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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 5/92 20240101AFI20240826BHJP
   G09G 5/10 20060101ALI20240826BHJP
   H04N 1/407 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
G06T5/92
G09G5/10 B
H04N1/407 740
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020190235
(22)【出願日】2020-11-16
(65)【公開番号】P2022079199
(43)【公開日】2022-05-26
【審査請求日】2023-09-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ・ウェブサイトのアドレス (1)https://corporate.jp.sharp/news/200511-a.html 掲載日 令和2年5月11日 (2)https://jp.sharp/support/aquos/doc/4tc65_55cq1_mn.pdf?productId=4T-C65CQ1 (3)https://jp.sharp/support/aquos/doc/4tc65_55cq1_dmn.pdf?productId=4T-C65CQ1 掲載日 令和2年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】下田 裕紀
【審査官】稲垣 良一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/025474(WO,A1)
【文献】特開2020-182186(JP,A)
【文献】特開2009-17200(JP,A)
【文献】国際公開第2017/203942(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 5/90 - 5/94
G09G 5/10
H04N 1/407
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像の輝度である入力輝度に対する出力画像の輝度である出力輝度を表すガンマカーブを決定するガンマカーブ決定部と、
前記ガンマカーブに基づいて、前記入力画像の前記入力輝度を前記出力輝度に変換することにより前記出力画像を出力する輝度変換部と、を備え、
前記ガンマカーブ決定部は、前記入力画像の映像方式がハイダイナミックレンジ方式である場合には、当該入力画像の映像方式がスタンダードダイナミックレンジ方式である場合よりも、前記入力輝度に対する前記出力輝度のゲインが大きくなるように前記ガンマカーブを決定し、
前記ガンマカーブ決定部は、前記入力画像の映像方式がPQ(Perceptual Quantization)方式である場合には、当該入力画像の映像方式がHLG(Hybrid Log Gamma)方式である場合よりも、前記入力輝度の低輝度領域における前記ゲインが大きくなるように前記ガンマカーブを決定することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
入力画像の輝度である入力輝度に対する出力画像の輝度である出力輝度を表すガンマカーブを決定するガンマカーブ決定部と、
前記ガンマカーブに基づいて、前記入力画像の前記入力輝度を前記出力輝度に変換することにより前記出力画像を出力する輝度変換部と、を備え、
前記ガンマカーブ決定部は、前記入力画像の映像方式がハイダイナミックレンジ方式である場合には、当該入力画像の映像方式がスタンダードダイナミックレンジ方式である場合よりも、前記入力輝度に対する前記出力輝度のゲインが大きくなるように前記ガンマカーブを決定し、
前記ガンマカーブ決定部は、前記入力画像の映像方式がHLG方式である場合には、当該入力画像の映像方式がスタンダードダイナミックレンジ方式およびPQ方式の何れかである場合よりも、前記入力輝度の高輝度領域における前記ゲインが大きくなるように前記ガンマカーブを決定することを特徴とする表示装置。
【請求項3】
入力画像の輝度である入力輝度に対する出力画像の輝度である出力輝度を表すガンマカーブを決定するガンマカーブ決定部と、
前記ガンマカーブに基づいて、前記入力画像の前記入力輝度を前記出力輝度に変換することにより前記出力画像を出力する輝度変換部と、を備え、
前記ガンマカーブ決定部は、前記入力画像の映像方式がハイダイナミックレンジ方式である場合には、当該入力画像の映像方式がスタンダードダイナミックレンジ方式である場合よりも、前記入力輝度に対する前記出力輝度のゲインが大きくなるように前記ガンマカーブを決定し、
前記ガンマカーブ決定部は、前記入力画像の映像方式がHLG方式である場合に、当該入力画像がスタンダードダイナミックレンジ方式の画像から変換されたものであるか否かを判定し、当該入力画像がスタンダードダイナミックレンジ方式の画像から変換されたものであると判定した場合に、当該入力画像の映像方式がスタンダードダイナミックレンジ方式およびPQ方式の何れかである場合よりも、前記入力輝度の高輝度領域における前記ゲインが大きくなるように前記ガンマカーブを決定することを特徴とする表示装置。
【請求項4】
前記ガンマカーブ決定部は、前記入力画像の映像方式がハイダイナミックレンジ方式である場合には、当該入力画像の映像方式がスタンダードダイナミックレンジ方式である場合よりも、前記入力輝度の低輝度領域における前記ゲインが大きくなるように前記ガンマカーブを決定することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記ガンマカーブ決定部は、前記ガンマカーブ上の前記入力輝度の低輝度領域にある第1基準点、前記ガンマカーブ上の前記入力輝度の高輝度領域にある第2基準点、および前記ガンマカーブ上の前記第1基準点と前記第2基準点との間にある第3基準点の少なくとも一つに対応する前記ゲインを前記入力画像の映像方式に応じて変化させることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記ガンマカーブ決定部は、前記入力画像の映像方式がハイダイナミックレンジ方式である場合には、当該入力画像の映像方式がスタンダードダイナミックレンジ方式である場合よりも、前記第1基準点および前記第3基準点のそれぞれに対応する前記ゲインが大きくなるように前記ガンマカーブを決定することを特徴とする請求項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記ガンマカーブ決定部は、前記入力輝度のヒストグラムを参照して、前記ガンマカーブを決定することを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、高画質化のための映像方式としてトレンドとなっているHDR(High Dynamic Range、ハイダイナミックレンジ)方式では、最大輝度として1000~10000カンデラが想定されている。一方、従来のSDR(Standard Dynamic Range、スタンダードダイナミックレンジ)方式では、最大輝度として100カンデラが想定されている。HDR方式は、SDR方式に比べて、より多くの階調値を低階調領域に割り当てるとともに、高階調領域で表現できる輝度を広げている。HDR方式によれば、SDR方式では表現できない明部および暗部の階調表現が可能となり、高いダイナミックレンジでリアリティ溢れる映像を再現可能である。
【0003】
また、画像処理装置が、入力画像の輝度ヒストグラムに基づいてガンマカーブを生成し、そのガンマカーブを用いて輝度変換処理を行う技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。これは、入力画像の絵柄に応じたコントラストの向上を実現することを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-017200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特性のために、HDR信号とSDR信号とでは、輝度ヒストグラムの分布の傾向が異なる。そのため、入力画像の映像方式が切り替わったときに、視聴者が違和感を覚える場合がある。この違和感は、特許文献1に記載の輝度ヒストグラムに基づく輝度変換処理によっても解消されない。
【0006】
本発明の一態様は、入力画像の映像方式を切り替えたときの視聴者の違和感を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る表示装置は、入力画像の輝度である入力輝度に対する出力画像の輝度である出力輝度を表すガンマカーブを決定するガンマカーブ決定部と、前記ガンマカーブに基づいて、前記入力画像の前記入力輝度を前記出力輝度に変換することにより前記出力画像を出力する輝度変換部と、を備え、前記ガンマカーブ決定部は、前記入力画像の映像方式がハイダイナミックレンジ方式である場合には、当該入力画像の映像方式がスタンダードダイナミックレンジ方式である場合よりも、前記入力輝度に対する前記出力輝度のゲインが大きくなるように前記ガンマカーブを決定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、入力画像の映像方式を切り替えたときの明るさの差を縮小し、視聴者の違和感を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態1に係るテレビジョン受像機の信号処理の流れを示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態1に係るテレビジョン受像機の外観を示す正面図である。
図3】本発明の実施形態1に係るガンマカーブの一例を示すグラフである。
図4】本発明の実施形態1に係る映像信号の特性を示すグラフである。
図5】本発明の実施形態1に係る各映像信号に対するガンマカーブの一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態1〕
以下、本発明の実施形態1について、詳細に説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係るテレビジョン受像機(表示装置)100の信号処理の流れを示すブロック図である。図2は、本実施形態に係るテレビジョン受像機100の外観を示す正面図である。
【0012】
(テレビジョン受像機100の構成)
図1に示すように、テレビジョン受像機100は、入力切替回路1、信号レベル解析回路2、色空間変換回路3、NR(Noise Reduction)回路4、スケーラ回路5、アクティブコントラスト回路(ガンマカーブ決定部、輝度変換部)6、シャープネス回路7、色空間変換回路8、カラーLUT(Look Up Table)回路9、ガンマ・WB(White Balance)回路10、および、パネル表示部11を備えている。
【0013】
(各回路の機能概要)
入力切替回路1は、テレビジョン受像機100に設けられたHDMI(High-Definition Multimedia Interface、登録商標)1~4の外部入力端子、および、テレビジョン受像機100に内蔵されたチューナに接続される。そして、入力切替回路1は、各外部入力端子を通じて入力され、または、チューナを通じて受信された信号のうち、ユーザ操作により選択された入力信号に切り替える。
【0014】
信号レベル解析回路2は、入力信号の最小値と最大値、映像信号の入力輝度のヒストグラム、および、映像信号の映像方式(フォーマット)をフレーム毎に取得する。
【0015】
映像方式としては、例えば、上述したHDR方式およびSDR方式がある。また、HDR方式には、HLG(Hybrid Log Gamma)方式、および、PQ(Perceptual Quantization)方式の2つの方式がある。
【0016】
HLG方式の輝度の特性は、低階調から中間調において、SDR方式よりも広い階調特性を表示できるように、暗く表示させる特性となっている。また、PQ方式の輝度の特性は、低階調から中間調において、HLG方式よりも暗く表示させる特性となっている。画像の大半は低階調から中間調で構成されるため、多くの場合、ユーザにとって、HLG方式はSDR方式よりも暗く表示され、PQ方式はHLG方式よりも暗く表示される。
【0017】
なお、PQ方式の例としては、HDR10、HDR10+があげられる。
【0018】
色空間変換回路3は、フレーム毎に取得した情報に基づいて、入力信号を色差信号に変換する。NR回路4は、色差信号に含まれるノイズを除去する。スケーラ回路5は、色差信号をパネルの解像度に応じて見やすくなるようにサイズ調整を行う。
【0019】
アクティブコントラスト回路6は、入力画像の輝度である入力輝度に対する出力画像の輝度である出力輝度を表すガンマカーブを決定する。詳細には、アクティブコントラスト回路6は、信号レベル解析回路2が取得した、入力信号の最小値と最大値、映像信号の入力輝度のヒストグラム、および、映像信号のフォーマットを参照して、ガンマカーブを決定する。そして、アクティブコントラスト回路6は、自身が決定したガンマカーブに基づいて、入力画像の入力輝度を出力輝度に変換することにより出力画像を出力する。
【0020】
シャープネス回路7は、映像における各画像の輪郭や境界線を検出して強調するシャープネス処理を行う。色空間変換回路8は、色差信号をRGB信号に変換する。カラーLUT回路9は、RGB信号がパネルの色域に最適になるようにマッピングを行う。
【0021】
ガンマ・WB回路10は、ガンマ調整処理、および、WB調整処理を行う。ガンマ・WB回路10は、ガンマ調整処理として、パネルのガンマ特性に応じて出力輝度を調整する。ガンマ・WB回路10は、WB調整処理として、様々なシーンで自然な色合いになるように、映像における各画像の色を調整する。パネル表示部11は、画像を表示する。
【0022】
(アクティブコントラスト回路6が決定するガンマカーブの例)
図3は、本実施形態に係るアクティブコントラスト回路6が決定するガンマカーブの一例を示すグラフである。換言すると、図3は、本実施形態に係るアクティブコントラスト回路6の処理概要を示す図である。ガンマカーブは、入力画像の輝度である入力輝度に対する出力画像の輝度である出力輝度をX-Y座標系で表す曲線である。ガンマカーブのX軸の値は入力輝度(INPUT)であり、ガンマカーブのY軸の値は出力輝度(OUTPUT)である。図中、破線は、入力輝度と出力輝度とが変化しない参照ガンマカーブを示し、実線は、アクティブコントラスト回路6が決定するガンマカーブを示す。
【0023】
一態様において、アクティブコントラスト回路6は、カンマカーブ上に1以上のX座標に対応する基準点をそれぞれ設定し、各基準点のY座標を調整することにより、ガンマカーブを決定してもよい。以下では、ガンマカーブに、少なくとも、第1基準点P1、第2基準点P2、第3基準点P3、第4基準点P4および第5基準点P5を設定する場合について説明するが、本実施形態はこれに限定されず、設定する基準点の数は、特に限定されない。
【0024】
第1基準点P1は、低輝度領域にある点である。第2基準点P2は、高輝度領域にある点である。第3基準点P3は、第1基準点P1と、第2基準点P2との間の中輝度領域にある点である。第4基準点P4は、入力画像の最小輝度Yminまたは当該最小輝度Yminに近似する近似最小輝度に対応する点である。第5基準点P5は、入力画像の最大輝度Ymaxまたは当該最大輝度Ymaxに近似する近似最大輝度に対応する点である。なお、アクティブコントラスト回路6は、少なくとも第1基準点および第2基準点を設定することが好ましく、少なくとも第1基準点、第2基準点および第3基準点を設定することがより好ましい。
【0025】
(基準点の設定)
一態様において、アクティブコントラスト回路6は、入力輝度のヒストグラムに応じて各基準点を設定してもよい。まず、アクティブコントラスト回路6は、入力輝度に基づいて、入力輝度のヒストグラムを作成する。アクティブコントラスト回路6は、例えば、入力輝度が256階調を有する場合、入力輝度を32の階級(BIN)に等分して、各階級の画素数を度数として表す。階級は、この例に限定されず、入力輝度の階調数などに応じて適宜設定される。例えば、階級は、各階調ごとに設定されてもよい。
【0026】
そして、アクティブコントラスト回路6は、作成されたヒストグラムに基づいて、ガンマカーブを決定する主要点のそれぞれに対応する入力輝度を演算する。主要点は、少なくとも、入力輝度の低輝度領域にある第1基準点P1、入力輝度の高輝度領域にある第2基準点P2、および第1基準点P1と第2基準点P2との間にある第3基準点P3を含んでいる。
【0027】
具体的には、アクティブコントラスト回路6は、ヒストグラムの全てのBINの度数の総和に対する各BINの比率を最低のBINから順次加算していき、低輝度領域を規定する低輝度比率を超えたBINの度数などを含む所定の式を用いて第1基準点P1の入力輝度を演算する。また、アクティブコントラスト回路6は、ヒストグラムの全てのBINの度数の総和に対する各BINの比率を最高のBINから順次加算していき、高輝度領域を規定する高輝度比率を超えたBINの度数などを含む所定の式を用いて第2基準点P2の入力輝度を演算する。また、アクティブコントラスト回路6は、演算した第1基準点P1および第2基準点P2のそれぞれの入力輝度に基づいて、第3基準点P3の入力輝度を演算する。
【0028】
続いて、アクティブコントラスト回路6は、第1~第5基準点P1~P5の入力輝度に対応する第1~第5基準点P1~P5の出力輝度を演算し、各基準点を通るようにガンマカーブを決定する。
【0029】
(第1の演算)
一態様において、アクティブコントラスト回路6は、図3に示すように、第1基準点P1に関して、暗部の階調特性を保持した状態で暗い部分をさらに暗くするように、暫定の出力輝度を演算してもよい。また、アクティブコントラスト回路6は、第2基準点P2に関して、明部の階調特性を保持した状態で明るい部分をさらに明るくするように、暫定の出力輝度を演算してもよい。また、アクティブコントラスト回路6は、第3基準点P3に関して、中間階調の部分を明るくするように、暫定の出力輝度を演算してもよい。これらの暫定の出力輝度は、入力画像の映像方式によらずに決定される。なお、第1の演算を省略してもよい。
【0030】
(第2の演算)
続いて、アクティブコントラスト回路6は、第1の演算において演算した各基準点の暫定の出力輝度を、入力画像の映像方式に応じて調整することにより、各基準点の最終的な出力輝度を決定する。
【0031】
まず、前提となる各映像方式の特性について詳細に説明する。図4は、本実施形態に係る映像信号の特性を示すグラフである。各グラフのX軸の値は階調値であり、各グラフのY軸の値は意図される輝度である。
【0032】
テレビジョン受像機100に入力される映像信号は、SDR信号、HLG信号、PQ信号などの、様々なフォーマットの信号が存在する。図4に示すように、それぞれの信号によって、特性が異なる。例えば、HDR信号に含まれるHLG信号およびPQ信号に対応する、HLGカーブ、および、PQカーブに関しては、SDR信号に対応するSDRカーブに対して、階調値が0.0~0.6の間(すなわち、暗部)において、意図される輝度が低く抑制された特性になっている。
【0033】
すなわち、HDR信号は、SDR信号と比較して、明るさの幅(ダイナミックレンジ)が広い表示技術である。PQカーブおよびHLGカーブは、SDRカーブに比べて深くなっている。これにより、HDR信号においては、SDR信号で黒つぶれする(露光量が足りず、写真の暗い領域が真っ黒になっている)部分、および、白当たりする(当たっている光が多すぎて露出オーバーになると、その領域が真っ白になる)部分の何れの階調も犠牲にすることなく、より自然でリアルな描画が可能になる。
【0034】
このような特性を考慮して、本実施形態では、以下のようにガンマカーブを調整する。図5は、本実施形態に係る各映像信号に対するガンマカーブの一例を示すグラフである。
【0035】
アクティブコントラスト回路6は、入力画像の映像方式がHLG方式およびPQ方式(HDR方式)である場合には、当該入力画像の映像方式がSDR方式である場合よりも、入力輝度に対する出力輝度のゲインが大きくなるようにガンマカーブを決定する。
【0036】
図4に示すように、HLGカーブおよびPQカーブは、INPUTが0.0から0.6の暗部領域において、SDRカーブよりも深いカーブになっている。そこで、図5に示すように、アクティブコントラスト回路6は、入力画像の映像方式がHLG方式およびPQ方式(HDR方式)である場合には、当該入力画像の映像方式がSDR方式である場合よりも、特に、入力輝度の低輝度領域におけるゲインが大きくなるようにガンマカーブを決定する。
【0037】
次に、図4に示すように、PQカーブは、HLGカーブよりも深いカーブになっている。そこで、図5に示すように、アクティブコントラスト回路6は、入力画像の映像方式がPQ方式である場合には、当該入力画像の映像方式がHLG方式である場合よりも、特に、入力輝度の低輝度領域におけるゲインが大きくなるようにガンマカーブを決定する。
【0038】
実際には、アクティブコントラスト回路6は、ガンマカーブ上の入力輝度の低輝度領域にある第1基準点、ガンマカーブ上の入力輝度の高輝度領域にある第2基準点、および、ガンマカーブ上の第1基準点と第2基準点との間にある第3基準点の少なくとも一つに対応するゲインを入力画像の映像方式に応じて変化させる。
【0039】
例えば、図3の第1基準点P1および第3基準点P3において、各映像信号に対する輝度調整の大きさを、SDR信号<HLG信号<PQ信号としてもよい。
【0040】
すなわち、アクティブコントラスト回路6は、入力画像の映像方式がHLG方式およびPQ方式(HDR方式)である場合には、入力画像の映像方式がSDR方式である場合よりも、第1基準点P1および第3基準点P3のそれぞれに対応するゲインが大きくなるようにガンマカーブを決定してもよい。
【0041】
そして、図3の第2基準点P2において、各映像信号に対する輝度調整の大きさを、SDR信号<HLG信号、かつ、PQ信号<HLG信号としてもよい。
【0042】
すなわち、アクティブコントラスト回路6は、入力画像の映像方式がHLG方式である場合には、入力画像の映像方式がSDR方式およびPQ方式である場合よりも、第2基準点P2に対応するゲインが大きくなるようにガンマカーブを決定してもよい。
【0043】
(実施形態1の効果)
上記のように、各映像信号の特性に応じて、アクティブコントラストのパラメータを変更することにより、それぞれの映像信号に対して適切な処理を実施して、適切な画質の映像を供給することが可能になる。
【0044】
例えば、入力画像の映像方式がHLG方式の場合に、所定の階調のガンマカーブのゲインをSDR方式の場合のゲインより高くし、入力画像の映像方式がPQ方式の場合に、所定の階調のガンマカーブのゲインをHLG方式の場合のゲインより高くするので、入力画像の方式を切り替えたときの明るさの差を縮小でき、視聴者の感じる違和感を軽減することができる。
【0045】
(変形例1)
図3に示す基準点の設定方法は、必ずしも入力輝度のヒストグラムに基づかなくてもよい。例えば、予め定められた入力輝度に対応する基準点を設定してもよい。
【0046】
(変形例2)
上記では、基準点のY座標を調整することにより、ガンマカーブを決定したが、それ以外の方法でガンマカーブを調整してもよい。上述したように、ガンマカーブの低輝度領域、中輝度領域、高輝度領域に対する調整を行うことができればよい。
【0047】
(変形例3)
民間放送のBS4K放送の映像が暗く表示されるという問題がある。この対策として、民間放送のBS4K放送はHLG方式で送られることが多いので、高階調領域の輝度を上げている。
【0048】
すなわち、アクティブコントラスト回路6は、入力画像の映像方式がHLG方式である場合には、当該入力画像の映像方式がSDR方式およびPQ方式の何れかである場合よりも、入力輝度の高輝度領域におけるゲインが大きくなるようにガンマカーブを決定する。
【0049】
そして、HLGコンテンツについては、特に、民間放送のBS2K放送の映像をBS4K放送の映像に変換(色再現性の規格をBT.709からBT.2020に変換、映像方式をSDR方式からHLG方式に変換)した(すなわち、入力画像の映像方式が変換HLG方式である)場合に、映像が暗く見える問題があり、その対策として、低輝度領域および高輝度領域の輝度を上げている。ただし、低輝度領域に関しては、上述したように、入力画像の映像方式がHLG方式である場合には、SDR方式である場合よりも、輝度を上げている。
【0050】
すなわち、アクティブコントラスト回路6は、入力画像の映像方式がHLG方式である場合に、当該入力画像がスタンダードダイナミックレンジ方式の画像から変換されたものであるか否かを判定し、当該入力画像がスタンダードダイナミックレンジ方式の画像から変換されたものであると判定した場合に、当該入力画像の映像方式がスタンダードダイナミックレンジ方式およびPQ方式の何れかである場合よりも、入力輝度の高輝度領域におけるゲインが大きくなるようにガンマカーブを決定する。
【0051】
なお、アクティブコントラスト回路6は、信号レベル解析回路2からの輝度情報に基づいて、入力画像の映像方式が変換HLG方式であるか否かを判定する。具体的には、例えば、アクティブコントラスト回路6は、輝度情報において、輝度値の最大値が閾値以下であるか否かに基づいて、入力画像の映像方式が変換HLG方式であるか否かを判定する。例えば、アクティブコントラスト回路6は、輝度情報において、輝度値の最大値が閾値以下である場合、入力画像の映像方式が変換HLG方式であると判定する。例えば、アクティブコントラスト回路6は、輝度情報において、輝度値の最大値が閾値以下でない場合、入力画像の映像方式が変換HLG方式でないと判定する。
【0052】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る表示装置は、入力画像の輝度である入力輝度に対する出力画像の輝度である出力輝度を表すガンマカーブを決定するガンマカーブ決定部と、前記ガンマカーブに基づいて、前記入力画像の前記入力輝度を前記出力輝度に変換することにより前記出力画像を出力する輝度変換部と、を備え、前記ガンマカーブ決定部は、前記入力画像の映像方式がハイダイナミックレンジ方式である場合には、当該入力画像の映像方式がスタンダードダイナミックレンジ方式である場合よりも、前記入力輝度に対する前記出力輝度のゲインが大きくなるように前記ガンマカーブを決定する。
【0053】
前記の構成によれば、入力画像の映像方式をスタンダードダイナミックレンジ方式からハイダイナミックレンジ方式に切り替えたときに、ゲインが大きくなるようにガンマカーブを決定することにより、切り替え前後の明るさの差を縮小し、視聴者の違和感を低減することができる。
【0054】
本発明の態様2に係る表示装置は、上記態様1において、前記ガンマカーブ決定部が、前記入力画像の映像方式がハイダイナミックレンジ方式である場合には、当該入力画像の映像方式がスタンダードダイナミックレンジ方式である場合よりも、前記入力輝度の低輝度領域における前記ゲインが大きくなるように前記ガンマカーブを決定することとしてもよい。
【0055】
前記の構成によれば、ハイダイナミックレンジ方式は、スタンダードダイナミックレンジ方式と比較して、入力輝度の低輝度領域の特性が異なるので、低輝度領域におけるゲインが大きくなるようにガンマカーブを決定することにより、切り替え前後の明るさの差を縮小し、視聴者の違和感を低減することができる。
【0056】
本発明の態様3に係る表示装置は、上記態様1または2において、前記ガンマカーブ決定部が、前記入力画像の映像方式がPQ(Perceptual Quantization)方式である場合には、当該入力画像の映像方式がHLG(Hybrid Log Gamma)方式である場合よりも、前記入力輝度の低輝度領域における前記ゲインが大きくなるように前記ガンマカーブを決定することとしてもよい。
【0057】
前記の構成によれば、PQ方式は、HLG方式と比較して、入力輝度の低輝度領域の特性が異なるので、低輝度領域におけるゲインが大きくなるようにガンマカーブを決定することにより、スタンダードダイナミックレンジ方式からPQ方式への切り替え前後の明るさの差を縮小し、視聴者の違和感を低減することができる。
【0058】
本発明の態様4に係る表示装置は、上記態様1から3において、前記ガンマカーブ決定部が、前記入力画像の映像方式がHLG方式である場合には、当該入力画像の映像方式がスタンダードダイナミックレンジ方式およびPQ方式の何れかである場合よりも、前記入力輝度の高輝度領域における前記ゲインが大きくなるように前記ガンマカーブを決定することとしてもよい。
【0059】
前記の構成によれば、民間放送のBS4K放送はHLG方式で送られることが多いので、民間放送のBS4K放送の映像が暗く表示されるという問題を解決することができる。
【0060】
本発明の態様5に係る表示装置は、上記態様1から3において、前記ガンマカーブ決定部が、前記入力画像の映像方式がHLG方式である場合に、当該入力画像がスタンダードダイナミックレンジ方式の画像から変換されたものであるか否かを判定し、当該入力画像がスタンダードダイナミックレンジ方式の画像から変換されたものであると判定した場合に、当該入力画像の映像方式がスタンダードダイナミックレンジ方式およびPQ方式の何れかである場合よりも、前記入力輝度の高輝度領域における前記ゲインが大きくなるように前記ガンマカーブを決定することとしてもよい。
【0061】
前記の構成によれば、映像方式をSDR方式からHLG方式に変換した場合に、映像が暗く見える問題を解決することができる。
【0062】
本発明の態様6に係る表示装置は、上記態様1から5において、前記ガンマカーブ決定部は、前記ガンマカーブ上の前記入力輝度の低輝度領域にある第1基準点、前記ガンマカーブ上の前記入力輝度の高輝度領域にある第2基準点、および前記ガンマカーブ上の前記第1基準点と前記第2基準点との間にある第3基準点の少なくとも一つに対応する前記ゲインを前記入力画像の映像方式に応じて変化させることとしてもよい。
【0063】
前記の構成によれば、入力画像の映像方式に応じて、第1基準点、第2基準点、および、第3基準点の少なくとも一つに対応するゲインを変化させることにより、映像方式の特性に合わせた輝度調整を行うことができる。
【0064】
本発明の態様7に係る表示装置は、上記態様6において、前記ガンマカーブ決定部が、前記入力画像の映像方式がハイダイナミックレンジ方式である場合には、当該入力画像の映像方式がスタンダードダイナミックレンジ方式である場合よりも、前記第1基準点および前記第3基準点のそれぞれに対応する前記ゲインが大きくなるように前記ガンマカーブを決定することとしてもよい。
【0065】
前記の構成によれば、ハイダイナミックレンジ方式は、スタンダードダイナミックレンジ方式と比較して、第1基準点および第3基準点における特性が異なるので、第1基準点および第3基準点におけるゲインが大きくなるようにガンマカーブを決定することにより、入力画像の映像方式をスタンダードダイナミックレンジ方式からハイダイナミックレンジ方式に切り替える前後の明るさの差を縮小し、視聴者の違和感を低減することができる。
【0066】
本発明の態様8に係る表示装置は、上記態様1から7において、前記ガンマカーブ決定部が、前記入力輝度のヒストグラムを参照して、前記ガンマカーブを決定することとしてもよい。
【0067】
前記の構成によれば、入力輝度のヒストグラムを参照してガンマカーブを決定するので、精度よく輝度調整を行うことができる。
【0068】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0069】
6 アクティブコントラスト回路(ガンマカーブ決定部、輝度変換部)
100 テレビジョン受像機(表示装置)
P1 第1基準点
P2 第2基準点
P3 第3基準点
図1
図2
図3
図4
図5