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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】電源装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20240826BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240826BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
H02M3/28 Z
G03G21/00 398
G03G15/00 680
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020197070
(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公開番号】P2022085405
(43)【公開日】2022-06-08
【審査請求日】2023-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】平林 純
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-324027(JP,A)
【文献】特開2002-290085(JP,A)
【文献】特開2019-013077(JP,A)
【文献】米国特許第04695924(US,A)
【文献】特開2013-246398(JP,A)
【文献】国際公開第2016/143527(WO,A1)
【文献】特開2015-208075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
G03G 21/00
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次巻線と二次巻線を備え、前記一次巻線に入力された電圧に応じて前記二次巻線に電圧を出力するトランスを有する電源装置において、
前記電源装置の熱を放出するためのヒートシンクと、
前記トランスの一次側回路と二次側回路を同じ平面上に備え、前記一次側回路の領域において前記ヒートシンクと接触して、前記ヒートシンクを支持する基板と、を有し、
前記ヒートシンクは前記基板と接触する位置から前記基板の表面に対して突出する方向にのびた突出部と、前記基板から離れた状態で前記突出部の一部から前記トランスの二次側回路の領域にのびた進入部と、を含み、
前記基板の表面と垂直な方向から見たとき、前記進入部は前記二次側回路の領域に進入しており、前記進入部と前記基板の表面の間の距離は少なくとも1mmより長く離れていることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
外部電源から供給された交流を直流に変換する整流平滑回路と、
前記整流平滑回路から出力される直流を前記一次巻線に供給するか否かを切り替えるスイッチング素子を有し、
前記スイッチング素子は前記ヒートシンクの前記突出部と接触していることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記二次側回路の領域に電子部品が設けられている場合、前記進入部と前記電子部品の間の距離は少なくとも1mmより長く離れていることを特徴とする請求項1または2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記基板の前記一次側回路と前記二次側回路の間には1mmより大きいサイズのスリットが設けられており、前記進入部は前記スリットをまたいで前記二次側回路の領域に進入していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項5】
記録材に画像を形成する画像形成手段と、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電源装置と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記基板の表面が水平面に対して垂直となるような向きで前記電源装置が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記基板において前記一次側回路よりも鉛直方向の上側に前記二次側回路が設けられており、前記ヒートシンクの前記進入部は鉛直方向の上側に向かってのびていることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記画像形成手段は、感光ドラムの表面を帯電する帯電手段と、感光ドラムをトナーで現像する現像手段と、前記感光ドラムに形成されたトナー像を記録材に転写する転写手段と、を含み、
前記二次側回路から前記帯電手段、前記現像手段、前記転写手段それぞれに対して電力が供給されることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱を放出するためのヒートシンクを有する電源装置及びその電源装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーザプリンタ等の画像形成装置には、商用交流電源を整流・平滑して直流電源に変換する電源装置が用いられている。直流用の電源装置の一種としてのスイッチング電源装置では、整流・平滑化した直流電源をトランスに入力してスイッチングさせ、所望の出力を得ている。スイッチング電源装置の方式としては、フライバック方式、フォワード方式、電流共振方式等がある。これらのスイッチング電源装置では、主にスイッチング素子から発生する熱を放出するために基板上にヒートシンクが設けられている。
【0003】
特許文献1には、低圧電源回路と高圧電源回路を連結させて1枚とした電源基板と、主制御回路を含む制御基板を重ねて配置する構成が記載されている。電源基板と制御基板の間のスペースには電気放射ノイズを防ぐためのシールド板が設けられており、低圧電源回路や高圧電源回路から発生した電気放射ノイズが主制御回路の動作に影響を及ぼさないようにしている。低圧電源回路にはヒートシンクが設けられており、このヒートシンクをシールド板と接続させることによって、シールド板もヒートシンクとして機能するように構成している。これにより、スイッチング素子などの電子部品の放熱効率を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-246398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1に記載された構成は電源基板と制御基板を重ねて配置する場合には有効であるが、例えば制御基板を別の位置に配置するなどしてシールド板が不要となった場合には適用できない。シールド板を設けることなく電子部品の放熱効率を向上させるためには、単純にヒートシンクのサイズを大きくすることが考えられる。
【0006】
一方、低圧電源回路においてヒートシンクはスイッチング素子の近くの位置、つまりトランスの一次側回路に設けられていることが多い。トランスを介して一次側回路と二次側回路は絶縁されているため、一次側回路に設けられたヒートシンクを二次側回路の領域に進入させることはできない。そのため、ヒートシンクのサイズを大きくする場合には、ヒートシンクが一次側回路の領域内に収まるように回路構成を工夫する必要があり、収まらない場合には一次側回路の領域を増やすため基板の面積を大きくする必要があった。
【0007】
本発明の目的は、基板の面積を大きくすることなく、ヒートシンクのサイズアップを実現し、電子部品の放熱効率を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の電源装置は、一次巻線と二次巻線を備え、前記一次巻線に入力された電圧に応じて前記二次巻線に電圧を出力するトランスを有する電源装置において、前記電源装置の熱を放出するためのヒートシンクと、前記トランスの一次側回路と二次側回路を同じ平面上に備え、前記一次側回路の領域において前記ヒートシンクと接触して、前記ヒートシンクを支持する基板と、を有し、前記ヒートシンクは前記基板と接触する位置から前記基板の表面に対して突出する方向にのびた突出部と、前記基板から離れた状態で前記突出部の一部から前記トランスの二次側回路の領域にのびた進入部と、を含み、前記基板の表面と垂直な方向から見たとき、前記進入部は前記二次側回路の領域に進入しており、前記進入部と前記基板の表面の間の距離は少なくとも1mmより長く離れていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基板の面積を大きくすることなく、ヒートシンクのサイズアップを実現し、電子部品の放熱効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】画像形成装置の断面図である。
図2】電源装置の回路構成図である。
図3】画像形成装置の上面図である。
図4】比較例の構成を説明するための図である。
図5】実施例の構成を説明するための図である。
図6】変形例1の構成を説明するための図である。
図7】変形例2の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施例1>
[画像形成装置の構成]
本実施例における画像形成装置100の構成について説明する。本実施例の画像形成装置100は、電子写真プロセスを用いたモノクロレーザプリンタであり、パーソナルコンピュータなどの外部機器から送信された画像情報に応じて、記録材である紙Pにトナー(現像剤)による画像を形成するものである。
【0012】
以下の説明において、画像形成装置100が水平な面に設置された場合における画像形成装置100の高さ方向(鉛直方向とは反対の方向)をZ方向とする。Z方向と交差し、後述する感光ドラム105の軸線方向(主走査方向)と平行な方向をY方向とする。Y方向及びZ方向と交差する方向をX方向とする。X方向、Y方向、Z方向は、好ましくは互いに垂直に交差する。また便宜上、X方向においてプラス側を前側または正面側、マイナス側を後側または背面側と呼び、Y方向においてプラス側を右側、マイナス側を左側と呼び、Z方向においてプラス側を上側、マイナス側を下側と呼ぶ。
【0013】
図1は画像形成装置100の断面図である。図1において、101は印刷対象の紙Pを格納しておく給紙部であり、内部には紙Pが積載されている。102はレーザスキャナ、103はトナータンクで磁性体トナーが入っている。104は現像ローラ、105は感光ドラム、106は転写ローラ、107は帯電ローラ、108は廃トナータンク、109は定着ローラ、110は加圧ローラである。111は排紙部、112は紙Pの搬送経路、113はレーザスキャナ102から照射されるレーザ光、114は現像ローラ104上のトナー量を規制する現像ブレード、115は給紙ローラである。
【0014】
[画像形成装置の動作]
続いて画像形成装置100の動作説明を行う。まず、印刷ジョブを受信すると各ローラとレーザスキャナ102が動作を開始する。感光ドラム105は図1の矢印方向に回転を開始する。帯電ローラ107は後述する電源装置200からの給電を受け負の高電圧を発生させ、感光ドラム105の表面を帯電させる。外部機器から画像信号が送られてくると、それに伴いレーザスキャナ102がレーザを画素に応じて点滅させながら走査する。帯電された感光ドラム105の表面において、レーザ光113が当たった部分は電荷が消滅し、感光ドラム105に静電潜像が形成される。
【0015】
現像ローラ104には負の高圧が供給されており、さらに中には磁石が入っている。現像ローラ104はトナータンク103内の磁性体トナーを磁力によって引き寄せ、感光ドラム105の静電潜像をトナーによって現像する。また、現像ブレード114には現像ローラ104に対して数百V程度の電位差がつけられており、ブレード本体による物理的な規制と共に静電気力によっても現像ローラ104上のトナーは一様にコーティングされる。
【0016】
一方、給紙ローラ115によって給紙部101から給紙された紙Pは搬送経路112を通り、転写ローラ106と感光ドラム105によって形成される転写ニップへと搬送される。この時に転写ローラ106には正の高圧が印可されており、感光ドラム105に形成されたトナー像が転写ローラ106に引かれる形で紙Pに転写される。
【0017】
トナー像が転写された紙Pは排紙部111に向かって搬送され、定着ローラ109と加圧ローラ110によって形成される定着ニップへと搬送される。定着ニップにおいて紙Pは定着ローラ109によって数百度に加熱されると同時に、加圧ローラ110によって圧迫されることで、静電気力によってのみ紙Pに載っていたトナー像が定着される。トナー像が定着された紙Pは排紙部111へと排出され、順次積載されていく。
【0018】
一方、感光ドラム105の表面には紙Pへの転写が行われた後も若干トナーが残る。理想的には全てのトナーが紙Pへ転写されるべきであるが、実際にはトナーの持つ電荷量が一様ではないことから転写後も感光ドラム105上に残るトナーがある。廃トナータンク108はその残ってしまったトナーを感光ドラム105に接触させたブレードによって剥ぎ取り回収する場所である。それによって感光ドラム105上からはトナーがなくなり、再び帯電ローラ107によって帯電され、レーザスキャナ102によって次の静電潜像が描かれることになる。以上の動作を繰り返しながら画像形成装置100は紙Pに画像を形成する。
【0019】
[電源装置の回路構成]
図2は、画像形成装置100に搭載された電源装置200の回路構成図である。上述した通り、画像形成装置100の動作プロセスの中では様々な電圧が使用される。電源装置200は外部電源から供給される交流を直流に変換し、これら様々な電圧を出力するために用いられる。図2に示す通り、電源装置200は、回路部(一次側回路)22と回路部(二次側回路)23とを有している。回路部22と回路部23は、1枚のプリント基板24により構成され、同じ平面上に存在している。
【0020】
回路部22は、インレット21、ヒューズ201、フィルタ回路202、整流回路(一次側整流回路)203、電解コンデンサ204、スイッチング素子(スイッチングFET)206、制御回路207を有している。回路部23は、整流回路(二次側整流回路)208、検出回路210を有している。電源装置200は、トランス205も有している。トランス205の一次巻線205aは回路部22に属し、二次巻線205bは回路部23に属するが、トランス205は素子全体としては、回路部22に含まれるものとする。
【0021】
電源装置200に商用交流電源20が接続され、インレット21を介して電力が供給されるようになっている。電源装置200に供給された電力は、ヒューズ201、フィルタ回路202を経由して整流回路203に到達する。整流回路203は、例えば四つのダイオードによるダイオードブリッジ回路である。商用交流電源20の正弦波形である交流の入力電流が整流回路203によって整流されて脈流波形となる。脈流波形を呈する入力電流は、電解コンデンサ204によって平滑化される。つまり、本実施例において電解コンデンサ204は一次平滑コンデンサとして機能する。整流回路203と電解コンデンサ204はともに整流平滑回路を構成する。
【0022】
平滑化された入力電圧の電圧値は、交流の入力電圧の正弦波形でのピーク電圧値に近い値となる。平滑化された入力電圧は、プラス端子203aよりトランス205に入力され、電流はスイッチング素子206を介してマイナス端子203bへと帰還する。スイッチング素子206のオンオフのタイミングは、制御回路207によって制御されている。制御回路207の電源電力はトランス205で生成されている。
【0023】
トランス205の二次巻線205bには、整流回路208が接続されている。トランス205によって電圧変換された電力は整流回路208へと至り、整流回路208で所定の電圧値に整流・平滑化され、電源装置200の外部の負荷209へと出力される。整流回路208の出力側端子は、検出回路210に接続されており、整流回路208の出力電圧値が検出回路210にも入力されるようになっている。検出回路210での検出値(整流回路208の出力電圧値)は、制御回路207へと入力される。検出回路210側(二次側回路部23側)と制御回路207側(一次側回路部22側)との間の絶縁を確保するために、例えばフォトカプラ等の絶縁素子を介して検出回路210と制御回路207とが接続される。制御回路207に入力された検出回路210での検出値に基づき、制御回路207は、スイッチング素子206のオンオフのタイミングを決定する。
【0024】
[電子部品の配置構成]
図3は電源装置200に設けられた複数の電子部品の配置構成を示しており、プリント基板24の表面に対して垂直な方向から電源装置200を見たときの図である。図3では比較的サイズの大きい電子部品だけを図示している。また、本実施例の電源装置200は図2を用いて説明した低圧電源回路だけでなく、低圧電源回路から出力された直流をさらに高圧させ、各種バイアスを生成する高圧電源回路を同一基板上に備えている。なお、低圧電源回路と高圧電源回路は必ずしも同一基板上に形成しなくてもよい。電源装置200はプリント基板24の表面が水平面に対して垂直となるような向きに配置されており(いわゆる縦置き)、本実施例においては図3に示すようにプリント基板24の表面はXZ面と平行な関係となっている。
【0025】
図3において、図2で説明した電子部品と同じものには同じ符号をつけており、ここでの説明は省略する。301はヒートシンクであり、装着された部品から発生した熱を放出するために設けられている。図4(a)にヒートシンク301の斜視図を示す。スイッチング素子206は発熱しやすいため、図4(a)に記載されたようにスイッチング素子206をヒートシンク301に接触させ、放熱効率を向上させている。また、本実施例では図4(a)に記載した通り、鉄板を折り曲げて形成したヒートシンク301を採用しているが、図4(b)に記載されたフィン形状のヒートシンク302を採用してもよい。
【0026】
図3において、311はラインフィルタ、312はXコンデンサであり、ノイズを除去するために設けられている。ラインフィルタ311とXコンデンサ312はフィルタ回路202を構成する。304はトランス205を介して二次側に設けられたヒートシンク、305はダイオード、306は平滑コンデンサである。ダイオード305は熱を発生しやすいので、ヒートシンク304に直接取り付けられている。ダイオード305と平滑コンデンサ306は整流回路208を構成する。
【0027】
上述した通り、電源装置200は低圧電源回路だけでなく、高圧電源回路も含まれているため、帯電、現像、転写などのプロセス部材に高いバイアスを印加するための高圧トランス307がさらに設けられている。303はコネクタであり、束線によって様々な部材と接続されている。315の破線で示す部分にはプリント基板24の背面にチップ部品による制御回路が形成されている。308はプリント基板24に設けられたスリットである。
【0028】
ここで、本実施例の電源装置200はトランス205によって一次側と二次側に電気的に分離されている。図3においては点線を境に一次側領域(Primary)と二次側領域(Secondary)に分かれている。一次側領域と二次側領域の間は、規格で定められた空間距離や沿面距離を確保しなければならない。規格は国際規格であるIECを基準として、各国が定めている。代表的なものとして日本のJISや北米のULなどがある。
【0029】
空間距離とは2点間を結ぶ最短距離であり、沿面距離は物の表面(例えばプリント基板24の表面)に沿って2点間を結ぶ最短経路の距離のことである。ここで特に「空間」というものは1mmより大きいスリットがある場合にのみ「空間」と見なせるとして定義されており、1mm以下であればそれは実際には0.9mmのスリットが形成されていたしても、規格上はつながっているものと見なされる。逆に言えば、1.1mmでもスリットが形成されていればそれは「空間」、つまり物理的に離れていると見なすことができる。
【0030】
沿面距離の場合もこの考え方を応用して、一次側領域と二次側領域の間に1mmより大きいスリット308を設けることで、図3に示すように一次側領域と二次側領域を隣接して配置することができる。つまり、一次側領域に設けられた電解コンデンサ204やヒートシンク301と、二次側領域に設けられたチップ部品315が近い位置にある場合、間にスリット308を設けることで規格をクリアできる。このようにスリット308を入れることにより、プリント基板24の表面に沿って2点間を結ぼうとするとスリット308を迂回する必要があるため、沿面距離を長くすることができる。
【0031】
[ヒートシンクの構成]
図3においてヒートシンク301は一次側領域におさまっているが、さらに放熱効率を向上させるためにヒートシンク301のサイズを大きくしようとしても、Z方向において一次側領域にヒートシンク301を拡張できるスペースは残っていない。熱は上方へ向かう特性があることから、ヒートシンク301をX方向またはY方向に拡張させるよりもZ方向に拡張させることが望ましい。
【0032】
詳しくは後述するが、実際にヒートシンク301の熱の分布を調べると、Z方向において下側の位置よりも上側の位置の方が熱いことが確認されている。そのため、ヒートシンク301の形状としては発熱体であるスイッチング素子206よりもZ方向において上側の部分を大きくしたい。しかし、回路パターンの都合でスイッチング素子206の位置は簡単に動かせないことが多く、さらにヒートシンク301よりも上側にはスリット308が形成されているため、ヒートシンク301を拡張することができなかった。
【0033】
図5は上述した課題を解決するための本実施例のヒートシンク401の構成を示す斜視図である。図5はプリント基板24の一部、ヒートシンク401の周辺の部材のみを抜き出して図示している。本実施例のヒートシンク401はプリント基板24と接触する位置からプリント基板24の表面に対して突出する方向(Y軸マイナス方向)にのびた突出部401aと、プリント基板24から離れた状態で突出部401aの一部から二次側領域にのびた進入部401bを備えている。
【0034】
ヒートシンク401は突出部401aにおいてプリント基板24の一次側領域と接触し、プリント基板24によって支持されている。また、進入部401bはZ軸プラス方向に向かってのび、スリット308をまたいで二次側領域に進入している。進入部401bはプリント基板24とは接触しておらず、規格を満たすようにプリント基板24の表面に対して距離が保たれている。具体的には、進入部401bをプリント基板24の表面に対して射影した位置501と進入部401bの端部の間のZ方向における距離L1は1mmより長く離れている。
【0035】
1mmより長い距離L1を設けたことで、安全規格上「空間」と見なすことができ、この方法であれば二次側回路の上空に進出しても二次側回路に対して絶縁がとれていることになる。さらに、発熱源であるスイッチング素子206より上側(Z軸プラス側)のヒートシンク401の面積が広がったことにより、放熱効果が大幅に高まる。
【0036】
図6は比較例と本実施例の放熱効果の違いを示す実験結果である。図6(a)は比較例のヒートシンク301の構成を示しており、図6(b)は本実施例のヒートシンク401の構成を示している。図6(c)は実験で測定したヒートシンク301、401の各部の温度をまとめた表である。
【0037】
実験は電源装置200を画像形成装置100に取り付けられた状態で行われた。そして、低圧電源回路から一定の電流を引いて、発熱源(スイッチング素子206)の飽和温度と、その時のヒートシンク301、401各部の温度を測定した。図6(c)に記載されている通り、比較例の構成において上側(Z軸プラス側)に向かうほど測定温度が高くなっていることがわかる。図6(a)の構成においては、温度測定点4の温度が66.4度に対し、温度測定点1の温度が77.6度である。
【0038】
発熱源(スイッチング素子206)の温度を測定すると、図6(a)の構成においては温度測定点2の温度が82.9度であり、図6(b)の構成においては温度測定点3の温度が79度である。つまり、比較例に比べてスイッチング素子206の温度を約4度下げることができた。これは発熱源よりも上側のヒートシンク401の面積が拡大したことにより、放熱効率が高くなったためと考えられる。
【0039】
また、図6(b)の構成は図6(a)に記載された構成の下部折り曲げ部を、ストレートにして上側にのばしたものであり、使用している材料の量は変わらない。つまり、コストアップなしに放熱効率を高めることができたわけである。
【0040】
以上より、本実施例によれば、基板の面積を大きくすることなく、ヒートシンクのサイズアップを実現し、電子部品の放熱効率を向上させることができる。
【0041】
なお、上記の実施例においては、進入部401bをプリント基板24の表面に対して射影した位置501に電子部品が搭載されていない例について説明を行った。しかし、これに限定されない。図7に示すように、この位置にリード抵抗器502などの電子部品が設けられていてもよい。なお、電子部品としてはこれに限らず、ダイオード、コンデンサ、ジャンパー線などであってもよい。
【0042】
図7に示すように進入部401bがリード抵抗器502と交差する場合、進入部401bの端部はそれらの外形から1mmより長い距離をとる必要がある。具体的には、リード抵抗器502の外形と進入部401bの端部の間のYZ平面における距離L2は1mmより長く離れている。
【0043】
また、上記の実施例においてはヒートシンク401の形状をZ方向にのびたストレート形状としたが、これに限定されない。図6(a)に示す折り曲げ部を備えたうえで、二次側回路に進入する進入部401bを備えた構成であってもよい。図6(a)の折り曲げ部を設けることで、ヒートシンク401がプリント基板24上で安定して支持される。
【符号の説明】
【0044】
24 プリント基板
100 画像形成装置
200 電源装置
205 トランス
401 ヒートシンク
401a 突出部
401b 進入部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7