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特許7543229アキシャルギャップ型回転電機のステータコア、アキシャルギャップ型回転電機のステータ製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】アキシャルギャップ型回転電機のステータコア、アキシャルギャップ型回転電機のステータ製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/18 20060101AFI20240826BHJP
   H02K 1/02 20060101ALI20240826BHJP
   H02K 21/24 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
H02K1/18 C
H02K1/02 A
H02K21/24 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021143935
(22)【出願日】2021-09-03
(65)【公開番号】P2023037286
(43)【公開日】2023-03-15
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100178582
【弁理士】
【氏名又は名称】行武 孝
(72)【発明者】
【氏名】筒井 昭
(72)【発明者】
【氏名】加藤 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 大祐
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/134948(WO,A1)
【文献】特開平10-271785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/00- 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転中心軸を中心とする周方向に沿って複数の励磁コイルを支持することが可能な、アキシャルギャップ型回転電機のステータコアであって、
前記回転中心軸を中心とする円筒形状を有する外側ステータコアと、
前記回転中心軸を中心とする円筒形状を有し、前記外側ステータコアの円筒内部空間に前記回転中心軸の軸方向に沿って着脱可能に装着される内側ステータコアと、
を備え、
前記外側ステータコアは、
円筒形状を有する外側ヨークと、
前記外側ヨーク上に前記周方向に間隔をおいて立設される複数の外側ティースと、
前記複数の外側ティースの先端部にそれぞれ配置され、前記周方向において前記外側ティースよりも大きな幅をそれぞれ有する複数の鍔部と、
を有し、
前記内側ステータコアは、前記複数の外側ティースの径方向内側にそれぞれ配置され、前記複数の外側ティースとともに前記複数の励磁コイルをそれぞれ支持する複数の内側ティースを有し、前記内側ステータコアが前記外側ステータコアに装着されると、前記内側ティースのうち前記径方向に延びる両側面は、前記外側ティースのうち前記径方向に延びる両側面に連なるように配置され、前記複数の内側ティースの先端部には鍔部が設けられていない、アキシャルギャップ型回転電機のステータコア。
【請求項2】
回転中心軸を中心とする周方向に沿って複数の励磁コイルを支持することが可能な、アキシャルギャップ型回転電機のステータコアであって、
前記回転中心軸を中心とする円筒形状を有する外側ステータコアと、
前記回転中心軸を中心とする円筒形状を有し、前記外側ステータコアの円筒内部空間に前記回転中心軸の軸方向に沿って着脱可能に装着される内側ステータコアと、
を備え、
前記外側ステータコアは、
円筒形状を有する外側ヨークと、
前記外側ヨーク上に前記周方向に間隔をおいて立設される複数の外側ティースと、
前記複数の外側ティースの先端部にそれぞれ配置され、前記周方向において前記外側ティースよりも大きな幅をそれぞれ有する複数の鍔部と、
を有し、
前記内側ステータコアは、前記複数の外側ティースの径方向内側にそれぞれ配置され、前記複数の外側ティースとともに前記複数の励磁コイルをそれぞれ支持する複数の内側ティースを有し、前記内側ステータコアが前記外側ステータコアに装着されると、前記内側ティースのうち前記径方向に延びる両側面は、前記外側ティースのうち前記径方向に延びる両側面に連なるように配置され、前記内側ティースの前記周方向における幅は、前記鍔部の前記周方向における幅よりも小さく設定されている、アキシャルギャップ型回転電機のステータコア。
【請求項3】
前記内側ティースは、前記軸方向において前記外側ティースおよび前記鍔部に跨るような寸法を有している、請求項1または2に記載のアキシャルギャップ型回転電機のステータコア。
【請求項4】
前記内側ティースの上面部と前記鍔部の上面部とは面一とされている、請求項3に記載のアキシャルギャップ型回転電機のステータコア。
【請求項5】
前記軸方向に沿って見た場合、前記外側ティースに配置される前記鍔部の面積は、前記外側ティースの面積と前記内側ティースの面積との和以下に設定されている、請求項1乃至4の何れか1項に記載のアキシャルギャップ型回転電機のステータコア。
【請求項6】
アキシャルギャップ型回転電機のステータ製造方法であって、
回転中心軸を中心とする円筒形状を有する外側ステータコアと、前記回転中心軸を中心とする円筒形状を有し前記外側ステータコアの円筒内部空間に前記回転中心軸の軸方向に沿って着脱可能な内側ステータコアとをそれぞれ準備するステータコア準備工程と、
前記外側ステータコアに周方向に間隔をおいて配置される複数の外側ティースのそれぞれに、当該外側ティースの先端に配置される鍔部を介して、予め成形された複数の筒状の励磁コイルをそれぞれ挿通するコイル挿通工程と、
前記複数の外側ティースにそれぞれ挿通された前記複数の励磁コイルのそれぞれについて、前記外側ティースの径方向内側に前記励磁コイルの内部空間が位置するように、前記複数の励磁コイルをそれぞれ変形させるコイル変形工程と、
前記内側ステータコアに周方向に間隔をおいて配置される複数の内側ティースが前記複数の励磁コイルの前記内部空間にそれぞれ挿通されるように、前記内側ステータコアを前記軸方向に沿って前記外側ステータコアに装着する内側ステータコア装着工程と、
を備える、アキシャルギャップ型回転電機のステータ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータや発電機等の回転電機に関し、特に、励磁コイルを備えるステータと、永久磁石を備えるロータとが、軸方向に間隔を空けて配置されるアキシャルギャップ型の回転電機のステータコアに関する。
【背景技術】
【0002】
アキシャルギャップ型の回転電機は、ステータがロータの外周側に設けられるラジアルギャップ型のものに比べて、薄型化が可能、大トルクを得やすいといった利点がある。特許文献1には、このような回転電機として、ステータコア及び励磁コイルを備えるステータと、永久磁石を備えるロータとが、軸方向に微小な間隔(アキシャルギャップ)を空けて配置される構造が開示されている。ステータのステータコアは、ヨークと当該ヨークから突設される複数のティースとを有し、複数のティースの上端部にはロータとの間での磁場の形成を促進するための鍔部がそれぞれ形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6609138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたような回転電機では、ティースに励磁コイルを配設するために当該ティース周りにコイル線を巻き付ける際に鍔部が邪魔になりやすく、励磁コイルの配設作業に手間がかかるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みて為されたものであり、ティース周りに励磁コイルを容易に配設することが可能なアキシャルギャップ型回転電機のステータコアおよびアキシャルギャップ型回転電機のステータ製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によって提供されるのは、回転中心軸を中心とする周方向に沿って複数の励磁コイルを支持することが可能な、アキシャルギャップ型回転電機のステータコアであって、前記回転中心軸を中心とする円筒形状を有する外側ステータコアと、前記回転中心軸を中心とする円筒形状を有し、前記外側ステータコアの円筒内部空間に前記回転中心軸の軸方向に沿って着脱可能に装着される内側ステータコアと、を備え、前記外側ステータコアは、円筒形状を有する外側ヨークと前記外側ヨーク上に前記周方向に間隔をおいて立設される複数の外側ティースと、前記複数の外側ティースの先端部にそれぞれ配置され、前記周方向において前記外側ティースよりも大きな幅をそれぞれ有する複数の鍔部と、を有し、前記内側ステータコアは、前記複数の外側ティースの径方向内側にそれぞれ配置され、前記複数の外側ティースとともに前記複数の励磁コイルをそれぞれ支持する複数の内側ティースを有し、前記複数の内側ティースの先端部には鍔部が設けられていない。
【0007】
本構成によれば、ステータコアが径方向において分割可能であるため、外側ステータコアの複数の外側ティースに複数の励磁コイルをそれぞれ装着した後に、内側ステータコアを外側ステータコアに装着することで、アキシャルギャップ型回転電機のステータを製造することが可能となる。内側ステータコアが外側ステータコアに装着されていない段階では、励磁コイルの筒寸法が外側ティースよりも大きくなり両者の間に隙間が形成されるため、励磁コイルを外側ティースに容易に装着することができる。また、ステータコアに鍔部が設けられていない場合と比較して、ロータの回転時に鍔部とロータ側の永久磁石との間で磁束が流れやすく、ロータの回転トルクを安定して確保することができる。
【0008】
また、本発明によって提供されるのは、回転中心軸を中心とする周方向に沿って複数の励磁コイルを支持することが可能な、アキシャルギャップ型回転電機のステータコアであって、前記回転中心軸を中心とする円筒形状を有する外側ステータコアと、前記回転中心軸を中心とする円筒形状を有し、前記外側ステータコアの円筒内部空間に前記回転中心軸の軸方向に沿って着脱可能に装着される内側ステータコアと、を備え、前記外側ステータコアは、円筒形状を有する外側ヨークと、前記外側ヨーク上に前記周方向に間隔をおいて立設される複数の外側ティースと、前記複数の外側ティースの先端部にそれぞれ配置され、前記周方向において前記外側ティースよりも大きな幅をそれぞれ有する複数の鍔部と、を有し、前記内側ステータコアは、前記複数の外側ティースの径方向内側にそれぞれ配置され、前記複数の外側ティースとともに前記複数の励磁コイルをそれぞれ支持する複数の内側ティースを有し、前記内側ティースの前記周方向における幅は、前記鍔部の前記周方向における幅よりも小さく設定されているものでもよい。
【0009】
上記の構成において、前記内側ティースは、前記軸方向において前記外側ティースおよび前記鍔部に跨るような寸法を有していることが望ましい。
【0010】
本構成によれば、鍔部の径方向内側に内側ティースが対向していない場合と比較して、ロータ側の永久磁石との間で安定して磁束を流すことができる。
【0011】
上記の構成において、前記内側ティースの上面部と前記鍔部の上面部とは面一とされていることが望ましい。
【0012】
本構成によれば、ロータ側の永久磁石との間で安定した磁界を形成することができるとともに、外側ステータコアに内側ステータコアを装着する際に、内側ティースの上面部を鍔部の上面部に合わせることで、装着が完了したことを容易に確認することができる。
【0013】
上記の構成において、前記軸方向に沿って見た場合、前記外側ティースに配置される前記鍔部の面積は、前記外側ティースの面積と前記内側ティースの面積との和以下に設定されていることが望ましい。
【0014】
本構成によれば、外側ティースおよび内側ティースを内包するように予め成形された励磁コイルを、鍔部を介して外側ティースに容易に装着することができる。
【0015】
また、本発明によって提供されるのは、アキシャルギャップ型回転電機のステータ製造方法であって、当該製造方法は、ステータコア準備工程と、コイル挿通工程と、コイル変形工程と、内側ステータコア装着工程とを備える。ステータコア準備工程では、回転中心軸を中心とする円筒形状を有する外側ステータコアと、前記回転中心軸を中心とする円筒形状を有し前記外側ステータコアの円筒内部空間に前記回転中心軸の軸方向に沿って着脱可能な内側ステータコアとをそれぞれ準備する。コイル挿通工程では、前記外側ステータコアに周方向に間隔をおいて配置される複数の外側ティースのそれぞれに、当該外側ティースの先端に配置される鍔部を介して、予め成形された複数の筒状の励磁コイルをそれぞれ挿通する。コイル変形工程では、前記複数の外側ティースにそれぞれ挿通された前記複数の励磁コイルのそれぞれについて、前記外側ティースの径方向内側に前記励磁コイルの内部空間が位置するように、前記複数の励磁コイルをそれぞれ変形させる。内側ステータコア装着工程では、前記内側ステータコアに周方向に間隔をおいて配置される複数の内側ティースが前記複数の励磁コイルの前記内部空間にそれぞれ挿通されるように、前記内側ステータコアを前記軸方向に沿って前記外側ステータコアに装着する。
【0016】
本方法によれば、ステータコアが径方向において分割可能であることを利用して、コイル挿通工程において外側ステータコアの複数の外側ティースに複数の励磁コイルをそれぞれ装着し、コイル変形工程を経た後に、内側ステータコア装着工程において内側ステータコアを外側ステータコアに装着することで、アキシャルギャップ型回転電機のステータを容易に製造することが可能となる。特に、コイル挿通工程では、内側ステータコアが外側ステータコアに装着されていないため、励磁コイルの筒寸法が外側ティースよりも大きく両者の間に隙間が形成され、励磁コイルを外側ティースに容易に装着することができる。また、製造されたステータコアでは、ステータコアに鍔部が設けられていない場合と比較して、ロータの回転時に鍔部とロータ側の永久磁石との間で磁束が流れやすく、ロータの回転トルクを安定して確保することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ティース周りに励磁コイルを容易に配設することが可能なアキシャルギャップ型回転電機のステータコアおよびアキシャルギャップ型回転電機のステータ製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機の構造を概略的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る回転電機のステータ及びロータの側面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る回転電機のロータの斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係る回転電機のステータ及びロータの組み立て状態の斜視図である。
図5】本発明の一実施形態に係るステータの外側ステータコアの斜視図である。
図6】本発明の一実施形態に係るステータの内側ステータコアの斜視図である。
図7】本発明の一実施形態に係る回転電機において外側ステータコアに励磁コイルが装着され、更に内側ステータコアを装着する様子を示す斜視図である。
図8】本発明の一実施形態に係るステータを示す斜視図である。
図9】本発明の一実施形態に係るステータのティースにコイルが装着された様子を示す平断面図である。
図10】本発明の一実施形態に係るステータの外側ティースに励磁コイルが装着される様子を示す平面図である。
図11】本発明の一実施形態に係るステータの外側ティースに励磁コイルが装着され、励磁コイルが変形された様子を示す平面図である。
図12】本発明と比較される他のステータコアの斜視図である。
図13図12のステータコアにコイルが装着された様子を示す斜視図である。
図14図12のステータコアの分解斜視図である。
図15】本発明と比較される他のステータコアの斜視図である。
図16】ロータの永久磁石とステータのティースとの間に磁束が流れる様子を示す模式図である。
図17】ロータの永久磁石とステータのティースとの間に磁束が流れる様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機1の構造を概略的に示す図である。図2は、本実施形態に係る回転電機1のステータ及びロータの側面図である。図3は、回転電機1のロータの斜視図である。図4は、回転電機1のステータ及びロータの組み立て状態の斜視図である。
【0020】
本発明において、アキシャルギャップ型回転電機1は、例えばモータ又は発電機、若しくはこれらの兼用機の形態をとり得る。本実施形態では、アキシャルギャップ型回転電機の好ましい一例として、アキシャルギャップ型DCブラシレスモータを例示している。
【0021】
[アキシャルギャップ型回転電機の全体構造]
図1を参照して、アキシャルギャップ型回転電機1は、ケーシング10と、このケーシング10からその一部が突出した回転軸11とを備える。回転軸11は、当該回転電機1がモータとして用いられる場合はトルクを発生する出力回転軸となり、発電機として用いられる場合は回転駆動力が入力される入力回転軸となる。
【0022】
回転電機1は、ケーシング10内に収容された円盤状のステータ2と、2個の円盤状のロータ3とを含む。ステータ2とロータ3とは、回転軸11の軸方向に並ぶように配置されている。本実施形態では、ステータ2の一の円盤面に一方のロータ3が対向し、ステータ2の他の円盤面に他方のロータ3が対向し、これにより2個のロータ3の間にステータ2が挟まれる形態の、ダブルロータ、ダブルギャップ型の回転電機1を例示している。もちろん、回転子の一の円盤面に一方の固定子が対向し、回転子の他の円盤面に他方の固定子が対向し、これにより2個の固定子の間に回転子が挟まれる形態の、シングルロータ、ダブルギャップ型の回転電機であっても良い。また、回転電機1は、一のロータ3が一のステータ2と軸方向に対向配置されるシングルロータ、シングルギャップ型であっても良い。
【0023】
各ロータ3は、ステータ2に対して軸方向に間隔Gを空けて配置されている。間隔Gは、いわゆるアキシャルギャップであり、その長さは0.1mm~数mm程度である。回転軸11は、円盤状のロータ3に、その回転中心と芯合わせして固定されている。2つのロータ3は、ステータ2の中空部を貫通し、回転軸11と同じ軸上に配置された連結軸(図略)によって互いに連結されている。
【0024】
図3には、ロータ3の回転中心軸AX(回転軸11の軸心)が示されている。当該回転中心軸AXは、ステータ2の回転中心軸にも相当する。なお、図2図4においては、図1に示す2つのロータ3のうちの一つのロータ3と、これに対向する側のステータ2を描いており、もう一方のロータ3及びこれに対向するステータ2は省いている。
【0025】
ステータ2は、円筒型のヨーク21と、このヨーク21の周方向(ロータ3の回転方向)に配列された複数の電磁石ユニット20とを含む。各電磁石ユニット20は、複数の扇形のティース22と、この複数のティース22にそれぞれ巻回された複数の励磁コイル23とを備える。本実施形態におけるステータコア20Sは、ヨーク21及び複数のティース22である。複数のティース22は、軸方向におけるヨーク21の一方の端面に載置されており、回転中心軸AXの軸回りに円環状に均等に配置されている。
【0026】
ヨーク21は、複数のティース22を支持する支持体として機能し、ティース22とともに圧粉コアで構成される。
【0027】
ティース22は、電磁石ユニット20において磁性コアとなる部材であり、励磁コイル23の巻芯となる部材である。ティース22の軸方向の一端面は、ヨーク21との接合面であり、軸方向の他端面にはボビン形状を形成するための鍔部22Gが備えられている。
【0028】
ティース22は、ヨーク21とともに構成される圧粉コアであることが好ましい。圧粉コアは、電気絶縁膜で被覆された鉄粉が強固に押し固められることによって形成されたコアである。渦電流を抑制するという観点からは、この圧粉コアに加え、複数枚の電磁鋼板の積層体からなる積層コアも用い得るが、本実施形態では、後記のように、ヨーク21およびティース22がそれぞれ2つの部材に分離可能であるため、圧粉コアから構成されることが望ましい。圧粉コアは、前記積層コアに比べて気密性が高く、また成型の自由度も高いため、この観点からもティース22としてより好ましい。
【0029】
励磁コイル23は、絶縁電線が所要のターン数だけ巻回されてなる。励磁コイル23への直流電流の通電によって、回転軸11と平行な方向にティース22を貫く磁束が発生する。また、励磁コイル23への直流電流の通電方向を正逆反転させることで、前記磁束の方向を反転させることができる。各励磁コイル23へ通電及び通電方向の切り替えは、図略のドライバ回路によって制御され、これによりロータ3を回転軸11回りに回転させる磁力線(磁束)が形成される。
【0030】
ロータ3は、複数の永久磁石32と、これら永久磁石32を支持する円盤状の基材31とを備えている。各永久磁石32は、ネオジウム等からなり、軸方向視で扇形の平板型の磁石である。基材31は、ステータ2と対向する側に、回転中心軸AXと直交する円形の支持面31Sを有する。複数の永久磁石32は、支持面31Sの中心点O(回転中心軸AXと交差する点)の周囲に、S極とN極とが周方向に交互に並ぶように、支持面31Sの外周縁付近に、環状に配列されている。
【0031】
ステータ2のティース22は、この永久磁石32の配列に応じて、ヨーク21の周方向に配列される。図2に示す通り、永久磁石32とティース22の鍔部22Gとが、軸方向に所定の間隔G(アキシャルギャップ)を置いて対向するよう、ステータ2とロータ3とが組み立てられる。
【0032】
円盤状の基材31は、鋼材などの磁性体で形成された部材であり、上述の永久磁石32の支持機能と、永久磁石32のバックヨークとしての機能とを兼ねている。ステータ2と対向する表面がS極に着磁されている永久磁石32は、その裏面がN極となる。これに隣接する永久磁石32は、表面がN極で裏面がS極である。基材31は、これら永久磁石32の裏面側を支持すると共に、裏面側のS極-N極との間に磁路を形成する役目を果たす。永久磁石32は、例えばエポキシ樹脂系接着剤のような接着剤を用いて、支持面31Sに固定される。勿論、ネジ等の機械的な固定手段を用いて永久磁石32を支持面31Sに固定しても良い。
【0033】
<ステータコアについて>
図5は、本実施形態に係るステータ2のステータコア20Sの外側ステータコア20Aの斜視図である。図6は、本実施形態に係るステータ2のステータコア20Sの内側ステータコア20Bの斜視図である。
【0034】
ステータコア20Sは、回転中心軸AXを中心とする周方向に沿って複数の励磁コイル23(図4)を支持する。ステータコア20Sは、2つのコア部材に分離可能とされている。ステータコア20Sは、外側ステータコア20A(図5)と、内側ステータコア20B(図6)とを有する。
【0035】
図5を参照して、外側ステータコア20Aは、回転中心軸AX(図3)を中心とする円筒形状を有する。外側ステータコア20Aは、外側ヨーク21Aと、複数の外側ティース22Aと、複数の鍔部22Gとを有する。
【0036】
外側ヨーク21Aは、薄い円筒形状を有し、外側ステータコア20Aの下面部を画定する。
【0037】
複数の外側ティース22Aは、外側ヨーク21A上に周方向に間隔をおいてそれぞれ立設される。軸方向に沿って見た場合、複数の外側ティース22Aは、回転中心軸AXを中心とする環状扇形形状をそれぞれ有している。
【0038】
複数の鍔部22Gは、複数の外側ティース22Aの先端部(図5では上端部)にそれぞれ配置され、周方向において外側ティース22Aよりも大きな幅を有する。この結果、図5に示すように、外側ティース22Aおよび鍔部22Gによって、励磁コイル23(励磁コイル)(図7)を装着可能なボビン形状が形成される。なお、本実施形態では、径方向における外側ティース22Aと鍔部22Gとの幅は同じである。
【0039】
図6を参照して、内側ステータコア20Bは、回転中心軸AX(図3)を中心とする円筒形状を有し、外側ステータコア20Aの円筒内部空間に回転中心軸AXの軸方向に沿って着脱可能に装着される。内側ステータコア20Bは、内側ヨーク21Bと、複数の内側ティース22Bとを有する。
【0040】
内側ヨーク21Bは、円板形状を有し、内側ステータコア20Bの下面部を画定する。内側ステータコア20Bが外側ステータコア20Aに装着されると、内側ヨーク21Bは前述の外側ヨーク21A(図5)に径方向において連なるように配置され、外側ヨーク21Aとともにステータコア20Sのヨーク21(図2図4)を構成する。
【0041】
複数の内側ティース22Bは、内側ヨーク21B上に周方向に間隔をおいてそれぞれ立設される。軸方向に沿って見た場合、複数の内側ティース22Bは、回転中心軸AXを中心とする環状扇形形状をそれぞれ有している。また、複数の内側ティース22Bは、複数の外側ティース22A(図5)の径方向内側にそれぞれ配置され、複数の外側ティース22Aとともに複数の励磁コイル23をそれぞれ支持する。内側ステータコア20Bが外側ステータコア20Aに装着されると、各内側ティース22Bの両側面は、各外側ティース22Aの両側面に連なるように配置される(図9参照)。換言すれば、内側ティース22Bの周方向における幅は、鍔部22G(図5)の周方向における幅よりも小さく設定されている。なお、複数の内側ティース22Bの先端部(上端部)には、外側ティース22Aのように鍔部は設けられていない。
【0042】
また、各内側ティース22Bは、軸方向において外側ティース22Aおよび鍔部22Gに跨るような寸法を有している。そして、内側ステータコア20Bが外側ステータコア20Aに装着されると、各内側ティース22Bの上面部と各鍔部22Gの上面部とは面一とされる。
【0043】
なお、前述の外側ティース22Aの数と、内側ティース22Bおよび鍔部22Gの数は互いに同じであり、励磁コイル23の数とも同じである。
【0044】
図7は、本実施形態に係る回転電機1において外側ステータコア20Aに複数の励磁コイル23を取り付け、更に内側ステータコア20Bを装着する様子を示す斜視図である。図8は、本実施形態に係るステータ2(外側ステータコア20A、内側ステータコア20B、励磁コイル23)を示す斜視図である。図9は、本実施形態に係るステータ2のティース22に励磁コイル23が装着された様子を示す平断面図である。図10は、ステータ2の外側ティース22Aに励磁コイル23が装着される様子を示す平面図である。図11は、ステータ2の外側ティース22Aに励磁コイル23が装着され、励磁コイル23が変形た様子を示す平面図である。
【0045】
上記のように、本実施形態に係る回転電機1のステータ2は、外側ステータコア20Aと、内側ステータコア20Bと、複数の励磁コイル23とを有する。当該ステータ2の製造方法(ステータ製造方法)は、ステータコア準備工程と、コイル挿通工程と、コイル変形工程と、内側ステータコア装着工程とを有する。
【0046】
ステータコア準備工程では、円筒形状を有する外側ステータコア20Aと、円筒形状を有し外側ステータコア20Aの円筒内部空間に回転中心軸AXの軸方向に沿って着脱可能な内側ステータコア20Bとをそれぞれ準備する。
【0047】
コイル挿通工程では、外側ステータコア20Aに周方向に間隔をおいて配置される複数の外側ティース22Aのそれぞれに、当該外側ティース22Aの先端に配置される鍔部22Gを介して、予め成形された複数の筒状の励磁コイル23をそれぞれ挿通する。
【0048】
上記の筒状の励磁コイル23は、図9に示すように、ティース22と同形状の治具にコイル線が複数回巻きつけられることで成形される。成形された励磁コイル23は、外側ステータコア20Aの外側ティース22Aと内側ステータコア20Bの内側ティース22Bとを囲むような形状を有する。
【0049】
そして、成形された複数の励磁コイル23を外側ステータコア20Aの外側ティース22Aにそれぞれ装着する際には、図9の各励磁コイル23を図10に示すように径方向の内側および外側から挟み込むように変形させる(つぶす)ことで、当該励磁コイル23を鍔部22Gを介して外側ティース22Aに外嵌する。
【0050】
この際、本実施形態では、軸方向に沿って見た場合、外側ティース22Aに配置される鍔部22Gの面積は、外側ティース22Aの面積と内側ティース22Bの面積との和以下に設定されており、前記面積の和未満に設定されていることが望ましい。この場合、図9に示すように予め成形された励磁コイル23を図10に示すように、容易に鍔部22Gに挿通することができる。
【0051】
コイル変形工程では、複数の外側ティース22Aにそれぞれ挿通された複数の励磁コイル23のそれぞれについて、外側ティース22Aの径方向内側に励磁コイル23の内部空間が位置するように、複数の励磁コイル23をそれぞれ変形させる(図11)。
【0052】
具体的に、当工程では、図10から図11に示すように、励磁コイル23が外側ティース22Aに装着された状態で、励磁コイル23の内周面を外側ティース22Aの外周面に密接させながら、その他の部分を径方向内側に突出するように変形させる。この結果、外側ティース22Aの径方向内側には、次の工程で内側ティース22Bが進入可能な開口が形成される(図7)。
【0053】
そして、内側ステータコア装着工程では、内側ステータコア20Bに周方向に間隔をおいて配置される複数の内側ティース22Bが複数の励磁コイル23の内部空間にそれぞれ挿通されるように、内側ステータコア20Bを軸方向に沿って外側ステータコア20Aに装着する(図7)。この際、内側ステータコア20Bは、軸方向において鍔部22Gの反対側から装着される。この結果、図8に示すように、複数の励磁コイル23が複数のティース22(外側ティース22A、内側ティース22B)に装着され、ステータ2が完成する。
【0054】
次に、他のステータコアを用いて、本実施形態に係るステータコア20Sの特徴を更に説明する。図12は、本発明と比較される他のステータコア20Z1の斜視図である。図13は、図12のステータコア20Z1に励磁コイル23Zが装着された様子を示す斜視図である。図14は、図12のステータコア20Z1の分解斜視図である。
【0055】
図12に示されるステータコア20Z1は、ヨーク21Zと、複数のティース22Zと、複数の鍔部22GZとを有する。各鍔部22Gは、各ティース22Zと径方向において同じ寸法を有している。このようなステータコア20Z1では、鍔部22GZが邪魔になるため、予め成形された励磁コイル23Zをティース22Zに装着することは難しい。このため、図12のティース22Zの周りに、コイル線を直接巻きながら励磁コイル23Zを構成する必要があり(図13)、多くの手間が生じる。また、この場合、ティース22Zの周りに緩みなく励磁コイル23Zを巻くことも難しい。
【0056】
一方、図12に示されるステータコア20Z1が、図14に示すように、互いに独立した複数の部材によって構成される場合を想定する。ステータコア20Z1は、ヨーク21Zと、複数のティースブロック25Zを有する。各ティースブロック25Zは、複数のティース22Zと、複数の鍔部22GZとを有する。
【0057】
このような構成の場合、各ティースブロック25Zに予め励磁コイル23を装着した後に、ティースブロック25Zをヨーク21Zに固定することができる。しかしながら、この場合、ヨーク21Z上には、各ティースブロック25Zを固定する固定部25RZ(接合面)が形成されるが、当該固定部25RZに接着剤のような不純物層が存在することになる。アキシャルギャップ型回転電機のステータコアでは、各ティースを軸方向(図14の上下方向)に貫通する磁束が形成されるが、上記のように当該磁束と交差するように不純物層が存在すると、この部分での磁気抵抗が高くなるため、回転電機1の回転トルクが低下するという問題がある。
【0058】
図15は、本発明と比較される他のステータコアの斜視図である。図16および図17は、ロータの永久磁石とステータのティースとの間に磁場が形成される様子を示す模式図である。
【0059】
図12に示されるステータコア20Z1では、鍔部22GZが励磁コイル23Zの装着の妨げになることから、図15に示すように、鍔部22GZが存在しないステータコア20Z2について検討する。図12に示されるように鍔部22GZが存在する場合、図16の矢印DR方向にロータ3が回転する際、ステータ2に対向するロータ3の永久磁石32と鍔部22GZとの間の空間X1には、図16のように効率良く磁束が流れやすく、ロータ3の回転が安定するため、例えばモータの場合には、大きな回転トルクを得ることができる。一方、鍔部22GZが存在しない場合には、図17に示すように、永久磁石32とティース22Zとの間の空間X2が相対的に大きくなるため、磁束が流れにくくなる。この結果、相対的に回転トルクが小さくなる。
【0060】
一方、本実施形態に係る回転電機1のステータ2では、励磁コイル23の装着を容易としつつ、鍔部22Gによって安定した高い回転トルクを形成することができる。
【0061】
特に、本実施形態では、ステータコア20Sが径方向において分割可能であるため、外側ステータコア20Aの複数の外側ティース22Aに複数の励磁コイル23をそれぞれ装着した後に、内側ステータコア20Bを外側ステータコア20Aに装着することで、アキシャルギャップ型回転電機1のステータ2を容易に製造することが可能となる。内側ステータコア20Bが外側ステータコア20Aに装着されていない段階では、励磁コイル23の筒寸法が外側ティース22Aよりも大きく外側ティース22Aの外周面との間に隙間が形成されるため、励磁コイル23を外側ティース22Aに容易に装着することができる。また、ステータコア20Sに鍔部22Gが設けられていない場合と比較して、ロータ3の回転時に鍔部22Gとロータ3側の永久磁石32との間で磁束が流れやすく、ロータ3の回転トルクを安定して確保することができる。また、鍔部22Gによって励磁コイル23の抜けを防止することができる。
【0062】
なお、本実施形態に係るステータコア20Sにおいても、外側ステータコア20Aと内側ステータコア20Bとの接合面が周方向に沿って存在するが、当該接合面は、各ティース22を流れる磁束と平行に配置されるため、当該磁束に大きな影響を与えるような磁気抵抗の増大は生じにくい。このため、ステータコア20Sを分割することによる、モータの出力低下は発生しにくい。
【0063】
また、本実施形態では、内側ティース22Bは、軸方向において外側ティース22Aおよび鍔部22Gに跨るような寸法を有している。このため、鍔部22Gの径方向内側に内側ティース22Bが対向していない場合と比較して、ロータ3側の永久磁石32との間で安定した磁界を形成することができる。
【0064】
更に、本実施形態では、内側ティース22Bの上面部と鍔部22Gの上面部とは面一とされている。このため、ロータ3側の永久磁石32との間で安定した磁界を形成することができるとともに、外側ステータコア20Aに内側ステータコア20Bを装着する際に、内側ティース22Bの上面部を鍔部22Gの上面部に合わせることで、装着が完了したことを容易に確認することができる。
【0065】
また、本実施形態では、軸方向に沿って見た場合、外側ティース22Aに配置される鍔部22Gの面積は、外側ティース22Aの面積と内側ティース22Bの面積との和以下に設定されている。本構成によれば、外側ティース22Aおよび内側ティース22Bを内包するように予め成形された励磁コイル23を、鍔部22Gを介して外側ティース22Aに容易に装着することができる。
【0066】
また、本実施形態に係るステータ製造方法では、ステータコア20Sが径方向において分割可能であることを利用して、コイル挿通工程において外側ステータコア20Aの複数の外側ティース22Aに複数の励磁コイル23をそれぞれ装着した後に、コイル変形工程を経た後に、内側ステータコア装着工程において、内側ステータコア20Bを外側ステータコア20Aに装着することで、アキシャルギャップ型回転電機1のステータ2を容易に製造することが可能となる。特に、コイル挿通工程では、内側ステータコア20Bが外側ステータコア20Aに装着されていないため、励磁コイル23の内周面と外側ティース22Aの外周面との間に隙間が形成され、励磁コイル23を容易に装着することができる。また、製造されたステータ2では、鍔部22Gが設けられていない場合と比較して、ロータ3の回転時に鍔部22Gとロータ3側の永久磁石32との間で磁界が形成されやすく、ロータ3の回転トルクを安定して確保することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 回転電機
10 ケーシング
11 回転軸
2 ステータ
20 電磁石ユニット
20A 外側ステータコア
20B 内側ステータコア
20S ステータコア
21 ヨーク
21A 外側ヨーク
21B 内側ヨーク
22 ティース
22A 外側ティース
22B 内側ティース
22G 鍔部
23 励磁コイル
3 ロータ
31 基材
31S 支持面
32 永久磁石
AX 回転中心軸
G 間隔(アキシャルギャップ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17