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  • 特許-ピストンポンプ 図1
  • 特許-ピストンポンプ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】ピストンポンプ
(51)【国際特許分類】
   F02M 59/44 20060101AFI20240826BHJP
   F02M 59/26 20060101ALI20240826BHJP
   F04B 53/14 20060101ALI20240826BHJP
   F04B 53/16 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
F02M59/44 C
F02M59/26 330J
F02M59/26 330N
F04B53/14 A
F04B53/16 B
【請求項の数】 5
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020189509
(22)【出願日】2020-11-13
(65)【公開番号】P2021080922
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2023-05-17
(31)【優先権主張番号】10 2019 130 684.1
(32)【優先日】2019-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510153962
【氏名又は名称】マン・エナジー・ソリューションズ・エスイー
【氏名又は名称原語表記】MAN ENERGY SOLUTIONS SE
【住所又は居所原語表記】Stadtbachstr.1 86153 Augsburg,GERMANY
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング・ヴァグナー
(72)【発明者】
【氏名】デニス・コヴァレフ
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・マイクスナー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ハーマン
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0052427(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102016212339(DE,A1)
【文献】特開2004-278373(JP,A)
【文献】実開昭63-14863(JP,U)
【文献】特開2010-229898(JP,A)
【文献】国際公開第2019/131049(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 59/00-59/48
F04B 53/14-53/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンポンプ(20)であって、
ポンプシリンダ(21)を備え、
該ポンプシリンダ(21)の凹部(23)内に移動可能に装着されたポンプピストン(22)であって、前記凹部(23)内を上下に移動可能なポンプピストン(22)を備え、
前記ポンプシリンダ(21)内に導入された、前記凹部(23)の領域内のリーク溝(24)であって、燃料漏れを排出するためのリークライン(25)に連結されたリーク溝(24)を備え、
前記ポンプシリンダ(21)と前記ポンプピストン(22)との間には、異なった部分(28、29)において異なったサイズの組み合わせクリアランスが形成されており、
前記ポンプピストン(22)が該ポンプピストンの上下移動の間に前記リーク溝(24)上を通過する部分(28)において、組み合わせクリアランスは、前記ポンプピストン(22)が該ポンプピストンの上下移動の間に前記リーク溝(24)上を通過しない部分(29)における組み合わせクリアランスよりも大きく形成されており、
前記ポンプピストンが該ポンプピストンの上下移動の間に前記リーク溝(24)上を通過する部分(28)において、前記ポンプピストン(22)は、前記ポンプピストンが該ポンプピストンの上下移動の間に前記リーク溝(24)上を通過しない部分(29)における外径よりも小さい外径を有し、
異なったサイズの外形を有する、前記ポンプピストン(22)の部分(28、29)は、前記ポンプピストン(22)内の周溝(30)により互いに離間されている、ピストンポンプ(20)。
【請求項2】
前記ポンプピストン(22)が該ポンプピストンの上下移動の間に前記リーク溝(24)上を通過する部分(28)において、前記組み合わせクリアランスは、前記ポンプピストン(22)が該ポンプピストンの上下移動の間に前記リーク溝(24)上を通過しない部分(29)における組み合わせクリアランスよりも、25%から125%大きく形成されている、請求項1に記載のピストンポンプ。
【請求項3】
前記ポンプピストン(22)が該ポンプピストンの上下移動の間に前記リーク溝(24)上を通過する部分(28)において、前記組み合わせクリアランスは、前記ポンプピストン(22)が該ポンプピストンの上下移動の間に前記リーク溝(24)上を通過しない部分(29)における組み合わせクリアランスよりも、30%から100%大きく形成されている、請求項1または2に記載のピストンポンプ。
【請求項4】
前記ピストンポンプは燃料ポンプである、請求項1から3のいずれか一項に記載のピストンポンプ。
【請求項5】
前記ピストンポンプはコモンレール燃料システムの高圧燃料ポンプであり、前記リークライン(25)は、前記コモンレール燃料システムの低圧領域内に前記燃料漏れを排出する、請求項1から4のいずれか一項に記載のピストンポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はピストンポンプ、特に請求項1の前段にしたがったコモンレール燃料システムの高圧燃料ポンプのような燃料ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術から既知の燃料ポンプはポンプシリンダを含み、ポンプシリンダ内には、ポンプピストンが移動可能に搭載されている。優先的に、ポンプピストンは、1つ以上のカムを通じてポンプシリンダ内を上下に移動し、この上下移動により燃料が燃料ポンプに引き込まれ、燃料ポンプから例えば燃料システムのインジェクションバルブのような消費者へと供給される。
【0003】
図1は、従来技術から既知の、ピストンポンプとして設計された燃料ポンプ10の断面を概略的に示しており、燃料ポンプ10は、ポンプシリンダ11およびポンプピストン12を備えている。ポンプピストン12は、ポンプシリンダ11の凹部13内を上下に移動可能に案内されており、ポンプシリンダ11内におけるポンプピストン12の上下移動は、図示されていないカムを用いて優先的に制御される。
【0004】
特に図1において、ポンプピストン12は凹部13内を上向きに移動し、燃料の圧縮を生じさせる。ポンプピストン12の反対方向の動作において、燃料ポンプ10の吸気段階が実行される。燃料は、ポンプシリンダ11内の少なくとも1つのボア17aを通じて、燃料ポンプ10により引き込まれ、続いて圧縮されて、ポンプシリンダ11内の少なくとも1つのボア17bを通じて、例えばインジェクションバルブのような消費者に供給されることが可能である。
【0005】
ポンプシリンダ11内において、燃料ポンプの運転の間に形成され得る燃料漏れを排出するために、リーク溝14が導入されている。この目的のために、リーク溝14はリークライン15に連結され、これら通じて最終的に、燃料漏れはリークタンク内に排出可能であり、このタンク内は低圧、特に周囲圧である。
【0006】
燃料ポンプ10の領域内に形成される燃料漏れは、ポンプピストン12とポンプシリンダ11との間のギャップ16のサイズに依存している。燃料漏れを可能な限り少なくすることを確実にするために、このギャップ16は可能な限り小さくされるべきであり、このギャップは、ポンプシリンダ11とポンプピストン12との間の非常に小さい組み合わせクリアランスにより提供されることが可能である。そのような燃料ポンプの運転の間に、いわゆるピストン焼き付きまたはプランジャ焼き付きの問題が発生し、これはすなわちポンプピストン12のポンプシリンダ11内での焼き付きである。このことは、燃料ポンプの故障に帰結する。これは欠点である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ピストンポンプ、特に燃料ポンプにおいて、そのようなピストン焼き付きの危険性を低減する必要がある。このことから出発して、本発明は、新型のピストンポンプを創出する目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1によるピストンポンプを通じて解決される。
【0009】
本発明によるピストンポンプにおいて、異なったサイズの組み合わせクリアランスが、ポンプシリンダとポンプピストンとの間の異なった部分に形成されている。ポンプピストンがその上下移動の間にリーク溝上を通過する部分において、組み合わせクリアランスは、ポンプピストンがその上下移動の間にリーク溝上を通過しない部分における組み合わせクリアランスよりも大きく形成されている。
【0010】
本発明によるピストンポンプを伴って、ポンプシリンダとポンプピストンと間には、異なった部分において異なったサイズの組み合わせクリアランスが形成されている。ポンプピストンがその上下移動の間にポンプシリンダ内のリーク溝上を通過する部分において、組み合わせクリアランスは、ポンプピストンがその上下移動の間にポンプシリンダ内のリーク溝上を通過しない部分における組み合わせクリアランスよりも大きくなるように設計されている。このことを通じて、一方では小さい組み合わせクリアランスを通じた少ない燃料漏れが確実にされ、他方ではいわゆるピストン焼き付きまたはプランジャ焼き付きの危険性がなくなっている。
【0011】
ここで、本発明は、いわゆるピストン焼き付きまたはプランジャ焼き付きの危険性が、リーク溝の領域内において、ポンプシリンダがポンプピストンよりも小さい熱膨張であるという条件を前提としていることに、一次的に起因している事実に基づいている。このことは、リーク溝の領域内における組み合わせクリアランスの減少につながることが可能であり、その結果として、先行技術においては、ピストン焼き付きまたはプランジャ焼き付きに起因し得る。しかしながら本発明によれば、ポンプピストンがポンプシリンダのリーク溝上を通過する部分において、より大きい組み合わせクリアランスが調整され、ポンプピストンおよびポンプシリンダの異なった熱膨張の大きさの結果としての組み合わせクリアランスが消失する危険性がない。このことにより、ピストン焼き付きまたはプランジャ焼き付きの危険性は、先行技術から知られた燃料ポンプと比較して、最終的に顕著に減少されることが可能である。
【0012】
優先的に、組み合わせクリアランスは、ポンプピストンがその上下移動の間にリーク溝上を通過する部分において、ポンプピストンがその上下移動の間にリーク溝上を通過しない部分における組み合わせクリアランスよりも約25%から125%、特に好適に30%から100%大きく形成されている。このことは、燃料ポンプのピストン焼き付きまたはプランジャ焼き付きの危険性を減少するために、特に好適である。
【0013】
さらに有利な開発によれば、ポンプピストンがその上下移動の間にリーク溝上を通過する部分において、ポンプピストンは、ポンプピストンがその上下移動の間にリーク溝上を通過しない部分における外径よりも小さい外径を有する。このことにより、ポンプシリンダとポンプピストンとの間の異なった部分において、異なったクリアランスが容易に且つ信頼性高く調節されることが可能である。
【0014】
本発明の好適なさらなる開発は、従属請求項および以下の記載から得られる。本発明の例示的な実施形態は図を用いてより詳細に説明されているが、これに制限されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】先行技術による燃料ポンプの概略的な断面を示した図である。
図2】本発明による燃料ポンプの概略的な断面を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、ピストンポンプに関する。優先的に、本発明は燃料ポンプ、特に船舶の内燃エンジン等の内燃エンジンのコモンレール燃料システムの高圧燃料ポンプに関する。
【0017】
図2は、本発明による燃料ポンプ20の例示的な実施形態の概略的な断面図である。図2の燃料ポンプ20は、ポンプシリンダ21およびポンプピストン22を順に備え、ポンプピストン22は、特に図示されていないカムを用いて、ポンプシリンダ21の凹部23内に上下移動可能に案内されている。
【0018】
凹部23内における上死点に向かうポンプピストン22の上向き移動の間に、少なくとも1つのボア27bを通じた消費者への圧縮燃料の供給のために、燃料の圧縮が生じる。下向きの反対の移動において、ポンプピストン22は少なくとも1つのボア27aを通じて燃料を引き込む。
【0019】
リーク溝24はポンプシリンダ21の凹部23内へと誘導されており、この溝は燃料漏れを排出するためのリークライン25と連結されており、漏れた燃料は、ポンプシリンダ21とポンプピストン22との間を、それらの間に形成されたギャップ26を通じて流れることが可能である。リークライン25を通じて、この燃料漏れは図示されていないリークタンク内に通常は排出され、タンク内は低圧または周囲圧である。
【0020】
本発明によれば、ポンプシリンダ21とポンプピストン22との間には、異なったサイズの組み合わせクリアランスが異なった部分28および29に形成されている。
【0021】
ポンプピストン22がその上下移動の間にポンプシリンダ21のリーク溝24上を通過する部分28において、ポンプシリンダ21とポンプピストン22との間の組み合わせクリアランスは、ポンプピストン22がその上下移動の間にリーク溝24上を通過しない部分29のクリアランスよりも大きく形成されている。このことは、図2の上部29において比較的小さい組み合わせクリアランスが、および下部28において比較的大きい組み合わせクリアランスが、ポンプピストン22とポンプシリンダ21との間に形成されていることを意味している。
【0022】
上部領域29の比較的小さい組み合わせクリアランスを通じて、ポンプシリンダ21とポンプピストン22との間のギャップ26を通じた流れを形成する燃料漏れは、可能な限り少なく維持されることが可能である。
【0023】
下部28のより大きい組み合わせクリアランスを通じて、燃料漏れの排出に起因した、リーク溝24の領域内のポンプピストン22およびポンプシリンダ21の異なった熱膨張が考慮されることが可能であり、これによりこの部分28において、組み合わせクリアランスは失われておらず、ポンプシリンダ21内のポンプピストン22のいわゆるピストン焼き付きまたはプランジャ焼き付きは、防止される。
【0024】
優先的に、ポンプピストン22がポンプシリンダ21内でのその移動の間にポンプシリンダ21のリーク溝24上を通過する部分28において、組み合わせクリアランスは、ポンプピストン22がポンプシリンダ21内でのその移動の間にポンプシリンダ21のリーク溝24上を通過しない部分29における組み合わせクリアランスよりも、25%から125%、優先的に20%から100%大きく形成されている。
【0025】
異なった組み合わせクリアランスを有する、ポンプピストン22とポンプシリンダ21との間の部分28および29は、これらの部分28および29内においてポンプピストン22が異なったサイズの外径を有するように優先的に設けられている。
【0026】
ポンプピストン22がその移動の間にリーク溝24上を通過する部分28において、ポンプピストン22の外径は、ポンプピストン22がポンプシリンダ21内でのその移動の間にポンプシリンダ21のリーク溝24を通過しない部分29における外径よりも、小さく形成されている。
【0027】
ポンプシリンダ21内の凹部23は、連続的に同一の内径を優先的に有する。ポンプピストン22の外形が小さくなればなるほど、組み合わせクリアランスは大きくなる。
【0028】
異なったサイズの外形を有する、ポンプピストン22の2つの部分28および29は、図2において、ポンプピストン22内の周溝30により互いに離間されている。このことは、ポンプピストン22の2つの異なった部分28および29の間の階段状直径のショルダを回避するために、好適である。
【0029】
したがって、本発明は、部分28および29においてポンプシリンダ21とポンプピストン22との間の異なった組み合わせクリアランスを実現することを提供している。リーク溝24の領域において、比較的大きい組み合わせクリアランスが、異なった熱膨張の結果としてのいわゆるプランジャ焼き付きを回避するために設けられている。したがって、ポンプピストン22がリーク溝24上を通過する下部28における組み合わせクリアランスは、ポンプピストン22がその移動の間にリーク溝24上を通過しない部分29におけるクリアランスよりも大きい。このことは、少ない燃料漏れと同時に、プランジャ焼き付きの危険性の回避を確実にすることに寄与している。最終的に、燃料ポンプ20の効率が増大されることが可能である。燃料ポンプ20の運転の安全性が増大されることが可能である。ポンプピストン22上にガムアップが形成された場合でも、プランジャの焼き付きのリスクを低減することができる。
【0030】
燃料ポンプ20は、優先的に内燃機関、特に船舶用ディーゼル内燃機関のコモンレールの高圧燃料ポンプである。しかしながら本発明は、他の燃料ポンプおよびピストンポンプに採用されることも可能である。
【符号の説明】
【0031】
10 ・・・燃料ポンプ
11 ・・・ポンプシリンダ
12 ・・・ポンプピストン
13 ・・・凹部
14 ・・・リーク溝
15 ・・・リークライン
16 ・・・ギャップ
17a ・・・ボア
17b ・・・ボア
20 ・・・燃料ポンプ
21 ・・・ポンプシリンダ
22 ・・・ポンプピストン
23 ・・・凹部
24 ・・・リーク溝
25 ・・・リークライン
26 ・・・ギャップ
27a ・・・ボア
27b ・・・ボア
28 ・・・部分
29 ・・・部分
30 ・・・周溝
図1
図2