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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】脱硝触媒研磨装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 38/00 20060101AFI20240826BHJP
   B01J 35/57 20240101ALI20240826BHJP
   B01D 53/96 20060101ALI20240826BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
B01J38/00 A ZAB
B01J35/57 J
B01D53/96 500
B01D53/86 222
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020535149
(86)(22)【出願日】2020-02-28
(86)【国際出願番号】 JP2020008548
(87)【国際公開番号】W WO2021171628
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】392026073
【氏名又は名称】ハシダ技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】吉河 敏和
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和広
(72)【発明者】
【氏名】盛田 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 亨浩
(72)【発明者】
【氏名】伊田 展充
(72)【発明者】
【氏名】坂本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】日高 広大
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/155628(WO,A1)
【文献】特開2011-104581(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2004-0042667(KR,A)
【文献】特開平04-200642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
B01D 53/86-53/90,53/94-53/96
B24C 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延びる複数の貫通孔が設けられた脱硝触媒の前記貫通孔に、空気と共に研磨材を流通させて、前記貫通孔の内面を研磨する脱硝触媒研磨装置であって、
前記脱硝触媒は、前記貫通孔の流路方向が水平面に対して略垂直になるように配置され、
前記研磨材は、前記貫通孔の下方から上方に向けて流通し、
前記脱硝触媒の下流側に配置され、空気と共に前記研磨を吸引する吸引部と、
前記脱硝触媒の上流側に配置され、上流側端部に開口部が設けられ垂直方向に延びる流路を有する流入路と、
前記開口部の下方に配置され、前記研磨を貯留する貯留部と、を有し、
前記貯留部は、前記研磨材が滞留する滞留部と、前記滞留部に向けて下方に傾斜する傾斜部と、を有し、
前記滞留部は、前記開口部の真下に配置される、脱硝触媒研磨装置。
【請求項2】
前記脱硝触媒を研磨後の研磨と、被研磨物とを分離する分級部を備え、
前記分級部は、前記貯留部よりも高い位置に配置され、
前記分級部により分離された前記研磨材は、前記貯留部に供給される、請求項に記載の脱硝触媒研磨装置。
【請求項3】
前記流入路は、上流側端部に開口部が設けられる吸入路と、前記脱硝触媒と連結される上流側固定部材と、を含み、
前記吸入路の流路横断面積は、前記上流側固定部材の流路横断面積よりも小さい、請求項1又は2に記載の脱硝触媒研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱硝触媒を研磨する、脱硝触媒研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所では、石炭燃焼に伴い窒素酸化物が発生する。環境保全のため、窒素酸化物の排出量は一定水準以下に抑える必要がある。このため、火力発電所には窒素酸化物を還元するための脱硝触媒が充てんされた脱硝装置が設置されている。脱硝触媒は、使用の継続に伴い性能が低下する。性能の低下した脱硝触媒を再生する技術の一つとして研磨再生が挙げられる。研磨再生は、性能の低下した脱硝触媒の表面を研磨することで、触媒性能を回復させる技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2014/155628号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、研磨材(研削材)と気体との混合物を脱硝触媒の貫通孔に通過させて、貫通孔の内壁を研削する脱硝触媒の再生方法に関する技術が開示されている。脱硝触媒からなる被研削部材の一端部には、当該被研削部材の断面積より大きな断面積の拡開部を具備する上流固定部材が連結される。当該拡開部には、スクリーン部材が配置される。このような拡開部内で、研磨材と気体との混合物は流速が低下されると共に分散され、貫通孔の内壁の均一な研削が可能となる。
【0005】
特許文献1に開示された技術は、研磨材と気体との混合物が、屈曲部を有する上流側連結部材を介して脱硝触媒の貫通孔に流入する。従って、研磨材の分布に偏りが生じやすく、研磨材と気体とを混合する混合部や、長い流路を有する上流固定部材を用いて、研磨剤を気体と均一に混合させる必要があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、脱硝触媒に流入する研磨材の分布に偏りが生じにくく、脱硝触媒を均一に研磨できる脱硝触媒研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、長手方向に延びる複数の貫通孔が設けられた脱硝触媒の前記貫通孔に、空気と共に研磨材を流通させて、前記貫通孔の内面を研磨する脱硝触媒研磨装置であって、前記脱硝触媒は、前記貫通孔の流路方向が水平面に対して略垂直になるように配置され、前記研磨材は、前記貫通孔の下方から上方に向けて流通し、前記脱硝触媒の下流側に配置され、空気と共に研磨剤を吸引する吸引部と、前記脱硝触媒の上流側に配置され、上流側端部に開口部が設けられ垂直方向に延びる流路を有する流入路と、前記開口部の下方に配置され、研磨剤を貯留する貯留部と、を有する脱硝触媒研磨装置に関する。
【0008】
前記貯留部は、研磨材が滞留する滞留部と、前記滞留部に向けて下方に傾斜する傾斜部と、を有し、前記滞留部は、前記開口部の真下に配置されることが好ましい。
【0009】
前記脱硝触媒を研磨後の研磨剤と、被研磨物とを分離する分級部を備え、前記分級部は、前記貯留部よりも高い位置に配置され、前記分級部により分離された前記研磨材は、前記貯留部に供給されることが好ましい。
【0010】
前記流入路は、上流側端部に開口部が設けられる吸入路と、前記脱硝触媒と連結される上流側固定部材と、を含み、前記吸入路の流路横断面積は、前記上流側固定部材の流路横断面積よりも小さいことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、脱硝触媒に流入する研磨材の分布に偏りが生じにくく、脱硝触媒を均一に研磨できる脱硝触媒研磨装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る脱硝触媒が使用される火力発電設備の構成図である。
図2】火力発電設備における脱硝装置の構成例を示す図である。
図3】本実施形態に係る脱硝触媒研磨装置の概略構成図である。
図4】第一実施形態に係る脱硝触媒研磨装置の要部拡大図である。
図5】第二実施形態に係る脱硝触媒研磨装置の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の実施形態に係る脱硝触媒研磨装置の被研磨対象である脱硝触媒は、例えば、以下説明する石炭火力発電設備100で一定期間使用され、性能の低下した脱硝触媒Cである。
【0014】
[石炭火力発電設備]
図1に示すように、石炭火力発電設備100は、石炭バンカ110と、給炭機115と、微粉炭機120と、微粉炭供給管130と、燃焼ボイラ140と、燃焼ボイラ140の下流側に設けられる排気通路150と、この排気通路150に設けられる脱硝装置160、空気予熱器170、熱回収用ガスヒータ180、電気集塵装置190、誘引通風機210、湿式脱硫装置220、再加熱用ガスヒータ230、脱硫通風機240、及び煙突250と、を備える。
【0015】
石炭バンカ110は、図示しない石炭サイロから運炭設備により供給される石炭を貯蔵する。給炭機115は、石炭バンカ110から供給される石炭を所定の供給スピードで微粉炭機120に供給する。
微粉炭機120は、給炭機115から供給された石炭を平均粒径60μm~80μmに粉砕して微粉炭を製造する。微粉炭機120としては、ローラミル、チューブミル、ボーラミル、ビータミル、インペラーミル等が用いられる。
【0016】
燃焼ボイラ140は、微粉炭供給管微粉炭機130から供給された微粉炭を、強制的に供給された空気と共に微粉炭バーナbにより燃焼する。微粉炭を燃焼することによりクリンカアッシュ及びフライアッシュなどの石炭灰が生成されると共に、排ガスが発生する。クリンカアッシュとは、石炭灰のうち、燃焼ボイラ140の底部に落下する塊状の石炭灰をいう。フライアッシュとは、石炭灰のうち、排ガスと共に排気通路150側に流通する、粒径の小さい(粒径200μm程度以下)の石炭灰をいう。
排気通路150は、燃焼ボイラ140の下流側に配置され、燃焼ボイラ140で発生した排ガス及び石炭灰を流通させる。
【0017】
脱硝装置160は、排ガス中の窒素酸化物を除去する。脱硝装置160は、例えば、乾式アンモニア接触還元法により排ガス中の窒素酸化物を除去する。乾式アンモニア接触還元法は、比較的高温(300℃~400℃)の排ガス中に還元剤としてアンモニアガスを注入し、脱硝触媒との作用により排ガス中の窒素酸化物を窒素と水蒸気に分解する方法である。
【0018】
脱硝装置160は、図2に示すように、脱硝反応が行われる脱硝反応器161と、脱硝反応器161の内部に配置される複数段の脱硝触媒層162とを備える。脱硝触媒層162は、複数のケーシング163により構成される。ケーシング163には、複数の脱硝触媒Cが収容される。
脱硝触媒Cは、長手方向に延びる複数の貫通孔C1が形成されたハニカム構造を有する、長尺状(直方体状)の触媒である。複数の脱硝触媒Cは、貫通孔C1の延びる方向が排ガスの流路に沿うように配置される。
【0019】
空気予熱器170は、排気通路150における脱硝装置160の下流側に配置される。空気予熱器170は、脱硝装置160を通過した排ガスと燃焼用空気とを熱交換させ、排ガスを冷却すると共に、燃焼用空気を加熱する。加熱された燃焼用空気は、押込通風機175によりボイラ140に供給される。
【0020】
熱回収用ガスヒータ180は、排気通路150における空気予熱器170の下流側に配置される。熱回収用ガスヒータ180には、空気予熱器170において熱回収された排ガスが供給される。熱回収用ガスヒータ180は、排ガスから更に熱回収を行う。
【0021】
電気集塵装置190は、排気通路150における熱回収用ガスヒータ180の下流側に配置される。電気集塵装置190には、熱回収用ガスヒータ180において熱回収された排ガスが供給される。電気集塵装置190は、電極に電圧を印加することによって排ガス中の石炭灰(フライアッシュ)を収集(捕捉)する装置である。電気集塵装置190において収集(捕捉)されるフライアッシュは、フライアッシュ回収装置191に回収される。
【0022】
誘引通風機210は、排気通路150における電気集塵装置190の下流側に配置される。誘引通風機210は、電気集塵装置190においてフライアッシュが除去された排ガスを、一次側から取り込んで二次側に送り出す。
【0023】
脱硫装置220は、排気通路150における誘引通風機210の下流側に配置される。脱硫装置220には、誘引通風機210から送り出された排ガスが供給される。脱硫装置220は、例えば湿式石灰-石膏法により排ガス中の硫黄酸化物を除去する。湿式石灰-石膏法は、排ガスに石灰石と水との混合液を吹き付けることにより、排ガスに含有されている硫黄酸化物を混合液に吸収させて脱硫石膏スラリーを生成させ、排ガス中の硫黄酸化物を除去する方法である。この際に発生したホウ素やセレン等の微量物質が含まれる排水は、排水処理装置221によって処理される。
【0024】
再加熱用ガスヒータ230は、排気通路150における脱硫装置220の下流側に配置される。再加熱用ガスヒータ230には、脱硫装置220において硫黄酸化物が除去された排ガスが供給される。再加熱用ガスヒータ230は、排ガスを加熱する。熱回収用ガスヒータ180及び再加熱用ガスヒータ230は、排気通路150における、空気予熱器170と電気集塵装置190との間を流通する排ガスと、脱硫装置220と脱硫通風機240との間を流通する排ガスと、の間で熱交換を行うガス-ガスヒータとして構成してもよい。
【0025】
脱硫通風機240は、排気通路150における再加熱用ガスヒータ230の下流側に配置される。脱硫通風機240は、再加熱用ガスヒータ230において加熱された排ガスを一次側から取り込んで二次側に送り出す。
【0026】
煙突250は、排気通路150における脱硫通風機240の下流側に配置される。煙突250には、再加熱用ガスヒータ230で加熱された排ガスが導入される。煙突250は、排ガスを排出する。
【0027】
[脱硝触媒研磨装置]
上記説明した石炭火力発電設備100に用いられる脱硝触媒Cは、使用の継続に伴いシンタリング等の熱的劣化、触媒成分の被毒による化学的劣化、及び煤塵が触媒表面を被覆する物理的劣化等により、脱硝性能が低下する。脱硝性能が低下した脱硝触媒Cは、触媒表面である貫通孔C1の内面を研磨し、表面の付着物等を除去することで脱硝性能が回復する。
以下、脱硝性能の低下した脱硝触媒Cの貫通孔C1の内面を研磨し、脱硝性能を回復させる脱硝触媒研磨装置1について説明する。
【0028】
〔第1実施形態〕
本実施形態に係る脱硝触媒研磨装置1は、脱硝触媒Cの貫通孔C1に空気と共に研磨材Aを流通させて、貫通孔C1の内面を研磨する装置である。脱硝触媒研磨装置1は、図3に示すように、貯留部10と、流入路20と、流出路30と、サイクロン40と、バグフィルタ60と、吸引ファン70と、を備える。脱硝触媒研磨装置1の被研磨対象である脱硝触媒Cは、流入路20における上流側固定部材22と、流出路30における下流側固定部材32との間に挟持される。脱硝触媒Cは、脱硝触媒Cの貫通孔C1の流路方向が水平面に対して略垂直になるように固定される。研磨剤Aは、脱硝触媒Cの貫通孔C1の下方から上方に向けて流通する。
【0029】
貯留部10は、上方が開口した箱状部材であり、内部に研磨剤Aが貯留される。貯留部10は、図4に示すように、壁面11と、傾斜部12と、滞留部13と、を有する。
壁面11は、貯留部10の底面の周囲を覆い垂直方向に延びる壁部である。壁面11は、貯留部10に供給される研磨材Aの外部への漏出を防止する。壁面11には、研磨剤Aが漏出しない位置に、外気を吸入する開口が設けられていてもよい。
傾斜部12は、滞留部13に向けて下方に傾斜し、滞留部13と共に貯留部10の底面を構成する。本実施形態では、傾斜部12は、貯留部10の底面の各外周縁から滞留部13に向けて下方に傾斜する4つの傾斜面からなる。
滞留部13は、貯留部10の底面中央部に設けられる平面部である。本実施形態では、滞留部13は略長方形の平面からなる。滞留部13の外周の各辺は傾斜部12と連続している。滞留部13には、直接研磨剤Aが供給され、又は傾斜部12に供給される研磨剤Aが流入して滞留する。滞留部13は、後述する吸入路21の開口部21aの真下に配置される。
【0030】
流入路20は、脱硝触媒Cの上流側の流路であり、空気と共に研磨材Aが吸引ファン70により吸引されて流入する流路である。流入路20は、吸入路21及び上流側固定部材22からなる。
吸入路21は、上流側端部に開口部21aが設けられ、内部に研磨材A及び空気が流通可能な、垂直方向に延びる流路を有する。吸入路21の上端部(下流側端部)は、上流側固定部材22と連結される。開口部21aは、滞留部13に対向して下向きに配置される。滞留部13に滞留する研磨剤Aは、吸引部としての吸引ファン70の吸引力により空気と共に吸引され、開口部21aを通じて流入路20の流路内に流入する。
【0031】
上流側固定部材22は、内部に研磨材A及び空気が流通可能な、垂直方向に延びる流路を有し、下流側が脱硝触媒Cの下端部(上流側端部)と連結されて脱硝触媒Cを固定する。上流側固定部材22の上流側は、吸入路21と連結される。上流側固定部材22の流路と、吸入路21の流路とは垂直方向に連続する流路である。吸入路21から空気と共に流入した研磨剤Aは、上流側固定部材22を介して脱硝触媒Cの貫通孔C1に流入する。
上流側固定部材22の流路内には、研磨剤Aを分散させる規制部材や、研磨剤Aの流通速度を低下させて脱硝触媒Cの破損を防止する緩衝部材を設けてもよい。一方、本実施形態に係る脱硝触媒研磨装置1では、研磨剤Aを吸引する動力として、吸引部としての吸引ファン70のみを用いている。また、滞留部13から吸入路21を介し、垂直方向に研磨材Aを空気と共に吸引する。従って、研磨剤Aは十分に分散され、かつ流速の低い状態で上流側固定部材22に流入する。このため、上流側固定部材22の流路内に、上記規制部材や緩衝部材を設けずに、脱硝触媒研磨装置1を構成することもできる。
【0032】
吸入路21の流路横断面積は、上流側固定部材22の流路横断面積よりも小さい。吸入路21の流路横断面積を小さくすることで、吸入路21を流通する研磨材A及び空気の流速を大きくすることができる。これにより、吸入路21の開口部21aから研磨剤Aが吸入されやすい。また、研磨剤Aが吸入路21から上流側固定部材22に流入する際、流路横断面積が大きくなることで研磨材Aの流速が低下し、かつ研磨剤Aが分散されるため好ましい。
【0033】
流出路30は、脱硝触媒Cの下流側の流路である。流出路30は、研磨材Aと、脱硝触媒Cの表面が研磨されることで生じた被研磨物とが流通する流路である。研磨材Aと被研磨物とは、吸引部としての吸引ファン70により空気と共に吸引される。流出路30の途中にはサイクロン40が設けられ、研磨材Aと被研磨物とが分離される。
流出路30は、脱硝触媒Cの上端部(下流側端部)と連結されて脱硝触媒Cを固定する下流側固定部材32と、下流側固定部材32とサイクロン40とを連結する下流側流路31と、サイクロン40で分離された研磨材Aを貯留部10に供給する研磨材供給路33と、を有する。
【0034】
研磨材供給路33は、上流側端部がサイクロン40と連結される、1又は複数の流路である。図4では、研磨剤供給路33a及び33bの2つの流路からなる構成を示しているが、研磨剤供給路33の数は特に制限されない。研磨剤供給路33は、サイクロン40から貯留部10に向けて下方に傾斜又は垂下しており、研磨剤供給路33の下流側端部は貯留部10の上方で開口している。図4に示すように、例えば吸入路21又は上流側固定部材22と、壁部11との間に、研磨剤供給路33の開口を配置できる。
上記構成により、サイクロン40から研磨剤供給路33に流入した研磨剤Aは、自重により落下して下流側端部の開口から貯留部10に供給される。
【0035】
サイクロン40は、公知のサイクロン分級器であり、貯留部10よりも高い位置に配置される。サイクロン40の上流端は、下流側流路31と連結される。サイクロン40の下部には研磨材供給路33が連結され、サイクロン40により分離された研磨材Aが流通する。サイクロン40の下流端は、搬送パイプ41と連結され、搬送パイプ41の下流端は、バグフィルタ60と連結される。サイクロン40により分離された被研磨物は、空気と共に搬送パイプ41を通じてバグフィルタ60に流入する。
【0036】
バグフィルタ60は、公知の集塵装置である。バグフィルタ60は、脱硝触媒Cの被研磨物を含む空気中の粉塵を捕集する。捕集された粉塵は、バグフィルタ60の下部に設けられた図示しない貯蔵部に貯蔵され、所望のタイミングで回収される。バグフィルタ60の下流端は、連結パイプ61と連結される。連結パイプ61の下流端は、吸引部としての吸引ファン70に連結される。バグフィルタ60を通過して粉塵が除去された清浄な空気は、吸引ファン70によって吸引されて、排気ダクト71により大気中に排出される。
【0037】
(研磨再生方法)
次に、脱硝触媒研磨装置1を用いて脱硝触媒Cを研磨再生する方法について説明する。
脱硝触媒研磨装置1の被研磨対象である、脱硝性能が低下した脱硝触媒Cを、石炭火力発電設備100の脱硝装置160から取り外す。この際、脱硝触媒Cの貫通孔C1は、石炭灰等で閉塞されている場合があるため、適宜エアブローや水洗等により閉塞物を取り除く。次に、上流側固定部材22と、下流側固定部材32との間に脱硝触媒Cを挟持し、脱硝触媒Cを固定する。この際、例えば脱硝触媒Cの、脱硝装置160における排ガスの入口側端部であった付着物の多い側を、研磨材Aの流速の高い下流側となるように配置して固定してもよい。
【0038】
脱硝触媒研磨装置1の作動を開始すると、吸引ファン70が作動を開始し、貯留部10の滞留部13に滞留した研磨材Aは、滞留部13の真上に配置された吸入路21の開口部21aを通じ、空気と共に上流側に吸引される。吸入路21及び上流側固定部材22は、内部に垂直方向に延びる流路を有する。従って、研磨剤Aは、均一な状態で、空気と共に垂直方向に吸引され、脱硝触媒Cの貫通孔C1に流入する。研磨剤Aは、貫通孔C1の内面の研磨を行った後、下流側固定部材32から流出する。流出した研磨材Aと被研磨物とは、空気と共に吸引ファン70により吸引されて、下流側流路31を介してサイクロン40に流入する。サイクロン40では、研磨材Aと被研磨物とが分離され、研磨材Aは研磨材供給路33を介して自重により落下し、研磨材供給路33の下流端の開口から貯留部10に供給される。上記供給された研磨材Aは、直接に、又は傾斜部12を介して滞留部13に到達する。即ち、研磨材Aは脱硝触媒研磨装置1内を循環する。
【0039】
サイクロン40で分離された被研磨物は吸引ファン70により吸引されて、搬送パイプ41を介してバグフィルタ60に流入して捕集される。被研磨物が捕集された後の空気は排気ダクト71を通じて外部に排出される。所定時間、脱硝触媒研磨装置1の作動を継続させ、脱硝触媒Cの貫通孔C1の内面を研磨し、貫通孔C1の内面に付着した付着物等を取り除くことで脱硝触媒Cを再生する。
【0040】
以上説明した第1実施形態に係る脱硝触媒研磨装置1によれば、以下の効果が奏される。
脱硝触媒研磨装置1において、脱硝触媒Cは、貫通孔C1の流路方向が水平面に対して略垂直になるように配置され、研磨剤Aは、貫通孔C1の下方から上方に向けて流通し、脱硝触媒Cの下流側に配置され、空気と共に研磨剤Aを吸引する吸引ファン70と、脱硝触媒Cの上流側に配置され、上流側端部に開口部21aが設けられ垂直方向に延びる流路を有する流入路20と、開口部21aの下方に配置され、研磨剤Aを貯留する貯留部10を有するものとして構成した。これにより、貯留部10から垂直方向に研磨材Aが空気と共に吸引されて、流入路20を通じて貫通孔C1内を流通し、貫通孔C1の内面が研磨される。従って、研磨剤Aが均一に分散されるため、貫通孔C1内を均一に研磨できる。また、研磨剤Aを均一に分散させるための装置や流路構造が不要となる。
【0041】
貯留部10の底面は、研磨剤Aが滞留する滞留部13と、滞留部13に向けて下方に傾斜する傾斜部12を有し、滞留部13は、開口部21aの真下に配置されるものとした。これにより、貯留部10に供給された研磨材Aを、滞留部13に集積して効率よく流入路20から吸入できる。
【0042】
脱硝触媒Cを研磨後の研磨剤Aと、被研磨物とを分離するサイクロン40を備え、サイクロン40は、貯留部10よりも高い位置に配置され、サイクロン40により分離された研磨材Aは、貯留部10に供給されるものとした。これにより、研磨剤Aが研磨装置内を循環するため、研磨剤Aの補充頻度を低減できる。また、サイクロン40により分離された研磨材Aを、自重により落下させて貯留部10に供給できるため、研磨剤Aの供給に動力を要さず、装置構成を簡易にすることができる。
【0043】
流入路20は、開口部21aを有する吸入路21と、脱硝触媒Cと連結される上流側固定部材22と、を含み、吸入路21の流路横断面積は、上流側固定部材22の流路横断面積よりも小さいものとした。これにより、吸入路21から研磨剤Aを吸引しやすい。また、研磨剤Aが吸入路21から上流側固定部材22に流入する際、研磨材Aの流速が低下し、分散されるため、貫通孔C1内を均一に研磨できると共に、脱硝触媒の端面の破損を防止できる。
【0044】
〔第2実施形態〕
第2実施形態に係る脱硝触媒研磨装置1Aについて、図面を参照して説明する。以下、第1実施形態と同様の構成については、説明を省略する場合がある。図5は、本実施形態に係る脱硝触媒研磨装置1Aの貯留部10A付近の構成を示す斜視図である。本実施形態の貯留部10A以外の構成は第1実施形態と同様である。
【0045】
貯留部10Aは、上方が一部開口し、下方に底面13Aを有する円筒状部材であり、内部に研磨材Aが貯留される。貯留部10Aは、図5に示すように、壁面11Aと、底面13Aと、カバー部材14と、を有する。
【0046】
壁面11Aは、貯留部10Aの底面13Aの周囲を覆い垂直方向に延びる壁部である。壁面11Aには、外部から貯留部10A内部へ空気が供給される空気孔110が複数設けられる。空気孔110には、例えばコンプレッサから圧縮空気を圧入するエアホース(図示省略)が連結される。外部から貯留部10A内部への空気の流れの方向は、図5中、白抜き矢印で示すように、底面13Aの中央部に向かう方向であることが好ましい。これにより、底面13Aの隅部に滞留した研磨材Aを撹拌し、かつ底面13Aの中央部へと移動させることができる。空気孔110の数は、特に制限されないが、例えば壁面11Aの周方向において均等に4つ設けることができる。
【0047】
壁面11Aには、研磨材供給路33と連結可能な研磨材供給孔111が設けられる。研磨剤供給路33を通じ、研磨材供給孔111から貯留部10Aに研磨材Aが供給される。本実施形態において、研磨材供給孔111は、研磨材供給路33a及び33bの2つの研磨剤供給路の下流側端部と連結可能に2つ設けられる。研磨剤供給孔111は、空気孔110よりも下方に設けられることが好ましい。上記により、研磨材Aの飛散を防止できる。
【0048】
底面13Aは、貯留部10Aの底面を構成する略円形の平面部である。本実施形態に係る貯留部10Aは、空気孔110により研磨材Aを撹拌し中央部へと移動できる。従って、第1実施形態とは異なり、底面に傾斜部を設けずに構成できる。なお、底面13Aの中央部が低い位置となるように、傾斜部を設けて底面13Aを構成してもよい。
【0049】
カバー部材14は、円筒形状の貯留部10Aの上面の一部を被覆する部材である。カバー部材14は、貯留部10Aの上面の外周側端部から内周側にかけて、一部の箇所を被覆する。カバー部材14は、中央に吸入路21の開口部21aよりも大きい開口部を有する。該開口部を介し、吸入路21の先端が貯留部10A内に挿入され、研磨材が吸入路21に吸入される。上記構成を有するカバー部材14により、研磨材Aの外部への飛散が抑制される。
【0050】
以上説明した第2実施形態に係る脱硝触媒研磨装置1Aによれば、以下の効果が奏される。
貯留部10Aを、底面13Aを有する円筒状部材とし、壁面11Aに外部から空気が供給される空気孔110と、研磨材Aが供給される研磨材供給孔111とを複数設けて構成した。これにより、研磨材供給孔111から供給される研磨材Aは、空気孔110から供給される空気によって撹拌され、かつ底面13Aの中央部付近に移動される。従って、貯留部10Aに供給される研磨材Aを効率よく流入路20から吸入できる。
【0051】
本発明は、上記実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0052】
上記実施形態において、貯留部10を、上方が開口した箱状部材として説明したが、上記構成に限定されない。貯留部10は、研磨剤Aの貯留及び供給が可能な形状を有していればよい。例えば上方が開口した円筒形状の貯留部10とし、滞留部13を円状とし、滞留部13に対して傾斜する傾斜部12を、連続する1つの面からなる傾斜部12としてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 脱硝触媒研磨装置
10 貯留部
12 傾斜部
13 滞留部
20 流入路
21 吸入路
21a 開口部
22 上流側固定部材
40 サイクロン(分級部)
70 吸引ファン(吸引部)
C 脱硝触媒
C1 貫通孔
A 研磨材
図1
図2
図3
図4
図5