(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】金属化フィルムおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20240826BHJP
B32B 15/04 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
H05K9/00 W
B32B15/04 Z
(21)【出願番号】P 2020538160
(86)(22)【出願日】2020-03-11
(86)【国際出願番号】 JP2020010456
(87)【国際公開番号】W WO2020203109
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2019066489
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391057421
【氏名又は名称】東レKPフィルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186484
【氏名又は名称】福岡 満
(72)【発明者】
【氏名】山田 絵美
(72)【発明者】
【氏名】藤 信男
(72)【発明者】
【氏名】都地 輝明
【審査官】佐久 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-038278(JP,A)
【文献】特開2015-138813(JP,A)
【文献】特開2017-041630(JP,A)
【文献】特開2007-243122(JP,A)
【文献】特開2017-147276(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0121621(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
B32B 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムの少なくとも一方の面の側に、少なくとも1層の金属層からなる金属膜を有する金属化フィルムであって、
前記金属膜の表面抵抗が0.04Ω/□以下で、
前記金属化フィルムのJISK7129:2008に準拠した水蒸気透過度が、温度40℃、湿度90%RHで3.5g/(m
2・day)以上であ
り、
前記金属膜を有する側のフィルム表面の二乗平均平方根傾斜RΔqが0.18以上であり、
前記金属膜を有する側のフィルム表面の算術平均傾斜角RΔaが7.0°以上である、金属化フィルム。
【請求項2】
前記金属膜の表面抵抗が0.02Ω/□以下である、請求項1に記載の金属化フィルム。
【請求項3】
前記金属膜の平均結晶粒径が50nm以上、200nm以下であ
り、
前記金属膜の厚みが0.5μm以上、3.0μm以下である、請求項1
または2に記載の金属化フィルム。
【請求項4】
前記金属層の主成分が、銅、銀、及びアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属である、請求項1から
3のいずれかに記載の金属化フィルム。
【請求項5】
前記金属膜表面の
二乗平均平方根傾斜RΔqが0.10以上である、請求項1から
4のいずれかに記載の金属化フィルム。
【請求項6】
前記金属膜表面の算術平均傾斜角RΔaが3.0°以上である、請求項1から
5のいずれかに記載の金属化フィルム。
【請求項7】
前記フィルムの、金属膜と接する側の面に、ポリエステル、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリプロピレン 、ポリエーテルエーテルケトン及びエポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つの樹脂を含む、請求項1から
6のいずれかに記載の金属化フィルム。
【請求項8】
前記フィルムと前記金属膜との間に、アンカー層を有する、請求項1から
7のいずれかに記載の金属化フィルム。
【請求項9】
前記アンカー層が、ニッケル、チタン、銅及びクロムからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む金属層である請求項
8に記載の金属化フィルム。
【請求項10】
前記アンカー層は、厚みが5nm以上30nm以下である、請求項
8または
9に記載の金属化フィルム。
【請求項11】
請求項1から
10のいずれかに記載の金属化フィルムの製造方法であって、
前記金属膜を、真空蒸着法にて成膜する、金属化フィルムの製造方法。
【請求項12】
請求項
8から
10のいずれかに記載の金属化フィルムの製造方法であって、
アンカー層をスパッタリング法にて成膜して、
前記金属膜を真空蒸着法にて成膜する、金属化フィルムの製造方法。
【請求項13】
金属膜を斜め蒸着で成膜する、請求項
11または
12に記載の金属化フィルムの製造方法。
【請求項14】
前記フィルムの表面に凹凸を形成する、請求項
13に記載の金属化フィルムの製造方法。
【請求項15】
請求項1から
10のいずれかに記載の金属化フィルムの一方の金属膜の表面に、接着剤層を有する電磁波シールドフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールドフィルムおよび、電磁波シールドフィルムに使用することができる金属化フィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやタブレット型情報端末には、大容量のデータを高速に伝送する性能が求められており、また、大容量のデータを高速伝送するためには高周波信号を用いる必要がある。
【0003】
しかし、高周波信号を用いると、プリント配線板に設けられた信号回路から電磁波ノイズが発生し、周辺機器が誤動作しやすくなる。そこで、このような誤動作を防止するために、プリント配線板を電磁波からシールドすることが重要となる。
【0004】
プリント配線板をシールドする方法として、シールド層と導電性接着剤層とを有する電磁波シールドフィルムが使用されている。
【0005】
これら電磁波シールドフィルムは、導電性接着剤層を、プリント配線板のグランド回路を被覆する絶縁層に設けられた開口部と重ねあわせて、加熱加圧し、開口部に導電性接着剤を充填する。これにより、シールド層とプリント配線板のグランド回路とが、導電性接着剤を介して接続され、プリント配線板がシールドされる。その後、シールドされたプリント配線板は、プリント配線板と電子部品とを接続するために、リフロー工程において270℃程度の高温に曝される。
【0006】
また、電子部品をプリント配線板に貼り付けた後、電子部品の位置を微修正するために、プリント配線板を加熱して電子部品をプリント配線板から剥がした後に、再度、貼り付ける、リペアと呼ばれる作業が行われる場合がある。そして、リペア作業を経た後、電子部品をプリント配線板に貼り付ける必要があるため、電磁波シールドフィルムは、リフロー工程において、再び、高温に曝されることになる(特許文献1)。
【0007】
一方、伝送信号が高周波化するに伴い、シールドは信号線へのノイズ低減のためグランド安定性が必要であり、低い電気抵抗であることが求められる。シールドに金属膜を使用する場合は低抵抗な金属(金、銀、銅など)を用い、かつ膜厚を厚くする必要性が出てきている。この場合、電磁波シールドフィルムの接着剤層やプリント配線板の絶縁フィルム等からガスが発生し、そのガスが金属膜で遮断されることで問題が発生することがある。特に、プリント配線板のベースフィルムがポリイミドなど吸湿性の高い樹脂で形成されている場合には、加熱によりベースフィルムから水蒸気が発生する。接着剤層や絶縁フィルムやベースフィルムから生じたこれらの揮発成分は、金属膜を通過することができないため、金属膜と接着剤層との間に溜まってしまう。そのため、はんだリフロー工程で急激な加熱を行うと、金属膜と接着剤層との間に溜まった揮発成分によって、金属膜と接着剤層との層間密着が破壊されてしまう場合がある。この不具合を防止する方法として、金属膜に複数の開口部を形成し、揮発成分を通過させる方法が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2017/111158号
【文献】特許第6219383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2のような開口部を形成する金属膜は、エッチング液(溶媒)に対して溶解性の高い易溶解性成分を金属膜中に分散させるため、易溶解性成分の形状や大きさを揃えて均一に分散させないと開口部形成後の金属膜は膜抵抗が不均一になり、信号ノイズの原因になりえる危険性がある。また、エッチング液は使用頻度によりエッチングレートが変化するため、安定した開口部を形成するためにはエッチング液の管理が必要であり、配線形成に使用するエッチングプロセスと同等の難易度とコストが発生する。特に同文献実施例記載では圧延銅箔および電解銅箔を均一に薄くエッチングする前処理工程も含まれているが、均一に薄くエッチングするためには、専用装置および専用エッチング液の管理が非常に厳しくなり、よりコスト高となる。
【0010】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、低い電気抵抗でありながら揮発成分を透過できる金属化フィルムとそれを用いた電磁波シールドフィルムを安定して提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題に鑑み鋭意検討した結果、真空蒸着法で結晶形態をコントロールすることで、低い電気抵抗でありながら揮発成分を透過できる金属化フィルムを得るに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、フィルムの少なくとも一方の面の側に、少なくとも1層の金属層からなる金属膜を有する金属化フィルムであって、該金属膜の表面抵抗が0.04Ω/□以下で、該金属化フィルムのJISK7129:2008に準拠した水蒸気透過度が、温度40℃、湿度90%RHで3.5g/(m2・day)以上である金属化フィルムに関する。
【0013】
また、本発明は、金属化フィルムの製造方法であって、前記金属膜を真空蒸着法にて成膜する金属化フィルムの製造方法に関する。
【0014】
さらに、本発明は、前記金属化フィルムの一方の金属膜の表面に、接着剤層を有する電磁波シールドフィルムに関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明ではフィルムの表面を粗化することで結晶形態をコントロールした金属膜を真空蒸着法にて形成し、低い電気抵抗でありながら揮発成分を透過できる金属化フィルムとそれを用いた電磁波シールドフィルムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】真空蒸着法による一般的な金属化フィルムの金属膜生成方法の断面模式図である。
【
図2】真空蒸着法の斜め蒸着法を用いたときの金属化フィルムの金属膜生成方法の断面模式図である。
【
図3】真空蒸着法による本発明の金属化フィルムの金属膜生成方法の断面模式図である。
【
図4】平坦なPETフィルム上に銅蒸着で2.0μmの厚さの金属膜(1μm厚の金属層を2層)を形成したときの断面のイメージクォリティマップである。
【
図5】表面粗化されたPETフィルム上に銅蒸着で2.0μmの厚さの金属膜(1μm厚の金属層を2層)を形成したときの断面のイメージクォリティマップである。
【
図6】本発明の実施形態に係る金属化フィルムの断面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る金属化フィルムの断面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る電磁波シールドフィルムの断面図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る電磁波シールドフィルムの断面図である。
【
図10】本発明の実施形態に係るシールドプリント配線板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明について以下詳細に説明する。
【0018】
<金属化フィルム>
本発明の金属化フィルム1は、フィルム101の一方、もしくは両方の面に金属膜301を有する(
図6、
図7)。
【0019】
<電磁波シールドフィルム>
電磁波シールドフィルム2は金属化フィルム1の一方の金属膜301表面に接着剤層601を有する(
図8、
図9)。
【0020】
<金属膜>
本発明にかかる金属膜は、金属を主成分とする層(以下、金属層という)を1層または2層以上積層した金属層の集合体のことである。主成分とは、層全体を100原子%としたとき、50原子%を超えることをさす。
【0021】
本発明における金属膜301の表面抵抗は0.04Ω/□以下が好ましく、0.02Ω/□以下がより好ましい。高周波信号を伝送する場合、シールドは信号線の発生するノイズを遮蔽するとともに、グランド安定性が求められる。シールドの電気抵抗が高いとノイズの遮蔽率の低下に加えて、抵抗による電圧降下が発生し、シールドに電位が発生し、信号線の伝送減衰原因の一因となる。金属膜の表面抵抗は低いほど好ましく、1GHz以上の高周波信号では、表面抵抗値は0.04Ω/□以下であることが好ましく、0.02Ω/□以下であることがより好ましい。抵抗値は低いほど好ましいが、下限としては、10-5Ω/□程度である。
【0022】
本発明における金属層の主成分は、銅、銀、及びアルミニウムからなる群より選ばれるいずれかの金属であることが好ましい。ここでいう主成分とは、層全体を100原子%としたとき、35原子%を超えるものをさす。これは金属層のシールド特性および信号減衰特性から、電気抵抗が低いほど望ましいからである。性能的には金も採用できるが、コスト面で高価であり、電磁波シールドフィルムとして使用するには適さない。コストと電気抵抗を考慮すると金属層の主成分は銅であることが好ましい。表面抵抗値0.04Ω/□以下にするという観点から、金属膜の膜厚は0.5μm以上であることが好ましい。なお、表面抵抗が規定の範囲内であれば、一部に酸化物、窒化物などを含んでいても構わない。また、防錆目的で、表層に1nm以上のニッケルもしくはチタンの金属層をスパッタリング等の蒸着法で形成しても構わない。なお、本発明においては、金属層の主成分が銅、銀、及びアルミニウムからなる群より選ばれるいずれかの金属である層を含むことが好ましく、金属膜が複数の金属層からなる場合に、各々全ての金属層の主成分が銅、銀、及びアルミニウムからなる群より選ばれるいずれかの金属である必要は必ずしもない。
【0023】
金属化フィルム1のJISK7129:2008に準拠した水蒸気透過度は、温度40℃、湿度90%RHで3.5g/(m2・day)以上であることが好ましく、5.0g/(m2・day)以上であることがさらに好ましい。水蒸気透過度が3.5g/(m2・day)未満の場合、はんだリフロー工程で急激な加熱を行うと、水蒸気を含む揮発成分が金属膜で遮蔽されてしまい、揮発成分が急激に気化することで層間密着が破壊されてしまう可能性が高くなる。金属化フィルム1の水蒸気透過率が3.5g/(m2・day)以上であれば、はんだリフロー時に層間密着が破壊される可能性は低くなり、5.0g/(m2・day)以上であれば、破壊される可能性はさらに低くなる。なお、水蒸気透過度の上限としては、1,000g/(m2・day)程度である。
【0024】
水蒸気透過率を3.5g/(m
2・day)以上とする金属化フィルム1を作製する方法としては真空蒸着法が好ましく例示される。スパッタリング法で形成された金属層および真空蒸着法で形成された金属層の結晶構造は成膜温度に依存することが知られている。一般的に金属の融点をTm、成膜温度をTdとしたとき、Td<0.7Tmのとき、成膜される金属層は柱状結晶となる。銅の融点は1083℃なので、成膜温度が0.7Tmである758℃より十分低いと銅層は柱状結晶の構造をとる。銅層の成膜温度はフィルム上の温度とほぼ同じであると考えられるため、銅層が柱状結晶であることで、フィルム上の温度が十分低く維持でき、熱ダメージを少なくできたことを確認できる。結晶構造については、金属層の断面積をEBSD(Electron Backscattered Diffraction) 法を用いて観測することが可能である。なお、金属層の成膜時にフィルムが熱により大きな収縮や変形がない場合は、十分冷却されており、結晶構造は柱状結晶の構造となる。一般的な真空蒸着の場合、
図1のように基材であるフィルム101に対して垂直方向201に蒸着金属が入射して、フィルム101上に金属膜301を形成する。このとき金属層の結晶成長はフィルム101に対して垂直方向401方向に柱状に成長することが知られており、金属膜301は柱状結晶となる。蒸着が進むにつれて膜厚が厚くなると、柱状結晶は横方向に太く成長し、隣接する柱状結晶が緻密に接して成長するため、水蒸気などのガスを透過する隙間は無くなり、ガスバリア性は高くなってしまう。
【0025】
これに対して基材であるフィルムに対して斜め方向から蒸着する
図2のような斜め蒸着という手法がある。これはフィルム101に対して蒸着方向を斜め方向201に蒸着金属を入射すると、蒸着方向とは異なる方向401方向に金属が柱状結晶に成長するもので、柱状結晶は横方向へ成長しにくく、柱状結晶間に隙間が発生する特徴がある。金属層の柱状結晶の間に隙間が存在すると、低密度でガス透過性の良い膜が作製できる。また、本手法によれば、金属膜厚を大きくしても柱状結晶が横に広がらないため、金属膜には隙間が存在し、ガス透過性は金属膜厚が大きくなっても維持される。ただ、一般的な斜め蒸着では60~80°まで傾けて蒸着するため、材料の利用効率が低下し、真空蒸着の成膜速度が著しく低下してしまう。また、結晶方位が揃って隙間があるため、機械的に脆くなりやすい特徴もある。
【0026】
本発明は、この斜め蒸着で成膜した金属膜のガス透過性を維持しつつ、成膜速度を低下させない方法として、基材としてのフィルムの表面に凹凸を形成することで、フィルム表面に部分的な斜め蒸着があらゆる方向で発生し、結晶間に隙間を確保できることに着眼した。
図3のように表面に凹凸のある基材であるフィルム102に対し、垂直方向201に蒸着金属が入射して、フィルム102上に金属膜301を形成する。このとき、フィルム201の凹凸によりフィルム表面に対して蒸着方向が斜めになるため、斜め蒸着となり、蒸着入射方向と異なる方向へ金属が柱状成長し始める。ただし、蒸着入射方向はフィルム位置でランダムになるため、柱状成長する方向はランダムな方向を向いてしまい、隣接する結晶と成長方向が接触することで柱状成長が阻害され、断続的で短い柱状成長を繰り返す。斜め蒸着の特徴である横への成長は小さいため、柱状結晶間には隙間が発生し、ガス透過性の優れた金属膜が作製できる。また、
図2のような一般的な斜め蒸着と比較して結晶成長方位は揃っていないため、膜強度は脆くはない。
【0027】
フィルムの、金属膜を有する側の表面の算術平均粗さRaは、0.4μm以上、十点平均粗さRzは2.5μm以上であることが好ましい。Ra、RzはJISB0601:1994に準じたパラメーターである。表面粗さRaが0.4μm以上、Rzが2.5μm以上のときに、斜め蒸着と同じ効果が発現し、ガス透過率の良い金属膜を生成することができる。平均粗さ測定の詳細条件は実施例中に後述するが、株式会社小坂研究所製 高精度微細形状測定機サーフコーダET4000Aで、先端R2μmの触針を用いて、500μm×500μmの面積を測定するものとする。
【0028】
フィルムの、金属膜を有する側の表面における粗さ曲線の二乗平均平方根傾斜RΔqは0.18以上であることが好ましい。また、金属膜を有する側の面における粗さ曲線の算術平均傾斜角RΔaは7.0°以上が好ましく、8.0°以上がより好ましい。二乗平均平方根傾斜RΔqはJISB0601:2001に準拠したパラメーターで、基準長さにおける局部傾斜dZ/dXの二乗平均平方根を表したものである。ここでいう局部傾斜は、断面粗さを示す粗さ曲線Z(x)を微分したもので、微分は基本的に7点公式を用いるものとする。一方、算術平均傾斜角RΔaは、粗さ曲線の基準長さXに対して、表面の凹凸が形成する線分の傾きの絶対値を求め、それを平均したものである。フィルムの表面凹凸によって斜め蒸着と同様の効果を得るためには、凹凸の傾斜が大きい方が、結晶の成長方向が斜めになりやすく好ましい。二乗平均平方根傾斜RΔqが0.18より小さかったり、算術平均傾斜角RΔaが7.0°より小さかったりすると、凹凸による結晶成長方向の変化が小さいため結晶が同一方向に成長しやすく、結晶が大きく成長して緻密になり、ガス透過性が低下する場合がある。測定条件の詳細は実施例中に後述するが、株式会社キーエンス 形状測定レーザマイクロスコープVK-9710(レーザ光源波長408nm)で、対物レンズ50倍を用いて測定し、長さ200μmの線粗さを直行する2方向で測定した平均値を用いることとする。
【0029】
なお、フィルム表面の傾斜については、上述のレーザマイクロスコープで測定して得られる二乗平均平方根傾斜角も大きい方が好ましい。金属膜を有する側の面における粗さ曲線の二乗平方根傾斜角は、10.0°以上が好ましく、12.0°以上がより好ましい。なお、二乗平均平方根傾斜角とは、粗さ曲線の基準長さXに対して、表面の凹凸が形成する線分の傾きの二乗平均を求め、その値の平方根を表したものである。
【0030】
図4は、フィルム表面の粗さRaが0.066μm、Rzが0.958μm、平均傾斜RΔqが0.02、RΔaが0.69°のPETフィルム上に銅蒸着で2.0μmの厚さの金属膜(1μm厚の金属層を2層)を形成したときの断面のイメージクォリティマップ (Image Quality (IQ) Map)である。イメージクォリティマップ はEBSD(Electron Backscattered Diffraction) パタ-ンの鮮明さの指標であるImage Quality(IQ)値をグレースケールで表示した図であり、暗い部位は結晶粒界や表層歪みの存在、あるいは表面汚染によりパタ-ンが不鮮明であることを意味している。このイメージクォリティマップにより結晶の大きさを判別できる。
図4では表面の凹凸がなく、平坦であるため、銅膜の結晶が柱状で大きく成長していることが判別できる。
図5はフィルム表面の粗さRaが0.447μm、Rzが5.376μm、平均傾斜RΔqが0.29、RΔaが8.07°のPETフィルム上に銅蒸着で2.0μmの金属膜(1μm厚の金属層を2層)を形成したときの断面のイメージクォリティマップ (Image Quality (IQ) Map)である。
図5はPETフィルム表面の凹凸が大きいことで、柱状成長が阻害されている部分が多く確認される。柱状結晶が阻害されている部分は結晶間に隙間が存在し、ガス透過性が良いことが推測される。
【0031】
表面粗化による局所的な斜め蒸着で柱状結晶の横方向の成長と高さ方向の成長が抑制されることで結晶間に空隙が発生し、ガス透過性の良い金属膜が生成できるため、結晶粒径の大きさは重要である。金属膜301の平均結晶粒径は50nm以上200nm以下が好ましく、50nm以上180nm以下がより好ましい。平均結晶粒径が50nm未満の場合は、結晶間の空隙が大きくなりすぎ、金属膜の表面抵抗が適正範囲よりも上昇してしまうことがある。一方、平均結晶粒径が200nmを超えると、結晶間の空隙が小さくなり、ガス透過性が低下してしまい、金属化フィルム1の水蒸気透過度3.5g/(m2・day)以上を確保できないことがある。なお、平均結晶粒径は、積層体の金属膜断面について、透過EBSD(Electron Backscattered Diffraction)法を用いて調べることができる。
【0032】
本発明の金属化フィルム1の金属膜301は電気抵抗が低いことがより好ましいため、膜厚は大きい方が好ましいが、真空蒸着で金属膜を形成する場合は、膜厚を大きくすると蒸着時に基材であるフィルムにかかる熱量も大きくなり、基材に熱変形が生じてしまうおそれがある。そのため、金属膜の膜厚は3.0μm以下であることが好ましい。
【0033】
金属膜301にピンホール等の開口部は、膜の機械的強度を低下させたり、膜の電気抵抗(表面抵抗)が向上したりするため、好ましくない。5μm以上の大きさの開口部で10個/cm2未満、さらには1個/cm2未満であることが好ましい。ただし、表面抵抗0.04Ω/□以下の金属膜を真空蒸着で作製する場合、通常の真空蒸着では銅膜換算で0.5μm以上と十分厚い金属膜であり、ピンホールなどの開口部は多く発生しない。フィルム表面が極端に汚れていたり、金属膜に作為的に開口部を形成したりしない限り、開口部が10個/cm2以上になることはほとんどない。
【0034】
なお、ここで言う開口部の個数とは、暗室中で民生用の写真用バックライトを光源にして目視で5μm以上のピンホールの数を測定したものである。測定は10cm2以上の面積で行い、1cm2辺りの数に換算するものとする。
【0035】
金属膜表面の算術平均粗さRaは0.5μm以上、十点平均粗さRzは3.5μm以上であることが好ましい。パラメーターの定義、測定方法は上述のフィルム同様である。Raが0.5μm以上、Rzが3.5μm以上の場合、表面の凹凸によって斜め蒸着と同じ効果が発現しており、ガス透過率の良い金属膜となる。Raが0.5μm未満であったり、Rzが3.5μm未満であったりすると、金属膜を形成する工程で、フィルムの凹凸の効果が十分でなく、結晶が大きく成長してガス透過性が低くなっている場合がある。
【0036】
金属膜の表面における粗さ曲線の二乗平均平方根傾斜RΔqは0.10以上、算術平均傾斜角RΔaは3.0°以上が好ましく、7.0°以上がより好ましい。パラメーターの定義、測定方法は上述のフィルムと同様である。RΔqが0.10以上であったり、RΔaが3.0°以上であったりすると、フィルムの凹凸傾斜によって金属膜の結晶サイズが小さくなって、水蒸気透過性が高くなると考えられる。一方、RΔqが0.10未満であったり、RΔaが3.0°未満であったりする場合は、フィルムの凹凸傾斜の効果が小さく、斜め蒸着のような結晶成長とならず、結晶サイズが大きくなってガス透過性が低下する場合がある。
【0037】
なお、金属膜表面の傾斜についても、上述のフィルム同様に二乗平均平方根傾斜角も大きい方が好ましい。金属膜の表面における粗さ曲線の二乗平方根傾斜角は、6.0°以上が好ましく、10.0°以上がより好ましい。
【0038】
<フィルム>
本発明で用いられるフィルム101とは、合成樹脂などの高分子を薄い膜状に成型したものである。フィルム101は、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンナフタレートフィルムといったポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルムを用いることができる。このうちポリエチレンテレフタレートフィルムがより好ましく用いられる。これらのフィルムは単独で用いても構わないし、複合されたものを用いても構わない。またフィルム表面に樹脂や粘着剤等をコーティングしたものを用いても構わない。
【0039】
フィルム101の厚さは、ガス透過性を考慮すると薄い方がよいため、10μm以下が好ましく、6μm以下であることがより好ましい。ただし、フィルム101が薄すぎるとフィルム自体の強度が弱くなり、蒸着やプリント基板への貼り合わせの工程でシワ等が発生して取り扱いが難しくなる。そのため、
図7のように離型層を有するキャリアフィルム501上にフィルム101を形成し、その上に金属膜301を形成して金属化フィルム1を作製しても構わない。キャリアフィルム501としては特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレートフィルムがより好ましく用いられる。キャリアフィルムの厚さも25μm以上100μm以下であれば、取り扱いやすく好ましい。
【0040】
また、フィルム101として、離型層を有するキャリアフィルムに樹脂をコーティングして形成したフィルムを用いることもできる。樹脂としては熱可塑性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物、又は活性エネルギー線硬化性組成物等を用いることができる。熱可塑性樹脂組成物は、特に限定されないが、スチレン系樹脂組成物、酢酸ビニル系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、ポリエチレン系樹脂組成物、ポリプロピレン系樹脂組成物、イミド系樹脂組成物、又はアクリル系樹脂組成物等が挙げられる。熱硬化性樹脂組成物は、特に限定されないが、フェノール系樹脂組成物、エポキシ系樹脂組成物、末端にイソシアネート基を有するウレタン系樹脂組成物、末端にイソシアネート基を有するウレア系樹脂、末端にイソシアネート基を有するウレタンウレア系樹脂、メラミン系樹脂組成物、又はアルキッド系樹脂組成物等を用いることができる。また、活性エネルギー線硬化性組成物としては、特に限定されないが、例えば、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する重合性化合物等を用いることができる。これらの樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
また、これらの中でも、耐リフロー性を向上させて、電磁波シールドフィルム2とプリント配線板3との電気的な接続の低下を防止するとの観点から、末端にイソシアネート基を有するウレタンウレア系樹脂又は末端にイソシアネート基を有するウレタンウレア系樹脂とエポキシ系樹脂を併用した樹脂であることが好ましい。末端にイソシアネート基を有するウレタン系樹脂又は末端にイソシアネート基を有するウレタンウレア系樹脂は、1~30mgKOH/gの酸価を有することが好ましく、3~20mgKOH/gの酸価を有することがより好ましい。また、酸価が1~30mgKOH/gの範囲内で、かつ酸価が異なる2以上のウレタン系樹脂またはウレタンウレア系樹脂を併用してもよい。酸価が1mgKOH/g以上であると電磁波シールドフィルムの耐リフロー性が良好となり、30mgKOH/g以下であると電磁波シールドフィルムの耐屈曲性が良好となる。なお、酸価はJISK0070:1992に準拠して測定される。また、キャリアフィルムに樹脂をコーティングして形成したフィルム101は、単独の材料により形成されていても、2種以上の材料から形成されていてもよい。
【0042】
キャリアフィルムに樹脂をコーティングして形成したフィルム101には、必要に応じて、硬化促進剤、粘着性付与剤、酸化防止剤、顔料、染料、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング剤、充填剤、難燃剤、粘度調節剤、及びブロッキング防止剤等の少なくとも1つが含まれていてもよい。
【0043】
キャリアフィルムに樹脂をコーティングして形成したフィルム101は、材質又は硬度若しくは弾性率等の物性が異なる2層以上の積層体であってもよい。例えば、硬度が低い外層と、硬度が高い内層との積層体とすれば、外層がクッション効果を有するため、電磁波シールドフィルム2をプリント配線板3に加熱加圧する工程において金属膜301に加わる圧力を緩和できる。このため、プリント配線板に設けられた段差によって金属膜301が破壊されることを抑制することができる。
【0044】
キャリアフィルムに樹脂をコーティングして形成したフィルム101の厚さは、特に限定されず、必要に応じて適宜設定することができるが、1μm以上20μm以下であることが好ましく、1μm以上10μm以下であることがより好ましく、4μm以上6μm以下であることがさらに好ましい。キャリアフィルムに樹脂をコーティングして形成したフィルム101の厚さが1μm以上であれば、接着剤層601及び金属膜301を充分に保護することができる。また、キャリアフィルムに樹脂をコーティングして形成したフィルム101の厚さが20μm以下であれば、電磁波シールドフィルム2の屈曲性を確保することができ、屈曲性が要求される部材に1枚の電磁波シールドフィルム2を適用することが容易となる。
【0045】
このようなことから、フィルムの、金属膜と接する側の面に、ポリエステル、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリプロピレン 、ポリエーテルエーテルケトン及びエポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つの樹脂を含むことが好ましい。フィルム101については、はんだリフロー通過性を考慮すると、耐熱性に優れることが必要であるため、これらの中でも、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、エポキシ樹脂を用いることが更に好ましい。
【0046】
フィルム表面に凹凸を作製する方法としては特に限定しないが、フィルムにブラスト加工で凹凸を形成する方法や、フィラーなどの大きな粒子を含んだ樹脂を薄く塗布し、粒子で凹凸を形成する方法、さらにはフィルム成形時に粒子を練りこんでおく方法などを適用できる。
【0047】
ブラスト加工は、研磨材等の微細な粒子をフィルムに吹き付けて微細凹凸を付与する方法である。研磨材は、珪砂やアルミナ、ジルコニア、シリカなどからなるセラミックビーズおよびガラスビーズ、やドライアイス粒など公知のものを使用できる。研磨材を吹き付ける方法は、研磨材を遠心力で吹き付けるショットブラスト(遠心式ブラスト)、圧縮空気を用いたエアーブラスト、スラリーにして高圧噴霧するウェットブラスト等、特に限定されない。
【0048】
粒子を含む樹脂を塗布して凹凸を形成する場合、樹脂の種類は特に限定されないが、フィルムと樹脂層の密着を確保するため、有機成分を主体とするものが好ましい。樹脂の種類としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂などを挙げることができる。これらの樹脂は単独で用いてもよく、あるいは2種以上の共重合体もしくは混合物としたものを用いてもよい。中でもポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂もしくはメタクリル樹脂が密着性、粒子分散性の点から好ましい。
【0049】
凹凸形成に使用する粒子の形状は、例えば、星状、扁平状、菱形状、直方状、針状、金平糖状、不定形状のような非球形状、また球状(粒子の断面形状が曲面で囲まれているものを意味する)等が挙げられる。また、粒子は多孔質、無孔質、中空質であっても良く、さらに異なる粒子形状を有する粒子を混合してもよい。
【0050】
粒子の材質は、有機系化合物、無機系化合物のいずれでもよく特に限定されるものではなく、異なる材質の粒子を混合して用いてもよい。粒子の材質としては、有機系化合物の場合は高融点である架橋高分子成分を主体とする樹脂が好ましく、例えばポリエステル樹脂、ベンゾグアナミンのようなポリアミド系樹脂粒子、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は単独で用いてもよく、あるいは2種以上の共重合体もしくは混合物としたものを用いてもよい。無機系化合物の場合は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫化亜鉛、リン酸カルシウム、シリカ、アルミナ、マイカ、雲母チタン、タルク、クレー、カオリン、フッ化リチウム、フッ化カルシウム等が挙げられる。
【0051】
凹凸を形成するために塗工する樹脂層の厚みは特に制限されないが、好ましくは0.05μm以上5μm以下である。厚みが0.05μmより薄いと、樹脂層がムラになったり、粒子が脱落したりする場合があり、厚みが5μmより厚いと、樹脂層が割れたり、フィルム自体の耐熱性などの特性を損ねたりする場合がある。
【0052】
<アンカー層>
本発明の金属化フィルム1のフィルム101と金属膜301との間には、アンカー層を有していても構わない。アンカー層を設けることにより、フィルムと金属膜の密着力向上が期待できる。アンカー層としてはフィルム101上にスパッタリング法により金属のアンカー層を形成することが好ましい。スパッタリング法ではアンカー層厚みを薄くすることが可能で、より薄膜化が要求される電磁波シールドフィルム用途では最適である。
【0053】
アンカー層としてはニッケル、チタン、銅、及びクロムからなる群より選ばれるいずれか1つ以上を含む金属層であることが好ましい。金属膜301が銅である場合、アンカー層も同じ金属である銅を用いることが、金属膜301への影響が少なく好ましいが、フィルム101がポリイミドなどの銅を拡散させてしまう材料である場合、密着力が確保できない。このような場合は、フィルム101と金属膜301の両方に反応しにくいニッケル、チタン、クロムなどから選択することで、アンカー層にバッファ層としての役割も持たせることができる。
【0054】
アンカー層の厚みは5nm以上30nm以下であることが好ましく、更に10nm以上20nm以下であることがより好ましい。厚みが5nm未満であると十分な密着力が得られないことがある。一方で、厚みが30nmを超えるとスパッタリング法で形成されたアンカー層の平均結晶粒径が大きくなり、金属の種類によってはその上に真空蒸着で形成する金属膜301がアンカー層の結晶粒径の大きさの影響を受け、金属膜301の平均結晶粒径も大きくなってしまい、制御が困難になることがある。アンカー層をフィルム101と金属膜301を直接接触させないバッファ層としての役割もたせる場合は、10nm以上であることが好ましく、金属膜301の結晶制御の影響を少なくするためにはアンカー層は20nm以下であること好ましい。
【0055】
<接着剤層>
本発明の電磁波シールドフィルムは、本発明の金属化フィルムの一方の金属膜の表面に、接着剤層を有するものであるが、接着剤層について説明する。接着剤層601は、電磁波シールドフィルム2をプリント配線板3に固定できるものであれば特に限定されないが、接着性樹脂組成物と導電性フィラーとを有する導電性接着剤層とすることが好ましい。
【0056】
接着性樹脂組成物としては、特に限定されないが、スチレン系樹脂組成物、酢酸ビニル系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、ポリエチレン系樹脂組成物、ポリプロピレン系樹脂組成物、イミド系樹脂組成物、アミド系樹脂組成物、若しくはアクリル系樹脂組成物等の熱可塑性樹脂組成物、又はフェノール系樹脂組成物、エポキシ系樹脂組成物、ウレタン系樹脂組成物、メラミン系樹脂組成物、若しくはアルキッド系樹脂組成物等の熱硬化性樹脂組成物等を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
接着剤層601には、必要に応じて、硬化促進剤、粘着性付与剤、酸化防止剤、顔料、染料、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング剤、充填剤、難燃剤、及び粘度調節剤等が含まれていてもよい。
【0058】
接着剤層601の厚みは、特に限定されず、必要に応じて適宜設定することができるが、3μm以上10μm以下が好ましく、4μm以上7μm以下がより好ましい。
【0059】
導電性フィラーとしては、特に限定されないが、例えば、金属フィラー、金属被覆樹脂フィラー、カーボンフィラー及びそれらの混合物を使用することができる。上記金属フィラーとしては、銅粉、銀粉、ニッケル粉、銀コ-ト銅粉、金コート銅粉、銀コートニッケル粉、金コートニッケル粉があり、これら金属粉は、電解法、アトマイズ法、還元法により作製することができる。
【0060】
また、特に、フィラー同士の接触を得やすくするために、導電性フィラーの平均粒子径を3μm以上50μm以下とすることが好ましい。また、導電性フィラーの形状としては、球状、フレーク状、樹枝状、繊維状などが挙げられる。これらの中でも、接続抵抗、コストの観点から、銀粉、銀コート銅粉、銅粉からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0061】
接着剤層601が導電性フィラーを含有することで、異方導電性接着剤層または等方導電性
接着剤層とすることができる。
【0062】
導電性フィラーの配合量は、等方導電性接着剤層である場合には、接着剤層601の全体量
に対して、39重量%を超えて400重量%以下の範囲内で添加することができる。また、異方導電性接着剤層である場合には、接着剤層601の全体量に対して、3重量%以上39重量%以下の範囲で添加することができる。
(金属化フィルムの製造方法)
次に、本発明の金属化フィルム1の製造方法の一例を説明する。本発明の金属化フィルム1の製造方法は特に限定されないが、例えばフィルム101を準備する工程と、フィルム101に必要に応じてアンカー層を形成する工程と金属膜301を形成する工程とを有する製造方法が例示できる。
【0063】
<フィルムを準備する工程>
合成樹脂などの高分子を薄い膜状に成型したフィルム101を使用する場合、金属膜301を形成する側の表面を粗化する。粗化する方法は特に限定しないが、フィルム表面にサンドブラストなどを施して凹凸をつける方法とフィラーなどの粒子を含んだコート材を表面に被覆して凹凸をつける方法が例示できる。
【0064】
ブラスト加工は、研磨材等の微細な粒子をフィルムに吹き付けて微細凹凸を付与する方法である。研磨材は、珪砂やアルミナ、ジルコニア、シリカなどからなるセラミックビーズおよびガラスビーズ、やドライアイス粒など公知のものを使用できる。研磨材を吹き付ける方法は、研磨材を遠心力で吹き付けるショットブラスト(遠心式ブラスト)、圧縮空気を用いたエアーブラスト、スラリーにして高圧噴霧するウェットブラスト等、特に限定されない。
【0065】
粒子を含む樹脂を塗工して凹凸を形成する場合、塗工方法は特に限定されず、グラビアコート、ロールコート、ダイコート、スピンコート、リバースコート、バーコート、スクリーンコート、ブレードコート、エアーナイフコートおよびディップコートなどの各種塗布方法を用いることができる。
【0066】
キャリアフィルムに樹脂をコーティングして形成したフィルム101を用いる場合は樹脂用組成物を調製する。この樹脂用組成物は、樹脂組成物に、溶剤及びその他の配合剤を適量加えて調製することができる。溶剤は、例えば、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール及びジメチルホルムアミド等とすることができる。その他の配合剤としては、架橋剤や重合用触媒、硬化促進剤、及び着色剤等を加えることができる。また、表面凹凸を形成する目的でシリカなどの粒子を加えることもできる。その他の配合剤は必要に応じて加えればよい。
【0067】
次に、キャリアフィルム501の片面に、調製した樹脂用組成物を塗布する。キャリアフィルム501の片面に樹脂用組成物を塗布する方法としては、特に限定されず、リップコーティング、コンマコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング等、公知の技術を適用することができる。
【0068】
キャリアフィルム501は、特に限定されず、例えば、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリイミド系、ポリフェニレンサルファイド系等の材料により形成することができる。なお、キャリアフィルム501と樹脂をコーティングして形成したフィルム101との間に、離型剤層を設けてもよい。
【0069】
そして、キャリアフィルム501に樹脂をコーティングした後、加熱乾燥して溶剤を除去することにより、樹脂をコーティングして形成したフィルム101が形成される。なお、キャリアフィルム501は、樹脂をコーティングして形成したフィルム101から剥離することができるが、キャリアフィルム501の剥離は、電磁波シールドフィルム2をプリント配線板3に貼り付けた後に行うことが好ましい。このようにすれば、支持基材により電磁波シールドフィルム2を保護することができる。
【0070】
樹脂をコーティングして形成したフィルム101の場合も表面を粗化する。粗化する方法は特に限定しないが、フィルム表面にサンドブラストなどを施して凹凸をつける方法(上記に同じ)や、フィラーなどの粒子を含んだコート材を表面に被覆して凹凸をつける方法(上記に同じ)が例示できる。
【0071】
<アンカー層形成工程>
次に、フィルム101の表面にアンカー層を形成する場合、具体的には、バッチ式真空蒸着装置(アルバック製 EBH-800)内にフィルムを設置し、50mm×550mmサイズの金属ターゲットを用い、アルゴンガス雰囲気中で真空到達度5×10-1Pa以下に調整して、DC電源を所定の金属膜厚になる時間、連続して印加することにより、アンカー層を形成することができる。なお、スパッタリング後に実施する金属膜301を形成する真空蒸着については、連続して処理を行い、スパッタリングと蒸着の間で大気と触れることなく処理できる。
【0072】
<金属膜を形成する工程>
次に、フィルム101表面もしくはアンカー層表面に金属膜301を形成する。より具体的には、バッチ式真空蒸着装置(アルバック製 EBH-800)内にフィルムを設置し、蒸着ボート上に目的の厚みになる量の金属を載置した後に、真空到達度9.0×10-3Pa以下になるまで真空引きをしてから、蒸発ボートを加熱して真空蒸着を実施することができる。なお、アンカー層を形成する場合はアンカー層形成と金属膜形成は連続して処理を行い、スパッタリングと蒸着の間で大気と触れさせないようにできる。
【0073】
一般にはフィルム101の片面に金属膜301を形成するが、必要に応じてフィルム101の両面に金属膜を形成しても構わない。ただし、両面に金属膜301を形成する場合は、フィルム101の両面を粗化させておく必要がある。
【0074】
(電磁波シールドフィルムの製造方法)
次に、本発明の電磁波シールドフィルム2の製造方法の一例を説明する。本発明の電磁波シールドフィルムは、本発明の金属化フィルムの一方の金属膜の表面に、接着剤層を有するものであるが、このような本発明の電磁波シールドフィルム2の製造方法は特に限定されない。例えば、本発明の金属化フィルム1の一方の金属膜301の表面に接着剤層用組成物を塗布した後、接着剤組成用組成物を硬化して接着剤層601を形成する製造方法が例示できる。
【0075】
<接着剤層形成工程>
本発明の金属化フィルム1の金属膜301の表面に接着剤層用組成物を塗布して、接着剤層601を形成する場合、接着剤層用組成物は、樹脂組成物と溶剤とを含む。樹脂組成物は、特に限定されないが、スチレン系樹脂組成物、酢酸ビニル系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、ポリエチレン系樹脂組成物、ポリプロピレン系樹脂組成物、イミド系樹脂組成物、アミド系樹脂組成物、若しくはアクリル系樹脂組成物等の熱可塑性樹脂組成物、又はフェノール系樹脂組成物、エポキシ系樹脂組成物、ウレタン系樹脂組成物、メラミン系樹脂組成物、若しくはアルキッド系樹脂組成物等の熱硬化性樹脂組成物等とすることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0076】
溶剤は、例えば、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール及びジメチルホルムアミド等を使用することができる。また、必要に応じて、接着剤層用組成物に硬化促進剤、粘着性付与剤、酸化防止剤、顔料、染料、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング剤、充填剤、難燃剤、及び粘度調節剤等の少なくとも1つが含まれていてもよい。接着剤層用組成物中における樹脂組成物の比率は、接着剤層601の厚みや、塗工方法、液粘度等に応じて適宜設定すればよい。
【0077】
金属化フィルム1の金属膜301の表面に接着剤層用組成物を塗布する方法としては、特に限定されず、リップコーティング、コンマコーティング、グラビアコーティング、又はスロットダイコーティング等を用いることができる。
【0078】
そして、本発明の金属化フィルム1の金属膜301の表面上に接着剤層用組成物を塗布した後、加熱乾燥して溶剤を除去することにより、接着剤層601を形成する。なお、必要に応じて、接着剤層601の表面に離型フィルムを貼り合わせてもよい。
【0079】
(シールドプリント配線板)
本実施形態の電磁波シールドフィルム2は、例えば、
図10に示すシールドプリント配線
板4に用いることができる。このシールドプリント配線板4は、プリント配線板3と、電磁波シールドフィルム2と備えている。
【0080】
プリント配線板3は、ベース層702と、ベース層702上に形成されたプリント回路(グランド回路)801と、ベース層702上において、プリント回路801に隣接して設けられた絶縁性接着剤層901と、プリント回路801の一部を露出するための開口部が形成され、絶縁性接着剤層901を覆うように設けられた絶縁性のカバーレイ701とを有している。なお、絶縁性接着剤層901とカバーレイ701により、プリント配線板3の絶縁層が構成される。
【0081】
ベース層702、絶縁性接着剤層901及びカバーレイ701は、特に限定されず、例えば、樹脂フィルム等とすることができ、例えば、ポリプロピレン、架橋ポリエチレン、ポリエステル、ポリベンゾイミダゾール、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルイミド、又はポリフェニレンサルファイド等の樹脂により形成することができる。プリント回路801は、例えば、ベース層702上に形成された銅配線パターン等とすることができる。
【0082】
なお、電磁波シールドフィルム2は、接着剤層601をカバーレイ701側にしてプリント配
線板3と接着されている。
【0083】
次に、シールドプリント配線板4の製造方法について説明する。プリント配線板3上に、電磁波シールドフィルム2を載置し、プレス機で加熱しつつ加圧する。加熱により柔らかくなった接着剤層601の一部は、加圧によりカバーレイ701に形成された開口部に流れ込む。これにより、金属膜301とプリント配線板3のグランド回路801とが、導電性接着剤を介して接続され、金属膜301とグランド回路801とが接続される。
【実施例】
【0084】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、これらの実施例を本発明の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを発明の範囲から除外するものではない。
【0085】
(マグネトロンスパッタリング)
バッチ式真空蒸着装置(アルバック製 EBH-800)内にフィルムを設置し、50mm×550mmサイズのニッケルターゲットを用い、アルゴンガス雰囲気中で真空到達度5×10-1Pa以下に調整して、DC電源を所定の金属膜厚になる時間連続して印加した。
【0086】
なお、スパッタリング後に実施する真空蒸着については連続して処理を行い、スパッタリングと蒸着の間で大気と触れさせないようにした。
【0087】
(真空蒸着)
バッチ式真空蒸着装置(アルバック製 EBH-800)内にフィルムを設置し、蒸着ボート上に銅を目的厚みになる量を載置した後に、真空到達度9.0×10-3Pa以下になるまで真空引きをしてから、蒸発ボートを加熱して真空蒸着を実施した。
【0088】
(表面粗さの測定)
表面粗さは、株式会社小坂研究所製の微細形状測定機サーフコーダET4000Aを用いて、試料は付属のかまぼこ状のガラス板に固定し、触針は先端R2μmのものを使用した。また、データの解析は、三次元表面粗さ解析システムi-Face model TDA31を使用した。データは無作為に3か所測定して採取し、それらの平均をRa、Rzそれぞれの値とした。
【0089】
測定条件:X測定長 500μm、ピッチ 1μm
Y測定長 500μm、ピッチ 5μm
測定速度 0.1mm/sec。
【0090】
(表面傾斜の測定)
表面傾斜は、キーエンス株式会社製のレーザマイクロスコープVK-9700を用いて測定し、形状解析アプリケーションVK-H1A1を用いて分析した。測定は無作為に3か所行い、それらの平均をRΔq、RΔaの値とした。
【0091】
測定条件:対物レンズ50倍、ズーム1倍
分析条件:自動ノイズ除去:ノイズ検出領域 通常
傾き補正:面傾き補正(自動)
線粗さ解析 解析長 200μm
高さスムージング:単純平均±2。
【0092】
線粗さのプロファイルは、撮影した画像において、水平方向と垂直方向のそれぞれ中央で200μm長の断面データを採取し、2つの値の平均値をその画像におけるRΔq、RΔaとした。
【0093】
(表面抵抗の測定)
4端子法により、表面抵抗を測定した。測定するサンプルを100mm□にカットし、カットしたフィルム中央部の位置を3回繰り返し測定し、3回の平均値を表面抵抗の測定値とした。測定には簡易型低抵抗率計(株式会社三菱ケミカルアナリテック製 ロレスタEP MCP-T360 ASPプローブ)を使い、単位はΩ/□と表示する。
【0094】
(平均結晶粒径測定方法)
金属膜の平均結晶粒径は、EBSDを用いて算出した。まず、積層体の金属膜断面を薄く切り出して、その回折パターンを取り込んだ。得られた回折パターンで、指定した方位角差5°以内の測定点が2点以上連続して存在する場合を同一粒として結晶粒子を識別し、その個々の結晶粒について、その円相当径(同一面積の円の直径)を算出した。こうして得られた結晶粒径を下記式に従って平均した値を平均結晶粒径とした。式中、Nは粒子の総数、diは個々の粒子の粒径(円相当径)を示す。
【0095】
【0096】
なお、回折パターンを取り込む条件は以下の通りである。
使用装置:
熱電界放射型走査電子顕微鏡(TFE-SEM)JSM-6500F(日本電子社製)
OIM方位解析装置 DigiViewIV スロースキャンCCDカメラ
OIM Data Collection ver.7.x
OIM Analysis ver.7.x
分析条件:加速電圧 15kV
照射電流 15nA
試料傾斜 -30deg(透過EBSD法)
表面測定倍率 5,000倍
測定視野領域 3×20μm
間隔 20nm/step。
【0097】
(開口部個数の計測)
開口部の個数は、暗室中で民生用の写真用バックライトを光源にして目視で5μm以上のピンホールの数を測定した。測定は10cm2以上の面積を行い、1cm2辺りの数に換算した。
【0098】
(銅層の厚み測定)
金属層の厚みは蛍光X線膜厚計(エスエスアイ・ナノテクノロジー製、SFT9400)にて測定した。
【0099】
(アンカー層の厚み)
透明PETフィルムに成膜したスパッタ金属層の透過率を透過率計で測定し、得られた値からLambert-Beerの法則
【0100】
【0101】
から膜厚を算出した。ここでI0は薄膜通過前の光量、Iは薄膜通過後の光量、αは吸光係数、Zは膜厚、kは消衰係数、λは波長である。I/I0を透過率として波長555nmのときの消衰係数をチタンは2.56、ニッケルは3.2588の値を採用し、アンカー層であるスパッタ金属層の膜厚とした。
【0102】
(水蒸気透過度)
水蒸気透過度は、JISK7129:2008(赤外線)に準拠した方法で測定した。米国、モコン(MOCON)社製の水蒸気透過率透過率測定装置(機種名、PERMATRAN(登録商標)W3/31)を使用して温度40℃、湿度90%RHの条件で測定した。測定は2枚の試験片について2回ずつ行い、合計4つの測定値の平均値を水蒸気透過率の値とした。
(リフロー通過性)
耐熱性のあるフィルムを使用した場合、作製したシールドプリント配線板の耐リフロー性を以下の要領で評価した。リフローの条件としては、鉛フリーハンダを想定し、シールドプリント配線板におけるシールドフィルムが265℃に1秒間曝されるような温度プロファイルを設定した。
【0103】
そして、シールドプリント配線板を、上記プロファイルの温度条件下で、3回曝した後、層間密着が破壊されて膨れが発生していないかを目視にて確認した。膨れが発生していないものを○、膨れ発生したものを×とした。
【0104】
(電界シールド性、磁場シールド性の評価)
金属化フィルム単体をKEC法での近接電場、近接磁場シールド性能の測定をした。測定機器はマイクロ波・ミリ波帯評価システム( Agilent社製 E5071C ENA、ネットワークアナライザ(9kHz~4.5GHz))を使用し、1GHz時の電界シールド性(近接電場シールド性能)と磁界シールド性(近接磁場シールド性能)を測定した。
【0105】
(実施例1)
<金属化フィルムの製造>
厚さ50μmの2軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製、“ルミラー(登録商標)”タイプ:S10)の片面に、研磨材として平均粒径200μmの珪砂を用い、1m離れたフィルムにショットするショットブラスト方式で処理した後、水洗して表面粗化したフィルムを得た。表面粗化後のフィルム表面粗さはRa 0.87μm、Rz 7.96μm、凹凸の傾斜はRΔq 0.56、RΔa 15.5°であった。
【0106】
次に、表面凹凸を形成した表面にマグネトロンスパッタリング法でニッケルを5nmの厚みに蒸着した。条件は、DC電源を用いてスパッタリング出力3.0kwとした。その後、真空蒸着法によって銅を2.0μmの厚みに真空蒸着した。このようにして作成した金属化フィルムの銅の金属膜の平均結晶粒径は74nm、表面抵抗は0.0198Ω/□、ピンホール(開口部個数)は0.4個/cm2であった。金属膜の表面粗さはRa 1.05μm、Rz 8.15μm、凹凸の傾斜はRΔq 0.70、RΔa 16.3°であった。また、金属化フィルムの水蒸気透過度は6.68g/(m2・day)、1GHzでの電界シールド性は80dB、1GHzでの磁界シールド性は60dBであった。
【0107】
(実施例2)
<金属化フィルムの製造>
厚さ50μmの2軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製、“ルミラー(登録商標)”タイプ:S10)に粒子を含む樹脂を塗工して表面粗化したフィルムを準備した。粒子を含む樹脂は、DIC株式会社製アクリル樹脂“アクリディック(登録商標)”WFL-908に、株式会社日本触媒製シリカ球状微粒子“シーホースター”KE-P30(平均粒子径0.3μm)を樹脂重量比15重量%の量を分散させたものを用いた。アクリル樹脂をメイヤーバーで塗工し、120℃で1分間乾燥して厚み0.5μmの層として、表面凹凸フィルムを得た。得られた表面粗化フィルムの表面粗さはRa 0.51μm、Rz 3.36μm、凹凸の傾斜はRΔq 0.21、RΔa 7.3°であった。
【0108】
次に、フィルム表面にマグネトロンスパッタリング法でニッケルを5nmの厚みに蒸着した。条件は、DC電源を用いてスパッタリング出力3.0kwとした。その後、真空蒸着法によって銅を1.0μmの厚みに真空蒸着した。このようにして作製した金属化フィルムの銅の金属膜の平均結晶粒径は102nm、金属膜の表面抵抗は0.0280Ω/□、ピンホール(開口部個数)は0.5個/cm2であった。金属膜の表面粗さはRa 0.57μm、Rz 4.92μm、凹凸の傾斜はRΔq 0.13、RΔa 4.6°であった。また、金属化フィルムの水蒸気透過度は3.54g/(m2・day)、1GHzでの電界シールド性は65dB、1GHzでの磁界シールド性は51dBであった。
【0109】
(実施例3)
<金属化フィルムの製造>
真空蒸着法によって銅を0.7μmの厚みに真空蒸着した以外は全て実施例2と同じ条件で金属化フィルムを得た。このようにして作製した金属化フィルムの銅の金属膜の平均結晶粒径は106nm、表面抵抗は0.0384Ω/□、ピンホール(開口部個数)は0.6個/cm2であった。金属膜の表面粗さはRa 0.54μm、Rz 4.28μm、凹凸の傾斜はRΔq 0.18、RΔa 6.1°であった。また、金属化フィルムの水蒸気透過度は3.76g/(m2・day)、1GHzでの電界シールド性は60dB、1GHzでの磁界シールド性は49dBであった。
【0110】
(実施例4)
<金属化フィルムの製造>
厚さ60μmで表面に離型処理を施したPETフィルムを支持基材として、その上にビスフェノールA型エポキシ系樹脂(三菱化学(株)製、jER1256)及びメチルエチルケトンからなる組成物(固形分量30質量%)を塗布し、加熱乾燥することによって、5μmの厚みを有するエポキシ系樹脂フィルムを作製した。エポキシ系樹脂フィルム表面に実施例1と同様にショットブラスト及び水洗して表面を粗化した。表面粗化後のフィルム表面粗さはRa 0.46μm、Rz 2.57μm、凹凸の傾斜はRΔq 0.49、RΔa 13.4°であった。
【0111】
次に、バッチ式真空蒸着装置(アルバック製 EBH-800)内に前述のフィルムを設置し、アルゴンガス雰囲気中で、真空到達度5×10-1Pa以下に調整して、マグネトロンスパッタリング法(DC電源出力:3.0kW)により、5nmの厚みのニッケルをアンカー層として形成した。
【0112】
次に、蒸着ボート上に銅を載置した後に、真空到達度9.0×10-3Pa以下になるまで真空引きを行い、その後、蒸発ボートを加熱して真空蒸着で2.0μmの銅金属膜を形成した。なお、アンカー層の形成と、金属膜の形成については連続して処理を行い、スパッタリングと蒸着の間で大気と触れさせないようにした。このように作製した金属化フィルムの銅の金属膜の平均結晶粒径は115nm、表面抵抗は0.0144Ω/□、ピンホール(開口部個数)は0.4個/cm2であった。金属膜の表面粗さはRa 0.64μm、Rz 3.61μm、凹凸の傾斜はRΔq 0.53、RΔa 14.7°であった。また、金属化フィルムの水蒸気透過度は10.96g/(m2・day)、1GHzでの電界シールド性は80dB、1GHzでの磁界シールド性は61dBであった。
【0113】
本件は耐リフロー性のあるエポキシ系樹脂フィルムであるため、以下の評価を追加した。
<電磁波シールドフィルムの製造>
金属化フィルムの金属膜の表面に、エポキシ系樹脂と平均粒子径が3μmの粒子径球状の銀
コート銅粉(配合量50重量%)からなる接着剤を塗布して、5μmの厚みを有する接着剤層を形成した。
【0114】
<シールドプリント配線板の作製>
作製した電磁波シールドフィルムとプリント配線板とを、電磁波シールドフィルムの接着剤層とプリント配線板とが対向するように重ね合わせ、プレス機を用いて170℃、3.0MPaの条件で1分間加熱加圧した後、同じ温度および圧力で3分間加熱加圧し、シールドプリント配線板を作製した。
【0115】
なお、プリント配線板は、互いに間隔をおいて平行に延びる2本の銅箔パターンと、銅箔パターンを覆うとともに、ポリイミドからなる絶縁層(厚み:25μm)を有しており、絶縁層には、各銅箔パターンを露出する開口部(直径:1mm)を設けた。また、この開口部が電磁波シールドフィルムにより完全に覆われるように、電磁波シールドフィルムの接着剤層とプリント配線板とを重ね合わせた。シールドプリント配線板を得たあとで、離型処理を施したPETフィルムを剥離した。このシールドプリント配線板のリフロー通過性は〇であった。
【0116】
(実施例5)
<金属化フィルムの製造>
厚さが60μmで表面に離型処理を施したPETフィルムを支持基材として、その上に厚さ5μmのPEEKフィルムをラミネートした。得られた支持基材付きのPEEKフィルム表面を実施例1と同様にショットブラスト及び水洗して表面を粗化した。表面粗化後のフィルム表面粗さはRa 0.43μm、Rz 2.51μm、凹凸の傾斜はRΔq 0.47、RΔa 12.6°であった。
【0117】
次に、粗化されたPEEKフィルムの表面にアンカー層を形成した。バッチ式真空蒸着装置(アルバック製 EBH-800)内に前述のフィルムを設置し、アルゴンガス雰囲気中で、真空到達度5×10-1Pa以下に調整して、マグネトロンスパッタリング法(DC電源出力:3.0kW)により、5nmの厚みのチタンをアンカー層として形成した。
【0118】
次に、蒸着ボート上に銅を載置した後に、真空到達度9.0×10-3Pa以下になるまで真空引きを行い、その後、蒸発ボートを加熱して真空蒸着で1.0μmの金属膜を形成した。なお、アンカー層の形成と、金属膜の形成については連続して処理を行い、スパッタリングと蒸着の間で大気と触れさせないようにした。このように作製した金属化フィルムの銅の金属膜の平均結晶粒径は128nm、表面抵抗は0.0279Ω/□、ピンホール(開口部個数)は0.5個/cm2であった。金属膜の表面粗さはRa 0.57μm、Rz 3.59μm、凹凸の傾斜はRΔq 0.50、RΔa 13.5°であった。また、金属化フィルムの水蒸気透過度は9.77g/(m2・day)、1GHzでの電界シールド性は65dB、1GHzでの磁界シールド性は50dBであった。
【0119】
本件は耐リフロー性のあるPEEKフィルムであるため、実施例4同様に以下の評価を追加した。
【0120】
<電磁波シールドフィルムの製造> <シールドプリント配線板の作製>
電磁波シールドフィルムの製造とシールドプリント配線板の作製は実施例4と同じ方法で、シールドプリント配線板を得た。このシールドプリント配線板のリフロー通過性は〇であった。
【0121】
(実施例6)
<金属化フィルムの製造>
厚さ50μmの2軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製、“ルミラー(登録商標)”タイプ:S10)の片面を、実施例1と同様にショットブラスト及び水洗して表面を粗化した。表面粗化後のフィルム表面粗さはRa 0.87μm、Rz 7.96μm、凹凸の傾斜はRΔq 0.56、RΔa 15.5°であった。
【0122】
次に、フィルムの表面に金属膜を形成した。バッチ式真空蒸着装置(アルバック製 EBH-800)内に前述のフィルムを設置し、蒸着ボート上にアルミニウムを載置した後に、真空到達度9.0×10-3Pa以下になるまで真空引きを行い、その後、蒸発ボートを加熱して真空蒸着で2.0μmの金属膜を形成した。このように作製した金属化フィルムのアルミニウムの金属膜の平均結晶粒径は91nm、表面抵抗は0.0379Ω/□、ピンホール(開口部個数)は0.5個/cm2であった。金属膜の表面粗さはRa 1.1μm、Rz 8.3μm、凹凸の傾斜はRΔq 0.72、RΔa 16.5°であった。また、金属化フィルムの水蒸気透過度は7.23g/(m2・day)、1GHzでの電界シールド性は60dB、1GHzでの磁界シールド性は50dBであった。
【0123】
(実施例7)
厚さ37.5μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製、“カプトン(登録商標)”タイプ:150EN-A)の片面を、実施例1と同様にショットブラスト及び水洗して表面を粗化した。表面粗化後のフィルム表面粗さはRa 0.71μm、Rz 7.39μm、凹凸の傾斜はRΔq 0.48、RΔa 13.7°であった。
【0124】
次に、粗化されたポリイミドフィルムの表面にアンカー層を形成した。バッチ式真空蒸着装置(アルバック製 EBH-800)内に前述のフィルムを設置し、アルゴンガス雰囲気中で、真空到達度5×10-1Pa以下に調整して、マグネトロンスパッタリング法(DC電源出力:3.0kW)により、5nmの厚みのニッケルをアンカー層として形成した。
【0125】
次に、蒸着ボート上に銅を載置した後に、真空到達度9.0×10-3Pa以下になるまで真空引きを行い、その後、蒸発ボートを加熱して真空蒸着で2.0μmの金属膜を形成した。なお、アンカー層の形成と、金属膜の形成については連続して処理を行い、スパッタリングと蒸着の間で大気と触れさせないようにした。このように作製した金属化フィルムの銅の金属膜の平均結晶粒径は101nm、表面抵抗は0.0159Ω/□、ピンホール(開口部個数)は0.4個/cm2であった。金属膜の表面粗さはRa 0.77μm、Rz 7.69μm、凹凸の傾斜はRΔq 0.54、RΔa 14.8°であった。また、金属化フィルムの水蒸気透過度は8.92g/(m2・day)、1GHzでの電界シールド性は80dB、1GHzでの磁界シールド性は60dBであった。
【0126】
本件は耐リフロー性のあるポリイミドフィルムであるため、実施例4同様に以下の評価を追加した。
【0127】
<電磁波シールドフィルムの製造> <シールドプリント配線板の作製>
電磁波シールドフィルムの製造とシールドプリント配線板の作製は実施例4と同じ方法で、シールドプリント配線板を得た。このシールドプリント配線板のリフロー通過性は〇であった。
【0128】
(実施例8)
厚さ37.5μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製、“カプトン(登録商標)”タイプ:150EN-A)の片面を、実施例1と同様にショットブラスト及び水洗して表面を粗化した。表面粗化後のフィルム表面粗さはRa 0.71μm、Rz 7.39μm、凹凸の傾斜はRΔq 0.48、RΔa 13.7°であった。
【0129】
次に、粗化されたポリイミドフィルムの表面にアンカー層を形成した。バッチ式真空蒸着装置(アルバック製 EBH-800)内に前述のフィルムを設置し、アルゴンガス雰囲気中で、真空到達度5×10-1Pa以下に調整して、マグネトロンスパッタリング法(DC電源出力:3.0kW)により、5nmの厚みのニッケルをアンカー層として形成した。
【0130】
次に、蒸着ボート上に銅を載置した後に、真空到達度9.0×10-3Pa以下になるまで真空引きを行い、その後、蒸発ボートを加熱して真空蒸着で1.0μmの金属膜を形成した。なお、アンカー層の形成と、金属膜の形成については連続して処理を行い、スパッタリングと蒸着の間で大気と触れさせないようにした。このように作製した金属化フィルムの銅の金属膜の平均結晶粒径は96nm、表面抵抗は0.0301Ω/□、ピンホール(開口部個数)は0.5個/cm2であった。金属膜の表面粗さはRa 0.73μm、Rz 7.52μm、凹凸の傾斜はRΔq 0.51、RΔa 14.2°であった。また、金属化フィルムの水蒸気透過度は10.33g/(m2・day)、1GHzでの電界シールド性は65dB、1GHzでの磁界シールド性は51dBであった。
【0131】
本件は耐リフロー性のあるポリイミドフィルムであるため、実施例4同様に以下の評価を追加した。
【0132】
<電磁波シールドフィルムの製造> <シールドプリント配線板の作製>
電磁波シールドフィルムの製造とシールドプリント配線板の作製は実施例4と同じ方法で、シールドプリント配線板を得た。このシールドプリント配線板のリフロー通過性は〇であった。
【0133】
(実施例9)
厚さ37.5μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製、“カプトン(登録商標)”タイプ:150EN-A)の片面を、実施例1と同様にショットブラスト及び水洗して表面を粗化した。表面粗化後のフィルム表面粗さはRa 0.71μm、Rz 7.39μm、凹凸の傾斜はRΔq 0.48、RΔa 13.7°であった。
【0134】
次に、フィルムの表面に金属膜を形成した。バッチ式真空蒸着装置(アルバック製 EBH-800)内に前述のフィルムを設置し、蒸着ボート上にアルミニウムを載置した後に、真空到達度9.0×10-3Pa以下になるまで真空引きを行い、その後、蒸発ボートを加熱して真空蒸着で2.0μmの金属膜を形成した。このように作製した金属化フィルムのアルミニウムの金属膜の平均結晶粒径は94nm、表面抵抗は0.0363Ω/□、ピンホール(開口部個数)は0.5個/cm2であった。金属膜の表面粗さはRa 0.91μm、Rz 8.16μm、凹凸の傾斜はRΔq 0.67、RΔa 14.9°であった。また、金属化フィルムの水蒸気透過度は9.61g/(m2・day)、1GHzでの電界シールド性は60dB、1GHzでの磁界シールド性は50dBであった。
【0135】
本件は耐リフロー性のあるポリイミドフィルムであるため、実施例4同様に以下の評価を追加した。
【0136】
<電磁波シールドフィルムの製造> <シールドプリント配線板の作製>
電磁波シールドフィルムの製造とシールドプリント配線板の作製は実施例4と同じ方法で、シールドプリント配線板を得た。このシールドプリント配線板のリフロー通過性は〇であった。
【0137】
(比較例1)
<金属化フィルムの製造>
フィルム表面は、ショットブラストによる粗化をしないこと以外は全て実施例1と同じ条件で金属化フィルムを得た。金属積層前のフィルムの表面粗さはRa 0.03μm、Rz 0.83μm、凹凸の傾斜はRΔq 0.02、RΔa 0.69°であった。このフィルム表面に金属膜を形成して得られた金属化フィルムの、銅の金属膜の平均結晶粒径は263nm、表面抵抗は0.0102Ω/□、ピンホール(開口部個数)は0.1個/cm2であった。金属膜の表面粗さはRa 0.06μm、Rz 0.52μm、凹凸の傾斜はRΔq 0.01、RΔa 0.41°であった。また、金属化フィルムは水蒸気透過度0.06g/(m2・day)、1GHzでの電界シールド性は86dB、1GHzでの磁界シールド性は64dBであった。
【0138】
(比較例2)
<金属化フィルムの製造>
銅の蒸着にて1.5μmの金属膜を形成した以外は全て比較例1と同じ条件で金属化フィルムを得た。金属積層前のフィルムの表面粗さはRa 0.03μm、Rz 0.83μm、凹凸の傾斜はRΔq 0.02、RΔa 0.69°であった。このフィルム表面に金属膜を形成して得られた金属化フィルムの、銅の金属膜の平均結晶粒径は231nm、表面抵抗は0.0133Ω/□、ピンホール(開口部個数)は0.1個/cm2であった。金属膜の表面粗さはRa 0.04μm、Rz 0.62μm、凹凸の傾斜はRΔq 0.02、RΔa 0.52°であった。また、金属化フィルムは水蒸気透過度2.06g/(m2・day)、1GHzでの電界シールド性は81dB、1GHzでの磁界シールド性は60dBであった。
【0139】
(比較例3)
<金属化フィルムの製造>
銅の蒸着にて0.5μmの金属膜を形成した以外は全て比較例1と同じ条件で金属化フィルムを得た。金属積層前の表面粗さはRa 0.03μm、Rz 0.83μm、凹凸の傾斜はRΔq 0.02、RΔa 0.69°であった。このフィルム表面に金属膜を形成して得られた金属化フィルムの銅の金属膜の平均結晶粒径は227nm、表面抵抗は0.0389Ω/□、ピンホール(開口部個数)は0.5個/cm2であった。金属膜の表面粗さはRa 0.04μm、Rz 0.76μm、凹凸の傾斜はRΔq 0.02、RΔa 0.59°であった。また、金属化フィルムの水蒸気透過度は2.93g/(m2・day)、1GHzでの電界シールド性は60dB、1GHzでの磁界シールド性は50dBであった。
【0140】
(比較例4)
<金属化フィルムの製造>
フィルム表面はショットブラストによる粗化をしないこと以外は全て実施例4と同じ条件で金属化フィルムを得た。金属積層前のエポキシ系樹脂フィルム表面の表面粗さはRa 0.282μm、Rz 2.02μm、凹凸の傾斜はRΔq 0.02、RΔa 0.63°であった。このエポキシ系樹脂フィルム表面に金属膜を形成して得られた金属化フィルムの、銅の金属膜の平均結晶粒径は214nm、表面抵抗は0.0122Ω/□、ピンホール(開口部個数)は0.1個/cm2であった。金属膜の表面粗さはRa 0.31μm、Rz 1.78μm、凹凸の傾斜はRΔq 0.01、RΔa 0.39°であった。また、金属化フィルムの水蒸気透過度は1.22g/(m2・day)、1GHzでの電界シールド性は86dB、1GHzでの磁界シールド性は63dBであった。
【0141】
本件は耐リフロー性のあるエポキシ系樹脂フィルムであるため、実施例4と同様に以下の評価を追加した。
【0142】
<電磁波シールドフィルムの製造> <シールドプリント配線板の作製>
電磁波シールドフィルムの製造とシールドプリント配線板の作製は実施例4と同じ方法で、シールドプリント配線板を得た。このシールドプリント配線板のリフロー通過性は×であった。
【0143】
(比較例5)
<金属化フィルムの製造>
フィルム表面はショットブラストによる粗化をしないこと以外は全て実施例6と同じ条件で金属化フィルムを得た。金属積層前のフィルムの表面粗さはRa 0.03μm、Rz 0.83μm、凹凸の傾斜はRΔq 0.02、RΔa 0.69°であった。このフィルム表面に金属膜を形成してえられた金属化フィルムの、アルミニウムの金属膜の平均結晶粒径は272nm、表面抵抗は0.0371Ω/□、ピンホール(開口部個数)は0.1個/cm2であった。金属膜の表面粗さはRa 0.05μm、Rz 0.61μm、凹凸の傾斜はRΔq 0.01、RΔa 0.56°であった。また、金属化フィルムの水蒸気透過度は0.03g/(m2・day)、1GHzでの電界シールド性は60dB、1GHzでの磁界シールド性は50dBであった。
【0144】
(比較例6)
<金属化フィルムの製造>
フィルム表面はショットブラストによる粗化をしないこと以外は全て実施例7と同じ条件で金属化フィルムを得た。金属積層前のポリイミドフィルム表面の表面粗さはRa 0.028μm、Rz 0.303μm、凹凸の傾斜はRΔq 0.02、RΔa 0.63°であった。このポリイミドフィルム表面に金属膜を形成して得られた金属化フィルムの、銅の金属膜の平均結晶粒径は268nm、表面抵抗は0.0101Ω/□、ピンホール(開口部個数)は0.1個/cm2であった。金属膜の表面粗さはRa 0.03μm、Rz 0.29μm、凹凸の傾斜はRΔq 0.02、RΔa 0.54°であった。また、金属化フィルムの水蒸気透過度は0.31g/(m2・day)、1GHzでの電界シールド性は86dB、1GHzでの磁界シールド性は64dBであった。
【0145】
本件は耐リフロー性のあるポリイミドフィルムであるため、実施例4と同様に以下の評価を追加した。
【0146】
<電磁波シールドフィルムの製造> <シールドプリント配線板の作製>
電磁波シールドフィルムの製造とシールドプリント配線板の作製は実施例4と同じ方法で、シールドプリント配線板を得た。このシールドプリント配線板のリフロー通過性は×であった。
(比較例7)
<金属化フィルムの製造>
フィルム表面はショットブラストによる粗化をしないこと以外は全て実施例9と同じ条件で金属化フィルムを得た。金属積層前のポリイミドフィルム表面の表面粗さはRa 0.028μm、Rz 0.303μm、凹凸の傾斜はRΔq 0.02、RΔa 0.63°であった。このポリイミドフィルム表面に金属膜を形成して得られた金属化フィルムの、アルミニウムの金属膜の平均結晶粒径は264nm、表面抵抗は0.0369Ω/□、ピンホール(開口部個数)は0.1個/cm2であった。金属膜の表面粗さはRa 0.04μm、Rz 0.40μm、凹凸の傾斜はRΔq 0.01、RΔa 0.68°であった。また、金属化フィルムの水蒸気透過度は0.35g/(m2・day)、1GHzでの電界シールド性は60dB、1GHzでの磁界シールド性は50dBであった。
【0147】
本件は耐リフロー性のあるポリイミドフィルムであるため、実施例4と同様に以下の評価を追加した。
【0148】
<電磁波シールドフィルムの製造> <シールドプリント配線板の作製>
電磁波シールドフィルムの製造とシールドプリント配線板の作製は実施例4と同じ方法で、シールドプリント配線板を得た。このシールドプリント配線板のリフロー通過性は×であった。
【0149】
【0150】
【符号の説明】
【0151】
1 金属化フィルム
2 電磁波シールドフィルム
3 フレキシブルプリント配線板(プリント配線板)
4 シールドプリント配線板
101、102 フィルム
201 蒸着方向
301 金属膜
401 蒸着膜成長方向
501 キャリアフィルム
601 接着剤層
701 カバーフィルム
702 ベース層
801 プリント回路(グランド回路)
901 絶縁性接着剤層