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  • 特許-オイルミスト捕集装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】オイルミスト捕集装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 46/10 20060101AFI20240826BHJP
   B01D 45/08 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
B01D46/10 D
B01D46/10 E
B01D45/08 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020193318
(22)【出願日】2020-11-20
(65)【公開番号】P2022082023
(43)【公開日】2022-06-01
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】391009372
【氏名又は名称】ミドリ安全株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(72)【発明者】
【氏名】菊実 修
(72)【発明者】
【氏名】今田 隆平
(72)【発明者】
【氏名】森本 卓磨
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-075517(JP,A)
【文献】特開2013-022495(JP,A)
【文献】実開昭60-128915(JP,U)
【文献】実開昭64-044010(JP,U)
【文献】特開平04-354508(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0074460(US,A1)
【文献】特開2004-261753(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1433253(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 46/00-46/54
B01D 45/00-45/18
F24F 7/04-7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気口及び排気口を備えた密閉状の箱体部内に、回転ファン部を回転させて気流を発生すると共に、主捕集フィルタによりオイル分を捕集する主捕集部と、該主捕集部で捕集し切れなかったオイル分を捕集する副捕集部と、前記気流が所定の通路を経て通過するように区画された仕切板とを配置したオイルミスト捕集装置であって、
前記副捕集部の側方の前記仕切板の側面にオイル排出孔を設け、
該オイル排出孔は、前記通路において前記主捕集部の上流側であって前記吸気口に通ずる負圧室と、前記主捕集部の下流側であって前記排気口に通ずる陽圧室とを連通する孔であり、
下方から上方に発生する前記気流が、前記排気口を介して前記箱体部外に排出され、該排気口に前記副捕集部が水平状に配置されていることを特徴とするオイルミスト捕集装置。
【請求項2】
前記オイル排出孔は鉛直方向に沿った前記仕切板に対して、水平方向に、又は外側に向かうにつれて下降するように傾斜して、貫通していることを特徴とする請求項に記載のオイルミスト捕集装置。
【請求項3】
前記オイル排出孔は前記副捕集部の側方に前記仕切板の側面に、所定の間隔幅で複数個設けられていること特徴とする請求項1又は2に記載のオイルミスト捕集装置。
【請求項4】
前記気流の通過する空気量に応じて、前記オイル排出孔の径の大きさ又は前記オイル排出孔の配置間隔を調整すること特徴とする請求項に記載のオイルミスト捕集装置。
【請求項5】
前記副捕集部は、不織布から成る平面状のフィルタ部材であることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載のオイルミスト捕集装置。
【請求項6】
前記副捕集部は、前記排気口に前記水平状に配置した第1の副捕集部と、第1の副捕集部の上流側に配置した第2の副捕集部とから成り、
前記第2の副捕集部は一対の平行したバッフル板であり、
該バッフル板は等間隔に多数の縦スリットが配置されていることを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載のオイルミスト捕集装置。
【請求項7】
前記第2の副捕集部は正面から見た際に、上流側の前記バッフル板の前記縦スリットから下流側の前記バッフル板の前記縦スリット間の縦条部が見えるように前記バッフル板をずらして配置されていることを特徴とする請求項に記載のオイルミスト捕集装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場や作業所において発生する霧状のオイルミストからオイル分を除去するオイルミスト捕集装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、機械部品の製造工場などの金属加工業においては、金属等の切削、研削、鍛造時に、温度上昇を防止し、また切削性等を良好にするために、金属材の表面等に切削油を供給したり塗布したりしている。しかし、この作業に伴って、加工時にオイルや切削粉を含む霧状のオイルミストの発生が避けられない。
【0003】
このような環境において、オイルミストからオイル分を効率良く捕集する装置が従来から使用されている。例えば、特許文献1の図8には、上方に向かって排気される排気口を設け、この排気口に排気側フィルタを配置したオイルミスト除去装置が開示されている。
【0004】
そして、上方に流れる空気流に対して排気側フィルタを配置することで、捕集し切れなった空気流内のオイル分を捕集すると共に、オイル分が装置外に飛散し難い構造としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-199170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の図8に示すように、排気口に排気側フィルタからオイルが適宜に滴下することが好ましいが、実際は下方から上方に向かって空気流が常時発生しているため、オイル分の滴下がこの空気流によって阻害され、オイル分が排気側フィルタに残留することになる。
【0007】
従って、滴下するオイル量よりも排気側フィルタに残留するオイル量の方が多くなり、時間経過と共に徐々に排気側フィルタにオイル分が蓄積されてゆく。排気側フィルタにオイル分が蓄積され過ぎると、圧力損失の増大に伴い、排出効率が低下し、併せてオイル分の捕集効率も低下することになる。
【0008】
これらの排出効率、捕集効率を維持するために、定期的に排気側フィルタを清掃、交換する必要がある。或いは、オイルミスト除去装置の駆動部を停止することで、徐々に排気側フィルタから残留したオイル分が滴下するが、除去のためには時間を要する。
【0009】
本発明の目的は、上述の課題を解消し、主捕集部によって捕集し切れなかった気体中のオイルを副捕集部により、長時間に渡って効率良く捕集し続けることが可能なオイルミスト捕集装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係るオイルミスト捕集装置は、吸気口及び排気口を備えた密閉状の箱体部内に、回転ファン部を回転させて気流を発生すると共に、主捕集フィルタによりオイル分を捕集する主捕集部と、該主捕集部で捕集し切れなかったオイル分を捕集する副捕集部と、前記気流が所定の通路を経て通過するように区画された仕切板とを配置したオイルミスト捕集装置であって、前記副捕集部の側方の前記仕切板の側面にオイル排出孔を設け、該オイル排出孔は、前記通路において前記主捕集部の上流側であって前記吸気口に通ずる負圧室と、前記主捕集部の下流側であって前記排気口に通ずる陽圧室とを連通する孔であり、下方から上方に発生する前記気流が、前記排気口を介して前記箱体部外に排出され、該排気口に前記副捕集部が水平状に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るオイルミスト捕集装置によれば、副捕集部の側方の仕切板の側面にオイル排出孔を設けることで、主捕集部で捕集し切れなかったオイル分を副捕集部により捕集し、副捕集部で捕集したオイル分を陽圧室と負圧室との気圧差を利用して、陽圧室から負圧室に排出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】オイルミスト捕集装置の斜視図である。
図2】オイルミスト捕集装置の断面図である。
図3】捕集盤の斜視図である。
図4】陽圧室の断面図である。
図5】第2の副捕集部のバッフル板の正面図である。
図6】第2の副捕集部の作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1はオイルミスト捕集装置の斜視図であり、図2は断面図である。オイルミスト捕集装置は、霧状のオイルミストからオイル分を捕集する密閉状の箱体部10と、この箱体部10と連結した箱外部20とから構成されている。箱体部10には、オイルミストを吸入する円筒状の吸気口11と、オイルミストからオイル分を除去して排出する排気口12と、箱体部10内に吸入された気流K1が所定の通路を経て循環して通過するように区画された仕切板13とが設けられている。
【0014】
吸気口11と排気口12とは、箱体部10の天板14に配置されている。上方の吸気口11から下方に向けて、オイル分を含むオイルミストの気流K1が箱体部10内に吸入され、主捕集部30でオイル分が捕集され、仕切板13で仕切られた通路を通過する。そして、下方から上方に向く気流K2となって、副捕集部50で残留したオイル分が除去され、排気口12を介して箱体部10外に排出される。
【0015】
箱体部10の正面には、メンテナンス時に取り外し可能な開閉部15が設けられており、この開閉部15の下方にはオイル排出口17が設けられている。箱体部10内に滴下したオイル分は、傾斜した底面板16を介して、オイル排出口17近傍に溜まることになる。オイル排出口17には図示しない配管に液封が施され、逆流を防止することで、底面板16に溜まったオイル分を外部に排出可能とされている。
【0016】
箱体部10の背面側には、箱体部10を支持する基台部21が配置され、基台部21上にモータ等の駆動部22が配置され、基台部21内には駆動部を作動する電源部等が内蔵されている。
【0017】
箱体部10内の中央には主捕集部30が配置され、この主捕集部30は、円盤状の捕集盤31と、回転ファン部32とから構成され、捕集盤31、回転ファン部32は水平方向を向く駆動部22の回転軸33により回転するようにされている。
【0018】
図3は捕集盤31の斜視図であり、捕集盤31には周囲に複数個の金属製の枠部34が設けられ、この枠部34に網状の主捕集フィルタ35が固定されている。駆動部22の駆動により回転軸33が回転し、この回転軸33により捕集盤31、回転ファン部32が共に回転するようにされている。
【0019】
また、箱体部10内の仕切板13により区画された通路は、回転ファン部32により負圧とされ、回転ファン部32の上流側であって吸気口11に通ずる負圧室40と、回転ファン部32により陽圧とされ、回転ファン部32の下流側であって排気口12に通ずる陽圧室41とに区分される。
【0020】
図4は陽圧室41の断面図であり、陽圧室41には、主捕集部30で捕集し切れなかった気流K2内のオイル分を捕集する副捕集部50が配置されている。副捕集部50は、箱体部10の排気口12の直前に水平方向に設置された第1の副捕集部51と、この第1の副捕集部51の上流側に鉛直方向に設置された第2の副捕集部52とから構成され、第1の副捕集部51、第2の副捕集部52は気流K2の流れに沿って順に配列されている。
【0021】
第1の副捕集部51は不織布等から成る平板状のフィルタ材から成り、フィルタ材は箱体部10の上面近傍の仕切板13の段部13aに固定された金網19上に水平状に載置されている。側面L字状をした段部13aは、フィルタ材の周囲の鉛直方向に沿った側面13bと、これらの側面13bと直交する水平方向に沿った水平面13cとから成り、水平面13cにより金網19が固定されている。
【0022】
負圧室40に面する側面13bの下方部には、所定の間隔幅で、直径数mm程度で略円形の複数個のオイル排出孔13dが水平方向に貫通して設けられている。また、これらのオイル排出孔13dは、オイルの排出性を向上させるために外側に向かうにつれて下降するように傾斜した貫通孔を用いてもよい。
【0023】
更には、オイル排出孔13dを側面13bに設けること以外に、水平面13cの負圧室40に面する位置に下方向に向けて設けることもできる。これらのオイル排出孔13dによって、負圧室40及び陽圧室41が連通することになる。
【0024】
また、オイル排出孔13dは第1の副捕集部51を通過する空気量に応じて、径の大きさや配置間隔を調整することができる。例えば、図4においては陽圧室41内を水平方向に流れる気流K2は、仕切板13の奥壁に突き当たって上方に向かうため、下流の奥壁側の方が通過する気流K2の量が多くなる。従って、気流K2の下流側のオイル排出孔13dを、上流側のオイル排出孔13dよりも孔径の大きさを大きくしたり、或いは下流側のオイル排出孔13d同士の配置間隔を上流側よりも狭くすることが好適である。
【0025】
第2の副捕集部52は、2枚の平行するバッフル板52a、52bから成り、図5に示すように、各バッフル板52a、52bには多数の縦スリット52cが等間隔に配置されている。上流側のバッフル板52aの縦スリット52cを介して、下流側のバッフル板52bの縦スリット52c間の縦条部52dが見えるように、同形状のバッフル板52a、52bは左右に縦スリット52cを1個分ずらした状態で配置されている。
【0026】
また、第2の副捕集部52の負圧室40と陽圧室41とを区分する仕切板13の側面13eにも、所定の間隔幅で複数個の直径3mm程度のオイル排出孔13fがバッフル板52a、52b間に沿って設けられている。なお、気流K2が通過する空気量が多い内部側のオイル排出孔13fの孔径を、外部側のオイル排出孔13fよりも大きくしてもよい。
【0027】
第2の副捕集部52では、オイルミスト捕集装置の排出量を阻害しない範囲内で、更にバッフル板52a、52bの枚数を重ねることもできる。また、一対のバッフル板52a、52bに代えて、不織布等から成るフィルタ材を配置してもよい。
【0028】
オイルミスト捕集装置の稼動に際して、駆動部22を駆動させると、回転軸33を介して捕集盤31、回転ファン部32が高速回転を開始する。そして、回転ファン部32の回転により生じた圧力差によって、オイル分を含む気体が、吸気口11から箱体部10内で気流K1となって、矢印に示すように上方から下方に向けて吸引され、主捕集部30の前面から後面に向かう。
【0029】
このオイル分を含む気流K1は、例えば3000rpmの速度で回転する捕集盤31を通過する際に、主捕集フィルタ35に衝突した気流K1中のオイル分は、主捕集フィルタ35に付着して捕集される。そして、捕集盤31を通過した気流K1は、回転ファン部32の回転によって矢印に示す気流K2となって、仕切板13による通路を通り副捕集部50に向かう。
【0030】
なお、図示の矢印のうちで、黒矢印は吸気口11から吸引されたオイルミストを含む気流K1を示し、白矢印は主捕集部30によってオイル分を捕集、除去された気流K2を示し、この気流K2には主捕集部30で捕集し切れなかったオイル分を含んでいる。
【0031】
回転ファン部32の回転によって上方に向かう気流K2は、水平に方向を変えて、副捕集部50の第2の副捕集部52を通過する。この過程で、図6に示すように、上流側のバッフル板52aの縦スリット52cを通過した気流K2は、下流側のバッフル板52bの縦条部52dに衝突する。この衝突により気流K2の速度が低下して、気流K2内に含まれるオイル分の一部が縦条部52dに付着し、このオイル分は縦条部52dを伝わり下方のオイル排出孔13fに至る。そして、陽圧室41と負圧室40との圧力差及び重力により、オイル分は図4の矢印方向に示すように、オイル排出孔13fから負圧室40内に押し出されて、底面板16に落下する。
【0032】
このようにして、第2の副捕集部52を通過した水平方向の気流K2は、更に上方に方向を変えて、第1の副捕集部51に向かう。気流K2は金網19を通り、第1の副捕集部51のフィルタ材でオイル分が捕集され、オイル分が除去された気流K2は上方の排気口12から箱体部10外に排出される。第1の副捕集部51内で捕集されたオイル分は、陽圧室41と負圧室40との圧力差によって、図4の矢印方向に示すようにオイル排出孔13dから負圧室40内に押し出されて、下方の底面板16に落下する。
【0033】
第1、第2の副捕集部51、52を気流K2が通過する過程で、オイル排出孔13d、13fにおいて陽圧室41から負圧室40に流れる若干の気流が発生するが、オイル排出孔13d、13fの孔径は数mm程度なので、箱体部10の吸排気量に比べて微少であり、オイルミスト捕集装置のオイルの捕集効率を低下させることはない。
【0034】
オイルの排出性を向上させるため、オイル排出孔13fへオイルが向かうように、側面13eに傾斜を設けることも可能である。
【0035】
オイルミスト捕集装置の運用時間の経過と共に、第1の副捕集部51のフィルタ材にはオイル分以外にも粉塵等が蓄積されるため、定期的に掃除、交換が必要ではある。しかし、従来のフィルタ部に比べて、オイル分の残留が少なく、排気効率を著しく低下することがないので、長期間に渡ってメンテナンスを要とせずに運用することが可能である。
【0036】
このように本実施例のオイルミスト捕集装置によれば、副捕集部50の側方の仕切板13の側面にオイル排出孔13d、13fを設けることで、主捕集部30で捕集し切れなかったオイル分を副捕集部50により捕集し、副捕集部50で捕集したオイル分を陽圧室41と負圧室40との気圧差を利用して、陽圧室41から負圧室40に排出させることができる。
【符号の説明】
【0037】
10 箱体部
11 吸気口
12 排気口
13 仕切板
13b、13e 側面
13d、13f オイル排出孔
30 主捕集部
32 回転ファン部
35 主捕集フィルタ
40 負圧室
41 陽圧室
50 副捕集部
51 第1の副捕集部
52 第2の副捕集部
52a、52b バッフル板
52c 縦スリット
52d 縦条部
K1、K2 気流
図1
図2
図3
図4
図5
図6