされており、開閉制御部は、記憶部に記憶された側での設定で、車両ドアの開閉制御を行う。この場合、設定に応じて自動又は半自動による開閉制御がなされる。
【0010】
本発明のさらに別の側面では、記憶部は、運転士側でのドア開閉の設定が自動であるか半自動であるかと、車掌側でのドア開閉の設定が自動であるか半自動であるかとを記憶する。この場合、記憶部に記憶された設定に応じて自動又は半自動による開閉制御がなされる。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、運転士用ドア開閉操作部は、ドア開閉指令を出力する運転士用ドアスイッチと、ドア開閉の自動半自動を切り替える運転士用自動半自動切替スイッチとを含み、車掌用ドア開閉操作部は、ドア開閉指令を出力する車掌用ドアスイッチと、ドア開閉の自動半自動を切り替える車掌用自動半自動切替スイッチとを含む。この場合、各種スイッチの切替操作に基づき動作制御がなされる。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、開閉制御部は、車上側通信部を介して開扉要求を地上側へ送信した後、地上側からの開扉許可の応答を待ち、開扉許可を受けた後、記憶部の記憶内容に応じて車両ドアの開扉をする。この場合、地上側からの応答を待って車両ドアの開扉することで、地上側と車上側とでの連携したドア開閉が可能になる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、開閉制御部は、運転士用ドア開閉操作部による操作と車掌用ドア開閉操作部による操作とのうち一方による操作がなされた後、他方による操作が別途なされた場合、予め定めた設定に基づき優先する操作を決定する。この場合、異なる操作が前後した場合への対応が可能になる。
【0014】
本発明のさらに別の側面では、開閉制御部は、複数回のドア開閉の操作がなされた場合、一の操作から他の操作へ切り替えるための時間取りを行う。この場合、適切な操作切替に際しての適切な動作確保ができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(A)及び(B)は、第1実施形態に係るホームドア制御装置の構成概要を概念的に示すブロック図である。
図2】ホームドア制御装置の一構成例について説明するためのブロック図である。
図3】(A)~(C)は、ホームドア制御装置によるドア開閉の様子について一例を示す概念的な斜視図である。
図4】(A)は、運転士用ドア開閉操作部での操作態様の一例を示す正面図であり、(B)及び(C)は、車掌用ドア開閉操作部での操作態様の一例を示す正面図である。
図5】(A)~(E)は、ワンマン運転対応可能な車両(列車)の様子について一例を示す概念図である。
図6】(A)は、ホームドア制御装置の構成を概要的に示す図であり、(B)~(E)は、(A)の比較例の図である。
図7】ホームドア制御装置の一変形例について説明するためのブロック図である。
図8】ホームドア制御装置によるドア開閉についての一連の動作処理を説明するためのフローチャートである。
図9】第2実施形態に係るホームドア制御装置によるドア開閉についての一連の動作処理を説明するためのフローチャートである。
図10】複数回のドア開閉の操作がなされた場合の処理について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔第1実施形態〕
以下、図1等を参照して、本発明の第1実施形態に係るホームドア制御装置について説明する。図1(A)及び図1(B)は、本実施形態のホームドア制御装置100の構成概要について一例を概念的に示すブロック図である。図1(A)は、ホームドア制御装置100におけるドア開閉制御に際して、車上側から地上側に向けて開扉要求のための信号送信を行うまでの過程の様子について示しており、図1(B)は、開扉要求に対する応答(アンサーバック)として、地上側から車上側に向けて開扉許可のための信号送信からドア開閉の動作に至るまでの過程の様子について示している。なお、図において、ホームドア制御装置100のうち、車上側に設けられる設備については、車両VEに搭載されるものとして示しているが、車両VEについては、典型的には、複数の車両を連結して一編成となる列車(例えば図5に例示する列車TR)のうちの一車両が想定される。
【0017】
図1(A)に示すように、本実施形態に係るホームドア制御装置100は、車上側すなわち列車を構成する車両VE側に搭載される設備として、運転士用ドア開閉操作部10dと、車掌用ドア開閉操作部10cと、記憶部20と、開閉制御部30と、車上側通信部40とを備える。また、ホームドア制御装置100は、地上側すなわち駅のホーム側に設けられる設備として、例えば、地上側ドア制御装置GCと、ホームドア装置PDとを備える。なお、車上側に搭載される各種設備は、運転士や車掌により操作がなされるものであり、典型的には、列車を構成する複数の車両のうち先頭や最後尾の車両に搭載されている。なお、これらについては、図5を参照して一例を後述する。
【0018】
また、本実施形態では、ホームドア制御装置100の各部を搭載した車両VEあるいは車両VEにより構成される列車は、運転手のみで車掌がいないワンマン運転と、運転手に加え車掌がいるツーマン運転とを切り替えて対応することが可能となっている。ここでは、このような車両(列車)をワンマン運転対応可能な車両(列車)と呼ぶ。
【0019】
以下、上述したホームドア制御装置100を構成する各部のうち、まず、車上側に設けられるものについて説明する。
【0020】
運転士用ドア開閉操作部10dは、車両VEに乗務する乗務員のうち運転士がドア開閉の操作を行うための各種設備を示しており、具体的には、ドア開閉に関するスイッチ等が該当する。なお、各種スイッチについての具体的一例については、図2を参照して後述する。
【0021】
車掌用ドア開閉操作部10cは、車両VEに乗務する乗務員のうち車掌がドア開閉の操作を行うための各種設備を示しており、具体的には、ドア開閉に関するスイッチ等が該当する。なお、各種スイッチについての具体的一例については、図2を参照して後述する。ただし、本実施形態では、ホームドア制御装置100において、車両VEあるいは車両VEにより構成される列車は、ワンマン運転対応可能となっており、ワンマン運転時においては、運転士は、運転士用ドア開閉操作部10dの操作のみならず、車掌用ドア開閉操作部10cの操作も可能となる。
【0022】
記憶部20は、例えばリレー回路や各種ストレージデバイス等で構成され、運転士用ドア開閉操作部10dでの操作態様と、車掌用ドア開閉操作部10cでの操作態様とを記憶する。特に、記憶部20は、運転士用ドア開閉操作部10dと車掌用ドア開閉操作部10cとのうちいずれで操作がなされたかを記憶する。
【0023】
開閉制御部30は、例えば各種電子回路やCPU等で構成され、各種指令信号の出力等、ドア開閉のための制御処理を司る。特にここでは、開閉制御部30は、各ドア開閉操作部10d,10cから出力される乗務員の開閉操作指令と記憶部20の記憶内容とに基づき車両ドアの開閉制御を行う。
【0024】
車上側通信部40は、例えば無線通信により、開閉制御部30による開閉制御に応じた開扉要求を地上側へ送信する。
【0025】
次に、上述したホームドア制御装置100を構成する各部のうち、地上側に設けられるものについて説明する。
【0026】
地上側ドア制御装置GCは、車上側との通信を行うとともに、地上側すなわちホーム側におけるドア開閉の動作を制御する。地上側ドア制御装置GCは、典型的には、地上側と各種車両情報の通信に関する制御を行う地上伝送装置や、地上側でのドア開閉に関する各種動作を制御する総合制御部等で構成されるが、より詳しくは、図2を参照して一例を後述する。
【0027】
ホームドア装置PDは、駅のホームに設置されており、複数のホームドア開口部DAを構成する開閉式の扉部材やその開閉駆動のための駆動部等の各部を収納するとともに各ホームドア開口部間を接続する複数の筐体部を有して構成される。ホームドア装置PDは、地上側ドア制御装置GCからの指令信号に従って、地上側でのドア開閉動作を行う。
【0028】
以下、図1(A)を参照して、ホームドアの開閉制御に際して、車上側から地上側に向けて開扉要求のための信号送信を行うまでの過程の様子について説明する。なお、開扉要求のタイミングとしては、例えば車両VEを含んで構成される列車が、ホームドア装置PDを設置した駅のホームに到着し、停車した直後等が考えられる。
【0029】
上記のような状況において、まず、乗務員により運転士用ドア開閉操作部10dあるいは車掌用ドア開閉操作部10cが操作されてドアに関する開閉操作指令が出力されると、これを受けた開閉制御部30は、車上側通信部40を介して地上側すなわち地上側ドア制御装置GCに向けて開扉要求の信号送信を行う。すなわち、列車側の車両ドアDRとホームドア装置PDにおけるホームドア開口部との連携したドア開閉を行うべく、車上側から地上側に向けて、ドア開要求の信号が送信される。以上に際して、運転士用ドア開閉操作部10d又は車掌用ドア開閉操作部10cは、開閉操作指令を開閉制御部30に出力するとともに、記憶部20において、運転士用ドア開閉操作部10d又は車掌用ドア開閉操作部10cから当該開閉操作指令が出力された旨の情報が操作態様として記憶される。なお、記憶部20において記憶を行うための手法については、種々の態様が考えられるが、一例としては、複数(例えば4つ)のリレー回路を組み合わせることで、開閉操作指令が、運転士用ドア開閉操作部10dから出力されたのか、あるいは車掌用ドア開閉操作部10cから出力されたのか、といった操作態様について記憶させることが可能になる。本実施形態では、記憶部20に記憶された操作態様についての記憶内容を、後述する地上側からの開扉許可を受けた後に参照することで、適切なドア開閉の選択が可能となっている。
【0030】
以下、図1(B)を参照して、上記開扉要求(ドア開要求)に対する応答としての開扉許可からドア開閉の動作に至るまでの過程の様子について説明する。車上側から送信されたドア開要求の信号を受けた地上側ドア制御装置GCは、ホームドア装置PDを動作させるための各種信号処理、すなわちホームドア開閉の動作を行うための各種信号処理を行うとともに、車上側に対して開扉許可すなわちドア開許可の信号を応答信号(アンサーバック)として送信する。開閉制御部30は、当該ドア開許可の信号を、車上側通信部40を介して受けとると、これに応じて車両ドアDRの開閉制御を行うことで、車上側と地上側とでのドア開閉の連動が可能となる。以上に際して、開閉制御部30は、地上側から開扉許可を受けると、記憶部20に記憶された操作態様についての記憶内容を参照し、これに対応した内容で、車両ドアDRの開閉制御を行うようにしている。すなわち、ホームドア制御装置100は、車上側と地上側とでのドア開閉の連動を可能とし、かつ、ドア開閉の連動を可能とするに際して、車上側においては、運転士側での操作と車掌側での操作との双方について記憶した内容に基づくことで、運転手と車掌がいるツーマン運転の場合にも運転手のみで車掌がいないワンマン運転の場合にも適切な操作態様での車両ドアDRの開閉制御を可能としている。
【0031】
また、上記態様では、開閉制御部30は、車上側通信部40を介して開扉要求を地上側へ送信した後、地上側からの開扉許可の応答を待ち、当該開扉許可を受けた後、記憶部20の記憶内容に応じて車両ドアDRの開扉をするものとなっている。
【0032】
以下、図2として示すブロック図を参照して、本実施形態に係るホームドア制御装置100のより具体的な一構成例について説明する。
【0033】
図示の例では、ホームドア制御装置100は、車上側において、すなわち車両VEに搭載されるものとして、運転士用ドアスイッチDSdと、車掌用ドアスイッチDScと、車上側ドア制御装置DCと、自動半自動切替部ASとを備える。これらのうち、車上側ドア制御装置DCは、車両伝送制御部VTと、車上側通信部40とを備える。さらに、車両伝送制御部VTには、記憶部20と選択部SEとで構成される記憶選択部MSと、制御部MPとが含まれており、車両伝送制御部VT延いては車上側ドア制御装置DCは、図1において概念的に示した記憶部20や開閉制御部30として機能する。また、自動半自動切替部ASは、運転士用自動半自動切替スイッチASdと車掌用自動半自動切替スイッチAScとで構成されている。なお、自動開閉とは、車両ドアDRの開閉動作が乗務員の操作に従って自動で行われるものを意味し、半自動開閉とは、乗務員の操作に従って車両ドアDRが開の状態(開閉可能な状態)となった場合に、乗客(利用者)が車両ドアDRの付近に設けられたボタンを操作することでドア開閉がなされるものを意味する。車両ドアDRの自動開閉と半自動開閉との動作態様についての詳細は、図3を参照して、後述する。
【0034】
以上のように、運転士用ドアスイッチDSdと運転士用自動半自動切替スイッチASdとは、ドア開閉に関するスイッチであり、図1において概念的に示した運転士用ドア開閉操作部10dとして機能する。同様に、車掌用ドアスイッチDScと車掌用自動半自動切替スイッチAScとは、ドア開閉に関するスイッチであり、図1において概念的に示した車掌用ドア開閉操作部10cとして機能する。
【0035】
一方、ホームドア制御装置100は、地上側において、地上伝送装置GEと、総合制御部TCと、ホームドア装置PDとを備える。これらのうち、地上伝送装置GEと総合制御部TCとは、図1において概念的に示した地上側ドア制御装置GCとして機能する。
【0036】
上記のうち、運転士用ドアスイッチDSdは、運転士が車両ドアDRの開閉操作を行うためのスイッチであり、運転士用ドアスイッチDSdが押されると、その旨の信号が車上側ドア制御装置DCに対して送信される。同様に、車掌用ドアスイッチDScは、車掌が車両ドアDRの開閉操作を行うためのスイッチであり、車掌用ドアスイッチDScが押されると、その旨の信号が車上側ドア制御装置DCに対して送信される。ただし、ワンマン運転時においては、車掌用ドアスイッチDScが運転士によって操作される場合がある。
【0037】
なお、図示の例では、運転士用ドアスイッチDSdあるいは車掌用ドアスイッチDScが、運転士用ドア開閉操作部10dあるいは車掌用ドア開閉操作部10cとして機能すべく、ドア開要求の信号が出力される様子が示されている。また、各ドアスイッチDSd,DScからのドア開要求の信号については、既述のように、車上側ドア制御装置DCのうち、記憶選択部MSの記憶部20に記憶される。
【0038】
また、車上側ドア制御装置DCのうち、制御部MPは、電子回路あるいはCPU等で構成され、車上側におけるドア開閉のための各種動作制御を行う。例えば、制御部MPは、各ドアスイッチDSd,DScからのドア開要求の信号を受け付けると、当該信号すなわちドア開要求の信号を、車上側通信部40を介して地上側すなわち地上側ドア制御装置GCを構成する地上伝送装置GEに向けて送信する。また、制御部MPは、送信したドア開要求に対する応答としてのドア開許可の信号を、車上側通信部40を介して地上側から受け付けると、記憶選択部MSの選択部SEにおいて、記憶部20に記憶された内容を参照して、自動半自動切替部ASへの配線のうち対応する側についてドア開出力をする。つまり、車上側ドア制御装置DCは、記憶部20に記憶された内容から、ドア開要求が運転士用ドアスイッチDSdからのものであった場合には、運転士側の配線Wdに対してドア開出力をし、ドア開要求が車掌用ドアスイッチDScからのものであった場合には、車掌側の配線Wcに対してドア開出力をする。以上により、車上側ドア制御装置DCは、開閉制御部30として機能する。なお、上記のような処理を可能とする記憶選択部MSについては、種々の構成とすることができるが、上記態様の場合、記憶選択部MSは、記憶部20として2系統のドアスイッチからの入力情報を区別でき、さらに、選択部SEとして、記憶部20において区別した2系統について2系統の出力のうちいずれを選択できればよい。つまり、自動か半自動のうちいずれかを選択できる態様となっていればよい。したがって、一例としては、複数(4つ)のリレー回路によって記憶選択部MSを構成することが考えられる。
【0039】
自動半自動切替部ASは、車両ドアDRの自動開閉で行うか半自動開閉の切替えを行うための装置であり、ここでは、既述のように、運転士用自動半自動切替スイッチASdと車掌用自動半自動切替スイッチAScとで構成されている。運転士用自動半自動切替スイッチASdは、物体的構成として、一端が運転士側の配線Wdに接続されているとともに、他端側において自動開閉側と半自動開閉側とに切替可能となっており、運転士により当該切替えの操作がなされる。同様に、車掌用自動半自動切替スイッチAScは、一端が車掌側の配線Wcに接続されているとともに、他端側において自動開閉側と半自動開閉側とに切替可能となっており、車掌により当該切替えの操作がなされる。ただし、本実施形態では、既述のように、ワンマン運転時においては、運転士は、運転士用ドア開閉操作部10dの操作のみならず、車掌用ドア開閉操作部10cの操作も可能となる。したがって、この場合、ワンマン運転時においては、運転士は、車掌用自動半自動切替スイッチAScの操作も可能となる。なお、図示の一例では、運転士側においても、車掌側においても、自動開閉がなされることになる。
【0040】
以上のように、運転士用ドア開閉操作部10dは、ドア開閉指令を出力する運転士用ドアスイッチDSdと、ドア開閉の自動半自動を切り替える運転士用自動半自動切替スイッチASdとを含み、車掌用ドア開閉操作部10cは、ドア開閉指令を出力する車掌用ドアスイッチDScと、ドア開閉の自動半自動を切り替える車掌用自動半自動切替スイッチAScとを含んでいる。これにより、運転士用ドア開閉操作部10dと車掌用ドア開閉操作部10cとにおいて、車両ドアDRのドア開閉が自動であるか半自動であるかの設定が、運転士用と車掌用とで個別にそれぞれなされている。また、開閉制御部30としての車上側ドア制御装置DCは、記憶部20に記憶された側での設定で、車両ドアDRの開閉制御を行う。
【0041】
一方、ホームドア制御装置100のうち、地上側を構成する地上伝送装置GEは、車上側との無線通信を行う地上側通信部GMと、通信動作に関する各種処理を行う地上伝送制御部GTとで構成される。地上伝送装置GEの地上伝送制御部GTは、地上側通信部GMを介して、車上側からのドア開要求の信号すなわち開扉要求を受け付けると、これを総合制御部TCに対して出力する。
【0042】
総合制御部TCは、電子回路あるいはCPU等で構成され、ホームドア装置PDに接続され、ホームドア装置PDに関する各種動作を制御する。特に、ここでは、総合制御部TCは、地上伝送装置GEによって得られた車上側に関する各種情報に応じて、ホーム側におけるドア開閉を制御する。つまり、上記の場合、総合制御部TCは、地上伝送装置GEからのドア開要求の信号に基づきホームドア装置PDに開口部を開ける動作を行わせる。また、これとともに、総合制御部TCは、車上側に対してドア開要求の信号に対する応答として、ドア開許可の信号を地上伝送制御部GTに対して出力する。
【0043】
総合制御部TCからのドア開許可の信号を受けた地上伝送制御部GTは、地上側通信部GMを介して、車上側に対してドア開許可の信号を送信する。以上により、地上伝送装置GE及び総合制御部TCは、地上側ドア制御装置GCとして機能する。また、上記のような動作態様により、車上側と地上側とでのドア開閉の連動が可能となる。
【0044】
以下、図3として一例を示す概念的な斜視図を参照して、ホームドア制御装置100によるドア開閉の様子について説明し、併せて自動開閉と半自動開閉との動作態様について簡単に説明する。まず、図3(A)及び図3(B)は、自動開閉の場合におけるドア開閉の様子について示すものである。一方、図3(C)は、半自動開閉の場合におけるドア開閉の様子について示すものである。
【0045】
これらのうち、まず、図3(A)は、例えば列車TRが駅のホームPFに到着した直後であってドア開閉を行うための準備段階の様子を示している。すなわち、図3(A)では、車上側に設けられた複数の車両ドアDRとホームドア装置PDのうち可動式の扉部材で構成される複数のホームドア開口部(ホームドア開閉部)DAがすべて閉じた状態(開く前の状態)にある。一方、図3(B)は、上述した車上側と地上側とでのドア開閉の連動の結果、車両ドアDRとホームドア開口部DAとが開いた状態となっている。つまり、自動開閉の場合、乗務員によってドア開の指令がなされると、これに応じて、車両ドアDRとホームドア開口部DAとの双方が連動して開閉する。
【0046】
これに対して、半自動開閉の場合について示す図3(C)では、車両ドアDRについては、車両ドアDRの近傍に設けられた押し釦BO,BIを乗客(列車TRの利用者)が操作する(押す)ことで、都度開閉するものとなっている。したがって、図示のように、押し釦BO,BIの操作状況によって、車両ドアDRが開いていたり閉まっていたりする。一方、ホームドア開口部DAについては、車上側からの指令に従って、例えば列車TRの到着後、開放された状態になると、出発前までこの状態が維持される。
【0047】
以下、図4を参照して、運転士用ドア開閉操作部10d及び車掌用ドア開閉操作部10cでの操作態様の一例について、設置態様の一例とともに説明する。図4(A)として示す概念的な正面図の一例では、運転士用ドア開閉操作部10dは、乗務員CRとしての運転士TDにとって操作しやすいように、運転士TDの近くすなわち運転台の近くに設置されている。また、運転士用ドア開閉操作部10dは、図示のように、車上側ドア制御装置DCに接続されており、運転士TDが運転士用ドア開閉操作部10dの各部を操作すると、矢印に示すように操作内容に対応した信号が出力されたり、あるいは、物理的に配線が切り替わったりする。なお、運転士用ドア開閉操作部10dは、既述のように、運転士用ドアスイッチDSdと運転士用自動半自動切替スイッチASdとを含み、少なくともワンマン運転時においては、運転士TDは、これらの各種スイッチ操作が可能となっている。
【0048】
一方、図示の一例において、車掌用ドア開閉操作部10cは、左右両側面に設けられた車両ドアDRにそれぞれ対応して、左右一対で設けられており、かつ、車上側ドア制御装置DCに接続されている。すなわち、図4(B)及び図4(C)に示すように、乗務員CRは、左右の車両ドアDRのうち開閉を行う側の車掌用ドア開閉操作部10cを操作することで、矢印に示すように操作内容に対応した信号が出力されたり、あるいは、物理的に配線が切り替わったりする。なお、車掌用ドア開閉操作部10cを操作する乗務員CRについては、車掌COである場合と運転士TDである場合とが想定され、少なくともワンマン運転時においては、運転士TDによる車掌用ドア開閉操作部10cの操作が可能となっている。
【0049】
以下、図5を参照して、車両VE(列車TR)において、ワンマン運転対応可能とするすなわち運転手のみで車掌がいないワンマン運転と、運転手に加え車掌がいるツーマン運転との切替えをする場合の各部の動作態様について説明する。なお、ここでは、図5(A)に示すように、典型的一例として、列車TRを構成する複数の車両VEのうち両端の車両VE1,VE2において、ホームドア制御装置100を構成するための車上側設備EQ1,EQ2が搭載されているものとする。すなわち、車上側設備EQ1,EQ2には、運転士用ドア開閉操作部10d、車掌用ドア開閉操作部10c、車上側ドア制御装置DC等の各部(図2参照)が設けられているものとする。これらのうち、図示では、運転士用ドア開閉操作部10d及び車掌用ドア開閉操作部10cのみ概略的に示し、他を省略している。なお、車両VE1の車上側設備EQ1と、車両VE2の車上側設備EQ2とは、連動することなく、別個独立に動作する。すなわち、ホームドア制御装置100の地上側設備(図示略)に対して、それぞれ個別に通信を行うものとなっており、地上側では、車上から受ける情報の取り扱いに関して、例えば先着優先とする等、適宜定めることができる。
【0050】
例えば、図5(B)に例示するように、進行方向を矢印A1の方向とする、すなわち車両VE1が、運転士が乗車する列車TRの先頭の車両であり、車両VE2が列車TRの最後尾の車両であって、さらに、列車TRがワンマン運転である場合、運転士が存在する車両VE1における車上側設備EQ1の運転士用ドア開閉操作部10d及び車掌用ドア開閉操作部10cを動作可能の状態とする一方、車両VE2における車上側設備EQ2については動作を停止させて列車TRが走行する。反対に、図5(C)に例示するように、進行方向を矢印A2の方向とする、すなわち車両VE2が列車TRの先頭の車両である場合、車上側設備EQ2の各部を動作させ、車上側設備EQ1については動作を停止させて列車TRが走行する。
【0051】
これに対して、列車TRが、運転士と車掌とが乗車するツーマン運転である場合、運転士が列車TRの先頭の車両に乗車し、車掌が列車TRの最後尾の車両に乗車する態様となる。したがって、この場合、図5(D)に例示するように、進行方向を矢印A1の方向とすると、運転手側である車両VE1における車上側設備EQ1の運転士用ドア開閉操作部10d及び車掌用ドア開閉操作部10cを動作可能の状態とする一方、車掌側である車上側設備EQ2については、車掌用ドア開閉操作部10cのみを動作可能の状態とすることが考えられる。あるいは、ドア開閉については車掌が主体的役割を果たすような態様とすべく、図5(E)に例示するように、車掌側である車上側設備EQ2については、車掌用ドア開閉操作部10cのみを動作可能の状態とする一方、運転手側である車上側設備EQ1については、運転士用ドア開閉操作部10dの動作を停止させて車掌用ドア開閉操作部10cのみを動作可能の状態とすることも考えられる。以上のように、本実施形態では、状況に応じて、運転手のみで車掌がいないワンマン運転と運転手に加え車掌がいるツーマン運転とを切り替えて対応することを可能にする、すなわちワンマン運転対応可能な車両VE(列車TR)を構成できる。また、本実施形態では、上記のようにワンマン運転対応可能な態様としつつ、車上側における通信設備を一元集約した構成となっている。
【0052】
以下、図6を参照して、上記態様について、他の構成例(比較例)との差異を説明する。図6(A)は、本実施形態に係るホームドア制御装置100のうち、車上側の設備についての構成を概要的に示す図である。つまり、図2等に例示した一構成例の概略を示している。具体的には、図6(A)では、運転士用ドアスイッチDSd及び車掌用自動半自動切替スイッチAScを有する運転士用ドア開閉操作部10dと、車掌用ドアスイッチDSc及び車掌用自動半自動切替スイッチAScを有する車掌用ドア開閉操作部10cと、これらに接続されて、かつ、記憶部20及び車上側通信部40を含む車上側ドア制御装置DCとを示している。この場合、通信設備については、1つの車上側通信部40に一元集約されていることが分かる。
【0053】
一方、図6(B)~図6(E)は、図6(A)の比較例の図である。より具体的に説明すると、まず、図6(B)は、ツーマン運転用(ツーマン専用、ワンマン非対応)のドア開閉に関する車上側設備であって、かつ、ホームドアとの対応を考慮していないものについて一例を示す図であり、図6(C)は、図6(B)の構成において、ホームドアとの対応を考慮したものについて一例を示す図である。また、図6(D)は、ワンマン運転対応な場合のドア開閉に関する車上側設備であって、かつ、ホームドアとの対応を考慮していないものについて一例を示す図であり、図6(E)は、図6(D)の構成において、ホームドアとの対応を考慮したものについて一例を示す図である。なお、図6(B)~図6(E)のいずれにおいても、自動開閉と半自動開閉との動作の切替えについては、可能となっている。
【0054】
まず、図6(B)の一構成例では、ドア開閉については、専ら車掌が担当することで、車掌用ドアスイッチDSc及び車掌用自動半自動切替スイッチAScを有する車掌用ドア開閉操作部10cのみが設けられていれば足りる構成となるが、この構成から駅のホームに設けたホームドアとの対応を可能にしようとすると、例えば図6(C)に示すように、車掌用ドアスイッチDScと車掌用自動半自動切替スイッチAScとの間に、車上側通信部VMを設ける等、通信設備を要することになる。
【0055】
さらに、図6(D)の一構成例では、ワンマン及びツーマンの双方の態様について可能とすべく、ドア開閉については、車掌側でも運転士側でも操作可能な態様とすることになっている。すなわち、運転士用ドアスイッチDSd及び運転士用自動半自動切替スイッチASdを有する運転士用ドア開閉操作部10dと、車掌用ドアスイッチDSc及び車掌用自動半自動切替スイッチAScを有する車掌用ドア開閉操作部10cとを有した構成となっている。この態様において、上述した図6(B)から図6(C)への態様変更の場合と同様にして、ホームドアとの対応を可能にしようとすると、例えば図6(E)に示すように、車掌用ドアスイッチDScと車掌用自動半自動切替スイッチAScとの間に、第1の車上側通信部VM1を設けるだけでは足りず、さらに、運転士用ドアスイッチDSdと運転士用自動半自動切替スイッチASdとの間に、第2の車上側通信部VM2を設ける必要が生じる。これに対して、本実施形態では、記憶部20を設けることで、通信設備については、1つの車上側通信部40に一元集約が可能である構成となっており、設備の小型化、簡易化を図っている。
【0056】
以下、図7を参照して、ホームドア制御装置100の一変形例について説明する。なお、図7は、図2の一部に対応するブロック図であり、図7に示す自動半自動切替部ASとこれに関係する部分以外の他の部分については、上記一例と同様であるので、図示及び説明を省略する。
【0057】
本変形例では、自動半自動切替部ASを構成する運転士用自動半自動切替スイッチASdと車掌用自動半自動切替スイッチAScとにおける切替えの設定内容の情報が、記憶選択部MSの記憶部20に出力され、記憶部20において、当該情報が、各ドア開閉操作部10d,10cから出力される開閉操作指令とともに記憶される。つまり、記憶部20は、上記開閉操作指令に加え、運転士側でのドア開閉の設定が自動であるか半自動であるかと、車掌側でのドア開閉の設定が自動であるか半自動であるかと、を記憶する。
【0058】
さらに、制御部MPが地上側からドア開許可を受けると、記憶選択部MSの選択部SEは、制御部MPによる制御にしたがって、記憶部20の記憶内容に基づいて、すなわち運転士側と車掌側とのうちどちらから開閉操作指令を受けたかと自動半自動のうちどちらの設定になっているかに応じて、車両ドアDRに対してドア開出力を行う。
【0059】
以上のように、本変形例では、各自動半自動切替スイッチASc,ASdにおける設定についての信号を記憶部20に記憶させ、これを利用して車両ドアDRの開閉制御を行っている点において、自動半自動切替について配線による物理的機構で構成している図2の一例と異なっている。
【0060】
以下、図8のフローチャートを参照して、ホームドア制御装置100によるドア開閉についての一連の動作処理を説明する。ここでは、車上側における車両ドア開閉制御に関する一例の処理について説明する。
【0061】
ホームドア制御装置100のうち、車上側ドア制御装置DCの制御部MPが起動すると、制御部MPは、車両ドアスイッチすなわち各ドアスイッチDSd,DScから信号の入力を待ち(ステップS101)、運転士用ドアスイッチDSd又は車掌用ドアスイッチDScが押されたか否かを確認し(ステップS102)、ステップS102において確認がなされるまで、動作を継続する。
【0062】
ステップS102においてドアスイッチDSd,DScのいずれかが押されたこと(操作されたこと)についての確認がなされると(ステップS102:Yes)、制御部MPは、当該操作に対応する内容の記憶(ドアスイッチ条件記憶)を行う(ステップS103)。すなわち、該当する内容が記憶部20において記憶される。
【0063】
次に、制御部MPは、ドアスイッチDSd,DScにおける操作に対応する地上側への開扉要求(ホームドア開扉要求)を、車上側通信部40を介して行い(ステップS104)、地上側での処理すなわち応答としてのドア開許可の信号を待つ(ステップS105)。制御部MPは、地上からのドア開許可を確認すると(ステップS106:Yes)、選択部SEに対して車両ドア開扉要求(ドア開出力)の動作をする(ステップS107)。これに対して、ステップS106において地上からのドア開許可が確認されない場合(ステップS106:No)、ステップS104での地上側への開扉要求動作から所定時間経過したか否かを確認し(ステップS108)、ステップS108において所定時間経過していなければ(ステップS108:No)、ステップS105からの地上側での処理待ちの動作を継続する。一方、ステップS108において所定時間経過していれば、地上側との通信に際して何らかのエラー(通信エラー)が発生したものと判断し、ステップS103でのドアスイッチ条件記憶を消去して(ステップS109)、初期状態に戻し、再びステップS101からの動作を繰り返す。なお、ステップS109に際して、併せてエラー処理をした旨を乗務員に表示や音声で通知するものとしてもよい。
【0064】
一方、ステップS107における車両ドア開扉要求を受けた選択部SEは、記憶部20の内容すなわちステップS103でのドアスイッチ条件記憶の内容を参照し(ステップS110)、記憶内容が運転士用であれば(ステップS110:Yes)、さらに、これに応じた自動半自動切替部ASでの設定が自動であるか否か(ステップS111a)によって、車両ドアDRに対して、ドア開閉の指令信号を送信する。すなわち、ステップS111aにおいて切替スイッチとしての運転士用自動半自動切替スイッチASdの設定が自動開閉になっていれば(ステップS111a:Yes)、車上側ドア制御装置DCは、自動ドア開扉要求を車両ドアDRに対して出力し(ステップS112a)、運転士用自動半自動切替スイッチASdの設定が半自動開閉になっていれば(ステップS111a:No)、半自動ドア開扉要求を車両ドアDRに対して出力する(ステップS112b)。
【0065】
同様に、ステップS110において、記憶内容が車掌用であれば(ステップS110:No)、切替スイッチとしての車掌用自動半自動切替スイッチAScの設定に応じて(ステップS111b)、自動ドア開扉要求又は半自動ドア開扉要求を、車両ドアDRに対して出力する(ステップS112a,S112b)。
【0066】
自動ドア開扉要求又は半自動ドア開扉要求が出力されてこれに応じて車両ドアDRの開扉動作が、地上側でのホームドア開扉動作に連動してなされると、一連の処理が終了する。
【0067】
以上のように、本実施形態に係るホームドア制御装置100は、ワンマン運転対応可能な車両に対応するものであって、運転士用ドア開閉操作部10dでの操作態様と、車掌用ドア開閉操作部10cでの操作態様とを記憶する記憶部20と、乗務員の開閉操作指令と記憶部20の記憶内容とに基づき車両ドアDRの開閉制御を行う開閉制御部30と、開閉制御部30による開閉制御に応じた開扉要求を地上側へ送信する車上側通信部40とを備える。以上のようなホームドア制御装置100では、ワンマン運転対応可能とすべく、運転士用ドア開閉操作部10dと車掌用ドア開閉操作部10cとを設けた構成において、運転士側での操作と車掌側での操作との双方について記憶し、記憶した内容に基づいてドア開閉のための地上側との通信を行って車上側と地上側とでのドア開閉の連動を可能とし、かつ、ドア開閉の連動を可能とするに際して、車上側における通信設備を一元集約できる。
【0068】
〔第2実施形態〕
以下、図9及び図10を参照して、第2実施形態に係るホームドア制御装置について一例を説明する。なお、本実施形態は、第1実施形態のホームドア制御装置100の変形例であり、各種信号の取扱い(処理)についての違いを除いて、第1実施形態の場合と同様であるので、例えば各部の構成については、必要に応じて、第1実施形態において説明した事項を参照するものとし、各構成の詳しい説明等については、省略する。
【0069】
以下、図9のフローチャートを参照して、本実施形態に係るホームドア制御装置100によるドア開閉についての一連の動作処理を説明する。なお、図9は、図8に対応するフローチャートであり、したがって、ここでも、車上側における車両ドア開閉制御に関する一例の処理について説明する。本実施形態では、各種信号の処理に関するさらに詳細な態様として、開閉制御部30としての車上側ドア制御装置DCは、運転士用ドア開閉操作部10dによる操作と車掌用ドア開閉操作部10cによる操作とのうち一方による操作がなされた後、他方による操作が別途なされた場合、予め定めた設定に基づき優先する操作を決定することが可能な態様になっている。さらに、本実施形態では、運転士用ドア開閉操作部10dの運転士用ドアスイッチDSdと、車掌用ドア開閉操作部10cの車掌用ドアスイッチDScとが同時に押された場合についても、予め定めた設定に基づいて処理している。
【0070】
制御部MPが起動すると、制御部MPは、各ドアスイッチDSd,DScから信号の入力を待ち(ステップS201)、各ドアスイッチDSd,DScのうち少なくともいずれが押されたことを確認すると(ステップS202a:Yes)、さらに、両ドアスイッチDSd,DScが同時押しであるか否かを確認する(ステップS202b)。
【0071】
ステップS202bにおいて、両ドアスイッチDSd,DScが同時押しであると判定された場合(ステップS202b:Yes)、制御部MPは、どちらの操作も受け付けず、記憶部20への記憶がなされることなく、エラーとして処理され(ステップS202c)、ステップS201からの処理に戻る。なお、ステップS202cに際して、併せてエラー処理をした旨(記憶されなかった旨)を乗務員に表示や音声で通知するものとしてもよい。
【0072】
一方、ステップS202bにおいて、両ドアスイッチDSd,DScが同時押しでは無いと判定された場合(ステップS202b:No)、制御部MPは、一の操作に対応する内容の記憶(ドアスイッチ条件記憶)を行う(ステップS203)。すなわち、該当する内容が記憶部20において記憶される。
【0073】
ここで、ステップS203での上記記憶に際して、例えば同時ではないがある程度の時間差で両ドアスイッチDSd,DScの双方が押された場合に、どちらの内容を記憶するか等については、種々の取り扱い態様にすることが考えられる。例えば先優先としたり、後優先としたりする場合のほか、他の条件に応じて先優先とするか後優先とするかを決定する態様とすることも考えられる。ここでは、既述のように、一方による操作がなされた後、他方による操作が別途なされた場合、予め定めた設定に基づき優先する操作を決定可能な態様としているが、優先操作の決定に関する詳しい一例は、図10のフローチャートを参照して後述する。
【0074】
ステップS203において一の操作に対応する内容が記憶部20に記憶されると、以後は、図8のステップS104~S112a,S112bと同様に、一連の処理がなされる(ステップS204~S212a,S212b)。ただし、本実施形態では、既述のように、各ドア開閉操作部10d,10c(各ドアスイッチDSd,DSc)による操作のうち一方による操作がなされた後、他方による操作が別途なされた場合に、適応する操作をいずれとするかについて設定可能としている。言い換えると、ステップS203において記憶部20に記憶された内容について、ステップS203以後において変更する可能性がある。このため、ステップS210において参照されるドアスイッチ条件記憶の内容は、ステップS103において記憶された内容とは、必ずしも一致せず、ステップS210の処理時点において、記憶部20に現に記憶されている内容に基づいて処理がなされる。
【0075】
以下、図10のフローチャートを参照して、上記のような各ドアスイッチDSd,DScにおける双方の操作が時間差を有してなされた場合の取扱い態様について、一例を説明する。なお、図10に示す一例では、原則先に操作された側を優先的に取り扱う(先優先)ようにしつつ、ある程度時間が経過した後は、後から操作された側を優先的に取り扱う条件的後優先の場合について説明する。
【0076】
制御部MPは、図9に例示した各種動作と並行して、新規のドアスイッチ条件記憶または更新されたドアスイッチ条件記憶がなされたか否かを確認する(ステップS301)。ここで、新規のドアスイッチ条件記憶については、図9のステップS203において一のドアスイッチ条件記憶がなされた場合が相当する。また、更新されたドアスイッチ条件記憶については、後述するステップS307において一のドアスイッチ条件記憶がなされた場合が相当する。ステップS301において新たなドアスイッチ条件記憶がない場合(ステップS301:No)、制御部MPは、現状の記憶部20にある記憶状態を維持して(ステップS302)、ステップS301からの動作に戻る。
【0077】
一方、ステップS301において新たなドアスイッチ条件記憶が確認されると(ステップS301:Yes)、制御部MPは、時間の計測を開始する(ステップS303)とともに、ステップS301での新たなドアスイッチ条件記憶の後、さらに各ドアスイッチDSd,DScのいずれかが押されたか(さらに新たな操作がなされたか)を確認し、これを継続する(ステップS304)。つまり、運転士用ドア開閉操作部10dによる操作と車掌用ドア開閉操作部10cによる操作とのうち一方による操作がなされた後、他方による操作が別途なされたか否かの確認をし、これを継続する。
【0078】
ステップS304において、各ドアスイッチDSd,DScのうち少なくともいずれが押されたことを確認すると(ステップS304:Yes)、制御部MPは、両ドアスイッチDSd,DScが同時押しであるか否かを確認し(ステップS305)、同時押しでなければ(ステップS305:No)、さらに、ステップS303での時間計測開始から所定時間が経過したか否かを確認する(ステップS306)。ステップS306において、所定時間が経過したことが確認された場合(ステップS306:Yes)、制御部MPは、ドアスイッチ条件記憶の更新処理を行う(ステップS307)。すなわち、記憶部20において記憶されていた先の操作に対応する内容が消去され、後の操作に対応する内容に書き換えられる。この場合、ステップS307での処理後、ステップS301に戻ると、ステップS307での更新により、新たなドアスイッチ条件記憶が確認されることになり(ステップS301:Yes)、当該更新後を基準とした時間の計測が開始され(ステップS303)、以後の処理が同様に繰り返される。
【0079】
一方、ステップS305において同時押しであるとされた場合(ステップS305:Yes)や、ステップS306において所定時間が経過していないとされた場合(ステップS306:No)、後の操作に対応する内容についての書換えがなされることなく、現状の記憶部20にある記憶状態が維持され(ステップS308)、エラーとして処理され、ステップS304からの各ドアスイッチDSd,DScに関する確認動作が継続される。なお、ステップS308に際して、併せてエラー処理をした旨(後の操作が適用されなかった旨)を乗務員に表示や音声で通知するものとしてもよい。
【0080】
上記態様の場合、一のドアスイッチ条件記憶がなされると、所定時間が経過するまでは、当該一のドアスイッチ条件記憶が優先され、後からの操作を受け付けないようにする一方、当該一のドアスイッチ条件記憶が記憶されてから所定時間の経過後であれば、後からの操作を受け付けるものとなっている。これについて、見方を変えると、開閉制御部30としての車上側ドア制御装置DCは、複数回のドア開閉の操作がなされた場合、一の操作から他の操作へ切り替えるための時間取りを行う態様となっている、と捉えることもできる。なお、ステップS306における所定時間の長さ、すなわち時間取りを行う長さについては、種々の設定が可能であるが、究極的には所定時間をゼロとする、すなわち時間取りをせず、完全に後優先とする、といった態様とすることも考えられる。
【0081】
また、図8図9において、ステップS108,S208及びステップS109,S209についても、見方を変えると、複数回のドア開閉の操作に対して、時間取りを行う態様となっていると言える。この場合、まず、先の操作を優先して地上側との通信を行うものとしつつ、通信に問題があったと考えられる程度の時間が経過した後に、先の操作を消去することで、結果的に後の操作が適用可能な状態となる。つまり、ここでは、ステップS108,S208における所定時間の長さ、すなわち時間取りを行う長さについては、通常の通信に必要とされる程度の時間(例えば4秒程度)が確保される態様となる。
【0082】
以上のように、本実施形態においても、ワンマン運転対応可能とすべく、運転士用ドア開閉操作部10dと車掌用ドア開閉操作部10cとを設けた構成において、運転士側での操作と車掌側での操作との双方について記憶し、記憶した内容に基づいてドア開閉のための地上側との通信を行って車上側と地上側とでのドア開閉の連動を可能とし、かつ、ドア開閉の連動を可能とするに際して、車上側における通信設備を一元集約できる。また、本実施形態の場合、各ドア開閉操作部10d,10cによって異なる操作が前後した場合への対応が可能になる。
【0083】
〔その他〕
この発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0084】
まず、上記実施形態において、列車TRを複数の車両VEで編成されるものとしているが、一両編成の列車において、本願を適用することも可能である。
【0085】
また、上記では、列車の駅に設けたホームドア(ホームドア開口部)を対象として説明をしているが、上記各実施形態に示した発明は、列車に限らず、車両を有して構成されるBRTやLRT、あるいはモノレール等、種々の交通システムにおいて、適用することが可能である。すなわち、本発明における車両については、列車を構成(編成)するための車両に限らない。
【符号の説明】
【0086】
10c…車掌用ドア開閉操作部、10d…運転士用ドア開閉操作部、20…記憶部、30…開閉制御部、40…車上側通信部、100…ホームドア制御装置、A1,A2…矢印、AS…自動半自動切替部、ASc…車掌用自動半自動切替スイッチ、ASd…運転士用自動半自動切替スイッチ、BO,BI…押し釦、CO…車掌、CR…乗務員、DA…ホームドア開口部(ホームドア開閉部)、DC…車上側ドア制御装置、DR…車両ドア、DSc…車掌用ドアスイッチ、DSd…運転士用ドアスイッチ、EQ1,EQ2…車上側設備、GC…地上側ドア制御装置、GE…地上伝送装置、GM…地上側通信部、GT…地上伝送制御部、MP…制御部、MS…記憶選択部、PD…ホームドア装置、PF…ホーム、SE…選択部、TC…総合制御部、TD…運転士、TR…列車、VE,VE1,VE2…車両、VM…車上側通信部、VM1…第1の車上側通信部、VM2…第2の車上側通信部、VT…車両伝送制御部、Wc,Wd…配線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10