(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】冷凍倉庫の管理システムおよび管理方法、並びにプログラム
(51)【国際特許分類】
B65G 1/00 20060101AFI20240826BHJP
【FI】
B65G1/00 521A
B65G1/00 501Z
(21)【出願番号】P 2021064763
(22)【出願日】2021-04-06
【審査請求日】2023-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 健二
(72)【発明者】
【氏名】江原 隆文
(72)【発明者】
【氏名】飛澤 直哉
【審査官】内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/008550(WO,A1)
【文献】特開2016-090161(JP,A)
【文献】特開2002-235977(JP,A)
【文献】特開昭48-048891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却手段を制御することによって冷凍倉庫内の温度調整を行う冷凍倉庫の管理システムであって、
少なくとも冷凍倉庫周辺の時間毎の予測温度
情報を含む気象情報
に基づいて、前記冷却手段の時間毎の第1の制御量を特定し、前記冷凍倉庫に物品が搬入出される搬入出情報
に基づいて、前記第1の制御量を修正する第2の制御量を特定し、前記第2の制御量により前記第1の制御量を修正して前記冷却手段の時間毎の制御量を特定すること
を特徴とする冷凍倉庫の管理システム。
【請求項2】
請求項
1に記載の冷凍倉庫の管理システムにおいて、
前記第
1の制御量は
前記第
2の制御量より大きいこと
を特徴とする冷凍倉庫の管理システム。
【請求項3】
請求項
1に記載の冷凍倉庫の管理システムにおいて、
前記第
2の制御量は、前記搬入出情報に基づいて開放される前記冷凍倉庫の搬入出口と前記気象情報のうち前記冷凍倉庫周辺の外気温とが接触することによって生じる温度変化の影響を考慮した制御量であること
を特徴とする冷凍倉庫の管理システム。
【請求項4】
請求項1に記載の冷凍倉庫の管理システムにおいて、
前記気象情報は、更に、冷凍倉庫周辺の時間毎の予測湿度情報を含むこと
を特徴とする冷凍倉庫の管理システム。
【請求項5】
請求項
4に記載の冷凍倉庫の管理システムにおいて、
前記搬入出情報と前記時間毎の予測湿度情報とに基づいて、前記冷凍倉庫の搬入出口が開放されることにより入り込む水分量がより小さい時間帯に、前記物品を搬入出することを推奨する推奨搬入出情報を特定し、
表示部に、特定された前
記推奨搬入出情報を表示すること
を特徴とする冷凍倉庫の管理システム。
【請求項6】
請求項
1に記載の冷凍倉庫の管理システムにおいて、
前記搬入出情報と前記時間毎の予測温度情報とに基づいて、前記冷凍倉庫の搬入出口が開放されることにより前記冷凍倉庫周辺の外気温と接触することによって生じる温度変化がより小さい温度変化となる時間帯に、前記物品を搬入出することを推奨する推奨搬入出
情報を特定し、
表示部に、特定された前
記推奨搬入出情報を表示すること
を特徴とする冷凍倉庫の管理システム。
【請求項7】
請求項
5または
6に記載の冷凍倉庫の管理システムにおいて、
特定された前記推奨搬入出情報に基づいて、さらに、前記冷却手段の前記制御量を変更すること
を特徴とする冷凍倉庫の管理システム。
【請求項8】
管理システムにより冷却手段を制御することによって冷凍倉庫内の温度調整を行う冷凍倉庫の管理方法であって、
少なくとも冷凍倉庫周辺の時間毎の予測温度
情報を含む気象情報に基づいて、前記冷却手段の時間毎の第1の制御量を求めるステップと、
前記冷凍倉庫に物品が搬入出される搬入出情
報に基づいて、前記第1の制御量を修正する第2の制御量を求めるステップと、
前記第2の制御量により前記時間毎の第1の制御量を修正して前記冷却手段の全体制御量を求めるステップと、
前記冷却手段の全体制御量により、前記冷却手段を運転するステップと、
を備える冷凍倉庫の管理方法。
【請求項9】
請求項
8に記載の冷凍倉庫の管理方法において、更に、
少なくとも前記気象情報、前記搬入出情報、前記冷却手段の時間毎の全体制御量を表示するステップと、
入力手段からの入力により、前記全体制御量を修正して、
前記冷却手段を運転するステップと、
を備える冷凍倉庫の管理方法。
【請求項10】
請求項
8に記載の冷凍倉庫の管理方法において、更に、
前記気象情報は、
冷凍倉庫周辺の時間毎の予測湿度
情報を有しており、
入力手段からの入力により、
前記搬入出情報と前記時間毎の予測湿度情報とに基づいて、前記冷凍倉庫の搬入出口が開放されることにより
入り込む水分量がより小さい時間帯に、前記物品を搬入出するように前記搬入出情報を変更するステップと、
前記変更した搬入出情報に基づいて、
前記全体制御量を修正して、前記冷却手段を運転するステップと、
を備える冷凍倉庫の管理方法。
【請求項11】
請求項
8に記載の冷凍倉庫の管理方法において、更に、
入力手段からの入力により、
前記搬入出情報と前記時間毎の予測温度情報とに基づいて、前記冷凍倉庫の搬入出口が開放されることにより前記冷凍倉庫周辺の外気温と接触することによって生じる温度変化がより小さい温度変化となる時間帯に、前記物品を搬入出するように前記搬入出情報を変更するステップと、
前記変更した搬入出情報に基づいて
、前記全体制御量を修正して、前記冷却手段を運転するステップと、
を備える冷凍倉庫の管理方法。
【請求項12】
コンピュータに、
冷却手段を制御することによって冷凍倉庫内の温度調整を行うプログラムであって、
少なくとも冷凍倉庫周辺の時間毎の予測温度
情報を含む気象情報に基づいて、前記冷却手段の時間毎の第1の制御量を求めるステップと、
前記冷凍倉庫に物品が搬入出される搬入出情
報に基づいて、前記第1の制御量を修正する第2の制御量を求めるステップと、
前記第2の制御量により前記時間毎の第1の制御量を修正して前記冷却手段の全体制御量を求めるステップと、
前記冷却手段の全体制御量により、前記冷却手段を運転するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍倉庫の管理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
食品等を保管する冷凍倉庫においては、冷却器を制御することにより、倉庫内の温度を低温に維持している。家庭用の冷蔵庫などとは異なり、商業用冷凍倉庫においては、あらかじめ、例えば運転日の前日に運転計画を作成し、当日はあらかじめ作成した運転計画に基づいて冷凍倉庫を運転している。
【0003】
低温倉庫に関する技術として、特許文献1(国際公開第2020/008550号)には、「省エネ管理装置は、気流解析と空調機の運転シミュレーションとを行うことにより、低温倉庫の温度分布を推定する。省エネ管理装置は、推定した温度分布に基づいて、省エネのための空調機の改善点を決定する。省エネ管理装置は、気流解析と、改善点を適用した後の空調機の運転シミュレーションとを行うことにより、改善点を適用した後の空調機の消費電力量を推定する。省エネ管理装置は、改善前の空調機の消費電力量と、推定した改善後の空調機の消費電力量と、電気料金テーブルの情報である料金テーブル情報とに基づいて、改善点の適用により削減される電気料金を省エネ効果として算出する。」と記載されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
商業用冷凍倉庫は、家庭用冷蔵庫に比べて、温度上昇による商品の品質低下を防止するため、庫内温度が所定の値以下になるように設定されている。従来、冷却器周辺の除霜や入出庫による庫内の温度上昇が無いように、過剰に冷却することが多かった。そのため、省エネが十分でなかった。
【0006】
特許文献1では、低温倉庫のレイアウト空調機情報と低温倉庫を出入りする荷物の入出庫の情報を用いて、気流解析と空調機のシミュレーションを行うことにより、低温倉庫の温度分布を推定し、省エネのための空調機の改善点を特定し、改善点の適用前後の消費電力に基づく省エネ効果を算出する技術が開示されている。また、低温倉庫としては冷凍倉庫も考慮されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の発明は、省エネのための空調機の改善点を特定し、改善点の適用前後の消費電力に基づく省エネ効果を算出するもので、気象情報に基づく冷凍倉庫全体の制御と入出庫情報に基づく局所的な調整を行うことにより、冷凍倉庫全体のエネルギー消費効率を精度良く高めることは、考慮されていない。
【0008】
本発明は、冷凍倉庫全体のエネルギー消費効率を従来よりも高精度に上昇させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための、本発明の冷凍倉庫管理システムは、外気温情報を有する気象情報に基づいて冷凍倉庫全体を制御し、また、冷凍倉庫の入出庫情報から局所的な調整を行うことを特徴とする。
【0010】
本発明の「冷凍倉庫の管理システム」の一例を挙げるならば、
冷却手段を制御することによって冷凍倉庫内の温度調整を行う冷凍倉庫の管理システムであって、
少なくとも冷凍倉庫周辺の時間毎の予測温度情報を含む気象情報に基づいて、前記冷却手段の時間毎の第1の制御量を特定し、前記冷凍倉庫に物品が搬入出される搬入出情報に基づいて、前記第1の制御量を修正する第2の制御量を特定し、前記第2の制御量により前記第1の制御量を修正して前記冷却手段の時間毎の制御量を特定することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の「冷凍倉庫の管理方法」の一例を挙げるならば、
管理システムにより冷却手段を制御することによって冷凍倉庫内の温度調整を行う冷凍倉庫の管理方法であって、
少なくとも冷凍倉庫周辺の時間毎の予測温度情報を含む気象情報に基づいて、前記冷却手段の時間毎の第1の制御量を求めるステップと、
前記冷凍倉庫に物品が搬入出される搬入出情報に基づいて、前記第1の制御量を修正する第2の制御量を求めるステップと、
前記第2の制御量により前記時間毎の第1の制御量を修正して前記冷却手段の全体制御量を求めるステップと、
前記冷却手段の全体制御量により、前記冷却手段を運転するステップと、
を備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、気象情報に基づく冷凍倉庫全体の制御と、入出庫情報に基づく局所的な調整を行うことにより、冷凍倉庫全体のエネルギー消費効率を従来よりも高精度に上昇させることができる。
【0013】
上記した以外の課題、構成および効果は以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の冷凍倉庫管理システムが用いられる、冷凍倉庫システムのイメージ図である。
【
図2】本発明の冷凍倉庫管理システムが用いられる、冷凍倉庫のイメージ図である。
【
図3】本発明の冷凍倉庫管理システムを含む、ブロック構成図の一例を示す図である。
【
図4】本発明の冷凍倉庫管理システムの記憶手段に記憶される、気象情報テーブルの一例を示す図である。
【
図5】本発明の冷凍倉庫管理システムの記憶手段に記憶される、入出庫情報テーブルの一例を示す図である。
【
図6】実施例1の冷凍倉庫管理システムの、制御量の特定方法を示すフローチャートである。
【
図7】実施例1の冷凍倉庫管理システムの記憶手段に記憶される、冷凍倉庫管理データベースの一例を示す図である。
【
図8】実施例2の冷凍倉庫管理システムの、制御量の特定方法を示すフローチャートである。
【
図9】実施例2の冷凍倉庫管理システムの記憶手段に記憶される、変更前の冷凍倉庫管理データベースの一例を示す図である。
【
図10】実施例2の冷凍倉庫管理システムの記憶手段に記憶される、変更後の冷凍倉庫管理データベースの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし主旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
【0016】
以下の実施例において、「入出力部」は、1以上のインターフェースを含む。1以上のインターフェースは、1以上の同種のインターフェース装置であっても良いし2以上の異種のインターフェース装置であっても良い。
【0017】
以下の実施例において、「記憶部」は、1以上のメモリを含む。記憶手段に関して少なくとも1つのメモリは、揮発性メモリで良い。記憶部は、主に、プロセッサ部による処理の際に使用される。記憶部は、メモリの他に、1以上の不揮発性の記憶装置(例えば、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive))を含んでも良い。
【0018】
以下の実施例において、「制御部」は、1以上のプロセッサを含む。少なくとも1つのプロセッサは、典型的には、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサであるが、GPU(Graphics Processing Unit)のような他種のプロセッサでも良い。1以上のプロセッサの各々は、シングルコアでも良いしマルチコアでも良い。プロセッサは、処理の一部又は全部を行うハードウェア回路を含んでも良い。
【0019】
以下の実施例において、冷凍倉庫管理システムが行う機能は、1以上のコンピュータプログラムが制御部によって実行されることで実現されても良いし、1以上のハードウェア回路(例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit))によって実現されても良い。プログラムがプロセッサ部によって実行されることで機能が実現される場合、定められた処理が、適宜に記憶部及び/又はインターフェース部等を用いながら行われるため、機能はプロセッサ部の少なくとも一部とされても良い。機能を主語として説明された処理は、プロセッサ部あるいはそのプロセッサ部を有する装置が行う処理としても良い。プログラムは、プログラムソースからインストールされても良い。プログラムソースは、例えば、プログラム配布計算機又は計算機が読み取り可能な記録媒体(例えば非一時的な記録媒体)であっても良い。各機能の説明は一例であり、複数の機能が1つの機能にまとめられたり、1つの機能が複数の機能に分割されたりしても良い。
【0020】
また、以下の説明では、「xxxテーブル」或いは「xxxデータベース」といった表現にて、入力に対して出力が得られる情報を説明することがあるが、当該情報は、どのような構造のデータでも良いし、入力に対する出力を発生するニューラルネットワークのような学習モデルでも良い。従って、「xxxテーブル」を「xxx情報」と言うことができる。また、以下の説明において、各テーブルの構成は一例であり、1つのテーブルは、2以上のテーブルに分割されても良いし、2以上のテーブルの全部又は一部が1つのテーブルであっても良い。
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明の冷凍倉庫管理システムが用いられる冷凍倉庫システムのイメージ図である。冷凍倉庫システム100は、冷凍倉庫110を有しており、冷凍倉庫110には搬送手段130によって物品が搬入出されるドアである入出庫口120が設けられている。入出庫口120は、単に搬入出口とも呼ぶ。また、搬送手段130が冷凍倉庫110へ物品を搬入出する時間や搬送対象を管理する情報は、搬送管理部160により記憶され管理されている。搬送手段130は、トラックやトレーラーであってよい。
【0022】
管理システム140は、冷凍倉庫110に設けられた冷却器(冷却装置)115であるターボ圧縮機を制御する。以降、冷却器115はターボ圧縮機以外にもスクリュー圧縮機等の冷却器であってもよい。代表してターボ圧縮機を用いて説明するが、単に冷却器と呼ぶ場合がある。管理システム140は、ワークステーションや汎用計算機で実施できる。また、管理システム140の一部の機能や構成は、ネットワークや携帯電話通信網を介して実施することもできる。冷却器115の制御には、冷却器に内蔵または外部のインバータ等の制御機器により制御することができ、制御機器は、IoT(Internet Of Things)コントローラ、PLC(Programmable Logic Controller)やIoTゲートウェイ等の監視機器でデータを収集し、そのデータを管理システム140が集約し管理することができる。
【0023】
この管理システム140によるターボ圧縮機の制御は、冷凍倉庫110内部に設けられた温度センサ、湿度センサ、またはターボ圧縮機周辺に設けられた着霜検出手段、気象情報150や搬送管理部160に記憶された入出庫情報に基づき制御する。具体的な制御方法は後述する。
【0024】
図2は、本発明が用いられる冷凍倉庫のイメージ図である。
図1で説明した冷凍倉庫110と入出庫口120を、より具体的に説明するための図である。冷凍倉庫110の内部には、冷凍された物品が保管される低温領域250が設けられている。
【0025】
入出庫口120には、荷捌き室220が設けられている。荷捌き室220は、冷凍倉庫110へ物品を搬入出するために搬送手段130が発着するバース210と、バース210から物品を仮置きする仮置場230が設けられている。荷捌き室220と低温領域250との間は搬入出口240が設けられており、フォークリフトAGV(Automated guided vehicle)等の搬送手段によって物品を搬送するとよい。冷凍倉庫110が外気または荷捌き室220に開放され温度上昇が生じにくいような仕組みとなっている。
【0026】
従来は、バース210は、搬送手段130が到着する度に開放されるため、開放されると荷捌き室220には、外気に触れることで、荷捌き室220内の温度や湿度が上昇する。また、荷捌き室220内の温度や湿度が上昇することで、物品を荷捌き室220から低温領域250へ搬入出する際に、低温領域250の温度や湿度が上昇するため、バース210や搬入出口240の開放する回数や時間を少なくするとよい。
【0027】
なお、バース210や搬入出口240のドアは、入出庫の際に開けっ放しにすることも、適宜ドアを閉めることもある。
【0028】
次に、
図3を用いて、本発明の冷凍倉庫管理システムを含む構成について説明する。管理システム140は、入出力部330、制御部310、記憶部320を有している。入出力部330は、キーボードやマウス等の入力手段とディスプレイ等の画面表示を行う装置の別体であってもよい。また、入出力部330は、タッチパネルとディスプレイが一体となったタブレット端末であってもよい。
【0029】
管理システム140の入出力部330を介して、搬送手段130の入出庫情報を管理する搬送管理部160の情報、冷凍倉庫110内に配置された温度、湿度、着霜センサ等の情報、冷凍倉庫が位置する所定の地点における温度、湿度、または、降雨量の予想情報または実際の情報である気象情報150が入力される。気象情報150は、気象予報会社が提供する予測情報でよい。
【0030】
制御部310は、これら入力された情報に基づいて、冷却器115を制御する制御データ(制御量)を作成し、記憶部320へ記憶する。そして、管理システム140は、記憶部320に記憶した制御データに基づいて、入出力部330を通して、冷凍倉庫110内を冷却する冷却器115の運転を制御する。
【0031】
次に、
図4を用いて気象情報150について説明する。気象情報150は、例えば気象予報会社が提供する予測情報である。気象情報150としては、気象情報テーブル410に示される観測地411、予測フラグ412、日時413、気温414、湿度415、降雨量416の情報が記憶されている。気象情報150に記憶される情報のうち、気象情報を予測するまたは観測した地点を観測地411に、その時間を日時413に示す。また、予測フラグ412のカラムは、「0」であれば、実際に観測されたデータであり、「1」であれば、予測したデータであることを意味する。湿度415と降雨量416も同様に、観測地411の地点において予測したまたは実際に観測された湿度(%)と降雨量(mm)を示すものである。気象情報150としては、図の気象情報テーブル410に記憶される情報に限られることなく、例えば風速(m)、日射量(kW/m
2)、赤外照射量(日射放射)等の気象情報150の予測に利用できる情報であれば、他の情報が記憶されていてもよい。
【0032】
図において、例えば、観測地Aの日時8月8日00:00は、気温が24℃、湿度は70%、降雨量は3mmが観測された実測値であることを意味する。また、観測地Aの日時8月8日13:00は、気温が35℃、湿度は57%、降雨量は0mmであることが予測されたものである。
【0033】
なお、気象情報150としてあらかじめ、例えば前日の予測情報を用いる場合は、予測フラグ412のカラムは全て「1」となる。
【0034】
図5を用いて入出庫情報510について説明する。入出庫情報510は、例えば搬送管理部160から提供される入庫や出庫の情報であり、あらかじめ記憶部320に記憶されている。入出庫情報テーブル510には、冷凍倉庫ID511、搬送手段512、状態フラグ513、日時514、証票515、商品516が少なくとも記憶されている。冷凍倉庫ID511は、証票515に記載され、入出庫すべき商品516が入出庫される冷凍倉庫を示す情報である。搬送手段512は、商品516に記載される商品を搬送する搬送手段130(例えば、トラックやトレーラー)を示す情報である。
【0035】
状態フラグ513は、搬送手段512が到着する日時514に記載される時間に、商品516が入庫または出庫されることを示す情報である。日時514は、搬送手段512が冷凍倉庫ID511の対象である冷凍倉庫へ到着する時間を示す。証票515は、入出庫される商品516が搬送手段512に記載される搬送手段により、冷凍倉庫ID511に記載される冷凍倉庫へ搬送されるものであることが示される情報である。証票515は、冷凍倉庫の管理会社または搬送手段130を管理する会社等によって別途伝票、注文書、仕様書や指示書として利用や管理されている場合があり、冷凍倉庫ID511に記載される冷凍倉庫が関係するこの伝票等を証票として搬送管理部160へ予め登録するとよい。
【0036】
図において、例えば、証票aに、搬送手段aaにより冷凍倉庫AAAから8月8日11:30に商品a1とb1が出庫される情報が記載されていることが示されている。また、証票bに、搬送手段abにより冷凍倉庫AAAから8月8日12:00に商品a2とb2とc2が入庫される情報が記載されていることが示されている。
【0037】
ここで、冷凍倉庫110を冷却する冷却器115の制御方法について説明する。まず、冷却器が発生させる熱量Qp[J]を、H1:冷温水出入口温度差、V:冷却器の冷水流量[m3/h]、g:水の密度(=1000)[kg/m3]、c:水の比熱(=4187)[J/(kg・K)]、tp:時間(=1/60)[h]、kp:可変の制御量(=0.01から1)を用い、さらに、H1×V×g×c×tpは冷却器が定格の負荷率で運転した場合の冷却性能であるため、C0と置きかえたものを式1に示す。単位変換等の詳細な説明は省略する。
【0038】
【0039】
次に、冷凍倉庫110の熱損失は、冷凍倉庫の外壁から漏れる冷気と搬入出口のドアから漏れる冷気の和としてQdiv[J]とする。Qdivを、q:外皮熱損失量、S0:冷凍倉庫が接触する外気との面積、H0:冷凍倉庫内の気温と外気温の差、Sd:冷凍倉庫の搬入出口の面積から求めた結果を式2に示す。なお、より精度よく計算するには、外皮平均熱貫流率と外皮面積と冷凍倉庫110内外の気温差を用いて熱損失を求めた場合であっても実施できる。
【0040】
【0041】
冷凍倉庫の温度を維持するためには冷却器が発生させる熱量Qp≧Qdivであるため、式3で表すことができる。
【0042】
【0043】
式3から制御量については、式4で示すことができる。
【0044】
【0045】
式4を用いて数例の制御方法について説明する。
先ず、H0(qS0+Sd)のうちqS0がSdよりも十分に大きい場合である。つまり、冷凍倉庫110の熱損失に比べて、搬入出口の開閉による熱損失が小さい場合である。
【0046】
【0047】
このとき、搬入出口の面積であるSdがS0比べて十分に小さいため、Sdを無視することができるが、搬入出口を開放した際の冷凍倉庫110の内気温への影響はゼロではないため、S0を中心とする制御量に補正を行い、目的の温度よりも冷凍倉庫110内の温度が目標値よりも低くなるよう制御することができる。すなわち、冷却器の制御量は、気象情報と搬入出情報に基づき制御されるものであり、搬入出情報に基づく制御量よりも気象情報に基づく制御量が大きいものである。
【0048】
ここで、Sdの影響が小さい場合、つまり般入出情報による影響が気象情報による影響に比べて十分小さい場合の制御量を補正する制御量kp1として扱う方法を式6に示す。
【0049】
【0050】
つまり、H0qS0/C0はC1より十分大きいため、制御量に与える影響は支配的であり、H0qS0/C0を主な制御量(第1の制御量)として、C1を補助的な制御量(第2の制御量)として取扱うことができる。
【0051】
つまり、制御量kp1は0から1の範囲に収まるように、H0qS0/C0の値を0.1ずつや0.05ずつ変化するように所定の桁数以下で切り上げ等の丸め処理を行うとよい。四捨五入や切り上げ等の演算処理によってSdが小さいときにはその影響を無視できることができ、搬入出口の面積であるSdの影響により冷凍倉庫110内の温度が上昇しても目標値を下回ることがないため、この値を冷却器の推奨負荷率として扱うことができる。切り上げや丸め処理された制御量は、搬入出情報による冷凍倉庫内の気温変化を考慮した制御量である。
【0052】
次に、より高精度な制御について説明する。搬入出口の面積Sdの影響については、搬入出口の開放時間と開放回数によって変化する。そのため、式4におけるH0(qS0+Sd)のうちSdの影響が大きくなり無視できない場合である。この場合は、Sdの影響を考慮しているため高精度に冷凍倉庫110の温度を調整することができる。Sdの影響については、瞬時値ではなく単位時間あたりで求めると制御量を頻繁に変更することなく冷凍倉庫110を運用でき、例えば15分程度の搬入出口の開放時間と開放する数の積算や平均値で求めるとよい。これにより、高精度な制御が可能となる。
【0053】
また、先に特定した推奨負荷率と搬入出口の面積Sdに対する制御量の和を制御量として扱うことができる。この場合は、加算される搬入出口の面積Sdに対する制御量を局所推奨負荷率として取扱うことができ、搬入出口の開放面積と時間に対応した冷却器の制御が可能となる。このとき、推奨負荷率の四捨五入や切り上げ等の丸め処理を行う桁数をより小さい桁に設定することで、より目標値に近い温度を維持することができるため、冷凍倉庫110の省エネ効率を向上させることができる。
【0054】
このように、制御量kp、kp1を使い分けることで、より高精度な温度管理や冷却器を安定させて動作させることを切り替えることができる。
【0055】
図6を用いて、先に説明した推奨負荷率と局所負荷率の特定方法を、フローチャートを用いて説明する。まず、記憶部320に予め記憶させた冷凍倉庫内の目標温度情報、気象情報、冷却器情報、入出庫情報を取得する(S600a)。目標温度情報は、冷凍倉庫内に保管される物品の状態を維持するための温度である。冷却器情報は、先に説明した冷却器が発生させる熱量Qを計算するための冷却器の性能の情報であり、冷却器の製造メーカから提供されるデータシート等により特定される。
【0056】
次に、取得した冷却器情報と目標温度を用いて、冷却器が発生させる熱量Qpと冷凍倉庫の熱損失Qdivを計算し、これらから推奨負荷率kpを特定する(S600b)。
【0057】
その後、特定された推奨負荷率kpによる冷却器の制御によって冷凍倉庫を運用してよいかを冷凍倉庫の管理者に確認を行う(S610a)。このとき、冷凍倉庫の運用状態を表示手段に表示し、管理者の判断を促してもよい。単に推奨負荷率kpを表示するだけでなく、運用状態を示すことで管理者は判断がしやすくなる。計算時間を要する場合は、適宜気象情報から温度や湿度が高いまたは低い時間、詳細な運用計画よりも間引いた時間で運用状態のシミュレーションを行うとよい。
【0058】
管理者が精度の高い制御を選択しない、つまりS610aでNOを選択した場合について説明する。主に、推奨負荷率kpを用いて冷凍倉庫の詳細な運用計画を計算する(S610b)。このとき、先に説明したように推奨負荷率kpを厳密に利用して冷凍倉庫を運用すると、物品の入出庫により冷凍倉庫内の温度が目標温度よりも上がってしまうことを防止するために、式6で説明した推奨負荷率kp1を利用して冷凍倉庫の運用計画を立てるとよい(S610c)。
【0059】
次に、管理者が精度の高い制御を選択する、つまりS610aでYESを選択した場合について説明する。冷却器の補助的な制御量である局所負荷率を特定する(S620a)。局所負荷率は、式5で示されるSd/C0を用いることで詳細な制御量kpを特定することができる。
【0060】
そして、詳細な制御量kpを用いて冷凍倉庫の運用計画を計算する(S620b)。
【0061】
それから、必要に応じて立案された冷凍倉庫の運用計画に対して、管理者による補正や予め設定された入出庫情報に対するオフセットの計算を行ってもよい(S620c)。物品の入出庫にかかる時間は管理者や現場の様子で変化することもあるため、管理者がその様子を確認することで補正することができる。
【0062】
このように、推奨負荷率と局所負荷率に基づく冷凍倉庫の運用計画を立案し、管理者に利用する運用計画を選択させるものであるが、より精度の高い制御を行う必要があるか否かによって、柔軟に冷凍倉庫の運用計画を選択でき、省エネに貢献することができる。
【0063】
次に、
図7を用いて、冷凍倉庫管理システム140の記憶部320に記憶されるデータベースについて説明する。冷凍倉庫管理データベース710は、
図4に記載される気象情報410と、
図5に記載される入出庫情報510とに基づいて、さらに、
図6のフローチャートの処理を行うことにより生成されるデータベースである。
【0064】
冷凍倉庫管理データベース710に登録される情報のうち、冷凍倉庫ID711と日時712は、気象情報410と入出庫情報510に登録されたそれぞれ対応する情報をコピーするとよい。実測気温713は、冷凍倉庫IDに記載される冷凍倉庫の位置に対応する地点の気温の実測値であり、予測フラグ412が「0」である気温414の情報をコピーするとよい。また、予測気温714は対応する地点の気温の予測値であり、予測フラグ412が「1」である気温414の情報をコピーするとよい。入出庫情報715の情報も同様に、搬送手段512、状態フラグ513や商品516との関係から対応する情報を登録するとよい。代表して、入出庫の状態だけ記載しているが、例えば、入出力部330で入出庫情報715にカーソルを合わせて所定時間待機や選択あるいはタッチパネルであればタッチすることにより、入出庫される商品の情報516、搬送手段512や関係する証票515の情報を表示させるようにし、その情報を併せて登録してもよい。これにより、表示する内容を少なくしつつ、必要になったタイミングで確認することができるため、別のデータベースにアクセスしなくとも情報を確認でき便利である。
【0065】
当初負荷率716のカラムは、冷却器の負荷率を一定に制御する従来の設定値を示す。また、当初負荷率における予測温度(℃)717のカラムは、冷却器の負荷率が一定の場合の冷凍倉庫内の温度を示すものである。つまり、図の例では、当初負荷率を70%で稼働させた場合の8月8日00:00の冷凍倉庫内の温度は、-20℃であり、8月8日11:00の冷凍倉庫内の温度は、-19℃であると予測されることが示されている。
【0066】
冷凍倉庫IDのカラム711がAAAの冷凍倉庫は、-10℃を維持できればよいが、実際には、8月8日13:00以外の時間帯は冷却器の負荷率を下げることが可能であることを意味する。冷凍倉庫は外気温と入出庫により温度上昇の影響を受けるものである。外気に対して大まかな制御と入出庫による局所的な制御を行い、これら2つの温度変化に柔軟に対応することにより、冷凍倉庫内の目標温度より低い温度を維持させることができる。つまり、過剰に冷却せずとも冷凍倉庫内の物品の品質を維持可能な温度に制御することで、省エネ効果を得ることができる。
【0067】
つまり、外気温が低い8月8日00:00であれば、冷却器の負荷率が40%であっても、-10℃より低い温度を維持できる。冷却器の制御量は、推奨負荷率(%)のカラム718の制御量に示されている。また、その制御量による冷却器が冷却する冷凍倉庫内の温度は、推奨負荷率における予測温度(℃)のカラム719に示されている。
【0068】
次に、搬送手段130による物品の入出庫による温度上昇の影響に対しては、推奨局所負荷率のカラム720に示されており、入出庫が行われる前の時間帯から冷凍倉庫の温度を下げておくとよい。図の例では、8月8日11:30の出庫に向けて、8月8日11:15から推奨局所負荷率(%)のカラムに記載されるように冷却器の負荷率を2%上げる制御を行うとよい。そして、出庫時の11:30および出庫後の11:45にも負荷率を1%上げている。また、気温が高い時間帯である8月8日13:00の出庫に向けて、8月8日12:45から冷却器の制御量を4%上げるとよい。この場合は、12:30に入庫および12:45にも出庫が行われているため、他の時間帯よりも制御量を多くしている。
【0069】
カラム718の推奨負荷率をカラム720の推奨局所負荷率で補正した補正負荷率をカラム721に示す。補正負荷率721に示される負荷率で冷却器を制御した場合の、入出庫を考慮した予測温度をカラム722に示す。入庫や出庫により温度が上昇する分、入庫時や出庫時の予測温度を修正している。入出庫情報715に基づく推奨局所負荷率720で補正した補正負荷率721で冷却器を制御することにより高精度な冷凍倉庫内の温度制御が可能となる。また、冷凍倉庫内の温度変化も生じにくいため、省エネ効果も期待できる。
【0070】
入庫や出庫に係る時間は、物品の量や種類によって変わってくるので、あらかじめわかっている物品の量や種類などに応じて、推奨局所負荷率の値を変えるようにしてもよい。これにより、より適切な運転を行うことができる。
【0071】
冷凍倉庫管理システム140は、記憶部320に記憶された冷凍倉庫管理データベース710に基づいて、冷凍倉庫110の冷却器115を制御する。つまり、冷凍倉庫ID711に示される冷凍倉庫について、日時712に示される時間に、推奨負荷率718に示される制御量(第1の制御量)を、推奨局所負荷率720に示される制御量(第2の制御量)で補正した制御量で、冷却器115を運転する。
【0072】
なお、当日の運転において、観測した実測気温が得られた場合には、その実測気温713を入力した冷凍倉庫管理データベース710をディスプレイに表示し、
図6のS610cやS620cのステップにおいて、管理者が補正を行い、その後の運転は補正した冷凍倉庫管理データベース710に基づいて運転すればよい。
【0073】
このように、外気温の変化に対する大まかな制御と、外気温の高低を考慮した入出庫に対応する局所的な制御との2段階の制御によって、冷凍倉庫の効率よい温度制御と省エネを実現することができる。ここで大まかな制御とは、局所的な制御よりも大きな割合の制御であることを意味する。つまり、大まかな制御は、局所的な制御に比べて制御量が大きいということであり、大まかな制御量である第1の制御量は、局所的な制御量である第2の制御量よりも大きな制御量であることを意味する。すなわち、気象情報と入出庫情報に基づいた異なる2つの制御量によって冷却器の負荷率を制御するものである。
【0074】
上記した冷凍倉庫管理データベース710に記載される冷却器の推奨負荷率718は一例であるため、適宜変更可能である。また、説明の便宜上一台の冷却器の制御量について説明したが、複数台の冷却器を扱う冷凍倉庫であってもよく、複数台の冷却器の制御量はそれぞれ異なる制御量としてもよい。この場合は、冷却器の効率が最大化するように制御量のバランシング処理等を行うと、更に冷凍倉庫で消費されるエネルギーの効率を高めることができる。また、送風口周辺に着霜することで効率が下がる冷却器が特定または予想される場合には、霜を除去するデフロスト処理中には、デフロスト処理がなされていない冷却器の負荷率を上げることができる。
【0075】
本発明におけるプログラムの発明は、コンピュータに組み込まれコンピュータを上記の冷凍倉庫の管理システムとして動作させるプログラムである。すなわち、冷却手段を制御することによって冷凍倉庫内の温度調整を行うプログラムであって、コンピュータに、少なくとも冷凍倉庫周辺の時間毎の予測温度情報を含む気象情報に基づいて、前記冷却手段の時間毎の第1の制御量を求めるステップと、前記冷凍倉庫に物品が搬入出される搬入出情報に基づいて、前記第1の制御量を修正する第2の制御量を求めるステップと、前記第2の制御量により前記時間毎の第1の制御量を修正して前記冷却手段の全体制御量を求めるステップと、前記冷却手段の全体制御量により、前記冷却手段を運転するステップと、を実行させるためのプログラム、である。上記したプログラムは、記憶媒体に記憶して計算機で実行や配布することができる。
【実施例2】
【0076】
本発明の実施例2について、
図8乃至
図10を用いて説明する。
【0077】
冷凍倉庫110にトラックやトレーラーから荷物を入れる際、冷凍倉庫110の外気の温度や湿度が高いと、冷凍倉庫110の前室である荷捌き室220に外気の影響を受け温度や湿度が高まる場合がある。さらに、荷物の搬入時に冷凍倉庫110内に荷捌き室220を介して高い温度や湿気を持ち込む場合がある。また、雨の激しく降る日や結露によって、荷物に水滴が付着し湿気を帯びた搬入物を冷凍倉庫110に持込み、冷凍倉庫110内でその水滴が蒸発することにより冷凍倉庫110内の霜が増えてしまう場合がある。
【0078】
また、冷凍倉庫110の冷却器周辺に配置されるフィンに霜が発生すると、冷却器の運用効率が低下する。そのため、搬入出口が頻繁に開放される時間帯にデフロスト処理を行うと、冷凍倉庫110内の冷却効率が下がり好ましくない。そこで、霜が発生しないような冷凍倉庫110の運用が必要となる。
【0079】
このような課題に対して、外気の影響を受けにくくし、より省エネ効果を大きくする実施例を説明する。
【0080】
冷凍倉庫110の運用を考慮するにあたって、取得した気象情報のうち、湿度や気温が所定の値よりも高い時間帯には物品の搬入を行わないようにする制約条件を設けることができる。つまり、物品の搬入時間の変更や、物品を搬送する順序を変更する搬送計画を作成し、さらに、変更された搬送計画に対応した冷凍倉庫110の冷却器115の制御量である推奨負荷率や局所負荷率を再計算する。これにより、搬送計画を変更する前後の冷却器の制御量が特定できることから、冷凍倉庫110の省エネ効率を求めることが可能である。これにより、管理者は、実際の搬送計画や省エネ効率から冷凍倉庫110の効率のよい運用を選択することが可能となる。
【0081】
図8に、実施例2の推奨負荷率と局所負荷率の特定方法のフローチャートを示す。推奨負荷率に基づく制御量の特定方法(S600a~S610c)および局所負荷率に基づく制御量の特定方法(S620a~S620c)については、
図6の方法と同様である。
【0082】
本フローチャートでは、局所負荷率の特定(S620a)に続いて、入出庫情報の搬送手段の搬送計画を変更が可能であるかを判断する(S810a)。搬送計画が変更可能でない場合には、
図6と同様に、詳細な制御量k
pを用いて冷凍倉庫の運用計画を計算する(S620b)。
【0083】
搬送計画が変更可能である場合について説明する。搬送計画を変更するための制約条件として、予め変更できる搬送手段の入出庫時間や搬送手段が複数の冷凍倉庫を巡回する経路の変更、湿度の多い時間帯や気温の高い時間帯に入出庫口を開放する開放回数や開放時間を減らす時間帯を設定しておくとよい。物流で変更できるパラメータを事前に入力しておくことで、冷凍倉庫の運用計画と物品の搬送計画全体で省エネに貢献することができる。これらのパラメータを用いて、入出庫情報を変更した冷凍倉庫の運用計画を計算する(S810b)。
【0084】
入出庫情報を変更前と変更後の冷凍倉庫の運用計画に対応する推奨負荷率と局所負荷率を再計算することで、冷凍倉庫の運用計画をそれぞれ立てる(S810c)。この入出庫情報を変更前と変更後の冷凍倉庫の運用計画それぞれの省エネ効率や変更された入出庫情報を管理者に提案する(S810d)。
【0085】
提案された情報に基づき、管理者は運用する冷凍倉庫の運用計画を選択する(S810e)。このとき、管理者は、S620cで説明した補正を行うこともできる。
【0086】
本フローチャートに基づく推奨負荷率と局所負荷率の特定の一例を、
図9および
図10に示す。
【0087】
図9は、冷凍倉庫管理システム140の記憶部320に記憶される冷凍倉庫管理データベースの一例である。冷凍倉庫管理データベース910は、
図4に記載される気象情報410と、
図5に記載される入出庫情報510とに基づいて、さらに、
図8のフローチャートの処理を行うことにより生成されるデータベースである。
【0088】
冷凍倉庫管理データベース910に登録される情報のうち、冷凍倉庫ID911、日時912は、気象情報410と入出庫情報510に登録されたそれぞれ対応する情報をコピーするとよい。
【0089】
予測気温913は、冷凍倉庫IDに記載される冷凍倉庫の位置に対応する地点の気温の予測値であり、予測フラグ412が「1」である気温414の情報をコピーするとよい。また、予測湿度914は冷凍倉庫ID911に記載される冷凍倉庫の位置に対応する地点の湿度の予測値であり、予測フラグ412が「1」である湿度415の情報をコピーするとよい。
【0090】
入出庫情報915の情報も同様に、搬送手段512、状態フラグ513や商品516との関係から対応する情報を登録するとよい。カラム916は当初負荷率である。カラム917は当初負荷率における冷凍倉庫内の予測温度である。カラム918は冷凍倉庫内の温度を保つための推奨負荷率である。カラム919は推奨負荷率における予測温度である。カラム920は、入庫や出庫に応じて補正するための推奨局所負荷率である。例えば、8月9日の11:00では、推奨負荷率65%に対して+4%局所負荷率を上げて、入庫時の温度が上がらない工夫をしている。そして、入庫時の11:15にも+2%局所負荷率を上げている。カラム918の推奨負荷率をカラム920の推奨局所負荷率で補正した補正負荷率をカラム921に示す。補正負荷率921に基づいて冷却器を運転した場合の、入出庫を考慮した冷凍倉庫内の予測温度をカラム922に示す。
【0091】
図9は、
図10に対して入庫の時間帯をシフトする前のデータベースを示している。
図9では8月9日の11:15に入庫を行っているが、この時間は予想気温が高く、湿度も高い状態である。
【0092】
図10に、
図9の冷凍倉庫管理データベース910に対して、入出庫情報の搬送手段の搬送計画を変更した冷凍倉庫管理データベース1010を示す。
図10の冷凍倉庫管理データベース1010では、8月9日の08:15に入庫を行っており、この時間帯は予想気温と予想湿度も同日の11:15と比較して低い時間帯を選択している。これにより、カラム918の推奨負荷率とカラム920の推奨局所負荷率が再計算されている。予想気温や予想湿度が低い時間帯に入庫や出庫を移すことにより、入出庫に伴う推奨局所負荷率を低くすることができ、省エネ効果が期待できる。図の例では、11:15に入庫する
図9の局所負荷率の増加が合計+6%であるのに対し、8:15に入庫する
図10の局所負荷率の増加は合計+3%になっており、省エネが行われている。また、推奨局所負荷率で補正した補正負荷率で冷却器を制御することにより、入庫や出庫が行われても、カラム1022に示す入出庫を考慮した予測温度に示すように冷凍倉庫内の温度を所定の温度以下に維持することができる。
【0093】
本実施例の冷凍倉庫の管理システムまたは管理方法によれば、搬入出情報と時間毎の予測湿度情報とに基づいて、冷凍倉庫の搬入出口が開放されることにより入り込む水分量(湿気)がより小さい時間帯に、前記物品を搬入出することを推奨する推奨搬入出情報を特定し、表示部に、特定された前記入出庫の推奨搬入出情報を表示する。そして、管理者が、入力手段より入力した変更情報により搬入出情報を変更し、変更された制御量により冷却器の運転を行う。冷凍倉庫の搬入出口が開放されることにより入り込む水分量(湿気)がより小さい時間帯に、前記物品を搬入出することを推奨する推奨搬入出情報を特定する際に、管理者が所定の条件を入力してもよいし、搬入出情報の変更に関する制約条件として入力することもできる。
【0094】
冷凍倉庫管理データベース1010の予測気温1013と予測湿度1014の情報を使って、外気と冷凍倉庫内の温度、湿度の偏差が少ない時間帯にシフトすることで、推奨負荷率1018、推奨局所負荷率1020を低減することができ、より省エネ効果を増すことができる。
【0095】
なお、時間毎の予測湿度情報に代えて、搬入出情報と前記時間毎の予測温度情報とに基づいて、前記冷凍倉庫の搬入出口が開放されることにより前記冷凍倉庫周辺の外気温と接触することによって生じる温度変化がより小さい温度変化となる時間帯に、前記物品を搬入出することを推奨する推奨搬入出時間を特定し、表示部に、特定された前記入出庫の推奨搬入出情報を表示する。そして、管理者が、入力手段より入力した変更情報により搬入出情報を変更し、変更された制御量により冷却器の運転を行うようにしてもよい。
【0096】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の主旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をしてもよい。
【符号の説明】
【0097】
100…冷凍倉庫システム
110…冷凍倉庫
115…冷却器
120…入出庫口
130…搬送手段
140…管理システム
150…気象情報
160…搬送管理部
210…バース
220…荷捌き室
230…仮置場
240…搬入出口
250…低温領域
310…制御部
320…記憶部
330…入出力部
410…気象情報テーブル
510…入出庫情報テーブル
710、910、1010…冷凍倉庫管理データベース