IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アムジエン・インコーポレーテツドの特許一覧

特許7543279感圧制御による薬剤送達のシステム及び方法
<>
  • 特許-感圧制御による薬剤送達のシステム及び方法 図1
  • 特許-感圧制御による薬剤送達のシステム及び方法 図2
  • 特許-感圧制御による薬剤送達のシステム及び方法 図3
  • 特許-感圧制御による薬剤送達のシステム及び方法 図4
  • 特許-感圧制御による薬剤送達のシステム及び方法 図5
  • 特許-感圧制御による薬剤送達のシステム及び方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-23
(45)【発行日】2024-09-02
(54)【発明の名称】感圧制御による薬剤送達のシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/142 20060101AFI20240826BHJP
【FI】
A61M5/142 522
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021542138
(86)(22)【出願日】2020-01-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-16
(86)【国際出願番号】 US2020012480
(87)【国際公開番号】W WO2020154092
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】62/796,363
(32)【優先日】2019-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グロースマン,ダニエル・エデュアルド
(72)【発明者】
【氏名】ギブソン,スコット・ロバート
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-537844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/00 - 5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤が充填されているか充填可能なリザーバと、
前記リザーバと結合されて、前記薬剤を前記リザーバから患者まで送達する薬剤送達装置と、
圧力センサと、
出力装置と、
前記圧力センサ及び前記出力装置と結合された制御装置であって、
(a)前記薬剤送達装置が前記患者への前記薬剤の用量の送達を完了したかどうかを判定し、前記薬剤の前記用量の送達が完了している場合には、前記圧力センサを使用して組織背圧を測定することと、
(b)(a)の後に前記組織背圧が第1の所定値を下回るかどうかを判定し、前記組織背圧が前記第1の所定値を下回る場合には、前記出力装置を少なくとも1回制御して、患者又は使用者に情報を通知及び/又は伝達することと、
を行うように構成された制御装置と、
を含む薬剤送達システム。
【請求項2】
前記患者に挿入可能であり、前記リザーバと流体連通接続しているか流体連通接続可能である投与部材と、
前記投与部材を前記患者から後退させるように構成された機構と、
を含み、
前記制御装置は、前記機構と結合されていて、(a)の後に前記組織背圧が前記第1の所定値を下回る場合には前記投与部材を前記患者から後退させるように前記機構を制御するように構成されている、
請求項1に記載の薬剤送達システム。
【請求項3】
前記患者に挿入可能であり、前記リザーバと流体連通接続しているか流体連通接続可能である投与部材と、
前記制御装置と結合されていて、前記投与部材を介して前記薬剤を前記患者に送達するように前記リザーバを作動させるように構成された駆動アセンブリと、
を含む、請求項1または2のいずれか一項に記載の薬剤送達システム。
【請求項4】
前記制御装置は、
(a)薬剤送達中に駆動圧力が第2の所定値を上回るかどうかを判定し、前記駆動圧力が前記第2の所定値を上回る場合には前記駆動アセンブリの動作を止めるように構成されている、
(b)薬剤送達中に前記駆動圧力が第3の所定値を下回るかどうかを判定し、前記駆動圧力が前記第3の所定値を下回る場合には前記駆動アセンブリの動作を止めるように構成されている、
(c)前記圧力センサの出力に基づいて前記駆動圧力を測定するように構成されている、または
(d)薬剤送達前に前記組織背圧が第4の所定値を下回るかどうかを判定し、前記組織背圧が前記第4の所定値を下回る場合には、前記薬剤を前記患者に送達するように前記駆動アセンブリが前記リザーバを作動させるのを止めるか、且つ/又は前記出力装置を少なくとも1回制御するように構成されている、
のうちの少なくともいずれかである、請求項3に記載の薬剤送達システム。
【請求項5】
前記制御装置と結合された第2の圧力センサを含み、前記制御装置は、前記第2の圧力センサを使用して駆動圧力を測定する、請求項3または4のいずれか一項に記載の薬剤送達システム。
【請求項6】
(a)前記圧力センサで検出可能な最小圧力は、前記第2の圧力センサで検出可能な最小圧力より小さい、または
(b)前記第2の圧力センサで検出可能な最大圧力は、前記圧力センサで検出可能な最大圧力より大きい、
のうちの少なくとも一方である、請求項5に記載の薬剤送達システム。
【請求項7】
前記薬剤送達装置は、前記患者に挿入可能な投与部材と、前記リザーバと流体連通接続されているか流体連通接続可能な管状導管と、薬剤送達中に前記管状導管と前記投与部材との間の流体連通を提供するように構成された内部通路を有する接続ハブと、を含み、前記圧力センサは前記管状導管の下流に配置されており、
前記圧力センサは、前記接続ハブの中又は外側にマウントされている、請求項1~6のいずれか一項に記載の薬剤送達システム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記組織背圧が前記第1の所定値を下回る場合に前記出力装置に通信を送信することによって、前記出力装置を活性化又は不活性化するように構成されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の薬剤送達システム。
【請求項9】
剤の用量を患者に送達する薬剤送達装置を動作させるために制御装置によって行われる方法であって、
(a)前記薬剤送達装置が前記患者への前記薬剤の前記用量の送達を完了したかどうかを判定し、前記薬剤の前記用量の送達が完了している場合には、組織背圧を測定するステップと、
(b)(a)の後に前記組織背圧が第1の所定値を下回るかどうかを判定し、前記組織背圧が前記第1の所定値を下回る場合には、出力装置を少なくとも1回制御するステップと、
を含む方法。
【請求項10】
(a)の後に前記組織背圧が第1の所定値を下回る場合に、投与部材を前記患者から後退させるように前記薬剤送達装置を動作させるステップと、
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記薬剤の前記用量を前記患者に送達するように前記薬剤送達装置を動作させている間に駆動圧力を測定するステップと、
以下の(i)および(ii)の少なくとも一方:
(i)前記駆動圧力が第2の所定値を上回るかどうかを判定し、前記駆動圧力が前記第2の所定値を上回る場合には薬剤送達を止めるように前記薬剤送達装置を動作させるステップと、または
(ii)前記駆動圧力が第3の所定値を下回るかどうかを判定し、前記駆動圧力が前記第3の所定値を下回る場合には薬剤送達を止めるように前記薬剤送達装置を動作させるステップと、
を含む、請求項9又は10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
(a)の前に組織背圧を測定するステップと、
(a)の前に前記組織背圧が第4の所定値を下回るかどうかを判定し、(a)の前に前記組織背圧が前記第4の所定値を下回る場合には前記薬剤の前記用量を前記患者に送達するのを止めるように前記薬剤送達装置を動作させるステップと、
を含む、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記出力装置を制御する前記ステップは、前記出力装置に通信を送信することによって前記出力装置を活性化又は不活性化するステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
薬剤が充填されているか充填可能なリザーバと、
前記リザーバと結合されて、前記薬剤を前記リザーバから患者まで送達する薬剤送達装置であって、前記患者に挿入可能な投与部材と、前記投与部材を前記患者から後退させるように構成された機構と、を含む薬剤送達装置と、
圧力センサと、
前記圧力センサ及び前記薬剤送達装置と結合された制御装置であって、
(a)前記薬剤送達装置が前記患者への前記薬剤の用量の送達を完了したかどうかを判定し、前記薬剤の前記用量の送達が完了している場合には、前記圧力センサを使用して組織背圧を測定することと、
(b)(a)の後に前記組織背圧が第1の所定値を下回るかどうかを判定し、前記組織背圧が前記第1の所定値を下回る場合には、前記投与部材を前記患者から後退させるように前記機構を制御することと、
を行うように構成された制御装置と、
を含む薬剤送達システム。
【請求項15】
前記制御装置と結合されていて、前記投与部材を介して前記薬剤を前記患者に送達するように前記リザーバを作動させるように構成された駆動アセンブリを含み、
前記制御装置は、
(i)薬剤送達中に駆動圧力が第2の所定値を上回るかどうかを判定し、前記駆動圧力が前記第2の所定値を上回る場合には前記駆動アセンブリの動作を止めるように構成されている、
(ii)薬剤送達中に前記駆動圧力が第3の所定値を下回るかどうかを判定し、前記駆動圧力が前記第3の所定値を下回る場合には前記駆動アセンブリの動作を止めるように構成されている、
(iii)前記圧力センサの出力に基づいて前記駆動圧力を測定するように構成されている、または
(iv)薬剤送達前に前記組織背圧が第4の所定値を下回るかどうかを判定し、前記組織背圧が前記第4の所定値を下回る場合には、前記薬剤を前記患者に送達するように前記駆動アセンブリが前記リザーバを作動させるのを止めるように構成されている、
のうちの少なくともいずれかである、請求項14に記載の薬剤送達システム。
【請求項16】
前記制御装置と結合された第2の圧力センサを含み、前記制御装置は、前記第2の圧力センサを使用して駆動圧力を測定する、請求項15に記載の薬剤送達システム。
【請求項17】
(i)前記圧力センサで検出可能な最小圧力は、前記第2の圧力センサで検出可能な最小圧力より小さい、または
(ii)前記第2の圧力センサで検出可能な最大圧力は、前記圧力センサで検出可能な最大圧力より大きい、のうちの少なくともいずれかである、請求項16に記載の薬剤送達システム。
【請求項18】
前記薬剤送達装置は、前記リザーバと流体連通接続されているか流体連通接続可能な管状導管と、薬剤送達中に前記管状導管と前記投与部材との間の流体連通を提供するように構成された内部通路を有する接続ハブと、を含み、前記圧力センサは前記管状導管の下流に配置されており、
前記圧力センサは、前記接続ハブの中又は外側にマウントされている、請求項14~17のいずれか一項に記載の薬剤送達システム。
【請求項19】
剤の用量を患者に送達する薬剤送達装置を動作させるために制御装置によって行われる方法であって、
(a)リザーバに格納された薬剤の用量を、患者に挿入された投与部材を介して前記患者に送達するように、前記薬剤送達装置を動作させるステップと、
(b)前記薬剤送達装置が前記患者への前記薬剤の前記用量の送達を完了したかどうかを判定し、前記薬剤の前記用量の送達が完了している場合には、組織背圧を測定するステップと、
(c)(b)の後に前記組織背圧が第1の所定値を下回るかどうかを判定し、前記組織背圧が前記第1の所定値を下回る場合には、前記投与部材を前記患者から後退させるように前記薬剤送達装置を動作させるステップと、
を含む方法。
【請求項20】
(A)(i)前記薬剤の前記用量を前記患者に送達するように前記薬剤送達装置を動作させている間に駆動圧力を測定するステップと、(ii)前記駆動圧力が第2の所定値を上回るかどうかを判定し、前記駆動圧力が前記第2の所定値を上回る場合には薬剤送達を止めるように前記薬剤送達装置を動作させるステップと、または
(B)(i)前記薬剤の前記用量を前記患者に送達するように前記薬剤送達装置を動作させている間に駆動圧力を測定するステップと、(ii)前記駆動圧力が第3の所定値を下回るかどうかを判定し、前記駆動圧力が前記第3の所定値を下回る場合には薬剤送達を止めるように前記薬剤送達装置を動作させるステップと、
のうちの少なくとも一方を含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
2019年1月24日に出願され、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第62/796,363号明細書に対する優先権が主張される。
【0002】
本開示は、全般的には薬剤送達システムに関し、特に、検知された状態に応じて動作する薬剤送達システムに関する。
【背景技術】
【0003】
幾つかの薬剤は、飲み込んで消化する錠剤の形態で投与される。但し、場合によっては、消化管を通らない手段で薬剤を投与することが望ましい。胃を回避すると、薬剤中の有効成分が触媒酵素によって劣化するのを防いで、必要な量の薬剤が望ましい濃度でターゲット部位に到達する可能性を高めることが可能である。この送達形式は、非経口送達と呼ばれており、広く普及してきている。この成長は、1つには、生物学的製剤を必要とする治療の数が増えたことの結果であり、生物学的製剤は、多くの場合、液体形態で注射される。
【0004】
典型的には、薬剤注射は、リザーバ及び投与部材(中空針又はカニューレ等)を有する薬剤送達装置の使用が必要である。投与部材の尖端が患者に挿入され、リザーバが作動すると薬剤が投与部材を通って患者に送達される。そのような薬剤送達装置を、処方された体積又は用量の薬剤を患者に送達するように確実に構成することに多大な関心が払われてきた。これは、多くの治療が厳密な量の薬剤の送達を必要とし、わずかな変動さえも許容しない為である。例えば、送達量が不十分であれば、例えば、薬剤の有効性が損なわれる可能性があり、一方、送達量が過多であれば、例えば、有害な副作用のリスクが高まる可能性がある。
【0005】
薬剤送達装置による自己注射は、準最適送達という更なるリスクを引き起こす。例えば、自己注射の経験がない患者や病気の為に衰弱状態にある患者は、薬剤送達装置の操作が不適切になりがちである。更に、薬剤送達装置がその意図された使用法に従って操作されたとしても、患者の生理学的状態を含む環境条件及び/又は動作条件によっては送達が不完全になる可能性がある。
【0006】
後で詳述するように、本開示で説明する薬剤送達システム及び関連する方法は、既存のシステム及び方法に対して有利な代替案を具体化するものであり、ここで述べた課題やニーズの1つ以上に対処するとともに他の利益や利点を提供することが可能である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は薬剤送達システムを提供し、薬剤送達システムは、薬剤が充填されているか又は充填可能なリザーバと、リザーバと結合されて、薬剤をリザーバから患者まで送達する薬剤送達装置と、圧力センサと、出力装置と、制御装置と、を含む。制御装置は、圧力センサ及び出力装置と結合されてよい。更に、制御装置は、(a)薬剤送達装置が患者への薬剤の用量の送達を完了したかどうかを判定し、薬剤の用量の送達が完了している場合には、圧力センサを使用して組織背圧を測定することと、(b)(a)の後に組織背圧が第1の所定値を下回るかどうかを判定し、組織背圧が第1の所定値を下回る場合には、出力装置を少なくとも1回制御することと、を行うように構成されてよい。
【0008】
本開示の別の態様は方法を提供し、この方法は、(a)薬剤の用量を患者に送達するように薬剤送達装置を動作させるステップと、(b)薬剤送達装置が患者への薬剤の用量の送達を完了したかどうかを判定し、薬剤の用量の送達が完了している場合には、組織背圧を測定するステップと、(c)(b)の後に組織背圧が第1の所定値を下回るかどうかを判定し、組織背圧が第1の所定値を下回る場合には、出力装置を少なくとも1回活性化するステップと、を含む。
【0009】
本開示の更なる態様は薬剤送達システムを提供し、薬剤送達システムは、薬剤が充填されているか又は充填可能なリザーバと、リザーバと結合されて、薬剤をリザーバから患者まで送達する薬剤送達装置と、圧力センサと、圧力センサ及び薬剤送達装置と結合された制御装置と、を含む。薬剤送達装置は、患者に挿入可能な投与部材と、投与部材を患者から後退させるように構成された機構と、を含んでよい。制御装置は、(a)薬剤送達装置が患者への薬剤の用量の送達を完了したかどうかを判定し、薬剤の用量の送達が完了している場合には、圧力センサを使用して組織背圧を測定することと、(b)(a)の後に組織背圧が第1の所定値を下回るかどうかを判定し、組織背圧が第1の所定値を下回る場合には、投与部材を患者から後退させるように機構を制御することと、を行うように構成されてよい。
【0010】
本開示の更に別の態様は方法を提供し、この方法は、(a)薬剤送達装置の投与部材を患者に挿入するステップと、(b)リザーバに格納された薬剤の用量を、投与部材を介して患者に送達するように、薬剤送達装置を動作させるステップと、(c)薬剤送達装置が患者への薬剤の用量の送達を完了したかどうかを判定し、薬剤の用量の送達が完了している場合には、組織背圧を測定するステップと、(d)(c)の後に組織背圧が第1の所定値を下回るかどうかを判定し、組織背圧が第1の所定値を下回る場合には、投与部材を患者から後退させるように薬剤送達装置を動作させるステップと、を含む。
【0011】
本開示は、この後の説明を添付図面と併せて読むことで、よりよく理解されるであろう。図面によっては、要素を選択的に省略して簡略化することで他の要素をより明確に示すようにしている場合がある。一部の図面におけるこうした要素の省略は、対応する書面による説明の中で明確に記述されている場合を除き、例示的実施形態のいずれかにおける特定要素の有無を表すものでは必ずしもない。更に、いずれの図面も必ずしも正確な縮尺で示されているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の原理による薬剤送達システムの使用中の、時間に対して圧力が変化する様子を示すグラフである。
図2】本開示の一実施形態による薬剤送達システムの概略図を示す。
図3】本開示の一実施形態による、図2に示したような薬剤送達システムの動作のブロック図である。
図4】本開示の別の実施形態による、図2に示したような薬剤送達システムの動作のブロック図である。
図5】本開示の一実施形態による薬剤送達システムの外側斜視図である。
図6図5に示した薬剤送達システムの、線Z-Zに沿う概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
薬剤(本明細書では医薬品又は薬剤製品とも呼ぶ)は、様々なアプローチ、テクノロジ、及びシステムを用いて注射又は注入されてよい。例えば、薬剤は、シリンジの形態のリザーバ(又は容器)に充填されてよく、そのシリンジを使用して、患者に挿入された針を通して、手動で注射されてよい。或いは、薬剤は、シリンジ又は他の適切な一次容器(例えば、カートリッジ)の形態のリザーバに充填されてよく、その事前充填されたシリンジ又は他の容器は、そのシリンジ又は容器のボア内のプランジャを動かすこと、並びに任意選択で患者に針を挿入することを自動化するように構成された自己注射器と組み合わされてよい。例えば、自己注射器は駆動アセンブリ(例えば、モータ、ばね、プロペラントリザーバ等)を含んでよく、駆動アセンブリは、(例えば、ボタンを押下したり針ガードを後退させたりすることによって)活性化要素が操作されたときに、容器がハウジング内を動くこと、及び/又はプランジャが容器のボア内を動くことを引き起こす。更に別の代替として、薬剤はリザーバに充填されてよく、リザーバは(充填前又は充填後に)ウェアラブル装置と組み合わされてよく、ウェアラブル装置は、患者に針及び/又はカニューレを自動挿入する機構と、リザーバを自動的に作動させる駆動アセンブリ(例えば、モータ、ばね、プロペラントリザーバ等の形態であってよい)と、を有する。ウェアラブル装置は、患者の皮膚に取り外し可能に装着可能なハウジングを含んでよく、これにより、例えば、体表装着式薬剤送達システムが形成される。
【0014】
薬剤送達システムのとり得る形態がいかなるものであれ、針やカニューレ等の投与部材が患者に挿入され、薬剤をリザーバから投与部材に通して患者の組織(例えば、皮下組織、筋肉組織等)の中に押し出す為に力がかけられる。かけられる力は、薬剤送達システム内の内部抵抗、及び患者の組織からの抵抗(注射される薬剤の体積分のスペースを組織が空ける為)に打ち勝つ必要がある。患者の組織からの抵抗により、組織背圧が発生する。組織背圧は、注射中と注射後のしばらくの間に存在する。組織背圧は、組織が薬剤を吸収又は収容するにつれて時間とともに徐々に減衰する。しかしながら、注射直後は組織背圧がかなり大きくなる可能性がある。その結果、組織背圧によって注射部位の皮膚から薬剤が漏れ出す可能性がある。この結果として、いわゆる注射「漏れ」が起こる。これは患者にとっては望ましからぬ経験になる。更に、より重要なことに、漏れ(逆流又は還流とも呼ばれる)の結果として、患者に送達される薬剤が意図された用量より少なくなる。結果として、薬剤の有効性が損なわれる可能性がある。
【0015】
図1は、薬剤送達システムを使用して注射を実施する継続時間の間に圧力がどれだけ変化し得るかの一例をグラフィカルに示す。ここで圧力は、薬剤送達システムの内部流体流経路の中の一場所、及び/又はその経路上の一場所において測定されている。最初、圧力は周囲圧力(例えば、大気圧)に等しいか又はほぼ等しくてよい。患者の組織に投与部材が挿入された直後であり、薬剤送達が始まる前には、圧力は、組織背圧によってわずかに上昇し得る。これは、薬剤送達の開始前に、投与部材の開口端によって、薬剤送達システムの内部流体流経路と患者の体内との間に流体連通が確立され得る為である。その後、駆動アセンブリが係合されて、薬剤送達システムのリザーバから患者に用量の薬剤が押し出されると、圧力は、グラフに示すように大幅に上昇し得る。用量が完了すると(例えば、ストッパが用量終了位置に達すると)、圧力は下降を開始し得る。但し、組織背圧が存在する為、ただちに周囲圧力に戻るわけではない。組織背圧は、注射された用量の薬剤が患者の組織に収容されるまで持続する。その為、適切な措置が施されていないと、組織背圧の結果として、注射後に注射部位で薬剤が漏れる可能性がある。
【0016】
注射後の漏れを抑えるか又は防ぐ1つの方法は、組織背圧が(図1でPとして示されている)特定閾値を下回るまで、投与部材を注射部位の定位置に置いたままにすることである。場合によっては、Pは、概算で(例えば、±10%で)0.5ポンド毎平方インチ(psi)に等しくてよい。投与部材を定位置に置いたままにすることにより、投与部材は、投与部材の挿入によって皮膚に形成された穴から薬剤が漏れ出すのを防ぐか又は抑える栓として働くことが可能である。組織背圧がPを下回るのに要する時間は、例えば、送達条件や患者の生理学的状態に応じて変わり得る。その為、患者又は薬剤送達システムが投与部材を除去することに関して一定の待機時間を設定することは、一般に漏れ防止の方法としては信頼性に乏しい。
【0017】
組織背圧は、注射速度が高いほど大きくなる傾向がある。これは、注射速度が高い場合に組織網に生じる機械的ひずみが大きくなって、組織網が薬剤を押し返す力が大きくなることによるものと考えられる。注射可能な生物学的製剤等の特定の薬剤は、送達体積が大きくなる傾向になりつつある。これは、1つには、投与の回数を少なくする傾向がある為であり、それによって、どの注射においても用量を大きくして送達する必要がある為である。そして用量を大きくすると、注射時間の制限がある為に、注射速度が高くなった。従って、送達体積が大きくなる傾向と、それに伴う注射速度の上昇とにより、注射漏れが起こる可能性が高くなっている。更に、注射可能な生物学的製剤を含む特定の薬剤は、以前より粘性の高い剤型で製造されている。薬剤の粘性が高くなると、組織背圧が高くなって注射漏れの可能性が高まる傾向がある。
【0018】
本開示では、組織背圧等の圧力の変化に敏感な薬剤送達システムに焦点を当て、薬剤の送達及び/又は薬剤送達システムの動作を制御する際のそのような変化について考察する。従って、本開示による薬剤送達システムは、圧力レベルに基づいてその動作を変化させることにより、薬剤の送達が安全であり、予測可能であり、治療レジメンに従うようにすることが可能である。
【0019】
図2は、本開示の一実施形態による薬剤送達システム100の概略図である。薬剤送達システム100は幾つかのコンポーネント又はサブアセンブリを含み、例えば、リザーバ102、薬剤送達装置104、制御装置106、出力装置108、第1の圧力センサ110、第2の圧力センサ112、及び用量終了センサ114を含む。これらのコンポーネント又はサブアセンブリは、患者116に薬剤を送達する為に一緒に動作してよい。薬剤送達システム100に組み込まれるコンポーネント又はサブアセンブリは、図2に示したものより多くても少なくてもよい。例えば、幾つかの実施形態によれば、出力装置108、第1の圧力センサ110、第2の圧力センサ112、及び/又は用量終了センサ114が省略されてよい。
【0020】
なお、図2は、様々なコンポーネント又はサブアセンブリの間の機能的関係及び接続を示すことを意図したブロック図であり、必ずしもそれらのコンポーネント又はサブアセンブリの構造を表すものではない。例えば、薬剤送達装置104とは別個として図示しているが、実施形態によっては、リザーバ102、制御装置106、出力装置108、第1の圧力センサ110、第2の圧力センサ112、若しくは用量終了センサ114、又はこれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上が薬剤送達装置104に構造的に組み込まれる(例えば、全体又は一部が薬剤送達装置104のハウジングに囲まれる)ことが必要な場合がある。幾つかの実施形態では、制御装置106及び/又は出力装置108は、薬剤送達装置104とは別個であって薬剤送達装置104に対して可搬である外部コンピューティング装置又はモバイルコンピューティング装置(例えば、スマートフォン、スマートウオッチ、パーソナルコンピュータ、リモートサーバ等)の一部であってよい。
【0021】
図2に描いた線は、コンポーネント又はサブアセンブリが互いに結合されている様子を示している。そのような結合は、直接接続又は間接接続に対応してよく、性質として機械的、電気的、化学的、電気機械的、且つ/又は電気化学的であってよい。図2における制御装置106と他のコンポーネント又はサブアセンブリとの間の結合は、制御装置106が他のコンポーネント又はサブアセンブリとの間で情報、データ、及び/又は信号(例えば、アナログ信号及び/又はデジタル信号)の通信を(例えば、有線通信及び/又は無線通信により)行うことを可能にでき、それらの通信は一方向又は二方向であってよい。相互接続の数は、図2に描いたものより多くても少なくてもよい。
【0022】
図2の各コンポーネント又はサブアセンブリの詳細については、一連の非限定的な例に関して後述する。
【0023】
リザーバ102(文脈によっては一次容器と呼ぶことがある)は、薬剤を充填されてよく(例えば、製造元によって事前充填されてよく)、或いは薬剤送達システム100の使用時に薬剤を充填することが可能であってよい。薬剤送達装置104の使用中にリザーバ102から薬剤を押し出す為に、リザーバ102内でストッパ又は他のプランジャ部材が可動であってよい。薬剤をリザーバ102から患者116に送達する為に、薬剤送達装置104はリザーバ102と結合されてよい。幾つかの実施形態によれば、患者116は、治療レジメンの一環として、薬剤送達装置104を使用して自分の組織に薬剤を自己注射又は自己注入してよい。薬剤送達装置104は、薬剤送達を支援する為に様々なコンポーネント及びサブアセンブリを含んでよく、それらは、限定ではなく例として、投与部材118、挿入/後退機構120、流体経路接続アセンブリ122、及び駆動アセンブリ124であってよい。
【0024】
投与部材118は、中空であってよく、第1の端部が流体経路接続アセンブリ122を介してリザーバ102と流体連通接続されているか又は流体連通接続可能であってよく、第2の端部が患者の組織(例えば、皮下組織、筋肉組織等)に挿入されてよい。幾つかの実施形態では、投与部材118は、比較的可撓な材料で作られたカニューレ(例えば、とがっていないか又は軟らかいカニューレ)の形態で、第2の端部に比較的とがっていない先端を有してよく、これに対し、別の実施形態では、投与部材118は、比較的堅い材料で作られた針の形態であり、第2の端部にとがった先端を有してよい。
【0025】
挿入/後退機構120は、投与部材118と結合されて、投与部材118を患者116に挿入すること、及び/又は投与部材118を患者116から後退させることを自動的に行うように構成されてよい。幾つかの実施形態では、挿入/後退機構120は、(例えば、制御装置106によって特定されている、薬剤送達システム100及び/又は患者116の状況又は状態に応じて)投与部材118を挿入するか且つ/又は後退させる為に、制御装置106と結合されてよく、且つ、制御装置106を介して制御可能であってよい。幾つかの実施形態では、挿入/後退機構120は、投与部材118を後退位置即ち格納位置から配備位置即ち動作位置まで動かすように構成されてよく、後退位置即ち格納位置では、投与部材118の全体が薬剤送達装置104のハウジングの内部空間内に引き込まれており、配備位置即ち動作位置では、投与部材118の端部が患者116の組織への挿入の為にハウジングの外部表面を越えて延びている。追加又は代替として、挿入/後退機構120は、投与部材118を患者の組織から薬剤送達装置104のハウジングの内部空間内まで後退させるように構成されてよい。
【0026】
流体経路接続アセンブリ122は、薬剤送達装置104の使用中に滅菌流体流路を介してリザーバ102と投与部材118との間に流体連通を選択的に確立するように構成されてよい。流体経路接続アセンブリ122は、流体連通接続されているか又は流体連通接続可能である第1の端部がリザーバ102、投与部材118と流体連通接続されているか又は流体連通接続可能である第2の端部を含み得る。薬剤送達装置104を使用するまでは、流体経路接続アセンブリ122はリザーバ102と流体連通していなくてよい。薬剤送達装置104のセットアップ中、又は薬剤送達装置104の動作中(但し、薬剤送達前)に、患者又は使用者が手動で、又は薬剤送達装置104が(例えば、制御装置106の制御下で)自動的に、リザーバ102と投与部材118との間の流体連通を、流体経路接続アセンブリ122を介して確立する為に必要な接続を有効化、接続、又は開放してよい。その後、駆動アセンブリ124がリザーバ102を作動させて(例えば、リザーバ102内でストッパ又はプランジャを押して)、薬剤を、患者の組織への送達の為に流体経路接続アセンブリ122の滅菌流体流路から投与部材118内に押し出してよい。
【0027】
引き続き図2を参照すると、第1の圧力センサ110は、少なくとも薬剤送達装置104の使用中の組織背圧を検出するように構成されてよい。幾つかの実施形態によれば、第1の圧力センサ110は、(i)駆動アセンブリ124がリザーバ102から患者116に薬剤の用量を送達するように動作している時間帯、並びに(ii)用量の送達が完了した後の時間帯の両方において、薬剤送達装置104の内部流体流路内の流体圧力を検出するように構成されてよい。駆動アセンブリ124の動作中に、第1の圧力センサ110は、駆動アセンブリ124から薬剤にかかる力によって発生する圧力と、患者116の組織から薬剤にかかる力によって発生する圧力と、を検出してよい(これらの圧力を本明細書ではまとめて駆動圧力と呼ぶ)。薬剤の用量の送達が完了した後に第1の圧力センサ110によって検出される(本明細書では組織背圧と呼ぶ)圧力は、単に又は主に、患者116の組織から薬剤にかかる力によって発生する圧力に相当し得る。組織背圧の測定が可能であり得るのは、第1の圧力センサ110が、用量完了後も投与部材118が患者116から除去されるまで、注射部位において投与部材118を介して患者の体内と流体連通したままであり得る為である。この時間帯の間に、ある体積の残留流体(例えば、体液、薬剤、又は両方の組み合わせを含む)が、薬剤送達装置104の内部流体流路内、又は少なくとも第1の圧力センサ110と投与部材118の出口との間の流体流路内に残る場合がある。第1の圧力センサ110は、残留流体に曝されることの結果として、組織背圧を測定することが可能である。
【0028】
前の段落で述べた圧力測定に対する追加又は代替として、第1の圧力センサ110は、挿入/後退機構120が投与部材118を患者116に挿入するように活性化されてから、駆動アセンブリ124がリザーバから薬剤を押し出すように活性化されるまでの時間帯に、薬剤送達装置104の内部流体流路内の圧力を測定するように構成されてよい。そのような測定は、投与部材118が患者の組織に正常に挿入されたかどうかの判定を容易にし得る。投与部材118がまず患者に挿入されてから駆動アセンブリ124が動作するまで、第1の圧力センサ110は、組織背圧による圧力の増加を検出することが可能である。幾つかの実施形態によれば、この圧力増加は、投与部材118が正常に挿入されたことに対応するものと解釈されてよい。
【0029】
第1の圧力センサ110は、およそ(例えば、±10%で)0~100psiの範囲、又はおよそ(例えば、±10%で)0~10psiの範囲、又はおよそ(例えば、±10%で)1~10psiの範囲、又はおよそ(例えば、±10%で)1~5psiの範囲の圧力を検出するように構成されてよい。幾つかの実施形態では、第1の圧力センサ110で検出可能な最大圧力は、およそ(例えば、±10%で)100psi以下、又はおよそ(例えば、±10%で)10psi以下、又はおよそ(例えば、±10%で)5psi以下であってよい。更に、幾つかの実施形態では、第1の圧力センサ110で検出可能な最小圧力は、およそ(例えば、±10%で)0.5psi以下であってよい。幾つかの実施形態では、第1の圧力センサ110は、組織背圧を検出することに最適化されてよい。組織背圧は、駆動アセンブリ124が動作して薬剤を注射している間に発生する駆動圧力に比べて比較的低い場合がある。
【0030】
幾つかの実施形態によれば、第1の圧力センサ110は、薬剤送達装置104の内部流体流路内の流体圧力に曝される第1の表面と、周囲圧力(例えば、大気圧)に曝される第2の表面と、を有してよい。そのように構成されて、第1の圧力センサ110は、周囲圧力を基準として薬剤送達装置104の内部流体流路内の圧力を測定することが可能であり得る。幾つかの実施形態では、薬剤は、薬剤送達装置104の使用中に第1の圧力センサ110の第1の表面と直接接触することがあり得るが、それは必須ではない。幾つかの実施形態では、第1の圧力センサ110の第1及び第2の表面は、可撓なダイヤフラム又は膜の互いに対向する面によって定義されてよい。ダイヤフラムは、内部流体流路内の圧力が周囲圧力と異なると弾性変形又は弾性偏向が生じることが可能である。その弾性変形は、内部流体流路内の流体圧力に対応するものと解釈されてよい。このことは、ダイヤフラムが抵抗素子、静電容量素子、又は他の電気的素子とインタフェースしていることを必要とし得る。静電容量型圧力センサは、薄いダイヤフラムをキャパシタの一方のプレートとして使用することを必要とし得る。圧力がかかるとダイヤフラムが偏向してキャパシタンスが変化することが可能である。このキャパシタンスの変化は、かかった圧力に比例し得る。
【0031】
半導体ベースの一構成では、第1の圧力センサ110は、薄いシリコン膜を含むピエゾ抵抗圧力測定セルを含んでよい。シリコン膜上には、1つ以上の(又は4つの)抵抗が、シリコン結晶格子に打ち込まれた不純物原子の形態で配置されてよい。シリコン膜に圧力がかかると、シリコン膜に対する機械的応力によって抵抗が変化する。これは一般に、ピエゾ抵抗効果と呼ばれる。抵抗同士はホイートストンブリッジの形で接続されてよく、それにより、電位が供給されると、かかっている圧力に比例する電気出力信号が生成される。別の構成の第1の圧力センサ110も可能である。
【0032】
引き続き図2を参照すると、第1の圧力センサ110に対する追加又は代替として、薬剤送達システム100は第2の圧力センサ112を含んでよい。第2の圧力センサ112は、薬剤送達装置104の使用中の駆動圧力を検出するように構成されてよい。これは、実施形態によっては、駆動アセンブリ124の、用量の薬剤をリザーバ102から患者まで押し出す動作の間に、薬剤送達装置104の内部流体流路内の流体圧力を検出するように第2の圧力センサを構成することによって達成可能である。幾つかの実施形態では、第2の圧力センサ112は、第1の圧力センサ110に関して上述したいずれの物理的構成ともよく似た物理的構成を有してよい。更に、幾つかの実施形態では、第2の圧力センサ112は、第1の圧力センサ110の上流にマウントされてよい(但し、他のマウント場所も可能である)。第2の圧力センサ112は、幾つかの実施形態では省略されてよい。
【0033】
第1の圧力センサ110が比較的低い組織背圧を検出することに最適化されてよいのに対し、第2の圧力センサ112は、比較的高い駆動圧力を検出することに最適化されてよい。幾つかの実施形態では、第2の圧力センサ112は、およそ(例えば、±10%で)10~1000psiの範囲、又はおよそ(例えば、±10%で)10~100psiの範囲、又はおよそ(例えば、±10%で)10~50psiの範囲、又は(例えば、±10%で)10psi以上、又は(例えば、±10%で)20psi以上の圧力を検出するように構成されてよい。幾つかの実施形態では、第2の圧力センサ112で検出可能な最大圧力は、およそ(例えば、±10%で)50psi以上、又はおよそ(例えば、±10%で)100psi以上であってよい。更に、幾つかの実施形態では、第2の圧力センサ112で検出可能な最小圧力は、およそ(例えば、±10%で)10psi以上であってよい。
【0034】
幾つかの実施形態では、圧力センサ110及び112の意図された機能に従って、第1の圧力センサ110で検出可能な最小圧力が、第2の圧力センサ112で検出可能な最小圧力より低くてよく、且つ/又は、第2の圧力センサ112で検出可能な最大圧力が、第1の圧力センサ110で検出可能な最大圧力より高くてよい。
【0035】
図2の実施形態では、圧力センサ110及び112をそれぞれ組織背圧及び駆動圧力の測定に利用するが、代替実施形態では、圧力センサ112を省略して、組織背圧及び駆動圧力の両方の測定を圧力センサ110だけに頼ってよい。1つのセンサを使用して組織背圧及び駆動圧力の両方を測定すれば、場合によっては部品数が減ってコストの節約が可能である。そのような代替実施形態では、圧力センサ110は、組織背圧に関連付けられる比較的低い圧力と、駆動圧力に関連付けられる比較的高い圧力と、を分解することが可能であり得る。例えば、圧力センサ110は、およそ(例えば、±10%で)0~100psiの範囲の圧力を検出するように構成されてよく、或いは、圧力センサ110で検出可能な最小圧力がおよそ(例えば、±10%で)0.5psi以下であってよく、圧力センサ110で検出可能な最大圧力が50psi以上であってよい。
【0036】
図2を参照すると、用量終了センサ114は、リザーバ102内のストッパ又は他のプランジャ要素が用量終了位置に達したことを表す信号を出力するように構成されてよい。ストッパ又は他のプランジャ要素は、用量終了位置では、意図された用量の薬剤をリザーバ102から押し出しきったことになる。例えば、薬剤送達装置104がボーラス注射器構成の場合には、用量終了位置は、ストッパ又は他のプランジャ要素がリザーバ102の遠位端の近位側を向いた面に接触して止まることに対応してよい。特定のそのような実施形態では、用量終了センサ114は、光学的手段、電気的手段、磁気的手段、物理接触スイッチ、及び/又は他の任意の適切な検知技法により、リザーバ102内のストッパ又は他のプランジャ要素の位置を直接測定してよい。特定のそのような実施形態では、用量終了センサ114は、リザーバ102の遠位端にマウント又は近接配置されてよい。代替実施形態では、用量終了センサ114は、ストッパ又は他のプランジャ要素の駆動に使用される要素(例えば、モータ、ばね、プランジャロッド、テザー等)の動き又は位置を監視することによって、リザーバ102内のストッパ又は他のプランジャ要素の位置を間接的に測定してよい。モータが監視される一実施形態では、用量終了センサ114は、光学的手段、電気的手段、磁気的手段、物理接触スイッチ、エンコーダ、及び/又は他の任意の適切な検知技法により、モータの回転位置を測定してよい。
【0037】
出力装置108は、患者116又は使用者に情報を伝達することに適する任意の装置であってよく、そのような装置として、ディスプレイ(例えば、液晶ディスプレイ)、タッチスクリーン、光(例えば、発光ダイオード)、バイブレータ(例えば、電子機械的振動要素)、機械的又は色変化フラグ部材、スピーカ、アラーム、及び/又は他の任意の適切な装置、又はこれらの任意の組み合わせがある。後で詳述するように、出力装置108は、用量完了後に患者又は使用者に対して、組織背圧が第1の所定値(例えば、P)を上回ったままなので、患者又は使用者は患者の組織から投与部材118を除去するのを待たなければならないことをアラート又は通知するように、且つ/又は、患者に対して、組織背圧が第1の所定値を下回ったので、注射部位での薬剤漏れのリスクがほとんど又は全くない状態で患者の皮膚から薬剤送達装置を除去してよいことをアラート又は通知するように、制御(例えば、活性化又は不活性化)されてよい。
【0038】
制御装置106は、薬剤送達システム100の様々なコンポーネントの動作を制御するように構成されてよく、そのようなコンポーネントとして、例えば、挿入/後退機構120、流体経路接続アセンブリ122、駆動アセンブリ124、及び出力装置108がある。更に、制御装置106は、第1の圧力センサ110、第2の圧力センサ112、用量終了センサ114、及び/又は薬剤送達システム100の他の要素、及び/又は外部要素からの情報、データ、信号(アナログ及び/又はデジタル)、又は他の出力を受信及び/又は処理するように構成されてよい。更に、制御装置106は、そのような各要素から受信した出力に応答してよく、特定の要素(例えば、挿入/後退機構120、流体経路接続アセンブリ122、駆動アセンブリ124、及び/又は出力装置108)の動作を、制御装置106のプログラミング構成又は他の構成に従って自動的に制御するように構成されてよい。
【0039】
制御装置106は、電気装置(例えば、ハードワイヤード回路、マイクロプロセッサ等)、電気装置の組み合わせ、機械装置、機械装置の組み合わせ、化学装置、化学装置の組み合わせ、又はこれらの任意の組み合わせ(例えば、電気機械装置、電気化学装置等)を含んでよく、且つ/又はそれらによって動作を実施してよい。制御装置106がマイクロプロセッサ等を含む実施形態によれば、制御装置106の構成は、制御装置106のソフトウェア又は他のプログラミングに対応してよい。幾つかの実施形態では、制御装置106は、患者又は他の最終使用者が後で構成変更できないように、製造元及び/又は医療提供者によって事前構成されてよく、これに対して、別の実施形態では、制御装置106は、任意の個人又はエンティティによって無理のない範囲で構成可能であってよい。
【0040】
幾つかの実施形態では、制御装置106は、互いに通信又は一体化しているプロセッサ130(又は複数のプロセッサ)及びメモリ132(又は複数のメモリ)を含むコンピューティング装置として設けられてよい。プロセッサ130は、例えば、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、プログラマブルロジックコントローラ、デジタル信号プロセッサ、マイクロコンピュータ、中央処理ユニット、フィールドプログラマブルゲートアレイ、論理回路、アナログ回路、デジタル回路、ソフトウェアベースの処理モジュール、並びに回路及び/又は動作命令のハードコーディングに基づいて信号(アナログ及び/又はデジタル)を操作する任意の装置、又はこれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上を含み得る。メモリ132は、例えば、データを記憶するように構成された非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含んでよく、そのようなデータは、例えば、1つ以上のサービス、プログラム、及び/又はモジュールを構成する非一時的コンピュータ可読命令、並びにそのようなサービス、プログラム、及び/又はモジュール上で操作されるか、そのようなサービス、プログラム、及び/又はモジュールによって生成される任意のデータである。メモリ132は、揮発性メモリ(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)等)及び/又は不揮発性メモリ(例えば、ハードディスク)上にデータを記憶してよく、リムーバブルメモリであっても非リムーバブルメモリであってもよい。1つ以上のプロセッサは、薬剤送達システム100の様々な機能を実施又は実装する為に、1つ以上のメモリに記憶された命令をフェッチして実行するように構成されてよく、そのような機能として、例えば、投与レジメンに従って薬剤を患者116に送達するように駆動アセンブリ124を制御すること、投与部材118を患者に挿入すること、及び/又は投与部材118を患者から後退させることを行うように挿入/後退機構120を制御装置すること、及び/又は、出力装置108を制御することを含む。
【0041】
幾つかの実施形態によれば、制御装置106は、挿入/後退機構120、流体経路接続アセンブリ122、駆動アセンブリ124、出力装置108、第1の圧力センサ110、第2の圧力センサ112、及び用量終了センサ114のうちの1つ以上と(例えば、有線接続又は無線接続を介して)結合されてよく、それによって、制御装置106は、挿入/後退機構120、流体経路接続アセンブリ122、駆動アセンブリ124、出力装置108、第1の圧力センサ110、第2の圧力センサ112、及び用量終了センサ114のうちの1つ以上に通信を送信したり、且つ/又はそれらから通信を受信したりできる。そのような通信は、性質として電気的且つ/又は機械的であってよく、且つ/又は、情報、データ、及び/又は信号(アナログ及び/又はデジタル)を含んでよい。
【0042】
幾つかの実施形態によれば、制御装置106は、第1の圧力センサ110、第2の圧力センサ112、及び/又は用量終了センサ114から受信した出力(例えば、信号、データ、情報等)を解析し、その受信した出力に基づいて薬剤送達システム100及び/又は患者116の動作状態又は状況についての判断を下すように構成されてよい。そして、それらの判断に基づいて、制御装置106は、制御装置106がその為に構成されているルーチン、プログラム、レジメン等に従って、薬剤送達システム100の様々な要素を制御又は操作してよい。
【0043】
次に、図2に示したような薬剤送達システムを動作させる方法200の一実施形態について説明する。最初にブロック210で、薬剤送達装置104がセットアップ及び活性化されてよい。幾つかの実施形態では、このステップは、滅菌パッケージから薬剤送達装置104を取り出すこと、及び/又は、薬剤送達装置104に事前充填済みリザーバが事前装填されていない場合には、薬剤送達装置104のリザーバに薬剤を充填するか、事前充填済みのカートリッジ又はシリンジを薬剤送達装置104のハウジング内に接着することを含んでよい。更に、薬剤送達装置104がオンボディ注射器である実施形態では、このステップは、接着又は他の方法で薬剤送達装置104のハウジングを患者の皮膚の表面に取り外し可能に取り付けて、(例えば、ボタンを押すことによって)薬剤送達装置104を活性化することを含んでよい。薬剤送達装置104が自己注射器又はペン型注射器である別の実施形態では、このステップは、薬剤送達装置104の近位端部を手で保持しながら薬剤送達装置104の遠位端部を患者の皮膚の表面に押し付けて、(例えば、ボタンを押すことによって)薬剤送達装置104を活性化することを含んでよい。
【0044】
次にブロック212で、挿入/後退機構120が自動的に、或いは患者又は使用者が手動で、投与部材118を患者の組織に挿入してよく、これは、投与部材118の先端が患者の皮膚の表面を貫通するようにすることによって行われる。幾つかの実施形態では、挿入/後退機構120は、投与部材118を後退位置即ち格納位置から配備位置即ち動作位置まで動かしてよく、後退位置即ち格納位置では、投与部材118の全体が薬剤送達装置104のハウジングの内部空間内に引き込まれており、配備位置即ち動作位置では、投与部材118の端部が患者の組織への挿入の為にハウジングの外部表面を越えて延びている。後で図4を参照して述べるように、幾つかの実施形態では、制御装置106は、挿入/後退機構120の活性化後に、投与部材118が患者の組織に適正に挿入されたかどうかを判定するチェックを実施してよい。
【0045】
投与部材118の挿入後、薬剤送達装置104は、投与部材118を介して患者116への薬剤の送達を開始してよく(ブロック214)、同時に、又はすぐに、第2の圧力センサ112による駆動圧力の測定を開始してよい(ブロック216)。第2の圧力センサ112が省略されている代替実施形態では、駆動圧力の測定は第1の圧力センサ110で行われてよい。ブロック214で、駆動アセンブリ124は、リザーバ102を作動させて、用量の薬剤を流体経路接続アセンブリ122経由で投与部材118から患者の組織内に押し出すように(例えば、制御装置106によって)活性化されてよい。薬剤送達装置104が単一のボーラス注射器である実施形態では、薬剤の押し出される用量は、リザーバ102に含まれる薬剤の体積の全て又はほぼ全てに相当してよい。別の実施形態では、薬剤の押し出される用量は、リザーバ102に含まれる薬剤の体積のほんの一部に相当してよい。駆動アセンブリ124の、薬剤を患者に送達する動作の間に、第1の圧力センサ110及び/又は第2の圧力センサ112は、連続的又は断続的に薬剤送達装置104の内部流体流路内の駆動圧力を検出して、その圧力を表す信号を制御装置106に出力することに使用されてよい。制御装置106は、ブロック216の後、それらの駆動圧力信号に基づいて、駆動圧力が上限(本明細書では第2の所定値とも呼ぶ)を上回るかどうか(ブロック218)、且つ/又は駆動圧力が下限(本明細書では第3の所定値とも呼ぶ)を下回るかどうか(ブロック220)を判定するように構成されてよい(例えば、電気的実施形態の場合には、判定するようにプログラムされてよい)。
【0046】
駆動圧力が上限を上回ると判定された場合には、制御装置106は、ブロック222で、薬剤送達装置104が患者への薬剤送達を中止するように、リザーバ102の作動を止めるように駆動アセンブリ124を自動的に制御してよい。追加又は代替として、駆動圧力が上限を上回ると判定された場合には、制御装置106は、ブロック222で、薬剤送達装置104が誤動作したことを患者又は使用者に通知又はアラートするか、又は他の形で、エラーが発生したことを示すように、出力装置108を自動的に制御(例えば、活性化又は不活性化)してよい。
【0047】
駆動圧力が下限を下回ると判定された場合には、制御装置106は、ブロック224で、薬剤送達装置104が患者への薬剤送達を中止するように、リザーバ102の作動を止めるように駆動アセンブリ124を自動的に制御してよい。追加又は代替として、駆動圧力が下限を下回ると判定された場合には、制御装置106は、ブロック224で、薬剤送達装置104が誤動作したことを患者又は使用者に通知又はアラートするか、又は他の形で、エラーが発生したことを示すように、出力装置108を自動的に制御(例えば、活性化又は不活性化)してよい。
【0048】
駆動アセンブリ124がリザーバ102から薬剤を放出する動作の全体を通して、用量終了センサ114は、リザーバ102内のストッパ又は他のプランジャ要素が用量終了位置に達したかどうかを監視してよい。達した場合には(図3のブロック226)、用量終了センサ114は、用量終了信号を(例えば、制御装置106に)出力してよい。ブロック226の後、且つ/又は用量終了信号に対する応答として、制御装置106は、組織背圧が第1の所定値(例えば、図1のP)を下回るかどうかの監視を開始してよい。制御装置106は、この判定を、ブロック228で第1の圧力センサ110から出力される組織背圧信号に基づいて行ってよい。第1の圧力センサ110は、組織背圧信号の出力を、薬剤送達開始時に開始してよく、或いは用量終了検出後にのみ開始してよい。制御装置106は、ブロック230で、組織背圧が第1の所定値を下回るかどうかを、背圧信号に基づいて判定するように構成されてよい(例えば、電気的実施形態の場合には、判定するようにプログラムされてよい)。組織背圧が第1の所定値を下回ると判定された場合には、制御装置106は、ブロック232で、投与部材118を患者の組織から(例えば、薬剤送達装置104のハウジングの内部空間内まで)後退させるように、挿入/後退機構120を自動的に制御してよい。追加又は代替として、組織背圧が第1の所定値を下回ると判定された場合には、制御装置106は、ブロック232で、薬剤送達が完了したこと、及び/又は、薬剤送達装置104を患者の皮膚から安全に除去できることを患者又は使用者に通知又はアラートするように、出力装置108を自動的に制御(例えば、活性化又は不活性化)してよい。
【0049】
ブロック230で制御装置106が、組織背圧が第1の所定値を上回ると判定した場合には、制御装置106は、図3に示すように組織背圧の監視を続行してよく、実施形態によっては、投与部材118が後退しないように挿入/後退機構120を自動的にロックするか、且つ/又は、薬剤送達がまだ完了していないこと、及び/又は薬剤送達装置104を患者の皮膚から除去するのを待つべきであることを患者又は使用者に通知又はアラートするように、出力装置108を自動的に制御(例えば、活性化又は不活性化)してよい。
【0050】
上述の実施形態のいずれにおいても、更なる改善が含まれ得る。
【0051】
例えば、幾つかの実施形態では、第1の圧力センサ110及び/又は第2の圧力センサ112は、薬剤送達の開始前に、投与部材118が患者の組織に適正に挿入されているかどうかを判定することに使用されてよい。これが可能であるのは、投与部材118が患者の組織に挿入されると、組織背圧の結果として、薬剤送達装置104の内部流体流路内の圧力がわずかに上昇し得る為である。この圧力上昇は、投与部材118が患者の組織に適正に挿入されたことを表すものとして解釈されてよい。そのような実施形態によれば、図4に示すように、制御装置106は、ブロック290で、投与部材118を患者の組織に挿入するように挿入/後退機構120が活性化されたかどうかを判定するように構成されてよい(例えば、電気的実施形態の場合には、判定するようにプログラムされてよい)。ブロック290の後、挿入/後退機構120が活性化されている場合には、制御装置106は、ブロック292及び294で、組織背圧が第4の所定値(図4のP)を上回るかどうかを、第1の圧力センサ110及び/又は第2の圧力センサ112から出力される信号に基づいて判定するように構成されてよい(例えば、電気的実施形態の場合には、判定するようにプログラムされてよい)。組織背圧が第4の所定値を上回ると判定された場合には、制御装置106は、ブロック296で、リザーバ102を作動させて用量の薬剤を患者に送達するように、駆動アセンブリ124を自動的に制御(例えば、活性化)してよい。追加又は代替として、組織背圧が第4の所定値を上回ると判定された場合には、制御装置106は、ブロック296で、薬剤送達が進行中又は開始間近であることを患者又は使用者に通知又はアラートするように、出力装置108を自動的に制御(例えば、活性化又は不活性化)してよい。
【0052】
組織背圧が第4の所定値を下回ると制御装置106が判定した場合には、制御装置106は、ブロック298で、リザーバ102が薬剤を放出するように作動しないように駆動アセンブリ124を自動的にロックすること、及び/又は、装置の誤動作について患者又は使用者に通知又はアラートするか、別の形で、エラーが発生したことを表示するように、出力装置108を自動的に制御(例えば、活性化又は不活性化)することを行ってよい。
【0053】
薬剤送達システムの構造及び動作について、図2~4に関連して大まかに説明してきたが、以下では、リザーバ、薬剤送達装置、圧力センサ、出力装置、及び制御装置に関する更なる例示的詳細を示す。具体的には、図2の各特徴を組み込み、更なる詳細を追加した薬剤送達システム300の一実施形態を図5及び6に示す。図2と同じ参照符号(但し200だけ増やしている)で類似要素を示している。図5及び6に示した薬剤送達システム300は、図2及び3に関連して上述した方法、又は他の任意の適切な動作方法に従って動作可能である。
【0054】
一般に、薬剤送達システム300は、患者316の組織(例えば、皮下組織、筋肉組織等)に薬剤を注射するように構成されてよい。薬剤は、ペプチド、ペプチボディ、及び抗体を含む様々な生物学的薬剤であってよいが、これらに限定されない。薬剤は、流体又は液体の形態であってよく、剤型によっては高い粘性を有してよい。薬剤送達システム300は、タイプによっては、固定用量又は患者/操作者が設定可能な用量の薬剤をボーラス形式で、制御又は選択された時間帯に自動的に送達するように構成されてよい。更に、薬剤送達システム300は、患者による自己投与を想定されてよく、又は注射を投与する為の正式な訓練を受けた医療従事者によって操作されてよい。
【0055】
薬剤送達システム300の様々な実施態様及び構成が可能である。薬剤送達システム300は、単回使用の使い捨て注射器として構成されてよく、或いは複数回使用の再利用可能注射器として構成されてよい。図5及び6に示した実施形態では、薬剤送達システム300は、注射の継続時間にわたって患者の皮膚に取り外し可能に取り付けられるオンボディ注射器として構成されている。代替実施形態では、薬剤送達システムは、注射の継続時間にわたって患者又は使用者の手中で保持される自己注射器又はペン型注射器として構成されてよい。更に別の代替実施形態では、薬剤送達システムは、手動操作で注射を実施できるシリンジであってよいが、これとは対照的に、オンボディ注射器及び自己注射器のタイプであれば、薬剤送達システムは、自動的に投与部材を挿入すること、自動的に薬剤をリザーバから押し出すこと、及び/又は注射後に自動的に投与部材を後退させることが可能であってよく、且つ/又は他の自動化された特徴又は機能を有してよい。
【0056】
図6を参照すると、薬剤送達システム300は、リザーバ302、薬剤送達装置304、制御装置306、出力装置308、第1の圧力センサ310、第2の圧力センサ312、及び用量終了センサ314を含んでよい。薬剤送達装置304は、投与部材318、挿入/後退機構320、流体経路接続アセンブリ322、駆動アセンブリ324、及び主ハウジング325を含んでよい。実施形態によっては、リザーバ302、制御装置306、出力装置308、第1の圧力センサ310、第2の圧力センサ312、用量終了センサ314、投与部材318、挿入/後退機構320、流体経路接続アセンブリ322、駆動アセンブリ324のそれぞれが、薬剤送達システム300の使用中に主ハウジング325の内部空間内に配置されてよく、又は主ハウジング325の外側にマウントされてよい。
【0057】
投与部材318は、中空であり、且つ第1の端部318aを有してよく、第1の端部318aは、流体経路接続アセンブリ322を介してリザーバ302と流体連通接続されているか又は流体連通接続可能であり、第2の端部318bは、患者316の組織317に挿入される。幾つかの実施形態では、投与部材318は、比較的可撓な材料で作られたカニューレの形態であり、第2の端部318bにとがっていない先端を有してよく、これに対し、別の実施形態では、投与部材318は、比較的堅い材料で作られた針の形態であり、第2の端部318bにとがった先端を有してよい。投与部材318は、薬剤送達システム300の他の要素と一体化されていてよく、或いは、投与部材318は、使用直前まで薬剤送達システム300の他の要素から分離されていてよい。
【0058】
図6に示した実施形態を含む特定の実施形態によれば、薬剤送達システム300は更に、投与部材318の第2の端部318bを患者の組織317に導入するトロカール又は導入部材313を含んでよいが、これは、本開示の各実施形態によれば必須ではない。導入部材313は、実施形態によっては、ハウジング325内に引き戻されて、投与部材318の第2の端部318bを、薬剤の皮下注射、筋肉注射等の注射の為に患者内に残してよい。そのような実施形態では、投与部材318は、比較的可撓又は軟質の材料(例えば、プラスチック又は別のポリマー)で作られたカニューレ(例えば、とがっていないカニューレ)であってよく、これに対し、導入部材313は、堅いか又は中空の針又はトロカールであってよく、比較的剛性又は硬質の材料(例えば、金属)で作られてよい。従って、投与部材318は、導入部材313より可撓な材料で作られてよい。投与部材318が比較的可撓であることにより、痛みや有意の不快さを患者に引き起こすことなく一定時間(例えば、数分、数時間、数日等)にわたって患者の組織317内に配置されることが可能であり得る。別の実施形態(図示せず)では、導入部材313が省略されてよく、代わりに挿入/後退機構320は投与部材318だけを患者に挿入してよい。
【0059】
実施形態によっては、導入部材313は薬剤送達前に患者の組織317から後退してよいが、薬剤は、患者の組織317に注射される前に導入部材313の中を通ってよい。そのような実施形態では、導入部材313は、投与部材318と流体連通したままであり、導入部材313の後退後は投与部材318の上流にある中空の内部通路を有してよい。従って、薬剤は、導入部材313の中を流れ、その後、投与部材318の中に流れ、最後に患者の組織317の中に流れてよい。このようにして、導入部材313は、薬剤が導入部材313から直接患者内に出ていくわけではないとしても、少なくとも少しの間は患者に挿入され、薬剤送達中はリザーバ302と流体連通接続していることから、投与部材に相当すると考えられてよい。
【0060】
引き続き図6を参照すると、活性化部材335(例えば、ユーザ押下可能ボタン、タッチスクリーン、マイクロホン等)が、ハウジング325を貫通して突き出るか他の形態でハウジング325の外部表面に配置されてよく、機械的手段及び/又は(図6に点線で示した)電気的手段によって挿入/後退機構320、流体経路接続アセンブリ322、駆動アセンブリ324、制御装置306、及び/又は他の機構及び/又は電子回路を活性化することによって薬剤送達システム300の動作を開始するように構成されてよい。活性化部材335が、押されるか他の方法で使用者又は患者によって物理的に動かされるボタンである実施形態では、活性化部材335は、挿入/後退機構320、流体経路接続アセンブリ322、駆動アセンブリ324、制御装置306、及び/又は他の要素の活性化に必要な原動力を作用させるように構成されてよい。そのような実施形態では、活性化部材335は、挿入/後退機構320、流体経路接続アセンブリ322、駆動アセンブリ324、及び/又は他の機構と、直接又は機械的リンク機構を介して間接的に、物理的に接続されていてよく、手動押下又は他の方法で活性化部材335と相互作用することにより、これらの要素の活性化に必要な原動力が供給される。
【0061】
例えば、幾つかの実施形態では、活性化部材335を手動押下することにより、流体経路接続アセンブリ322を固定配置されたリザーバ302に向かって動かすか、或いは可動リザーバ302を固定配置された流体経路接続アセンブリ322に向かって動かして、容器アクセス針が封止部材(例えば、刺し通し可能な隔壁)を貫通してリザーバ302の薬剤収容チャンバに入るようにすることが可能である。追加又は代替として、活性化部材335は、電気信号及び/又は機械信号を制御装置306に送信する入力装置として動作してよく、その制御装置306は、挿入/後退機構320、駆動アセンブリ324、流体経路接続アセンブリ322、及び/又は他の要素の動作を制御するプログラマブル命令を実行してよい。そのような実施形態では、制御装置306は、プロセッサ(例えば、マイクロプロセッサ)と、プロセッサによって実行されるプログラマブル命令を記憶する非一時的メモリと、を含んでよい。更に、そのような実施形態では、駆動アセンブリ324は内部アクチュエータ(例えば、電気モータ、空気ポンプ又は油圧ポンプ、及び/又はプロペラントリザーバの形態の加圧ガス源又は加圧液体源)を含んでよく、内部アクチュエータは、活性化部材335とは別個であり、制御装置306から受信した電気制御信号に対する応答として、挿入/後退機構320、流体経路接続アセンブリ322、及び/又は他の要素の活性化に必要な原動力を作用させる。
【0062】
引き続き図6を参照すると、ハウジング325は底部壁337を含んでよく、底部壁337は、患者316の皮膚表面319に取り外し可能に取り付けられる(例えば、接着剤で接着される)ように構成されており、上部壁339は、出力装置308と、リザーバ302を見る為の窓334とを含む。出力装置308は、薬剤送達システム300の動作状態又は状況についての情報を患者又は使用者に通知及び/又は提供するように制御可能であってよい。出力装置308は、患者又は使用者に情報を伝達することに適する任意の装置であってよく、そのような装置として、ディスプレイ(例えば、液晶ディスプレイ)、タッチスクリーン、光(例えば、発光ダイオード)、バイブレータ(例えば、電子機械的振動要素)、機械的又は色変化フラグ部材、スピーカ、アラーム、及び/又は他の任意の適切な装置、又はこれらの任意の組み合わせがある。出力装置308の1つの目的は、上述のように、用量完了後に、組織背圧が特定の閾値を上回ったままなので患者又は使用者は投与部材318を患者の組織317から除去するのを待つべきであることを、患者又は使用者にアラートすることであってよい。
【0063】
底部壁337に開口部336が形成されてよく、任意選択で、使用前に滅菌バリア又は封止部材338(例えば、刺し通し可能な隔壁)が開口部336全体に広がってハウジング325の内部を封止してよい。幾つかの実施形態では、封止部材338が省略されてよく、代わりに、使用前に取り外し可能封止部材(図示せず)が開口部336を覆って封止閉鎖してよい。
【0064】
ハウジング325の底部壁337が患者の皮膚表面319に取り付けられた後、挿入/後退機構320は、投与部材318を、導入部材313と一緒に、ハウジング325内の後退位置(格納位置)から、図6に示したような、ハウジング325の外側に延びる配備位置(動作位置)まで自動的に動かすように活性化されてよい。本実施形態では、これは、図6に示したように、挿入/後退機構320によって導入部材313と導入部材313を取り囲む投与部材318とが封止部材338を貫通して患者の組織317に挿入されることを含んでよい。その直後、又はそのすぐ後に、挿入/後退機構320は、導入部材313を自動的に後退させて、投与部材318の第2の端部を、リザーバ302からの薬剤の皮下送達の為に患者内に残してよい。導入部材313は、中実であり、患者の皮膚表面319に穴を開けることを支援する為にとがった先端を有してよい。
【0065】
幾つかの実施形態では、挿入/後退機構320は、1つ以上のばね(例えば、圧縮コイルばね、引張コイルばね、ねじりコイルばね、ねじり渦巻きばね等)を含んでよく、これらのばねは、最初は付勢された状態で保持され、活性化部材335が押下されると解放されて、投与部材318及び導入部材313を患者に挿入する。更に、投与部材318及び導入部材313が患者に挿入された後に、挿入/後退機構320に含まれる別のばねが自動的に解放されることによって、導入部材313の後退が達成されてよい。更に、薬剤送達が完了した後の適切なタイミングで、挿入/後退機構320に含まれる別のばねが自動的に解放されることによって、投与部材318の、患者の組織317からハウジング325の内部空間内への後退が達成されてよい。挿入及び/又は後退用として他の動力源も可能であり、そのような動力源として、例えば、電気モータ、油圧ポンプ又は空気ポンプ、或いは、加圧されたガス又は液体を解放して作動エネルギを供給するキャニスタがある。
【0066】
引き続き図6を参照すると、リザーバ302(文脈によっては一次容器と呼ぶことがある)は壁340を含んでよく、壁340は、薬剤が充填されているか充填されることが可能な内部空間又はチャンバを画定する内部表面と、外部表面とを有する。幾つかの実施形態では、リザーバ302は、ハウジング325にリザーバ302が設置される前に薬剤製造元によって薬剤を事前充填されてよい。幾つかの実施形態では、リザーバ302は、ハウジング325に対して動けないようにハウジングに強固に接続されてよく、一方、別の実施形態では、リザーバ302は、薬剤送達システム300の動作中にリザーバ302がハウジング325に対して動けるようにハウジング325に摺動可能に接続されてよい。リザーバ302は、長手軸A1方向に延びる、細長いバレル状又は円筒状の形状を有してよい。幾つかの実施形態では、リザーバ302の長手軸A1は、挿入/後退機構320が投与部材318を患者に挿入する方向に対して垂直又はほぼ垂直若しくは非平行であってよい。この構成により、オンボディ注射器は、ほぼ平坦な薄型形状であり、患者の肢部の動きを妨げることなく患者に装着可能であることが可能であり得る。最初は、ストッパ342又は他のプランジャ部材がリザーバ302の近位端部344内に位置してよい。ストッパ342は、リザーバ302の壁340の内部表面と封止的且つ摺動可能に係合してよく、薬剤をリザーバ302から押し出す為にリザーバ302の壁340に対して可動であってよい。
【0067】
リザーバ302に収容される薬剤の体積は、およそ(例えば、±10%で)0.5~50mLの範囲の任意の体積、又はおよそ(例えば、±10%で)0.5~25mLの範囲の任意の体積、又はおよそ(例えば、±10%で)0.5~10mLの範囲の任意の体積、又はおよそ(例えば、±10%で)1~10mLの範囲の任意の体積、又はおよそ(例えば、±10%で)1~8mLの範囲の任意の体積、又はおよそ(例えば、±10%で)1~5mLの範囲の任意の体積、又はおよそ(例えば、±10%で)1~3mLの範囲の任意の体積、又はおよそ(例えば、±10%で)1~2.5の範囲の任意の体積、又はおよそ(例えば、±10%で)1mL以上の任意の体積、又はおよそ(例えば、±10%で)2.5mL以上の任意の体積、又はおよそ(例えば、±10%で)10mL以上の任意の体積、又はおよそ(例えば、±10%で)25mL以上の任意の体積、又はおよそ(例えば、±10%で)50mL以上の任意の体積であってよい。
【0068】
薬剤送達システム300の動作中、投与部材318は、薬剤をリザーバ302から押し出す為に、ストッパ342を長手軸A1方向にリザーバ302の近位端部344から遠位端部345まで押してよい。幾つかの実施形態では、駆動アセンブリ324は、1つ以上のばね(例えば、圧縮コイルばね、引張コイルばね、ねじりコイルばね、ねじり渦巻きばね等)を含んでよく、これらのばねは、最初は付勢された状態で保持され、活性化部材335及び/又は別の作動装置が押下されると解放される。ばねは、解放されると伸びるか又は縮み、それによってストッパ342がリザーバ302内を動いて薬剤を押し出すことが可能である。別の実施形態では、駆動アセンブリ324は電気モータを含んでよく、電気モータは、(例えば、1つ以上のスプロケットギアを含む)ギア機構を回転させて、ストッパ342の、リザーバ302内を通る軸方向移動を引き起こす。更に別の実施形態では、駆動アセンブリ324は電気モータ及びばねの両方を含んでよく、電気モータは、テザー又はプーリシステムを介してばねの伸張を調整する。更に別の実施形態では、駆動アセンブリ324はキャニスタを含んでよく、キャニスタは、加圧ガス又は加圧液体を解放して作動エネルギを供給する。
【0069】
リザーバ302の遠位端部345において、壁340の遠位端面に開口部が形成されてよい。遠位端面は、壁340の外部表面の一部分を確定し得る。開口部は、薬剤送達システム300が使用されるまで、リザーバ302の遠位端部345に接続されている滅菌バリア又は封止部材346(例えば、刺し通し可能な隔壁)で覆われて封止閉鎖されてよい。一般に、封止部材346は、リザーバ302の薬剤収容チャンバへのアクセスを選択的に可能にするように構成されてよい。薬剤送達システム300の動作中、封止部材346は、リザーバ302内の薬剤との流体連通を可能にする為に物理的に改変されて(例えば、穴を開けられて)よい。幾つかの実施形態では、封止部材346は、例えばゴムのような可撓又は弾性変形可能な材料で作られてよく、流体経路接続アセンブリ322の一部として含まれている容器アクセス針349のとがった端部又は先端348で突き抜けるか穴を開けることがそれぞれ可能である。
【0070】
引き続き図6を参照すると、流体経路接続アセンブリ322は、薬剤送達システム300の使用中に滅菌流体流路を介してリザーバ302と挿入/後退機構320との間に流体連通を選択的に確立するように構成されてよい。流体経路接続アセンブリ322は、リザーバ302と流体連通接続されているか流体連通接続可能である入口端部350、投与部材318と流体連通接続されているか流体連通接続可能である出口端部352を含み得る。薬剤送達システム300が使用されるまで、流体経路接続アセンブリ322はリザーバ302と流体連通していなくてよい。薬剤送達システム300のセットアップ中、又は薬剤送達システム300の動作中(但し、薬剤送達前)に、使用者が手動で、又は薬剤送達システム300が自動的に、リザーバ302と投与部材318との間の流体連通を、流体経路接続アセンブリ322を介して確立する為に必要な接続を有効化、接続、又は開放してよい。その後、駆動アセンブリ124がストッパ342を遠位方向に動かして、薬剤を、患者の組織317への送達の為に流体経路接続アセンブリ322の滅菌流体流路から投与部材318内に押し出してよい。
【0071】
図6を更に参照すると、流体経路接続アセンブリ322の入口端部350は容器アクセス針349を含んでよい。流体経路接続アセンブリ322が作動するまで、容器アクセス針349は格納位置で保持されてよく、格納位置では、容器アクセス針349の近位端部は、(図6に見られるように)リザーバ302の薬剤収容チャンバの外側に配置されており、従って、薬剤収容チャンバと流体連通していない。流体経路接続アセンブリ322が活性化されると、容器アクセス針349は、リザーバ302に向かう方向に動いて動作位置に入ってよく、動作位置では、容器アクセス針349の近位端部がリザーバ302と流体連通する。その後、駆動アセンブリ124がストッパ342を遠位方向に動かして、薬剤を、患者の組織317への注射の為に、容器アクセス針349から流体経路接続アセンブリ322の滅菌流体流路を介して投与部材318内に押し出してよい。
【0072】
図6に示すように、流体経路接続アセンブリ322の入口端部350は、リザーバ302と流体連通接続されているか流体連通接続可能である第1の接続ハブ又はフィッティング360を含んでよく、流体経路接続アセンブリ322の出口端部352は、挿入/後退機構320を介して投与部材318と流体連通接続されているか流体連通接続可能である第2の接続ハブ又はフィッティング362を含んでよい。代替実施形態では、流体経路接続アセンブリ322の第2の接続ハブ362は、投与部材318と直接、流体連通接続されているか又は流体連通接続可能であってよい。第1の接続ハブ360と第2の接続ハブ362との間に延びていて、これらをつないでいるのが管状導管364である。管状導管364は、実施形態によっては、全体又は一部が可撓チューブ又は他の中空細長構造物で形成されてよく、プラスチック等のポリマー材料で作られてよい。代替実施形態では、管状導管364の一部又は全体が、金属等の剛体材料で作られてよい。最初は管状導管364にたるみがあってよく、これは、第1の接続ハブ260及び/又は第2の接続ハブ262がリザーバ302及び/又はハウジング325に対して動くことを可能にする為である。管状導管364が可撓であることにより、標準的な充填仕上げ設備によるリザーバ充填、及び/又はハウジング325内での流体経路接続アセンブリ322の設置が容易になり得る。管状導管364は、単一の一体型構造物であってよく、或いは複数の相互接続構造物で形成されてよい。
【0073】
第1の接続ハブ360は、容器アクセス針349の為の強固なマウントを提供することが可能であり、薬剤送達を含む薬剤送達システムの使用中は容器アクセス針349と管状導管364との間の流体連通を提供することが可能である。幾つかの実施形態では、容器アクセス針が第1の接続ハブ360に強固又は固定的に接続されてよく、それによって、容器アクセス針349と第1の接続ハブ360は、(例えば、薬剤送達システム300の使用中に容器アクセス針349がリザーバ302の薬剤収容チャンバにアクセスしている間)互いに対しては動かず、一体となって一緒に動く。
【0074】
引き続き図6を参照すると、第2の接続ハブ362は、薬剤送達を含む薬剤送達システムの使用中は管状導管364と投与部材318との間の流体連通を提供することが可能である。幾つかの実施形態によれば、第2の接続ハブ362は、投与部材318の為の強固なマウントを提供することが可能である。幾つかの実施形態では、投与部材318が第2の接続ハブ362に強固又は固定的に接続されてよく、それによって、投与部材318と第2の接続ハブ362は、(例えば、投与部材318が患者の組織317に挿入されている間、及び/又は投与部材318が患者の組織317から後退している間)互いに対しては動かず、一体となって一緒に動く。
【0075】
幾つかの実施形態によれば、第2の接続ハブ362は、第2の接続ハブ362を定義する材料の性質によるものであれ、第2の接続ハブ362の構造の性質によるものであれ、強固である。第2の接続ハブ362は、強固であることにより、管状導管364及び投与部材318の端部を、挿入及び/又は後退の動きの間、互いに対して一定の向き(例えば、垂直又はほぼ垂直な向き)で保持することが可能であり得る。幾つかの実施形態では、接続ハブ362は、管状導管364を作る材料より強固な(即ち、可撓性が低い)材料で作られてよい。
【0076】
図6に示すように、薬剤送達システム300は、流体経路接続アセンブリ322の出口端部352に近接してマウントされた第1の圧力センサ310と、流体経路接続アセンブリ322の入口端部350に近接してマウントされた第2の圧力センサ312と、リザーバ302の遠位端部345に近接してマウントされた用量終了センサ314と、を含んでよい。第1の圧力センサ310、第2の圧力センサ312、及び用量終了センサ314は、それぞれ、図2~4に関連して上述した第1の圧力センサ110、第2の圧力センサ112、及び用量終了センサ114と同様に構成されてよく、且つ/又は同様に動作してよい。図6では、第1の圧力センサ310及び第2の圧力センサ312は、圧力測定値を表すそれぞれの信号を、有線接続を介して制御装置306に出力するが、代替実施形態では無線接続を含んでよい。用量終了センサ314も、ストッパ342の用量終了位置を表す信号を、有線接続又は無線接続を介して制御装置306に出力してよい。
【0077】
代替実施形態によっては、第2の圧力センサ312が省略されてよく、組織背圧及び駆動圧力の両方の測定が第1の圧力センサ310で行われてよい。
【0078】
幾つかの実施形態によれば、第2の接続ハブ362の中に内部通路が形成されてよい。内部通路は、薬剤送達を含む薬剤送達システムの使用中に、管状導管364の出口と投与部材318の入口との間の直接流体連通を提供するように構成されてよい。幾つかの実施形態では、内部通路、又は内部通路の少なくとも一部分の内部寸法(例えば、内径)が投与部材318の入口より大きくてよい。圧力センサ310は第2の接続ハブ362の中又は外側にマウントされてよく、これは、管状導管364の出口より下流であって投与部材318の入口より上流である場所において圧力センサ310が第2の接続ハブ362の内部通路と流体連通するように行われる。
【0079】
幾つかの実施形態では、圧力センサ310は、投与部材318の入口のすぐ上流であり、且つ管状導管364の出口のすぐ下流に配置されてよい。圧力センサ310が投与部材318の入口のすぐ上流に配置されていることで、圧力センサ310と投与部材318の入口との間にまっすぐの即ち曲がりくねっていない流体流路が存在し得る。幾つかの実施形態では、圧力センサ310の検知面と投与部材318の入口との間の距離は、およそ(例えば、±10%で)10mm以下、又はおよそ(例えば、±10%で)5mm以下であってよい。圧力センサ310を投与部材318の入口のすぐ上流に配置することにより、圧力センサ310が組織背圧のより正確な測定を行うことが可能になり得る。
【0080】
第2の接続ハブ362は、動作的且つ/又は構造的に挿入/後退機構320と一体であってよい。挿入/後退機構320が動作すると、第2の接続ハブ362及びこれにマウントされたコンポーネントが、患者に対して、且つ/又は薬剤送達システムの他の要素(例えば、ハウジング325)に対して相対的に動き得る。例えば、投与部材318が患者に挿入される間、挿入/後退機構320は、第2の接続ハブ362、圧力センサ310、及び投与部材318をまとめて一緒に患者に向けて、且つハウジング325に対して相対的に、動かすことが可能である。投与部材318が患者から後退する間、挿入/後退機構320は、第2の接続ハブ362、圧力センサ310、及び投与部材318をまとめて一緒に患者から遠ざかるように、且つハウジング325に対して相対的に、動かすことが可能である。
【0081】
薬剤送達システムの上述の実施形態については主に、薬剤送達の間は接着又は他の方法で患者の皮膚に取り付けられているオンボディ注射器の文脈で説明してきたが、本開示の範囲は、そのようなウェアラブル装置に限定されない。代替実施形態では、薬剤送達システムは、薬剤送達の間は患者又は使用者の手中で保持される自己注射器又は手動シリンジとして構成されてよい。そのような代替実施形態では、薬剤送達システムは、薬剤リザーバの長手軸と投与部材の長手軸とが平行な細長形状であってよい。
【0082】
当然のことながら、本開示によるシステム、装置、及び方法は、従来技術に対して1つ以上の有利な点を有することが可能であり、そのうちの任意の1つ以上が、特定の実施形態において、その実施形態に含まれる本開示の特徴に従って存在し得る。本明細書で特に挙げられていない他の利点についても同様に理解されてよい。
【0083】
薬剤情報
上記の記載では、薬剤送達装置に関連する様々な装置、アセンブリ、コンポーネント、サブシステム、及び使用方法について説明している。装置、アセンブリ、コンポーネント、サブシステム、方法、又は薬剤送達装置は、以下に特定される薬剤、並びにそれらのジェネリック及びバイオシミラー同等品を含むがこれらに限定されない薬剤を更に含み得るか又はこれらとともに使用され得る。本明細書では、薬剤という用語は、他の類似の用語と交換可能に使用でき、伝統的及び非伝統的な医薬品、栄養補助食品、サプリメント、生物学的製剤、生物学的活性剤及び組成物、大分子、バイオシミラー、生物学的同等物、治療用抗体、ポリペプチド、タンバク質、小分子、及びジェネリック医薬品を含む、任意の種類の薬剤又は治療用材料を指すために使用され得る。非治療的な注射可能材料も包含される。薬剤は、液体形態、凍結乾燥形態、又は凍結乾燥形態から再構成されたものであってもよい。以下の例示的な薬剤のリストは、網羅的又は限定的であると考えるべきではない。
【0084】
薬剤はリザーバに収容される。場合によっては、リザーバは、治療のために薬剤が充填又は事前充填される一次容器である。一次容器は、バイアル、カートリッジ、又は事前充填シリンジであってよい。
【0085】
幾つかの実施形態では、薬剤送達装置のリザーバに顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)等のコロニー刺激因子が充填されてよく、或いは、薬剤送達装置を顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)等のコロニー刺激因子とともに使用できる。そのようなG-CSF剤として、Neulasta(登録商標)(ペグフィルグラスチム、PEG化フィルガストリム、PEG化G-CSF、PEG化hu-Met-G-CSF)及びNeupogen(登録商標)(フィルグラスチム、G-CSF、hu-MetG-CSF)を含むが、これらに限定されない。
【0086】
別の実施形態では、薬剤送達装置は、液体又は凍結乾燥形態であってよい赤血球造血刺激因子製剤(ESA)を収容してよく、又はこれとともに使用されてよい。ESAは、赤血球産生を刺激する任意の分子である。幾つかの実施形態では、ESAは、赤血球産生刺激タンパク質である。本明細書では、「赤血球産生刺激タンパク質」は、(例えば、受容体に結合し、受容体の二量化を引き起こすことによって)エリスロポエチン受容体の活性化を直接的又は間接的に引き起こす任意のタンパク質を意味する。赤血球産生刺激タンパク質としては、エリスロポエチン受容体に結合し、これを活性化させるエリスロポエチン及びその変異体、類似体、若しくは誘導体、エリスロポエチン受容体に結合し、この受容体を活性化させる抗体、又はエリスロポエチン受容体に結合し、活性化させるペプチドが挙げられる。赤血球産生刺激タンパク質としては、Epogen(登録商標)(エポエチンアルファ)、Aranesp(登録商標)(ダルベポエチンアルファ)、Dynepo(登録商標)(エポエチンデルタ)、Mircera(登録商標)(メトキシポリエチレングリコールエポエチンベータ)、Hematide(登録商標)、MRK-2578、INS-22、Retacrit(登録商標)(エポエチンゼータ)、Neorecormon(登録商標)(エポエチンベータ)、Silapo(登録商標)(エポエチンゼータ)、Binocrit(登録商標)(エポエチンアルファ)、エポエチンアルファHexal、Abseamed(登録商標)(エポエチンアルファ)、Ratioepo(登録商標)(エポエチンシータ)、Eporatio(登録商標)(エポエチンシータ)、Biopoin(登録商標)(エポエチンシータ)、エポエチンアルファ、エポエチンベータ、エポエチンイオタ、エポエチンオメガ、エポエチンデルタ、エポエチンゼータ、エポエチンシータ、及びエポエチンデルタ、PEG化エリスロポエチン、カルバミル化エリスロポエチン、並びにそれらの分子又は変異体又は類似体が挙げられ、これらに限定されない。
【0087】
特定の例示的なタンパク質の中には、その融合物、断片、類似体、変異体、又は誘導体を含む、以下で説明する特定のタンパク質がある。完全ヒト化及びヒトOPGL特異抗体、特に、完全ヒト化モノクローナル抗体を含む、(RANKL特異抗体、ペプチボディ等とも称される)OPGL特異抗体、ペプチボディ、及び関連タンパク質等;ミオスタチン特異的ペプチボディを含む、ミオスタチン結合タンパク質、ペプチボディ、関連タンパク質等;特に、IL-4及び/又はIL-13の受容体への結合によって媒介される活動を抑制する、IL-4受容体特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質等;インターロイキン1-受容体1(「IL1-R1」)特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質等;Ang2特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質等、;NGF特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質等;CD22特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質等、特に、ヒト-マウスモノクローナルhLL2κ鎖に結合したヒト-マウスモノクローナルhLL2γ鎖二硫化物の二量体、例えば、エプラツズマブ(CAS登録番号501423-23-0)のヒトCD22特異完全ヒト化抗体などの、ヒトCD22特異IgG抗体を特に含むがそれに限定されない、ヒト化及び完全ヒトモノクローナル抗体を含むがそれに限定されない、ヒト化及び完全ヒト抗体等であるがそれに限定されない、ヒトCD22特異抗体;抗IGF-1R抗体を含むがそれに限定されない、IGF-1受容体特異抗体、ペプチボディ、及び関連タンパク質等;B7RP特異完全ヒトモノクローナルIgG2抗体を含むがそれに限定されない、B7RP-1の最初の免疫グロブリン様ドメインのエピトープと結合する完全ヒトIgG2モノクローナル抗体を含むがそれに限定されない、B7RP-1と活性化T細胞上のB7RP-1の自然受容体であるICOSとの相互作用を抑制するものを含むがそれに限定されない、B-7関連タンパク質1特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質等(「B7RP-1」、B7H2、ICOSL、B7h、及びCD275とも称される);例えば146B7などの、HuMax IL-15抗体及び関連タンパク質を含むがそれらに限定されない、特にヒト化モノクローナル抗体などの、IL-15特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質等;ヒトIFN γ特異抗体を含むがそれに限定されない、及び完全ヒト抗IFN γ抗体を含むがそれに限定されない、IFN γ特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質等;TALL-1特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質等、並びに他のTALL特異結合タンパク質;副甲状腺ホルモン(「PTH」)特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質等;トロンボポチエン受容体(「TPO-R」)特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質等;肝細胞増殖因子/分散因子(HGF/SF)を中和する完全ヒトモノクローナル抗体等のHGF/SF:cMet軸(HGF/SF:c-Met)を標的にするものを含む、肝細胞増殖因子(「HGF」)特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質等;TRAIL-R2特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質等;アクチビンA特異抗体、ペプチボディ、タンパク質等;TGF-β特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質等;アミロイドβタンパク質特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質等;c-Kit及び/又は他の幹細胞因子受容体と結合するタンパク質を含むがそれらに限定されない、c-Kit特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質等;OX40L及び/又はOX40受容体の他のリガンドと結合するタンパク質を含むがそれに限定されない、OX40L特異抗体、ペプチボディ、関連タンパク質等;Activase(登録商標)(アルテプラーゼ、tPA)、Aranesp(登録商標)(ダルベポエチンアルファ)、Epogen(登録商標)(エポエチンアルファ、又はエリスロポエチン)、GLP-1、Avonex(登録商標)(インターフェロンβ-1a)、Bexxar(登録商標)(トシツモマブ、抗CD22モノクローナル抗体)、Betaseron(登録商標)(インターフェロン-β)、Campath(登録商標)(アレムツズマブ、抗CD52モノクローナル抗体)、Dynepo(登録商標)(エポエチンデルタ)、Velcade(登録商標)(ボルテゾミブ)、MLN0002(抗α4β7 mAb)、MLN1202(抗CCR2ケモカイン受容体mAb)、Enbrel(登録商標)(エタネルセプト、TNF受容体/Fc融合タンパク質、TNF遮断薬)、Eprex(登録商標)(エポエチンアルファ)、Erbitux(登録商標)(セツキシマブ、抗EGFR/HER1/c-ErbB-1)、Genotropin(登録商標)(ソマトロピン、ヒト成長ホルモン)、Herceptin(登録商標)(トラスツズマブ、抗HER2/neu(erbB2)受容体mAb)、Humatrope(登録商標)(ソマトロピン、ヒト成長ホルモン)、Humira(登録商標)(アダリムマブ)、Vectibix(登録商標)(パニツムマブ)、Xgeva(登録商標)(デノスマブ)、Prolia(登録商標)(デノスマブ)、Enbrel(登録商標)(エタネルセプト、TNF-受容体/Fc融合タンパク質、TNF遮断薬)、Nplate(登録商標)(ロミプロスチム)、リロツムマブ、ガニツマブ、コナツムマブ、ブロダルマブ、溶液中のインスリン、Infergen(登録商標)(インターフェロンalfacon-1)、Natrecor(登録商標)(ネシリチド、遺伝子組換え型ヒトB型ナトリウム利尿ペプチド(hBNP)、Kineret(登録商標)(アナキンラ)、Leukine(登録商標)(サルガモスチム、rhuGM-CSF)、LymphoCide(登録商標)(エプラツズマブ、抗CD22 mAb)、Benlysta(商標)(リンフォスタットB、ベリムマブ、抗BlyS mAb)、Metalyse(登録商標)(テネクテプラーゼ、t-PA類似体)、Mircera(登録商標)(メトキシポリエチレングリコール-エポエチンベータ)、Mylotarg(登録商標)(ゲムツズマブオゾガマイシン)、Raptiva(登録商標)(エファリズマブ)、Cimzia(登録商標)(セルトリズマブペゴル、CDP870)、Soliris(商標)(エクリズマブ)、ペキセリズマブ(抗補体C5)、Numax(登録商標)(MEDI-524)、Lucentis(登録商標)(ラニビズマブ)、Panorex(登録商標)(17-1A、エドレコロマブ)、Trabio(登録商標)(レルデリムマブ)、TheraCim hR3(ニモツズマブ)、Omnitarg(ペルツズマブ、2C4)、Osidem(登録商標)(IDM-1)、OvaRex(登録商標)(B43.13)、Nuvion(登録商標)(ビジリズマブ)、カンツズマブメルタンシン(huC242-DM1)、NeoRecormon(登録商標)(エポエチンベータ)、Neumega(登録商標)(オプレルベキン、ヒトインターロイキン-11)、Orthoclone OKT3(登録商標)(ムロモナブ-CD3、抗CD3モノクローナル抗体)、Procrit(登録商標)(エポエチンアルファ)、Remicade(登録商標)(インフリキシマブ、抗TNFαモノクローナル抗体)、Reopro(登録商標)(アブシキシマブ、抗GP lIb/Ilia受容体モノクローナル抗体)、Actemra(登録商標)(抗IL6受容体mAb)、Avastin(登録商標)(ベバシズマブ)、HuMax-CD4(ザノリムマブ)、Rituxan(登録商標)(リツキシマブ、抗CD20 mAb)、Tarceva(登録商標)(エルロチニブ)、Roferon-A(登録商標)(インターフェロンalfa-2a)、Simulect(登録商標)(バシリキシマブ)、Prexige(登録商標)(ルミラコキシブ)、Synagis(登録商標)(パリビズマブ)、146B7-CHO(抗IL15抗体、米国特許第7,153,507号明細書を参照)、Tysabri(登録商標)(ナタリズマブ、抗α4インテグリンmAb)、Valortim(登録商標)(MDX-1303、抗炭疽菌防御抗原mAb)、ABthrax(商標)、Xolair(登録商標)(オマリズマブ)、ETI211(抗MRSA mAb)、IL-1 trap(ヒトIgG1のFc部分及び両IL-1受容体成分(I型受容体及び受容体補助タンパク質)の細胞外ドメイン)、VEGF trap(IgG1 Fcと融合したVEGFR1のIgドメイン)、Zenapax(登録商標)(ダクリズマブ)、Zenapax(登録商標)(ダクリズマブ、抗IL-2Rα mAb)、Zevalin(登録商標)(イブリツモマブチウキセタン)、Zetia(登録商標)(エゼチマイブ)、Orencia(登録商標)(アタシセプト、TACI-Ig)、抗CD80モノクローナル抗体(ガリキシマブ)、抗CD23 mAb(ルミリキシマブ)、BR2-Fc(huBR3/huFc融合タンパク質、可溶性BAFF拮抗薬)、CNTO148(ゴリムマブ、抗TNFα mAb)、HGS-ETR1(マパツズマブ、ヒト抗TRAIL受容体-1 mAb)、HuMax-CD20(オクレリズマブ、抗CD20ヒトmAb)、HuMax-EGFR(ザルツムマブ)、M200(ボロシキシマブ、抗α5β1インテグリンmAb)、MDX-010(イピリムマブ、抗CTLA-4 mAb、及びVEGFR-1(IMC-18F1)、抗BR3mAb、抗C.ディフィシル毒素A並びに毒素B C mAbs MDX-066(CDA-1)及びMDX-1388)、抗CD22 dsFv-PE38抱合体(CAT-3888及びCAT-8015)、抗CD25 mAb(HuMax-TAC)、抗CD3 mAb(NI-0401)、アデカツムマブ、抗CD30 mAb(MDX-060)、MDX-1333(抗IFNAR)、抗CD38 mAb(HuMax CD38)、抗CD40L mAb、抗Cripto mAb、抗CTGF特発性肺線維症第1期フィブロゲン(FG-3019)、抗CTLA4 mAb、抗エオタキシン1 mAb(CAT-213)、抗FGF8 mAb、抗ガングリオシドGD2 mAb、抗ガングリオシドGM2 mAb、抗GDF-8ヒトmAb(MYO-029)、抗GM-CSF受容体mAb(CAM-3001)、抗HepC mAb(HuMax HepC)、抗IFNα mAb(MEDI-545、MDX-1103)、抗IGF1R mAb、抗IGF-1R mAb(HuMax-Inflam)、抗IL12 mAb(ABT-874)、抗IL12/IL23 mAb(CNTO1275)、抗IL13 mAb(CAT-354)、抗IL2Ra mAb(HuMax-TAC)、抗IL5受容体mAb、抗インテグリン受容体mAb(MDX-018、CNTO95)、抗IP10潰瘍性大腸炎mAb(MDX-1100)、BMS-66513、抗マンノース受容体/hCGβ mAb(MDX-1307)、抗メソテリンdsFv-PE38抱合体(CAT-5001)、抗PD1mAb(MDX-1106(ONO-4538))、抗PDGFRα抗体(IMC-3G3)、抗TGFβ mAb(GC-1008)、抗TRAIL受容体-2ヒトmAb(HGS-ETR2)、抗TWEAK mAb、抗VEGFR/Flt-1 mAb、及び抗ZP3 mAb(HuMax-ZP3)。
【0088】
幾つかの実施形態では、薬剤送達装置は、ロモソズマブ、ブロソズマブ、又はBPS804(Novartis)などであるがそれらに限定されないスクレロスチン抗体、他の実施形態では、ヒトプロタンパク転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)に結合するモノクローナル抗体(IgG)を収容してよく、又はこれらとともに使用してよい。このようなPCSK9特異抗体としては、Repatha(登録商標)(エボロクマブ)及びPraluent(登録商標)(アリロクマ)が挙げられ、これらに限定されない。別の実施形態では、薬剤送達装置は、リロツムマブ、ビキサロマー、トレバナニブ、ガニツマブ、コナツムマブ、モテサニブ二リン酸塩、ブロダルマブ、ヴィデュピプラント、又はパニツムマブを収容してよく、又はこれらとともに使用してよい。幾つかの実施形態では、薬剤送達装置のリザーバには、OncoVEXGALV/CD;OrienX010;G207、1716;NV1020;NV12023;NV1034;及びNV1042を含むがそれらに限定されない、黒色腫又は他の癌の治療用のIMLYGIC(登録商標)(タリモジーンラハーパレプベック)又は別の腫瘍溶解性HSVが充填されてもよい、又は装置は、これらとともに使用することができる。幾つかの実施形態では、薬剤送達装置は、TIMP-3などであるがそれらに限定されないメタロプロテイナーゼの内在性組織阻害剤(TIMP)を収容してもよい又はこれとともに使用してもよい。エレヌマブ、及びCGRP受容体及び他の頭痛標的を標的とする二重特異性抗体分子などであるがそれらに限定されないヒトカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体の拮抗的抗体もまた、本開示の薬剤送達装置を用いて送達されてもよい。加えて、BLINCYTO(登録商標)(ブリナツモマブ)などであるがそれに限定されない二重特異性T細胞誘導(BiTE(登録商標))抗体を、本開示の薬剤送達装置において又はこれとともに使用することができる。幾つかの実施形態では、薬剤送達装置は、アペリン又はその類似体などであるがそれらに限定されないAPJ大分子アゴニストを収容してよく、又はこれとともに使用してよい。幾つかの実施形態では、治療的有効量の抗胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)又はTSLP受容体抗体が本開示の薬剤送達装置において又はこれとともに使用される。
【0089】
薬剤送達装置、アセンブリ、コンポーネント、サブシステム、及び方法を、例示的実施形態の観点から説明してきたが、それらは例示的実施形態に限定されるものではない。本詳細説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本開示の考え得るすべての実施形態を説明しているわけではない。現行の技術又は本特許の申請日以降に開発された技術のいずれかを使用して、多くの代替的な実施形態を実施することができるが、このような実施形態はなお、本明細書に開示される本発明を定義する請求項の範囲内に含まれる。
【0090】
当業者であれば理解されるように、本明細書に開示される発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく上記の実施形態に対して多種多様な修正、変更、及び組み合わせを施すことができ、そうした修正、変更、及び組み合わせは本発明の概念の範囲にあると解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6