IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヒロセ電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-同軸コネクタおよびその組立方法 図1
  • 特許-同軸コネクタおよびその組立方法 図2
  • 特許-同軸コネクタおよびその組立方法 図3
  • 特許-同軸コネクタおよびその組立方法 図4
  • 特許-同軸コネクタおよびその組立方法 図5
  • 特許-同軸コネクタおよびその組立方法 図6
  • 特許-同軸コネクタおよびその組立方法 図7
  • 特許-同軸コネクタおよびその組立方法 図8
  • 特許-同軸コネクタおよびその組立方法 図9
  • 特許-同軸コネクタおよびその組立方法 図10
  • 特許-同軸コネクタおよびその組立方法 図11
  • 特許-同軸コネクタおよびその組立方法 図12
  • 特許-同軸コネクタおよびその組立方法 図13
  • 特許-同軸コネクタおよびその組立方法 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】同軸コネクタおよびその組立方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 24/38 20110101AFI20240826BHJP
   H01R 13/6474 20110101ALI20240826BHJP
【FI】
H01R24/38
H01R13/6474
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021126695
(22)【出願日】2021-08-02
(65)【公開番号】P2023021672
(43)【公開日】2023-02-14
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(72)【発明者】
【氏名】岡部 清貴
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-297493(JP,A)
【文献】特開2003-133015(JP,A)
【文献】特開平09-106866(JP,A)
【文献】独国実用新案第20302072(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R12/00-12/91
H01R13/56-13/72
H01R24/00-24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸ケーブルに取り付けられる同軸端子、および前記同軸端子を収容するハウジングを備えた同軸コネクタであって、
前記同軸端子は、内部端子、前記内部端子の外周側に設けられた絶縁部材、および前記絶縁部材の外周側に設けられた筒状の外部端子を備え、
前記内部端子は、当該内部端子の前端側に形成され相手コネクタの内部端子と接触する内部接触部、および当該内部端子の後端側に形成され前記同軸ケーブルの内部導体が接続される内部接続部を備え、
前記外部端子は、当該外部端子の前端側に形成され前記相手コネクタの外部端子と接触する外部接触部、および当該外部端子の後端側に形成され前記同軸ケーブルの外部導体が接続される外部接続部を備え、
前記外部端子において、前記外部接触部と前記外部接続部との間に位置する中間部は、当該中間部における前側に位置する中間前部、および当該中間部における後側に位置する中間後部を備え、
前記中間前部の内径は前記中間後部の内径よりも大きく、
前記中間前部の内径および前記中間後部の内径は、当該同軸コネクタにおいて、前記中間後部の位置における特性インピーダンスが前記同軸ケーブルの特性インピーダンスと略等しくなり、前記中間前部の位置における特性インピーダンスが前記同軸ケーブルの特性インピーダンスよりも高くなるようにそれぞれ設定されていることを特徴とする同軸コネクタ。
【請求項2】
前記中間前部の内径および前記中間後部の内径は、当該同軸コネクタと前記相手コネクタとの嵌合のがたつきにより、当該同軸コネクタの前記相手コネクタに対する挿抜方向において、当該同軸コネクタと前記相手コネクタとの嵌合時の当該同軸コネクタの前記内部接触部の前記相手コネクタに対する位置がその設計上の正規の位置から位置ずれしている状態において、当該同軸コネクタの前記中間前部の位置における特性インピーダンスが当該同軸コネクタの前記中間後部の位置における特性インピーダンスよりも高く、かつ当該同軸コネクタの前記内部接触部の位置における特性インピーダンスよりも低くなるようにそれぞれ設定されていることを特徴とする請求項1に記載の同軸コネクタ。
【請求項3】
前記外部端子は、前記外部接触部および前記中間前部を含む第1筒状体と、前記中間後部および前記外部接続部を含む第2筒状体とを備え、
前記第1筒状体と前記第2筒状体とは互いに独立した部材であり、前記外部端子は、前記第1筒状体の後端部と前記第2筒状体の前端部とを互いに接合することにより形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の同軸コネクタ。
【請求項4】
前記ハウジングには、前記同軸端子を前記ハウジングに止めるための端子係止片が設けられ、
前記中間前部は円筒状に形成され、
前記中間後部は当該中間後部の外周面の一部が平面になった欠円筒状に形成され、
前記中間後部の外周面において平面になった部分と前記中間前部の後端との間に形成された段部に前記端子係止片が当たることにより、前記同軸端子が前記ハウジングに止められることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の同軸コネクタ。
【請求項5】
前記中間後部の外径は、前記中間前部内に前記中間後部が嵌合されるように、前記中間前部の内径と略等しい値に設定されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の同軸コネクタ。
【請求項6】
前記絶縁部材は筒状に形成され、
前記絶縁部材内に内部端子が挿入され、
前記絶縁部材は、前記中間前部内に位置する第1絶縁部、および前記中間後部内に位置する第2絶縁部を備え、
前記第1絶縁部の横断面形状と前記第2絶縁部の横断面形状とが互いに異なることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の同軸コネクタ。
【請求項7】
同軸コネクタの組立方法であって、
前記同軸コネクタは、同軸ケーブルに取り付けられる同軸端子、および前記同軸端子を収容するハウジングを備え、前記同軸端子は、内部端子、前記内部端子の外周側に設けられた絶縁部材、および前記絶縁部材の外周側に設けられた筒状の外部端子を備え、前記内部端子は、当該内部端子の前端側に形成され相手コネクタの内部端子と接触する内部接触部、および当該内部端子の後端側に形成され前記同軸ケーブルの内部導体が接続される内部接続部を備え、前記外部端子は、当該外部端子の前端側に形成され前記相手コネクタの外部端子と接触する外部接触部、および当該外部端子の後端側に形成され前記同軸ケーブルの外部導体が接続される外部接続部を備え、前記外部端子において、前記外部接触部と前記外部接続部との間に位置する中間部は、当該中間部における前側に位置する中間前部、および当該中間部における後側に位置する中間後部を備え、前記中間前部の内径は前記中間後部の内径よりも大きく、前記中間前部の内径および前記中間後部の内径は、前記同軸コネクタにおいて、前記中間後部の位置における特性インピーダンスが前記同軸ケーブルの特性インピーダンスと略等しくなり、前記中間前部の位置における特性インピーダンスが前記同軸ケーブルの特性インピーダンスよりも高くなるようにそれぞれ設定され、前記外部端子は、前記外部接触部および前記中間前部を含む第1筒状体と、前記中間後部および前記外部接続部を含む第2筒状体とを備え、前記第1筒状体と前記第2筒状体とは互いに独立した部材であり、
前記同軸コネクタの組立方法は、
前記絶縁部材の後部を前記第2筒状体の前部に挿入し、かつ前記絶縁部材の前部を前記第1筒状体の後部に挿入する第1の工程と、
前記第1筒状体の後端部と前記第2筒状体の前端部とを互いに接合することにより、前記絶縁部材を内包した前記外部端子を形成する第2の工程と、
前記内部接続部に前記同軸ケーブルの内部導体が接続された前記内部端子を、前記絶縁部材を内包した前記外部端子に当該外部端子の後方から挿入する第3の工程と、
前記同軸ケーブルの外部導体を前記外部端子の前記外部接続部に接続する第4の工程と、
前記同軸ケーブルの内部導体および外部導体が前記内部接続部および前記外部接続部にそれぞれ接続された前記同軸端子を前記ハウジング内に収容する第5の工程とを備えていることを特徴とする同軸コネクタの組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸端子を備えた同軸コネクタおよびその組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
同軸ケーブルは、内部導体と外部導体とが絶縁体を介して同軸に配置されたケーブルであり、高周波信号の伝送に適している。同軸コネクタは同軸ケーブルに取り付けられ、同軸ケーブルと共に高周波信号の伝送経路を形成する部品として用いられる。同軸コネクタの同軸端子は、内部端子と外部端子とが絶縁部材を介して同軸に配置された構成を有している。同軸コネクタの特性インピーダンスを同軸ケーブルの特性インピーダンスと整合させることにより、同軸コネクタと同軸ケーブルとの間における信号の反射波を抑制することができ、高周波信号の伝送の品質を向上させることができる。下記の特許文献1には同軸コネクタの一例が記載されている。
【0003】
同軸コネクタは、同軸端子を備えた他の同軸コネクタ(以下、これを「相手コネクタ」という。)と嵌合される。同軸コネクタと相手コネクタとが互いに嵌合されることにより、同軸コネクタの同軸端子における内部端子と相手コネクタの同軸端子における内部端子とが互いに接触して電気的に接続され、また、同軸コネクタの同軸端子における外部端子と相手コネクタの同軸端子における外部端子とが互いに接触して電気的に接続される。また、同軸コネクタの特性インピーダンスを同軸ケーブルの特性インピーダンスと整合させることによって同軸コネクタと同軸ケーブルとの間における信号の反射波を抑制することができるのと同様に、同軸コネクタの特性インピーダンスと相手コネクタの特性インピーダンスとを互いに整合させることによって同軸コネクタと相手コネクタとの間における信号の反射波を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第10826216号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、同軸コネクタが、係止凸部を係止凹部(または係止穴)に係合させるといったような係止機構を備え、この係止機構によって同軸端子を同軸コネクタのハウジングに止める構造を有している場合、通常、同軸コネクタと相手コネクタとの間には嵌合のがたつきが生じる(なお、相手コネクタがこのような構造を有している場合も同様に嵌合のがたつきが生じる)。以下、同軸コネクタと相手コネクタとの嵌合のがたつきを「嵌合がた」という。
【0006】
すなわち、同軸コネクタの組立時に、係止凸部が係止凹部に入ることができ、また、同軸コネクタの分解時に、係止凸部が係止凹部から出ることができるようにするために、同軸コネクタの係止機構は、係止凸部と係止凹部とが互いに係合した状態において、係止凸部と係止凹部との間に所定のクリアランス(遊び)が確保されるように設計されている。係止凸部と係止凹部との間にこのようなクリアランスが確保されているため、互いに嵌合され、かつロックされている同軸コネクタと相手コネクタとを、まず両者が互いに近づく方向に押し、次に、両者が互いに離れる方向に引っ張ったとき、同軸コネクタが相手コネクタに対して両者の挿抜方向に僅かに移動する。この移動が嵌合がたに相当する。
【0007】
ここで、互いに嵌合され、かつロックされている同軸コネクタと相手コネクタとを両者が互いに近づく方向に押したときにおける同軸コネクタの内部端子の接触部の相手コネクタに対する挿抜方向における位置を、コネクタ嵌合時における同軸コネクタの内部端子の接触部の正規の位置とする。この場合、これら同軸コネクタと相手コネクタとを両者が互いに離れる方向に引っ張ったとき、同軸コネクタの内部端子の接触部が上記正規の位置から位置ずれする。
【0008】
同軸コネクタの内部端子の接触部が上記正規の位置から位置ずれすることにより、同軸コネクタと相手コネクタとの間において特性インピーダンスの不整合が生じることがある。すなわち、同軸コネクタの内部端子の接触部が上記正規の位置にあるときには、同軸コネクタと相手コネクタとの間における特性インピーダンスが整合しているが、同軸コネクタの内部端子の接触部が上記正規の位置から位置ずれしたときには、同軸コネクタと相手コネクタとの間における特性インピーダンスが整合しなくなることがある。このような特性インピーダンスの不整合が生じることにより、同軸コネクタと相手コネクタとの間における信号の反射波のレベルが大幅に増加することがある。高周波信号の伝送の品質を向上させるために、または信号を高品質に伝送することができる周波数範囲の上限を高めるために、このような同軸コネクタと相手コネクタとの嵌合がたに起因する反射波のレベルの増加を抑制することが求められる。
【0009】
本発明の課題は、同軸コネクタと相手コネクタとの嵌合がたによって生じる反射波のレベルの増加の程度を小さくすることができる同軸コネクタおよびその組立方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の同軸コネクタは、同軸ケーブルに取り付けられる同軸端子、および前記同軸端子を収容するハウジングを備えた同軸コネクタであって、前記同軸端子は、内部端子、前記内部端子の外周側に設けられた絶縁部材、および前記絶縁部材の外周側に設けられた筒状の外部端子を備え、前記内部端子は、当該内部端子の前端側に形成され相手コネクタの内部端子と接触する内部接触部、および当該内部端子の後端側に形成され前記同軸ケーブルの内部導体が接続される内部接続部を備え、前記外部端子は、当該外部端子の前端側に形成され前記相手コネクタの外部端子と接触する外部接触部、および当該外部端子の後端側に形成され前記同軸ケーブルの外部導体が接続される外部接続部を備え、前記外部端子において、前記外部接触部と前記外部接続部との間に位置する中間部は、当該中間部における前側に位置する中間前部、および当該中間部における後側に位置する中間後部を備え、前記中間前部の内径は前記中間後部の内径よりも大きく、前記中間前部の内径および前記中間後部の内径は、当該同軸コネクタにおいて、前記中間後部の位置における特性インピーダンスが前記同軸ケーブルの特性インピーダンスと略等しくなり、前記中間前部の位置における特性インピーダンスが前記同軸ケーブルの特性インピーダンスよりも高くなるようにそれぞれ設定されていることを特徴とする。
【0011】
また、上記本発明の同軸コネクタにおいて、前記中間前部の内径および前記中間後部の内径は、当該同軸コネクタと前記相手コネクタとの嵌合のがたつきにより、当該同軸コネクタの前記相手コネクタに対する挿抜方向において、当該同軸コネクタと前記相手コネクタとの嵌合時の当該同軸コネクタの前記内部接触部の前記相手コネクタに対する位置がその設計上の正規の位置から位置ずれしている状態において、当該同軸コネクタの前記中間前部の位置における特性インピーダンスが当該同軸コネクタの前記中間後部の位置における特性インピーダンスよりも高く、かつ当該同軸コネクタの前記内部接触部の位置における特性インピーダンスよりも低くなるようにそれぞれ設定されていることとしてもよい。
【0012】
また、上記本発明の同軸コネクタにおいて、前記外部端子は、前記外部接触部および前記中間前部を含む第1筒状体と、前記中間後部および前記外部接続部を含む第2筒状体とを備え、前記第1筒状体と前記第2筒状体とは互いに独立した部材であり、前記外部端子は、前記第1筒状体の後端部と前記第2筒状体の前端部とを互いに接合することにより形成されていることとしてもよい。
【0013】
また、上記本発明の同軸コネクタにおいて、前記ハウジングには、前記同軸端子を前記ハウジングに止めるための端子係止片が設けられ、前記中間前部は円筒状に形成され、前記中間後部は当該中間後部の外周面の一部が平面になった欠円筒状に形成され、前記中間後部の外周面において平面になった部分と前記中間前部の後端との間に形成された段部に前記端子係止片が当たることにより、前記同軸端子が前記ハウジングに止められることとしてもよい。
【0014】
また、上記本発明の同軸コネクタにおいて、前記中間後部の外径は、前記中間前部内に前記中間後部が嵌合されるように、前記中間前部の内径と略等しい値に設定されていることとしてもよい。
【0015】
また、上記本発明の同軸コネクタにおいて、前記絶縁部材は筒状に形成され、前記絶縁部材内に内部端子が挿入され、前記絶縁部材は、前記中間前部内に位置する第1絶縁部、および前記中間後部内に位置する第2絶縁部を備え、前記第1絶縁部の横断面形状と前記第2絶縁部の横断面形状とが互いに異なることとしてもよい。
【0016】
また、本発明の同軸コネクタの組立方法は、同軸ケーブルに取り付けられる同軸端子、および前記同軸端子を収容するハウジングを備えた同軸コネクタの組立方法であり、前記同軸コネクタにおいて、前記同軸端子は、内部端子、前記内部端子の外周側に設けられた絶縁部材、および前記絶縁部材の外周側に設けられた筒状の外部端子を備え、前記内部端子は、当該内部端子の前端側に形成され相手コネクタの内部端子と接触する内部接触部、および当該内部端子の後端側に形成され前記同軸ケーブルの内部導体が接続される内部接続部を備え、前記外部端子は、当該外部端子の前端側に形成され前記相手コネクタの外部端子と接触する外部接触部、および当該外部端子の後端側に形成され前記同軸ケーブルの外部導体が接続される外部接続部を備え、前記外部端子において、前記外部接触部と前記外部接続部との間に位置する中間部は、当該中間部における前側に位置する中間前部、および当該中間部における後側に位置する中間後部を備え、前記中間前部の内径は前記中間後部の内径よりも大きく、前記中間前部の内径および前記中間後部の内径は、当該同軸コネクタにおいて、前記中間後部の位置における特性インピーダンスが前記同軸ケーブルの特性インピーダンスと略等しくなり、前記中間前部の位置における特性インピーダンスが前記同軸ケーブルの特性インピーダンスよりも高くなるようにそれぞれ設定され、前記外部端子は、前記外部接触部および前記中間前部を含む第1筒状体と、前記中間後部および前記外部接続部を含む第2筒状体とを備え、前記第1筒状体と前記第2筒状体とは互いに独立した部材である。そして、当該同軸コネクタの組立方法は、前記絶縁部材の後部を前記第2筒状体の前部に挿入し、かつ前記絶縁部材の前部を前記第1筒状体の後部に挿入する第1の工程と、前記第1筒状体の後端部と前記第2筒状体の前端部とを互いに接合することにより、前記絶縁部材を内包した前記外部端子を形成する第2の工程と、前記内部接続部に前記同軸ケーブルの内部導体が接続された前記内部端子を、前記絶縁部材を内包した前記外部端子に当該外部端子の後方から挿入する第3の工程と、前記同軸ケーブルの外部導体を前記外部端子の前記外部接続部に接続する第4の工程と、前記同軸ケーブルの内部導体および外部導体が前記内部接続部および前記外部接続部にそれぞれ接続された前記同軸端子を前記ハウジング内に収容する第5の工程とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、同軸コネクタと相手コネクタとの嵌合がたによって生じる反射波のレベルの増加の程度を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態の同軸コネクタの斜視図である。
図2】本発明の実施形態の同軸コネクタの分解図である。
図3図1中の切断線III-IIIに沿って切断した同軸コネクタの断面を示す断面図である。
図4】本発明の実施形態の同軸コネクタにおける同軸端子の分解図である。
図5】本発明の実施形態の同軸コネクタにおける同軸端子の斜視図である。
図6図5中の切断線VI-VIに沿って切断した同軸端子の断面を示す断面図である。
図7図6中の切断線VII-VIIに沿って切断した同軸端子の断面を示す断面図である。
図8図6中の切断線VIII-VIIIに沿って切断した同軸端子の断面を示す断面図である。
図9】本発明の実施形態の同軸コネクタと嵌合される相手コネクタの断面図である。
図10】本発明の実施形態において、互いに嵌合された同軸コネクタと相手コネクタとの間に嵌合がたが生じることを示す説明図である。
図11】本発明の実施形態において、互いに嵌合された同軸コネクタおよび相手コネクタに測定用の信号波を入力してTDR測定を行った結果を示す特性線図である。
図12】本発明の実施形態における同軸コネクタのVSWRの測定結果を示す特性線図である。
図13】本発明の実施形態の同軸コネクタの組立方法を示す説明図である。
図14】本発明の同軸コネクタの実施形態における同軸端子の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の同軸コネクタの実施の形態につき、図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態の同軸コネクタに関し、前(Fd)、後(Bd)、上(Ud)、下(Dd)、左(Ld)、右(Rd)の方向を述べる際には、図1~8および13~14の各図の左下に描いた矢印に従う。
【0020】
(同軸コネクタの構成)
図1は本発明の実施形態の同軸コネクタ1を左前上方から見た状態を示している。図2は同軸コネクタ1を分解した状態を示している。図3図1中の切断線III-IIIに沿って切断した同軸コネクタ1の断面を左方から見た状態を示している。
【0021】
同軸コネクタ1は、図1および図2に示すように、同軸端子31、ハウジング11およびリテーナ21を備えている。同軸端子31は同軸ケーブル5の端部に取り付けられる。ハウジング11は同軸端子31を収容する。リテーナ21は同軸端子31をハウジング11に止めるための部材である。
【0022】
同軸ケーブル5は、図3に示すように、内部導体6、外部導体7、絶縁体8および保護被覆9を備えている。外部導体7は、内部導体6の外周側に、内部導体6と同軸に配置されている。絶縁体8は内部導体6と外部導体7との間に配置され、内部導体6と外部導体7との間を絶縁する。保護被覆9は、絶縁材料により形成され、外部導体7の外周側を覆っている。同軸ケーブル5の特性インピーダンスは、外部導体7の内径、内部導体6の直径および絶縁体8の比誘電率により算出することができる。同軸ケーブル5の特性インピーダンスは例えば50Ωである。
【0023】
ハウジング11は、樹脂等の絶縁材料により、筒状に形成されている。ハウジング11は、図3に示すように、嵌合穴12、端子収容部13およびケーブル引き出し穴14を備えている。嵌合穴12は、ハウジング11における前端側に位置し、相手コネクタ71(図9参照)の前端部と嵌合される穴である。端子収容部13は、ハウジング11の前後方向中間に位置し、同軸端子31を収容する部分である。ケーブル引き出し穴14は、ハウジング11における後端側に位置し、同軸端子31に取り付けられたケーブルが引き出される穴である。
【0024】
また、ハウジング11の後部の上部には、同軸端子31をハウジング11に止めるための端子係止片15が設けられている。また、ハウジング11の後部の下部には、リテーナ挿入部16およびリテーナ係止穴17が設けられている。リテーナ挿入部16は、リテーナ21が挿入される部分である。リテーナ係止穴17は、リテーナ21をハウジング11に係止するための穴である。リテーナ21には、当該リテーナ21の後部の下面から下方へ突出した係止凸部22が設けられている。係止凸部22がリテーナ係止穴17に入ることにより、リテーナ21がハウジング11に係止される。また、ハウジング11の前部の上部には、コネクタ係止穴18が設けられている。コネクタ係止穴18は、同軸コネクタ1に嵌合された相手コネクタ71を同軸コネクタ1に対して抜け止めするための穴である。コネクタ係止穴18には、相手コネクタ71のロック片83が挿入される。
【0025】
図4は同軸端子31を分解した状態を示している。図5は同軸端子31を左前上方から見た状態を示している。図6図5中の切断線VI-VIに沿って切断した同軸端子31の断面を左方から見た状態を示している。なお、図5および図6はケーブル固定部材65が取り付けられていない状態の同軸端子31を示している。
【0026】
同軸端子31は、図4に示すように、内部端子32、外部端子41、絶縁部材55およびケーブル固定部材65を備えている。図6に示すように、絶縁部材55は内部端子32の外周側に設けられ、外部端子41は絶縁部材55の外周側に設けられている。
【0027】
内部端子32は、金属等の導電材料により、前端部が閉塞された筒状に形成されている。内部端子32は、内部端子32の前端側部分に形成された接触部33、内部端子32の後端側部分に形成された接続部34、および接触部33と接続部34との間に位置する中間部35を備えている。接触部33は、相手コネクタ71の内部端子86と接触する部分である。接触部33は、その外形がピン状に形成されている。一方、接続部34は、同軸ケーブル5の内部導体6と接続される部分である。接続部34には、内部導体6をかしめて固定する内部導体かしめ部36が設けられている。なお、内部端子32の接触部33は「内部接触部」の具体例であり、内部端子32の接続部34は「内部接続部」の具体例である。
【0028】
外部端子41は、金属等の導電材料により、筒状に形成されている。外部端子41は、図5に示すように、外部端子41の前端側部分に形成された接触部42、外部端子41の後端側部分に形成された接続部43、および接触部42と接続部43との間に位置する中間部(中間前部45および中間後部46)を備えている。
【0029】
接触部42は、相手コネクタ71の外部端子90と接触する部分である。接触部42は、複数の接触片42Aを有している。また、接触部42は、内部端子32の接触部33の外周側に位置している。一方、接続部43は、同軸ケーブル5の外部導体7と接続される部分である。接続部43には切欠き44が形成されており、これにより、接続部43は縮径することができる。接続部43は、後述するように、接続部43とケーブル固定部材65との間に外部導体7が挟み込まれた状態で、ケーブル固定部材65に押されて縮径することにより、接続部43内に挿入された同軸ケーブル5の内部導体6および絶縁体8を締め付けて支持する。なお、外部端子41の接触部42は「外部接触部」の具体例であり、外部端子41の接続部43は「外部接続部」の具体例である。
【0030】
外部端子41の中間部は、中間前部45および中間後部46を有している。中間前部45は外部端子41の中間部における前側の部分である。中間後部46は外部端子41の中間部における後側の部分である。また、中間前部45は内部端子32の中間部35の外周側に位置しており、中間後部46は、内部端子32における中間部35の後部から接続部34の後部にかけての部分の外周側に位置している。
【0031】
外部端子41は、接触部42および中間前部45を含む第1筒状体51と、中間後部46および接続部43を含む第2筒状体52とを互いに接合することにより形成されている。すなわち、第1筒状体51と第2筒状体52とは互いに独立した部材により形成されており、同軸コネクタ1の組立前の段階においては、第1筒状体51と第2筒状体52とは互いに分離している。同軸コネクタ1の組立時に、第2筒状体52の前端側部分(中間後部46の前端側部分)が第1筒状体51の後端側部分(中間前部45の後端側部分)に挿入され、第1筒状体51の後端側部分と第2筒状体52の前端側部分とが例えば溶接等の手段により互いに接合される。
【0032】
図7図6中の切断線VII-VIIに沿って切断した同軸端子31の横断面を前方から見た状態を示している。図8図6中の切断線VIII-VIIIに沿って切断した同軸端子31の横断面を前方から見た状態を示している。図7または図8に示すように、中間前部45は円筒状に形成されており、中間前部45の横断面の形状は円である。一方、図8に示すように、中間後部46は、その外周面の一部が平面になった欠円筒状に形成されており、中間後部46の横断面の形状は欠円(一部を欠いた円)である。
【0033】
また、図8において、中間前部45の内径D1は中間後部46の内径D2よりも大きい。また、中間後部46の内周面の最上の位置と中間後部46の内周面の最下の位置との間の距離D3は、中間後部46の内径D2よりも小さい。中間前部45の内径D1、中間後部46の内径D2、および中間後部46の内周面の最上の位置と中間後部46の内周面の最下の位置との間の距離D3は、同軸コネクタ1において、中間前部45の位置における特性インピーダンスが中間後部46の位置における特性インピーダンスよりも高くなるようにそれぞれ設定されている。具体的には、上記D1、D2およびD3は、同軸コネクタ1において、中間後部46の位置における特性インピーダンスが同軸ケーブル5の特性インピーダンスと略等しくなり、かつ中間前部45の位置における特性インピーダンスが同軸ケーブル5の特性インピーダンスよりも高くなるようにそれぞれ設定されている。
【0034】
また、中間後部46の外径は、中間前部45の後端側部分内に中間後部46の前端側部分が嵌合されるように中間前部の内径D1と略等しい値に設定されている。具体的には、中間後部46の外径は、中間前部45の内径D1よりも僅かに小さい値に設定されている。
【0035】
また、中間後部46の外周面において平面になった部分は、当該部分に対応する中間前部45の外周面に対して、外部端子41の軸心に向かって径方向に凹んだ凹み部47となっている。凹み部47は中間後部46の上部に位置している。また、中間後部46の凹み部47と中間前部45の上部の後端との間には、図6に示すように、係止段部48が形成されている。図3に示すように、係止段部48に端子係止片15が当たることにより、同軸端子31がハウジング11から抜け止めされる。
【0036】
また、中間後部46の下部には、中間後部46から下方に突出した突出部49が設けられている。突出部49の後端部にリテーナ21の前端部が当たることにより、同軸端子31がハウジング11に止められる。また、図示していないが、ハウジング11には、同軸端子31がハウジング11に対して前方に移動しないように同軸端子31を位置決めする構造が設けられている。同軸端子31は、この位置決め構造と、端子係止片15と、リテーナ21により、ハウジング11内に支持されている。
【0037】
絶縁部材55は、図6に示すように、樹脂等の絶縁材料により、筒状に形成されている。絶縁部材55は外部端子41内に配置される。また、絶縁部材55内には内部端子32が挿入される。
【0038】
絶縁部材55は、端子位置決め部56、第1絶縁部61および第2絶縁部62を備えている。
【0039】
端子位置決め部56は絶縁部材55の前端側部分に形成されている。端子位置決め部56は内部端子32を位置決めする機能を有している。図4に示すように、端子位置決め部56は円筒状に形成されている。端子位置決め部56の内径は、端子位置決め部56内に内部端子32の中間部35がぴったりと挿入されるように、内部端子32の中間部35の外径と略等しい値に設定されている。また、端子位置決め部56の外周側には、径方向外向きに突出した複数の凸部57が形成されている。各凸部57の先端は、図6に示すように、外部端子41の接触部42の基端側部分の内周面に接触する。これにより、絶縁部材55内に挿入された内部端子32が端子位置決め部56を介して外部端子41に対して位置決めされる。
【0040】
第1絶縁部61は、図6に示すように、絶縁部材55の前部に形成され、外部端子41の中間前部45内に位置している。第1絶縁部61は内部端子32の中間部35を全周に亘って覆っている。また、第1絶縁部61の内周面は内部端子32の中間部35の外周面に、全周に亘って、接触し、または極めて接近している。また、図7に示すように、第1絶縁部61は、上下方向(同軸コネクタ1の挿抜方向と直交する第1の方向)の長さが中間前部45の内径D1と略等しく、左右方向(上記挿抜方向および上記第1の方向の双方と直交する第2の方向)の長さが中間前部45の内径D1よりも小さい。すなわち、第1絶縁部61は上下方向に伸長し、第1絶縁部61の上端は中間前部45の内周面における上側部分に接触し、または極めて接近している。また、第1絶縁部61の下端は中間前部45の内周面における下側部分に接触し、または極めて接近している。一方、第1絶縁部61と中間前部45の内周面における左側部分との間には空間E1が形成されている。また、第1絶縁部61と中間前部45の内周面における右側部分との間にも空間E1が形成されている。
【0041】
第2絶縁部62は、図6に示すように、絶縁部材55の後部に形成され、外部端子41の中間後部46内に位置している。第2絶縁部62は、図8に示すように、内部端子32における中間部35の後部から接続部34の後部にかけての部分を全周に亘って覆っている。また、図8図7とを比較するとわかる通り、第2絶縁部62の横断面形状は、第1絶縁部61の横断面形状と異なっている。第2絶縁部62は、中間後部46の横断面形状と略対応する欠円状の横断面形状を有しており、中間後部46内に嵌合されている。また、第2絶縁部62の内部において、絶縁部材55内に配置されている内部端子32の中間部35の後部から接続部34の後部にかけての部分の下方には、空間E2が形成されている。
【0042】
同軸コネクタ1において、中間前部45の位置における特性インピーダンスおよび中間後部46の位置における特性インピーダンスは、主に、内部端子32の外径、中間前部45の内径D1、中間後部46の内径D2、中間後部46の内周面の最上の位置と中間後部46の内周面の最下の位置との間の距離D3、絶縁部材55の比誘電率、空間E1およびE2内の空気の比誘電率、第1絶縁部61、第2絶縁部62、空間E1および空間E2のそれぞれの体積等により定まる。上述したように、上記D1、D2およびD3は、同軸コネクタ1において、中間前部45の位置における特性インピーダンスが中間後部46の位置における特性インピーダンスよりも高くなるようにそれぞれ設定されているが、これに加え、第1絶縁部61、第2絶縁部62、空間E1および空間E2の体積等も、同軸コネクタ1において、中間前部45の位置における特性インピーダンスが中間後部46の位置における特性インピーダンスよりも高くなるようにそれぞれ設定されている。具体的には、同軸コネクタ1において、中間後部46の位置における特性インピーダンスが同軸ケーブル5の特性インピーダンスと略等しくなり、かつ中間前部45の位置における特性インピーダンスが同軸ケーブル5の特性インピーダンスよりも高くなるように、上記D1、D2、D3、並びに第1絶縁部61、第2絶縁部62、空間E1および空間E2の体積等がそれぞれ設定されている。
【0043】
一方、図4において、ケーブル固定部材65は、外部端子41の接続部43と同軸ケーブル5の外部導体7とを電気的に接続すると共に、同軸端子31に同軸ケーブル5を固定するための部材である。ケーブル固定部材65は金属等の導電材料により形成されている。ケーブル固定部材65は外部導体かしめ部66および保護被覆かしめ部67を備えている。外部導体かしめ部66は、外部端子41の接続部43の外周側に配置された同軸ケーブル5の外部導体7の先端部を、当該外部導体7の先端部の外周側からかしめることにより、図3に示すように、当該外部導体7の先端部を接続部43に押し当てて接触させる。また、外部導体かしめ部66は、当該外部導体7の先端部を接続部43に押し当てると同時に、切欠き44が形成された接続部43を縮径させる。接続部43が縮径することにより、接続部43内に挿入された同軸ケーブル5の内部導体6および絶縁体8が締め付けられて接続部43により支持される。保護被覆かしめ部67は同軸ケーブル5の保護被覆9の先端部をかしめることにより、同軸ケーブル5を同軸端子31に固定する。
【0044】
(相手コネクタの構成)
図9は、同軸コネクタ1と嵌合される相手コネクタ71を示している。図9において、相手コネクタ71は、同軸端子85、ハウジング72およびリテーナ79を備えている。同軸端子85は同軸ケーブル10の端部に取り付けられている。相手コネクタ71のハウジング72は、同軸コネクタ1の嵌合穴12と嵌合される嵌合部73を備えている。また、相手コネクタ71のハウジング72は、同軸コネクタ1のハウジング11と同様に、端子収容部74およびケーブル引き出し穴75を備えている。また、相手コネクタ71のハウジング72には、同軸コネクタ1のハウジング11と同様に、端子係止片76、リテーナ挿入部77およびリテーナ係止穴78が設けられている。また、リテーナ79には係止凸部80が設けられている。
【0045】
さらに、相手コネクタ71のハウジング72の上部にはロック機構81が設けられている。ロック機構81は、同軸コネクタ1と相手コネクタ71とが互いに嵌合されたとき、同軸コネクタ1と相手コネクタ71とが分離しないように両者を互いにロックする機構である。ロック機構81は、梁部82、梁部82に設けられたロック片83、およびロック解除操作部84を備えている。ロック片83は、同軸コネクタ1と相手コネクタ71とが互いに嵌合されたとき、同軸コネクタ1のハウジング11に設けられたコネクタ係止穴18にその下方から入り、同軸コネクタ1と相手コネクタ71とを互いにロックする(図10参照)。また、利用者がロック解除操作部84を押すと、梁部82が弾性変形し、ロック片83が下方に移動し、ロック片83がコネクタ係止穴18から出て、ロックが解除される。
【0046】
相手コネクタ71の同軸端子85は、内部端子86、外部端子90、絶縁部材97およびケーブル固定部材101を備えている。
【0047】
相手コネクタ71の内部端子86の接触部87は、先端が開口した筒状に形成されている。また、内部端子86の接続部88および中間部89は、同軸コネクタ1における内部端子32の接続部34および中間部35と同様に形成されている。
【0048】
相手コネクタ71の外部端子90の接触部91は、先端が開口した筒状に形成されている。また、外部端子90の接続部92は、同軸コネクタ1における外部端子41の接続部43と同様に形成されている。また、相手コネクタ71の外部端子90は中間前部93および中間後部94を有している。中間前部93の内径は中間後部94の内径よりも大きい。また、相手コネクタ71の外部端子90は、第1筒状体と第2筒状体とに分離されておらず、単一の筒状の部材により形成されている。また、相手コネクタ71の外部端子90の中間後部94の上部には凹み部95が形成されている。凹み部95は、同軸コネクタ1における凹み部47と同様に、中間後部94を、その外周面の一部が平面になった欠円筒状に形成することにより形成されている。また、中間前部93の上部には係止段部96が形成されている。
【0049】
絶縁部材97は、樹脂等の絶縁材料により、筒状に形成されている。絶縁部材97内には内部端子86が挿入されている。また、絶縁部材97は、内部端子86の接触部87を包囲する端子包囲部98、外部端子90の中間前部93内に配置された第1絶縁部99、および外部端子90の中間後部94内に配置された第2絶縁部100を備えている。ケーブル固定部材101は、同軸コネクタ1のケーブル固定部材65と同様に形成されている。
【0050】
図10(A)および図10(B)は、同軸コネクタ1と相手コネクタ71とが互いに嵌合された状態をそれぞれ示している。図10(A)に示すように、同軸コネクタ1と相手コネクタ71とが互いに嵌合されたとき、相手コネクタ71のハウジング72の嵌合部73が同軸コネクタ1のハウジング11の嵌合穴12内に嵌合される。また、同軸コネクタ1の外部端子41の接触部42が相手コネクタ71の外部端子90の接触部91内に挿入される。また、同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33が相手コネクタ71の絶縁部材97の端子包囲部98内に進入し、端子包囲部98内に配置されている内部端子86の接触部87内に挿入される。また、相手コネクタ71のロック片83が同軸コネクタ1のコネクタ係止穴18に入り、同軸コネクタ1と相手コネクタ71とが互いにロックされる。
【0051】
(同軸コネクタの高周波特性)
同軸コネクタ1の高周波特性は、同軸コネクタ1と相手コネクタ71との嵌合がた(嵌合のがたつき)の影響を受ける。嵌合がたは、同軸コネクタ1または相手コネクタ71の組付誤差等によって生じることもあるが、同軸コネクタ1および相手コネクタ71のそれぞれの本来的な構造によっても生じる。ここで、同軸コネクタ1および相手コネクタ71の本来的な構造によって生じる嵌合がたについて、図3および図10を参照しながら説明する。
【0052】
図3は、同軸端子31がハウジング11に完全に組付けられた状態(同軸コネクタ1の組立が正常に完了した状態)の同軸コネクタ1を示している。図3に示すように、この同軸コネクタ1において、同軸端子31は、ハウジング11の端子係止片15が同軸端子31の係止段部48に当たること、リテーナ21の前端部が同軸端子31の突出部49に当たること、およびリテーナ21の係止凸部がハウジング11のリテーナ係止穴17に入ることなどによりハウジング11に止められている。しかしながら、このように同軸端子31がハウジング11に完全に組付けられた状態において、端子係止片15と係止段部48との間には所定のクリアランス(遊び)C1が確保されており、また、リテーナ21の係止凸部22とリテーナ係止穴17との間にも所定のクリアランスC2が確保されている。同軸コネクタ1の組立および分解を可能にするためには、端子係止片15の上下方向の移動、およびリテーナ21の係止凸部22のリテーナ係止穴17への出入りを可能にする必要があり、そのためにはクリアランスC1、C2を確保しなければならない。また、図10(A)に示すように、同軸コネクタ1と相手コネクタ71との着脱を可能にするために、同軸コネクタ1のコネクタ係止穴18と相手コネクタ71のロック片83との間には、所定のクリアランスC3が確保されている。
【0053】
同軸コネクタ1および相手コネクタ71にはクリアランスC1、C2およびC3等が確保されているので、互いに嵌合され、かつロックされている同軸コネクタ1と相手コネクタ71とを、まず両者が互いに近づく方向に押し、次に、両者が互いに離れる方向に引っ張ったとき、同軸コネクタ1が相手コネクタ71に対して両者の挿抜方向に僅かに移動する。この移動が嵌合がたに相当する。
【0054】
このように、同軸コネクタ1および相手コネクタ71には、同軸コネクタ1の組立および分解、並びに同軸コネクタ1と相手コネクタ71との着脱を可能にするために数箇所にクリアランスが設けられており、このような本来的な構造によって、同軸コネクタ1および相手コネクタ71には嵌合がたが生じる。
【0055】
図10(A)は、互いに正常に嵌合され、かつロックされている同軸コネクタ1と相手コネクタ71とを両者が互いに近づく方向(矢示A1、A2方向)に押した状態を示している。この状態においては、同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33が、相手コネクタ71の絶縁部材97の端子包囲部98内に進入し、相手コネクタ71の内部端子86の接触部87に奥深く入り込んでいる。そして、同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33の基端の前後方向(挿抜方向)における位置Pと、相手コネクタ71の絶縁部材97の端子包囲部98の先端の前後方向における位置Qとが互いに一致している。この状態における同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33の相手コネクタ71に対する前後方向における位置は、同軸コネクタ1と相手コネクタ71の嵌合時における内部端子32の接触部33の設計上の正規の位置である。
【0056】
一方、図10(B)は、互いに正常に嵌合され、かつロックされている同軸コネクタ1と相手コネクタ71とを両者が互いに離れる方向(矢示B1、B2方向)に引っ張った状態を示している。この状態においては、同軸コネクタ1が相手コネクタ71に対して矢示B1方向に僅かに移動しており、それゆえ、同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33が、相手コネクタ71の絶縁部材97の端子包囲部98および内部端子86の接触部87に対して矢示B1方向に僅かに移動している。その結果、同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33の基端の前後方向における位置Pと、相手コネクタ71の絶縁部材97の端子包囲部98の先端の前後方向における位置Qとが互いに異なっている。すなわち、同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33の相手コネクタ71に対する前後方向における位置が上記正規の位置から位置ずれしている。
【0057】
図10(A)に示すように、同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33が上記正規の位置にあるときには、内部端子32の接触部33の基端側部分が相手コネクタ71の絶縁部材97の端子包囲部98内に位置している。すなわち、接触部33の基端側部分の外周側が端子包囲部98に包囲されており、同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33の基端側部分と同軸コネクタ1の外部端子41の接触部42との間に端子包囲部98が介在している。これに対し、図10(B)に示すように、同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33が上記正規の位置から位置ずれしたときには、内部端子32の接触部33の基端側部分が相手コネクタ71の絶縁部材97の端子包囲部98から外部に出ている。そのため、接触部33の基端側部分の外周側が端子包囲部98に包囲されておらず、同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33の基端側部分と同軸コネクタ1の外部端子41の接触部42との間に端子包囲部98が介在していない。その結果、同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33が上記正規の位置から位置ずれしたときには、同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33が上記正規の位置にあるときと比較して、同軸コネクタ1において内部端子32の接触部33の基端側部分に対応する位置の特性インピーダンスが増加する。この特性インピーダンスの増加により、同軸コネクタ1と相手コネクタ71との間に特性インピーダンスの不整合が生じ、その結果、高い周波数帯、例えば準ミリ波以上の周波数帯の信号の反射波のレベルが大きく増加する傾向がある。このように、同軸コネクタ1の高周波特性は、同軸コネクタ1と相手コネクタ71との嵌合がたの影響を受ける。
【0058】
しかしながら、本実施形態の同軸コネクタ1は、外部端子41の中間前部45の位置における特性インピーダンスが外部端子41の中間後部46の位置における特性インピーダンスよりも高いという構成、具体的には、中間後部46の位置における特性インピーダンスが同軸ケーブル5の特性インピーダンスと略等しく、かつ中間前部45の位置における特性インピーダンスが同軸ケーブル5の特性インピーダンスよりも高いという構成を有している。この構成により、同軸コネクタ1と相手コネクタ71との嵌合がたにより、すなわち、内部端子32の接触部33が上記正規の位置から位置ずれしたことにより、同軸コネクタ1において内部端子32の接触部33の基端側部分に対応する位置の特性インピーダンスが増加しても、高い周波数帯、例えば準ミリ波以上の周波数帯の信号の反射波のレベルの増加の程度を小さくすることができる。これにつき、図11および図12を参照しながら説明する。
【0059】
図11は、互いに嵌合された同軸コネクタ1および相手コネクタ71に、同軸コネクタ1の側から相手コネクタ71の側に向けて、測定用の信号波を入力してTDR測定(Time Domain Reflectometry)を行った結果を示している。詳しくは、図11(A)中の特性線S1は、図10(A)に示すように同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33が上記正規の位置にあるときのTDR測定の結果を示している。図11(B)中の特性線S2は、図10(B)に示すように同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33が上記正規の位置から位置ずれしたときのTDR測定の結果を示している。図11(A)および図11(B)のそれぞれにおいて、横軸は、互いに嵌合された同軸コネクタ1および相手コネクタ71に同軸コネクタ1の側から相手コネクタ71の側に向けて測定用の信号波を入力してからの経過時間を示している。この経過時間は、同軸コネクタ1から相手コネクタ71に向かう方向において、同軸コネクタ1の後端部からの距離に換算することができる。また、縦軸は、互いに嵌合された同軸コネクタ1および相手コネクタ71における特性インピーダンスを示している。図11(A)から、同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33が上記正規の位置にあるときの同軸コネクタ1および相手コネクタ71における各部の特性インピーダンスを読み取ることができる。また、図11(B)から、同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33が上記正規の位置から位置ずれしたときの同軸コネクタ1および相手コネクタ71における各部の特性インピーダンスを読み取ることができる。
【0060】
図11(A)および図11(B)のそれぞれにおいて、t1は、同軸コネクタ1の外部端子41の中間後部46の位置に対応する経過時間を示している。t1における特性インピーダンスは、同軸コネクタ1の中間後部46の位置における特性インピーダンスに相当する。また、図11(A)および図11(B)のそれぞれにおいて、t2は、同軸コネクタ1の外部端子41の中間前部45の位置に対応する経過時間を示している。t2における特性インピーダンスは、同軸コネクタ1の中間前部45の位置における特性インピーダンスに相当する。図11(A)から、同軸コネクタ1の中間後部46の位置における特性インピーダンスが同軸ケーブル5の特性インピーダンス(50Ω)と略等しく、かつ同軸コネクタ1の中間前部45の位置における特性インピーダンスが同軸ケーブル5の特性インピーダンスよりも高いことを読み取ることができる。
【0061】
また、図11(A)において、t3は、同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33が上記正規の位置にあるときにおいて、同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33の基端側部分の位置に対応する経過時間を示している。t3における特性インピーダンスは、上記正規の位置にある内部端子32の接触部33の基端側部分の位置における特性インピーダンスに相当する。また、図11(B)において、t4は、同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33が上記正規の位置から位置ずれしたときにおいて、同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33の基端側部分の位置に対応する経過時間を示している。t4における特性インピーダンスは、上記正規の位置から位置ずれしている内部端子32の接触部33の基端側部分の位置における特性インピーダンスに相当する。
【0062】
図11(A)に示すように、同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33が上記正規の位置にあるとき、同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33の基端側部分の位置における特性インピーダンスは同軸ケーブル5の特性インピーダンス(50Ω)と略等しい。一方、図11(B)に示すように、同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33が上記正規の位置から位置ずれしたときには、同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33の基端側部分の位置における特性インピーダンスが同軸ケーブル5の特性インピーダンスよりも高い。図11(A)および図11(B)から、同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33が上記正規の位置から位置ずれすることにより、すなわち、嵌合がたにより、同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33の基端側部分の位置における特性インピーダンスが増加することがわかる。
【0063】
図12は、互いに嵌合された同軸コネクタ1および相手コネクタ71に、同軸コネクタ1の側から相手コネクタ71の側に向けて、測定用の信号波を入力し、同軸コネクタ1についてのVSWR(電圧定在波比)を測定した結果を示している。詳しくは、図12(A)中の特性線S3は、図10(A)に示すように同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33が上記正規の位置にあるときの同軸コネクタ1についてのVSWRの測定結果を示している。図12(B)中において実線で示す特性線S4は、図10(B)に示すように同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33が上記正規の位置から位置ずれしたときの同軸コネクタ1についてのVSWRの測定結果を示している。また、図12(A)および図12(B)のそれぞれにおいて、Kは、同軸コネクタ1により高周波信号を高品質に伝送し得るか否かを評価するためのVSWRの閾値を示している。VSWRがK以下の周波数において、同軸コネクタ1により高周波信号を高品質に伝送することができる。
【0064】
同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33が上記正規の位置から位置ずれし、同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33の基端側部分の位置における特性インピーダンスが図11に示すように増加することによって、図12に示すように、同軸コネクタ1のVSWRが変化する。具体的には、図12(A)と図12(B)とを比較するとわかる通り、同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33が上記正規の位置から位置ずれすることによって、周波数がf1のときの同軸コネクタ1のVSWR、および周波数がf2のときの同軸コネクタ1のVSWRがそれぞれ増加する。
【0065】
また、図12(B)において二点鎖線で示す特性線S5は、本実施形態の同軸コネクタ1を、比較例の同軸コネクタに置き換えて同様の測定を行い、それにより得られた当該比較例の同軸コネクタについてのVSWRの測定結果を示している。この特性線S5は、比較例の同軸コネクタと相手コネクタ71とが互いに嵌合され、かつロックされている状態であって、同軸コネクタの内部端子の接触部が上記正規の位置から位置ずれしたときの当該比較例の同軸コネクタについてのVSWRの測定結果を示している。比較例の同軸コネクタは、外部端子の中間前部の位置における特性インピーダンスと、外部端子の中間後部の位置における特性インピーダンスとが互いに等しくなるように構成され、具体的には、これらの特性インピーダンスがいずれも同軸ケーブル5の特性インピーダンス(50Ω)と略等しい値となるように構成されている。
【0066】
特性線S4および特性線S5を見るとわかる通り、周波数がf1のとき、本実施形態の同軸コネクタ1の方が比較例の同軸コネクタよりもVSWRが大きい。また、周波数がf1のとき、本実施形態の同軸コネクタ1のVSWRも、比較例の同軸コネクタのVSWRもK以下である。一方、周波数がf2のときには、比較例の同軸コネクタの方が本実施形態の同軸コネクタ1よりもVSWRが大きい。また、周波数がf2のときには、本実施形態の同軸コネクタ1のVSWRはK以下であるのに対し、比較例の同軸コネクタのVSWRはKを超えている。このように、本実施形態の同軸コネクタ1によれば、比較例の同軸コネクタと比較して、同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33が上記正規の位置から位置ずれした場合に、周波数がf2のときの反射波のレベルの増加の程度を小さくすることができる。なお、f2は準ミリ波以上の周波数帯に含まれる。
【0067】
また、比較例の同軸コネクタにおいては、同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33が上記正規の位置から位置ずれした場合に、周波数がf2のときのVSWRがKを超えるので、高周波信号を高品質に伝送することができる周波数の上限をf2よりも高くすることが困難である。これに対し、本実施形態の同軸コネクタ1によれば、同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33が上記正規の位置から位置ずれした場合に、周波数がf1のときにおいても、周波数がf2のときにおいても、VSWRをK以下にすることができるので、高周波信号を高品質に伝送することができる周波数の上限をf2よりも高くすることができる。
【0068】
また、図11(B)に示すように、同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33が上記正規の位置から位置ずれした状態において、同軸コネクタ1の中間後部46の位置(t1に対応する位置)における特性インピーダンスをZa、同軸コネクタ1の中間前部45の位置(t2に対応する位置)における特性インピーダンスをZb、同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33の基端側部分の位置(t4に対応する位置)における特性インピーダンスをZcとすると、Zbを次の数式が成り立つように設定することが好ましい。
Za<Zb<Zc (F1)
図11(B)中の破線Mは、同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33が上記正規の位置から位置ずれした状態において、同軸コネクタ1の中間後部46の位置から同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33の基端側部分の位置にかけての特性インピーダンスの大まかな変化を示している。Zbを上記数式F1が成り立つように設定することにより、破線Mに示すように、同軸コネクタ1の中間後部46の位置から、同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33の基端側部分の位置にかけての特性インピーダンスの増加を緩やかにすることができる。一般に、高周波信号の伝送経路の途中に特性インピーダンスが変化する領域が存在する場合において、その領域における特性インピーダンスの変化が急激な場合と緩やかな場合とを比較すると、特性インピーダンスの変化が緩やか場合の方が、高周波信号の反射波のレベルが小さくなる。したがって、Zbを上記数式F1が成り立つように設定し、同軸コネクタ1の中間後部46の位置から同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33の基端側部分の位置にかけての特性インピーダンスの増加を緩やかにすることにより、高周波信号の反射波を抑制する効果を確実に得ることができ、同軸コネクタ1と相手コネクタ71との嵌合がたによって生じる反射波のレベルの増加の程度を確実に小さくすることができる。
【0069】
(同軸コネクタの組立方法)
図13は本実施形態の同軸コネクタ1の組立方法を示している。同軸コネクタ1の組立方法は次の通りである。まず、図13(A)に示すように、絶縁部材55の後部を第2筒状体52の前部に第2筒状体52の前方から挿入する。次に、図13(B)に示すように、第2筒状体52に挿入された絶縁部材55の前部が第1筒状体51の後部に挿入されるように、当該絶縁部材55に第1筒状体51を当該絶縁部材55の前方から装着する。次に、第1筒状体51の後端部と第2筒状体52の前端部とを例えば溶接等の手段により互いに接合する。これにより、絶縁部材55を内包した外部端子41の組立が完了する。
【0070】
次に、同軸ケーブル5に末端処理を施す。具体的には、保護被覆9の端部から外部導体7の端部が露出し、外部導体7の端部から絶縁体8の端部が露出し、かつ絶縁体8の端部から内部導体6の端部が露出するように、保護被覆9、外部導体7および絶縁体8のそれぞれの端部を、それぞれの長さを適宜調節しつつ切除する。次に、このように末端処理を施した同軸ケーブル5の内部導体6の端部を、内部端子32の接続部34に、内部導体かしめ部36によりかしめて固定する。これにより、同軸ケーブル5の内部導体6が内部端子32の接続部34に接続される。
【0071】
次に、図13(C)に示すように、同軸ケーブル5の内部導体6が接続された内部端子32を、絶縁部材55を内包した外部端子41に当該外部端子41の後方から挿入する。次に、図13(D)に示すように、同軸ケーブル5の外部導体7の端部を、外部端子41の接続部43の外周側に配置した後、その外部導体7の端部を外周側から覆うように、ケーブル固定部材65を外部端子41の接続部43に取り付け、外部導体7の端部を外部端子41の接続部43に、外部導体かしめ部66によりかしめて固定する。これにより、同軸ケーブル5の外部導体7が外部端子41の接続部43に接続される。次に、同軸ケーブル5の保護被覆9の端部を外部導体7に、保護被覆かしめ部67によりかしめて固定する。これにより、同軸ケーブル5が取り付けられた同軸端子31の組立が完了する。
【0072】
次に、図13(E)に示すように、同軸ケーブル5が取り付けられた同軸端子31をハウジング11内にハウジング11の後方から挿入する。そして、同軸端子31の係止段部48がハウジング11の端子係止片15を越えるまで、同軸端子31をハウジング11内に押し込む。次に、リテーナ21をハウジング11のリテーナ挿入部16に挿入する。そして、係止凸部22をリテーナ係止穴17に入れることにより、リテーナ21の前端部を同軸端子31の突出部49に当てつつ、リテーナ21をハウジング11に固定する。これにより、同軸端子31が端子係止片15およびリテーナ21によりハウジング11内に止められる。以上、同軸コネクタの組立が完了する。
【0073】
以上説明した通り、本発明の実施形態の同軸コネクタ1において、外部端子41は中間前部45および中間後部46を備え、中間前部45の内径は中間後部46の内径よりも大きく、中間前部45の内径および中間後部46の内径は、同軸コネクタ1において、中間前部45の位置における特性インピーダンスが中間後部46の位置における特性インピーダンスよりも高くなるようにそれぞれ設定されている。これにより、同軸コネクタ1と相手コネクタ71との嵌合がたによって生じる同軸コネクタ1における反射波のレベルの増加の程度を小さくすることができる。したがって、同軸コネクタ1による高周波信号の伝送の品質を向上させることができ、また、同軸コネクタ1により高周波信号を高品質に伝送することができる周波数範囲の上限を高くすることができる。具体的には、同軸コネクタ1によれば、準ミリ波以上の周波数帯の信号の伝送の品質を向上させることができる。
【0074】
また、同軸コネクタ1と相手コネクタ71との嵌合がたにより、同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33が上記正規の位置から位置ずれした状態において、同軸コネクタ1の中間前部45の位置における特性インピーダンスZbを上記数式F1が成り立つように設定し、同軸コネクタ1の中間後部46の位置から同軸コネクタ1の内部端子32の接触部33の基端側部分の位置にかけての特性インピーダンスの増加を緩やかにすることにより、同軸コネクタ1と相手コネクタ71との嵌合がたによって生じる反射波のレベルの増加の程度を確実に小さくすることができる。
【0075】
また、本実施形態の同軸コネクタ1において、外部端子41は、接触部42および中間前部45を含む第1筒状体51と、中間後部46および接続部43を含む第2筒状体52とを備え、第1筒状体51と第2筒状体52とは互いに独立した部材であり、外部端子41は、第1筒状体51の後端部と第2筒状体52の前端部とを互いに接合することにより形成されている。これにより、同軸端子31の組立の容易化を図ることができる。すなわち、外部端子41は、図6に示すように、中間前部45がその前、後に配置されている接触部42および中間後部46のそれぞれよりも内径が大きい。そのため、仮に外部端子41が単一の部材により形成されている場合には、外部端子41内に絶縁部材55を組み込むことが困難である。しかしながら、本実施形態の同軸コネクタ1においては、外部端子41が、同軸コネクタ1の組立前の段階で第1筒状体51と第2筒状体52とに分離しているので、同軸コネクタ1の組立時に、第1筒状体51と第2筒状体52との間に絶縁部材55を組み入れてから第1筒状体51と第2筒状体52とを接合することにより、外部端子41内に絶縁部材55を容易に組み込むことができる。
【0076】
また、本実施形態の同軸コネクタ1の組立方法において、絶縁部材55の後部を第2筒状体52の前部に挿入し、絶縁部材55の前部を第1筒状体51の後部に挿入し、第1筒状体51の後端部と第2筒状体52の前端部とを互いに接合することにより、絶縁部材55を内包した外部端子41を形成する。この組立方法によれば、絶縁部材55を内包した外部端子41を備えた同軸コネクタ1を容易に組み立てることができる。
【0077】
また、本実施形態の同軸コネクタ1において、外部端子41の中間前部45は円筒状に形成され、外部端子41の中間後部46は当該中間後部46の外周面の一部が平面になった凹み部47を有する欠円筒状に形成され、中間後部46の凹み部47と中間前部45の後端との間に形成された係止段部48にハウジング11の端子係止片15が当たることにより、同軸端子31がハウジング11に止められる。この構成により、外部端子41に、その外部と内部とを連通する穴を形成することなく、端子係止片15により同軸端子31をハウジング11に止める構造を形成することができる。これにより、同軸端子31の電磁シールド性能を高めることができる。すなわち、仮に同軸端子31をハウジング11に止める構造を形成するために、外部端子41に、その外部と内部とを連通する穴を形成した場合には、その穴を介して、信号波が同軸端子31内から外部へ漏洩し、または外来電波が同軸端子31内に侵入するおそれがある。しかしながら、本実施形態における外部端子41の凹み部47は外部端子41の周壁を部分的に平面にすることにより形成されているので、凹み部47には穴が形成されていない。したがって、同軸端子31内から外部への信号波の漏洩、および外来電波の同軸端子31内への侵入を抑制することができる。
【0078】
また、本実施形態の同軸コネクタ1において、外部端子41の中間後部46の外径は、外部端子41の中間前部45内に中間後部46が嵌合されるように、中間前部45の内径と略等しい値に設定されている。この構成により、中間後部46の前端側部分を中間前部45の後端側部分に挿入して両者を例えば溶接等の手段により容易に接合することができる。
【0079】
また、本実施形態の同軸コネクタ1において、絶縁部材55は筒状に形成され、絶縁部材55内に内部端子32が挿入され、絶縁部材55は、外部端子41の中間前部45内に位置する第1絶縁部61、および外部端子41の中間後部46内に位置する第2絶縁部62を備え、第1絶縁部61の横断面形状と第2絶縁部62の横断面形状とが互いに異なっている。この構成により、同軸コネクタ1において、中間前部45の位置における特性インピーダンスが中間後部46の位置における特性インピーダンスよりも高くなるように、これらの位置の特性インピーダンスを容易に設定することができる。
【0080】
また、内部端子32の中間部35と外部端子41の中間前部45との間には、第1絶縁部61に充たされた領域と、空間が形成された領域とが設けられている。具体的には、内部端子32の中間部35の外周面における上側部分から中間前部45の内周面における上側部分にかけての領域、および内部端子32の中間部35の外周面における下側部分から中間前部45の内周面における下側部分にかけての領域には、第1絶縁部61が存在しており、これらの領域は第1絶縁部61に充たされている。一方、第1絶縁部61と中間前部45の内周面における左側部分との間、および第1絶縁部61と中間前部45の内周面における右側部分との間には空間E1がそれぞれ形成されている。また、内部端子32において中間部35の後部から接続部34の後部にかけての部分と外部端子41の中間後部46との間には、第2絶縁部62に充たされた領域と、空間が形成された領域とが設けられている。具体的には、第2絶縁部62の内部には空間E2が形成されている。このように、内部端子32の中間部35と外部端子41の中間前部45との間に第1絶縁部61に充たされた領域と空間が形成された領域とを設け、かつ、内部端子32において中間部35の後部から接続部34の後部にかけての部分と外部端子41の中間後部46との間に第2絶縁部62に充たされた領域と空間が形成された領域とを設けることにより、同軸コネクタ1において、中間前部45の位置における特性インピーダンスが中間後部46の位置における特性インピーダンスよりも高くなるように、または、上記特性インピーダンスZbが上記数式F1を充足するように、これらの位置の特性インピーダンスをきめ細かく設定することができる。
【0081】
なお、上記実施形態において、同軸端子31における外部端子41は、互いに独立した部材である第1筒状体51と第2筒状体52とが互いに接合されることにより形成されている。しかしながら、本発明はこれに限らない。例えば図14に示す同軸端子201のように、中間前部203および中間後部204を有し、中間前部203の内径が中間後部204の内径よりも大きい外部端子202を、単一の部材により形成してもよい。この場合には、上記実施形態の同軸端子31における絶縁部材55に相当する絶縁部205を、外部端子202内に例えばインサート成形等により形成する。また、同軸端子201は、同軸端子31の凹み部47、係止段部48および突出部49にそれぞれ対応する構成要素として、凹み部207、係止段部208および突出部209を有している。
【0082】
また、上記実施形態において、同軸コネクタ1と嵌合される相手コネクタ71がプラグである場合を例にあげたが、同軸コネクタ1と嵌合される相手コネクタはレセクタプルでもよい。
【0083】
また、本発明を同軸コネクタとその相手コネクタとの双方に適用してもよい。
【0084】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う同軸コネクタおよび同軸コネクタの組立方法もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0085】
1 同軸コネクタ
5 同軸ケーブル
6 内部導体
7 外部導体
11 ハウジング
15 端子係止片
31、201 同軸端子
32 内部端子
33 接触部(内部接触部)
34 接続部(内部接続部)
41、202 外部端子
42 接触部(外部接触部)
43 接続部(外部接続部)
45、203 中間前部
46、204 中間後部
47 凹み部
48 係止段部(段部)
51 第1筒状体
52 第2筒状体
55 絶縁部材
61 第1絶縁部
62 第2絶縁部
71 相手コネクタ
86 内部端子
90 外部端子
205 絶縁部(絶縁部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14