(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド用基板、及び液体吐出ヘッド
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20240826BHJP
【FI】
B41J2/14 201
B41J2/14 613
B41J2/14 209
(21)【出願番号】P 2020189845
(22)【出願日】2020-11-13
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】服部 真依
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 健治
【審査官】早川 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-037229(JP,A)
【文献】特開2014-000795(JP,A)
【文献】特開2020-049685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
C23C 16/00-16/56
H01L 21/312-21/3213
21/47-21/475
21/768
23/522
23/532
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、液体を吐出するための熱エネルギーを発生する発熱抵抗体層を含む発熱素子と、該発熱素子に電力を供給する配線層と、前記配線層を絶縁するための絶縁膜と、を有する液体吐出ヘッド用基板において、前記絶縁膜の少なくとも一部に、Si
wO
xC
yN
z(w+x+y+z=100(at%),37≦w≦60(at.%),30≦x≦53(at.%),6≦y≦29(at.%),4≦z≦9(at.%))で表わされる材料層を含むことを特徴とする液体吐出ヘッド用基板。
【請求項2】
前記Si
wO
xC
yN
zで表わされる材料層において、w、x、y、zの各範囲が37≦w≦39(at.%),33≦x≦41(at.%),12≦y≦22(at.%),7≦z≦8(at.%)である請求項1に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項3】
前記絶縁膜は層間絶縁膜であり、前記層間絶縁膜は、前記発熱抵抗体層と前記配線層のうち該発熱抵抗体と隣接する第1の配線層を絶縁する第1の層間絶縁膜、及び、該第1の配線層と隣接する第2の配線層を絶縁する第2の層間絶縁膜を含み、前記第1の層間絶縁膜および前記第2の層間絶縁膜の少なくとも一部に、前記Si
wO
xC
yN
zで表わされる材料層を含む請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項4】
前記層間絶縁膜のうち、前記第1の層間絶縁膜の少なくとも一部に、前記Si
wO
xC
yN
zで表わされる材料層を含む請求項3に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項5】
前記層間絶縁膜のうち、前記第2の層間絶縁膜の少なくとも一部に、前記Si
wO
xC
yN
zで表わされる材料層を含む請求項3又は4に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項6】
前記発熱素子の温度を検知する温度検知素子を含む請求項3乃至5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項7】
前記温度検知素子が前記発熱素子の発熱抵抗体層の下に配置されており、前記温度検知素子と前記発熱抵抗体層とを絶縁する層間絶縁膜の少なくとも一部に、前記Si
wO
xC
yN
zで表わされる材料層を含むことを特徴とする請求項6に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項8】
前記温度検知素子と前記配線層とを絶縁する層間絶縁膜の少なくとも一部に、前記Si
wO
xC
yN
zで表わされる材料層を含むことを特徴とする請求項7に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項9】
前記層間絶縁膜は、前記配線層を敷設する上面が平坦化された第1SiO膜である請求項3乃至8のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項10】
前記層間絶縁膜は、前記配線層の上に第2SiO膜が配置され、該第2SiO膜の上に前記Si
wO
xC
yN
zで表わされる材料層が配置される請求項3乃至9のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項11】
前記第2SiO膜が平坦化されている、請求項10に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項12】
前記Si
wO
xC
yN
zで表わされる材料層の厚みが100nm以上である請求項10又は11に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項13】
前記層間絶縁膜は、前記配線層の上に前記Si
wO
xC
yN
zで表わされる材料層が配置され、その上に前記第1SiO膜が配置される請求項9に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項14】
前記Si
wO
xC
yN
zで表わされる材料層の厚みが150nm以上である請求項13に記載の液体吐出ヘッド用基板。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド用基板を備える液体吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する液体吐出ヘッド用基板、及び液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出ヘッドとして代表的なインクジェットヘッドを用いた記録方式の一つに、発熱素子によってインクを加熱して発泡させ、この気泡を利用してインクを吐出する方式がある。
【0003】
特許文献1には、複数の電気配線層や、電気配線層と発熱抵抗素子との間を電気的に絶縁する層間絶縁膜として、SiOなどの絶縁体を使用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されるSiOを層間絶縁膜に適用したインクジェットヘッドにおいては、偶発的な断線等によりインクが液体吐出ヘッド用基板の内部に侵入した状態で長期間使用すると、インクによって層間絶縁膜が溶解することがある。層間絶縁膜の溶解により複数の素子に共通する電気配線層にまでインクが到達すると、隣接する素子もインクの吐出ができなくなってしまう。
【0006】
このように、層間絶縁膜の溶解によってインクジェットヘッドの信頼性を低下させてしまうことが課題となる。
なお、液体吐出ヘッド用基板の層間絶縁膜としては、インクに対する耐溶解性に加え、電気的絶縁性、低応力といった性能を満たすことが要求される。
【0007】
そこで、本発明は、電気的絶縁性、低応力といった層間絶縁膜として求められる性能を満たしつつ、層間絶縁膜の溶解による液体吐出ヘッドの信頼性の低下を抑制し、より長寿命な液体吐出ヘッド基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
基材と、液体を吐出するための熱エネルギーを発生する発熱抵抗体層を含む発熱素子と、該発熱素子に電力を供給する配線層と、前記発熱抵抗体層及び配線層を絶縁する層間絶縁膜を有する液体吐出ヘッド用基板において、前記発熱抵抗体層と前記配線層のうち該発熱抵抗体層と隣接する第1の配線層を絶縁する第1の層間絶縁膜、及び、該第1の配線層と隣接する第2の配線層を絶縁する第2の層間絶縁膜の一部に、SiwOxCyNz(w+x+y+z=100(at%),37≦w≦60(at.%),30≦x≦53(at.%),6≦y≦29(at.%),4≦z≦9(at.%))で表わされる材料層を含むことを特徴とする液体吐出ヘッド用基板。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、電気的絶縁性、低応力といった層間絶縁膜として求められる性能を満たしつつ、インク等の液体に起因する層間絶縁膜の溶解による液体吐出ヘッドの信頼性の低下を抑制し、より長寿命な液体吐出ヘッド用基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る発熱素子近傍の平面図と断面図である。
【
図3】Si
wO
xC
yN
z膜の成膜装置を模式的に示す断面図である。
【
図4】一実施形態に係る層間絶縁膜近傍の断面図である。
【
図5】一実施形態に係る層間絶縁膜近傍の断面図である。
【
図6】
図5に係る層間絶縁膜の作製工程のフローチャートである。
【
図7】一実施形態に係る層間絶縁膜近傍の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
液体吐出ヘッドは、プリンタ、複写機、通信システムを有するファクシミリ、プリンタ部を有するワードプロセッサなどの装置、さらには各種処理装置と複合的に組み合わせた産業記録装置に搭載可能である。そして、この液体吐出ヘッドを用いることによって、紙、糸、繊維、布帛、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなどの種々の被記録媒体に記録を行うことができる。
【0012】
本明細書内で用いられる「記録」とは、文字や図形などの意味を持つ画像を被記録媒体に対して付与することだけでなく、パターンなどの意味を持たない画像を付与することも意味することにする。
【0013】
さらに「液体」とは広く解釈されるべきものであり、記録動作に用いるインクのみならず、被記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成、被記録媒体の加工、或いはインクまたは被記録媒体の処理に供される液体を言うものとする。ここで、インクまたは被記録媒体の処理とは、例えば、被記録媒体に付与されるインクの中の色材の凝固または不溶化による定着性の向上や、記録品位ないし発色性の向上、画像耐久性の向上するための処理のことを言う。さらに、本発明の液体吐出装置に用いられるような「液体」は、一般的に電解質を多く含むものであり、導電性を有している。
また、本明細書において、「第1」、「第2」などの部材に付与される表示は、順序を形式的に示すものであって、部材そのものを特定するものではない。
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお以下の説明では、同一の機能を有する構成には図面中同一の番号を付与する。
【0015】
液体吐出ヘッド基板100(
図1)は、素子基板114と吐出口形成部材108とを有している。素子基板114は、Siにより形成される基材113と、基材113上に形成される層間絶縁膜104と、を含んでいる。また、素子基板114は、基材113の上側に設けられた液体を吐出するための熱エネルギーを発生する発熱素子101を構成する発熱抵抗体層101A、保護膜105、耐キャビテーション膜106、及び密着向上層107を含んでいる。また、発熱素子で発生する熱を検知する温度検知素子116を設けてもよく、この温度検知素子116は発熱抵抗体層101Aの下に配置される。層間絶縁膜104は、発熱抵抗体層101Aと温度検知素子116との間に位置する第1の層間絶縁膜104fと、温度検知素子116とグランド配線である第1の電気配線層103dとの間に位置する第2の層間絶縁膜104eと、を含む。また、層間絶縁膜104は、第1の電気配線層103dと電源配線である第2の電気配線層103cとの間に位置する第3の層間絶縁膜104dを含む。また、層間絶縁膜104は、第2の電気配線層103cとロジック電源配線である第3の電気配線層103bとの間に位置する第4の層間絶縁膜104cを含む。また、層間絶縁膜104は、第3の電気配線層103bと信号配線である第4の電気配線層103aとの間に位置する第5の層間絶縁膜104bと、第5の電気配線層103aの下部に位置する第6の層間絶縁膜104aと、を含む。
ここで、第1の層間絶縁膜104f,第2の層間絶縁膜104e,第3の層間絶縁膜104dのうち、少なくとも一つの膜は以下のSiOCN膜(シリコン酸炭窒化膜)を含む絶縁体で形成される。すなわち、少なくとも一つの膜はSi
wO
xC
yN
z(w+x+y+z=100(at%),37≦w≦60(at.%),30≦x≦53(at.%),6≦y≦29(at.%),4≦z≦9(at.%))で表わされる材料層を含む絶縁体で形成される。第1の層間絶縁膜104f、第2の層間絶縁膜104e、第3の層間絶縁膜104dは、配線層への付き周り性を向上するためには、Si
wO
xC
yN
z膜だけでなく、一部に高密度プラズマCVDで成膜したSiOなどの絶縁膜を含んでも良い。なお、これらの層間絶縁膜の一部または全てをSi
wO
xC
yN
z膜にすることで、インクに対する耐溶解性を向上することができる。更に、第1の層間絶縁膜104fや、第2の層間絶縁膜104dなどの発熱抵抗体層101Aに近い領域の層間絶縁膜の一部または全てをSi
wO
xC
yN
z膜とすることが好ましい。これは、Si
wO
xC
yN
z膜はSiO膜に比べて熱伝導率が低いため、発熱素子101の駆動に必要なエネルギーを低減することができるためである。なお、温度検知素子116は任意のため、温度検知素子116がない場合は、第1の層間絶縁膜104fと第2の層間絶縁膜104eとが一つの第1の層間絶縁膜となり、以下、同等の構成となる。
【0016】
ここで、各層間絶縁膜は、各配線層を敷設する上面が平坦化されていれば良い。すなわち、層間絶縁膜を複数の膜を積層して構成する場合は、配線層が設けられる膜の上面を平坦化すればよい。例えば、
図4では、配線層(ここでは発熱素子に近いグランド配線である第1の電気配線層103d)の上側に設けられる層間絶縁膜(第2の層間絶縁膜104e)を3つの膜104x、104y、104zで構成している。第1の電気配線層103dの上には、第2SiO膜104zが配線層の凹凸に合わせて凹凸形状に形成され、Si
wO
xC
yN
z膜104xが第2SiO膜104zの凹凸にコンフォーマルに形成されている。更に、その上に第1SiO膜104yが形成されており、第1SiO膜104yの上面は平坦化されている。
【0017】
又、
図5、
図7は、配線層103(第1の電気配線層103d)の上側の層間絶縁膜(第2の層間絶縁膜104e)の別の形態を示している。
図5に示す形態では、配線層103dの上に上面が平坦化された第2SiO膜104zを配置し、その上にSi
wO
xC
yN
z膜104xを配置し、更にその上に上面が平坦化された第1SiO膜104yを積層している。
図7に示す形態では、配線層103dの上にSi
wO
xC
yN
z膜104xを形成し、その上に上面が平坦化された第1SiO膜104yを形成している。
【0018】
図1に戻って、第4の層間絶縁膜104c,第5の層間絶縁膜104b,第6の層間絶縁膜104aは、SiO膜などの絶縁体で形成される。なお、これらの層間絶縁膜をSi
wO
xC
yN
z膜で形成してもよい。また、層間絶縁膜のうち、
図4~6に示したように、Si
wO
xC
yN
z膜104xの上に第1SiO膜104yを形成する構成にすると、上面の平坦化を行う膜が第1SiO膜104yのみとなり、工程の複雑化を避けることができる。Si
wO
xC
yN
z膜104xは耐液性(耐薬品性)が高く、CMPなどの化学研磨で平坦化することが難しいため、SiO膜のみを平坦化することが好ましい。
【0019】
図2に示すように、液体吐出ヘッド基板100の中央部には長手方向(本実施形態ではY方向に一致する)に延びるインク供給口202が設けられ、インク供給口202の両側に複数の発熱素子101がそれぞれ列状に配列されている。発熱素子101における発熱抵抗体層101AはTaSiNなどのTa化合物から形成されている。
図1に示す発熱抵抗体層101Aの膜厚(Z方向寸法)は0.01~0.05μm程度であり、後述する配線層103の膜厚と比べてはるかに小さい。基板114の発熱素子101が形成された面114aに吐出口形成部材108が設けられている。吐出口形成部材108は各発熱素子101に対応した吐出口109を有し、基板114とともに吐出口109毎の圧力室115を形成している。圧力室115はインク供給口202と連通しており、インク供給口202から供給されるインクが圧力室115に導入される。また、発熱素子101の下部に、層間絶縁膜を挟んでAl,Pt,Ti,Ta等の薄膜抵抗体で形成される温度検知素子116を設けてもよい。
【0020】
図2に示すように、液体吐出ヘッド基板100のインク供給口202を挟んだ両側には発熱素子101を駆動するための駆動回路203が設けられている。駆動回路203は基板114の長手方向Yにおける両端に設けられた電極パッド201に接続され、電極パッド201を介して液体吐出ヘッドの外部から供給される記録信号に応じて発熱素子101の駆動電流を生成する。素子基板114上に設けられた層間絶縁膜104内には、発熱素子101の発熱抵抗体層101Aに電流を供給するための配線層103が延びている。配線層103は層間絶縁膜104に埋め込まれるように設けられている。配線層103は後述の接続部材102を介して、駆動回路203と発熱抵抗体層101Aとを電気的に接続している。配線層103は例えばアルミニウムからなり、膜厚(Z方向寸法)は0.6~1.2μm程度である。供給された電流によって発熱素子101が発熱し、高温となった発熱素子101は圧力室115内のインクを加熱して気泡を発生させる。この気泡によって吐出口109の近傍のインクが吐出口109から吐出し、記録が行われる。この際の温度変化を温度検知素子116で読み取ることで、正常に吐出されているかどうかを判定することができる。
【0021】
発熱抵抗体層101Aは保護膜105で覆われている。保護膜105は例えばSiNで形成され、膜厚は0.15~0.3μm程度である。保護膜105はSiOまたはSiCで形成してもよい。保護膜105は耐キャビテーション膜106で覆われている。耐キャビテーション膜106はTa等で形成され、膜厚は0.2~0.3μm程度である。耐キャビテーション膜106はIrや、TaおよびIrを積層して設けてもよい。
【0022】
層間絶縁膜104内には、配線層103と発熱抵抗体層101Aとを接続するための複数の接続部材102が設けられている。膜厚方向(Z方向)に延在する複数の接続部材102は、第2の方向Yに沿って互いに間隔をおいて位置している。接続部材102は発熱素子101が設けられる面に直交する方向からみて、発熱抵抗体層101Aに覆われている。接続部材102は、発熱素子101のX方向における両側端部の近傍で、配線層103と発熱抵抗体層101Aとを接続している。従って、電流は発熱抵抗体層101Aを第1の方向Xに沿って流れる。発熱素子101のX方向における両側端部の近傍にはそれぞれ複数の接続部材102が設けられている。発熱抵抗体層101Aはその一端側と他端側との夫々に、複数の接続部材102が接続される接続領域110を有している。接続部材102は配線層103の端部付近からZ方向に延びるプラグである。接続部材102は本実施形態では概ね正方形の断面を有しているが、角部が丸められていてもよく、正方形に限らず長方形、円形、楕円形など他の形状をとることもできる。接続部材102は金属プラグであり、代表的にはタングステンで形成されているが、チタン、白金、コバルト、ニッケル、モリブデン、タンタル、ケイ素(ポリシリコン)のいずれか、またはこれらの化合物で形成することができる。接続部材102は配線層103と一体形成されてもよい。すなわち、配線層103の一部を厚さ方向に切り欠くことで配線層103と一体化された接続部材102を形成してもよい。
【0023】
接続領域110は、全ての接続部材102を含みかつその四辺がいずれかの接続部材102に外接する最小の長方形の領域である。接続領域110は第1の方向Xと直交する第2の方向Yに沿って延びているが、第2の方向は第1の方向Xと直交していなくてもよい。すなわち、接続領域110は第1の方向Xと斜め方向に交差する第2の方向に沿って延びていてよい。発熱素子101において実際にインクの発泡に寄与する領域、すなわちインクが発泡する領域を発泡領域111と呼ぶ。発泡領域111は発熱素子101の外周よりも内側にあり、発泡領域111と発熱素子101の外周との間の領域はインクの発泡に寄与しない領域(以下、額縁領域112という)となっている。額縁領域112においても通電により発熱はするが周囲への放熱量が多く、インクが発泡しない。発泡領域111のX方向及びY方向の寸法は発熱抵抗体層101Aの周囲の構造や発熱抵抗体層101Aの熱伝導率等によって決まる。接続領域110は額縁領域112を挟んで、第1の方向Xに発泡領域111と隣接しており、第2の方向Yにおいて発泡領域111の全長を含む範囲を延びている。すなわち、第1の方向Xに見たときに、接続領域110のY方向に関する両側端部110a,110bは、発泡領域111のY方向に関する両側周縁部111a,111bよりも発熱抵抗体層101AのY方向に関する両側周縁部101a,101bに近接している。このため、発泡領域111の全域において電流密度が均一化される。
【0024】
各層の配線層103および発熱抵抗体層101Aの下地部は化学機械研磨法(Chemical Mechanical Polishing:CMP)等の処理により平坦化されている。それにより
図1に示すように、接続部材102の発熱抵抗体層101Aとの当接面と、層間絶縁膜104の発熱抵抗体層101Aとの当接面とは同一平面に設けられる。本実施形態においては
図1に示すようにSiにより形成される基材113の層間絶縁膜104との界面領域に駆動回路203およびフィールド酸化膜132が形成されている。
【0025】
図1では配線層103は発熱抵抗体層101Aからの距離が互いに異なる4層の構成になっている。下層側の配線層103a、103bを、発熱素子101を駆動するための信号配線層やロジック電源配線層(第4の電気配線層103a、第3の電気配線層103b)に割り当てている。また、上層側(保護膜105側)の配線層103c、103dを、発熱素子101に電流を供給するための配線層に割り当てている。本実施形態においては、配線層103dをグランド(GNDH)配線層(第1の電気配線層103d)、配線層103cを電源(VH)配線層(第2の電気配線層103c)とし、配線層103c、103dともに所謂ベタ配線としている。
【0026】
本実施形態では、層間絶縁膜104中に4層の配線層103を備えている。具体的には、発熱素子101に電流を流す為の第1及び第2の電気配線層103d、103cと、発熱素子を駆動するための信号配線やロジック電源配線のための第3及び第4の電気配線層103b、103aを備えている。第1及び第2の電気配線層103d、103cは第3及び第4の電気配線層103b、103aに対して発熱素子101に近い側に配されており、第1及び第2の電気配線層103d、103cの膜厚は効率を考慮すると相対的に厚い方が好ましい。逆に第3及び第4の電気配線層103b、103aは、第1及び第2の電気配線層103d、103cに対して駆動回路203に近い側に配されており、それらの膜厚は相対的に薄い方が好ましい。
【0027】
図1に示すように発熱素子101は、各々が接続領域110を含む2つの電極領域121と、2つの電極領域121の間に位置する中央領域122とに、第1の方向Xに区画されている。2つの電極領域121と中央領域122は第2の方向Yに関し同一の寸法を有している。すなわち、発熱素子101は、
図1(a)に示すようにX-Y面内で長方形の平面形状を有している。本実施形態では、接続部材102の幅a、間隔b、発熱素子101のオーバーラップ幅cはこのような発熱素子101の形状を前提に最適化される。ここで、接続部材102の幅aは接続部材102のY方向幅、接続部材102の間隔bは隣接する接続部材102の第2の方向Yにおける間隔、オーバーラップ幅cは両端の接続部材102と発熱素子101の周縁部101a,101bとの間の距離である。
【0028】
本発明に係るSi
wO
xC
yN
d膜はプラズマCVD法を用いて成膜することができる。
図3は本発明においてSiwOxCyNz膜の成膜に使用したプラズマCVD装置の成膜室を模式的に示す断面図である。
図3を用いて、SiwOxCyNz膜の成膜方法の概略を以下に説明する。
【0029】
まず、プラズマ放電の際の上部電極として機能するシャワーヘッド303と、下部電極として機能するサンプルステージ302の間の距離(GAP)を、サンプルステージ302の高さを調整することで決定する。また、サンプルステージ302の温度をヒータ304によって加熱することで調整する。
【0030】
次に、シャワーヘッド303を介して使用する各種ガスを成膜室310に流入する。その際、各種ガスは各々に対応する配管300にそれぞれ取り付けられたマスフローコントローラー301によって流量を制御される。その後、使用するガスの導入バルブ307aを開放することでガスは配管内で混合され、シャワーヘッド303に向けて供給される。続いて、真空ポンプ(不図示)に繋がる排気口305に取り付けられた排気バルブ307bを調整し、排気量を制御することで成膜室310内の圧力を一定に保つ。その後、2周波のRF電源308aおよび308bによってシャワーヘッド303とサンプルステージ302との間にプラズマを放電する。そのプラズマ中で解離した原子がウエハ306上に堆積されていくことで成膜が行われる。
プロセスガスとしては、シリコンを供給するSiソースガス、窒素を供給するNソースガス、炭素を供給するCソースガス、酸素を供給するOソースガス、さらに必要に応じてこれらのガスを搬送するキャリアガスが用いられる。Siソースガスとしては、シランガス(SiH4)やジクロロシラン(SiH2Cl2)などを用いることができる。NソースガスはアンモニアガスやOソースガスを兼ねる亜酸化窒素(N2O)などを用いることができる。Cソースガスとしては低級アルカン(メタン(CH4)やエタン(C2H6))などを用いることができる。Oソースガスとしては、酸素(O2)、オゾン(O3)、一酸化窒素(NO)、一酸化炭素(CO)、水(H2O)などを用いることができる。キャリアガスとしては不活性な希ガスや窒素ガス、水素ガスを用いることができる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例を参照して、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0032】
本発明に係るSiwOxCyNz膜の成膜条件は、以下の中から適宜選択する。
SiH4ガス流量:0.02~0.3slm
N2Oガス流量:0.1~3slm
CH4ガス流量:0.1~5slm
HRF電力:100~900W
LRF電力:8~500W
圧力:100~700Pa
温度:300℃~450℃
【0033】
これらの条件を調整し、SiH4,N2O,CH4の各プロセスガスの流量比を変更することで、組成比の異なるSiwOxCyNz膜を得ることができる。その結果、表1のA~Kに示す水準SiwOxCyNz膜を得ることができた。なお、本明細書ではSiwOxCyNz膜の各元素の含有割合を原子百分率(at.%)で示している。また、本発明において成膜されるSiwOxCyNz膜においては、上述したCVD法の原料ガス由来の水素が含有されるが、水素含有量は考慮していない。ただし、上述のプロセスガスを用いて成膜された膜には、一般的に15~30(at.%)程度の水素が含まれており、その範囲を大きく逸脱するものでなければ水素が含まれても差し支えない。なお、SiH4、N2O、CH4の各プロセスガス流量比を変化させても、w≦36のSiwOxCyNz膜および、z≧10のSiwOxCyNz膜を作成することはできなかった。
【0034】
【0035】
以下に、表1に示したAからKまでのSiwOxCyNz膜の性能を判断するための実験例を示す。また、以下の実験例では、SiO膜を水準Lとして併せて同様の実験を行った。
【0036】
(実験例1)
各SiwOxCyNz膜のインクに対する耐浸食性を確認するために以下の実験を行った。まず、シリコン基板上に各SiwOxCyNz膜を成膜した。その後、SiwOxCyNz膜が成膜された基板を20mm×20mmの大きさとなるように割断した。その個片を、60℃に加熱した30mlのpH9程度の顔料インクの中に浸漬し、72時間放置した際の溶解量を調べた。その際、基板の端面及び裏面に露出しているSiが溶解することによる影響を無くすために、基板の裏面及び側面をインクに不溶な樹脂で保護した。なお、本実験例による膜厚の測定は分光エリプソメータを用いて行った。
この実験における、膜厚の変動を調べることでSiwOxCyNz膜のインクに対する耐浸食性を確認した。結果を表2に示す。この実験における判断基準として、溶解量が1nm未満の場合をA、1nm以上10nm未満の場合をB、10nm以上30nm未満の場合をC、30nm以上の場合をDとして判定を行った。
この際の判断結果として用いた、Aは非常に効果が得られるもの、Bは効果が得られるもの、Cは効果が少ないもの、Dはほとんど効果のないものとした。この判断は以下の実験例の結果も同様である。
【0037】
【0038】
表2に示した結果から、インクに対する耐浸食性を満足するSiwOxCyNz膜の組成範囲は、6≦y(at.%)を満足する組成領域であることがわかる。特に、顔料インクを用いるときにこの組成領域の範囲内のSiwOxCyNz膜を用いることが有効である。また、pH5~11程度の顔料インク及び染料インクであっても上述の結果と同等の結果が得られた。
【0039】
(実験例2)
上記各SiwOxCyNz膜の電気絶縁性を確認するために以下の実験を行った。まず、膜厚1μmのシリコン熱酸化膜が形成されたシリコン基板上に、第一の電極として用いるために、アルミニウムを主材料とする金属層を200nmの厚さで形成し、2.5mm×2.5mmの大きさとなるように加工した。第一の電極の上にSiwOxCyNz膜を300nmの厚さで成膜し、さらにその上層に第二の電極として用いるためにアルミニウムを主材料とする2mm×2mmの矩形の金属層を、第一の電極の直上からはみ出ないように200nmの厚さで形成する。その後第一の電極との電気的な接触を取るためのスルーホールをSiwOxCyNz膜に開口した。このようなサンプルを用いて、第一の電極と第二の電極との間に32Vの電圧を加えた際の電流量を測定した。
【0040】
この実験における、電流量を測定することでSiwOxCyNz膜の電気絶縁性を確認した。結果を表3に示す。この実験における判断基準として電流量が、0.1nA未満のものに関してはA、0.1nA以上10nA未満のものに関してはB、10nA以上100nA未満のものに関してはC、100nA以上のものに関してはDとした。
【0041】
【0042】
表3に示した結果から、実用的な電気絶縁性を満足するSiwOxCyNz膜の組成範囲は、30≦x(at.%)を満足する組成領域であることがわかる。
【0043】
(実験例3)
本発明におけるSiwOxCyNz膜の応力を測定するために以下の実験を行った。シリコン基板上にSiwOxCyNz膜を成膜し、応力測定器で応力を測定した。結果を表4に示す。なお、応力の値は0以上であれば引張応力、0未満であれば圧縮応力を表す。この実験における判断基準は以下の通りである。応力の絶対値が150MPa未満のものに関してはA、150MPa以上400MPa未満のものに関してはB、400MPa以上500MPa未満のものに関してはC、500MPa以上のものに関してはDとした。
【0044】
【0045】
表4に示した結果から、低応力を満足するSiwOxCyNz膜の組成範囲は、4≦z(at.%)を満足する組成領域であることがわかる。
【0046】
以上の実施例1から実施例3の実験結果を表5にまとめる。総合的な判断は、各実験の結果の中で最も評価が低いものの判断を用いた。総合的な判断がBまたはCとなる水準は、B、D、E、F、G、H、I、Jの各水準である。
【0047】
液体吐出ヘッドの素子基板114の層間絶縁膜104としては、以上の実施例1から3に挙げた性能を備えることが求められる。それぞれの実験結果と、w≦36のSiwOxCyNz膜および、z≧10のSiwOxCyNz膜を作成することはできなかったことから、各性能を満足するようなSiwOxCyNz膜の組成は以下の通りである。まず、w+x+y+z=100(at%),37≦w(at.%),30≦x(at.%),6≦y(at.%),4≦z≦9(at.%)となる。w+x+y+z=100(at%)であることから、w,x,yの上限はそれぞれw≦60(at.%),x≦53(at%),y≦29(at%)となる。したがって、求められる性能を発揮可能なSiwOxCyNz膜の組成は、w+x+y+z=100(at%),37≦w≦60(at.%),30≦x≦53(at.%),6≦y≦29(at.%),4≦z≦9(at.%)となる。
【0048】
また、総合的な判断がBとなる水準はD、F、G、Hの各水準であったことから、SiwOxCyNz膜おいて、37≦w≦39(at.%),33≦x≦41(at.%),12≦y≦22(at.%),7≦z≦8(at.%)であることがより好ましい。
【0049】
【0050】
(実施例1)
本実施形態において作製した各種液体吐出ヘッドにおいて実際に液体の吐出を行った。本実施例では、層間絶縁膜104d,104e,105fにSiwOxCyNz膜を使用した。その結果、表5に示したB,D~Jの水準を層間絶縁膜に用いた液体吐出ヘッドについては偶発的に断線が生じても隣接する素子に影響を与えず、基板の反りも小さく、電気的な不良も発生しない液体吐出ヘッドを得ることができた。
【0051】
一方、層間絶縁膜104d,104e,105fにKの水準を用いた液体吐出ヘッドは配線層間にリーク電流が生じたために、吐出性能が著しく悪化した。Cの水準を層間絶縁膜に用いた液体吐出ヘッドは、不良は生じなかったが、基板の反りが大きく、ヘッドの作製工程の一部で搬送エラーや吸着エラーが生じた。
【0052】
また、Aの水準,Lの水準(SiO膜)を層間絶縁膜に用いた液体吐出ヘッドは、通常時には不良が生じなかったが、偶発的な断線が発生後も吐出を続けると、断線した素子の周囲に隣接した素子も不吐となった。吐出を続けるほど不吐となった素子が広範囲に広がった。その後もさらに吐出を続けると、電気的な不良が発生しヘッドの駆動ができなくなった。吐出耐久試験後、液体吐出ヘッドを分解し、集束イオンビーム装置と走査型電子顕微鏡を用いて液体吐出ヘッド用基板の断面を観察した。広範囲で不吐となった領域において、内部にインクが浸入した形跡があり、層間絶縁膜104f、層間絶縁膜104eが溶解し、電気配線層103dの溶解も確認された。一部の領域では層間絶縁膜104dの溶解や電気配線層103cの溶解も確認された。
【0053】
(実施例2)
本実施例では、水準B,D~Jについて、層間絶縁膜104dにSiwOxCyNz膜を用い、他の層間絶縁膜はSiO膜を用いて液体吐出ヘッドを作製した。通常時には不良が生じなかったが、偶発的な断線が発生後も吐出を続けると、配線層103dをベタ配線にする場合は断線した素子の周囲に隣接した素子も不吐となり、吐出を続けるほど不吐となった素子が広範囲に広がった。その後もさらに吐出を続けたが、電気的な不良の発生によりヘッドの駆動ができなくなることはなかった。配線層103dを個別配線とした場合はヘッドに偶発的な断線が生じた後も断線が広範囲に広がることはなかった。
【0054】
吐出耐久試験後、液体吐出ヘッドを分解し、集束イオンビーム装置と走査型電子顕微鏡を用いて液体吐出ヘッド用基板の断面を観察した。広範囲で不吐となった領域において、内部にインクが浸入した形跡があり、層間絶縁膜104f、層間絶縁膜104eが溶解し、電気配線層103dの溶解も確認された。しかし、層間絶縁膜104d(SiwOxCyNz膜)の溶解は確認されなかった。
【0055】
(実施例3)
本実施例では、水準B,D~Jについて、層間絶縁膜104eにSiwOxCyNz膜を用い、他の層間絶縁膜はSiO膜を用いて液体吐出ヘッドを作製した。ヘッドに偶発的な断線が生じた後も断線が広範囲に広がることはなかった。
また、水準B,D~Jは、SiO膜を用いた場合に比べて、発熱素子の駆動に必要なエネルギーが減少した。熱伝導率を測定すると、SiO膜に比べてSiwOxCyNz膜の熱伝導率が低く、蓄熱性が高いことに起因すると考えられる。
【0056】
(実施例4)
本実施例では、水準B,D~Jについて、層間絶縁膜104fのみにSiwOxCyNz膜を用い、他の層間絶縁膜はSiO膜を用いて液体吐出ヘッドを作製した。ヘッドに偶発的な断線が生じた後も断線が広範囲に広がることはなかった。
本実施例においてもSiO膜のみを用いた場合に比べて、発熱素子の駆動に必要なエネルギーが減少した。本実施例は実施例3よりも発熱抵抗素子に近い領域のため、実施例3よりも更に小さなエネルギーで駆動することができた。
【0057】
(実施例5)
本実施例では、実施例3のうち、層間絶縁膜104eを
図4に示すように、第2SiO膜104z、Si
wO
xC
yN
z膜104x、第1SiO膜104yを形成したものとした。第1及び第2SiO膜、およびSi
wO
xC
yN
z膜104xの膜厚を変化させたとき、Si
wO
xC
yN
z膜104xの膜厚が150nm以上あれば、ヘッドに偶発的な断線が生じた後も、断線が広範囲に広がることはなかった。
また、本実施例ではヘッド作製工程において、平坦化を行うのが第1SiO膜104yのみとなるため、工程の複雑化を避けることができた。
【0058】
(実施例6)
本実施例では、実施例5のうち、層間絶縁膜104eを、
図5に示すような平坦化した第2SiO膜104zの面の上にSi
wO
xC
yN
z膜104xを形成した。成膜のフローチャートを
図6に示す。まず、グランド配線103dの形成された基板上に第2SiO膜104zを成膜した(S1)。次に第2SiO膜104zをCMPにより平坦化し(S2)、その上にSi
wO
xC
yN
z膜104xを形成した(S3)。続いて、Si
wO
xC
yN
z膜104x上に、第1SiO膜104yを成膜し(S4),平坦化した(S5)。SiwOxCyNz膜104xの膜厚を変化させたとき、SiwOxCyNz膜104xの膜厚が100nm以上あれば、ヘッドに偶発的な断線が生じた後も、断線が広範囲に広がることはなかった。第2SiO膜104zの平坦化を行ったことにより、実施例5に比べてSiwOxCyNz膜104xの膜厚が薄い場合でも効果が見られた。
【0059】
(実施例7)
本実施例では、実施例3のうち、層間絶縁膜104eを、
図7に示すように、グランド配線103d上の膜をSi
wO
xC
yN
z膜104xとし、その上に第1SiO膜104yを形成したものとした。第1SiO膜104y、およびSi
wO
xC
yN
z膜104xの膜厚を変化させたとき、Si
wO
xC
yN
z膜104xの膜厚が150nm以上あれば、ヘッドに偶発的な断線が生じた後も、断線が広範囲に広がることはなかった。
本実施例では、実施例5、6に比べて、成膜回数が少ないため、工程の複雑化を避けることができた。
【符号の説明】
【0060】
100 液体吐出ヘッド用基板
101 発熱素子
101A 発熱抵抗体層
103 配線層
103d 第1の電気配線層
103c 第2の電気配線層
104 層間絶縁膜
104f 第1の層間絶縁膜
104e 第2の層間絶縁膜
104d 第3の層間絶縁膜
104x SiwOxCyNz膜
113 基材