(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】ヒトインターロイキン2の変異体またはその誘導体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/26 20060101AFI20240826BHJP
C07K 14/55 20060101ALI20240826BHJP
C12N 15/10 20060101ALI20240826BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240826BHJP
C12N 15/14 20060101ALI20240826BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240826BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240826BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240826BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240826BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240826BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240826BHJP
C12P 21/00 20060101ALI20240826BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20240826BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240826BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240826BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240826BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240826BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240826BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240826BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240826BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240826BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240826BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240826BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240826BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240826BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240826BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240826BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240826BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
C12N15/26 ZNA
C07K14/55
C12N15/10 200Z
C12N15/62 Z
C12N15/14
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/00 K
A61K38/20
A61K39/395 C
A61K47/68
A61P35/00
A61P35/04
A61P37/04
A61P37/06
A61P3/10
A61P43/00 105
A61P17/00 101
A61P35/02
A61P13/12
A61P11/00
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P11/06
A61P25/00
(21)【出願番号】P 2021534744
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(86)【国際出願番号】 CN2019126901
(87)【国際公開番号】W WO2020125743
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】201811570930.5
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910158957.1
(32)【優先日】2019-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510166892
【氏名又は名称】ジエンス ヘンルイ メデイシンカンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU HENGRUI MEDICINE CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】508209602
【氏名又は名称】シャンハイ ヘンルイ ファーマスーティカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI HENGRUI PHARMACEUTICAL CO., LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】521261935
【氏名又は名称】シャンハイ シェンディ ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI SHENGDI PHARMACEUTICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100196298
【氏名又は名称】井上 高雄
(72)【発明者】
【氏名】チェン レイ
(72)【発明者】
【氏名】フ キユウ
(72)【発明者】
【氏名】グォ フー
(72)【発明者】
【氏名】リン ユアン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ホンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】オウ ヤンチャオ
(72)【発明者】
【氏名】コン シャンリン
(72)【発明者】
【氏名】リャオ チェン
(72)【発明者】
【氏名】チャン リアンシャン
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/217989(WO,A1)
【文献】特表昭60-502136(JP,A)
【文献】国際公開第2005/007121(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-15/90
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のタイプの変異を含み、前記第1のタイプの変異は、下記15)、または15)と3)から7)のいずれかとの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つである、IL-2変異
体:
15) N26QおよびN29S、
3) N30S、
4) N71Q、
5) Q11CおよびL132C、
6) L70CおよびP82C、ならびに
7) G27CおよびF78C。
【請求項2】
請求項1に記載のIL-2変異
体であって、第2のタイプの変異または第3のタイプの変異をさらに含み、
前記第2のタイプの変異は、前記IL-2変異
体の高親和性受容体(IL-2Rα/β/γ)に対する親和性を消失または低下させるが、中親和性受容体(IL-2Rβ/γ)に対する親和性は維持させることができ;
前記第3のタイプの変異は、前記IL-2変異
体の高親和性受容体(IL-2Rα/β/γ)と中親和性受容体(IL-2Rβ/γ)の両方に対する親和性を低下させることができ、高親和性受容体に対する親和性は中親和性受容体に対する親和性よりも低く;
前記第2のタイプの変異は、下記8)から11)からなる群から選択されるいずれか1つであるか、または8)から10)のいずれかの組み合わせであり:
8) F42A、
9) Y45A、
10) L72G、および
11) 29-44位のNNYKNPKLTRMLTFKFがQSMHIDATLに変異;
前記第3のタイプの変異は、下記12)から14)からなる群から選択されるいずれか1つであるか、またはそれらの組み合わせである、IL-2変異
体:
12) N88RまたはN88GまたはN88IまたはN88D、
13) D20HまたはD20Y、および
14) Q126L。
【請求項3】
前記第1のタイプの変異は、下記16)から17)からなる群から選択されるいずれか1つ、または16)から17)のいずれか1つと5)から7)のいずれか1つとの組み合わせであり:
16) N26Q、N29S、およびN71Q、ならびに
17) N26QおよびN30S;
前記第2のタイプの変異は、下記18)から20)および11)からなる群から選択されるいずれか1つであり:
18) F42AおよびY45A、
19) F42AおよびL72G、ならびに
20) Y45AおよびL72G;
前記第3のタイプの変異は、N88RまたはN88GまたはN88IまたはN88Dであり;
好ましくは、前記IL-2変異
体は、21)から29)のいずれか1つに示される変異を含む、請求項2に記載のIL-2変異
体:
21) N26Q、N29S、F42A、N71Q、およびL72G、
22) N26Q、N29S、およびN88R、
23) N26Q、N29S、F42A、およびL72G、
24) N26Q、N30S、F42A、およびL72G、
25) Q11C、N26Q、N30S、F42A、L72G、およびL132C、
26) N26Q、N30S、F42A、L70C、L72G、およびP82C、
27) N26Q、G27C、N30S、F42A、L72G、およびF78C、
28) N29S、F42A、およびL72G、ならびに
29) Q11C、29-44位のNNYKNPKLTRMLTFKFがQSMHIDATLへ変異、およびL132C。
【請求項4】
安定性が野生型IL-2の安定性と比較して向上している、請求項1に記載のIL-2変異
体。
【請求項5】
C125Aのアミノ酸変異をさらに含む、請求項1に記載のIL-2変異
体。
【請求項6】
変異がSEQ ID NO.2に示すようなアミノ酸配列を有する野生型IL-2に対してなされ、変異位置のナンバリングが、SEQ ID NO.2に示すアミノ酸配列に従って、2番目の位置のアミノ酸Aからカウントされる、請求項1~5のいずれか一項に記載のIL-2変異
体。
【請求項7】
SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.6、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.14、SEQ ID NO.16、SEQ ID NO.18、SEQ ID NO.20、SEQ ID NO.22、SEQ ID NO.24、SEQ ID NO.26、SEQ ID NO.28、SEQ ID NO.30、SEQ ID NO.32、SEQ ID NO.34、SEQ ID NO.36、およびSEQ ID NO.41からなる群から選択されるいずれか1つに示されるアミノ酸を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のIL-2変異
体。
【請求項8】
モノマーである、および/またはPEG化されている、および/またはグリコシル化されている、および/またはアルブミン結合もしくはアルブミン融合している、および/またはFc融合している、および/またはヒドロキシエチル化されている、および/またはO-グリコシル化が存在しない、請求項1~5のいずれか一項に記載のIL-2変異
体。
【請求項9】
PEGは前記IL-2変異体のN-末端に連結されている、請求項8に記載のIL-2変異
体。
【請求項10】
PEGの分子量は5KD~50KDである、請求項8に記載のIL-2変異
体。
【請求項11】
PEGの分子量は20KDである、請求項8に記載のIL-2変異
体。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のIL-2変異
体を含むコンジュゲートであって、
前記IL-2変異
体は、非IL-2モジュールに直接連結されているか、またはリンカーを介して非IL-2モジュールに間接的に連結されている、コンジュゲート。
【請求項13】
前記非IL-2モジュールは、抗原結合モジュールである、請求項12に記載のコンジュゲート。
【請求項14】
前記抗原結合モジュールは、抗体またはその抗原結合フラグメントである、請求項13に記載のコンジュゲート。
【請求項15】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントは、腫瘍細胞上または腫瘍細胞の環境中に存在する抗原を標的とする、請求項14に記載のコンジュゲート。
【請求項16】
請求項1~11のいずれか一項に記載のIL-2変異
体、または請求項12~15のいずれか一項に記載のコンジュゲートを含む、医薬組成物。
【請求項17】
薬学的に許容される希釈剤、担体、またはアジュバントを含む、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
請求項1~11のいずれか一項に記載のIL-2変異
体をコードする、核酸分子。
【請求項19】
SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.5、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.13、SEQ ID NO.15、SEQ ID NO.17、SEQ ID NO.19、SEQ ID NO.21、SEQ ID NO.23、SEQ ID NO.25、SEQ ID NO.27、SEQ ID NO.29、SEQ ID NO.31、SEQ ID NO.33、SEQ ID NO.35、およびSEQ ID NO.40のいずれか1つに示されるポリヌクレオチドを含む、請求項18に記載の核酸分子。
【請求項20】
請求項18~19のいずれか一項に記載の核酸分子を含む、発現ベクター。
【請求項21】
請求項20に記載の発現ベクターを含むか、または請求項1~11のいずれか一項に記載のIL-2変異
体、請求項12~15のいずれか一項に記載のコンジュゲートを発現する宿主細胞。
【請求項22】
原核細胞または真核細胞である、請求項21に記載の宿主細胞。
【請求項23】
細菌、酵母、または哺乳類の細胞である、請求項21に記載の宿主細胞。
【請求項24】
サッカロミセス・セレビシエまたは大腸菌である、請求項21に記載の宿主細胞。
【請求項25】
医薬品の調製における、請求項
2、請求項3、請求項2または3を引用する請求項4~11のいずれか一項に記載のIL-2変異
体、請求項2または3を引用する請求項12~15のいずれか一項に記載のコンジュゲート、または
請求項2または3を引用する請求項16または17に記載の医薬組成物の使用であって;
前記IL-2の変異
体が前記第2のタイプの変異を有する場合、前記医薬品は、増殖性疾患、転移性増殖性疾患、または免疫疾患を治療し、T細胞を介した免疫応答を調節し、個体の免疫系を刺激するために使用され;
前記第2のタイプの変異は、下記8)から11)からなる群から選択されるいずれか1つであるか、または8)から10)のいずれかの組み合わせである、使用:
8) F42A、
9) Y45A、
10) L72G、および
11) 29-44位のNNYKNPKLTRMLTFKFがQSMHIDATLに変異。
【請求項26】
前記増殖性疾患は腫瘍または癌であり、前記免疫疾患は糖尿病である、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
前記腫瘍または癌は、上皮細胞癌、内皮細胞癌、扁平上皮癌、乳頭腫ウイルスによる癌、腺癌、癌腫、メラノーマ、肉腫、奇形癌、肺腫瘍、転移性肺癌、リンパ腫および転移性腎細胞癌からなる群から選択される、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
医薬品の調製における、請求項
2、請求項3、請求項2または3を引用する請求項4~11のいずれか一項に記載のIL-2変異
体、請求項2または3を引用する請求項12~15のいずれか一項に記載のコンジュゲート、または
請求項2または3を引用する請求項16または17に記載の医薬組成物の使用であって;
前記IL-2の変異
体が前記第3のタイプの変異を有する場合、前記医薬品は、自己免疫疾患または臓器移植による自己免疫反応を治療するために使用され;
前記第3のタイプの変異は、下記12)から14)からなる群から選択されるいずれか1つであるか、またはそれらの組み合わせである、使用:
12) N88RまたはN88GまたはN88IまたはN88D、
13) D20HまたはD20Y、および
14) Q126L。
【請求項29】
前記自己免疫疾患は、I型糖尿病、関節リウマチ、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス(SLE)、湿疹および喘息からなる群から選択される、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
インビトロで請求項1~11のいずれか一項に記載のIL-2変異
体を調製する方法であって、
野生型ヒトIL-2に変異を導入するステップ、または
請求項18~19のいずれか一項に記載の核酸分子、請求項20に記載の発現ベクター、または請求項21~24のいずれか一項に記載の宿主細胞を用いることにより、組換え発現を行うステップを含む、方法。
【請求項31】
IL-
2またはそのコンジュゲートの安定性を高める方法であって、
前記IL-
2または
そのコンジュゲートに変異を導入するステップを含み;
前記変異は下記15)、または15)と3)~7)のいずれか1つとの組み合わせ、またはそれらの組み合わせである、方法:
15) N26QおよびN29S、
3) N30S、
4) N71Q、
5) Q11CおよびL132C、
6) L70CおよびP82C、ならびに
7) G27CおよびF78C。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、1つまたは複数のアミノ酸変異を有するヒトインターロイキン2(IL-2)変異体またはその誘導体に関するものである。具体的には、該ヒトIL-2変異体またはその誘導体は安定性が改善されており、免疫治療剤としての特性も改善されている。また、本開示は、ヒトIL-2変異体またはその誘導体、それをコードするポリヌクレオチド分子、ベクター、および宿主細胞を含むイムノコンジュゲートならびにその調製方法に関し、IL-2変異体もしくはその誘導体またはイムノコンジュゲートを含む医薬組成物にも関し、また、それの治療方法および医薬用途にも関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトインターロイキン2(IL-2)は、T細胞増殖因子(TCGF)としても知られており、133個のアミノ酸から構成され、分子量は約15kDで、遺伝子は4番染色体(4q27)に位置し、全体で7kbの配列を含んでいる。1976年と1977年に、Doris Morgan、Francis Ruscetti、Robert GalloとSteven Gillis、Kendal Smithらがそれぞれ、活性化T細胞の培地がT細胞の増殖を促進し得ることを発見した。その後、培地に含まれる刺激因子が精製され、単一のタンパク質、つまりIL-2であることが確認された。
【0003】
T細胞は、TCRとCD28によって活性化されると、IL-2を分泌し、細胞表面にIL-2受容体(IL-2R)を発現し得ることが、初期のin vitro細胞実験により示されている。IL-2がその受容体に結合することで、T細胞の増殖を促し、T細胞に機能を持たせることが可能になる。このモデルでは、IL-2はT細胞の免疫反応において中心的な役割を果たす分子となっている。しかし、その後のin vivo実験で、IL-2またはその受容体をノックアウトすると、動物が自己免疫を起こすことがわかった。その後の実験で、IL-2はエフェクター細胞(T細胞やNK細胞など)を活性化するだけでなく、制御性T細胞(Treg)も活性化することで、過剰な自己免疫を抑制し得ることがわかった。
【0004】
IL-2は、IL-2Rを介して作用する。IL-2Rは、3つのサブユニット:IL-2Rα(つまりCD25)、IL-2Rβ(つまりCD122)、IL-2Rγ(つまりCD132)からなる。この3つのサブユニットは3つの形態の受容体を形成することができ、高結合親和性受容体は3つのサブユニットすべてIL-2Rα/β/γからなり、中結合親和性受容体はIL-2Rβ/γからなり、低結合親和性受容体はIL-2Rαである。このうち、IL-2が下流のシグナル経路を活性化するためには、IL-2RβとIL-2Rγが必要である。IL-2がIL-2RβとIL-2Rγの両方に結合すると、該2つの受容体サブユニットはヘテロ二量体を形成し、これは次に細胞内のSTAT5をリン酸化して核に入り、対応する遺伝子の転写と発現を引き起こす。IL-2Rαはシグナル伝達には必要ないが、IL-2とIL-2RβおよびIL-2Rγとの結合を促進することが可能である。IL-2Rγはすべての免疫細胞に発現し;IL-2RβはCD8+T細胞、NK細胞、およびTregに発現し、T細胞が活性化されるとIL-2Rβの発現レベルが上昇し;IL-2RαはTregでは常時高発現し、活性化されたCD8+T細胞では一時的に発現し、その後発現レベルは下方制御される。
【0005】
IL-2は、主に活性化されたT細胞、特にCD4+ヘルパーT細胞によって合成される。IL-2は、T細胞の増殖および分化を刺激し、細胞障害性Tリンパ球(CTL)の生成と、末梢血リンパ球の細胞障害性細胞やリンパ球因子活性化キラー(LAK)細胞への分化を誘導し、T細胞によるサイトカインおよび細胞溶解分子の発現を促進し、B細胞の増殖・分化およびB細胞を介した免疫グロブリンの合成を促進し、ナチュラルキラー(NK)細胞の産生、増殖、および活性化を促す。
【0006】
IL-2はin vivoでリンパ球の集団を拡大し、これらの細胞のエフェクター機能を向上させる能力があるため、IL-2には抗腫瘍効果がある。IL-2免疫療法は、特定の転移性がん患者の治療の選択肢となる。現在、高用量のIL-2は、転移性の腎細胞癌と悪性メラノーマの治療に認可されている。
【0007】
IL-2変異体に関する既存の研究では、38、42、45、62、および68の少なくとも4つの位置で変異を有するIL-2変異体は、Tregに対する刺激効果が低いこと(特許文献1);72、42、および45の位置に変異を有するIL-2変異体は、高結合親和性のIL-2受容体への結合親和性は低下または消失しているが、中結合親和性のIL-2受容体への結合親和性はなお維持していること(特許文献2);91位と126位の変異は、IL-2がCD25(IL2Rα)に結合することを可能にするが、Treg上のIL-2Rを活性化しないこと(特許文献3);E15、H16、Q22、D84、N88またはE95のうち少なくとも1つの変異を有するIL-2Rは、対象の移植片対宿主病の治療に使用されること(特許文献4);少なくともR38Wを含むIL-2変異体は、血管透過性を低下させることができ、固形腫瘍の治療に使用可能であること(特許文献5;特許文献6;特許文献7;特許文献8);IL-2変異体がFcに融合して形成された融合タンパク質は、疾患の治療に使用され、該IL-2はN88R変異を有すること(特許文献9)。hIL-2-N88Rは、ナチュラルキラー細胞の代わりにT細胞を選択的に活性化することができ、肺における転移の形成を減少させることができること(特許文献10);20位、88位または126位に変異を有するIL-2は、自己免疫疾患の治療および/または予防のための医薬品を調製するために使用することができること(特許文献11);免疫細胞表面のタンパク質を標的とするリガンドに結合したサイトカインを含むキメラポリペプチドであって、該サイトカインがIL-2の変異体であり得ること(特許文献12)などが示されている。
【0008】
しかし、本分野では、より安定性の高いIL-2の変異体がなお必要とされている。本分野では、IL-2の治療効果を高めるために、かかるIL-2変異体およびその誘導体を提供することが喫緊の課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2012/062228号
【文献】中国特許出願番号201280017730.1
【文献】米国特許第8906356号明細書
【文献】米国特許第9732134号明細書
【文献】米国特許第7371371号明細書
【文献】米国特許第7514073号明細書
【文献】米国特許第8124066号明細書
【文献】米国特許第7803361号明細書
【文献】国際公開第2016/014428号
【文献】国際公開第99/60128号
【文献】国際公開第2009/135615号
【文献】国際公開第2017/136818号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本開示は、1つまたは複数のアミノ酸変異を有するIL-2変異体またはその誘導体、IL-2変異体またはその誘導体と、コード化ポリペプチドと、核酸分子のコンジュゲート、ベクター、宿主細胞、医薬組成物、およびその医薬用途および治療方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様において、本開示は、11位、26位、27位、29位、30位、31位、32位、33位、34位、35位、36位、37位、38位、39位、40位、41位、42位、43位、44位、70位、71位、72位、78位、82位、88位、132位に1つまたは複数のアミノ酸変異を有するIL-2変異体またはその誘導体を提供する。本開示では、変異はabcの形で表され、aは変異前のアミノ酸の種類、bは変異の位置、cは変異後のアミノ酸の種類である。例えば、N26Sは、26位におけるアスパラギン(N)からセリン(S)への変異を意味し、N26は、26位のアスパラギン(N)が変異していることを意味し、26Sは、26位のアミノ酸がセリン(S)に変異していることを意味する。
【0012】
具体的には、本開示により提供されるIL-2変異体またはその誘導体は、以下の位置:26、29、30、71、11、132、70、82、27、および78に1つまたは複数のアミノ酸変異またはそれらの組み合わせを有する。いくつかの実施形態では、変異前のアミノ酸(例えば、野生型ヒトIL-2における)は:26位のアスパラギン(N)、29位のアスパラギン(N)、30位のアスパラギン(N)、71位のアスパラギン(N)、11位のグルタミン(Q)、132位のロイシン(L)、70位のロイシン(L)、82位のプロリン(P)、27位のグリシン(G)、および78位のフェニルアラニン(F)である。いくつかの実施形態では、IL-2変異体またはその誘導体のアミノ酸変異は、以下の変異:26位のGln(Q)への変異、29位のセリン(S)への変異、30位のSer(S)への変異、71位のGln(Q)への変異、11位、132位、70位、82位、27位、または78位のCys(C)への変異から選択されるいずれか1つまたは任意の組み合わせである。
【0013】
いくつかの具体的な実施形態では、IL-2変異体またはその誘導体は、第1のタイプの変異を含み、該第1のタイプの変異は、下記(1)から(7)からなる群から選択されるいずれか1つであるか、またはそれらの組み合わせである:
(1) N26Q、
(2) N29S、
(3) N30S、
(4) N71Q、
(5) Q11CおよびL132C、
(6) L70CおよびP82C、ならびに
(7) G27CおよびF78C。
【0014】
いくつかの具体的な実施形態において、上述のIL-2変異体またはその誘導体は安定性が増大しており、例えば、脱アミノ化安定性および/または熱安定性が増大しており;具体的には、本開示により提供する第1のタイプの変異により、野生型IL-2と比較して、IL-2変異体またはその誘導体の安定性は増大し;該安定性としては、増大した脱アミノ化安定性および/または熱安定性が挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
一方、本開示により提供するIL-2変異体またはその誘導体は、さらに、以下の位置またはそれらの組み合わせ:29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45および72において1つまたは複数のアミノ酸変異を含む。いくつかの実施形態では、変異前のアミノ酸(例えば、野生型ヒトIL-2における)は:29位のアスパラギン(N)、30位のアスパラギン(N)、31位のチロシン(Y)、32位のリジン(K)、33位のアスパラギン(N)、34位のプロリン(P)、35位のリジン(K)、36位のロイシン(L)、37位のスレオニン(T)、38位にアルギニン(R)、39位にメチオニン(M)、40位にロイシン(L)、41位にスレオニン(T)、42位にフェニルアラニン(F)、43位にリジン(K)、44位にフェニルアラニン(F)、45位にチロシン(Y)、72位にロイシン(L)である。
【0016】
いくつかの具体的な実施形態では、IL-2変異体またはその誘導体は、第2のタイプの変異をさらに含み、該第2のタイプの変異は、下記(8)から(11)からなる群から選択されるいずれか1つであるか、または(8)から(10)のいずれかの組み合わせである:
(8) F42A、
(9) Y45A、
(10) L72G、および
(11) 29-44位のNNYKNPKLTRMLTFKがQSMHIDATLに変異。
【0017】
いくつかの実施形態では、第2のタイプの変異により、高親和性受容体(IL-2Rα/β/γ)に対するIL-2の親和性は消失または低下し、中親和性受容体(IL-2Rβ/γ)に対するIL-2の親和性は保持され;第2のタイプの変異により、エフェクター細胞(NK細胞やT細胞など)の増殖および活性化を誘導するIL-2の効果は保持されるが、Treg細胞の増殖および活性化を誘導するIL-2の効果は低減し得る。
【0018】
第3の態様では、本開示により提供するIL-2変異体またはその誘導体は、以下の位置:20、88、および126に1つまたは複数のアミノ酸変異またはその任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、変異前のアミノ酸(例えば、野生型ヒトIL-2において)は:20位のアスパラギン酸(D)、88位のアスパラギン(N)、および126位のグルタミン(Q)である。いくつかの実施形態では、IL-2変異体またはその誘導体は、以下のまたはその任意の組み合わせの変異後アミノ酸を含む:20位のアラニン(A)またはヒスチジン(H)またはイソロイシン(I)またはメチオニン(M)またはグルタミン酸(E)またはセリン(S)またはバリン(V)またはトリプトファン(W);88位のアラニン(A)またはアルギニン(R)またはグルタミン酸(E)またはロイシン(L)またはフェニルアラニン(F)またはグリシン(G)またはイソロイシン(I)またはメチオニン(M)またはセリン(S)またはYまたはバリン(V);126位のアスパラギン(N)またはロイシン(L)またはPまたはフェニルアラニン(F)またはグリシン(G)またはイソロイシン(I)またはメチオニン(M)またはアルギニン(R)またはセリン(S)、またはスレオニン(T)またはチロシン(Y)またはバリン(V)。
【0019】
いくつかの具体的な実施形態では、IL-2変異体またはその誘導体は、下記(12)から(14)からなる群から選択される任意の変異であるか、またはそれらの組み合わせである、第3のタイプの変異をさらに含む:
(12) N88がA、R、E、L、F、G、I、M、S、Y、V、またはDに変異、
(13) D20がA、H、I、M、E、S、V、WまたはYに変異、(2)
(14) Q126がN、L、P、F、G、I、M、R、S、T、YまたはVに変異。
【0020】
いくつかの実施形態では、第3のタイプの変異は、高親和性受容体(IL-2Rα/β/γ)および中親和性受容体(IL-2Rβ/γ)の両方に対するIL-2の親和性を低下させることができ、高親和性受容体に対する親和性は、中親和性受容体に対する親和性よりも低下する。第3のタイプの変異により、Tregの増殖および活性化を誘導するIL-2の効果は保持されるが、エフェクター細胞(NK細胞やT細胞など)の増殖および活性化を誘導するIL-2の効果は消失または低減する。
【0021】
いくつかの実施形態では、IL-2変異体またはその誘導体は、上述のように、第1のタイプの変異と第2のタイプの変異を含むか、または第1のタイプの変異と第3のタイプの変異を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、IL-2変異体またはその誘導体における第1のタイプの変異は、上述したように、下記(15)から(17)のいずれか1つから選択されるか、または(5)から(7)のいずれかと組み合わさった(15)から(17)のいずれか1つであり:
(15) N26QおよびN29S、
(16) N26Q、N29SおよびN71Q、ならびに
(17) N26QおよびN30S;
第2のタイプの変異は、下記(18)から(20)および(11)のいずれか1つから選択され:
(18) F42AおよびY45A、
(19) F42AおよびL72G、ならびに
(20) Y45AおよびL72G;
第3のタイプの変異は、N88RまたはN88GまたはN88IまたはN88Dである。
【0023】
いくつかの実施形態では、IL-2変異体またはその誘導体は、下記(21)から(29)のいずれか1つに示す変異を含む:
(21) N26Q、N29S、F42A、N71QおよびL72G、
(22) N26Q、N29SおよびN88R、
(23) N26Q、N29S、F42AおよびL72G、
(24) N26Q、N30S、F42AおよびL72G、
(25) Q11C、N26Q、N30S、F42A、L72GおよびL132C、
(26) N26Q、N30S、F42A、L70C、L72GおよびP82C、
(27) N26Q、G27C、N30S、F42A、L72GおよびF78C、
(28) N29S、F42AおよびL72G、ならびに
(29) Q11C、29-44位のNNYKNPKLTRMLTFKFがQSMHIDATLに変異、およびL132C。
【0024】
本開示は、上述の(1)から(29)に加えて、さらに、(1)から(20)に示す変異位置と変異のタイプの任意の組み合わせを含み、以下の(30)から(208)を含むがこれに限定されるわけではない、以下のIL-2変異体を提供する:
(30) N26Q/Q11C/L132C;
(31) N26Q/L70C/P82C;
(32) N26Q/G27C/F78C;
(33) 29-44位のN26Q/NNYKNPKLTRMLTFKFがQSMHIDATLに変異;
(34) N26Q/F42A/Y45A;
(35) N26Q/F42A/L72G;
(36) N26Q/Y45A/L72G;
(37) N26Q/F42A/Y45A/L72G;
(38) Q11C/N30S/L132C;
(39) N30S/L70C/P82C;
(40) G27C/N30S/F78C;
(41) N30S/F42A/Y45A;
(42) N30S/F42A/L72G;
(43) N30S/Y45A/L72G;
(44) N30S/F42A/Y45A/L72G;
(45) N29S/N30S/F42A/L72G;
(46) Q11C/F42A/Y45A;
(47) Q11C/F42A/L72G/L132C;
(48) Q11C/Y45A/L72G/L132C;
(49) Q11C/F42A/Y45A/L72G/L132C;
(50) Q11C/N29S/F42A/L72G/L132C;
(51) 29-44位のNNYKNPKLTRMLTFKFがQSMHIDATLに変異/L70C/P82C;
(52) F42A/Y45A/L70C/P82C;
(53) F42A/L70C/L72G/P82C;
(54) Y45A/L70C/L72G/P82C;
(55) F42A/Y45A/L70C/L72G/P82C;
(56) N29S/F42A/L70C/L72G/P82C;
(57) G27C/29-44位のNNYKNPKLTRMLTFKFがQSMHIDATLに変異/F78C;
(58) G27C/F42A/Y45A/F78C;
(59) G27C/F42A/L72G/F78C;
(60) G27C/Y45A/L72G/F78C;
(61) G27C/F42A/Y45A/L72G/F78C;
(62) G27C/N29S/F42A/L72G/F78C;
(63) 29-44位のNNYKNPKLTRMLTFKFがQSMHIDATLに変異/Y45A;
(64) 29-44位のNNYKNPKLTRMLTFKFがQSMHIDATLに変異/L72G;
(65) 29-44位のNNYKNPKLTRMLTFKFがQSMHIDATLに変異/Y45A/L72G;
(66) N26Q/N30S/Q11C/L132C;
(67) N26Q/N30S/L70C/P82C;
(68) N26Q/G27C/N30S/F78C;
(69) N26Q/N30S/F42A/Y45A;
(70) N26Q/N30S/F42A/L72G;
(71) N26Q/N30S/Y45A/L72G;
(72) N26Q/N30S/F42A/Y45A/L72G;
(73) N26Q/N29S/N30S/F42A/L72G;
(74) N26Q/N29S/N30S;
(75) N26Q/N29S/Q11C/L132C;
(76) N26Q/N29S/L70C/P82C;
(77) N26Q/N29S/G27C/F78C;
(78) N26Q/N29S/F42A/Y45A;
(79) N26Q/N29S/Y45A/L72G;
(80) N26Q/N29S/F42A/Y45A/L72G;
(81) Q11C/N29S/N30S/L132C;
(82) N29S/N30S/L70C/P82C;
(83) G27C/N29S/N30S/F78C;
(84) N29S/N30S/F42A/Y45A;
(85) N29S/N30S/F42A/L72G;
(86) N29S/N30S/Y45A/L72G;
(87) N29S/N30S/F42A/Y45A/L72G;
(88) Q11C/N29S/F42A/Y45A/L132C;
(89) Q11C/N29S/F42A/L72G/L132C;
(90) Q11C/N29S/Y45A/L72G/L132C;
(91) Q11C/N29S/F42A/Y45A/L72G/L132C;
(92) N29S/F42A/Y45A/L70C/P82C;
(93) N29S/F42A/L70C/L72G/P82C;
(94) N29S/Y45A/L70C/L72G/P82C;
(95) N29S/F42A/Y45A/L70C/L72G/P82C;
(96) G27C/N29S/F78C/F42A/Y45A;
(97) G27C/N29S/F78C/F42A/L72G;
(98) G27C/N29S/F78C/Y45A/L72G;
(99) G27C/N29S/F78C/F42A/Y45A/L72G;
(100) N29S/F42A/Y45A;
(101) N29S/F42A/L72G;
(102) N29S/Y45A/L72G;
(103) N29S/F42A/Y45A/L72G;
(104) Q11C/N29S/L132C;
(105) N29S/L70C/P82C;
(106) G27C/N29S/F78C;
(107) N29S/N30S;
(108) N26Q/N29S;
(109) N26Q/N71Q;
(110) N30S/N71Q;
(111) Q11C/N71Q/L132C;
(112) L70C/N71Q/P82C;
(113) G27C/N71Q/F78C;
(114) 29-44位のNNYKNPKLTRMLTFKFがQSMHIDATLに変異/N71Q;
(115) F42A/Y45A/N71Q;
(116) F42A/N71Q/L72G;
(117) Y45A/N71Q/L72G;
(118) N26Q/N30S/F42A/N71Q/L72G;
(119) Q11C/N26Q/N30S/F42A/N71Q/L72G/L132C;
(120) N26Q/N30S/F42A/L70C/N71Q/L72G/P82C;
(121) N26Q/G27C/N30S/F42A/N71Q/L72G/F78C;
(122) N29S/F42A/N71Q/L72G;
(123) N26Q/N30S/N71Q;
(124) N26Q/Q11C/N71Q/L132C;
(125) N26Q/L70C/N71Q/P82C;
(126) N26Q/G27C/N71Q/F78C;
(127) N26Q/29-44位のNNYKNPKLTRMLTFKFがQSMHIDATLに変異/N71Q;
(128) N26Q/F42A/Y45A/N71Q;
(129) N26Q/F42A/N71Q/L72G;
(130) N26Q/Y45A/N71Q/L72G;
(131) N26Q/F42A/Y45A/N71Q/L72G;
(132) Q11C/N30S/N71Q/L132C;
(133) N30S/L70C/N71Q/P82C;
(134) G27C/N30S/N71Q/F78C;
(135) N30S/F42A/Y45A/N71Q;
(136) N30S/F42A/N71Q/L72G;
(137) N30S/Y45A/N71Q/L72G;
(138) N30S/F42A/Y45A/N71Q/L72G;
(139) N29S/N30S/F42A/N71Q/L72G;
(140) Q11C/F42A/Y45A/N71Q;
(141) Q11C/F42A/N71Q/L72G/L132C;
(142) Q11C/Y45A/N71Q/L72G/L132C;
(143) Q11C/F42A/Y45A/N71Q/L72G/L132C;
(144) Q11C/N29S/F42A/N71Q/L72G/L132C;
(145) 29-44位のNNYKNPKLTRMLTFKFがQSMHIDATLに変異/L70C/ N71Q/P82C;
(146) F42A/Y45A/L70C/N71Q/P82C;
(147) F42A/L70C/N71Q/L72G/P82C;
(148) Y45A/L70C/N71Q/L72G/P82C;
(149) F42A/Y45A/L70C/N71Q/L72G/P82C;
(150) N29S/F42A/L70C/N71Q/L72G/P82C;
(151) G27C/29-44位のNNYKNPKLTRMLTFKFがQSMHIDATLに変異/N71Q/F78C;
(152) G27C/F42A/Y45A/N71Q/F78C;
(153) G27C/F42A/N71Q/L72G/F78C;
(154) G27C/Y45A/N71Q/L72G/F78C;
(155) G27C/F42A/Y45A/N71Q/L72G/F78C;
(156) G27C/N29S/F42A/N71Q/L72G/F78C;
(157) 29-44位のNNYKNPKLTRMLTFKFがQSMHIDATLに変異/Y45A/N71Q;
(158) 29-44位のNNYKNPKLTRMLTFKFがQSMHIDATLに変異/N71Q/L72G;
(159) 29-44位のNNYKNPKLTRMLTFKFがQSMHIDATLに変異/Y45A/N71Q/L72G;
(160) N26Q/N30S/Q11C/N71Q/L132C;
(161) N26Q/N30S/L70C/N71Q/P82C;
(162) N26Q/G27C/N30S/N71Q/F78C;
(163) N26Q/N30S/F42A/Y45A/N71Q;
(164) N26Q/N30S/F42A/N71Q/L72G;
(165) N26Q/N30S/Y45A/N71Q/L72G;
(166) N26Q/N30S/F42A/Y45A/N71Q/L72G;
(167) N26Q/N29S/N30S/F42A/N71Q/L72G;
(168) N26Q/N29S/N30S/N71Q;
(169) N26Q/N29S/Q11C/N71Q/L132C;
(170) N26Q/N29S/L70C/N71Q/P82C;
(171) N26Q/N29S/G27C/N71Q/F78C;
(172) N26Q/N29S/F42A/Y45A/N71Q;
(173) N26Q/N29S/Y45A/N71Q/L72G;
(174) N26Q/N29S/F42A/Y45A/N71Q/L72G;
(175) Q11C/N29S/N30S/N71Q/L132C;
(176) N29S/N30S/L70C/N71Q/P82C;
(177) G27C/N29S/N30S/N71Q/F78C;
(178) N29S/N30S/F42A/Y45A/N71Q;
(179) N29S/N30S/F42A/N71Q/L72G;
(180) N29S/N30S/Y45A/N71Q/L72G;
(181) N29S/N30S/F42A/Y45A/N71Q/L72G;
(182) Q11C/N29S/F42A/Y45A/N71Q/L132C;
(183) Q11C/N29S/F42A/N71Q/L72G/L132C;
(184) Q11C/N29S/Y45A/N71Q/L72G/L132C;
(185) Q11C/N29S/F42A/Y45A/N71Q/L72G/L132C;
(186) N29S/F42A/Y45A/L70C/N71Q/P82C;
(187) N29S/F42A/L70C/N71Q/L72G/P82C;
(188) N29S/Y45A/L70C/N71Q/L72G/P82C;
(189) N29S/F42A/Y45A/L70C/N71Q/L72G/P82C;
(190) G27C/N29S/F78C/F42A/Y45A/N71Q;
(191) G27C/N29S/F78C/F42A/N71Q/L72G;
(192) G27C/N29S/F78C/Y45A/N71Q/L72G;
(193) G27C/N29S/F78C/F42A/Y45A/N71Q/L72G;
(194) N29S/F42A/Y45A/N71Q;
(195) N29S/F42A/N71Q/L72G;
(196) N29S/Y45A/N71Q/L72G;
(197) N29S/F42A/Y45A/N71Q/L72G;
(198) Q11C/N29S/N71Q/L132C;
(199) N29S/L70C/N71Q/P82C;
(200) G27C/N29S/N71Q/F78C;
(201) N29S/N30S/N71Q;
(202) N26Q/N29S/N71Q;
(203) N26Q/N88R;
(204) N29S/N88R;
(205) N30S/N88R;
(206) N26Q/N88R/Q11C/L132C;
(207) N29S/N88R/L70C/P82C; および
(208) N30S/N88R/G27C/F78C;ここで、「/」は、複数の変異が単一のIL-2変異体に同時に存在することを意味する。いくつかの実施形態では、上述の変異は、野生型IL-2に対してのものであり、野生型IL-2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:2に示す。変異位置のナンバリングは、SEQ ID NO:2に示すアミノ酸配列に従って、2番目の位置にあるアミノ酸Aからカウントする。
【0025】
いくつかの実施形態では、IL-2変異体またはその誘導体は、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.6、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.14、SEQ ID NO.16、SEQ ID NO.18、SEQ ID NO.20、SEQ ID NO.22、SEQ ID NO.24、SEQ ID NO.26、SEQ ID NO.28、SEQ ID NO.30、SEQ ID NO.32、SEQ ID NO.34、SEQ ID NO.36およびSEQ ID NO.41からなる群から選択されるいずれか1つに示されるアミノ酸を含む。ポリペプチドのアミノ酸配列と対応するヌクレオチド配列を表1に示す(下線はアミノ酸の変異を表す):
【0026】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【0027】
いくつかの実施形態において、IL-2変異体の誘導体には、本開示のIL-2変異体の全長または部分的なタンパク質が含まれるか;または、本開示のIL-2変異体に基づいてさらに変異させて得られた変異タンパク質、機能的誘導体、機能的フラグメント、生物活性ペプチド、融合タンパク質、アイソフォームまたはその塩が含まれる。例えば、IL-2変異体を含む融合タンパク質、IL-2変異体の単量体または二量体または三量体またはポリマー、IL-2変異体の様々な修飾形態(PEG化、ペグ化、グリコシル化、アルブミン結合または融合、Fc結合またはコンジュゲーション、ヒドロキシエチル化、O-グリコシル化の不在など)、様々な種におけるIL-2変異体の相同体。IL-2の修飾は、治療に関連する免疫原性に悪影響を与えない。
【0028】
いくつかの実施形態では、IL-2変異体またはその誘導体は、PEG化されており(PEG-IL-2と表現することができる)、例えば、モノまたはジPEG化IL-2変異体またはその誘導体である。PEG-IL-2変異体またはその誘導体は、SC-PEG連結基を含む。他の実施形態では、PEG-IL-2変異体またはその誘導体は、メトキシ-PEG-アルデヒド(mPEG-ALD)連結基を含む。特定の実施形態では、PEG部分の平均分子量は、約5KD~約50KD、特に5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50KD;または約5KD~約40KD、または約10KD~約30KD、または約15KD~約20KDにわたる。特定の実施形態では、mPEG-ALD連結基は、約5KDa、約12KDa、および約20KDaからなる群から選択される平均分子量を有するPEG分子を含む。いくつかの実施形態では、mPEG-ALD中のアルデヒド基は、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒドなどであってもよい。一実施形態では、IL-2変異体またはその誘導体は、野生型IL-2またはその誘導体と比較して、血清半減期が延長されている。
【0029】
IL-2変異体またはその誘導体が第2のタイプの変異を含む場合、いくつかの実施形態では、IL-2変異体またはその誘導体は、以下からなる群から選択される1つまたは複数の細胞応答を誘発することができる:活性化されたTリンパ球の増殖、活性化されたTリンパ球の分化、細胞傷害性T細胞(CTL)の活性、活性化されたB細胞の増殖、活性化されたB細胞の分化、ナチュラルキラー(NK)細胞の増殖、NK細胞の分化、活性化されたT細胞またはNK細胞によるサイトカインの分泌、およびNK/リンパ球によって活性化されたキラー細胞(LAK)の抗腫瘍性細胞傷害性。いくつかの実施形態では、IL-2変異体またはその誘導体は、野生型IL-2ポリペプチドのそれと比較して、制御性T細胞におけるIL-2シグナル伝達を誘導する能力が低下している。一実施形態では、IL-2変異体またはその誘導体は、野生型IL-2またはその誘導体よりも、T細胞において誘導する活性化誘導型細胞死(AICD)が少ない。いくつかの特定の実施形態では、IL-2変異体またはその誘導体は、野生型IL-2またはその誘導体と比較して、in vivo毒性が低減されている。
【0030】
IL-2変異体またはその誘導体が第3のタイプの変異を含む場合、いくつかの実施形態では、IL-2変異体またはその誘導体は、高親和性受容体(IL-2Rα/β/γ)および中親和性受容体(IL-2Rβ/γ)の両方に対するIL-2の親和性を低下し得るが、高親和性受容体に対する親和性の低下は、中親和性受容体に対する親和性の低下よりも大きい。いくつかの実施形態では、IL-2変異体またはその誘導体は、Tregの増殖および活性化を誘導するIL-2の効果を保持し得るが、エフェクター細胞(NK細胞やT細胞など)の増殖および活性化を誘導するIL-2の効果は消失または低減する。
【0031】
別の態様では、本開示は、IL-2変異体またはその誘導体が、直接的に、またはリンカーを介して間接的に非IL-2モジュールに接続しているコンジュゲートを提供する。いくつかの実施形態では、コンジュゲートはイムノコンジュゲートであり、非IL-2モジュールは抗原結合モジュールである。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、腫瘍細胞上または腫瘍細胞の環境に存在する抗原を標的とする。
【0032】
いくつかの実施形態では、IL-2変異体は、少なくとも1つの非IL-2モジュールに連結している。いくつかの実施形態では、IL-2変異体および非IL-2モジュールは、融合タンパク質を形成しており、これは、IL-2変異体が非IL-2モジュールとペプチド結合を共有していることを意味する。いくつかの実施形態では、IL-2変異体は、第1非IL-2モジュールおよび第2非IL-2モジュールなどの、少なくとも1つの非IL-2モジュールに連結している。いくつかの実施形態では、非IL-2モジュールは、抗原結合モジュールである。いくつかの実施形態では、IL-2変異体は、アミノ末端またはカルボキシル末端で第1抗原結合モジュールとペプチド結合を共有し、第2抗原結合モジュールは、アミノ末端またはカルボキシル末端で以下のものとペプチド結合を共有する:i)IL-2変異体;またはii)第1抗原結合モジュール。いくつかの具体的な実施形態では、IL-2変異体は、カルボキシル末端で第1非IL-2モジュールとペプチド結合を共有し、アミノ末端で第2非IL-2モジュールとペプチド結合を共有している。いくつかの実施形態では、非IL-2モジュールは、抗原結合モジュールである。抗原結合モジュールは、抗体または抗原結合フラグメントであってもよく、免疫グロブリン分子(例えば、IgG(例えば、IgG1)免疫グロブリン様分子)、抗体またはその抗原結合フラグメントが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合フラグメントは、以下から選択される:抗体重鎖可変領域と抗体軽鎖可変領域を含むポリペプチド複合体、Fab、Fv、sFv、F(ab')2、直鎖抗体、単鎖抗体、scFv、sdAb、sdFv、ナノボディ、ペプチド抗体ペプチボディ、ドメイン抗体、および多特異性抗体(二重特異性抗体、二特異性抗体、三重特異性抗体および四重特異性抗体、タンデム2-scFv、タンデム3-scFv)。IL-2変異体が2つ以上の抗原結合モジュール(第1および第2抗原結合モジュールなど)に接続している場合、各抗原結合モジュールは、様々な形態の抗体および抗原結合フラグメントから独立して選択することができる。例えば、第1抗原結合モジュールがFab分子で、第2抗原結合モジュールがscFv分子であってもよく、第1および第2抗原結合モジュールのそれぞれがscFv分子であってもよく、第1および第2抗原結合モジュールのそれぞれがFab分子であってもよい。いくつかの実施形態では、IL-2変異体が2つ以上の抗原結合モジュール(第1および第2抗原結合モジュールなど)に接続している場合、各抗原結合モジュールが標的とする抗原は、独立して選択することができ、例えば、第1および第2抗原結合モジュールは、異なる抗原を対象としてもよいし、同じ抗原を対象としてもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールにより結合される抗原は、テナシンCのA1ドメイン(TNC A1)、テナシンCのA2ドメイン(TNC A2)、フィブロネクチンのエクストラドメイン(エクストラドメインB)(EDB)、カルチノエンブリオニック抗原(CEA)、およびメラノーマ関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP)からなる群から選択され得る。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原には、MAGE、MART-1/Melan-A、gp100、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)、アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質(ADAbp)、シクロフィリンb、大腸関連抗原(CRC)-C017-1A/GA733、カルチノエンブリオニック抗原(CEA)とその免疫原性エピトープCAP-1およびCAP-2、etv6、aml1、前立腺特異抗原(PSA)とその免疫原性エピトープPSA-1、PSA-1、PSA-2およびPSA-3、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、T細胞受容体/CD3-zeta鎖、MAGEファミリーの腫瘍抗原(MAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A5、MAGE-A6、MAGE-A7、MAGE-A8、MAGE-A9、MAGE-A10、MAGE-A11、MAGE-A12、MAGE-Xp2(MAGE-B2)、MAGE-Xp3(MAGE-B3)、MAGE-Xp4(MAGE-B4)、MAGE-C1、MAGE-C2、MAGE-C3、MAGE-C4、MAGE-C5など)、GAGEファミリーの腫瘍抗原(GAGE-1、GAGE-2、GAGE-3、GAGE-4、GAGE-5、GAGE-6、GAGE-7、GAGE-8、GAGE-9など)、BAGE、RAGE、LAGE-1、NAG、GnT-V、MUM-1、CDK4、チロシナーゼ、p53、MUCファミリー、HER2/neu、p21ras、RCAS1、α-フェトプロテイン、E-カドヘリン、α-カテニン、β-カテニン、γ-カテニン、P120ctn、gp100Pmel117、PRAME、NY-ESO-1、cdc27、大腸腺腫症タンパク質(APC)、フォドリン、コネキシン37、Igイディオタイプ、p15、gp75、GM2およびGD2ガングリオシド、ウイルス製品(ヒトパピローマウイルスタンパク質など)、Smadファミリーの腫瘍抗原、lmp-1、P1A、EBV核抗原(EBNA)-1、脳グリコーゲンホスホリラーゼ、SSX-1、SSX-2(HOM-MEL-40)、SSX-1、SSX-4、SSX-5、SCP-1およびCT-7、ならびにc-erbB-2が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ウイルス抗原の非限定的な例として、インフルエンザウイルスヘマグルチニン、エプスタインバーウイルスLMP-1、C型肝炎ウイルスE2糖タンパク質、HIV gp160、およびHIV gp120が挙げられる。いくつかの実施形態では、ECM抗原の非限定的な例として、シンデカン、ヘパラナーゼ、インテグリン、オステオポンチン、リンク、カドヘリン、ラミニン、EGF型ラミニン、レクチン、フィブロネクチン、ノッチ、テナシンおよびマトリクシンが挙げられる。
【0034】
いくつかの実施形態では、上述の抗原結合モジュールを含むIL-2変異体またはその誘導体は、第2のタイプの変異を含むが、第3のタイプの変異は含まない。
【0035】
いくつかの実施形態では、IL-2またはその誘導体もしくはコンジュゲートの安定性を高める方法が提供され、この方法は、IL-2またはその誘導体もしくはコンジュゲートに変異を導入するステップを含み、前記変異は、下記1)から7)のいずれか1つであるか、またはそれらの組み合わせである:
1) N26Q、
2) N29S、
3) N30S、
4) N71Q、
5) Q11CとL132C、
6) L70CとP82C、および
7) G27CとF78C。
【0036】
別の態様では、本開示は、医薬組成物を提供し、この医薬組成物は、上述のIL-2変異体もしくはその誘導体またはイムノコンジュゲートを含み、オプションとして、薬学的に許容される希釈剤、担体または補助剤を含む。前記医薬組成物は、凍結乾燥製剤または注射用溶液であってもよい。
【0037】
いくつかの具体的な実施形態では、医薬組成物は、単位用量中に0.01~99重量%のIL-2変異体もしくはその誘導体、またはイムノコンジュゲートを含んでいてもよく;つまり、医薬組成物の単位用量中に構成されるIL-2変異体もしくはその誘導体、またはイムノコンジュゲートの量は、0.1~2000mg(例えば、1~1000mg)である。
【0038】
別の態様では、本開示は、上述のIL-2変異体またはその誘導体をコードする核酸を提供する。核酸には、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.5、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.13、SEQ ID NO.15、SEQ ID NO.17、SEQ ID NO.19、SEQ ID NO.21、SEQ ID NO.23、SEQ ID NO.25、SEQ ID NO.27、SEQ ID NO.29、SEQ ID NO.31、SEQ ID NO.33、SEQ ID NO.35、およびSEQ ID NO.40からなる群から選択されるいずれか1つに示されるポリヌクレオチドが含まれる。
【0039】
いくつかの実施形態では、上述のIL-2変異体またはその誘導体をコードする核酸を含む発現ベクターが提供される。
【0040】
別の態様では、上述のベクターを発現する宿主細胞が提供される。宿主細胞は、原核細胞または真核細胞であってもよい。いくつかの具体的な実施形態では、宿主細胞は、細菌、酵母または哺乳類細胞であり、具体的には、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)またはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)である。
【0041】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、上述のIL-2変異体もしくはその誘導体、またはイムノコンジュゲートのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを含む(例えば、該ベクターで形質転換または遺伝子導入されている)。宿主細胞には、原核微生物(大腸菌など)または様々な真核細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、ヒト胎児由来腎臓(HEK)細胞またはリンパ球(Y0、NS0、Sp20細胞など)、昆虫細胞など)が含まれる。いくつかの実施形態では、グリコシル化ポリペプチドを発現する宿主細胞を使用することができ、これは、植物細胞および昆虫細胞などの多細胞生物(例えば、無脊椎動物および脊椎動物)に由来する。脊椎動物の細胞も宿主細胞として用いることができ、例えば、懸濁液中に維持されている哺乳類細胞株、サル腎臓CV1株(COS-7)、ヒト胎児由来TM4細胞)、サル腎臓細胞(CV1)。アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76)、ヒト子宮頸癌細胞(HELA)、イヌ腎臓細胞(MDCK)、バッファローラット肝細胞(BRL3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝細胞(Hep G2)、マウス乳房腫瘍細胞(MMT060562)、TRI細胞(例えば、Mather et al.,Annals N.Y. Acad Sci 383, 44-68 (1982)に記載されているもの)、MRC5細胞およびFS4細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、YO、NS0、P3X63およびSp2/0などの骨髄腫細胞株、ならびに遺伝子導入動物、遺伝子導入植物、または培養された植物や動物組織に含まれる細胞である。
【0042】
本開示の別の態様では、薬剤の調製に、IL-2変異体もしくはその誘導体、イムノコンジュゲートまたは上述のそれを含む医薬組成物を使用することについて記載する。
【0043】
IL-2変異体またはその誘導体は、第2のタイプの変異を含む場合、増殖性疾患、免疫疾患の治療、T細胞を介した免疫応答の調節、個体の免疫系の刺激に用いられ、また、関連する医薬品の調製に用いられる。増殖性疾患は、腫瘍または癌(例えば、転移性腫瘍または癌)であってもよく、固形腫瘍(例えば、転移性腎細胞癌および悪性メラノーマ)であってもよい。いくつかの実施形態では、本開示のIL-2変異体もしくはその誘導体、またはそのイムノコンジュゲートは、宿主の免疫系を刺激することにより利益が得られる疾患または状態、特に細胞性免疫応答の強化が望まれる状態を治療するために使用することができ;かかる状態としては、宿主の不十分なまたは欠陥のある免疫応答が挙げられる。いくつかの実施形態では、IL-2変異体もしくはその誘導体、またはそのイムノコンジュゲートが投与される疾患または状態とは腫瘍または感染症のことを指し、細胞性免疫応答は、それらの腫瘍または感染症、例えば、癌(例えば、腎細胞癌またはメラノーマ)、免疫不全(HIV陽性患者、免疫抑制患者など)、慢性感染症などの、特異的な免疫の主要メカニズムである。いくつかの実施形態では、細胞性免疫応答の増強には、免疫機能の一般的な向上、T細胞機能の向上、B細胞機能の向上、リンパ球機能の回復、IL-2受容体の発現増加、T細胞応答の増加、ナチュラルキラー細胞の活性増加またはリンパカイン活性化キラー細胞(LAK)の活性増加などのいずれか1つまたは複数が含まれ得る。いくつかの実施形態では、本開示のIL-2変異体もしくはその誘導体、またはそのイムノコンジュゲートによって治療される疾患は、癌などの増殖性疾患である。癌の非限定的な例としては、膀胱癌、脳癌、頭頸部癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頸部癌、子宮内膜癌、食道癌、大腸癌、結腸直腸癌、直腸癌、胃癌、前立腺癌、血液癌、皮膚癌、扁平上皮癌、骨癌および腎臓癌が挙げられる。本開示のIL-2変異体またはその誘導体で治療することができる他の細胞増殖性障害には、限定するわけではないが、以下の位置:腹部、骨、乳房、消化器系、肝臓、膵臓、腹膜、内分泌腺(副腎、副甲状腺、下垂体、精巣、卵巣、胸腺、甲状腺)、眼、頭頸部、神経系(中枢および末梢)、リンパ系、骨盤、皮膚、軟部組織、脾臓、胸部、および泌尿器系にある腫瘍が含まれる。障害には、さらに、前癌状態または病変および癌の転移が含まれる。特定の実施形態では、癌は、腎細胞癌、皮膚癌、肺癌、結腸直腸癌、乳癌、脳癌、頭頸部癌からなる群から選択される。同様に、他の細胞増殖異常も、本開示のIL-2変異体またはその誘導体で治療することができ、限定するわけではないが、以下のものが含まれる:高ガンマグロブリン血症、リンパ増殖性疾患、パラプロテイン血症、紫斑病、サルコイドーシス、セザリー症候群、ウォルデンストロンマクログロブリン血症、ゴーシェ病、組織球症;および腫瘍以外の、上記の器官系に位置する任意の細胞増殖性疾患。他の実施形態では、疾患には、自己免疫、移植拒絶、外傷後の免疫応答、および感染性疾患(HIVなど)が含まれる。
【0044】
IL-2変異体またはその誘導体は、第3のタイプの変異を含む場合、自己免疫疾患の治療または臓器移植による自己免疫反応の緩和/治療/予防に使用される。自己免疫疾患は、I型糖尿病、関節リウマチ、多発性硬化症、慢性胃炎、クローン病、ベーソー病、ベクテロー病、乾癬、重症筋無力症、自己免疫性肝炎、APECED、クリューグ・ストラウス症候群、潰瘍性大腸炎、糸球体腎炎、ギラン・バレ症候群、橋本甲状腺炎、硬化性苔癬、全身性エリテマトーデス、PANDAS、リウマチ熱、サルコイドーシス、シェーグレン症候群、スティッフマン症候群、強皮症、ウェゲナー肉芽腫症、白斑、自己免疫性腸症、肺出血性腎炎症候群(グッドパスチャー症候群)、皮膚筋炎、多発性筋炎、自己免疫性アレルギー、喘息からなる群から選択され得る。いくつかの実施形態では、IL-2変異体またはその誘導体は、免疫抑制剤と組み合わせて使用することができる。いくつかの実施形態では、免疫抑制剤は、デコルチンおよびプレドニソルを含むグルココルチコイド;アザチオプリン;シクロスポリンA;ミコフェノール酸モフェチル;タクロリムス;抗Tリンパ球グロブリン、ムロモナブを含む抗CD3抗体;バシリキシマブおよびダクリズマブを含む抗CD25抗体、インフリキシマブ、アダリムマブを含む抗TNF-α抗体;アザチオプリン;メトトレキサート;シクロスポリン;シロリムス;エベロリムス;フィンゴリモド;セルセプト;マイフォルティックナトリウムの腸溶性溶剤(マイフォーティック);およびシクロホスファミドからなる群から選択される。
【0045】
いくつかの実施形態では、本開示のIL-2変異体もしくはその誘導体、またはそのイムノコンジュゲートは、疾患を完全に治すという利益を得ることはできず、部分的に治すことができるのみである。いくつかの実施形態では、いくつかの利点を有する生理学的変化は、治療的に有益であるとも考える。したがって、いくつかの実施形態では、生理学的変化をもたらすIL-2変異体またはその誘導体、そのイムノコンジュゲートの量を、「有効量」または「治療的有効量」と考える。治療を必要とする対象、患者、または個体は、通常、哺乳類であり、より具体的にはヒトである。
【0046】
いくつかの実施形態では、本開示のIL-2変異体もしくはその誘導体、またはそのイムノコンジュゲートを対象に投与する方法を提供し、該方法において、IL-2変異体もしくはその誘導体、またはそのイムノコンジュゲートは、少なくとも1日2回、少なくとも1日1回、少なくとも48時間ごとに1回、少なくとも72時間ごとに1回、少なくとも1週間に1回、少なくとも2週間に1回、少なくとも1ヶ月に1回、少なくとも2ヶ月に1回、または少なくとも3ヶ月に1回、投与される。IL-2は、任意の有効な経路、例えば、IL-2変異体もしくはその誘導体、またはそのイムノコンジュゲートの皮下注射を含む非経口注射によって投与することができる。
【0047】
さらなる態様において、本開示は、IL-2変異体もしくはその誘導体、またはそのイムノコンジュゲートを調製する方法であって、上述のIL-2変異体の変異を野生型ヒトIL-2に導入するステップ、または上述の核酸配列を用いるステップ、または上述の発現ベクターを用いるステップ、または上述の宿主細胞を用いるステップを含む方法について記載する。国際公開第2012/107417号のIL-2変異体の調製方法は、全体として本明細書に組み込まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1A】
図1Aは、野生型IL-2(WT)の熱安定性の実験結果を示す図である。
図1Bは、野生型IL-2(WT)の変異体であるIL-2-01の熱安定性の実験結果を示す図である。
図1Cは、野生型IL-2(WT)の変異体であるIL-2-02の熱安定性の実験結果を示す図である。
図1Dは、野生型IL-2(WT)の変異体であるIL-2-03の熱安定性の実験結果を示す図である。
図1Eは、野生型IL-2(WT)の変異体であるIL-2-04の熱安定性の実験結果を示す図である。
図1Fは、野生型IL-2(WT)の変異体であるIL-2-05の熱安定性の実験結果を示す図である。
【
図2】ELISA実験によって検出した、野生型IL-2(WT)ならびにその変異体IL-2-01、IL-2-02、IL-2-03、IL-2-04、IL-2-05、IL-2-06、IL-2-07、IL-2-08、IL-2-09、およびIL-2-13のIL-2Rαに対する親和性を示す図である。
【
図3】
図3Aは、ELISA実験によって検出された、IL-2-10およびPEG化したIL-2-10が、CTLL2細胞の増殖を促進したことを示す試験結果の図である。
図3Bは、ELISA実験によって検出された、IL-2-22およびPEG化したIL-2-22が、CTLL2細胞の増殖を促進したことを示す試験結果の図である。
図3Cは、ELISA実験によって検出された、IL-2-23およびPEG化したIL-2-23が、CTLL2細胞の増殖を促進したことを示す試験結果の図である。
【
図4】
図4Aは、ELISA実験によって検出された、IL-2-10およびPEG化したIL-2-10がMo7e細胞の増殖を促進したことを示す試験結果の図である。
図4Bは、ELISA実験によって検出された、IL-2-22およびPEG化したIL-2-22がMo7e細胞の増殖を促進したことを示す試験結果の図である。
図4Cは、ELISA実験によって検出された、IL-2-23およびPEG化したIL-2-23がMo7e細胞の増殖を促進したことを示す試験結果の図である。
【
図5】IL-2-01、IL-2-02、IL-2-07、IL-2-08、およびIL-2-09に関し、フローサイトメトリーで検出したCTLL2細胞におけるSTAT5のリン酸化についての実験結果を示す図である。
【
図6】
図6Aは、IL-2-10、IL-2-22、およびIL-2-23、ならびにPEG化したIL-2-10、PEG化したIL-2-22、およびPEG化したIL-2-23により刺激した、ヒト末梢血の制御性T細胞TregにおけるSTAT5のリン酸化についての実験結果を示す図である。
図6Bは、IL-2-10、IL-2-22、およびIL-2-23、ならびにPEG化したIL-2-10、PEG化したIL-2-22、およびPEG化したIL-2-23により刺激した、CD8+T細胞におけるSTAT5のリン酸化についての実験結果を示す図である。
図6Cは、IL-2-10、IL-2-22、およびIL-2-23、ならびにPEG化したIL-2-10、PEG化したIL-2-22、およびPEG化したIL-2-23により刺激した、NK細胞におけるSTAT5のリン酸化についての実験結果を示す図である。
【
図7】
図7Aは、マウスのNK細胞の数に対するPEG-IL-2-22の効果を示す実験結果の図である。
図7Bは、マウスのCD8+T細胞の数に対するPEG-IL-2-22の効果を示す実験結果の図である。
図7Cは、マウスのCD4+T細胞の数に対するPEG-IL-2-22の効果を示す実験結果の図である。
図7Dは、マウスのTreg細胞の数に対するPEG-IL-2-22の効果を示す実験結果の図である。
【
図8】
図8Aは、マウスのCD8+T細胞の数に対するPEG-IL-2-24の効果を示す実験結果の図である。
図8Bは、CD4+T細胞の数に対するPEG-IL-2-24の効果を示す実験結果の図である。
図8Cは、Treg細胞の数に対するPEG-IL-2-24の効果を示す実験結果の図である。
図8Dは、CD3+T細胞に対するCD8+T細胞の割合を示す図である。
図8Eは、CD3+T細胞に対するCD4+T細胞の割合を示す図である。
図8Fは、CD4+T細胞に対するTreg細胞の割合を示す図である。
【
図9】マウスCT26結腸がんモデルにおけるPEG-IL-2-22の抗腫瘍効果の結果を示すグラフである。
【
図10】ヒトメラノーマA375をヒトPBMCと混合して皮下移植したNCGマウスモデルにおける、PEG-IL-2-22の抗腫瘍効果の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本開示をより容易に理解するために、特定の技術的および科学的用語を以下に具体的に定義する。本明細書で特に定義していない限り、本明細書で使用する他のすべての技術的および科学的用語は、本開示が属する技術分野における当業者によって一般的に理解される意味を持つ。
【0050】
本開示で使用する場合、アミノ酸の3文字コードおよび1文字コードは、J. Biol.Chem, 243, p3558 (1968)に記載されている通りである。
【0051】
用語解説
「インターロイキン2」または「IL-2」とは、霊長類(ヒトなど)やげっ歯類(マウスやラットなど)などの哺乳類を含む、任意の脊椎動物に由来する天然のIL-2を意味する。この用語は、未処理のIL-2だけでなく、細胞由来のIL-2の任意の処理形態も対象とする。また、この用語は、スプライスバリアントまたは対立遺伝子変異体などの、天然に存在するIL-2変異体も対象とする。野生型ヒトIL-2の例示的なアミノ酸配列は、SEQ ID NO.2で示される。未処理のヒトIL-2は、さらにN末端に20アミノ酸のシグナルペプチドを含み(国際公開第2012107417号のSEQ ID NO.272で示されている)、このシグナルペプチドは成熟したIL-2分子には存在しない。
【0052】
「アミノ酸変異」とは、該最終的な構造体を得るためのアミノ酸の置換、欠失、挿入、修飾およびそれらの任意の組み合わせを意味し、その結果、最終的な構造体は安定性の向上などの所望の特性を有するようになる。アミノ酸配列の欠失や挿入には、アミノ末端および/またはカルボキシル末端におけるアミノ酸の欠失や挿入が含まれる。末端の欠失の例としては、完全長のヒトIL-2の1番目の位置にあるアラニン残基の欠失である。好適なアミノ酸変異は、アミノ酸の置換である。例えば、IL-2ポリペプチドの結合親和性を変化させるために、非保存的なアミノ酸を置換することができる(すなわち、1つのアミノ酸を、異なる構造および/または化学的性質を有する別のアミノ酸で置き換えることができる)。好適なアミノ酸の置換には、親水性アミノ酸を疎水性アミノ酸に置換することが含まれる。アミノ酸置換には、非天然のアミノ酸または天然の標準アミノ酸20種の誘導体(例えば、4-ヒドロキシプロリン、3-メチルヒスチジン、オルニチン、ホモセリン、5-ヒドロキシリジン)の置換が含まれる。アミノ酸の変異は、部位特異的変異誘発、PCR、遺伝子合成、および化学修飾などの方法を含む、当技術分野で既知の遺伝学的または化学的方法を用いて生成することができる。
【0053】
「野生型IL-2」は、IL-2ポリペプチド変異体のアミノ酸に対応する各位置に、野生型アミノ酸を有する形態のIL-2であること以外の点では、変異体のIL-2ポリペプチドと同じである。例えば、IL-2変異体が完全長のIL-2(つまり、任意の他の分子と融合または結合していないIL-2)である場合、この変異体の野生型形態は完全長の天然IL-2である。また、IL-2変異体が、IL-2の下流にある別のコード化ポリペプチド(抗体鎖など)との融合体である場合、このようなIL-2変異体の野生型形態は、同じ下流のポリペプチドと融合した野生型IL-2のアミノ酸配列を有するIL-2である。さらに、IL-2変異体がIL-2の切断型(IL-2の非切断部分内で変異または修飾が行われている配列)である場合、そのようなIL-2変異体の野生型形態は、同様に、野生型配列を有する切断型IL-2である。様々な形態のIL-2変異体と対応する野生型形態のIL-2との間でIL-2受容体に対する結合親和性または生物活性を比較するために、「野生型」という用語は、天然由来のIL-2、天然IL-2、IL-2受容体への結合に影響を与えない1つまたは複数のアミノ酸変異、例えば、ヒトIL-2の残基125に対応する位置でのアラニンのシステインへの置換(C125A)を含むIL-2形態を対象とする。いくつかの実施形態では、野生型IL-2は、SEQ ID NO.2に示されるようなアミノ酸配列を含んでいる。
【0054】
「誘導体」は、広義に解釈されることを意図しており、IL-2関連生成物を含む。誘導体とは、ヒトおよび非ヒトのIL-2ホモログ、断片またはトランケーション、融合タンパク質(シグナルペプチドとの融合、他の活性成分または不活性成分との融合、活性成分は、抗体または抗原結合フラグメントなど)、その修飾形態(PEG化、グリコシル化、アルブミンとのコンジュゲーション/融合、Fcとのコンジュゲーションおよび/または融合、ヒドロキシエチル化など)、ならびに保存的修飾タンパク質を意味するが、これらに限定されない。
【0055】
「CD25」または「IL-2受容体のαサブユニット」とは、霊長類(ヒトなど)やげっ歯類(マウスやラットなど)などの哺乳類を含む任意の脊椎動物由来の任意の天然のCD25を意味し、「完全長」の未処理CD25および細胞由来の任意の処理形態のCD25を含み、また、スプライスバリアントや対立遺伝子変異体などの天然に存在するCD25変異体を含む。特定の実施形態では、CD25はヒトCD25であり、例示的な配列がSEQ ID NO.37に示されている。
【0056】
「高親和性IL-2受容体」とは、受容体γサブユニット(ユニバーサルサイトカイン受容体γサブユニット、γcまたはCD132としても知られる)、受容体βサブユニット(CD122またはp70としても知られる)および受容体アルファサブユニット(CD25またはp55としても知られる)から構成されるヘテロ三量体形態のIL-2受容体を意味する。これに対し、「中親和性IL-2受容体」とは、γサブユニットとβサブユニットのみを含み、αサブユニットを含まないIL-2受容体を指す(例えば、Olejniczak and Kasprzak, MedSci Monit 14, RA179-189 (2008)参照)。
【0057】
「親和性」とは、分子(受容体など)の単一の結合部位とその結合相手(リガンドなど)との間のすべての非共有結合の強さの合計を意味する。特に断りのない限り、本明細書における「結合親和性」とは、結合ペア(例えば、受容体とリガンド)のメンバー間の1:1の相互作用を反映した固有の結合親和性を意味する。分子XのパートナーYに対する親和性は、通常、解離速度定数と会合速度定数(それぞれ、KdissociationとKbinding)の比である解離定数(KD)として表すことができる。このように、速度定数の比が同じである限り親和性は同じになるが、速度定数が異なる場合もある。親和性は、本明細書に記載されている方法を含む、当技術分野における従来の方法によって測定することができる。
【0058】
「制御性T細胞」または「Tregulatory cell」または「Treg」とは、他のT細胞の反応を抑制することができる特殊なCD4+T細胞のタイプを指す。Tregは、IL-2受容体のαサブユニット(CD25)と転写因子であるフォークヘッドボックスP3(FOXP3)を発現していることが特徴であり、抗原(腫瘍が発現する抗原を含む)に対する末梢性自己寛容を誘導・維持する上で重要な役割を果たしている。IL-2は、Tregの機能、発達、抑制特性の誘導を達成するために必要である。
【0059】
「エフェクター細胞」とは、IL-2の細胞毒性効果を媒介するリンパ球の集団を意味する。エフェクター細胞には、CD8+細胞傷害性T細胞などのエフェクターT細胞、NK細胞、リンパカイン活性化キラー(LAK)細胞、マクロファージ/単球が含まれる。
【0060】
「抗原結合モジュール」とは、抗原決定基に特異的に結合するポリペプチド分子を意味する。いくつかの実施形態では、抗原結合モジュールは、コンジュゲート部分(例えば、サイトカイン(IL-2またはその変異体)および/または他の抗原結合モジュール)を、標的部位、例えば、特定の抗原決定基を有する特定のタイプの腫瘍細胞または腫瘍間質に向けることができる。抗原結合モジュールには、抗体およびその抗原断片が含まれる。好適な抗原結合モジュールは、抗体の抗原結合ドメインを含み、このドメインは、抗体重鎖可変領域および抗体軽鎖可変領域を含む。抗原結合モジュールは、抗体定常領域を含んでいてもよい。当技術分野で知られているように、利用可能な重鎖定常領域は、以下の5つのアイソタイプ:α、δ、ε、γ、またはμのいずれか1つを指す。利用可能な軽鎖定常領域は、以下の2つのアイソタイプ:κおよびλのいずれかを指す。IL-2またはその変異体は、1つまたは複数のリンカー配列を介して1つまたは複数の抗原結合モジュールに連結され、「イムノコンジュゲート」を形成することができる。
【0061】
「特異的結合」とは、結合が抗原に対して選択的であることを意味し、望ましくないまたは非特異的な相互作用と区別することができる。抗原結合モジュールが特定の抗原決定基に結合する能力は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)または当業者によく知られている他の技術、例えば、表面プラズモン共鳴技術(BIAcore装置で分析)(Liljebladら、Glyco J17、323-329(2000))および伝統的な結合アッセイ(Heeley、Endocr Res 28、217-229(2002))で測定することによって達成することができる。
【0062】
「抗体」は、本明細書において最も広い意味で使用されており、所望の抗原結合活性を示す限り、様々な抗体構造を対象とする。抗体は、限定するわけではないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および抗原結合断片を意味する。抗体には、マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、およびラクダ抗体が含まれ得る。一例として、抗体は、鎖間ジスルフィド結合で結合した2つの同一の重鎖と2つの同一の軽鎖により形成された4ペプチド鎖構造である、免疫グロブリンであってもよい。また、免疫グロブリン重鎖の定常領域のアミノ酸組成や配列が異なることで、抗原性が異なる。したがって、免疫グロブリンは、5つのカテゴリーまたはアイソタイプの免疫グロブリン、つまりIgM、IgD、IgG、IgA、IgEに分けられる。対応する重鎖は、μ鎖、δ鎖、γ鎖、α鎖、ε鎖である。同じ種類のIgでも、ヒンジ領域のアミノ酸組成の違いや、重鎖のジスルフィド結合の数や位置の違いによって、異なるサブクラスに分けることができる。例えば、IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4に分けることができる。軽鎖は、定常領域の違いにより、カッパ鎖とラムダ鎖に分けられる。5種類のIgは、それぞれカッパ鎖またはラムダ鎖を有し得る。
【0063】
「抗原結合断片」とは、抗原結合活性を有するFab断片、Fab'断片、F(ab’)2断片、一本鎖Fv(すなわちsFv)、ナノボディ(すなわちVHH)、VH/VLドメインを指す。Fv断片は、抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含み、定常領域を含まず;Fv断片は、すべての抗原結合部位を含んだ最小の抗原結合断片である。一般的にFv抗体は、VHドメインとVLドメインの間にポリペプチドリンカーも含んでおり、抗原結合に必要な構造を形成することができる。2つの抗体の可変領域を連結して単一のポリペプチド鎖を形成するために、異なるリンカーを使用することができ、これを単鎖抗体または単鎖Fv(sFv)と呼ぶ。
【0064】
「保存的修飾」は、アミノ酸配列とヌクレオチド配列に適用される。特定のヌクレオチド配列については、保存的修飾とは、同一または実質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸を指し、ヌクレオチドがアミノ酸配列をコードしない場合には、実質的に同一のヌクレオチド配列を指す。アミノ酸配列について、「保存的修飾」とは、タンパク質中のアミノ酸を類似の特性(電荷、側鎖の大きさ、疎水性/親水性、主鎖のコンフォメーションおよび剛性など)を持つ他のアミノ酸に置換することを意味し、タンパク質の生物活性を変えることなく頻繁に変更を行うことができる。一般に、当業者は、ポリペプチドの非必須領域における単一のアミノ酸置換が生物活性を実質的に変化させないことを理解している(例えば、Watsonら(1987)Molecular Biology of the Gene, The Benjamin/Cummings Pub.Co.、224ページ、(第4版)を参照)。
【0065】
「PEG化」とは、少なくとも1つのPEG分子を別の分子(例えば、治療用タンパク質)に結合させることを意味する。例えば、Adagen(アデノシンデアミナーゼのPEG化製剤)は、重症複合免疫不全症の治療薬として承認された。ポリエチレングリコールへの結合は、タンパク質分解を防ぐことができることが示されている(例えば、Sada et al., (1991) J. Fermentation Bioengineering 71: 137-139を参照)。最も一般的な形態では、PEGは、一端に水酸基が結合した直鎖状または分岐状のポリエーテルであり、以下の一般構造:HO-(CH2CH2O)n-CH2CH2-OHを有する。PEGを分子(ポリペプチド、多糖類、ポリヌクレオチド、および有機小分子)に結合させるためには、末端に官能基を持つPEG誘導体をいくつかまたは2つ用意することにより、PEGを活性化することができる。PEGをタンパク質に結合させる一般的な方法は、リジンやN-末端のアミノ酸基との反応に適している官能基を持つPEGを活性化することである。特に、結合に関与する一般的な反応基は、リジンのαまたはεアミノ基である。PEG化リンカーとタンパク質との反応では、主に以下の位置:タンパク質のN末端のαアミノ基、リジン残基の側鎖のイプシロンアミノ基、ヒスチジン残基の側鎖のイミダゾリルにPEG部位が結合することになり得る。組換えタンパク質の多くは,単一のαアミノ基、多数のεアミノ基、およびイミダゾール基を持つため,連結基の化学的性質に応じて多くの位置異性体を生成することができる。
【0066】
「ベクター」、「発現ベクター」および「発現コンストラクト」は同義語であり、操作可能に結合させた特定の遺伝子を導入し、標的細胞での発現を指示するために使用されるDNA分子を指し、自己複製核酸構造体として機能するベクターや、導入先の宿主細胞のゲノムに導入されるベクターが含まれる。本明細書の発現ベクターは、発現カセットを含んでおり、これにより大量の安定したmRNAを転写することが可能になる。発現ベクターが標的細胞に入ると、遺伝子にコードされたリボ核酸分子またはタンパク質が、細胞の転写および/または翻訳システムを介して生成される。
【0067】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」および「宿主細胞培養物」は、互換的に使用され、外来性核酸が導入された細胞を意味し、該細胞の子孫も含まれる。宿主細胞には、「形質転換体」および「形質転換細胞」が含まれ、これらは、最初に形質転換された細胞およびそれに由来する子孫を含む(継代の数に関わらず)。子孫は、核酸含有量の面で親細胞と全く同じではなく、変異を含んでいてもよい。スクリーニングまたはセレクションによって得られた、元の形質転換細胞の機能または生物活性と同じ機能または生物活性を有する変異した子孫は、本明細書に含まれる。
【0068】
「投与」、「投薬」および「治療」は、動物、ヒト、実験対象、細胞、組織、器官、または生物学的流体に適用される場合、外来性の医薬品、治療薬、診断薬、または組成物を動物、ヒト、対象、細胞、組織、器官、または生物学的流体に接触させることを意味する。「投与」、「投薬」および「治療」は、例えば、治療法、薬物動態法、診断法、研究法および実験法を意味する。細胞の処理は、試薬を細胞と接触させること、および試薬を流体と接触させ、流体が細胞と接触することを包含する。また、「投与」、「投薬」および「治療」は、例えば、細胞を、試薬、診断薬、結合組成物、または別の細胞を用いて、in vitroまたはex vivoで処理することを意味する。「投与」または「治療」は、ヒト対象、動物対象、または研究対象に適用される場合、治療的処置、予防的または防止的措置、研究および診断への適用を意味する。
【0069】
本明細書で使用する場合、「治療する」とは、本開示のIL-2変異体およびその誘導体のいずれか、または該変異体およびその誘導体を含む組成物などの治療薬を、該治療薬が治療活性を有することが知られている1つまたは複数の疾患症状を有すると診断されている、その疑いがある、それになりやすい対象に、内服または外服で投与することを意味する。典型的には、前記薬剤は、臨床的に測定可能な程度で、そのような症状の退行を誘発するか、または進行を抑制するかにかかわらず、治療されるべき対象または集団における1つまたは複数の疾患の症状を緩和するのに有効な量で投与される。
【0070】
任意の特定の疾患症状を緩和するのに有効な治療薬の量(「治療的有効量」ともいう)は、疾患の状態、対象の年齢や体重、対象において所望の効率を引き出す薬物の性能など、さまざまな要因に応じて変化し得る。疾患の症状が緩和されたか否かは、その症状の重症度または進行状況を評価するために医師または他の熟練した医療提供者によって典型的に使用される任意の臨床測定によって評価することができる。本開示の一実施形態(例えば、治療法または製造品)は、各患者においては標的疾患の症状を緩和するのに有効ではないかもしれないが、Student t検定、カイ二乗検定、Mann and WhitneyによるU検定、Kruskal-Wallis検定(H検定)、Jonckheere-Terpstra検定およびWilcoxon検定などの当技術分野で知られている任意の統計的検定によって決定されるように、統計的に有意な数の対象において標的の疾患症状を緩和するはずである。
【0071】
「有効量」とは、病状の症状や兆候を改善または予防するのに十分な量を包含する。また、有効量とは、診断を可能にしたり、容易にしたりするのに十分な量を意味する。特定の対象または動物対象に対する有効量は、治療すべき状態、対象の全体的な健康状態、投与経路、投与量、および副作用の重症度などの要因に応じて異なる場合がある。有効量とは、重大な副作用や毒性を回避する最大量または投薬プロトコルのことである。
【実施例】
【0072】
以下、本開示について、以下の実施例を参照してさらに説明する。ただし、本開示の範囲は、実施例に限定されるものではない。
【0073】
実施例1:野生型IL-2およびその変異体の構築と発現
1.組換え発現ベクターの遺伝子合成および構築
野生型ヒトIL-2の核酸配列を合成し、5'末端にNde I制限部位を、3'末端にBamH I制限部位を導入した。その核酸配列をSEQ ID NO.1に示す(Nde IおよびBamH I制限部位はイタリックで示す)。野生型IL-2のアミノ酸配列をSEQ ID NO.2に示す。
【0074】
>野生型IL-2の核酸配列:
CATATGGCACCGACCAGCAGCAGCACCAAAAAAACCCAGCTGCAACTGGAACATCTGCTGTTAGATCTGCAAATGATTCTGAACGGCATCAACAACTACAAAAATCCGAAACTGACCCGTATGCTGACCTTCAAATTCTACATGCCGAAAAAAGCAACCGAGCTGAAACATCTGCAGTGTCTGGAAGAAGAACTGAAACCGCTGGAAGAGGTTCTGAATCTGGCACAGAGCAAAAACTTTCATCTGCGTCCGCGTGATCTGATTAGCAATATTAACGTTATTGTGCTGGAACTGAAAGGTAGCGAAACCACCTTTATGTGTGAATATGCCGATGAAACCGCAACCATTGTGGAATTTCTGAATCGTTGGATTACCTTTTGTCAGAGCATTATTAGCACCCTGACCTAATGAGGATCC (SEQ ID NO.1).
【0075】
>野生型IL-2のアミノ酸配列:
MAPTSSSTKKTQLQLEHLLLDLQMILNGINNYKNPKLTRMLTFKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNLAQSKNFHLRPRDLISNINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFCQSIISTLT (SEQ ID NO.2).
【0076】
合成後のIL-2核酸配列を、大腸菌発現ベクターpET-9a(Novagen社、Cat. 69431-3)にNde IとBamH Iの2つの制限部位を介して連結し、野生型IL-2の発現ベクターを得た。
【0077】
2.野生型IL-2のアミノ酸配列に、本開示に記載のアミノ酸変異を導入
ある変異体では、26位のアスパラギンをグルタミンに置換し、対応するヌクレオチド配列の76-78位のコドンAACをCAGに変異させて、変異体IL-2-01を得た。
【0078】
ここでは、斜体部分が制限部位、下線部分が変異部位であり、以下の配列も同様に表示される。
【0079】
>IL-2-01の核酸配列:
CATATGGCACCGACCAGCAGCAGCACCAAAAAAACCCAGCTGCAACTGGAACATCTGCTGTTAGATCTGCAAATGATTCTGCAGGGCATCAACAACTACAAAAATCCGAAACTGACCCGTATGCTGACCTTCAAATTCTACATGCCGAAAAAAGCAACCGAGCTGAAACATCTGCAGTGTCTGGAAGAAGAACTGAAACCGCTGGAAGAGGTTCTGAATCTGGCACAGAGCAAAAACTTTCATCTGCGTCCGCGTGATCTGATTAGCAATATTAACGTTATTGTGCTGGAACTGAAAGGTAGCGAAACCACCTTTATGTGTGAATATGCCGATGAAACCGCAACCATTGTGGAATTTCTGAATCGTTGGATTACCTTTGCACAGAGCATTATTAGCACCCTGACCTAATGAGGATCC (SEQ ID NO.3).
(CATATGとGGATCCが斜線部分)
【0080】
>IL-2-01のアミノ酸配列:
MAPTSSSTKKTQLQLEHLLLDLQMILQGINNYKNPKLTRMLTFKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNLAQSKNFHLRPRDLISNINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFAQSIISTLT (SEQ ID NO.4).
【0081】
ある変異体では、30位のアスパラギンをセリンに置換し、対応するヌクレオチド配列の88-90位のコドンAACをAGCに変異させて、変異体IL-2-02を得た。
【0082】
>IL-2-02の核酸配列:
CATATGGCACCGACCAGCAGCAGCACCAAAAAAACCCAGCTGCAACTGGAACATCTGCTGTTAGATCTGCAAATGATTCTGAACGGCATCAACAGCTACAAAAATCCGAAACTGACCCGTATGCTGACCTTCAAATTCTACATGCCGAAAAAAGCAACCGAGCTGAAACATCTGCAGTGTCTGGAAGAAGAACTGAAACCGCTGGAAGAGGTTCTGAATCTGGCACAGAGCAAAAACTTTCATCTGCGTCCGCGTGATCTGATTAGCAATATTAACGTTATTGTGCTGGAACTGAAAGGTAGCGAAACCACCTTTATGTGTGAATATGCCGATGAAACCGCAACCATTGTGGAATTTCTGAATCGTTGGATTACCTTTGCACAGAGCATTATTAGCACCCTGACCTAATGAGGATCC (SEQ ID NO.5).
(CATATGとGGATCCが斜線部分)
【0083】
>IL-2-02のアミノ酸配列:
MAPTSSSTKKTQLQLEHLLLDLQMILNGINSYKNPKLTRMLTFKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNLAQSKNFHLRPRDLISNINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFAQSIISTLT (SEQ ID NO. 6).
【0084】
ある変異体では、11位のグルタミンをシステインに置換し;対応するヌクレオチド配列の31-33位のコドンCAGをTGTに変異させ;132位のロイシンをシステインに置換し;対応するヌクレオチド配列の394-396位のコドンCTGがTGTに変異させて、変異体IL-2-03を得た。
【0085】
>IL-2-03の核酸配列:
CATATGGCACCGACCAGCAGCAGCACCAAAAAAACCTGTCTGCAACTGGAACATCTGCTGTTAGATCTGCAAATGATTCTGAACGGCATCAACAACTACAAAAATCCGAAACTGACCCGTATGCTGACCTTCAAATTCTACATGCCGAAAAAAGCAACCGAGCTGAAACATCTGCAGTGTCTGGAAGAAGAACTGAAACCGCTGGAAGAGGTTCTGAATCTGGCACAGAGCAAAAACTTTCATCTGCGTCCGCGTGATCTGATTAGCAATATTAACGTTATTGTGCTGGAACTGAAAGGTAGCGAAACCACCTTTATGTGTGAATATGCCGATGAAACCGCAACCATTGTGGAATTTCTGAATCGTTGGATTACCTTTGCACAGAGCATTATTAGCACCTGTACCTAATGAGGATCC (SEQ ID NO.7).
(CATATGとGGATCCが斜線部分)
【0086】
>IL-2-03のアミノ酸配列:
MAPTSSSTKKTCLQLEHLLLDLQMILNGINNYKNPKLTRMLTFKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNLAQSKNFHLRPRDLISNINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFAQSIISTCT (SEQ ID NO:8).
【0087】
ある変異体では、70位のロイシンをシステインに置換し;対応するヌクレオチド配列の208-210位のコドンCTGをTGTに変異させ;82位のプロリンをシステインに置換し;対応するヌクレオチド配列の244-246位のコドンCCGをTGTに変異させて、変異体IL-2-04を得た。
【0088】
>IL-2-04の核酸配列:
CATATGGCACCGACCAGCAGCAGCACCAAAAAAACCCAGCTGCAACTGGAACATCTGCTGTTAGATCTGCAAATGATTCTGAACGGCATCAACAACTACAAAAATCCGAAACTGACCCGTATGCTGACCTTCAAATTCTACATGCCGAAAAAAGCAACCGAGCTGAAACATCTGCAGTGTCTGGAAGAAGAACTGAAACCGCTGGAAGAGGTTTGTAATCTGGCACAGAGCAAAAACTTTCATCTGCGTTGTCGTGATCTGATTAGCAATATTAACGTTATTGTGCTGGAACTGAAAGGTAGCGAAACCACCTTTATGTGTGAATATGCCGATGAAACCGCAACCATTGTGGAATTTCTGAATCGTTGGATTACCTTTGCACAGAGCATTATTAGCACCCTGACCTAATGAGGATCC (SEQ ID NO.9).
(CATATGとGGATCCが斜線部分)
【0089】
IL-2-04のアミノ酸配列:
MAPTSSSTKKTQLQLEHLLLDLQMILNGINNYKNPKLTRMLTFKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVCNLAQSKNFHLRCRDLISNINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFAQSIISTLT (SEQ ID NO:10).
【0090】
ある変異体では、27位のグリシンをシステインに置換し;対応するヌクレオチド配列の79-81位のコドンGGCをTGTに変異させ;78位のフェニルアラニンをシステインに置換し;対応するヌクレオチド配列の232-234位のコドンTTTをTGTに変異させて、変異体IL-2-05を得た。
【0091】
>IL-2-05の核酸配列:
CATATGGCACCGACCAGCAGCAGCACCAAAAAAACCCAGCTGCAACTGGAACATCTGCTGTTAGATCTGCAAATGATTCTGAACTGTATCAACAACTACAAAAATCCGAAACTGACCCGTATGCTGACCTTCAAATTCTACATGCCGAAAAAAGCAACCGAGCTGAAACATCTGCAGTGTCTGGAAGAAGAACTGAAACCGCTGGAAGAGGTTCTGAATCTGGCACAGAGCAAAAACTGTCATCTGCGTCCGCGTGATCTGATTAGCAATATTAACGTTATTGTGCTGGAACTGAAAGGTAGCGAAACCACCTTTATGTGTGAATATGCCGATGAAACCGCAACCATTGTGGAATTTCTGAATCGTTGGATTACCTTTGCACAGAGCATTATTAGCACCCTGACCTAATGAGGATCC (SEQ ID NO.11).
(CATATGとGGATCCが斜線部分)
【0092】
>IL-2-05のアミノ酸配列:
MAPTSSSTKKTQLQLEHLLLDLQMILNCINNYKNPKLTRMLTFKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNLAQSKNCHLRPRDLISNINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFAQSIISTLT (SEQ ID NO:12).
【0093】
ある変異体では、29-44位のペプチドをQSMHIDATLに置き換え;対応するヌクレオチド配列の85-132位のコドンAAAACATACAAAAAAATCGACTGACCCGTATGCTGACCTTCAAATTCをCAGAGCATGCATTGATGCAACCCTGに変異させて、変異体IL-2-06を得た。
【0094】
>IL-2-06の核酸配列:
CATATGGCACCGACCAGCAGCAGCACCAAAAAAACCCAGCTGCAACTGGAACATCTGCTGTTAGATCTGCAAATGATTCTGAACGGCATCCAGAGCATGCATATTGATGCAACCCTGTACATGCCGAAAAAAGCAACCGAGCTGAAACATCTGCAGTGTCTGGAAGAAGAACTGAAACCGCTGGAAGAGGTTCTGAATCTGGCACAGAGCAAAAACTTTCATCTGCGTCCGCGTGATCTGATTAGCAATATTAACGTTATTGTGCTGGAACTGAAAGGTAGCGAAACCACCTTTATGTGTGAATATGCCGATGAAACCGCAACCATTGTGGAATTTCTGAATCGTTGGATTACCTTTGCACAGAGCATTATTAGCACCCTGACCTAATGAGGATCC (SEQ ID NO.13).
(CATATGとGGATCCが斜線部分)
【0095】
>IL-2-06のアミノ酸配列:
MAPTSSSTKKTQLQLEHLLLDLQMILNGIQSMHIDATLYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNLAQSKNFHLRPRDLISNINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFAQSIISTLT (SEQ ID NO:14).
【0096】
ある変異体では、42位のフェニルアラニンをアラニンに置換し;対応するヌクレオチド配列の124-126位のコドンTTCをGCAに変異させ;45位のチロシンをアラニンに置換し;対応するヌクレオチド配列の133-135位のコドンTACをGCAに変異させて、変異体IL-2-07を得た。
【0097】
>IL-2-07の核酸配列:
CATATGGCACCGACCAGCAGCAGCACCAAAAAAACCCAGCTGCAACTGGAACATCTGCTGTTAGATCTGCAAATGATTCTGAACGGCATCAACAACTACAAAAATCCGAAACTGACCCGTATGCTGACCGCAAAATTCGCAATGCCGAAAAAAGCAACCGAGCTGAAACATCTGCAGTGTCTGGAAGAAGAACTGAAACCGCTGGAAGAGGTTCTGAATCTGGCACAGAGCAAAAACTTTCATCTGCGTCCGCGTGATCTGATTAGCAATATTAACGTTATTGTGCTGGAACTGAAAGGTAGCGAAACCACCTTTATGTGTGAATATGCCGATGAAACCGCAACCATTGTGGAATTTCTGAATCGTTGGATTACCTTTGCACAGAGCATTATTAGCACCCTGACCTAATGAGGATCC (SEQ ID NO.15).
(CATATGとGGATCCが斜線部分)
【0098】
>IL-2-07のアミノ酸配列:
MAPTSSSTKKTQLQLEHLLLDLQMILNGINNYKNPKLTRMLTAKFAMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNLAQSKNFHLRPRDLISNINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFAQSIISTLT (SEQ ID NO:16).
【0099】
ある変異体では、42位のフェニルアラニンをアラニンに置換し;対応するヌクレオチド配列の124-126位のコドンTTCをGCAに変異させ;72位のロイシンがグリシンに置換し;対応するヌクレオチド配列の214-216位のコドンCTGをGGCに変異させて、IL-2-08という変異体を得た。
【0100】
>IL-2-08の核酸配列:
CATATGGCACCGACCAGCAGCAGCACCAAAAAAACCCAGCTGCAACTGGAACATCTGCTGTTAGATCTGCAAATGATTCTGAACGGCATCAACAACTACAAAAATCCGAAACTGACCCGTATGCTGACCGCAAAATTCTACATGCCGAAAAAAGCAACCGAGCTGAAACATCTGCAGTGTCTGGAAGAAGAACTGAAACCGCTGGAAGAGGTTCTGAATGGCGCACAGAGCAAAAACTTTCATCTGCGTCCGCGTGATCTGATTAGCAATATTAACGTTATTGTGCTGGAACTGAAAGGTAGCGAAACCACCTTTATGTGTGAATATGCCGATGAAACCGCAACCATTGTGGAATTTCTGAATCGTTGGATTACCTTTGCACAGAGCATTATTAGCACCCTGACCTAATGAGGATCC (SEQ ID NO.17).
(CATATGとGGATCCが斜線部分)
【0101】
>IL-2-08のアミノ酸配列:
MAPTSSSTKKTQLQLEHLLLDLQMILNGINNYKNPKLTRMLTAKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNGAQSKNFHLRPRDLISNINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFAQSIISTLT (SEQ ID NO:18).
【0102】
ある変異体では、45位のチロシンをアラニンに置換し;対応するヌクレオチド配列の133-135位のコドンTACをGCAに変異させ;72位のロイシンをグリシンに置換し;対応するヌクレオチド配列の214-216位のコドンCTGをGGCに変異させて、IL-2-09という変異体を得た。
【0103】
>IL-2-09の核酸配列:
CATATGGCACCGACCAGCAGCAGCACCAAAAAAACCCAGCTGCAACTGGAACATCTGCTGTTAGATCTGCAAATGATTCTGAACGGCATCAACAACTACAAAAATCCGAAACTGACCCGTATGCTGACCTTCAAATTCGCAATGCCGAAAAAAGCAACCGAGCTGAAACATCTGCAGTGTCTGGAAGAAGAACTGAAACCGCTGGAAGAGGTTCTGAATGGCGCACAGAGCAAAAACTTTCATCTGCGTCCGCGTGATCTGATTAGCAATATTAACGTTATTGTGCTGGAACTGAAAGGTAGCGAAACCACCTTTATGTGTGAATATGCCGATGAAACCGCAACCATTGTGGAATTTCTGAATCGTTGGATTACCTTTGCACAGAGCATTATTAGCACCCTGACCTAATGAGGATCC (SEQ ID NO.19).
(CATATGとGGATCCが斜線部分)
【0104】
>IL-2-09のアミノ酸配列:
MAPTSSSTKKTQLQLEHLLLDLQMILNGINNYKNPKLTRMLTFKFAMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNGAQSKNFHLRPRDLISNINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFAQSIISTLT (SEQ ID NO:20).
【0105】
ある変異体では、26位のアスパラギンをグルタミンに置換し;対応するヌクレオチド配列の76-78位のコドンAACをCAGに変異させ;30位のアスパラギンをセリンに置換し;対応するヌクレオチド配列の88-90位のコドンAACがAGCに変異させ;42位のフェニルアラニンをアラニンに置換し;対応するヌクレオチド配列の124-126位のコドンTTCをGCAに変異させ;72位のロイシンをグリシンに置換し;対応するヌクレオチド配列の214-216位のコドンCTGをGGCに変異させて、変異体IL-2-10を得た。
【0106】
>IL-2-10の核酸配列:
CATATGGCACCGACCAGCAGCAGCACCAAAAAAACCCAGCTGCAACTGGAACATCTGCTGTTAGATCTGCAAATGATTCTGCAGGGCATCAACAGCTACAAAAATCCGAAACTGACCCGTATGCTGACCGCAAAATTCTACATGCCGAAAAAAGCAACCGAGCTGAAACATCTGCAGTGTCTGGAAGAAGAACTGAAACCGCTGGAAGAGGTTCTGAATGGCGCACAGAGCAAAAACTTTCATCTGCGTCCGCGTGATCTGATTAGCAATATTAACGTTATTGTGCTGGAACTGAAAGGTAGCGAAACCACCTTTATGTGTGAATATGCCGATGAAACCGCAACCATTGTGGAATTTCTGAATCGTTGGATTACCTTTGCACAGAGCATTATTAGCACCCTGACCTAATGAGGATCC (SEQ ID NO.21).
(CATATGとGGATCCが斜線部分)
【0107】
>IL-2-10のアミノ酸配列:
MAPTSSSTKKTQLQLEHLLLDLQMILQGINSYKNPKLTRMLTAKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNGAQSKNFHLRPRDLISNINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFAQSIISTLT (SEQ ID NO:22).
【0108】
ある変異体では、11位のグルタミンをシステインに置換し;対応するヌクレオチド配列の31-33位のコドンCAGをTGTに変異させ;26位のアスパラギンがグルタミンに置換し;対応するヌクレオチド配列の76-78位のコドンAACをCAGに変異させ;30位のアスパラギンをセリンに置換し;対応するヌクレオチド配列の88-90位のコドンAACをAGCに変異させ;42位のフェニルアラニンをアラニンに置換し;対応するヌクレオチド配列の124-126位のコドンTTCをGCAに変異させ;72位のロイシンをグリシンに置換し;対応するヌクレオチド配列の214-216位のコドンCTGをGGCに変異させ;132位のロイシンをシステインに置換し;対応するヌクレオチド配列の394-396位のコドンCTGをTGTに変異させて、変異体IL-2-11を得た。
【0109】
>IL-2-11の核酸配列:
CATATGGCACCGACCAGCAGCAGCACCAAAAAAACCTGTCTGCAACTGGAACATCTGCTGTTAGATCTGCAAATGATTCTGCAGGGCATCAACAGCTACAAAAATCCGAAACTGACCCGTATGCTGACCGCAAAATTCTACATGCCGAAAAAAGCAACCGAGCTGAAACATCTGCAGTGTCTGGAAGAAGAACTGAAACCGCTGGAAGAGGTTCTGAATGGCGCACAGAGCAAAAACTTTCATCTGCGTCCGCGTGATCTGATTAGCAATATTAACGTTATTGTGCTGGAACTGAAAGGTAGCGAAACCACCTTTATGTGTGAATATGCCGATGAAACCGCAACCATTGTGGAATTTCTGAATCGTTGGATTACCTTTGCACAGAGCATTATTAGCACCTGTACCTAATGAGGATCC (SEQ ID NO.23).
(CATATGとGGATCCが斜線部分)
【0110】
>IL-2-11のアミノ酸配列:
MAPTSSSTKKTCLQLEHLLLDLQMILQGINSYKNPKLTRMLTAKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNGAQSKNFHLRPRDLISNINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFAQSIISTCT (SEQ ID NO:24).
【0111】
ある変異体では、26位のアスパラギンをグルタミンに置換し;対応するヌクレオチド配列の76-78位のコドンAACをCAGに変異させ;30位のアスパラギンをセリンに置換し;対応するヌクレオチド配列の88-90位のコドンAACをAGCに変異させ;42位のフェニルアラニンをアラニンに置換し;対応するヌクレオチド配列の124-126位のコドンTTCをGCAに変異させ;70位のロイシンをシステインに置換し;対応するヌクレオチド配列の208-210位のコドンCTGをTGTに変異させ;72位のロイシンをグリシンに置換し;対応するヌクレオチド配列の214-216位のコドンCTGをGGCに変異させ;82位のプロリンをシステインに置換し;対応するヌクレオチド配列の244-246位のコドンCCGをTGTに変異させて、変異体IL-2-12を得た。
【0112】
>IL-2-12の核酸配列:
CATATGGCACCGACCAGCAGCAGCACCAAAAAAACCCAGCTGCAACTGGAACATCTGCTGTTAGATCTGCAAATGATTCTGCAGGGCATCAACAGCTACAAAAATCCGAAACTGACCCGTATGCTGACCGCAAAATTCTACATGCCGAAAAAAGCAACCGAGCTGAAACATCTGCAGTGTCTGGAAGAAGAACTGAAACCGCTGGAAGAGGTTTGTAATGGCGCACAGAGCAAAAACTTTCATCTGCGTTGTCGTGATCTGATTAGCAATATTAACGTTATTGTGCTGGAACTGAAAGGTAGCGAAACCACCTTTATGTGTGAATATGCCGATGAAACCGCAACCATTGTGGAATTTCTGAATCGTTGGATTACCTTTGCACAGAGCATTATTAGCACCCTGACCTAATGAGGATCC (SEQ ID NO.25).
(CATATGとGGATCCが斜線部分)
【0113】
>IL-2-12のアミノ酸配列:
MAPTSSSTKKTQLQLEHLLLDLQMILQGINSYKNPKLTRMLTAKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVCNGAQSKNFHLRCRDLISNINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFAQSIISTLT (SEQ ID NO:26).
【0114】
ある変異体では、26位のアスパラギンをグルタミンに置換し;対応するヌクレオチド配列の76-78位のコドンAACをCAGに変異させ;27位のグリシンをシステインに置換し;対応するヌクレオチド配列の79-81位のコドンGGCをTGTに変異させ;30位のアスパラギンをセリンに置換し;対応するヌクレオチド配列の88-90位のコドンAACがAGCに変異させ;42位のフェニルアラニンをアラニンに置換し;対応するヌクレオチド配列の124-126位のコドンTTCをGCAに変異させ;72位のロイシンをグリシンに置換し;対応するヌクレオチド配列の214-216位のコドンCTGをGGCに変異させ;78位のフェニルアラニンをシステインに置換し;対応するヌクレオチド配列の232-234位のコドンTTTをTGTに変異させて、変異体IL-2-13を得た。
【0115】
>IL-2-13の核酸配列:
CATATGGCACCGACCAGCAGCAGCACCAAAAAAACCCAGCTGCAACTGGAACATCTGCTGTTAGATCTGCAAATGATTCTGCAGTGTATCAACAGCTACAAAAATCCGAAACTGACCCGTATGCTGACCGCAAAATTCTACATGCCGAAAAAAGCAACCGAGCTGAAACATCTGCAGTGTCTGGAAGAAGAACTGAAACCGCTGGAAGAGGTTCTGAATGGCGCACAGAGCAAAAACTGTCATCTGCGTCCGCGTGATCTGATTAGCAATATTAACGTTATTGTGCTGGAACTGAAAGGTAGCGAAACCACCTTTATGTGTGAATATGCCGATGAAACCGCAACCATTGTGGAATTTCTGAATCGTTGGATTACCTTTGCACAGAGCATTATTAGCACCCTGACCTAATGAGGATCC (SEQ ID NO.27).
(CATATGとGGATCCが斜線部分)
【0116】
>IL-2-13のアミノ酸配列:
MAPTSSSTKKTQLQLEHLLLDLQMILQCINSYKNPKLTRMLTAKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNGAQSKNCHLRPRDLISNINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFAQSIISTLT (SEQ ID NO:28).
【0117】
ある変異体では、29位のアスパラギンをセリンに置換し;対応するヌクレオチド配列の85-87位のコドンAACをAGCに置換し;42位のフェニルアラニンをアラニンに置換し;対応するヌクレオチド配列の124-126位のコドンTTCをGCAに変異させ;72位のロイシンをグリシンに置換し;対応するヌクレオチド配列の214-216位のコドンCTGをGGCに変異させて、IL-2-14の変異体を得た。
【0118】
>IL-2-14の核酸配列:
CATATGGCACCGACCAGCAGCAGCACCAAAAAAACCCAGCTGCAACTGGAACATCTGCTGTTAGATCTGCAAATGATTCTGAACGGCATCAGCAACTACAAAAATCCGAAACTGACCCGTATGCTGACCGCAAAATTCTACATGCCGAAAAAAGCAACCGAGCTGAAACATCTGCAGTGTCTGGAAGAAGAACTGAAACCGCTGGAAGAGGTTCTGAATGGCGCACAGAGCAAAAACTTTCATCTGCGTCCGCGTGATCTGATTAGCAATATTAACGTTATTGTGCTGGAACTGAAAGGTAGCGAAACCACCTTTATGTGTGAATATGCCGATGAAACCGCAACCATTGTGGAATTTCTGAATCGTTGGATTACCTTTGCACAGAGCATTATTAGCACCCTGACCTAATGAGGATCC (SEQ ID NO.29).
(CATATGとGGATCCが斜線部分)
【0119】
>IL-2-14のアミノ酸配列:
MAPTSSSTKKTQLQLEHLLLDLQMILNGISNYKNPKLTRMLTAKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNGAQSKNFHLRPRDLISNINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFAQSIISTLT (SEQ ID NO:30).
【0120】
ある変異体では、26位のアスパラギンをグルタミンに置換し;対応するヌクレオチド配列の76-78位のコドンAACをCAGに変異させ;29位のアスパラギンをセリンに置換し;対応するヌクレオチド配列の85-87位のコドンAACをAGCに変異させ;42位のフェニルアラニンをアラニンに置換し;対応するヌクレオチド配列の124-126位のコドンTTCをGCAに変異させ;72位のロイシンをグリシンに置換し;対応するヌクレオチド配列の214-216位のコドンCTGをGGCに変異させて、変異体IL-2-21を得た。
【0121】
>IL-2-21の核酸配列:
CATATGGCACCGACCAGCAGCAGCACCAAAAAAACCCAGCTGCAACTGGAACATCTGCTGTTAGATCTGCAAATGATTCTGCAGGGCATCAGCAACTACAAAAATCCGAAACTGACCCGTATGCTGACCGCAAAATTCTACATGCCGAAAAAAGCAACCGAGCTGAAACATCTGCAGTGTCTGGAAGAAGAACTGAAACCGCTGGAAGAGGTTCTGAATGGCGCACAGAGCAAAAACTTTCATCTGCGTCCGCGTGATCTGATTAGCAATATTAACGTTATTGTGCTGGAACTGAAAGGTAGCGAAACCACCTTTATGTGTGAATATGCCGATGAAACCGCAACCATTGTGGAATTTCTGAATCGTTGGATTACCTTTGCACAGAGCATTATTAGCACCCTGACCTAATGAGGATCC (SEQ ID NO.31).
(CATATGとGGATCCが斜線部分)
【0122】
>IL-2-21のアミノ酸配列:
MAPTSSSTKKTQLQLEHLLLDLQMILQGISNYKNPKLTRMLTAKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNGAQSKNFHLRPRDLISNINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFAQSIISTLT (SEQ ID NO:32).
【0123】
ある変異体では、26位のアスパラギンをグルタミンに置換し;対応するヌクレオチド配列の76-78位のコドンAACをCAGに変異させ;29位のアスパラギンをセリンに置換し;対応するヌクレオチド配列の85-87位のコドンAACをAGCに変異させ;42位のフェニルアラニンをアラニンに置換し;対応するヌクレオチド配列の124-126位のコドンTTCをGCAに変異させ;42位のフェニルアラニンをアラニンに置換し;対応するヌクレオチド配列の124-126位のコドンTTCをGCAに変異させ;71位のアスパラギンをグルタミンに置換し;対応するヌクレオチド配列の211-213位のコドンAATをCAGに変異させた。72位のロイシンをグリシンに置換し、対応するヌクレオチド配列の214-216位のコドンCTGをGGCに変異させて、変異体IL-2-22を得た。
【0124】
>IL-2-22の核酸配列:
CATATGGCACCGACCAGCAGCAGCACCAAAAAAACCCAGCTGCAACTGGAACATCTGCTGTTAGATCTGCAAATGATTCTGCAGGGCATCAGCAACTACAAAAATCCGAAACTGACCCGTATGCTGACCGCAAAATTCTACATGCCGAAAAAAGCAACCGAGCTGAAACATCTGCAGTGTCTGGAAGAAGAACTGAAACCGCTGGAAGAGGTTCTGCAGGGCGCACAGAGCAAAAACTTTCATCTGCGTCCGCGTGATCTGATTAGCAATATTAACGTTATTGTGCTGGAACTGAAAGGTAGCGAAACCACCTTTATGTGTGAATATGCCGATGAAACCGCAACCATTGTGGAATTTCTGAATCGTTGGATTACCTTTGCACAGAGCATTATTAGCACCCTGACCTAATGAGGATCC (SEQ ID NO.33).
(CATATGとGGATCCが斜線部分)
【0125】
>IL-2-22のアミノ酸配列:
MAPTSSSTKKTQLQLEHLLLDLQMILQGISNYKNPKLTRMLTAKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLQGAQSKNFHLRPRDLISNINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFAQSIISTLT (SEQ ID NO:34).
【0126】
ある変異体では、11位のグルタミンをシステインに置換し;対応するヌクレオチド配列の31-33位のコドンCAGをTGTに変異させ;29-44位のペプチドをQSMHIDATLに置換し;対応するヌクレオチド配列の85-132位のコドンAAAACACTAAAAAATCCGAACCCTGCTGACCTTCAAATTCをCAGAGCATGCATATTGATGCAACCCTGに変異させ;132位のロイシンをシステインに置換し;対応するヌクレオチド配列の394-396位のコドンCTGをTGTに変異させて、変異体IL-2-23を得た。
【0127】
>IL-2-23の核酸配列:
CATATGGCACCGACCAGCAGCAGCACCAAAAAAACCTGTCTGCAACTGGAACATCTGCTGTTAGATCTGCAAATGATTCTGAACGGCATCCAGAGCATGCATATTGATGCAACCCTGTACATGCCGAAAAAAGCAACCGAGCTGAAACATCTGCAGTGTCTGGAAGAAGAACTGAAACCGCTGGAAGAGGTTCTGAATCTGGCACAGAGCAAAAACTTTCATCTGCGTCCGCGTGATCTGATTAGCAATATTAACGTTATTGTGCTGGAACTGAAAGGTAGCGAAACCACCTTTATGTGTGAATATGCCGATGAAACCGCAACCATTGTGGAATTTCTGAATCGTTGGATTACCTTTGCACAGAGCATTATTAGCACCTGTACCTAATGAGGATCC (SEQ ID NO.35).
(CATATGとGGATCCが斜線部分)
【0128】
>IL-2-23のアミノ酸配列:
MAPTSSSTKKTCLQLEHLLLDLQMILNGIQSMHIDATLYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNLAQSKNFHLRPRDLISNINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFAQSIISTCT (SEQ ID NO:36).
【0129】
ある変異体では、26位のアスパラギンをグルタミンに置換し;対応するヌクレオチド配列の76-78位のコドンAACをCAGに変異させ;29位のアスパラギンをセリンに置換し;対応するヌクレオチド配列の85-87位のコドンAACをAGCに変異させ;88位のアスパラギンをアルギニンに置換し;対応するヌクレオチド配列の262-264位のコドンAATをCGTに変異させ;88位のアスパラギンをアルギニンに置換し;対応するヌクレオチド配列の262-264位のコドンAATをCGTに変異させて、バリアントIL-2-24を得た。
【0130】
>IL-2-24の核酸配列:
CATATGGCACCGACCAGCAGCAGCACCAAAAAAACCCAGCTGCAACTGGAACATCTGCTGTTAGATCTGCAAATGATTCTGCAGGGCATCAGCAACTACAAAAATCCGAAACTGACCCGTATGCTGACCTTCAAATTCTACATGCCGAAAAAAGCAACCGAGCTGAAACATCTGCAGTGTCTGGAAGAAGAACTGAAACCGCTGGAAGAGGTTCTGAATCTGGCACAGAGCAAAAACTTTCATCTGCGTCCGCGTGATCTGATTAGCCGTATTAACGTTATTGTGCTGGAACTGAAAGGTAGCGAAACCACCTTTATGTGTGAATATGCCGATGAAACCGCAACCATTGTGGAATTTCTGAATCGTTGGATTACCTTTGCACAGAGCATTATTAGCACCCTGACCTAATGAGGATCC (SEQ ID NO.40).
(CATATGとGGATCCが斜線部分)
【0131】
>IL-2-24のアミノ酸配列:
MAPTSSSTKKTQLQLEHLLLDLQMILQGISNYKNPKLTRMLTFKFYMPKKATELKHLQCLEEELKPLEEVLNLAQSKNFHLRPRDLISRINVIVLELKGSETTFMCEYADETATIVEFLNRWITFAQSIISTLT (SEQ ID NO.41).
【0132】
合成後、上記各変異体の遺伝子配列を、Nde IおよびBamH Iの2つの制限部位を介してpET-9aに連結して、IL-2の各変異体の組換え発現ベクターを得た。
【0133】
3.野生型IL-2およびその変異体の組換え発現および調製
【0134】
この組換え発現ベクターをBL21(DE3)株(Novagen社、Cat.69450-3)に形質転換して、野生型IL-2およびその変異体の組換え菌を得、この組換え菌をKan耐性を含むLBプレートに播種してスクリーニングした。
【0135】
Kanスクリーニングにより単一コロニーを選択し、10mLのLB培地に移し、37℃、220rpmでOD600が1.2±0.2になるまで培養し、50%グリセロールを最終濃度が10%となるよう加え、凍結保存用チューブ(1mL/チューブ)にあらかじめ入れて-80℃で保存した。
【0136】
凍結したグリセロールチューブを取り出し、37℃の水槽で復元し、1LのLB培地に播種し、37℃、220rpmでOD600が0.6~1.0になるまで培養し、1M IPTGを最終濃度が1mMになるように添加し、誘導し、37℃、220rpmで4時間培養した。誘導が終了した後、細菌を回収した。
【0137】
細菌細胞を破砕し、封入体を変性させ、再生させ、精製し、試験により目的タンパク質(野生型IL-2およびその変異体)を得た。
【0138】
実施例2:PEG化したIL-2およびその変異体の調製
IL-2タンパク質を10mM酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液pH5の緩衝系に入れ、タンパク質濃度を2mg/mlとした;IL-2タンパク質の溶液に20KDaのmPEG-ブチルアルデヒドの水溶液を加えたところ、mPEG-ブチルアルデヒドの物質量はタンパク質の1-2倍となった;シアノボロハイドライドナトリウム水溶液を反応系に加えたことろ、シアノボロハイドライドナトリウムの物質量はタンパク質の50-100倍となった;25℃で約15-20時間撹拌しながら反応させ、グリシン水溶液を加えて反応を停止させた。グリシンの最終濃度は30mMであった。反応後、PEG修飾溶液を逆相高速液体クロマトグラフィーで精製して、モノPEG修飾IL-2から不純物(二/多修飾、ネイキッドタンパク質など)を分離した。目的成分を回収し、緩衝液を交換し、活性と結合能について解析を行った。
【0139】
試験により、PEG化IL-2とその変異体が得られた。
【0140】
実施例3:IL-2およびその変異体の安定性研究
1.野生型IL-2とその変異体の化学的安定性
野生型IL-2試料(緩衝系は10mM Tris-HCl、50mg/ml マンニトール、0.18mg/ml SDS、pH8.5)を40℃で30日間インキュベートして安定性を調べ、試料を採取して液体MSのペプチドマップで分解を分析した。
【0141】
検出方法:0.5mLの試料を採取し、0.5mLの変性液(8mol/L 塩酸グアニジン、0.2mol/L Tris-HCl、pH9.0)を加え、8μlの1mol/L DTT(ジチオスレイトール)を加えてよく混合し、25℃の水槽において1時間インキュベートした。その後、35μlの0.5mol/L IACを加え、25℃の水槽において1時間インキュベートした。この試料を、PD-10カラムを介した緩衝液交換により消化緩衝液(2moL/L 尿素、50mmol/L Tris-HCl、pH8.3)に溶解した。緩衝液交換後、試料0.5mLに12.5μgのトリプシンを加え、25℃の水槽中で18時間インキュベートした後、塩酸を加えて反応を停止させ、液体MSペプチドマッピング解析を行った。
【0142】
液体-MSペプチドマッピングの試験結果は表2を参照。30日間保存した結果、N26とN29を含む制限断片9-32(すなわち、9-32位のアミノ酸のペプチド断片)については、脱アミノ化が著しく増加した3つの断片(すなわち、9-32A、9-32B、9-32C)が検出された。変異体を調べる過程で、2つの変異体IL-2-08(F42A/L72G)とIL-2-22(N26Q/N29S/F42A/N71Q/L72G)の安定性を調べ、分解を検出するために試料を採取した。方法は、野生型IL-2の場合と同じとした。その結果を表2に示す。
【0143】
実験の結果、IL-2-08と野生型IL-2の両方のペプチド断片9-32に、脱アミノ化が同様に増加した3つの断片が検出され、F42A/L72Gの変異はペプチド断片9-32の脱アミノ化に影響を与えないことがわかった。一方、IL-2-22とIL-2-24のN26とN29の変異は、これら2つの位置での断片の脱アミノ化を減少させた。30日後、脱アミノ化した断片の増加率は<0.5%であることが検出され(表には非表示)、N26QおよびN29SがIL-2の安定性を高め得ることが示された。
【0144】
【0145】
さらに、IL-2-08 (F42A/L72G)では、55-76制限配列に、脱アミノ化が著しく増加した4つの断片(すなわち、55-76A, 55-76B, 55-76C, 55-76D)が見られた。N71をQに変異させる効果を調べたのがIL-2-22(N26Q/N29S/F42A/N71Q/L72G)であり;安定性の結果を表3に示す。N71位の変異は、55-76制限配列上の脱アミノ化断片の数を減らし、脱アミノ化の増加を抑え、脱アミノ化を著しく改善し、タンパク質を安定化させ、それによりデザインは期待に沿うものとなった。
【0146】
【0147】
2.野生型IL-2とその変異体の熱安定性
1mg/mLのIL-2試料(緩衝系は10mM酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液、pH4.5、10%トレハロースとした)の安定性をUncle(Unchained labs社)装置で調べた。試料の温度は25℃から95℃まで0.3℃/分の速度で上昇させた。同時に,試料中のトリプトファンを266nmで励起し、この試料の300-400nmでの発光を観測した。溶解温度(Tm)は以下の式に従って算出した。式中、λは波長(300-400nm)であり、I(λ)は該波長での発光強度であり、BCMは重心平均(barycentric mean)、つまり光強度で重み付けされた波長である。
【0148】
【0149】
温度が上昇すると、試料のBCMパラメータが変化し、タンパク質の立体構造の変化を反映する。野生型IL-2には2つの溶解温度があり、これは、IL-2は完全にアンフォールドするまでに2つの段階を経ることを示す。第1段階のアンフォールドに必要なエネルギーは、第2段階のそれよりも低い。N26QとN30Sの変異は、基本的に第1溶解温度には影響を与えないが、第2溶解温度を著しく上昇させる。一方、IL-2-03、IL-2-04、およびIL-2-05は第1溶解温度がなく、第2溶解温度はまたも野生型よりも著しく高い。
【0150】
IL-2変異体の熱安定性試験結果を
図1A~1Fおよび表4に示す。実験結果は、変異N26Q、N30S、Q11C/L132C、L70C/P82CおよびG27C/F78Cが、IL-2の熱安定性を向上させることを示している。
【0151】
【0152】
実施例4:インターロイキン2受容体α(IL-2Rα)に対するIL-2変異体の結合親和性の測定
IL-2およびその変異体のIL-2Rαへの結合性を検出するためにELISAを用いた。Hisタグを持つIL-2Rα組換えタンパク質をコーティングし、IL-2を加えた後、HRP結合抗IL-2ポリクローナル抗体とHRP基質TMBを加えることにより、抗原に結合する抗体の活性を検出した。
【0153】
96ウェルマイクロタイタープレートに2μg/mLのHisタグ付けIL-2Rα組換えタンパク質(SinoBiological社、Cat# 10165-H08H)をコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。プレートを洗浄液で3回、1ウェルあたり250μlで洗浄した。洗浄のたびに、プレートを10秒間振って十分な洗浄を行った。200μl/ウェルのブロッキング液を加え、室温で2時間インキュベートした。プレートを洗浄液で3回、1ウェルあたり250μlで洗浄した。洗浄のたびに、プレートを10秒間振って十分な洗浄を行った。希釈液で希釈したIL-2およびその変異体を各ウェルに100μlずつ加えた。プレートを室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄液で3回、1ウェルあたり250μlで洗浄した。希釈液で0.1μg/mLに希釈した100μlのHRP標識抗IL-2ポリクローナル抗体(SinoBiological社、Cat#11848-T16)を各ウェルに加えた。プレートを室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄液で3回、1ウェルあたり250μlで洗浄した。100μlのTMBを各ウェルに加え、暗所で15分間反応させた。50μlの0.16M硫酸を各ウェルに加えた。Thermo MultiSkanFcマイクロプレートリーダーを用いて450nmのOD値を読み取り、IL-2およびその変異体とIL-2Rαの結合に関するEC50値を算出した。
【0154】
実施例4の変異体のIL-2Rαに対するELISA結合データを
図2および表5に示す。この結果から、第1のタイプの変異(すなわち、変異N26Q、N30S、Q11C/L132C、L70C/P82C、G27C/F78CおよびN29S)は、IL-2のIL-2Rαへの結合に影響を与えないことがわかる。一方、第2のタイプの変異(すなわち、F42A/Y45A、F42A/L72G、Y45A/L72G、29-44位のQSMHIDATLへの変異)は、IL-2のIL-2Rαへの結合を大きく減少させ;IL-2のIL-2Rαへの結合は、実験条件下ではほとんど観察できない。また、2種類の変異を組み合わせると、第2のタイプの変異の存在により、IL-2のIL-2Rαへの結合が減少する。
【0155】
>IL-2Rα(Hisタグ)
ELCDDDPPEIPHATFKAMAYKEGTMLNCECKRGFRRIKSGSLYMLCTGNSSHSSWDNQCQCTSSATRNTTKQVTPQPEEQKERKTTEMQSPMQPVDQASLPGHCREPPPWENEATERIYHFVVGQMVYYQCVQGYRALHRGPAESVCKMTHGKTRWTQPQLICTGEMETSQFPGEEKPQASPEGRPESETSCHHHHHH (SEQ ID NO.37).
【0156】
【0157】
IL-2、PEG-IL-2-10、PEG-IL-2-22、PEG-IL-2-23のIL-2Rαに対する親和性を検出するために、Octet RED96e(Fortebio社)を使用した。
【0158】
HIS1Kバイオセンサー(Fortebio社、18-5120)を200μLの緩衝液(PBS、pH7.4、0.02%tween-20、0.1%BSA)に10分間浸漬し、湿潤処理を行った。次に,Hisタグ付きのヒトIL-2Rα(SinoBiological社、Cat#10165-H08H)をPBS pH7.4、0.02%tween-20、および0.1%BSAに溶解し、その溶液200μLにセンターを入れた。このセンサーを緩衝液200μL(PBS pH7.4、0.02%tween-20、0.1%BSA)に入れて、過剰なIL-2Rαを洗い流した。その後、PEG-IL-2-10、PEG-IL-2-22、PEG-IL-2-23をそれぞれ緩衝液(PBS pH7.4、0.02%tween-20、および0.1%BSA)で133.3nMに希釈した。濃度の異なるIL-2溶液にセンサーを入れ、300秒間保持して結合させた。その後、センサーを200μLの1×PBS、pH7.4、0.02%tween-20、0.1%BSAに入れて600秒間保持し、IL-2の解離を行った。表6の実験結果から、PEG-IL-2-10、PEG-IL-2-22、およびPEG-IL-2-23のいずれもIL-2Rαに結合しないことがわかった。
【0159】
【0160】
実施例5:IL-2受容体β/γ(IL-2Rβ/γ)に対するIL-2およびその変異体の結合親和性の測定
Biacore実験を用いて実施例1のIL-2およびその変異体のIL-2Rβ/γへの結合能を検出した。
【0161】
まず、IL-2RβおよびIL-2Rγサブユニットをクローニングし、それぞれFcホールおよびFcノブ(SEQ ID NO.38および39)に融合させて、ツール分子であるIL-2Rβ/γ-Fcヘテロ二量体を調製した。IL-2Rβ-Fc-holeとIL-2Rγ-Fc-knobをHEK293細胞に共導入した。このヘテロ二量体をプロテインAで精製した後、Superdex200モレキュラーシーブで精製した。試験によりIL-2Rβ/γタンパク質を得た。
【0162】
>IL-2Rβ(Fcホール)
MDMRVPAQLLGLLLLWFPGARCAVNGTSQFTCFYNSRANISCVWSQDGALQDTSCQVHAWPDRRRWNQTCELLPVSQASWACNLILGAPDSQKLTTVDIVTLRVLCREGVRWRVMAIQDFKPFENLRLMAPISLQVVHVETHRCNISWEISQASHYFERHLEFEARTLSPGHTWEEAPLLTLKQKQEWICLETLTPDTQYEFQVRVKPLQGEFTTWSPWSQPLAFRTKPAALGKDTGAQDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVCTLPPSRDELTKNQVSLSCAVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK (SEQ ID NO. 38).
【0163】
>IL-2Rγ(Fcノブ)
MLKPSLPFTSLLFLQLPLLGVGLNTTILTPNGNEDTTADFFLTTMPTDSLSVSTLPLPEVQCFVFNVEYMNCTWNSSSEPQPTNLTLHYWYKNSDNDKVQKCSHYLFSEEITSGCQLQKKEIHLYQTFVVQLQDPREPRRQATQMLKLQNLVIPWAPENLTLHKLSESQLELNWNNRFLNHCLEHLVQYRTDWDHSWTEQSVDYRHKFSLPSVDGQKRYTFRVRSRFNPLCGSAQHWSEWSHPIHWGSNTSKENPFLFALEAGAQDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPCRDELTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK (SEQ ID NO. 39).
【0164】
Biacore社の装置(Biacore T200、GE)のプロテインAセンサーチップ(GE社、Cat#29127556)を用いて、IL-2Rβ/γ-Fcを捕捉した。IL-2Rβ/γ-Fcを1×HBS-EPで1μg/mLに希釈し、10μL/minの流速で30秒間流した。次に、IL-2およびその変異体の一連の濃度勾配を30μL/minの流速でチップの表面に流し、結合を120秒、解離を360秒維持した。Biacore社の装置(Biacore X100、GE)を用いて反応をリアルタイムで検出し、結合曲線と解離曲線を得た。解離の各サイクルが終了した後、チップを洗浄し、10mM Gly-HCl pH1.5で再生した。実験データを1:1の結合モデルに当てはめ、表7に示すように、IL-2およびその変異体の中等度親和性受容体IL-2Rβ/γへの結合能を表す値を得た。
【0165】
その結果から、N26Q、N30S、Q11C/L132C、L70C/P82C、G27C/F78C、F42A/Y45A、F42A/L72G、Y45A/L72G、N26Q/N30S/F42A/L72G、29-44位のQSMHIDATLへの変異、およびそれらの組み合わせのすべてが、IL-2のIL-2Rβ/γへの結合にほとんど影響を与えないことがわかった。
【0166】
【0167】
同様の方法を用いて、PEG-IL-2-10、PEG-IL-2-22、PEG-IL-2-23のBiacore社製IL-2Rβ/γへの親和性を検出した。その結果を表8に示す。この結果から、PEGに結合した場合のIL-2変異体は、IL-2Rβ/γへの結合力がある程度低下するものの、なお強い親和性を維持していることがわかる。実験結果は、野生型IL-2と比較して、IL-2-24はIL-2Rβにほとんど結合しないことを示しており、N26Q/N29S/N88RがIL-2のIL-2Rβへの結合を減少させることを示している(この結果は本明細書には示していない)。
【0168】
【0169】
実施例6:IL-2およびその変異体の高親和性受容体IL-2Rα/β/γが媒介する細胞生存率
CTLL2は、IL-2Rα、β、およびγを共発現するマウス由来の細胞株であり、各IL-2変異体の高親和性受容体IL-2Rα/β/γを介する細胞生存率を評価するために用いることができる。異なる濃度のIL-2またはその変異体の下で、CTLL-2の増殖率を検出して、IL-2またはその変異体の生物活性を評価した。
【0170】
完全培地:RPMI1640+2mM L-グルタミン+1mMピルビン酸ナトリウム+10%ウシ胎児血清+コンカナバリンA入り10%T-STIM(IL-2を含む);基本培地:RPMI1640+2mM L-グルタミン+1mMピルビン酸ナトリウム+10%ウシ胎児血清
【0171】
CTLL-2細胞の増殖実験:CTLL-2細胞を37℃、5%CO2で2.0×105細胞/mLの密度になるまで完全培地において培養し、細胞を継代培養し、3-4日後に遠心分離によりCTLL-2細胞を回収した。この細胞をPBSで3回洗浄し、基本培地に再懸濁して1mLあたり2.0×105の細胞を有する細胞懸濁液を調製し、96ウェルプレートに1ウェルあたり90μLの細胞を用いてインキュベートした。基本培地を用いて対応する濃度に調製した10×濃縮IL-2溶液を10μL添加した。細胞を37℃、5%CO2の条件下でインキュベートした。24時間インキュベートした後、各ウェルにCELLTITER-Glo試薬(Promega社)の溶解液を100μLずつ加え、細胞プレート内の溶液と混合した。このプレートを630nmを基準波長とするマイクロプレートリーダーに入れ、570nmの波長で吸光度を測定し、測定結果を記録した。
【0172】
コンピュータプログラムまたは4パラメータ回帰アルゴリズムを用いてデータをフィッティングし、計算結果を以下のように算出した:
試験試料の相対的生物活性(%)=試験試料のEC50/被験試料のEC50(EC50:最大効果の50%を示す濃度)。
【0173】
IL-2およびその変異体の活性データを表9、表10および
図3A~3Cに示す。その結果から、第1のタイプの変異(すなわち、変異N26Q、N29S、N30S、Q11C/L132C、L70C/P82CおよびG27C/F78C)は、CTLL2細胞の増殖を促進するIL-2の活性に影響を及ぼさないか、あるいはわずかに増強し;一方、第2のタイプの変異(すなわち、F42A/Y45A、F42A/L72G、Y45A/L72G、および29-44位のQSMHIDATLへの変異)は、IL-2のIL-2Rαへの結合を低下させるとともに、IL-2のCTLL2細胞の増殖を促進する活性を低下させることがわかった。
【0174】
【0175】
【0176】
実施例7:IL-2およびその変異体の中親和性受容体IL-2Rβ/γが媒介する細胞生存率
Mo7eは、IL-2Rβとγのみを発現し、IL-2Rαは発現しないヒト由来の細胞株である。Mo7eは、各IL-2変異体の中親和性受容体IL-2Rβ/γを媒介とした細胞生存率の評価に用いることができる。異なる濃度のIL-2またはその変異体を用いて、Mo7eの細胞株依存性増殖率を検出し、IL-2またはその変異体の生物活性を評価した。
【0177】
完全培地:RPMI1640+2mM L-グルタミン+1mMピルビン酸ナトリウム+10%ウシ胎児血清+15ng/mL GM-CSF;基本培地:RPMI1640+2mM L-グルタミン+1mM ピルビン酸ナトリウム+10%ウシ胎児血清
【0178】
Mo7e細胞の増殖実験:Mo7e細胞を37℃、5%CO2で2.0×105細胞/mLの密度になるまで完全培地において培養し、細胞を継代培養し、3-4日後に遠心分離によりMo7e細胞を回収した。この細胞をPBSで3回洗浄し、基本培地に再懸濁して1mLあたり2.0×105の細胞を有する懸濁液を調製し、96ウェルプレートに1ウェルあたり90μLの細胞を入れてインキュベートした。基本培地を用いて対応する濃度に調製した10×濃縮IL-2溶液を10μL添加した。細胞を37℃、5%CO2の条件下でインキュベートした。72時間インキュベートした後、各ウェルにCELLTITER-Glo試薬(Promega社製)の溶解液を100μLずつ加え、細胞プレート内の溶液と混合した。このプレートを630nmを基準波長とするマイクロプレートリーダーに入れ、570nmの波長で吸光度を測定し、測定結果を記録した。実施例6と同様の方法を用いて、相対的生物活性を算出した。
【0179】
IL-2およびその変異体のMo7e細胞増殖活性データを表11および
図4A~4Cに示す。その結果から、第1のタイプの変異(すなわち、変異N26Q、N29S、N30S、Q11C/L132C、L70C/P82CおよびG27C/F78C)も、第2のタイプの変異(すなわち、F42A/Y45A、F42A/L72G,Y45A/L72G、29-44位のQSMHIDATLへの変異)も、IL-2のMo7e細胞の増殖を促進する活性に影響を与えず、IL-2のIL-2Rβ/γへの親和性に影響を与えないことがわかった。PEGと結合したIL-2は、Mo7e細胞の増殖を促進するIL-2の活性をある程度低下させるが、なお有利な結合を維持する。
【0180】
【0181】
実施例8:CTLL2細胞におけるSTAT5のリン酸化におけるIL-2およびその変異体の活性の測定
IL-2またはその変異体の生物活性を、異なる濃度のIL-2またはその変異体を用いた細胞依存性株CTLL-2におけるSTAT5のリン酸化レベルに基づいて検出した。
【0182】
完全培地:RPMI1640+2mM L-グルタミン+1mM ピルビン酸ナトリウム+10%ウシ胎児血清+コンカナバリンA入りT-STIM培地10%(IL-2を含む);基本培地:RPMI1640+2mM L-グルタミン+1mM ピルビン酸ナトリウム+10%ウシ胎児血清
【0183】
CTLL-2細胞におけるSTAT5のリン酸化実験:CTLL-2細胞を37℃、5%CO2で2.0×105細胞/mLの密度になるまで完全培地において培養し、PBSA(PBS、pH7.2、1%BSA)で1回洗浄し、1.0×106細胞/mLの密度に調整し、1本あたり500μLのチューブに細胞を分注した。基本培地を用いて対応する濃度に調製した濃縮IL-2溶液を室温で20分間インキュベートし;直ちにパラホルムアルデヒドを最終濃度1.5%になるように加えてボルテックスで混合し、室温で10分間インキュベートした。1mLのPBSを加え、4℃、1400rpmで5分間遠心分離してパラホルムアルデヒドを除去した。細胞を再懸濁し、4℃の100%予冷メタノール1mLを加えてボルテックスで混合し、細胞を4℃で20分間インキュベートした。3mLのPBSA緩衝液を加え、4℃、1400rpmで5分間遠心分離した。細胞を2回洗浄した。Alexa Fluor 647結合抗STAT5-pY694抗体(BD、Cat#612599)を、暗所で室温にて30分間インキュベートした。細胞を3mLのPBSAで2回洗浄し、フローサイトメーターで検出した。実施例6に記載の方法を用いて、相対的生物活性を算出した。
【0184】
CTLL2細胞におけるSTAT5のリン酸化におけるIL-2およびその変異体の活性データを
図5および表12に示す。その結果から、変異N26Q、N29SおよびN30Sは、CTLL2細胞におけるSTAT5リン酸化におけるIL-2の活性に影響を与えないか、あるいはわずかに増強するが、F42A/Y45A、F42A/L72GおよびY45A/L72Gは、CTLL2細胞におけるSTAT5リン酸化におけるIL-2の活性を低下させることがわかった。これにより、N26Q、N29SおよびN30Sは、IL-2の高親和性受容体IL-2Rα/β/γへの結合に影響を与えないが、F42A/Y45A、F42A/L72GおよびY45A/L72Gは、IL-2の高親和性受容体IL-2Rα/β/γへの結合を低下させることが証明され得た。
【0185】
【0186】
実施例9:ヒト末梢血(PBMC)におけるSTAT5のリン酸化におけるIL-2およびその変異体の活性の測定
IL-2の生物活性を、異なる濃度のIL-2またはその変異体を用いて、ヒト末梢血中の様々な細胞集団(Treg、NK細胞、CD4+T細胞、およびCD8+T細胞を含む)におけるSTAT5のリン酸化レベルに基づいて検出した。
【0187】
基本培地:RPMI1640+10%ウシ胎児血清
【0188】
抗体混合物:CD3 APC-Cy7(BD 557832)、CD4 BB515(BD 564419)、CD8 BB700(BD 566452)、CD25 BV421(BD 564033)、FOXP3 PE(BD 560852)、CD56 BV650(BD 564057)、pSTAT5 AF647(BD 562076)。
【0189】
ヒトPBMCにおけるSTAT5のリン酸化の実験:新鮮に単離したヒトPBMC細胞を基本培地を用いて6.0×106細胞/mLの密度に調整し、90μLを96ウェルプレートに添加した。IL-2およびその変異体とその誘導体を基本培地を用いて1000nM、100nM、10nM、1nM、0.1nM、0.01nMに希釈し;その10mμLを90μLのPBMCに添加し、37℃で15分間刺激した。その後、細胞をすぐに、あらかじめ温めておいたBD Cytofix緩衝液(BD、Cat NO.554655)を用いて37℃で10分間固定した。この細胞を350gで7分間、4℃で遠心分離した。上澄み液を除去し、20℃に予冷したBD Phosflow Perm Buffer III(BD、Cat NO.558050)200μLを氷上で30分間加え、細胞膜を消化した。細胞を450gで7分間、4℃で遠心分離した。上澄み液を除去し、200μLのPBS pH7.4を加えて2回洗浄した。1:200に希釈したFcRブロッカーを100μL加え、4℃で20分間インキュベートした。試料を450gで7分間、4℃で遠心分離した。上澄み液を除去し、100μLの抗体混合物を加え、細胞を室温で40分間染色した。試料を450gで7分間、4℃で遠心分離した。上澄み液を除去し、200μLのPBS pH7.4を加えて1回洗浄した。200μLのPBS pH7.4を加えてPBMCを再懸濁し、フローサイトメーターで検出した。NK細胞はCD3-CD56+細胞、CD8+T細胞はCD3+CD4-CD8+細胞、TregはCD3+CD4+CD25+Foxp3+細胞と定義されている。
【0190】
上述の3つの細胞集団について、異なるIL-2濃度下でのpSTAT5蛍光値(MFI)をまとめ、コンピュータプログラムや4パラメータの回帰アルゴリズムを用いてフィッティングし、実施例6と同様の方法で相対的な生物活性を算出した。
【0191】
その結果から、IL-2-10とIL-2-23におけるF42A/L72Gおよび変異は、IL-2のIL-2Rαへの結合を低下させるだけで、IL-2のIL-2Rβ/γへの結合には影響を与えず;そのためこれらの変異によるTreg活性の低下は、CD8+T細胞やNK細胞のそれよりも大きいことがわかった。逆に、N88RはIL-2のIL-2Rαへの結合には影響を与えず、IL-2のIL-2Rβへの結合を低下させるため、IL-2によるTreg活性の低下はCD8+T細胞のそれよりも小さい。PEGと結合したIL-2は、CD8+T細胞やNK細胞の活性化に対するIL-2の効果をある程度低下させることになる。
【0192】
PBMC細胞におけるSTAT5のリン酸化におけるIL-2変異体の活性についてのデータを、表13、表14、表15、および
図6A~6Cに示す。
【0193】
【0194】
【0195】
【0196】
実施例10:Balb/cマウスの末梢血免疫細胞に対するIL-2およびその変異体の効果の測定
BALB/cマウス(Shanghai Lingchang Biotechnology Co., Ltd.から購入)、雌、4-8週齢、体重18-20g、正式な実験の前に5日間馴致した。すべてのBALB/cマウスを、温度20~26℃、湿度40~70%、光周期12時間明/12時間暗の恒温恒湿システムを備えたSPFグレードのアニマルハウスIVCで飼育した。各ケージには6匹以下のBALB/cマウスを入れた。ケージの大きさは325mm×210mm×180mmであった。ケージ内の寝具はコーンコブで、週に2回新しくした。実験期間中、すべての実験用マウスは自由に餌と水を利用することができ,餌と水はオートクレーブし、週に2回新しくした。動物飼育室への出入りや実験操作者はすべて、滅菌された実験着、使い捨ての医療用マスク、ゴム手袋を着用した。各ケージには対応する明確で詳細なラベルを貼った。ラベルの内容には:IACUC承認番号LDIACUC006、動物の数、性別、系統、組み入れ日、アイテム番号、グループ分け、現在の実験段階、実験担当者などが含まれた。実験中、実験動物の操作と観察は、AAALACの動物操作および管理規定に基づいて行った。日常的な実験プロセスに従って、すべての実験動物の行動、飼料および水の摂取量、体重の変化、毛艶、およびその他の異常な状態を監視し、記録した。
【0197】
マウスを体重別にグループ分けし、グループ分け後に投与を開始した。投与の種類、投与量、および投与経路を表16および
図7A~7Dに示す。なお、マウスをグループ分けした日を0日目とした。
【0198】
各時点で血液を採取し、血液量を測定した。採取したばかりの抗凝固性血液を赤血球溶解液で赤血球を溶解し、PBSで1回洗浄した。混合染色液は、1%FBSを含むPBSを用いて調製した。混合染色液は、CD3 APC-Cy7(Biolegend 100329)、CD8 PE(Biolegend 100708)、CD4 PE-Cy7(eBioscience 25-0042-82)、CD25 PerCP-Cy5.5(BD 561112)、CD49b-APC(Biolegend 108909)を含んだ。混合した染色液100μLを各試料に加え、4℃で30分間インキュベートした。試料を1%FBSを含むPBSで2回洗浄した。True-Nuclear(商標) Transcription Factor Buffer Set (Biolegend 424401)を用いて試料を60分固定し、細胞膜の消化を行った。100μLの抗マウスFoxp3抗体(Biolegend 126405)を室温で60分インキュベートした。試料をPBS pH7.4洗浄液で2回洗浄し、最後に500μLのPBS pH7.4洗浄液で再懸濁し、機械で分析した。NK細胞はCD3-CD49b+細胞、CD8+T細胞はCD3+CD4-CD8+細胞、TregはCD3+CD4+CD25+Foxp3+細胞と定義されている。血液試料の量に応じて、末梢血中の各細胞群の細胞密度を算出した。
【0199】
【0200】
実験中、0日目にPEG-IL-2-22を尾静脈注射で投与し、0日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、10日目にそれぞれマウスの血液を採取し、フローサイトメトリーで解析した。血液中の各細胞集団の密度を調べた結果、マウス全血球細胞中のCD3-CD49b+ NK細胞の密度は、0日目と比較して3日目に用量依存的に有意に増加し、10日目には基本的に投与前のレベルに戻ることがわかった。CD8+T細胞の密度は、用量依存的に3日目に有意に増加し、5日目には基本的に投与前のレベルに戻った。制御性T細胞(Treg)の密度は、3日目に有意に増加し、4日目には基本的に投与前のレベルに戻った。
【0201】
実験中、異なる用量のPEG-IL-2-22を投与してテストしたマウスのすべてのグループが、体重減少や異常行動を示さず、これは、マウスがテストする用量の薬物に対して好ましい耐性を持っていることを示す。
【0202】
【0203】
この結果から、PEG-IL-2-24は、投与の3日後、高用量(5mg/kg)、中用量(1mg/kg)、低用量(0.2mg/kg)で、投与量依存的にTregの増殖を促すことができ;CD3+T細胞に占めるCD4+T細胞およびCD8+T細胞の割合は、3つの投与量で変化しないことがわかり、これはPEG-IL-2-24によりTregが優先的に活性化されることを示す。この結果を
図8A~8Fに示す。
【0204】
実施例11:マウス由来の大腸がん腫瘍モデルマウスにおけるIL-2およびその変異体の有効性についての評価
マウス由来大腸腺癌CT26.WT細胞(Chinese Academy of Sciences (SIBC)、上海のセルバンクより入手)をP4+1世代の細胞を融解して増殖させ、10%ウシ胎児血清(FBS)を含むDMEM培地で培養した。指数増殖期のCT26.WT細胞を回収し、1×106/mLになるようにHBSSに再懸濁し、無菌状態でBALB/cマウスに皮下移植し、各マウスに1×105個の細胞を接種した。腫瘍体積が約80~100mm3に達した時点で、動物をグループ分けした。グループ分け後、最初の投与を開始した。詳しい投与方法、投与量、および投与経路を表18に示す。なお、マウスをグループ分けした日を0日目とした。
【0205】
【0206】
投与開始後、週に3回、マウスの体重と腫瘍体積を測定し、腫瘍体積を、腫瘍体積(mm
3)=0.5×(腫瘍長径×腫瘍短径
2)として算出した。相対的な腫瘍阻害率TGI(%)は以下のように算出した:TGI%=(1-T/C)×100%。T/C%は、相対的な腫瘍増殖率(つまり、ある時点での、治療群と対照群の間の腫瘍体積または腫瘍重量の相対的な割合値)である。TおよびCは、それぞれ、特定の時点における、治療群および対照群の腫瘍体積(TV)または腫瘍重量(TW)を表す。実験結果を表19および
図9に示す。
【0207】
【0208】
この実験では、異なる用量、異なる投与方法のPEG-IL-2-22の有効性を、CT26同種移植モデルマウスの大腸がん細胞において検証した。その結果から、皮下投与の中用量群(G3)では、PEG-IL-2-22 6mg/kg s.c. Q5D*5は、投与後12日目の平均腫瘍体積が1297.5±263.52mm3となり、同日の対照群(腫瘍体積2577.6±360.91mm3、TGI=51%、p=0.0168)と比較して有意に小さいことがわかった。皮下投与の高用量群(G4)では、PEG-IL-2-22 9mg/kg s.c. Q5D*5は、投与後12日目の平均腫瘍体積が1168.6±352.3mm3となり、これは、同日の対照群(腫瘍体積2577.6±360.91mm3、TGI=56%、p=0.0190)に比べて有意に小さい。静脈内投与の中用量群(G6)では、PEG-IL-2-22 6mg/kg i.v. Q5D*5は、投与後12日目の平均腫瘍体積が1122.2±418.6mm3となり、これは、同日の対照群(腫瘍体積2577.6±360.91mm3、TGI=58%、p=0.0265)に比べて有意に小さい。
【0209】
実施例12:ヒトメラノーマ腫瘍モデルマウスにおけるIL-2およびその変異体の有効性の評価
NCGマウス(雌、4-8週齢、体重約18-22g)を、江蘇省のGemPharmatech Biotechnology Co.Ltd.から購入した。すべてのNCGマウスを、恒温恒圧システムを備えたSPFグレードのアニマルハウスIVCで飼育した。
【0210】
A375細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)を含むDMEM培地で培養した。指数増殖期のA375細胞を回収し、HBSSをNCGマウスに腫瘍を皮下接種するのに適した濃度に再懸濁した。共培養に用いるA375細胞は、マイトマイシンCで2時間処理した後、PBSで3回洗浄した。正常なヒト末梢血を採取し、密度勾配遠心分離によりヒトPBMCを分離し、細胞を計数した。その後、PBMCをRPMI1640培地(IL-2と10%FBSを含む)で3×106細胞/mLの濃度に再懸濁し、マイトマイシンCで処理したA375細胞と共培養した。8日間の共培養後、PBMCを回収し、消化したばかりのA375細胞も回収した。各マウスに以下の:8×105個のPBMC、4×106個のA375細胞、接種量:0.2ml/マウス(50%マトリゲルを含む)を接種した。雌のNCGマウスの右脇腹に皮下接種し、合計30匹のマウスに接種した。マウスは体重に応じて無作為にグループ分けした。詳細な投与方法、投与量、および投与経路を表20に示す。なお、マウスをグループ分けして投与した日を0日目とした。
【0211】
【0212】
投与開始後、週に2回、マウスの体重と腫瘍の体積を測定した。実験結果をそれぞれ表21および
図10に示す。
【0213】
【0214】
実験終了時(投与後27日目)、PEG-IL-2-22の投与群(0.03mg/kg、尾静脈注射)、PEG-IL-2-22の投与群(0.1mg/kg、尾静脈注射)、PEG-IL-2-22の投与群(0.03mg/kg、皮下注射)の腫瘍体積および腫瘍重量は、PBS群とは有意に異なっており(P値は0.001以下)、腫瘍の成長を有意に抑制する効果があることが示された。
【0215】
実施例13:IL-2およびその変異体の免疫原性解析
【0216】
コンピュータによるシミュレーション解析の結果、IL-2変異体を用いて算出した模擬T細胞エピトープ(TCE)の数は、野生型IL-2とほぼ同等かそれ以下であった(表22参照)。この結果から、各IL-2変異体のアミノ酸変異は、治療目的のIL-2の免疫原性に悪影響を及ぼさないことがわかった。
【0217】
【配列表】