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特許7543195画像位置合わせ装置、方法およびプログラム、並びに位置特定装置、方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】画像位置合わせ装置、方法およびプログラム、並びに位置特定装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/46 20240101AFI20240826BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20240826BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
A61B6/46 536P
A61B6/03 560G
A61B6/03 560B
A61B6/46 536Q
A61B5/055 380
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021050706
(22)【出願日】2021-03-24
(65)【公開番号】P2022148868
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】512052971
【氏名又は名称】富士フイルム医療ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 研一
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-171687(JP,A)
【文献】特開2020-199163(JP,A)
【文献】特開2017-196300(JP,A)
【文献】特開2008-043524(JP,A)
【文献】特開平08-289887(JP,A)
【文献】特開2009-000369(JP,A)
【文献】特開2011-072728(JP,A)
【文献】特開2017-158781(JP,A)
【文献】特開2009-232981(JP,A)
【文献】特開2015-171437(JP,A)
【文献】特開2014-204907(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0327662(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 - 5/01 、 5/055、
6/00 - 6/58 、
G06T 7/00 - 7/90 、
G06V10/00 -20/90 、30/418、40/16 、
40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
それぞれが複数のスライス画像からなる複数の3次元画像を取得し、
入力されたスライス画像に含まれる部位の解剖学的位置を表すスコアを導出する、構築のされ方が異なる複数の学習済みニューラルネットワークを前記複数の3次元画像に対してそれぞれ用いることにより、前記複数の3次元画像のそれぞれのうちの少なくとも1つのスライス画像に含まれる部位の解剖学的位置を表す複数のスコアを出力させ、
前記複数のスコアをそれぞれ規格化することにより、前記複数の3次元画像のそれぞれのうちの少なくとも1つのスライス画像に含まれる部位の解剖学的位置を表す複数の規格化スコアを導出し、
導出された前記複数の規格化スコアを用いて、前記複数の3次元画像のうちの一の3次元画像に含まれるスライス画像と、前記複数の3次元画像のうちの他の3次元画像に含まれるスライス画像との位置合わせを行う画像位置合わせ装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記複数の3次元画像のうちの少なくとも前記他の3次元画像については、前記他の3次元画像と対応づけて保存された規格化スコアを用いる請求項1記載の画像位置合わせ装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記複数の3次元画像間において位置合わせされたスライス画像をディスプレイに表示する請求項1または2に記載の画像位置合わせ装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記複数の3次元画像に含まれる被写体を模したアイコンを表示し、前記規格化スコアに基づいて、前記表示されたスライス画像により表されるスライス面を特定する情報を前記アイコンに表示する請求項に記載の画像位置合わせ装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記位置合わせを行った後、前記他の3次元画像に含まれる位置合わせされたスライス画像に隣接する1以上のスライス画像と、前記一の3次元画像に含まれるスライス画像との評価値に基づくさらなる位置合わせを行う請求項1からのいずれか1項に記載の画像位置合わせ装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記複数の3次元画像を表示するに際し、前記一の3次元画像に含まれる表示されるスライス画像の規格化スコアが、前記他の3次元画像の規格化スコアの範囲に含まれない場合に、警告を行う請求項1からのいずれか1項に記載の画像位置合わせ装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、位置合わせがなされた前記一の3次元画像と前記他の3次元画像とのフュージョン画像を導出する請求項1からのいずれか1項に記載の画像位置合わせ装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、位置合わせがなされた前記一の3次元画像と前記他の3次元画像との差分画像を導出する請求項1からのいずれか1項に記載の画像位置合わせ装置。
【請求項9】
それぞれが複数のスライス画像からなる複数の3次元画像を取得し、
入力されたスライス画像に含まれる部位の解剖学的位置を表すスコアを導出する、構築のされ方が異なる複数の学習済みニューラルネットワークを前記複数の3次元画像に対してそれぞれ用いることにより、前記複数の3次元画像のそれぞれのうちの少なくとも1つのスライス画像に含まれる部位の解剖学的位置を表す複数のスコアを出力させ、
前記複数のスコアをそれぞれ規格化することにより、前記複数の3次元画像のそれぞれのうちの少なくとも1つのスライス画像に含まれる部位の解剖学的位置を表す複数の規格化スコアを導出し、
導出された前記複数の規格化スコアを用いて、前記複数の3次元画像のうちの一の3次元画像に含まれるスライス画像と、前記複数の3次元画像のうちの他の3次元画像に含まれるスライス画像との位置合わせを行う画像位置合わせ方法。
【請求項10】
それぞれが複数のスライス画像からなる複数の3次元画像を取得する手順と、
入力されたスライス画像に含まれる部位の解剖学的位置を表すスコアを導出する、構築のされ方が異なる複数の学習済みニューラルネットワークを前記複数の3次元画像に対してそれぞれ用いることにより、前記複数の3次元画像のそれぞれのうちの少なくとも1つのスライス画像に含まれる部位の解剖学的位置を表す複数のスコアを出力させる手順と、
前記複数のスコアをそれぞれ規格化することにより、前記複数の3次元画像のそれぞれのうちの少なくとも1つのスライス画像に含まれる部位の解剖学的位置を表す複数の規格化スコアを導出する手順と、
導出された前記複数の規格化スコアを用いて、前記複数の3次元画像のうちの一の3次元画像に含まれるスライス画像と、前記複数の3次元画像のうちの他の3次元画像に含まれるスライス画像との位置合わせを行う手順とをコンピュータに実行させる画像位置合わせプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像位置合わせ装置、方法およびプログラム、並びに位置特定装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CT(Computed Tomography)装置およびMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置等の医療機器の進歩により、より質の高い高解像度の医用画像を用いての画像診断が可能となってきている。とくに、CT画像およびMRI画像等の3次元画像を用いた画像診断により、病変の領域を精度よく特定することができるため、特定した結果に基づいて適切な治療が行われるようになってきている。
【0003】
また、同一の患者について、撮影時期が異なる複数の3次元画像を同時に表示して経過観察を行う場合がある。このような場合、複数の3次元画像について対応する解剖学的位置のスライス画像を表示することにより、複数の3次元画像の比較読影を容易に行うことができる。このため、複数の3次元画像間においてスライス画像を位置合わせすることが考えられる。位置合わせの手法としては、剛体位置合わせまたは非剛体位置合わせ等の手法が既知である。
【0004】
一方で、近年、UBR(Unsupervised Bodypart Regression)なる手法が提案されている(非特許文献1参照)。UBRは深層学習(ディープラーニング)に基づく手法であり、人体の多数のスライス画像を元に、人体のスライス画像のパターンが現れる順序をニューラルネットワークに学習させる手法である。このようにUBRの手法を用いて学習を行うことにより構築された学習済みニューラルネットワークへ1つのスライス画像を入力すると、そのスライス画像のスコアが出力される。スコアは断層像の走査方向に沿った解剖学的な位置を表す連続で線形なスカラー値である。例えば、頭頂のスコアは-15.0程度、心臓上部のスコアは-10.0程度、肝臓のスコアは-5.0程度等である。
【0005】
このようなUBRの手法により構築された学習済みニューラルネットワークに、複数の3次元画像において同一の解剖学的位置のスライス画像を入力すると、同一のスコアが出力されることとなる。したがって、複数の3次元画像間において、スコアが同一となるスライス画像を特定することにより、同一の解剖学的位置となるスライス画像を容易に対応づけることができる。また、UBRの手法は、複数のスライス画像からなる3次元画像さえ準備すれば、頭、胸部、腹部および脚といった部位のラベルづけを行うことなくニューラルネットワークの学習を行わせることが可能であるという利点がある。このため、人手によって多量の教師データを準備する必要無く、スライス画像が人体のいずれの解剖学的位置に対応するかを特定することが可能となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Ke Yan, Le Lu, Ronald M. Summers, “Unsupervised body part regression via spatially self-ordering convolutional neural networks”, 2018 IEEE 15th International Symposium on Biomedical Imaging (ISBI 2018), [https://arxiv.org/pdf/1707.03891.pdf]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、UBRのスコアは人体の解剖学的位置を表す絶対的な値ではなく、UBRのネットワークの構築のされ方に応じてネットワーク毎に相対的な値となると考えられる。例えば、教師データを取得したモダリティの種類、教師データの種類、学習時における損失関数の形式、および学習の収束度等の条件が異なる結果、構築されたUBRのネットワークが異なると、同じ解剖学的位置となるスライス画像を入力しても、異なるスコアが出力される場合がある。このように構築されたUBRのネットワークに応じてスコアが異なると、スコアに基づいてスライス画像により表される部位の位置を特定したり、異なる3次元画像間におけるスライス画像の位置合わせを行ったりすることができなくなる。
【0008】
本開示は上記事情に鑑みなされたものであり、UBRのようにスライス画像に含まれる部位の解剖学的位置を表すスコアを導出する学習済みニューラルネットワークを用いることにより、スライス画像に含まれる部位の解剖学的位置を特定する際に、学習済みニューラルネットワークの構築のされ方が異なるものであっても、導出されるスコアにより部位を特定したり、特定された部位に基づく位置合わせを行ったりできるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示による画像位置合わせ装置は、少なくとも1つのプロセッサを備え、
プロセッサは、それぞれが複数のスライス画像からなる複数の3次元画像を取得し、
複数の3次元画像のそれぞれのうちの少なくとも1つのスライス画像に含まれる部位の解剖学的位置を表す規格化スコアであって、構築のされ方が異なる複数の学習済みニューラルネットワークを複数の3次元画像に対してそれぞれ用いることにより導出された複数の規格化スコアを用いて、複数の3次元画像のうちの一の3次元画像に含まれるスライス画像と、複数の3次元画像のうちの他の3次元画像に含まれるスライス画像との位置合わせを行う。
【0010】
なお、本開示による画像位置合わせ装置においては、学習済みニューラルネットワークは、入力されたスライス画像に含まれる部位の解剖学的位置を表すスコアを導出し、
プロセッサは、複数の学習済みニューラルネットワークを複数の3次元画像に対してそれぞれ用いることにより、複数の3次元画像のそれぞれのうちの少なくとも1つのスライス画像に含まれる部位の解剖学的位置を表す複数のスコアを出力させ、
【0011】
複数のスコアをそれぞれ規格化することにより複数の規格化スコアを導出するものであってもよい。
【0012】
また、本開示による画像位置合わせ装置においては、プロセッサは、複数の3次元画像のうちの少なくとも他の3次元画像については、他の3次元画像と対応づけて保存された規格化スコアを用いるものであってもよい。
【0013】
また、本開示による画像位置合わせ装置においては、プロセッサは、複数の3次元画像間において位置合わせされたスライス画像をディスプレイに表示するものであってもよい。
【0014】
また、本開示による画像位置合わせ装置においては、プロセッサは、複数の3次元画像に含まれる被写体を模したアイコンを表示し、規格化スコアに基づいて、表示されたスライス画像により表されるスライス面を特定する情報をアイコンに表示するものであってもよい。
【0015】
また、本開示による画像位置合わせ装置においては、プロセッサは、位置合わせを行った後、他の3次元画像に含まれる位置合わせされたスライス画像に隣接する1以上のスライス画像と、一の3次元画像に含まれるスライス画像との評価値に基づくさらなる位置合わせを行うものであってもよい。
【0016】
また、本開示による画像位置合わせ装置においては、プロセッサは複数の3次元画像を表示するに際し、一の3次元画像に含まれる表示されるスライス画像の規格化スコアが、他の3次元画像の規格化スコアの範囲に含まれない場合に、警告を行うものであってもよい。
【0017】
また、本開示による画像位置合わせ装置においては、プロセッサは、位置合わせがなされた一の3次元画像と他の3次元画像とのフュージョン画像を導出するものであってもよい。
【0018】
また、本開示による画像位置合わせ装置においては、プロセッサは、位置合わせがなされた一の3次元画像と他の3次元画像との差分画像を導出するものであってもよい。
【0019】
本開示による位置特定装置は、少なくとも1つのプロセッサを備え、
プロセッサは、複数のスライス画像からなる少なくとも1つの3次元画像を取得し、
入力されたスライス画像に含まれる部位の解剖学的位置を表すスコアを導出する学習済みニューラルネットワークを用いて、3次元画像のうちの少なくとも1つのスライス画像に含まれる部位の解剖学的位置を表す規格化スコアを導出する。
【0020】
本開示による画像位置合わせ方法は、それぞれが複数のスライス画像からなる複数の3次元画像を取得し、
複数の3次元画像のそれぞれのうちの少なくとも1つのスライス画像に含まれる部位の解剖学的位置を表す規格化スコアであって、構築のされ方が異なる複数の学習済みニューラルネットワークを複数の3次元画像に対してそれぞれ用いることにより導出された複数の規格化スコアを用いて、複数の3次元画像のうちの一の3次元画像に含まれるスライス画像と、複数の3次元画像のうちの他の3次元画像に含まれるスライス画像との位置合わせを行う。
【0021】
本開示による位置特定方法は、複数のスライス画像からなる少なくとも1つの3次元画像を取得し、
入力されたスライス画像に含まれる部位の解剖学的位置を表すスコアを導出する学習済みニューラルネットワークを用いて、3次元画像のうちの少なくとも1つのスライス画像に含まれる部位の解剖学的位置を表す規格化スコアを導出する。
【0022】
なお、本開示による画像位置合わせ方法および位置特定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして提供してもよい。
【発明の効果】
【0023】
本開示によれば、学習済みニューラルネットワークの構築のされ方が異なるものであっても、導出される規格化スコアにより部位を特定したり、特定した部位を用いた位置合わせに使用したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本開示の実施形態による画像位置合わせ装置を適用した医療情報システムの概略構成を示す図
図2】本実施形態による画像位置合わせ装置の概略構成を示す図
図3】本実施形態による画像位置合わせ装置の機能構成図
図4】UBRの手法によるニューラルネットワークの機械学習を模式的に示す図
図5】スライス番号とスコアとの関係を示す図
図6】スライス番号と規格化スコアとの関係を示す図
図7】スライス番号と規格化スコアとの関係を示す図
図8】3次元画像の表示画面を示す図
図9】本実施形態による画像位置合わせ装置において行われる処理を示すフローチャート
図10】警告の他の例を示す図
図11】本実施形態による位置特定装置の概略構成を示す図
図12】本実施形態による位置特定装置の機能構成図
図13】本実施形態による位置特定装置において行われる処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。まず、本実施形態による画像位置合わせ装置を適用した医療情報システム1の構成について説明する。図1は、医療情報システム1の概略構成を示す図である。図1に示す医療情報システム1は、公知のオーダリングシステムを用いた診療科の医師からの検査オーダに基づいて、被写体の検査対象部位の撮影、撮影により取得された医用画像の保管、読影医による医用画像の読影と読影レポートの作成、および依頼元の診療科の医師による読影レポートの閲覧と読影対象の医用画像の詳細観察とを行うためのシステムである。
【0026】
図1に示すように、医療情報システム1は、複数の撮影装置2、読影端末である複数の読影WS(WorkStation)3、診療WS4、画像サーバ5、画像データベース(以下、画像DB(DataBase)とする)6、レポートサーバ7およびレポートデータベース(以下レポートDBとする)8が、有線または無線のネットワーク10を介して互いに通信可能な状態で接続されて構成されている。なお、医療情報システム1の具体例としては、PACS(Picture Archiving and Communication Systems)が挙げられる。
【0027】
各機器は、医療情報システム1の構成要素として機能させるためのアプリケーションプログラムがインストールされたコンピュータである。アプリケーションプログラムは、ネットワーク10に接続されたサーバコンピュータの記憶装置、若しくはネットワークストレージに、外部からアクセス可能な状態で記憶され、要求に応じてコンピュータにダウンロードされ、インストールされる。または、DVD(Digital Versatile Disc)およびCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等の記録媒体に記録されて配布され、その記録媒体からコンピュータにインストールされる。
【0028】
撮影装置2は、被写体の診断対象となる部位を撮影することにより、診断対象部位を表す医用画像を生成する装置(モダリティ)である。具体的には、単純X線撮影装置、CT装置、MRI装置、およびPET(Positron Emission Tomography)装置等である。本実施形態においては、撮影装置2において、複数のスライス画像からなる3次元画像を医用画像として取得するものとする。撮影装置2により生成された医用画像は画像サーバ5に送信され、画像DB6に保存される。
【0029】
読影WS3は、例えば放射線科の読影医が、医用画像の読影および読影レポートの作成等に利用するコンピュータであり、本実施形態による画像位置合わせ装置を内包する。読影WS3では、画像サーバ5に対する医用画像の閲覧要求、画像サーバ5から受信した医用画像に対する各種画像処理、医用画像の表示、および医用画像に関する所見文の入力受け付け等が行われる。また、読影WS3では、医用画像の読影、読影結果に基づく読影レポートの作成、レポートサーバ7に対する読影レポートの登録要求と閲覧要求、およびレポートサーバ7から受信した読影レポートの表示が行われる。これらの処理は、読影WS3が各処理のためのソフトウェアプログラムを実行することにより行われる。
【0030】
診療WS4は、診療科の医師が、画像の詳細観察、読影レポートの閲覧、および電子カルテの作成等に利用するコンピュータであり、処理装置、ディスプレイ等の表示装置、並びにキーボードおよびマウス等の入力装置により構成される。診療WS4では、画像サーバ5に対する画像の閲覧要求、画像サーバ5から受信した画像の表示、レポートサーバ7に対する読影レポートの閲覧要求、およびレポートサーバ7から受信した読影レポートの表示が行われる。これらの処理は、診療WS4が各処理のためのソフトウェアプログラムを実行することにより行われる。
【0031】
画像サーバ5は、汎用のコンピュータにデータベース管理システム(DataBase Management System: DBMS)の機能を提供するソフトウェアプログラムがインストールされたものである。また、画像サーバ5は画像DB6が構成されるストレージを備えている。ストレージは、画像サーバ5とデータバスとによって接続されたハードディスク装置であってもよいし、ネットワーク10に接続されているNAS(Network Attached Storage)およびSAN(Storage Area Network)に接続されたディスク装置であってもよい。また、画像サーバ5は、撮影装置2からの医用画像の登録要求を受け付けると、その医用画像をデータベース用のフォーマットに整えて画像DB6に登録する。
【0032】
画像DB6には、撮影装置2において取得された医用画像の画像データと付帯情報とが登録される。付帯情報には、例えば、個々の医用画像を識別するための画像ID(identification)、被写体を識別するための患者ID、検査を識別するための検査ID、医用画像毎に割り振られるユニークなID(UID:unique identification)、医用画像が生成された検査日、検査時刻、医用画像を取得するための検査で使用された撮影装置の種類、患者氏名、年齢、性別等の患者情報、検査部位(撮影部位)、撮影情報(撮影プロトコル、撮影シーケンス、撮像手法、撮影条件、造影剤の使用等)、1回の検査で複数の医用画像を取得した場合のシリーズ番号あるいは採取番号等の情報が含まれる。また、本実施形態においては、画像DB6は、複数の患者についての複数の医用画像を保管して管理している。複数の医用画像は、同一患者についての撮影日時が異なる医用画像、または同一患者についての撮影装置(すなわちモダリティ)が異なる複数の医用画像も含む。例えば、画像DB6は、同一患者について撮影時期が異なるCT画像、並びに同一患者についてCT装置およびMRI装置により同時期に取得されたCT画像およびMRI画像を保管して管理している。
【0033】
また、画像サーバ5は、読影WS3および診療WS4からの閲覧要求をネットワーク10経由で受信すると、画像DB6に登録されている医用画像を検索し、検索された医用画像を要求元の読影WS3および診療WS4に送信する。なお、本実施形態においては、画像サーバ5には、後述するニューラルネットワークを学習するための多数の教師データが保存されている。画像サーバ5は、教師データの取得要求をネットワーク10経由で受信すると、教師データを要求元の読影WS3に送信する。
【0034】
レポートサーバ7には、汎用のコンピュータにデータベース管理システムの機能を提供するソフトウェアプログラムが組み込まれる。レポートサーバ7は、読影WS3からの読影レポートの登録要求を受け付けると、その読影レポートをデータベース用のフォーマットに整えてレポートDB8に登録する。
【0035】
レポートDB8には、読影医が読影WS3を用いて作成した読影レポートが登録される。読影レポートは、例えば、読影対象の医用画像、医用画像を識別する画像ID、読影を行った読影医を識別するための読影医ID、病変名、および病変の位置情報等を含んでいてもよい。
【0036】
また、レポートサーバ7は、読影WS3および診療WS4からの読影レポートの閲覧要求をネットワーク10経由で受信すると、レポートDB8に登録されている読影レポートを検索し、検索された読影レポートを要求元の読影WS3および診療WS4に送信する。
【0037】
ネットワーク10は、病院内の各種機器を接続する有線または無線のローカルエリアネットワークである。読影WS3が他の病院あるいは診療所に設置されている場合には、ネットワーク10は、各病院のローカルエリアネットワーク同士をインターネットまたは専用回線で接続した構成としてもよい。
【0038】
次いで、本開示の実施形態による画像位置合わせ装置について説明する。図2は、本実施形態による画像位置合わせ装置のハードウェア構成を説明する。図2に示すように、画像位置合わせ装置20は、CPU(Central Processing Unit)11、不揮発性のストレージ13、および一時記憶領域としてのメモリ16を含む。また、画像位置合わせ装置20は、液晶ディスプレイ等のディスプレイ14、キーボードとマウス等の入力デバイス15、およびネットワーク10に接続されるネットワークI/F(InterFace)17を含む。CPU11、ストレージ13、ディスプレイ14、入力デバイス15、メモリ16およびネットワークI/F17は、バス18に接続される。CPU11は、本開示におけるプロセッサの一例である。
【0039】
ストレージ13は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、およびフラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としてのストレージ13には、画像位置合わせプログラム12が記憶される。CPU11は、ストレージ13から画像位置合わせプログラム12を読み出してからメモリ16に展開し、展開した画像位置合わせプログラム12を実行する。
【0040】
次いで、本実施形態による画像位置合わせ装置の機能的な構成を説明する。図3は、本実施形態による画像位置合わせ装置の機能的な構成を示す図である。図3に示すように画像位置合わせ装置20は、画像取得部21、スコア導出部22、規格化部23、位置合わせ部24および表示制御部25を備える。そしてCPU11が画像位置合わせプログラム12を実行することにより、CPU11は、画像取得部21、スコア導出部22、規格化部23、位置合わせ部24および表示制御部25として機能する。
【0041】
画像取得部21は、操作者である読影医による入力デバイス15からの指示により、画像サーバ5から読影レポートを作成するための複数の3次元画像を取得する。本実施形態においては、同一被写体の同一部位を同時期に撮影することにより取得されたCT画像およびMRI画像を取得するものとする。CT画像およびMRI画像は、アキシャル断面の複数のスライス画像を含む3次元画像である。このため、本実施形態においては、CT画像およびMRI画像を区別しない場合には、単に3次元画像と称する場合があるものとする。CT画像およびMRI画像が、本開示の複数の3次元画像の一例であり、以降の説明においては、CT画像を第1の3次元画像G1、MRI画像を第2の3次元画像G2と称する。また、3次元画像の座標系は、被写体の足から頭に向かう方向をz方向、スライス面において被写体の左に向かう方向をx方向、スライス面において被写体の後に向かう方向をy方向とする。
【0042】
スコア導出部22は、学習済みニューラルネットワークを用いて、3次元画像のうちの少なくとも1つのスライス画像に含まれる部位の解剖学的位置を表すスコアを導出する。学習済みニューラルネットワークは、入力されたスライス画像に含まれる部位の解剖学的位置を表すスコアを導出するように機械学習がなされている。スコア導出部22は、構築のされ方が異なる2つの学習済みニューラルネットワーク22A,22Bを用いてスコアを導出する。すなわち、学習済みニューラルネットワーク22Aを用いて、第1の3次元画像G1のスライス画像からスコアを導出し、学習済みニューラルネットワーク22Bを用いて、第2の3次元画像G2のスライス画像からスコアを導出する。
【0043】
ここで、学習済みニューラルネットワークについて説明する。本実施形態においては、非特許文献1に記載されたUBR(Unsupervised Bodypart Regression)の手法を用いてニューラルネットワークを機械学習することにより学習済みニューラルネットワークが構築される。本実施形態においては、人体のアキシャル断面の複数のスライス画像を学習用データとして用いてニューラルネットワークを機械学習することにより、学習済みニューラルネットワークを構築する。本実施形態においては、ニューラルネットワークとして、多層ニューラルネットワークの1つである、畳み込みニューラルネットワーク(以下CNN(Convolutional Neural Network)を用いる。
【0044】
図4はUBRの手法によるニューラルネットワークの機械学習を模式的に示す図である。図4に示すように、学習されるニューラルネットワーク30は、入力層31、複数の中間層32および出力層33からなる。中間層は畳み込み層およびプーリング層(いずれも不図示)が交互に配置されてなる。ニューラルネットワーク30には、複数のスライス画像D1~Dnが入力され、各スライス画像に含まれる部位の解剖学的位置を表すスコアS1~Snが出力される。
【0045】
ニューラルネットワーク30は、人体の頭部から足に向かって線形に増加するスカラー値であるスコアS1~Snを出力するように、複数のスライス相互間の関連性を学習する。このために、学習の際には、スライス間の順序性を維持するための損失関数Lorderと、スライス間のスコアの線形性を維持するための損失関数Ldistとが導出される。
【0046】
損失関数Lorderは、隣接するスライス画像Dk,Dk+1について出力されたスコアSk、Sk+1の差に対してシグモイド関数等の活性化関数を適用した総和を負値にした負の値を有する。
【0047】
損失関数Ldistは、隣接するスライス画像Dk,Dk+1について出力されたスコアSk,Sk+1との差Δjと、隣接スライス画像Dk+1、Dk+2について出力されたスコアSk+1,Sk+2との差Δj+1との差の総和に対して特定の関数を適用した正の値を有する。これにより、損失関数Ldistは、互いに等間隔のスライスのスコアの差が同等になるように調整する効果を有することから、スコアの差がスライス間の距離に比例し、かつスコアが線形になるようにする効果を有する。ニューラルネットワーク30の機械学習は、2つの損失関数の和Ltotal=Lorder+Ldistが終了条件を満たすまで行われる。
【0048】
具体的には、教師データとなる複数の3次元画像を入力し、ニューラルネットワーク30を構成する各層の係数を更新することにより機械学習が行われる。終了条件は、Ltotalがあらかじめ定められたしきい値以下となることであってもよいし、Ltotalの改善量があらかじめ定められたしきい値以下となることであってもよく、また、あらかじめ定められた回数の学習を行うことであってもよい。このような機械学習により構築された学習済みニューラルネットワーク22A,22Bは、スライス画像が入力されると、スライス画像に含まれる部位の解剖学的位置を表すスコアを出力するようになる。
【0049】
なお、ニューラルネットワークの学習は、読影WS3において行ってもよく、撮影装置2、画像サーバ5、診療WS4またはこれらとは別に設けられた学習装置において行ってもよい。とくに画像サーバ5には多数の3次元画像が保管されるため、画像サーバ5においてニューラルネットワークの学習を行うことにより、夜間等の画像サーバ5へのアクセスが少ない時間帯に、新たに保存された3次元画像を学習用データとして用いて定期的に学習済みニューラルネットワークを更新することが可能となる。
【0050】
ここで、本実施形態においては、学習済みニューラルネットワーク22Aは、CT画像を学習用データとして用いて構築される。学習済みニューラルネットワーク22Bは、MRI画像を学習用データとして用いて構築される。このため、学習済みニューラルネットワーク22Aと学習済みニューラルネットワーク22Bとは、構築のされ方が異なる。したがって、同一の解剖学的位置のスライス画像が入力されても、学習済みニューラルネットワーク22Aにより出力されるスコアと、学習済みニューラルネットワーク22Bにより出力されるスコアとでは異なるものとなる。
【0051】
また、損失関数Lorderを導出するためのシグモイド関数および損失関数Ldistを導出するための特定の関数を如何に定義するかによっても、構築された学習済みニューラルネットワークから出力されるスコアが異なるものとなる。また、学習に使用される3次元画像は、撮影する部位に偏りがある場合がある。例えば、人体の全身を含む3次元画像もあれば、頭部のみあるいは胸部のみを含む3次元画像もある。また、学習に使用する複数のスライス画像のスライス間隔が異なると、出力されるスコアが異なるものとなる場合がある。さらに、学習の際の終了条件の決め方によっても、出力されるスコアが異なるものとなる場合がある。
【0052】
図5はスライス番号とスコアとの関係を示す図である。なお、図5は構築のされ方が異なる3種類の学習済みニューラルネットワークについての、スライス番号と出力されるスコアとの関係40A,40B,40Cを示している。図5において縦軸がスコア、横軸がスライス番号を表している。いずれも頭頂部から足の底面までのスコアを示し、頭頂部から足の底面に向かうほどスコアの値が線形に大きくなる。したがって、スコアSは、S=a×k+bの関係式により表すことができる。図5に示すように、学習済みニューラルネットワークの構築のされ方により、頭頂部のスコアおよび足の底面のスコアに差異が生じ、その結果、頭頂部と足の底面との間にある他の部位においてもスコアに差異が生じる。
【0053】
このため、本実施形態においては、規格化部23が、スコア導出部22の学習済みニューラルネットワーク22Aが出力した第1のスコアSc1(i)および学習済みニューラルネットワーク22Bが出力した第2のスコアSc2(j)を規格化する。なお、i,jはスライス番号であり、スライス画像における先頭からi,j番目のスライス位置を表す。したがって、第1のスコアSc1(i)は第1の3次元画像G1においてi番目のスライスのスライス画像について導出したスコアである。第2のスコアSc2(j)は第2の3次元画像G2においてj番目のスライスのスライス画像について導出したスコアである。スライス番号は3次元画像に付帯する付帯情報(例えばDICOM情報)を用いて特定することができる。DICOM情報であれば、DICOMの(0020,0013)Instance Numberをスライス番号として用いることができるが、これに限定されるものではない。(0020,1041)Slice Locationまたは(0020,0032)Image Position (Patient)の成分等の情報を用いてもよい。
【0054】
規格化部23は、具体的には、スコアSc1(i),Sc2(j)に対して下記の式(1)、(2)に示す線形変換を行うことにより、頭頂部のスコアおよび足の底面のスコアが規格化された値の範囲に収まるようにする。
S1norm(i)=Sc1(i)×c1+d1 (1)
S2norm(j)=Sc2(j)×c2+d2 (2)
【0055】
なお、式(1)、(2)における係数c1,c2,d1,d2は、第1の3次元画像G1に含まれる2つのスライス画像および第2の3次元画像G2に含まれる2つのスライス画像のみを用いて求めることができる。2つのスライス画像としては、例えばスライス番号が先頭のスライス画像および最後のスライス画像を用いることができる。しかしながら、すべてのスライス画像についてのスコアを導出し、最小自乗法および補間演算等の手法を用いて係数c1,c2,d1,d2を求めるようにしてもよい。
【0056】
また、規格化の範囲は例えば頭頂部=0、足の底面=100となるようにすればよい。なお、規格化の範囲はこれに限定されるものではない。例えば、頭頂部から足の底面に向かうほど減少するように、頭頂部=100、足の底面=0としてもよい。また、負の値を含むように、頭頂部=-10、足の底面=10としてもよく、頭頂部=10、足の底面=-10としてもよい。
【0057】
図6は規格化スコアの例を示す図である。図6においては図5に示す3種類の関係40A,40B,40Cを、頭頂部のスコアが0、足の底面のスコアが100となるように規格化した関係41A,41B,41Cを示している。このように規格化を行うことにより、スライス番号iについてのスライス画像の規格化スコアS1norm(i)、およびスライス番号jについてのスライス画像の規格化スコアS2norm(j)は、例えば下記の式(3)、(4)により表すことができる。
S1norm(i)=a1×i+b1 (3)
S2norm(j)=a2×j+b2 (4)
【0058】
なお、式(3)、(4)における係数a1,a2,b1,b2は、式(1)、(2)における係数c1,c2,d1,d2を利用して、第1の3次元画像G1に含まれる2つのスライス画像および第2の3次元画像G2に含まれる2つのスライス画像のみを用いて求めることができる。しかしながら、すべてのスライス画像についてのスコアを導出し、最小自乗法および補間演算等の手法を用いて係数a1,a2,b1,b2を求めるようにしてもよい。
【0059】
ここで、第1の3次元画像G1および第2の3次元画像G2においては、スライスの開始位置または終了位置に何も写っていない場合がある。このため、式(3)、(4)の係数を求める際に、全スライスの開始位置付近および終了位置付近におけるあらかじめ定められた範囲のスライス画像を除外してしてもよい。例えば、全スライスの開始位置から10%~90%の範囲にあるスライス画像のみを用いて、式(3)、(4)の係数を求めるようにしてもよい。
【0060】
なお、スコア導出部22および規格化部23による規格化スコアを導出する処理を、第1および第2の3次元画像G1,G2を取得した後、表示の指示がなされる前にあらかじめ行うようにしてもよい。また、表示の指示がなされ、第1の3次元画像G1に含まれるスライス画像が切り替えられて表示される都度、スコア導出部22および規格化部23による規格化スコアを導出する処理を行うようにしてもよい。
【0061】
位置合わせ部24は、第1の3次元画像G1におけるスライス画像と、第2の3次元画像G2におけるスライス画像とを、比較読影のために位置合わせする。ここで、第1の3次元画像G1に含まれる比較元のスライス画像をスライス画像D1(i)とする。また、ここでは、第1の3次元画像G1に含まれるスライス画像が切り替えられて表示される都度、スコア導出部22および規格化部23における処理を行って、表示されたスライス画像と第2の3次元画像G2に含まれるスライス画像とのz方向の位置合わせを行うものとする。
【0062】
位置合わせ部24は、表示された比較元スライス画像D1(i)について、スコア導出部22によりスコアSc1(i)を導出し、導出されたスコアSc1(i)を規格化部23において式(1)により規格化して規格化スコアS1norm(i)を取得する。
【0063】
スコア導出部22は、比較先の第2の3次元画像G2について、いくつかのスライス画像(例えば先頭および最後の2つのスライス画像)についてのスコアを導出する。規格化部23は式(2)を用いてスコアを規格化して、式(4)を導出する。そして、位置合わせ部24は、式(4)を用いて、a2×j+b2=S1norm(i)を満足するスライス番号jを特定する。なお、スライス番号jは整数であるため、jが整数とならない場合には、小数点以下を四捨五入等することにより、整数となるスライス番号jを特定する。例えば、式(3)が図6に示す関係41Aにより表され、式(4)が図6に示す関係41Bにより表される場合、位置合わせ部24は、図7に示すように、関係41Bにおけるスライス番号jを求める。
【0064】
そして、位置合わせ部24は、第2の3次元画像G2における求めたスライス番号jのスライス画像を比較対象スライス画像D2(j)に特定する。これにより、第1の3次元画像G1と第2の3次元画像G2とのz方向すなわちアキシャル方向の位置合わせが行われる。
【0065】
なお、式(3)、(4)があらかじめ導出されている場合には、表示される比較元スライス画像が変更される毎に比較元スライス画像D1(i)についての規格化スコアを導出する必要はない。この場合、第2の3次元画像G2についてS1norm(i)=S2norm(j)の関係を満たすスライス番号jを特定するのみで、比較対象スライス画像を特定して、第1の3次元画像G1と第2の3次元画像G2との位置合わせを行うことが可能となる。
【0066】
一方、位置合わせ部24においては、第2の3次元画像G2において、特定された比較対象スライス画像に隣接する複数のスライス画像と、比較元スライス画像D1(i)とのさらなる位置合わせを行うようにしてもよい。例えば、比較元スライス画像D1(i)と、比較対象スライス画像の前後に隣接する複数のスライス画像との評価値を導出し、導出した評価値が最良となるスライス番号のスライス画像を最終的な比較対象スライス画像に特定するようにしてもよい。評価値としては、比較元スライス画像D1(i)と、比較対象スライス画像の前後に隣接する複数のスライス画像との類似度あるいは相互情報量を用いることができる。このようなさらなる位置合わせを行うことにより、位置合わせの精度を向上させることができる。
【0067】
なお、さらなる位置合わせに使用する第2の3次元画像G2のスライス画像の範囲はあらかじめ定められた範囲とすればよい。また、規格化スコアの式(3)、(4)により表される直線からの乖離を評価し、乖離が大きいほどさらなる位置合わせに使用するスライス画像の範囲を大きくしてもよい。また、腹部における腸は柔らかい組織であるため、撮影の都度形状が変化する。このため、第1および第2の3次元画像G1,G2が腹部を含む場合、さらなる位置合わせに使用するスライス画像の範囲を大きくしてもよい。また、胸部も呼吸によって肺の形状が変化するため、撮影の都度形状が変化する。このため、第1および第2の3次元画像G1,G2が胸部を含む場合においても、さらなる位置合わせに使用するスライス画像の範囲を大きくしてもよい。
【0068】
ここで、上記では、z方向すなわちアキシャル方向におけるスライス画像の位置合わせについて説明したが、x方向およびy方向については、画像の類似度あるいは相互情報量を評価して位置を合わせたり、スライス画像に含まれる被写体の重心位置を一致させたりすることにより位置合わせを行えばよい。
【0069】
表示制御部25は、第1および第2の3次元画像G1,G2をディスプレイ14に表示する。図8は3次元画像の表示画面を示す図である。図8に示すように3次元画像の表示画面50は、画像表示領域51および文章表示領域52を含む。画像表示領域51には、第1の3次元画像G1および第2の3次元画像G2に含まれるスライス画像が表示される。表示されるスライス画像は、入力デバイス15を用いて第1の3次元画像G1および第2の3次元画像G2のいずれかを選択し、入力デバイス15のマウスが備えるスクロールホイール等を用いて切り替え表示することができる。
【0070】
画像表示領域51に表示される第1の3次元画像G1および第2の3次元画像G2の左上隅には、それぞれ被写体である人体を模したアイコン53,54が表示される。アイコン53,54は、第1および第2の3次元画像G1,G2に含まれるスライス画像が含まれる部位の開始位置53A,54Aおよび終了位置53B,54Bが実線で示されている。図8において開始位置53A,54Aは頭頂部、終了位置53B,54Bは足の底面である。
【0071】
これにより、アイコン53,54を参照すれば、読影医は第1および第2の3次元画像G1,G2のいずれも、頭頂部から足の底面までのスライス画像が含まれていることを認識することができる。また、アイコン53,54には、現在表示中のスライス画像の位置が破線53C,54Cで示されている。破線53C,54Cにより、表示中のスライス画像の解剖学的位置を容易に認識することができる
【0072】
文章表示領域52には、読影医による第1の3次元画像G1および第2の3次元画像G2の読影結果を表す所見文が、入力デバイス15を用いて入力される。
【0073】
なお、読影の仕方によっては、第1の3次元画像G1と第2の3次元画像G2とで表示されるスライス画像の解剖学的位置を一致させたい場合もあれば、一致させたくない場合もある。このため、本実施形態においては、画像表示領域51の下方に表示された同期ボタン56により、表示されるスライス画像のz方向の位置の同期および非同期を切り替え可能としている。読影医は、同期ボタン56を選択することにより、表示される第1の3次元画像G1と第2の3次元画像G2との解剖学的位置を一致させることができる。
【0074】
第1および第2の3次元画像G1,G2における解剖学的位置の一致は、上述したように位置合わせ部24により行われる。この場合、第1の3次元画像G1について画像表示領域51に表示されるスライス画像が比較元スライス画像D1(i)となる。本実施形態においては表示される比較元スライス画像D1(i)が切り替えられる毎に、上述したように位置合わせ部24が位置合わせ処理を行い、比較元スライス画像D1(i)に対応する比較対象スライス画像を特定して画像表示領域51に表示する。
【0075】
これにより、画像表示領域51には、第1の3次元画像G1および第2の3次元画像G2における同一の解剖学的位置のスライス画像が表示される。したがって、第1の3次元画像G1の表示されるスライス画像を切り替えることによって、第2の3次元画像G2のスライス画像も第1の3次元画像G1と同一の解剖学的位置を表すものとなるように同期して切り替えることができる。なお、同期ボタン56が再度選択されると、同期が解除される。これにより、第1の3次元画像G1と第2の3次元画像G2とで別々のスライス面のスライス画像を表示することが可能となる。
【0076】
文章表示領域52の下方には確定ボタン57が表示されている。読影医は、所見文の入力後、入力デバイス15を用いて確定ボタン57を選択することにより、所見文の入力内容を確定することができる。
【0077】
次いで、本実施形態において行われる処理について説明する。図9は本実施形態による画像位置合わせ装置において行われる処理を示すフローチャートである。なお、位置合わせの対象となる第1および第2の3次元画像G1,G2は画像サーバ5から取得されてストレージ13に記憶されているものとする。また、同期ボタン56はスライス画像を同期させるように選択されているものとする。第1および第2の3次元画像G1,G2を表示する指示がなされることにより処理が開始され、表示制御部25が第1および第2の3次元画像G1,G2を表示画面50の画像表示領域51に表示する(ステップST1)。なお、最初に表示されるスライス画像は第1および第2の3次元画像G1,G2ともに、例えばスライス番号が先頭のスライス画像とすればよい。
【0078】
次いで、表示されるスライス画像の切り替えの指示がなされたか否かが判定され(ステップST2)、ステップST2が肯定されると、位置合わせ部24が現在表示されている比較元スライス画像D1(i)を特定する(ステップST3)。なお、ステップST2が否定されると後述するステップST9の処理に進む。
【0079】
次いで、スコア導出部22が比較元スライス画像D1(i)についての第1のスコアSc(i)を導出し(ステップST4)、規格化部23が第1のスコアSc(i)を規格化する(ステップST5)。
【0080】
一方、スコア導出部22および規格化部23が、比較先の第2の3次元画像G2についての式(4)を導出する(関係式導出:ステップST6)。すなわち、スコア導出部22が第2の3次元画像G2に含まれる先頭および最後のスライス画像についての第2のスコアを導出し、2つの第2のスコアを規格化する。そして、規格化部23は、規格化された第2のスコアを用いて式(4)を導出する。なお、ステップST6の処理は、ステップST2よりも前に行ってもよく、ステップST2~ステップST5の処理と並列に行ってもよい。
【0081】
そして位置合わせ部24が比較元スライス画像D1(i)に対応する比較対象スライス画像D2を特定し(位置合わせ:ステップST7)、特定された比較対象スライス画像を画像表示領域51に表示する(ステップST8)。
【0082】
続いて、確定ボタン57が選択されたか否かが判定され(ステップST9)、ステップST9が否定されるとステップST2に戻り、ステップST2以降の処理を繰り返す。これにより、比較対象スライス画像D1(i)を切り替えると、これに同期して第2の3次元画像G2のスライス画像も切り替えられる。読影医はこのようにしてスライス画像を切り替えつつ、第1および第2の3次元画像G1,G2の比較読影を行い、読影レポートを文字表示領域52に入力する。ステップST9が肯定されると、処理を終了する。
【0083】
なお、作成された読影レポートは読影レポートサーバ6に送信されて保存される。また、位置合わせ処理の過程において導出された第1および第2の3次元画像G1,G2についての規格化スコアあるいは式(3)、(4)についての係数a1,a2,b1,b2は画像サーバ5に送信され、第1および第2の3次元画像G1,G2と関連付けられて保存される。なお、係数a1,a2,b1,b2は、第1および第2の3次元画像G1,G2の付帯情報(例えばDICOM情報)に記録するようにしてもよい。
【0084】
このように、本実施形態においては、学習済みニューラルネットワーク22A,22Bから出力されたスコアを規格化するようにした。このため、同一の解剖学的位置のスライス画像であれば、学習用データが異なるまたはモダリティが異なるあるいはモダリティが同一であっても撮影プロトコルが異なる等により学習済みニューラルネットワークの構築のされ方が異なるものであっても、同一の値となる規格化スコアが導出されることとなる。これにより、導出される規格化スコアを用いてスライス画像の解剖学的位置を特定でき、その結果、規格化スコアを用いて、第1の3次元画像G1に含まれるスライス画像のスライス面と、第2の3次元画像G2に含まれるスライス画像のスライス面との位置合わせを行うことができる。
【0085】
また、規格化スコアを用いてスライス画像の位置合わせを行った後、スライス画像間の評価値に基づくさらなる位置合わせを行うことにより、位置合わせの精度を向上させることができる。本実施形態においては、規格化スコアを用いることなくスライス画像の評価値にのみ基づく位置合わせを行う場合と比較して演算量を低減することができるため、位置合わせの処理を高速に行うことができる。
【0086】
また、規格化部23において導出した規格化スコアあるいは式(3)、(4)における係数a1,a2,b1,b2を、これらを取得した3次元画像と対応づけて保存しておくことにより、その3次元画像についての位置合わせを行う場合に、スコアの導出および規格化を再度行う必要がなくなるため、処理を高速に行うことができる。
【0087】
例えば、最新の検査において取得した3次元画像と過去の検査において取得した3次元画像とでスライス位置の位置合わせを行う場合、過去の検査において取得した3次元画像については、保存された規格化スコアあるいは係数a1,a2,b1,b2を用いることにより、スコアの導出および規格化を再度行う必要がなくなる。したがって、位置合わせの処理を高速に行うことができる。
【0088】
また、UBRの手法ではニューラルネットワークの学習を高速に行うことができる。例えば、非特許文献1によれば、かなりの量のデータであっても十数分でニューラルネットワークの学習を行えるものとなっている。このため、3次元画像を取得する都度、読影前にその3次元画像を用いてニューラルネットワークを学習して学習済みニューラルネットワークを構築することが可能となる。したがって、本実施形態によれば、学習済みニューラルネットワークを用いたスコアの導出の精度を向上させることができる。
【0089】
なお、上記実施形態においては、学習済みニューラルネットワーク22A,22Bが出力したスコアを規格化することにより規格化スコアを導出しているが、これに限定されるものではない。規格化スコアを導出するように構築された学習済みニューラルネットワークを用いることにより、規格化スコアを導出してもよい。
【0090】
この場合、出力されるスコアの範囲を学習の際に規定し、規定した範囲のスコアが出力されるようにニューラルネットワークを学習させる。すなわち、CT画像を教師データとして用いる場合、CT画像が入力された場合に、規定した範囲のスコアが出力されるようにニューラルネットワークを学習させる。一方、MRI画像を教師データとして用いる場合、MRI画像が入力された場合に、規定した範囲のスコアが出力されるようにニューラルネットワークを学習させる。この際、損失関数Lorder、Ldistに加えて、新たな損失関数Lscaleを使用し、スコアの範囲、スコアの上限およびスコアの下限に応じて損失を調整して、規定された範囲のスコアを出力するように学習を行うことにより、学習済みニューラルネットワークを構築すればよい。
【0091】
なお、規格化スコアを導出するように学習済みニューラルネットワーク22A,22Bを構築した場合、規格化部23は不要となる。
【0092】
また、上記実施形態においては、画像サーバ5に保管するすべての3次元画像についてスコアまたは規格化スコアを算出し、3次元画像と対応づけて保存しておくようにしてもよい。算出したスコアまたは規格化スコアは画像サーバ5に保存してもよく、3次元画像の付帯情報(例えばDICOM情報)に記録するようにしてもよい。
【0093】
また、上記実施形態においては、第1の3次元画像G1に含まれる部位の範囲と第2の3次元画像G2に含まれる部位の範囲が一致しているが、第1の3次元画像G1に含まれる部位の範囲と第2の3次元画像G2に含まれる部位の範囲が一致しない場合もある。例えば、第1の3次元画像G1が人体の頭頂部から足の底面までが撮影範囲であるのに対して、第2の3次元画像G2が人体の胸腹部のみが撮影範囲である場合がある。
【0094】
この場合、第1の3次元画像G1において頭部のスライス画像を表示しても、第2の3次元画像G2には位置合わせ先のスライス画像が含まれない。このため、第1の3次元画像G1について表示中の比較対象スライス画像について導出した規格化スコアと、第2の3次元画像G2について導出した規格化スコアの範囲とを比較し、第1の3次元画像G1について表示中の比較元スライス画像についての規格化スコアが第2の3次元画像G2について導出した規格化スコアの範囲にない場合には、警告を行うようにしてもよい。
【0095】
図10は警告の例を示す図である。図10に示すように、第1の3次元画像G1に表示されたアイコン53を参照すると、第1の3次元画像G1は頭部から足の底面までのスライス画像を含み、現在頭部のスライス画像が表示されていることが分かる。一方、第2の3次元画像G2に表示されたアイコン54を参照すると、第2の3次元画像G2は胸腹部のスライス画像のみしか含まないことが分かる。このような場合、第1の3次元画像G1について頭部のスライス画像を表示しても、第2の3次元画像G2についてはこれに対応する解剖学的位置のスライス画像を表示することができない。
【0096】
このため、図10においては、第1の3次元画像G1の周囲に太い枠59を表示することにより、第1の3次元画像G1において表示された比較元スライス画像の規格化スコアが、第2の3次元画像G2について導出された規格化スコアの範囲にないために、第1および第2の3次元画像G1,G2において表示中のスライス画像を対応づけることができないことを警告している。このように警告を行うことにより、読影医はスライス画像の位置合わせができないことを認識できるため、読影を効率よく行うことができる。
【0097】
なお、図10においては警告として第1の3次元画像G1の表示領域の周囲に太線の枠59を付与しているが、これに限定されるものではない。第1の3次元画像G1を点滅させたり、第2の3次元画像G2をグレーアウトさせたりすることにより警告を行うようにしてもよい。また、音声により警告を行うようにしてもよい。
【0098】
また、上記実施形態においては、第1の3次元画像G1としてCT画像を、第2の3次元画像G2としてMRI画像を用いているがこれに限定されるものではない。第1の3次元画像G1としてCT画像を使用し、第2の3次元画像G2としてPET画像を使用してもよい。この場合、同一の解剖学的位置となるようにCT画像のスライス面とPET画像のスライス面とを位置合わせできるため、CT画像とPET画像とのフュージョン画像を容易に導出することが可能となる。
【0099】
なお、フュージョン画像を導出する場合においても、規格化スコアを用いて位置合わせを行った後に、スライス画像間の評価値に基づく位置合わせを行うようにしてもよい。これにより、位置合わせの精度を向上させることができるため、より高精度に位置合わせされたフュージョン画像を導出することができる。
【0100】
また、同一被写体についての撮影時期が異なる第1の3次元画像G1と第2の3次元画像G2とを用いて差分画像を導出する場合にも、本実施形態の技術を適用できる。すなわち、規格化スコアに基づいて第1の3次元画像G1に含まれるスライス画像と第2の3次元画像G2に含まれるスライス画像との位置合わせを行って差分画像を導出することにより、同一スライス面についての疾患の経時変化を容易に確認することができる。この場合、第1の3次元画像G1と第2の3次元画像G2とは同一のモダリティであることが好ましい。なお、このような差分画像を導出する際にも、規格化スコアを用いて位置合わせを行った後に、スライス画像間の評価値に基づく位置合わせを行うようにしてもよい。これにより、位置合わせの精度を向上させることができるため、より高精度に位置合わせされた差分画像を導出することができる。
【0101】
なお、上記実施形態においては、第1および第2の放射線画像G1,G2を表示する際に、最初に表示されるスライス画像をスライス番号が先頭のスライス画像としているが、これに限定されるものではない。最初に表示されるスライス画像について規格化スコアを導出し、規格化スコアを用いて、第1の3次元画像G1に含まれるスライス画像のスライス面と、第2の3次元画像G2に含まれるスライス画像のスライス面との位置合わせを行うようにしてもよい。
【0102】
また、上記実施形態においては、第1および第2の3次元画像G1,G2の比較読影のためにスライス画像の位置合わせを行っているが、これに限定されるものではない。異なる被写体について同一部位を撮影することにより取得された第1の3次元画像G1のスライス画像と第2の3次元画像G2のスライス画像との位置合わせを行う場合にも本実施形態の技術を適用することが可能である。この場合、異なる被写体についての同一モダリティの3次元画像であっても、異なる被写体についての異なるモダリティの3次元画像であっても、上記と同様にスライス画像の位置合わせを行うことが可能である。
【0103】
また、上記実施形態においては、アキシャル方向にスライス面が並ぶアキシャル断面のスライス画像について規格化スコアを導出しているが、これに限定されるものではない。コロナル断面、サジタル断面またはこれら以外の任意方向の断面についての規格化スコアを導出してもよい。さらにはMPR(Multi Planar Reconstruction、任意断面再構成)のスライス画像についての規格化スコアを導出するようにしてもよい。これにより、第1および第2の3次元画像G1,G2について、所望とされるスライス面のスライス画像の位置合わせを行うことができる。
【0104】
次いで、本開示の位置特定装置について説明する。図11は本実施形態による位置特定装置の構成を示す概略ブロック図である。図11に示すように本実施形態による位置特定装置60は、ワークステーション、サーバコンピュータおよびパーソナルコンピュータ等のコンピュータであり、CPU61、不揮発性のストレージ63、および一時記憶領域としてのメモリ66を含む。また、位置特定装置60は、液晶ディスプレイ等のディスプレイ64、キーボードおよびマウス等のポインティングデバイス等からなる入力デバイス65、並びに不図示のネットワークに接続されるネットワークI/F67を含む。CPU61、ストレージ63、ディスプレイ64、入力デバイス65、メモリ66およびネットワークI/F67は、バス68に接続される。
【0105】
ストレージ63は、ストレージ13と同様に、HDD、SSD、およびフラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としてのストレージ63には、位置特定プログラム62が記憶される。CPU61は、ストレージ63から位置特定プログラム62を読み出してメモリ66に展開し、展開した位置特定プログラム62を実行する。
【0106】
次いで、本実施形態による位置特定装置の機能的な構成を説明する。図12は、本実施形態による位置特定装置の機能的な構成を示す図である。図12に示すように本実施形態による位置特定装置60は、画像取得部71、スコア導出部72および規格化部73を備える。そしてCPU61が位置特定プログラム62を実行することにより、CPU61は、画像取得部71、スコア導出部72および規格化部73として機能する。CPU61は、本開示におけるプロセッサの一例である。
【0107】
なお、本実施形態による位置特定装置60の画像取得部71、スコア導出部72および規格化部73が行う処理は、本実施形態による画像位置合わせ装置20の画像取得部21、スコア導出部22および規格化部23が行う処理と同一であるため、ここでは詳細な説明は省略する。なお、位置特定装置60のスコア導出部72は1つの学習済みニューラルネットワーク72Aのみを含む。本実施形態による位置特定装置は、入力された3次元画像G0のスライス画像に含まれる部位の解剖学的位置を特定するものである。なお、学習済みニューラルネットワークは1つのみに限定されるものではない。複数の学習済みニューラルネットワークを用意し、3次元画像G0の種類等(CT画像であるか、MRI画像であるか等)に応じて使用する学習済みニューラルネットワークを選択できるようにしてもよい。
【0108】
図13は本実施形態による位置特定装置において行われる処理を示すフローチャートである。なお、位置特定の対象となる3次元画像G0は画像サーバ5から取得されてストレージ63に記憶されているものとする。位置特定の指示がなされることにより処理が開始され、スコア導出部72が3次元画像G0に含まれる複数のスライス画像についてのスコアを導出する(ステップST11)。そして規格化部23がスコアを規格化し(ステップST12)、処理を終了する。規格化されたスコアは3次元画像G0と対応づけられてストレージ63に保存される。
【0109】
なお、位置特定装置の実施の形態においても、規格化スコアを出力するように学習済みニューラルネットワーク72Aを構築してもよい。この場合、規格化部73は不要となる。
【0110】
このようにして導出された規格化スコアは、スライス画像に含まれる部位の解剖学的位置に応じて固有の値を有するものとなる。このため、導出された規格化スコアを様々な処理に用いることができる。
【0111】
例えば、CT装置を用いた被写体の撮影を行う際には、被写体への被曝線量を管理する必要がある。被曝線量を管理するに際しては、被写体の体格による影響を補正するため、SSDE(Size-Specific Dose Estimates)という概念がある。SSDEでは、胸部および/または腹部における人体の断面の縦横比および/または断面の形状を利用する。この際、CT画像に含まれるスライス画像から胸部および/または腹部に相当する位置のスライス画像を抽出し、抽出したスライス画像について断面の縦横比および/または形状を求めることになる。本実施形態による位置特定装置を用いて、CT画像についての規格化スコアを導出することにより、規格化スコアを用いて胸部および/または腹部のスライス画像を抽出できるため、SSDEに役立てることができる
【0112】
また、整形外科の分野では、診断に際して画像を参照して、特徴的な位置の距離の比率および特徴的な位置を結ぶ線分の角度等を計測することにより、疾患の評価が行われる。整形外科計測の例として、股関節の臼蓋形成不全の診断に用いられるCE角(Center-edge angle)、肘関節の診断に用いられるBaumann角、膝蓋骨の適合度を示す指標である適合角(Congruence angle)、および大腿骨軸と脛骨軸とがなす角度であるFTA(Femorotibial angle)等がある。このような計測を行うには、3次元画像に含まれる部位のうちの特徴的な部位を含むスライス画像を特定する必要がある。この際に、3次元画像に含まれるスライス画像についての規格化スコアを導出することにより、計測に使用する特徴的な部位を含むスライス画像を容易に特定することが可能となる。したがって、計測を効率よく行うことができる。
【0113】
また、各種モダリティにおいて取得した3次元画像に対しては、意図した部位を含む3次元画像が取得されたか否かを確認する検像が行われる。この際に、取得した3次元画像に含まれるスライス画像についての規格化スコアを導出することにより、規格化スコアの値により、取得したスライス画像に含まれる部位を認識することができる。このため、規格化スコアにより取得した3次元画像に含まれる部位、部位の範囲および部位が並ぶ方向等を確認することができる。したがって、検像を容易に行うことができる。また、規格化スコアと意図した部位についてのスコアとを比較することにより、意図した部位について撮影ができていない場合には警告を行ったり、再撮影を促す等の措置を執ったりすることが容易となる。
【0114】
また、アキシャル断面のスライス画像については、スライス画像に含まれる椎骨のラベルと規格化スコアとを対応づけることができる。すなわち規格化スコアと規格化スコアが表す脊椎の解剖学的位置(頚椎のC1~C7、胸椎のT1~T12、腰椎のL1~L5)とは互いに対応するものとなる。このため、椎骨のラベリングを行う際に、取得した3次元画像についての規格化スコアを導出することにより、椎骨のラベリングを容易に行うことができる。
【0115】
なお、上記画像位置合わせ装置の実施形態においては、読影WS3において規格化スコアの導出を行っているが、これに限定されるものではない。撮影装置2、画像サーバ5、診療WS4またはこれらとは別記に設けられた装置において規格化スコアの導出を行うようにしてもよい。この場合、導出された規格化スコアは3次元画像と対応づけられて画像サーバ5に保管され、画像位置合わせの際に3次元画像と併せて読影WS3に送信されて、処理に供される。
【0116】
また、上記各実施形態においては、年齢および性別等の被写体の属性に応じた学習用データを用いることにより、患者の属性に応じた学習済みニューラルネットワークを構築するようにしてもよい。これにより、患者の属性に応じた高精度の規格化スコアを導出することができる。
【0117】
また、上記各実施形態において、例えば、画像取得部21、スコア導出部22、規格化部23、位置合わせ部24、位置合わせ部24および表示制御部25、並びに画像取得部71、スコア導出部72および規格化部73といった各種の処理を実行する処理部(Processing Unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(Processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、上述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device :PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0118】
1つの処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせまたはCPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0119】
複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントおよびサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアとの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0120】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(Circuitry)を用いることができる。
【符号の説明】
【0121】
1 医療情報システム
2 撮影装置
3 読影WS
4 診療WS
5 画像サーバ
6 画像DB
7 レポートサーバ
8 レポートDB
10 ネットワーク
11,61 CPU
12 画像位置合わせプログラム
13,63 ストレージ
14,64 ディスプレイ
15,65 入力デバイス
16,66 メモリ
17,67 ネットワークI/F
18,68 バス
20 画像位置合わせ装置
21,71 画像取得部
22,72 スコア導出部
22A,22B,72A 学習済みニューラルネットワーク
23,73 規格化部
24 位置合わせ部
25 表示制御部
30 ニューラルネットワーク
31 入力層
32 中間層
33 出力層
40A,40B,40C 規格化前のスライス番号とスコアとの関係
41A,41B,41C 規格化後のスライス番号とスコアとの関係
50 表示画面
51 画像表示領域
52 文章表示領域
53,54 人型アイコン
53A,54A 開始位置
53B,54B 終了位置
53C,54C 破線
56 同期ボタン
57 確定ボタン
59 枠
D1~Dn スライス画像
G1 第1の3次元画像
G2 第2の3次元画像
S1~Sn スコア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13