(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B61L 25/02 20060101AFI20240826BHJP
G01B 11/04 20060101ALI20240826BHJP
G01H 17/00 20060101ALI20240826BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20240826BHJP
【FI】
B61L25/02 G
G01B11/04 101Z
G01H17/00 Z
G01M99/00 Z
(21)【出願番号】P 2020200918
(22)【出願日】2020-12-03
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591280197
【氏名又は名称】株式会社構造計画研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【氏名又は名称】鈴木 均
(74)【代理人】
【識別番号】100149892
【氏名又は名称】小川 弥生
(74)【代理人】
【識別番号】100185672
【氏名又は名称】池田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】北村 知
(72)【発明者】
【氏名】岡田 明正
(72)【発明者】
【氏名】矢部 明人
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-522197(JP,A)
【文献】特表2019-529952(JP,A)
【文献】特開2018-114790(JP,A)
【文献】特表2018-504603(JP,A)
【文献】特開平11-059418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 1/00 - 99/00
G01B 11/04
G01H 17/00
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車が走行する軌道に沿って設けられ、前記軌道の特定領域における振動に応じた光信号を生成する光ケーブルと、前記光信号が入力される情報処理装置とを具備する情報処理システムであって、
前記情報処理装置は、
各期間における前記振動を示す振動情報を前記光信号から作成する情報作成部と、
周波数が特定範囲外の周波数成分を前記振動情報が示す前記振動から除去する特定フィルタ部と、
前記特定フィルタ部により前記周波数成分が除去された前記振動の強度が予め定められた閾値以上である期間を含む所定期間を特定する期間特定部と
、
周波数が前記特定範囲とは相違する所定範囲外の周波数成分を前記振動情報が示す前記振動から除去する所定フィルタ部と、
前記列車が前記特定領域に進入した進入時点または前記列車が前記特定領域から退出した退出時点を、前記所定フィルタ部により周波数成分が除去された前記所定期間における前記振動から推定する時点推定部と、を具備する
情報処理システム。
【請求項2】
前記所定範囲は、前記特定範囲より広い
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
列車が走行する軌道に沿って設けられ、前記軌道の特定領域における振動に応じた光信号を生成する光ケーブルと、前記光信号が入力される情報処理装置とを具備する情報処理システムであって、
前記情報処理装置は、
各期間における前記振動を示す振動情報を前記光信号から作成する情報作成部と、
周波数が特定範囲外の周波数成分を前記振動情報が示す前記振動から除去する特定フィルタ部と、
前記特定フィルタ部により前記周波数成分が除去された前記振動の強度が予め定められた閾値以上である期間を含む所定期間を特定する期間特定部と、を具備し、
前記特定領域は、第1特定領域と前記第1特定領域より前記列車の進行方向側に位置する第2特定領域とを含み、
前記期間特定部は、前記第1特定領域における振動の強度が予め定められた閾値以上である期間を含む期間を第1の前記所定期間として特定し、前記第2特定領域における振動の強度が予め定められた閾値以上である期間を含む期間のうち前記第1の所定期間から予め定められた時間内の期間を第2の前記所定期間として特定する
情報処理システム。
【請求項4】
列車が走行する軌道に沿って設けられた光ケーブルから光信号が入力される情報処理装置であって、
前記光信号は、前記軌道の特定領域における振動に応じて生成され、
各期間における前記振動を示す振動情報を前記光信号から作成する情報作成部と、
周波数が特定範囲外の周波数成分を前記振動情報が示す前記振動から除去する特定フィルタ部と、
前記特定フィルタ部により前記周波数成分が除去された前記振動の強度が予め定められた閾値以上である期間を含む所定期間を特定する期間特定部と、
周波数が前記特定範囲とは相違する所定範囲外の周波数成分を前記振動情報が示す前記振動から除去する所定フィルタ部と、
前記列車が前記特定領域に進入した進入時点または前記列車が前記特定領域から退出した退出時点を、前記所定フィルタ部により周波数成分が除去された前記所定期間における前記振動から推定する時点推定部と、を具備する
情報処理装置。
【請求項5】
列車が走行する軌道に沿って設けられ、前記軌道の特定領域における振動に応じた光信号を生成する光ケーブルと、前記光信号が入力される情報処理装置とを具備する情報処理システムを用いた情報処理方法であって、
各期間における前記振動を示す振動情報を前記光信号から作成するステップと、
周波数が特定範囲外の周波数成分を前記振動情報が示す前記振動から除去するステップと、
前記特定範囲外の周波数成分が除去された前記振動の強度が予め定められた閾値以上である期間を含む所定期間を特定するステップと、
周波数が前記特定範囲とは相違する所定範囲外の周波数成分を前記振動情報が示す前記振動から除去するステップと、
前記列車が前記特定領域に進入した進入時点または前記列車が前記特定領域から退出した退出時点を、前記所定範囲外の周波数成分が除去された前記所定期間における前記振動から推定するステップと、を具備する
情報処理方法。
【請求項6】
請求項5に記載の各ステップをコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項7】
列車が走行する軌道に沿って設けられた光ケーブルから光信号が入力される情報処理装置であって、
前記光信号は、前記軌道の特定領域における振動に応じて生成され、
各期間における前記振動を示す振動情報を前記光信号から作成する情報作成部と、
周波数が特定範囲外の周波数成分を前記振動情報が示す前記振動から除去する特定フィルタ部と、
前記特定フィルタ部により前記周波数成分が除去された前記振動の強度が予め定められた閾値以上である期間を含む所定期間を特定する期間特定部と、を具備し、
前記特定領域は、第1特定領域と前記第1特定領域より前記列車の進行方向側に位置する第2特定領域とを含み、
前記期間特定部は、前記第1特定領域における振動の強度が予め定められた閾値以上である期間を含む期間を第1の前記所定期間として特定し、前記第2特定領域における振動の強度が予め定められた閾値以上である期間を含む期間のうち前記第1の所定期間から予め定められた時間内の期間を第2の前記所定期間として特定する
情報処理装置。
【請求項8】
列車が走行する軌道に沿って設けられ、前記軌道の特定領域における振動に応じた光信号を生成する光ケーブルと、前記光信号が入力される情報処理装置とを具備する情報処理システムを用いた情報処理方法であって、
各期間における前記振動を示す振動情報を前記光信号から作成するステップと、
周波数が特定範囲外の周波数成分を前記振動情報が示す前記振動から除去するステップと、
前記特定領域のうち第1特定領域における振動の強度が予め定められた閾値以上である期間を含む期間を第1の所定期間として特定し、前記第1特定領域より前記列車の進行方向側に位置する第2特定領域における振動の強度が予め定められた閾値以上である期間を含む期間のうち前記第1の所定期間から予め定められた時間内の期間を第2の所定期間として特定するステップと、を具備する
情報処理方法。
【請求項9】
請求項8に記載の各ステップをコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、軌道を走行する列車による振動を検知し、各種の情報(列車長など)を算出(推定)する技術が知られている。例えば、特許文献1には、軌道を走行する列車による振動を検知するため、列車が走行する軌道に沿って光ケーブルを設けた構成が開示される。以上の構成では、軌道の特定領域における振動に応じた光信号(散乱光)が光ケーブルで生成され情報処理装置へ入力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成では、列車以外(例えば自動車)による振動に応じた光信号が生成される(列車以外による振動が検知される)可能性が完全には排除されない。以上の場合、列車による振動が検知された期間が正確に特定されないという不都合が生じ得る。以上の事情を考慮して、本発明は、列車による振動が検知された期間が正確に特定され易くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明の情報処理システムは、列車が走行する軌道に沿って設けられ、軌道の特定領域における振動に応じた光信号を生成する光ケーブルと、光信号が入力される情報処理装置とを具備する情報処理システムであって、情報処理装置は、各期間における振動を示す振動情報を光信号から作成する情報作成部と、周波数が特定範囲外の周波数成分を振動情報が示す振動から除去する特定フィルタ部と、特定フィルタ部により周波数成分が除去された振動の強度が予め定められた閾値以上である期間を含む所定期間を特定する期間特定部と、を具備する。
本発明によれば、特定フィルタ部により、振動情報が示す振動から列車による振動の可能性が高いものを取出すことができる。また、期間特定部により、特定フィルタ部により取出された振動のうち強度が閾値以上の振動が発生した所定期間が特定される。以上の構成では、閾値を適宜に設定することにより、列車による振動が検知された可能性が高い期間を所定期間として特定することができる。以上の本発明によれば、例えば特定フィルタ部および期間特定部を具備しない構成と比較して、列車による振動が検知された期間が正確に特定され易くなる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、列車による振動が検知された期間が正確に特定され易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】情報処理システムの各構成を説明するための図である。
【
図3】期間特定処理(前半)を説明するための図である。
【
図4】期間特定処理(後半)を説明するための図である。
【
図6】情報処理システムにおける各処理を説明するための図である。
【
図7】第2実施形態の補正処理を説明するための図である。
【
図8】第3実施形態の列車長算出処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<第1実施形態>
図1は、本実施形態の情報処理システム1の各構成を説明するための図である。情報処理システム1は、列車500が走行する軌道400の特定領域における、列車500の進入時刻および退出時刻を算出(推定)可能に構成される。
【0009】
本実施形態では、軌道400における複数個(例えば、800個)の領域が特定領域となる。情報処理システム1は、各特定領域における進入時刻および退出時刻から、当該特定領域における列車500の列車長Lを算出する。仮に、列車500から車両の一部が分離すると列車長Lが短くなる。したがって、列車長Lを監視することで、列車500から車両が分離した旨を検知できる。
【0010】
図1に示す通り、情報処理システム1は、コンピュータ100、光ケーブル200および光学装置300を含んで構成される。光ケーブル200は、軌道400に沿って設けられ、一端が光学装置300に接続される。具体的には、光ケーブル200には、振動を検知可能な複数個の検知位置(CH1、CH2、CH3…CHn…)が設けられる。以上の光ケーブル200における各検知位置CHは、軌道400の各特定領域に対応する。具体的には、特定領域を列車500が走行した際の振動(以下「振動V」と記載する)が、当該特定領域に対応する検知位置CHに伝播する様に、軌道400に沿って光ケーブル200が設けられる。
図1に示す通り、検知位置CHは、例えば約10m毎に設けられる。
【0011】
光学装置300は、CPU(Central Processing Unit)、プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)等を含む。光学装置300は、例えばOTDR(Optical Time Domain Reflectometry)技術により、光ケーブル200の各検知位置CHで検知された振動を示す振動情報Dvを生成する。具体的には、光学装置300は光ケーブル200(光ファイバ)の内部(コア)に光を出射する光源を具備し、光ケーブル200の内部には散乱光が生じる。以上の構成では、振動Vが光ケーブル200に伝播すると内部の散乱光が変化する。光学装置300は、振動Vにより変化した散乱光(以下「光信号S」と記載する)に応じて振動情報Dvを生成する。
【0012】
コンピュータ100は、CPU、プログラムを記憶するROMおよびRAM等を含み、光学装置300と通信可能に接続される。例えば、光学装置300が生成した振動情報Dvがコンピュータ100に入力される。コンピュータ100は、光学装置300から入力された振動情報Dvを用いて列車500の進入時刻および退出時刻を算出する。以上の構成については以下で詳細に説明する。なお、情報処理システム1の構成は
図1の例に限定されない。例えば、コンピュータ100の機能(振動情報Dvを生成する機能)を光学装置300が備え、コンピュータ100が省略される構成としてもよい。
【0013】
図2は、情報処理システム1の機能ブロック図である。情報処理システム1は、情報処理装置10および光ケーブル20を含んで構成される。
【0014】
情報処理装置10は、例えば、上述のコンピュータ100および光学装置300のCPUがプログラムを実行することにより実現される。光ケーブル20としては、例えば、上述の光ケーブル200が採用される。以上の光ケーブル20は、列車500が走行する軌道400に沿って設けられ、軌道400の特定領域における振動Vに応じた光信号Sを生成する。光ケーブル20で生成された光信号Sは情報処理装置10(光学装置300)に入力される。
【0015】
情報処理装置10は、情報作成部11、期間特定処理部12、時点推定処理部13および列車長算出部14を含んで構成される。情報作成部11は、各期間において検知位置CHに伝播した(検知された)振動を示す振動情報Dvを光信号Sから作成する(後述の
図3(a)参照)。情報作成部11は、全ての検知位置CHについて振動情報Dvをリアルタイムに生成する。
図2に示す通り、本実施形態の振動情報Dvは、期間特定処理部12および時点推定処理部13の双方で用いられる(後述の
図3(a)および
図5(a)参照)。
【0016】
期間特定処理部12は、後述の期間特定処理(
図3(a)~(c)および
図4(a)~(c)参照)を実行する。以上の期間特定処理では、振動情報Dvを用いて、列車500による振動Vが検知位置CHで検知される期間(後述の期間Tx)を特定(推定)し、該期間を示す期間情報Dtを生成する。具体的には、期間特定処理部12は、
図2に示す通り特定フィルタ部12aおよび期間特定部12bを含む。
【0017】
特定フィルタ部12aは、列車500による振動V以外の振動(ノイズ)を、振動情報Dvが示す振動から除去するために設けられる。具体的には、特定フィルタ部12aは、周波数が特定範囲外の周波数成分を振動情報Dvが示す振動から除去する。以下、特定範囲外の周波数成分を除去する前の振動情報Dvと区別するため、特定範囲外の周波数成分が除去された後の振動情報Dvを「振動情報Dvx」と記載する場合がある。
【0018】
特定範囲は、列車500による振動V以外の振動(ノイズ)が、振動情報Dvが示す振動から除去され易い様に設定される。例えば、軌道400から光ケーブル20までの距離によっては、特定領域で生じた高周波数の振動が光ケーブル20まで伝播し難いという事情がある。したがって、高周波数のみの振動は、列車500による振動V以外の振動である可能性が高い。以上の事情を考慮して、高周波数の振動が振動情報Dvが示す振動から除去される様に、特定範囲が設定される構成としてもよい。本実施形態では、特定範囲として「100Hz~200Hz」が採用される。ただし、特定範囲は、光ケーブル20から特定領域までの距離等に応じて適宜に変更できる。
【0019】
期間特定部12bは、特定フィルタ部12aにより周波数成分が除去された振動の強度が予め定められた閾値(以下「閾値Ih」)以上である期間を含む所定期間を特定する。具体的には、期間特定部12bは、振動情報Dvxが示す振動の強度が閾値Ih以上である期間を、列車500による振動Vが検知位置CHで検知された期間(以下「期間Tx」)として特定する。以上の閾値Ihは、列車500による振動Vが検知位置CHで検知された期間が期間Txとして特定され易い数値に設定される。また、閾値Ihは、列車500による振動V以外の振動(ノイズ)が検知位置CHで検知された期間が期間Txとして特定され難い数値に設定される。
【0020】
具体的には、期間特定部12bは、振動情報Dvxの各時点の強度を2乗して平滑化処理を実行する(後述の
図3(c)参照)。また、期間特定部12bは、平滑化処理後の各時点における強度が、最大強度の約25%(同図の閾値IH。なお、「IH=Ih
2」)より大きい期間を期間Txとして特定する。以上の構成によれば、例えば、落石等の比較的小さい振動が検知位置CHに伝播した場合であっても、落石により振動が生じた期間が期間Txに含まれる不都合が低減される。
【0021】
以上の本実施形態によれば、振動情報Dvが示す振動から列車500による振動の可能性が高いものが特定フィルタ部12aにより取出され、且つ、特定フィルタ部12aにより取出された振動のうち、強度(絶対値)が閾値Ih以上の振動が発生した期間が期間Txとして特定される。したがって、例えば、振動情報Dvが示す振動(強度が閾値Ih以下のものを含む)が発生した全ての期間が期間Txとして特定される構成と比較して、列車500による振動V以外が検知された期間が期間Txとして特定される不都合が抑制される。
【0022】
ただし、振動情報Dvxが示す振動のうち、列車500による振動V以外の強度(絶対値)が閾値Ihを超える場合がある。例えば、大型の自動車が検知位置CHの近傍を走行した場合、振動情報Dvxが示す振動のうち当該自動車による振動の強度が閾値Ihを超え得る。以上の場合、列車500による振動V以外が検知された期間が期間Txとして特定されてしまう不都合が生じ得る。
【0023】
以上の不都合を抑制するため、期間特定部12bは、軌道400のうち第1特定領域(例えば
図4(a)のCHn-1に対応する特定領域)における振動の強度が予め定められた閾値以上である期間を含む期間を第1の所定期間(
図4(b)のTxn-1)として特定し、第2特定領域(同図のCHnに対応する特定領域)における振動の強度が予め定められた閾値以上である期間(同図のTxnおよびTa)を含む期間のうち第1の所定期間から予め定められた時間(例えば約3秒)内の期間を第2の所定期間(Txn)として特定する。以上の構成については
図4(a)~(c)を用いて詳細に後述する。
【0024】
期間特定部12bは全ての検知位置CHについて期間Txを特定し、当該期間Txが特定される期間情報Dtを時点推定処理部13に入力する。時点推定処理部13は、期間情報Dtおよび振動情報Dvを用いて、列車500が特定領域に進入した進入時点tsおよび退出した退出時点teを推定する。進入時点tsは、列車500が特定領域に進入した時刻(列車500の先頭が特定領域に達した時刻)を特定可能な情報である。また、退出時点teは、列車500が特定領域から退出した時刻(列車500の後端が特定領域を通過した時刻)を特定可能な情報である。例えば、進入時点tsおよび退出時点teとして、予め定められた時点からの経過時間を示すタイマ情報、または、実際の時刻を示す情報が採用され得る。
【0025】
ところで、期間特定部12bにより特定される期間Tx(列車500による振動Vが検知される期間)は、列車500が検知位置CHに進入する直前から通過した直後までの期間である。したがって、特定フィルタ部12aで生成された振動情報Dvxが示す振動のうち期間Txにおける振動を用いて、進入時点tsおよび退出時点teを推定することもできる。ただし、期間Txを特定するのに際して用いた特定フィルタ部12aの特定範囲(100Hz~200Hz)は、振動情報Dvの振動から列車500による振動V以外の振動が除去され易い数値に設定される。具体的には、特定フィルタ部12aでは、200Hz以上の周波数成分が振動情報Dvの振動から除去される。
【0026】
しかし、実際は、列車500による振動V(期間Txで検知される振動)には、200Hz以上の周波数成分が含まれる。すなわち、特定フィルタ部12aでは、列車500による振動Vのうち200Hz以上の周波数成分が除去される。以上の特定フィルタ部12aは、列車500による振動以外(ノイズ)を除去するには適しているが、列車500の進入時点tsおよび退出時点teを正確に特定するには適していない場合がある。以上の事情を考慮して、本実施形態では、特定フィルタ部12aとは別のフィルタ部(後述の所定フィルタ部13a)を用いて、進入時点tsおよび退出時点teを特定する構成を採用した。
【0027】
具体的には、時点推定処理部13は、
図2に示す通り所定フィルタ部13aおよび時点推定部13bを含んで構成される。所定フィルタ部13aは、周波数が特定範囲(100Hz~200Hz)とは相違する所定範囲(100Hz~500Hz)外の周波数成分を振動情報Dvが示す振動から除去する。以下、所定範囲外の周波数成分を除去する前の振動情報Dvと区別するため、所定範囲外の周波数成分が除去された後の振動情報Dvを「振動情報Dvy」と記載する場合がある。
【0028】
所定範囲は、進入時点tsおよび退出時点teが正確に特定され易い様に設定される。例えば、所定範囲は、期間特定処理部12の特定フィルタ部12aによって除去される高周波数の周波数成分であって、列車500による振動Vに含まれ得る周波数成分が除去されない数値に設定される。本実施形態では、所定範囲として「100Hz~500Hz」が採用される。ただし、所定範囲は適宜に変更できる。
【0029】
例えば、所定範囲として「500Hz~1000Hz」を採用してもよい。ただし、列車500による振動Vのうち、500Hz以上の高周波数の振動は、当該列車500(後端)が検知位置CHを通過した後の期間において、比較的長時間にわたり検知され続ける(残留する)旨が実験的に確認された。したがって、所定範囲として「500Hz~1000Hz」を採用した構成では、退出時点teが高精度に特定できないという不都合が生じ得る。本実施形態の構成では、所定範囲が「100Hz~500Hz」であるため、以上の不都合が抑制されるという利点がある。
【0030】
時点推定部13bは、列車500が特定領域に進入した進入時点tsまたは列車が特定領域から退出した退出時点teを、所定フィルタ部13aにより周波数成分が除去された期間Txにおける振動Vから推定する。具体的には、時点推定部13bは、振動情報Dvyから後述の強度曲線(
図5(c)のy(t))を生成する。ただし、強度曲線の各時点の強度のうち、期間Tx以外の各時点の強度(ノイズの強度)は数値「0」に変更される。また、時点推定部13bは、強度曲線から包絡線(同図のf(t))を特定し、包絡線から進入時点tsおよび退出時点teを特定する。当該構成については、
図5(a)~(c)を用いて詳細に説明する。
【0031】
以上の本実施形態によれば、特定フィルタ部12aにより期間Txが正確に特定され易く、且つ、所定フィルタ部13aにより進入時点tsおよび退出時点teが正確に特定され易くなるという効果が奏せられる。時点推定部13bが推定した進入時点tsおよび退出時点teは、列車長算出部14に入力される。ただし、特定フィルタ部12aにより特定した期間Txから進入時点tsおよび退出時点teを推定する構成としてもよい。
【0032】
列車長算出部14は、進入時点tsおよび退出時点teから特定領域を通過した列車500の列車長Lを推定する。列車長算出部14は、例えば、予め定められた一定速度で特定領域を列車500が通過したと仮定し、進入時点tsから退出時点teまでの時間と列車500の速度との積を列車長Lとして算出する。なお、列車長Lの算出方法は以上の例に限定されない。列車長Lの算出方法の他の具体例は、後述の第3実施形態(
図8参照)において詳細に説明する。
【0033】
図3(a)~(c)および
図4(a)~(c)は、期間特定処理の具体例の詳細を説明するための図である。上述した通り、期間特定処理では、列車500による振動Vが検知位置CHで検知される期間Txが特定される。
【0034】
図3(a)は、振動情報Dvが示す振動の具体例の概念図である。
図3(a)の横軸は時間軸を示し、縦軸は各時点における振動の強度Iを示す(
図3(b)および
図3(c)についても同様)。
図3(a)の具体例では、各検知位置CHのうち検知位置CHnにおける振動を示す。具体的には、振動情報Dvは、各時点t(時刻)における検知位置CHでの振動の強度I(波形)を示す。
図3(a)の具体例には、列車500による振動Vを示す波形が示される。また、
図3(a)の具体例には、振動Vが検知された期間(期間Tx)とは別の期間において、列車500による振動V以外(以下「ノイズN」)が検知された場合を想定する。
【0035】
図3(b)は、振動情報Dvxが示す振動の具体例の概念図である。
図3(b)の具体例では、上述の
図3(a)の振動情報Dvから特定フィルタ部12aにより振動情報Dvxが生成された場合を想定する。上述した通り、振動情報Dvxが示す振動は、振動情報Dvの振動から特定範囲(100Hz~200Hz)以外の周波数成分が除去されたものである。特定フィルタ部12aでは、振動情報Dvが示す振動(V、N)のうち、ノイズNの強度が減衰され易い(ノイズNが除去され易い)。ただし、例えば
図3(b)に示す通り、振動情報Dvxが示す振動にはノイズNが残存する場合がある。
【0036】
図3(c)は、強度曲線y(t)の具体例の概念図である。強度曲線y(t)は、振動情報Dvxの各時点tにおける強度Iを2乗し、平滑化処理を実行することで求められる。本実施形態の平滑化処理では、各時点tの強度I(=y(t))が、当該時点から5秒間前までの各時点の強度Iの単純移動平均として求められる。ただし、平滑化処理の具体的な内容は適宜に変更できる。
【0037】
情報処理装置10は、強度曲線y(t)が示す強度Iが閾値IH以上である期間を特定する。例えば、
図3(c)の具体例では、列車500による振動Vが検知位置CHnで検知された期間Txnが特定される。ただし、
図3(c)の具体例では、ノイズNが検知位置CHnで検知された期間Taにおける強度曲線y(t)が閾値IH以上となる。以上の具体例では、期間Txnに加え、期間Taが特定される。以下の
図4(a)~(c)を用いて詳細に説明する通り、情報処理装置10は、期間Taと期間Txnとのうち期間Txnのみを列車500による振動Vが検知された期間Txとして特定可能である。
【0038】
図4(a)は、強度曲線y(t)が閾値IH以上である期間(以下「対象期間」)の具体例を説明するための図である。上述の
図3(c)で示した通り、対象期間には、列車500による振動Vが検知された期間(Txn)に加え、ノイズNが検知された期間(Ta)が含まれ得る。
図4(a)に示す矩形の各バーBは、各検知位置CHにおける各対象期間を示す。具体的には、バーBの下辺は、時間軸上において、対象期間の開始時点に位置する。また、バーBの上辺は、時間軸上において、対象期間の終了時点に位置する。後述の
図4(b)および
図4(c)についても同様である。
【0039】
例えば、
図4(a)の具体例では、検知位置CHnにおいて2個の対象期間が検知された場合を想定する。具体的には、
図4(a)の具体例では、上述の
図3(c)の具体例と同様に、検知位置CHnにおいて、ノイズNが検知された期間Taと、列車500による振動Vが検知された期間Txnとが対象期間である場合を想定する。
図4(a)の右側に、上述の
図3(c)で示した強度曲線y(t)が併記される。ただし、
図4(a)では、時間軸を縦軸として強度曲線y(t)が示される。
図4(a)から理解される通り、バーB1が期間Txnを示し、バーB2が期間Taを示す。
【0040】
図4(a)の具体例では、検知位置CHnと隣接する検知位置CHn-1において、バーB3で示す対象期間が検知された場合を想定する。また、バーB3は、列車500による振動Vが検知位置CHn-1で検知された期間Txn-1を示す。
図4(a)の具体例では、検知位置CHn-1から検知位置CHnの方向へ列車500が移動する場合を想定する。したがって、期間Txn-1の開始時点は期間Txnの開始時点より先行し、期間Txn-1の終了時点は期間Txnの終了時点より先行する。すなわち、バーB3の下辺はバーB1の下辺より時間軸上で下側に位置し、バーB3の上辺はバーB1の上辺より時間軸上で下側に位置する。
【0041】
ところで、列車500が軌道400を走行した場合、検知位置CHで振動Vが検知された時点から、予め定められた時間(以下「X秒」)以内に、次の検知位置CHで振動Vが検知されるという事情がある。以上の事情を考慮して、本実施形態では、検知位置CHnの各対象期間(例えばTxnおよびTa)のうち、直前の検知位置CHn-1で振動Vが検知された期間Txn-1からX秒以内の対象期間を、検知位置CHnの期間Tx(列車による振動Vが検知された期間)として特定する構成を採用した。具体的には、期間Txn-1から約3秒以内の期間Txnを期間Txとして特定する構成を採用した(X=3)。ただし、上述のX秒は、各検知位置CHの間隔、列車500の列車長および速度等に応じて適宜に変更できる。
【0042】
図4(b)は、列車500による振動Vを検知した期間Txを各対象期間から特定する構成を詳細に説明するための図である。
図4(b)には、上述の
図4(a)と同様に、時間軸が示される。また、
図4(b)には、
図4(a)で示した各バーBのうち、検知位置CHnの期間Txnを示すバーB1、期間Taを示すバーB2、および、検知位置CHn-1の期間Txn-1を示すバーB3が抜粋して示される。
【0043】
図4(b)に示す通り、検知位置CHn-1における期間Txn-1の開始時点から検知位置CHnにおける期間Txnの開始時点までの期間Tpxは約3秒以下である(Tpx≦3s(秒))。一方、検知位置CHn-1における期間Txn-1の開始時点から検知位置CHnにおける期間Taの開始時点までの期間Tpaは約3秒より長い(Tpa>3s(秒))。以上の場合、情報処理装置10(期間特定部12b)は、検知位置CHnの各対象期間(Txn、Ta)のうち期間Txnを振動Vが検知された期間Txとして特定し、期間Taは特定しない。
【0044】
なお、各対象期間から列車500による振動Vを検知した期間Txを特定するための構成は、以上の例に限定されない。例えば、検知位置CHn-1における期間Txn-1の終了時点から検知位置CHnにおける対象期間の開始時点までの期間が所定時間以下の場合、当該対象期間を検知位置CHnの期間Txとして特定する構成としてもよい。また、検知位置CHn-1における期間Txn-1の終了時点から検知位置CHnにおける対象期間の終了時点までの期間が所定時間以下の場合、当該対象期間を検知位置CHnの期間Txとして特定する構成としてもよい。
【0045】
図4(c)は、各検知位置CHにおける期間Txを説明するための図である。上述の本実施形態によれば、列車500が軌道400を1回走行すると、検知位置CH毎に1つの期間Txが特定される。情報処理装置10(期間特定部12b)は、各検知位置CHの各期間Txが特定される期間情報Dtを生成する。後述の時点推定処理では、期間情報Dtから特定される期間Tx以外における振動(例えば、ノイズN)の強度を数値「0」とした振動情報Dv(振動情報Dvy)が用いられる。
【0046】
図5(a)から
図5(c)は、時点推定処理の詳細を説明するための図である。時点推定処理では、列車500が検知位置CHに進入した進入時点tsおよび退出した退出時点teが推定される。なお、
図5(a)から
図5(c)を用いて、1つの検知位置CHについて進入時点tsおよび退出時点teを推定する具体例を示す。ただし、時点推定処理では、他の各検知位置CHについても同様な手順で進入時点tsおよび退出時点teが推定される。
【0047】
図5(a)は、時点推定処理で用いられる振動情報Dvを説明するための図である。
図5(a)に示す通り、振動情報Dvの振動は、時点推定処理で用いられる場合、期間情報Dtから特定される期間Tx(列車500による振動Vを検知したと推定された期間)以外における強度Iが数値「0」に変更される。なお、振動情報Dvが示す振動の強度Iを変更する構成に替えて、後述の振動情報Dvyが示す振動の期間Tx以外における強度Iを数値「0」に変更する構成を採用してもよい。
【0048】
図5(b)は、時点推定処理で用いられる振動情報Dvyを説明するための図である。振動情報Dvyは、振動情報Dvから所定範囲(100Hz~500Hz)以外の周波数成分を所定フィルタ部13aにより除去することで生成される。以上の所定範囲は、列車500の進入時点tsおよび退出時点teが振動情報Dvyから正確に特定される様に設定される。以上の本実施形態では、例えば振動情報Dvから上述の特定範囲(100Hz~200Hz)以外の周波数成分が除去された振動情報Dvxが時点推定処理で用いられる構成と比較して、列車500の進入時点tsおよび退出時点teが正確に特定され易くなるという利点がある。
【0049】
図5(c)は、時点推定処理の具体例を説明するための図である。
図5(c)における横軸は時間軸を示し、縦軸は各時点における振動の強度Iを示す(上述の
図3(a)と同様)。情報処理装置10は、時点推定処理において、各時点の強度を2乗して上述の平滑化処理を実行することにより、振動情報Dvyから強度曲線y(t)を生成する。
図5(c)には、時点推定処理で用いる強度曲線y(t)の一例が示される。また、
図5(c)には、期間情報Dtから特定される期間Txが示される。
図5(c)の具体例では、期間Txの開始時点が時点「ta」であり、終了時点が時点「tb」の場合を想定する。
【0050】
本実施形態の情報処理装置10は、
図5(c)に示す包絡線f(t)を用いて進入時点tsおよび退出時点teを推定する。包絡線f(t)としては、例えば、4次関数が好適に採用され得る。ただし、包絡線f(t)として4次関数以外(例えば、3次関数)が採用される構成としてもよい。
図5(c)に示す通り、包絡線f(t)は、始点P1(ta,0)および終点P2(tb,0)を通る。上述した通り、時点taは期間Txの開始時点であり、時点tbは期間Txの終了時点である。また、包絡線f(t)は、移動点Ps(tx,0)および移動点Pe(ty,0)を通る。
【0051】
情報処理装置10は、強度曲線y(t)が最大となる時点trを特定する。また、情報処理装置10は、移動点Psを範囲「ta<tx<tr」、移動点Peを範囲「tr<ty<tb」で移動させて、以下の数1に示す数値V(tx、ty)が最小となる時点txおよび時点tyを求める。
【0052】
【0053】
情報処理装置10は、数値V(tx、ty)が最小となる時点txを、進入時点tsとして特定する。また、情報処理装置10は、数値V(tx、ty)が最小となる時点tyを、退出時点teとして特定する。情報処理装置10は、特定した進入時点tsおよび退出時点teを用いて、例えば列車500の列車長Lを算出(推定)する。
【0054】
図6は、情報処理装置10の各処理を説明するためのフローチャートである。
図6の各処理は、例えば予め定められた時間間隔で自動で実行される。ただし、当該各処理が実行される時期は適宜に変更できる。
【0055】
図6に示す通り、情報処理装置10は、情報作成処理(S10)を実行する。情報作成処理では、光ケーブル20の光信号Sに応じて振動情報Dvが生成される。その後、情報処理装置10は、期間特定処理(S11)を実行する。期間特定処理では、上述の
図3(a)~(c)および
図4(a)~(c)を用いて説明した通り、各検知位置CHの各期間Txが特定される期間情報Dtが生成される。
【0056】
期間特定処理を実行した後に、情報処理装置10は、時点推定処理(S12)を実行する。時点推定処理では、上述の
図5(a)~(c)を用いて説明した通り、情報作成処理で生成された振動情報Dvおよび期間特定処理で生成された期間情報Dtに基づいて、各検知位置CHの進入時点tsおよび退出時点teが特定される。情報処理装置10は、時点推定処理を実行した後に、列車長算出処理(S13)を実行する。列車長算出処理では、時点推定処理で特定された進入時点tsおよび退出時点teに基づいて、列車長Lが算出される。
【0057】
<第2実施形態>
本発明の他の実施形態を以下に説明する。なお、以下に例示する各形態において作用や機能が第1実施形態と同等である要素については、第1実施形態の説明で参照した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0058】
図7(a)および
図7(b-1)~(b-4)は、第2実施形態の構成を説明するための図である。
図7(a)は、上述の時点推定処理で推定された各検知位置CHの進入時点tsおよび退出時点teの具体例を示す図である。
図7(a)における各点Paは各検知位置CHにおける進入時点tsを示し、各点Pbは各検知位置CHにおける退出時点teを示す。以下で詳細に説明するが、第2実施形態では、時点推定処理で推定された進入時点tsおよび退出時点teを後述の補正処理により補正可能に構成される。情報処理装置10は、補正後の進入時点tsおよび退出時点teに基づいて列車長Lを算出する。
【0059】
図7(b-1)~(b-4)は、補正処理の具体例を説明するための図である。なお、
図7(b-1)~(b-4)の具体例は、進入時点tsおよび退出時点teのうち進入時点tsを補正する補正処理を示す。退出時点teについても、進入時点tsと同様に補正される。
【0060】
補正処理では、最小二乗法により近似関数を用いて各点Paが近似される。具体的には、短時間における列車の移動距離yは、列車が定加速(減速)運動をすると仮定した場合、以下の数2の式(1)で表される。以上の事情を考慮して、第2実施形態では、数2の式(2)を近似関数(後述のg(t)、h(t)、i(t)…)として採用した。なお、数2の式(2)における「A」「B」「C」は未知数である。
【0061】
【0062】
図7(b-1)に示す通り、補正処理では、先ず、検知位置CH1から検知位置CH10までの10個の点Paについて、近似関数g(t)を最小二乗法により求める(数2の式(2)における未知数A、B、Cを求める)。また、以上の各点Paの時間軸上の位置(すなわち進入時点ts)を近似関数g(t)上に移動させる(補正(近似)する)。以下、近似関数(g、h、i…)上に移動した点Paを点Qと記載する。
【0063】
図7(b-2)には、検知位置CH1から検知位置CH10までの各点Paが近似関数g(t)上に移動した直後の具体例を示す。第2実施形態の補正処理では、点Paに加え、点Q(移動済みの点Pa)の一部を用いて当該点Paを近似することを特徴とする。例えば、
図7(b-2)の具体例では、検知位置CH11から検知位置CH15の各点Paを補正する際に、検知位置CH6から検知位置CH10の各点Q(g(t)上の点)を用いて近似関数h(t)を求める。
【0064】
図7(b-3)には、近似関数h(t)上に各点Paが移動した直後の具体例を示す。
図7(b-3)に示す通り、各点Paのうち検知位置CH11から検知位置CH15の各点Paが近似関数h(t)上に移動する。また、検知位置CH6から検知位置CH10の各点Qが近似関数h(t)上に移動する。ただし、検知位置CH1から検知位置CH5の各点Qは近似関数g(t)上から移動しない。補正処理では、検知位置CH16から検知位置CH20の各点Paを補正する際に、検知位置CH11から検知位置CH15の各点Q(h(t)上の点)を用いて近似関数i(t)を求める。
【0065】
図7(b-4)には、近似関数i(t)上に点Paが移動した直後の具体例を示す。
図7(b-4)に示す通り、各点Paのうち検知位置CH16から検知位置CH20の各点Paが近似関数i(t)上に移動する。また、検知位置CH11から検知位置CH15の各点Qが近似関数i(t)上に移動する。ただし、検知位置CH1から検知位置CH5の各点Qは近似関数g(t)上から移動しない。また、検知位置CH6から検知位置CH10の各点Qは近似関数h(t)上から移動しない。その後の補正処理では、検知位置CH21から検知位置CH25の各点Paを補正する際に、検知位置CH16から検知位置CH20の各点Q(i(t)上の点)を用いて近似関数iを求める。以上の手順が全ての点Paについて繰り返される。
【0066】
以上の第2実施形態によれば、第1実施形態と同様な効果が奏せられる。また、第2実施形態では、特定の検知位置CHの点Pを補正する際に、近似済みの検知位置CHの点Qの一部が用いられる。以上の構成によれば、例えば、全ての点Pが1個の近似関数を用いて一度に補正される構成と比較して、進入時点tsおよび退出時点teが高精度に算出(補正)できるという利点がある。
【0067】
<第3実施形態>
図8は、第3実施形態の列車長算出処理を説明するための図である。列車は加速(減速)するのが通常である。以上の事情から、第3実施形態の列車長算出処理では、列車の加速(減速)を考慮して列車長Lを算出可能とした。
【0068】
具体的には、列車が加速(減速)する場合における、検知位置CHnの列車長Lnは、以下の数3で求められる。なお、数3における「Tn」は検知位置CHnにおける進入時点tsnから退出時点tenまでの時間の長さを意味する。進入時点tsnおよび退出時点tenは、時点推定処理または補正処理により求められる。また、数3における「vsn」は進入時点tsnにおける列車の速度を意味し、「an」は進入時点tsnにおける列車の加速度を意味する。
【0069】
【0070】
また、検知位置CHnの前後約20mの区間(検知位置CHn-2~CHn+2)にわたり列車が等加速度運動をすると仮定した場合、進入時点tsnにおける列車の速度vsnは、以下の数4の式(1)の通り求められる。同様に、退出時点tenにおける列車の速度venは、数4の式(2)の通り求められる。
【0071】
図8に示す通り、数4における「Ts1」は、検知位置CHn-2における進入時点tsn-2から検知位置CHnにおける進入時点tsnまでの時間の長さを意味する。また、「Ts2」は、進入時点tsnから検知位置CHn+2における進入時点tsn+2までの時間の長さを意味する。同様に、「Te1」は、退出時点ten-2から退出時点tenまでの時間の長さを意味し、「Te2」は、退出時点tenから退出時点ten+2までの時間の長さを意味する。
【0072】
【0073】
さらに、上述した数3における検知位置CHの加速度anは、以下の数5で表され、上述の数4で求められる速度vsnおよび速度venを代入することで求められる。
【0074】
【0075】
以上の数4の式(1)で求めた速度vsn、数5で求めた加速度an、および、時間長Tnを数3に代入することで、検知位置CHnにおける列車長Lnが算出(推定)される。
【0076】
<本実施形態の態様例の作用、効果のまとめ>
<第1態様>
本態様の情報処理システム(1)は、列車(500)が走行する軌道(400)に沿って設けられ、軌道の特定領域における振動に応じた光信号(S)を生成する光ケーブル(20)と、光信号が入力される情報処理装置(10)とを具備する情報処理システムであって、情報処理装置は、各期間における振動を示す振動情報(Dv)を光信号から作成する情報作成部(11)と、周波数が特定範囲(100Hz~200Hz)外の周波数成分を振動情報が示す振動から除去する特定フィルタ部(12a)と、特定フィルタ部により周波数成分が除去された振動の強度が予め定められた閾値(Ih)以上である期間を含む所定期間(Tx)を特定する期間特定部(12b)と、を具備する。本態様によれば、例えば特定フィルタ部および期間特定部を具備しない構成と比較して、期間Txが正確に特定され易くなる。
【0077】
<第2態様>
本態様の情報処理システムは、情報処理装置は、周波数が特定範囲とは相違する所定範囲(100Hz~500Hz)外の周波数成分を振動情報が示す振動から除去する所定フィルタ部(13a)と、列車が特定領域に進入した進入時点(ts)または列車が特定領域から退出した退出時点(te)を、所定フィルタ部により周波数成分が除去された所定期間における振動から推定する時点推定部(13b)と、をさらに具備する。本態様によれば、例えば、進入時点tsおよび退出時点teを特定するためのフィルタ部が、期間Txを特定するためのフィルタ部と共通である構成と比較して、進入時点tsおよび退出時点teと、期間Txとが正確に特定され易くなるという利点がある。
【0078】
<第3態様>
本態様の情報処理システムは、特定領域は、第1特定領域(
図4(a)のCHn-1)と第1特定領域より列車の進行方向側に位置する第2特定領域(同図のCHn)とを含み、期間特定部は、第1特定領域における振動の強度が予め定められた閾値以上である期間を含む期間を第1の所定期間(Txn-1)として特定し、第2特定領域における振動の強度が予め定められた閾値以上である期間を含む期間のうち第1の所定期間から予め定められた時間(約3秒)内の期間を第2の所定期間(Txn)として特定する。本態様によれば、例えば振動の強度が予め定められた閾値以上である期間の全てが期間Txとして特定される構成と比較して、期間Txが正確に特定され易くなるという効果は格別に顕著である。
【0079】
<第4態様>
本態様の情報処理装置は、列車が走行する軌道に沿って設けられた光ケーブルから光信号が入力される情報処理装置であって、光信号は、軌道の特定領域における振動に応じて生成され、各期間における振動を示す振動情報を光信号から作成する情報作成部と、周波数が特定範囲外の周波数成分を振動情報が示す振動から除去する特定フィルタ部と、特定フィルタ部により周波数成分が除去された振動の強度が予め定められた閾値以上である期間を含む所定期間を特定する期間特定部と、を具備する。本態様によれば、上述の第1態様と同様な効果が奏せられる。
【0080】
<第5態様>
本態様の情報処理方法は、列車が走行する軌道に沿って設けられ、軌道の特定領域における振動に応じた光信号を生成する光ケーブルと、光信号が入力される情報処理装置とを具備する情報処理システムを用いた情報処理方法であって、各期間における振動を示す振動情報を光信号から作成するステップ(
図6のS10)と、周波数が特定範囲外の周波数成分を振動情報が示す振動から除去するステップ(
図3(a)および
図3(b)参照)と、周波数成分が除去された振動の強度が予め定められた閾値以上である期間を含む所定期間を特定するステップ(
図4(a)~(c)参照)と、を具備する。本態様によれば、上述の第1態様と同様な効果が奏せられる。
【0081】
<第6態様>
本態様のプログラムは、第5態様に記載の各ステップをコンピュータに実行させるプログラムである。本態様によれば、上述の第1態様と同様な効果が奏せられる。
【符号の説明】
【0082】
1…情報処理システム、10…情報処理装置、11…情報作成部、12…期間特定処理部、12a…特定フィルタ部、12b…期間特定部、13…時点推定処理部、13a…所定フィルタ部、13b…時点推定部、14…列車長算出部、20…光ケーブル。