(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】卓上切断機
(51)【国際特許分類】
B27B 5/36 20060101AFI20240826BHJP
B23D 45/14 20060101ALI20240826BHJP
B27B 5/20 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
B27B5/36
B23D45/14 A
B27B5/20 B
(21)【出願番号】P 2020203301
(22)【出願日】2020-12-08
【審査請求日】2023-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幸則
(72)【発明者】
【氏名】可児 利之
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0221701(US,A1)
【文献】特開2018-145690(JP,A)
【文献】特開平10-101297(JP,A)
【文献】特開2020-192782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27B 5/36
B23D 45/14
B27B 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
卓上切断機であって、
被切断材が載置されるテーブルと、
前記テーブルに対して上下動される切断機本体と、
前記切断機本体を前記テーブルに対して
傾動軸を介して左右に傾動可能に支持する傾動部材と、
前記切断機本体の傾斜位置を解除可能に固定する傾動固定部材と、
前記傾動固定部材を解除状態にして前記切断機本体の前記傾斜位置を調整する際に操作されるレバー部材と、を有し、
前記レバー部材は、
前記傾動軸とは異なる軸中心に回転可能に前記テーブルに直接又は間接に連結される支点部と、前記傾動部材に連結される作用点部と、前記支点部から延出し、且つ前記支点部と前記作用点部の間の距離よりも遠い位置に力点部を備えるアーム部を有し
、
前記アーム部は、前記支点部に対して前記傾動部材の左側方又は右側方に突出して上下に傾動可能とした卓上切断機。
【請求項2】
卓上切断機であって、
被切断材が載置されるテーブルと、
前記テーブルに対して上下動される切断機本体と、
前記切断機本体を前記テーブルに対して左右に傾動可能に支持する傾動部材と、
前記切断機本体の傾斜位置を解除可能に固定する傾動固定部材と、
前記傾動固定部材を解除状態にして前記切断機本体の前記傾斜位置を調整する際に操作されるレバー部材と、を有し、
前記レバー部材は、軸中心に回転可能に前記テーブルに直接又は間接に連結される支点部と、前記傾動部材に連結される作用点部と、前記支点部から延出し、且つ前記支点部と前記作用点部の間の距離よりも遠い位置に力点部を備えるアーム部を有し
、
前記レバー部材と前記傾動部材を傾動可能に支持する傾動受け部との間に、補助支点部と補助作用点部と補助力点部を有する補助部材を備え、
前記補助支点部又は前記補助作用点部の一方が前記傾動受け部に連結され、他方が前記レバー部材に連結され、
前記補助力点部と前記補助支点部との間の距離が、前記補助作用点部と前記補助支点部との間の距離よりも大きい卓上切断機。
【請求項3】
請求項1
又は2記載の卓上切断機であって、
前記レバー部材の長手方向の中央領域に前記支点部を有し、前記支点部に対して前記長手方向の一端側に前記作用点部を有し、前記長手方向の他端側に前記力点部を有する卓上切断機。
【請求項4】
請求項1
又は3に記載の卓上切断機であって、
前記レバー部材と前記傾動部材を傾動可能に支持する傾動受け部との間に、補助支点部と補助作用点部と補助力点部を有する補助部材を備え、
前記補助支点部又は前記補助作用点部の一方が前記傾動受け部に連結され、他方が前記レバー部材に連結され、
前記補助力点部と前記補助支点部との間の距離が、前記補助作用点部と前記補助支点部との間の距離よりも大きい卓上切断機。
【請求項5】
請求項
2又は4に記載の卓上切断機であって、
前記補助支点部が前記傾動受け部に連結され、前記補助作用点部が前記レバー部材の前記力点部に連結された卓上切断機。
【請求項6】
請求項
2又は4又は5に記載の卓上切断機であって、
前記傾動部材と前記補助部材が、前記傾動部材の傾動軸線方向について前記レバー部材の前側に配置された卓上切断機。
【請求項7】
請求項
2又は4~6の何れか1つに記載の卓上切断機であって、
前記レバー部材の前記支点部と前記補助部材の前記補助支点部が相互に平行な回転軸線を有する卓上切断機。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1つに記載した卓上切断機であって、
前記レバー部材の前記支点部が、前記傾動部材に設けた逃がし部を経て前記テーブルに連結された卓上切断機。
【請求項9】
請求項8に記載の卓上切断機であって、
前記逃がし部は、前記傾動部材の傾動軸線を中心軸とする円弧に沿った長溝孔形状に形成された卓上切断機。
【請求項10】
卓上切断機であって、
被切断材が載置されるテーブルと、
前記テーブルに対して上下動される切断機本体と、
前記切断機本体を前記テーブルに対して
傾動軸を介して左右に傾動可能に支持する傾動部材と、
前記切断機本体の傾斜位置を解除可能に固定する傾動固定部材と、
前記傾動固定部材を解除状態として前記切断機本体の傾斜位置を調整する際に操作されるレバー部材と、を有し、
前記レバー部材は、
前記傾動軸とは異なる軸中心に回転可能に前記テーブルに連結される支点部と、前記傾動部材に連結される作用点部と、前記支点部から延出するアーム部を有
し、
前記アーム部は、前記支点部に対して前記傾動部材の左側方又は右側方に突出して上下に傾動可能とした卓上切断機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば木材等の被切断材の切断加工に用いられる卓上切断機に関する。
【背景技術】
【0002】
卓上切断機は、被切断材を載置するテーブルと、円板形の刃具を具備する切断機本体を備える。テーブル上に載置した被切断材に対して円板形の刃具を上方から切り込ませて切断加工が行われる。卓上切断機は、切断機本体を左方又は右方に傾斜させて刃具を被切断材に斜めに切り込ませるいわゆる傾斜切りを行うための機能を備える。切断機本体を任意の傾斜角度で位置決めをするための種々技術が提供されている。
【0003】
特許文献1に開示された傾斜位置決め機構では、切断機本体の傾動部と切断機本体を傾動可能に支持する傾動支持部との間に中間ベースが介装されている。中間ベースの左右傾動方向の位置は固定ねじを緩めて調整可能となっている。固定ねじを締め付けて中間ベースを固定した状態で、位置決めねじの締め込み量を調整して切断機本体の傾斜角度を微調整できる。微調整後、本体固定ねじを締め付ければ切断機本体が位置決めした傾斜角度に固定される。
【0004】
特許文献2に開示された傾斜位置決め機構では、切断機本体の傾動軸と平行な軸回りに回転操作する操作部を有する。操作部の回転操作によりピニオンギヤを回転させて、傾動支持側に設けたラックに対する噛み合い位置を変更することで切断機本体の傾斜角度を微調整できる。微調整後、本体固定ねじを締め付ければ切断機本体が位置決めした傾斜角度に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-44044号公報
【文献】欧州特許出願公開第1935543号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の位置決め機構によれば、傾斜角度の微調整を行わない場合には、固定ねじを緩めて中間ベースの位置をフリーにしておく必要がある。このキャンセル操作が手間が掛かって面倒であった。特許文献2の位置決め機構によれば、ラックが大形化しやすい問題がある。ラックの大形化を避けるため複数の中間ギヤを介在させると構造が複雑化する問題がある。本開示では、切断機本体の傾斜位置の微調整機構について、操作性を高めるとともに構成の簡略化を図る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の1つの特徴によると、卓上切断機は、被切断材が載置されるテーブルと、テーブルに対して上下動される切断機本体とを有する。切断機本体は、傾動部材を介してテーブルに対して左右に傾動可能に支持される。切断機本体の傾斜位置は傾動固定部材により解除可能に固定される。切断機本体の傾斜位置は傾動固定部材を解除状態にしてレバー部材の操作により調整される。レバー部材は、軸中心に回転可能にテーブルに連結される支点部と、傾動部材に連結される作用点部を有する。レバー部材は、支点部から延出し、且つ支点部と作用点部の間の距離よりも遠い位置に力点部を備えるアーム部を有する。
【0008】
従って、レバー部材の力点部を上下に傾動操作することで傾動部材が傾動される。これにより、切断機本体の左右傾斜位置が微調整される。梃子の原理により小さな力で切断機本体の傾斜位置を微調整できる。また、不使用時にレバー部材の操作を特に必要としない。このことから傾斜位置決め機構の操作性が高められるとともに構成の簡略化が図られる。
【0009】
本開示の他の特徴によると、レバー部材の長手方向の中央領域に支点部を有する。支点部に対して長手方向の一端側に作用点部を有する。長手方向の他端側に力点部を有する。従って、力点部に加える操作力が効率よく作用点部に伝達される。
【0010】
本開示の他の特徴によると、力点部は、支点部に対して傾動部材の側方、且つ左右方向に突出して上下に傾動可能とした。従って、小さな操作力で切断機本体の傾斜位置を微調整できる。
【0011】
本開示の他の特徴によると、レバー部材と傾動部材を傾動可能に支持する傾動受け部との間に、補助支点部と補助作用点部と補助力点部を有する補助部材を備える。補助支点部又は補助作用点部の一方が傾動受け部に連結され、他方がレバー部材に連結されている。補助力点部と補助支点部との間の距離が、補助作用点部と補助支点との間の距離よりも大きくなっている。
【0012】
従って、梃子の原理を利用した補助部材によりレバー部材の操作がより小さな力でなされる。これにより、微調整機構の操作性を一層高めることができる。
【0013】
本開示の他の特徴によると、補助支点部が傾動部材に連結され、補助作用点部がレバー部材の力点部に連結されている。従って、補助部材の操作によってレバー部材の力点部が上下に操作される。
【0014】
本開示の他の特徴によると、傾動部材と補助部材が、傾動部材の傾動軸線方向についてレバー部材の前側に配置されている。従って、傾動部材と補助部材の後方にレバー部材が配置される。これにより傾動部材に対してレバー部材と補助部材が傾動軸線方向にコンパクト化される。
【0015】
本開示の他の特徴によると、レバー部材の支点部と補助部材の支点部が相互に平行な回転軸線を有する。従って、補助部材の操作方向と切断機本体の傾動方向が一致して、補助部材の直感的な操作が可能となる。これにより、傾斜角度微調整機構の操作性が高まる。
【0016】
本開示の他の特徴によると、レバー部材の支点部が、傾動部材に設けた逃がし部を経てテーブルに連結されている。従って、レバー部材の支点部が、傾動部材の傾動軸線(傾動中心)により接近して配置される。これにより梃子の原理がより効率よく活用される。
【0017】
本開示の他の特徴によると、逃がし部は、傾動部材の傾動軸線を中心軸とする円弧に沿った長溝孔形状に形成されている。従って、傾動部材の大きな強度低下を招くことなく逃がし部が設けられる。
【0018】
本開示の他の特徴によると、卓上切断機は、被切断材が載置されるテーブルと、テーブルに対して上下動される切断機本体とを有する。切断機本体は、傾動部材を介してテーブルに対して左右に傾動可能に支持される。切断機本体の傾斜位置は傾動固定部材により解除可能に固定される。切断機本体の傾斜位置は傾動固定部材を解除状態にしてレバー部材の操作により調整される。レバー部材は、軸中心に回転可能にテーブルに連結される支点部と、傾動部材に連結される作用点部を有する。支点部からアーム部が延出される。
【0019】
従って、レバー部材のアーム部を上下に傾動操作することで傾動部材が傾動される。これにより、切断機本体の左右傾斜位置が微調整される。また、不使用時にレバー部材の操作を特に必要としない。このことから傾斜位置決め機構の操作性が高められるとともに構成の簡略化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】卓上切断機の全体斜視図である。本図は、切断機本体が直角切り位置且つ前方にスライドされた状態を示している。
【
図2】
図1中II矢視図であって、卓上切断機の後面図である。
【
図3】卓上切断機の左側面図である。本図では、ベースとテーブルと傾動支持部が縦断面で示されている。
【
図4】
図3中IV矢視図であって、卓上切断機の下面図である。本図ではベースの図示が省略されている。
【
図5】
図2中V-V線断面矢視図であって、傾動支持部の横断面図である。
【
図6】卓上切断機の全体斜視図である。本図では、微調整機構が分解斜視図で示されている。
【
図7】卓上切断機の後面図である。レバー部材が二点鎖線で示された点が
図2とは異なっている。
【
図8】レバー部材の斜視図である。本図は、後方斜め上方から見た状態を示している。
【
図9】レバー部材の斜視図である。本図は、前方斜め上方から見た状態を示している。
【
図10】補助部材の斜視図である。本図は、後方斜め上方から見た状態を示している。
【
図11】補助部材の斜視図である。本図は、前方斜め下方から見た状態を示している。
【
図12】卓上切断機の全体斜視図である。本図は、右後方斜め上方から見た状態を示している。本図は、切断機本体を左傾斜させた状態を示している。
【
図13】
図12中XIII矢視図であって、卓上切断機の後面図である。
【
図14】卓上切断機の全体斜視図である。本図は、右後方斜め上方から見た状態を示している。本図は、切断機本体を右傾斜させた状態を示している。
【
図15】
図14中XV矢視図であって、卓上切断機の後面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本開示の実施形態を
図1~15に基づいて説明する。本実施形態ではいわゆるスライドマルノコと称される卓上切断機1を例示する。
図1~4に示すように卓上切断機1は、卓上や床面F等に載置されるベース2と、被切断材を載置するためのテーブル3と、切断機本体10を有する。使用者は、卓上切断機1の手前に位置して切断作業を行う。以下の説明において部材及び構成の前後方向は使用者から見て手前を前側とする。また、部材及び構成の上下左右方向は使用者を基準とする。
【0022】
テーブル3は、平面視略円形状を有し、上面が水平な平坦面に形成されている。テーブル3の上面に被切断材Wが載置される。
図3,4に示すようにテーブル3は、ベース2の上方において支軸4を中心にして水平方向に回転可能に支持されている。テーブル3の後部に設けた傾動支持部20を介して切断機本体10が左右に傾動可能に支持されている。傾動支持部20の詳細については後述する。
【0023】
テーブル3の前部にはテーブル延長部3aが設けられている。テーブル延長部3aは前方へ長く延在されている。テーブル延長部3aの上面は、テーブル3の上面に面一に一致している。テーブル延長部3aの上面に被切断材Wを載置できる。テーブル延長部3aの上面には、切断時にチップソー(tipped saw blade)と称される刃具37を下方へ進入させるための刃口3bが設けられている。
【0024】
テーブル3の左右両側方には、補助テーブル5が設けられている。左右の補助テーブル5は、ベース2の左右両側に一体に設けられている。補助テーブル5の上面は、テーブル3の上面に面一に一致している。テーブル3の上面と補助テーブル5の上面に跨って大形の被切断材Wを載置することができる。
【0025】
テーブル3と左右の補助テーブル5の上方には、左右方向に延びかつ上方に延びる壁形状の位置決めフェンス6が設けられている。位置決めフェンス6は、左右の補助テーブル5に支持されている。位置決めフェンス6の前面である位置決め面6aは、テーブル3の回転中心(支軸4の軸線)を通る鉛直面上に位置している。
図3に示すようにテーブル3に載置される被切断材Wは、位置決め面6aに当てることで前後方向に位置決めされる。
【0026】
テーブル3には、水平方向の回転位置をロックするための2系統のテーブルロック機構が設けられている。
図3,4に示すようにベース2の前部の略半周の領域には、円弧形状の第1ロックプレート7が設けられている。第1ロックプレート7には、テーブル3の水平方向の角度位置を指し示す角度目盛りが表示されている。第1ロックプレート7には、テーブル3の回転方向に沿って複数の位置決め凹部7aが設けられている。位置決め凹部7aに、位置決めピン11の先端部が進入されてテーブル3の角度位置が固定される。位置決め凹部7aは、適宜の角度間隔で複数個所に設けられている。位置決め凹部7aごとの角度間隔で、テーブル3の回転位置がロックされる。位置決めピン11は、圧縮ばね11aによってロック側にばね付勢されている。第1系統のテーブルロック機構のロック、アンロック操作は、テーブル延長部3aの前部付近に設けた操作レバー(図では見えていない)の上下操作によりなされる。
【0027】
テーブル3の回転位置を固定するためのテーブルロック機構には上記の位置決めピン11を位置決め凹部7aに進入して行う第1系統に加えて、ベース2側の第2ロックプレート2aをねじ力により押圧部材13で挟み込んで行う第2系統が装備されている。
【0028】
テーブル延長部3aの前面には、上記操作レバーに加えてテーブル固定部材8と傾動固定部材9が設けられている。テーブル固定部材8の回転操作により、上記第2系統のテーブルロック機構がロック、アンロック操作される。
図3に示すようにテーブル固定部材8のねじ軸部8aがテーブル延長部3aの下面に螺合されている。ねじ軸部8aのねじ力により作動軸12がテーブル3の回転中心に向けて(後方に向けて)押圧される。作動軸12は第1系統の位置決めピン11の上方に沿って平行に配置されている。作動軸12の後端部は、テーブル3の下面に支軸13aを介して上下に回動可能に設けた押圧部材13の上部に突き当てられている。このため、作動軸12がねじ力により後方に向けて押圧されると、押圧部材13が支軸13aを中心にして図示反時計回り方向に回転する。
【0029】
押圧部材13の下部がねじ力により第2ロックプレート2aの下面に押圧される。これにより第2ロックプレート2aが押圧部材13とテーブル3の下面との間に挟み込まれて、テーブル3が任意の角度位置で固定される。
図4に示すように第2ロックプレート2aは、円弧形の薄鋼板で、第1ロックプレート7の内周側に沿って固定されている。
【0030】
テーブル固定部材8の後方に、円環形の傾動固定部材9が同軸に配置されている。傾動固定部材9のロック側への回転操作によって切断機本体10の左右傾斜位置が固定される。傾動固定部材9のアンロック側への回転操作により切断機本体10を左右へ傾動させることができる。
図4に示すように傾動固定部材9にはギヤ列を介して1本の中間ロッド14が連係されている。中間ロッド14は、テーブル延長部3a及びテーブル3の下方に沿って前後方向に延在されている。中間ロッド14の後部側は、傾動支持部20の下部まで延出している。傾動固定部材9を回転させると、中間ロッド14が軸回りに回転する。中間ロッド14の後部は傾動部材30に設けた挿通溝孔31bを経て後方へ突き出されている。中間ロッド14の後部にはねじ軸部が設けられている。ねじ軸部には、押圧板16がねじ結合されている。押圧板16は傾動部材30に対する回転が規制されている。押圧板16の前方且つ傾動受け部21の前面側には1つのロックナット15が軸方向移動不能に固定されている。ロックナット15の後面側にはスラストベアリングが介在されている。傾動固定部材9をロック側に締め込み操作すると、傾動受け部21と傾動部材30が中間ロッド14のねじ力によりロックナット15と押圧板16で前後に挟み込まれることで傾動部材30の傾斜位置が固定される。傾動固定部材9をアンロック側に締め込み操作すると、押圧板16による挟み込みが解除されて傾動部材30を左右に傾動可能となる。これにより切断機本体10の傾斜位置を変更することができる。
【0031】
図1~4,6に示すように傾動支持部20は、テーブル3の後部に設けられている。傾動支持部20によって切断機本体10がテーブル3に対して左右傾斜位置を変更可能に支持されている。傾動支持部20は、傾動受け部21と傾動部材30を有する。傾動受け部21はテーブル3の後部に一体に設けられている。傾動受け部21の後面側に、傾動部材30の下部に設けた傾動部31が傾動軸22を介して結合されている。傾動軸22を中心にして傾動部材30が傾動受け部21に対して左右に傾動可能に結合されている。
図3に示すように傾動受け部21の上面には、角度目盛りが表示された目盛り板21aが取り付けられている。傾動部31の前部には、切断機本体10の傾斜位置を指し示す指針31aが取り付けられている。指針31aが指し示す角度を読み取ることで、切断機本体10の傾斜角度を確認することができる。
【0032】
傾動固定部材9の回転操作によりなされる押圧板16に対する中間ロッド14の締め込みにより、傾動受け部21に対する傾動部31の傾斜位置が固定される。これにより、切断機本体10の傾斜位置が固定される。
図4,5に示すように中間ロッド14の後部は、傾動部31に設けた円弧形の挿通溝孔31bを経て傾動部31の後面側に突き出されている。挿通溝孔31bが中間ロッド14(後述する支点部51X)を挿通させる逃がし部として機能する。中間ロッド14の突き出し部には、1つの押圧板16がねじ結合されている。中間ロッド14の押圧板16に対する締め込みにより押圧板16が傾動部31の後面に押圧されて、傾動部31の傾動受け部21に対する傾斜位置が固定される。このため、使用者側の操作しやすい手前側に配置された傾動固定部材9の回転操作により、傾動支持部20の傾斜位置がロック、アンロックされる。
【0033】
中間ロッド14の突き出し部分の後端面に、後述する微調整機構50のレバー部材51が結合されている。レバー部材51は、結合ねじ52により中間ロッド14の後端部に相対回転可能かつ板厚方向に離脱不能に結合されている。
【0034】
図1~3に示すように傾動軸22の後端には、ガイドピン23が結合されている。ガイドピン23はレバー部材51に設けた円弧形の案内溝51aに挿入されている。ガイドピン23により傾動軸22に対するレバー部材51の変位が案内される。レバー部材51の詳細は後述する。傾動受け部21に対する傾動部31の回転軸線であって、切断機本体10の左右方向へ傾動軸線Jは、傾動軸22の軸線に一致している。
図3に示すように傾動軸線Jは、側面視でテーブル3の上面に一致している。また、
図6に示すように傾動軸線Jは、平面視でテーブル3の回転中心(支軸4)及び刃口3bに一致している。中間ロッド14は傾動軸22に対して一定距離だけ偏心して配置されている。
【0035】
傾動受け部21と傾動部31との間には、切断機本体10の直角切り位置と左右傾斜位置(45°)を、位置決めするための傾斜位置決め機構が内装されている。図示は省略したが、傾動受け部21側に、直角切り位置用と左右傾斜位置用のストッパ部が設けられている。傾動部31側に、ストッパねじが設けられている。ストッパねじがストッパ部に当接されて切断機本体10の位置が直角切り位置、左右の傾斜位置に位置決めされる。傾斜位置決め機構による通常の位置決めは傾動固定部材9をアンロック側に回転操作して、傾動受け部21に対する傾動部31の固定状態を解除してなされる。傾動固定部材9をロック側に回転操作すると、切断機本体10が直角切り位置、あるいは左右の傾斜位置に固定される。
【0036】
切断機本体10が直角切り位置に位置された状態では、刃具が被切断材Wの上面に対して直角に切り込まれる(直角切り)。切断機本体10が左方又は右方に傾斜された状態では、刃具が被切断材Wの上面に対して斜めに切り込まれて、いわゆる傾斜切りがなされる。
【0037】
本実施形態の卓上切断機1は、上記の直角切り位置や左右の一定角度の傾斜位置に切断機本体10を位置決めする傾斜位置決め機構に加えて、切断機本体10の傾斜角度を、例えば直角切り位置や左右一定角度の傾斜位置を中心にして微調整するための微調整機構50を備えている。微調整機構50の詳細は後述する。
【0038】
切断機本体10は、傾動部材30の上部に支持されている。切断機本体10は、傾動部材30の上部に設けたスライド支持部Sを介して前後にスライド可能に支持されている。スライド支持部Sは2本のスライドバー24,25とスライド基台部26を備えている。2本のスライドバー24,25は、傾動部材30の上部に支持されている。2本のスライドバー24,25は、傾動部材30の上部から前方に長く延びている。2本のスライドバー24,25の前端部は前端部材28により相互に一定間隔に結合されている。これにより、2本のスライドバー24,25は、上下に平行に配置されている。前部の前端部材28と後部の傾動部材30との間において、2本のスライドバー24,25にはスライド基台部26が前後にスライド可能に支持されている。スライド基台部26に切断機本体10が支持されている。これにより切断機本体10が、テーブル3の上方において2本のスライドバー24,25を介して前後にスライド可能に支持されている。切断機本体10の前後スライド位置は、スライド基台部26に設けたストッパねじ29を締め込むことで固定できる。
【0039】
図3に示すように切断機本体10は、1つの揺動支軸27を介して上下に揺動可能に支持されている。切断機本体10は、本体ベース35を有する。本体ベース35の後部が揺動支軸27を介してスライド基台部26に支持されている。本体ベース35の前部には半円形の固定カバー36が設けられている。固定カバー36により円板形の刃具37の上側ほぼ半周の範囲が覆われている。刃具37は、本体ベース35に回転可能に設けたスピンドル(図では見えていない)に取り付けられている。刃具37の下側ほぼ半周の範囲は、可動カバー39で覆われている。可動カバー39は、切断機本体10の揺動動作に連動して開閉される。切断機本体10が上動端位置(待機位置)に位置する状態では、可動カバー39は全閉状態となって、刃具37の下側半周の範囲のほぼ全体が可動カバー39で覆われる。切断機本体10が下方へ揺動されると、可動カバー39が開かれて刃具37が露出される。刃具37の露出された部位が被切断材Wに切り込まれる。
【0040】
図2,6に示すように本体ベース35の右側部に電動モータが取り付けられている。電動モータは、DCブラシレスモータで、円筒形のモータハウジング40に収用されている。以下電動モータに符号40を用いる。電動モータ40はそのモータ軸線を刃具37の面方向に沿わせた姿勢で取り付けられている。電動モータ40の出力は、ギヤケース40aに内装したベベルギヤを含む減速ギヤ列の噛み合いを経てスピンドルに出力される。
【0041】
本体ベース35の前部にはループ形のハンドル部41が設けられている。ハンドル部41の上部内周側にスイッチレバー42が設けられている。ハンドル部41を把持した手の指先でスイッチレバー42に上方へ引き操作すると電動モータ40が起動して刃具37が回転する。
図3に示すように刃具37の回転方向(
図3において時計回り方向)は、固定カバー36の左側部に白抜き矢印36aで表示されている。ハンドル部41の上部には、ロックオフボタン41aが設けられている。ロックオフボタン41aを押すことで、スイッチレバー42のオン操作が可能になる。これにより不用意な電動モータ40の起動が回避される。
【0042】
電動モータ40の後方において、本体ベース35にはバッテリ取り付け部43が設けられている。バッテリ取り付け部43に1つのバッテリパック44が取り付けられる。バッテリ取り付け部43に取り付けられたバッテリパック44の電力が主として電動モータ40の電源として供給される。バッテリパック44は6面体を有するリチウムイオンバッテリで、
図1において白抜き矢印で示すようにバッテリ取り付け部43に対して下向きにスライドさせて取り付けられる。バッテリパック44は、上向きにスライドさせてバッテリ取り付け部43から取り外すことができる。バッテリパック44は、取り外して別途用意した充電器で充電することで繰り返し利用できる。バッテリパック44は、他の電動工具の電源としても利用できる汎用性を有する。
【0043】
図3に示すようにバッテリ取り付け部43と固定カバー36の後部とに跨って持ち運び用のキャリングハンドル45が取り付けられている。キャリングハンドル45の把持部45aは、切断機本体10を下動端に移動させるとほぼ水平に位置する。切断機本体10を下動位置に固定して把持部45aを把持することで、当該卓上切断機1を楽に持ち運ぶことができる。
【0044】
図1~3に示すように本体ベース35の後部には、集塵ガイド46とホース接続口47が設けられている。集塵ガイド46は、切断機本体10を下動端位置に移動させた姿勢(切断姿勢)で、上下方向に起立して前方が開口した平面視略C字形状の壁形状を有している。集塵ガイド46は、被切断材Wを切断することで生じる切断粉が刃具37の後方または左右両側へと飛散することを抑制する。集塵ガイド46の上部は、ホース接続口47に連通されている。ホース接続口47にダストバッグや集塵機の集塵ホース(何れも図示省略)が接続される。集塵ガイド46に受けられた切断粉がダストボックスや集塵機に効率よく集塵される。これにより切断粉の飛散が抑制されて良好な作業環境が維持される。
【0045】
図1に示すように本体ベース35の右側部には、アダプタ収容部48が設けられている。アダプタ収容部48には、近距離無線通信用の通信アダプタ48aが装着されている。通信アダプタ48aはアダプタ収容部48の内部に防塵状態で収容されている。通信アダプタ48aを介して当該卓上切断機1と例えば集塵機等の他の付帯設備との間で無線通信がなされる。例えばスイッチレバー42のオンオフ操作に連動して集塵機の起動停止がなされる。これにより効率のよい集塵がなされるとともに作業効率が向上する。
【0046】
前記したように切断機本体10は、傾動支持部20を介してテーブル3(被切断材W)に対して左右に傾動可能に設けられている。切断機本体10の左右傾斜位置は、テーブル延長部3aの前部に設けた傾動固定部材9により固定される。傾動固定部材9をアンロック側に回転操作すると、切断機本体10を左右に傾動可能となる。切断機本体10の直角切り位置と左右45°の傾斜位置は、傾動受け部21と傾動部材30の傾動部31との間に介装した傾斜位置決め機構により位置決めされる。傾斜位置決め機構により位置決めされた傾斜位置は、以下説明する微調整機構50により微調整することができる。
【0047】
微調整機構50は、傾動支持部20の後面に沿って設けられている。微調整機構50は、上記したレバー部材51に加えて補助部材55を備えている。
図8,9に示すようにレバー部材51は、鋼板を緩やかに屈曲するほぼV字形に打ち抜いて製作されている。レバー部材51は、支点部51Xと作用点部51Yと力点部51Zを有する梃子の機能を有する。
【0048】
前記したようにレバー部材51は、中間ロッド14の後端に結合ねじ52で結合されている。レバー部材51の長手方向ほぼ中央に円形の支持孔51bが設けられている。支持孔51bに中間ロッド14の後部が相対回転可能に挿入されている。中間ロッド14の後部に結合ねじ52が締め込まれてレバー部材51が中間ロッド14の後部から離脱不能に結合されている。中間ロッド14を介してレバー部材51が傾動支持部20の後面に沿って回動可能に支持されている。このため、中間ロッド14の中心軸線が梃子の支点部51Xに相当する。
【0049】
レバー部材51の左端側に作動ピン53が取り付けられている。作動ピン53は板厚方向前側に突き出されている。作動ピン53は傾動部31の後面に設けた長溝形の作動溝31cに挿入されている。作動溝31cは、傾動支持部20の傾動軸線J(傾動軸22の軸線)を通る径方向に沿って延在されている。作動ピン53は、作動溝31cに対して傾動軸線Jを通る径方向に沿って相対変位可能に挿入されている。作動ピン53の支点部51Xを中心とする円周方向の変位により、傾動部材30が傾動軸線J回りに傾動される。作動ピン53が梃子の作用点部51Yに相当する。
【0050】
図1,2,5に示すようにレバー部材51の右端部側は、使用者が把持して上下動操作するためのアーム部51cとされている。アーム部51cは、傾動部31の後面から右方へ大きく突き出されている。レバー部材51のアーム部51cが梃子の力点部51Zに相当する。使用者が力点部51Zを上下に変位操作すると、レバー部材51が支点部51Xを中心にして上下に傾動(回動)される。レバー部材51が支点部51Xを中心にして回動することで、作用点部51Y(作動ピン53)が支点部51Xを中心にして変位する。作動ピン53が作動溝31c内を長手方向に相対変位しつつ作動溝31cの側壁に力を作用させることで、傾動部材30が傾動軸線Jを中心にして左右に傾動される。作動溝31cは、レバー部材51の支点部51Xが傾動軸線Jに対して偏心していることにより発生する作動ピン53の径方向への相対変位を許容する逃がし溝として機能する。
【0051】
レバー部材51のアーム部51cを下方へ押し下げ操作すると、傾動部材30が右方へ傾動される。レバー部材51のアーム部51cを上方へ押し上げ操作すると、傾動部材30が左方へ傾動される。このように、レバー部材51の回動方向と切断機本体10の傾動方向が一致している。これにより、レバー部材51の直感的な操作が可能となって、微調整機構50の操作性が高まる。
【0052】
図9に示すように支点部51Xと
力点部51Zを結ぶ第1線(距離L1)と、支点部51Xと
作用点部51Yを結ぶ第2線(距離L2)とが概ね120°程度の鈍角を有している。これにより、レバー部材51は、支点部51Xを中心として概ねV字形(山形)に屈曲した形状を有している。支点部51Xと力点部51Zとの間の距離L1は、支点部51Xと作用点部51Yとの間の距離L2より大きくなるようにアーム部51cの傾動部31からの突き出し量が適切に設定されている。距離L1>距離L2の設定によりレバー部材51を梃子として機能させることができる。これにより少ない操作力で切断機本体10の左右傾斜位置を微調整をすることができる。
【0053】
レバー部材51の力点部51Zと傾動受け部21との間に、補助部材55が介装されている。
図10,11に示すように補助部材55は、補助支点部55Xと補助作用点部55Yと補助力点部55Zを有している。補助部材55の左端部には、支持孔55aが設けられている。
図5に示すように支持孔55aには、傾動受け部21に設けた支軸部21bが挿通されている。支軸部21bは、中間ロッド14と平行に設けられている。補助部材55は、支軸部21bを介して上下に回動可能に支持されている。支持孔55aに挿通された支軸部21bが梃子の補助支点部55Xに相当する。これにより、補助部材55の補助支点部55Xの回動軸線とレバー部材51の支点部51Xの回動軸線が平行になっている。
【0054】
支持孔55a(補助支点部55X)の右方には1つのねじ孔55bが設けられている。ねじ孔55bにはガイドローラ56が取り付けられている。ガイドローラ56は、レバー部材51のアーム部51c(力点部51Z)に設けたガイド溝51dに挿入されている。ガイド溝51dは、アーム部51cの長手方向に沿って長く形成されている。ガイドローラ56が補助部材55の補助作用点部55Yに相当する。
【0055】
補助部材55のアーム部55cが補助作用点部55Yからさらに右方へ突き出す状態に設けられている。アーム部55cの主として先端部が梃子の補助力点部55Zに相当する。レバー部材51と同様、補助支点部55Xと補助力点部55Zとの間の距離は、補助支点部55Xと補助作用点部55Yとの間の距離よりも大きくなるようアーム部55cの突き出し量が適切に設定されている。これにより補助部材55を、レバー部材51を上下に操作するための梃子として機能させることができる。
【0056】
補助部材55の補助力点部55Zを上下に操作すると、補助支点部55Xを中心にして補助作用点部55Yが上下に変位する。補助作用点部55Yが上下に変位することで、レバー部材51の力点部51Zが上下に変位する。レバー部材51の力点部51Zが上下に変位することで、傾動部材30の左右傾斜位置を微調整できる。
【0057】
梃子として機能するレバー部材51が、同じく梃子として機能する補助部材55により上下動されることから、使用者はより小さな力で補助部材55の補助力点部55Zを上下に操作して切断機本体10の傾斜位置を微調整することができる。微調整機構50による微調整は、傾斜位置決め機構(ポジティブストップ機構)と同じく傾動固定部材9をアンロック操作した状態でなされる。
【0058】
図12,13に示すように、傾斜位置決め機構により切断機本体10を左方へ例えば30°傾動させた状態で、微調整機構50が操作される。図示するように補助部材55の補助力点部55Zを上方へ押し上げ操作すると、レバー部材51の力点部51Zが同じく上方へ変位する。これにより、レバー部材51が支点部51Xを中心にして図示時計回り方向に回動する。これによりレバー部材51の作用点部51Yが下方へ変位する。作用点部51Yが下方へ変位することで、傾動部材30がその上部側を左方へ変位させる方向に傾動される。これにより、切断機本体10が左30°の傾斜位置からさらに数度の範囲で左方に傾動されて、左傾斜角度が30°より大きくなる方向に微調整される。逆に、補助部材55の補助力点部55Zを下方へ押し下げ操作すると、レバー部材51の力点部51Zが下方へ変位して作用点部51Yが上方へ変位する。これにより傾動部材30がその上部側を右方へ変位させる方向に傾動されて、切断機本体10の左傾斜角度が30°より小さくなる方向に微調整される。微調整後、傾動固定部材9のロック操作により切断機本体10の微調整後の傾斜位置がロックされる。
【0059】
図14,15に示すように傾斜位置決め機構により切断機本体10を右方へ例えば30°傾動させた状態で、微調整機構50が操作される。図示するように補助部材55の補助力点部55Zを下方へ押し下げ操作すると、レバー部材51の力点部51Zが同じく下方へ変位する。これにより、レバー部材51が支点部51Xを中心にして図示反時計回り方向に回動する。これによりレバー部材51の作用点部51Yが上方へ変位する。作用点部51Yが上方へ変位することで、傾動部材30がその上部側を右方へ変位させる方向に傾動される。これにより切断機本体10が右30°の傾斜位置からさらに数度の範囲で右方へ傾動されて、右傾斜角度が30°よりも大きくなる方向に微調整される。逆に、補助部材55の補助力点部55Zを上方へ押し上げ操作すると、レバー部材51の力点部51Zが上方へ変位して作用点部51Yが下方へ変位する。これにより傾動部材30がその上部側を左方へ変位させる方向に傾動されて、切断機本体10の右傾斜角度が30°より小さくなる方向に微調整される。微調整後、傾動固定部材9のロック操作により切断機本体10の微調整後の傾斜位置がロックされる。
【0060】
微調整機構50は、通常の傾斜位置決め機構により位置決めされた直角切り位置や45°の傾斜位置の微調整をする場合の他、傾斜位置決め機構とは独立して用いることができる。傾動固定部材9をアンロック操作した状態で、切断機本体10を例えば10°、20°等の傾斜角度であって、通常の傾斜位置決め機構では位置決めされない傾斜角度の微調整に用いることができる。
【0061】
以上のように構成した卓上切断機1によれば、それぞれ梃子として機能するレバー部材51と補助部材55を備える微調整機構50により切断機本体10の傾斜位置をより小さな力で微調整することができる。直角切り位置や45°傾斜位置への位置決め時(傾斜位置決め機構による通常の位置決め時)であって微調整機構50の不使用時には、当該微調整機構50が大きな動作抵抗となって付加されないことから、当該傾斜位置決め機構の操作性が損なわれることがない。また、傾斜位置決め機構による通常の位置決め時に、微調整機構50について、従来のような特別な解除操作をする必要がない。このことから、傾斜位置決め機構の操作性が高められるとともに傾動支持部20の構成の簡略化が図られる。
【0062】
また、実施例ではレバー部材51の長手方向の中央領域に支点部51Xを有する。支点部51Xに対して長手方向の左端側に作用点部51Yを有し、長手方向の右端側に力点部51Zを有する。これによりレバー部材51が梃子として機能することで、力点部51Zに加える操作力が効率よく作用点部51Yに伝達される。
【0063】
さらに、力点部51Zと支点部51Xとを結ぶ第1線(距離L1)と、作用点部51Yと支点部51Xを結ぶ第2線(距離L2)との間の角度が鈍角(約120°)に設定されている。これによっても、力点部51Zに加える操作力が効率よく作用点部51Yに伝達される。
【0064】
レバー部材51の力点部51Zは、支点部51Xに対して傾動部材30の側方、且つ左右方向に突出するアーム部51cに設定されている。これにより、レバー部材51の力点部51Zに対する必要な操作力をより小さくすることができる。
【0065】
また、例示した微調整機構50によれば、レバー部材51と傾動部材30を傾動可能に支持する傾動受け部21との間に、補助支点部55Xと補助作用点部55Yと補助力点部55Zを有する補助部材55を備える。傾動部材30を傾動させるための梃子として機能するレバー部材51が、同じく梃子として機能する補助部材55により操作される。このことから、使用者はより小さな力で補助部材55を操作して傾動部材30の傾斜位置を微調整することができる。これにより、微調整機構50の操作性を一層高めることができる。
【0066】
例示した微調整機構によれば、傾動部材30と補助部材55が、傾動部材30の傾動軸線J方向についてレバー部材51の前側に配置されている。これにより、傾動部材30に対してレバー部材51と補助部材55が傾動軸線J方向にコンパクトに配置されている。
【0067】
また、レバー部材51の支点部51X(中間ロッド14)と補助部材55の補助支点部55X(支軸部21b)の回転軸線が相互に平行に設定されている。これにより、補助部材55の操作方向と切断機本体10の傾動方向が一致して、補助部材55についても直感的な操作が可能となる。レバー部材51と補助部材55の双方について直感的な操作が可能とされることで、微調整機構の操作性が一層高まる。
【0068】
レバー部材51の支点部51Xが、傾動部材30に設けた逃がし部(挿通溝孔31b)を経てテーブル(傾動受け部21)に連結されている。これによりレバー部材51の支点部51Xが傾動部材30の傾動軸線Jにより接近して配置されている。これによって梃子の原理がより効率よく活用される。
【0069】
逃がし部としての挿通溝孔31bは、傾動部材30の傾動軸線Jを中心軸とする円弧に沿った長溝孔形状に形成されている。従って、逃がし部として傾動部31の周方向の一定領域を欠落させた場合のような傾動部材30の大きな強度低下を招くことがない。
【0070】
以上例示した実施形態には、種々変更を加えることができる。例えば、補助部材55は省略することができる。この場合、レバー部材51の力点部51Zを直接把持して上下に変位操作することで、切断機本体10の左右傾斜位置を微調整することができる。
【0071】
レバー部材51に案内溝51aを設けて、ガイドピン23を挿通させる構成を例示したが、これらは省略することができる。
【0072】
レバー部材51のアーム部51cを傾動部31から右方へ突き出して、補助部材55を傾動部31の右方に配置する構成を例示したが、左側にアーム部を突き出させて、補助部材55を傾動部31の左方に配置する構成としてもよい。
【0073】
レバー部材51の長手方向中央に支点部51Xを配置し、支点部51Xに対して一端側に作用点部51Yを配置し、他端側に力点部51Zを配置する構成を例示したが、支点部と力点部との間に作用点部を配置する構成としてもよい。
【0074】
補助部材55について、補助支点部55Xと補助力点部55Zとの間に補助作用点部55Yを配置する構成を例示したが、レバー部材51と同様、補助支点部に対して一端側に補助作用点部を配置し、他端側に補助力点部を配置する構成としてもよい。
【0075】
レバー部材51の支点部51Xを、傾動部材30の傾動中心(傾動軸線J)から偏心した位置(中間ロッド14の軸線)に設定した構成を例示したが、レバー部材51の支点部は、傾動軸線J上に位置させてもよい。
【0076】
卓上切断機1として、スライド支持部Sにより切断機本体10を前後にスライド可能なスライドマルノコを例示したが、例示した微調整機構50は係るスライド支持部Sを有しない卓上マルノコにも適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
W…被切断材
F…床面
1…卓上切断機(スライドマルノコ)
2…ベース
2a…第2ロックプレート
3…テーブル
3a…テーブル延長部、3b…刃口
4…支軸
5…補助テーブル
6…位置決めフェンス
6a…位置決め面
7…第1ロックプレート
7a…位置決め凹部
8…テーブル固定部材
8a…ねじ軸部
9…傾動固定部材
10…切断機本体
11…位置決めピン
11a…圧縮ばね
12…作動軸
13…押圧部材
13a…支軸
14…中間ロッド
15…ロックナット
16…押圧板
20…傾動支持部
21…傾動受け部
21a…目盛り板、21b…支軸部
22…傾動軸
J…傾動軸線
23…ガイドピン
S…スライド支持部
24…スライドバー(上側)
25…スライドバー(下側)
26…スライド基台部
27…揺動支軸
28…前端部材
29…ストッパねじ
30…傾動部材
31…傾動部
31a…指針、31b…挿通溝孔、31c…作動溝
35…本体ベース
36…固定カバー
36a…白抜き矢印
37…刃具
39…可動カバー
40…モータハウジング(電動モータ)
40a…ギヤケース(減速ギヤ列)
41…ハンドル部
41a…ロックオフボタン
42…スイッチレバー
43…バッテリ取り付け部
44…バッテリパック
45…キャリングハンドル
45a…把持部
46…集塵ガイド
47…ホース接続口
48…アダプタ収容部
48a…通信アダプタ
50…微調整機構
51…レバー部材
51a…案内溝、51b…支持孔、51c…アーム部、51d…ガイド溝
51X…支点部、51Y…作用点部、51Z…力点部
L1…支点部51Xと作用点部51Yを結ぶ第1線の距離
L2…支点部51Xと力点部51Zを結ぶ第2線の距離
52…結合ねじ
53…作動ピン
55…補助部材
55a…支持孔、55b…ねじ孔、55c…アーム部
55X…補助支点部、55Y…補助作用点部、55Z…補助力点部
56…ガイドローラ