(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】浴室内固定型シャワー装置
(51)【国際特許分類】
A47K 3/28 20060101AFI20240826BHJP
E03C 1/044 20060101ALI20240826BHJP
E03C 1/06 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
A47K3/28
E03C1/044
E03C1/06
(21)【出願番号】P 2021041306
(22)【出願日】2021-03-15
【審査請求日】2023-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000144072
【氏名又は名称】SANEI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 隆裕
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-320567(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0034920(US,A1)
【文献】特開2007-262779(JP,A)
【文献】特開昭55-047066(JP,A)
【文献】特開2007-177911(JP,A)
【文献】実開昭51-015224(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第110159770(CN,A)
【文献】特開2014-145395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/02-4/00
E03C 1/00-1/10
F16K 15/00-15/20
F16K 11/00-11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室内固定型シャワー装置であって、
オーバーヘッドシャワー機構と、ハンドシャワー機構と、外部から供給された湯と水を混合して温度と量が調節された調温水を吐出する混合水栓と、該混合水栓から供給された調温水を前記オーバーヘッドシャワー機構又は前記ハンドシャワー機構に選択的に供給する切換機構と、を備えており、
該切換機構は内部に配置された一方向に付勢された弁体と、該弁体を外部から付勢方向とは逆の方向に移動させることができる押圧手段と、を備えており、
前記弁体は、前記押圧手段が操作されない第1状態において、前記オーバーヘッドシャワー機構への前記調温水の供給を止めて前記ハンドシャワー機構への前記調温水の供給を許容し、前記押圧手段が操作された第2状態において、前記ハンドシャワー機構への前記調温水の供給を止め前記オーバーヘッドシャワー機構への前記調温水の供給を許容するとともにこの状態を維持し、前記混合水栓から前記切換機構への前記調温水の供給が止められると前記第1状態に復帰するように構成されており、
前記ハンドシャワー機構はシャワーヘッドと前記切換機構との間の水路の途中に逆止弁機構を備えており、
該逆止弁機構は、
ケーシングと、該ケーシング内に形成された空間部と、前記切換機構から前記シャワーヘッドへの前記調温水の流れを許容するとともに前記シャワーヘッドから前記切換機構への前記調温水の流れを止める逆止弁と、該逆止弁と前記切換機構との間の水路が減圧状態となったときに開いて外部の空気を流入させて減圧状態を解消する減圧解消弁機構と、を備え
、
前記減圧解消弁機構は、弁部材と、圧縮コイルばねと、孔が設けられた蓋部材と、を有し、
前記孔は、水平方向に前記蓋部材を貫通するよう形成され、外部の空気を前記空間部に取り込むことを可能とし、
前記弁部材は、
前記減圧状態に該当しない際は、前記圧縮コイルばねの付勢力によって前記孔へと直接的に押圧され、前記空間部から前記孔の方向への前記調温水の流れを止め、
前記減圧状態となった際は、前記圧縮コイルばねの付勢力に抗して前記孔と反対側に移動することにより、前記孔から外部の空気を前記空間部に取り入れて減圧状態を解消する、
浴室内固定型シャワー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室内固定型シャワー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浴室内固定型シャワー装置において、使用者の上方から使用者に向かって水を吐出するオーバーヘッドシャワー機構と、使用者がシャワーヘッドを手で握って吐水方向を操作するハンドシャワー機構と、を備えたものが知られている。特許文献1には、このような浴室内固定型シャワー装置が開示されている。この浴室内固定型シャワー装置においては、外部から供給された湯と水を混合部で混合して調温しハンドルに供給する。ハンドルを操作することによってオーバーヘッドシャワー機構とハンドシャワー機構とを切り換えるとともに、各機構のシャワーヘッドからの吐水量を調整できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された技術において、オーバーヘッドシャワー機構とハンドシャワー機構との切り換えについて自動復帰弁を有する切換機構で行うことがある。
図8及び
図9にはこのような従来の浴室内固定型シャワー装置100が示されている。浴室内固定型シャワー装置100は、浴室Rの壁面Wに取付けられた混合水栓110と、切換機構120と、オーバーヘッドシャワー機構130と、ハンドシャワー機構140と、を備えている。混合水栓110は、レバー111を操作することにより、湯供給管112から供給された湯と水供給管113から供給された水とを混合して調温水管114に供給する調温水の温度と量を調節することができるものである。切換機構120は、ケーシング121の内部に圧縮コイルばね123により浴室Rの方向に付勢された弁体122と、シャフト124を介して弁体122を圧縮コイルばね123による付勢方向とは逆の方向に押圧することができる釦部125と、を備えている。オーバーヘッドシャワー機構130は、シャワーヘッド部131と、シャワーヘッド部131と切換機構120とを連結する連結パイプ132と、を備えている。ハンドシャワー機構140は、使用者が手で握って吐水方向を操作するシャワーヘッド部141と、シャワーヘッド部141と切換機構120とを連結する連結パイプ142と、連結パイプ142の中途部分に配設された逆止弁機構150と、を備えている。逆止弁機構150は、切換機構120からシャワーヘッド部141に向かう水の流れは許容して、シャワーヘッド部141から切換機構120に向かう水の流れは許容しない逆止弁151を備えている。
【0005】
図8に示す通常時においては、切換機構120は、弁体122が圧縮コイルばね123によって浴室Rの方向に押圧され連結パイプ132に向かう水の流れを止め、連結パイプ142に向かう水の流れを許容してハンドシャワー機構140が使用可能な状態となっている。この状態から、
図9に示すように、切換機構120の釦部125を押圧して弁体122を浴室Rと反対の方向に移動させると連結パイプ142に向かう水の流れを止め、連結パイプ132に向かう水の流れを許容してオーバーヘッドシャワー機構130が使用可能な状態となる。このとき、釦部125から手を離して押圧を止めても切換機構120から連結パイプ132に向かう水の圧力によって圧縮コイルばね123が圧縮された状態のままとされる。この状態で混合水栓110を操作して調温水管114に調温水が流れるのを止めると圧縮コイルばね123が自動的に復帰して
図8にしめす通常時の状態に戻る。
【0006】
ここで、上記の通常時の状態でハンドシャワー機構140を使用し釦部125を操作して連結パイプ142に調温水が流れるのを止めると連結パイプ142の中の水が慣性によってシャワーヘッド部141から流れ出て、逆止弁151の働きで連結パイプ142の中が減圧された状態となることがある。すると、切換機構120の弁体122が圧縮コイルばね123を圧縮して浴室Rと反対の方向に移動したままとなり、この状態で混合水栓110を操作すると、調温されない状態の冷たすぎる又は熱すぎる水がオーバーヘッドシャワー機構130のシャワーヘッド部131から使用者に向けて吐出されるおそれがあるという問題があった。なお、ハンドシャワー機構140の連結パイプ142の中途部分に逆止弁機構150を配設するのは、ハンドシャワー機構140の使用後にシャワーヘッド部141が浴槽内の水の中に浸かっていたりすると浴槽内の水が連結パイプ142の中に侵入し内部が汚染されることを回避するためである。
【0007】
このような問題に鑑み本発明の課題は、オーバーヘッドシャワー機構とハンドシャワー機構を備えた浴室内固定型シャワー装置において、簡潔な構造でオーバーヘッドシャワー機構からの調温されていない水の吐出を抑制した浴室内固定型シャワー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1発明は、浴室内固定型シャワー装置であって、オーバーヘッドシャワー機構と、ハンドシャワー機構と、外部から供給された湯と水を混合して温度と量が調節された調温水を吐出する混合水栓と、該混合水栓から供給された調温水を前記オーバーヘッドシャワー機構又は前記ハンドシャワー機構に選択的に供給する切換機構と、を備えており、該切換機構は内部に配置された一方向に付勢された弁体と、該弁体を外部から付勢方向とは逆の方向に移動させることができる押圧手段と、を備えており、前記弁体は、前記押圧手段が操作されない第1状態において、前記オーバーヘッドシャワー機構への前記調温水の供給を止めて前記ハンドシャワー機構への前記調温水の供給を許容し、前記押圧手段が操作された第2状態において、前記ハンドシャワー機構への前記調温水の供給を止め前記オーバーヘッドシャワー機構への前記調温水の供給を許容するとともにこの状態を維持し、前記混合水栓から前記切換機構への前記調温水の供給が止められると前記第1状態に復帰するように構成されており、前記ハンドシャワー機構はシャワーヘッドと前記切換機構との間の水路の途中に逆止弁機構を備えており、該逆止弁機構は、前記切換機構から前記シャワーヘッドへの前記調温水の流れを許容するとともに前記シャワーヘッドから前記切換機構への前記調温水の流れを止める逆止弁と、該逆止弁と前記切換機構との間の水路が減圧状態となったときに開いて外部の空気を流入させて減圧状態を解消する減圧解消弁機構と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
第1発明によれば、オーバーヘッドシャワー機構を使用する第1状態において、ハンドシャワー機構のシャワーヘッドから切換機構とシャワーヘッドとの間の水路に溜まった水が外部に流れ出ても減圧解消弁機構の働きにより逆止弁と切換機構との間の水路が減圧状態になるのが抑制される。これによって、ハンドシャワー機構の使用後にシャワーヘッドが浴槽内の水の中に浸かっていたりしても浴槽内の水がハンドシャワー機構の中に侵入し内部が汚染されることを回避することができる。また、切換機構の弁体は押圧手段が操作されていないとき常に第1状態にあるので、調温されない状態の冷たすぎる又は熱すぎる水がオーバーヘッドシャワー機構から使用者に向けて吐出されるおそれがあるという問題が回避できる。
【0010】
本発明の第2発明は、上記第1発明において、前記逆止弁機構は、前記ハンドシャワー機構の前記シャワーヘッドを掛止する掛止部材の中に配置されており、前記減圧解消弁の外部への開口部は前記掛止部材に前記シャワーヘッドを掛止したとき前記シャワーヘッドによって覆われて外部から視認できない位置に配置されていることを特徴とする。
【0011】
第2発明によれば、掛止部材の中に逆止弁機構を設けても減圧解消弁機構の外部への開口部はシャワーヘッドを掛止したときシャワーヘッドによって覆われて外部から視認できない位置に配置されているので外観の悪化を抑制できる。
【0012】
本発明の第3発明は、上記第1発明において、前記逆止弁機構は、前記ハンドシャワー機構の前記シャワーヘッドを掛止する掛止部材の中に配置されており、前記減圧解消弁機構の外部への開口部は下方に向かって開口していることを特徴とする。
【0013】
第3発明によれば、掛止部材の中に逆止弁機構を設けても減圧解消弁機構の外部への開口部は下方に向かって開口しているので外観の悪化を抑制できる。
【0014】
本発明の第4発明は、上記第1発明ないし上記第3発明のいずれかにおいて、前記浴室内固定型シャワー装置は、前記混合水栓と前記切換機構が浴室内の壁に埋め込まれて配設されていることを特徴とする。
【0015】
第4発明によれば、浴室内固定型シャワー装置は、配管を壁の裏側に配置して浴室内に露出する部分を少なくすることができるので外観が良い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態である浴室内固定型シャワー装置を側面から見た模式図である。
【
図2】
図1のII部分を拡大して示す図である。第1状態である場合を示す。
【
図3】
図2において第2状態にした場合を示す図である。
【
図7】第2実施形態を示す図である。
図4に対応する図である。
【
図8】従来の浴室内固定型シャワー装置を側面から見た模式図である。切換機構が第1状態である場合を示す。
【
図9】従来の浴室内固定型シャワー装置を側面から見た模式図である。切換機構が第2状態である場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の第1実施形態に係る浴室内固定型シャワー装置1の構成について、
図1~
図6を用いて説明する。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る浴室内固定型シャワー装置1は、浴室等の壁面Wに埋設状態で設置される、いわゆる壁面固定タイプのシャワー装置として構成されている。浴室内固定型シャワー装置1は、浴室Rの壁面Wに取付けられた混合水栓10と、切換機構20と、オーバーヘッドシャワー機構30と、ハンドシャワー機構40と、を備えている。
【0019】
図1に示すように、混合水栓10は、湯供給管12から供給された湯と水供給管13から供給された水とを混合して調温水を作り調温水管14に供給する機能を有する。調温水の温度と量の調節はレバー11を操作することにより行う。混合水栓10は、一つのレバー11の操作で調温水の温度と量の調節する、いわゆるシングルレバー混合水栓であり、壁面Wに埋設固定されている。
【0020】
図1~
図3に示すように、切換機構20は、調温水管14から供給された調温水をオーバーヘッドシャワー機構30又はハンドシャワー機構40に選択的に供給する機能を有する。切換機構20は、ケーシング21と、ケーシング21の内部に配置された弁体22と、弁体22を浴室Rの方向に向かって付勢する圧縮コイルばね23と、弁体22を圧縮コイルばね23の付勢方向とは逆の方向に押圧する押圧手段24と、を備えている。ケーシング21は、壁面Wに埋設固定されている。ケーシング21の内部には、浴室Rの方向に開口する第1開口21aと、浴室Rとは反対の方向に開口する第2開口21bと、を有する第1空間部S1が形成されている。また、ケーシング21の内部には、浴室Rとは反対の方向に開口する第3開口21cと、上方に向けて開口する第4開口21dと、を有する第2空間部S2が形成されている。さらに、ケーシング21の内部には、第1開口21aと、第3開口21cと、下方に向けて開口した第5開口21eと、を有する第3空間部S3が形成されている。第1空間部S1は、第2開口21bにおいてハンドシャワー機構40の連結パイプ42に水密状態を保って連結されている。第2空間部S2は、第4開口21dにおいてオーバーヘッドシャワー機構30の連結パイプ32に水密状態を保って連結されている。第3空間部S3は、第5開口21eにおいて調温水管14に水密状態を保って連結されている。弁体22は、水平方向に移動可能に配置されており、その軸方向を水平方向とする圧縮コイルばね23がケーシング21と弁体22との間に配置されることによって浴室Rの方向に向かって付勢されている。弁体22の浴室Rの側には押圧手段24が取付けられている。押圧手段24は、水平方向に延びるシャフト部24aと、シャフト部24aの浴室Rの側の端部に取付けられた釦部24bと、を有する。シャフト部24aはケーシング21に対して水密状態を保って水平方向に移動可能に取付けられている。これによって、押圧手段24の釦部24bを浴室Rとは反対の方向に押圧すると弁体22は付勢力に抗して浴室Rとは反対の方向に移動する。
【0021】
図2に示すように、通常時においては、弁体22は圧縮コイルばね23の付勢力によって浴室Rの方向に向かって押圧され第3開口21cを塞ぐ状態である第1状態にある。この第1状態においては、調温水管14から供給された調温水は第3空間部S3及び第1空間部S1を通ってハンドシャワー機構40の連結パイプ42に供給される。この状態から押圧手段24の釦部24bを圧縮コイルばね23の付勢力に抗して浴室Rとは反対の方向に押し込むと圧縮コイルばね23は縮んで
図3に示す第2状態となる。第2状態においては、弁体22は第1開口21aを塞いだ状態となり、調温水管14から供給された調温水は第3空間部S3及び第2空間部S2を通ってオーバーヘッドシャワー機構30の連結パイプ32に供給される。この状態で押圧手段24の釦部24bから手を離しても弁体22は流れる調温水の水圧によって第1開口21aを塞いだ状態を維持する。ここで、混合水栓10を操作して調温水管14への調温水の供給を止めると調温水の水圧も低下して圧縮コイルばね23の付勢力によって弁体22は浴室Rの方向に移動し第1状態に復帰する。
【0022】
図1に示すように、オーバーヘッドシャワー機構30は、使用者に対し上方から調温水を吐出するシャワーヘッド部31と、シャワーヘッド部31と切換機構20の第2空間部S2とを連結する連結パイプ32と、を備えている。
【0023】
図1及び
図4~
図6に示すように、ハンドシャワー機構40は、使用者が手で握って吐水方向を操作するシャワーヘッド部41と、シャワーヘッド部41と切換機構20の第1空間部S1とを連結する連結パイプ42と、連結パイプ42の中途部分に配置されたハンガー部50と、を備えている。連結パイプ42は、切換機構20とハンガー部50とを水密状態で連結する壁奥パイプ部42aと、ハンガー部50とシャワーヘッド部41とを水密状態で連結する可撓性のあるホース部42bと、を備えている。ハンガー部50は、内部に調温水の水路が設けられるとともに、ハンドシャワー機構40を使用しないときにシャワーヘッド部41を掛止しておけるようになっている。ここで、シャワーヘッド部41が、特許請求の範囲の「シャワーヘッド」に相当し、ハンガー部50が、特許請求の範囲の「逆止弁機構、掛止部材」に相当する。
【0024】
ハンガー部50は、ケーシング51と、ケーシング51の内側に設けられた空間部52に水密状態を保って連結される第1連結部材53及び第2連結部材54と、空間部52が減圧状態となったときに外部から空気を導入して減圧状態を解除する減圧解消弁機構55と、を有している。
図6によく示されるように、ケーシング51の浴室Rの端部近傍には上面視で略U字状に切り欠かれた、シャワーヘッド部41の掛止部51aが設けられている。掛止部51aには樹脂製のカバー部材51bが取付けられて金属同士が接触してシャワーヘッド部41を傷つけないようにされている。ケーシング51の浴室Rの端部には蓋部材51cが取付けられている。蓋部材51cとカバー部材51bを取り外した状態で、水平方向に貫通する貫通孔51dを通して六角レンチを差し入れて後述する蓋部材55cの脱着が可能とされている。
【0025】
空間部52は、軸方向が水平方向に延びる略円柱状をしている。そして、ケーシング51における浴室Rと反対側に略円筒状の第1連結部材53が取付けられ、下側に略円筒状の第2連結部材54が取付けられている。第1連結部材53の浴室Rと反対側の開口端部53aには壁奥パイプ部42aの下側の端部が水密状態を保って連結されており、これによって壁奥パイプ部42aは空間部52と連通している。第2連結部材54の下側の開口端部54aにはホース部42bのシャワーヘッド部41が取付けられていない端部が水密状態を保って連結されており、これによってホース部42bは空間部52と連通している。第2連結部材54の内部には、逆止弁54bが圧縮コイルばね54cによって上方に向けて付勢された状態で配設されている。逆止弁54bは、空間部52からホース部42bへの調温水の流れを許容し、その逆のホース部42bから空間部52への水の流れを止める働きをする。空間部52の浴室Rの方向の端部側には減圧解消弁機構55が配設されている。減圧解消弁機構55は、弁部材55aと、圧縮コイルばね55bと、蓋部材55cと、を有する。弁部材55aと圧縮コイルばね55bは、それぞれ逆止弁54bと圧縮コイルばね54cと同一構造のものである。蓋部材55cは、円盤状の部材で中央部に水平方向に貫通する横断面が六角形の孔55c1があいている。この孔55c1に六角レンチを差し入れて回転させることによりケーシング51に対する脱着が可能とされている。減圧解消弁機構55は、空間部52から孔55c1の方向への水の流れを止めるとともに、空間部52が減圧状態となったとき孔55c1から外部の空気を取り入れて減圧状態を解消する働きをする。孔55c1はカバー部材51bにより覆われて外部から視認できないようになっている。
【0026】
浴室内固定型シャワー装置1の作動と作用効果について説明する。
図1及び
図2に示すように、通常時である第1状態において、切換機構20は、弁体22は圧縮コイルばね23の付勢力によって浴室Rの方向に向かって押圧され第3開口21cを塞ぐ状態にある。この第1状態においては、調温水管14から供給された調温水は第3空間部S3及び第1空間部S1を通ってハンドシャワー機構40の連結パイプ42、ハンガー部50、ホース部42bを通ってシャワーヘッド部41に供給される。このとき、ハンガー部50の内部に配設された逆止弁54bは圧縮コイルばね54cの付勢力に抗して下方に移動し連結パイプ42からホース部42bへの調温水の流れを許容している。また、減圧解消弁機構55は、弁
部材55aが圧縮コイルばね55bの付勢力によって浴室Rの方向に押圧され空間部52から孔55c1の方向への水の流れを止めている。これによって、切換機構20からハンドシャワー機構40に供給された調温水はすべてシャワーヘッド部41から外部に吐出される。この状態で、切換機構20において、押圧手段24の釦部24bを浴室Rとは反対の方向に押圧すると弁体22は付勢力に抗して浴室Rとは反対の方向に移動して第1開口21aを閉じるとともに、第3空間部S3及び第2空間部S2を連通させた状態である第2状態となる。この状態において、調温水管14から供給された調温水は第3空間部S3及び第2空間部S2を通ってオーバーヘッドシャワー機構30の連結パイプ32に供給されシャワーヘッド部31から吐出される。このとき、ハンドシャワー機構40においては、切換機構20からシャワーヘッド部41に向けて流れていた調温水が慣性により流れ続けることにより連結パイプ42、ハンガー部50の空間部52を減圧状態とする。すると、ハンガー部50の減圧解消弁機構55が働き、弁
部材55aが圧縮コイルばね55bの付勢力に抗して浴室Rと反対側に移動することにより孔55c1から外部の空気を取り入れて連結パイプ42、ハンガー部50の空間部52の減圧状態を解消する。仮に、この減圧解消弁機構55が無かったとすると、連結パイプ42、ハンガー部50の空間部52が減圧状態のままとなることになり、その状態でシャワーヘッド部41が浴槽内の水に浸けられたりすると連結パイプ42、ハンガー部50の空間部52、ホース部42bに浴槽内の水が逆流するおそれが生じる。浴室内固定型シャワー装置1においては、ハンガー部50に減圧解消弁機構55が配設されているので、この問題の発生を回避することができる。また、切換機構20の弁体22は押圧手段24が操作されていないとき、連結パイプ42の減圧状態によって第1開口21aを閉じた状態に維持されることなく、常に圧縮コイルばね23の付勢力によって第1状態にある。これによって、調温されない状態の冷たすぎる又は熱すぎる水がオーバーヘッドシャワー機構30のシャワーヘッド部31から使用者に向けて吐出されるおそれがあるという問題が回避できる。
【0027】
また、減圧解消弁機構55の貫通孔51dは、シャワーヘッド部41を掛止するハンガー部50の掛止部51aの中に配置されているとともに、樹脂製のカバー部材51bが取付けられているので、外部から視認できず外観の悪化を抑制することができる。さらに、浴室内固定型シャワー装置1は、混合水栓10と切換機構20が浴室R内の壁面Wに埋め込まれて配設されており、配管を壁面Wの裏側に配置して浴室R内に露出する部分を少なくすることができるので外観が良い。
【0028】
図7には本発明の第2実施形態に係る浴室内固定型シャワー装置1Aのハンガー部60が示されている。
図7は、第1実施形態における
図4に対応する図である。浴室内固定型シャワー装置1Aのハンガー部60以外の構成については浴室内固定型シャワー装置1と同一である。ハンガー部60において、ハンガー部50と同一の構成部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0029】
ハンガー部60は、ケーシング61と、ケーシング61の内側に設けられた空間部62に水密状態を保って連結される第1連結部材63及び第2連結部材64と、を有している。空間部62は、軸方向がクランク状に折れ曲がった略円柱状をしている。そして、ケーシング61における浴室Rと反対側に略円筒状の第1連結部材63が取付けられ、下側に略円筒状の第2連結部材64が取付けられている。第1連結部材63の浴室Rと反対側の開口端部63aには壁奥パイプ部42aの下側の端部が水密状態を保って連結されており、これによって壁奥パイプ部42aは空間部62と連通している。第2連結部材64の下側の開口端部64b1にはホース部42bのシャワーヘッド部41が取付けられていない端部が水密状態を保って連結されており、これによってホース部42bは空間部62と連通している。第2連結部材64は、上側の大径部64aと、下側の小径部64bと、を有する。大径部64aの内部の円柱状の空間部64a1は、空間部62と連通しており、空間部64a1は、底面部64a2の中央部に設けられた上下に貫通する連通孔64a3を通じて小径部64bの内部の円柱状の空間部64b2と連通している。空間部64a1と空間部64b2は同一軸状に配置されている。大径部64aの空間部64a1の中には、空間部64a1と同一軸状に上から圧縮コイルばね64a4、受板部材64a5、シール部材64a6が配置されている。受板部材64a5は、中央部に上下に貫通する円形の貫通孔64a51が設けられた円板の外周縁部に上方に向かって延びる外周壁部64a52が設けられた孔の開いた器状の部材である。シール部材64a6はゴム製の環状の部材で、下面側に環状の溝部64a61が設けられている。底面部64a2における小径部64bより径方向外側に複数の上下に貫通する小孔64a21が設けられている。底面部64a2の上に、シール部材64a6が複数の小孔64a21が溝部64a61の中に開口するように載置され、その上に受板部材64a5、圧縮コイルばね64a4の順に載置される。これによって、シール部材64a6は底面部64a2に対して押付けられ、外気が複数の小孔64a21から空間部64a1の中に入らないようになっている。小径部64bは、第1実施形態における第2連結部材54と同じ構造をしており、その内部の空間部64b2には、逆止弁64b3が圧縮コイルばね64b4によって上方に向けて付勢された状態で配設されている。逆止弁64b3は、空間部62及び空間部64a1からホース部42bへの調温水の流れを許容し、その逆のホース部42bから空間部62及び空間部64a1への水の流れを止める働きをする。本実施形態と第1実施形態との違いは、第1実施形態における減圧解消弁機構55の機能を第2連結部材64の大径部64aが果たす点である。すなわち、大径部64aは通常時である第1状態において、ハンガー部60の空間部62に供給された調温水は、空間部64a1を通って逆止弁64b3を圧縮コイルばね64b4の付勢力に抗して下方に移動させ空間部64b2から連結パイプ42、ホース部42bへ流れる。ここで、空間部62が減圧状態となると、複数の小孔64a21から外気が導入されて減圧状態が解消される。複数の小孔64a21は、ハンガー部60の下側に開口しており外部から視認できにくくされている。ここで、圧縮コイルばね64a4と受板部材64a5とシール部材64a6が、特許請求の範囲の「減圧解消弁機構」に相当する。
【0030】
浴室内固定型シャワー装置1Aの作動と作用効果について説明する。
図1及び
図2に示すように、通常時である第1状態において、切換機構20は、弁体22が圧縮コイルばね23の付勢力によって浴室Rの方向に向かって押圧され第3開口21cを塞ぐ状態にある。この第1状態においては、調温水管14から供給された調温水は第3空間部S3及び第1空間部S1を通ってハンドシャワー機構40の連結パイプ42、ハンガー部60、ホース部42bを通ってシャワーヘッド部41に供給される。このとき、ハンガー部60の内部に配設された逆止弁64b3は圧縮コイルばね64b4の付勢力に抗して下方に移動し連結パイプ42からホース部42bへの調温水の流れを許容している。また、第2連結部材64の大径部64aは、シール部材64a6が圧縮コイルばね64a4の付勢力によって底面部64a2に押付けられた状態で調温水の空間部62から空間部64b2の流れを許容している。これによって、切換機構20からハンドシャワー機構40に供給された調温水はすべてシャワーヘッド部41から外部に吐出される。この状態で、切換機構20において、押圧手段24の釦部24bを浴室Rとは逆の方向に押圧すると弁体22は付勢力に抗して浴室Rとは反対の方向に移動して第1開口21aを閉じるとともに、第3空間部S3及び第2空間部S2を連通させた状態である第2状態となる。この状態において、調温水管14から供給された調温水は第3空間部S3及び第2空間部S2を通ってオーバーヘッドシャワー機構30の連結パイプ32に供給されシャワーヘッド部31から吐出される。このとき、ハンドシャワー機構40においては、切換機構20からシャワーヘッド部41に向けて流れていた調温水が慣性により流れ続けることにより連結パイプ42、ハンガー部60の空間部62を減圧状態とする。すると、ハンガー部60の大径部64aが働き、シール部材64a6が圧縮コイルばね64a4の付勢力にして上方に移動することにより複数の小孔64a21から外部の空気を取り入れて連結パイプ42、ハンガー部60の空間部62の減圧状態を解消する。仮に、この大径部64aが無かったとすると、連結パイプ42、ハンガー部60の空間部62が減圧状態のままとなることになり、その状態でシャワーヘッド部41が浴槽内の水に浸けられたりすると連結パイプ42、ハンガー部60の空間部62、ホース部42bに浴槽内の水が逆流するおそれが生じる。浴室内固定型シャワー装置1Aにおいては、ハンガー部60に大径部64aが配設されているので、この問題の発生を回避することができる。また、切換機構20の弁体22は押圧手段24が操作されていないとき、連結パイプ42の減圧状態によって第1開口21aを閉じた状態に維持されることなく、常に圧縮コイルばね23の付勢力によって第1状態にある。これによって、調温されない状態の冷たすぎる又は熱すぎる水がオーバーヘッドシャワー機構30のシャワーヘッド部31から使用者に向けて吐出されるおそれがあるという問題が回避できる。また、大径部64aの複数の小孔64a21は、ハンガー部60の下側に開口しているので、外部から視認されにくく外観の悪化を抑制することができる。さらに、浴室内固定型シャワー装置1Aは、混合水栓10と切換機構20が浴室R内の壁面Wに埋め込まれて配設されており、浴室R内に露出する部分が少ないので外観が良い。
【0031】
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、次のようなものが挙げられる。
【0032】
1.上記実施形態においては、混合水栓10は、一つのレバー11の操作で調温水の温度と量の調節する、いわゆるシングルレバー混合水栓とした。しかし、これに限らず調温水の温度と量の調節をそれぞれ別々に行うタイプの混合水栓とすることもできる。
【0033】
2.上記実施形態においては、オーバーヘッドシャワー機構30の連結パイプ32の内部には逆止弁機構を設けなかったが、必要に応じて配設してもよい。
【符号の説明】
【0034】
1、1A 浴室内固定型シャワー装置
10 混合水栓
20 切換機構
21 ケーシング
22 弁体
24 押圧手段
30 オーバーヘッドシャワー機構
40 ハンドシャワー機構
41 シャワーヘッド部(シャワーヘッド)
50 ハンガー部(逆止弁機構、掛止部材)
51 ケーシング
54b 逆止弁
55 減圧解消弁機構
55a 弁部材
55b 圧縮コイルばね
55c 蓋部材
60 ハンガー部(逆止弁機構、掛止部材)
61 ケーシング
64a21 小孔
64a4 圧縮コイルばね(減圧解消弁機構)
64a5 受板部材(減圧解消弁機構)
64a6 シール部材(減圧解消弁機構)
64b3 逆止弁
R 浴室
W 壁面