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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】脱硝触媒研磨装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 38/00 20060101AFI20240826BHJP
   B01J 35/57 20240101ALI20240826BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20240826BHJP
   B01D 53/96 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
B01J38/00 A
B01J35/57 J ZAB
B01D53/86 222
B01D53/96 500
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020535150
(86)(22)【出願日】2020-02-28
(86)【国際出願番号】 JP2020008549
(87)【国際公開番号】W WO2021171629
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】392026073
【氏名又は名称】ハシダ技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】吉河 敏和
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和広
(72)【発明者】
【氏名】盛田 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 亨浩
(72)【発明者】
【氏名】伊田 展充
(72)【発明者】
【氏名】坂本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】日高 広大
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-241555(JP,A)
【文献】特開平02-245241(JP,A)
【文献】国際公開第2018/211549(WO,A1)
【文献】特開平07-116523(JP,A)
【文献】特開2012-000693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
B01D 53/86-53/90,53/94-53/96
B24C 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延びる複数の貫通孔が設けられた脱硝触媒の前記貫通孔に、空気と共に研磨材を流通させて、前記貫通孔の内面を研磨する脱硝触媒研磨装置であって、
前記脱硝触媒の上流側に配置され、空気と共に研磨材が流通する流入路と、
前記脱硝触媒の下流側に配置され、空気と共に研磨剤と被研磨物とを吸引する吸引部と、を有し、
前記流入路は、前記脱硝触媒と当接又は近接して配置され直線状に延びる複数の貫通孔が設けられた助走路を有し、
前記助走路の複数の貫通孔は、前記脱硝触媒の複数の貫通孔と対応する位置に配置され
前記助走路の流路方向の長さは、250mm以上である、脱硝触媒研磨装置。
【請求項2】
前記助走路の流路方向に対する断面形状は、前記脱硝触媒の流路方向に対する断面形状と同一の断面形状である、請求項1に記載の脱硝触媒研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱硝触媒を研磨する、脱硝触媒研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所では、石炭燃焼に伴い窒素酸化物が発生する。環境保全のため、窒素酸化物の排出量は一定水準以下に抑える必要がある。このため、火力発電所には窒素酸化物を還元するための脱硝触媒が充てんされた脱硝装置が設置されている。脱硝触媒は、使用の継続に伴い性能が低下する。性能の低下した脱硝触媒を再生する技術の一つとして研磨再生が挙げられる。研磨再生は、性能の低下した脱硝触媒の表面を研磨することで、触媒性能を回復させる技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2014/155628号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、研磨材(研削材)と気体との混合物を脱硝触媒の貫通孔に通過させて、貫通孔の内壁を研磨する脱硝触媒の再生方法に関する技術が開示されている。また、長手方向に延びる複数の貫通孔が設けられたハニカム構造を有する脱硝触媒の流速が低減する周縁部に、脱硝触媒と同一又は類似の貫通孔を有するダミーセルを配置し、流れの速度が略均一な中央部のみで脱硝触媒の研磨を行うことで、より均一な研磨を行える構成が開示されている。
【0005】
特許文献1に開示された技術は、脱硝触媒の径方向における研磨量を均一化できるものである。しかし、脱硝触媒の流路方向における研磨量を均一化できる構成は、未だ開示されていない。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、脱硝触媒の流路方向における研磨量を均一化できる脱硝触媒研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、長手方向に延びる複数の貫通孔が設けられた脱硝触媒の前記貫通孔に、空気と共に研磨材を流通させて、前記貫通孔の内面を研磨する脱硝触媒研磨装置であって、前記脱硝触媒の上流側に配置され、空気と共に研磨材が流通する流入路と、前記脱硝触媒の下流側に配置され、空気と共に研磨剤と被研磨物とを吸引する吸引部と、を有し、前記流入路は、前記脱硝触媒と当接又は近接して配置され直線状に延びる複数の貫通孔が設けられた助走路を有し、前記助走路の複数の貫通孔は、前記脱硝触媒の複数の貫通孔と対応する位置に配置される脱硝触媒研磨装置に関する。
【0008】
前記助走路の流路方向に対する断面形状は、前記脱硝触媒の流路方向に対する断面形状と同一の断面形状であることが好ましい。
【0009】
前記助走路の流路方向の長さは、前記助走路の前記貫通孔に空気と共に流通する研磨材が乱流化される長さ以上の長さであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、脱硝触媒の流路方向における研磨を均一化できる脱硝触媒研磨装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る脱硝触媒が使用される火力発電設備の構成図である。
図2】火力発電設備における脱硝装置の構成例を示す図である。
図3】本実施形態に係る脱硝触媒研磨装置の概略構成図である。
図4】本実施形態に係る脱硝触媒研磨装置の要部断面図である。
図5】本実施形態に係る脱硝触媒研磨装置の要部分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の実施形態に係る脱硝触媒研磨装置の被研磨対象である脱硝触媒は、例えば、以下説明する石炭火力発電設備100で一定期間使用され、性能の低下した脱硝触媒Cである。
【0013】
[石炭火力発電設備]
図1に示すように、石炭火力発電設備100は、石炭バンカ110と、給炭機115と、微粉炭機120と、微粉炭供給管130と、燃焼ボイラ140と、燃焼ボイラ140の下流側に設けられる排気通路150と、この排気通路150に設けられる脱硝装置160、空気予熱器170、熱回収用ガスヒータ180、電気集塵装置190、誘引通風機210、湿式脱硫装置220、再加熱用ガスヒータ230、脱硫通風機240、及び煙突250と、を備える。
【0014】
石炭バンカ110は、図示しない石炭サイロから運炭設備により供給される石炭を貯蔵する。給炭機115は、石炭バンカ110から供給される石炭を所定の供給スピードで微粉炭機120に供給する。
微粉炭機120は、給炭機115から供給された石炭を平均粒径60μm~80μmに粉砕して微粉炭を製造する。微粉炭機120としては、ローラミル、チューブミル、ボーラミル、ビータミル、インペラーミル等が用いられる。
【0015】
燃焼ボイラ140は、微粉炭供給管微粉炭機130から供給された微粉炭を、強制的に供給された空気と共に微粉炭バーナbにより燃焼する。微粉炭を燃焼することによりクリンカアッシュ及びフライアッシュなどの石炭灰が生成されると共に、排ガスが発生する。クリンカアッシュとは、石炭灰のうち、燃焼ボイラ140の底部に落下する塊状の石炭灰をいう。フライアッシュとは、石炭灰のうち、排ガスと共に排気通路150側に流通する、粒径の小さい(粒径200μm程度以下)の石炭灰をいう。
排気通路150は、燃焼ボイラ140の下流側に配置され、燃焼ボイラ140で発生した排ガス及び石炭灰を流通させる。
【0016】
脱硝装置160は、排ガス中の窒素酸化物を除去する。脱硝装置160は、例えば、乾式アンモニア接触還元法により排ガス中の窒素酸化物を除去する。乾式アンモニア接触還元法は、比較的高温(300℃~400℃)の排ガス中に還元剤としてアンモニアガスを注入し、脱硝触媒との作用により排ガス中の窒素酸化物を窒素と水蒸気に分解する方法である。
【0017】
脱硝装置160は、図2に示すように、脱硝反応が行われる脱硝反応器161と、脱硝反応器161の内部に配置される複数段の脱硝触媒層162とを備える。脱硝触媒層162は、複数のケーシング163により構成される。ケーシング163には、複数の脱硝触媒Cが収容される。
脱硝触媒Cは、長手方向に延びる複数の貫通孔C1が形成されたハニカム構造を有する、長尺状(直方体状)の触媒である。複数の脱硝触媒Cは、貫通孔C1の延びる方向が排ガスの流路に沿うように配置される。
【0018】
空気予熱器170は、排気通路150における脱硝装置160の下流側に配置される。空気予熱器170は、脱硝装置160を通過した排ガスと燃焼用空気とを熱交換させ、排ガスを冷却すると共に、燃焼用空気を加熱する。加熱された燃焼用空気は、押込通風機175によりボイラ140に供給される。
【0019】
熱回収用ガスヒータ180は、排気通路150における空気予熱器170の下流側に配置される。熱回収用ガスヒータ180には、空気予熱器170において熱回収された排ガスが供給される。熱回収用ガスヒータ180は、排ガスから更に熱回収を行う。
【0020】
電気集塵装置190は、排気通路150における熱回収用ガスヒータ180の下流側に配置される。電気集塵装置190には、熱回収用ガスヒータ180において熱回収された排ガスが供給される。電気集塵装置190は、電極に電圧を印加することによって排ガス中の石炭灰(フライアッシュ)を収集(捕捉)する装置である。電気集塵装置190において収集(捕捉)されるフライアッシュは、フライアッシュ回収装置191に回収される。
【0021】
誘引通風機210は、排気通路150における電気集塵装置190の下流側に配置される。誘引通風機210は、電気集塵装置190においてフライアッシュが除去された排ガスを、一次側から取り込んで二次側に送り出す。
【0022】
脱硫装置220は、排気通路150における誘引通風機210の下流側に配置される。脱硫装置220には、誘引通風機210から送り出された排ガスが供給される。脱硫装置220は、例えば湿式石灰-石膏法により排ガス中の硫黄酸化物を除去する。湿式石灰-石膏法は、排ガスに石灰石と水との混合液を吹き付けることにより、排ガスに含有されている硫黄酸化物を混合液に吸収させて脱硫石膏スラリーを生成させ、排ガス中の硫黄酸化物を除去する方法である。この際に発生したホウ素やセレン等の微量物質が含まれる排水は、排水処理装置221によって処理される。
【0023】
再加熱用ガスヒータ230は、排気通路150における脱硫装置220の下流側に配置される。再加熱用ガスヒータ230には、脱硫装置220において硫黄酸化物が除去された排ガスが供給される。再加熱用ガスヒータ230は、排ガスを加熱する。熱回収用ガスヒータ180及び再加熱用ガスヒータ230は、排気通路150における、空気予熱器170と電気集塵装置190との間を流通する排ガスと、脱硫装置220と脱硫通風機240との間を流通する排ガスと、の間で熱交換を行うガス-ガスヒータとして構成してもよい。
【0024】
脱硫通風機240は、排気通路150における再加熱用ガスヒータ230の下流側に配置される。脱硫通風機240は、再加熱用ガスヒータ230において加熱された排ガスを一次側から取り込んで二次側に送り出す。
【0025】
煙突250は、排気通路150における脱硫通風機240の下流側に配置される。煙突250には、再加熱用ガスヒータ230で加熱された排ガスが導入される。煙突250は、排ガスを排出する。
【0026】
[脱硝触媒研磨装置]
上記説明した石炭火力発電設備100に用いられる脱硝触媒Cは、使用の継続に伴いシンタリング等の熱的劣化、触媒成分の被毒による化学的劣化、及び煤塵が触媒表面を被覆する物理的劣化等により、脱硝性能が低下する。脱硝性能が低下した脱硝触媒Cは、触媒表面である貫通孔C1の内面を研磨し、表面の付着物等を除去することで脱硝性能が回復する。
以下、脱硝性能の低下した脱硝触媒Cの貫通孔C1の内面を研磨し、脱硝性能を回復させる脱硝触媒研磨装置1について説明する。
【0027】
本実施形態に係る脱硝触媒研磨装置1は、脱硝触媒Cの貫通孔C1に空気と共に研磨材Aを流通させて、貫通孔C1の内面を研磨する装置である。脱硝触媒研磨装置1は、図3に示すように、混合部10と、流入路20と、流出路30と、サイクロン40と、コンプレッサ50と、バグフィルタ60と、吸引ファン70と、を備える。脱硝触媒研磨装置1の被研磨対象である脱硝触媒Cは、流入路20における助走路23と、流出路30における下流側固定部材32との間に挟持される。脱硝触媒Cは、脱硝触媒Cの貫通孔C1の流路方向が水平面に対して略垂直になるように固定される。
【0028】
混合部10は、空気と研磨材Aとを混合し、流入路20を介して脱硝触媒Cに空気と混合された研磨材Aを供給する。混合部10には、ブラストガン11と、漏斗部12と、これらを収容するキャビネット13とが設けられる。ブラストガン11は、エアホース51を介してコンプレッサ50と連結されており、圧縮空気を噴射可能である。ブラストガン11は、複数台設けられていてもよい。ブラストガン11には、後述する研磨材供給路33が連結される。ブラストガン11から圧縮空気が噴射されると、エジェクター効果が生じ、研磨材供給路33を通じて研磨材Aがブラストガン11内に供給される。そして、ブラストガン11の内部で研磨材Aと圧縮空気とが混合され、漏斗部12に噴射される。噴射された研磨材Aは、空気と均一に混合された状態で、漏斗部12を通じて流入路20に流入する。
【0029】
流入路20は、脱硝触媒Cの上流側の流路であり、空気と共に研磨材Aが流入する流路である。流入路20は、上流側流路21、上流側固定部材22及び助走路23からなる。上流側流路21は、屈曲部を有する流路であり、上流側が漏斗部12と連結され、下流側が上流側固定部材22と連結される。上流側固定部材22は、直線状の流路を有し、下流側が助走路23と連結される。助走路23は、脱硝触媒Cと同様のハニカム構造を有し、助走路23の下流側は、固定部材24によって脱硝触媒Cの下端部(上流側端部)と連結されて固定される。助走路23を含む流入路20の構成は後段で詳述する。
【0030】
流出路30は、脱硝触媒Cの下流側の流路である。流出路30は、研磨材Aと、脱硝触媒Cの表面が研磨されることで生じた被研磨物とが流通する流路である。研磨材Aと被研磨物とは、吸引部としての吸引ファン70により空気と共に吸引される。流出路30の途中にはサイクロン40が設けられ、研磨材Aと被研磨物とが分離される。
流出路30は、脱硝触媒Cの上端部(下流側端部)と連結されて脱硝触媒Cを固定する下流側固定部材32と、下流側固定部材32とサイクロン40とを連結する下流側流路31と、サイクロン40と混合部10とを連結する研磨材供給路33と、を有する。
【0031】
サイクロン40は、公知のサイクロン分級器であり、混合部10よりも高い位置に配置される。サイクロン40の上流端は、下流側流路31と連結される。サイクロン40の下部には研磨材供給路33が連結され、サイクロン40により分離された研磨材Aは、研磨材供給路33を通じて重力により落下して混合部10に供給される。サイクロン40の下流端は、搬送パイプ41と連結され、搬送パイプ41の下流端は、バグフィルタ60と連結される。サイクロン40により分離された被研磨物は、空気と共に搬送パイプ41を通じてバグフィルタ60に流入する。
【0032】
バグフィルタ60は、公知の集塵装置である。バグフィルタ60は、脱硝触媒Cの被研磨物を含む空気中の粉塵を捕集する。捕集された粉塵は、バグフィルタ60の下部に設けられた図示しない貯蔵部に貯蔵され、所望のタイミングで回収される。バグフィルタ60の下流端は、連結パイプ61と連結される。連結パイプ61の下流端は、吸引部としての吸引ファン70に連結される。バグフィルタ60を通過して粉塵が除去された清浄な空気は、吸引ファン70によって吸引されて、排気ダクト71により大気中に排出される。
【0033】
次に、本実施形態に係る脱硝触媒研磨装置1の、助走路23を含む流入路20の構成の詳細について、図面を参照して以下説明する。図4は、脱硝触媒研磨装置1の流入路20付近を示す縦断面図であり、図5は、同様に流入路20付近を示す分解斜視図である。
【0034】
本実施形態に係る流入路20は、図4に示すように、上流側から順に、上流側流路21、上流側固定部材22、及び助走路23を備える。
【0035】
上流側流路21は、図4及び図5に示すように、屈曲部21aを有する流路であり、上流側が混合部10における漏斗部12に連結され、下流側が上流側固定部材22に連結されている。
【0036】
上流側固定部材22は、空気と共に研磨材Aが流通する流路である。上流側固定部材22は、図4に示すように、内部に直線状の流路を有する筒状部材である。上流側固定部材22の下流側は、助走路23と連結されて固定される。上流側固定部材22は、流路内に規制部材を有していてもよい。規制部材は、研磨材Aを均一に分散させるため、空気と混合された研磨材Aの流れを規制する部材である。規制部材は、例えば1つ又は複数のメッシュ部材からなる。上記メッシュ部材は、空気と混合された研磨材Aの流れの一部を透過させ、一部を規制する。上記メッシュ部材は、例えば上流側固定部材22の流路内の流路方向の断面の一部又は全体にわたり配置される。上記メッシュ部材は、任意の開口率、メッシュ数、及び目開きとすることができ、例えば、脱硝触媒Cと同程度の開口率、メッシュ数、及び目開きとすることができる。
【0037】
助走路23は、上流側固定部材22から空気と共に流入した研磨材Aを乱流化させ、脱硝触媒Cに流入させる流路である。助走路23は、図5に示すように、脱硝触媒Cと同様に、内部に直線状に延びる複数の貫通孔231を有するハニカム構造体である。
助走路23の流路方向に対する断面形状は、図5に示すように、脱硝触媒Cの流路方向に対する断面形状と同一の断面形状である。即ち、助走路23の流路方向に対する断面における、貫通孔231の位置、数及び大きさと、脱硝触媒Cの流路方向に対する断面における、貫通孔C1の位置、数及び大きさは同一である。なお、同一である、とは、完全に同一である必要はなく、貫通孔231内における研磨材Aの乱流化が維持された状態で貫通孔C1に流入可能な程度のものであれば、若干の違いがあるものでもよい。
助走路23の材質としては特に制限されないが、例えば脱硝触媒Cと同様の材質を用いてもよいし、研磨材Aにより研磨され難い、高硬度の材料を用いることもできる。
【0038】
助走路23の貫通孔231に流入する空気と混合された研磨材Aは、助走路23の上流側端部付近では、層流の状態で規則的に流通する。その後、研磨材Aは、一定距離を経て、貫通孔231内で乱流化され、脱硝触媒Cの貫通孔C1に流入する。乱流化された研磨材Aは、不規則に乱れて運動するため、層流の状態と比較して脱硝触媒の貫通孔C1の内面に衝突する頻度が上昇する。上記により、研磨材Aの流通量に対する研磨量の比である研磨率が向上すると考えられる。仮に、流入路20に助走路23を設けない場合、脱硝触媒Cの上流側端部付近では、研磨材Aは層流の状態で流通し、その後一定距離を経て乱流化される。このため、脱硝触媒Cの上流側端部付近の研磨率に対し、一定距離を経て研磨材Aが乱流化された位置以降の貫通孔C1の内面の研磨率は高くなる。従って、貫通孔C1の流路方向における研磨量が不均一となる。流入路20に助走路23を設けることで、空気と混合された研磨材Aは助走路23内で乱流化された後、脱硝触媒Cに流入する。従って、脱硝触媒Cに空気と共に流入する研磨材Aの研磨率は、上流側端部から十分に高い状態である。即ち、研磨材Aによる貫通孔C1の内面の研磨率を上流側端部からの位置に依らず高い状態で安定化できる。従って、貫通孔C1の流路方向における研磨量を均一化できる。
【0039】
助走路23の下流側端部は、脱硝触媒Cの上流側端部と近接又は当接して配置される。また、助走路23は、脱硝触媒Cの複数の貫通孔C1に対し、助走路23の複数の貫通孔231の位置が対応する位置に配置される。なお、貫通孔C1と貫通孔231の位置が対応するとは、貫通孔の位置が一致している場合だけでなく、少なくとも流路方向において重複している場合も含まれる。貫通孔C1と貫通孔231の位置は、一致していることが好ましい。
助走路23は、貫通孔231の流路方向と貫通孔C1の流路方向が同一であり、複数の貫通孔231と貫通孔C1とがそれぞれ連続的な流路を形成するように配置される。これにより、貫通孔231内で乱流化された研磨材Aを、乱流化が維持された状態で貫通孔C1に流入させることができる。なお、研磨材Aの乱流化が維持される範囲内で、貫通孔231と貫通孔C1との間に僅かな間隔が空いていてもよい。即ち、助走路23と脱硝触媒Cとは当接していてもよいが、僅かな間隔を空けて近接していてもよい。また、上記に加え、脱硝触媒Cの上流側端部の端面を保護する目的で、助走路23と脱硝触媒Cとの間に保護部材を配置してもよい。上記保護部材は、例えば貫通孔C1の形状に対応するメッシュ部材からなる。
【0040】
図5に示す、助走路23の流路方向の長さLは、助走路23に流入する空気と混合された研磨材Aが乱流化され、研磨率が高い状態で安定化するために要する長さ以上の長さである。このような助走路23の流路方向の長さLは、例えば150mm以上であり、200mm以上であることが好ましく、250mm以上であることがより好ましい。
【0041】
固定部材24は、助走路23の下流側端部と脱硝触媒Cの上流側端部とを着脱可能に連結して固定する部材である。固定部材24の構成は、特に制限されない。固定部材24は、例えば助走路23と脱硝触媒Cとの連結部を外周から覆い、締め付けることで、助走路23と脱硝触媒Cとを固定可能な環状部材であってもよい。
【0042】
(研磨再生方法)
次に、脱硝触媒研磨装置1を用いて脱硝触媒Cを研磨再生する方法について説明する。
脱硝触媒研磨装置1の被研磨対象である、脱硝性能が低下した脱硝触媒Cを、石炭火力発電設備100の脱硝装置160から取り外す。この際、脱硝触媒Cの貫通孔C1は、石炭灰等で閉塞されている場合があるため、適宜エアブローや水洗等により閉塞物を取り除く。次に、助走路23と、下流側固定部材32との間に脱硝触媒Cを挟持し、脱硝触媒Cを固定する。この際、例えば脱硝触媒Cの、脱硝装置160における排ガスの入口側端部であった付着物の多い側を、研磨材Aの流速の高い下流側となるように配置して固定してもよい。
【0043】
脱硝触媒研磨装置1の作動を開始すると、吸引ファン70及びコンプレッサ50が作動を開始し、混合部10で空気と混合された研磨材Aが上流側に吸引される。研磨材Aは、上流側流路21及び上流側固定部材22を介して助走路23に流入する。助走路23内で乱流化された研磨材Aは、研磨率が高く安定した状態で脱硝触媒Cの貫通孔C1に流入し、貫通孔C1の内面の研磨を行った後、下流側固定部材32から流出する。流出した研磨材Aと被研磨物とは、空気と共に吸引ファン70により吸引されて、下流側流路31を介してサイクロン40に流入する。サイクロン40では、研磨材Aと被研磨物とが分離され、研磨材Aは研磨材供給路33を介して混合部10に供給される。即ち、研磨材Aは脱硝触媒研磨装置1内を循環する。サイクロン40で分離された被研磨物は吸引ファン70により吸引されて、搬送パイプ41を介してバグフィルタ60に流入して捕集される。被研磨物が捕集された後の空気は排気ダクト71を通じて外部に排出される。所定時間、脱硝触媒研磨装置1の作動を継続させ、脱硝触媒Cの貫通孔C1の内面を研磨し、貫通孔C1の内面に付着した付着物等を取り除くことで脱硝触媒Cを再生する。
【0044】
以上説明した第1実施形態に係る脱硝触媒研磨装置1によれば、以下の効果が奏される。
脱硝触媒研磨装置1を、脱硝触媒Cの上流側に配置され、空気と共に研磨材Aが流通する流入路20と、脱硝触媒Cの下流側に配置され、空気と共に研磨材Aと被研磨物とを吸引する吸引ファン70と、を有し、流入路20は、脱硝触媒Cと当接又は近接して配置され、直線状に延びる複数の貫通孔231が設けられた助走路23を有し、助走路23の複数の貫通孔231は、脱硝触媒Cの複数の貫通孔C1と対応する位置に配置されるものとした。これにより、研磨材Aは、空気と共に助走路23に設けられた複数の貫通孔231を流通する際に乱流化され、脱硝触媒Cに流入する。従って、貫通孔C1の内面の研磨率は高い状態で安定化され、脱硝触媒Cの流路方向における研磨量を均一化することができる。
【0045】
助走路23の流路方向に対する断面形状は、脱硝触媒Cの流路方向に対する断面形状と同一の断面形状であるものとした。これにより、助走路23の複数の貫通孔231と、脱硝触媒Cの複数の貫通孔C1とは、同一の流路径からなる連続的な流路を形成するように配置できる。従って、助走路23の貫通孔231内で空気と共に乱流化された研磨材Aを、乱流化が確実に維持された状態で貫通孔C1に流入させることができ、脱硝触媒Cの流路方向における研磨量をより均一化することができる。
【0046】
助走路23の流路方向の長さLは、助走路23の貫通孔231に空気と共に流通する研磨材Aが乱流化される長さ以上の長さであるものとした。これにより、貫通孔231を空気と共に流通する研磨材Aは確実に乱流化された状態で脱硝触媒Cの貫通孔C1に流入する。従って、貫通孔C1の内面の研磨率は確実に高い状態で安定化され、脱硝触媒の流路方向における研磨量を更に均一化することができる。
【0047】
本発明は、上記実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0048】
本実施形態に係る脱硝触媒研磨装置1を、混合部10を有し、混合部10によって空気と混合された研磨材Aが、流入路20を通じて脱硝触媒Cに流入するものとして説明したが、この構成に限定されない。脱硝触媒研磨装置1は、研磨剤Aを空気と共に吸引する構成を有していればよく、混合部10を有さずに構成することもできる。
【0049】
本実施形態に係る流入路20を、屈曲部21aを有する上流側流路21を備えるものとして説明したが、この構成に限定されない。流入路20は、屈曲部を設けずに構成することもできる。例えば、流入路20を、脱硝触媒Cの下部から研磨材Aを空気と共に垂直に吸引する直線状の流路を有するものとし、屈曲部を有さない構成としてもよい。
【0050】
本実施形態に係る上流側固定部材22を、流路内に1つ又は複数のメッシュ部材からなる規制部材を備えるものとして説明したが、この構成に限定されない。規制部材は、空気と混合された研磨材Aの流れを規制して分散させるものであればよい。規制部材の形状もメッシュ部材には限定されず、例えば上流側固定部材22の流路方向の断面の一部に配置される板状の部材としてもよい。あるいは、研磨材Aを分散させる必要性が低い場合、上流側固定部材22の流路内に規制部材を設けずに構成することもできる。
【0051】
[研磨量均一性評価]
上記実施形態に係る脱硝触媒研磨装置を用い、以下の方法で脱硝触媒の研磨量均一性の評価を行った。先ず、本実施形態に係る脱硝触媒研磨装置(助走路の長さ:250mm)に使用済の脱硝触媒(を装着し、所定時間、研磨剤を貫通孔に流通させて研磨を行った。研磨後の脱硝触媒を取外し、下流側端部から100mm単位で切断し、脱硝触媒の壁厚を数か所測定して平均値を算出した。同様に、助走路を有しない脱硝触媒研磨装置を用いて研磨後の脱硝触媒の壁厚を算出した。結果を以下の表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示すように、助走路を有する本実施形態に係る脱硝触媒研磨装置により研磨を行った脱硝触媒は、研磨後の壁厚が流路方向のいずれの箇所においてもほぼ一定であることから、均一に研磨が行われている結果が示された。これに対して、助走路を有しない脱硝触媒研磨装置は、上流側端部(860mm)付近の脱硝触媒壁厚が、他の箇所の壁厚と比較して厚く、研磨が均一でない結果が示された。また、上流側端部からの長さが150mm、好ましくは200mm、より好ましくは250mm以上の箇所以降において壁厚が安定化し、研磨が均一化する結果が示された。
【符号の説明】
【0054】
1 脱硝触媒研磨装置
20 流入路
23 助走路
70 吸引ファン(吸引部)
C 脱硝触媒
C1 脱硝触媒Cの貫通孔
231 助走路23の貫通孔
L 助走路23の流路方向の長さ
図1
図2
図3
図4
図5