(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】プロスタグランジンF2受容体阻害剤に対するモノクローナル抗体及びコンジュゲート、並びにそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20240826BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20240826BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240826BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12P21/08
C12N15/13
(21)【出願番号】P 2020520491
(86)(22)【出願日】2018-10-15
(86)【国際出願番号】 US2018055905
(87)【国際公開番号】W WO2019075472
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-10-05
(32)【優先日】2017-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511058419
【氏名又は名称】エー アンド ジー ファーマシューティカル,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セレーロ,ジネット
【審査官】小田 浩代
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-501725(JP,A)
【文献】特表2013-503192(JP,A)
【文献】特表2016-531094(JP,A)
【文献】Guilmain W. et al.,CD9P-1 expression correlates with the metastatic status of lung cancer, and a truncated form of CD9P-1, GS-168AT2, inhibits in vivo tumour growth,Br J Cancer,2011年,Vol. 104(3),pp. 496-504
【文献】Charrin S. et al.,The major CD9 and CD81 molecular partner. Identification and characterization of the complexes,J Biol Chem,2001年,Vol. 276(17),pp. 14329-14337
【文献】Goenaga AL. et al.,Identification and characterization of tumor antigens by using antibody phage display and intrabody strategies,Mol Immunol,2007年,Vol. 44(15),pp. 3777-3788
【文献】Colin S. et al.,A truncated form of CD9-partner 1 (CD9P-1), GS-168AT2, potently inhibits in vivo tumour-induced angiogenesis and tumour growth,Br J Cancer,2011年,Vol. 105(7),pp. 1002-1011
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む、プロスタグランジンF2受容体阻害剤(PTGFRN)に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であって、前記VH及びVLが、相補性決定領域CDR1、CDR2及びCDR3を含み、それぞれVH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3並びにVL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3が、
a)それぞれ配列番号11、12及び13並びに配列番号20、21及び22;
b)それぞれ配列番号35、36及び37並びに配列番号38、39及び40;並びに
c)それぞれ配列番号8、9及び10並びに配列番号5、6及び7
からなる群から選択されるポリペプチド配列を含む、抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
内在化される、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2017年10月13日出願の米国仮特許出願第62/571,961号に対する優先権を主張する。
【0002】
電子提出された資料の参照による組み込み
2018年10月15日に作成された、サイズが67,895バイトの名称「48581-526001WO_seqlisting_ST25」の、コンピューター可読ヌクレオチド/アミノ酸配列表ファイルは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
発明の分野
本開示は、プロスタグランジンF2受容体阻害剤(PTGFRN)に結合する抗体及び関連分子に関する。本開示はまた、全長抗体、その抗体断片若しくはバリアントを含む、又は或いは、全長抗体、その抗体断片若しくはバリアントからなる、分子に関する。本開示は、そのような抗体のアミノ酸及びそのような抗体をコードする核酸配列にさらに関する。本開示はまた、抗PTGFRN抗体を含む抗体コンジュゲート(例えば、抗体-薬物コンジュゲート又はイムノコンジュゲート)、抗PTGFRN抗体を含む組成物、並びにPTGFRN発現と関連する状態(例えば、がん)を処置するために、抗PTGFRN抗体及びそれらのコンジュゲートを使用するための方法に関する。本開示は、PTGFRNの発現と関連する病理学的障害を検出及び診断するための、これらの抗体、その抗原結合断片又は抗体-薬物コンジュゲートの使用、及び対応する方法をさらに含む。本開示は、そのような障害の予後判定又は診断的若しくは治療モニタリングのための、少なくともそのような抗体若しくは抗体-薬物コンジュゲートを含む製品及び/又は組成物又はキットを最終的に含む。
【背景技術】
【0004】
モノクローナル抗体は、がんを含む種々の疾患の診断及び処置における最も重要なツールの1つになっている。2017年1月11日の時点で、FDAは、68種の治療的モノクローナル抗体を承認している(Cai HH (2017) Therapeutic Monoclonal Antibodies Approved by FDA in 2016. MOJ Immunol 5(1): 00145)。「今日、モノクローナル抗体製品は、数千人以下の患者集団を発作性夜間ヘモグロビン尿症若しくはクリオピリン関連周期性症候群などの希少兆候について処置するものから、数十万人の患者を一部のがん及び多発性硬化症について処置するもの、又はさらには数百万人の患者を、疾患、例えば、喘息及び関節リウマチについて処置するものまでの範囲の、種々の疾患の処置のために承認されている。」(Eckerら, Monoclonal Antibodies 7(1):9-14, 2015)。
【0005】
がん細胞の表面上で発現される抗原を認識するモノクローナル抗体は、特定の腫瘍型を標的化するために使用することができる。例えば、癌腫の細胞表面上に位置するEpCAM/17-1A抗原を認識するモノクローナル抗体は、名称Panorex(登録商標)(エドレコロマブ)の下で現在市販されており、受容体チロシンタンパク質キナーゼerbB-2(CD340及びHER2/neuとしても公知)に対するモノクローナル抗体であるHerceptin(登録商標)(トラスツズマブ)は、陽性乳癌の処置のための最先端の治療である。他のモノクローナル抗体治療薬には、CD20抗原に結合し、B細胞リンパ腫を処置するために使用されるRituxan(登録商標)(リツキシマブ)、CD52抗原に結合し、慢性リンパ性白血病を処置するために使用されるCampath(登録商標)(アレムツズマブ(alemetuzumab))、及びCTLA-4に結合し、黒色腫を処置するために使用されるYervoy(登録商標)(イピリムマブ)が含まれる。
【0006】
モノクローナル抗体は、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を創出するために、薬物分子にコンジュゲートすることもできる。一例では、抗がん薬物(例えば、細胞毒素又は細胞毒)が、がん細胞の表面上で見出される抗原に特異的に結合するモノクローナル抗体にカップリングされる。抗体が細胞表面抗原に結合すると、抗体(及び毒素)は、内在化され得る。これは、毒素をがん細胞に優勢に運搬する効果を有し、さもなければその毒素を受けない細胞中への毒素の導入を可能にし、それによって抗体治療の効果を増加させ、又は或いは、より少ない毒素の使用を可能にし、より少ない毒素誘導性副作用を生じる。この型の治療薬の例は、モノクローナル抗体トラスツズマブが微小管アセンブリ阻害剤メルタンシン(マイタンシノイドDM1及びエムタンシンとも呼ばれる)にコンジュゲートされた、Kadcyla(登録商標)(トラスツズマブエムタンシン)である。Kadcyla(登録商標)は、HER2陽性腫瘍を有し、トラスツズマブに対して耐性である乳癌患者を処置するために使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記多数の例にもかかわらず、モノクローナル抗体ベースの治療薬の必要性が、当該分野に存在したままである。特に、がん細胞の表面上の抗原に結合し、それによって新たな治療薬の開発の機会を提供するモノクローナル抗体治療薬の必要性が、当該分野に存在したままである。これ及び他の必要性が、本開示によって満たされる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、プロスタグランジンF2受容体阻害剤(PTGFRN)に結合する単離された抗体、抗原結合断片及びそれらの誘導体、即ち、抗PTGFRN抗体を提供する。そのような抗体、抗原結合断片及びそれらの誘導体は、1つ以上の機能的部分(例えば、検出可能な部分、細胞傷害性部分など)に結合させることができる。本開示は、抗体の可変重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列並びにそれらの対応する核酸配列もまた含む。一実施形態では、本開示の抗体は、モノクローナル抗体であってもよい。本開示のモノクローナル抗体の適切な例は、ATCCに寄託され、特許寄託名(Patent Deposit Designation)PTA-124281が与えられたマウスハイブリドーマ33B7によって産生される。33B7は、名称AG02としても公知であり、これら2つの名称は、本明細書を通じて相互交換可能に使用される。
【0009】
一部の実施形態では、本開示は、プロスタグランジンF2受容体阻害剤(PTGFRN)に特異的に結合し、内在化される、単離された抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0010】
一部の実施形態では、本開示は、配列番号101のポリペプチド及び配列番号103のポリペプチドを含む抗体;配列番号101のポリペプチド及び配列番号104のポリペプチドを含む抗体;配列番号101のポリペプチド及び配列番号105のポリペプチドを含む抗体;配列番号102のポリペプチド及び配列番号103のポリペプチドを含む抗体;配列番号102のポリペプチド及び配列番号104のポリペプチドを含む抗体;配列番号102のポリペプチド及び配列番号105のポリペプチドを含む抗体;配列番号106のポリペプチド及び配列番号108のポリペプチドを含む抗体;配列番号107のポリペプチド及び配列番号108のポリペプチドを含む抗体;配列番号109のポリペプチド及び配列番号110のポリペプチドを含む抗体;配列番号111のポリペプチド及び配列番号112のポリペプチドを含む抗体;配列番号113のポリペプチド及び配列番号115のポリペプチドを含む抗体;配列番号113のポリペプチド及び配列番号116のポリペプチドを含む抗体;配列番号114のポリペプチド及び配列番号115のポリペプチドを含む抗体;配列番号114のポリペプチド及び配列番号116のポリペプチドを含む抗体;配列番号117のポリペプチド及び配列番号118のポリペプチドを含む抗体;配列番号119のポリペプチド及び配列番号120のポリペプチドを含む抗体;配列番号121のポリペプチド及び配列番号122のポリペプチドを含む抗体;配列番号121のポリペプチド及び配列番号123のポリペプチドを含む抗体;配列番号124のポリペプチド及び配列番号125のポリペプチドを含む抗体;配列番号126のポリペプチド及び配列番号127のポリペプチドを含む抗体;配列番号128のポリペプチド及び配列番号129のポリペプチドを含む抗体;配列番号128のポリペプチド及び配列番号130のポリペプチドを含む抗体;並びに配列番号4のポリペプチド及び配列番号2のポリペプチドを含む抗体からなる群から選択される抗体と同じプロスタグランジンF2受容体阻害剤(PTGFRN)エピトープに特異的に結合する、抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0011】
一部の実施形態では、本開示は、プロスタグランジンF2受容体阻害剤(PTGFRN)に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であって、配列番号101のポリペプチド及び配列番号103のポリペプチドを含む抗体;配列番号101のポリペプチド及び配列番号104のポリペプチドを含む抗体;配列番号101のポリペプチド及び配列番号105のポリペプチドを含む抗体;配列番号102のポリペプチド及び配列番号103のポリペプチドを含む抗体;配列番号102のポリペプチド及び配列番号104のポリペプチドを含む抗体;配列番号102のポリペプチド及び配列番号105のポリペプチドを含む抗体;配列番号106のポリペプチド及び配列番号108のポリペプチドを含む抗体;配列番号107のポリペプチド及び配列番号108のポリペプチドを含む抗体;配列番号109のポリペプチド及び配列番号110のポリペプチドを含む抗体;配列番号111のポリペプチド及び配列番号112のポリペプチドを含む抗体;配列番号113のポリペプチド及び配列番号115のポリペプチドを含む抗体;配列番号113のポリペプチド及び配列番号116のポリペプチドを含む抗体;配列番号114のポリペプチド及び配列番号115のポリペプチドを含む抗体;配列番号114のポリペプチド及び配列番号116のポリペプチドを含む抗体;配列番号117のポリペプチド及び配列番号118のポリペプチドを含む抗体;配列番号119のポリペプチド及び配列番号120のポリペプチドを含む抗体;配列番号121のポリペプチド及び配列番号122のポリペプチドを含む抗体;配列番号121のポリペプチド及び配列番号123のポリペプチドを含む抗体;配列番号124のポリペプチド及び配列番号125のポリペプチドを含む抗体;配列番号126のポリペプチド及び配列番号127のポリペプチドを含む抗体;配列番号128のポリペプチド及び配列番号129のポリペプチドを含む抗体;配列番号128のポリペプチド及び配列番号130のポリペプチドを含む抗体;並びに配列番号4のポリペプチド及び配列番号2のポリペプチドを含む抗体からなる群から選択される抗体を競合的に阻害する、抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0012】
一部の実施形態では、本開示は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む、プロスタグランジンF2受容体阻害剤(PTGFRN)に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であって、VH及びVLが、相補性決定領域CDR1、CDR2及びCDR3を含み、それぞれVH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3並びにVL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3が、それぞれ配列番号11、12及び13並びに配列番号17、18及び19;それぞれ配列番号11、12及び13並びに配列番号20、21及び22;それぞれ配列番号11、12及び13並びに配列番号23、24及び25;それぞれ配列番号14、15及び16並びに配列番号17、18及び19;それぞれ配列番号14、15及び16並びに配列番号20、21及び22;それぞれ配列番号14、15及び16並びに配列番号23、24及び25;それぞれ配列番号26、27及び28並びに配列番号32、33及び34;それぞれ配列番号29、30及び31並びに配列番号32、33及び34;それぞれ配列番号35、36及び37並びに配列番号38、39及び40;それぞれ配列番号41、42及び43並びに配列番号44、45及び46;それぞれ配列番号47、48及び49並びに配列番号53、54及び55;それぞれ配列番号47、48及び49並びに配列番号56、57及び58;それぞれ配列番号50、51及び52並びに配列番号53、54及び55;それぞれ配列番号50、51及び52並びに配列番号56、57及び58;それぞれ配列番号59、60及び61並びに配列番号62、63及び64;それぞれ配列番号65、66及び67並びに配列番号68、69及び70;それぞれ配列番号71、72及び73並びに配列番号74、75及び76;それぞれ配列番号71、72及び73並びに配列番号77、78及び79;それぞれ配列番号80、81及び82並びに配列番号83、84及び85;それぞれ配列番号86、87及び88並びに配列番号89、90及び91;それぞれ配列番号92、93及び94並びに配列番号95、96及び97;それぞれ配列番号92、93及び94並びに配列番号98、99及び100;それぞれ配列番号8、9及び10並びに配列番号5、6及び7;並びに1、2、3又は4つの保存的アミノ酸置換を含む(a)~(w)のバリアントからなる群から選択されるポリペプチド配列を含む、抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0013】
一部の実施形態では、本開示の抗体又はその抗原結合断片は、配列番号101及び配列番号103;配列番号101及び配列番号104;配列番号101及び配列番号105;配列番号102及び配列番号103;配列番号102及び配列番号104;配列番号102及び配列番号105;配列番号106及び配列番号108;配列番号107及び配列番号108;配列番号109及び配列番号110;配列番号111及び配列番号112;配列番号113及び配列番号115;配列番号113及び配列番号116;配列番号114及び配列番号115;配列番号114及び配列番号116;配列番号117及び配列番号118;配列番号119及び配列番号120;配列番号121及び配列番号122;配列番号121及び配列番号123;配列番号124及び配列番号125;配列番号126及び配列番号127;配列番号128及び配列番号129;配列番号128及び配列番号130;並びに配列番号4及び配列番号2からなる群から選択されるポリペプチド配列に対して少なくとも90%、95%、99%又は100%同一であるポリペプチド配列を含む。
【0014】
一部の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、内在化される。一部の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、マウス、ヒト、ヒト化又はキメラである。一部の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、CDR移植型、組換え又は表面再構成型(resurfaced)である。一部の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、ヒト又はヒト由来の重鎖及び軽鎖可変領域フレームワークをさらに含む。一部の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、IgG1又はIgG2定常領域を含む。一部の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、細胞死を誘導することが可能である。一部の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、ヒトPTGFRNに結合する。一部の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、マウスPTGFRNに結合する。一部の実施形態では、抗体は、全長抗体である。一部の実施形態では、これは、抗原結合断片である。一部の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、Fab、Fab'、F(ab')2、Fd、単鎖Fv、又はscFv、ジスルフィド連結されたFv、V-NARドメイン、IgNar、イントラボディ(intrabody)、IgGΔCH2、ミニボディ(minibody)、F(ab')3、テトラボディ(tetrabody)、トリアボディ(triabody)、ディアボディ(diabody)、単一ドメイン抗体、DVD-Ig、Fcab、mAb2、(scFv)2又はscFv-Fcを含む。
【0015】
本開示は、式:Ab-L-Mの抗体コンジュゲートであって、式中、(a)Abが、PTGFRNに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であり;(b)Lがリンカーであり;(c)Mが機能的部分である、抗体コンジュゲートをさらに提供する。一部の実施形態では、抗体コンジュゲート中のAbは、請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片である。一部の実施形態では、抗体コンジュゲート中のMは、細胞傷害性試薬、免疫調節剤、イメージング剤(imaging agent)、治療用タンパク質、バイオポリマー及びオリゴヌクレオチドからなる群から選択される。一部の実施形態では、Mは、細胞傷害性試薬である。一部の実施形態では、細胞傷害性試薬は、アントラサイクリン、アウリスタチン、カンプトテシン、コンブレタスタチン(combretastain)、ドラスタチン、デュオカルマイシン、エンジイン、ゲルダナマイシン、インドリノ-ベンゾジアゼピンダイマー、マイタンシン(maytansine)、ピューロマイシン、ピロロベンゾジアゼピンダイマー、タキサン、ビンカアルカロイド、チューブリシン(tubulysin)、ヘミアステリン、スプライソスタチン(spliceostatin)、プラジエノライド(pladienolide)及びカリケアマイシン(calicheamicin)からなる群から選択される。一部の実施形態では、細胞傷害性試薬は、モノメチルアウリスタチンE、モノメチルアウリスタチンF、マイタンシノイドDM1、マイタンシノイドDM4、カリケアマイシン、オゾガマイシン、α-アマニチン、イットリウム-90及びヨウ素-131から選択される。一部の実施形態では、抗体コンジュゲート中のリンカーは、切断可能なリンカー、切断不能なリンカー、親水性リンカー及びジカルボン酸ベースのリンカーからなる群から選択される。一部の実施形態では、本開示において提供される抗体コンジュゲートは、PTGFRNに結合し、内在化される。
【0016】
本開示は、治療有効量の本開示によって包含される抗体若しくはその抗原結合断片又は抗体コンジュゲート及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物をさらに提供する。
【0017】
対象においてPTGFRNの機能又は発現と関連する障害を処置するための方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本開示によって包含される抗体若しくはその抗原結合断片、抗体コンジュゲート又は医薬組成物を投与するステップを含む方法が、本開示においてさらに提供される。一部の実施形態では、障害はがんである。一部の実施形態では、がんは、髄芽腫、類表皮癌、中皮腫、骨肉腫、紡錘細胞肉腫様癌、絨毛癌、横紋筋肉腫、神経芽腫、平滑筋肉腫、三重陰性乳癌、頭頸部癌、去勢耐性前立腺癌、扁平上皮癌、肺扁平上皮癌、卵巣癌及び膵癌、又はそれらの任意の転移である。
【0018】
本開示は、PTGFRN発現腫瘍を有する対象において腫瘍の成長又は進行を減少させるための方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本開示によって包含される抗体若しくはその抗原結合断片、抗体コンジュゲート又は医薬組成物を投与するステップを含む方法もまた提供する。
【0019】
本開示は、対象においてPTGFRN発現がん細胞の転移を減少させるための方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本開示によって包含される抗体若しくはその抗原結合断片、抗体コンジュゲート又は医薬組成物を投与するステップを含む方法をさらに提供する。
【0020】
本開示は、PTGFRN発現腫瘍を有する対象において腫瘍退縮を誘導するための方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本開示によって包含される抗体若しくはその抗原結合断片、抗体コンジュゲート又は医薬組成物を投与するステップを含む方法を提供する。
【0021】
本開示は、細胞をイメージングするための方法であって、(1)細胞を、本開示によって包含される抗体若しくはその抗原結合断片又は抗体コンジュゲートと接触させるステップ;及び(2)抗体若しくはその抗原結合断片又はコンジュゲートを検出するステップを含む方法もまた提供する。
【0022】
本開示は、腫瘍におけるPTGFRNの発現を同定するための方法であって、(1)腫瘍のサンプルを取得するステップ、(2)サンプルを、本開示によって包含される抗体若しくはその抗原結合断片又は抗体コンジュゲートと接触させるステップ;及び(3)抗体若しくはその抗原結合断片又はコンジュゲートを検出するステップを含む方法もまた提供する。一部の実施形態では、検出するステップは、免疫化学による。
【0023】
本開示は、PTGFRN発現腫瘍を有する対象又は有したことがある対象において腫瘍再成長を予防するための方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本開示によって包含される抗体若しくはその抗原結合断片、抗体コンジュゲート又は医薬組成物を投与するステップを含む方法もまた提供する。
【0024】
本開示は、PTGFRN発現腫瘍を有する対象又は有したことがある対象において症状を寛解させるための方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本開示によって包含される抗体若しくはその抗原結合断片、抗体コンジュゲート又は医薬組成物を投与するステップを含む方法もまた提供する。
【0025】
本開示の抗体又はその抗原結合断片を含む診断試薬が、本開示においてさらに提供される。一部の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、標識される。一部の実施形態では、標識は、放射標識、フルオロフォア、発色団、イメージング剤及び金属イオンからなる群から選択される。
【0026】
本開示は、本開示によって包含される抗体若しくはその抗原結合断片、抗体コンジュゲート又は医薬組成物を含むキットもまた提供する。
【0027】
本開示は、単離されたポリヌクレオチドもまた提供する。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号2、4及び101~130からなる群から選択される配列に対して少なくとも90%、95%、99%又は100%同一なポリペプチドをコードする配列を含む。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号1、2及び131~160に対して少なくとも90%、95%、99%又は100%同一である配列を含む。本開示は、ポリヌクレオチドを含むベクター、及び/又はそのベクターを含む宿主細胞もまた提供する。
【0028】
一部の実施形態では、本開示は、PTGFRNに結合する結合分子を取得するための、本開示の抗体の相補性決定領域(CDR)配列の使用を含む。そのような結合分子は、典型的には、本開示の抗体の1つ以上のCDR領域又はCDR由来領域を含む。
【0029】
一部の実施形態では、本開示は、本明細書に開示される抗PTGFRN抗体を含む抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を提供する。別の態様では、本開示は、PTGFRNの発現又は機能と関連する障害を検出及び診断するための、抗PTGFRN抗体、その抗原結合断片及び抗体-薬物コンジュゲート、並びに対応する方法の使用を含む。ある特定の実施形態では、障害は、がん障害である。本開示のADCによって処置され得るがんの例には、髄芽腫、紡錘細胞肉腫様癌(SCSC)、中皮腫、頭頸部の類表皮癌、骨肉腫、絨毛癌、横紋筋肉腫、神経芽腫、平滑筋肉腫、三重陰性乳癌及び扁平上皮癌(例えば、肺、乳房又は頭頸部のがんなど)が含まれるがこれらに限定されない。
【0030】
別の態様では、本開示は、ある特定のがんの予後判定又は診断的若しくは治療モニタリングのための、少なくとも1つのそのような抗体、抗原結合断片又は抗体-薬物コンジュゲートを含む製品及び/又は組成物又はキットを含む。
【0031】
一部の実施形態では、本開示は、本明細書に開示される抗PTGFRN抗体、その抗原結合断片又は抗体-薬物コンジュゲート及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0032】
一部の実施形態では、本開示は、対象においてプロスタグランジンF2受容体阻害剤(PTGFRN)を発現するがんを処置するための方法を提供する。そのような方法は、対象に、抗PTGFRN抗体又はその抗原結合断片を含む組成物を投与するステップを含み得る。典型的には、そのような抗PTGFRN抗体及び/又は断片は、機能的部分にコンジュゲートされる。コンジュゲートは、対象のがんの成長を低減又は阻害するのに十分な量で投与され得る。一部の実施形態では、抗PTGFRN抗体又は抗原結合断片は、(a)アミノ酸配列:GCSITSGYYWN(VH CDR1、配列番号8)、YISHDGNNNYSPSLKN(VH CDR2、配列番号9)及びGFYYYGYFGY(VH CDR3、配列番号10)を含む3つの重鎖相補性決定領域(VH CDR1、VH CDR2及びVH CDR3);並びに(b)アミノ酸配列:KSSQSLLYSTNQKNYLA(VL CDR1、配列番号5)、WASTRES(VL CDR2、配列番号6)及びQQYYSYRT(VL CDR3、配列番号7)を含む3つの軽鎖相補性決定領域(VL CDR1、VL CDR2及びVL CDR3)を含む。
【0033】
PTGFRNを発現する任意のがんが、本開示の方法を使用して処置され得る。処置され得るがんの例には、髄芽腫、類表皮腫瘍、中皮腫、骨肉腫、紡錘細胞肉腫様癌、絨毛癌、扁平上皮癌、又はそれらの任意の局所的、領域的若しくは遠位転移が含まれるがこれらに限定されない。
【0034】
任意の適切な機能的部分が、本開示の抗体にコンジュゲートされ得る。一部の実施形態では、機能的部分は、放射性同位体、治療剤、細胞傷害性試薬、アウリスタチン、ドラスタチン、タキサン、デュオカルマイシン、カリケアマイシン、クリプトフィシン、DNAアルキル化剤、又は腫瘍活性化されるプロドラッグを含み得る。適切な細胞傷害性試薬には、モノメチルアウリスタチンE、モノメチルアウリスタチンF、マイタンシノイドDM1、マイタンシノイドDM4、カリケアマイシン、オゾガマイシン、α-アマニチン、イットリウム-90及びヨウ素-131が含まれるがこれらに限定されない。
【0035】
本開示の方法における使用に適切な抗体又はその抗原結合断片には、ヒト抗体又はその抗原結合断片、ヒト化抗体又はその抗原結合断片、CDR移植型抗体又はその抗原結合断片、及びキメラ抗体又はその抗原結合断片が含まれるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、抗PTGFRN抗体は、ヒト又はヒト由来の重鎖及び軽鎖可変領域フレームワークを含み得る。一部の実施形態では、本開示の抗体は、配列番号4のアミノ酸47~57、配列番号4のアミノ酸72~87又は配列番号4のアミノ酸120~129のアミノ酸配列のうち1つ以上を含む重鎖可変領域、及び配列番号2のアミノ酸42~58、配列番号2のアミノ酸74~80又は配列番号2のアミノ酸113~120のアミノ酸配列のうち1つ以上を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0036】
一部の実施形態では、本開示は、PTGFRNに結合する単離された抗体又はその抗原結合断片を提供する。そのような抗体又は断片は、(a)アミノ酸配列:GCSITSGYYWN(VH CDR1、配列番号8)、YISHDGNNNYSPSLKN(VH CDR2、配列番号9)及びGFYYYGYFGY(VH CDR3、配列番号10)を含む3つの重鎖相補性決定領域(VH CDR1、VH CDR2及びVH CDR3);並びに(b)アミノ酸配列:KSSQSLLYSTNQKNYLA(VL CDR1、配列番号5)、WASTRES(VL CDR2、配列番号6)及びQQYYSYRT(VL CDR3、配列番号7)を含む3つの軽鎖相補性決定領域(VL CDR1、VL CDR2及びVL CDR3)を含み得る。
【0037】
一部の実施形態では、単離された抗体又はその抗原結合断片は、PTGFRNに結合し、内在化される。本開示の単離された抗体又はその断片は、配列番号4のアミノ酸47~57、配列番号4のアミノ酸72~87又は配列番号4のアミノ酸120~129のアミノ酸配列のうち1つ以上を含む重鎖可変領域、及び配列番号2のアミノ酸42~58、配列番号2のアミノ酸74~80又は配列番号2のアミノ酸113~120のアミノ酸配列のうち1つ以上を含む軽鎖可変領域を含み得る。本開示の単離された抗体又はその抗原断片は、配列番号4のアミノ酸47~57、配列番号4のアミノ酸72~87又は配列番号4のアミノ酸120~129のうち1つに対して少なくとも95%同一である連続するアミノ酸の少なくとも1つの領域を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域;及び配列番号2のアミノ酸42~58、配列番号2のアミノ酸74~80又は配列番号2のアミノ酸113~120のうち1つに対して少なくとも95%同一である連続するアミノ酸の少なくとも1つの領域を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含み得る。抗体又は抗原結合断片は、ヒト化、キメラ、CDR移植型又は組換えヒト抗体であり得る。
【0038】
一部の実施形態では、本開示は、式:Ab-L-Mの抗体コンジュゲートであって、式中、(a)Abが、PTGFRNに結合する本開示の抗体又はその抗原結合断片であり;(b)Lがリンカーであり;(c)Mが機能的部分である、抗体コンジュゲートを提供する。本開示の抗体コンジュゲートを作製するために使用され得る本開示の抗体又はその断片は、(a)アミノ酸配列:GCSITSGYYWN(VH CDR1、配列番号8)、YISHDGNNNYSPSLKN(VH CDR2、配列番号9)及びGFYYYGYFGY(VH CDR3、配列番号10)を含む3つの重鎖相補性決定領域(VH CDR1、VH CDR2及びVH CDR3);並びに(b)アミノ酸配列:KSSQSLLYSTNQKNYLA(VL CDR1、配列番号5)、WASTRES(VL CDR2、配列番号6)及びQQYYSYRT(VL CDR3、配列番号7)を含む3つの軽鎖相補性決定領域(VL CDR1、VL CDR2及びVL CDR3)を含み得る。
【0039】
一部の実施形態では、本開示の抗体コンジュゲートは、PTGFRNに結合し、内在化される。本開示の抗体コンジュゲートの抗体部分は、配列番号4のアミノ酸47~57、配列番号4のアミノ酸72~87又は配列番号4のアミノ酸120~129のアミノ酸配列のうち1つ以上を含む重鎖可変領域、及び配列番号2のアミノ酸42~58、配列番号2のアミノ酸74~80又は配列番号2のアミノ酸113~120のアミノ酸配列のうち1つ以上を含む軽鎖可変領域を含み得る。本開示の抗体コンジュゲートを形成するために適切な抗体又はその抗原断片は、配列番号4のアミノ酸47~57、配列番号4のアミノ酸72~87又は配列番号4のアミノ酸120~129のうち1つに対して少なくとも95%同一である連続するアミノ酸の少なくとも1つの領域を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域;及び配列番号2のアミノ酸42~58、配列番号2のアミノ酸74~80又は配列番号2のアミノ酸113~120のうち1つに対して少なくとも95%同一である連続するアミノ酸の少なくとも1つの領域を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含み得る。本開示の抗体コンジュゲートを形成するために適切な抗体又は抗原結合断片は、ヒト化、キメラ、CDR移植型又は組換えヒト抗体であり得る。
【0040】
一部の実施形態では、本開示の抗体コンジュゲートは、細胞傷害性試薬、免疫調節剤、イメージング剤、治療用タンパク質、バイオポリマー又はオリゴヌクレオチドであり得る機能的部分Mを含み得る。一部の実施形態では、Mは、細胞傷害性試薬である。一部の実施形態では、Mは、アントラサイクリン、アウリスタチン、カンプトテシン、コンブレタスタチン、ドラスタチン、デュオカルマイシン、エンジイン、ゲルダナマイシン、インドリノ-ベンゾジアゼピンダイマー、マイタンシン、ピューロマイシン、ピロロベンゾジアゼピンダイマー、タキサン、ビンカアルカロイド、チューブリシン、ヘミアステリン、スプライソスタチン、プラジエノライド又はカリケアマイシンであり得る。一部の実施形態では、Mは、モノメチルアウリスタチンE、モノメチルアウリスタチンF、マイタンシノイドDM1、マイタンシノイドDM4、カリケアマイシン、オゾガマイシン、α-アマニチン、イットリウム-90又はヨウ素-131であり得る。
【0041】
一部の実施形態では、本開示は、治療有効量の本開示の抗体若しくはその抗原結合断片又は本開示の抗体コンジュゲート及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0042】
一部の実施形態では、本開示は、対象においてPTGFRNの機能又は発現と関連する障害を処置するための方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本開示の医薬組成物を投与するステップを含む方法を提供する。処置され得る障害には、がんが含まれる。処置され得るがんには、髄芽腫、類表皮腫瘍、中皮腫、骨肉腫、紡錘細胞肉腫様癌、絨毛癌、又はそれらの任意の転移が含まれるがこれらに限定されない。
【0043】
一部の実施形態では、本開示は、PTGFRN発現腫瘍を有する対象において腫瘍の成長又は進行を減少させるための方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本開示の医薬組成物を投与するステップを含む方法を提供する。
【0044】
一部の実施形態では、本開示は、対象においてPTGFRN発現がん細胞の転移を減少させるための方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本開示の医薬組成物を投与するステップを含む方法を提供する。
【0045】
一部の実施形態では、本開示は、PTGFRN発現腫瘍を有する対象において腫瘍退縮を誘導するための方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本開示の医薬組成物を投与するステップを含む方法を提供する。
【0046】
一部の実施形態では、本開示は、PTGFRN発現腫瘍を有したことがある対象において腫瘍再成長を予防するための方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本開示の医薬組成物を投与するステップを含む方法を提供する。
【0047】
一部の実施形態では、本開示は、PTGFRN発現腫瘍を有する対象又は有したことがある対象において症状を寛解させるための方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本開示の医薬組成物を投与するステップを含む方法を提供する。
【0048】
一部の実施形態では、本開示は、細胞をイメージングするための方法であって、細胞を、本開示の抗体若しくはその抗原結合断片又は本開示の抗体コンジュゲートと接触させるステップ;及び抗体若しくはその抗原結合断片又は抗体コンジュゲートを検出するステップを含む方法を提供する。
本発明はまた、以下を提供する。
[項目1]
プロスタグランジンF2受容体阻害剤(PTGFRN)に特異的に結合し、内在化される、単離された抗体又はその抗原結合断片。
[項目2]
a)配列番号101のポリペプチド及び配列番号103のポリペプチドを含む抗体;
b)配列番号101のポリペプチド及び配列番号104のポリペプチドを含む抗体;
c)配列番号101のポリペプチド及び配列番号105のポリペプチドを含む抗体;
d)配列番号102のポリペプチド及び配列番号103のポリペプチドを含む抗体;
e)配列番号102のポリペプチド及び配列番号104のポリペプチドを含む抗体;
f)配列番号102のポリペプチド及び配列番号105のポリペプチドを含む抗体;
g)配列番号106のポリペプチド及び配列番号108のポリペプチドを含む抗体;
h)配列番号107のポリペプチド及び配列番号108のポリペプチドを含む抗体;
i)配列番号109のポリペプチド及び配列番号110のポリペプチドを含む抗体;
j)配列番号111のポリペプチド及び配列番号112のポリペプチドを含む抗体;
k)配列番号113のポリペプチド及び配列番号115のポリペプチドを含む抗体;
l)配列番号113のポリペプチド及び配列番号116のポリペプチドを含む抗体;
m)配列番号114のポリペプチド及び配列番号115のポリペプチドを含む抗体;
n)配列番号114のポリペプチド及び配列番号116のポリペプチドを含む抗体;
o)配列番号117のポリペプチド及び配列番号118のポリペプチドを含む抗体;
p)配列番号119のポリペプチド及び配列番号120のポリペプチドを含む抗体;
q)配列番号121のポリペプチド及び配列番号122のポリペプチドを含む抗体;
r)配列番号121のポリペプチド及び配列番号123のポリペプチドを含む抗体;
s)配列番号124のポリペプチド及び配列番号125のポリペプチドを含む抗体;
t)配列番号126のポリペプチド及び配列番号127のポリペプチドを含む抗体;
u)配列番号128のポリペプチド及び配列番号129のポリペプチドを含む抗体;
v)配列番号128のポリペプチド及び配列番号130のポリペプチドを含む抗体;並びに
w)配列番号4のポリペプチド及び配列番号2のポリペプチドを含む抗体
からなる群から選択される抗体と同じプロスタグランジンF2受容体阻害剤(PTGFRN)エピトープに特異的に結合する、抗体又はその抗原結合断片。
[項目3]
プロスタグランジンF2受容体阻害剤(PTGFRN)に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であって、
a)配列番号101のポリペプチド及び配列番号103のポリペプチドを含む抗体;
b)配列番号101のポリペプチド及び配列番号104のポリペプチドを含む抗体;
c)配列番号101のポリペプチド及び配列番号105のポリペプチドを含む抗体;
d)配列番号102のポリペプチド及び配列番号103のポリペプチドを含む抗体;
e)配列番号102のポリペプチド及び配列番号104のポリペプチドを含む抗体;
f)配列番号102のポリペプチド及び配列番号105のポリペプチドを含む抗体;
g)配列番号106のポリペプチド及び配列番号108のポリペプチドを含む抗体;
h)配列番号107のポリペプチド及び配列番号108のポリペプチドを含む抗体;
i)配列番号109のポリペプチド及び配列番号110のポリペプチドを含む抗体;
j)配列番号111のポリペプチド及び配列番号112のポリペプチドを含む抗体;
k)配列番号113のポリペプチド及び配列番号115のポリペプチドを含む抗体;
l)配列番号113のポリペプチド及び配列番号116のポリペプチドを含む抗体;
m)配列番号114のポリペプチド及び配列番号115のポリペプチドを含む抗体;
n)配列番号114のポリペプチド及び配列番号116のポリペプチドを含む抗体;
o)配列番号117のポリペプチド及び配列番号118のポリペプチドを含む抗体;
p)配列番号119のポリペプチド及び配列番号120のポリペプチドを含む抗体;
q)配列番号121のポリペプチド及び配列番号122のポリペプチドを含む抗体;
r)配列番号121のポリペプチド及び配列番号123のポリペプチドを含む抗体;
s)配列番号124のポリペプチド及び配列番号125のポリペプチドを含む抗体;
t)配列番号126のポリペプチド及び配列番号127のポリペプチドを含む抗体;
u)配列番号128のポリペプチド及び配列番号129のポリペプチドを含む抗体;
v)配列番号128のポリペプチド及び配列番号130のポリペプチドを含む抗体;並びに
w)配列番号4のポリペプチド及び配列番号2のポリペプチドを含む抗体
からなる群から選択される抗体を競合的に阻害する、抗体又はその抗原結合断片。
[項目4]
重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む、プロスタグランジンF2受容体阻害剤(PTGFRN)に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であって、前記VH及びVLが、相補性決定領域CDR1、CDR2及びCDR3を含み、それぞれVH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3並びにVL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3が、
a)それぞれ配列番号11、12及び13並びに配列番号17、18及び19;
b)それぞれ配列番号11、12及び13並びに配列番号20、21及び22;
c)それぞれ配列番号11、12及び13並びに配列番号23、24及び25;
d)それぞれ配列番号14、15及び16並びに配列番号17、18及び19;
e)それぞれ配列番号14、15及び16並びに配列番号20、21及び22;
f)それぞれ配列番号14、15及び16並びに配列番号23、24及び25;
g)それぞれ配列番号26、27及び28並びに配列番号32、33及び34;
h)それぞれ配列番号29、30及び31並びに配列番号32、33及び34;
i)それぞれ配列番号35、36及び37並びに配列番号38、39及び40;
j)それぞれ配列番号41、42及び43並びに配列番号44、45及び46;
k)それぞれ配列番号47、48及び49並びに配列番号53、54及び55;
l)それぞれ配列番号47、48及び49並びに配列番号56、57及び58;
m)それぞれ配列番号50、51及び52並びに配列番号53、54及び55;
n)それぞれ配列番号50、51及び52並びに配列番号56、57及び58;
o)それぞれ配列番号59、60及び61並びに配列番号62、63及び64;
p)それぞれ配列番号65、66及び67並びに配列番号68、69及び70;
q)それぞれ配列番号71、72及び73並びに配列番号74、75及び76;
r)それぞれ配列番号71、72及び73並びに配列番号77、78及び79;
s)それぞれ配列番号80、81及び82並びに配列番号83、84及び85;
t)それぞれ配列番号86、87及び88並びに配列番号89、90及び91;
u)それぞれ配列番号92、93及び94並びに配列番号95、96及び97;
v)それぞれ配列番号92、93及び94並びに配列番号98、99及び100;
w)それぞれ配列番号8、9及び10並びに配列番号5、6及び7;並びに
x)1、2、3又は4つの保存的アミノ酸置換を含む(a)~(w)のバリアント
からなる群から選択されるポリペプチド配列を含む、抗体又はその抗原結合断片。
[項目5]
前記抗体が、
a)配列番号101及び配列番号103;
b)配列番号101及び配列番号104;
c)配列番号101及び配列番号105;
d)配列番号102及び配列番号103;
e)配列番号102及び配列番号104;
f)配列番号102及び配列番号105;
g)配列番号106及び配列番号108;
h)配列番号107及び配列番号108;
i)配列番号109及び配列番号110;
j)配列番号111及び配列番号112;
k)配列番号113及び配列番号115;
l)配列番号113及び配列番号116;
m)配列番号114及び配列番号115;
n)配列番号114及び配列番号116;
o)配列番号117及び配列番号118;
p)配列番号119及び配列番号120;
q)配列番号121及び配列番号122;
r)配列番号121及び配列番号123;
s)配列番号124及び配列番号125;
t)配列番号126及び配列番号127;
u)配列番号128及び配列番号129;
v)配列番号128及び配列番号130;並びに
w)配列番号4及び配列番号2
からなる群から選択されるポリペプチド配列に対して少なくとも90%同一であるポリペプチド配列を含む、請求項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項目6]
前記抗体が、
a)配列番号101及び配列番号103;
b)配列番号101及び配列番号104;
c)配列番号101及び配列番号105;
d)配列番号102及び配列番号103;
e)配列番号102及び配列番号104;
f)配列番号102及び配列番号105;
g)配列番号106及び配列番号108;
h)配列番号107及び配列番号108;
i)配列番号109及び配列番号110;
j)配列番号111及び配列番号112;
k)配列番号113及び配列番号115;
l)配列番号113及び配列番号116;
m)配列番号114及び配列番号115;
n)配列番号114及び配列番号116;
o)配列番号117及び配列番号118;
p)配列番号119及び配列番号120;
q)配列番号121及び配列番号122;
r)配列番号121及び配列番号123;
s)配列番号124及び配列番号125;
t)配列番号126及び配列番号127;
u)配列番号128及び配列番号129;
v)配列番号128及び配列番号130;並びに
w)配列番号4及び配列番号2
からなる群から選択されるポリペプチド配列に対して少なくとも95%同一であるポリペプチド配列を含む、請求項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項目7]
前記抗体が、
a)配列番号101及び配列番号103;
b)配列番号101及び配列番号104;
c)配列番号101及び配列番号105;
d)配列番号102及び配列番号103;
e)配列番号102及び配列番号104;
f)配列番号102及び配列番号105;
g)配列番号106及び配列番号108;
h)配列番号107及び配列番号108;
i)配列番号109及び配列番号110;
j)配列番号111及び配列番号112;
k)配列番号113及び配列番号115;
l)配列番号113及び配列番号116;
m)配列番号114及び配列番号115;
n)配列番号114及び配列番号116;
o)配列番号117及び配列番号118;
p)配列番号119及び配列番号120;
q)配列番号121及び配列番号122;
r)配列番号121及び配列番号123;
s)配列番号124及び配列番号125;
t)配列番号126及び配列番号127;
u)配列番号128及び配列番号129;
v)配列番号128及び配列番号130;並びに
w)配列番号4及び配列番号2
からなる群から選択されるポリペプチド配列に対して少なくとも99%同一であるポリペプチド配列を含む、請求項3に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項目8]
内在化される、請求項2~7のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項目9]
マウス、ヒト、ヒト化又はキメラである、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項目10]
CDR移植型、組換え又は表面再構成型である、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項目11]
ヒト又はヒト由来の重鎖及び軽鎖可変領域フレームワークをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項目12]
IgG1又はIgG2定常領域を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項目13]
細胞死を誘導することが可能である、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項目14]
ヒトPTGFRNに結合する、請求項1~13のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項目15]
マウスPTGFRNに結合する、請求項1~13のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項目16]
全長抗体である、請求項1~15のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項目17]
抗原結合断片である、請求項1~15のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項目18]
Fab、Fab'、F(ab')2、Fd、単鎖Fv若しくはscFv、ジスルフィド連結されたFv、V-NARドメイン、IgNar、イントラボディ、IgGΔCH2、ミニボディ、F(ab')3、テトラボディ、トリアボディ、ディアボディ、単一ドメイン抗体、DVD-Ig、Fcab、mAb2、(scFv)2、又はscFv-Fcを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
[項目19]
式:Ab-L-Mの抗体コンジュゲートであって、式中、(a)Abが、PTGFRNに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であり;(b)Lがリンカーであり;(c)Mが機能的部分である、抗体コンジュゲート。
[項目20]
前記Abが、請求項1~18のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片である、請求項19に記載の抗体コンジュゲート。
[項目21]
Mが、細胞傷害性試薬、免疫調節剤、イメージング剤、治療用タンパク質、バイオポリマー及びオリゴヌクレオチドからなる群から選択される、請求項19に記載の抗体コンジュゲート。
[項目22]
Mが、細胞傷害性試薬である、請求項21に記載の抗体コンジュゲート。
[項目23]
前記細胞傷害性試薬が、アントラサイクリン、アウリスタチン、カンプトテシン、コンブレタスタチン、ドラスタチン、デュオカルマイシン、エンジイン、ゲルダナマイシン、インドリノ-ベンゾジアゼピンダイマー、マイタンシン、ピューロマイシン、ピロロベンゾジアゼピンダイマー、タキサン、ビンカアルカロイド、チューブリシン、ヘミアステリン、スプライソスタチン、プラジエノライド及びカリケアマイシンからなる群から選択される、請求項21又は22に記載の抗体コンジュゲート。
[項目24]
前記細胞傷害性試薬が、モノメチルアウリスタチンE、モノメチルアウリスタチンF、マイタンシノイドDM1、マイタンシノイドDM4、カリケアマイシン、オゾガマイシン、α-アマニチン、イットリウム-90及びヨウ素-131から選択される、請求項21又は22に記載の抗体コンジュゲート。
[項目25]
前記リンカーが、切断可能なリンカー、切断不能なリンカー、親水性リンカー及びジカルボン酸ベースのリンカーからなる群から選択される、請求項19に記載の抗体コンジュゲート。
[項目26]
PTGFRNに結合し、内在化される、請求項19~25のいずれか一項に記載の抗体コンジュゲート。
[項目27]
治療有効量の請求項1~18のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合断片又は請求項19~26のいずれか一項に記載の抗体コンジュゲート及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
[項目28]
対象においてPTGFRNの機能又は発現と関連する障害を処置するための方法であって、それを必要とする対象に、有効量の請求項1~18のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合断片、請求項19~26のいずれか一項に記載の抗体コンジュゲート又は請求項27に記載の医薬組成物を投与するステップを含む、方法。
[項目29]
前記障害ががんである、請求項28に記載の方法。
[項目30]
前記がんが、髄芽腫、類表皮癌、中皮腫、骨肉腫、紡錘細胞肉腫様癌、絨毛癌、横紋筋肉腫、神経芽腫、平滑筋肉腫、三重陰性乳癌、頭頸部癌、去勢耐性前立腺癌、扁平上皮癌、肺扁平上皮癌、卵巣癌及び膵癌、又はそれらの任意の転移である、請求項29に記載の方法。
[項目31]
PTGFRN発現腫瘍を有する対象において腫瘍の成長又は進行を減少させるための方法であって、それを必要とする前記対象に、有効量の請求項1~18のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合断片、請求項19~26のいずれか一項に記載の抗体コンジュゲート又は請求項27に記載の医薬組成物を投与するステップを含む、方法。
[項目32]
対象においてPTGFRN発現がん細胞の転移を減少させるための方法であって、それを必要とする前記対象に、有効量の請求項1~18のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合断片、請求項19~26のいずれか一項に記載の抗体コンジュゲート又は請求項27に記載の医薬組成物を投与するステップを含む、方法。
[項目33]
PTGFRN発現腫瘍を有する対象において腫瘍退縮を誘導するための方法であって、それを必要とする前記対象に、有効量の請求項1~18のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合断片、請求項19~26のいずれか一項に記載の抗体コンジュゲート又は請求項27に記載の医薬組成物を投与するステップを含む、方法。
[項目34]
細胞をイメージングするための方法であって、(1)前記細胞を、請求項1~18のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合断片又は請求項19~26のいずれか一項に記載の抗体コンジュゲートと接触させるステップ;及び(2)前記抗体若しくはその抗原結合断片又は前記コンジュゲートを検出するステップを含む、方法。
[項目35]
腫瘍におけるPTGFRNの発現を同定するための方法であって、(1)前記腫瘍のサンプルを取得するステップ、(2)前記サンプルを、請求項1~18のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合断片又は請求項19~26のいずれか一項に記載の抗体コンジュゲートと接触させるステップ;及び(3)前記抗体若しくはその抗原結合断片又は前記コンジュゲートを検出するステップを含む、方法。
[項目36]
前記検出するステップが免疫化学による、請求項35に記載の方法。
[項目37]
PTGFRN発現腫瘍を有する対象又は有したことがある対象において腫瘍再成長を予防するための方法であって、それを必要とする前記対象に、有効量の請求項1~18のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合断片、請求項19~26のいずれか一項に記載の抗体コンジュゲート又は請求項27に記載の医薬組成物を投与するステップを含む、方法。
[項目38]
PTGFRN発現腫瘍を有する対象又は有したことがある対象において症状を寛解させるための方法であって、それを必要とする前記対象に、有効量の請求項1~18のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合断片、請求項19~26のいずれか一項に記載の抗体コンジュゲート又は請求項27に記載の医薬組成物を投与するステップを含む、方法。
[項目39]
請求項1~18のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片を含む診断試薬であって、前記抗体又はその抗原結合断片が標識されている、診断試薬。
[項目40]
前記標識が、放射標識、フルオロフォア、発色団、イメージング剤及び金属イオンからなる群から選択される、請求項37に記載の診断試薬。
[項目41]
請求項1~18のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合断片、請求項19~26のいずれか一項に記載の抗体コンジュゲート又は請求項27に記載の医薬組成物を含む、キット。
[項目42]
配列番号2、4及び101~130からなる群から選択される配列に対して少なくとも90%同一なポリペプチドをコードする配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
[項目43]
前記配列が、配列番号2、4及び101~130からなる群から選択される配列に対して少なくとも95%同一である、請求項42に記載の単離されたポリヌクレオチド。
[項目44]
前記配列が、配列番号2、4及び101~130からなる群から選択される配列に対して少なくとも99%同一である、請求項42に記載の単離されたポリヌクレオチド。
[項目45]
配列番号1、2及び131~160に対して少なくとも90%同一である配列を含む、請求項42~44のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチド。
[項目46]
配列番号1、2及び131~160に対して少なくとも95%同一である配列を含む、請求項42~45のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチド。
[項目47]
配列番号1、2及び131~160に対して少なくとも99%同一である配列を含む、請求項42~46のいずれか一項に記載の単離されたポリヌクレオチド。
[項目48]
請求項42~47のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
[項目49]
請求項48に記載のベクターを含む宿主細胞。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】PTGFRN陽性細胞が33B7(AG02とも呼ばれる)結合を示すが、PTGFRN陰性細胞が33B7に結合しないことを示す顕微鏡写真である。
図1Aは、ローダミン標識された33B7が、PTGFRN陰性細胞に結合しないことを示す。
図1Bは、33B7が、PTGFRNでトランスフェクトされた同じ細胞に結合することを示す。
【
図2】種々のがん細胞への33B7(AG02)の相対的結合を示す棒グラフである。
【
図3】33B7の結合及び内在化を示すPTGFRN陽性細胞を示す顕微鏡写真である。
図3Aは、4℃でがん細胞上のPTGFRNに結合したFITC(フルオレセインイソチオシアネート)標識された33B7を示し、このとき、内在化は存在しない。
図3Bは、細胞を37℃で1時間インキュベートした場合の、同じ細胞における内在化された33B7を示す。
【
図4】空の哺乳動物発現ベクターpcDNA 3.1(白色の棒1及び2)若しくはpcDNA 3.1中のPTGFRN cDNA(灰色の棒3及び4)でトランスフェクトされた細胞(元々PTGFRNについて陰性)、又はPTGFRNについて陽性の天然のがん細胞(黒色の棒)の増殖を阻害する抗PTGFRN抗体-薬物コンジュゲート(ADC)の能力を示す棒グラフである。処理群:1及び2、PTGFRN陰性がん細胞中にトランスフェクトされた空のベクター;3及び4、PTGFRN陰性細胞中にトランスフェクトされたPTGFRN-pcDNA 3.1;5及び6、PTGFRN陽性であるがん細胞;1、3及び5は、非免疫マウスIgG+薬物を使用する;2、4及び6は、33B7 IgG mAb+薬物を使用する。33B7-ADCは、65%のPTGFRN陽性細胞を死滅させる。
【
図5】種々のがん細胞株における33B7-ADCの効果を示す棒グラフである。(1)PTGFRN陰性対照細胞株、(2)紡錘肉腫様癌細胞株(SCSC)、(3)髄芽腫癌腫細胞株、及び(4)中皮腫細胞株。
【
図6】
図6Aは、空のベクター(EV)及びPTGFRN-pcDNA 3.1でトランスフェクトされたMCF-7細胞への33B7の、フローベースの結合を示す棒グラフである。
図6Bは、33B7-ADC、又は陰性対照としてのサポリンにコンジュゲートされた非免疫IgG(mIg-ADC)で処理された、空のベクター(EV)又はPTGFRN-pcDNA 3.1(PTGFRN)でトランスフェクトされたMCF-7細胞に対する33B7-ADC阻害アッセイの結果を示す棒グラフである。
【
図7】漸増濃度の33B7-ADCによるSCSC細胞の処置についての用量応答データを示す棒グラフである。
【
図8】紡錘細胞癌異種移植片モデルにおける腫瘍の体積に対する33B7-ADCの効果を示す折れ線グラフである。
【
図9】髄芽腫異種移植片モデルにおける腫瘍の体積に対する33B7-ADCの効果を示す折れ線グラフである。
【
図10】中皮腫異種移植片モデルにおける腫瘍の体積に対する33B7-ADCの効果を示す折れ線グラフである。
【
図11】4℃におけるPTGFRN陽性細胞の表面に対する4F4の細胞表面結合(
図11A)及び37℃における同じ細胞における内在化(
図11B)を実証する免疫蛍光アッセイ結果である。
【
図12】フロー結合アッセイによる、種々の細胞株への抗PTGFRNモノクローナル抗体(mAb)の結合を示す。
図12Aは、種々の濃度におけるDAOY細胞への7C8の結合を示す。
図12Bは、MDA231、FaDu及びNCI-520細胞株への4F4及び7B4の結合を示す。
図12Cは、1μgにおける、DAOY細胞株への複数の抗PTGFRN mAbの結合を示す。
図12Dは、A431細胞への複数の抗PTGFRN mAbの結合を示す。9G8は、抗PTGFRN ECDを用いたEIAに対してのみ作用する抗PTGFRN陰性対照mAbである。mIgGが陰性対照として使用される。
【
図13】死滅アッセイ効力の例を示す。
図13Aは、PTGFRNを過剰発現するHEK細胞における33B7に対する4F4及び5H12の効力を比較する。mIgG及び9G8は、陰性対照である。
図13B及び13Cは、DAOY細胞株及びA431細胞株における細胞の効力を示す。
【
図14A-B】種々の細胞株に対する複数の抗PTGFRN mAbの細胞死滅効力を示す。具体的には、
図14Aは、DAOY細胞に対する4F4の用量応答を示す。各対の左側の棒は、mIgG(陰性対照)であり、各対の右側の棒は、4F4である。
図14Bは、0.3nMの濃度における、DAOY細胞に対する複数の抗PTGFRN mAbの細胞死滅効力を比較する。上の線は、50%生存率を示す。下の線は、4F4効力レベルを示す。A431細胞株及びMSTO細胞株に対する抗体4F4の用量応答が、それぞれ
図14C及び
図14Dに示される。明るい灰色で示される各対の左側の棒は、mIgG(陰性対照)であり、暗い灰色で示される各対の右側の棒は、4F4である。
図14Eは、0.03nM及び0.3nMにおける、A431細胞株に対する複数の抗PTGFRN mAbの細胞死滅効力を比較する。
【
図15】
図15A及び15Bは、免疫組織化学(IHC)染色についての、それぞれ例示的な陰性/低対照スライド(Hek293)及び陽性対照スライド(A431細胞)を示す。
図15Cは、1B4抗体による中皮腫腫瘍におけるPTGFRNのIHC染色を示す。上のパネルは、良性胸膜中皮腫における染色結果を示し、下のパネルは、悪性胸膜中皮腫における染色結果を示す。
【
図16A-B】
図16Aは、DAOY細胞株上の細胞表面PTGFRN抗原を定量するためにQIFIKITを使用したキャリブレーションの結果を示す。
図16Bは、DAOY細胞に対するmIgG及び4F4(10μg/ml)結合のヒストグラムである。右側のピーク(4F4)は、>10
5のPTGFRN抗原/細胞を示す。33B7についてのキャリブレーションパネル及びヒストグラム結果が、
図16Cに示される。
【
図17】複数のヒトがん細胞株に対する選択された抗PTGFRN mAbの細胞死滅効力を示す。
【
図18】Octetデータに基づく、PTGFRN-ECDを用いた15個のmAbのペアリング分析(ビニングマトリックス)を示す。暗い灰色で示される対角線は、自己ペアリング又は遮断効果を示し、強いペアを決定するための閾値として使用される。
【発明を実施するための形態】
【0050】
詳細な説明の開示
本開示は、PTGFRN(例えば、ヒトPTGFRN)に結合する抗体及び抗体コンジュゲート(例えば、抗体-薬物コンジュゲート)を提供する。そのような抗体の一例は、33B7である。本開示は、33B7抗体をコードするポリヌクレオチド、本開示の抗体を含む組成物、及びこれらの抗体を作製及び使用する方法もまた提供する。一部の実施形態では、本開示の抗体は、本明細書に開示される特定の重鎖及び軽鎖配列の可変領域の全て又は一部分を含む。一部の実施形態では、本開示の抗体は、本明細書に開示されるCDR領域のうち1つ以上のアミノ酸配列を含む。
【0051】
本開示は、例えば、PTGFRNを検出するため、PTGFRN活性をモジュレートするため、及び/又は死滅のためにPTGFRN発現細胞に標的化するために(例えば、ADC)、本開示の抗体を使用するための方法をさらに含む。
【0052】
I. 定義
本開示の理解を容易にするために、いくつかの用語及び語句が以下に定義される。
【0053】
プロスタグランジンF2受容体阻害剤(PTGFRN)は、当該分野においていくつかの名称、例えば、FPRP、CD315、EWI-F、CD9P-1、SMAP-6、KIAA1436、プロスタグランジンF2-アルファ受容体調節タンパク質、プロスタグランジンF2-アルファ受容体関連タンパク質、プロスタグランジンF2受容体陰性調節因子、Glu-Trp-Ile EWIモチーフ含有タンパク質Fとして公知である。PTGFRNは、以下のアクセッション番号を有する:UniProt Q9P2B2、Entrez Gene ID:5738、Ensemble:ENSG00000134247、OMIM:601204及びHGNC:9601。
【0054】
用語「抗体」は、本明細書で使用する場合、特異的標的又は抗原を認識しそれに結合することが可能な免疫グロブリン分子を指す。本開示の抗体は、典型的には、免疫グロブリン分子の可変領域中に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を含む。本開示の抗体は、PTGFRNに特異的に結合する能力を保持するモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、及びそれらの抗原結合断片であり得る。一部の実施形態では、本開示の抗体は、単鎖(ScFv)及び単一ドメイン抗体(例えば、サメ及びラクダ類抗体)であり得る。本開示の抗体は、ヒト化抗体、キメラ抗体又は完全ヒト抗体であり得る。本開示の抗体は、当業者に公知の任意の供給源由来であってもよく、例えば、本開示の抗体は、マウス、ラット、ラクダ、ヒト若しくは任意の他の起源のものであってもよく、又は合成されてもよい。
【0055】
本明細書で使用する場合、用語「抗体」は、その抗体が所望の生物学的活性を示す限り、インタクトなポリクローナル抗体、インタクトなモノクローナル抗体、抗体断片(例えば、Fab、Fab'、F(ab')2及びFv断片)、単鎖Fv(scFv)変異体、多特異性抗体、例えば、少なくとも2つのインタクトな抗体から生成された二重特異性抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体の抗原決定部分を含む融合タンパク質、及び抗原認識部位を含む任意の他の改変された免疫グロブリン分子を包含する。抗体は、それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ及びミューと呼ばれるそれらの重鎖定常ドメインの種類に基づいて、5つの主要なクラスの免疫グロブリン:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgM、又はそのサブクラス(アイソタイプ)(例えば、IgGl、IgG2、IgG3、IgG4、IgAl及びIgA2)のいずれかの抗体であり得る。異なるクラスの免疫グロブリンは、異なる周知のサブユニット構造及び三次元構成を有する。抗体は、裸であり得るか、又は他の分子、例えば、毒素、放射性同位体などにコンジュゲートされ得る。例えば、一部の実施形態では、本開示の抗体は、薬物分子にコンジュゲートされたヒト化抗体であり得る。
【0056】
一部の実施形態では、本開示の抗体は、ヒト化され得る。用語「ヒト化抗体」は、最小の非ヒト(例えば、マウス)配列を含む、特異的免疫グロブリン鎖、キメラ免疫グロブリン又はそれらの断片である非ヒト(例えば、マウス)抗体の形態を指す。典型的には、ヒト化抗体は、相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター)のCDR由来の残基によって置き換えられたヒト免疫グロブリンである(Jonesら, 1986, Nature, 321 :522-525;Riechmannら, 1988, Nature, 332:323-327;Verhoeyenら, 1988, Science, 239: 1534-1536)。一部の場合には、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種由来の抗体中の対応する残基で置き換えられる。ヒト化抗体は、抗体の特異性、親和性及び/又は能力を精緻化及び最適化するために、Fvフレームワーク領域中及び/又は置き換えられた非ヒト残基内のいずれかのさらなる残基の置換によってさらに改変され得る。一般に、ヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリンに対応するCDR領域の全て又は実質的に全てを含む、少なくとも1つの、典型的には2つ又は3つの可変ドメインの実質的に全てを含むが、FR領域の全て又は実質的に全ては、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体は、典型的にはヒト免疫グロブリンの、免疫グロブリン定常領域又はドメイン(Fc)の少なくとも一部分もまた含み得る。ヒト化は、例えば、Jonesら, Nature 321:522-525 (1986);Riechmannら, Nature 332:323-327 (1988);Verhoeyenら, Science 239:1534-1536 (1988)に開示される方法を使用する、当該分野で公知の任意の方法によるものであり得る。本明細書で使用する場合、抗体は、ヒト抗体のCDRのうち1つ以上の全て又は一部分を、本開示の非ヒト抗体のCDRのうち1つ以上の全て又は一部分で置き換えることによって、ヒト化される。米国特許第5,225,539号、同第5,585,089号、同第5,693,761号、同第5,693,762号、同第5,859,205号は、抗体のヒト化に関するそれらの開示について、本明細書で参照により組み込まれる。
【0057】
本開示の一部の実施形態では、本開示の抗体は、マウス以外の動物の細胞において作製され得る、例えば、本開示の抗体は、ニワトリ、ブタ、モルモット、ハムスター、ウマ、ラット、ラクダ、ヤギ、ウサギ及びヒツジ由来の細胞において作製され得る。本開示の抗体は、合成抗体であり得る。
【0058】
用語「抗PTGFRN抗体」又は「PTGFRNに結合する抗体」は、PTGFRNを標的化することにおいてその抗体が診断剤及び/又は治療剤として有用であるように、十分な親和性でPTGFRNに結合することが可能である抗体を指す。無関係の非PTGFRNタンパク質への抗PTGFRN抗体の結合の程度は、例えば、イムノアッセイによって測定される場合、PTGFRNへのその抗体の結合の約10%未満であり得る。ある特定の実施形態では、PTGFRNに結合する抗体は、<1μM、<100nM、<10nM、<1nM又は<0.1nMの解離定数(Kd)を有する。
【0059】
用語「抗体断片」は、インタクトな抗体の一部分を指し、インタクトな抗体の抗原決定可変領域を指す。抗体断片の例には、Fab、Fab'、F(ab')2及びFv断片、直鎖抗体、単鎖抗体、並びに抗体断片から形成された多特異性抗体が含まれるがこれらに限定されない。
【0060】
「モノクローナル抗体」は、単一の抗原決定基又はエピトープの高度に特異的な認識及び結合に関与する均一な抗体集団を指す。これは、異なる抗原決定基に対する異なる抗体を典型的には含むポリクローナル抗体とは対照的である。用語「モノクローナル抗体」は、インタクトな抗体及び全長モノクローナル抗体の両方、及び抗体断片(例えば、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv)、単鎖(scFv)変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、並びに抗原認識部位を含む任意の他の改変された免疫グロブリン分子を包含する。さらに、「モノクローナル抗体」は、ハイブリドーマ、ファージ選択、組換え発現及びトランスジェニック動物によるものが含まれるがこれらに限定されないいくつもの様式で作製されたそのような抗体を指す。
【0061】
抗体の「可変領域」は、単独又は組み合わせでのいずれかの、抗体軽鎖の可変領域又は抗体重鎖の可変領域を指す。重鎖及び軽鎖の可変領域は各々、超可変領域としても公知の3つの相補性決定領域(CDR)によって接続された4つのフレームワーク領域(FR)からなる。各鎖中のCDRは、FRによって接近して一緒に保持され、他方の鎖由来のCDRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。CDRを決定するための少なくとも2つの技術が存在する:(1)交差種配列可変性に基づくアプローチ(即ち、Kabatら, Sequences of Proteins of Immunological Interest, (第5版, 1991, National Institutes of Health, Bethesda Md.));及び(2)抗原-抗体複合体の結晶学的研究に基づくアプローチ(Al-lazikaniら(1997) J. Molec. Biol. 273:927-948))。さらに、これら2つのアプローチの組み合わせが、CDRを決定するために当該分野において使用される場合がある。
【0062】
用語「ヒト抗体」は、ヒトによって産生された抗体、又は当該分野で公知の任意の技術を使用して作製された、ヒトによって産生される抗体に対応するアミノ酸配列を有する抗体を意味する。ヒト抗体のこの定義は、インタクトな抗体又は全長抗体、それらの断片、並びに/又は少なくとも1つのヒト重鎖及び/若しくは軽鎖ポリペプチドを含む抗体、例えば、マウス軽鎖及びヒト重鎖ポリペプチドを含む抗体などを含む。
【0063】
用語「ヒト化抗体」は、最小の非ヒト(例えば、マウス)配列を含む、特異的免疫グロブリン鎖、キメラ免疫グロブリン又はそれらの断片である非ヒト(例えば、マウス)抗体の形態を指す。典型的には、ヒト化抗体は、相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター)のCDR由来の残基によって置き換えられたヒト免疫グロブリンである。一部の場合には、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種由来の抗体中の対応する残基で置き換えられる。ヒト化抗体は、抗体の特異性、親和性及び/又は能力を精緻化及び最適化するために、Fvフレームワーク領域中及び/又は置き換えられた非ヒト残基内のいずれかのさらなる残基の置換によってさらに改変され得る。一般に、ヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリンに対応するCDR領域の全て又は実質的に全てを含む、少なくとも1つの、典型的には2つ又は3つの可変ドメインの実質的に全てを含むが、FR領域の全て又は実質的に全ては、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体は、典型的にはヒト免疫グロブリンの、免疫グロブリン定常領域又はドメイン(Fc)の少なくとも一部分もまた含み得る。ヒト化抗体を生成するために使用される方法の例は、米国特許第5,225,539号に記載されている。
【0064】
用語「キメラ抗体」は、免疫グロブリン分子のアミノ酸配列が2つ以上の種に由来する抗体を指す。典型的には、軽鎖及び重鎖の両方の可変領域は、所望の特異性、親和性及び能力を有する1つの種の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギなど)に由来する抗体の可変領域に対応するが、定常領域は、その種における免疫応答の惹起を回避するために、別の種(通常はヒト)に由来する抗体中の配列に対して相同である。
【0065】
用語「エピトープ」又は「抗原決定基」は、本明細書で相互交換可能に使用され、特定の抗体によって認識され、特異的に結合されることが可能な抗原の部分を指す。抗原がポリペプチドである場合、エピトープは、連続するアミノ酸、及びタンパク質の三次フォールディングによって隣接させられた非連続のアミノ酸の両方から形成され得る。連続するアミノ酸から形成されたエピトープは、典型的には、タンパク質変性の際に保持されるが、三次フォールディングによって形成されたエピトープは、典型的には、タンパク質変性の際に喪失される。エピトープは、典型的には、独自の空間的コンフォメーション中に、少なくとも3つ、より通常は、少なくとも5つ又は8~10個のアミノ酸を含む。
【0066】
「結合親和性」は一般に、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間での非共有結合的相互作用の総計の強さを指す。特記しない限り、本明細書で使用する場合、「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば、抗体及び抗原)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。そのパートナーYに対する分子Xの親和性は、一般に、解離定数(Kd)によって示すことができる。親和性は、本明細書に記載されるものを含む当該分野で公知の一般的な方法によって測定することができる。低親和性抗体は一般に、抗原に緩徐に結合し、容易に解離する傾向があるが、高親和性抗体は一般に、抗原により速く結合し、より長時間結合したままの傾向がある。結合親和性を測定する種々の方法は、当該分野で公知であり、そのいずれかが、本開示の目的のために使用され得る。具体的な例示的実施形態は、例えば、以下の実施例20に記載されている。
【0067】
「又はより良好な」は、結合親和性を指すために本明細書で使用する場合、分子とその結合パートナーとの間のより強い結合を指す。「又はより良好な」は、本明細書で使用する場合、より小さいKd数値によって示される、より強い結合を指す。例えば、「0.3nM又はより良好な」、抗原に対する親和性を有する抗体について、抗原に対する抗体の親和性は、<0.3nM、即ち、0.29nM、0.28nM、0.27nMなど、又は0.3nM未満の任意の値である。
【0068】
「特異的に結合する」は、一般に、抗体がその抗原結合ドメインを介してエピトープに結合すること、及びこの結合が、抗原結合ドメインとエピトープとの間のいくらかの相補性を必然的に伴うことを意味する。この定義によれば、抗体は、その抗体がランダムな無関係のエピトープに結合する場合よりも容易に、その抗原結合ドメインを介してエピトープに結合する場合、そのエピトープに「特異的に結合する」と言われる。用語「特異性」は、ある特定の抗体がある特定のエピトープに結合する相対的親和性を認定するために、本明細書で使用される。例えば、抗体「A」は、所与のエピトープに対して、抗体「B」よりも高い特異性を有すると考えることができ、又は抗体「A」は、関連するエピトープ「D」に対してそれが有する特異性よりも高い特異性でエピトープ「C」に結合すると言うことができる。
【0069】
「優先的に結合する」は、関連の、類似の、相同な又は同様なエピトープにそれが結合する場合よりも容易に、抗体があるエピトープに特異的に結合することを意味する。従って、所与のエピトープに「優先的に結合する」抗体は、そのような抗体が関連のエピトープと交差反応できる場合であっても、関連のエピトープよりも、そのエピトープに結合する可能性がより高い。
【0070】
抗体は、エピトープへの参照抗体の結合をその抗体がある程度遮断する程度において、そのエピトープにその抗体が優先的に結合する場合、所与のエピトープへの参照抗体の結合を「競合的に阻害する」と言われる。競合的阻害は、当該分野で公知の任意の方法、例えば、競合ELISAアッセイによって決定され得る。抗体は、所与のエピトープへの参照抗体の結合を、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%又は少なくとも50%、競合的に阻害すると言うことができる。
【0071】
語句「実質的に類似」又は「実質的に同じ」は、本明細書で使用する場合、当業者が、これらの値(例えば、Kd値)によって測定される生物学的特徴の文脈において、2つの値の間の差異が生物学的及び/又は統計的有意性をほとんど又は全く有さないと考えるような、2つの数値(一般に、1つは本開示の抗体と関連し、他方は参照/比較対象抗体と関連する)間の十分に高い程度の類似性を示す。これら2つの値の間の差異は、参照/比較対象抗体についての値の関数として、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満又は約10%未満であり得る。
【0072】
「単離された」ポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞又は組成物は、天然に見出されない形態にある、ポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞又は組成物である。単離されたポリペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞又は組成物には、それらが天然に見出される形態にもはやない程度まで精製されたものが含まれる。一部の実施形態では、単離された抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞又は組成物は、実質的に純粋である。
【0073】
本明細書で使用する場合、「実質的に純粋」は、少なくとも50%純粋(即ち、混入物を含まない)、少なくとも90%純粋、少なくとも95%純粋、少なくとも98%純粋又は少なくとも99%純粋である材料を指す。
【0074】
一部の実施形態では、本開示の抗体は、抗体コンジュゲートを形成するために、機能的部分にコンジュゲートされ得る。用語「イムノコンジュゲート」、「コンジュゲート」又は「抗体薬物コンジュゲート」は、本明細書で相互交換可能に使用する場合、細胞結合剤(即ち、抗PTGFRN抗体又はその断片)に連結された化合物又はその誘導体を指す。本開示の抗体コンジュゲートは、式Ab-L-Mを有し得、式中、(a)Abは、PTGFRNに結合する本開示の抗体又はその抗原結合断片であり;(b)Lはリンカーであり;(c)Mは機能的部分である。コンジュゲーションは、Lが単にAbとMとの間の化学結合である場合、直接的であり得る。コンジュゲーションには、リンカーの使用が関与し得る。機能的部分の例には、薬物、蛍光分子、放射性分子、化学発光分子、イメージング(画像化)に使用される分子、エピトープ、リガンドなどが含まれるがこれらに限定されない。機能的部分は、当業者に公知の任意のテクノロジーを使用して、本開示の抗体にコンジュゲートされ得る。リンカーが使用される場合、このリンカーは、切断可能でも切断不能でもよく、任意の長さのものであり得る。リンカーが本開示の実施において使用される場合、このリンカーは、免疫グロブリン分子の任意の部分又は免疫グロブリン分子の任意のアミノ酸にコンジュゲートされ得る。リンカーは、当業者に公知の任意の技術を使用して、例えば、表面リジン、酸化型炭水化物への還元的カップリング、鎖間ジスルフィド連結を還元することによって遊離されるシステイン残基、特定の部位において操作された反応性システイン残基、並びにトランスグルタミナーゼ及びアミンの存在下でのポリペプチド操作によって反応性にされたアシルドナーグルタミン含有タグ又は内因性グルタミンを介して、本開示の抗体に結合され得る。ヒドラゾンベースの連結、ジスルフィドベースの連結及びペプチドベースの連結を含む、種々のADC連結システムが当該分野で公知である。
【0075】
「リンカー」は、安定な共有結合的様式で、化合物、通常は薬物、例えば、マイタンシノイドを、細胞結合剤、例えば、抗PTGFRN抗体又はその断片に連結させることが可能な任意の化学的部分である。リンカーは、化合物又は抗体が活性のままである条件において、酸誘導性切断、光誘導性切断、ペプチダーゼ誘導性切断、エステラーゼ誘導性切断及びジスルフィド結合切断に対して感受性であり得る、又はそれに対して実質的に耐性であり得る。適切なリンカーは、当該分野で周知であり、これには、例えば、ジスルフィド基、チオエーテル基、酸解離性基、光解離性基、ペプチダーゼ不安定基及びエステラーゼ不安定基が含まれる。リンカーには、本明細書に記載され、当該分野で公知の、荷電したリンカー及びその親水性形態も含まれる。リンカーは、例えば、切断可能なリンカー、切断不能なリンカー、親水性リンカー又はジカルボン酸ベースのリンカーであり得る。
【0076】
用語「がん」及び「がん性」は、細胞の集団が調節されない細胞成長を特徴とする、哺乳動物における生理的状態を指す又はそれを記載する。がんの例には、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫及び白血病が含まれるがこれらに限定されない。「腫瘍」及び「新生物」は、前がん性病変を含む良性(非がん性)又は悪性(がん性)のいずれかの過剰な細胞成長又は増殖から生じる1つ以上の細胞を指す。がんの例には、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫及び白血病が含まれるがこれらに限定されない。そのようながんのより特定の例には、扁平上皮がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌、腹膜のがん、肝細胞がん、胃腸がん、膵がん、神経膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、ヘパトーマ、乳癌、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜癌又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓がん、肝臓がん、前立腺がん、外陰部がん、甲状腺がん、肝癌及び種々の型の頭頸部がんが含まれる。ある特定の実施形態では、がんは、髄芽腫、類表皮癌、中皮腫、骨肉腫、紡錘細胞肉腫様癌、絨毛癌、横紋筋肉腫、神経芽腫、平滑筋肉腫、三重陰性乳癌、又はそれらの任意の転移である。
【0077】
用語「がん細胞」、「腫瘍細胞」及び文法的等価物は、腫瘍細胞集団のバルクを含む非腫瘍原性細胞及び腫瘍原性幹細胞(がん幹細胞)の両方を含む、腫瘍又は前がん性病変に由来する細胞の集団全体を指す。本明細書で使用する場合、用語「腫瘍細胞」は、がん幹細胞から腫瘍細胞を区別するために、更新及び分化する能力を欠如する腫瘍細胞のみを指す場合、用語「非腫瘍原性」によって修飾される。
【0078】
用語「対象」は、特定の処置のレシピエントになる、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類などが含まれるがこれらに限定されない任意の動物(例えば、哺乳動物)を指す。典型的には、用語「対象」及び「患者」は、ヒト対象に関して、本明細書で相互交換可能に使用される。
【0079】
1つ以上のさらなる治療剤「と組み合わせた」投与には、同時(同時発生的)投与及び任意の順序での連続的投与が含まれる。
【0080】
用語「医薬製剤」は、活性成分の生物学的活性を有効にさせるような形態であり、その製剤が投与される対象に対して許容されない毒性があるさらなる構成要素を含まない、調製物を指す。製剤は無菌であり得る。
【0081】
本明細書に開示される抗体の「有効量」は、具体的に述べられた目的を実行するのに十分な量である。「有効量」は、実験的に、述べられた目的に関連する慣用的な様式で、決定することができる。
【0082】
用語「治療有効量」は、対象又は哺乳動物において疾患又は障害を「処置する」のに有効な抗体又は他の薬物の量を指す。がんの場合、治療有効量の薬物は、がん細胞の数を低減させること;腫瘍サイズを低減させること;末梢臓器中へのがん細胞浸潤を阻害する(即ち、ある程度まで緩徐化する、又は停止させる)こと;腫瘍転移を阻害する(即ち、ある程度まで緩徐化する、又は停止させる)こと;腫瘍成長をある程度まで阻害すること;及び/又はがんと関連する症状のうち1つ以上をある程度まで軽減させることができる。「処置する」の本明細書の定義を参照のこと。薬物が成長を予防できる及び/又は既存のがん細胞を死滅させることができる限りにおいて、この薬物は、細胞分裂阻害性及び/又は細胞傷害性であり得る。「予防有効量」は、所望の予防的結果を達成するために必要な投薬量の、かつそのような期間にわたる、有効な量を指す。必ずではないが典型的には、予防的用量は、疾患の初期段階の前又は初期段階において対象において使用されるので、予防有効量は、治療有効量よりも小さくなる。
【0083】
単語「標識」は、本明細書で使用する場合、「標識された」抗体を生成するために抗体に直接的又は間接的にコンジュゲートされる検出可能な化合物又は組成物を指す。標識は、それ自体検出可能であり得(例えば、放射性同位体標識又は蛍光標識)、又は酵素標識の場合には、検出可能な基質化合物若しくは組成物の化学的変更を触媒できる。
【0084】
「化学療法剤」は、作用機構にかかわらず、がんの処置において有用な化合物である。化学療法剤には、例えば、CD20のアンタゴニスト、例えば、リツキシマブ、並びにシクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン(predinisone)、フルダラビン、エトポシド、メトトレキサート、レナリドミド、クロラムブシル、ベンダムスチン(bentamustine)及び/又はそのような化学療法薬の改変版が含まれる。
【0085】
用語、例えば、「処置すること」又は「処置」又は「処置する」又は「緩和すること」又は「緩和する」は、1)診断された病的状態又は障害を治癒させる、それを緩徐化させる、その症状を減らす、及び/又はその進行を停止させる治療的手段、並びに2)標的化された病的状態又は障害の発達を予防及び/又は緩徐化する予防的又は防止的手段、の両方を指す。従って、処置を必要とする者には、障害をすでに有している者、障害を有する傾向がある者、及び障害が予防されるべき者が含まれる。ある特定の実施形態では、対象は、患者が以下のうち1つ以上を示す場合、本開示の方法に従ってがんについて首尾よく「処置されている」:がん細胞の数における低減若しくは完全な非存在;腫瘍サイズにおける低減;例えば、軟部組織及び骨へのがんの伝播を含む、末梢臓器中へのがん細胞浸潤の阻害若しくはその非存在;腫瘍転移の阻害若しくはその非存在;腫瘍成長の阻害若しくはその非存在;特定のがんと関連する1つ以上の症状の軽減;罹患率及び死亡率の低減;生活の質における改善;腫瘍の腫瘍原性、腫瘍原性頻度若しくは腫瘍原性能における低減;腫瘍中のがん幹細胞の数若しくは頻度における低減;腫瘍原性細胞の非腫瘍原性状態への分化;又は効果のいくつかの組み合わせ。
【0086】
「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、本明細書で相互交換可能に使用する場合、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、これには、DNA及びRNAが含まれる。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、改変されたヌクレオチド若しくは塩基、及び/又はそれらのアナログ、或いはDNA又はRNAポリメラーゼによってポリマー中に取り込まれ得る任意の基質であり得る。ポリヌクレオチドは、改変されたヌクレオチド、例えば、メチル化されたヌクレオチド及びそれらのアナログを含むことができる。存在する場合、ヌクレオチド構造に対する改変は、ポリマーのアセンブリの前又は後に付与され得る。ヌクレオチドの配列には、非ヌクレオチド構成要素が割り込むことができる。ポリヌクレオチドは、例えば、標識化構成要素とのコンジュゲーションによって、重合後にさらに改変することができる。他の型の改変には、例えば、「キャップ」、アナログによる、1つ以上の天然に存在するヌクレオチドの置換、ヌクレオチド間改変、例えば、非荷電連結(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホアミデート(phosphoamidate)、カルバメート(cabamate)など)によるもの及び荷電連結(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)によるもの、ペンダント部分、例えば、例えば、タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ-L-リジン(ply-L-lysine)など)を含むもの、インターカレーター(例えば、アクリジン、ソラレンなど)によるもの、キレーターを含むもの(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化的金属など)、アルキル化剤を含むもの、改変された連結によるもの(例えば、アルファアノマー核酸など)、並びに未改変の形態のポリヌクレオチドなどが含まれる。さらに、糖中に通常存在するヒドロキシル基のいずれかは、例えば、ホスホネート基、リン酸基によって置き換えられ得、標準的な保護基によって保護され得、若しくはさらなるヌクレオチドへのさらなる連結を調製するために活性化され得、又は固体支持体にコンジュゲートされ得る。5'及び3'末端OHは、リン酸化され得る、又は1~20個の炭素原子のアミン若しくは有機キャッピング基部分で置換され得る。他のヒドロキシルもまた、標準的な保護基へと誘導体化され得る。ポリヌクレオチドは、例えば、2'-0-メチル-、2'-0-アリル、2'-フルオロ-又は2'-アジド-リボース、炭素環式糖アナログ、アルファ-アノマー糖、エピマー糖、例えば、アラビノース、キシロース又はリキソース、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式アナログ及び脱塩基ヌクレオシドアナログ、例えば、メチルリボシドを含む、当該分野で一般に公知の同様な形態のリボース又はデオキシリボース糖を含むこともできる。1つ以上のホスホジエステル連結は、代替的連結基によって置き換えることができる。これらの代替的連結基には、リン酸がP(0)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、"(0)NR2(「アミデート(amidate)」)、P(0)R、P(0)OR、CO又はCH2(「ホルムアセタール」)によって置き換えられた実施形態が含まれるがこれらに限定されず、式中、各R又はRは独立して、H、又は、エーテル(-0-)連結、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル若しくはアラルジル(araldyl)を任意選択で含む置換若しくは未置換のアルキル(1~20C)である。ポリヌクレオチド中の全ての連結が同一である必要はない。上述の記載は、RNA及びDNAを含む本明細書で言及される全てのポリヌクレオチドに当てはまる。
【0087】
用語「ベクター」は、目的の1つ以上の遺伝子又は配列を送達することが可能であり、宿主細胞においてそれを任意選択で発現することが可能な構築物を意味する。ベクターの例には、ウイルスベクター、ネイキッドDNA又はRNA発現ベクター、プラスミド、コスミド又はファージベクター、カチオン性縮合剤と会合したDNA又はRNA発現ベクター、リポソーム中に封入されたDNA又はRNA発現ベクター、及びある特定の真核生物細胞、例えば、産生細胞が含まれるがこれらに限定されない。
【0088】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために、本明細書で相互交換可能に使用される。ポリマーは、直鎖又は分岐鎖であり得、改変されたアミノ酸を含み得、非アミノ酸がそれに割り込み得る。これらの用語は、天然に又は介入によって改変された、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、又は任意の他の操作若しくは改変、例えば、標識化構成要素とのコンジュゲーションによって改変されたアミノ酸ポリマーもまた包含する。この定義内には、例えば、アミノ酸の1つ以上のアナログ(例えば、非天然のアミノ酸などを含む)、並びに当該分野で公知の他の改変を含むポリペプチドもまた含まれる。本開示のポリペプチドは抗体に基づくので、ある特定の実施形態では、ポリペプチドは、単一の鎖又は不随する鎖として存在し得ることが理解される。
【0089】
2つ以上の核酸又はポリペプチドに関して、用語「同一」又はパーセント「同一性」は、いずれの保存的アミノ酸置換も配列同一性の一部と考えずに、最大の対応を求めて(必要に応じてギャップを導入して)比較及びアラインした場合に、同じである、又は同じであるヌクレオチド若しくはアミノ酸残基の特定されたパーセンテージを有する、2つ以上の配列又は下位配列を指す。パーセント同一性は、配列比較ソフトウェア若しくはアルゴリズムを使用して、又は目視検査によって測定することができる。アミノ酸又はヌクレオチド配列のアラインメントを取得するために使用することができる種々のアルゴリズム及びソフトウェアが、当該分野で公知である。配列アラインメントアルゴリズムの1つのそのような非限定的な例は、Karlinら, 1993, Proc. Natl. Acad. Sci., 90:5873- 5877において改変され、NBLAST及びXBLASTプログラム(Altschulら, 1991, Nucleic Acids Res., 25:3389-3402)中に組み込まれた、Karlinら, 1990, Proc. Natl. Acad. Sci., 87:2264-2268に記載されるアルゴリズムである。ある特定の実施形態では、Gapped BLASTが、Altschulら, 1997, Nucleic Acids Res. 25:3389-3402に記載されるように使用され得る。BLAST-2、WU-BLAST-2(Altschulら, 1996, Methods in Enzymology, 266:460-480)、ALIGN、ALIGN-2(Genentech、South San Francisco、California)又はMegalign(DNASTAR)は、配列をアラインさせるために使用できるさらなる公的に利用可能なソフトウェアプログラムである。ある特定の実施形態では、2つのヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、GCGソフトウェア中のGAPプログラムを使用して(例えば、NWSgapdna.CMPマトリックス並びに40、50、60、70又は90のギャップウェイト及び1、2、3、4、5又は6のレングスウェイトを使用して)決定される。ある特定の代替的実施形態では、Needleman及びWunsch (J. Mol. Biol. (48):444-453 (1970))のアルゴリズムを取り込む、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムが、(例えば、Blossum 62マトリックス又はPAM250マトリックスのいずれか、並びに16、14、12、10、8、6又は4のギャップウェイト及び1、2、3、4、5のレングスウェイトを使用して)2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性を決定するために使用され得る。或いは、ある特定の実施形態では、ヌクレオチド又はアミノ酸配列間のパーセント同一性は、Myers及びMiller (CABIOS, 4: 11- 17 (1989))のアルゴリズムを使用して決定される。例えば、パーセント同一性は、ALIGNプログラム(バージョン2.0)を使用し、残基表を伴うPAM120、12のギャップレングスペナルティ及び4のギャップペナルティを使用して決定され得る。特定のアラインメントソフトウェアによる最大のアラインメントに適切なパラメーターは、当業者によって決定され得る。ある特定の実施形態では、アラインメントソフトウェアのデフォルトパラメーターが使用される。ある特定の実施形態では、第2のアミノ酸配列に対する第1のアミノ酸配列のパーセンテージ同一性「X」は、100×(Y/Z)として計算され、式中、Yは、(目視検査又は特定の配列アラインメントプログラムによってアラインさせた)第1の配列及び第2の配列のアラインメント中の同一のマッチとしてスコアリングされたアミノ酸残基の数であり、Zは、第2の配列中の残基の総数である。第1の配列の長さが第2の配列よりも長い場合、第2の配列に対する第1の配列のパーセント同一性は、第1の配列に対する第2の配列のパーセント同一性よりも長い。
【0090】
非限定的な例として、任意の特定のポリヌクレオチドが、参照配列に対してある特定のパーセンテージ配列同一性を有する(例えば、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくとも90%同一、及び一部の実施形態では、少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一である)かどうかは、ある特定の実施形態では、Bestfitプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package、Version 8 for Unix、Genetics Computer Group、University Research Park、575 Science Drive、Madison、WI 5371 1)を使用して決定され得る。Bestfitは、2つの配列間の相同性の最良のセグメントを見出すために、Smith及びWaterman, Advances in Applied Mathematics 2: 482 489 (1981)の局所的相同性アルゴリズムを使用する。特定の配列が本開示に従う参照配列に対して、例えば、95%同一であるかどうかを決定するためにBestfit又は任意の他の配列アラインメントプログラムを使用する場合、同一性のパーセンテージが、参照ヌクレオチド配列の全長にわたって計算され、参照配列中のヌクレオチドの総数の最大で5%の、相同性におけるギャップが許容されるように、パラメーターが設定される。
【0091】
一部の実施形態では、本開示の2つの核酸又はポリペプチドは、実質的に同一であり、これは、それらが、配列比較アルゴリズムを使用して又は目視検査によって測定したとき、最大の対応を求めて比較及びアラインした場合に、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、及び一部の実施形態では、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%のヌクレオチド又はアミノ酸残基同一性を有することを意味する。同一性は、少なくとも約10、約20、約40~60残基長、又はそれらの間の任意の整数値である配列の領域にわたって存在し得、60~80残基よりも長い領域、例えば、少なくとも約90~100残基にわたり得、一部の実施形態では、これらの配列は、比較されている配列、例えば、ヌクレオチド配列のコード領域などの全長にわたって、実質的に同一である。
【0092】
「保存的アミノ酸置換」は、1つのアミノ酸残基が、類似の側鎖を有する別のアミノ酸残基で置き換えられるアミノ酸置換である。塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ-分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む、類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが、当該分野で定義されている。例えば、フェニルアラニンによるチロシンの置換は、保存的置換である。一部の実施形態では、本開示のポリペプチド及び抗体の配列中の保存的置換は、抗原、即ち、このポリペプチド又は抗体が結合するPTGFRNへの、そのアミノ酸配列を含むポリペプチド又は抗体の結合を無効にしない。抗原結合を排除しないヌクレオチド及びアミノ酸の保存的置換を同定する方法は、当該分野で周知である(例えば、Brummellら, Biochem. 32: 1 180-1 187 (1993);Kobayashiら, Protein Eng. 12(10):879-884 (1999);及びBurksら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:.412-417 (1997)を参照のこと)。
【0093】
本開示及び特許請求の範囲で使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「この(the)」は、文脈が他を明確に示さない限り、複数形を含む。
【0094】
実施形態が「含む」という言葉を用いて本明細書に記載される場合には、「からなる及び/又はから本質的になる」という用語で記載された他の点では同様な実施形態もまた提供されていることが理解される。
【0095】
用語「及び/又は」は、本明細書の語句、例えば、「A及び/又はB」において使用する場合、「A及びB」、「A又はB」、「A」及び「B」のいずれをも含む意図である。同様に、用語「及び/又は」は、語句、例えば、「A、B及び/又はC」において使用する場合、以下の実施形態の各々を包含する意図である:A、B及びC;A、B又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);並びにC(単独)。
【0096】
II. PTGFRN結合剤
本開示は、PTGFRNに特異的に結合する薬剤を提供する。これらの薬剤は、本明細書で「PTGFRN結合剤」と呼ばれる。
【0097】
ある特定の実施形態では、PTGFRN結合剤は、抗体、イムノコンジュゲート又はポリペプチドである。一部の実施形態では、PTGFRN結合剤は、ヒト又はヒト化抗体である。一部の実施形態では、抗PTGFRN結合分子は、配列番号5~10に示されるCDR配列を有する抗体又は抗原結合断片であり得る。一部の実施形態では、抗PTGFRN結合分子は、配列番号11~100に示されるCDR配列を有する抗体又は抗原結合断片であり得る。一部の実施形態では、PTGFRN結合分子は、1つのCDR当たり最大で4つ(即ち、0、1、2、3又は4つ)の保存的アミノ酸置換を有する配列番号11~100のCDRを含む、PTGFRNに特異的に結合する抗体又は抗原結合断片であり得る。
【0098】
ある特定の実施形態では、抗PTGFRN抗体又は抗原結合断片は、配列番号11~13のVH CDRを含む。ある特定の実施形態では、抗PTGFRN抗体又は抗原結合断片は、配列番号14~16のVH CDRを含む。ある特定の実施形態では、抗PTGFRN抗体又は抗原結合断片は、配列番号17~19のVL CDRを含む。ある特定の実施形態では、抗PTGFRN抗体又は抗原結合断片は、配列番号20~22のVL CDRを含む。ある特定の実施形態では、抗PTGFRN抗体又は抗原結合断片は、配列番号23~25のVL CDRを含む。
【0099】
ある特定の実施形態では、抗PTGFRN抗体又は抗原結合断片は、配列番号11~13のVH CDR及び配列番号17~19のVL CDRを含む。ある特定の実施形態では、抗PTGFRN抗体又は抗原結合断片は、配列番号11~13のVH CDR及び配列番号20~22のVL CDRを含む。ある特定の実施形態では、抗PTGFRN抗体又は抗原結合断片は、配列番号11~13のVH CDR及び配列番号23~25のVL CDRを含む。
【0100】
ある特定の実施形態では、抗PTGFRN抗体又は抗原結合断片は、配列番号14~16のVH CDR及び配列番号17~19のVL CDRを含む。ある特定の実施形態では、抗PTGFRN抗体又は抗原結合断片は、配列番号14~16のVH CDR及び配列番号20~22のVL CDRを含む。ある特定の実施形態では、抗PTGFRN抗体又は抗原結合断片は、配列番号14~16のVH CDR及び配列番号23~25のVL CDRを含む。
【0101】
ある特定の実施形態では、抗PTGFRN抗体又は抗原結合断片は、配列番号26~28のVH CDRを含む。ある特定の実施形態では、抗PTGFRN抗体又は抗原結合断片は、配列番号29~31のVH CDRを含む。ある特定の実施形態では、抗PTGFRN抗体又は抗原結合断片は、配列番号32~34のVL CDRを含む。
【0102】
ある特定の実施形態では、抗PTGFRN抗体又は抗原結合断片は、配列番号26~28のVH CDR及び配列番号32~34のVL CDRを含む。ある特定の実施形態では、抗PTGFRN抗体又は抗原結合断片は、配列番号26~28のVH CDR及び配列番号32~34のVL CDRを含む。
【0103】
ある特定の実施形態では、抗PTGFRN抗体又は抗原結合断片は、配列番号101、102、106、107、109、111、113、114、117、119、121、124、126又は128のVH配列を含む。ある特定の実施形態では、抗PTGFRN抗体又は抗原結合断片は、配列番号103、104、105、108、110、112、115、116、118、120、122、123、125、127、129又は130のVL配列を含む。一部の実施形態では、抗PTGFRN結合分子は、配列番号101~130から選択されるVH及びVL配列を有する抗体又は抗原結合断片であり得る。ある特定の実施形態では、抗PTGFRN抗体又は抗原結合断片は、配列番号101~130から選択される配列に対して少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%又は少なくとも約99%の配列同一性を有するVH又はVLを含む。
【0104】
ある特定の実施形態では、抗PTGFRN抗体又はその抗原結合断片は、配列番号101又は102のVH配列及び配列番号103、104又は105のVL配列を含む。ある特定の実施形態では、抗PTGFRN抗体又はその抗原結合断片は、配列番号106又は107のVH配列及び配列番号108のVL配列を含む。
【0105】
一部の実施形態では、抗PTGFRN抗体又はその抗原結合断片は、配列番号101のポリペプチド及び配列番号103のポリペプチドを含む抗体;配列番号101のポリペプチド及び配列番号104のポリペプチドを含む抗体;配列番号101のポリペプチド及び配列番号105のポリペプチドを含む抗体;配列番号102のポリペプチド及び配列番号103のポリペプチドを含む抗体;配列番号102のポリペプチド及び配列番号104のポリペプチドを含む抗体;配列番号102のポリペプチド及び配列番号105のポリペプチドを含む抗体;配列番号106のポリペプチド及び配列番号108のポリペプチドを含む抗体;配列番号107のポリペプチド及び配列番号108のポリペプチドを含む抗体;配列番号109のポリペプチド及び配列番号110のポリペプチドを含む抗体;配列番号111のポリペプチド及び配列番号112のポリペプチドを含む抗体;配列番号113のポリペプチド及び配列番号115のポリペプチドを含む抗体;配列番号113のポリペプチド及び配列番号116のポリペプチドを含む抗体;配列番号114のポリペプチド及び配列番号115のポリペプチドを含む抗体;配列番号114のポリペプチド及び配列番号116のポリペプチドを含む抗体;配列番号117のポリペプチド及び配列番号118のポリペプチドを含む抗体;配列番号119のポリペプチド及び配列番号120のポリペプチドを含む抗体;配列番号121のポリペプチド及び配列番号122のポリペプチドを含む抗体;配列番号121のポリペプチド及び配列番号123のポリペプチドを含む抗体;配列番号124のポリペプチド及び配列番号125のポリペプチドを含む抗体;配列番号126のポリペプチド及び配列番号127のポリペプチドを含む抗体;配列番号128のポリペプチド及び配列番号129のポリペプチドを含む抗体;配列番号128のポリペプチド及び配列番号130のポリペプチドを含む抗体;並びに配列番号4のポリペプチド及び配列番号2のポリペプチドを含む抗体からなる群から選択される抗体と同じPTGFRNエピトープに結合する。
【0106】
一部の実施形態では、抗PTGFRN抗体又はその抗原結合断片は、配列番号101のポリペプチド及び配列番号103のポリペプチドを含む抗体;配列番号101のポリペプチド及び配列番号104のポリペプチドを含む抗体;配列番号101のポリペプチド及び配列番号105のポリペプチドを含む抗体;配列番号102のポリペプチド及び配列番号103のポリペプチドを含む抗体;配列番号102のポリペプチド及び配列番号104のポリペプチドを含む抗体;配列番号102のポリペプチド及び配列番号105のポリペプチドを含む抗体;配列番号106のポリペプチド及び配列番号108のポリペプチドを含む抗体;配列番号107のポリペプチド及び配列番号108のポリペプチドを含む抗体;配列番号109のポリペプチド及び配列番号110のポリペプチドを含む抗体;配列番号111のポリペプチド及び配列番号112のポリペプチドを含む抗体;配列番号113のポリペプチド及び配列番号115のポリペプチドを含む抗体;配列番号113のポリペプチド及び配列番号116のポリペプチドを含む抗体;配列番号114のポリペプチド及び配列番号115のポリペプチドを含む抗体;配列番号114のポリペプチド及び配列番号116のポリペプチドを含む抗体;配列番号117のポリペプチド及び配列番号118のポリペプチドを含む抗体;配列番号119のポリペプチド及び配列番号120のポリペプチドを含む抗体;配列番号121のポリペプチド及び配列番号122のポリペプチドを含む抗体;配列番号121のポリペプチド及び配列番号123のポリペプチドを含む抗体;配列番号124のポリペプチド及び配列番号125のポリペプチドを含む抗体;配列番号126のポリペプチド及び配列番号127のポリペプチドを含む抗体;配列番号128のポリペプチド及び配列番号129のポリペプチドを含む抗体;配列番号128のポリペプチド及び配列番号130のポリペプチドを含む抗体;並びに配列番号4のポリペプチド及び配列番号2のポリペプチドを含む抗体からなる群から選択される抗体を競合的に阻害する。
【0107】
一部の実施形態では、抗PTGFRN抗体又はその抗原結合断片は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、このVH及びVLは、相補性決定領域CDR1、CDR2及びCDR3を含み、それぞれVH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3並びにVL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3は、それぞれ配列番号11、12及び13並びに配列番号17、18及び19;それぞれ配列番号11、12及び13並びに配列番号20、21及び22;それぞれ配列番号11、12及び13並びに配列番号23、24及び25;それぞれ配列番号14、15及び16並びに配列番号17、18及び19;それぞれ配列番号14、15及び16並びに配列番号20、21及び22;それぞれ配列番号14、15及び16並びに配列番号23、24及び25;それぞれ配列番号26、27及び28並びに配列番号32、33及び34;それぞれ配列番号29、30及び31並びに配列番号32、33及び34;それぞれ配列番号35、36及び37並びに配列番号38、39及び40;それぞれ配列番号41、42及び43並びに配列番号44、45及び46;それぞれ配列番号47、48及び49並びに配列番号53、54及び55;それぞれ配列番号47、48及び49並びに配列番号56、57及び58;それぞれ配列番号50、51及び52並びに配列番号53、54及び55;それぞれ配列番号50、51及び52並びに配列番号56、57及び58;それぞれ配列番号59、60及び61並びに配列番号62、63及び64;それぞれ配列番号65、66及び67並びに配列番号68、69及び70;それぞれ配列番号71、72及び73並びに配列番号74、75及び76;それぞれ配列番号71、72及び73並びに配列番号77、78及び79;それぞれ配列番号80、81及び82並びに配列番号83、84及び85;それぞれ配列番号86、87及び88並びに配列番号89、90及び91;それぞれ配列番号92、93及び94並びに配列番号95、96及び97;それぞれ配列番号92、93及び94並びに配列番号98、99及び100;それぞれ配列番号8、9及び10並びに配列番号5、6及び7;並びに1、2、3又は4つの保存的アミノ酸置換を含む(a)~(w)のバリアントからなる群から選択されるポリペプチド配列を含む。
【0108】
一部の実施形態では、抗PTGFRN抗体又はその抗原結合断片は、配列番号101及び配列番号103;配列番号101及び配列番号104;配列番号101及び配列番号105;配列番号102及び配列番号103;配列番号102及び配列番号104;配列番号102及び配列番号105;配列番号106及び配列番号108;配列番号107及び配列番号108;配列番号109及び配列番号110;配列番号111及び配列番号112;配列番号113及び配列番号115;配列番号113及び配列番号116;配列番号114及び配列番号115;配列番号114及び配列番号116;配列番号117及び配列番号118;配列番号119及び配列番号120;配列番号121及び配列番号122;配列番号121及び配列番号123;配列番号124及び配列番号125;配列番号126及び配列番号127;配列番号128及び配列番号129;配列番号128及び配列番号130;並びに配列番号4及び配列番号2からなる群から選択されるポリペプチド配列に対して少なくとも90%、95%、99%又は100%同一であるポリペプチド配列を含む。
【0109】
一部の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、内在化される。一部の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、マウス、ヒト、ヒト化又はキメラである。一部の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、CDR移植型、組換え又は表面再構成型である。一部の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、ヒト又はヒト由来の重鎖及び軽鎖可変領域フレームワークをさらに含む。一部の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、IgG1又はIgG2定常領域を含む。一部の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、細胞死を誘導することが可能である。一部の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、ヒトPTGFRNに結合する。一部の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、マウスPTGFRNに結合する。一部の実施形態では、抗体は、全長抗体である。一部の実施形態では、これは、抗原結合断片である。一部の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、Fab、Fab'、F(ab')2、Fd、単鎖Fv、若しくはscFv、ジスルフィド連結されたFv、V-NARドメイン、IgNar、イントラボディ、IgGΔCH2、ミニボディ、F(ab')3、テトラボディ、トリアボディ、ディアボディ、単一ドメイン抗体、DVD-Ig、Fcab、mAb2、(scFv)2又はscFv-Fcを含む。
【0110】
一部の実施形態では、1つ以上の機能的部分が、本開示の抗体にコンジュゲートされ得る。抗体1つ当たりの機能的部分の数は、公知の技術を使用して当業者によって変動され得る。典型的には、抗体1つ当たり少なくとも1つの機能的部分がコンジュゲートされる。一部の実施形態では、抗体1つ当たりの機能的部分の比率は、約1~約8、約2~約8、約3~約8、約4~約8、約5~約8、約6~約8又は約7~約8であり得る。一部の実施形態では、本開示の抗体コンジュゲートは、1つの機能的部分、2つの機能的部分、3つの機能的部分、4つの機能的部分、5つの機能的部分、6つの機能的部分、7つの機能的部分又は8つの機能的部分を含み得る。典型的には、抗体1つ当たりの機能的部分の数は、薬物抗体比(DAR)として表され得る。抗体1つ当たりの機能的部分の数は、当該分野で公知の任意の技術、例えば、UV分光法、質量分析、イムノアッセイ、放射測定法、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、電気泳動又はHPLCを使用して決定することができる。
【0111】
一部の実施形態では、機能的部分は、薬物であり得る。一部の実施形態では、機能的部分は、がんを処置するために使用される薬物、例えば、細胞傷害性試薬であり得る。当業者に公知の任意の細胞傷害性試薬、例えば、酵素、毒素、ペプチド及びアントラサイクリンが、本開示の実施において使用され得る。細胞傷害性試薬の例には、ヌクレオシドアンタゴニスト(例えば、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、アラビノシルシトシン、カペシタビン、クロファラビン、シタラビン、ダカルバジン、フルダラビン、ゲムシタビン及びネララビン)、インターカレート剤(例えば、オキサリプラチン、シスプラチン及びカルボプラチン)、微小管アセンブリ阻害剤(例えば、アウリスタチン、モノメチルアウリスタチンE、モノメチルアウリスタチンF、タキサン、ドセタキセル、パクリタキセル、イクサベピロン、ビンカアルカロイド、ビンデシン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ビンブラスチン及びマイタンシノイド、メルタンシン)、葉酸阻害剤(例えば、メトトレキサート及びペメトレキセド)、リボソーム不活性化タンパク質、例えば、サポリン、毒素、例えば、リシン及びコレラ毒素が含まれるがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、細胞傷害性試薬は、アントラサイクリン、アウリスタチン、カンプトテシン、コンブレタスタチン、ドラスタチン、デュオカルマイシン、エンジイン、ゲルダナマイシン、インドリノ-ベンゾジアゼピンダイマー、マイタンシン、ピューロマイシン、ピロロベンゾジアゼピンダイマー、タキサン、ビンカアルカロイド、チューブリシン、ヘミアステリン、スプライソスタチン、プラジエノライド又はカリケアマイシンである。一部の実施形態では、Mは、モノメチルアウリスタチンE、モノメチルアウリスタチンF、マイタンシノイドDM1、マイタンシノイドDM4、カリケアマイシン、オゾガマイシン、α-アマニチン、イットリウム-90又はヨウ素-131であり得る。
【0112】
イムノコンジュゲートは、本明細書に記載される一部の実施形態によれば、細胞中に内在化され得る。従って、イムノコンジュゲートは、PTGFRN発現細胞によって取り込み又は内在化される場合に、治療効果を発揮できる。一部の特定の実施形態では、イムノコンジュゲートは、切断可能なリンカーによって細胞傷害剤に連結された抗体、抗体断片又はポリペプチドを含み、この細胞傷害剤は、抗体、抗体断片又はポリペプチドから切断され、このとき、この細胞傷害剤は、PTGFRN発現細胞によって内在化される。
【0113】
本開示は、式:Ab-L-Mの抗体コンジュゲートであって、式中、(a)Abが、PTGFRNに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であり;(b)Lがリンカーであり;(c)Mが機能的部分である、抗体コンジュゲートをさらに提供する。一部の実施形態では、抗体コンジュゲート中のAbは、請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片である。一部の実施形態では、抗体コンジュゲート中のMは、細胞傷害性試薬、免疫調節剤、イメージング剤、治療用タンパク質、バイオポリマー及びオリゴヌクレオチドからなる群から選択される。一部の実施形態では、Mは、細胞傷害性試薬である。一部の実施形態では、細胞傷害性試薬は、アントラサイクリン、アウリスタチン、カンプトテシン、コンブレタスタチン(combretastain)、ドラスタチン、デュオカルマイシン、エンジイン、ゲルダナマイシン、インドリノ-ベンゾジアゼピンダイマー、マイタンシン、ピューロマイシン、ピロロベンゾジアゼピンダイマー、タキサン、ビンカアルカロイド、チューブリシン、ヘミアステリン、スプライソスタチン、プラジエノライド及びカリケアマイシンからなる群から選択される。一部の実施形態では、細胞傷害性試薬は、モノメチルアウリスタチンE、モノメチルアウリスタチンF、マイタンシノイドDM1、マイタンシノイドDM4、カリケアマイシン、オゾガマイシン、α-アマニチン、イットリウム-90及びヨウ素-131から選択される。一部の実施形態では、抗体コンジュゲート中のリンカーは、切断可能なリンカー、切断不能なリンカー、親水性リンカー及びジカルボン酸ベースのリンカーからなる群から選択される。一部の実施形態では、本開示において提供される抗体コンジュゲートは、PTGFRNに結合し、内在化される。
【0114】
ある特定の実施形態では、PTGFRN結合剤(例えば、抗体、その抗原結合断片及び/又は抗体薬物コンジュゲート)は、以下の効果のうち1つ以上を有する:腫瘍細胞の増殖を阻害する効果、腫瘍中のがん幹細胞の頻度を低減させることによって、腫瘍の腫瘍原性を低減させる効果、腫瘍成長を阻害する効果、生存を増加させる効果、腫瘍細胞の細胞死を誘発する効果、腫瘍原性細胞を非腫瘍原性状態に分化させる効果、又は腫瘍細胞の転移を予防する効果。
【0115】
ある特定の実施形態では、PTGFRN結合剤は、細胞表面PTGFRN抗原に結合する。ある特定の実施形態では、PTGFRN結合剤は、PTGFRNの細胞外ドメイン(ECD)に結合する。ある特定の実施形態では、がん細胞は、複数の細胞表面PTGFRN抗原を有する。ある特定の実施形態では、PTGFRN結合剤は、細胞内に内在化される。
【0116】
ある特定の実施形態では、PTGFRN結合剤は、33B7と同じ、細胞表面PTGFRN上のエピトープに結合する。ある特定の実施形態では、PTGFRN結合剤は、33B7とは異なる、細胞表面PTGFRN上のエピトープに結合する。
【0117】
ある特定の実施形態では、PTGFRN結合剤は、細胞を死滅させることが可能である。ある特定の実施形態では、細胞死滅は、抗PTGFRN抗体によってもたらされる。ある特定の実施形態では、細胞死滅は、抗PTGFRN抗体にコンジュゲートされた細胞傷害性薬物によってもたらされる。ある特定の実施形態では、細胞死滅は、抗PTGFRN抗体及び抗PTGFRN抗体にコンジュゲートした細胞傷害性薬物によってもたらされる。
【0118】
III. ポリヌクレオチド
ある特定の実施形態では、本開示は、PTGFRNに特異的に結合するポリペプチド又はそのようなポリペプチドの断片をコードするポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを包含する。例えば、本開示は、ヒトPTGFRNに対する抗体をコードする又はそのような抗体の断片をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供する。本開示のポリヌクレオチドは、RNAの形態又はDNAの形態であり得る。DNAには、cDNA、ゲノムDNA及び合成DNAが含まれ、二本鎖でも一本鎖でもよく、一本鎖の場合には、コード鎖又は非コード(アンチセンス)鎖であり得る。
【0119】
ある特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、単離される。ある特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、実質的に純粋である。
【0120】
本開示は、単離されたポリヌクレオチドもまた提供する。ある特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号2、4及び101~130からなる群から選択される配列を含むポリペプチドをコードする配列を含む。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号2、4及び101~130からなる群から選択される配列に対して少なくとも90%、95%、99%又は100%同一なポリペプチドをコードする配列を含む。配列番号1、2及び131~160に対して少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%又は少なくとも約99%の配列同一性を有するポリヌクレオチドもまた提供される。
【0121】
ある特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、例えば、宿主細胞からのポリペプチドの発現及び分泌を補助するポリヌクレオチド(例えば、細胞からのポリペプチドの輸送を制御するための分泌配列として機能するリーダー配列)に同じリーディングフレームで融合した成熟ポリペプチドのコード配列を含む。リーダー配列を有するポリペプチドは、プレタンパク質であり、ポリペプチドの成熟形態を形成するために宿主細胞によって切断されるリーダー配列を有し得る。ポリヌクレオチドは、成熟タンパク質プラスさらなる5'アミノ酸残基であるプロタンパク質もまたコードし得る。プロ配列を有する成熟タンパク質は、プロタンパク質であり、タンパク質の不活性形態である。プロ配列が切断されると、活性な成熟タンパク質が残る。
【0122】
ある特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、例えば、コードされたポリペプチドの精製を可能にするマーカー配列に同じリーディングフレームで融合した成熟ポリペプチドのコード配列を含む。
【0123】
本開示は、例えば、断片、アナログ及び誘導体をコードする本明細書の上記のポリヌクレオチドのバリアントにさらに関する。
【0124】
ポリヌクレオチドバリアントは、コード領域、非コード領域又はその両方中に、変更を含むことができる。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドバリアントは、サイレント置換、付加又は欠失を生じるが、コードされたポリペプチドの特性も活性も変更しない変更を含む。一部の実施形態では、ヌクレオチドバリアントは、遺伝コードの縮重に起因するサイレント置換によって産生される。ポリヌクレオチドバリアントは、種々の理由のために、例えば、特定の宿主のためにコドン発現を最適化する(ヒトmRNA中のコドンを、細菌宿主、例えば、大腸菌(E. coli)によって好まれるコドンに変化させる)ために産生され得る。
【0125】
本明細書に記載されるポリヌクレオチドを含むベクター及び細胞もまた、本開示によって包含される。
【0126】
IV. 医薬組成物及び使用の方法
一部の実施形態では、本開示の抗体及び/又は抗体コンジュゲートは、医薬組成物として製剤化することができる。本開示の医薬組成物は、典型的には、本開示の抗体又は抗体薬物コンジュゲートを約0.1重量%~約75重量%含む。一部の実施形態では、本開示の医薬組成物は、本開示の抗体又は抗体薬物コンジュゲートを、約0.2重量%~約75重量%、約0.5重量%~約75重量%、約1重量%~約75重量%、約2重量%~約75重量%、約5重量%~約75重量%、約10重量%~約75重量%、約20重量%~約75重量%又は約50重量%~約75重量%含むことができる。
【0127】
本開示の医薬組成物は、当業者に公知の任意の様式で製剤化され得る。典型的には、本開示の医薬組成物は、液体溶液若しくは懸濁物、又は注射前に液体中に溶解若しくは懸濁される固体形態であり得る、注射可能な組成物として製剤化される。本開示の医薬組成物は、遅延放出のために製剤化され得る、例えば、デポ注射のために製剤化され得る。
【0128】
本開示の医薬組成物は、典型的には、1種以上の薬学的に許容される担体を含む。本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される担体」には、任意の及び全ての水性溶媒(例えば、水、アルコール性/水性溶液、食塩水溶液、非経口ビヒクル、例えば、塩化ナトリウム、リンゲルデキストロースなど)、非水性溶媒(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油及び注射可能な有機エステル、例えば、オレイン酸エチルエステル)、分散媒、コーティング、界面活性剤、抗酸化剤、防腐剤(例えば、抗細菌剤又は抗真菌剤、抗酸化剤、キレート剤及び不活性ガス)、等張剤、吸収遅延剤、塩、薬物、薬物安定剤、ゲル、バインダー、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤、染料、流体及び栄養補給剤が含まれ、そのような材料及びそれらの組み合わせは、当業者に公知である。医薬組成物中の種々の構成要素のpH及び正確な濃度は、周知のパラメーターに従って調整される。
【0129】
本開示は、本開示の抗体を使用する処置の方法もまた提供する。本開示の方法は、典型的には、それを必要とする患者への本開示の医薬組成物の投与を含む。処置及び用量の両方の数に従って投与される量は、当業者によって決定され得る。本開示の医薬組成物の投与の量及びタイミングの決定は、因子、例えば、対象の体重、年齢、健康及び性別、処置されている疾患の型、疾患侵入の程度、以前の又は同時発生的な治療介入、患者の特発性、投与の経路、並びに特定の治療的物質の効力、安定性及び毒性の考慮によってなされ得る。
【0130】
一部の実施形態では、本開示の抗体は、イメージング(画像化)用途に使用できる。典型的には、イメージング用途のために、本開示の抗体は、イメージングに適切な機能的部分にコンジュゲートされ得る。イメージングに適切な機能的部分には、顕微鏡、例えば、蛍光顕微鏡、共焦点顕微鏡又は電子顕微鏡によって検出することができる部分が含まれるがこれらに限定されない。他の機能的部分は、他の分析技術によって、例えば、核磁気共鳴画像法、断層撮影、例えば、ガンマ(SPECT/CT、プラナー)及びポジトロン放出断層撮影(PET/CT)、X線撮影又は超音波によって検出できる。本開示のイメージング用途における使用に適切な機能的部分には、発光分子、化学発光分子、蛍光色素、蛍光クエンチ剤、着色分子、放射性同位体、シンチラント、質量標識(massive label)(質量変化を介した検出のため)、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、プロテインA、プロテインG、抗体又はその断片、Grb2、ポリヒスチジン、Ni2+、Flagタグ、mycタグ、重金属、酵素、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、電子ドナー/アクセプター、アクリジニウムエステル及び発色基質が含まれ得る。
【0131】
本開示のPTGFRN結合剤(抗体、イムノコンジュゲート及びポリペプチドを含む)は、治療的処置方法、例えば、がんの処置が含まれるがこれらに限定されない種々の用途において有用である。一部の実施形態では、がんは、髄芽腫、類表皮癌、中皮腫、骨肉腫、紡錘細胞肉腫様癌、絨毛癌、横紋筋肉腫、神経芽腫、平滑筋肉腫、三重陰性乳癌、頭頸部癌、去勢耐性前立腺癌、扁平上皮癌、肺扁平上皮癌、卵巣癌及び膵癌、又はそれらの任意の転移である。ある特定の実施形態では、この薬剤は、腫瘍成長を阻害するため、分化を誘導するため、腫瘍体積を低減させるため、及び/又は腫瘍の腫瘍原性を低減させるために有用である。使用の方法は、in vitro、ex vivo又はin vivoの方法であり得る。
【0132】
ある特定の実施形態では、本開示の抗PTGFRN抗体及びイムノコンジュゲートは、生物学的サンプル中のPTGFRNの存在を検出するために有用である。用語「検出する」は、本明細書で使用する場合、定量的又は定性的検出を包含する。ある特定の実施形態では、生物学的サンプルは、細胞又は組織を含む。ある特定の実施形態では、そのような組織には、他の組織と比較して高いレベルでPTGFRNを発現する正常及び/又はがん性組織が含まれる。
【0133】
ある特定の実施形態では、本開示は、生物学的サンプル中のPTGFRNの存在を検出する方法を提供する。ある特定の実施形態では、この方法は、PTGFRNへの抗PTGFRN抗体の結合を許容する条件下で、生物学的サンプルを抗PTGFRN抗体と接触させるステップ、及び抗PTGFRN抗体とPTGFRNとの間で複合体が形成されたかどうかを検出するステップを含む。
【0134】
ある特定の実施形態では、本開示は、障害、例えば、がんを診断する方法を提供する。ある特定の実施形態では、この方法は、試験細胞を抗PTGFRN抗体と接触させるステップ;PTGFRNへの抗PTGFRN抗体の結合を検出することによって、試験細胞によるPTGFRNの発現のレベルを(定量的又は定性的にのいずれかで)決定するステップ;及び試験細胞によるPTGFRNの発現のレベルを、対照細胞(例えば、試験細胞と同じ組織起源の正常細胞、又はそのような正常細胞と匹敵するレベルでPTGFRNを発現する細胞)によるPTGFRNの発現のレベルと比較するステップを含み、ここで、対照細胞と比較した、試験細胞によるPTGFRNの発現のより高いレベルは、PTGFRNの増加した発現と関連する障害の存在を示す。ある特定の実施形態では、試験細胞は、PTGFRNの増加した発現と関連する障害を有する疑いがある個体から取得される。ある特定の実施形態では、障害は、細胞増殖障害、例えば、がん又は腫瘍である。
【0135】
ある特定の実施形態では、診断又は検出の方法、例えば、上記の方法は、細胞の表面上に発現された、又はその表面上にPTGFRNを発現する細胞から取得された膜調製物中のPTGFRNへの抗PTGFRN抗体の結合を検出するステップを含む。ある特定の実施形態では、この方法は、PTGFRNへの抗PTGFRN抗体の結合を許容する条件下で、細胞を抗PTGFRN抗体と接触させるステップ、及び抗PTGFRN抗体と細胞表面上のPTGFRNとの間で複合体が形成されたかどうかを検出するステップを含む。細胞の表面上に発現されたPTGFRNへの抗PTGFRN抗体の結合を検出するための例示的なアッセイは、「FACS」アッセイである。
【0136】
ある特定の他の方法が、PTGFRNへの抗PTGFRN抗体の結合を検出するために使用され得る。そのような方法には、当該分野で周知の抗原結合アッセイ、例えば、ウエスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、蛍光イムノアッセイ、プロテインAイムノアッセイ及び免疫組織化学(IHC)が含まれるがこれらに限定されない。
【0137】
ある特定の実施形態では、抗PTGFRN抗体は、標識される。標識には、直接検出される標識又は部分(例えば、蛍光、発色団、高電子密度、化学発光及び放射性標識)、並びに部分、例えば、例えば酵素反応又は分子相互作用を介して間接的に検出される酵素又はリガンドが含まれるがこれらに限定されない。
【0138】
ある特定の実施形態では、PTGFRN結合剤(例えば、抗PTGFRN抗体又はコンジュゲート)で処置される疾患は、がんである。ある特定の実施形態では、がんは、PTGFRN結合剤(例えば、抗体又はコンジュゲート)が結合するPTGFRN発現細胞を特徴とする。
【0139】
本開示は、対象(例えば、処置を必要とする対象)に、治療有効量のPTGFRN結合剤を投与するステップを含む、がんを処置する方法を提供する。ある特定の実施形態では、がんは、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫及び白血病から選択される。そのようながんのより特定の例には、扁平上皮がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌、腹膜のがん、肝細胞がん、胃腸がん、膵がん、神経膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、ヘパトーマ、乳癌、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜癌又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓がん、肝臓がん、前立腺がん、外陰部がん、甲状腺がん、肝癌及び種々の型の頭頸部がんが含まれる。一部の実施形態では、がんは、髄芽腫、類表皮癌、中皮腫、骨肉腫、紡錘細胞肉腫様癌、絨毛癌、横紋筋肉腫、神経芽腫、平滑筋肉腫、三重陰性乳癌、頭頸部癌、去勢耐性前立腺癌、扁平上皮癌、肺扁平上皮癌、卵巣癌及び膵癌、又はそれらの任意の転移である。
【0140】
本開示は、本明細書に記載される抗体又はコンジュゲートを使用して腫瘍成長を阻害するための方法をさらに提供する。ある特定の実施形態では、腫瘍成長を阻害する方法は、細胞を、in vitroでPTGFRN結合剤(例えば、抗体又はコンジュゲート)と接触させるステップを含む。例えば、PTGFRNを発現する不死化細胞株又はがん細胞株は、腫瘍成長を阻害する抗体又は他の薬剤が添加された培地中で培養される。一部の実施形態では、腫瘍細胞は、患者サンプル、例えば、組織生検、胸膜滲出液又は血液サンプルなどから単離され、腫瘍成長を阻害するためのPTGFRN結合剤が添加された培地中で培養される。
【0141】
一部の実施形態では、腫瘍成長を阻害する方法は、腫瘍又は腫瘍細胞を、in vivoでPTGFRN結合剤(例えば、抗体又はコンジュゲート)と接触させるステップを含む。ある特定の実施形態では、腫瘍又は腫瘍細胞をPTGFRN結合剤と接触させるステップは、動物モデルにおいて行われる。例えば、PTGFRN結合剤は、腫瘍成長を阻害するために、免疫低下マウスにおいて成長した、1つ以上のPTGFRNを発現する異種移植片に投与され得る。
【0142】
ある特定の実施形態では、腫瘍成長を阻害する方法は、対象に、治療有効量のPTGFRN結合剤を投与するステップを含む。ある特定の実施形態では、対象は、ヒトである。ある特定の実施形態では、対象は、腫瘍を有する、又は腫瘍を除去されたことがある。
【0143】
ある特定の実施形態では、腫瘍は、PTGFRN結合剤又は抗体が結合するPTGFRNを発現する。ある特定の実施形態では、腫瘍は、ヒトPTGFRNを過剰発現する。
【0144】
一部の実施形態では、本開示は、対象においてPTGFRNの機能又は発現と関連する障害を処置するための方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本開示の医薬組成物を投与するステップを含む方法を提供する。処置され得る障害には、がんが含まれる。処置され得るがんには、髄芽腫、類表皮腫瘍、中皮腫、骨肉腫、紡錘細胞肉腫様癌、絨毛癌、扁平上皮癌、又はそれらの任意の転移が含まれるがこれらに限定されない。
【0145】
一部の実施形態では、本開示は、PTGFRN発現腫瘍を有する対象において腫瘍の成長又は進行を減少させるための方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本開示の医薬組成物を投与するステップを含む方法を提供する。
【0146】
一部の実施形態では、本開示は、対象においてPTGFRN発現がん細胞の転移を減少させるための方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本開示の医薬組成物を投与するステップを含む方法を提供する。
【0147】
一部の実施形態では、本開示は、PTGFRN発現腫瘍を有する対象において腫瘍退縮を誘導するための方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本開示の医薬組成物を投与するステップを含む方法を提供する。
【0148】
一部の実施形態では、本開示は、PTGFRN発現腫瘍を有したことがある対象において腫瘍再成長を予防するための方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本開示の医薬組成物を投与するステップを含む方法を提供する。
【0149】
一部の実施形態では、本開示は、PTGFRN発現腫瘍を有する対象又は有したことがある対象において症状を寛解させるための方法であって、それを必要とする対象に、有効量の本開示の医薬組成物を投与するステップを含む方法を提供する。
【0150】
一部の実施形態では、本開示は、細胞をイメージング(画像化)するための方法であって、細胞を、本開示の抗体若しくはその抗原結合断片又は本開示の抗体コンジュゲートと接触させるステップ;及び抗体若しくはその抗原結合断片又は抗体コンジュゲートを検出するステップを含む方法を提供する。
【0151】
一部の実施形態では、本開示は、腫瘍におけるPTGFRNの発現を同定するための方法であって、(1)腫瘍のサンプルを取得するステップ、(2)サンプルを、本開示によって包含される抗体若しくはその抗原結合断片又は抗体コンジュゲートと接触させるステップ;及び(3)抗体若しくはその抗原結合断片又はコンジュゲートを検出するステップを含む方法を提供する。一部の実施形態では、検出するステップは、免疫化学による。一部の実施形態では、腫瘍におけるPTGFRNの発現を同定するための方法は、免疫化学(IHC)によって実施され得る。他の実施形態では、そのような方法は、当該分野で周知の抗原結合アッセイ、例えば、ウエスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、蛍光イムノアッセイ及びプロテインAイムノアッセイによって実施され得るが、これらに限定されない。
【実施例】
【0152】
本開示は、がん細胞上に発現される細胞表面タンパク質(CSP)に特異的に結合するモノクローナル抗体(mAb)(例えば、本明細書でAG02とも称される抗体33B7、又は抗体4F4)を提供する。本開示のモノクローナル抗体が結合する標的細胞表面タンパク質は、質量分析によって、プロスタグランジンF2受容体阻害剤(PTGFRN)と同定された。PTGFRNは、ある特定のがん細胞、特に髄芽腫及び中皮腫において優先的に発現される。本開示のモノクローナル抗体は、PTGFRNを天然に発現する細胞及びPTGFRNを発現するようにトランスフェクトされた細胞に結合する。
【0153】
本開示のモノクローナル抗体はまた、PTGFRN発現がん細胞によって内在化されるモノクローナル抗体であり得、従って、標的化された細胞を死滅させるための潜在的なペイロード担体である。本開示のモノクローナル抗体のそのような使用の1つの例は、細胞傷害性活性を有する天然のグリコシドであるリボソーム不活性化タンパク質(RIP)サポリンに連結された本開示のモノクローナル抗体からなる一般的な型の抗体-薬物-コンジュゲート(ADC)の形態で、以下に提供される。サポリンは、概念実証ADC研究において広く使用されている。このADCを使用して、本発明者らは、in vitro及びin vivoの両方で、標的細胞に対する選択的効果を実証したが、標的CSPを発現しない細胞は、影響を受けなかった。
【0154】
これらのデータは、これらのmABが結合するPTGFRNが、ある特定のがんに対して特異的な新規抗がん剤の開発のための価値ある標的であることを実証した。
【0155】
本明細書に記載される例及び実施形態が例示目的に過ぎないこと、並びにその観点から見た種々の改変又は変化が、当業者に示唆され、本出願の精神及び範囲内に含まれることが、理解される。
【0156】
[実施例1:マウス抗体のスクリーニング]
抗体を、ヒトがん細胞上で見出される細胞表面タンパク質(CSP)に対するマウスモノクローナル抗体ライブラリーの一部として作製した。抗体を、肉腫及び小児がん細胞株を含むいくつかの公知のがん細胞に対してスクリーニングして、がんCSPに対して特異的な抗体を、新薬の開発につながるような潜在的候補として同定した。引き続くスクリーニングにより、がんCSPに結合しただけでなく、がん細胞中に内在化された抗体が同定された。そのような抗体候補を、さらなる開発及び特徴付けのために同定した。これらの抗体のうち1つ(33B7)を、優れた特徴を有すると同定し、その治療潜在力についてのさらなる開発及び特徴付けのための主要な候補として特徴付けた。
【0157】
[実施例2:33B7の標的の同定]
33B7の標的を同定するために、33B7陽性細胞上のCSPをビオチン化し、細胞をホモジナイズし、次いで、分画遠心分離によって処理して、形質膜調製物を取得した。形質膜を、1.0%のTriton X100溶液中に可溶化し、33B7標的の精製及び同定のための出発材料として使用した。2×108のSCSC細胞を、PBS-1mM EDTAを用いて2つのローラーボトルから収集し、その後PBS中で3回洗浄した。Thermo ScientificのEZ-LinkTM Sulfo-NHS-LC-Biotinylation Kitを使用して、これらの細胞の細胞表面を、4℃で2時間ビオチン化した。2時間後、反応を、100mMのTris-PBSによる3回の洗浄によってクエンチした。溶液を、個々の1.5mLのエッペンドルフチューブ中にアリコート化し、14,000RPMで15分間スピンダウンした。
【0158】
上清を除去し、膜ペレットを、PBS中1%のTritonX-100中で溶解させ、その後超音波処理及び遠心分離を行った。タンパク質濃度を、microBCAによって決定した。
【0159】
プロテインGビーズ(50μl)を、溶解物の1mgアリコート2つに添加し、+4μgのプールされたマウスIgGを添加して、非特異的結合を予め除去した。合わせたビーズ、溶解物及びマウスIgGを、ローテーター上で4℃で1.5時間インキュベートした。インキュベーション後、ビーズをスピンダウンし、清澄化された上清を、20μgの33B7抗体の存在下で、50μLのプロテインGビーズに添加した。溶解させた膜の第2のアリコートを、50μLのプロテインGビーズ+20μgの無関係のマウスモノクローナル抗体と共にインキュベートすることによって、対照を実施した。インキュベーションを、4℃で一晩実施した。
【0160】
次の日、ビーズを、PBS中1%のTritonX-100で洗浄した。最後の洗浄後、ビーズを、150μLの50mMグリシン(pH1.9)と共にインキュベートして、33B7抗体に結合したタンパク質を溶出させた。第2ラウンドの溶出を実施し、上清を合わせた。この300μLを、35μLの10×中和緩衝液(pH:7.4)に添加した。
【0161】
ストレプトアビジンビーズ(Dynabeads(登録商標)MyOne(商標)ストレプトアビジンC1、Thermo-Fisher製)の100μLアリコート2つを、PBS中1%のTritonX-100中で3回洗浄した。洗浄後、対照及び試験抗体からの溶出された画分300μLを、ストレプトアビジンビーズのチューブに添加し、その後、一晩インキュベートした。
【0162】
次の日、ビーズを含む溶液をスピンダウンし、ビーズを、PBS中1%のTritonX-100で8回洗浄した。30μLの2×Laemmli SDSサンプル緩衝液+100mM DTTを、各チューブに添加し、100℃で5分間加熱した。サンプルを、2回凍結及び解凍し、次いで、95℃でさらに5分間再加熱した。
【0163】
33B7及びIgG対照サンプルを、2つの4~12% Bis-Trisポリアクリルアミドゲル上で泳動し、1つはウエスタンブロット用、1つはColloidal Blue染色用とした。ウエスタンブロットのために、メンブレンをストレプトアビジンHRPと共にインキュベートして、ビオチン化され、33B7抗体によって免疫沈降されたバンドを検出した。
【0164】
2番目のゲルを洗浄し、colloidal blueで3時間染色した。3時間後、ゲルを洗浄し、水中で一晩リンスした。ストレプトアビジン-HRPウエスタンブロットにより、33B7サンプルでのみ視認でき、IgG対照サンプルでは視認できなかった、135kDaの見かけの分子量を有する独自のビオチン化バンドの存在が明らかになった。colloidal blueで染色されたゲルは、ビオチン化バンドと類似の分子量において対応するバンドを示し、これをメスで切り出し、ゲル中消化及び質量分析同定のために送付した。IgG対照サンプルに対応するゲルもまた、33B7サンプルと同じ位置で切り出し、質量分析同定のための陰性対照として使用した。質量分析配列決定により、33B7抗体によって認識及び免疫沈降される標的の候補としてPTGFRNが同定された。
【0165】
質量分析によって同定されたPTGFRN標的が、実際に33B7によって認識されるタンパク質であることを確認するために、ヒトPTGFRN cDNAを合成し、哺乳動物pcDNA3発現ベクター中に挿入した。PTGFRN発現ベクターを、ヒト腎臓細胞Hek293細胞(これは、33B7陰性であり、市販の抗PTGFRNを使用して試験した場合、PTGFRNを発現しない)中に一過的にトランスフェクトした。トランスフェクション後、細胞におけるPTGFRNの発現を、抗PTGFRN抗体を使用するウエスタンブロットによって検証した。PTGFRNでトランスフェクトされた細胞は、PTGFRN及び33B7結合について陰性であった空のベクターHek293細胞とは対照的に、今度は33B7に結合できた。
図1Aは、ローダミン-mIgG/33B7が、PTGFRN陰性Hek-293細胞には結合しないが、PTGFRN cDNAでトランスフェクトされたHek-293細胞には結合することを示す(
図1B)。従って、33B7は、PTGFRNに対して特異的なようであり、細胞表面上のPTGFRNに結合できる。これらのデータにより、質量分析によって同定されたPTGFRNの発現が、陽性33B7結合と関連することが確認された。
【0166】
[実施例3:がん細胞株への33B7結合]
いくつかのがん細胞株を、33B7抗体に結合するそれらの能力についてフローによって試験した(
図2)。細胞を、PBS-EDTAで剥離させ、次いで、PBS及び結合緩衝液で数回洗浄した。細胞を計数し、スピンダウンし、次いで、0.5%BSAを含むDMEM/F12培地中に約5×10
5細胞/100μLの密度で再懸濁した。細胞を、V底96ウェルプレートに添加した。
【0167】
プレートを遠心分離し、上清を除去し、細胞を、DMEM/F12+0.5%BSA中5μg/mLの一次33B7抗体溶液100μL中に再懸濁した。細胞を、4℃で1時間インキュベートした。
【0168】
1時間後、細胞を、200μLの冷PBS中で洗浄し、DMEM/F12+0.5%BSA中10μg/mLの二次抗体ウサギ抗マウスIgG溶液100μL中に再懸濁し、4℃で1時間インキュベートした。
【0169】
1時間後、細胞を、200μLのPBS中で洗浄し、DMEM/F12+0.5%BSA中20μg/mLのAlexa fluor 647ヤギ抗ウサギIgG溶液100μL中に再懸濁し、4℃で1時間インキュベートした。フローアッセイに細胞を使用する場合、使用する蛍光タンパク質は、Alexa fluor 647である。細胞を、冷PBSで2回洗浄する。フローアッセイのために、細胞は、フロー測定デバイス、例えば、Intellicyt(Albuquerque、NM)中に直接流すことができる。
【0170】
内在化を可視化するために、好ましい方法は、免疫蛍光であった。結合アッセイは、三次抗体をローダミンにコンジュゲートしたヤギ抗ウサギIgGとしたことを除いて、上記と同じであった。細胞を、ガラス顕微鏡スライド上に重ねて、それにカバーガラスを置き、次いで、蛍光Olympus顕微鏡で観察した。内在化を誘導するために、細胞を、時間0において37℃のCO2インキュベーター中に1時間配置し、その後、顕微鏡スライド上に重ねて、上記のように観察した。
【0171】
[実施例4:337B7内在化]
33B7抗体が細胞表面の標的PTGFRNを内在化しているかどうかを調査した。この目的のために、PTGFRN cDNAでトランスフェクトされたHek-293細胞への抗体結合を、懸濁物中の細胞を33B7と共にインキュベートし、その後、FITCにコンジュゲートした二次抗体と共に4℃で1時間インキュベートすることによって実施した。次いで、細胞を、37℃に1時間移し、蛍光顕微鏡下で可視化した。33B7と共に4℃でインキュベートした細胞は、
図3Aに示されるように、細胞表面上で発現されたPTGFRNへの33B7の結合を示す強い細胞表面免疫蛍光を示した。37℃でのインキュベーションにより、全ての細胞表面結合が消失したし、蛍光は、細胞の内側で検出されるが(
図3B)、これは、内在化が起き、33B7が内在化性抗体であることを示している。現段階では、このCSPに対する他の内在化性抗体は開発されていなかったので、33B7抗体がファースト・イン・クラスであることも確認された。
【0172】
[実施例5:33B7-ADCの開発]
33B7は内在化性抗体であるので、例示的な33B7-ADCを、リンカーを介して33B7を一般的細胞傷害性薬物であるサポリンにコンジュゲートすることによって開発した。本発明者らの研究において使用したサポリンは、概念実証研究及び効力研究のためのADCにおいて、コンジュゲートするペイロードとして慣用的に使用されている。サポリンは、細胞の内側に透過しない限り細胞傷害性ではないが、それ自体では非常に低い透過性を有し、細胞に進入し細胞増殖を阻害するために、内在化性抗体にコンジュゲートされることによって、ペイロードとして送達される必要がある。これは、ADC開発において使用される多くの有効な薬物と類似しており、抗体は、ADCの主な実効化構成要素と考えられている。サポリンは、切断可能なリンカーを介して33B7に化学的にコンジュゲートされ、およそ2の薬物抗体比(DAR)を達成した。
【0173】
[実施例6:33B7-ADC内在化]
ADC概念実証として、33B7を、サポリンにコンジュゲートし、PTGFRNを発現するがん細胞のパネルに対して試験した。試験される細胞を、標準的な血清含有培地中に1ウェル当たり2,000細胞から5,000細胞まで変動する密度で、96ウェルプレート中にプレートした。24時間後、0.1nMから10nMまで変動する濃度のADCを、細胞に添加した。72時間後、細胞を収集し、市販の化学発光細胞生存率アッセイ(Promega Corporation、Madison、WI)を使用して増殖/生存率を測定した。
【0174】
本発明者らの初期の研究は、ADCがPTGFRN陽性細胞に細胞傷害性薬物を送達できるかどうか、及びそのような細胞の増殖を阻害できるかどうかを決定することに焦点を当てていた。本研究(
図4)のために、本発明者らは、PTGFRNについて陰性の細胞を使用し、これらを、空のpcDN 3.1ベクター(白色の棒1及び2)若しくは哺乳動物発現ベクターpcDNA 3.1にライゲートされたPTGFRN cDNA(灰色の棒3及び4)のいずれかでトランスフェクトしたか、又はPTGFRNについて天然に陽性のがん細胞を使用した(黒色の棒5及び6)。棒1、3及び5では、本発明者らは、サポリンにコンジュゲートした対照IgG ADCを10nMで使用したが、棒2、4及び6の処置は、10nMの33B7-ADCからなった。
図4で観察できるように、33B7-ADCは、高いパーセンテージのPTGFRN陽性細胞(約65%)を阻害したが、PTGFRN陰性細胞に対しては効果を有さなかった。対照IgGは、サポリンを細胞の内側に送達せず、従って、いずれの細胞においても効果を生じなかった。
【0175】
[実施例7:33B7-ADCの抗がん活性]
33B7-ADCが異なるがんを阻害する能力(
図5)を調査した。再度、本発明者らは、試験として33B7-ADC(赤色の棒)を使用し、対照としてIgG ADC(青色の棒)を使用した。
図5は、(1)PTGFRN陰性対照細胞株、(2)ハムスター紡錘癌腫細胞株、(3)髄芽腫癌腫細胞株、及び(4)中皮腫細胞株を示す棒グラフである。細胞株2、3及び4は全て、ヌードマウスにおいて異種移植片として使用した場合、腫瘍を生じることが示されている。さらに、本発明者らは、各細胞株において10nMの遊離サポリンを使用し、遊離サポリンがこれらの細胞株において阻害効果を有さないことを実証した(データ示さず)。
図5で観察できるように、対照抗体ADC(mIgG-ADC)は、いずれの細胞株に対しても効果を有さなかったが、33B7-ADCは、癌腫細胞株から、65%と90%との間の細胞生存率を阻害したが、いずれのPTGFRN陰性対照細胞も阻害しなかった。
【0176】
さらなる細胞株を上記のように試験した。これらの研究の結果を、以下の表1にまとめる。
【0177】
【0178】
異なるがん細胞株を用いたデータは、33B7に結合し、33B7-ADCによって死滅させられる種々のがん細胞型が存在することを示している。33B7に結合する能力は、ADCに対して応答する細胞の能力を決定するための優れたガイドである。正常腎臓上皮細胞Hek293細胞は、33B7結合及びADC媒介性の死滅について陰性であった。ER+乳癌細胞は、弱く陽性であったが、髄芽腫及びSCSC細胞は、強く陽性であった。SCSCを除き、全ての他の細胞株が、ヒト起源である。
【0179】
[実施例8:33B7はPTGFRNに結合する]
さらなる証拠として、33B7結合について主に陰性である乳癌細胞(MCF-7)(
図2を参照のこと)は、33B7-ADCに対して応答しない。しかし、PTGFRN cDNAがMFC-7細胞中にトランスフェクトされると、トランスフェクトされた細胞は、33B7に結合できるだけでなく(
図6A)、33B7-ADCに対して応答できる(
図6B)。従って、細胞への33B7の結合は、33B7-ADCに対して応答性である細胞を同定するために使用することができる。
【0180】
図6Aは、空のベクター(EV)及びPTGFRNでトランスフェクトされたMCF-7細胞への33B7の、フローベースの結合アッセイの結果を示す棒グラフである。
図6Bは、33B7-ADC、又は陰性対照としてのmIg-ADCで処理された、空のベクター(EV)又はPTGFRN cDNA(PTGFRN)でトランスフェクトされたMCF-7細胞に対する33B7-ADC阻害アッセイの結果を示す棒グラフである。
【0181】
[実施例9:33B7-ADCの用量応答]
本発明者らは、33B7-ADCの用量依存的効果が存在し得るかどうかを決定するために、33B7-ADCの用量バリエーションの影響を試験した。高レベルの33B7結合を発現する紡錘細胞癌細胞株(SCSC)(
図2)を使用して、本発明者らは、(1)10nMの対照IgG ADC、並びに(2)0.1nM、(3)1.0nM、(4)3nM、及び(5)10nMの33B7-ADCで、細胞を処理した。決定できるように(
図7)、細胞生存率に対する33B7-ADCの用量応答効果が存在するように見える。試験したほとんどの細胞株では、33B7-ADCを10nMで使用した。
【0182】
in vitro細胞アッセイにより、(1)10nMの、サポリンにコンジュゲートされた33B7が、PTGFRNを発現し33B7に結合する細胞を阻害できたが、天然の又はトランスフェクトされた非PTGFRN発現細胞に対しても33B7に結合しない細胞に対しても効果を有さなかったこと、(2)33B7-ADCが、いくつかのがんに対して活性であること、及び(3)細胞に対する効果が用量依存的であること、が実証された。
【0183】
[実施例10:33B7-ADCのin vivo腫瘍阻害活性]
33B7-ADCがin vitro研究を使用してPTGFRN陽性細胞において有効であるという事実が確立されたので、本発明者らは、次いで、in vivoマウス異種移植片研究を使用して33B7-ADCの効果を調査した。
【0184】
以下の研究を、ヌードマウスにおいてがん異種移植片を樹立するための十分に報告されたプロトコール及び証明された方法論を使用して、本発明者らの実験室において確立した。全ての異種移植片研究は、研究対象の細胞5×106を皮下(s.c.)注射した雌性胸腺欠損ヌードマウスを使用した。全ての場合において、腫瘍を、マウスを種々の実験群(6マウス/群)へとランダム化する前に、~100mm3まで成長させた。33B7-ADC又はビヒクル対照を、10μg/マウス(0.5mg/kg)で毎週i.v投与した。腫瘍寸法を測定して、各時点における腫瘍体積(Vt)をmm3で決定した。各時点における腫瘍体積増加を、ランダム化の時点での腫瘍体積をVoとして、Vt/Vo比によって決定した。
【0185】
研究は、以下の異種移植片を使用した:(1)紡錘細胞癌(
図8)、(2)髄芽腫(
図9)、及び(3)中皮腫(
図10)。グラフから観察されるように、各場合において、33B7-ADCは、対照と比較して、少なくとも50%の腫瘍成長阻害を示した。
【0186】
[実施例11:抗体コンジュゲートのさらなる調査]
本発明者らは、28日間にわたって1週間に1回、33B7-ADC(10μg/マウス)を>6匹のマウスに注射し、それらを、ビヒクル対照を注射したマウスと比較した。本発明者らは、マウスの毎日のモニタリングによって、毒性の顕性の/肉眼的な徴候/切迫した病的状態又は死亡の徴候/明らかな不快感、毛の乱れ(coat roughing)、体重減少、食物/水の摂取における低減、眼の状態などのいずれも観察しなかった。本発明者らの研究におけるマウスのこの毎日の観察は、本発明者らのInstitutional Animal Care and Use Committee (IACUC) Certificationの下で義務付けられている。研究後の剖検では、正常臓器と比較した場合、33B7-ADC処置した動物において、主要臓器における肉眼的異常も変化も示されなかった。
【0187】
異種移植片保有ヌードマウスにおける処置として33B7-ADCを使用して、本発明者らは、33B7 ADCが用量又は処置スケジュールのために最適化されていない場合であっても、試験した全ての異種移植片において>50%の腫瘍成長阻害を実証した。サポリンがこれらの研究において使用され、効力を示すが、本発明者らは、より強力な薬物であればかなりより高い効力を有すると完全に予測する。本開示の抗体にコンジュゲートされ得る適切な細胞傷害性試薬の例には、モノメチルアウリスタチンE、モノメチルアウリスタチンF、マイタンシノイドDM1、マイタンシノイドDM4、カリケアマイシン、オゾガマイシン、α-アマニチン、イットリウム-90及びヨウ素-131が含まれるがこれらに限定されない。
【0188】
[実施例12:33B7抗体の配列]
33B7の軽鎖及び重鎖の可変領域のヌクレオチド配列及び推定されたアミノ酸配列を決定した。33B7ハイブリドーマ由来のmRNAを、Trizol抽出によって取得した。第1鎖cDNA合成を、Sensiscript逆転写酵素及びユニバーサルプライマーセットを用いたRT-PCRによって実施した。マウスIgGプライマーセットを含む市販のキット(EMD Millipore、Billerica、MA)を製造業者の指示に従って使用して、33B7の軽鎖及び重鎖のcDNAを増幅した。PCR産物を、1%アガロースゲル電気泳動で泳動し、その後エチジウムブロマイド染色した。vH及びvLに対応するバンドを切り出し、QiagenゲルDNA抽出キットを用いて抽出した。vH DNA及びvL DNAを、topoクローニングし、LBアンピシリンプレート上にプレートし、いくつかのクローンをピックアップし、成長させ、EcoRI制限酵素消化後に分析して、挿入物の存在及びバンドのサイズを検証した。13個のクローンを配列決定に送付して、vH及びvLのヌクレオチド配列を取得した。
【0189】
【0190】
33B7の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列は、
である。
【0191】
軽鎖可変領域(vL)CDR1、CDR2及びCDR3に二重下線を付す。より具体的には、33B7のvL-CDR1、vL-CDR2及びvL-CDR3配列は、それぞれ配列番号5、6及び7に示される。
【0192】
【0193】
【0194】
重鎖可変領域(vH)CDR1、CDR2及びCDR3に二重下線を付す。より具体的には、33B7のvH-CDR1、vH-CDR2及びvH-CDR3配列は、それぞれ配列番号8、9及び10に示される。
【0195】
[実施例13:抗ヒトPTGFRN抗体の開発]
ヒトPTGFRN-ECD(細胞外ドメイン;アミノ酸26から832におけるアミノ酸Yまで)を合成し、His-タグタンパク質としてpcDNA 3.1発現ベクター中にクローニングし、Hek-293細胞において一過的に発現させ、ニッケルカラムによって精製した。タンパク質を、アジュバントを用いて調製し、マウスを免疫するための抗原として使用した。「Hek-293 PTGクローン3」と呼ぶ、pcDNA 3.1中のPTGFRN cDNAのトランスフェクションによってPTGFRNを過剰発現するHek-293細胞を、スクリーニングに使用した。陰性細胞は、Hek-293細胞である。
【0196】
PTGFRN陽性細胞と陰性細胞との間でのフロー結合アッセイによってマウス血清の力価をチェックした後、リンパ節及び脾臓から収集したB細胞を、骨髄腫HL-1細胞と融合させた。ハイブリドーマを、メトセル中への単回のクローニングによって直接選択した。クローンをピックアップし、96ウェルプレート中に移した。ハイブリドーマクローンを、以下に提供するフロー結合アッセイプロトコールを使用して、Hek-293 PTGクローン3細胞に結合すること、及びHek293細胞に結合しないことによって、最初にスクリーニングした。
【0197】
簡潔に述べると、細胞を5mMのEDTA-PBSで剥離させ、DMEM中1%のFBS中に再懸濁する。次に、96ウェルV底プレート中に4×105細胞/100μl/ウェルで細胞をプレートする。第1のAb mIgG又は精製された抗H-PTGFRNを、100μl/ウェルで添加する。4℃で1時間インキュベートする。第1のAbについての最終濃度は、0.1、1、2、5、10、20から40μg/mlまで変動し得る。第2のAb Alexa488-G抗M IgG(Invitrogenカタログ番号A11029)を10ug/mlで調製する。細胞をスピンダウンし、1×PBS 200μl/ウェルで1回洗浄する。第2のAbを100μl/ウェルで添加する。4℃で1時間インキュベートする。冷PBS 200μl/ウェルで2回洗浄する。細胞を100μl/ウェルで再懸濁し、FACS分析を実施する。IntelliCyt(登録商標)フローリーダーを用いて読み取る。
【0198】
このアッセイを、初回及び確認ハイブリドーマ選択に使用した。
【0199】
クローンを、96ウェルプレートからピックアップし、48ウェルプレート上に移した。上清を、初回スクリーニングに使用したものと同じフロー結合スクリーニングアッセイを用いた確認スクリーニングのためにアッセイした。確認スクリーニングによる全ての陽性クローンを、拡大増殖し、凍結保存し、以後のスクリーニングのために培養した。
【0200】
次いで、ピックアップしたクローンを、拡大増殖し、凍結保存し、蛍光色素を使用する内在化アッセイによってさらに選択し、その後、FAB-ZAPを使用する間接的ADCによる死滅アッセイを実施した。両方のアッセイを、Hek293 PTGクローン3細胞株を用いて実施した。
【0201】
選択されたハイブリドーマを、拡大増殖及び凍結保存し、抗体を、以下の実施例に提供されるように、天然の細胞株に対するさらなる分析のために精製した。
【0202】
[実施例14:スクリーニングのためのヒトPTGFRNを過剰発現する安定なHEK293細胞株の開発]
およそ1000個のハイブリドーマクローンを、フロー分析を使用してスクリーニングした。PTGFRN陽性細胞への91個のハイブリドーマ(又は抗体)結合が同定され、細胞表面結合(CSB)クローンと命名した。内在化性CSB陽性クローン(CSB-INT)を、フローベースの内在化スクリーニングを使用して同定した。
【0203】
簡潔に述べると、内在化アッセイは、指示マニュアルに従って、Promega(Madison、WI)のpHAb色素を使用する。pHAbセンサー色素は、pH7では低い蛍光を有し、抗体が内在化する場合には、pHが酸性になるに従って、蛍光が劇的に増加する。pHAb色素は、アミン型コンジュゲーションによって抗体を標識するように設計されている。このアッセイを使用して、内在化性抗PTGFRN抗体を分泌する75個のハイブリドーマを選択した。
【0204】
次いで、pHAb色素アッセイによって内在化されることが示された抗体を、間接的ADCアッセイによって、PTGFRN陽性細胞を死滅させるそれらの能力について試験し、このとき、試験するための一次抗体は、それ自体では細胞不透過性であり細胞の内側にある場合にのみ細胞傷害性である細胞傷害性化合物であるサポリンにコンジュゲートされたヤギ抗マウス抗体のFAB断片からなるFAB-ZAPと混合される。抗体が内在化されると、FAB-ZAPは細胞の内側に入り、サポリンは、その細胞傷害効果を発揮する。4℃でのPTGFRN陽性細胞の表面上の4F4の細胞表面結合の内在化及び37℃での内在化を示す例示的な免疫蛍光画像が、それぞれ
図11A及び
図11Bに示される。
【0205】
興味深いことに、17個の抗体がPTGFRNに対して特異的であり、内在化するが、33B7とは競合せず、これは、PTGFRN上の1つよりも多くのエピトープが、治療標的、診断標的又はイメージング標的として有用であり得ることを示唆している。スクリーニング結果のまとめは、以下の表2に提供される。
【0206】
【0207】
例示的な抗体の重鎖及び軽鎖可変領域CDR(VH-CDR及びVL-CDR)のアミノ酸配列は、表3に提供される。
【0208】
【0209】
例示的な抗体の重鎖及び軽鎖可変領域(それぞれVH及びVL)のアミノ酸配列は、表4に提供される。CDR配列は太字であり、灰色で強調される。
【0210】
【0211】
例示的な抗体のVH/VLのcDNA配列は、表5に提供される。
【0212】
【0213】
[実施例15:抗PTGFRN抗体の細胞結合]
Hek-293 #3は、PTGFRN cDNAで安定にトランスフェクトされた陽性細胞株である。33B7及び4F4は、Hek-293 PTGクローン#3(表6中でHEK-PTG#3として示される)細胞に有意に結合する。ヒトがん細胞は、これら2つのAbに対して異なる結合親和性を示す。さらに、4F4は、様々な結合効力で異なる細胞株に結合する。結果を表6にまとめる。
【0214】
【0215】
種々の細胞株へのさらなる抗PTGFRN抗体の結合は、
図12A~12Dに示される。
【0216】
[実施例16:細胞死滅アッセイ]
CSB-INT陽性クローンを、過剰発現性の又は天然のがん細胞株に対する間接的ADCを使用する死滅アッセイによってスクリーニングした。例示的なプロトコールは以下に提供される。
【0217】
死滅アッセイプロトコール:
1. 抗体を調製する:各ウェル中の最終濃度は、1nMである。2.5nM(0.375μg/ml)の抗体ストック溶液を、培養培地(DMEM+10%FBS)を用いて調製し、40μl/ウェルに十分なAb溶液を調製する。mIgG(ストック中6.9mg/ml)を、対照として使用する。
【0218】
抗H-PTGFRN mAb:7B4(95.8ug/ml、ロット112217)、精製された4F4(0.94ug/ul、ロット030818)、1B4(120ug/ml、ロット112217)、1E2(107ug/ml、ロット112217)、9A9(49.6ug/ml、ロット112217)、9B11(7.8ug/ml、ロット112217)、10D9(120ug/ml、ロット112217)、10E6(118ug/ml、ロット112217)、3E10(120ug/ml、ロット112217)、及び6F6(30.4ug/ml、ロット112217)。抗H-ICAM mAb:5E11(24.4ug/ml、ロット112617)。
【0219】
2. Fab-ZAPを調製する:各ウェル中の最終濃度は、9nMである。4.5ug/mlのストック溶液を、培養培地(DMEM+10%FBS)を用いて20μl/ウェルで調製する。Fab-ZAPマウスは、例えば、Advanced Targeting Systems(カタログ番号IT-48ロット番号130-10)から入手可能である。Fab-ZAPマウスの濃度は、1.9mg/mlであり、合計で100ugである。Fab-ZAPマウスを、5μl/チューブにアリコート化し、-20℃の冷凍庫で貯蔵する。
【0220】
3. 96ウェル平底プレート上に、40μl/ウェルのAb及び20μl/ウェルのFab-ZAPを添加し、よく混合し、室温(RT)に置く。
【0221】
4. 細胞を調製する:細胞を5mMのEDTAで剥離させ、細胞を培養培地中に再懸濁し、細胞数を計数し、プレート上に2000細胞/40μl/ウェルを播種する。
【0222】
5. 細胞を培養し、細胞を毎日チェックする。生存率における差異は、2日目に見え始め得る。3日目に、アッセイを停止して、CellTiter-Glo(登録商標)(Promega、Madison、WI)を用いて細胞生存率をチェックする。
【0223】
6. 3日目に、プレートから培地を除去する。調製したCell-glo溶液(培地で1:10希釈したCell-glo)150μl/ウェルを添加し、混合し、RTで10分間インキュベートする。90μl/ウェルをCostar(登録商標)白色プレートに移し、SoftMax Pro6.3(Molecular Devices、LLC、San Jose、CA)を使用して600nmで吸光度を読み取る。
【0224】
死滅アッセイにおいてPTGFRNを過剰発現するHEK細胞(HEK-293 PTGクローン3)を使用することは、PTGFRNを天然に発現するがん細胞株を用いた死滅アッセイにおいて同じ抗体を使用する場合に見られる応答のグラデーションをマスクする。例示的な結果は
図13Aに示される。死滅アッセイによって選択された内在化性抗体を精製し、天然のがん細胞に対して試験した。天然の細胞株は、33B7と比較して、新たな抗体の高い効力を強調する。例示的な結果は、
図13B及び13Cに示される。ヒト髄芽腫DAOY細胞に対する抗体4F4の用量応答は、
図14Aに示される。4F4は、0.03nMの低い用量で有効である。さらに、DAOY細胞に対する種々の抗PTGFRN抗体の効果は、
図14Bに示される。50%生存率を示す上の線を、カットポイント(cut point)として使用する。即ち、少なくとも50%の細胞を死滅させることができない任意の抗体は、要件に満たないと考えた。下の線は、4F4効力レベルを示す。4F4-1及び4F4-2は、同じ抗体の異なる調製物である。内在化性ではないがPTGFRN特異的抗体である9G8、及びmIgG(マウスIgG)を、陰性対照として使用した。一貫性を示すために、アッセイは反復されている。4F4に加えて、9つの抗体が、死滅アッセイにおいて良好な候補として同定された。3つの抗体(3E10、7C8及び10D9)は、4F4のものと類似の、DAOY細胞の死滅を有する。さらに、A431細胞株及びMSTO細胞株に対する抗体4F4の用量応答が、
図14C及び
図14Dに示される。4F4は、A431細胞及びMSTO細胞に対して、それぞれ0.03nM及び0.06nMのEC50を有する。33B7のEC50は、1nMと10nMとの間である(データ示さず)。従って、このデータは、4F4がそのEC50において33B7よりも優れているだけでなく、種々のがん型に由来する細胞、例えば、肺、前立腺及び卵巣がん細胞株を死滅させるその能力においても33B7よりも優れていることを実証している。さらに、
図14Eは、0.03nM及び0.3nMの濃度における、A431細胞株に対する抗PTGFRN mAb 4F4、1E2、2B12、3E10及び10D9の細胞死滅効力を比較する。観察できるように、4F4に加えて、他の抗PTGFRN mAb、特に3E10もまた、低ナノモル濃度で細胞死滅において有効である。
【0225】
[実施例17:PTGFRN抗体を用いたIHCアッセイの開発]
腫瘍細胞上のPTGFRNを検出する能力は、その腫瘍が抗PTGFRN処置、特に抗PTGFRN ADC処置に対して応答する患者を同定するための良好な指標であり得る。従って、抗PTGFRN抗体を、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍組織においてPTGFRNタンパク質を検出するそれらの能力について調査した。Hek PTGクローン3又はA431ヒト類表皮癌細胞を陽性対照細胞として使用し、Hek293細胞を陰性対照として使用した。例示的な陰性及び陽性染色スライドが、それぞれ
図15A及び15Bに示される。
【0226】
免疫組織化学(IHC)のための抗体の選択を、サイトスピンで陽性細胞及び陰性細胞を用いて最初に実施し、その後、FFPE中に固定及び包埋した細胞ペレットから切片化した。次いで、これらの抗体を、腫瘍組織(組織マイクロアレイ)に対してアッセイした。いくつかの抗体を、IHCでの使用のために適格とした。1B4抗体による中皮腫腫瘍におけるPTGFRNの例示的なIHC染色は、
図15Cに示される。
【0227】
IHC染色プロトコールは、本明細書で提供される。簡潔に述べると、キシレン中にパラフィンを溶解させ、100% EtOH(3回、各3分間)、95% EtOH(3回、各3分間)及び水で再水和する。抗原を、95℃で賦活化し、PBS中5mg/mLのBSAでブロッキングする(RTで30分間)。BSA-PBS溶液中0.5μg/mLで、一次抗体、例えば、1B4と共に、RTで30分間インキュベートする。次いで、PBS-Tで3回、毎回4分間洗浄する。1.5%のH2O2を、内因性ペルオキシダーゼをブロックするために使用する。スライド1つ当たり1滴の抗マウスIgG HRP-ポリマー(例えば、Vector Laboratories, Inc.、Burlingame、CA製)と共にRTで30分間インキュベートし、その後、PBS-Tで3回、毎回4分間洗浄する。ImmPACT(商標)発色基質(Vector Laboratories, Inc.)と共に10分間インキュベートし、H2Oで1分間洗浄する。スライドを完全に乾燥させる。次いで、マウントし、次のステップに進む。
【0228】
[実施例18:がん細胞上のPTGFRN結合部位の決定]
QIFIKIT(キャリブレーションパネル、
図16A)を使用して、DAOY細胞株上のPTGFRN抗原(Ag)発現を調査した。DAOY細胞と共に4F4(10μg/ml)(右側のピーク)を使用したヒストグラム(
図16B)は、33B7を使用した2.5×10
3と比較して、その65倍の改善である、>10
5のAg/細胞を示す(
図16C)。異なる細胞株と共に同じ系で4F4を使用することで、いくつかのがんが、ADC標的として注意を引きつけるのに十分なレベルのPTGFRNタンパク質を発現することが示されている。まとめは表7に示される。
【0229】
【0230】
示されるように、PTGFRNは、頭頸部、肺、前立腺及び卵巣がん中に存在し、抗がん治療のための注目の標的である。本明細書で開発した複数のIgG1及びIgG2 PTGFRN抗体は、ウエスタンブロット及びIHCが可能である。これらは、内在化性又は非内在化性のいずれかである。これらの抗体は、処置のために患者を同定するためのin vitro診断アッセイ若しくはキット、腫瘍部位を同定するためのin vivoのイメージング可能な診断アッセイ若しくはキット、及び/又はがんを選択的に処置するための新薬の開発につながるような抗体若しくは抗体-薬物コンジュゲートにおいて使用される能力を実証している。
【0231】
DAOY細胞の>50%を死滅させた44個の抗体のうち、10個の候補を選択し、いくつかのがん細胞株を用いて結合及び死滅効力について評価した。フローアッセイ及び死滅アッセイによって試験した細胞株には、PC-3(前立腺去勢耐性)、MSTO 211H(中皮腫)、DAOY(髄芽腫)、A431(類表皮癌)、TOV21G(卵巣明細胞)、NCI-H520(肺がん)、FaDu(頭頸部咽頭)及びMDA 231(三重陰性乳房)が含まれる。
【0232】
[実施例19:がん細胞株に対する選択された抗PTGFRN抗体の細胞死滅活性]
選択された抗PTGFRN抗体を、細胞死滅活性について、いくつかのヒトがん細胞株に対して試験した。MDA231がPTGFRN陰性であり、陰性対照として機能したことを除いて、全ての候補が、試験した種々の細胞株に対して異なるレベルの死滅を示した。これらの結果は、
図17A及び17Bに示される。例えば、抗体4F4(IgG2)及び3E10(IgG1)は、死滅のレベル、及び死滅に対して感受性である異なるがんの数の両方において、好ましい活性を示す。種々のがん細胞株に対する4F4 mAbフロー結合及び死滅アッセイの結果を、表8にまとめる。
【0233】
【0234】
[実施例20:抗PTGFRN MABのOctetベースの結合特徴]
抗体のスカウト/親和性ベースの抗体ランキングを実施して、forteBio Octet Red96(ForteBio、Menlo Park、CA)でAMCセンサーを使用して、選択された抗PTGFRN mAbのオン/オフレート(on/off rate)及びKDランキングを決定した。PTGFRN-ECD、100nMを分析物として使用した。評価した抗体の運動速度及び平衡結合定数を、表9にまとめる。13個の候補が、33B7と比較して改善された親和性を有する。9G8は、内在化されないことが見出され、9D8はあまり内在化されないことが見出された。4F4は、33B7よりも、およそ1000倍良好な親和性(KD)及び増加した結合活性(応答)を有する。12個の抗体が、4F4と類似のKDを有する。
【0235】
【0236】
さらに、Octet Red96からのエピトープビニング/ペアリングデータに基づくPTGFRN-ECDを用いた15個のAbのペアリング分析(ビニングマトリックス、
図18)は、これら15個の抗体が、以下のような4つのエピトープビンにグループ分けできることを示している:ビン番号1:10D9、2B12、7C8、7B4、9A9、9G8;ビン番号2:1B4、3E10、6F6、9B11、4F4、33B7;ビン番号3:1E2;及びビン番号4:10E6。各ビンは、別個のエピトープを反映する。4F4抗体及び33B7抗体は共に、同じエピトープを認識する。
【0237】
結論として、33B7抗体は、ハムスター紡錘細胞癌に対して効果を有し、フローによる結合及び間接的ADCによる細胞死滅活性が示された。実施例7、9及び10を参照のこと。しかし、ヒトがん細胞株では、フローアッセイは、三重増幅を用いた場合であっても、33B7との細胞表面結合をほとんど示さなかった。さらに、33B7をサポリンに直接コンジュゲートし、10nMで添加した場合に、死滅効果が観察でき、これは、マウス異種移植片モデルに対するin vivo研究によっても実証された。33B7-ADCがハムスター紡錘細胞癌に加えて活性を示した細胞は、A431ヒト類表皮癌及びMSTO-211Hヒト二相型中皮腫であった。
【0238】
従って、抗ヒトPTGFRN mAbが、フロー結合アッセイによって、多くのがん細胞株に有意に結合できることを示したのは、予想外である。さらに、内在化性抗体が、0.3nMの低い濃度で、最適な効果で、FAB-ZAPと共に間接的ADCを使用して多くのがん細胞株を死滅させることができること、特に、これらのmAbの一部が33B7と同じエピトープビンにグループ分けされることは、予想外である。この濃度は、死滅効果を有する直接的33B7-ADCの濃度の30分の1以下である。
【0239】
さらに、組換えPTGFRNを用いたOctetビニングアッセイは、これらの抗体が、それらのエピトープ認識に基づいて4つの群に分類され得ることを示しており、一部の抗体は、33B7と共有されたエピトープを有し、一部の抗体は、33B7とは異なるエピトープを有する。
【0240】
概要及び要約のセクションではなく詳細な説明のセクションが、特許請求の範囲を解釈するために使用される意図であることを理解すべきである。概要及び要約のセクションは、本発明者らが企図する本開示の全てではないが1つ以上の例示的な実施形態を示し、従って、本開示及び添付の特許請求の範囲を制限することを決して意図しない。
【0241】
本開示は、特定された機能及びその関連性の遂行を示す機能的構成単位の助けを借りて、上に記載されてきた。これらの機能的構成単位の境界は、記載を簡便にするために、本明細書で任意に定義してきた。特定された機能及びその関連性が適切に実施される限り、代替的境界を定義することができる。
【0242】
このように、具体的な実施形態の上述の記載は、過度の実験なしに、本開示の一般概念から逸脱することなしに、当業者の技術範囲内の知識を適用することによって、他者がそのような具体的な実施形態を種々の用途のために容易に改変及び/又は適応させることができるという、本開示の一般的性質を完全に明らかにするであろう。従って、そのような適応及び改変は、本明細書に提示された教示及びガイダンスに基づいて、開示された実施形態の等価物の意味及び範囲の内であることが意図される。本明細書の言葉遣い又は用語法が、これらの教示及びガイダンスに照らして当業者によって解釈されるように、本明細書の言葉遣い又は用語法は、記載目的のためであって、限定目的ではないことを理解すべきである。
【0243】
本開示の幅及び範囲は、上記例示的な実施形態のいずれによっても限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲及びそれらの等価物のみに従って定義されるべきである。
【配列表】