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▶ アムジエン・インコーポレーテツドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】抗体依存性細胞貪食の調節
(51)【国際特許分類】
   C12P 21/08 20060101AFI20240826BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240826BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240826BHJP
   C07K 16/30 20060101ALN20240826BHJP
【FI】
C12P21/08
A61K39/395 T
A61P35/00
A61K39/395 N
C07K16/30 ZNA
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020560902
(86)(22)【出願日】2019-06-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 US2019035643
(87)【国際公開番号】W WO2019236739
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-03-22
(31)【優先権主張番号】62/680,934
(32)【優先日】2018-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クーンズ,スコット・ティー
(72)【発明者】
【氏名】シュウ,ジュンヤン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,チンチュン
【審査官】大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-525443(JP,A)
【文献】The Journal of Immunology, 2014, Vol. 192, No. 5, pp. 2252-2260
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IgG1抗体の抗体依存性細胞貪食(ADCP)活性をマッチングさせる方法であって、(1)参照IgG1抗体のADCP活性を決定する工程;(2)前記参照IgG1抗体と同じ配列を有する第2のIgG1抗体のADCP活性を決定する工程;並びに(3)前記第2の抗体中のコアフコースの量を増加若しくは減少させることか、又は前記第2の抗体の非フコシル化種の量を増加若しくは減少させることによって、前記第2のIgG1抗体のADCP活性を変化させる工程を含み;ここで、コアフコースの量を増加若しくは減少させた後、又は非フコシル化種の量を増加若しくは減少させた後の前記第2の抗体のADCP活性は、前記参照抗体と同じであるか、又は前記参照抗体の10%、15%、20%、25%、30%若しくは35%以内であるか、又は前記参照抗体の1%~35%の範囲内であり、前記ADCP活性は、FcγRレポーター遺伝子アッセイを用いて決定され、前記FcγRはFcγRIIaであり、前記参照抗体及び前記第2のIgG1抗体はトラスツズマブである方法。
【請求項2】
記第2の抗体のADCP活性は前記第2の抗体中のコアフコースの量を減少させることか、又は前記第2の抗体の非フコシル化種の量を増加させることによって増加し、ADCP活性を増加させた後の前記第2の抗体のADCP活性は、前記参照抗体と同じであるか、又は前記参照抗体の10%、15%、20%、25%、30%若しくは35%以内であるか、又は前記参照抗体の1%~35%の範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
記第2のトラスツズマブ抗体のADCP活性は前記第2の抗体中のコアフコースの量を増加させることか、又は前記第2の抗体の非フコシル化種の量を減少させることによって減少し、ADCP活性を減少させた後の前記第2の抗体のADCP活性は、前記参照抗体と同じであるか、又は前記参照抗体の10%、15%、20%、25%、30%若しくは35%以内であるか、又は前記参照抗体の1%~35%の範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
トラスツズマブ抗体の特定の目標抗体依存性細胞貪食(ADCP)活性を操作する方法であって、(1)トラスツズマブ抗体のADCP活性を決定する工程;(2)目標ADCP活性を決定する工程;及び(3)前記抗体中のコアフコースの量を増加若しくは減少させることか、又は前記抗体の非フコシル化種の量を増加若しくは減少させることによって、前記トラスツズマブ抗体のADCP活性を変化させる工程を含み;ここで、コアフコースの量を増加若しくは減少させた後、又は非フコシル化種の量を増加若しくは減少させた後の前記抗体のADCP活性は、前記目標ADCP活性と同じであるか、又は前記目標ADCP活性の10%、15%、20%、25%、30%若しくは35%以内であるか、又は前記目標ADCP活性の1%~35%の範囲内であり、前記ADCP活性は、FcγRレポーター遺伝子アッセイを用いて測定又は決定され、前記FcγRはFcγRIIaである方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、トラスツズマブ及びリツキシマブを含むIgG1抗体の抗体依存性細胞貪食(ADCP)エフェクター機能の調節に関する。
【0002】
電子ファイルでの提出物の参照による援用
本明細書と同時にコンピュータ可読のフォーマット(CRF)により提出されたコンピュータ可読のヌクレオチド/アミノ酸配列リストは、その全体が参照によって援用され、当該リストは、以下のとおりである:2018年6月5日作成のA-2236-US-PSP_SeqlistingFinal.txtというファイル名の20キロバイトのASCII(Text)ファイル。
【背景技術】
【0003】
治療用モノクローナル抗体の開発及び製造プロセスを通して、製品の所望の安全性及び有効性をもたらす重要な品質特性を、適切に設計及び監視することが不可欠である。重要品質特性(CQA)は、「要求される製品品質を保証するために適切な限度内、範囲内、又は分布内であるべき物理的、化学的、生物学的又は微生物学的特性又は特質」と定義されている。多くの重要な治療用モノクローナル抗体はIgG1サブクラスのものであり、それ故、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)又は補体依存性細胞傷害(CDC)などのFc介在性エフェクター機能活性の可能性がある。例えば、Jiang,et al.Advances in the assessment and control of the effector functions of therapeutic antibodies.Nature reviews Drug discovery 2011;10:101-11を参照されたい。過去約15年間にわたり、エフェクター機能の可能性に影響を及ぼす品質特性に関する多くの研究が行われてきた。Fc-CH2ドメイン中の保存された二分枝型グリカンに関連する特定のグリカン構造が、ADCC及びADCPを介在するFcγRとの相互作用、並びにCDCを導く最初の結合事象であるC1q結合との相互作用に強く影響し得ることが十分に確立されている(Reusch D,Tejada ML.Fc glycans of therapeutic antibodies as critical quality attributes.Glycobiology 2015;25:1325-34を参照)。例えば、コアフコースがFcγRIIIa結合親和性に対して非常に大きな影響を有し、ADCC活性の実質的な変化をもたらすことが、構造的、機能的及び結合の研究によって示されている(Okazaki A,et al.Fucose depletion from human IgG1 oligosaccharide enhances binding enthalpy and association rate between IgG1 and FcgammaRIIIa.Journal of molecular biology 2004;336:1239-49、Ferrara C,et al.Unique carbohydrate-carbohydrate interactions are required for high affinity binding between FcgammaRIII and antibodies lacking core fucose.Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 2011;108:12669-74を参照)。より最近では、高マンノース及びβ-ガラクトースレベルもまた、コアフコースよりはるかに小さく、且つ予測しにくい程度ではあるが、ADCC活性の調節に影響を及ぼし得ることも示されてきている(Thomann M,et al.Fc-galactosylation modulates antibody-dependent cellular cytotoxicity of therapeutic antibodies.Molecular immunology 2016;73:69-75)。同様に、ガラクトースがC1q結合に関与することによって、CDCが影響されることが示されている(Hodoniczky J,et al.Control of recombinant monoclonal antibody effector functions by Fc N-glycan remodeling in vitro.Biotechnology progress 2005;21:1644-52)。これらの観察の多くは、組み換えモノクローナル抗体の非フコシル化又はバイセクト二分枝型グリカン構造を作る改変された宿主細胞株を用いて試験材料を作製する糖鎖工学プロセスによって可能にされている(Shinkawa T,et al.The absence of fucose but not the presence of galactose or bisecting N-acetylglucosamine of human IgG1 complex-type oligosaccharides shows the critical role of enhancing antibody-dependent cellular cytotoxicity.The Journal of biological chemistry 2003;278:3466-73、Umana P,et al.Engineered glycoforms of an antineuroblastoma IgG1 with optimized antibody-dependent cellular cytotoxic activity.Nature biotechnology 1999;17:176-80)。さらに最近では、グリカン修飾酵素及びアフィニティー濃縮クロマトグラフィーカラムが、エフェクター機能アッセイにおいて特徴付けることができる特定のサブ構造の明確に焦点を絞った分布を作り出すために使用されている。このアプローチはADCCの研究において効果的に展開されている(例えば、Thomann M,et al.Molecular immunology 2016;73:69-75を参照)。エフェクター機能活性に影響を及ぼすグリカン種のモニタリング及び制御は、バイオシミラーやバイオ後続品の開発の中心でもあり、厳密な類似性基準を適用しなければならない重要な特性や関連する活性を示している。先発品がエフェクター機能関連特性において実質的なドリフトを示した最近の例は、バイオシミラー候補を開発する努力に影響を与えた(Kim S,et al.Drifts in ADCC-related quality attributes of Herceptin(R):Impact on development of a trastuzumab biosimilar.mAbs 2017;9:704-14を参照)。
【0004】
治療用抗体の有効性におけるADCPの寄与は十分にはわかっておらず、ADCP活性に影響を及ぼす品質特性も十分にはわかっていない。ADCP活性に最も影響し、且つ予測性があり、したがってIgG1抗体の製造中にモニターするのに最も適している重要品質特性は、十分に確立されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Jiang,et al.Advances in the assessment and control of the effector functions of therapeutic antibodies.Nature reviews Drug discovery 2011;10:101-11
【文献】Reusch D,Tejada ML.Fc glycans of therapeutic antibodies as critical quality attributes.Glycobiology 2015;25:1325-34
【文献】Okazaki A,et al.Fucose depletion from human IgG1 oligosaccharide enhances binding enthalpy and association rate between IgG1 and FcgammaRIIIa.Journal of molecular biology 2004;336:1239-49
【文献】Ferrara C,et al.Unique carbohydrate-carbohydrate interactions are required for high affinity binding between FcgammaRIII and antibodies lacking core fucose. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 2011;108:12669-74
【文献】Thomann M,et al.Fc-galactosylation modulates antibody-dependent cellular cytotoxicity of therapeutic antibodies.Molecular immunology 2016;73:69-75
【文献】Hodoniczky J,et al.Control of recombinant monoclonal antibody effector functions by Fc N-glycan remodeling in vitro.Biotechnology progress 2005;21:1644-52
【文献】Shinkawa T,et al.The absence of fucose but not the presence of galactose or bisecting N-acetylglucosamine of human IgG1 complex-type oligosaccharides shows the critical role of enhancing antibody-dependent cellular cytotoxicity.The Journal of biological chemistry 2003;278:3466-73
【文献】Umana P,et al.Engineered glycoforms of an antineuroblastoma IgG1 with optimized antibody-dependent cellular cytotoxic activity.Nature biotechnology 1999;17:176-80
【文献】Thomann M,et al.Molecular immunology 2016;73:69-75
【文献】Kim S,et al.Drifts in ADCC-related quality attributes of Herceptin(R):Impact on development of a trastuzumab biosimilar.mAbs 2017;9:704-14
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、トラスツズマブ又はリツキシマブを含むIgG1抗体のADCP活性に対する種々のグリカン(例えば、β-ガラクトース、コア-フコース及び/又は高マンノースを含む)の影響を解明することを目的とする。いくつかの実施形態において、本開示は、グリカン種(例えば、β-ガラクトース、コア-フコース及び/又は高マンノース種の濃縮、増加、除去及び/又はリモデリングを含む)を増加又は減少させることによって、IgG1抗体のADCP活性を調節する(すなわち、増加又は減少させる)方法(トラスツズマブ又はリツキシマブのADCP活性を増加又は減少させる方法を含む)を提供する。本開示はまた、増加又は減少したADCP活性を有する抗IgG1抗体、並びにグリカン種(例えば、β-ガラクトース、コア-フコース及び/又は高マンノース種を濃縮、増加、除去及び/又はリモデリングすることを含む)を増加又は減少させることにより第2のIgG1抗体(トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)のADCP活性を調節する(すなわち、増加又は減少させる)ことによって、第2のIgG1抗体のADCP活性を参照抗体のADCP活性に一致させる方法を提供する。グリカン種(例えば、B-ガラクトース、コアフコース及び/又は高マンノース種の濃縮、増加、除去及び/又はリモデリングを含む)を増加又は減少させることにより、IgG1抗体のADCP活性を調節する(すなわち、増加又は減少させる)(トラスツズマブ又はリツキシマブのADCP活性を増加又は減少させることを含む)のに有用な細胞培養方法もまた開示される。
【0007】
一態様において、本開示は、抗体中の末端β-ガラクトースの量を増加若しくは減少させることか、又は抗体のG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種の量を増加若しくは減少させることを含む、トラスツズマブの抗体依存性細胞貪食(ADCP)活性を調節する方法を提供する。
【0008】
別の態様において、本開示は、抗体中の末端β-ガラクトースの量を増加させることか、又は抗体のG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種の量を増加させることを含む、トラスツズマブのADCP活性を増加させる方法を提供する。例示的な態様では、β-ガラクトースの約1パーセントの増加が、ADCP活性を約2.5、約2.8、約2.88又は約3パーセント増加させる。
【0009】
さらなる態様において、本開示は、抗体中の末端β-ガラクトースの量を減少させることか、又は抗体のG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種の量を減少させることを含む、トラスツズマブのADCP活性を減少させる方法を提供する。特定の例では、β-ガラクトースの約1パーセントの減少が、ADCP活性を約2.5、約2.8、約2.88又は約3パーセント減少させる。
【0010】
さらなる態様において、本開示は、(1)参照トラスツズマブ抗体のADCP活性を決定する工程;(2)参照トラスツズマブ抗体と同じ抗体配列を有する第2の抗体のADCP活性を決定する工程;並びに(3)第2の抗体中の末端β-ガラクトースの量を増加若しくは減少させることか、又は第2の抗体のG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種の量を増加若しくは減少させることによって、第2の抗体のADCP活性を変化させる工程を含み;末端β-ガラクトースの量を増加若しくは減少させた後、又はG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種の量を増加若しくは減少させた後の第2の抗体のADCP活性は、参照抗体と同じであるか、又は参照抗体の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%若しくは約35%以内であるか、又は参照抗体の約1%~約35%の範囲内である、参照トラスツズマブ抗体のADCP活性をマッチングさせる方法を提供する。例示的な例では、第2の抗体のADCP活性は、第2の抗体中の末端β-ガラクトースの量を増加させることか、又は第2の抗体のG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種の量を増加させることによって増加し、ADCP活性を増加させた後の第2の抗体のADCP活性は、参照抗体と同じであるか、又は参照抗体の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%若しくは約35%以内であるか、又は参照抗体の約1%~約35%の範囲内である。場合により、第2の抗体のADCP活性を、第2の抗体中の末端β-ガラクトースの量を減少させることか、又は第2の抗体のG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種の量を減少させることによって減少させ、ADCP活性を減少させた後の第2の抗体のADCP活性は、参照抗体と同じであるか、又は参照抗体の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%若しくは約35%以内であるか、又は参照抗体の約1%~約35%の範囲内である。いくつかの実施形態では、工程1(「参照トラスツズマブ抗体のADCP活性を決定する」)は、工程2(「参照トラスツズマブ抗体と同じ抗体配列を有する第2の抗体のADCP活性を決定する」)及び/又は工程3(「第2の抗体のADCP活性を…変化させる」)の前、後若しくは同時に行われる。他の実施形態では、工程2は、工程1及び/又は工程3の前、後、若しくは同時に行われる。
【0011】
本開示はまた、(1)トラスツズマブ抗体のADCP活性を決定する工程;(2)目標ADCP活性を決定する工程;並びに(3)抗体中の末端β-ガラクトースの量を増加若しくは減少させることか、又は抗体のG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種の量を増加若しくは減少させることによって、抗体のADCP活性を変化させる工程を含み;末端β-ガラクトースの量を増加若しくは減少させた後、又はG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種の量を増加若しくは減少させた後の抗体のADCP活性は、目標ADCP活性と同じであるか、又は目標ADCP活性の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%若しくは約35%以内であるか、又は目標ADCP活性の約1%~約35%の範囲内である、トラスツズマブ抗体の特定の目標ADCP活性を操作する方法を提供する。いくつかの実施形態では、工程1(「トラスツズマブ抗体のADCP活性を決定する」)は、工程2(「目標ADCP活性を決定する」)及び/又は工程3(「抗体のADCP活性を…変化させる」)の前、後若しくは同時に行われる。いくつかの実施形態では、工程2(「目標ADCP活性を決定する」)は、工程1(「トラスツズマブ抗体のADCP活性を決定する」)及び/又は工程3(「抗体のADCP活性を…変化させる」)の前、後若しくは同時に行われる。
【0012】
本開示はさらに、抗体中のコアフコースの量を増加若しくは減少させることか、又は抗体の非フコシル化種の量を増加若しくは減少させることを含む、トラスツズマブ又はリツキシマブのADCP活性を調節する方法を提供する。本開示はさらに、抗体中のコアフコースの量を減少させることか、又は抗体の非フコシル化種の量を増加させることを含む、トラスツズマブのADCP活性を増加させる方法を提供する。任意選択で、コアフコースの約1パーセントの減少により、トラスツズマブ抗体のADCP活性は、約0.5、約0.56、約0.6又は約1パーセント増加する。
【0013】
本開示はさらに、抗体中のコアフコースの量を増加させることか、又は抗体の非フコシル化種の量を減少させることを含む、リツキシマブのADCP活性を増加させる方法を提供する。いくつかの例では、コアフコースの約1パーセントの増加により、リツキシマブのADCP活性は、約0.5、約0.7、約0.75、約0.8又は約1パーセント増加する。
【0014】
本開示により、抗体中のコアフコースの量を増加させることか、又は抗体の非フコシル化種の量を減少させることを含む、トラスツズマブのADCP活性を減少させる方法が提供される。特定の態様では、コアフコースの約1パーセントの増加により、トラスツズマブ抗体のADCP活性は、約0.5、約0.56、約0.6又は約1パーセント減少する。
【0015】
また本開示により、抗体中のコアフコースの量を減少させることか、又は抗体の非フコシル化種の量を増加させることを含む、リツキシマブのADCP活性を減少させる方法が提供される。場合により、コアフコースの約1パーセントの減少により、リツキシマブのADCP活性は、約0.5、約0.7、約0.75、約0.8又は約1パーセント減少する。
【0016】
本開示により、IgG1抗体のADCP活性をマッチングさせる方法であって、(1)参照IgG1抗体のADCP活性を決定する工程;(2)参照IgG1抗体と同じ配列を有する第2のIgG1抗体のADCP活性を決定する工程;並びに(3)第2の抗体中のコアフコースの量を増加若しくは減少させることか、又は第2の抗体の非フコシル化種の量を増加若しくは減少させることによって、第2のIgG1抗体のADCP活性を変化させる工程を含み;コアフコースの量を増加若しくは減少させた後、又は非フコシル化種の量を増加若しくは減少させた後の第2の抗体のADCP活性は、参照抗体と同じであるか、又は参照抗体の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%若しくは約35%以内であるか、又は参照抗体の約1%~約35%の範囲内である方法もまた提供される。特定の例では、参照抗体及び第2のIgG1抗体はトラスツズマブであり、(a)第2の抗体のADCP活性は第2の抗体のコアフコースの量を減少させることか、若しくは第2の抗体の非フコシル化種の量を増加させることによって増加する;又は(b)第2のトラスツズマブ抗体のADCP活性は第2の抗体のコアフコースの量を増加させることか、若しくは第2の抗体の非フコシル化種の量を減少させることによって減少する。或いは、参照抗体及び第2のIgG1抗体はリツキシマブであり、(a)第2のリツキシマブ抗体のADCP活性は第2の抗体のコアフコースの量を増加させることか、若しくは第2の抗体の非フコシル化種の量を減少させることによって増加する;又は(b)第2のリツキシマブ抗体のADCP活性は第2の抗体のコアフコースの量を減少させることか、若しくは第2の抗体の非フコシル化種の量を増加させることによって減少する。いくつかの実施形態では、工程1(「参照IgG1抗体のADCP活性を決定する」)は、工程2(「参照IgG1抗体と同じ配列を有する第2のIgG1抗体のADCP活性を決定する」)及び/又は工程3(「第2のIgG1抗体のADCP活性を…変化させる」)の前、後若しくは同時に行われる。いくつかの実施形態では、工程2は、工程1及び/又は工程3の前、後、若しくは同時に行われる。
【0017】
本開示によって、トラスツズマブ抗体の特定の目標ADCP活性を操作する方法であって、(1)トラスツズマブ抗体のADCP活性を決定する工程;(2)目標ADCP活性を決定する工程;及び(3)抗体中のコアフコースの量を増加若しくは減少させることか、又は抗体の非フコシル化種の量を増加若しくは減少させることによって、トラスツズマブ抗体のADCP活性を変化させる工程を含み;コアフコースの量を増加若しくは減少させた後、又は非フコシル化種の量を増加若しくは減少させた後の抗体のADCP活性は、目標ADCP活性と同じであるか、又は目標ADCP活性の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%若しくは約35%以内であるか、又は目標ADCP活性の約1%~約35%の範囲内である方法もまた提供される。いくつかの実施形態では、工程1(「トラスツズマブ抗体のADCP活性を決定する」)は、工程2(「目標ADCP活性を決定する」)及び/又は工程3(「トラスツズマブ抗体のADCP活性を…変化させる」)の前、後若しくは同時に行われる。いくつかの実施形態では、工程2(「目標ADCP活性を決定する」)は、工程1(「トラスツズマブ抗体のADCP活性を決定する」)及び/又は工程3(「トラスツズマブ抗体のADCP活性を…変化させる」)の前、後若しくは同時に行われる。
【0018】
本開示はさらに、(1)リツキシマブ抗体のADCP活性を決定する工程;(2)目標ADCP活性を決定する工程;及び(3)リツキシマブ抗体中のコアフコースの量を増加若しくは減少させることか、又はリツキシマブ抗体の非フコシル化種の量を増加若しくは減少させることによって、リツキシマブ抗体のADCP活性を変化させる工程を含み;コアフコースの量を増加若しくは減少させた後、又は非フコシル化種の量を増加若しくは減少させた後の抗体のADCP活性は、目標ADCP活性と同じであるか、又は目標ADCP活性の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%若しくは約35%以内であるか、又は目標ADCP活性の約1%~約35%の範囲内である、リツキシマブ抗体の特定の目標ADCP活性を操作する方法を提供する。いくつかの実施形態では、工程1(「リツキシマブ抗体のADCP活性を決定する」)は、工程2(「目標ADCP活性を決定する」)及び/又は工程3(「リツキシマブ抗体のADCP活性を…変化させる」)の前、後若しくは同時に行われる。いくつかの実施形態では、工程2(「目標ADCP活性を決定する」)は、工程1(「リツキシマブ抗体のADCP活性を決定する」)及び/又は工程3(「リツキシマブ抗体のADCP活性を…変化させる」)の前、後若しくは同時に行われる。
【0019】
本開示はまた、IgG1抗体(トラスツズマブ又はリツキシマブなど)のADCP活性を調節する方法であって、抗体中の高マンノースの量を増加若しくは減少させることか、又は抗体のM5高マンノース種の量を増加又は減少させることを含む方法を提供する。
【0020】
本開示によって、IgG1抗体(トラスツズマブ又はリツキシマブなど)のADCP活性を増加させる方法であって、抗体中の高マンノースの量を減少させることか、又は抗体のM5高マンノース種の量を減少させることを含む方法もまた提供される。いくつかの実施形態では、高マンノースの約1パーセントの減少により、ADCP活性は、約1、約1.2、約1.31、約1.5、約1.7、約2、約2.11又は約2.5パーセント増加する。
【0021】
本開示は、IgG1抗体(トラスツズマブ又はリツキシマブなど)のADCP活性を減少させる方法であって、抗体中の高マンノースの量を増加させることか、又は抗体のM5高マンノース種の量を増加させることを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、高マンノースの約1パーセントの増加により、ADCP活性は、約1、約1.2、約1.31、約1.5、約1.7、約2、約2.11又は約2.5パーセント減少する。
【0022】
(1)参照IgG1抗体のADCP活性を決定する工程;(2)参照IgG1抗体と同じ配列を有する第2のIgG1抗体のADCP活性を決定する工程;並びに(3)第2の抗体中の高マンノースの量を増加若しくは減少させることか、又は第2の抗体のM5高マンノース種の量を増加若しくは減少させることによって、第2のIgG1抗体のADCP活性を変化させる工程を含み;高マンノースの量を増加若しくは減少させた後、又はM5高マンノース種の量を増加若しくは減少させた後の第2の抗体のADCP活性は、参照抗体と同じであるか、又は参照抗体の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%若しくは約35%以内であるか、又は参照抗体の約1%~約35%の範囲内である、IgG1抗体(トラスツズマブ又はリツキシマブなど)のADCP活性をマッチングさせる方法もまた提供される。いくつかの態様では、第2のIgG1抗体のADCP活性は、第2の抗体中の高マンノースの量を減少させることか、又は第2の抗体中のM5高マンノース種の量を減少させることによって増加する。例示的な例において、第2のIgG1抗体のADCP活性は、第2の抗体中の高マンノースの量を増加させることか、又は第2の抗体中のM5高マンノース種の量を増加させることによって減少する。いくつかの実施形態では、工程1(「参照IgG1抗体のADCP活性を決定する」)は、工程2(「…第2のIgG1抗体のADCP活性を決定する」)及び/又は工程3(「第2のIgG1抗体のADCP活性を…変化させる」)の前、後若しくは同時に行われる。いくつかの実施形態では、工程2は、工程1及び/又は工程3の前、後、若しくは同時に行われる。
【0023】
別の態様において、本開示は、(1)IgG1抗体のADCP活性を決定する工程;(2)目標ADCP活性を決定する工程;及び(3)第2の抗体中の高マンノースの量を増加若しくは減少させることか、又は第2の抗体中のM5高マンノース種の量を増加若しくは減少させることによって、IgG1抗体のADCP活性を変化させる工程を含み;高マンノースの量又はM5高マンノース種の量を増加若しくは減少させた後の抗体のADCP活性は、目標ADCP活性と同じであるか、又は目標ADCP活性の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%若しくは約35%以内であるか、又は目標ADCP活性の約1%~約35%の範囲内である、IgG1抗体(トラスツズマブ又はリツキシマブなど)の特定の目標ADCP活性を操作する方法を提供する。いくつかの実施形態では、工程1(「IgG1抗体のADCP活性を決定する」)は、工程2(「目標ADCP活性を決定する」)及び/又は工程3(「IgG1抗体のADCP活性を…変化させる」)の前、後若しくは同時に行われる。いくつかの実施形態では、工程2(「目標ADCP活性を決定する」)は、工程1(「IgG1抗体のADCP活性を決定する」)及び/又は工程3(「IgG1抗体のADCP活性を…変化させる」)の前、後若しくは同時に行われる。
【0024】
本開示によって、IgG1抗体(トラスツズマブ又はリツキシマブなど)のADCP活性を調節する方法であって、(1)抗体中の末端β-ガラクトースの量並びに/若しくはG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種の量;(2)抗体中のコアフコースの量並びに/若しくは非フコシル化種の量;並びに/又は(3)抗体中の高マンノースの量若しくはM5高マンノース種の量を増加若しくは減少させることを含む方法もまた提供される。さらに、IgG1抗体(トラスツズマブ又はリツキシマブなど)のADCP活性を増加させる方法であって、(1)抗体中の末端β-ガラクトースの量又はG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種の量を増加させること;(2)抗体中のコアフコースの量を減少させることか、若しくは抗体中の非フコシル化種の量を増加させること;並びに/又は(3)抗体中の高マンノースの量を減少させることか、若しくは抗体中のM5高マンノース種の量を減少させることを含む方法が提供される。他の例示的な実施形態において、本開示は、IgG1抗体(トラスツズマブ又はリツキシマブなど)のADCP活性を減少させる方法であって、(1)抗体中の末端β-ガラクトースの量又はG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種の量を減少させること;(2)抗体中のコアフコースの量を増加させることか、若しくは抗体中の非フコシル化種の量を減少させる;並びに/又は(3)抗体中の高マンノースの量若しくはM5高マンノース種の量を増加させることを含む方法を提供する。
【0025】
本開示の方法の例示的な例において、(1)末端β-ガラクトースの量若しくはG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種の量;(2)コアフコースの量若しくは非フコシル化種の量;並びに/又は(3)高マンノースの量若しくはM5高マンノース種の量を、これらのグリカン(例えば、末端β-ガラクトース;G1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種;コアフコース;非フコシル化種;高マンノース並びに/又はM5高マンノース種)の1つ以上の量を調節する細胞培養培地中又は細胞培養条件下で、抗体を発現する細胞を培養することによって、増加又は減少させる。いくつかの実施形態では、これらのグリカン(例えば、末端β-ガラクトース;G1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種;コアフコース;非フコシル化種;高マンノース並びに/又はM5高マンノース種)の量は、化学的手段、又は酵素、例えば、EndoS、Endo-S2、Endo-D、Endo-M、endoLL、α-フコシダーゼ、β-(1-4)-ガラクトシダーゼ、Endo-H、β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ、及び/若しくはPNGアーゼFを用いて増加又は減少させる。特定の態様では、これらのグリカンの量は、抗体をβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼと共に約10分間、約20分間、約30分間、約1時間、約2時間、約4時間、約9時間、又は約10分~約9時間の範囲内にある時間、インキュベートすることによって調節される。
【0026】
本開示はまた、本開示の方法のいずれか1つによって生成される抗体組成物を提供する。特定の態様では、抗体は、参照IgG1抗体と比較して、増加又は減少したADCP活性を有する(この参照IgG1抗体は、増加又は減少したADCP活性を有するIgG1抗体と同じ抗体配列を有する)。いくつかの例では、抗体は、参照抗体と比較して、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約100%、約125%、約150%、約175%若しくは約200%、又は約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍若しくは約10倍増加したADCP活性、或いは参照抗体と比較して、約0.5倍~約8倍増加したADCP活性を有する。場合により、抗体は、参照抗体と比較して、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約100%、約125%、約150%、約175%若しくは約200%、又は約1倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍若しくは約10倍減少したADCP活性、或いは参照抗体と比較して、約0.5倍~約8倍減少したADCP活性を有する。例示的な態様では、IgG1抗体は、表1又は2に列挙した配列のいずれか1つを含むトラスツズマブ又はリツキシマブである。
【0027】
本開示はさらに、本明細書に記載の抗体組成物のいずれか1つを含む医薬組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1A図1Aは、3タイプのN-グリカン(オリゴマンノース型、複合型及びハイブリッド型)及びこのような糖類に関して一般的に使用されている記号の図解である。
図1B図1Bは、オリゴ糖構造の代表的な結合を有する、ヒトIgG中のN-グリコシル化部位アスパラギン(Asn)297で見出される主要なN-結合型グリカンを示す概略図である。これらのグリカンは、通常、フコース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、シアル酸(SA)、及びバイセクト型N-GlcNAcの可変付加によって構築された7糖コア及びアウターアームから構成される。
図1C図1Cは、フコース代謝のサルベージ経路及びデノボ経路の図である。サルベージ経路において、遊離L-フコースはGDP-フコースに変換されるが、デノボ経路において、GDP-フコースは、GMD及びFXにより触媒される3つの反応を介して合成される。次に、GDP-フコースは、GDP-Fucトランスフェラーゼによって細胞質基質からゴルジ内腔に輸送され、アクセプターオリゴ糖及びタンパク質へ移される。他の反応産物であるGDPは、内腔のヌクレオチドジホスファターゼによって、グアノシン5-一リン酸(GMP)及び無機リン酸(Pi)に変換される。前者は、細胞質基質に排出されるが(GDP-フコースの輸送と共役される対向輸送系を介して)、後者は、ゴルジアニオンチャネルであるGOLACを介してゴルジ内腔を離れると想定される。例えば、Nordeen et al.2000;Hirschberg et al.2001を参照されたい。
図2図2は、ADCPレポーター遺伝子アッセイにおける、HER2(トラスツズマブ)、TNFα、又はCD20(リツキシマブ)細胞表面抗原を標的とする3つの異なるIgG1 mAbの用量応答曲線(スムーズフィット)であり、このADCPアッセイにおいて、試験抗体がある範囲の活性を示したことを示している。抗TNFα抗体は実質的に反応を示さなかったが、抗CD20抗体は非常に強固な反応を示し、抗HER2抗体は中間の反応を示した。
図3A図3A-Dは、抗CD20抗体リツキシマブ(図3A-B)及び抗HER2抗体トラスツズマブ(図3C-D)についての線形で幅を持った評価を示すグラフである。線形回帰直線(方程式を示す)を、各抗体について測定されたADCP活性と既知のADCP活性との関係を示すプロットに当てはめ(図3A及び3C)、相関した線グラフ内の種々の活性レベルについて、代表的な用量応答曲線を示した(図3B及び3D)。このデータは、ADCPレポーター遺伝子アッセイの定量的性質と範囲、及びADCP活性に影響する品質特性の評価に対するその適合性を示した。
図3B図3A-Dは、抗CD20抗体リツキシマブ(図3A-B)及び抗HER2抗体トラスツズマブ(図3C-D)についての線形で幅を持った評価を示すグラフである。線形回帰直線(方程式を示す)を、各抗体について測定されたADCP活性と既知のADCP活性との関係を示すプロットに当てはめ(図3A及び3C)、相関した線グラフ内の種々の活性レベルについて、代表的な用量応答曲線を示した(図3B及び3D)。このデータは、ADCPレポーター遺伝子アッセイの定量的性質と範囲、及びADCP活性に影響する品質特性の評価に対するその適合性を示した。
図3C図3A-Dは、抗CD20抗体リツキシマブ(図3A-B)及び抗HER2抗体トラスツズマブ(図3C-D)についての線形で幅を持った評価を示すグラフである。線形回帰直線(方程式を示す)を、各抗体について測定されたADCP活性と既知のADCP活性との関係を示すプロットに当てはめ(図3A及び3C)、相関した線グラフ内の種々の活性レベルについて、代表的な用量応答曲線を示した(図3B及び3D)。このデータは、ADCPレポーター遺伝子アッセイの定量的性質と範囲、及びADCP活性に影響する品質特性の評価に対するその適合性を示した。
図3D図3A-Dは、抗CD20抗体リツキシマブ(図3A-B)及び抗HER2抗体トラスツズマブ(図3C-D)についての線形で幅を持った評価を示すグラフである。線形回帰直線(方程式を示す)を、各抗体について測定されたADCP活性と既知のADCP活性との関係を示すプロットに当てはめ(図3A及び3C)、相関した線グラフ内の種々の活性レベルについて、代表的な用量応答曲線を示した(図3B及び3D)。このデータは、ADCPレポーター遺伝子アッセイの定量的性質と範囲、及びADCP活性に影響する品質特性の評価に対するその適合性を示した。
図4図4は、非フコシル化種(すなわち、G0若しくはG1を含む、コアフコースを欠く種)、高マンノース種(M5種を含む)、又は末端β-ガラクトース種(すなわち、G1F若しくはG2Fを含む、末端β-ガラクトース)種を含む、ADCPレポーター遺伝子アッセイにおいて評価された3つの主要なグリカン種の構造の要約である。
図5図5は、広範囲のβ-ガラクトースレベルを有する抗HER2抗体(トラスツズマブ)の代表的なADCP用量応答曲線であり、より高いレベルのβ-ガラクトースレベルが一般に、より高いADCP活性をもたらすことを示している。
図6図6は、抗HER2抗体トラスツズマブのADCP活性とβ-ガラクトースレベルとの間の相関を示す線グラフである。トラスツズマブのADCP活性に対するβ-ガラクトースの相対的影響は2.88と計算された。
図7図7は、2つの広範囲のβ-ガラクトースレベル(0%及び81%のβ-ガラクトース)の抗CD20抗体(リツキシマブ)の相対ADCP活性を報告する棒グラフである。
図8図8は、AlphaLISAフォーマットを用いたFcγRIIa結合アッセイによって測定された、抗HER2抗体トラスツズマブのFcγRIIa結合とβ-ガラクトースレベルとの間の相関を報告する線グラフである。
図9A図9A-Bは、CD20/リツキシマブ(図9A)及びHER2/トラスツズマブ(図9B)抗体についての、最小β-ラクトースレベルの活性に対して正規化された、示すような選択したβ-ガラクトース試料の相対的な標的結合活性を報告する棒グラフである。これらの結果は、観察された相対ADCP活性の差異がFcγRIIa結合の差異によるものであって、細胞表面標的結合の不測の変化によるものではないことを示している。
図9B図9A-Bは、CD20/リツキシマブ(図9A)及びHER2/トラスツズマブ(図9B)抗体についての、最小β-ラクトースレベルの活性に対して正規化された、示すような選択したβ-ガラクトース試料の相対的な標的結合活性を報告する棒グラフである。これらの結果は、観察された相対ADCP活性の差異がFcγRIIa結合の差異によるものであって、細胞表面標的結合の不測の変化によるものではないことを示している。
図10A図10A-Bは、抗HER2抗体トラスツズマブ(図10A)及び抗CD20抗体リツキシマブ(図10B)のADCP活性と非フコシル化との間の相関を報告する線グラフである。このデータは、トラスツズマブの非フコシル化を増加させた場合のADCP活性の直線的増加(応答係数0.56)を示している。リツキシマブは、非フコシル化を増加させると、ADCP活性のわずかな直線的減少を示した。
図10B図10A-Bは、抗HER2抗体トラスツズマブ(図10A)及び抗CD20抗体リツキシマブ(図10B)のADCP活性と非フコシル化との間の相関を報告する線グラフである。このデータは、トラスツズマブの非フコシル化を増加させた場合のADCP活性の直線的増加(応答係数0.56)を示している。リツキシマブは、非フコシル化を増加させると、ADCP活性のわずかな直線的減少を示した。
図11A図11A-Bは、トラスツズマブの、β-ガラクトースとADCP活性との相関(図11A)、又はβ-ガラクトースとFcγRIIa結合との相関(図11B)を、高マンノース含有量が固定された試料と、高マンノースをある範囲で含有する試料の両方について報告する線グラフである。このデータは、高マンノースレベルの増加がトラスツズマブのADCP活性及びFcγRIIa結合を減少させることを示唆している。
図11B図11A-Bは、トラスツズマブの、β-ガラクトースとADCP活性との相関(図11A)、又はβ-ガラクトースとFcγRIIa結合との相関(図11B)を、高マンノース含有量が固定された試料と、高マンノースをある範囲で含有する試料の両方について報告する線グラフである。このデータは、高マンノースレベルの増加がトラスツズマブのADCP活性及びFcγRIIa結合を減少させることを示唆している。
図12A図12A-Bは、リツキシマブ抗CD20抗体の、高マンノースとADCP活性との相関(図12A)、又は高マンノースとFcγRIIa結合との相関(図12B)を報告する線グラフである。このデータは、高マンノースレベルの増加がリツキシマブのADCP活性及びFcγRIIa結合を減少させることを示唆している。
図12B図12A-Bは、リツキシマブ抗CD20抗体の、高マンノースとADCP活性との相関(図12A)、又は高マンノースとFcγRIIa結合との相関(図12B)を報告する線グラフである。このデータは、高マンノースレベルの増加がリツキシマブのADCP活性及びFcγRIIa結合を減少させることを示唆している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示をより容易に理解できるようにするために、特定の用語を最初に定義する。発明を実施するための形態を通して、さらなる定義を記載する。
【0030】
本開示の説明に関する(とりわけ以下の特許請求の範囲に関する)「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」という用語、並びに類似の指示対象は、本明細書で使用する場合、本明細書に別段の指示がない限り又は文脈と明確に矛盾しない限り、単数及び複数の両方を包含するものと解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「包含する(including)」、及び「含有する(containing)」は、特に断らない限り、開放型用語として解釈されるべきである(すなわち、「包含するが、これに限定されない」を意味し、1つ以上の特徴又は構成要素の存在を許容する)。「1つの(a)」(又は「1つの(an)」)という用語、並びに「1つ以上の(one or more)」及び「少なくとも1つの(at least one)」という用語は、本明細書では互換的に使用することができる。さらに、「及び/又は」は、本明細書で使用される場合、2つの特定の特徴又は構成要素のそれぞれの特定の開示として(他の特徴又は構成要素の有無にかかわらず)解釈されるべきである。したがって、本明細書で「A及び/又はB」などの句で使用される「及び/又は」という用語は、「A及びB」、「A又はB」、「A」(単独)、及び「B」(単独)を包含するものとする。同様に、「A、B、及び/又はC」などの句で使用される「及び/又は」という用語は、以下の態様のそれぞれを包含するものとする:A、B及びC;A、B又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);並びにC(単独)。
【0031】
明細書及び特許請求の範囲を通して数値に関連して使用される「約」という用語は、当業者によく知られ、且つ受け入れられる精度の間隔を示す。一般に、このような精度の間隔は±10%である。
【0032】
他に定義されていない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。例えば、Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei-Show,2nd ed.,2002,CRC Press、The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed.,1999,Academic Press、及びOxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology,Revised,2000,Oxford University Pressは、本開示で使用される用語の多くの一般辞書を当業者に提供する。一般に、本明細書に記載される、細胞及び組織培養、分子生物学、免疫学、タンパク質グリコシル化、抗体産生及び抗体精製に関連して使用される命名法、並びにそれらの技術は当該技術分野でよく知られ、またよく使用されているものである。標準的手法を組み換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、組織培養及び形質転換、タンパク質精製、抗体生成などに使用することができる。酵素反応及び精製技術は、製造業者の仕様書に従って、又は当該技術分野において一般的に達成されるように若しくは本明細書に記載されるように実施することができる。以下の手順及び手法は、当該技術分野においてよく知られている従来の方法に従って、また明細書全体を通して引用され論じられている様々な一般的で且つより具体的な参考文献に記載されるように概ね実施することができる。例えば、Sambrook et al.,2001,Molecular Cloning:A Laboratory Manuel,3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,cold Spring Harbor,N.Y.を参照されたい。この文献はいかなる目的に対しても参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
単位、接頭辞及び記号は、国際単位系(SI)で認められた形式で示される。数値範囲は、範囲を規定する数値を含む。別段の指示がない限り、アミノ酸配列は、左から右に、アミノからカルボキシへの配向で書かれている。本明細書で示される見出しは、本開示の様々な1つ又は複数の態様を限定するものではなく、それは本明細書全体を参照することによって有することができる。
【0034】
翻訳後のグリコシル化
多くの分泌タンパク質が翻訳後グリコシル化され、この過程により、糖部分(例えばグリカン、糖類)がタンパク質の特定のアミノ酸に共有結合される。真核細胞においては、次の2種類のグリコシル化反応が起こる:(1)グリカンが認識配列Asn-X-Thr/Ser(ここで、「X」はプロリン以外の任意のアミノ酸である)のアスパラギンに連結されるN結合型グリコシル化、及び(2)グリカンがセリン又はスレオニンに連結されるO結合型グリコシル化。グリコシル化のタイプ(N結合型又はO結合型)にかかわらず、各部位(O又はN)と結合されるグリカン構造は広範囲にわたるため、タンパク質グリコフォームには微小不均一性がある。
【0035】
全てのN-グリカンは、共通のコア糖配列:Manα1-6(Manα1-3)Manβ1-4GlcNAcβ1-4GlcNAcβ1-Asn-X-Ser/Thr(ManGlcNAcAsn)を有し、次の3つのタイプのうちの1つに分類される:(A)2個のN-アセチルグルコサミン(GalNAc)部分及び多数(例えば、5、6、7、8若しくは9個)のマンノース(Man)残基からなる高マンノース(HM)若しくはオリゴマンノース(OM)型、(B)3個以上のGlcNAc部分及び任意の数の他の糖タイプを含む複合型、又は(C)分枝の一方にMan残基を、複合枝の基部にGlcNAcを含むハイブリッド型。図1A(Stanley et al.,Chapter 8:N-Glycans,Essentials of Glycobiology,2nded.,Cold Spring Harbor Laboratory Press;2009に基づく)は、N-グリカンの3つのタイプを示す。
【0036】
N結合型グリカンは、通常、ガラクトース(Gal)、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)、N-アセチルグルコアサミン(GlcNAc)、マンノース(Man)、N0アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)、フコース(Fuc)の1つ以上の単糖を含む。このような糖類に対し一般的に使用されている記号を、図1Aに示す。
【0037】
N結合型グリコシル化は小胞体(ER)において開始され、複雑な一連の反応の結果、基本的に2個のGlcNAc残基及び3個のMan残基から作られるコアグリカン構造の連結が起こる。ERにおいて形成されるグリカン複合体は、ゴルジ装置において酵素の作用により修飾される。糖類が酵素に比較的接近しにくい場合、これは、一般的には元のHM形態にとどまる。酵素が糖類に接近し得る場合、Man残基の多くは切り離され、糖類がさらに修飾され、その結果、複合型のN-グリカン構造が生じる。例えば、cis-ゴルジに位置するマンノシダーゼ-1は、HMグリカンを切断又は加水分解し得、一方、メディアル-ゴルジに位置するフコシルトランスフェラーゼFUT-8はグリカンをフコシル化する(Hanrue Imai-Nishiya(2007),BMC Biotechnology,7:84)。
【0038】
したがって、グリカン構造の糖組成及び構造立体配置は、とりわけ、ER及びゴルジ装置におけるグリコシル化機序、その機序の酵素のグリカン構造への到達性、各酵素の作用の順序及びタンパク質がグリコシル化機序から放出される段階に依存して変動する。
【0039】
Fcドメインに結合するグリカン構造はADCC及びADCPを媒介するFcγRとの相互作用、並びにCDCに導く最初の結合事象であるC1q結合との相互作用に影響を及ぼすので、グリカン構造を制御することは、治療用モノクローナル抗体の組み換え産生において重要である。
【0040】
本開示は、トラスツズマブ又はリツキシマブを含むIgG1抗体のADCP活性に対する種々のグリカン(例えば、β-ガラクトース、コア-フコース及び/又は高マンノースを含む)の影響を解明する。したがって、本開示は、抗体又はそれを含む組成物(抗体組成物)のADCP活性を調節する方法を提供する。例示的な実施形態では、方法は、(a)抗体のガラクトシル化グリカン、(b)抗体の非フコシル化グリカン、(c)抗体の高マンノースグリカン、又は(d)それらの組み合わせの量を調節することを含む。特定の理論に縛られるものではないが、本開示の方法は、目標レベルのADCP活性を示す、特定の量の所与の抗体の特定のグリコフォームを含むテーラーメイドの組成物に対する手段を提供すると考えられる。
【0041】
「抗体依存性細胞貪食」又は「ADCP」という用語は、抗体オプソニン化された標的細胞が免疫系の細胞(例えば、マクロファージ及び/又は好中球を含む)の表面のFcγRを活性化して貪食を誘導し、その結果、ファゴソームの酸性化を介して標的細胞の内部移行及び分解をもたらす機構を意味する。ADCPは一般に、(1)細胞上の抗原又は標的への抗体の結合、並びに(2)抗体結合細胞の内部移行、分解及び/又は破壊を誘導するための、マクロファージ又は他の食細胞上の受容体(Fc受容体)への抗体の結合の2段階機構を必要とする。例えば、Guel N and Egmond M.Antibody-Dependent Phagocytosis of Tumor Cells by Macrophages:A Potent Effector Mechanism of Monoclonal Antibody Therapy of Cancer.Cancer Res December 1 2015(75)(23)5008-5013を参照されたい。
【0042】
「FcγR」又は「Fc-ガンマ受容体」という用語は、オプソニン化された細胞又は微生物の食作用の誘導に関与するIgGスーパーファミリーに属するタンパク質である。例えば、Fridman WH.Fc receptors and immunoglobulin binding factors.FASEB Journal.5(12):2684-90(1991)を参照されたい。Fc-ガンマ受容体ファミリーのメンバーには、FcγRI(CD64)、FcγRIIA(CD32)、FcγRIIB(CD32)、FcγRIIIA(CD16a)、及びFcγRIIIB(CD16b)が含まれる。FcγRI、FcγRIIA、FcγRIIB、FcγRIIIA、及びFcγRIIIBの配列は、多くの配列データベース、例えば、Uniprotデータベース(www.uniprot.org)のアクセッション番号P12314(FCGR1_HUMAN)、P12318(FCG2A_HUMAN)、P31994(FCG2B_HUMAN)、P08637(FCG3A_HUMAN)、及びP08637(FCG3A_HUMAN)の下にそれぞれ見出すことができる。
【0043】
用語「ADCP活性」は、(1)細胞上の抗原又は標的への抗体の結合、並びに(2)抗体結合細胞の内部移行、分解及び/又は破壊を誘導するための、マクロファージ又は他の食細胞上の受容体(Fc受容体)への抗体の結合の2段階機構によって、ファゴソームの酸性化を介して標的細胞の内部移行及び分解をもたらす食作用が活性化又は刺激される程度を指す。「抗体のADCP活性」という句は、ADCPを誘導する抗体の能力を指す。
【0044】
市販のアッセイ及びキットを含む、抗体のADCP活性を測定又は決定する方法は、例えば、Richards,J.O.et al.Optimization of antibody binding to FcγRIIa enhances macrophage phagocytosis of tumor cells.Mol.Cancer Ther.2008;7,2517-27、Ackerman et.al,A robust,high-throughput assay to determine the phagocytic activity of clinical antibody samples.Journal of Immunological Methods 366(2011)8-19、Chung S,et al.Quantitative evaluation of fucose reducing effects in a humanized antibody on Fcgamma receptor binding and antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity activities.mAbs 2012;4:326-40、Herbrand U.Antibody-dependent cellular phagocytosis:the mechanism of action that gets no respect-A discussion about improving bioassay reproducibility.BioProcess J,2016;15(1):26-9、ADCP Bioassays (Promega,catalog number G9901 or G9991)、及びADCP Bioassay(BPS Bioscience,catalog number 60540 or 60541)に記載されるように、当該技術分野でよく知られており、これらの文献は全て参照によりあらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。「ADCPアッセイ」又は「FcγRレポーター遺伝子アッセイ」という用語は、抗体のADCP活性を決定するために有用なアッセイ、キット又は方法をいう。
【0045】
本明細書に記載の方法における抗体のADCP活性を測定又は決定する例示的な方法には、実施例に記載のADCPアッセイ、又はPromegaから市販されているADCPレポーターアッセイ(カタログ番号G9901又はG9991)が含まれる。いくつかの実施形態では、ADCP活性はレポーター遺伝子アッセイ、例えば、以下の1つ以上を含むFcγRレポーター遺伝子アッセイを用いて測定又は決定される:FcγR受容体(例えば、FcγRIIaを含む)を発現するJurkat細胞、活性化T細胞核内因子(NFAT)応答エレメント、及びルシフェラーゼ若しくは他のレポーター遺伝子又はレポーター産物。例示的な態様では、ADCP活性は、細胞表面にFcγRIIaを発現する細胞、例えば、Jurkat T細胞、及びNFAT活性に連結されたレポーター遺伝子を含むレポーター遺伝子アッセイを使用して測定される。
【0046】
ADCP活性の調節
「調節する(modulate)」又は「調節する(modulating)」という用語は、増加又は減少させることによって変化させることを意味する。したがって、本明細書において「抗体依存性細胞貪食活性を調節する」などの句で使用される「調節する」という用語は、抗体依存性細胞貪食活性を増加させること、又は抗体依存性細胞貪食活性を減少させることを含むことが意図される。また、「調節する」という用語は、「ガラクトシル化グリカン、非フコシル化グリカン、高マンノースグリカン、又はそれらの組み合わせの量を調節する」などの句で使用される場合、前記グリカンの量を増加させること、又は前記グリカンの量を減少させることを含むことが意図される。
【0047】
したがって、例示的な実施形態では、現在開示されている方法は、抗体又はそれを含む組成物のADCP活性を増加させる方法を表す。例示的な態様では、本開示の方法は、抗体又はそれを含む組成物のADCP活性を、対照又は参照抗体と比較して、任意の程度又はレベルまで増加させる。例示的な例では、本開示の方法により提供される増加は、対照又は参照抗体と比較して、少なくとも又は約1%~約100%の増加(例えば、少なくとも又は約1%の増加、少なくとも又は約2%の増加、少なくとも又は約3%の増加、少なくとも又は約4%の増加、少なくとも又は約5%の増加、少なくとも又は約6%の増加、少なくとも又は約7%の増加、少なくとも又は約8%の増加、少なくとも又は約9%の増加、少なくとも又は約9.5%の増加、少なくとも又は約9.8%の増加、少なくとも又は約10%の増加、少なくとも又は約15%の増加、少なくとも又は約20%の増加、少なくとも又は約25%の増加、少なくとも又は約30%の増加、少なくとも又は約35%の増加、少なくとも又は約40%の増加、少なくとも又は約45%の増加、少なくとも又は約50%の増加、少なくとも又は約55%の増加、少なくとも又は約60%の増加、少なくとも又は約65%の増加、少なくとも又は約70%の増加、少なくとも又は約75%の増加、少なくとも又は約80%の増加、少なくとも又は約85%の増加、少なくとも又は約90%の増加、少なくとも又は約95%の増加、少なくとも又は約100%の増加)である。例示的な実施形態では、本開示の方法により提供される増加は、対照又は参照抗体と比較して、100%超、例えば、少なくとも又は約125%、少なくとも又は約150%、少なくとも又は約175%、少なくとも又は約200%、少なくとも又は約300%、少なくとも又は約400%、少なくとも又は約500%、少なくとも又は約600%、少なくとも又は約700%、少なくとも又は約800%、少なくとも又は約900%、或いは少なくとも又は約1000%にもなる。例示的な実施形態では、抗体又はそれを含む組成物のADCP活性のレベルは、対照又は参照抗体と比較して、少なくとも約1.5倍増加する。例示的な実施形態では、抗体又はそれを含む組成物のADCP活性のレベルは、対照又は参照抗体と比較して、少なくとも約2倍増加する。例示的な実施形態では、抗体又はそれを含む組成物のADCP活性のレベルは、対照又は参照抗体と比較して、少なくとも約3倍増加する。例示的な実施形態では、抗体又はそれを含む組成物のADCP活性のレベルは、対照又は参照抗体と比較して、少なくとも約4倍又は約5倍増加する。例示的な実施形態では、抗体又はそれを含む組成物のADCP活性のレベルは、対照又は参照抗体と比較して、少なくとも約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、又は約10倍増加する。例示的な実施形態では、抗体又はそれを含む組成物のADCP活性のレベルは、対照又は参照抗体と比較して、約0.5倍~約8倍の範囲内の量だけ増加する。
【0048】
代替の実施形態では、本開示の方法は、抗体又はそれを含む組成物のADCP活性を減少させる方法を表す。いくつかの態様では、本開示の方法は、抗体又はそれを含む組成物のADCP活性のレベルを、対照又は参照抗体と比較して、任意の程度又はレベルまで減少させる。本開示の方法により提供される減少は、対照又は参照抗体のレベルと比較して、少なくとも又は約1%~約100%の減少(例えば、少なくとも又は約1%の減少、少なくとも又は約2%の減少、少なくとも又は約3%の減少、少なくとも又は約4%の減少、少なくとも又は約5%の減少、少なくとも又は約6%の減少、少なくとも又は約7%の減少、少なくとも又は約8%の減少、少なくとも又は約9%の減少、少なくとも又は約9.5%の減少、少なくとも又は約9.8%の減少、少なくとも又は約10%の減少、少なくとも又は約15%の減少、少なくとも又は約20%の減少、少なくとも又は約25%の減少、少なくとも又は約30%の減少、少なくとも又は約35%の減少、少なくとも又は約40%の減少、少なくとも又は約45%の減少、少なくとも又は約50%の減少、少なくとも又は約55%の減少、少なくとも又は約60%の減少、少なくとも又は約65%の減少、少なくとも又は約70%の減少、少なくとも又は約75%の減少、少なくとも又は約80%の減少、少なくとも又は約85%の減少、少なくとも又は約90%の減少、少なくとも又は約95%の減少、少なくとも又は約100%の減少)である。例示的な実施形態では、本開示の方法により提供される減少は、対照又は参照抗体のレベルと比較して、約100%超、例えば、少なくとも又は約125%、少なくとも又は約150%、少なくとも又は約175%、少なくとも又は約200%、少なくとも又は約300%、少なくとも又は約400%、少なくとも又は約500%、少なくとも又は約600%、少なくとも又は約700%、少なくとも又は約800%、少なくとも又は約900%、或いは少なくとも又は約1000%にもなる。例示的な実施形態では、抗体又はそれを含む組成物のADCP活性のレベルは、対照又は参照抗体と比較して、少なくとも約1.5倍減少する。例示的な実施形態では、抗体又はそれを含む組成物のADCP活性のレベルは、対照又は参照抗体と比較して、少なくとも約2倍減少する。例示的な実施形態では、抗体又はそれを含む組成物のADCP活性のレベルは、対照又は参照抗体と比較して、少なくとも約3倍減少する。例示的な実施形態では、抗体又はそれを含む組成物のADCP活性のレベルは、対照又は参照抗体と比較して、少なくとも約4倍又は少なくとも約5倍減少する。例示的な実施形態では、抗体又はそれを含む組成物のADCP活性のレベルは、対照又は参照抗体と比較して、少なくとも約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、又は約10倍減少する。例示的な実施形態では、抗体又はそれを含む組成物のADCP活性のレベルは、対照又は参照抗体と比較して、約0.5倍~約8倍の範囲内の量だけ減少する。
【0049】
グリカン
例示的な実施形態において、本明細書に開示する方法は、(a)ガラクトシル化グリカン、(b)非フコシル化グリカン、(c)高マンノースグリカン、又は(d)これらの組み合わせを含む、抗体上のグリカンの量を調節して、抗体のADCP活性を増加又は減少させることを含む。例示的な態様において、本明細書に開示する方法は、(a)ガラクトシル化グリカン、(b)非フコシル化グリカン、(c)高マンノースグリカン、又は(d)これらの組み合わせを含む、抗体のFcドメインに結合したグリカンの量を調節して、抗体のADCP活性を増加又は減少させることを含む。さらなる例示的な態様において、本明細書に開示する方法は、(a)ガラクトシル化グリカン、(b)非フコシル化グリカン、(c)高マンノースグリカン、又は(d)これらの組み合わせを含む、抗体のFcドメインのAsn-297に結合したグリカンの量を調節して、抗体のADCP活性を増加又は減少させることを含む。
【0050】
例示的な態様では、本開示によって提供される方法は、抗体組成物、例えば、IgG1抗体組成物(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)の調節であって、所望の又は所定の又は予め選択されたレベルのADCP活性を達成するために、IgG1抗体のグリコフォームの所望の又は所定の又は予め選択されたレベルを達成するための工程が行われる調節に関する。例示的な実施形態において、この方法は、IgG1抗体の(a)ガラクトシル化グリカン、(b)非フコシル化グリカン、(c)高マンノースグリカン;又は(d)これらの組み合わせの量を調節(増加又は減少)して、抗体組成物により誘導又は刺激されるADCP活性を調節(増加又は減少)することを含む。例示的な実施形態において、この方法は、グリコフォーム、例えば、(a)ガラクトシル化グリコフォーム、(b)非フコシル化グリコフォーム、(c)高マンノースグリコフォーム;又は(d)これらの組み合わせの量を調節(増加又は減少)して、抗体組成物により誘導又は刺激されるADCP活性を調節(増加又は減少)することを含む。特定の理論に束縛されるものではないが、本開示の方法は所与の抗体の特定のグリコフォームの量を調節する(すなわち、増加又は減少させる)ことによって、所望の、所定の、又は目標のADCP活性を有する抗体組成物を操作する手段を提供すると考えられる。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に開示する方法は、抗体組成物中の(a)ガラクトシル化グリカン、(b)非フコシル化グリカン、(c)高マンノースグリカン、又は(d)これらの組み合わせの量又は割合を調節して、所望の、所定の、又は目標のADCP活性、及び/或いは増加又は減少したADCP活性を有する組成物を達成することを含む。
【0051】
代替の態様では、本明細書に開示する方法は、特定のIgG1分子(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)に結合した末端β-ガラクトース、コアフコース、若しくは高マンノース、又はこれらの組み合わせの量を調節することを含む。例えば、この方法は、トラスツズマブ上の末端β-ガラクトースの量を(例えば、グリカンをG0種からG1種若しくはG2種に、又はG1種からG2種に効果的に変化させることにより)増加させて、トラスツズマブ抗体のADCP活性を増加させることを含み得る。また、例えば、この方法は、トラスツズマブ上の末端β-ガラクトースの量を(例えば、グリカンをG2種からG1種若しくはG0種に、又はG1種からG0種に効果的に変化させることにより)減少させて、トラスツズマブ抗体のADCP活性を減少させることを含み得る。他の例示的な態様においては、この方法は、トラスツズマブ抗体中のコアフコースの量を減少させるか、又は非フコシル化種の量を増加させて、ADCP活性を増加させることを含み得る。他の例示的な態様においては、この方法は、リツキシマブ抗体中のコアフコースの量を増加させるか、又は非フコシル化種の量を減少させて、抗体のADCP活性を増加させることを含み得る。他の例示的な態様においては、この方法は、トラスツズマブ抗体中のコアフコースの量を増加させるか、又は非フコシル化種の量を減少させて、ADCP活性を減少させることを含み得る。他の例示的な態様においては、この方法は、リツキシマブ抗体中のコアフコースの量を減少させるか、又は非フコシル化種の量を増加させて、抗体のADCP活性を減少させることを含み得る。さらなる例示的態様においては、この方法は、IgG1抗体(トラスツズマブ若しくはリツキシマブなど)上の高マンノース若しくはM5高マンノースの量を増加させて、抗体のADCP活性を減少させるか、又はIgG1抗体(トラスツズマブ若しくはリツキシマブなど)上の高マンノース若しくはM5高マンノースの量を減少させて、抗体のADCP活性を増加させることを含み得る。
【0052】
用語「グリカン(glycan)」、「グリカン(glycans)」、「グリコフォーム(glycoform)」又は「グリコフォーム(glycoforms)」は、種々のグリコシド結合によって連結された単糖種のオリゴマーを指す。哺乳動物のN結合型グリカンに一般に見られる単糖の例には、ヘキソース(Hex)、グルコース(Glc)、ガラクトース(Gal)、マンノース(Man)及びN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)が含まれる。組み換えIgG1抗体上に見られる主要なN-グリカン種には、図1Bに示されるように、フコース、ガラクトース、マンノース、シアル酸及びGlcNAcが含まれる。グリカンオリゴ糖の構造は、Asn-297のN-グリコシル化部位に結合しており、一般に、フコース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、シアル酸(SA)、及びバイセクト型N-GlcNAcの可変付加によって構築されたアウターアームを有する7糖コアから構成されている。潜在的なオリゴ糖構造の各々は、以下のように略することができる:G0、G1又はG2は、それぞれ、0、1、又は2個の末端ガラクトース分子を有するコアGlcNAc及びマンノースオリゴ糖構造を指す。G1には、G1aとG1bと略される2つの付加的な構造が存在し、G1a又はG1bは末端ガラクトース基がコア構造の6-アーム及び3-アームのいずれに結合しているかを示すことがある。図1Bを参照されたい。フコシル化されている場合(すなわち、フコース基がコアグリカン構造に結合している場合)、G0、G1(G1a/G1b)又はG2型はG0F、G1F(G1aF/G1bF)又はG2Fと略記することができる。シアル酸が存在する場合、これらの略語は「S」を含み、例えば、G2FS2が2つのガラクトース、フコース及び2つのシアル酸基を有するグリカンを指す。追加のマンノース基を組み込むことによって形成される高マンノース(HM)構造、例えば、図4に示すような高マンノース種「M5」を含む、IgG1抗体に連結されたさらなるグリカンも存在し得る。本明細書で使用される場合、「グリカン(glycan)」又は「グリカン(glycans)」という用語は、本明細書に記載される単糖種のオリゴマーのいずれか、又は抗体若しくはIgG1抗体に連結された単糖種の任意の他のオリゴマーを指す。
【0053】
「末端β-ガラクトース」、「ガラクトシル化グリカン」又は「G1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種」は、コアマンノース構造に結合するN-アセチルグルコサミン部分を介して、N-グリコシル化部位(Asn-297)でIgG1抗体に連結された1つ又は2つのガラクトース分子を含むグリカンを指す。「末端β-ガラクトース」、「ガラクトシル化グリカン」又は「G1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種」を含む例示的なグリカンを図1Bに示す。いくつかの実施形態では、G1、G1a、G1b及び/又はG2ガラクトシル化種は、コアフコースを含んでも含まなくてもよい。
【0054】
用語「コアフコース」又は「フコシル化種」は、コアマンノース構造に結合するN-アセチルグルコサミン部分を介して、N-グリコシル化部位(Asn-297)でIgG1抗体に連結されたフコース分子(アルファ1-6)を含むグリカンを指す。「コアフコース」又は「フコシル化種」を含む例示的なグリカンを図1Bに示す。いくつかの実施形態では、コアフコース及び/又はフコシル化種を含む抗体は、末端β-ガラクトース及び/又は高マンノースを含む他のグリカンを含んでも含まなくてもよい。
【0055】
用語「非フコシル化」、「非フコシル化グリカン」又は「非フコシル化」は、抗体上のコアフコースの除去又は欠如を指す。例示的な非フコシル化抗体種を図1Bに示す。いくつかの実施形態では、コアフコースを欠く抗体は、末端β-ガラクトース及び/又は高マンノースを含む他のグリカンを含んでも含まなくてもよい。非フコシル化グリコフォームとしては、A1G0、A1G1a、A2G0、A2G1a、A2G1b、A2G2及びA1G1M5が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Reusch and Tejada,Glycobiology 25(12):1325-1334(2015)を参照されたい。
【0056】
「高マンノース」、「高マンノースグリカン」又は「HM」という用語は、N-グリコシル化部位(Asn-297)でIgG1抗体に連結された3個を超えるマンノース分子を含むグリカンを指す。2つの追加のマンノース分子を含有する「M5高マンノース抗体種」を含む、例示的な高マンノース抗体を図4に示す。高マンノースグリカンは、それぞれMan5、Man6、Man7、Man8、及びMan9と略される、5、6、7、8、又は9個のマンノース残基を含むグリカンを包含する
【0057】
用語「量」は、グリカンの量(例えば、(1)末端β-ガラクトースの量、(2)G1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種の量、(3)コアフコースの量、(4)非フコシル化種の量、(5)高マンノースの量、並びに/又は(6)M5高マンノース種の量を含む)をいう場合、グリカンの総量と比較した特定のグリカンの相対的な量又は割合を指す。例えば、(1)末端β-ガラクトース、(2)G1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種、(3)コアフコース、(4)非フコシル化種、(5)高マンノース、並びに/又は(6)M5高マンノース種の量は、末端β-ガラクトース、G1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種、コアフコース、非フコシル化種、高マンノース、又はM5高マンノース種の量を全グリカンの総量で除して算出される割合として示される。グリカン(例えば、末端β-ガラクトース、G1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種、コアフコース、非フコシル化種、高マンノース、並びに/又はM5高マンノース種を含む)の量又は相対的割合を測定及び決定する方法は当該技術分野でよく知られており、実施例に記載されるような親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)が挙げられる。また、Pace et al.,Characterizing the Effect of Multiple Fc Glycan Attributes on the Effector Functions and FccRIIIa Receptor Binding Activity of an IgG1 Antibody,Biotechnol.Prog.,2016,Vol.32,No.5 pages 1181-1192、及びShah,B.et al.LC-MS/MS Peptide Mapping with Automated Data Processing for Routine Profiling of N-Glycans in Immunoglobulins J.Am.Soc.Mass Spectrom.(2014)25:999を参照されたい。これらの各文献はあらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、量は取り込みモルパーセントとして決定又は算出することができる。
【0058】
グリカン量の調節
本明細書で使用される場合、「調節する」は減少又は増加によって変化することを意味し、したがって、例示的な態様では、本明細書に開示する方法は、抗体のグリカンの量を増加及び/又は減少させることを含む。例示的な態様では、本開示の方法は、抗体のグリカン(例えば、ガラクトシル化グリカン、G1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種、非フコシル化グリカン、コアフコース、高マンノースグリカン、M5高マンノース種、又はこれらの組み合わせ)を、対照又は参照抗体と比較して任意の程度又はレベルまで増加させることを含む。例示的な例では、本方法は、対照又は参照抗体と比較して、グリカンを少なくとも又は約1%~約100%(例えば、少なくとも又は約1%、少なくとも又は約2%、少なくとも又は約3%、少なくとも又は約4%、少なくとも又は約5%、少なくとも又は約6%、少なくとも又は約7%、少なくとも又は約8%、少なくとも又は約9%、少なくとも又は約9.5%、少なくとも又は約9.8%、少なくとも又は約10%、少なくとも又は約15%、少なくとも又は約20%、少なくとも又は約25%、少なくとも又は約30%、少なくとも又は約35%、少なくとも又は約40%、少なくとも又は約45%、少なくとも又は約50%、少なくとも又は約55%、少なくとも又は約60%、少なくとも又は約65%、少なくとも又は約70%、少なくとも又は約75%、少なくとも又は約80%、少なくとも又は約85%、少なくとも又は約90%、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約100%)増加させることを含む。例示的な実施形態では、本方法は、対照又は参照抗体と比較して、グリカンを100%以上、例えば、少なくとも又は約125%、少なくとも又は約150%、少なくとも又は約175%、少なくとも又は約200%、少なくとも又は約300%、少なくとも又は約400%、少なくとも又は約500%、少なくとも又は約600%、少なくとも又は約700%、少なくとも又は約800%、少なくとも又は約900%、或いは少なくとも又は約1000%さえも増加させることを含む。例示的な実施形態では、本方法は、対照又は参照抗体と比較して、グリカンを少なくとも約1.5倍増加させることを含む。例示的な実施形態では、本方法は、対照又は参照抗体と比較して、グリカンを少なくとも約2倍増加させることを含む。例示的な実施形態では、本方法は、対照又は参照抗体と比較して、グリカンを少なくとも約3倍増加させることを含む。例示的な実施形態では、本方法は、対照又は参照抗体と比較して、グリカンを少なくとも約4倍又は約5倍増加させることを含む。例示的な実施形態では、本方法は、対照又は参照抗体と比較して、グリカンを少なくとも約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、又は約10倍増加させることを含む。例示的な実施形態では、本方法は、対照又は参照抗体と比較して、グリカンを少なくとも約0.5倍~約8倍の範囲内の量だけ増加させることを含む。
【0059】
例示的な態様では、本開示の方法は、抗体のグリカン(例えば、ガラクトシル化グリカン、G1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種、非フコシル化グリカン、コアフコース、高マンノースグリカン、M5高マンノース種、又はこれらの組み合わせ)を、対照又は参照抗体と比較して任意の程度又はレベルまで減少させることを含む。例示的な例では、本方法は、対照又は参照抗体と比較して、グリカンを少なくとも又は約1%~約100%(例えば、少なくとも又は約1%、少なくとも又は約2%、少なくとも又は約3%、少なくとも又は約4%、少なくとも又は約5%、少なくとも又は約6%、少なくとも又は約7%、少なくとも又は約8%、少なくとも又は約9%、少なくとも又は約9.5%、少なくとも又は約9.8%、少なくとも又は約10%、少なくとも又は約15%、少なくとも又は約20%、少なくとも又は約25%、少なくとも又は約30%、少なくとも又は約35%、少なくとも又は約40%、少なくとも又は約45%、少なくとも又は約50%、少なくとも又は約55%、少なくとも又は約60%、少なくとも又は約65%、少なくとも又は約70%、少なくとも又は約75%、少なくとも又は約80%、少なくとも又は約85%、少なくとも又は約90%、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約100%)減少させることを含む。例示的な実施形態では、本方法は、対照又は参照抗体と比較して、グリカンを100%以上、例えば、少なくとも又は約125%、少なくとも又は約150%、少なくとも又は約175%、少なくとも又は約200%、少なくとも又は約300%、少なくとも又は約400%、少なくとも又は約500%、少なくとも又は約600%、少なくとも又は約700%、少なくとも又は約800%、少なくとも又は約900%、或いは少なくとも又は約1000%さえも減少させることを含む。例示的な実施形態では、本方法は、対照又は参照抗体と比較して、グリカンを少なくとも約1.5倍減少させることを含む。例示的な実施形態では、本方法は、対照又は参照抗体と比較して、グリカンを少なくとも約2倍減少させることを含む。例示的な実施形態では、本方法は、対照又は参照抗体と比較して、グリカンを少なくとも約3倍減少させることを含む。例示的な実施形態では、本方法は、対照又は参照抗体と比較して、グリカンを少なくとも約4倍又は約5倍減少させることを含む。例示的な実施形態では、本方法は、対照又は参照抗体と比較して、グリカンを少なくとも約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、又は約10倍減少させることを含む。例示的な実施形態では、本方法は、対照又は参照抗体と比較して、グリカンを少なくとも約0.5倍~約8倍の範囲内の量だけ減少させることを含む。
【0060】
例示的な態様では、本開示の方法は、抗体のグリカン(例えば、ガラクトシル化グリカン、G1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種、非フコシル化グリカン、コアフコース、高マンノースグリカン、M5高マンノース種、又はこれらの組み合わせ)の量を、総量の少なくとも若しくは約0.5%、少なくとも若しくは約1%、少なくとも若しくは約2%、少なくとも若しくは約3%、少なくとも若しくは約5%、少なくとも若しくは約7%、少なくとも若しくは約10%、少なくとも若しくは約15%、少なくとも若しくは約20%、少なくとも若しくは約25%、少なくとも若しくは約30%、少なくとも若しくは約35%、少なくとも若しくは約40%、少なくとも若しくは約45%、少なくとも若しくは約50%、少なくとも若しくは約55%、少なくとも若しくは約60%、少なくとも若しくは約65%、少なくとも若しくは約70%、少なくとも若しくは約75%、少なくとも若しくは約80%、少なくとも若しくは約85%、少なくとも若しくは約90%、少なくとも若しくは約95%、少なくとも若しくは約96%、少なくとも若しくは約97%、又は少なくとも若しくは約98%調節する(増加又は減少させる)、或いは総量の少なくとも又は約0.5%~98%の範囲で増加又は減少させることを含む。
【0061】
本開示の方法の例示的な実施形態では、本方法は、抗体の、例えば、末端β-ガラクトース、又はG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種を含むガラクトシル化グリカンの量を調節して、抗体のADCP活性を調節することを含む。例示的な態様では、本方法は、抗体の、例えば、末端β-ガラクトース、又はG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種を含むガラクトシル化グリカンの量を増加させて、抗体のADCP活性を増加させることを含む。例示的な例では、本方法は、トラスツズマブの、例えば、末端β-ガラクトースの量、又はG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種の量を含むガラクトシル化グリカンの量を約1パーセント増加させて、トラスツズマブ抗体のADCP活性を約2.5、約2.8、約2.88又は約3パーセント増加させることを含む。いくつかの例では、本方法は、トラスツズマブの、例えば、末端β-ガラクトースの量、又はG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種の量を含むガラクトシル化グリカンの量を約1パーセント増加させて、トラスツズマブ抗体のADCP活性を約2.88パーセント増加させることを含む。
【0062】
例示的な態様では、本方法は、抗体の、例えば、末端β-ガラクトース、又はG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種を含むガラクトシル化グリカンの量を減少させて、抗体のADCP活性を減少させることを含む。例示的な例では、本方法は、トラスツズマブの、例えば、末端β-ガラクトースの量、又はG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種の量を含むガラクトシル化グリカンの量を約1パーセント減少させて、トラスツズマブ抗体のADCP活性を約2.5、約2.8、約2.88又は約3パーセント減少させることを含む。いくつかの例では、本方法は、トラスツズマブの、例えば、末端β-ガラクトースの量、又はG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種の量を含むガラクトシル化グリカンの量を約1パーセント減少させて、トラスツズマブ抗体のADCP活性を約2.88パーセント減少させることを含む。
【0063】
本開示の方法の例示的実施形態では、本方法は、抗体の非フコシル化グリカンの量又は抗体のコアフコースの量を調節して、抗体のADCP活性を調節することを含む。例示的な態様では、本方法は、抗体の非フコシル化グリカンの量を減少させることか、又は抗体のコアフコースの量を増加させることによって、抗体のADCP活性を増加させることを含む。例示的な態様では、本方法は、リツキシマブ抗体の非フコシル化グリカンの量を約1パーセント減少させるか、又はリツキシマブ抗体のコアフコースの量を約1パーセント増加させて、リツキシマブ抗体のADCP活性を約0.5、約0.7、約0.75、約0.8又は約1パーセント増加させることを含む。いくつかの態様では、本方法は、リツキシマブ抗体の非フコシル化グリカンの量を約1パーセント減少させるか、又はリツキシマブ抗体のコアフコースの量を約1パーセント増加させて、リツキシマブ抗体のADCP活性を約0.75パーセント増加させることを含む。
【0064】
本開示の方法の他の実施形態では、方法は、抗体の非フコシル化グリカンの量を増加させるか、又はコアフコースの量を減少させることによって、抗体のADCP活性を増加させることを含む。例示的な態様では、本方法は、トラスツズマブ抗体の非フコシル化グリカンの量を約1パーセント増加させるか、又はトラスツズマブ抗体のコアフコースの量を約1パーセント減少させて、トラスツズマブ抗体のADCP活性を約0.5、約0.56、約0.6又は約1パーセント増加させることを含む。いくつかの態様では、本方法は、トラスツズマブ抗体の非フコシル化グリカンの量を約1パーセント増加させるか、又はトラスツズマブ抗体のコアフコースの量を約1パーセント減少させて、トラスツズマブ抗体のADCP活性を約0.56パーセント増加させることを含む。
【0065】
他の例示的な態様では、本方法は、抗体の非フコシル化グリカンの量を減少させることか、又は抗体のコアフコースの量を増加させることによって、抗体のADCP活性を減少させることを含む。例示的な態様では、本方法は、トラスツズマブ抗体の非フコシル化グリカンの量を約1パーセント減少させるか、又はトラスツズマブ抗体のコアフコースの量を約1パーセント増加させて、トラスツズマブ抗体のADCP活性を約0.5、約0.56、約0.6又は約1パーセント減少させることを含む。いくつかの態様では、本方法は、トラスツズマブ抗体の非フコシル化グリカンの量を約1パーセント減少させるか、又はトラスツズマブ抗体のコアフコースの量を約1パーセント増加させて、トラスツズマブ抗体のADCP活性を約0.56パーセント減少させることを含む。
【0066】
本開示の方法の他の実施形態では、方法は、抗体の非フコシル化グリカンの量を増加させるか、又はコアフコースの量を減少させることによって、抗体のADCP活性を減少させることを含む。例示的な態様では、本方法は、リツキシマブ抗体の非フコシル化グリカンの量を約1パーセント増加させるか、又はリツキシマブ抗体のコアフコースの量を約1パーセント減少させて、リツキシマブ抗体のADCP活性を約0.5、約0.7、約0.75、約0.8又は約1パーセント減少させることを含む。いくつかの態様では、本方法は、リツキシマブ抗体の非フコシル化グリカンの量を約1パーセント増加させるか、又はリツキシマブ抗体のコアフコースの量を約1パーセント減少させて、リツキシマブ抗体のADCP活性を約0.75パーセント減少させることを含む。
【0067】
例示的な例において、トラスツズマブ又はリツキシマブ抗体上の調節(増加又は減少)される非フコシル化グリカンには、以下からなる群から選択される1つ以上の非フコシル化グリカンが含まれる:A1G0、A1G1、A2G0、A2G1a、A2G1b、A2G2及びA1G1M5。
【0068】
本開示の方法の例示的な実施形態において、方法は、抗体の、例えば、M5高マンノース種を含む高マンノースグリカンの量を調節して、抗体、例えば、IgG1抗体のADCP活性を調節することを含む。いくつかの例では、IgG1抗体は、抗HER2抗体又は抗CD20抗体である。例示的な態様では、方法は、抗HER2抗体の高マンノースグリカンの量を増加させて、抗体組成物のADCP活性を減少させることか、又は抗HER2抗体の高マンノースグリカンの量を減少させて、抗体組成物のADCP活性を増加させることを含む。例示的な例では、方法は、抗CD20抗体の高マンノースグリカンの量を増加させて、抗体組成物のADCP活性を減少させることか、又は抗CD20抗体の高マンノースグリカンの量を減少させて、抗体組成物のADCP活性を増加させることを含む。例示的な態様では、IgG1抗体(トラスツズマブ又はリツキシマブなど)におけるADCP活性を調節するために増加又は減少させる高マンノースグリカンは、以下からなる群から選択される1つ以上の高マンノース種を含む:HM5、HM6、HM7、HM8及びHM9。
【0069】
例示的な態様では、方法は、抗体の、例えば、M5高マンノース種を含む高マンノースグリカンの量を増加させて、抗体のADCP活性を減少させることを含む。例示的な例では、本方法は、IgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)の高マンノースグリカン(例えば、M5高マンノース種を含む)の量を約1パーセント増加させて、IgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)のADCP活性を約1%、約1.2%、約1.31%、約1.5%、約1.7%、約2%、約2.11%、約2.5%、又は約1%~約2.5%の範囲で減少させることを含む。いくつかの例では、本方法は、IgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)の高マンノースグリカン(例えば、M5高マンノース種を含む)の量を約1パーセント増加させて、IgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)のADCP活性を約1.31%又は約2.11%減少させることを含む。
【0070】
例示的な態様では、方法は、抗体の、例えば、M5高マンノース種を含む高マンノースグリカンの量を減少させて、抗体のADCP活性を増加させることを含む。例示的な例では、本方法は、IgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)の高マンノースグリカン(例えば、M5高マンノース種を含む)の量を約1パーセント減少させて、IgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)のADCP活性を約1%、約1.2%、約1.31%、約1.5%、約1.7%、約2%、約2.11%、約2.5%、又は約1%~約2.5%の範囲で増加させることを含む。いくつかの例では、本方法は、IgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)の高マンノースグリカン(例えば、M5高マンノース種を含む)の量を約1パーセント減少させて、IgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)のADCP活性を約1.31%又は約2.11%増加させることを含む。
【0071】
本開示の方法の例示的な実施形態では、方法は、ガラクトシル化グリカン(例えば、末端β-ガラクトース、又はG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種を含む)、非フコシル化グリカン又はコアフコース、並びに/或いは高マンノースグリカン(例えば、M5高マンノース種を含む)の組み合わせの量を調節して、IgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)のADCP活性を調節することを含む。本開示の方法の例示的な実施形態では、方法は、IgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)のADCP活性を、(1)抗体中の末端β-ガラクトースの量及び/若しくは抗体のG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種の量、(2)抗体中のコアフコースの量及び/若しくは抗体の非フコシル化種の量、並びに/又は(3)抗体中の高マンノースの量若しくは抗体のM5高マンノース種の量を増加若しくは減少させることによって調節することを含む。
【0072】
本開示の方法のいくつかの実施形態では、方法は、IgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)のADCP活性を、(1)抗体中の末端β-ガラクトースの量を増加させるか、若しくは抗体のG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種の量を増加させる、(2)抗体中のコアフコースの量を減少させるか、若しくは抗体の非フコシル化種の量を増加させる、並びに/又は(3)抗体中の高マンノースの量を減少させるか、又は抗体のM5高マンノース種の量を減少させることによって増加させることを含む。
【0073】
本開示の方法のいくつかの他の実施形態では、方法は、IgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)のADCP活性を、(1)抗体中の末端β-ガラクトースの量を減少させるか、若しくは抗体のG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種の量を減少させる、(2)抗体中のコアフコースの量を増加させるか、若しくは抗体の非フコシル化種の量を減少させる、並びに/又は(3)抗体中の高マンノースの量を増加させるか、若しくは抗体のM5高マンノース種の量を増加させることによって減少させることを含む。
【0074】
抗体のADCP活性を操作する方法
本明細書で提供される方法にはまた、第2の抗体中のグリカン(例えば、ガラクトシル化グリカン、末端β-ガラクトース、G1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種、非フコシル化グリカン、コアフコース、高マンノースグリカン、M5高マンノース種、又はこれらの組み合わせ)の量を、第1の参照抗体のADCP活性にマッチングするように調節することによって、第1の参照抗体のADCP活性と第2の抗体のADCP活性をマッチングさせる方法が含まれる。例示的な例では、本方法は、第2の抗体中のグリカン(例えば、ガラクトシル化グリカン、末端β-ガラクトース、G1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種、非フコシル化グリカン、コアフコース、高マンノースグリカン、M5高マンノース種、又はこれらの組み合わせ)の量を、第1の参照抗体のADCP活性にマッチングするように調節することによって、第2の抗体のADCP活性を、第1の参照抗体のADCP活性にマッチするように変化させることを含む。例示的な態様では、方法は、本明細書に記載される方法を使用して、第2の抗体及び/又は参照抗体のADCP活性を決定又は測定することを含む。例示的な態様では、参照抗体又は第2の抗体のADCP活性の決定又は測定は、(i)抗体中のグリカン量を調節する前、(ii)抗体中のグリカン量を調節した後、又は(iii)抗体中のグリカン量を調節する前及び調節した後に行われる。
【0075】
例えば、本開示の方法のいくつかの例示的な実施形態では、方法は、(1)参照抗体又は参照IgG1抗体のADCP活性を決定する工程;(2)参照抗体と同じ抗体配列を有する第2の抗体のADCP活性を決定する工程;並びに(3)第2の抗体のグリカン(例えば、ガラクトシル化グリカン、末端β-ガラクトース、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種、非フコシル化グリカン、コアフコース、高マンノースグリカン、M5高マンノース種、又はこれらの組み合わせ)の量を、グリカンの量を増加又は減少させた後の第2の抗体のADCP活性が参照抗体と同じであるか、或いは参照抗体の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%若しくは約35%以内であるか、又は参照抗体の約1%~約35%の範囲内であるように、増加又は減少させることによって、第2の抗体のADCP活性を変化させる工程によって、参照抗体のADCP活性をマッチングさせることを含む。いくつかの例では、工程1(「参照抗体又は参照IgG1抗体のADCP活性を決定する」)は、工程2(「…第2の抗体のADCP活性を決定する」)及び/又は工程3(「第2の抗体のADCP活性を…変化させる」)の前、後若しくは同時に行われ、一方、他の例では、工程2は工程1及び/又は工程3の前、後若しくは同時に行われる。
【0076】
いくつかの実施形態では、方法は、(1)参照トラスツズマブ抗体のADCP活性を決定する工程;(2)参照トラスツズマブ抗体と同じ抗体配列を有する第2の抗体のADCP活性を決定する工程;並びに(3)第2の抗体中の末端β-ガラクトースの量を増加させることか、又は第2の抗体のG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種の量を増加させることによって、第2の抗体のADCP活性を増加させる工程であって、第2の抗体中の末端β-ガラクトース、又は第2の抗体のG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種を増加させた後の第2の抗体のADCP活性は、参照抗体と同じであるか、又は参照抗体の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%若しくは約35%以内であるか、又は参照抗体の約1%~約35%の範囲内である工程によって、参照トラスツズマブ抗体のADCP活性をマッチングさせることを含む。いくつかの例では、工程1(「参照トラスツズマブ抗体のADCP活性を決定する」)は、工程2(「…第2の抗体のADCP活性を決定する」)及び/又は工程3(「第2の抗体のADCP活性を…増加させる」)の前、後若しくは同時に行われ、一方、他の例では、工程2は工程1及び/又は工程3の前、後若しくは同時に行われる。
【0077】
いくつかの他の実施形態では、方法は、(1)参照トラスツズマブ抗体のADCP活性を決定する工程;(2)参照トラスツズマブ抗体と同じ抗体配列を有する第2の抗体のADCP活性を決定する工程;並びに(3)第2の抗体中の末端β-ガラクトースの量を減少させることか、又は第2の抗体のG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種の量を減少させることによって、第2の抗体のADCP活性を減少させる工程であって、第2の抗体中の末端β-ガラクトース、又はG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種を減少させた後の第2の抗体のADCP活性は、参照抗体と同じであるか、又は参照抗体の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%若しくは約35%以内であるか、又は参照抗体の約1%~約35%の範囲内である工程によって、参照トラスツズマブ抗体のADCP活性をマッチングさせることを含む。いくつかの例では、工程1(「参照トラスツズマブ抗体のADCP活性を決定する」)は、工程2(「…第2の抗体のADCP活性を決定する」)及び/又は工程3(「第2の抗体のADCP活性を…減少させる」)の前、後若しくは同時に行われ、一方、他の例では、工程2は工程1及び/又は工程3の前、後若しくは同時に行われる。
【0078】
いくつかの実施形態では、方法は、(1)参照トラスツズマブ抗体のADCP活性を決定する工程;(2)参照トラスツズマブ抗体と同じ抗体配列を有する第2の抗体のADCP活性を決定する工程;並びに(3)第2の抗体中のコアフコースの量を減少させることか、又は第2の抗体の非フコシル化種の量を増加させることによって、第2の抗体のADCP活性を増加させる工程であって、コアフコースを減少させたか、又は非フコシル化種を増加させた後の第2の抗体のADCP活性は、参照抗体と同じであるか、又は参照抗体の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%若しくは約35%以内であるか、又は参照抗体の約1%~約35%の範囲内である工程によって、参照トラスツズマブ抗体のADCP活性をマッチングさせることを含む。いくつかの例では、工程1(「参照トラスツズマブ抗体のADCP活性を決定する」)は、工程2(「…第2の抗体のADCP活性を決定する」)及び/又は工程3(「第2の抗体のADCP活性を…増加させる」)の前、後若しくは同時に行われ、一方、他の例では、工程2は工程1及び/又は工程3の前、後若しくは同時に行われる。
【0079】
いくつかの実施形態では、方法は、(1)参照トラスツズマブ抗体のADCP活性を決定する工程;(2)参照トラスツズマブ抗体と同じ抗体配列を有する第2の抗体のADCP活性を決定する工程;並びに(3)第2の抗体中のコアフコースの量を増加させることか、又は第2の抗体の非フコシル化種の量を減少させることによって、第2の抗体のADCP活性を減少させる工程であって、コアフコースを増加させたか、又は非フコシル化種を減少させた後の第2の抗体のADCP活性は、参照抗体と同じであるか、又は参照抗体の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%若しくは約35%以内であるか、又は参照抗体の約1%~約35%の範囲内である工程によって、参照トラスツズマブ抗体のADCP活性をマッチングさせることを含む。いくつかの例では、工程1(「参照トラスツズマブ抗体のADCP活性を決定する」)は、工程2(「…第2の抗体のADCP活性を決定する」)及び/又は工程3(「第2の抗体のADCP活性を…減少させる」)の前、後若しくは同時に行われ、一方、他の例では、工程2は工程1及び/又は工程3の前、後若しくは同時に行われる。
【0080】
いくつかの実施形態では、方法は、(1)参照リツキシマブ抗体のADCP活性を決定する工程;(2)参照リツキシマブ抗体と同じ抗体配列を有する第2の抗体のADCP活性を決定する工程;並びに(3)第2の抗体中のコアフコースの量を増加させることか、又は第2の抗体の非フコシル化種の量を減少させることによって、第2の抗体のADCP活性を増加させる工程であって、コアフコースを増加させたか、又は非フコシル化種を減少させた後の第2の抗体のADCP活性は、参照抗体と同じであるか、又は参照抗体の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%若しくは約35%以内であるか、又は参照抗体の約1%~約35%の範囲内である工程によって、参照リツキシマブ抗体のADCP活性をマッチングさせることを含む。いくつかの例では、工程1(「参照リツキシマブ抗体のADCP活性を決定する」)は、工程2(「…第2の抗体のADCP活性を決定する」)及び/又は工程3(「第2の抗体のADCP活性を…増加させる」)の前、後若しくは同時に行われ、一方、他の例では、工程2は工程1及び/又は工程3の前、後若しくは同時に行われる。
【0081】
いくつかの実施形態では、方法は、(1)参照リツキシマブ抗体のADCP活性を決定する工程;(2)参照リツキシマブ抗体と同じ抗体配列を有する第2の抗体のADCP活性を決定する工程;並びに(3)第2の抗体中のコアフコースの量を減少させることか、又は第2の抗体の非フコシル化種の量を増加させることによって、第2の抗体のADCP活性を減少させる工程であって、コアフコースを減少させたか、又は非フコシル化種を増加させた後の第2の抗体のADCP活性は、参照抗体と同じであるか、又は参照抗体の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%若しくは約35%以内であるか、又は参照抗体の約1%~約35%の範囲内である工程によって、参照リツキシマブ抗体のADCP活性をマッチングさせることを含む。いくつかの例では、工程1(「参照リツキシマブ抗体のADCP活性を決定する」)は、工程2(「…第2の抗体のADCP活性を決定する」)及び/又は工程3(「第2の抗体のADCP活性を…減少させる」)の前、後若しくは同時に行われ、一方、他の例では、工程2は工程1及び/又は工程3の前、後若しくは同時に行われる。
【0082】
いくつかの実施形態では、方法は、(1)参照IgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)のADCP活性を決定する工程;(2)参照抗体と同じ抗体配列を有する第2の抗体のADCP活性を決定する工程;並びに(3)第2の抗体中の高マンノースの量を減少させることか、又は第2の抗体のM5高マンノース種の量を減少させることによって、第2の抗体のADCP活性を増加させる工程であって、高マンノース又はM5高マンノース種を減少させた後の第2の抗体のADCP活性は、参照抗体と同じであるか、又は参照抗体の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%若しくは約35%以内であるか、又は参照抗体の約1%~約35%の範囲内である工程によって、参照IgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)のADCP活性をマッチングさせることを含む。いくつかの例では、工程1(「参照IgG1抗体のADCP活性を決定する」)は、工程2(「…第2の抗体のADCP活性を決定する」)及び/又は工程3(「第2の抗体のADCP活性を…増加させる」)の前、後若しくは同時に行われ、一方、他の例では、工程2は工程1及び/又は工程3の前、後若しくは同時に行われる。
【0083】
いくつかの実施形態では、方法は、(1)参照IgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)のADCP活性を決定する工程;(2)参照抗体と同じ抗体配列を有する第2の抗体のADCP活性を決定する工程;並びに(3)第2の抗体中の高マンノースの量を増加させることか、又は第2の抗体のM5高マンノース種の量を増加させることによって、第2の抗体のADCP活性を減少させる工程であって、高マンノース又はM5高マンノース種を増加させた後の第2の抗体のADCP活性は、参照抗体と同じであるか、又は参照抗体の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%若しくは約35%以内であるか、又は参照抗体の約1%~約35%の範囲内である工程によって、参照IgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)のADCP活性をマッチングさせることを含む。いくつかの例では、工程1(「参照IgG1抗体のADCP活性を決定する」)は、工程2(「…第2の抗体のADCP活性を決定する」)及び/又は工程3(「第2の抗体のADCP活性を…減少させる」)の前、後若しくは同時に行われ、一方、他の例では、工程2は工程1及び/又は工程3の前、後若しくは同時に行われる。
【0084】
参照抗体のADCPをマッチングさせる方法に加えて、本明細書で提供される方法にはまた、目的ADCP活性を達成するように、抗体のグリカン(例えば、ガラクトシル化グリカン、末端β-ガラクトース、G1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種、非フコシル化グリカン、コアフコース、高マンノースグリカン、M5高マンノース種、又はこれらの組み合わせ)の量を調節することによって、特定のADCP活性を有する抗体を操作する方法が含まれる。
【0085】
例えば、本開示の方法のいくつかの例示的な実施形態では、方法は、(1)抗体又はIgG1抗体のADCP活性を決定する工程;(2)目標ADCP活性を決定又は特定する工程;並びに(3)抗体のグリカン(例えば、ガラクトシル化グリカン、末端β-ガラクトース、G1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種、非フコシル化グリカン、コアフコース、高マンノースグリカン、M5高マンノース種、又はこれらの組み合わせ)の量を増加又は減少させることによって、グリカンの量を増加又は減少させた後の抗体のADCP活性が、目標ADCP活性と同じであるか、又は目標ADCP活性の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%若しくは約35%以内であるか、又は目標ADCP活性の約1%~約35%の範囲内であるように、抗体のADCP活性を変化させる工程によって、抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)の特定の目標ADCP活性を操作することを含む。いくつかの例では、工程1(「抗体又はIgG1抗体のADCP活性を決定する」)は、工程2(「目標ADCP活性を決定又は特定する」)及び/又は工程3(「…抗体のADCP活性を変化させる」)の前、後若しくは同時に行われ、一方、他の例では、工程2は工程1及び/又は工程3の前、後若しくは同時に行われる。
【0086】
いくつかの実施形態では、方法は、(1)トラスツズマブ抗体のADCP活性を決定する工程;(2)目標ADCP活性を決定又は特定する工程;並びに(3)抗体中の末端β-ガラクトースの量を増加させることか、又は抗体のG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種の量を増加させることによって、トラスツズマブ抗体のADCP活性を増加させる工程であって、抗体中の末端β-ガラクトース、又はG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種を増加させた後のトラスツズマブ抗体のADCP活性は、目標ADCP活性と同じであるか、又は目標ADCP活性の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%若しくは約35%以内であるか、又は目標ADCP活性の約1%~約35%の範囲内である工程によって、トラスツズマブ抗体の特定の目標ADCP活性を操作することを含む。いくつかの例では、工程1(「トラスツズマブ抗体のADCP活性を決定する」)は、工程2(「目標ADCP活性を決定又は特定する」)及び/又は工程3(「…トラスツズマブ抗体のADCP活性を増加させる」)の前、後若しくは同時に行われ、一方、他の例では、工程2は工程1及び/又は工程3の前、後若しくは同時に行われる。
【0087】
いくつかの他の実施形態では、方法は、(1)トラスツズマブ抗体のADCP活性を決定する工程;(2)目標ADCP活性を決定又は特定する工程;並びに(3)抗体中の末端β-ガラクトースの量を減少させることか、又は抗体のG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種の量を減少させることによって、トラスツズマブ抗体のADCP活性を減少させる工程であって、抗体中の末端β-ガラクトース、又はG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種を減少させた後のトラスツズマブ抗体のADCP活性は、目標ADCP活性と同じであるか、又は目標ADCP活性の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%若しくは約35%以内であるか、又は目標ADCP活性の約1%~約35%の範囲内である工程によって、トラスツズマブ抗体の特定の目標ADCP活性を操作することを含む。いくつかの例では、工程1(「トラスツズマブ抗体のADCP活性を決定する」)は、工程2(「目標ADCP活性を決定又は特定する」)及び/又は工程3(「…トラスツズマブ抗体のADCP活性を減少させる」)の前、後若しくは同時に行われ、一方、他の例では、工程2は工程1及び/又は工程3の前、後若しくは同時に行われる。
【0088】
いくつかの実施形態では、方法は、(1)トラスツズマブ抗体のADCP活性を決定する工程;(2)目標ADCP活性を決定する又は特定する工程;及び(3)抗体中のコアフコースの量を減少させることか、又は抗体の非フコシル化種の量を増加させることによって、トラスツズマブ抗体のADCP活性を増加させる工程であって、コアフコースを減少させた後、又は非フコシル化種を増加させた後のトラスツズマブ抗体のADCP活性は、目標ADCP活性と同じであるか、又は目標ADCP活性の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%若しくは約35%以内であるか、又は目標ADCP活性の約1%~約35%の範囲内である工程によって、トラスツズマブ抗体の特定の目標ADCP活性を操作することを含む。いくつかの例では、工程1(「トラスツズマブ抗体のADCP活性を決定する」)は、工程2(「目標ADCP活性を決定又は特定する」)及び/又は工程3(「…トラスツズマブ抗体のADCP活性を増加させる」)の前、後若しくは同時に行われ、一方、他の例では、工程2は工程1及び/又は工程3の前、後若しくは同時に行われる。
【0089】
いくつかの実施形態では、方法は、(1)トラスツズマブ抗体のADCP活性を決定する工程;(2)目標ADCP活性を決定する又は特定する工程;及び(3)抗体中のコアフコースの量を増加させることか、又は抗体の非フコシル化種の量を減少させることによって、トラスツズマブ抗体のADCP活性を減少させる工程であって、コアフコースを増大させた後、又は非フコシル化種を減少させた後のトラスツズマブ抗体のADCP活性は、目標ADCP活性と同じであるか、又は目標ADCP活性の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%若しくは約35%以内であるか、又は目標ADCP活性の約1%~約35%の範囲内である工程によって、トラスツズマブ抗体の特定の目標ADCP活性を操作することを含む。いくつかの例では、工程1(「トラスツズマブ抗体のADCP活性を決定する」)は、工程2(「目標ADCP活性を決定又は特定する」)及び/又は工程3(「…トラスツズマブ抗体のADCP活性を減少させる」)の前、後若しくは同時に行われ、一方、他の例では、工程2は工程1及び/又は工程3の前、後若しくは同時に行われる。
【0090】
いくつかの実施形態では、方法は、(1)リツキシマブ抗体のADCP活性を決定する工程;(2)目標ADCP活性を決定又は特定する工程;及び(3)抗体中のコアフコースの量を増加させることか、又は抗体の非フコシル化種の量を減少させることによって、リツキシマブ抗体のADCP活性を増加させる工程であって、コアフコースを増加させた後、又は非フコシル化種を減少させた後のリツキシマブ抗体のADCP活性は、目標ADCP活性と同じであるか、又は目標ADCP活性の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%若しくは約35%以内であるか、又は目標ADCP活性の約1%~約35%の範囲内である工程によって、リツキシマブ抗体の特定の目標ADCP活性を操作することを含む。いくつかの例では、工程1(「リツキシマブ抗体のADCP活性を決定する」)は、工程2(「目標ADCP活性を決定又は特定する」)及び/又は工程3(「…リツキシマブ抗体のADCP活性を増加させる」)の前、後若しくは同時に行われ、一方、他の例では、工程2は工程1及び/又は工程3の前、後若しくは同時に行われる。
【0091】
いくつかの実施形態では、方法は、(1)リツキシマブ抗体のADCP活性を決定する工程;(2)目標ADCP活性を決定又は特定する工程;及び(3)抗体中のコアフコースの量を減少させることか、又は抗体の非フコシル化種の量を増加させることによって、リツキシマブ抗体のADCP活性を減少させる工程であって、コアフコースを減少させた後、又は非フコシル化種を増加させた後のリツキシマブ抗体のADCP活性は、目標ADCP活性と同じであるか、又は目標ADCP活性の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%若しくは約35%以内であるか、又は目標ADCP活性の約1%~約35%の範囲内である工程によって、リツキシマブ抗体の特定の目標ADCP活性を操作することを含む。いくつかの例では、工程1(「リツキシマブ抗体のADCP活性を決定する」)は、工程2(「目標ADCP活性を決定又は特定する」)及び/又は工程3(「…リツキシマブ抗体のADCP活性を減少させる」)の前、後若しくは同時に行われ、一方、他の例では、工程2は工程1及び/又は工程3の前、後若しくは同時に行われる。
【0092】
いくつかの実施形態では、方法は、(1)IgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)のADCP活性を決定する工程;(2)目標ADCP活性を決定又は特定する工程;及び(3)抗体中の高マンノースの量を減少させることか、又は抗体のM5高マンノース種の量を減少させることによって、IgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)のADCP活性を増加させる工程であって、高マンノース又はM5高マンノース種を減少させた後のIgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)のADCP活性は、目標ADCP活性と同じであるか、又は目標ADCP活性の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%若しくは約35%以内であるか、又は目標ADCP活性の約1%~約35%の範囲内である工程によって、IgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)の特定の目標ADCP活性を操作することを含む。いくつかの例では、工程1(「IgG1抗体のADCP活性を決定する」)は、工程2(「目標ADCP活性を決定又は特定する」)及び/又は工程3(「…IgG1抗体のADCP活性を増加させる」)の前、後若しくは同時に行われ、一方、他の例では、工程2は工程1及び/又は工程3の前、後若しくは同時に行われる。
【0093】
いくつかの実施形態では、方法は、(1)参照IgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)のADCP活性を決定する工程;(2)目標ADCP活性を決定又は特定する工程;及び(3)抗体中の高マンノースの量を増加させることか、又は抗体のM5高マンノース種の量を増加させることによって、IgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)のADCP活性を減少させる工程であって、高マンノース又はM5高マンノース種を増加させた後のIgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)のADCP活性は、目標ADCP活性と同じであるか、又は目標ADCP活性の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%若しくは約35%以内であるか、又は目標ADCP活性の約1%~約35%の範囲内である工程によって、IgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)の特定の目標ADCP活性を操作することを含む。いくつかの例では、工程1(「IgG1抗体のADCP活性を決定する」)は、工程2(「目標ADCP活性を決定又は特定する」)及び/又は工程3(「…IgG1抗体のADCP活性を減少させる」)の前、後若しくは同時に行われ、一方、他の例では、工程2は工程1及び/又は工程3の前、後若しくは同時に行われる。
【0094】
グリカンの調節方法
糖タンパク質、例えば、抗体上の、グリカン(ガラクトシル化グリカン(例えば、末端β-ガラクトース、若しくはG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種を含む)、非フコシル化グリカン又はコアフコースを含有するグリカン、並びに/又は抗体を含む糖タンパク質上の高マンノースグリカン(例えば、M5高マンノース種を含む)など)の量を調節する好適な方法は、当該技術分野で知られている。例えば、Zhang et al.,Drug Discovery Today 21(5):2016を参照されたい。したがって、いくつかの態様では、グリコシル化コンピテント細胞(これは糖タンパク質、例えば、抗体を、組み換え技術により産生するために使用することができる)は、所望のレベルのグリカンを達成するための特定の条件下で培養される。
【0095】
例えば、国際公開第2013/114164号パンフレット、国際公開第2013/114245号パンフレット、国際公開第2013/114167号パンフレット、国際公開第2015128793号パンフレット、及び国際公開第2016/089919号パンフレットはそれぞれ、グリカン、例えば、ガラクトシル化グリカン(例えば、末端β-ガラクトース、又はG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種を含む)、非フコシル化グリカン、又はコアフコースを含有するグリカン、並びに/或いは、高マンノースグリカン(例えば、M5高マンノース種を含む)を調節するのに有用な組み換え細胞培養技術、例えば、全非フコシル化グリカンの割合が増加した糖タンパク質を得る方法(国際公開第2013/114164号パンフレット)、Man5グリカン及び/又は非フコシル化グリカンの割合が増加した糖タンパク質を得る方法(国際公開第2013/114245号パンフレット)、特定量の高マンノースグリカン、非フコシル化グリカン及びG0Fグリカンを有する糖タンパク質を得る方法(国際公開第2013/114167号パンフレット);高マンノースグリカン並びに減少したガラクトシル化及び/又は高ガラクトシル化グリカンを有する糖タンパク質を得る方法(国際公開第2015/128793号パンフレット);並びに組み換えタンパク質上のフコシル化グリカン含有量を操作する方法(国際公開第2016/089919号パンフレット)を教示している。国際公開第2013/114164号パンフレット、国際公開第2013/114245号パンフレット、国際公開第2013/114167号パンフレット、国際公開第2015/128793号パンフレット、及び国際公開第2016/089919号パンフレットによって記載されている細胞培養方法には、特異的グリカンを調節するために、温度、pHなどの1つ以上の細胞培養パラメーターを改変、細胞をマンガンイオン若しくはその塩(例えば、0.35μM~約20μMのマンガン)と共に培養、及び/又は細胞を銅(例えば、10~100ppb)及びマンガン(例えば、50~1000nM)と共に培養することが含まれる。
【0096】
さらに、国際公開第2015/140700号パンフレットには、非フコシル化グリカンを増加させるためにベタインの存在下で細胞を培養すること、又はマンノシル化グリカン、ガラクトシル化グリカン及び非フコシル化グリカンの目標値を得るためにマンガン、ガラクトース及びベタインと共に細胞を培養することが記載されている。米国特許出願公開第2014/0356910号明細書は、細胞培養培地処方物中のマンノース対総ヘキソース比を操作することによって、高マンノースグリコフォームを増加させる方法を教示している。Pacis et al.,Biotechnology and Bioengineering 108(10):2348-2358(2011)は、細胞培養培地の浸透圧レベルを高め、培養期間を延長することによって、高レベルのMan5グリカンを得ることを教示している。同様に、Konno et al.,Cytotechnology 64:249-3+6(2012)には、培養培地の浸透圧によって抗体フコース含量を制御する方法が記載されている。Wong et al.,Biotechnology and Bioengineering 89(2):164-177(2004)は、低グルタミン流加培養を使用することによって、組み換えタンパク質シアリル化を減少させ、高マンノースグリカンを増加させる方法を教示している。国際公開第2017/079165号パンフレットには、GMDもFXも有さないように遺伝子操作された宿主細胞を使用し、この宿主細胞をフコースと共に培養することによって、組み換えタンパク質の非フコシル化又はフコシル化形態を増加又は減少させる方法が記載されている。国際公開第2017/134667号パンフレットには、細胞をニコチンアミド及びフコースと共に培養して、非フコシル化レベルが減少した抗体を産生することが記載されている。Sha et al.,TIBs 34(10):835-846(2016)にもまた、グリカンを調節するいくつかの方法、例えば、ウリジン、マンガン、及びガラクトースと共に培養して抗体上のガラクトシル化レベルを増加させること、及びマンノースを炭素源として使用して高マンノースグリコフォームを増加させることを含む方法が概説されている。
【0097】
したがって、本開示の方法は、例示的な態様において、ガラクトシル化グリカン(例えば、末端β-ガラクトース、又はG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種を含む)、非フコシル化グリカン若しくはコアフコースを含有するグリカン、及び/又は高マンノースグリカン(例えば、M5高マンノース種を含む)の量を調節するために、上記参考文献又は本明細書に記載の他の参考文献のいずれか1つ以上において教示されている手順、細胞培養培地及び/又は細胞培養条件の1つ以上を採用することを含む。例示的な態様では、方法は、ガラクトシル化グリカン(例えば、末端β-ガラクトース、又はG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種を含む)、非フコシル化グリカン若しくはコアフコースを含有するグリカン、及び/又は高マンノースグリカン(例えば、M5高マンノース種を含む)のレベルを調節する条件下、細胞培養培地中で抗体を発現するグリコシル化コンピテント細胞を培養することを含む。例えば、方法は、いくつかの態様では、グリカンレベルを調節する条件下、細胞培養培地中で抗体を発現するグリコシル化コンピテント細胞を培養することを含み、その細胞培養培地は、フコース、又はフコース及びグルコースを含む。
【0098】
細胞培養物中で細胞を維持又は培養することを含む方法において、細胞培養物は、組み換えグリコシル化タンパク質又は抗体産生に好適な任意の組の条件に従って維持され得る。例えば、いくつかの態様では、細胞培養は、特定のpH、温度、細胞密度、培養体積、溶存酸素レベル、圧力、浸透圧などで維持される。例示的な態様において、COインキュベーター中、標準的な加湿条件下、5%COで接種前の細胞培養物を振盪する(例えば、70rpmで)。例示的な態様では、方法は、グリカンのレベルを調節する条件下、細胞培養培地中で、抗体を発現するグリコシル化コンピテント細胞を培養することを含み、例えば、Konno et al.(上記)により教示されているように、その細胞培養培地の浸透圧を高めて、抗体の非フコシル化グリカンのレベルを減少させる。例示的な態様では、方法は、グリカンのレベルを調節する条件下、細胞培養培地中で、抗体を発現するグリコシル化コンピテント細胞を培養することを含み、例えば、国際公開第2013/114164号パンフレット、国際公開第2013/114245号パンフレット、国際公開第2013/114167号パンフレット、又は国際公開第2015/128793号パンフレット(それぞれ参照により本明細書に組み込まれる)によって教示されているように、細胞培養物のpH及び温度を調節する。
【0099】
例示的な態様では、本開示の方法は、当該技術分野でよく知られているように、細胞培養培地中のグリコシル化コンピテント細胞を、組み換えグリコシル化タンパク質又は抗体の産生に好適なpH、温度、浸透圧、及び溶存酸素レベルに維持することを含む。例示的な態様では、細胞培養物は、当該技術分野でよく知られているように、細胞増殖に好適な培地中で維持され、且つ/又は任意の好適な供給スケジュールに従って1つ以上のフィード培地が与えられる。
【0100】
例示的な態様では、グリコシル化コンピテント細胞は真核細胞であり、例えば、酵母細胞、糸状菌細胞、原生生物細胞、藻類細胞、昆虫細胞又は哺乳動物細胞が挙げられるが、これらに限定されない。このような宿主細胞は、当該技術分野で記載されている。例えば、Frenzel,et al.,Front Immunol 4:217(2013)を参照されたい。例示的な態様では、真核細胞は哺乳動物細胞である。例示的な態様では、哺乳動物細胞は非ヒト哺乳動物細胞である。いくつかの態様では、細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞及びその誘導体(例えば、CHO-K1、CHO pro-3)、マウス骨髄腫細胞(例えば、NS0、GS-NS0、Sp2/0)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)活性を欠くように操作された細胞(例えば、DUKX-X11、DG44)、ヒト胚性腎臓293(HEK293)細胞又はその誘導体(例えば、HEK293T、HEK293-EBNA)、アフリカミドリザル腎臓細胞(例えば、COS細胞、VERO細胞)、ヒト子宮頸癌細胞(例えば、HeLa)、ヒト骨の骨肉腫上皮細胞U2-OS、腺癌ヒト肺胞基底上皮細胞A549、ヒト線維肉腫細胞HT1080、マウス脳腫瘍細胞CAD、胚性癌腫細胞P19、マウス胚性繊維芽細胞NIH 3T3、マウス繊維芽細胞L929、マウス神経芽腫細胞N2a、ヒト乳癌細胞MCF-7、網膜芽腫細胞Y79、ヒト網膜芽腫細胞SO-Rb50、ヒト肝臓癌細胞Hep G2、マウスB骨髄腫細胞J558L又は新生児ハムスター腎臓(BHK)細胞(Gaillet et al.2007;Khan,Adv Pharm Bull 3(2):257-263(2013))である。
【0101】
グリコシル化にコンピテントではない細胞はまた、例えば、グリコシル化に必要な関連酵素をコードする遺伝子をそれらに導入することによって、グリコシル化コンピテント細胞に形質転換され得る。例示的な酵素としては、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ、グリコシダーゼ、グルコシダーゼI、グルコシダーゼII、カルネキシン/カルレティキュリン、グリコシルトランスフェラーゼ、マンノシダーゼ、GlcNAcトランスフェラーゼ、ガラクトシルトランスフェラーゼ、及びシアリルトランスフェラーゼが挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
さらなる又は代替の態様において、抗体を組み換え技術により産生するグリコシル化コンピテント細胞は、抗体のグリカン(ガラクトシル化グリカン(例えば、末端β-ガラクトース、又はG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種を含む)、非フコシル化グリカン若しくはコアフコースを含有するグリカン、及び/又は高マンノースグリカン(例えば、M5高マンノース種を含む)など)を調節するように遺伝子操作される。例示的な態様では、グリコシル化コンピテント細胞は、デノボ経路又はサルベージ経路の酵素の活性を変えるように遺伝子操作される。任意選択により、グリコシル化コンピテント細胞は、GDP-ケト-6-デオキシマンノース-3,5-エピメラーゼ、4-レダクターゼをコードする遺伝子をノックアウトするように遺伝子操作される。例示的な実施形態では、グリコシル化コンピテント細胞は、デノボ経路又はサルベージ経路の酵素の活性を変えるように遺伝子操作される。フコース代謝のこれらの2つの経路は当該技術分野でよく知られており、図1Cに示す。例示的な実施形態では、グリコシル化コンピテント細胞は、フコシル-トランスフェラーゼ(FUT、例えば、FUT1、FUT2、FUT3、FUT4、FUT5、FUT6、FUT7、FUT8、FUT9)、フコースキナーゼ、GDP-フコースピロホスホリラーゼ、GDP-D-マンノース-4,6-デヒドラターゼ(GMD)、及びGDP-ケト-6-デオキシマンノース-3,5-エピメラーゼ、4-レダクターゼ(FX)のいずれか1つ以上の活性を変えるように遺伝子操作される。例示的な実施形態では、グリコシル化コンピテント細胞は、FXをコードする遺伝子をノックアウトするように遺伝子操作される。例示的な実施形態では、グリコシル化コンピテント細胞は、β(1,4)-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GNTIII)及び/又はGDP-6-デオキシ-D-リキソ-4-ヘキスロースレダクターゼ(RMD)の活性を変えるように遺伝子操作される。例示的な態様では、グリコシル化コンピテント細胞は、GNTIII及び/又はRMDを過剰発現するように遺伝子操作される。例示的な実施形態では、グリコシル化コンピテント細胞は、改変されたベータ-ガラクトシルトランスフェラーゼ活性を有するように遺伝子操作される。いくつかの実施形態では、グリコシル化コンピテント細胞は、GDP-ケト-6-デオキシマンノース-3,5-エピメラーゼ、4-レダクターゼ、β1-4ガラクトシルトランスフェラーゼ、及び/又はβ1-4N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼをコードする遺伝子の発現レベルを調節するように遺伝子操作される。
【0103】
当該技術分野においては、Fc含有分子、例えば、抗体の、フコシル化を減少又はなくすためのいくつかの方法が知られている。これらには、FUT8ノックアウト細胞株、変異型CHO株Lec13、ラットハイブリドーマ細胞株YB2/0、FUT8遺伝子に対し特異的な低分子干渉RNAを含む細胞株、及びβ-1,4-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII及びゴルジα-マンノシダーゼIIを共発現する細胞株を含む特定の哺乳動物細胞株における組み換え発現が含まれる。或いは、Fc含有分子を、植物細胞、酵母、又は原核細胞(例えば、E,コリ(E.coli))などの非哺乳動物細胞において発現し得る。
【0104】
例示的な態様では、目標グリカン量は、抗体の産生後の化学的処理又は酵素による処理によって達成される。例示的な態様では、本開示の方法は、抗体が組み換え技術により産生された後に、抗体を化学的に又は酵素により処理することを含む。例示的な態様では、化学薬品又は酵素は、Endo-S、Endo-S2、Endo-D、Endo-M、Endo-LL、α-フコシダーゼ、β-(1-4)-ガラクトシダーゼ、Endo-H、Endo-F1、Endo-F2、Endo-F3、β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ、キフネンシン、及びPNGアーゼ-Fからなる群から選択される。例示的な態様では、化学薬品又は酵素を抗体と様々な時間インキュベートして、種々の量のグリカンを有する抗体を生成する。いくつかの態様では、抗体を、実施例に記載するように、β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼとインキュベートする。いくつかのさらなる態様では、種々のレベルのガラクトースを有する抗体は、抗体をβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼと一定時間、例えば、以下に限定されないが、約10分、約20分、約30分、約1時間、約2時間、約4時間、約9時間、又は約10分~約9時間の範囲内の時間、インキュベートすることによって生成され得る。
【0105】
グリカンの測定方法
糖タンパク質含有組成物中に存在するグリコフォーム、例えば、抗体を評価するため、又は糖タンパク質を含む特定の試料のグリコフォームプロファイルを決定、検出若しくは測定するための様々な方法が、当該技術分野で知られている。好適な方法としては、親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)、液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS)、陽イオンMALDI-TOF分析、陰イオンMALDI-TOF分析、HPLC、弱陰イオン交換(WAX)クロマトグラフィー、順相クロマトグラフィー(NP-HPLC)、エキソグリコシダーゼ消化、バイオゲルP-4クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー及び一次元NMR分光法、並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Pace et al.,Biotechnol.Prog.,2016,Vol.32,No.5 pages 1181-1192、Shah,B.et al.J.Am.Soc.Mass Spectrom.(2014)25:999、Mattu et al.,JBC 273:2260-2272(1998)、Field et al.,Biochem J 299(Pt 1):261-275(1994)、Yoo et al.,MAbs 2(3):320-334(2010)、Wuhrer M.et al.,Journal of Chromatography B,2005,Vol.825,Issue 2,pages 124-133、Ruhaak L.R.,Anal Bioanal Chem,2010,Vol.397:3457-3481、Kurogochi et al.,PLOS One 10(7):e0132848;doi:10.1371/journal.pone.0132848、Thomann et al.,PLOS One 10(8):e0134949.Doi:10.1371/journal.pone.0134949、Pace et al.,Biotechnol.Prog.32(5):1181-1192(2016)、及びGeoffrey,R.G.et.al.Analytical Biochemistry 1996,Vol.240,pages210-226を参照されたい。また、本明細書中に示す例は、抗体などの糖タンパク質含有組成物中に存在するグリコフォームを評価するのに好適な方法を記載する。
【0106】
対照
本明細書に記載するように、本開示の方法のいくつかは、「対照」又は「参照抗体」と比較して、そのような方法によってもたらされる調節(例えば、増加又は減少)を挙げる。例示的な態様では、ADCP活性又はグリカンの量に関して、「対照」は、最初に測定又は決定されたときの抗体又は組成物(例えば、参照抗体)のADCP活性レベル及び/又はグリカン量などの、ADCP活性の調節及び/又はグリカンプロファイルの調節に向けた実験的介入の前の、抗体又は組成物(例えば、参照抗体)のADCP活性レベル及び/又はグリカン量である。特定の態様では、「対照」又は「参照抗体」は、ADCP活性の調節及び/又はグリカンプロファイルの調節に向けた有意な実験的介入を受けたが、ADCP活性及び/又はグリカンプロファイルのさらなる調節が所望される抗体であり得る。これらの例では、「対照」は、ADCP活性のさらなる調節及び/又はグリカンプロファイルのさらなる調節に向けたさらなる実験的介入の前の抗体又は組成物(例えば、参照抗体)のADCP活性のレベル及び/又はグリカン量である。
【0107】
抗体、断片及びタンパク質産物
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、重及び軽鎖を含み、且つ可変及び定常領域を含む、従来の免疫グロブリン構成を有するタンパク質を指す。例えば、抗体は、2つの同一のペアのポリペプチド鎖からなる「Y字型」構造であり、各ペアは1本の「軽」鎖(通常、分子量が約25kDaである)及び1本の「重」鎖(通常、分子量が約50~70kDaである)を有する、IgGであり得る。抗体は、可変領域及び定常領域を有する。IgG型では、可変領域は、一般に、約100~110又はそれを超えるアミノ酸であり、3つの相補性決定領域(CDR)を含み、主に抗原認識に関与し、異なる抗原に結合する他の抗体と実質的に異なる。例えば、Janeway et al.,“Structure of the Antibody Molecule and the Immunoglobulin Genes”,Immunobiology:The Immune System in Health and Disease,4thed.Elsevier Science Ltd./Garland Publishing,(1999)を参照されたい。
【0108】
「抗体断片」又は「その抗体断片」という用語は、完全な抗体の一部を指す。「抗原結合断片」又は「その抗原結合断片」は、抗原に結合する完全な抗体の一部を指す。抗原結合断片は、完全な抗体の抗原決定可変領域を含み得る。抗体断片の抗原結合断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片、線形抗体、scFv、並びに一本鎖抗体が含まれるが、これらに限定されない。
【0109】
本明細書で使用される用語「IgG」は、認識される免疫グロブリンγ遺伝子によって実質的にコードされる抗体のクラスに属するポリペプチドを指す。ヒトでは、このクラスは、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含む。マウスでは、このクラスは、IgG1、IgG2a、IgG2b、及びIgG3を含む。ヒトIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4の重鎖の配列は、多くの配列データベースにおいて見出すことができ、例えば、Uniprotデータベース(www.uniprot.org)において、アクセッション番号P01857(IGHG1_HUMAN)、P01859(IGHG2_HUMAN)、P01860(IGHG3_HUMAN)及びP01861(IGHG1_HUMAN)でそれぞれ見出すことができる。好ましい実施形態では、本明細書に開示する方法及び抗体は、IgG1抗体に関する。いくつかの他の好ましい実施形態では、本明細書に開示する方法及び抗体は、ヒトIgG1抗体に関する。
【0110】
用語「CDR」及びその複数形である「CDRs」は、相補性決定領域を指し、そのうちの3つが軽鎖可変領域の結合特性を構成し(CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3)、3つが重鎖可変領域の結合特性を構成する(CDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3)。CDRは、抗体と抗原との特異的相互作用を担う残基の大部分を含み、したがって抗体分子の機能的活性に寄与する。CDRは、抗原特異性の主要な決定基である。
【0111】
CDRの境界及び長さの厳密な定義は、各種の分類及び付番方式に従う。したがって、CDRは、本明細書に記載される付番方式を含む、Kabat、Chothia、接触又は任意の他の境界定義によって表わされ得る。境界が異なっていても、これらの方式の各々は、可変配列内のいわゆる「超可変領域」を構成する部分においてある程度の重複を有する。したがって、これらの方式によるCDRの定義は、長さ及び隣接するフレームワーク領域に関する境界領域が相違する場合がある。例えば、Kabat(異種間の配列可変性に基づく手法)、Chothia(抗原-抗体複合体の結晶学的研究に基づく手法)及び/又はMacCallumを参照されたい(Kabat et al.,前掲;Chothia et al.,J.MoI.Biol,1987,196:901-917;及びMacCallum et al.,J.MoI.Biol,1996,262:732)。抗原結合部位の特性決定のためのさらに別の基準は、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって用いられるAbM定義である。例えば、Protein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains.In:Antibody Engineering Lab Manual(Ed.:Duebel,S.and Kontermann,R.,Springer-Verlag,Heidelberg)を参照されたい。2つの残基同定技法が、重複するが、同一ではない領域を定義する限り、それらを組み合わせてハイブリッドCDRを定義することができる。しかしながら、いわゆるKabat方式による付番が好ましい。例えば、Chothia and Lesk,J.MoI.Biol.,1987,196:901、Chothia et al.,Nature,1989,342:877、Martin and Thornton,J.MoI.Biol,1996,263:800、Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,eds.Harlow et al.,1988を参照されたい。各文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0112】
用語「可変」は、配列内で可変性を示し、特定の抗体の特異性及び結合親和性の決定に関与する、抗体又は免疫グロブリンドメインの一部分(すなわち「可変ドメイン」)を指す。可変重鎖(VH)と可変軽鎖(VL)が対合し、共に単一の抗原結合部位を形成する。
【0113】
可変性は、抗体の可変ドメイン全体に均一に分布しているのではなく、重鎖及び軽鎖可変領域の各々のサブドメインに集中している。これらのサブドメインは、「超可変領域」又は「相補性決定領域」(CDR)と呼ばれる。可変ドメインのより保存的な(すなわち非超可変)部分は、「フレームワーク」領域(FRM又はFR)と呼ばれ、抗原結合表面を形成する三次元空間内における6つのCDRのための足場を提供する。天然に存在する重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、大部分がβシート配置をとる4つのFRM領域(FR1、FR2、FR3及びFR4)をそれぞれ含み、これらは、ループ接続を形成し、場合によりβシート構造の一部を形成する3つの超可変領域によって接続される。各鎖の超可変領域は、FRMによって近接して一体に保持されており、他の鎖の超可変領域と共に抗原結合部位の形成に寄与する(前掲のKabat et al.を参照されたい)。
【0114】
本明細書で使用される用語「Fcドメイン」、「Fc領域」、及び「IgG Fcドメイン」は、免疫グロブリン、例えば、IgG分子のパパイン消化によって得られる結晶性断片と相関するIgG分子の一部分を指す。Fc領域は、ジスルフィド結合によって連結されたIgG分子の2本の重鎖のC末端側半分を含む。それは抗原結合活性を有さないが、炭水化物部分と、補体受容体及びFc受容体、例えばFcRn受容体、に結合する部位とを含む。例えば、Fcドメインは、第2の定常ドメインCH2全体(ヒトIgG1のEU位置231~340の残基)及び第3の定常ドメインCH3(ヒトIgG1のEU位置341~447の残基)を含む。
【0115】
Fcは、単離されたこの領域、又は抗体若しくは抗体断片と関連したこの領域を指し得る。多型は、Fcドメイン中の多くの位置で、例えば、以下に限定されないが、EU位置270、272、312、315、356、及び358で、観察されている。したがって、「野生型IgG Fcドメイン」又は「WT IgG Fcドメイン」は、天然に存在するIgG Fc領域(すなわち、いずれかのアレル)を指す。Myriad Fc変異体、Fc断片、Fcバリアント、及びFc誘導体は、例えば、米国特許第5,624,821号明細書、同第5,885,573号明細書、同第5,677,425号明細書、同第6,165,745号明細書、同第6,277,375号明細書、同第5,869,046号明細書、同第6,121,022号明細書、同第5,624,821号明細書、同第5,648,260号明細書、同第6,528,624号明細書、同第6,194,551号明細書、同第6,737,056号明細書、同第7,122,637号明細書、同第7,183,387号明細書、同第7,332,581号明細書、同第7,335,742号明細書、同第7,371,826号明細書、同第6,821,505号明細書、同第6,180,377号明細書、同第7,317,091号明細書、同第7,355,008号明細書、米国特許出願公開第2004/0002587号明細書、並びに国際公開第99/058572号パンフレット、国際公開第2011/069164号パンフレット、及び国際公開第2012/006635号パンフレットに記載されている。
【0116】
Fc領域は一般に、抗原結合後に生じる抗体エフェクター機能を決定する。C1qなどの自然免疫系のほか、Fcγ受容体との結合相互作用を介して細胞傷害性細胞や抗原提示細胞の分子を動員することができる。IgG Fc領域は、Asn297に2つの保存されたN-グリコシル化部位(各重鎖に1つ)を含む(P.M.Rudd.Glycosylation and the immune system.Science,291(2001),pp.2370-2376を参照)。ASN297における構造グリカンの変動は、IgGと免疫系との相互作用に影響する構造の微妙な変化をもたらす。例えば、Fc領域グリカンは、Fc領域の構造を変化させることによって(S.Krapp,et al.Structural analysis of human IgG-Fc glycoforms reveals correlation between glycosylation and structural integrity J.Mol.Biol.,325(2003);979-98931、Y.Mimura,et al.Role of oligosaccharide residues of IgG1-Fc in Fc RIIb binding J.Biol.Chem.,276(2001),45539-45547を参照)、又はグリカン-グリカンの相互作用によって(C.Ferrara,et al.Unique carbohydrate-carbohydrate interactions are required for high affinity binding between Fc(RIII and antibodies lacking core fucose.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,108(2011),12669-12674を参照)、Fcγ受容体に対するIgGの親和性に直接影響を及ぼし、その結果として、それらの免疫エフェクター細胞を動員する能力に強く影響し得る。また、Zhang et al.Challenges of glycosylation analysis and control:an integrated approach to producing optimal and consistent therapeutic drugs.Drug Discovery Today,(21)5(2016)740-765を参照されたい。
【0117】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」(mAb)という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体、すなわち少量存在する可能性がある、考えられる天然に存在する変異及び/又は翻訳後修飾(例えば、異性化、アミド化)を除いて同一である集団を含む個々の抗体を指す。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、異なる決定基(又はエピトープ)に対して誘導された異なる抗体を通常含む従来の(ポリクローナル)抗体製剤とは対照的に、抗原上の単一の抗原部位又は決定基に対して誘導される。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ培養によって合成されるため、他の免疫グロブリンが混入しない点で有利である。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体集団から得られるという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきではない。
【0118】
モノクローナル抗体の調製には、連続細胞株培養物によって作製される抗体を提供する任意の技法を用いることができる。例えば、使用されるモノクローナル抗体は、Koehler et al.,Nature,256:495(1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ方法によって作られ得、又は組み換えDNA方法(例えば、米国特許第4,816,567号明細書を参照)によって作られ得る。ヒトモノクローナル抗体を作製するさらなる技法の例としては、トリオーマ技法、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法(Kozbor,Immunology Today 4(1983),72)及びEBV-ハイブリドーマ技法(Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.(1985),77-96)が挙げられる。
【0119】
次に、ハイブリドーマを、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)及び表面プラズモン共鳴(BIACORE(商標))分析などの標準的な方法を使用してスクリーニングして、指定の抗原に特異的に結合する抗体を産生する1つ以上のハイブリドーマを同定することができる。例えば、組み換え抗原、天然に存在する形態、その任意のバリアント又は断片並びにその抗原性ペプチドなど、任意の形態の関連抗原が免疫原として使用され得る。BIAcoreシステムで採用されている表面プラズモン共鳴を使用して、標的抗原のエピトープにファージ抗体が結合する効率を高めることができる(Schier,Human Antibodies Hybridomas 7(1996),97-105、Malmborg,J.Immunol.Methods 183(1995),7-13)。
【0120】
モノクローナル抗体を作製する別の例示的な方法としては、タンパク質発現ライブラリ、例えばファージディスプレイ又はリボソームディスプレイライブラリのスクリーニングが挙げられる。ファージディスプレイについては、例えば、Ladner et al.、米国特許第5,223,409号明細書、Smith(1985)Science 228:1315-1317、Clackson et al.,Nature,352:624-628(1991)及びMarks et al.,J.Mol.Biol.,222:581-597(1991)に記載されている。
【0121】
ディスプレイライブラリの使用に加えて、関連抗原を使用して、非ヒト動物、例えば齧歯類(マウス、ハムスター、ウサギ又はラットなど)を免疫化することができる。一実施形態では、非ヒト動物は、ヒト免疫グロブリン遺伝子の少なくとも一部を含む。例えば、マウス抗体産生が欠損したマウス系統を、ヒトIg(免疫グロブリン)遺伝子座の大きい断片を用いて改変することが可能である。ハイブリドーマ技術を用いて、所望の特異性を有する遺伝子由来の抗原特異的モノクローナル抗体を作製し、選択し得る。例えば、XENOMOUSE(商標)、Green et al.(1994)Nature Genetics 7:13-21、米国特許出願公開第2003-0070185号明細書、国際公開第96/34096号パンフレット及び国際公開第96/33735号パンフレットを参照されたい。
【0122】
モノクローナル抗体は、非ヒト動物から得た後、当該技術分野で知られる組み換えDNA技術を用いて、例えばヒト化、脱免疫、キメラ化などの改変を行うこともできる。改変抗体コンストラクトの例としては、非ヒト抗体のヒト化バリアント、「親和性成熟」抗体(例えば、Hawkins et al.J.Mol.Biol.254,889-896(1992)及びLowman et al.,Biochemistry 30,10832-10837(1991)を参照)及びエフェクター機能が改変された抗体変異体(例えば、米国特許第5,648,260号明細書、前掲のKontermann and Duebel(2010)及び前掲のLittle(2009)を参照)が挙げられる。
【0123】
本発明に記載のモノクローナル抗体としては、重鎖及び/若しくは軽鎖の一部が特定の種に由来するか、又は特定の抗体のクラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一若しくは相同である一方、鎖の残部は、所望の生物活性を示す限り、別の種に由来するか、又は別の抗体のクラス若しくはサブクラスに属する抗体並びにそのような抗体の断片中の対応する配列と同一若しくは相同である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)(米国特許第4,816,567号明細書、Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984))が挙げられる。本明細書における目的のキメラ抗体には、非ヒト霊長類(例えば、旧世界ザル、類人猿など)に由来する可変ドメイン抗原結合配列及びヒト定常領域配列を含む「霊長類化」抗体が含まれる。キメラ抗体を作製するための様々な手法が記載されている。例えば、Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.ScL U.S.A.81:6851,1985、Takeda et al.,Nature 314:452,1985、Cabilly et al.,米国特許第4,816,567号明細書;Boss et al.,米国特許第4,816,397号明細書;Tanaguchi et al.,欧州特許第0171496号明細書;欧州特許第0173494号明細書;及び英国特許第2177096号明細書を参照されたい。
【0124】
ヒト化抗体はまた、ヒト重鎖及び軽鎖遺伝子を発現するが、内在性のマウス免疫グロブリン重鎖及び軽鎖遺伝子を発現することができないマウスなどのトランスジェニック動物を用いて作製され得る。Winterは、本明細書に記載されるヒト化抗体の調製に使用され得る例示的なCDR移植法を記載している(米国特許第5,225,539号明細書)。特定のヒト抗体のCDRの全ては、非ヒトCDRの少なくとも一部分で置換されるか又はCDRの一部のみが非ヒトCDRで置換され得る。所定の抗原に対するヒト化抗体の結合に必要とされる数のCDRを置換することのみが必要である。
【0125】
ヒト化抗体は、保存的置換、コンセンサス配列置換、生殖細胞系列置換及び/又は復帰変異の導入によって最適化することができる。このような改変免疫グロブリン分子は、当該技術分野で知られる複数の技術のいずれかによって作製することができる(例えば、Teng et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,80:7308-7312,1983、Kozbor et al.,Immunology Today,4:7279,1983、Olsson et al.,Meth.Enzymol.,92:3-16,1982、及び欧州特許第0239400号明細書)。
【0126】
「ヒト抗体」という用語には、例えば、Kabat et al.(1991)(前掲)によって記載されているものを含む、当該技術分野で知られるヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に実質的に対応する、可変及び定常領域又はドメインなどの抗体領域を有する抗体を含む。本発明のヒト抗体、抗体コンストラクト又は結合ドメインは、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダム変異誘発若しくは部位特異的変異誘発により、又はインビボでの体細胞変異により導入される変異)を、例えばCDR、特にCDR3に含み得る。ヒト抗体、抗体コンストラクト又は結合ドメインは、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基で置換された少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれを超える位置を有し得る。本明細書で使用されるヒト抗体、抗体コンストラクト及び結合ドメインの定義は、Xenomouseなどの技術又はシステムを使用することによって得ることができる、非人為的且つ/又は遺伝的に改変された抗体のヒト配列のみを含む完全ヒト抗体も意図している。
【0127】
有利には、本明細書に記載の方法は、Fcドメインを含む抗体、及び例示的な例ではIgG1抗体に関する。例示的な実施形態では、抗体は、特定の抗体配列を有するIgG1抗体である。「抗体配列」という用語は、抗体のアミノ酸配列を指す。本明細書中で使用される句「参照抗体と同じ配列を有する」は、参照抗体の相補性決定領域(CDR)、可変重鎖(VH)及び/又は可変軽鎖(VL)のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有する抗体を指す。好ましい実施形態では、本明細書で使用される「参照抗体と同じ配列を有する」抗体は、参照抗体のCDR、VH及びVL配列と同じCDR、VH及びVLアミノ酸配列を有する抗体を指す。
【0128】
例示的な態様では、IgG1抗体は、抗EGFR抗体、例えば、抗HER2モノクローナル抗体である。例示的な態様では、IgG1抗体は、トラスツズマブ、又はそのバイオシミラーである。トラスツズマブという用語は、表1に列挙される、すなわち配列番号1~8、21又は22に記載されるVH及びVL、又はVH-IgG1及びVL-IgGカッパ配列を含む、HER2/neu抗原に結合するIgG1カッパヒト化モノクローナル抗体を指す(CAS番号:180288-69-1;DrugBank-DB00072;Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes(KEGG)entry D03257を参照)。
【0129】
【表1】
【0130】
トラスツズマブ抗体は、いくつかの例では、(a)(i)配列番号1で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1配列、(ii)配列番号2で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2配列、及び(iii)配列番号3で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3配列を含む軽鎖可変ドメイン、並びに(b)(i)配列番号4で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1配列、(ii)配列番号5で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2配列、及び(iii)配列番号6で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3配列を含む重鎖可変ドメインを含む。
【0131】
代替の態様では、IgG1抗体は、抗CD20抗体、例えば、抗CD20モノクローナル抗体である。代替の態様では、IgG1抗体は、リツキシマブ、又はそのバイオシミラーである。リツキシマブという用語は、表2に列挙される、すなわち配列番号11~18、23又は24に記載されるVH及びVL、又はVH-IgG1及びVL-IgGカッパ配列を含む、CD20抗原に結合するG1カッパキメラマウス/ヒトモノクローナル抗体を指す(CAS番号:174722-31-7;DrugBank-DB00073;Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes(KEGG)entry D02994を参照)。
【0132】
【表2】
【0133】
リツキシマブ抗体は、いくつかの例では、(a)(i)配列番号11で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1配列、(ii)配列番号12で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2配列、及び(iii)配列番号13で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3配列を含む軽鎖可変ドメイン、並びに(b)(i)配列番号14で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1配列、(ii)配列番号15で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2配列、及び(iii)配列番号16で示されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3配列を含む重鎖可変ドメインを含む。
【0134】
追加の工程
本明細書に開示する方法は、様々な態様において、追加の工程を含む。例えば、いくつかの態様では、本方法は、組み換えタンパク質(例えば、抗体)を産生し、精製し、製剤化することに関与する1つ以上の上流工程又は下流工程を含む。例示的な実施形態では、本方法は、組み換えグリコシル化タンパク質(例えば、抗体)を発現する宿主細胞を作製するための工程を含む。宿主細胞は、いくつかの態様では、原核宿主細胞、例えばE.コリ(E.coli)若しくはバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)であるか、又は宿主細胞は、いくつかの態様では、真核宿主細胞、例えば、酵母細胞、糸状菌細胞、原生動物細胞、昆虫細胞、若しくは哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)である。このような宿主細胞は、当該技術分野で記載されている。例えば、Frenzel,et al.,Front Immunol 4:217(2013)及び本明細書の「細胞」の節を参照されたい。例えば、本方法は、いくつかの例では、組み換えタンパク質又はそのポリペプチド鎖をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含むベクターを宿主細胞に導入することを含む。
【0135】
例示的な実施形態では、本明細書で開示する方法は、培養物から組み換えタンパク質(例えば、組み換え抗体)を単離及び/又は精製するための工程を含む。例示的な態様では、本方法は、以下に限定されないが、例えば、アフィニティークロマトグラフィー(例えば、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー)、イオン交換クロマトグラフィー、及び/又は疎水性相互作用クロマトグラフィーを含む1つ以上のクロマトグラフィー工程を含む。例示的な態様において、本方法は、組み換えタンパク質を含む溶液から結晶性生体分子を生成させるための工程を含む。
【0136】
本開示の方法は、様々な態様において、組成物、例えば、いくつかの態様では、精製組み換えタンパク質を含む医薬組成物、を調製するための1つ以上の工程を含む。このような組成物について、以下で説明する。
【0137】
組成物
本明細書に記載される方法によって生成される組み換えグリコシル化タンパク質及び抗体を含む組成物もまた、本明細書において提供される。例示的な実施形態では、組成物は、抗体中のグリカン(例えば、ガラクトシル化グリカン、末端β-ガラクトース、G1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種、非フコシル化グリカン、コアフコース、高マンノースグリカン、M5高マンノース種、又はこれらの組み合わせ)の量を調節する方法によって調製される。例示的な態様では、組み換えグリコシル化タンパク質は抗体である。したがって、ADCP活性が増加又は減少したIgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブ抗体)を含み、このIgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブ抗体)は、IgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブ抗体)上のグリカン(例えば、ガラクトシル化グリカン、末端β-ガラクトース、G1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種、非フコシル化グリカン、コアフコース、高マンノースグリカン、M5高マンノース種、又はこれらの組み合わせ)の量を調節する(例えば、増加又は減少させる)ことによって、特定のADCP活性又は対照若しくは参照抗体と比較して増加若しくは減少したADCP活性を有するように操作されている、抗体組成物が本明細書において提供される。
【0138】
いくつかの実施形態では、組成物は、本明細書に記載される方法によって生成されるIgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブ抗体)を含み、このIgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブ抗体)は参照IgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブ抗体)と比較して増加又は減少したADCP活性を有し、その参照IgG1抗体は増加又は減少したADCP活性を有するIgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブ抗体)と同じ抗体配列を有する。
【0139】
したがって、例示的な実施形態では、本開示の抗体組成物は、対照又は参照抗体と比較して任意の程度又はレベルにまでADCP活性が増加している。例示的な例では、本明細書の方法を使用した、本明細書に開示する抗体組成物のADCP活性の増加は、対照又は参照抗体と比較して、少なくとも又は約1%~約100%の増加(例えば、少なくとも又は約1%の増加、少なくとも又は約2%の増加、少なくとも又は約3%の増加、少なくとも又は約4%の増加、少なくとも又は約5%の増加、少なくとも又は約6%の増加、少なくとも又は約7%の増加、少なくとも又は約8%の増加、少なくとも又は約9%の増加、少なくとも又は約9.5%の増加、少なくとも又は約9.8%の増加、少なくとも又は約10%の増加、少なくとも又は約15%の増加、少なくとも又は約20%の増加、少なくとも又は約25%の増加、少なくとも又は約30%の増加、少なくとも又は約35%の増加、少なくとも又は約40%の増加、少なくとも又は約45%の増加、少なくとも又は約50%の増加、少なくとも又は約55%の増加、少なくとも又は約60%の増加、少なくとも又は約65%の増加、少なくとも又は約70%の増加、少なくとも又は約75%の増加、少なくとも又は約80%の増加、少なくとも又は約85%の増加、少なくとも又は約90%の増加、少なくとも又は約95%の増加、少なくとも又は約100%の増加)である。例示的な実施形態では、本明細書の方法を使用した、本明細書に開示する抗体組成物のADCP活性の増加は、対照又は参照抗体のレベルと比較して、100%超、例えば、少なくとも又は約125%、少なくとも又は約150%、少なくとも又は約175%、少なくとも又は約200%、少なくとも又は約300%、少なくとも又は約400%、少なくとも又は約500%、少なくとも又は約600%、少なくとも又は約700%、少なくとも又は約800%、少なくとも又は約900%、或いは少なくとも又は約1000%にもなる。例示的な実施形態では、抗体又はそれを含む組成物のADCP活性のレベルは、対照又は参照抗体と比較して、少なくとも約1.5倍増加する。例示的な実施形態では、抗体又はそれを含む組成物のADCP活性のレベルは、対照又は参照抗体と比較して、少なくとも約2倍増加する。例示的な実施形態では、抗体又はそれを含む組成物のADCP活性のレベルは、対照又は参照抗体と比較して、少なくとも約3倍増加する。例示的な実施形態では、抗体又はそれを含む組成物のADCP活性のレベルは、対照又は参照抗体と比較して、少なくとも約4倍又は約5倍増加する。例示的な実施形態では、抗体又はそれを含む組成物のADCP活性のレベルは、対照又は参照抗体と比較して、少なくとも約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、又は約10倍増加する。例示的な実施形態では、抗体又はそれを含む組成物のADCP活性のレベルは、対照又は参照抗体と比較して、約0.5倍~約8倍の範囲内の量だけ増加する。
【0140】
代替の実施形態では、本開示の抗体組成物は、対照又は参照抗体と比較して任意の程度又はレベルにまでADCP活性が減少している。例えば、本明細書の方法を使用した、本明細書に開示する抗体組成物のADCP活性の減少は、対照又は参照抗体と比較して、少なくとも又は約1%~約100%の減少(例えば、少なくとも又は約1%の減少、少なくとも又は約2%の減少、少なくとも又は約3%の減少、少なくとも又は約4%の減少、少なくとも又は約5%の減少、少なくとも又は約6%の減少、少なくとも又は約7%の減少、少なくとも又は約8%の減少、少なくとも又は約9%の減少、少なくとも又は約9.5%の減少、少なくとも又は約9.8%の減少、少なくとも又は約10%の減少、少なくとも又は約15%の減少、少なくとも又は約20%の減少、少なくとも又は約25%の減少、少なくとも又は約30%の減少、少なくとも又は約35%の減少、少なくとも又は約40%の減少、少なくとも又は約45%の減少、少なくとも又は約50%の減少、少なくとも又は約55%の減少、少なくとも又は約60%の減少、少なくとも又は約65%の減少、少なくとも又は約70%の減少、少なくとも又は約75%の減少、少なくとも又は約80%の減少、少なくとも又は約85%の減少、少なくとも又は約90%の減少、少なくとも又は約95%の減少、少なくとも又は約100%の減少)である。例示的な実施形態では、本明細書の方法を使用した、本明細書に開示する抗体組成物のADCP活性の減少は、対照又は参照抗体のレベルと比較して、約100%超、例えば、少なくとも又は約125%、少なくとも又は約150%、少なくとも又は約175%、少なくとも又は約200%、少なくとも又は約300%、少なくとも又は約400%、少なくとも又は約500%、少なくとも又は約600%、少なくとも又は約700%、少なくとも又は約800%、少なくとも又は約900%、或いは少なくとも又は約1000%にもなる。例示的な実施形態では、抗体又はそれを含む組成物のADCP活性のレベルは、対照又は参照抗体と比較して、少なくとも約1.5倍減少する。例示的な実施形態では、抗体又はそれを含む組成物のADCP活性のレベルは、対照又は参照抗体と比較して、少なくとも約2倍減少する。例示的な実施形態では、抗体又はそれを含む組成物のADCP活性のレベルは、対照又は参照抗体と比較して、少なくとも約3倍減少する。例示的な実施形態では、抗体又はそれを含む組成物のADCP活性のレベルは、対照又は参照抗体と比較して、少なくとも約4倍又は少なくとも約5倍減少する。例示的な実施形態では、抗体又はそれを含む組成物のADCP活性のレベルは、対照又は参照抗体と比較して、少なくとも約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、又は約10倍減少する。例示的な実施形態では、抗体又はそれを含む組成物のADCP活性のレベルは、対照又は参照抗体と比較して、約0.5倍~約8倍の範囲内の量だけ減少する。
【0141】
例示的な態様では、本開示の抗体組成物は、グリカン(例えば、ガラクトシル化グリカン、G1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種、非フコシル化グリカン、コアフコース、高マンノースグリカン、M5高マンノース種、又はこれらの組み合わせ)の量が、対照又は参照抗体と比較して任意の程度又はレベルまで増加した抗体を含む。例示的な例では、抗体組成物はグリカンの量が増加しており、グリカンは、対照又は参照抗体と比較して、少なくとも又は約1%~約100%(例えば、少なくとも又は約1%、少なくとも又は約2%、少なくとも又は約3%、少なくとも又は約4%、少なくとも又は約5%、少なくとも又は約6%、少なくとも又は約7%、少なくとも又は約8%、少なくとも又は約9%、少なくとも又は約9.5%、少なくとも又は約9.8%、少なくとも又は約10%、少なくとも又は約15%、少なくとも又は約20%、少なくとも又は約25%、少なくとも又は約30%、少なくとも又は約35%、少なくとも又は約40%、少なくとも又は約45%、少なくとも又は約50%、少なくとも又は約55%、少なくとも又は約60%、少なくとも又は約65%、少なくとも又は約70%、少なくとも又は約75%、少なくとも又は約80%、少なくとも又は約85%、少なくとも又は約90%、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約100%)増加している。例示的な実施形態では、抗体組成物は、グリカンの量が増加しており、グリカンは、対照又は参照抗体と比較して、100%以上、例えば、少なくとも又は約125%、少なくとも又は約150%、少なくとも又は約175%、少なくとも又は約200%、少なくとも又は約300%、少なくとも又は約400%、少なくとも又は約500%、少なくとも又は約600%、少なくとも又は約700%、少なくとも又は約800%、少なくとも又は約900%、或いは少なくとも又は約1000%さえも増加している。例示的な実施形態では、抗体組成物はグリカンの量が増加しており、グリカンは、対照又は参照抗体と比較して、少なくとも約1.5倍増加している。例示的な実施形態では、抗体組成物はグリカンの量が増加しており、グリカンは、対照又は参照抗体と比較して、少なくとも約2倍増加している。例示的な実施形態では、抗体組成物はグリカンの量が増加しており、グリカンは、対照又は参照抗体と比較して、少なくとも約3倍増加している。例示的な実施形態では、抗体組成物はグリカンの量が増加しており、グリカンは、対照又は参照抗体と比較して、少なくとも約4倍又は約5倍増加している。例示的な実施形態では、抗体組成物はグリカンの量が増加しており、グリカンは、対照又は参照抗体と比較して、少なくとも約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、又は約10倍増加している。例示的な実施形態では、抗体組成物はグリカンの量が増加しており、グリカンは、対照又は参照抗体と比較して、約0.5倍~約8倍の範囲内の量だけ増加している。
【0142】
例示的な態様では、本開示の組成物は、グリカン(例えば、ガラクトシル化グリカン、G1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種、非フコシル化グリカン、コアフコース、高マンノースグリカン、M5高マンノース種、又はこれらの組み合わせ)の量が、対照又は参照抗体と比較して任意の程度又はレベルまで減少した抗体を含む。例示的な例では、抗体組成物はグリカンの量が減少しており、グリカンは、対照又は参照抗体と比較して、少なくとも又は約1%~約100%(例えば、少なくとも又は約1%、少なくとも又は約2%、少なくとも又は約3%、少なくとも又は約4%、少なくとも又は約5%、少なくとも又は約6%、少なくとも又は約7%、少なくとも又は約8%、少なくとも又は約9%、少なくとも又は約9.5%、少なくとも又は約9.8%、少なくとも又は約10%、少なくとも又は約15%、少なくとも又は約20%、少なくとも又は約25%、少なくとも又は約30%、少なくとも又は約35%、少なくとも又は約40%、少なくとも又は約45%、少なくとも又は約50%、少なくとも又は約55%、少なくとも又は約60%、少なくとも又は約65%、少なくとも又は約70%、少なくとも又は約75%、少なくとも又は約80%、少なくとも又は約85%、少なくとも又は約90%、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約100%)減少している。例示的な実施形態では、抗体組成物はグリカンの量が減少しており、グリカンは、対照又は参照抗体と比較して、100%以上、例えば、少なくとも又は約125%、少なくとも又は約150%、少なくとも又は約175%、少なくとも又は約200%、少なくとも又は約300%、少なくとも又は約400%、少なくとも又は約500%、少なくとも又は約600%、少なくとも又は約700%、少なくとも又は約800%、少なくとも又は約900%、或いは少なくとも又は約1000%さえも減少している。例示的な実施形態では、抗体組成物はグリカンの量が減少しており、グリカンは、対照又は参照抗体と比較して、少なくとも約1.5倍減少している。例示的な実施形態では、抗体組成物はグリカンの量が減少しており、グリカンは、対照又は参照抗体と比較して、少なくとも約2倍減少している。例示的な実施形態では、抗体組成物はグリカンの量が減少しており、グリカンは、対照又は参照抗体と比較して、少なくとも約3倍減少している。例示的な実施形態では、抗体組成物はグリカンの量が減少しており、グリカンは、対照又は参照抗体と比較して、少なくとも約4倍又は約5倍減少している。例示的な実施形態では、抗体組成物はグリカンの量が減少しており、グリカンは、対照又は参照抗体と比較して、少なくとも約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、又は約10倍減少している。例示的な実施形態では、抗体組成物はグリカンの量が減少しており、グリカンは、対照又は参照抗体と比較して、約0.5倍~約8倍の範囲内の量だけ減少している。
【0143】
例示的な態様では、本開示の抗体組成物は、グリカン(例えば、ガラクトシル化グリカン、G1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種、非フコシル化グリカン、コアフコース、高マンノースグリカン、M5高マンノース種、又はこれらの組み合わせ)を、総量で少なくとも若しくは約0.5%、少なくとも若しくは約1%、少なくとも若しくは約2%、少なくとも若しくは約3%、少なくとも若しくは約5%、少なくとも若しくは約7%、少なくとも若しくは約10%、少なくとも若しくは約15%、少なくとも若しくは約20%、少なくとも若しくは約25%、少なくとも若しくは約30%、少なくとも若しくは約35%、少なくとも若しくは約40%、少なくとも若しくは約45%、少なくとも若しくは約50%、少なくとも若しくは約55%、少なくとも若しくは約60%、少なくとも若しくは約65%、少なくとも若しくは約70%、少なくとも若しくは約75%、少なくとも若しくは約80%、少なくとも若しくは約85%、少なくとも若しくは約90%、少なくとも若しくは約95%、少なくとも若しくは約96%、少なくとも若しくは約97%、又は少なくとも若しくは約98%含む、或いは総量が少なくとも又は約0.5%~98%の範囲で増加又は減少したグリカンを含む。
【0144】
例示的な実施形態では、本開示の抗体組成物は、対照又は参照トラスツズマブ抗体と比較して、末端β-ガラクトース又はG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種の量が増加し、且つ対照又は参照トラスツズマブ抗体と比較して、ADCP活性が増加しているトラスツズマブ抗体を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗体組成物は、トラスツズマブ抗体を含み、対照又は参照トラスツズマブ抗体と比較して末端β-ガラクトースの量又はG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種の量の約1パーセントの増加が、対照又は参照トラスツズマブ抗体と比較して約2.5、約2.8、約2.88又は約3パーセントのADCP活性の増加をもたらす。
【0145】
例示的な実施形態では、本開示の抗体組成物は、対照又は参照トラスツズマブ抗体と比較して、末端β-ガラクトース又はG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種の量が減少し、且つ対照又は参照トラスツズマブ抗体と比較して、ADCP活性が減少しているトラスツズマブ抗体を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗体組成物は、トラスツズマブ抗体を含み、対照又は参照トラスツズマブ抗体と比較して末端β-ガラクトースの量又はG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種の量の約1パーセントの減少が、対照又は参照トラスツズマブ抗体と比較して約2.5、約2.8、約2.88又は約3パーセントのADCP活性の減少をもたらす。
【0146】
例示的な実施形態では、本開示の抗体組成物は、対照又は参照リツキシマブ抗体と比較して、非フコシル化グリカンが減少するか、又はコアフコースの量が増加し、且つ対照又は参照リツキシマブ抗体と比較して、ADCP活性が増加しているリツキシマブ抗体を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗体組成物は、リツキシマブ抗体を含み、非フコシル化グリカンの約1パーセントの減少又はコアフコースの約1パーセントの増加が、対照又は参照リツキシマブ抗体と比較して約0.5、約0.7、約0.75、約0.8又は約1パーセントのADCP活性の増加をもたらす。
【0147】
例示的な実施形態では、本開示の抗体組成物は、対照又は参照トラスツズマブ抗体と比較して、非フコシル化グリカンの量が増加するか、又はコアフコースの量が減少し、且つ対照又は参照トラスツズマブ抗体と比較して、ADCP活性が増加しているトラスツズマブ抗体を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗体組成物は、トラスツズマブ抗体を含み、非フコシル化グリカンの約1パーセントの増加又はコアフコースの約1パーセントの減少が、対照又は参照トラスツズマブ抗体と比較して約0.5、約0.56、約0.6、又は約1パーセントのADCP活性の増加をもたらす。
【0148】
例示的な実施形態では、本開示の抗体組成物は、対照又は参照トラスツズマブ抗体と比較して、非フコシル化グリカンの量が減少するか、又はコアフコースの量が増加し、且つ対照又は参照トラスツズマブ抗体と比較して、ADCP活性が減少しているトラスツズマブ抗体を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗体組成物は、トラスツズマブ抗体を含み、非フコシル化グリカンの約1パーセントの減少又はコアフコースの約1パーセントの増加が、対照又は参照トラスツズマブ抗体と比較して約0.5、約0.56、約0.6、又は約1パーセントのADCP活性の減少をもたらす。
【0149】
例示的な実施形態では、本開示の抗体組成物は、対照又は参照リツキシマブ抗体と比較して、非フコシル化グリカンの量が増加するか、又はコアフコースの量が減少し、且つ対照又は参照リツキシマブ抗体と比較して、ADCP活性が減少しているリツキシマブ抗体を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗体組成物は、リツキシマブ抗体を含み、非フコシル化グリカンの約1パーセントの増加又はコアフコースの約1パーセントの減少が、対照又は参照リツキシマブ抗体と比較して約0.5、約0.7、約0.75、約0.8又は約1パーセントのADCP活性の減少をもたらす。
【0150】
例示的な実施形態では、本開示の抗体組成物は、対照又は参照IgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)と比較して、例えばM5高マンノース種を含む、高マンノースグリカンの量が増加し、且つ対照又は参照IgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)と比較して、ADCP活性が減少しているIgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗体組成物は、IgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)を含み、例えばM5高マンノース種を含む、高マンノースグリカンの約1パーセントの増加が、対照又は参照IgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)と比較して約1%、約1.2%、約1.31%、約1.5%、約1.7%、約2%、約2.11%又は約2.5%のADCP活性の減少をもたらす。
【0151】
例示的な実施形態では、本開示の抗体組成物は、対照又は参照IgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)と比較して、例えばM5高マンノース種を含む、高マンノースグリカンの量が減少し、且つ対照又は参照IgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)と比較して、ADCP活性が増加しているIgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)を含む。いくつかの実施形態では、本開示の抗体組成物は、IgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)を含み、例えばM5高マンノース種を含む、高マンノースグリカンの約1パーセントの減少が、対照又は参照IgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)と比較して約1%、約1.2%、約1.31%、約1.5%、約1.7%、約2%、約2.11%又は約2.5%のADCP活性の増加をもたらす。
【0152】
いくつかのさらなる例示的な実施形態では、本開示の抗体組成物は、ガラクトシル化グリカン(例えば、末端β-ガラクトース、又はG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種を含む)、非フコシル化グリカン又はコアフコース、並びに/或いは高マンノースグリカン(例えば、M5高マンノース種を含む)の組み合わせの量が増加又は減少しているIgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)を含む。例示的な実施形態では、抗体組成物は、対照又は参照IgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)と比較して、(1)末端β-ガラクトース、又はG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種の量が増加し、(2)コアフコースの量が減少するか、又は非フコシル化種の量が増加し、且つ/或いは(3)高マンノース又はM5高マンノース種の量が減少し、その結果、対照又は参照IgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)と比較して、ADCP活性の増加がもたらされるIgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)を含む。いくつかの他の例示的な実施形態では、抗体組成物は、対照又は参照IgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)と比較して、(1)末端β-ガラクトース、又はG1、G1a、G1b及び/若しくはG2ガラクトシル化種の量が減少し、(2)コアフコースの量が増加するか、又は非フコシル化種の量が減少し、且つ/或いは(3)高マンノース又はM5高マンノース種の量が増加し、その結果、対照又は参照IgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)と比較して、ADCP活性の減少がもたらされるIgG1抗体(例えば、トラスツズマブ又はリツキシマブを含む)を含む。
【0153】
例示的な実施形態では、本明細書で提供される抗体組成物は、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤と組み合わされる。したがって、本明細書では、本明細書に記載される組み換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物)及び薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含む医薬組成物が提供される。本明細書で使用する場合、「薬学的に許容可能な担体」という用語は、リン酸緩衝生理食塩水、水、油/水又は水/油エマルションなどのエマルション、及び様々なタイプの湿潤剤などの標準的な医薬担体のいくつかを含む。
【0154】
以下の実施例は、単に本開示を説明するために与えられ、決してその範囲を限定するものではない。
【実施例
【0155】
以下の実施例は、β-ガラクトース、コアフコース/非フコシル化、及び/又は高マンノースを含む特定のグリカンの増加又は減少によって、抗HER2抗体及び抗CD20抗体を含むIgG1抗体のADCPエフェクター機能を調節することを記載する。
【0156】
緒言
治療用モノクローナル抗体、特にIgG1サブクラスのモノクローナル抗体には、それらの作用機序に重要であり得るエフェクター機能活性がある。そのようなエフェクター機能活性の1つは抗体依存性細胞貪食(ADCP)であり、これは、マクロファージ及び好中球の活性化FcγR、FcγRIIaを介して主に媒介されることが示されている。ADCP活性に最も影響し、且つ予測性があり、したがってIgG1抗体の製造中にモニターするのに最も適している重要品質特性は、十分に確立されていない。ADCPのためのプライマリー細胞アッセイは、多くの場合、骨が折れるとともに、ドナー間のばらつきに左右され、このことがこのようなアッセイを産物の特徴付けにあまり望ましくないものにしている。ADCPレポーター遺伝子アッセイを開発し使用することによって、本発明者らは、複数の異なるIgG1 mAbにわたってFcγRIIa媒介ADCPに影響を及ぼし得るグリカン構造を高感度で決定することができた。興味深いことに、いくつかのIgG1抗体はADCPの非常に強力なメディエーターであるが、他の抗体は他のエフェクター機能活性(ADCC及びCDC)を有するにもかかわらずADCPを媒介しないことが観察された。さらに、本発明者らは、IgG1 mAbの相異によってADCPのグリカン種に対する感受性が著しく異なり、1つのmAbはβ-ガラクトシル化及び高いマンノースレベルが驚くほど強い影響を示すことを見出した。
【0157】
FcγRIIa媒介ADCPがいくつかの治療用Mabの作用機序(MoA)に役割を果たし得ることが確認されている。Weng WK,Levy R.Two immunoglobulin G fragment C receptor polymorphisms independently predict response to rituximab in patients with follicular lymphoma.Journal of clinical oncology:Official journal of the American Society of Clinical Oncology 2003;21:3940-7、Zhang W,et al.FCGR2A and FCGR3A polymorphisms associated with clinical outcome of epidermal growth factor receptor expressing metastatic colorectal cancer patients treated with single-agent cetuximab.Journal of clinical oncology:Official journal of the American Society of Clinical Oncology 2007;25:3712-8。この認識により、十分な分解能及び識別力を有する好適なインビトロアッセイが必要となっている。ADCPにおけるグリカン構造の影響についての明確な理解が欠如している1つの考えられる理由は、必要な機能アッセイを実施する際の問題であり得る。発表されているADCPプロトコルのほとんどは、プライマリーエフェクター細胞及び蛍光マーカーを使用して、フローサイトメトリーにより活性を追跡する(例えば、Petricevic B,et al.Trastuzumab mediates antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity and phagocytosis to the same extent in both adjuvant and metastatic HER2/neu breast cancer patients.Journal of translational medicine 2013;11:307を参照されたい)。このようなアッセイは方向性効果を示し得るが、ドナー間のばらつき及び応答レベルの限定に起因して、定量能力が限られ、且つ再現性が欠如し得る。また、プライマリー細胞を用いることにより、細胞株を用いた試験や受容体結合試験に比べて、より生理学的に意義のある評価を提供すると主張し得るが、エフェクター機能活性の可能性を明らかにするには感度や精度が十分でない場合がある。最近、FcγRIIaレポーター遺伝子アッセイが記載されており、高い精度及び正確さを持った非常に簡易化された性能を約束する。Tada M,et al.Development of a cell-based assay measuring the activation of FcgammaRIIa for the characterization of therapeutic monoclonal antibodies.PloS one 2014;9:e95787を参照されたい。本発明者らは、FcγRIIa結合に応答するレポーター遺伝子細胞株を利用する市販の供給源に由来する同様のアッセイを確立した。このアッセイは、非常に正確で、再現性があり、且つ種々のグリコフォームの寄与を検出する良好な感度を有する。Fcグリカン構造は製造プロセス中に制御するために緊密なプロセスモニタリングを必要とし得るという認識から、十分に開発された製造プロセスからの生成物においてさえ、比較的高い割合で不均一性に遭遇する可能性がある。Read EK,et al.Industry and regulatory experience of the glycosylation of monoclonal antibodies.Biotechnology and applied biochemistry 2011;58:213-9を参照されたい。したがって、種々のグリカン構造の寄与とADCP活性についての頑強なモデルを確立することが不可欠である。ここで、本発明者らは、エフェクター機能を示す多くのIgG1モノクローナル抗体にわたる広範囲のグリカン型及びレベルの影響を特徴付けるために、FcγR結合研究と組み合わせた遺伝子工学的ADCPアッセイの結果を記載する。
【0158】
以下の例では、以下の方法を用いた。
【0159】
材料及び方法
試料の調製
ヒト化モノクローナルIgG1抗体をCHO細胞中で発現させ、Amgen(Thousand Oaks、CA)で産生させた。この研究で用いたIgG1抗体(「mAb」)は膜発現標的(CD20、HER2又はTNFα)に結合し、そしてトラスツズマブ(抗HER2)及びリツキシマブ(抗CD20)を含む。
【0160】
グリカン種の濃縮と酵素によるリモデリング
高マンノース含有種を、流量0.5mL/minのAgilent1100シリーズHPLCシステム上でProSwift ConA-1Sアフィニティーカラム(5×50mm、ThermoFisher、PN 074148)を用いてmAbから濃縮した。カラムを最初に100%緩衝液A(50mM酢酸ナトリウム、0.2M NaCl、1mM CaCl2、1mM MgCl2、pH5.3)で10.5分間、初期条件に保ち、次いで100%緩衝液B(50mM酢酸ナトリウム、0.2M NaCl、1mM CaCl2、1mM MgCl2、100mM α-メチル-マンノピラノシド pH5.3)で17.5分間溶出した。フロースルー画分及び溶出画分の両方を回収し、β-(1-4)-ガラクトシダーゼ(QA Bio、PN E-BG07)で処理して、末端ガラクトースを除去した。具体的には、mAb画分を、50mMリン酸ナトリウムを含有する反応緩衝液(pH6.0)の存在下、1/50(μg/μg)の比でβ-(1-4)-ガラクトシダーゼと共に37℃で1時間インキュベートした。瞬間冷凍により反応を停止させた。
【0161】
Endo-H(QA-Bio、PN E‐EH02)による酵素処理によりmAbから非フコシル化種を調製した。具体的には、50mMリン酸ナトリウムの反応緩衝液(pH5.5)中、37℃で、24時間、mAbをEndo-Hと共にインキュベートした。最終mAb濃度は4mg/mLである。続いて、Agilent 1100シリーズHPLC上で、カスタマイズしたglycap-3Aカラム(低密度FcγIIIa、3×150mm、Zepteon、PN R3AVD1P1ML)を使用してアフィニティークロマトグラフィーにより、非フコシル化mAbを分離した。移動相Aは20mMトリス、150mM NaCl(pH7.5)を含み、移動相Bは50mMクエン酸ナトリウム(pH4.2)であった。0.5mL/minの流量で勾配(0%Bで8分間保持、0%から18%Bへ22分間)を使用して、非フコース枯渇(フロースルー)及び濃縮(溶出)mAbの両方を分離した。また、末端ガラクトースのいずれかの潜在的な影響を除去するために、β-(1-4)-ガラクトシダーゼによる酵素処理を行った(上記のように)。
【0162】
ガラクトースリモデリング試料を、β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(Sigma/Roche)のインビトロ活性により生成した。最初に、フコシル化mAb(主にG0F)を、FcγIIIaカラムからフロースルー画分を収集することによって調製し、ガラクトシダーゼで処理して末端ガラクトースを除去した。次いで、G0F濃縮mAbを、10mMのUDP-ガラクトース、100mMのMES(pH6.5)、20mMのMnCl2、及び0.02%のアジ化ナトリウムを含有する反応緩衝液中で、β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼと共に37℃でインキュベートした。最終的な酵素とmAbの比は6(μL/mg)であり、mAb濃度は2mg/mLである。種々の時点(10分、20分、30分、1時間、2時間、4時間及び9時間)で反応混合物から試料を採取し、続いて瞬間冷凍して反応を停止させることによって、種々のレベルのガラクトースを有するMAbを得た。
【0163】
濃縮しリモデリングした全ての試料についてプロテインAクロマトグラフィー精製を実施し、酵素及び他の成分を除去した。精製は、予め充填したプロテインAカラム(Poros A/20、4.6×100mm、Applied Biosystems、PN 1-5022-26)を用いて、Agilent 1100シリーズHPLCシステム上で流量3mL/minで行った。適切な量の各試料をロードした後、カラムを、まず100%緩衝液A(20mMトリス-HCl/150mM NaCl、pH7.0)で、1.4分間、初期条件に維持し、次いで、100%緩衝液B(0.1%酢酸)で2.9分間溶出した。溶出した全てのmAbを、3kDaカットオフ膜を備えたAmicon Ultra遠心フィルターを使用して処方緩衝液中に透析濾過した。タンパク質濃度は、典型的には、全ての濃縮/リモデリングmAb試料で約1mg/mLであった。
【0164】
グリカン種の濃縮及びリモデリングの特性評価。
所望のグリカン特性及び最小レベルの高分子量種を確実にするために、濃縮及びリモデリンした全ての試料を、親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)及びサイズ排除クロマトグラフィーで特性評価した。mAbからグリカンをE/S比1/25(μL/μg)のPNGアーゼF(New England BioLabs)を用いて放出させ、12mg/mLの2-アミノ安息香酸(2-AA、Sigma-Aldrich)で、反応混合物を80℃で75分間インキュベートすることにより標識した。2-AA標識グリカンを、蛍光検出器を備えたWaters Acuity又はH-Class UPLCシステム上で、BEHグリカンカラム(1.7μm、2.1×100mm、Waters)を用いて分離した。カラム温度は55℃に維持した。移動相Aは100mMのギ酸アンモニウム(pH3.0)を含み、移動相Bは100%アセトニトリルであった。グリカンを高有機溶媒中でカラムに結合させ、次いで、水性ギ酸アンモニウム緩衝液の勾配を増加させて溶出した(76%Bを5分間保持し、続いて14分間にわたって76%Bから65.5%Bへの勾配により溶出した)。必要な操作が高分子量種の形成をもたらさなかったことの確認を、Agilent1100HPLCシステム上で、0.5mL/minの流量で、サイズ排除カラム(SEC)TSK-Gel G3000SWLXL(7.8×300mm、Tosoh Bioscience)を使用して評価した。試料20~40μgの試料負荷を、典型的には、100mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)及び250mMのNaClを含有する移動相を用いて定組成的に分離した。
【0165】
ADCPアッセイ
ADCPルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイは、遺伝子操作されたJurkat T細胞をエフェクター細胞として使用する。Jurkatレポーター細胞は、T細胞活性化因子(NFAT)の応答エレメントを有するルシフェラーゼレポーター遺伝子と同様に、細胞表面にFcγRIIa-(H131バリアント)を発現する。これらの細胞をPromegaカタログ番号G9901から改変した。標的細胞に結合した抗体とJurkatエフェクター細胞上のFcγRIIaに結合した抗体間の同時結合により、転写因子NFATが活性化される。活性化されたNFATはJurkat細胞の核内に移行し、ルシフェラーゼレポーター遺伝子発現を誘導する。ルシフェリン及び界面活性剤を含有するルシフェラーゼ基質の添加により、発光シグナルが生成され、ADCPレポーター活性の検出が可能になる。抗CD20抗体では、用量応答曲線とするため、参照標準、アッセイ対照、及び試験試料を、低IgG FBSを含むRPMI1640アッセイ培地中で、最終プレートウェル濃度が1.76~600ng/mLの範囲まで8濃度レベルにわたって段階希釈した。エフェクターJurkatレポーター細胞及び標的(CD20+Raji)細胞を、3:2のエフェクター対標的(E対T)細胞比で混合して、細胞懸濁液を調製した。次いで、プレートを、5%CO2及び37℃の加湿インキュベーター中で5.5時間インキュベートした。インキュベーションの終わりに、細胞をルシフェラーゼアッセイ緩衝液中の界面活性剤によって溶解する。ルシフェラーゼの触媒作用により、その基質のルシフェリンを発光させ、EnVisionプレートリーダーによって検出した。SoftMax Pro 7による4パラメーター曲線フィットを用いてデータを平均発光値にフィットさせ、一般的なバイオアッセイの実施ごとの相対活性パーセント(EC50標準/EC50試料)として報告した。各試料を3つの独立したアッセイで試験し、試料の最終結果を3回の測定の平均として報告する。抗TNFα抗体アッセイも同様に実施したが、234.4~30000ng/mLの用量範囲、及びその細胞表面15上に非切断型TNFαを発現するように操作されたCHO標的細胞株を使用した。抗HER2抗体についてのADCPアッセイを同様に実施したが、31.3~4000ng/mLの用量応答範囲を有し、標的細胞としてHER2+SKOV-3細胞株を使用した。より高いルシフェラーゼ応答を達成するために、5%CO2及び37℃でのプレートのインキュベーションは、約6.5時間である。抗HER2抗体の活性は、用量応答データを、他の分子と同様の4パラメーター曲線にフィッティングすることによって算出したが、相対活性の算出は、SoftMax Proを使用せず、次の経験的に導き出された式を使用した:相対力価=(B試料/B参照)E×(C参照/C試料)×(D試料/D参照)F。B比(B試料/B参照)は、参照標準のヒル勾配を試料のヒル勾配で除すことによって得られた。C比(C参照/C試料)は、参照標準のEC50を試料値のEC50で除すことによって得られた。D比(D試料/D参照)は、参照標準の上漸近線を試料値の上漸近線で除すことによって得られた。B試料/B参照≧1.0及びC参照/C試料≧1.0なら、E=0.05、B試料/B参照≧1.0及びC参照/C試料<1.0なら、E=0.20、B試料/B参照<1.0なら、E=0.15、D参照/D試料>1.0なら、F=1.8×(D参照/D試料)(0.45×(D参照/D試料)^0.35)、D参照/D試料≦1.0なら、F=1.8×(D試料/D参照)(1.45×(D参照/D試料)^1.75)。この式は、B、C及びD値が全てこのアッセイにおける品質特性によって影響されるという事実を考慮した。
【0166】
FcγRIIa結合。
抗体試料によるFcγRIIaに対する相対結合活性を、競合的増幅発光近接ホモジニアスアッセイ(AlphaLISA(商標)、Perkin Elmer)で測定した。このアッセイは、2つのビーズ型、アクセプタービーズ及びドナービーズを含む。アクセプタービーズはグルタチオンを含み、グルタチオンは、社内で調製された組み換えヒトFcγRIIa-グルタチオン-Sトランスフェラーゼ(FcγRIIa GST)に結合する。ドナービーズはストレプトアビジンでコーティングされ、ストレプトアビジンは、社内で調製されたビオチン化ヒトIgG1に結合し、試料の競合体として機能する。FcγRIIa GSTとビオチン化ヒトIgG1が結合すると、それらはアクセプタービーズとドナービーズを近接させる。この複合体にレーザーを照射すると、周囲の酸素がドナービーズによって一重項酸素に変換され、570nmで測定される発光をもたらす。試料が、ビオチン化ヒトIgG1へのFcγRIIa GSTの結合を阻害するのに十分な濃度で存在する場合、発光の用量依存性の減少が測定される。結合アッセイは、96ウェルAlphaPlate(PerkinElmer)中で行った。グルタチオン被覆アクセプタービーズを、ヒトFcガンマRIIa-GST-H6で被覆し、それぞれ、AlphaLISA免疫アッセイ緩衝液中で25μg/mL及び5nMの最終濃度に調製した。この混合物を暗所において室温で2~4時間インキュベートする(ビーズは感光性である)。参照標準、対照及び試料物質を、希釈プレート中のAlphaLISA(商標)イムノアッセイ緩衝液中で100nMから0.164nM(PerkinElmer)に2.5倍段階希釈し、各ウェルの90μLを新鮮な混合プレートに移す。ビオチン化IgG1競合体を、イムノアッセイ緩衝液中、2nMの最終濃度に調製する。90μLのビオチン化IgG1競合体を、低濃度から高濃度まで混合プレートの全てのウェルに加えた。各ウェルを、上下にピペッティングすることによって少なくとも5回混合し、次いで、40μLを、3つの反復アッセイプレートの適切な各ウェルに移した。グルタチオン受容体ビーズ及びFcγRIIaの2時間のインキュベーションが完了した後、40μLの混合物をアッセイプレートの各ウェルに添加した。プレートを密封し、振盪機上に2分間置き、次いで、暗所にて22~26時間、室温でインキュベートした。インキュベーションの後、ストレプトアビジンドナービーズをイムノアッセイ緩衝液中、50μg/mLの最終濃度に希釈し、20μLをアッセイプレートの各ウェルに加え、総反応容量を100μLとした。プレートを再び密封し、振盪機上に2分間置き、暗所にて2~6時間、室温でインキュベートした。インキュベーションの後、プレートシーラーを除去し、プレートをEnvisionで680nm励起、570nm発光で読み取った。参照標準に対する試験試料の結合を測定し、相対結合パーセントとして報告した。希釈曲線の各データ点を、3つのアッセイプレートで3連で実行した。SoftMax Pro 7による4パラメーター曲線フィットを使用してデータを平均発光値にフィットさせ、IC50標準/IC50試料を計算し、活性パーセントとして報告した。各試料を3つの独立したアッセイで試験し、試料の最終結果を3回の測定の平均として報告した。
【0167】
抗原の結合
CD20抗原結合アッセイを、蛍光阻害を報告する競合的アッセイフォーマットを利用して、ヒトβ-リンパ芽球様細胞株であるWIL2-S細胞を用いて行った。試験試料は、WIL2-S細胞の細胞表面発現CD20への結合について、参照標準の固定濃度のAlexa-488標識形態と競合する。0.5mg/mLのBSAを含有するPBS中で、4.92~3000ng/mLの最終濃度範囲まで8つの濃度にわたって段階希釈することによって、参照標準、アッセイ対照及び試験試料の用量応答曲線を作成した。Alexa-488標識競合体を最終的なウェル内濃度100ng/mLに希釈した。30,000細胞/ウェルに希釈した試料、競合体及びWIL2-S細胞を96ウェルプレートに2連で加え、プレートシーラーで密封した。次いで、プレートを室温で4.5~6時間インキュベートした後、Acumen(登録商標)eX3イメージングサイトメーター(TTP Labtech)で蛍光シグナルを測定した。蛍光シグナルの用量依存的減少が、試験試料の濃度の上昇につれて検出された。参照標準試料に対する試験試料の相対CD20結合を報告した。SoftMax Pro 7による4パラメーター曲線フィットを使用してデータを平均発光値にフィットさせ、IC50標準/IC50試料を計算し、パーセント相対結合活性として報告した。各試料を3つの独立したアッセイで試験し、試料の最終結果を3回の測定の平均として報告した。HER2結合アッセイを、HER2陽性SKBR-3を標的細胞として使用し、用量応答曲線が(0.016~10μg/mL)の範囲であったことを除いて、同様の様式で実施した。
【0168】
実施例1
抗HER2、抗CD20及び抗TNFαのIgG1抗体のADCP活性の評価
細胞表面抗原に対する一連のヒトIgG1モノクローナル抗体についての潜在的ADCP活性の評価を、ADCPレポーター遺伝子アッセイを用いて行った(詳細については上記の材料及び方法を参照)。評価した抗体は、このアッセイにおいて一連の活性を示した。ある範囲の活性を表す3つの異なるIgG1 mAbの用量応答曲線のオーバーレイを図2に示す。抗TNFα抗体は、全ての抗体の試験された最高濃度範囲で評価されたにもかかわらず、実質的に応答を示さなかった。対照的に、抗CD20抗体は、比較的低い濃度範囲で非常に強い応答を示し、20倍の分数で最大刺激に達した。抗HER2抗体は中間の応答を示す。これらの3つの抗体の全ては、インビトロADCC活性アッセイで測定されるように、これらの同じ標的細胞株に対しADCCを媒介する(データは示さず)。2つの異なる標的に対するADCP活性が2つの異なる抗体によって得られたとの観察から、このアッセイ及びこれらの活性に影響を及ぼす特性のより詳細な研究が行われた。
【0169】
第1段階として、ADCPレポーター遺伝子アッセイの定量的性質及び範囲、及び、したがってADCP活性に影響を及ぼす品質特性の評価に対するその適合性を示すために、濃度調整によるシミュレートされた活性又は効力レベルを使用して線形アッセイを行った。図3A~Dは、抗CD20(図3A~B)及び抗HER2(図3C~D)抗体の両方について、予測されたADCP活性値と観測されたADCP活性値の結果を示し、それぞれの用量応答曲線(図3B及び3Dを参照)及び相関グラフ(図3A及び3Cを参照)を示す。
【0170】
25%から250%の相対ADCP活性から確立したアッセイの定量範囲を用いて、2種類の活性mAb(抗CD20及び抗HER2)のFcドメインにおける保存されたN-結合グリカンに関連する品質特性を次に調べた。各抗体の試料を調製して、図4に示すような様々な高マンノース、ベータ-ガラクトース及びフコース構造を評価した。
【0171】
様々な主要なグリカン種の各々を有する抗体試料を、記載のように調製した。各グリカンの相対ADCP活性に対する影響を以下の節で詳述する。
【0172】
実施例2
抗HER2及び抗CD20のIgG1抗体のADCP活性に対する末端β-ガラクトースの影響
調べた最初のグリカン種はβ-ガラクトースであった。抗HER2抗体は、様々なβ-ガラクトースに対して非常に強い応答を示した。ガラクトシル化の用量応答曲線を図5に示す。定量的に非常に異なる活性レベルを生じることに加えて、β-ガラクトースレベルに対する用量応答曲線の形状にも定性的な変化があり、ヒル勾配及びEmaxはβ-ガラクトースレベルの減少と共に低下した。相対活性の算出の説明については、上述の材料及び方法を参照されたい。
【0173】
算出された活性は、グリカンに対して非常に直線的な応答をもたらした(図6)。本発明者らはまた、ADCP活性に対するβ-ガラクトースの相対的影響を、活性/特性相関プロットの勾配に関してそれを表すことによって定量化することができた。これは応答係数を表すと見なすことができる。抗HER2抗体におけるこのアプローチを使用して、ADCPインパクトは、β-ガラクトースで、2.88と計算することができる。
【0174】
驚くべきことに、同じ分析を抗CD20抗体について行ったところ、β-ガラクトースレベルに対する応答は、図7に示すように、実質的に変わらないことがわかった。抗CD20抗体では、観察された影響はβ-ガラクトースの達成可能な最低レベルと最高レベルとの間で最小であったので、中間レベルは試験しなかった。
【0175】
ADCPレポーター遺伝子アッセイのグリカンレベルに対する応答性のさらなる尺度として、AlphaLISAフォーマットを使用するFcγRIIa結合アッセイを行って、抗HER2抗体に対するβ-ガラクトースの影響を直交評価した。FcγRIIa結合アッセイは、ADCPアッセイで使用した線形アプローチと同様の広範囲の結合活性をカバーするように適格化した(データは示さず)。図8に見られるように、同じ範囲のβ-ガラクトースをカバーする試料のサブセットで、β-ガラクトースレベルに対して線形応答があった。AlphaLISA結合アッセイの応答の大きさが、ADCPアッセイが生成する応答よりもはるかに穏やかであったことは興味深い。β-ガラクトースレベルの関数としての相対FcγRIIa結合のプロットの勾配は、図6の3.05応答係数に対して、わずか0.33であり、これは、ADCPアッセイより約9倍強力な応答率である。
【0176】
グリコエンジニアリング操作の結果として生じた可能性がある抗原結合インパクトの対照として、代表的な広範囲のβ-ガラクトースレベル試料の相対抗原結合活性のグラフを図9A-Bに示す。これらの結果から、相対ADCP活性の差異は、FcγRIIa結合の差異に起因し得、細胞表面標的結合の不測の変化に起因しないと結論付けることができる。
【0177】
実施例3
IgG1抗体のADCP活性に対するコアフコース/非フコシル化の影響
フコシル化に対する応答(非フコシル化[フコースの欠如]レベルの形態で)を図10A~Bに示す。β-ガラクトースに対する応答よりも劇的ではないが、抗HER2抗体に対するADCP活性の直線的な増加が観察され、応答係数は0.56であった。図10A。抗CD20抗体は、非フコシル化の増加に伴い、ADCP活性はわずかではあるが直線的な減少を示した。図10B。負の傾きは非常に浅いが、本法の精度を考慮すると認識可能であり、且つ再現可能である。
【0178】
実施例4
IgG1抗体のADCP活性に対する高マンノースの影響
抗HER2抗体の高マンノースに対する応答は、アフィニティークロマトグラフィー法によって、より低レベルの高マンノース種をより高レベルの高マンノース種から完全に分離することができず、また、それらの試料に関連する異なるβ-ガラクトースレベルを持ち込まなかったことでやや複雑になった。通常、β-ガラクトースはこの評価のために除去され、高マンノースの相異のみによる影響の評価を可能にする。しかしながら、実施例2に示したように、β-ガラクトースの除去は活性を消失させる。したがって、抗HER2抗体のADCP活性に対する高マンノースの影響を評価するために、2組の試料を比較した。第1のセットは、実施例2で論じた1%~91%の範囲であるが、全て、高マンノースを共通レベル(約2%)で含有する同じβ-ガラクトースレベルである。第2のセットは、17%のβ-ガラクトース~36%のβ-ガラクトース(2つをブレンドすることによって中間レベルを達成)の範囲の試料を含むが、1.6%~52%の範囲の高マンノースも含む。報告された各セットからのβ-ガラクトースに対するADCP活性を図11A~Bにプロットする。1.2~52%の範囲の高マンノースを含有するセットは全て、2%に固定された高マンノースを有するセットと比較してより低いADCP活性を示したことが観察され、これは、抗HER2抗体では、ADCP活性に対し、高マンノースが負の影響を及ぼすことを示している。図11A。同じ分析をFcγRIIa結合アッセイを用いて行い、図11Bに示す。様々な高マンノースを含有する試料セットの勾配はまた、これらの試料に存在するβ-ガラクトースの範囲による影響を受けるので、勾配の値は、他のグリカン特性のように、高マンノースの応答係数と見なすことはできない。むしろ、これらの試料のβ-ガラクトースと高マンノースとの間の関係、及びβ-ガラクトースとADCP活性との間の関係を知ることにより、高マンノースの応答係数は、ADCP活性では-2.11、結合アッセイでは-0.81と算出することができた。
【0179】
ADCPアッセイにおける高マンノースの応答係数を決定するための計算は、以下の通りであった:
β-ガラクトース%の関数としての相対ADCP活性%
y=5.4379x-100.1
x=(y+100.1)/5.4379(1)
β-ガラクトース%対マンノース%の式をzに関して書き換える。zはマンノースレベル%である。
y=-0.3881x+36.961
x=-0.3881z+36.961(2)
次に、(2)に(1)を代入して、z(マンノースレベル%)に関してy(相対FcγRIIa結合%)の式を得る
x=-0.3881z+36.961
(y+100.1)/5.4379=-0.3881z+36.961
【数1】
y+100.1=-2.1104z+200.9902
y=-2.1104z+100.8902(3)
したがって、ADCPアッセイにおける高マンノースの応答係数は-2.1104である
【0180】
FcγRIIa結合アッセイにおける高マンノースの応答係数を決定するための計算は、以下の通りであった:
β-ガラクトース%の関数としての相対FcγRIIa結合%
y=2.0759x+25.805
x=(y-25.805)/2.0759(1)
β-ガラクトース%対マンノース%の式をzに関して書き換える。zはマンノースレベル%である。
y=-0.3881x+36.961
x=-0.3881z+36.961(2)
次に、(2)に(1)を代入して、z(マンノースレベル%)に関してy(相対FcγRIIa結合%)の式を得る
x=-0.3881z+36.961
(y-25.805)/2.0759=-0.3881z+36.961
【数2】
y-25.805=-0.805657z+76.7273
y=-0.805657z+102.5323(3)
したがって、FcγRIIa結合における高マンノースの応答係数は-0.81である
【0181】
抗CD20抗体上の高マンノースの評価のための試料は、β-ガラクトースがADCP活性に有意な影響を及ぼさないので、操作はより簡単であった。フコシル化についてわかったことと同様に、図12Aに示すように、抗CD20抗体では高マンノースレベルの増加に伴ってADCP活性がわずかに直線的に減少する。また、図12Bに、対応するFcγRIIa AlphaLISA結合アッセイの結果を示すが、高マンノースと同様に負の相関を示している。ここでも、ADCPアッセイは直交結合アッセイよりも、わずかではあるが、より大きなグリカン効果を示している。
【0182】
考察
CD20及びHER2抗体の応答係数によって測定した、ADCP活性に対する種々のグリカン種の影響の要約を表3にまとめる。特定のグリカン(非フコース、高マンノース又は末端β-ガラクトース)の量が各抗体において増加した場合、ADCP活性の増加(表3において、正数で示される)又はADCP活性の減少(表3において、負数で示される)が観察された。
【0183】
【表3】
【0184】
治療用抗体の製造において、分子が媒介することができるエフェクター機能活性の全てを確認し、特徴付けることが重要である。ADCC及びCDCアッセイは十分に確立されているが、ADCPは必要とされるアッセイの感度及び範囲がより限定されているために、活性及び作用の可能なメカニズムとして見過ごされやすく、活性に影響を及ぼす品質特性はあまり理解されていない。しかしながら、ADCPは、現在市販されている少なくとも2つの治療用モノクローナル抗体の作用の可能なメカニズムとして示唆されている(Kim S,et al.Drifts in ADCC-related quality attributes of Herceptin(R):Impact on development of a trastuzumab biosimilar.mAbs 2017;9:704-14、及びWeng WK,Levy R.Two immunoglobulin G fragment C receptor polymorphisms independently predict response to rituximab in patients with follicular lymphoma.Journal of clinical oncology:Official journal of the American Society of Clinical Oncology 2003;21:3940-7)ので、ADCP活性に影響を及ぼし得る重要品質特性をモニターすることは極めて重要である。実際、これらの活性のいずれかを示す分子では、適切なプロセス制御を確実にするために、またバイオシミラーの開発における分析的類似性の実証のために、これらの構造/機能関係を解明することが必須であろう。この目的を達成するための中心は、製造プロセスの一部として変化し得る品質特性の変化に敏感な機能アッセイの開発である。本研究では、それぞれ単離された広範囲の3つの主要なグリカン種を得るために、組み合わせた酵素修飾及び濃縮プロセスを使用して、CHO産生プロセスで産生された2つの代表的な治療用モノクローナル抗体から材料を生成した。本発明者らは、グリカン種とエフェクター活性との間の関係をより正確に見出すために、プロセスパラメーターを調節することによって可能であるよりも実質的に広い範囲を達成することができた。
【0185】
IgG抗体FcドメインとFcγ受容体ファミリーメンバーとの間の相互作用の性質は、Reusch D,Tejada ML.Fc glycans of therapeutic antibodies as critical quality attributes.Glycobiology 2015;25:1325-34に広範囲に概説されている。保存されたグリカン及び種々の構造形態の役割は、FcγRIIIa及びADCCについての結合及び機能的研究によって十分に確立されているが、FcγRIIa及びADCPに対するグリカン構造の影響はあまり明確にされていない。ほとんどの研究は保存されたN結合型グリカンの構造とFcγRIIa結合及びADCPとの間の実質的な関係を見出していないが、相関を観察する報告は少数存在する。Chungら(Chung S,et al.Quantitative evaluation of fucose reducing effects in a humanized antibody on Fcgamma receptor binding and antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity activities.mAbs 2012;4:326-40を参照)は、抗CD20抗体の場合、0~100%の非フコシル化レベルの増加に伴ってFcγRIIa結合が増加する傾向があることを見出した。これらのデータは、ELISA結合アッセイにおいて、DP12(野生型生成)及びFUT8欠損(非フコース生成)CHO細胞株からの混合試料を試験して得られた。本発明者らは、レポーター遺伝子ADCPアッセイにおいて、非フコシル化のレベルの増加に伴って抗HER2抗体でわずかな増加を観察する一方、抗CD20抗体ではむしろ活性がわずかに減少することを見出した。アッセイ形式の違い、並びにChungらが結合試験に131Rアロタイプを使用し、一方、本研究では131Hアロタイプを使用したという事実が、異なる観察の一因になった可能性がある。結果はまた、これらの研究に異なる抗CD20分子が使用された可能性、並びに本研究で使用されたインビトロ工学プロセスで示されていないFUT8欠損宿主に由来する他の構造的差異が存在し得る可能性によっても影響されている可能性がある。注目すべきことに、別の研究(Golay J,et al.Glycoengineered CD20 antibody Obinutuzumab activates neutrophils and mediates phagocytosis through CD16B more efficiently than rituximab.Blood 2013;122:3482-91)は、フコシルトランスフェラーゼの基質ではなく、したがって主に非フコシル化形態として発現するバイセクト型グリカンを生じる、誘導型N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GntIII)発現によるCHO株での産生によって糖質改変された抗CD20抗体を使用している。Umana P,et al.Engineered glycoforms of an antineuroblastoma IgG1 with optimized antibody -dependent cellular cytotoxic activity.Nature biotechnology 1999;17:176-80を参照されたい。その研究では、著者らは、131Rアロタイプに対するFcγRIIa結合についてフコースレベルからの影響を実質的に観察することはなかったが、表面プラズモン共鳴による測定で、131Hアロタイプへの結合のわずかな減少を観察し、これは本発明者らの研究と一致しているであろう。最近の研究で、ガラクトースレベルが影響を及ぼすことが確認されている(Chung AW et al.Identification of antibody glycosylation structures that predict monoclonal antibody Fc-effector function.Aids 2014;28:2523-30を参照)。この研究において、著者らは、ガラクトースなどの末端の糖を高レベルで含有する抗体の、ヒトマクロファージ細胞株ADCPアッセイ、及びFcγRIIa結合のSPR結合アッセイにおける増加を観察することができた。これらの実験に特有であるが、グリカン種は全て、本研究で使用されているβ結合ではなくα結合が主であり、且つ、はるかに一般的に使用されているCHO宿主細胞株上に存在する種々のマウスモノクローナル抗体上にあった。別の研究は、FcγRIIaに構造的に関連する受容体であるFcγRIIbへのマウスモノクローナルの結合に対するガラクトースレベルの効果に注目した(Woof JM,Burton DR.Human antibody-Fc receptor interactions illuminated by crystal structures.Nature reviews Immunology 2004;4:89-99を参照)が、抑制性の細胞内シグナル伝達モチーフを有した。FcγRIIaにより媒介されると考えられる好中球活性についてのいくつかのインビボアッセイにおいて、これらの著者らは、酵素により完全に脱ガラクトシル化された形態の分子よりも、酵素により完全にガラクトシル化された形態がはるかに高い活性を有することを観察した。Karsten CM et al.Anti-inflammatory activity of IgG1 mediated by Fc galactosylation and association of FcgammaRIIB and dectin-1.Nature medicine 2012;18:1401-6。そこで、FcγRIIa結合及びシグナル伝達活性に対するグリカン構造への影響を探す努力がなされてきたが、この報告は、FcγRIIa結合についての細胞ベースのアッセイにおいて、多くの異なるグリカン種を系統的に評価する最初の努力であると思われる。
【0186】
おそらく、ADCP活性の構造決定因子を研究する上での最大の課題は、ドナー間の応答変動に感受性のあるプライマリーエフェクター細胞、並びにアッセイアウトプットに影響を与え得る受容体のアロタイプの差異、及び他の背景にある遺伝的な変化や表現型の変化に依存することであった。また、他にも記載されているように、多くの異なるFcγR型が対象のエフェクター細胞に発現され得るので、食細胞上のADCPに関連するレセプターを識別することは一般により困難である。Ackerman ME,et al.A robust,high-throughput assay to determine the phagocytic activity of clinical antibody samples.Journal of immunological methods 2011;366:8-19を参照されたい。それ故、医薬品の開発にこれらのタイプのアッセイの限界があり、品質管理設定における特徴付けが認識されるべきである。これらの課題を回避するために、Tadaら(Tada M,et al.Development of a cell-based assay measuring the activation of FcgammaRIIa for the characterization of therapeutic monoclonal antibodies.PloS one 2014;9:e95787)は、FcγRIIa媒介ADCPのレポーター遺伝子アッセイを開発した。このアッセイは上記の多くの限界を克服した。ADCP活性についてレポーター遺伝子アッセイを使用することの有用性及び便利さを示すことに加えて、彼らは、セツキシマブのメチオニン酸化によるADCP活性への影響を見出した。
【0187】
同様のアッセイ法を用いて、本発明者らは、一般的なグリコフォームがIgG1 mAb間でADCP活性に対する実質的且つ差次的影響を有し得ることを初めて報告する。最も印象的なのは、抗HER2抗体に対するβ-ガラクトースの影響である。末端β-ガラクトースレベル範囲が、一般的な製造プロセスの間に観察されるレベルに限定される場合でさえ、活性に10倍の変化が認められた。興味深いことに、同様の大きさの影響であるが、反対方向の影響(レベルの増加に伴って抑制される)が、この抗体上の高マンノースについて見出された。そのような結果は、ADCPが提案された作用メカニズムの一部である任意のそのような分子についての制御戦略を与えることができよう。興味深いことに、抗CD20抗体については、同様に広範囲の末端β-ガラクトースレベルで実質的な影響は観察されなかった。対照的に、同じ分子について、非フコシル化及び高マンノースの影響は、FcγRIIIa結合及びADCCについて一般に予測されるものとは逆である。これらのグリカンがADCCに及ぼす影響の構造的基礎は、FcgRIIIaとIgG1 Fcドメインとの共結晶構造から明らかになった。Ferrara C,et al.Unique carbohydrate-carbohydrate interactions are required for high affinity binding between FcgammaRIII and antibodies lacking core fucose.Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 2011;108:12669-74を参照されたい。FcγRIIa結合についての同様の構造研究が行われるとしたら、同様に明らかになり得る。
【0188】
最終観察として、ここに提示した結果は、グリカンの影響が観察される場合、応答の大きさは、それ自体一般に結合差に対するSPR又はELISAアッセイフォーマットよりも応答性が高い直交AlphaLISA結合アッセイによって報告された大きさよりも大きい可能性があることを示している。Xu Z,et al.Affinity and cross-reactivity engineering of CTLA4-Ig to modulate T cell costimulation.Journal of immunology 2012;189:4470-7を参照されたい。細胞ベースのアッセイ及び結合アッセイの両方を利用するADCCの影響特性の報告が、細胞ベースの活性アッセイよりも結合アッセイの方が応答性がより高いことを見出していると考えると、このADCPアッセイで見られる応答性は独特であり得る。Reusch D,Tejada ML.Fc glycans of therapeutic antibodies as critical quality attributes.Glycobiology 2015;25:1325-34を参照されたい。またChung S,et al.Characterization of in vitro antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity activity of therapeutic antibodies-impact of effector cells.Journal of immunological methods 2014;407:63-75も参照されたい。この事実は、FcγRIIa結合についてのこのアッセイの潜在的な感度及び有用性をさらに強調する。
【0189】
結論として、細胞表面標的に誘導された全てのIgG1 mAbが全てのエフェクター機能を誘発する同じ能力を有するわけではなく、そして、活性が存在する場合、品質特性は、異なるエフェクター機能に差次的な影響を有し得る。このことは、ADCC及びCDCの活性評価と同様にADCP活性を丁寧に評価し、且つ製造プロセスにおいて関連する重要品質特性を制御することの重要性を強調するものである。また、プラットフォーム制御戦略が適切でない可能性があるため、ケースバイケースで適切な制御を確立する必要性も強調される。この目的のために、本発明者らは、そうでなければ見過ごされていたかもしれないエフェクター機能に関連するCQAを明らかにすることができる、高スループットの可能性を有する高分解能アッセイを有することの価値を強調する。生理学的に関連するアッセイを追求したいという願望はプライマリー細胞への依存につながる可能性があるが、最良のアプローチは、仮説検証のための生理学的状況を提供するプライマリー細胞アッセイと、産生パラメーターを確立する強固で感度が高くハイスループットのレポーター遺伝子アッセイの組み合わせを適用することであり得る。
【0190】
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【0191】
本明細書で引用される全ての刊行物、特許及び特許出願は、各々の個々の刊行物、特許又は特許出願が具体的且つ個別に参照により組み込まれるとあたかも示されたかのように、参照により本明細書に組み込まれる。上記の発明は、理解を明確にする目的で、説明や例によってある程度詳細に記載されているが、本開示の教示に照らして、開示された実施形態の精神又は範囲から逸脱することなく、それに対して特定の変更及び修正がなされ得ることは、当業者には容易に明らかであろう。本明細書で使用される項目の見出しは、単に構成を目的とするものに過ぎず、記載される主題を限定するものと解釈されるべきではない。
【0192】
本明細書における値の範囲の記載は、本明細書に別段の指示がない限り、単に、その範囲及び各端点にある別個の値の各々を個々に指す簡略法の役目をするものに過ぎず、別個の値及び端点の各々は、それが個々に本明細書に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0193】
本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に別段の指示がない限り又は文脈と明確に矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で提供されるあらゆる例又は例示的な語(例えば、「など」)の使用は、単に本開示をさらに明らかにするものであり、別段の主張がない限り、本開示の範囲に限定を課すものではない。本明細書におけるいかなる語も、任意の特許請求されていない要素を本開示の実施に必須として示していると解釈されるべきではない。
【0194】
本開示を実行するために、本発明者らには既知の最良の形態を含む、本開示の好ましい実施形態が本明細書に記載される。それらの好ましい実施形態の変形形態は、上述の記載を読めば、当業者には明らかになるであろう。本発明者らは、当業者が必要に応じてこのような変形形態を採用することを期待し、また、本発明者らは、本明細書で具体的に記載されている形態以外で本開示が実施されることを意図している。したがって、この開示には、適用可能な法律により許容される場合、本明細書に添付される特許請求の範囲で示される主題の全ての変更物及び均等物が含まれる。さらに、上記の要素の全ての可能な変形形態におけるそれらの要素の任意の組み合わせは、本明細書に別段の指示がない限り、又は文脈と明らかに矛盾しない限り、本開示に包含される。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
【配列表】
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