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特許7543125難燃性ポリオレフィン樹脂組成物、成形体、及び成形体の用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】難燃性ポリオレフィン樹脂組成物、成形体、及び成形体の用途
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/12 20060101AFI20240826BHJP
   C08K 13/02 20060101ALI20240826BHJP
   C08K 3/016 20180101ALN20240826BHJP
   C08K 3/34 20060101ALN20240826BHJP
【FI】
C08L23/12
C08K13/02
C08K3/016
C08K3/34
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020211531
(22)【出願日】2020-12-21
(65)【公開番号】P2022098152
(43)【公開日】2022-07-01
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 拡充
(72)【発明者】
【氏名】戸田 明秀
(72)【発明者】
【氏名】荒井 辰哉
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-015451(JP,A)
【文献】韓国特許第10-2005-0068620(KR,B1)
【文献】特開平06-184373(JP,A)
【文献】特開2013-124332(JP,A)
【文献】特開平11-255970(JP,A)
【文献】特開2013-151619(JP,A)
【文献】特表2020-515672(JP,A)
【文献】特開2002-060610(JP,A)
【文献】国際公開第2012/132764(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/069489(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/12
C08K 13/02
C08K 3/016
C08K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン樹脂、臭素系難燃剤、難燃助剤、及びタルクを含む難燃性ポリオレフィン樹脂組成物であって、
前記ポリオレフィン樹脂はポリプロピレン樹脂であり、
前記臭素系難燃剤は有機臭素系難燃剤であって、その含有量が7.5質量%以上9.5質量%以下であり、
前記難燃助剤はアンチモン化合物であって、その含有量が2.4質量%以上3.5質量%以下であり、
前記タルクの含有量が、0.2質量%以上0.5質量%以下であることを特徴とする難燃性ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物であって、
前記ポリオレフィン樹脂が、使用済みの家電製品、OA機器、情報機器、及び通信機器からなる群より選択される少なくとも1つの製品又は機器から回収されたポリオレフィン樹脂であることを特徴とする難燃性ポリオレフィン樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物から成形されることを特徴とする成形体。
【請求項4】
請求項3に記載の成形体を含むことを特徴とする筐体。
【請求項5】
請求項3に記載の成形体を含むことを特徴とする機構部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性ポリオレフィン樹脂組成物、成形体、及び成形体の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
家電製品、OA機器、情報機器、通信機器等の耐久消費財においては、製品の高機能化、軽量化、安全性向上等を目的に、強度、剛性及び成形性に優れ、且つ耐薬品性に優れるポリオレフィン樹脂が広く使用されている。
【0003】
一般に、耐久消費財に使用されるポリオレフィン樹脂組成物には、強度、剛性、耐熱性等を高めるため、タルク等の充填剤が配合されている。また、ポリオレフィン樹脂を難燃化するため、難燃剤及び難燃助剤が配合されている。
【0004】
特許文献1には、ポリオレフィン樹脂、特定の臭素系難燃剤、難燃助剤、及びタルクからなる樹脂組成物において、通常用いられる平均粒子径より大きな特定の範囲内の平均粒子径を有するタルクを用いることによって、難燃性、溶融混練時や成形加工時の熱安定性、及びブルーミング防止性が良好であり、且つ、耐熱変形性及び剛性が向上する旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第2933589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように臭素系難燃剤を含む難燃性ポリオレフィン樹脂組成物において、タルクを多く配合すると難燃性が低下するという問題があり、反対に、難燃性を高めるために難燃剤及び難燃助剤を多く配合すると長期高温安定性が低下する(長期間高温に晒された際に樹脂表面に黄変やクラックが発生する)という問題がある。
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、優れた長期高温安定性及び難燃性を備える難燃性ポリオレフィン樹脂組成物、成形体、及び成形体の用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、ポリオレフィン樹脂、臭素系難燃剤、難燃助剤、及びタルクを含む難燃性ポリオレフィン樹脂組成物であって、前記臭素系難燃剤の含有量が7.5質量%以上9.5質量%以下であり、前記難燃助剤の含有量が2.4質量%以上3.5質量%以下であり、前記タルクの含有量が0.2質量%以上0.5質量%以下であることを特徴とする難燃性ポリオレフィン樹脂組成物である。
【0009】
タルクの含有量が上記範囲内であることにより、難燃性の低下を防ぎつつ長期高温安定性を高めることができるとともに、臭素系難燃剤及び難燃助剤の含有量が上記範囲内であることにより、優れた長期高温安定性及び難燃性を両立することができる。
【0010】
上記の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物にあっては、前記ポリオレフィン樹脂が、使用済みの家電製品、OA機器、情報機器、及び通信機器からなる群より選択される少なくとも1つの製品又は機器から回収されたポリオレフィン樹脂であってもよい。
【0011】
ポリオレフィン樹脂として再生品を使用した場合においても、臭素系難燃剤、難燃助剤、及びタルクの含有量を上記範囲内とすることにより、優れた長期高温安定性及び難燃性を備える難燃性ポリオレフィン樹脂組成物を実現できる。
【0012】
上記課題を解決するためになされた別の発明は、上記の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物から成形されることを特徴とする成形体である。
【0013】
本発明の成形体は、上記の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物から成形されることにより、優れた長期高温安定性及び難燃性を発揮できる。
【0014】
上記課題を解決するためになされたさらに別の発明は、上記の成形体を含むことを特徴とする筐体、及び機構部品である。
【0015】
本発明の筐体及び機構部品は、上記の成形体を含むことにより、優れた長期高温安定性及び難燃性を発揮できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、優れた長期高温安定性及び難燃性を備える難燃性ポリオレフィン樹脂組成物、成形体、及び成形体の用途を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は難燃性ポリオレフィン樹脂組成物、成形体、及び成形体の用途を含む。以下、これらについて詳細に説明する。
【0018】
<難燃性ポリオレフィン樹脂組成物>
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂、臭素系難燃剤、難燃助剤、及びタルクを含む。当該樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、任意成分を含有していてもよい。
【0019】
任意成分としては、例えば、酸化防止剤(フェノール系、リン系、イオウ系等)、ドリップ防止剤(フッ素系樹脂等)、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、充填材(ガラス繊維、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等)、滑剤、可塑剤、安定剤、離型剤、帯電防止剤、着色料(顔料、染料等)、金属不活性化剤、中和剤、分散剤が挙げられる。
【0020】
(ポリオレフィン樹脂)
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物におけるポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-ブテンブロック共重合体、プロピレン-ブテンランダム共重合体、プロピレン-α-オレフィンブロック共重合体、プロピレン-α-オレフィングラフト共重合体が挙げられる。当該α-オレフィンとしては、プロピレン、ブテン、ペンテン等の炭素数3~20のα-オレフィンが挙げられる。なお、当該ポリオレフィン樹脂は、これらの樹脂の混合物であってもよい。
【0021】
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物におけるポリオレフィン樹脂は、使用済みの洗濯機、冷蔵庫、エアコン等の家電製品、OA機器、情報機器、通信機器からなる群より選択される少なくとも1つの製品又は機器から回収したポリオレフィン樹脂部材(以下、「使用済みポリオレフィン樹脂廃材」とも記載する)が含有するポリオレフィン樹脂、及び未使用のポリオレフィン樹脂のどちらであってもよく、両方を合わせたものであってもよい。
【0022】
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物におけるポリオレフィン樹脂の含有量は、臭素系難燃剤、難燃助剤、タルク、及び任意成分の含有量と合わせて100質量%となるよう決定される。
【0023】
(臭素系難燃剤)
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物における臭素系難燃剤は、臭素原子を含み、樹脂に難燃性を付与することができる物質であれば特に限定されないが、例えば、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、テトラブロモビスフェノールA(TBBA)・ビス(ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールS(TBBS)・ビス(ジブロモプロピルエーテル)、2,4,6-トリス(2,4,6-トリブロモフェノキシ)-1,3,5-トリアジン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、臭素化エポキシオリゴマーが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物における臭素系難燃剤の含有量は、7.5質量%以上9.5質量%以下である。より好ましい範囲としては、8質量%以上9質量%以下である。
【0025】
臭素系難燃剤の含有量が上記範囲内であり、且つ、難燃助剤の含有量が後述する範囲内であることにより、優れた長期高温安定性及び難燃性を両立することができる。臭素系難燃剤の含有量が上記上限を超える場合、長期高温安定性が低下するおそれがある。臭素系難燃剤の含有量が上記下限未満の場合、1.5mm厚に成形した際のUL94規格の燃焼性区分がV-0以上とはならず、難燃性が不十分となるおそれがある。
【0026】
(難燃助剤)
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物における難燃助剤としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、三塩化アンチモン等のアンチモン化合物、メタホウ酸亜鉛、四ホウ酸亜鉛、ホウ酸亜鉛等のホウ素化合物、ジルコニウム酸化物、スズ酸化物、モリブデン酸化物が挙げられる。これらの中でも、臭素系難燃剤と併用する難燃助剤として好適であるアンチモン化合物が好ましく、三酸化アンチモンがより好ましい。
【0027】
難燃助剤の形状としては特に限定されず、マスターバッチを使用してもよく、粉末状のものを使用してもよい。
【0028】
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物における難燃助剤の含有量は、2.4質量%以上3.5質量%以下である。より好ましい範囲としては、3質量%以上3.5質量%以下である。
【0029】
難燃助剤の含有量が上記範囲内であり、且つ、臭素系難燃剤の含有量が上記範囲内であることにより、優れた長期高温安定性及び難燃性を両立することができる。難燃助剤の含有量が上記上限を超える場合、長期高温安定性が低下するおそれがある。難燃助剤の含有量が上記下限未満の場合、1.5mm厚に成形した際のUL94規格の燃焼性区分がV-0以上とはならず、難燃性が不十分となるおそれがある。
【0030】
(タルク)
タルクとは、含水珪酸マグネシウム(MgSi10(OH))からなる鉱物であり、滑石とも呼ばれる。
【0031】
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物におけるタルクの含有量は、0.2質量%以上0.5質量%以下である。より好ましい範囲としては、0.2質量%以上0.3質量%以下である。タルクの含有量が上記範囲内であることにより、難燃性の低下を防ぎつつ長期高温安定性を向上できる。タルクの含有量が上記上限を超える場合、1.5mm厚に成形した際のUL94規格の燃焼性区分がV-0以上とはならず、難燃性が不十分となるおそれがある。タルクの含有量が上記下限未満の場合、十分な長期高温安定性が得られないおそれがある。
【0032】
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物の原料に配合するタルクとしては、特に限定されないが、例えば、特開2018-150483号広報の段落[0019]に記載された市販品が挙げられ、具体的には、日本タルク株式会社製の製品名:ナノタルクナノエースシリーズのD-1000、FG-15、超微粉タルクSGシリーズのSG-2000、SG-200、SG-200N15、微粉タルクミクロエースシリーズのSG-95、P-8、P-6、P-4、P-3、P-2、L-1、K-1、L-G、RA-3、PAOG-3、汎用タルクのMS-P、MS-K、SWE、シムゴン、SSS、RA、PA-OG、富士タルク工業株式会社製の製品名:超微粉グレードのFH104、FH105、FH106、FH108、FL108、FG105、FG106、FH205、FH206、FS404、微粉グレードのML110、ML112、ML115、MG113、MG115、MS410、MS412、汎用グレードのRL119、RL217、RG319、RH415、RS415、RS515、RS613、株式会社福岡タルク工業所製の製品名:汎用タルクのFT-96、FT-92、FT-88、FT-84、FT-80、FT-76、微粒子タルクのMF-96、MF-92、MF-88、MF-84、超微粒子タルクのPS-5000H、PS-85H等が挙げられる。
【0033】
(酸化防止剤)
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物は、酸化防止剤を含むことが好ましく、フェノール系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤を含むことがより好ましい。一般に、ポリプロピレン-ポリエチレンブロック共重合体樹脂組成物等のポリオレフィン樹脂組成物には、フェノール系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤が配合されており、ベースポリマーとなるポリオレフィン樹脂の余寿命の安定化が図られている。また、耐熱性のグレードを向上させるために、熱安定性を強化する機能を有するイオウ系酸化防止剤が配合されていることも多い。
【0034】
フェノール系酸化防止剤は、自動酸化劣化反応の連鎖担体ラジカル(RO・,RO・)を補足するのに有効である。さらに、フェノール系酸化防止剤の中でも、使用済みポリオレフィン樹脂廃材の再資源化をより効率的にする観点から、ヒンダードフェノール系酸化防止剤がより好ましい。
【0035】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤として使用されるヒンダードフェノール化合物としては、例えば、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N′-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)、3,3′,3′′,5′,5′′-ヘキサ-tert-ブチル-α,α′,α′′-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、4,6-ビス(ドデシルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス[(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-キシリン)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミン)フェノール、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]-ウンデカンが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
これらの市販品としては、
例えば、アデカスタブAO-20、アデカスタブAO-30、アデカスタブAO-40、アデカスタブAO-50、アデカスタブAO-60、アデカスタブAO-70、アデカスタブAO-80、アデカスタブAO-330(以上、株式会社ADEKA製);
sumilizerGM、sumilizerGS、sumilizerMDP-S、sumilizerBBM-S、sumilizerWX-R、sumilizerGA-80(以上、住友化学株式会社製);
IRGANOX 1010、IRGANOX 1035、IRGANOX 1076、IRGANOX 1098、IRGANOX 1135、IRGANOX 1330、IRGANOX 1726、IRGANOX 1425WL、IRGANOX 1520L、IRGANOX 245、IRGANOX 259、IRGANOX 3114、IRGANOX 565、IRGAMOD 295(以上、BASF社製);
ヨシノックスBB、ヨシノックス425(以上、三菱ケミカル株式会社製)が挙げられる。
【0037】
リン系酸化防止剤として使用されるアルキルホスファイト化合物としては、例えば、ブチリデンビス{2-tert-ブチル-5-メチル-p-フェニレン}-P,P,P,P-テトラトリデシルビス(ホスフィン)、ジステアリルペンタエリトリトールジホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスホラス、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカンが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
これらの市販品としては、例えば、
アデカスタブPEP-4C、アデカスタブPEP-8、アデカスタブPEP-8W、アデカスタブPEP-24G、アデカスタブPEP-36、アデカスタブHP-10、アデカスタブ2112、アデカスタブ260、アデカスタブ522A、アデカスタブ1178、アデカスタブ1500、アデカスタブC、アデカスタブ135A、アデカスタブ3010、アデカスタブTPP(以上、株式会社ADEKA製);
IRGAFOS 168(BASF社製)が挙げられる。
【0039】
本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物におけるフェノール系酸化防止剤の含有量は、0.05質量%以上0.1質量%以下であることが好ましい。また、リン系酸化防止剤の含有量は、フェノール系酸化防止剤の1~3倍量であることが好ましい。フェノール系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤の含有量を上記範囲内とすることで、長期高温安定性を高めることができる。
【0040】
<成形体、筐体、機構部品>
本発明の成形体は、本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物から成形される成形体である。本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物は、溶融成形等により成形体とすることができ、例えば、エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機等の家電製品、OA機器、情報機器、通信機器等の筐体や機構部品に使用することができる。本発明の成形体は、本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物のみから形成されていてもよく、他の材料から形成された部分を有していてもよい。本発明の成形体は、後述する実施例で示すように、本発明の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物から成形されることにより、優れた長期高温安定性及び難燃性を発揮できる。
【実施例
【0041】
以下、実施例、参考例、及び比較例に基づいて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0042】
まず、実施例、参考例、及び比較例で原料として用いた、ポリオレフィン樹脂、臭素系難燃剤、難燃助剤、タルク、及び酸化防止剤について説明する。
【0043】
<ポリオレフィン樹脂>
・市販のポリプロピレン樹脂:BJ750(商品名、HANWHA TOTAL製)
・使用済みポリプロピレン樹脂:使用済み家電製品(洗濯機や冷蔵庫やエアコン)から回収した使用済みポリオレフィン樹脂廃材が含有するポリプロピレン樹脂
<臭素系難燃剤>
・ピロガードSR-720N(商品名、第一工業製薬株式会社製)
なお、ピロガードSR-720Nの主成分はTBBA・ビス(ジブロモプロピルエーテル)である。
<難燃助剤>
・ヒロマスターA390(商品名、株式会社鈴裕化学製)
なお、ヒロマスターA390は、ベースレジンがポリプロピレンであり、90%の三酸化アンチモンを含有したマスターバッチである。
<タルク>
・ミクロエースSG-95(商品名、日本タルク株式会社製)
<フェノール系酸化防止剤>
・アデカスタブAO-60(商品名、株式会社ADEKA製)
<リン系酸化防止剤>
・アデカスタブ2112(商品名、株式会社ADEKA製)
【0044】
<難燃性ポリオレフィン樹脂組成物及び成形体の作製>
次に、実施例、参考例、及び比較例における難燃性ポリオレフィン樹脂組成物及び成形体の作製方法を説明する。
【0045】
まず、上記の各成分を、後掲する表1に示す質量割合で配合した原料を、タンブラー混合機を用いて混合して混合物を得た。
【0046】
この混合物を、スクリュー径27mm、スクリュー有効長L/D=45の二軸混練押出機(テクノベル製、KZW27TW-45MG-NH(-500))にて、設定温度200℃で溶融混練してストランド状に成形し、ペレタイザーでペレット状にカットし、ペレット状の難燃性ポリプロピレン樹脂組成物を作製した。押出条件は、ペレットの収量が時間当たり12kgとなるようにスクリューの回転数とホッパーからのフィード量を調整した。
【0047】
上記のペレット状の難燃性ポリプロピレン樹脂組成物を、10トン縦型射出成型機(日精樹脂工業株式会社製)で、設定温度220℃、金型温度40℃、冷却時間30秒の射出成形条件で、ASTM D790準拠の曲げ試験用試験片(127×13×h3.1mm)を作製した。この試験片を、140℃に設定した送風定温恒温器に投入して、後述する長期高温安定性の評価に用いた。
【0048】
また、80トン横型射出成型機(日精樹脂工業株式会社製)で、設定温度220℃、金型温度40℃、冷却時間30秒の射出成形条件で、UL94規格のV燃焼性試験に準拠した厚み1.5mmの難燃性測定用試験片を作製した。この試験片を、後述する難燃性の評価に用いた。
【0049】
<評価>
実施例、参考例、及び比較例の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物について、下記方法に従い各種測定を行い、長期高温安定性及び難燃性を評価した。各実施例及び比較例における原料の配合割合、並びに評価結果を表1に示す。なお、表1中、ポリオレフィン樹脂の種類の行の「廃材由来」は、上記の使用済みポリプロピレン樹脂のことを表す。
【0050】
(長期高温安定性の評価方法)
上記のとおり作製したASTM D790準拠の曲げ試験用試験片を、140℃に設定した送風定温恒温器に投入することにより、140℃500時間で試験片樹脂表面に黄変及びクラックの発生があるか否かを目視で確認した。黄変及びクラックの発生がない場合には良好(○)と、黄変又はクラックの発生がある場合には不良(×)と判定した。
【0051】
(難燃性の評価方法)
上記のとおり、UL94規格準拠の長さ127mm×幅13mm×厚み1.5mmの垂直燃焼試験片を作製し、UL94規格に準じて垂直燃焼試験を行い、燃焼性区分を判定した。なお、V-0、V-1、及びV-2のいずれにも該当しない場合はNRとした。
【0052】
(総合判定の方法)
上記の長期高温安定性の評価が良好(○)であり、且つ、UL94規格の燃焼性区分がV-0以上である場合に、長期高温安定性及び難燃性が良好(○)であると判定し、どちらか一方でも上記基準を満たさない場合には不良(×)であると判定した。
【0053】
【表1】
【0054】
表1から明らかなように、ポリオレフィン樹脂、臭素系難燃剤、難燃助剤、及びタルクを含む難燃性ポリオレフィン樹脂組成物であって、臭素系難燃剤の含有量が7.5質量%以上9.5質量%以下であり、難燃助剤の含有量が2.4質量%以上3.5質量%以下であり、タルクの含有量が0.2質量%以上0.5質量%以下である実施例1~5の難燃性ポリオレフィン樹脂組成物は、長期高温安定性及び難燃性の評価が優れるものであった。
【0055】
これに対して、これらの要件を満たさない比較例1~7や、臭素系難燃剤、難燃助剤、及びタルクを含まない参考例では、長期高温安定性又は難燃性の評価が実施例に対して劣っていた。
【0056】
具体的には、タルクを含まない比較例1、2においては長期高温安定性の評価が、タルクの含有量が上記上限を超える比較例3においては難燃性の評価が、それぞれ実施例に対して劣っていた。
【0057】
難燃助剤の含有量が上記下限未満である比較例4においては難燃性の評価が、臭素系難燃剤の含有量が上記下限未満である比較例5においても難燃性の評価が、それぞれ実施例に対して劣っていた。
【0058】
臭素系難燃剤の含有量が上記上限を超える比較例6においては長期高温安定性の評価が、難燃助剤の含有量が上記上限を超える比較例7においても長期高温安定性の評価が、それぞれ実施例に対して劣っていた。
【0059】
臭素系難燃剤、難燃助剤、及びタルクを含まない参考例においても、難燃性の評価が実施例に対して劣っていた。
【0060】
実施例1~5によれば、ポリオレフィン樹脂として市販のポリプロピレン樹脂(未使用のポリオレフィン樹脂)を使用した場合においても、使用済み家電製品(洗濯機や冷蔵庫やエアコン)から回収した使用済みポリオレフィン樹脂廃材が含有するポリプロピレン樹脂(使用済みポリオレフィン樹脂)を使用した場合においても、優れた長期高温安定性及び難燃性を実現できることがわかる。
【0061】
<その他の実施形態>
なお、今回開示した実施形態は、すべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。