(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20240826BHJP
【FI】
G03G15/16 103
(21)【出願番号】P 2020210845
(22)【出願日】2020-12-18
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169155
【氏名又は名称】倉橋 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075638
【氏名又は名称】倉橋 暎
(72)【発明者】
【氏名】北郷 慎也
【審査官】内藤 万紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-135374(JP,A)
【文献】特開2017-167217(JP,A)
【文献】特開2013-218244(JP,A)
【文献】特開2004-198974(JP,A)
【文献】特開2017-142305(JP,A)
【文献】特開2003-215992(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0070000(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する回転可能な無端状のベルトと、
前記ベルトを張架する複数の張架ローラであって、内ローラ、及び前記ベルトの回転方向に関する前記内ローラよりも上流において前記内ローラに隣接して配置された上流ローラを含む複数の張架ローラと、
前記内ローラと対向して配置され、前記ベルトの外周面に当接して前記ベルトから記録材へトナー像を転写する転写部を形成する外部材と、
前記ベルトの回転方向に関する前記内ローラよりも上流かつ前記上流ローラよりも下流で前記ベルトの内周面に接触可能であり、前記ベルトを弾性付勢して内周面側から外周面側に向けて押圧可能な押圧部材と、
前記ベルトを押圧する方向及びその逆方向に前記押圧部材を移動させるように移動可能な移動部を備えた移動機構と、を有し、
前記押圧部材による前記ベルトの押圧量を所定の押圧量として前記ベルトから記録材にトナー像を転写するモードを実行可能な画像形成装置において、
前記モードを実行する際の前記移動部の位置の設定に関連する前記画像形成装置の構成の個体差に関する情報を記憶する記憶部と、
前記モードを実行する際の前記移動部の位置を、前記個体差に関する情報に基づいて設定する制御部と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記個体差に関する情報は、前記押圧部材の付勢力に関する情報又は前記ベルトの張力に関する情報の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記個体差に関する情報は、前記押圧部材の材料特性又は寸法、前記移動部が所定の位置にある場合の前記押圧部材の位置、前記押圧部材の所定の付勢力が得られる場合の前記移動部の位置、前記押圧部材の位置と前記移動部の移動量との関係、前記ベルトの材料特性又は寸法、前記複数の張架ローラのうち少なくとも一つの張架ローラの材料特性、位置又は寸法、前記ベルトに張力を付与する張力付与手段の付勢力、のうち少なくとも一つの情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記個体差に関する情報は、前記押圧部材の付勢力に関する情報又は前記ベルトの張力に関する情報の少なくとも一方に基づいて設定された、前記モードを実行する際の前記移動部の位置に関する情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記個体差に関する情報が付帯された情報付帯手段と、
前記情報付帯手段に付帯された前記個体差に関する情報を前記記憶部に記憶させるための入力手段と、
を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記情報付帯手段は、前記押圧部材又は前記ベルトの少なくとも一方を含むユニットに設けられていることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記情報付帯手段は、前記個体差に関する情報が記載された記載部を有し、
前記入力手段は、操作者による前記記載部に記載された情報の入力を受け付ける操作部を有することを特徴とする請求項5又は6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記移動部は、前記ベルトの幅方向と略平行な回動軸線の周りを回動可能であり、前記制御部は、前記モードを実行する際の前記移動部の回動方向に関する位置を設定することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記移動機構は、前記移動部を回動させるモータを有し、前記制御部は、前記モータの駆動量を制御して前記移動部の回動方向に関する位置を制御することを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記押圧部材は、長手方向が前記ベルトの幅方向と略平行に配置され、短手方向における前記ベルトの回転方向の上流側の端部が前記移動部と接続され、短手方向における前記ベルトの回転方向の下流側の端部が前記ベルトの内周面と接触可能な板状部材で構成されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
トナー像を担持する回転可能な無端状のベルトと、
前記ベルトを張架する複数の張架ローラであって、内ローラ、及び前記ベルトの回転方向に関する前記内ローラよりも上流において前記内ローラに隣接して配置された上流ローラを含む複数の張架ローラと、
前記内ローラと対向して配置され、前記ベルトの外周面に当接して前記ベルトから記録材へトナー像を転写する転写部を形成する外部材と、
前記ベルトの回転方向に関する前記内ローラよりも上流かつ前記上流ローラよりも下流で前記ベルトの内周面に接触可能であり、前記ベルトを弾性付勢して内周面側から外周面側に向けて押圧可能な押圧部材と、
前記ベルトを押圧する方向及びその逆方向に前記押圧部材を移動させるように移動可能な移動部を備えた移動機構と、を有し、
前記押圧部材又は前記ベルトの少なくとも一方を含むユニットの交換が可能であり、
前記押圧部材による前記ベルトの押圧量を所定の押圧量として前記ベルトから記録材にトナー像を転写するモードを実行可能な画像形成装置において、
前記モードを実行する際の前記移動部の位置の設定に関する情報を記憶する記憶部と、
前記ユニットの交換が行われた場合に、前記記憶部に記憶される前記情報を、該交換前の前記ユニットに対応する情報から該交換後の前記ユニットに対応する情報に更新する処理を行う制御部と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
前記ユニットは、前記押圧部材及び前記ベルトの両方を含むか、又は前記押圧部材及び前記ベルトのうち前記押圧部材のみを含むことを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式や静電記録方式を用いたプリンタ、印刷機、複写機、ファクシミリ装置、又はこれらのうち複数の機能を有する複合機などの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式などを用いた画像形成装置には、トナー像を担持して搬送する像担持体としての回転可能な無端状のベルト(以下、単に「ベルト」ともいう。)を有するものがある。このようなベルトとして、例えば、第1の像担持体としての感光体などから1次転写されたトナー像を紙などのシート状の記録材に2次転写するために搬送する、第2の像担持体としての中間転写ベルトがある。以下、主に、中間転写ベルトを有する中間転写方式を採用した画像形成装置を例に説明する。
【0003】
中間転写ベルトを用いた画像形成装置では、画像形成部において感光体などに形成されたトナー像が、1次転写部において中間転写ベルトに1次転写される。また、中間転写ベルトに1次転写されたトナー像は、2次転写部で記録材に2次転写される。中間転写ベルトの内周面側に設けられた内部材(2次転写内部材)と、中間転写ベルトの外周面側に設けられた外部材(2次転写外部材)と、によって、中間転写ベルトと外部材との接触部である2次転写部が形成される。内部材としては、中間転写ベルトを張架する複数の張架ローラのうちの一つである2次転写内ローラが用いられる。外部材としては、中間転写ベルトを挟んで2次転写内ローラと対向する位置に配置され、2次転写内ローラに向けて押圧される2次転写外ローラが用いられることが多い。そして、2次転写外ローラにトナーの帯電極性とは逆極性の電圧が印加(又は2次転写内ローラにトナーの帯電極性と同極性の電圧が印加)されることで、2次転写部において中間転写ベルト上のトナー像が記録材上に2次転写される。なお、記録材に関して、「先端」、「後端」とは、それぞれ記録材の搬送方向に関する先端、後端のことをいうものである。また、中間転写ベルトの回転方向に関する2次転写部の上流を、単に「2次転写部の上流」などともいう。
【0004】
中間転写ベルト上に形成されたトナー像を記録材に対して高精度に転写するためには、2次転写部の上流における、中間転写ベルトの回転方向に関する中間転写ベルトと記録材との接触長さが重要になる。該接触長さが長い場合には、中間転写ベルトと記録材との速度差でトナーと記録材とが摺擦することによる画像不良などが発生する可能性がある。一方、該接触長さが短い場合には、記録材と中間転写ベルトとの間の空隙において発生する放電による画像不良などが発生する可能性がある。そのため、2次転写部の上流における中間転写ベルトに対する記録材の先端の当接位置などに鑑みて、記録材の搬送姿勢や中間転写ベルトの張架レイアウトが決定される。
【0005】
一方、近年、例えば商業印刷市場における記録材の多様化に伴い、高剛度の厚紙から低剛度の薄紙まで多種多様な記録材に対して良好な転写を行うことが求められている。そして、特に、厚紙などの剛度が高い記録材が用いられる場合には、上記当接位置に記録材が突入する際に、中間転写ベルトが変形しやすくなる。これにより、2次転写部の上流において中間転写ベルトと記録材との間に微小な空隙が形成され、該空隙における放電に起因による画像不良などが発生することがある。したがって、2次転写部の上流における中間転写ベルトの変形を抑制し、かつ、高精度に2次転写部の上流における中間転写ベルトの所望の形状(姿勢)を形成することが求められる。
【0006】
特許文献1では、中間転写ベルトの回転方向に関する中間転写ベルトに対する記録材の先端の当接位置(タッキング位置)の上流に、中間転写ベルトの内周面に接触して中間転写ベルトを押圧する平面性矯正部材を設けた構成が提案されている。特許文献1では、平面性矯正部材として、可撓性バッフル板や弾性ロールが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、2次転写部の上流に中間転写ベルトの内周面に接触して中間転写ベルトを押圧する押圧部材を設けることで、2次転写部の上流における中間転写ベルトの形状を所望の形状とすることができる。
【0009】
しかしながら、押圧部材の位置を予め決められた所定の位置とすると、画像形成装置の個体ごと、又は中間転写ベルトユニットなどの交換単位の個体ごとに、2次転写部の上流における中間転写ベルトの形状がばらつくことがある。これは、押圧部材の材料特性(物性)や寸法、中間転写ベルトのテンションなどのばらつきにより、押圧部材の撓み量がばらつくためである。そして、2次転写部の上流における中間転写ベルトの形状(姿勢)がばらつくと、2次転写部の上流における中間転写ベルトと記録材との接触長さが適切な値からずれて、上述のような画像不良の原因になることがある。
【0010】
なお、以上では中間転写ベルトから記録材へのトナー像の転写部である2次転写部を例として従来の課題について説明したが、感光体などの他のベルト状の像担持体から記録材へのトナー像の転写部に関しても同様の課題が生じ得る。
【0011】
したがって、本発明の目的は、ベルトの回転方向に関する転写部の上流におけるベルトの形状のばらつきによる画像不良を抑制することのできる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、トナー像を担持する回転可能な無端状のベルトと、前記ベルトを張架する複数の張架ローラであって、内ローラ、及び前記ベルトの回転方向に関する前記内ローラよりも上流において前記内ローラに隣接して配置された上流ローラを含む複数の張架ローラと、前記内ローラと対向して配置され、前記ベルトの外周面に当接して前記ベルトから記録材へトナー像を転写する転写部を形成する外部材と、前記ベルトの回転方向に関する前記内ローラよりも上流かつ前記上流ローラよりも下流で前記ベルトの内周面に接触可能であり、前記ベルトを弾性付勢して内周面側から外周面側に向けて押圧可能な押圧部材と、前記ベルトを押圧する方向及びその逆方向に前記押圧部材を移動させるように移動可能な移動部を備えた移動機構と、を有し、前記押圧部材による前記ベルトの押圧量を所定の押圧量として前記ベルトから記録材にトナー像を転写するモードを実行可能な画像形成装置において、前記モードを実行する際の前記移動部の位置の設定に関連する前記画像形成装置の構成の個体差に関する情報を記憶する記憶部と、前記モードを実行する際の前記移動部の位置を、前記個体差に関する情報に基づいて設定する制御部と、を有することを特徴とする画像形成装置である。
【0013】
本発明の他の態様によると、トナー像を担持する回転可能な無端状のベルトと、前記ベルトを張架する複数の張架ローラであって、内ローラ、及び前記ベルトの回転方向に関する前記内ローラよりも上流において前記内ローラに隣接して配置された上流ローラを含む複数の張架ローラと、前記内ローラと対向して配置され、前記ベルトの外周面に当接して前記ベルトから記録材へトナー像を転写する転写部を形成する外部材と、前記ベルトの回転方向に関する前記内ローラよりも上流かつ前記上流ローラよりも下流で前記ベルトの内周面に接触可能であり、前記ベルトを弾性付勢して内周面側から外周面側に向けて押圧可能な押圧部材と、前記ベルトを押圧する方向及びその逆方向に前記押圧部材を移動させるように移動可能な移動部を備えた移動機構と、を有し、前記押圧部材又は前記ベルトの少なくとも一方を含むユニットの交換が可能であり、前記押圧部材による前記ベルトの押圧量を所定の押圧量として前記ベルトから記録材にトナー像を転写するモードを実行可能な画像形成装置において、前記モードを実行する際の前記移動部の位置の設定に関する情報を記憶する記憶部と、前記ユニットの交換が行われた場合に、前記記憶部に記憶される前記情報を、該交換前の前記ユニットに対応する情報から該交換後の前記ユニットに対応する情報に更新する処理を行う制御部と、を有することを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ベルトの回転方向に関する転写部の上流におけるベルトの形状のばらつきによる画像不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図4】移動機構の動作を説明するための模式図である。
【
図5】移動機構のカムの回転角度と押圧部材の位置との関係の一例を模式的に示すグラフ図である。
【
図6】個体差に応じた押圧部材の位置の設定に関する概略ブロック図である。
【
図7】個体差情報の付帯手段の例を示す模式図である。
【
図8】個体差情報の入力手段の例を示す模式図である。
【
図9】個体差に応じた押圧部材の位置の設定の効果を説明するための模式図である。
【
図10】ジョブの動作の一例のフローチャート図である。
【
図11】ユニットの交換の際の処理の一例のフローチャート図である。
【
図12】押圧部材の押圧量(侵入量)を説明するための模式図である。
【
図13】押圧部材が無い場合の課題を説明するための模式的な断面図である。
【
図14】中間転写ベルトの形状のばらつきの課題を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0017】
[実施例1]
1.画像形成装置の全体的な構成及び動作
図1は、本実施例の画像形成装置100の概略断面図である。本実施例の画像形成装置100は、中間転写方式を採用したタンデム型のプリンタである。画像形成装置100は、例えば、パーソナルコンピュータなどの外部装置から送信された画像信号に応じて、電子写真方式を用いて紙などのシート状の記録材(転写材、シート、記録媒体、メディア)Pにフルカラー画像を形成することができる。
【0018】
画像形成装置100は、複数の画像形成部(ステーション)として、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の画像を形成する4つの画像形成部10Y、10M、10C、10Kを有する。これらの画像形成部10Y、10M、10C、10Kは、後述する中間転写ベルト31の略水平に配置される画像転写面の移動方向に沿って一列に配置されている。各画像形成部10Y、10M、10C、10Kにおける同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、いずれかの色用の要素であることを示す符号の末尾のY、M、C、Kを省略して総括的に説明することがある。本実施例では、画像形成部10は、後述する感光ドラム11(11Y、11M、11C、11K)、帯電器12(12Y、12M、12C、12K)、露光装置13(13Y、13M、13C、13K)、現像器14(14Y、14M、14C、14K)、1次転写ローラ15(15Y、15M、15C、15K)、クリーニング装置16(16Y、16M、16C、16K)などを有して構成される。
【0019】
画像形成装置100は、トナー像を担持する第1の像担持体としての、回転可能なドラム型(円筒形)の感光体(電子写真感光体)である感光ドラム11を有する。感光ドラム11は、駆動源としてのドラム駆動モータ(図示せず)から駆動力が伝達されて、
図1中の矢印R1方向(反時計回り方向)に、所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。回転する感光ドラム11の表面は、帯電手段としての帯電器12によって所定の極性(本実施例では負極性)の所定の電位に一様に帯電処理される。帯電処理時に、帯電器12には、帯電電源(図示せず)により所定の帯電電圧(帯電バイアス)が印加される。帯電処理された感光ドラム11の表面は、露光手段としての露光装置13によって画像信号に応じて走査露光され、感光ドラム11上に静電像(静電潜像)が形成される。本実施例では、露光装置13は、画像信号(画像情報)に応じて変調されたレーザ光を感光ドラム11上に照射するレーザスキャナー装置で構成されている。感光ドラム11上に形成された静電像は、現像手段としての現像器14によって現像剤としてのトナーが供給されて現像(可視化)され、感光ドラム11上にトナー像(トナー画像、現像剤像)が形成される。本実施例では、一様に帯電処理された後に露光されることで電位の絶対値が低下した感光ドラム11上の露光部(イメージ部)に、感光ドラム11の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)に帯電したトナーが付着する(反転現像)。現像時に、現像器14が有する現像剤担持体としての現像ローラには、現像電源(図示せず)により所定の現像電圧(現像バイアス)が印加される。本実施例では、現像時のトナーの帯電極性であるトナーの正規の帯電極性は負極性である。
【0020】
4つの感光ドラム11Y、11M、11C、11Kと対向するように、トナー像を担持する第2の像担持体としての、無端状のベルトで構成された回転可能な中間転写体である中間転写ベルト31が配置されている。中間転写ベルト31は、複数の張架ローラ(支持ローラ)としての駆動ローラ33、テンションローラ34、2次転写前ローラ35、及び2次転写内ローラ32に掛け回されて、所定のテンション(張力)で張架されている。駆動ローラ33は、中間転写ベルト31に駆動力を伝達する。駆動ローラ33は、駆動源としてのベルト駆動モータ(図示せず)から駆動力が伝達されて回転駆動される。これにより、中間転写ベルト31は、駆動ローラ33から駆動が入力されて、
図1中の矢印R2方向(時計回り方向)に、感光ドラム11の周速度と対応する周速度(プロセススピード)で回転(周回移動)する。テンションローラ34は、中間転写ベルト31に所定のテンションを付与し、中間転写ベルト31のテンションを一定に制御する。テンションローラ34は、その回転軸線方向の両端部において、張力付与手段(付勢手段)としての付勢部材である圧縮コイルバネで構成されたテンションバネ36によって、中間転写ベルト31の内周面側から外周面側に向けて付勢されている。2次転写前ローラ35は、中間転写ベルト31の回転方向(表面の移動方向)に関する2次転写部N2(後述)の上流近傍の中間転写ベルト31の面を形成する。2次転写内ローラ(内部材)32は、本実施例では、2次転写手段としての2次転写部材として機能する。複数の張架ローラのうち駆動ローラ33以外の張架ローラは、中間転写ベルト31の回転に伴って従動回転する。また、中間転写ベルト31の内周面側には、各感光ドラム11Y、11M、11C、11Kに対応して、1次転写手段としてのローラ状の1次転写部材である1次転写ローラ15Y、15M、15C、15Kが配置されている。1次転写ローラ15は、中間転写ベルト31を感光ドラム11に向けて押圧して、感光ドラム11と中間転写ベルト31との接触部である1次転写部(1次転写ニップ)N1を形成する。また、中間転写ベルト31の内周面側において、中間転写ベルト31の回転方向に関する2次転写内ローラ32よりも上流かつ2次転写前ローラ35よりも下流には、押圧部材70が設けられている。押圧部材70、及びこの押圧部材70の位置を変更する移動機構71(
図3)については後述して更に説明する。
【0021】
上述のように感光ドラム11上に形成されたトナー像は、1次転写部N1において、回転している中間転写ベルト31上に1次転写される。1次転写時に、1次転写ローラ15には、1次転写電源(図示せず)により、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の直流電圧である1次転写電圧(1次転写バイアス)が印加される。例えば、フルカラー画像の形成時には、各感光ドラム11上に形成されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像が、中間転写ベルト31上の同一画像形成領域に重ね合わされるようにして順次1次転写される。本実施例では、1次転写部N1が、中間転写ベルト31にトナー像を形成する画像形成位置である。そして、中間転写ベルト31は、画像形成位置で担持されたトナー像を搬送する回転可能な無端状のベルトの一例である。
【0022】
中間転写ベルト31の外周面側において、2次転写内ローラ32と対向する位置には、2次転写外ローラ(外部材)41が配置されている。2次転写外ローラ41は、本実施例では、2次転写内ローラ32の対向部材(対向電極)として機能する。2次転写外ローラ41は、中間転写ベルト31を介して2次転写内ローラ32に向けて押圧され、中間転写ベルト31と2次転写外ローラ41との接触部である2次転写部(2次転写ニップ)N2を形成する。上述のように中間転写ベルト31上に形成されたトナー像は、2次転写部N2において、中間転写ベルト31と2次転写外ローラ41とに挟持されて搬送されている記録材P上に2次転写される。本実施例では、2次転写時に、2次転写内ローラ32には、2次転写電源(図示せず)により、トナーの正規の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)の直流電圧である2次転写電圧(2次転写バイアス)が印加される。本実施例では、2次転写外ローラ41は、電気的に接地(グランドに接続)されている。なお、2次転写外ローラ41を2次転写部材として用いてこれにトナーの正規の帯電極性とは逆極性の2次転写電圧を印加し、2次転写内ローラ32を対向電極として用いてこれを電気的に接地してもよい。
【0023】
記録材Pは、記録材収納部としての記録材カセット61a~61cに格納されている。記録材カセット61a~61cに格納された記録材Pは、給送手段としての給送部材である給送ローラ62a~62cのいずれかが回転駆動されることで、給送搬送路63へと送り出される。この記録材Pは、搬送手段としての搬送部材である搬送ローラ対64などによって、搬送手段としての搬送部材であるレジストローラ対21へと搬送され、一旦停止させられる。この記録材Pは、レジストローラ対21が回転駆動されることで、中間転写ベルト31上のトナー像とタイミングが合わされて2次転写部N2へと送り込まれる。
【0024】
記録材Pの搬送方向に関するレジストローラ対21よりも下流かつ2次転写部N2よりも上流には、2次転写部N2に記録材Pを案内するための搬送ガイド(転写前ガイド)22が設けられている。搬送ガイド22は、記録材Pのオモテ面(搬送ガイド22を通過した直後にトナー像が転写される面)に接触可能な第1のガイド部材22aと、記録材Pのウラ面(オモテ面とは反対側の面)に接触可能な第2のガイド部材22bと、を有して構成される。第1のガイド部材22aと第2のガイド部材22bとは対向して配置され、これら両部材の間を記録材Pが通過する。第1のガイド部材22aは、記録材Pの中間転写ベルト31に近づく方向への移動を規制する。第2のガイド部材22bは、記録材Pの中間転写ベルト31から遠ざかる方向への移動を規制する。
【0025】
トナー像が転写された記録材Pは、搬送ベルト(定着前搬送装置)23などによって、定着手段としての定着装置80へと搬送される。定着装置80は、未定着のトナー像を担持した記録材Pを、定着回転体対によって挟持して搬送することで加熱及び加圧して、トナー像を記録材Pの表面に定着(溶融、固着)させる。トナー像が定着された記録材Pは、排出搬送経路91を通って、画像形成装置100の装置本体110の外部(機外)に設けられた排出トレイ92へと排出(出力)される。
【0026】
一方、1次転写後に感光ドラム11上に残留したトナー(1次転写残トナー)などの付着物は、クリーニング手段としてのクリーニング装置16によって感光ドラム11上から除去されて回収される。また、2次転写後に中間転写ベルト31上に残留したトナー(2次転写残トナー)などのの付着物は、中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーニング装置37によって中間転写ベルト31上から除去されて回収される。
【0027】
なお、本実施例では、中間転写ベルト31、各張架ローラ32~35、各1次転写ローラ15、ベルトクリーニング装置37、これらを支持するフレーム(図示せず)などを有して、ベルト搬送装置としての中間転写ベルトユニット30が構成されている。本実施例では、中間転写ベルトユニット30には更に、詳しくは後述する押圧部材70、及びこの押圧部材70の位置を変更する移動機構71(
図3)が設けられている。中間転写ベルトユニット30は、メンテナンス又は交換のために画像形成装置100の装置本体110に対して着脱可能とされている。
【0028】
ここで、中間転写ベルト31としては、単層又は多層構造の樹脂系材料で構成されたもの、樹脂材料で構成された樹脂層と弾性材料で構成された弾性層とを備えた多層構造のものなどを使用することができる。また、本実施例では、2次転写内ローラ32は、金属製の芯金(芯材)外周に、電子導電性のゴムの弾性層が設けられて構成されている。また、本実施例では、2次転写前ローラ35は、金属ローラで構成されている。また、本実施例では、2次転写外ローラ41は、金属製の芯金(芯材)の外周に、イオン導電性の発泡ゴムの弾性層が設けられて構成されている。また、本実施例では、2次転写外ローラ41の回転軸線方向の両端部を軸支する軸受部材(図示せず)は、2次転写内ローラ32に向かう方向及びその逆方向にスライド移動可能とされている。この軸受部材は、付勢手段としての付勢部材(弾性部材)である圧縮コイルバネで構成された押圧バネ42(
図2)によって、2次転写内ローラ32に向けて押圧されている。これにより、2次転写外ローラ41は、中間転写ベルト31を挟んで2次転写内ローラ32に対して所定の圧力で当接し、2次転写部N2を形成する。なお、2次転写内ローラ32を含む中間転写ベルト31の張架ローラ、及び2次転写外ローラ41のそれぞれの回転軸線方向は互いに略平行である。
【0029】
2.2次転写部の上流における中間転写ベルトの形状
次に、2次転写部N2の上流における中間転写ベルト31の形状(姿勢)について説明する。
図2は、本実施例の画像形成装置100における2次転写部N2の上流における中間転写ベルト31の形状を説明するための模式的な断面図(2次転写内ローラ32の回転軸線方向と略直交する断面)である。また、
図13は、押圧部材70が設けられていない比較例の構成における2次転写部N2の上流における中間転写ベルト31の形状を説明するための模式的な断面図(2次転写内ローラ32の回転軸線方向と略直交する断面)である。なお、比較例についても、本実施例のものに対応する要素には同一の符号を付している。
【0030】
図2(a)は、記録材Pが2次転写部N2に移動する前の状態を示し、
図2(b)は、記録材Pが2次転写部N2に移動した後の状態を示し、
図2(c)は、
図2(b)における2次転写部N2の近傍を拡大して示している。同様に、
図13(a)は、記録材Pが2次転写部N2に移動する前の状態を示し、
図13(b)は、記録材Pが2次転写部N2に移動した後の状態を示し、
図13(c)は、
図13(b)における2次転写部N2の近傍を拡大して示している。
【0031】
図2に示すように、本実施例では、2次転写内ローラ32と2次転写前ローラ35とで張架されることで形成される中間転写ベルト31の形状に対し、2次転写外ローラ41が2次転写内ローラ32に向かって押圧バネ42により弾性付勢される。これにより、中間転写ベルト31が2次転写内ローラ32と2次転写外ローラ41とで挟持されて2次転写部N2が形成される。
【0032】
また、本実施例では、詳しくは後述するように、2次転写部N2の上流には、2次転写内ローラ32に近接して押圧部材70が設けられている。本実施例では、少なくとも一つの所定のモードでの画像形成時(2次転写時)には、押圧部材70の先端部と中間転写ベルト31の内周面とが接触した状態とされる。押圧部材70は、中間転写ベルト31の内周面に接触して、中間転写ベルト31を内周面側から外周面側へ押圧することができる。これにより、押圧部材70は、2次転写内ローラ32と2次転写前ローラ35との間に形成される中間転写ベルト31の張り面を、中間転写ベルト31の内周面側から外周面側へ張り出させることができる。本実施例では、押圧部材70は、樹脂製の板状部材で形成されており、押圧部材70は撓み弾性を利用して中間転写ベルト31を弾性付勢する。したがって、押圧部材70により中間転写ベルト31を押圧した際に、押圧部材70の形状(撓み量、変形量)は、押圧部材70が中間転写ベルト31を付勢する付勢力と、中間転写ベルト31の張力によって生じる抗力と、が釣り合う形状(ここでは「静定形状」ともいう。)に決まり、この押圧部材70の静定形状によって2次転写部N2の上流における中間転写ベルト31の形状が形成される。
【0033】
また、本実施例では、詳しくは後述するように、画像形成装置100は、移動機構71(
図3)の作用により押圧部材70の位置を変更することが可能な構成となっている。これにより、本実施例では、画像形成装置100は、押圧部材70の静定形状、すなわち、2次転写部N2の上流における中間転写ベルト31の形状を制御することが可能な構成となっている。
【0034】
本実施例では、2次転写内ローラ32には、中間転写ベルト31上のトナー像を構成するトナーの帯電極性と同極性のバイアスが印加され、2次転写外ローラ41は、アースに接続される。これにより、2次転写部N2に転写電界が形成される。転写電界が形成された2次転写部N2には、記録材Pが搬送ガイド22(
図1)により案内されながら送られてくる。
図2(a)に示すように、この記録材Pは、その先端が2次転写部N2の上流における中間転写ベルト31と当接し、更に中間転写ベルト31の表面に形成されたトナー像と接触した状態で2次転写部N2に向かって搬送される。そして、
図2(b)に示すように、この記録材Pが2次転写部N2に搬送されると、2次転写内ローラ32と2次転写外ローラ41との間の加圧作用と、転写電界による電気的作用とにより、中間転写ベルト31からこの記録材Pにトナー像が転写される。
【0035】
ここで、高精度な2次転写のためには、記録材Pが2次転写部N2に搬送される際の、2次転写部N2の上流における、中間転写ベルト31の回転方向に関する中間転写ベルト31と記録材Pとが接触する長さ(ここでは「接触長さ」ともいう。)が重要になる。該接触長さが長い場合には、中間転写ベルト31の表面に形成されたトナー像と記録材Pとが摺擦することによる画像不良などが発生する可能性がある。一方、該接触長さが短い場合には、中間転写ベルト31と記録材Pとの間の空隙(隙間)G(
図2(c))が大きくなり、該空隙Gにおいて発生する放電現象による画像不良などが発生する可能性がある。特に、厚紙やコート紙などの剛度が高い記録材Pが用いられる場合には、2次転写部N2の上流における中間転写ベルト31に対する記録材Pの先端の当接位置に記録材Pが突入する際に、中間転写ベルト31が変形しやすくなる。これにより、上記空隙Gが発生しやくなり、該空隙Gにおける放電による画像不良などが発生しやすくなることがある。
【0036】
本実施例のように押圧部材70を設けることにより、2次転写部N2の上流における中間転写ベルト31と記録材Pとの接触長さを適切に設定しやすくなる。特に、本実施例では、詳しくは後述する移動機構71により押圧部材70の位置を可変制御することで、2次転写部N2の上流における中間転写ベルト31の形状を制御することができる。これにより、2次転写部N2の上流における中間転写ベルト31と記録材Pとの接触長さを最適化することで、トナー像を安定して2次転写することができる。さらに、厚紙やコート紙などの剛度が高い記録材Pが用いられる場合でも、押圧部材70の弾性付勢による効果で、記録材Pと中間転写ベルト31とが接触した際の中間転写ベルト31の変形を抑制し、中間転写ベルト31と記録材Pとの間の空隙Gが大きくなることを抑制することができる。
【0037】
一方、
図13(a)~(c)に示すように、押圧部材70がない場合には、記録材Pが2次転写部N2に搬送される際に、2次転写部N2の上流における中間転写ベルト31が変形し、中間転写ベルト31と記録材Pとの間の空隙Gが大きくなることがある。そして、該空隙Gが大きくなることによる放電に起因する画像不良などが発生することがある。これは、上述のように、特に、厚紙やコート紙などの剛度が高い記録材Pが用いられる場合に発生しやすい。
【0038】
このように、本実施例の画像形成装置100は、押圧部材70の作用により、安定した画質の成果物を提供することができる。特に、本実施例の画像形成装置100は、押圧部材70の作用により、厚紙やコート紙などの剛度の高い記録材Pが用いられる場合でも、高画質の成果物を提供することができる。
【0039】
なお、本実施例の画像形成装置100は、高生産性を実現する装置であり、中間転写ベルト31は400mm/sの速度で搬送される。また、本実施例の画像形成装置100では、トナーは負の極性を帯びている。そして、本実施例の画像形成装置100では、この中間転写ベルト31の搬送速度においても適切な転写性能を確保するため、2次転写内ローラ32には-10[kV]の高圧バイアスが印加される。ただし、中間転写ベルト31の搬送速度、トナーの極性、2次転写電圧の値は、これらに限定されるものではない。
【0040】
3.押圧部材及び移動機構
次に、本実施例における押圧部材70、及びこの押圧部材70の位置を変更する移動機構71について説明する。
図3は、本実施例における押圧部材70及び移動機構71を示す概略斜視図である。また、
図4は、本実施例における移動機構71の動作を説明するための、押圧部材70の近傍を2次転写内ローラ32の回転軸線方向の一端部側(
図1の紙面手前側)から該回転軸線方向と略平行に見た概略側面図である。
図4は、説明のために、中間転写ベルト31が設けられていない状態を示している。
【0041】
<押圧部材>
本実施例では、画像形成装置100は、中間転写ベルト31の内周面側において、2次転写部N2の上流近傍に、押圧部材(バックアップ部材)70を有する。押圧部材70は、2次転写部N2の入口近傍において、中間転写ベルト31の内周面を押圧して中間転写ベルト31を外周面側に張り出させることができる。押圧部材70は、中間転写ベルト31の回転方向に関する、2次転写内ローラ32よりも上流、かつ、2次転写前ローラ35よりも下流で、中間転写ベルト31の内周面に接触可能なように配置されている。特に、本実施例では、押圧部材70は、記録材Pの搬送方向に関する、2次転写内ローラ32よりも上流、かつ、搬送ガイド22(第1のガイド部材22a)の下流側の先端よりも下流で、中間転写ベルト31の内周面に接触可能なように配置されている。
【0042】
本実施例では、押圧部材70は、中間転写ベルト31の幅方向と略平行に配置される長手方向と、該長手方向と略直交する短手方向と、にそれぞれ所定の長さを有し、所定の厚さを有する、平面視略矩形の板状(シート状)の部材で構成されている。なお、中間転写ベルト31の幅方向は、中間転写ベルト31の表面の移動方向と略直交する方向であり、2次転写内ローラ32の回転軸線方向と略平行な方向である。押圧部材70の長手方向の長さは、中間転写ベルト31の幅方向の長さと同等である。押圧部材70は、その短手方向の一端部(中間転写ベルト31の回転方向に関し下流側の端部)である自由端部(先端部)70aが、中間転写ベルト31の略全幅にわたり、中間転写ベルト31の内周面に接触可能であり、中間転写ベルト31を押圧可能である。また、本実施例では、押圧部材70は、その短手方向の他端部(中間転写ベルト31の回転方向に関し上流側の端部)である固定端部(基端部)70b側の一部が、取付部70cに接着などにより固定されている。本実施例では、取付部70cは、中間転写ベルト31の幅方向(押圧部材70の長手方向)に沿って延びた板状部を有する板金により構成されており、後述する移動機構71に押圧部材70を取り付けるために用いられる。
【0043】
押圧部材70は、樹脂材料を用いて形成することができる。本実施例では、押圧部材70は、厚さ0.5mmのPPS(ポリフェニレンサルファイド)で形成されており、押圧部材70は撓み弾性を利用して中間転写ベルト31を弾性付勢する。なお、押圧部材70は、本実施例の構成に限定されるものではなく、中間転写ベルト31を弾性付勢できるものであればよい。例えば、押圧部材70の厚さは、0.5mmに限定されるものではなく、0.4~1.5mm程度が好適であり、例えば1.0mmであってもよい。また、押圧部材70の材料は、PPSに限定されるものではなく、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)などでもよい。また、押圧部材70としては、金属製の薄板を用いることもできる。また、例えば比較的剛性の高い板金で形成された押圧部材70を付勢部材(圧縮コイルバネ、引張バネなど)で付勢することで、押圧部材70により中間転写ベルト31を弾性付勢する構成としてもよい。
【0044】
ここで、押圧部材70、より詳細には押圧部材70の短手方向に関する自由端部(先端部)70a側の端部(ここでは、単に「先端」ともいう。)は、2次転写内ローラ32にできる限り近接して配置されることが望ましい。ただし、押圧部材70は、2次転写内ローラ32と接触しないように配置される。押圧部材70は、例えば、2次転写内ローラ32と中間転写ベルト31とが接触する位置から中間転写ベルト31の回転方向上流側へ例えば2mm程度以上、典型的には10mm程度以上離した位置で中間転写ベルト31の内周面と接触するように配置される。また、押圧部材70は、例えば、2次転写内ローラ32と中間転写ベルト31とが接触する位置から中間転写ベルト31の回転方向上流側へ40mm以下程度、典型的には25mm以下程度離した位置で中間転写ベルト31の内周面と接触するように配置される。
【0045】
なお、押圧部材として、例えば、スポンジやゴムなどの弾性体で形成されたローラ、樹脂、金属などの剛体で形成されたローラなどを用いることが考えられる。ただし、この場合、押圧部材を2次転写部N2に十分に近接して配置することが難しくなる。押圧部材が2次転写部N2から離れていると、押圧部材と2次転写内ローラ32とで形成される中間転写ベルト31の面が比較的変形しやすくなり、押圧部材を設けることによる効果が不十分となる可能性がある。
【0046】
<移動機構>
本実施例では、画像形成装置100は、押圧部材70の位置を変更する移動機構71を有する。移動機構71は、押圧部材70の位置を変更することで、押圧部材70の静定形状、すなわち、2次転写部N2の上流における中間転写ベルト31の形状を制御することができる。これにより、移動機構71は、2次転写部N2の上流における中間転写ベルト31と記録材Pとの接触長さを最適化することができる。換言すると、移動機構71は、押圧部材70の位置を変更することで、押圧部材70の押圧量(後述する侵入量)を制御することができる。また、本実施例では、移動機構71は、押圧部材70の位置を変更することで、押圧部材70の中間転写ベルト31に対する当接又は離間の状態を変更することができる。
【0047】
移動機構71は、中間転写ベルト31の幅方向に沿って延びた支持部材72を有する。押圧部材70は、支持部材72に固定されている。本実施例では、押圧部材70は、その短手方向に関する固定端部70b側の一部が長手方向の略全幅にわたって取付部70cに接着などにより固定されており、この取付部70cがビスなどにより支持部材72に固定されている。支持部材72の長手方向に関する両端部には、円筒形の穴で構成された支持穴72aが設けられている。支持部材72は、支持穴72aを中心に、中間転写ベルト31の幅方向と略平行な回動軸線の周りを回動可能なように、中間転写ベルトユニット30のフレーム(図示せず)などに支持されている。このように、支持部材72を中間転写ベルト31の幅方向と略平行な回動軸線の周りを回動させることで、押圧部材71を該回動軸線の周りを回動させて、押圧部材70の位置を変更することができる。
【0048】
また、移動機構71は、中間転写ベルト31の幅方向に沿って延びた円柱状部材で構成されたカム軸74を有する。カム軸74は、中間転写ベルト31の幅方向と略平行な回転軸線の周りを回転可能なように、中間転写ベルトユニット30のフレーム(図示せず)などに支持されている。また、移動機構71は、カム73、伝達ギア76及び検知フラグ77を有する。これらカム73、伝達ギア76及び検知フラグ77は、それぞれカム軸74に固定されている。カム73は、カム軸74の回転軸線方向の両端部にそれぞれ設けられている。また、移動機構71は、駆動源としてのステッピングモータで構成されたカム駆動モータ75を有する。カム駆動モータ75は、その出力軸に固定された駆動ギア75aがカム軸74に固定された伝達ギア76と噛み合うように、中間転写ベルトユニット30のフレーム(図示せず)などに固定されている。カム駆動モータ75が回転すると、伝達ギア76を介してカム軸74に駆動が伝達され、カム73、伝達ギア76及び検知フラグ77は、カム軸74と一体的に、中間転写ベルト31の幅方向と略平行な回転軸線の周りを回転する。
【0049】
作動部としてのカム73は、移動部としての支持部材72に設けられたカムフォロワ72bと接触している。カム73は、その回転角度に応じて回転中心からの半径が一様に変化する無段階面を形成している。したがって、カム駆動モータ75が回転することでカム73が回転すると、カム73の回転により支持部材72が支持穴72aを中心として回転する。これにより、移動機構71は、押圧部材70を移動させて、押圧部材70の位置を変更することができる。ここで、本実施例では、押圧部材70の位置を変更するとは、より詳細には、中間転写ベルト31が無いと仮定した場合の押圧部材70の先端の位置(以下、単に「先端位置」ともいう。)を変更することをいう。具体的には、本実施例では、押圧部材70の位置を変更するとは、後述する移動機構71が有する移動可能な移動部としての支持部材72の位置を変更することをいう。
【0050】
また、移動機構71は、カム73の回転方向の位置、特に、本実施例では回転方向におけるホームポジション(HP)を検知するためのカム位置センサ(カムHPセンサ)78を有する。検知部としてのカム位置センサ78と、上記カム軸74に固定された指示部としての検知フラグ77とは、位置検知手段としてのフォトインタラプタ79を構成する。移動機構71は、検知センサ78及び検知フラグ77の作用により、移動機構71の姿勢を予め設定されたニュートラル状態にすることができる。
【0051】
図4は、上述のように、中間転写ベルト31が設けられていない状態における、移動機構71の動作を示している。
図4(a)に示すように、中間転写ベルト31を押圧する方向に押圧部材70を移動させる際には、カム73がカム駆動モータ75によって駆動されて時計回りに回転する。これにより、支持部材72が支持穴72aを中心に反時計回りに回動して、押圧部材70の位置(より詳細には先端位置)が、中間転写ベルト31の外周面側へと移動する。また、
図4(b)に示すように、上記とは逆方向、すなわち、中間転写ベルト31から離間する方向に押圧部材70を移動させる際には、カム73がカム駆動モータ75により駆動されて反時計回りに回転する。これにより、支持部材72が支持穴72を中心に時計回りに回動して、押圧部材70の位置(より詳細には先端位置)が、中間転写ベルト31の内周面側へと移動する。
【0052】
本実施例では、画像形成装置100は、後述する制御部51(
図6)によりカム73の回転角度を制御することで、支持部材72の回動方向に関する位置を制御して、押圧部材70の位置(より詳細には先端位置)を制御することが可能な構成となっている。本実施例では、制御部51は、カム位置センサ78により検知される移動機構71のニュートラル状態(カム73のホームポジション)からの、カム駆動モータ(ステッピングモータ)75への入力パルス数により、カム駆動モータ75の駆動量を制御する。これにより、カム31の回転角度を制御して、支持部材72の回動方向に関する位置を制御することができる。
図5は、カム31の回転角度(より詳細にはカム駆動モータ75への入力パルス数)と押圧部材70の位置(具体的には基準位置からの支持部材72の回動角度)との関係の一例を模式的に示すグラフ図である。本実施例では、このような関係を示す情報(テーブルデータなど)が、後述する記憶部52に予め記憶されている。本実施例では、移動機構71のニュートラル状態は、押圧部材70が中間転写ベルト31から離間した状態に設定されている。
【0053】
なお、本実施例では、移動機構71は、カムフォロワ72bがカム73と係合する方向に支持部材72が回動するように支持部材72を付勢する、付勢手段としての付勢部材(弾性部材)である引張りばね(図示せず)などを有している。これにより、移動機構71は、押圧部材70を中間転写ベルト31から離間させることができる。
【0054】
4.2次転写部の上流における2次転写ベルトの形状のばらつき
前述のように、2次転写部N2の上流における中間転写ベルト31の形状(姿勢)は、押圧部材70の付勢力と、中間転写ベルト31の張力による抗力と、が釣り合う時の押圧部材70の静定形状によって決まる。この時、押圧部材70は、中間転写ベルト31の張力による抗力を受けており、その抗力に応じて変形している。押圧部材70の付勢力や中間転写ベルト31の張力が称呼の値である場合には、移動機構71により押圧部材70の位置(具体的には支持部材72の位置)を予め決められた所定の位置とすればよい。これにより、押圧部材70の押圧量(後述する侵入量)を所定の値として、2次転写部N2の上流における中間転写ベルト31の形状を所定の形状とすることができる。
【0055】
しかし、押圧部材70の付勢力や中間転写ベルト31の張力がばらつくと、押圧部材70の変形量、すなわち、押圧部材70の静定形状が変動し、2次転写部N2の上流における中間転写ベルト31の形状もばらつく。
【0056】
つまり、押圧部材70の位置を予め決められた所定の位置とすると、画像形成装置100の個体ごと、又は中間転写ベルトユニット30などの交換単位の個体ごとに、2次転写部N2の上流における中間転写ベルト31の形状がばらつくことがある。これは、押圧部材70の材料特性(物性)や寸法、中間転写ベルト31のテンションなどのばらつきにより、押圧部材70の撓み量がばらつくためである。そして、2次転写部N2の上流における中間転写ベルト31の形状(姿勢)がばらつくと、2次転写部N2の上流における中間転写ベルト31と記録材Pとの接触長さが適切な値からずれて、前述のような画像不良の原因になることがある。特に、厚紙やコート紙などの剛度が高い記録材Pが用いられる場合は、2次転写電圧の絶対値が比較的高く設定され、2次転写部N2に形成される転写電界の強度が大きくなる傾向がある。そのため、2次転写部N2の上流における中間転写ベルト31と記録材Pとの接触長さについて、より高い精度が求められる。
【0057】
図14は、2次転写部N2の上流における中間転写ベルト31の形状のばらつきを説明するための模式的な断面図(2次転写内ローラ32の回転軸線方向と略直交する断面)である。
図14(a)、(b)は、押圧部材70の位置(具体的には支持部材72の位置)が同じ所定の位置に設定されているが、押圧部材70の撓み量が異なることで2次転写部N2の上流における中間転写ベルト31の形状が異なる状態を誇張して示している。
【0058】
例えば、押圧部材70の付勢力が低い場合には、中間転写ベルト31の張力による抗力が比較的大きくなる。これにより、
図14(a)に示すように、押圧部材70の変形量が比較的大きくなり、中間転写ベルト31の変形量が小さくなって、押圧部材70の押圧量(後述する侵入量)が小さくなることとなる。つまり、記録材Pから中間転写ベルト31が遠ざかり、2次転写部N2の上流における記録材Pと中間転写ベルト31との接触長さが短くなる。
【0059】
一方、中間転写ベルト31の張力が小さい場合には、押圧部材70の付勢力が比較的大きくなる。これにより、
図14(b)に示すように、押圧部材70の変形量が比較的小さくなり、中間転写ベルト31の変形量が大きくなって、押圧部材70の押圧量(後述する侵入量)が大きくなることとなる。
図14(a)に示す場合と
図14(b)に示す場合とで、上記押圧量(後述する侵入量)は異なる(Ya<Yb)。つまり、記録材Pに中間転写ベルト31が近づき、2次転写部N2の上流における記録材Pと中間転写ベルト31との接触長さが長くなる。
【0060】
このように、移動機構71により押圧部材70の位置を予め決められた所定の位置とすると、2次転写部N2の上流における記録材Pと中間転写ベルト31の接触長さがばらつくことがある。これにより、該接触長さが短い場合の前述の空隙G(
図2(c))が大きくなることによる放電に起因する画像不良や、該接触長さが長い場合のトナー像と記録材Pとの摺擦による画像不良などが発生する可能性がある。
【0061】
5.押圧量
ここで、押圧部材70の押圧量について更に説明する。
図12(a)、(b)は、押圧部材70の中間転写ベルト31に対する侵入量の定義を説明するための2次転写部N2の近傍の模式的な断面図(2次転写内ローラ32の回転軸線方向と略直交する断面)である。
【0062】
押圧部材70による中間転写ベルト31の押圧量は、次のような押圧部材70の中間転写ベルト31に対する侵入量で表すことができる。この侵入量は、概略、押圧部材70が、2次転写内ローラ32又は2次転写外ローラ41と、2次転写前ローラ35と、で張架されて形成される中間転写ベルト31の張り面(張架面)に対して、中間転写ベルト31を外側に張り出させる量である。2次転写前ローラ35は、複数の張架ローラのうち2次転写内ローラ32よりも中間転写ベルト31の回転方向に関して上流で2次転写内ローラ32に隣接して配置された上流ローラの一例である。この侵入量の定義は、より詳細には、2次転写内ローラ32の周方向における2次転写内ローラ32と2次転写外ローラ41との相対位置を示すオフセット量によって変わる。
【0063】
まず、
図12(a)を参照して、オフセット量について説明する。
図12(a)に示す断面において、中間転写ベルト31が掛け回される側の2次転写内ローラ32と2次転写前ローラ35との共通の接線を基準線L1とする。基準線L1は、押圧部材70によって中間転写ベルト31が外周面側に張り出されていない場合の中間転写ベルト31の張り面に対応する。また、同断面において、2次転写内ローラ32の回転中心を通り基準線L1と略直交する直線を内ローラ中心線L2とする。また、同断面において、2次転写外ローラ41の回転中心を通り基準線L1と略直交する直線を外ローラ中心線L3とする。このとき、内ローラ中心線L2と外ローラ中心線L3との間の距離(垂直距離)をオフセット量X(ただし、外ローラ中心線L3が内ローラ中心線L2よりも中間転写ベルト31の回転方向の上流側にあるとき正の値)と定義する。オフセット量Xは、負の値、0、正の値をとることができる。オフセット量Xは、例えば中間転写ベルト31からの記録材Pの分離性などに応じて適宜設定される。
【0064】
次に、
図12(a)、(b)を参照して、侵入量について説明する。侵入量の定義は、オフセット量Xが正の場合と、0又は負の場合と、で異なる。一般に、押圧部材70によって押圧されない状態での中間転写ベルト31の張り面が2次転写内ローラ32と2次転写前ローラ35とで形成されるか、2次転写外ローラ41と2次転写前ローラ35とで形成されるかがオフセット量Xによって変わるからである。
図12(a)はオフセット量Xが0又は負の値(特に負の値)である場合を示し、
図12(b)はオフセット量Xが正の値である場合を示している。
【0065】
まず、オフセット量Xが0又は負の値である場合について説明する。
図12(a)に示す断面において、中間転写ベルト31が掛け回される側の2次転写内ローラ32と2次転写前ローラ35との共通の接線を基準線L1とする。また、同断面において、基準線L1と略平行な、押圧部材70が中間転写ベルト31と接触する領域において中間転写ベルト31の外周面に接触する中間転写ベルト31の接線を押圧部接線L4とする。このとき、オフセット量Xが0又は負の値の場合、基準線L1と押圧部接線L4との間の距離(垂直距離)を、中間転写ベルト31に対する押圧部材70の侵入量Y(ただし、押圧部接線L4が基準線L1よりも中間転写ベルト31の外周面側にあるとき正の値)と定義する。この侵入量Yは、0、正の値をとることができる。
【0066】
次に、オフセット量Xが正の値である場合について説明する。
図12(b)に示す断面において、中間転写ベルト31が掛け回される側の2次転写外ローラ41と2次転写前ローラ35との共通の接線を基準線L1’とする。また、同断面において、基準線L1’と略平行な、押圧部材70が中間転写ベルト31と接触する領域において中間転写ベルト31の外周面に接触する中間転写ベルト31の接線を押圧部接線L4’とする。このとき、オフセット量Xが正の値の場合、基準線L1’と押圧部接線L4’との間の距離(垂直距離)を、中間転写ベルト31に対する押圧部材70の侵入量Y(ただし、押圧部接線L4’が基準線L1’よりも中間転写ベルト31の外周面側にあるとき正の値)と定義する。この侵入量Yは、0、正の値をとることができる。
【0067】
本実施例では、少なくとも一つの所定のモードとして、厚紙などの剛度が高い記録材Pが用いられる所定のモードでの画像形成時(2次転写時)に、押圧部材70により中間転写ベルト31が押圧された状態(所定の侵入量Y>0)とされる。そして、本実施例では、記録材Pとして普通紙などが用いられる上記所定のモード以外のモードでの画像形成時(2次転写時)には、押圧部材70は中間転写ベルト31に接触しないように退避させられる。また、本実施例では、画像形成装置100は、オフセット量Xが0又は負の値をとる構成となっているものとする。
【0068】
なお、これに限定されるものではないが、侵入量Yは、1.0mm~3.5mm以下程度が好適である。これにより、2次転写部N2の上流における中間転写ベルト31の形状を安定させると共に、押圧部材70と中間転写ベルト31との接触面にかかる負荷が増加しすぎることで中間転写ベルト31のスムーズな回転が妨げられる可能性を低減することができる。
【0069】
また、押圧部材70の押圧量は、記録材Pが、2次転写部N2の入口近傍及び2次転写部N2を通過している際に、所望の値となっていればよい。2次転写部N2の入口近傍は、より詳細には、記録材Pの搬送方向に関する、押圧部材70が中間転写ベルト31と接触する位置から2次転写部N2までの間の、中間転写ベルト31の領域に対応する領域である。
【0070】
また、押圧部材70が中間転写ベルト31を押圧する位置に配置された状態で画像形成装置100が放置されると、経時的な押圧部材70の変形の要因となることがある。そのため、例えば、画像形成装置100の電源OFF状態やスリープ状態では、押圧部材70を中間転写ベルト31から離間した位置(又は単に接触した位置)に配置することができる。
【0071】
6.制御態様
画像形成装置100の装置本体110には、制御手段としてのコントローラ部(制御回路)50(
図8(a)参照)が設けられている。コントローラ部50は、演算処理を行う中心的素子である演算制御手段としてのCPU、記憶手段としてのROM、RAM、不揮発メモリなどの記憶媒体、インターフェース部(入出力回路)などを有して構成される。CPUは、ROMに格納された制御プログラムに従い、RAMを作業領域として用いて、画像形成装置100が備えた各種センサからの入力信号や不揮発メモリに記憶されたデータなどに基づいて、画像形成装置100の各部を統括制御することができる。本実施例との関係では、コントローラ部50は、詳しくは後述する押圧部材70の位置の設定(調整)などを行うための機能ブロックとしての制御部51及び記憶部52(
図6)を有する。制御部51は、CPUがROMに格納されたプログラムを実行することで実現され、記憶部52は不揮発メモリなどの記憶媒体により実現される。
【0072】
また、画像形成装置100には、操作部(操作パネル)120(
図8(a)参照)が設けられている。操作部120は、コントローラ部50の制御によって情報を表示する表示部(表示手段)、及びユーザーやサービス担当者などの操作者による操作によってコントローラ部50に情報を入力する入力部(入力手段)を有する。操作部120は、表示手段及び入力手段の機能を有するタッチパネルを有して構成されていてよい。また、画像形成装置100には、パーソナルコンピュータなどの外部装置、画像読取装置などが接続されていてよい。
【0073】
コントローラ部50は、ジョブの情報に基づいて画像形成装置100の各部を制御して画像形成動作を行なわせる。ジョブの情報は、外部装置や操作部120から入力され、開始指示(開始信号)、記録材Pに関する情報などの画像形成条件に関する情報(指令信号)、及び画像情報(画像信号)などを含む。なお、記録材Pに関する情報(記録材情報)とは、普通紙、上質紙、光沢紙、グロス紙、コート紙、エンボス紙、厚紙、薄紙、紙質などの一般的な特徴に基づく属性(いわゆる、紙種カテゴリー)、坪量、厚さ、サイズ、剛性などの数値や数値範囲、あるいは銘柄(メーカー、商品名、品番などを含む。)などの、記録材Pを区別することのできる任意の情報を包含するものである。記録材Pに関する情報によって区別される記録材Pごとに、記録材Pの種類を構成するものと見ることができる。また、記録材Pに関する情報は、例えば「普通紙モード」、「厚紙モード」といった、画像形成装置100の動作設定を指定するプリントモードの情報に含まれていたり、プリントモードの情報で代替されたりしてもよい。
【0074】
画像形成装置100は、一つの開始指示により開始される、単一又は複数の記録材Pに画像を形成して出力する一連の動作であるジョブ(プリントジョブ、印刷ジョブ)を実行する。ジョブは、一般に、画像形成工程(画像形成動作)、前回転工程、複数の記録材Pに画像を形成する場合の紙間工程、及び後回転工程を有する。画像形成工程は、実際に記録材Pに形成して出力する画像の静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の1次転写、2次転写を行う期間であり、画像形成時(画像形成期間)とはこの期間のことをいう。より詳細には、これら静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の1次転写、2次転写の各工程を行う位置で、画像形成時のタイミングは異なる。前回転工程は、開始指示が入力されてから実際に画像を形成し始めるまでの、画像形成工程の前の準備動作を行う期間である。紙間工程は、複数の記録材Pに対する画像形成を連続して行う際(連続画像形成)の記録材Pと記録材Pとの間に対応する期間である。後回転工程は、画像形成工程の後の整理動作(準備動作)を行う期間である。非画像形成時(非画像形成期間)とは、画像形成時以外の期間であって、次のような期間が含まれる。つまり、スタンバイ状態、前回転工程、紙間工程、後回転工程、更には画像形成装置100の電源投入時又はスリープ状態からの復帰時の準備動作である前多回転工程や、スタンバイ状態から前回転工程又は前多回転工程を開始するまでの間の期間などである。本実施例では、画像形成装置100は、非画像形成時に、その後に実行するプリントモードに応じて押圧部材70を中間転写ベルト31を押圧する位置に配置する場合に、押圧部材70の位置を設定(調整)する動作を行う。
【0075】
7.押圧部材の位置の設定
次に、本実施例における押圧部材70の位置の設定(調整)について説明する。
【0076】
上述のように、2次転写部N2の上流における中間転写ベルト31の形状(姿勢)の形成には、押圧部材70の付勢力と中間転写ベルト31の張力とが関係する。
【0077】
そこで、本実施例では、画像形成装置100は、押圧部材70により中間転写ベルト31を押圧する所定のモードを実行する際に、次のようにする。つまり、2次転写部N2の上流における中間転写ベルト31の所定の形状を形成するための個体の条件(個体差、個体ばらつき)に応じて、移動機構71により押圧部材70の位置(具体的には支持部材72の位置)を適切な位置に設定(調整)する。これにより、2次転写部N2の上流に、中間転写ベルト31の内周面を弾性付勢する押圧部材70により、弾性反力を有する中間転写ベルト31の所定の形状を高精度に形成することができる。その結果、中間転写ベルト31と記録材Pとの接触長さを適切に制御することができる。以下、更に詳しく説明する。
【0078】
図6は、本実施例における押圧部材70の位置の設定(調整)に関する制御態様を示す概略ブロック図である。
図7は、後述する個体差情報の付帯手段を説明するための模式図である。また、
図8は、後述する個体差情報の入力手段を説明するための模式図である。
【0079】
本実施例では、画像形成装置100は、所定のモードを実行する際の押圧部材70の位置(具体的には支持部材72の位置)の設定に関連する画像形成装置100の構成の個体差に関する情報(以下、「個体差情報」ともいう。)Iを記憶する記憶部52を有する。個体差情報Iは、2次転写部N2の上流における中間転写ベルト31の所定の形状を形成するための個体の条件を示す。本実施例では、個体差情報Iは、押圧部材70の付勢力に関する特性値(物性値)の情報、及び中間転写ベルト31の張力に関する特性値(物性値)の情報である。また、画像形成装置100は、所定のモードを実行する際の押圧部材70の位置(具体的には支持部材72の位置)を、個体差情報Iに基づいて設定する制御部51を有する。制御部51は、個体差情報Iに基づいて、移動機構71によって、押圧部材70(具体的には支持部材72)を適切な位置に移動させるように制御する。本実施例では、上記制御部51及び記憶部52は、画像形成装置100の装置本体110(より詳細にはコントローラ部50)に設けられている。
【0080】
更に説明すると、本実施例では、画像形成装置100を構成する中間転写ベルトユニット30の個体ごとに、押圧部材70の付勢力に関する特性値として、押圧部材70の曲げ弾性係数が求められる。さらに、本実施例では、中間転写ベルトユニット30の個体ごとに、中間転写ベルト31の張力に関する特性値として、中間転写ベルト31にテンションローラ34を介して張力を付与するテンションバネ36のバネ定数が求められる。これら個体差情報Iとしての押圧部材70の曲げ弾性係数及びテンションバネ36のバネ定数の情報は、中間転写ベルトユニット30を組み立てる際などにそれぞれ中間転写ベルトユニット30に設けられた情報付帯手段に付帯される。本実施例では、
図7(a)に示すように、中間転写ベルトユニット30のフレームなどの外部から視認でき適切な位置に設けられた情報付帯手段としての情報記載部(シールなど)53に、個体差情報Iが記録される。より詳細には、本実施例では、情報記載部53には、個体差情報Iとしての押圧部材70の曲げ弾性係数及びテンションバネ36のバネ定数のそれぞれの値が文字で記載される。そして、画像形成装置100を組み立てる際(画像形成装置100の装置本体110に中間転写ベルトユニット30を組み付ける際など)や工場出荷時などに、個体差情報Iが、画像形成装置100に入力されて記憶部52に記憶される。本実施例では、
図8(a)に示すように、操作者によって、情報記載部53に記載された個体差情報Iが読み取られて、入力手段としての画像形成装置100に設けられた操作部120から制御部51に入力される。そして、制御部51によって、該個体差情報Iが記憶部52(具体的にはコントローラ部50の不揮発メモリ)に記憶される。
【0081】
制御部51は、記憶部52に記憶された個体差情報Iに基づいて、所定のモードを実行する際の、押圧部材70の押圧量が所定の押圧量となる適切な押圧部材70の位置を求める。本実施例では、制御部51は、予め設定されて記憶部52(具体的にはコントローラ部50のROM)に記憶されている計算式に、個体差情報Iとしての押圧部材70の曲げ弾性係数及びテンションバネ36のバネ定数を適用する。これにより、制御部51は、上記所定の押圧量となる適切な押圧部材70の位置(具体的には支持部材72の位置)を得るためのカム駆動モータ(ステッピングモータ)75への入力パルス数を算出する。上記計算式は、中間転写ベルトユニット30の構造に基づいて、個体差情報Iとしての押圧部材70の曲げ弾性係数及びテンションバネ36のバネ定数を変数として、上記入力パルス数を算出できるように構成されている。なお、本実施例では、上記入力パルス数は、カム位置センサ78により検知される移動機構71のニュートラル状態からのカム駆動モータ75への入力パルス数である。そして、制御部51は、所定のモードを実行する際に、カム位置センサ78により検知される移動機構71のニュートラル状態から、カム駆動モータ75に上記算出されたパルス数を入力し、押圧部材70を移動させる。
【0082】
このように、本実施例では、個体差に応じて、移動機構71により押圧部材70の位置を可変制御する。これにより、個体差に応じて、押圧部材70の押圧量を適切な値として、適切な2次転写部N2の上流における中間転写ベルト31の形状を得ることができる。
【0083】
図9は、本実施例による個体差に応じた押圧部材70の位置の設定の効果を説明するための押圧部材70の近傍の模式的な断面図(2次転写内ローラ32の回転軸線方向と略直交する断面)である。
図9(a)、(b)は、押圧部材70の付勢力又は中間転写ベルト31の張力が異なる場合に、個体差情報Iに基づいて押圧部材70の位置(具体的には支持部材72の位置)を調整した状態を誇張して示している。
【0084】
例えば、押圧部材70の付勢力が比較的低く、中間転写ベルト31の張力による抗力が比較的大きい場合には、移動機構71のニュートラル状態からの中間転写ベルト31を押圧する方向への押圧部材70の移動量は、比較的大きくされる。これにより、
図9(a)に示すように、押圧部材70の変形量が比較的大きい状態で、適切な押圧部材70の押圧量(侵入量Y)を得ることができる。その結果、適切な2次転写部N2の上流における中間転写ベルト31の形状を得ることができ、適切な中間転写ベルト31と記録材Pとの接触長さを得ることができる。
【0085】
また、押圧部材70の付勢力が比較的高く、中間転写ベルト31の張力が比較的小さい場合には、移動機構71のニュートラル状態からの中間転写ベルト31を押圧する方向への押圧部材70の移動量は、比較的小さくされる。これにより、
図9(b)に示すように、押圧部材70の変形量が比較的小さい状態で、適切な押圧部材70の押圧量(侵入量Y)を得ることができる。その結果、適切な2次転写部N2の上流における中間転写ベルト31の形状を得ることができ、適切な中間転写ベルト31と記録材Pとの接触長さを得ることができる。
図9(a)に示す場合と
図9(b)に示す場合とで、上記押圧量(侵入量Y)は実質的に同じとなる(Ya=Yb)。
【0086】
このように、本実施例によれば、個体差による2次転写部N2の上流における記録材Pと中間転写ベルト31の接触長さのばらつきを抑制することができる。これにより、該接触長さが短い場合の前述の空隙G(
図2(c))が大きくなることによる放電に起因する画像不良や、該接触長さが長い場合のトナー像と記録材Pとの摺擦による画像不良などの発生を抑制することができる。
【0087】
図10は、押圧部材70の位置を設定する動作を含む、ジョブの動作の一例のフローチャート図である。ここでは、所定のモードとして記録材Pとして厚紙が指定される「厚紙モード」において、押圧部材70により中間転写ベルト31が押圧された状態(所定の侵入量Y>0)とされるものとする。また、ここでは、簡単のため、1枚の記録材Pに画像が形成される場合を例とする。
【0088】
制御部51は、パーソナルコンピュータなどの外部装置からジョブの情報が入力されると(S101)、カム位置センサ78により移動機構71のニュートラル状態が検知されるように移動機構71を制御する(S102)。このとき、移動機構71がすでにニュートラル状態であればその状態を維持し、ニュートラル状態ではない場合にはニュートラル状態とするようにカム駆動モータ75を駆動する。なお、本実施例では、移動機構71のニュートラル状態では、押圧部材70は中間転写ベルト31から離間している。次に、制御部51は、ジョブの情報に基づいて、プリントモードが「厚紙モード」であるか否かを判断する(S103)。制御部51は、S103でプリントモードが「厚紙モード」である(「Yes」)と判断した場合は、中間転写ベルト31を押圧する位置に押圧部材70を移動させる処理に進む。つまり、制御部51は、記憶部52に記憶された個体差情報Iに基づいて、「厚紙モード」における所定の押圧量となる適切な押圧部材70の位置(具体的には支持部材72の位置)を得るためのカム駆動モータ75への入力パルス数を算出する(S104)。そして、制御部51は、カム駆動モータ75に上記算出されたパルス数を入力し、押圧部材70を移動させる(S105)。その後、制御部51は、所定の前回転動作が終了ししだい、「厚紙モード」での画像形成動作を実行する(S106)。また、制御部51は、画像形成動作が終了したら、所定の後回転動作が終了ししだい、移動機構71をニュートラル状態とし(S107)、画像形成装置100をスタンバイ状態とする。また、制御部51は、S103でプリントモードが「厚紙モード」ではない(「No」)と判断した場合は、移動機構71をニュートラル状態としたまま画像形成動作を実行するように制御する。なお、複数の記録材Pに対する連続画像形成のジョブにおいて、ジョブの途中で記録材Pの種類が変更される場合は、紙間で押圧部材70の位置を変更する動作を行うことができる。
【0089】
図11(a)は、交換ユニットを交換した際の個体差情報Iの入力動作の一例のフローチャート図である。また、
図11(b)は、個体差情報Iの入力画面の模式図である。ここでは、押圧部材70及び中間転写ベルト31を含む交換ユニットとしての中間転写ベルトユニット30の交換時の動作を例とする。
【0090】
押圧部材70や中間転写ベルト31は、画像形成装置100の使用に伴って摩耗などにより劣化することがある。そのため、中間転写ベルトユニット30において、押圧部材70や中間転写ベルト31の寿命は、画像形成装置100の装置本体110の寿命に比べて短く設定されることがある。そして、例えば、中間転写ベルト31の使用量と相関する指標値(例えば、回転距離、回転回数、回転時間、バイアス印加時間など)の累積値が所定の閾値に達した場合などに、中間転写ベルトユニット30ごと新品に交換される。
【0091】
中間転写ベルトユニット30の交換が行われた場合には、該交換が行われたこを示す情報が、操作者によって操作部120(
図8(a))から制御部51に入力される(S201)。すると、制御部51は、操作部120に、例えば
図11(b)に示すように、個体差情報Iとしての押圧部材70の曲げ弾性係数及びテンションバネ36のバネ定数をそれぞれ入力するための入力画面を表示する。操作者は、操作部120に表示された入力画面に、中間転写ベルトユニット30に設けられた情報記載部53(
図7(a))から読み取った個体差情報Iとしての押圧部材70の曲げ弾性係数及びテンションバネ36のバネ定数をそれぞれ入力する。制御部51は、操作部120の入力画面に入力された個体差情報Iとしての押圧部材70の曲げ弾性係数及びテンションバネ36のバネ定数をそれぞれ取得し、記憶部52に記憶されている個体差情報Iを今回取得したものに書き換える。つまり、制御部51は、記憶部52に記憶される情報を、交換前の中間転写ベルトユニット30に対応する情報から該交換後の中間転写ベルトユニット30に対応する情報に更新する処理を行う。
【0092】
なお、本実施例において、画像形成装置100を組み立てる際や交換ユニットの交換を行った際に操作部120から入力するとした情報は、画像形成装置100に通信可能に接続された外部装置から入力するようにしてもよい。
【0093】
以上説明したように、本実施例によれば、画像形成装置100の個体ごと、又は中間転写ベルトユニット30などの交換単位の個体ごとの、2次転写部N2の上流における中間転写ベルト31の形状のばらつきによる画像不良を抑制することができる。
【0094】
[実施例2]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素には、実施例1と同一の符号を付して、詳しい説明は省略する。本実施例では、実施例1の構成の各種の変形例について説明する。
【0095】
実施例1では、情報付帯手段としての情報記載部53(
図7(a))に、個体差情報Iとしての押圧部材70の曲げ弾性係数及びテンションバネ36のバネ定数のそれぞれの値が文字で記載されていたが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。個体差情報Iは、記録可能な任意の方法により記録することができる。例えば、情報記載部53に、個体差情報Iとしての押圧部材70の曲げ弾性係数及びテンションバネ36のバネ定数の情報を、機械読み取り可能なコードの一例である二次元コードとして記録することができる。機械読み取り可能なコードは、二次元コードに限定されるものではないが、ここでは二次元コードを利用するものとして説明する。この場合、例えば、
図8(b)に示すように、画像形成装置100を組み立てる際(画像形成装置100の装置本体110に中間転写ベルトユニット30を組み付ける際など)や工場出荷時などに、二次元コードリーダ300により情報記載部53に記載された二次元コードが読み込まれる。そして、読み込まれた二次元コードが示す個体差情報Iが、画像形成装置100に入力され、記憶部52に記憶される。このとき、入力手段としてのインターフェース130(有線であっても無線であってもよい。)を介して直接的に通信可能に接続された二次元コードリーダ300から、読み込まれた情報が画像形成装置100に入力されるようにすることができる。あるいは、インターフェース部130を介して画像形成装置100に通信可能に接続された外部装置200を介して、二次元コードリーダ300により読み込まれた情報が画像形成装置100に入力されるようにしてもよい。これらいずれの場合も、画像形成装置100の制御部51が記憶部52への情報の書き込みを制御するようにしてよい。二次元コードは利用可能な公知の任意の規格に従うものであってよく、二次元コードリーダ300を構成するハード及びソフトウェアは該規格に対応する公知の任意の構成のものであってよい。このように二次元コードを用いることで、画像形成装置100の生産又は工場出荷時の設定操作などを容易とすることができる。なお、情報記載部53に、文字による個体差情報Iと二次元コードによる個体差情報Iとの両方が記載されてもよい。これにより、当該中間転写ベルトユニット30を出荷前の画像形成装置100に組み付ける際には二次元コードを、また当該中間転写ベルトユニット30を出荷後の画像形成装置100に交換ユニットとして装着する際には文字を利用することができる。また、出荷前に画像形成装置100に組み付けられる中間転写ベルトユニット30の情報記載部53には二次元コードが記載され、交換ユニットとして出荷される中間転写ベルトユニット30の情報記載部53には文字が記載されるようにしてもよい。
【0096】
また、実施例1では、個体差情報Iは、中間転写ベルトユニット30ごとに求められ、中間転写ベルトユニット30ごとに記録されたが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。個体差情報Iは、所定のモードを実行する際の押圧部材70の位置の設定に関連する画像形成装置100の任意の構成単位ごとに求められ、該構成単位ごとに記録されてよい。該構成単位は、例えば、画像形成装置100に一体的に組み付けられるユニットや、一体的に着脱される交換ユニットなどであってよい。例えば、
図7(b)に示すように、中間転写ベルトユニット30において、押圧部材70(取付部70cと一体であってよい。)が更に交換可能な交換ユニット(押圧部材ユニット)とされることがある。また、
図7(c)に示すように、中間転写ベルトユニット30において、押圧部材70が、2次転写内ローラ32、移動機構71及び2次転写前ローラ35などの他の部材と一緒に更に交換可能な交換ユニット(内ローラユニット56)とされることがある。この場合、
図7(b)、(c)に示すように、押圧部材70の付勢力に関する個体差情報Iは、これらの交換ユニットに設けられた情報記載部53に記載されていてよい。なお、この場合も、中間転写ベルト31の張力に関する個体差情報Iは、中間転写ベルトユニット30のフレームなどに設けられた情報記載部53に記載されていてよい。また、
図7(b)、(c)に示すようなユニットが、それぞれ画像形成装置100の装置本体110に対して直接的に組み付けられたり、交換可能とされたりしている場合も、それぞれ同図に示したのと同様とすることができる。
【0097】
また、情報付帯手段は、文字やコードが記載される情報記載部(シールなど)53に限定されるものではない。情報付帯手段は、個体差情報Iが付帯(記録)され得るものであればよい。例えば、情報付帯手段は、情報を記憶可能なメモリ(不揮発メモリなど)などの記憶媒体であってもよい。この場合、例えば、
図8(c)に示すように、中間転写ベルトユニット30を組み立てる際などに中間転写ベルトユニット30に設けられたメモリ54に個体差情報Iが記憶される。そして、画像形成装置100を組み立てる際や工場出荷時、あるいは中間転写ベルトユニット30が交換された際に、画像形成装置100に設けられた入力手段としての読み取り部55を介して制御部51により上記メモリ54から個体差情報Iが読み取られる。そして、制御部51により個体差情報Iが記憶部52に記憶される。なお、画像形成装置100の外部の読み取り手段によってメモリ54から読み取られた個体差情報Iが、画像形成装置100に、直接又は外部装置を介して入力され、記憶部52に記憶されるようにしてもよい。また、個体差情報Iは、中間転写ベルトユニット30などに設けられた情報付帯手段を介さず、画像形成装置100に直接入力されて、記憶部52に記憶されてもよい。例えば、以上で情報付帯手段が設けられるものとした中間転写ベルトユニット30などと関係付けられて(典型的には同梱されて)配送される用紙などの記録媒体に、個体差情報I(文字や二次元コードなど)が記載されていてもよい。
【0098】
また、実施例1では、画像形成装置100の装置本体110に記憶部52及び制御部51が設けられていたが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。実施例1で説明した押圧部材70の位置の設定を行えれば、記憶部52、制御部51は画像形成装置100におけるいずれの箇所に設けられていてもよい。例えば、中間転写ベルトユニット30に、記憶部52又は制御部51の少なくとも一方が設けられていてもよい。また、例えば、定着ユニットなどの画像形成装置100内の他のユニットに、記憶部52又は制御部51の少なくとも一方が設けられていてもよい。
【0099】
また、実施例1では、2次転写部N2の上流における中間転写ベルト31の所定の形状を形成するための個体の条件を示す個体差情報Iとして、押圧部材70の付勢力に関する特性値の情報及び中間転写ベルト31の張力に関する特性値の情報の両方を用いた。しかし、本発明は斯かる態様に限定されるものではなく、個体差情報Iとして、押圧部材70の付勢力に関する特性値の情報又は中間転写ベルト31の張力に関する特性値の情報の少なくとも一方を用いることができる。また、個体差情報Iとして、押圧部材70の付勢力に関する特性値の情報又は中間転写ベルト31の張力に関する特性値の情報の少なくとも一方と共に、又はこれらの少なくとも一方の代わりに、2次転写部N2の上流における中間転写ベルト31の所定の形状を形成するための個体の条件を示すその他の情報を用いてもよい。
【0100】
また、実施例1では、押圧部材70の付勢力に関する情報として、押圧部材70の弾性係数の情報を用いた。しかし、本発明は斯かる態様に限定されるものではなく、押圧部材70の付勢力に関する情報であれば用いることができる。押圧部材70の付勢力に関する情報としては、例えば、押圧部材70の材料特性(弾性係数、膨張係数などの物理的特性など)又は寸法(厚さ、長手方向の長さ、短手方向の幅など)、支持部材72が所定の位置にある場合の押圧部材70の位置(より詳細には先端位置)、押圧部材70の所定の付勢力が得られる場合の支持部材72の位置、押圧部材70の位置と支持部材72の移動量(カム31の回転角度)との関係、の情報などが挙げられる。また、押圧部材70の付勢力に関する情報として、押圧部材70の位置に応じた付勢力を実際に測定した値を用いることもできる。例えば、押圧部材70の所定の付勢力を得るための位置を測定により求め、該位置を得るためのカム31の回転角度の情報(具体的にはカム駆動モータ75への入力パルス数の情報など)を測定により求め、該回転角度の情報を個体差情報Iとして用いてもよい。なお、比較的剛性の高い押圧部材を付勢部材で付勢することで押圧部材により中間転写ベルトを弾性付勢する構成の場合、その付勢部材の付勢力を押圧部材の付勢力と見なすことができる。
【0101】
また、実施例1では、中間転写ベルト31の張力に関する情報として、中間転写ベルト31に張力を付与する張力付与手段としてのテンションバネ36のバネ定数の情報を用いた。しかし、本発明は斯かる態様に限定されるものではなく、中間転写ベルト31の張力に関する情報であれば用いることができる。中間転写ベルト31の張力に関する情報としては、例えば、中間転写ベルト31の材料特性(弾性係数、膨張係数などの物理的特性など)又は寸法(周長、厚さ、幅など)、中間転写ベルト31の複数の張架ローラのうち少なくとも一つの張架ローラの材料特性(弾性係数、膨張係数などの物理的特性など)、位置(中間転写ベルト31の周方向又は径方向の位置など)又は寸法(回転軸線方向の長さ、直径など)、の情報などが挙げられる。
【0102】
また、実施例1では、記憶部52に記憶された個体差情報Iに基づいて、制御部51が計算により所定のモードを実行する際の押圧部材70の位置を求めたが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。予め個体差情報Iに対応する押圧部材70の位置を求めるためのテーブルデータを作成しておいてもよい。
【0103】
また、実施例1では、所定のモードを実行する際に、記憶部52に記憶された押圧部材70の付勢力に関する情報や中間転写ベルト31の張力に関する情報に基づいて、押圧部材70の位置を求めた。しかし、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。例えば、押圧部材70の付勢力に関する情報や中間転写ベルト31の張力に関する情報に基づいて求めた、押圧部材70の位置に関する情報を個体情報Iとして記憶部52に記憶させてもよい。該押圧部材70の位置に関する情報は、具体的には支持部材72の位置を決めるカム駆動モータ75への入力パルス数の情報などであってよい。また、該押圧部材70の位置に関する情報は、画像形成装置100を組み立てる際や交換ユニットの交換を行った際に、画像形成装置100の制御部51が求めてもよいし、外部装置において求めたものを画像形成装置100に入力するようにしてもよい。押圧部材70の付勢力に関する情報や中間転写ベルト31の張力に関する情報と、これらに基づいて求めた押圧部材70の位置に関する情報と、の両方を記憶部52に記憶させてもよい。
【0104】
また、個体差情報Iは、押圧部材70の付勢力に関する情報や中間転写ベルト31の張力に関する情報を直接的に示す情報の他、該情報を指定する識別情報であってもよい。例えば、制御部51が、該個体差情報Iとしての識別情報に基づいて、画像形成装置100に通信可能に接続されたサーバーなどの外部装置の記憶部から、該識別情報に対応する押圧部材70の付勢力に関する情報や中間転写ベルト31の張力に関する情報を取得するようにしてもよい。
【0105】
また、実施例1では、厚紙やコート紙などの剛度が高い記録材Pが用いられる所定のモードの実行時に押圧部材70と中間転写ベルト31とが接触し、他のモードの実行時などには押圧部材70は中間転写ベルト31に接触しないように退避させられた。しかし、本発明は斯かる態様に限定されるものではなく、例えば少なくとも画像形成時(二次転写時)には記録材Pの種類にかかわらず常に押圧部材70と中間転写ベルト31とが接触するようにしてもよい。また、画像形成装置100は、押圧部材70と中間転写ベルト31とが接触する複数のモードを実行可能であってよい。このとき、該複数のモードの一部又は全てで、押圧部材70の所定の押圧量(侵入量)が異なっていてよい。この場合、それぞれのモードにおける押圧部材70の所定の押圧量(侵入量)が得られるように、実施例1と同様にして押圧部材70の位置を設定することができる。複数のモードのうち少なくとも一つの所定のモードにおける押圧部材70の位置を実施例1と同様にして設定すると共に、他のモードにおける押圧部材70の位置は該所定のモードでの位置を基準として設定するようにしてもよい。具体的には、基準となる所定のモードにおけるカム駆動モータ75への入力パルス数に対し所定値を増減することで、他のモードにおけるカム駆動モータ75への入力パルス数を求めるなどすることができる。
【0106】
また、実施例1では、移動機構71は、押圧部材70を回動させる構成とされていたが、本発明は斯かる態様に限定されるものではない。移動機構71は、中間転写ベルト31を押圧する方向及びその逆方向に押圧部材70を移動させるように移動可能な移動部を備えた構成とされていればよい。例えば、移動機構71は、押圧部材70を直線的に往復移動(スライド移動)させて、押圧部材70の位置(より詳細には先端位置)を変更可能な構成とされていてもよい。
【0107】
また、実施例1では、移動機構71として、カムにより可動部を作動させるアクチュエータを用いたが、これに限定されるものではない。移動機構71は、実施例1に準じた動作を実現できるものであればよく、例えば、ソレノイドを用いて可動部を作動させるアクチュエータなどを用いてもよい。
【0108】
[その他]
以上、本発明を具体的な実施例に即して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
【0109】
上述の実施例では、内部材としての内ローラと共に2次転写部を形成する外部材として、中間転写ベルトの外周面に直接当接する外ローラが用いられていた。これに対して、外部材として外ローラ及び該外ローラと他のローラとに張架された2次転写ベルトが用いられる構成とされていてもよい。そして、外ローラが2次転写ベルトを介して中間転写ベルトの外周面に当接するようにすることができる。斯かる構成においては、中間転写ベルトの内周面に接触する内ローラと、2次転写ベルトの内周面に接触する外ローラとで、中間転写ベルト及び2次転写ベルトを挟持することによって、2次転写部が形成される。この場合、中間転写ベルトと2次転写ベルトとの接触部が2次転写部(2次転写ニップ)である。
【0110】
また、上述の実施例では、ベルト状の像担持体が中間転写ベルトである場合について説明したが、画像形成位置で担持されたトナー像を搬送する無端状のベルトで構成された像担持体であれば、本発明を適用することができる。このようなベルト状の像担持体としては、上述の実施例における中間転写ベルトの他、感光体ベルトや静電記録誘電体ベルトが例示できる。
【0111】
また、本発明は、上述の実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。したがって、ベルト状の像担持体を用いる画像形成装置であれば、タンデム型/1ドラム型、帯電方式、静電像形成方式、現像方式、転写方式、定着方式の区別無く実施できる。上述の実施例では、トナー像の形成/転写に係る主要部を中心に説明したが、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機など、種々の用途で実施できる。
【符号の説明】
【0112】
30 中間転写ベルトユニット
31 中間転写ベルト
32 2次転写内ローラ
41 2次転写外ローラ
51 制御部
52 記憶部
70 押圧部材
71 移動機構